JP2007268899A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 記録画像のムラやインク着弾位置のズレが無く、安定した良好な画像を記録することができ、凹凸が激しい記録媒体に対しても良好な画像を記録することができるインクジェット式の記録方法及び記録装置を提供する。
【解決手段】 記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動する記録ヘッドから画像情報に基づいてインクを吐出することにより記録媒体に画像を記録するインクジェット式の記録方法及び記録装置である。記録ヘッドから記録媒体までのインク飛翔距離を2.3mm以下とし、記録ヘッド及び記録媒体を含む環境の圧力を0.6気圧以下とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、画像情報に基づいて記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
記録装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する画像形成装置、あるいはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどにおける画像データの出力機器として広く使用されている。これらの記録装置は、画像情報に基づいて紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の記録媒体に画像(文字や記号等を含む)を形成していくように構成されている。この記録装置における記録方式にはシリアルタイプとラインタイプがある。シリアルタイプは、記録ヘッドを記録シートに沿って移動させる主走査と記録シートを所定ピッチで紙送りする副走査とを交互に繰り返しながら画像を記録していく方式である。一方、ラインタイプは、記録シートの幅方向に延びる長尺の記録ヘッドを用いることにより、一括して1ライン分を記録しながら記録シートの紙送り(副走査)のみで画像を記録していく方式である。記録装置は、記録方法によって、インクジェット記録装置、熱転写記録装置、レーザー記録装置、感熱記録装置、ワイヤドット記録装置などに分けることができる。
インクジェット記録装置は、画像情報に基づいて記録ヘッドの吐出口からインクを吐出して記録媒体に画像を記録するものである。最近のインクジェット記録装置では、微細な吐出口を高密度で配列することで、記録画像に対する高精細化及び画質向上の要請に応えている。しかし、記録ヘッドから吐出されるインク液滴が微細になると伴って、以下に列挙するような課題が生じている。すなわち、第1に、吐出されるインク液滴が小さくなることで、特にシリアルタイプの記録方式の場合に記録ヘッドの移動速度を上げると、その周辺に発生する乱流のためにインクの飛翔方向が曲げられ、所定の位置に付着せずに画像が乱れるという課題がある。これを解決するには、吐出口から記録媒体までのインクの飛翔距離を小さくすれば良い。しかし、この飛翔距離は、記録装置の寸法精度、記録媒体の厚さのばらつき、あるいは記録媒体のうねりや反りのために、1.0mm以下にするのは非常に困難であり、1.5mm程度が一般的である。
第2に、ベタ印字のように全ての吐出口からインクを吐出させる記録によりブロック画像や大きな文字をプリントする際に、全吐出口からのインク吐出により空気の巻き込み渦流が発生する。この巻き込み渦流によって飛翔インク滴の着弾位置にズレ(通称、ヨレともいう)が生じる。このため、所定の位置に正しく記録することができず、画質低下の原因になることがある。第3に、上記の巻き込み渦流により、吐出されるインクのうちの主滴以外のサテライト滴が位置ズレして着弾する。これにより、画像に濃淡の模様が発生し、濃淡ムラの原因になることがある。
第4に、上記のサテライト滴が、紙などの記録媒体に付着できずに、インクミストとなって空中に浮遊しつづけることがある。そして、このインクミストによって記録装置の排気口周辺、あるいはガイドレールやエンコードセンサ等が汚され、記録動作に悪影響を及ぼすことがある。第5に、凹凸が大きいマット紙、エンボス紙、壁紙あるいは皮革材料などに記録する場合、記録ヘッドから記録媒体までの飛翔距離が変化したり変動することになる。これは、正確な画像を形成できなくなるという重大な課題の原因となる。凹凸が激しい場合には、凹凸の山や谷の部分に形成される空間に空気の渦などが発生し、特に、谷の部分では目的位置にインクが到達しないという不都合が生じる。
上記のような課題を解決する方法として、特許文献1には、吐出液滴が飛翔する部分のみを減圧にして空気の抵抗を減らす方法が開示されている。この方法は、記録ヘッドにおけるインク吐出は大気圧環境で行い、吐出された後のインク滴の飛翔空間を減圧する方法である。しかしながら、このような方法では、空気の抵抗を減らすためには大幅に減圧する必要があり、前後の環境圧力の違いによって大きな空気流の変動が生じる。このため、実施化が困難であった。
そこで、現実的な技術として、インクジェット記録装置を減圧空間に設置して記録を行えば良いことが、例えば特許文献2に示唆されている。この文献には、停止型の帯電偏向型インクジェット記録装置において、環境圧力を50mmHg〜750mmHgにすれば問題が解決される記載されている。また、この文献のものは、インク吐出口の径が30〜150μmであり、従ってインク吐出量が80pL(ピコリットル)以上と推定され、従って、近年の写真調の精緻な画像を必要とする記録装置とはかけ離れたものである。また、停止した記録ヘッドにより移動する記録媒体に記録する構成であるため、インク滴飛翔領域に空気の流れ(風)や渦が発生しにくいものである。このため、引用文献2は、記録ヘッドを往復移動させながらインクを吐出するシリアルタイプのインクジェット記録装置における空気の乱れに起因する課題を対象とする本発明とは技術的課題が若干異なるものである。しかしながら、特許文献2は、環境圧力を減圧して風の発生を防止する点で、本発明にとって示唆的である。
また、特許文献3及び特許文献4には、減圧空間内でインクジェットプリントにより発光装置を作製する技術が開示されている。しかし、これらの文献に記載の技術は、上記の風の影響を低減することではなく、不純物の混入防止並びに噴射した溶液の乾燥の効率化を実現しようとするものである。具体的には、圧力が1Pa乃至50000Pa(0.00001気圧乃至0.5気圧)の減圧空間が使用されている。この減圧空間には、インクジェット記録方法にとって適用可能な圧力雰囲気も含まれている。しかし、吐出液滴の大きさ、インクジェットヘッドの移動速度、吐出口から着弾対象物までのインク滴飛翔距離などの具体的な数値は全く示唆されていない。
本発明者の攻究によれば、インクジェット記録ヘッドと記録媒体との距離が1.5mmで、当該ト記録ヘッドのシリアル移動速度を1m/秒とし、インク吐出量が2pL乃至5pLの液滴を用い、境圧力を変えて種々の検討を行った。その結果、前述した第1乃至第4の課題の全てが、飛翔するインク液滴と飛翔空間に充満している空気によって発生する乱流現象が原因となっていることが判明した。
そこで、本発明者は、上記の空気乱流発生の原因となる因子のうち、空気を取り除く方法及び装置についてさらに攻究した。インクジェット記録方法の実施においては、画像形成に係わるインクは必須であるが、空気は記録動作自体には無くても良いものである。よって、インクジェット記録装置の所定部分から空気を除去して減圧雰囲気にすることは、今後必須なものになると判断された。つまり、インクジェット記録装置の全体を大型の真空装置の中に設置し、真空吸引の後にインクジェット記録動作を行うことで、前述した第1乃至第4の課題の全てを解決することが可能となると判断された。
特開2004−134490号公報 特開平06−182980号公報
しかしながら、前述のような種々の改良提案にもかかわらず、従来例では、真空度を0.01気圧以下に下げると次のような課題があった。
第1の課題として、周囲の気圧を0.01気圧以下に下げると、電子機器の電極間で放電が発生し、記録装置の電気信号のノイズが増大して記録不可能となることがあった。また、インクジェット記録方法の場合、0.7気圧から大気圧の間では、インク滴の着弾方向のズレやインクミストの浮遊の問題を十分に解決することはできなかった。
第2の課題として、真空度を0.01気圧以下に下げると、インク中、インクタンク内部、インク供給流路、あるいはインクジェット記録ヘッド内部に気泡が存在すると、インク中の気泡が発泡することがあった。このような発泡によって、記録ヘッドやインクタンクからインクが漏れ出すという不都合が生じる。このインク漏洩があると、記録装置内部を汚したり、紙などの記録媒体が汚されるなどの不都合が発生する。
第3の課題として、上記のような真空度にして長時間、例えば20分以上にわたって何も記録せずに記録装置を放置しておくと、記録ヘッドの吐出口からインク中の揮発成分(水、アルコール系溶媒など)が蒸発することがあった。このような蒸発のため、吐出口付近のインク濃度が上昇し、良好な記録ができなくなることがある。さらに、それ以上放置しておくと、吐出口付近に染料などの溶剤が析出し、インク滴の吐出方向がズレてしまうという不都合が生じる。
第4の課題として、記録装置の電源のON、OFF、あるいは記録媒体の装填及び取り出しの操作は、真空装置の外部から行うことができず、これらの操作は真空状態を解除して一旦大気圧に戻した後でないと行えないという不便さがあった。
第5の課題として、0.01気圧以下の真空度のもとで長時間にわたって記録を継続すると、インクジェット記録ヘッドの温度が上がり過ぎ、液室内でインク中の水分などの沸騰現象が発生することがあった。このような沸騰現象が発生すると、まともな画像記録が不可能になる。これは、低い圧力の下では、インク中の水などが低い温度でも沸騰してしまうからである。
第6の課題として、表面の凹凸が大きい壁紙などでは、凹部内の谷の深いところまでは飛翔インク滴がなかなか到達しないことがあった。また、全体的に段差の大きい部分では圧力を極端に下げられないため、良好な着弾位置の制御が難しいという課題もあった。
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、記録画像のムラやインク着弾位置のズレが無く、安定した良好な画像を記録することができるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することである。
本発明は、画像情報に基づいて記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。本発明は、記録ヘッドから記録媒体までのインク飛翔距離を2.3mm以下とし、インク飛翔領域を含む環境の圧力を0.6気圧以下とすることを特徴とする。
本発明によれば、記録画像の画像ムラやインク着弾位置のズレを生じることなく、安定した良好な画像を記録することができるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置が提供される。
以下、本発明について具体的に説明する。本発明は、従来技術における前述の課題を攻究し、以下のような知見を得て完成されたものである。
前述の第1の課題、すなわち気圧を0.01気圧以下に下げると電極間で放電が発生するという課題に関しては、真空度を0.02気圧以上にすれば、インクジェット記録ヘッドの電極素子間や端子間でのマイグレーションや放電を無くし得ることが判明した。これによって、信号のノイズの増大に起因して記録不能になるという不都合を解消できることが確認された。また、記録ヘッドによって記録媒体に画像を記録する空間を0.6気圧以下にすれば、空気の粘性抵抗が少なくなり、インク滴の着弾方向のズレを低減することができる。さらに、インクミストとなるサテライト液滴も記録媒体に着弾させることで良好な画像記録が可能となる。
前述の第2の課題、すなわちインク中の発泡によってインクが漏洩するという課題に関しては、インク中の気泡を抜く脱気処理を施した脱気インクを用いることにより、インクの発泡による漏洩を無くし得ることが判明した。また、記録を行う前に、記録ヘッドの記録予備時間を30秒ほど取り、インク中に侵入してしまった空気が膨張して抜け出るのを待つ待機時間を設けることが好適である。さらに、その後に低圧力中で吐出口からのインク吸引処理を行うことにより、インク経路中の気泡含有インクを吸引除去することが効果的である。また、インクタンク側に低気圧環境中へ空気を抜けさせるための通孔を配設することも好適である。
前述の第3の課題、すなわちインク中の揮発成分が蒸発するという課題に関しては、記録ヘッドが記録を行わないときに、記録ヘッドの吐出面をキャップで覆うことで、インク中の揮発成分(水、アルコール系溶媒など)の蒸発を低減又は無くすことができた。また、長期間にわたって記録を行わない場合は、通常のゴム製のキャップに代えて、ゴム製のキャップの周りを金属もしくはプラスチック製のキャップ保持部材で覆った補強キャップを使用することにより揮発成分の蒸発を効果的に抑えることができる。通常のゴム製のキャップには負圧吸引用の吸引孔が設けられているが、上記のキャップ保持部材には吸引孔が設けられていない。従って、この場合は、新規のキャップ及びキャップ保持部材からなる補強キャップを用意することになる。
前述の第4の課題、すなわち真空状態を一旦解除しなければならないという課題に関しては、記録装置の電源スイッチやその他の操作部分、並びに紙などの記録媒体を供給する記録媒体供給部分を、画像記録部分から遮蔽して隔離することで解決した。このような方法により、真空状態を解除することなく各操作を実行することができる。つまり、各室を減圧予圧空間とし、各室を大気圧又は所定の低気圧環境にした後に、記録媒体供給部分(媒体供給室)からの記録媒体を投入する構成にした。また、インク供給パイプで連絡されたインク供給系統も、途中に配設した同様の減圧予圧空間を利用してインクを減圧したりインク中の気泡を脱気して供給するように構成した。このような構成によって、真空状態を一々解除するような煩雑な操作を無くすことができる。
前述の第5の課題は、0.01気圧以下で記録を継続するとインク中の水分などの沸騰現象が発生するという課題である。この課題に関しては、記録ヘッドの温度を低気圧環境の混合溶媒の沸騰点を超えないような温度にするための冷却機構を設けることで解決することができた。この場合、低気圧環境では発泡しやすくなることから、発泡を防ぐために投入電力を低下させた。これに併せて、記録ヘッドの温度上昇を抑制できるという利点も得られた。なお、環境圧力が0.1気圧以下になると、低い温度でも、インクが異常発泡したり、発泡安定度が低下するなどの不都合が発生することがある。しかし、この点に関しては、記録動作の安定性などを考慮して、環境圧力が0.1気圧以下の環境圧力では稼動させないことにした。つまり、圧力系の信号を検知し、検知圧力が0.15気圧以下となると制御コントローラによりインクジェット記録動作を停止させることにした。
前述の第6の課題、すなわち記録媒体の表面の凹凸が大きい場合には良好な着弾位置の制御が難しいという課題に関しては、記録ヘッドの往復移動を利用して、次のような処理操作を行うことにより対処した。凹凸の大きい建材や壁紙、あるいはプリント基板などにおいては、先ず、プリント動作の前に距離センサを用いてスキャンすることにより画像形成部の記録ヘッドからの距離を事前に計測し、この計測データを制御コントローラの内部に蓄積しておく。次に、画像形成の段階で、距離がさほど大きくとなく、吐出エネルギーを上げることで液滴が大きくなっても画質にあまり影響しない範囲の距離であるか否かを判別する。そして、距離がこの範囲内である場合は、その部位の記録動作における吐出エネルギーを増大させて液滴の飛翔速度を上げることにより対処した。このような方法によれば、凹凸の谷の部分にも良好にインク滴を着弾させることが可能となり、良好な画像を形成することができた。一方、距離が上記範囲以外である場合は、記録ヘッドと記録媒体の間の距離を減少させることで対処した。つまり、記録ヘッドもしくは記録媒体を上下に移動させることにより、その間の距離を調整することにした。
前述のような従来の第1〜第6の課題のそれぞれに対して、以上のような対応を採ることにより、それぞれの技術的課題を解決し、低気圧環境下においても高速で良好な画像を記録することが可能になった。
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1は本発明によるインクジェット記録方法の第1の実施形態を実施するインクジェット記録装置の斜視図である。図2は図1のインクジェット記録装置の縦断面図である。図3は図2のインクジェット記録装置の一部を省略して内部構成を示す斜視図である。図4は図3の一部を拡大して示す部分斜視図である。インクジェット記録装置1000は、画像情報に基づいて記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を記録するものである。
図1において、インクジェット記録装置1000は、後述するような複数の室(又は部位)に仕切りされ、これらの室は吸引パイプ85、86、87,88(不図示)を介して吸引装置84に接続されている。すなわち、図示のように、インクジェット記録装置1000には、紙などの記録媒体を積載し供給する媒体供給室80と、インクを貯留し供給するインク供給室83が設けられている。また、記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録するための画像形成機構が配備された画像形成室81も設けられている。さらに、記録された記録媒体を取り出すための出力室82、及び記録装置の記録動作やデータ処理などを行う制御手段が配備されたコントローラ室(不図示)も設けられている。
これらの室はそれぞれの吸引パイプを介して吸引装置84に接続されており、各室の動作状況に応じて吸引装置84により各室内の環境圧力を制御することができる。記録装置には、上記の各室を遮蔽したり開放したりするための遮蔽シャッター90、91、92、93、94、95、96が設けられている。記録装置の状況に応じて、所定の遮蔽シャッターを開閉することにより、室内のものを交換もしくは流通させるときに所定の室内の環境圧力を常圧に戻したり、隣室と同じ負圧にしたりするときに、各室内の環境圧力を切り替えできるように構成されている。
図2において、媒体供給室80の内部には記録媒体60を積載保持するための保持台70が配置されている。記録媒体60は、コントローラの指示により遮蔽シャッター91を開いたときに、搬送ローラ71により、次の画像形成室81へ給送される。画像形成室81では、給送のタイミングに応じて、搬送ベルト72が記録媒体60を受け入れる。搬送ベルト72は、受け入れた記録媒体を記録ヘッド1の下(画像形成部)へ搬送する。本実施形態では、記録ヘッド1に対して、必要に応じて各色のインクが対応するインク供給パイプ20〜25を介して供給される。記録ヘッド1は、画像情報に基づいて、搬送ベルト72により紙送りされる記録媒体60に画像を形成していく。画像記録を終えた記録媒体は、遮蔽シャッター92が開いているときに、搬送ベルト72により次の出力室82へ搬送される。出力室82では搬送されてきた記録媒体を搬送ベルト73で受け入れる。この場合、必要に応じて搬送ベルト73を走行駆動することにより、搬送ベルト73上の記録済みの記録媒体は同じ室内の次の搬送ベルト74上へ搬送される。搬送ベルト74上には、搬送されてくる複数枚の記録媒体を積載することができる。
図3には、インクジェット記録装置1000の各室の筐体及び遮蔽シャッター、インクタンク及びその保持台、並びに真空装置吸引装置84一式を取り除いた状態が示されている。図3において、インクはインク供給室83に配置されたタンク保持台54、55、56に装着された各色のインクタンク500〜525からインクパイプ220〜245を通して供給される。なお、インク供給室83は、必要に応じて複数個設けても良い。インクパイプからのインクは、各色インク用の開閉バルブ40、41、42、43、44、45を経て、供給タイミングを計りながら供給される。各開閉バルブからのインクは、インクパイプ210、211、212、213、214、215を通じて、サブタンク30、31、32、33、34、35へ送給される。その後、記録ヘッド1のインク消費に応じて、サブタンク内のインクが供給パイプ20、21、22、23、24、25を通して記録ヘッド1へ供給される。
なお、インクタンク500〜525及びタンク保持台54〜56はインク供給室83内に配置されている。画像形成室(画像形成部)81には、開閉バルブ40〜45、インクパイプ210〜215、サブタンク30〜35、供給パイプ20〜25及び記録ヘッド1が配設されている。インクパイプ220〜245は、インク供給室83内のインクタンク500〜525と画像形成室81内の開閉バルブ40〜45とを接続するように配置されている。
次に、以上説明した記録動作及びインク供給などの一連のフローにおける制御圧力と記録媒体やインク供給との関係、並びに制御圧力とインクタンクとの関係などについて説明する。大気圧よりも低い環境圧力でインクジェット記録を行う場合は、インクや記録媒体の供給手順並びに記録動作と、圧力の制御フローとを所定の関係に維持する必要がある。これは、記録画像の劣化や、インクの逆流や、異常な空気流による記録媒体の搬送トラブルなどを防ぐためである。そこで、このようなトラブルを避けるために、以下のような制御フローによって、環境圧力の調整、記録動作、インクの供給、並びに記録媒体の搬送などを行うように構成した。
すなわち、遮蔽シャッター90を開いて媒体供給室80内の調整圧力を大気圧にした段階で、保持台70に必要枚数の(例えば数百枚)の記録媒体60を積載する。この場合、媒体供給室80に複数の保持台70を配置し、複数種類の記録媒体(例えば皮革、凹凸壁紙、絨毯マット布など)を積載しても良い。この段階では、画像形成室81との間の遮蔽シャッター91は閉じられている。次いで、遮蔽シャッター90を閉じ、記録装置のコントローラの指示により吸引ポンプ等の吸引装置84により媒体供給室80の圧力を所定の環境圧力(例えば、0.5気圧)まで低下させる。所定圧力に低下させた後、遮蔽シャッター91を開き、搬送ローラ71により1枚の記録媒体を画像形成室81の搬送ベルト72上へ給送する。次いで、搬送ローラ71及び搬送ベルト72により記録媒体を記録ヘッド1と対向する位置へ向けて搬送する。記録媒体60を記録ヘッド1と対向する位置を通して紙送りしながら、画像情報に基づいて記録ヘッド1により該記録媒体に画像を記録していく。
画像記録された記録媒体60は、遮蔽シャッター92が開いていれば、搬送ベルト72により、出力室82内の搬送ベルト73上へ送り込まれる。出力室82内には、搬送ベルト73の他にもう一つの搬送ベルト74が配置されている。つまり、搬送ベルト73上へ送り込まれる記録媒体を停止している搬送ベルト74上へ送り込むことにより、搬送ベルト74上に複数枚の記録済みの記録媒体60を積載保持できるように構成されている。出力室82から記録済みの記録媒体60を取り出す場合は、出力室82の内部圧力が大気圧になった段階で遮蔽シャッター93を開き、搬送ベルト73、74を起動させることにより記録媒体を装置本体外へ排出させることができる。
以上のように、媒体供給室80、画像形成室81及び出力室82の環境圧力をそれぞれ独立に制御(調整)することにより、記録動作や記録媒体供給などの動作状況に応じた圧力履歴を実現させることができる。これにより、適正かつ安定した状態で、記録媒体の供給と、低い環境圧力での円滑な記録動作と、記録された記録媒体の取り出しとを実行することができる。
次に、インクの供給と環境圧力の制御のフローについて説明する。インク供給室83には3つの開閉可能な遮蔽シャッター94、95、96が設けられている。つまり、遮蔽シャッター94を開けることにより、内部に配置されるインクタンク500〜505を交換することができる。また、遮蔽シャッター95を開けることにより、内部に配置されるインクタンク510〜515を交換することができる。さらに、遮蔽シャッター96を開けることにより、内部に配置されるインクタンク520〜525を交換することができる。インクタンク500は主に使用する黒(Black)のインクタンクである。インクタンク501〜505は、黄色(イエロー)、マゼンダ、シアン、赤、フォトマゼンダ(淡マゼンダ)、フォトシアン(淡シアン)のインクタンクである。
本実施形態では、インクタンク510〜515並びにインクタンク520〜525も、インクタンク500〜505と同じ色の配置である。また、本実施形態では、インク供給室83は、上記インクタンクのグループ分けに応じて3つの部屋831、832、833に独立に仕切られている。しかし、これは、1つの部屋でも良く、あるいはそれ以上の数の独立した部屋に仕切っても良い。また、インクの種類も、上記に限定されることなく、任意に複数種類のインクを使用しても良い。
インクタンク500〜525は、それぞれに対応する着脱式のタンク保持台54、55、56に着脱自在に装着されている。また、画像形成室81には、各インクタンクからのインクが供給されるインク貯留部としてのサブタンク30〜35が配置されている。インク供給室83の部屋(例えば3個の部屋831、832、833)が画像形成室81と異なる環境圧力である場合は、対応するインクタンクに接続された開閉バルブ40〜45は閉じられている。このように開閉バルブを閉じることにより、インク供給室83内のインクタンクから画像形成室81内部のサブタンク30〜35や記録ヘッド1へインクを供給する際の異常供給の発生を防いでいる。また、開閉バルブ40〜45は、インク供給室83の環境圧力が所定気圧(画像形成室81と同一気圧)になった段階で開放状態となるのではない。開閉バルブ40〜45は、画像形成室81内部のサブタンク30〜35でインクが必要であるという信号がコントローラ部へ送信された場合に、必要なインク供給路を連通させるために必要なものが開放されるように構成されている。
従って、開閉バルブの動作フローは次のようになる。すなわち、インクタンクが交換された後、吸引装置(吸引ポンプ等)84の動作によってインク供給室83の圧力を大気圧から徐々に所定の環境圧力へ下げていく。この場合の吸引装置の動作は、例えば吸引ポンプ内の所定経路の開閉弁を開いて吸引を開始する動作となる。画像形成室の気圧が設定圧力と同等になり、かつ必要とされるサブタンクへのインク供給信号がコントローラに送信された段階で、開閉バルブ40〜45のうちの対応するバルブが開放される。これによって、所定のインクパイプを通して所定のサブタンクへインクが供給される。こうして、常時、記録ヘッド1が必要とするインクをサブタンクから供給することが可能となる。
本実施形態では、インクタンク500〜525を着脱自在とし、インクタンクを交換することによりインク供給室83へインクを補充するように構成されている。この理由は、補充するインクの種類を取り違える誤作業を防止するとともに、インク補充の際の空気や異物の混入を防止するためである。すなわち、インクは液体であるので、インクタンクではなく、ビンやボトルや缶などで、中身のインクのみを流し込む方式で供給することが可能である。しかし、流し込む方式では、供給する際に間違って異なる色や種類のインクを流し込むという誤作業を生じる可能性がある。また、流し込む方式では、インクを供給するときに空気や異物が混入する可能性がある。そのために、本実施形態では、インクタンク交換方式とし、インクタンクの誤装着防止手段が設けられている。この誤装着防止手段としては、例えば、インクタンクの形状による誤装着防止手段や、電気的な処置(電気信号接点識別や、ICタグなどによる処置)による誤装着防止手段を採用することができる。
インクタンク500〜525としては、内部にインクを充填した可撓性フィルム袋などを装填する構成とすることで、インク内への空気の混入防止と溶媒や溶剤の蒸発防止を図ったものを使用することが好ましい。その理由は次の通りである。すなわち、前述のようなインクを流し込んで補充する方式では、間違って流し込んだ場合、少しでも異種のインクが入ると、相互拡散によりインクパイプ等のインク供給路にインクが侵入することになる。このため、開閉バルブ40〜45までのインクパイプを洗浄することが必要になる。このような洗浄作業は、記録装置全体の動作を停止して行う必要があり、非常に非効率となる。インクタンク500〜525の上記のような構造は、このような非効率な作業を防止するために有効であるからである。また、インクとしては、空気などを含まない脱気インクを用いることが望ましい。
図4には、画像形成室81の内部におけるインク貯留部であるサブタンク30〜35と記録ヘッド(インクジェットヘッド)1の周辺部が示されている。図4において、制御コントローラから信号線(不図示)を経由して記録ヘッド1へ記録指令信号及び画像情報(画像データ)が送致されると、記録ヘッド1は記録動作を行う。この記録動作は、駆動モータ(不図示)によりタイミングベルトを介して記録ヘッド1をガイドシャフト700に沿って往復移動させながら、画像情報に基づいて記録ヘッド1から記録媒体へインクを吐出することにより行われる。記録ヘッド1は、各色のインクで記録するための複数のヘッド機構(ヘッド要素)100、101、102、103、104、105により構成されている。各ヘッド機構に対しては、対応するサブタンク30〜35のそれぞれから供給パイプ20、21、22、23、24、25を経由して、各色のインクがインク消費量に応じて供給される。
各色インクのインク貯留部としてのサブタンク30〜35から各色のヘッド機構へのインク供給はインクの毛細管力を利用して行われる。そして、記録ヘッド1の各吐出口列を構成する吐出口の大きさは直径で10μm〜20μm程度である。そして、途中の経路の直径がこれより大きく選定されており、インクは随時供給される。たとえ、環境圧力が低くなっても、毛細菅の内部への液体の浸透力は0.01気圧程度であり、大気圧の状態における浸透力とあまり変わらない。
以上のような記録装置を用いて、各種の記録動作試験を行った。その具体例を以下に説明する。前述のような構成及び動作フローを有する記録装置100を用いて検討を行った。まず、記録媒体として透明光沢フィルムを使用し、これに向けてインクを吐出したときのドットを検証することにより、位置ずれのレベルを計測した。
その方法は以下のとおりである。記録ヘッド1の移動速度を1m/秒、記録ヘッドと記録媒体の距離(インクの飛翔距離)を1.5mmとし、256の吐出口から体積が3pL(ピコリットル)の液滴及びそのサテライトを周波数24KHzで吐出した。このようなインク吐出を、環境圧力を変えて、1000回ずつ行った。そして、異なる環境圧力のもとで記録の実験を行い、記録画像の状態を計測した。この計測は、高速度ビデオカメラにて、透明光沢フィルムの裏側(底面)と側面と正面から強力なフラッシュライトを200KHzで照射しながら、毎秒10万コマの速度で0.05秒間撮影して記録保存した。
その後に、透明光沢フィルムを除去し、当該ビデオカメラで記録保存した。次に、画像処理ソフトを用いて、1000回目の吐出の状況に相当する画像データより着弾したインクの画像データを差し引き、正面及び側面からの撮影のデータを含めて画像処理した。このような方法により、各環境圧力で1000回インク吐出を行ったときのインクジェット液滴のサテライトを含めたインクの飛翔状況を、XYZの空間位置として把握することができる。つまり、そのデータから、圧力の変化に伴うインクの飛翔状況の影響や着弾状況を確認することができる。
図5は、環境圧力が0.5気圧の場合の吐出口からのインク飛翔状態を真下から(透明記録媒体の裏面から)見て模擬図示化した説明図である。図5の(a)は吐出口列を構成する複数の吐出口からのインクの飛翔状況及び着弾状況を示し、図5の(b)は図5の(a)中のb部分を拡大して示す図である。図5において、液滴を吐出する吐出口の間隔は85μmであり、0.5気圧の場合の真下から見た底面撮像カメラの画像処理データを模擬図示化すると図5の(a)のようになる。その中で、さらに吐出口列の左端部分を画像データとして拡大し模擬図示化すると、図5の(b)のようになる。これらの図では、黒い部分が、インク液滴により光が乱反射されて撮像カメラに映し出された飛翔中のインク液滴部分である。つまり、飛翔中のインク液滴部分は、反転画像処理により黒く表示されている。これにより、飛翔中のインク粒子の乱れを数値的に把握することができる。
図5の(b)中のAは、1つの吐出口から発生した主滴とサテライトの空気抵抗による横方向(記録ヘッド移動方向)のズレ値である。図5の(b)中のBは、1つの吐出口から発生した主滴とサテライトの空気抵抗による縦方向(記録媒体搬送方向)のズレ値である。図9は、測定された画像を拡大して、これらの横方向ズレ値(横散乱幅)と縦方向ズレ値(縦散乱幅)の最大と判断される値を求め、これらの値を各環境圧力に対して示す表である。図9の表によると、環境圧力が大気圧から0.7気圧までの間では、横方向ズレ値A及び縦方向ズレ値Bともかなり大きく、環境圧力が0.6気圧以下の低い気圧になると横方向ズレ値A及び縦方向ズレ値Bとも急激に小さくなることが判明した。
図6は、真上から見た画像データを横から見た画像データに変換し、各環境気圧における吐出口から記録媒体へ至るインク飛翔状態を示す模擬図である。図6を用いて、0.6気圧以下の低い環境気圧で横方向及び縦方向のズレ値A及びBが急激に小さくなる理由を説明する。図6において、図中のCは吐出される液滴の飛翔距離であり、Eは液滴が吐出される記録ヘッド1の吐出面であり、Fは吐出された液滴が着弾する記録媒体のフィルム面である。図6中の黒く表現されている部分が飛翔中の液滴の部分である。図6によれば、吐出された液滴(インク)の飛翔形態が環境気圧により変化することが明らかである。これは、環境圧力が0.7気圧より高い範囲では、空気の抵抗により乱流渦が発生し、インク液滴を巻き上げて散乱させていることを意味する。一方、0.6気圧以下では、そのような現象は発生していない。つまり、環境圧力が低いために空気の濃度が希薄となり、空気抵抗が減少してインクジェットによる乱流渦の発生が無くなるためである。
以上の検証から、環境圧力が0.6気圧以下であれば、インクジェットの散乱を発生させずに良好な画像記録を実現できることが明らかである。しかし、環境圧力を低くする場合、0.1気圧までは良好な画像記録が可能であるが、0.1気圧を下回ると記録ヘッド1内のインクが発泡しやすくなり、安定したインク吐出を行うことが困難又は不可能になる。また、高速で大量にインクジェット記録を行うためには、記録媒体におけるインクの浸透速度を高める必要がある。しかし、通常の画像記録では、浸透速度に限界があり、高速記録を行うことは困難である。一方、記録環境が低気圧であれば、記録ヘッドのインクの蒸発量を通常の大気圧環境よりも増大させることができる。このため、記録速度を上げることが容易となる。
しかしながら、実測してみると、それほどのインクの蒸発量とはならないことが確認された。これは、例え周囲の環境圧力を低下させても、インク中の水分の蒸気圧は温度により一定であり、そのため周囲の空気の分量が減った分だけ分圧として蒸気圧が上がり、蒸発量の増加が僅かであるためである。ただし、記録媒体のみの温度を室温よりも摂氏20乃至30度程度上げることで、低気圧下での水分の蒸発量が急速に上昇することが判明した。
そこで、記録媒体の温度を制御する温度制御部660(図4)を該記録媒体の下に配置し、画像形成される部分のみの温度を摂氏40度乃至50度程度に保持して記録を行った。その結果、周囲の環境圧力を0.3〜0.6気圧の範囲に維持した場合でも、インクの蒸発速度を約10倍〜20倍程度に高めることができた。これにより、異なるインクの混ざり合いによる混色現象として知られるブリード現象を回避することができ、高速で高画質の画像を記録できるようになった。つまり、低気圧下での高速記録が可能になった。しかし、記録ヘッド1の温度が摂氏20度乃至摂氏30度より高くなると該記録ヘッド内のインクの発泡安定性が低下するので、記録ヘッド1の温度が極力上昇しないような構成にすることが好ましい。また、記録ヘッド1のみを冷却する冷却機構(例えば、冷却媒体を還流させるなどの機構)を配設することも好ましい。
以上説明した実施形態は、画像情報に基づいて記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法に係わるものである。この実施形態では、記録ヘッド1から記録媒体までのインク飛翔距離を2.3mm以下とし、インク飛翔領域を含む環境の圧力を0.6気圧以下とするように構成される。かかる構成により、画像のムラやインク着弾位置のズレを生じることなく、安定した良好な画像を記録することが可能となる。また、記録ヘッドは記録媒体の搬送方向と交差する方向に往復移動することにより該記録媒体に画像を記録するシリアルタイプのインクジェット記録方法が採用されている。
また、遮蔽シャッター91、92を閉じることにより、環境圧力を0.6気圧以下にするインク飛翔領域を含む空間を画像形成部(画像形成室)81のみに限定できるように構成されている。なお、記録装置全体を密閉可能な閉鎖機構を設けことにより、環境圧力を0.6気圧以下にするインク飛翔領域を含む空間を記録装置全体にする構成としても良い。そして、本実施形態においては、0.6気圧以下の環境を形成するために、記録動作のときに記録ヘッド1及び記録媒体が周囲から遮断された同一の空間である画像形成室81に配置されるように構成されている。また、記録媒体の装填及び取り出しのとき、該記録媒体が装填される空間である媒体供給室80を大気圧に復帰させることにより、記録媒体の補充や交換を円滑に実施できるように構成されている。
また、記録ヘッド用のインク格納部であるインクタンク500〜525が配置されるインク供給室83は、記録動作のときに0.6気圧以下の空間になるように制御される。これにより、記録動作時におけるサブタンク30〜35や記録ヘッド1の内部への空気の侵入を極力抑えることができる。
さらに、インクタンクから記録ヘッドの各ヘッド機構100〜105へ至るインク供給路の途中に圧力遮蔽手段又は圧力緩衝手段としての開閉バルブ40〜45が設けられている。これにより、記録ヘッド用のインクが大気圧の環境から供給される場合でも、記録動作時におけるサブタンク30〜35や各ヘッド機構100〜105の内部への空気の侵入を極力抑えることができる。
また、0.6気圧以下の環境圧力のもとでインクジェット記録を行うことから、低気圧のためにインク中に気泡が発生しやすい場合は、記録ヘッド用のインクは気泡を除去された脱気インク、もしくは供給途中で気体を除去される脱気インクであることが好ましい。また、記録装置内を大気圧から減圧する際は、記録ヘッド内及びインク供給路内空気がインクよりも先に排出するように構成することが好ましい。
また、インク飛翔距離を2.3mm以下とし、インク飛翔領域の環境圧力を0.6気圧以下とすることから、高画質の画像記録を実現するために、吐出されるインク滴を極力微細にすることが好ましい。例えば、微細な吐出口から、インクの体積が0.5pL乃至8pLの微細なインク滴を吐出させて画像記録することが好ましい。
さらに、記録ヘッドと記録媒体との距離を記録動作の前に計測し、この計測結果に応じて、インク吐出のための投入エネルギー、インク吐出速度、もしくは該記録ヘッドと該記録媒体の距離を制御可能にすることが好ましい。また、記録ヘッドと記録媒体の距離が2.3mmを超えた場合は、この距離が2.3mm以下となるように調整して記録することが好ましい。
また、インクは0.6気圧以下の環境圧力のもとでは大気圧の場合より蒸発しやすくなることから、記録ヘッド内のインクの蒸発や気泡発生を抑制するために、記録ヘッドの温度上昇を抑制する手段を設けることが好ましい。
さらに、0.6気圧以下の環境圧力のもとでは、記録媒体に着弾したドットインクの滲みが生じやすいことから、これを抑制するために、記録媒体の温度を制御する(例えば、温度を上昇させるなどの)温度制御部を設けることが好ましい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態に係るインクジェット記録方法を用いて、カスタムメイドの厚さ0.1mmのスルーホールのある両面フレキシブル電気回路基盤を作成するときの検証結果に基づくものである。本実施形態では、ポリイミドフィルムの上に、無電解ニッケル用の析出種液をインクジェット記録方法でプリントして作成する場合を検討した。プリントされる電気基盤は、各回路線間には0.3mmの隙間距離(間隔)が設けられ、途中にスルーホールが設けられた未裁断のフレキシブル基盤フィルムである。そこで、前述の第1の実施形態で示した記録装置(プリント装置)1000のインクタンク500に無電解ニッケル用の析出種溶液を投入し、その他のインクは搭載せずにインクジェットプリントを行った。
まず、脱気した無電解ニッケル用析出種溶液を使用し、これを記録ヘッドに供給するとともに環境気圧を変化させながら吐出口から吐出させてインクジェットプリントを行った。次に、大気圧へ戻してプリント物(記録媒体)が乾燥していることを確認した後、これを裏返し、裏面に対しても環境気圧を変化させながら同様のインクジェットプリントを行った。そして、再び大気圧に戻した後に、プリント物を無電解ニッケル溶液に摂氏35度の温度で30分間浸漬した。次いで、プリント物に対し、電解ニッケルを電流密度10A/m2 という非常に弱い電流密度で電気メッキを施し、その上に厚さ15μmの電解銅メッキを施した。
以上の処理を行った電気回路基盤について、電極に1000Vを印加した状態で該電極のリーク電流を計測した。その結果、0.7気圧〜1.0気圧の環境で作成したフレキシブル基盤においては、その全数で、リーク電流はほとんど導通という形で発生した。また、0.6気圧で作製したものでは、120本のうちの2本の電極で0.00001mA以上のリーク電流が発生していた。また、0.5気圧で作製したものでは、120本全ての電極でリーク電流が0.0000001mA以下であった。さらに、0.4〜0.1気圧で作製したものでは、全ての電極でリーク電流が0.5気圧の場合と同等であった。これは空気中のリーク電流のためであると推測される。
次に、上記のフレキシブル電気回路基盤の上に、アラミック接着剤を塗布した厚さ35μmのポリイミドフィルムを、摂氏150度にて両面からプレス接着した。こうして、本実施形態に係るフレキシブル回路基盤を完成させた。このフレキシブル回路基盤に6Vで10Hz〜20MHzの信号を流してそのインピーダンスを計測した。このときの導通計測は、スルーホールを必ず経由する計測で行った。その結果、0.5気圧以下の環境気圧のもとで作製したものでは、全てが良好な導通を示した。そして、一般のカメラやビデオカメラで使用するのに好適なレベルのフレキシブル回路基盤であることが確認された。次に、このフレキシブル回路基盤に対しても1000Vの電圧を印加して前述と同様のリーク試験を行った。その結果は、0.5気圧以下の環境圧力で作成したものはすべて良好であった。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態においては、第1の実施形態に係るインクジェット記録方法において、表面に0.8mmの最大凹凸段差があるプラスチック製発泡型壁材(建材)を記録媒体として使用し、これにインクジェット記録する実験を行った。記録ヘッドから記録媒体へのインク飛翔距離(紙間距離)、及び記録媒体に対する記録ヘッドの移動速度(主走査速度)は、前述の第1の実施形態の場合と同様の条件とし、同様の構成の記録装置1000を使用した。プラスチック製発泡型壁材は、上記のように凹凸が激しいため、一般的にはインクジェット記録が困難である。その理由は、記録動作機構の平行移動精度やガタツキを考慮すると、上記紙間距離を1.5mm以下に小さくすることが難しいためである。
この場合、記録媒体表面の最大段差が0.8mmであることは、記録ヘッドから記録媒体までの最大距離(最大紙間距離)が2.3mm(1.5mm+0.8mm)に達することになる。このような状況では、良好にインクジェット記録することが困難である。さらには、記録ヘッドの移動により、記録媒体の凹凸段差の深いところに(紙間距離が大きくなる凹部)に、凹凸段差の小さい部分(凸部)から空気が流れ込み、この流れ込みによる空気流が発生する。このため、インク滴を直線的に飛翔させて良好な画像を形成しようとしても、これを安定して行うことは困難である。さらには、インク滴が谷底の部分には到達できなくなるばかりか、到達しても所定位置と異なる位置に着弾するため、形成される画像に乱れが発生しやすくなる。
その理由は、インクジェット記録では、異なる色のインクが同時に画像形成することがないからである。すなわち、例えば、シアン色を吐出した後に僅かに遅れてマゼンダ色を吐出し、その次に僅かに遅れてイエロー色を吐出プリントし、さらに、必要ならこれに続いて他の色を吐出することになる。このため、インク滴のジェント(吐出飛翔)や記録ヘッドの移動に伴って空気の異常流れが発生し、同じ位置にもしくは人間の視覚許容範囲内にインク滴が着弾されないことがある。これにより、記録画像がぼやけたり、異色な画像や文様となったり、画像ムラが発生することがあるからである。さらには、インク液滴は飛翔速度の2乗で増大する空気抵抗を受ける。このため、飛翔距離が2.3mmにも遠くなると着弾時の速度が遅くなり、所定の位置に到達できなくなるばかりか、横方向の空気流の影響が大きくなり、正規の位置に着弾できなくなる可能性もある。
そこで、本実施形態においても、上記の発泡型建材用壁材に対するプリントを、前述と同様に環境圧力(環境気圧)を変化させて行った。その結果、第1の実施形態の場合と同様、空気の抵抗が大きい0.7気圧以上の環境圧力のもとではカラー画像に乱れが発生した。特に、凹凸表面の斜面(山と谷の稜線)付近では色調が異なったり、画像が薄くなったりする現象が発生した。また、谷底の部分では、画像がプリントされる場合でも、形成された画像がかなり歪んだものとなったり、非常に濃い画像となったり、さらには、部分スポット的にプリントされない個所が発生するなどの不都合が発生した。
しかし、0.6気圧の環境圧力のもとでプリントしたものは、このような不都合発生の傾向が薄らいできた。さらに、0.5気圧以下の環境圧力のもとではこのような不都合が解消され、良好なプリント画像が得られた。0.4気圧のもとでは、さらなる画質向上が認められる画像や文様を形成することができた。したがって、最大の凹凸段差が0.8mm以下の皮革素材、布地、あるいは画材用カンバスなどに対しては、0.6気圧以下の環境圧力のもとでは、さらに良好な画像をプリント(記録)することが可能である。
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1000では、記録ヘッドと記録媒体の間の距離(隙間)を計測するためのセンサを記録ヘッド(又は記録ヘッドを搭載したキャリッジ)に設けた。このセンサは、別途スキャン機構も設けてこれに配置しても良い。そして、インクジェットプリントの前に、記録ヘッドと記録媒体の間の距離(インク滴の飛翔距離)を記録媒体に沿って計測することにした。計測した距離データを記憶し、記憶した距離データを制御コントローラへ送信した。そして、事前にこの画像データとインクジェットプリントする画像の演算処理をプリント装置(記録装置)の画像ドライバーによって行った。この演算により、飛翔距離と飛翔による揺らぎや着弾ズレとを計算した。この計算結果に基づいて、これらを補正するための投入エネルギーを演算したプリントスキームを作成するようにした。これにより、記録媒体表面の凹凸が激しい場合でも、良好な画像をプリントすることが可能となる。
それでも、インクの飛翔距離が2.3mmを超える場合は、上記の手法によっても、良好な画像をプリントすることが困難もしくは不可能である。そのような場合は、記録ヘッド1を上下に移動させるための駆動装置を設けて対応することにした。これに代えて、あるいは同時に、記録媒体を搬送するための搬送ベルト72を上下に移動させるための駆動装置を設けても良い。これにより、例え飛翔距離が2.3mmを超えていても、その部分に記録するときにその部分の飛翔距離を2.3mm以下となるように調整することができ、良好なプリントを実現できる。なお、インクの飛翔距離の基本的な値は1.5mmであるので、記録媒体の表面の凹凸段差が1.5mmよりも深い場合には、事実上、その谷の部分にはプリントできないことになる。なお、この基本的なインク飛翔距離を2mmとか3mmとかに設定しておけば、インク吐出のための投入エネルギーなどの制御も含めて、上記よりもう少し深い凹凸段差がある場合でも良好な記録が可能となる。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。まず、本実施形態で解決しようとする技術的課題について説明する。前述の各実施形態のような画像記録を行った後、例えば一晩位、記録ヘッドの吐出口を通常のゴムキャップでキャッピングし、環境気圧を0.2気圧にした状態で記録装置を待機状態にしておいた。ところが、次の日に画像記録してみると、かすれた画像しか記録することができないという課題が発生した。この傾向は、特に顔料インクを用いる場合が顕著であり、インク中の顔料濃度の低下に伴って、記録画像がかすれるという不都合が発生する傾向は弱まっていった。そこで、画像形成室81(図2)内を大気圧に戻して記録ヘッド1を取り出し、該記録ヘッドを構成する各ヘッド機構100〜105のインク吐出部(先端部)を顕微鏡により詳しく観察した。その結果、吐出面に形成された吐出口に顔料インクの顔料成分が固着し、吐出口がこびりついた顔料成分によって塞がれていることが判明した。
インクジェット記録装置においては、記録ヘッド1の各ヘッド機構100〜105の吐出口を保護するために吐出面に密着されるゴムキャップは、通常、ブタジエンゴムやニトリルゴムや高密度シリコンゴムなどで製作されている。従って、上記の吐出口がこびりついた顔料成分によって塞がれる原因は、画像形成室(プリント室)81を0.2気圧という低い気圧にしていたために、吐出口を密閉していたゴムキャップを通じてインク中の溶媒成分が蒸発飛散した結果である。つまり、キャップを形成するゴム中の分子隙間を通じて溶媒(水、イソプロピルアルコール、エチルアルコールなど)が異常に蒸発したためである。
そこで、本実施形態(第4の実施形態)では、第1の実施形態に係るインクジェット記録方法において、停止状態や長期待機状態における溶媒の蒸発遮断性を向上させたキャップを有するキャッピング機構を設けた。これは、記録ヘッドの吐出面との密着性や変形容易性を考慮してなされたものである。図7は、第4の実施形態におけるキャッピング機構のキャップを示す図であり、(a)はキャップの斜視図であり、(b)は(a)中の線D−D´に沿った断面図である。図7において、本実施形態に係るキャッピング機構では、吸引回復や大気連通のための吸引パイプなどを接続することなく、完全に密閉構造としたキャップ901を使用した。このキャップ901は、図7の(b)に示すように、ゴム製キャップ902の中に厚さ1μm程度の金属膜903の蒸着層を挟み込んで多層に重ねて一体化したものである。
図7において、ブタジエンゴムを図示のキャップ形状に金型により熱コンプレッション成形し、その表面に真空蒸着にて薄い金属蒸着層を形成する。次いで、その表面に厚さ1μm程度の無電解ニッケルメッキを施す。そして、その表面に液状ゴムをスプレー塗布して50μm程度の薄いゴム層を形成し、この液状のゴム層を加硫処理等により熱硬化させる。また、金属層の蒸着とメッキ、並びにゴムの塗布と熱硬化を2〜4回繰り返すことにより、中間に金属遮断層を有するキャップ901を製作する。このようなキャップで吐出口をキャッピングすることで、従来よりもはるかに蒸発遮断性を向上させることができる。発明者らは、大気圧よりも低い環境圧力(例えば0.6気圧以下)の下で記録動作を停止したり待機する場合に、上記の金属微膜層を有する保護キャップ901により記録ヘッドのインク吐出部を覆う方法により検証した。この検証では、0.1気圧の環境のもとで1週間にわたって待機状態に放置しても、吐出口に目詰まりを生じさせないキャッピング手段が得られた。
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、第1の実施形態に係るインクジェット記録方法において、記録ヘッド1の移動速度を変えて画像を記録してみた。これは、ポスターなどの大判印刷、あるいはA3版やA2版などの大型写真プリントにおいては高速記録が要求されることから、高速記録について検証するためであった。高速記録においては、記録画像の画質が非常に微妙であり、濃度ムラやゆらぎなどの不都合が発生する場合が多くなる。特に、一流のプロカメラマンや写真家にとっては、人の肌、夕日や青空など、均一な画像でありながら、微妙にグラディーエーションのかかったムラの無い画像記録が要請される。しかし、大気圧の環境で記録する従来技術では、記録ヘッドの高速移動やインク滴の高速飛翔に対する空気の抵抗が大きいため、記録速度を十分に高めることはできなかった。
そこで、本実施形態では、環境気圧を0.3気圧まで低下させることにより、記録ヘッド1の移動速度を10倍程度まで高めることが可能となった。この理由は、0.3気圧まで下げると空気の抵抗が非常に小さくなることから、吐出されるインク滴を直線的に飛翔させることができ、安定した画像記録を実現できるからである。検証の結果、0.6気圧の環境では、記録ヘッドの移動速度を約1.6倍から約2.0倍程度にしても、濃度ムラのない均一な画像を確保することができた。また、0.5気圧の環境では、記録速度を約4倍にしても画像の乱れがなく、良好な濃度ムラのない画像を記録できた。さらに、0.4気圧では記録速度を約5〜6倍程度にしても、0.3気圧では記録速度を約10倍にしても、画像の乱れがなく、良好な濃度ムラのない画像を記録できた。つまり、10m/秒の記録速度でも、目視による認識では画像の乱れは無く、良好な濃度ムラの無い画像を記録することが可能となった。
なお、それ以上の記録速度では、記録ヘッド1へ画像転送を行うドライバーの画像処理能力が追いつかなくなり、安定した記録が不可能であった。本実施形態では、記録速度をそれ以上まで高めたい場合には、記録ヘッドの数を増やして見かけ上の画像転送速度を高めることで対応できることが判明した。つまり、見かけ上の画像転送速度を高めても記録画像の安定性を確認することができれば、上記以上の記録速度で画像を記録することも可能であった。特に、大判のプリンタでは、1台の装置価格が高価であるので、投資回収性の上からも画像記録の生産速度を高めることを要請されるため、見かけ上の画像転送速度を高めることも考慮に値する重要事項である。
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、第1の実施形態に係るインクジェット記録方法において、記録媒体の横方向に対して斜め方向にシリアル移動する2個の記録ヘッドを用いて画像を記録するものである。図8は、第6の実施形態を適用したインクジェット記録装置の要部構成を示す斜視図である。図8において、図示のように斜め方向に移動する記録ヘッド1A又は1Bを用いて画像を記録することの利点は、画像に濃淡のムラやスジが生じる場合、斜め方向のつながりは人目に認識しづらいために、より微妙な画質で記録するのに有効である点にある。つまり、人間の目は、画像の濃淡のムラやスジを見たとき、ムラやスジが横方向や縦方向に繋がる場合は非常に顕著に認識できるが、斜め方向の繋がる場合は認識しづらいという性質がある。このため、記録媒体を斜め方向にスキャンしながら記録することにより、ムラやスジが目立たない画像を形成することができ、微妙な画質で記録する場合に有効である。
そこで、本実施形態では、図8に示すように、記録媒体の幅方向に対して斜め方向にシリアル移動する2個の記録ヘッド1A、1Bを用いて画像を記録するように構成されている。そして、2個の記録ヘッド1A、1Bは、記録媒体の幅方向に対して、+30度乃至+60度の方向に移動する記録ヘッドと−30度乃至−60度の方向に移動するようにガイドシャフト701、702に沿って移動可能に案内支持されている。これらの記録ヘッドに対しては、供給パイプ20A、20Bを通してインクが供給される。このように、2個の記録ヘッド1A、1Bを用いて、相互に+30度〜+60度の斜め方向、あるいは−30度〜−60度の斜め方向にシリアル移動させることは、特に高速記録にとって有効である。つまり、相互に斜め方向にスキャンすることで、お互いの濃度ムラやスジが目立たなくなるように補完することができ、微妙な画質で高速記録する場合でも人間の目にとって均一で安定した良好な画質で記録することができる。
本実施形態では、図8に示すような記録方法により、0.3気圧の環境で10m/秒の記録速度で画像記録を行った。これにより得られた画像は、0.6気圧の環境で記録ヘッドを横方向に1.6倍〜2.0倍の速度で移動させて記録した画像に劣らないような優れた画質で記録することができた。従来技術では、横方向に移動する記録ヘッドから体積0.5pLの少量のインク吐出で記録する場合に、空気の気流による画像の濃淡乱れを発生していた。本実施形態の記録方法は、このような場合に非常に有効であることが確認された。すなわち、本実施形態のような相互に斜めスキャンする記録方法を採ることにより、0.3気圧の環境で10m/秒の記録速度で0.5pLのインク吐出量で記録する場合でも、良好な画質で高速記録を行うことができた。0.5pLという画像記録においては、記録ヘッドと記録媒体の距離を短くするか、記録速度をかなり遅くするかの選択を迫られる。本実施形態の記録方法によれば、0.6気圧以下の環境で、1.5mmの距離(紙間距離)で、1.6m/秒程度の高速記録により、良好な画像記録を実現できることが確認された。
以上説明した各実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。
各実施形態は、画像情報に基づいて記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に係るものである。そして、記録ヘッドから記録媒体までのインク飛翔距離を2.3mm以下とし、インク飛翔領域を含む環境の圧力を0.6気圧以下とした。これにより、記録画像の画像のムラやインク着弾位置のズレを生じることなく安定した良好な画像を記録することができるインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置が提供される。
また、画像形成室81を大気圧よりも低い環境圧力にすることにより、飛翔インク滴の着弾位置ズレが少ない画像記録が可能となる。この着弾位置ズレは、環境圧力を0.6気圧以下、より好ましくは0.5気圧以下、さらに好ましくは0.4気圧以下とすることにより無くすことができる。これにより、画像ムラや濃淡ムラのない良好な画像記録が可能となる。また、使用するインクを脱気インクとすることで、連続して安定した良好な記録画像が得られる。
さらに、0.6気圧以下の環境圧力の下限を0.1気圧に抑え、0.1気圧以上とすることにより、記録ヘッド内のインクの自己発泡による異常な画像記録(異常なプリント)を防止することができる。
また、記録ヘッドからの熱の散逸を高めることで、低い環境圧力においても長期にわたって安定した連続画像記録を継続することが可能である。
また、画像形成室81、媒体供給室80及び出力室82のそれぞれを遮蔽シャッターで遮蔽するとともに、各遮蔽シャッターの開閉を順次制御することにより、良好な画像記録を効率よく実行することができる。つまり、連続記録で安定した良好な画像を記録することができ、記録済みの記録媒体を装置を停止することなく取り出すことができる。
また、インク供給室83に複数種類のインク又は複数色のインクを格納した複数のインクタンクを着脱可能に装着するので、複数種類の画像記録が可能である。
また、インク供給室83から画像形成室81へ至る各インク供給路の中間に開閉バルブ40〜45を設け、該開閉バルブを環境圧力の変化と連動させて制御するので、記録動作の途中でもインクの供給及びインクタンクの交換を安全かつ円滑に行うことができる。つまり、記録ヘッド用のインクが大気圧の環境から供給される場合に、その供給路の途中に設けた開閉バルブ40〜45を圧力遮蔽手段又は圧力緩衝手段として機能させることができる。
また、大気圧よりも低い環境圧力の下で記録動作を停止したり待機する場合に、金属微膜層を有する保護キャップにより記録ヘッドのインク吐出部を覆う構成とした。このため、低い環境圧力のもとで長時間にわたって停止又は待機させる場合でも、インク中の溶媒の蒸発を遮断することができ、記録ヘッドの吐出口の目詰まりを防止することができる。特に、顔料インクを用いる低気圧インクジェット記録においても、安定した稼動、停止及び待機を行うことができ、再度の画像記録を容易に開始することができる。
また、記録ヘッドから記録媒体までのインク飛翔距離を2.3mm以下とし、インク飛翔領域を含む環境の圧力を0.6気圧以下とするので、記録媒体の表面に凹凸状の段差がある場合でも、良好な画像記録を行うことができる。
また、0.6気圧以下の環境圧力とするので、記録速度を上げても良好な画像記録が可能であり、画像記録の生産速度を上げることが可能である。
また、インクジェット記録で電気回路基盤を作成する場合でも、溶液の着弾位置ズレが少ないので、電極間の信号リークなどの問題を引き起こすことのない電気回路基盤を作成することができる。
また、媒体供給室80に複数の記録媒体を保持するので、環境圧力を大気圧に戻して記録媒体を差し替えるなどの手間をかけることなく、各種の記録媒体を連続して円滑に給送することができる。
さらに、0.6気圧以下の低い圧力の環境で記録媒体の温度のみを上昇させることにより、インク中の水分の蒸発速度を大気圧中の10倍〜20倍以上にも高めることができる。これにより、記録媒体におけるインクの混ざり合いに起因するブリード現象などを低減することができ、良好な高速プリントが可能となる。
さらには、記録媒体に対して約+30度〜−60度の範囲で記録ヘッドを斜め方向に移動させて画像を記録するので、高速記録を行っても、人間の視覚に濃度ムラやスジムラが目立たない高画質の画像を記録することが可能になる。
以上の説明から明らかなごとく、本発明は、コンピュータ処理計算データの出力用印刷機、コピーやFaxなどの画像出力機、昨今のデジタル画像撮像機の画像出力機などに広く使用されているインクジェット記録の方法及び装置に関する。その中でも、特に、微小液滴を吐出飛翔させる場合に、飛翔距離を小さくすることなく、インクミストなどの浮遊インクが無く、高速画像記録が可能なインクジェット記録の方法及び装置を提供するものである。さらには、凹凸の激しい記録媒体(エンボス紙、壁紙、あるいは皮革材)などのプリントにも適用可能なインクジェット記録の方法及び装置を提供するものである。
なお、以上の各実施形態では、記録媒体に沿って移動する記録ヘッド(通常、キャリッジに搭載されて移動する)で記録するシリアルタイプのインクジェット記録装置を例に挙げて説明した。本発明は、フルライン記録用の記録ヘッドなどを用いて副走査のみで記録するラインタイプのインクジェット記録装置に対しても同様に適用可能であり、同様の作用効果を奏するものである。また、本発明は、インクジェット記録装置であれば、記録ヘッドの数や、使用するインクの種類数や性状等に関わらず、同様に適用可能なものであり、同様の作用効果を奏するものである。さらに、本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、撮像画像形成装置などの単体装置に限定されるものではない。つまり、本発明は、これらを組み合わせた複合装置、あるいはコンピュータシステムなどの複合装置における記録装置としても広く適用可能であり、同様の作用効果を奏するものである。
本発明によるインクジェット記録方法の第1の実施形態を実施するインクジェット記録装置の斜視図である。 図1のインクジェット記録装置の縦断面図である。 図2のインクジェット記録装置の一部を省略して内部構成を示す斜視図である。 図3の一部を拡大して示す部分斜視図である。 環境圧力が0.5気圧の場合の吐出口からのインク飛翔状態を真下から(透明記録媒体の裏面から)見て模擬図示化した説明図である。図5の(a)は、吐出口列を構成する複数の吐出口からのインクの飛翔状況及び着弾状況を示す。図5の(b)は、図5の(a)中のb部分を拡大して示す図である。 真上から見た画像データを横から見た画像データに変換し、各環境気圧における吐出口から記録媒体へ至るインク飛翔状態を示す模擬図である。 本発明の第4の実施形態におけるキャッピング機構のキャップを示す図であり、(a)はキャップの斜視図であり、(b)は(a)中の線D−D´に沿った断面図である。 本発明の第6の実施形態を適用したインクジェット記録装置の要部構成を示す斜視図である。 測定された画像を拡大して横方向ズレ値(横散乱幅)と縦方向ズレ値(縦散乱幅)の最大と判断される値を求め、これらの値を各環境圧力に対して示す表である。
符号の説明
1、1A、1B インクジェット記録ヘッド
30、31、32、33、34、35 インク貯留部(サブタンク)
40、41、42、43、44、45 開閉バルブ
60 記録媒体
80 媒体供給室
81 画像形成室(画像形成部)
82 出力室
83 インク供給室
84 吸引装置
90、91、92、93、94、95、96 遮蔽シャッター
100〜105 ヘッド機構(ヘッド要素)
500〜525 インクタンク(インク格納部)
660 温度制御部
901 キャップ
1000 インクジェット記録装置

Claims (20)

  1. 画像情報に基づいて記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録方法において、
    前記記録ヘッドから前記記録媒体までのインク飛翔距離を2.3mm以下とし、インク飛翔領域を含む環境の圧力を0.6気圧以下とすることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記記録ヘッドは記録媒体の搬送方向と交差する方向に往復移動することにより該記録媒体に画像を記録することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記インク飛翔領域を含む空間は画像形成部のみであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記インク飛翔領域を含む空間は記録装置全体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記0.6気圧以下の環境を形成するために、記録動作のときに前記記録ヘッド及び前記記録媒体が周囲から遮断された同一の空間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記記録媒体の装填及び取り出しのとき、該記録媒体が装填される空間を大気圧に復帰させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記記録ヘッド用のインク格納部は、記録動作のとき、前記0.6気圧以下の空間に配置されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記記録ヘッド用のインクが大気圧の環境から供給される場合は、その供給路の途中に圧力遮蔽手段又は圧力緩衝手段を設けることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記記録ヘッド用のインクは、気泡を除去された脱気インク、もしくは供給途中で気体を除去される脱気インクであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 記録装置内を大気圧から減圧する際は、記録ヘッド内及びインク供給路内空気がインクよりも先に排出することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 大気圧よりも低い環境圧力の下で記録動作を停止したり待機する場合に、金属微膜層を有する保護キャップにより記録ヘッドのインク吐出部を覆うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  12. 前記記録ヘッドから吐出されるインクの体積が0.5pL乃至8pLであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  13. 前記記録ヘッドと前記記録媒体との距離を記録動作の前に計測し、この計測結果に応じて、インク吐出のための投入エネルギー、インク吐出速度、もしくは該記録ヘッドと該記録媒体の距離を制御可能であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記記録ヘッドと前記記録媒体の距離が2.3mmを超えた場合は、この距離が2.3mm以下となるように調整して記録することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  15. 前記記録媒体の温度を制御する温度制御部を有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  16. 前記記録ヘッドの温度上昇を抑制する手段を設けることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  17. 記録媒体の幅方向に対して斜め方向にシリアル移動する2個の記録ヘッドを用いて画像を記録することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  18. 前記2個の記録ヘッドは、記録媒体の幅方向に対して、+30度乃至+60度の方向に移動する記録ヘッドと−30度乃至−60度の方向に移動する記録ヘッドであることを特徴とする請求項17に記載のインクジェット記録方法。
  19. インク飛翔領域を含む環境の圧力を0.02気圧以上で、かつ0.6気圧以下とすることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  20. 画像情報に基づいて記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法を実施可能であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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