JP2007267601A - 新規スクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アレルギー性疾患、慢性炎症疾患の治療及び/又は予防剤のスクリーニングツール及び方法の提供。
【解決手段】リゾホスファチジルセリン受容体タンパク質、機能的等価改変体、又は相同タンパク質であるアレルギー性疾患、慢性炎症疾患の治療・予防剤スクリーニングツール、並びに前記各種タンパク質を発現している細胞及び前記各種タンパク質をコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換され前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞であるアレルギー性疾患、慢性炎症疾患の治療・予防剤スクリーニングツールを開示する。また、前記スクリーニングツールを用いたリゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出方法、及び前記検出方法によるアレルギー性疾患、慢性炎症疾患の治療・予防剤のスクリーニング方法を開示する。
【選択図】なし

Description

本発明は、リゾホスファチジルセリン受容体を用いた抗アレルギー剤、及び抗炎症剤スクリーニング法に関する。
リゾホスファチジルセリン(lysophosphatidylserine、以下LysoPSと称する)とは、細胞膜構成成分のリン脂質の一つであるホスファチジルセリン(phosphatidylserine、以下PSと称する)がホスホリパーゼA1(phospholipase A1、以下PLA1と称する)或いはホスホリパーゼA2(phospholipase A2、以下PLA2と称する)によって加水分解されて生成するリゾリン脂質である。PLA1或いはPLA2は炎症性細胞の活性化に伴い分泌され、炎症部位で上昇していることが知られている。供給源であるPSといった酸性リン脂質は細胞の脂質二重膜の細胞質側に局在し、細胞表面には露出していないので、定常状態の細胞にPLA1或いはPLA2が作用してもLysoPSは産生されない。それに対して、炎症部位では、多くの死滅した好中球、単球が存在し、それら死細胞の脂質二重膜中のPSが基質となって、PLA1或いはPLA2によりPSからLysoPSが生成され、炎症局所ではその濃度が上昇していると考えられている(非特許文献1参照)。
LysoPSの生理活性としては、顕著な肥満細胞の活性化能を有する肥満細胞活性化因子であることが有名である。肥満細胞は、I型(即時型)アレルギー反応において重要な働きを担う免疫細胞である。I型アレルギー反応は抗原による免疫グロブリンE(以下IgEと称する)抗体の誘導に始まり、産生されたIgE抗体は肥満細胞、好塩基球など、その細胞膜上にIgE抗体に対する高親和性の受容体(Fcε)を有する細胞に結合し、それらの細胞を感作する。次に再び生体が抗原に暴露されると、それら感作された肥満細胞、好塩基球の活性化が引き起こされ、ヒスタミン、ロイコトリエン、セロトニン、血小板活性化因子、好酸球遊走因子や好中球遊走因子といった種々のケミカルメディエーターや細胞遊走因子を遊離する。これを脱顆粒反応という。その結果、即時型反応として平滑筋の収縮、毛細血管の拡張による発赤、浮腫、腫脹、気道分泌促進、アナフィラキシー反応などが生じる(非特許文献1参照)。
肥満細胞の脱顆粒反応の研究に汎用されるラット腹腔由来の肥満細胞を用いた研究では、コンカナバリンAや、IgE受容体を介した刺激、神経成長因子による脱顆粒誘導反応を、LysoPSは著しく増強することが示されている(非特許文献2-6参照)。一方、生体レベルでも作用は認められており、LysoPSをマウスへ静脈注射すると、血中ヒスタミン量が上昇し、ラットの足裏へ投与すると足浮腫を誘導するといった報告がある(非特許文献7、8参照)。つまりLysoPSは細胞レベルのみならず、生体内でも肥満細胞活性化因子としての機能を有しており、LysoPSはアレルギー反応の惹起、及び増強に非常に重要な働きをしていると考えられている。
肥満細胞の研究が進むにつれて、肥満細胞は、気管支喘息やアレルギー性鼻炎といったアレルギー性疾患に限らず、多くの慢性炎症疾患においても重要な働きをしているという知見が多数報告されている。例えば、炎症性腸疾患の病巣部では、肥満細胞数の増加、及びヒスタミン濃度の上昇と重症度の相関が確認されており、過敏性腸症候群の腸神経線維近傍では活性化肥満細胞数が顕著に増加、ストレスやコルチコトロピン放出因子による腸過敏性亢進と肥満細胞の脱顆粒が相関することが報告されている(非特許文献9-12参照)。また、慢性関節リウマチでも関与が示唆されており、リウマチ患者の滑膜では肥満細胞数の増加と肥満細胞脱顆粒誘導因子(神経成長因子や補体C5aなど)の増加が認められ、肥満細胞欠損マウスが、関節リウマチモデルに対して抵抗性を示すことが明らかとなっている(非特許文献13-15参照)。さらに、間質性膀胱炎患者の膀胱でも肥満細胞数の増加と約八割の肥満細胞が活性化した状態にあり、患者尿中には神経成長因子やトリプターゼの上昇が認められることなどが明らかになってきている(非特許文献16、17参照)。
なお、本発明で用いることのできるLysoPS受容体タンパク質と同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA、及び前記DNAがコードする推定アミノ酸配列については、種々の報告があるが、いずれもリガンドが解明されておらず、LysoPS受容体であるとの記載もない(特許文献1-6参照)。
米国特許US0148465号 国際公開第00/77256号パンフレット 欧州特許EP1033401号 国際公開第03/54152号パンフレット 国際公開第03/71272号パンフレット 国際公開第03/87364号パンフレット 「蛋白質 核酸 酵素」、(日本)、1991年、第36巻、p.407-412 「ネイチャー(Nature)」、(英国)、1979年、第79巻、p.250-252 「フェブス・レターズ(FEBS Letters)」、(オランダ)、1979年、第105巻、p.58-62 「インターナショナル・アーカイブズ・オブ・アレルギー・アンド・イムノロジー(International Archives of Allergy & Immunology)」、(スイス)、1991年、第96巻、p.156-160 「フェブス・レターズ(FEBS Letters)」、(オランダ)、1982年、第138巻、p.190-192 「エイジェンツ・アンド・アクションズ(Agents and Actions)」、(スイス)、1984年、第14巻、p.613-618 「エイジェンツ・アンド・アクションズ(Agents and Actions)」、(スイス)、1984年、第14巻、p.619-625 「エイジェンツ・アンド・アクションズ(Agents and Actions)」、(スイス)、1984年、第14巻、p.606-612 「ヒューマン・パソロジー(Human Pathology)」、(米国)、1980年、第11巻、p.606-619 「ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)」、(米国)、1990年、第98巻、p.849-854 「ジャーナル・オブ・コリアン・メディカル・サイエンス(Journal of Korean Medical Science)」、(韓国)、2003年、第18巻、p.204-210 「アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー−ガストロインテスティナル・アンド・リバー・フィジオロジー(American Journal of Physiology-Gastrointestinal and Physiology)」、(米国)、1996年、第271巻、p.884-892 「アースライテス・アンド・リューマチズム(Arthritis & Rheumatism)」、(米国)、1984年、第27巻、p.852-856 「アースライテス・アンド・リューマチズム(Arthritis & Rheumatism)」、(米国)、1998年、第41巻、p.233-245 「サイエンス(Science)」、(米国)、2002年、第297巻、p.1689-1692 「ジャーナル・オブ・ウロロジー(Journal of Urology)」、(米国)、1995年、第153巻、p.629-636 「ジャーナル・オブ・ウロロジー(Journal of Urology)」、(米国)、1999年、第161巻、p.438-442
本発明の課題は、アレルギー性疾患(例えば、気管支喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性中耳炎、蕁麻疹、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性胃腸炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性角膜炎、植物アレルギー、薬物アレルギー、アナフィラキシーショックなど)、及び/又は慢性炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、間質性膀胱炎に伴う過活動膀胱など)の治療及び/又は予防剤として有用なLysoPS受容体のアンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤を得るための簡便なスクリーニング方法を提供することにある。
以上の知見から、肥満細胞の脱顆粒反応は、アレルギー性疾患及び慢性炎症疾患にとって重要な反応であり、その反応を強力に誘導、または増強するLysoPSに対する特異的な阻害剤は、新しい抗アレルギー剤、及び抗炎症剤としての可能性を示唆されているが、これまでLysoPSの第一作用点となる分子は不明であり、そのタンパク質及びそれをコードする遺伝子は同定されておらず、簡便な化合物スクリーニング系の構築が困難であり、LysoPS阻害に基づく抗アレルギー剤や抗炎症剤の開発は進展していなかった。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、配列番号2及び配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(以下、LPSR1と称する)が、LysoPSに反応し、活性化する受容体であることを見出し、LPSR1、若しくはLPSR1を発現する細胞がLysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出ツールとなることを明らかにした。LPSR1、若しくはLPSR1を発現する細胞を用い、試験物質がLysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法、及び前記検出方法を用いたアレルギー性疾患、慢性炎症疾患の治療及び/又は予防剤のスクリーニング方法を確立し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1] (a) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、しかもリゾホスファチジルセリン受容体活性を有するポリペプチド、
(c) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかもリゾホスファチジルセリン受容体活性を有するポリペプチド、又は
(d) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列を含み、しかもリゾホスファチジルセリン受容体活性を有するポリペプチド
である、リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール、
[2] 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、[1]に記載のリゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール、
[3] [1]に記載のポリペプチドを発現している細胞である、リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール、
[4] 細胞が、[1]に記載のポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞である、[3]に記載のリゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール、
[5] [3]に記載の細胞と、試験物質とを、リゾホスファチジルセリン存在下で接触させる工程、及び
試験物質による細胞内シグナル伝達の誘導又は抑制を分析する工程
を含む、試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法、
[6] [1]に記載のポリペプチド、[3]に記載の細胞、又は[3]に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、標識したリゾホスファチジルセリン存在下で接触させる工程、及び
前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識したリゾホスファチジルセリンの結合量を分析する工程
を含む、試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体リガンドであるか否かを検出する方法、
[7] [1]に記載のポリペプチド、[3]に記載の細胞、又は[3]に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、リゾホスファチジルセリン及び標識したGTPγS存在下で接触させる工程、並びに
前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識GTPγSの結合量を分析する工程を含む、試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法、
[8] [5]〜[7]のいずれか一項に記載の方法、或いは、これらを組み合わせることによる、リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、及び
リゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤を選択する工程
を含む、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療及び/又は予防剤をスクリーニングする方法、
[9] [1]に記載のポリペプチド、[3]に記載の細胞、又は[3]に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、リゾホスファチジルセリン存在下で接触させる工程、
試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、並びに
リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤を選択する工程
を含む、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療剤及び/又は予防剤をスクリーニングする方法
に関する。
本発明の検出ツール又はスクリーニング方法によれば、LysoPS受容体のアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤をスクリーニングすることができる。前記LysoPS受容体のアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤は、アレルギー性疾患(例えば、気管支喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性中耳炎、蕁麻疹、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性胃腸炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性角膜炎、植物アレルギー、薬物アレルギー、及びアナフィラキシーショックなど)、又は慢性炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、及び間質性膀胱炎に伴う過活動膀胱など)の治療及び/又は予防剤として有効な物質である。
以下に本発明を詳細に説明する。
[1]本発明の検出ツール
本明細書において、「検出ツール」とは、検出のために用いる物、具体的には、検出のために用いるポリペプチド又はポリペプチドを発現している細胞を意味する。「リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール」とは、リゾホスファチジルセリン受容体(以下LysoPS受容体と称する)のリガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤を検出するために、本発明の検出方法又はスクリーニング方法において、試験物質を接触させる対象となるポリペプチド又は細胞である。
本明細書において、「リゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤」とは内在性リガンドとは異なる部位に結合して、リガンドの受容体への親和性を減弱させるアロステリック化合物(negative allosteric modulator)のことをいう(Christopoulos及びKenakin、Pharmacological Reviews、第54巻、第323-374頁、2002年)。
本発明のLysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出ツールには、ポリペプチド型検出ツールと、細胞型検出ツールとが含まれる。
1)ポリペプチド型検出ツール
本発明のポリペプチド型検出ツールには、
(1)ヒトLPSR1、すなわち、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又はラットLPSR1、すなわち、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、LysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出ツール;
(2)機能的等価改変体、すなわち、(a)配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、しかもLysoPS受容体活性を有するポリペプチド、或いは(b)配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1〜10個、好ましくは1〜7個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかもLysoPS受容体活性を有するポリペプチドである、LysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出ツール;及び
(3)相同タンパク質、すなわち、配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上、好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、しかもLysoPS受容体活性を有するポリペプチドである、LysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出ツールが含まれる。
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる各種ポリペプチド、すなわち、ヒト若しくはラットLysoPS受容体LPSR1、機能的等価改変体、及び相同タンパク質を以下、検出ツール用ポリペプチドと称する。
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる、配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドは知られていたが、これがLysoPS受容体のアミノ酸配列であることは開示も示唆もなく、LysoPS受容体は、本発明者が今回初めて解明するまで、その実体は同定されていなかった。
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる検出ツール用ポリペプチドには、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるヒトLysoPS受容体が含まれるが、ヒト由来のものに限定されず、ヒト以外の生物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)由来のものも含まれる。例えば、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるラットLysoPS受容体が含まれる。また、ポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等を付加した融合ポリペプチドやヒトやヒト以外の生物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)由来のLysoPS受容体を元にして遺伝子工学的に人為的に改変したタンパク質なども含まれる。
本明細書における前記「相同性」とは、BLAST(Basic local alingment search tool; Altschulら、J. Mol. Biol.、 第215巻、第403-410頁、1990年)検索により得られた値を意味し、アミノ酸配列の相同性は、BLAST検索アルゴリズムを用いて決定することができる。具体的には、BLASTパッケージ(sgi32bit版、バージョン2.0.12;NCBIより入手)のbl2seqプログラム(Tatusova及びMadden、FEMS Microbiol. Lett.、第174巻、第247-250頁、1999年)を用い、デフォルトパラメーターに従って算出することができる。ペアワイズ・アラインメント・パラメーターとして、プログラム名「blastp」を使用し、Gap挿入Cost値を「0」で、Gap伸長cost値を「0」で、Query配列のフィルターとして「SEG」を、Matrixとして「BLOSUM62」をそれぞれ使用する。
本明細書における前記「リゾホスファチジルセリン(LysoPS)」とは、細胞膜構成成分のリン脂質の一つであるホスファチジルセリン(PS)がホスホリパーゼA1(PLA1)或いはホスホリパーゼA2(PLA2)によって加水分解されて生成するリゾリン脂質である(堀米、蛋白質 核酸 酵素、第36巻、第407-412頁、1991年)。PSはセリンリン脂質を極性基として有するグリセロリン脂質であり、PLA1が作用すると1位、PLA2が作用すると2位の脂肪酸が外れてLysoPSとなる。LysoPSには、残った脂肪酸の位置、炭素鎖数、及び飽和度によって、1-オレオイル-LysoPSや1-パルミトイル-LysoPSなどが存在する。これら全て総称してLysoPSという。具体的には、例えば、Xiaoらの方法(Xiaoら、Annals of the New York Academy of Sciences、第905巻、第242-259頁、2000年)によって、それがLysoPSであるか否かを判定することができる。
本明細書における前記「LysoPS受容体活性を有する」とは、LysoPSに反応することにより、共役したGタンパク質を介して、細胞内に外界刺激を伝達する受容体としての活性を有することを意味する。前記活性を有するか否かは、LysoPSに反応して、例えば、実施例2に記載のアッセイで、LysoPS用量依存的にルシフェラーゼ活性が上昇するか否かにより判定することができる。この場合、ルシフェラーゼ活性が上昇すれば、「LysoPS受容体活性を有する」と判定することができる。
本発明の検出ツール用ポリペプチドは、種々の公知の方法によって得ることができる。例えば、検出ツール用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、公知の方法(Maniatisら、"Molecular Cloning-A Laboratory Manual"、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、1982年等)に従って、既知のアミノ酸配列や塩基配列の情報などをもとに設計し合成したプライマーやプローブを用いて、PCR法やハイブリダイゼーションによるスクリーニングにより、cDNAライブラリーから単離することができる。より具体的には、ヒトLysoPS受容体遺伝子の塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)由来の試料(例えば、ゲノムDNA、総RNA若しくはmRNA、cDNAライブラリー、又はファージライブラリー)とを用いてPCR法又はハイブリダイゼーション法を実施することにより、検出ツール用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取得することができる。取得したポリヌクレオチドを適当な発現系に組み込み発現させ、発現したタンパク質が、例えば実施例2に記載の方法によりLysoPSに反応することを確認することにより、所望のポリペプチドを取得することができる。より具体的には、後述する細胞(すなわち、検出ツール用ポリペプチドを発現している細胞)を得、受容体タンパク質の分離及び精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から目的タンパク質を分離及び精製することにより調製することができる(国際公開02/36631号パンフレット参照)。
また、前記の遺伝子工学的に人為的に改変したタンパク質は、常法、例えば、部位特異的突然変異誘発法(site-specific mutagenesis; Markら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第81巻、第5662-5666頁、1984年等)により、タンパク質の遺伝子を取得し、その遺伝子を適当な発現系を用いて発現させ、発現したタンパク質が、例えば、実施例2に記載の方法により、LysoPSに反応することを確認することにより、所望のタンパク質を取得することができる。
2)細胞型検出ツール
本発明の細胞型LysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出ツールには、検出ツール用ポリペプチドを発現している細胞である、LysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出ツールが含まれる。
本発明の細胞型検出ツールとして用いることのできる細胞(以下、検出ツール用細胞と称する)は、検出ツール用ポリペプチドを発現している限り、特に限定されるものではなく、人為的に検出ツール用ポリペプチドを発現させた形質転換細胞であってもよく、検出ツール用ポリペプチドを発現している天然の細胞又は樹立した細胞株であってもよいが、人為的に検出ツール用ポリペプチドを発現させた形質転換細胞が好ましい。
本発明の細胞型検出ツールとして用いることのできる各種形質転換細胞(以下、検出ツール用形質転換細胞と称する)を作製するために使用するポリヌクレオチドは、前述の方法で、既知のアミノ酸配列や塩基配列の情報などをもとに設計し合成したプライマーやプローブを用いて、PCR法やハイブリダイゼーションによるスクリーニングにより、cDNAライブラリーから単離できる。
単離されたポリヌクレオチドを含む断片は、適当な発現ベクターに組み込むことにより、真核生物及び原核生物の宿主細胞に形質移入することができるようになり、宿主細胞において形質移入したポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを発現させることが可能である。
宿主細胞は検出ツール用ポリペプチドを発現することができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、通常使用される公知の微生物、例えば、大腸菌又は酵母(Saccharomyces Cerevisiae)、或いは公知の培養細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株CHO細胞、CHO細胞のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub及びChasin、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第77巻、第4216-4220頁、1980年)、ヒト胚性腎293(HEK293)細胞、HEK293細胞にエプスタイン・バーウイルスのEBNA-1遺伝子を導入した293EBNA細胞(Invitrogen社)、アフリカミドリザル腎臓由来細胞株COS細胞、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)を挙げることができる。
発現ベクターには、宿主細胞に応じて適宜選択した公知の発現ベクターを用いることができる他、宿主細胞に応じて適宜選択したベクタープラスミドに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入したものを用いることができる。また組み込んだポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドが発現する際にグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)やFlag、Hisなどのタグが融合された状態で発現するように特定の配列を導入した発現ベクターを用いることもできる。数種類のポリヌクレオチドで同時に一つの細胞を形質転換する場合は、数種類のポリヌクレオチドが一つの発現ベクターに含まれるように構成してもよく、または各々別々の発現ベクターに含まれるように構成してもよい。或いは、このような構成が染色体DNAに組み込まれた細胞を取得してこれを用いてもよい。
所望のポリヌクレオチドを導入した発現ベクターは、DEAE-デキストラン法(Luthmanら、Nucleic Acids Res.、第11巻、第1295-1308頁、1983年)、リン酸カルシウム-DNA共沈殿法(Grahamら、Virology、第52巻、第456-457頁、1973年)、市販のトランスフェクション試薬であるLipofectamine 2000(Invitrogen社)やFuGENE 6(Roche Molecular Biochemicals社)を用いた方法、及び電気パルス穿孔法(Neumannら、EMBO J.、第1巻、第841-845頁、1982年)等により宿主細胞に取り込ませ、形質転換させることができる。具体的な実施態様として、例えば実施例2に記載の方法により実施できる。
検出ツール用形質転換細胞は、常法に従って培養することができ、培養に用いることのできる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択することができる。例えば、COS細胞の場合には、RPMI-1640培地又はダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に、必要に応じて牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加した培地を使用することができる。また、293EBNA細胞の場合には、牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えた培地を使用することができる。
検出ツール用細胞の膜画分は、具体的には例えば以下の手順で調製することができる。検出ツール用細胞を回収及び洗浄した後、5 mM EDTAとプロテアーゼインヒビター(CompleteTMプロテアーゼインヒビターカクテル錠;ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)とを含有する20 mM Tris-HCl(pH7.4)に懸濁して、ポリトロンにてホモジナイズする。超遠心処理を行った後、沈殿を1 mM EDTA、100 mM NaCl、0.1% BSA、及びプロテアーゼインヒビター(CompleteTMプロテアーゼインヒビターカクテル錠)を含有する50 mM Tris-HCl(pH7.4)に懸濁し、これを膜画分として用いることができる。
[2]LysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤検出方法
前記検出ツール用ポリペプチド、又は検出ツール用細胞若しくはその膜画分(以下、検出ツール用ポリペプチド、前記細胞、及びその膜画分を総称して、リガンド検出ツールと称する)を検出ツールに用いて、試験物質がLysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出することができる。
本発明による、試験物質がLysoPS受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法には、
1)細胞内シグナル伝達の誘導又は抑制を指標として、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法(以下、細胞内シグナル型検出方法と称する);
2)LysoPS受容体に対するリガンドであるか否かを検出する方法(以下、リガンド検出方法と称する);
3)GTPγS結合法を利用するLysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法(以下、GTPγS結合型検出方法と称する);
4)細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法(以下、Ca2+型検出方法と称する);
5)細胞内におけるcAMP量の変動を指標として、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法(以下、cAMP型検出方法と称する)
が含まれる。これらの検出方法について、順次説明する。
なお、Ca2+型検出方法及びcAMP型検出方法で、検出ツール用ポリペプチドとGタンパク質キメラとを共発現している細胞を使用する。ここで「Gタンパク質」とは、α、β及びγサブユニットで構成される三量体のタンパク質であり、受容体と共役して細胞内へのシグナル伝達及び増幅因子として機能する。αサブユニット(Gα)にはG13、Gq、Gi、Gs等といったサブファミリーが存在し、その種類によって、異なったシグナル伝達経路を制御している。
G13は、p115Rho-GEFといったグアニンヌクレオチドエクスチェンジ因子への刺激を介して、Rhoキナーゼの活性化を促進するGタンパク質である。Rhoキナーゼの活性が促進されると、例えば、血清応答配列(serum response element; SRE)を介した下流遺伝子の転写を促進する。従って、G13と共役している受容体のシグナル伝達の有無及び強弱は、SRE依存的なレポーター遺伝子(例えば、pSRE-Luc; CLONTECH社)を導入した細胞を用いて、レポーター活性の変動を指標として検出することができる。
Gqは、ホスホリパーゼCの活性を促進するGタンパク質である。ホスホリパーゼCの活性が促進されると、例えば、細胞内Ca2+濃度が上昇する。従って、Gqと共役している受容体のシグナル伝達の有無及び強弱は、細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として検出することができる。
Giは、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制するGタンパク質である。アデニル酸シクラーゼの活性が抑制されると、例えば、細胞内cAMP濃度が低下する。従って、Giと共役している受容体のシグナル伝達の有無及び強弱は、細胞内におけるcAMP濃度の変動を指標として検出することができる。
Gsは、アデニル酸シクラーゼの活性化を促進するGタンパク質である。アデニル酸シクラーゼの活性化が促進されると、例えば、細胞内cAMP濃度が上昇する。従って、Gsと共役している受容体のシグナル伝達の有無及び強弱は、細胞内におけるcAMP濃度の変動を指標として検出することができる。
「Gタンパク質キメラ」とは、Gタンパク質のC末端のアミノ酸配列(例えば5アミノ酸残基)を他のGタンパク質の配列に置換したものであって、本来、共役するGタンパク質とは異なった細胞内へのシグナル伝達及び増幅因子として機能することができるGタンパク質のことである。例えば、ホスホリパーゼC活性促進活性を有するGqの部分ポリペプチドと、Giの受容体共役活性を有する部分ポリペプチドとのキメラである「GqとGiとのキメラタンパク質」を挙げることができる(Conklinら、Nature、第363巻、第274-276頁、1993年)。
実施例3に記載の方法によって、LPSR1に共役するGタンパク質を解析した結果、LPSR1は各種Gタンパクのうち、G13に共役し、G13を介して細胞内へシグナルを伝達する受容体であることが明らかとなった。従って、Ca2+型検出方法では例えばGqとG13とのキメラタンパク質を発現させた細胞で、またcAMP型検出方法では例えばGsとG13、或いはGiとG13とのキメラタンパク質を発現させた細胞で、細胞内シグナルを検出することにより、アンタゴニスト及び受容体活性減弱剤を検出できることが明らかになった。
1)細胞内シグナル型検出方法
本発明の細胞内シグナル型検出方法は、LysoPS受容体に対するリガンドが細胞内シグナル伝達経路を活性化する際、各種応答配列、例えば血清応答配列(serum response element; SRE)を介して転写を活性化するという特性を利用して、本発明の検出ツールを用いて、LysoPS受容体アゴニストにより誘導された細胞内シグナル伝達の試験物質による誘導又は抑制を分析することにより、試験物質がLysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出することができる。
例えば、以下の手順により実施することができる。細胞として、(i)検出ツール用ポリペプチドと、(ii)シグナル伝達に関わる応答配列、プロモーター、及びレポーター遺伝子の融合遺伝子(例えば、pSRE-Luc; CLONTECH社)とを共発現している細胞(以下、細胞シグナル型検出用細胞と称する)を使用する。好ましい宿主細胞としては、例えば、ヒト胎児腎臓由来の細胞株である293EBNA細胞を挙げることができる。
本発明の細胞内シグナル型検出方法においてアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する場合には、細胞シグナル型検出用細胞と試験物質とを、LysoPS受容体のアゴニスト(例えば、LysoPS)の共存下において接触させ、細胞シグナル型検出用細胞内のレポーター活性の変化を分析する。レポーター活性の変化は、ルミノメーター、液体シンチレーションカウンター、又はX線フィルム等で分析することができる。例えば、レポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いた場合は、ルシフェラーゼ活性の変化を市販の測定キット(例えば、ピッカジーン発光キット;東洋インキ)を用いて分析することができる。
細胞シグナル型検出用細胞と試験物質とを、LysoPS受容体のアゴニストの共存下において接触させた場合に、前記アゴニストによる細胞シグナル型検出用細胞内のレポーター活性の上昇が、前記試験物質により阻害又は抑制されれば、前記試験物質は、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であると判定することができる。
なお、コントロールとして、細胞シグナル型検出用細胞とLysoPS受容体のアゴニストとを、試験物質の不在下において接触させ、前記アゴニストによる細胞シグナル型検出用細胞内のレポーター活性の上昇の程度を確認しておくことが必要である。例えば、実施例2に記載の条件で実施することができる。
2)リガンド検出方法
本発明のリガンド検出方法は、本発明の検出ツールと標識したLysoPSとを用いる限り特に限定されるものではないが、例えば以下の手順により実施することができる。
前述の方法によりリガンド検出ツールを調製する。アッセイ条件(例えば、使用する緩衝液の種類、温度、及び濃度、緩衝液に添加するイオンの種類及び濃度、並びにアッセイ系のpH)を最適化し、最適化したバッファー中で、リガンド検出ツールと、標識リガンドとを、試験物質と共に一定時間インキュベーションする。前記標識リガンドとしては、例えば、[3H]-LysoPSを用いることができる。反応後、反応液をガラスフィルター等で濾過し、適量のバッファーで洗浄した後、フィルターに残存する放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。得られた放射活性リガンドの結合阻害を指標として、LysoPS受容体に対するリガンドであるか否かを検出することができる。すなわち、試験物質不在下の場合のフィルター残存放射活性よりも、試験物質存在下の場合のフィルター残存放射活性が低下した場合には、前記試験物質は、LysoPS受容体に対するリガンドであると判定することができる。
3)GTPγS結合型検出方法
本発明のGTPγS結合型検出方法は、本発明の検出ツールを用いて、GTPγS結合法(Lazareno及びBirdsall、Br. J. Pharmacol.、第109巻、第1120-1127頁、1993年)を利用して、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出することができる。
例えば、以下の手順により実施することができる。検出ツール用ポリペプチドを発現させた細胞膜を、20 mM Tris-HCl(pH 7.4)、100 mM NaCl、10 mM MgCl2、0.1%-ウシ血清アルブミン(BSA)、及び10 μM GDP混合溶液中で、35Sで標識されたGTPγS(250 pM)と混合する。試験物質存在下と試験物質不在下とでインキュベートした後、反応液をガラスフィルター等で濾過し、フィルターに残存するGTPγSの放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。試験物質存在下における、LysoPS受容体のリガンドによるGTPγS結合上昇の抑制を指標に、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出することができる。
4)Ca2+型検出方法
本発明のCa2+型検出方法は、細胞として、(i)検出ツール用ポリペプチドと、(ii)Gタンパク質キメラ(例えば、GqとG13とのキメラタンパク質)とを共発現している細胞(以下、Ca2+型検出用細胞と称する)を使用する。なお、前記細胞は、LysoPSを作用させても細胞内Ca2濃度が上昇しない細胞に(i)検出ツール用ポリペプチドと、(ii)Gタンパク質キメラとを共発現させた形質転換細胞が好ましい。好ましい宿主細胞としては、例えば、ヒト胎児腎臓由来の細胞株である293EBNA細胞を挙げることができる。
本発明のCa2+型検出方法においてアンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤であるか否かを検出する場合には、Ca2+型検出用細胞と試験物質とを、LysoPS受容体のアゴニスト(例えば、LysoPS)の共存下において接触させ、Ca2+型検出用細胞内のCa2+濃度の変化を直接的又は間接的に分析する。Ca2+濃度の変化は、例えば、カルシウム結合性蛍光試薬(例えば、fura2又はfluo3等)を用いて、直接的にCa2+濃度の変化を分析することもできる。或いは、Ca2+濃度に依存して転写量が調節される遺伝子(例えば、ルシフェラーゼの遺伝子の上流にアクチベータープロテイン1(AP1)応答配列を挿入した遺伝子)の転写活性を分析することにより、間接的にCa2+濃度の変化を分析することもできる。
Ca2+型検出用細胞と試験物質とを、LysoPS受容体のアゴニストの共存下において接触させた場合に、前記アゴニストによるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇が、前記試験物質により阻害又は抑制されれば、前記試験物質は、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、又はLysoPS受容体活性減弱剤であると判定することができる。
なお、コントロールとして、Ca2+型検出用細胞とLysoPS受容体のアゴニストとを、試験物質の不在下において接触させ、前記アゴニストによるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇の程度を確認しておくことが必要である。
5)cAMP型検出方法
本発明のcAMP型検出方法は、細胞として、(i)検出ツール用ポリペプチドと、(ii)Gタンパク質キメラ(例えば、GsとG13とのキメラタンパク質、若しくはGiとG13とのキメラタンパク質)とを共発現している細胞(以下、cAMP型検出用細胞と称する)を使用する。なお、前記細胞は、LysoPSを作用させても細胞内cAMP濃度が変動しない細胞に(i)検出ツール用ポリペプチドと、(ii)Gタンパク質キメラとを共発現させた形質転換細胞が好ましい。好ましい宿主細胞としては、例えば、ヒト胎児腎臓由来の細胞株である293EBNA細胞を挙げることができる。
本発明のcAMP型検出方法においてアンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤であるか否かを検出する場合には、cAMP型検出用細胞と試験物質とを、LysoPS受容体のアゴニスト(例えば、LysoPS)の共存下において接触させ、前記cAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の変化を直接的又は間接的に分析する。
cAMP濃度の変化は、例えば、市販のcAMP測定キット(Amersham社等)を用いて直接的にcAMP濃度の変化を分析することもできるし、或いはcAMP濃度に依存して転写量が調節される遺伝子(例えば、ルシフェラーゼの遺伝子の上流にcAMP応答配列(CRE)を挿入した遺伝子)の転写活性を分析することにより、間接的にcAMP濃度の変化を分析することもできる。
cAMP型検出用細胞と試験物質とを、LysoPS受容体のアゴニストの共存下において接触させた場合に、前記アゴニストによるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の変動が、前記試験物質により阻害又は抑制されれば、前記試験物質は、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤であると判定することができる。例えば、GiとG13のキメラタンパク質を用いた場合、cAMP濃度を上昇させることのできる化合物(例えば、フォルスコリン)を共存させておくと、試験物質によるcAMP濃度の変動をより容易に判定することができる。例えば、国際公開第02/36631号パンフレットの実施例4又は実施例5に記載の条件で行なうことができる。
またコントロールとして、cAMP型検出用細胞とLysoPS受容体のアゴニストとを試験物質の不在下において接触させ、前記アゴニストによるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の変動の程度を確認しておくことが必要である。
前述の細胞シグナル型検出方法、GTPγS結合型検出方法、Ca2+型検出方法、若しくはcAMP型検出方法によってLysoPS受容体アンタゴニスト又はLysoPS受容体活性減弱剤と判定された試験物質が、LysoPS受容体アンタゴニストであるか、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるかを調べるには、アンタゴニストが内在性リガンド(例えば、LysoPS)と同じ受容体の部位に結合し、受容体活性減弱剤は内在性リガンドとは異なる受容体の部位に結合するという特性の違いを利用して調べることができる。すなわち、該当する試験物質を前述のリガンド検出方法により測定し、標識リガンドの結合阻害が認められた場合はLysoPS受容体アンタゴニストであると、また標識リガンドの結合阻害が認められない場合にはLysoPS受容体活性減弱剤であると判定することができる。
[3]本発明のスクリーニング方法
本発明の検出ツール(ポリペプチド型検出ツール及び細胞型検出ツールの両方を含む)を用い、LysoPS受容体に対するリガンド又はアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、及びLysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤を選択する工程により、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療及び/又は予防剤をスクリーニングすることができる。
既に説明したように、LysoPSは肥満細胞の脱顆粒反応を誘導し、アレルギー性疾患(例えば、気管支喘息、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性副鼻腔炎、アレルギー性中耳炎、蕁麻疹、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性胃腸炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性角膜炎、植物アレルギー、薬物アレルギー、及びアナフィラキシーショックなど)、及び慢性炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、過敏性腸症候群、間質性膀胱炎、及び間質性膀胱炎に伴う過活動膀胱など)を引き起こすことが知られており、LysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤はアレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療及び/又は予防剤になると考えられる。また、これまで説明した検出ツール用ポリペプチドそれ自体、或いは、検出ツール用細胞それ自体を、前記疾患治療及び/又は予防剤スクリーニングに使用することができる。
本発明のスクリーニング方法は、検出方法により、以下の5つに大別されるが、いずれかの方法を用いて、或いは、これらを組み合わせて、LysoPS受容体に対するリガンド又はアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出し、試験物質の中からアンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤を選択することによって、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療剤及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
以下、本発明のスクリーニング方法である
1)細胞内シグナル伝達の抑制を指標として、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤をスクリーニングする方法(以下、細胞内シグナル伝達型スクリーニング方法と称する);
2)リガンド検出方法を用いて、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤をスクリーニングする方法(以下、リガンドスクリーニング方法と称する);
3)GTPγS結合法を利用するLysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤をスクリーニングする方法(以下、GTPγS結合型スクリーニング方法と称する);
4)細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤をスクリーニングする方法(以下、Ca2+型スクリーニング方法と称する);及び
5)細胞内におけるcAMP量の変動を指標として、LysoPS受容体に対するアンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤をスクリーニングする方法(以下、cAMP型スクリーニング方法と称する)
について、順次説明する。
1)細胞内シグナル伝達型スクリーニング方法
本発明の細胞内シグナル伝達型スクリーニング方法は、本発明の細胞内シグナル伝達型検出方法により、LysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、及びLysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
アンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤は、LysoPS受容体のアゴニスト(例えば、LysoPS)によるレポーター活性の上昇が、試験物質により抑制されることを指標にスクリーニングすることができ、例えば、実施例2に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、LysoPSによるレポーター活性の上昇の阻害を指標に、そのIC50が10 μM以下(さらに好ましくは1 μM以下)の試験物質をアンタゴニスト活性、或いは受容体活性減弱活性を有する物質として選択することができる。
2)リガンドスクリーニング方法
本発明のリガンドスクリーニング方法は、本発明のリガンド検出方法により、LysoPS受容体リガンドであるか否かを検出する工程、及び受容体アンタゴニスト又は受容体活性減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
前記リガンド検出方法により得られた放射活性リガンドの結合阻害を指標として、LysoPS受容体に対するリガンドであるか否かを検出することができる。例えば、国際公開第02/36631号パンフレットの実施例6に記載の条件に倣って、一定量のLysoPS受容体発現細胞の膜画分に、[3H]−LysoPSを加え、最適化したバッファー中で、試験物質を一定時間作用させ、[3H]−LysoPSの結合阻害を指標に、そのIC50が10 μM以下(さらに好ましくは1 μM以下)の試験物質を、リガンドとして検出することができる。
リガンドとして検出された試験物質を、さらに、細胞内シグナル伝達型スクリーニング方法、GTPγS結合型スクリーニング方法、Ca2+型スクリーニング方法、及び/又はcAMP型スクリーニング方法にかけ、アンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤をスクリーニングすることにより、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療剤及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
3)GTPγS結合型スクリーニング方法
本発明のGTPγS結合型スクリーニング方法は、本発明のGTPγS結合型検出方法により、LysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、及びLysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
アンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤は、LysoPS受容体のアゴニスト(例えば、LysoPS)によるGTPγS結合上昇が、試験物質により阻害又は抑制されることを指標にスクリーニングすることができ、例えば、検出ツール用ポリペプチドを発現させた細胞膜を、20 mM Tris-HCl(pH 7.4)、100 mM NaCl、10 mM MgCl2、0.1%-ウシ血清アルブミン(BSA)、10 μM GDP、10-12 M〜10-5 M LysoPS、及び試験物質の混合溶液中で、35Sで標識されたGTPγS(250 pM)と混合し、室温で1時間、インキュベーションし、LysoPSによるGTPγS結合の上昇の阻害を指標に、そのIC50が10 μM以下(さらに好ましくは1 μM以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性、或いは受容体活性減弱活性を有する物質として選択することができる。
4)Ca2+型スクリーニング方法
本発明のCa2+型スクリーニング方法は、本発明のCa2+型検出方法により、LysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、及びLysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
アンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤は、前記Ca2+型検出方法において、LysoPS受容体のアゴニスト(例えば、LysoPS)によるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇が、試験物質により阻害又は抑制されることを指標に、スクリーニングすることができる。
例えば、G13とGqのキメラタンパク質を共発現させた場合、国際公開第02/36631号パンフレットの実施例3に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、LysoPSによる細胞内Ca2+濃度の上昇の阻害を指標に、そのIC50が10 μM以下(さらに好ましくは1 μM以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性、或いは受容体活性減弱活性を有する物質として選択することができる。
5)cAMP型スクリーニング方法
本発明のcAMP型スクリーニング方法は、本発明のcAMP型検出方法により、LysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、及びLysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
アンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤は、前記cAMP型検出方法において、LysoPS受容体のアゴニスト(例えば、LysoPS)によるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の変動が、試験物質により阻害又は抑制されることを指標にスクリーニングすることができる。
例えば、G13とGiのキメラタンパク質を共発現させた場合、国際公開第02/36631号パンフレットの実施例4又は実施例5に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、LysoPSによる細胞内cAMP濃度の低下の阻害を指標に、そのIC50が10 μM以下(さらに好ましくは1 μM以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性、或いは受容体活性減弱活性を有する物質として選択することができる。
本発明の細胞シグナル伝達型スクリーニング方法、GTPγS結合型スクリーニング方法、Ca2+型スクリーニング方法、又はcAMP型スクリーニング方法でアンタゴニスト、或いは受容体活性減弱剤をスクリーニングすることにより、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療剤及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
[4] 試験物質
本発明のスクリーニング法で使用する試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、市販の化合物(ペプチドを含む)、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrettら、J. Steele. Tetrahedron、第51巻、第8135-8173頁、1995年)によって得られた化合物群、微生物の培養上清、植物や海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物、或いは本発明のスクリーニング法により選択された化合物(ペプチドを含む)を化学的、又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を挙げることができる。さらには、LysoPS又は公知のLysoPS誘導体を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
なお、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療及び/又は予防効果があることの確認は、当業者に公知の方法、或いはそれを改良した方法を用いることにより実施することができる。例えば、モルモット・喘息モデル(Aokiら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、第297巻、第165-173頁、2001年)や、マウス・アトピー性皮膚炎モデル(Yokozekiら、Clin. Exp. Immunol.、第132巻、第385-392頁、2003年)などを用いることにより実施することができる。
LysoPS受容体アンタゴニスト、或いはLysoPS受容体活性減弱剤である、例えば、DNA、蛋白質(抗体又は抗体断片を含む)、ペプチド、又はそれ以外の化合物を有効成分とする製剤は、前記有効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる薬理学上許容される担体、賦形剤、及び/又はその他の添加剤を用いて、医薬組成物として調製することができる。
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明は該実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法に従って実施可能である。また、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従っても実施可能である。
[実施例1]
ヒト及びラットLysoPS受容体LPSR1遺伝子のクローニング
ヒトゲノムDNA(Human Genomic DNA;CLONTECH社)及び、ラットゲノムDNA(Rat Genomic DNA;CLONTECH社)をテンプレートとして、PCR法により、ヒト及びラットのLysoPS受容体遺伝子であるLPSR1遺伝子の全長cDNAを取得した。ヒトLPSR1遺伝子(以下hLPSR1と略す)は配列番号5で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号6で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用いた。また、ラットLPSR1遺伝子(以下rLPSR1と略す)は配列番号7で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用いた。
なお、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーの各々の5'末端には、制限酵素XbaI認識部位を含む塩基配列が付加されている。PCRは、DNAポリメラーゼ(Pyrobest DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、5% ジメチルスルホキシド(DMSO)存在下で、94℃(20秒間)/56℃(20秒間)/72℃(1.5分間)からなるサイクルを35回繰り返した。その結果、約1kbpのDNA断片が増幅された。このDNA断片をXbaIで消化した後、プラスミドpEF-BOS-dhfr(Mizushima及びNagata、Nucleic Acids Research、第18巻、第5322頁、1990年)のXbaI部位に挿入することにより、プラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1、及びpEF-BOS-dhfr-rLPSR1を得た。LPSR1遺伝子の塩基配列は、DNAシークエンサー(ABI377 DNA Sequencer; Applied Biosystems社)を用いてジデオキシターミネーター法により決定した。hLPSR1遺伝子の塩基配列は、配列番号1で表される塩基配列のとおりであり、rLPSR1遺伝子の塩基配列は配列番号3で表される塩基配列のとおりであった。
配列番号1で表される塩基配列は、1020塩基のオープンリーディングフレーム(ORF)を有しており、このORFから予測されるアミノ酸配列(339アミノ酸)は、配列番号2で表されるアミノ酸配列のとおりであった。また、配列番号3で表される塩基配列は、987塩基のORFを有しており、このORFから予測されるアミノ酸配列(328アミノ酸)は、配列番号4で表されるアミノ酸配列のとおりであった。これらのアミノ酸配列の相同性は83%であった。
[実施例2]
LPSR1を発現させた293EBNA細胞における、LysoPSによるルシフェラーゼ活性上昇の検出
本実施例では、LPSR1タンパク質を発現させる細胞として293EBNA細胞(Invitrogen社)を使用した。また、LPSR1タンパク質を発現させるための発現プラスミドとして、前記実施例1で得られたプラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1、及びpEF-BOS-dhfr-rLPSR1を用いた。
コラーゲンIコートされた96ウェルプレート(IWAKI社)に、293EBNA細胞を、1ウェル当たり1.5×104細胞となるように、1% 牛胎児血清(FCS)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で播種して一晩培養後、プラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1(1ウェル当たり1 ng)、またはプラスミドpEF-BOS-dhfr-rLPSR1(1ウェル当たり1 ng)と、血清応答因子(Serum Response Element、以下「SRE」と称する)のレポーター活性を測定する為のプラスミドpSRE-Luc(CLONTECH社)(1ウェル当たり5 ng)を、トランスフェクション試薬(LipofectAMINE 2000; Invitrogen社)を用いて遺伝子導入した。なお、コントロールとして、プラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1又はpEF-BOS-dhfr-rLPSR1に代えて、プラスミドpEF-BOS-dhfr(すなわち、LPSR1遺伝子を含まない空ベクター)、及びプラスミドpSRE-Lucを用いて遺伝子導入した。その後、さらに18〜20時間培養し、DMEM培地で希釈したLysoPSを加え、5% CO2存在下、37℃で6時間インキュベートした。培地を吸引し、細胞溶解液(細胞溶解液LCβ;東洋インキ)で溶解した後、そのルシフェラーゼ活性を、市販の測定キット(ピッカジーン発光キット;東洋インキ)及び測定装置(ML3000 microtiter plate luminometer; Dynatech Laboratories社)を用いて測定した。
その結果、図1に示すように、プラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1とpSRE-Lucを遺伝子導入した細胞、及びプラスミドpEF-BOS-dhfr-rLPSR1とpSRE-Lucを遺伝子導入した細胞では、300 nM以上のLysoPS添加において有意に、かつ用量依存的にルシフェラーゼ活性の上昇が観察された。一方、プラスミドpEF-BOS-dhfr(空ベクター)とプラスミドpSRE-Lucを遺伝子導入した細胞では、LysoPSによるルシフェラーゼ活性の上昇は全く観察されなかった。
以上のことから、LPSR1はLysoPSに反応し、細胞内へシグナルを伝達する受容体であることが明らかとなった。
[実施例3]
LPSR1に共役するGタンパク質の同定
本実施例では、LPSR1タンパク質を発現させる細胞として293EBNA細胞(Invitrogen社)を使用した。また、LPSR1タンパク質を発現させるための発現プラスミドとして、前記実施例1で得られたプラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1を用いた。また、種々のヒトGタンパク質Gq(GenBankアクセッション番号 NM_002072)、G11(GenBankアクセッション番号 M69013)、G12(GenBankアクセッション番号 L01694)、G13(GenBankアクセッション番号 NM_006572)、G14(GenBankアクセッション番号 NM_004297)、G16(GenBankアクセッション番号 M63904)、Gqiキメラ、Gqi3キメラ、Gqoキメラ、及びGqzキメラを過剰発現させるための発現プラスミドとして、種々のヒトGタンパク質の遺伝子を、それぞれ発現プラスミドpEF-BOS-dhfrへ組み換えたプラスミド(例えば、Gq発現プラスミドはpEF-BOS-dhfr-Gq)を使用した。
上記のGタンパク質発現ベクターのうち、キメラGタンパク質以外は各々の5'末端に制限酵素XbaI認識部位を含む塩基配列が付加された下記のプライマーセットを用いて増幅し、pEF-BOS-dhfrのXbaI部位に挿入することにより作製した。PCR条件は実施例1に記載の条件にて行った。各々のGタンパク質のプライマーセット及びテンプレートに用いたcDNAは、Gq(フォワードプライマー:配列番号9、リバースプライマー:配列番号10、テンプレート:ヒト脳cDNA(CLONTECH社))、G11(フォワードプライマー:配列番号11、リバースプライマー:配列番号12、テンプレート:ヒト脳cDNA(CLONTECH社))、G12(フォワードプライマー:配列番号13、リバースプライマー:配列番号14、テンプレート:ヒト脳cDNA(CLONTECH社))、G13(フォワードプライマー:配列番号15、リバースプライマー:配列番号16、テンプレート:ヒト腎臓cDNA(CLONTECH社))、G14(フォワードプライマー:配列番号17、リバースプライマー:配列番号18、テンプレート:ヒト脾臓cDNA(CLONTECH社))、G16(フォワードプライマー:配列番号19、リバースプライマー:配列番号20、テンプレート:ヒト末梢血リンパ球cDNA(CLONTECH社))である。
また、Gタンパク質キメラの発現ベクターは、Conklinらの方法(Nature、第363巻、第274-276頁、1993年)に従い、Gqタンパク質のC末端の5アミノ酸残基(配列番号21)を、他のGタンパク質のC末端の5アミノ酸残基に置換したものを作製して用いた。Giタンパク質サブファミリーには、Gi1、Gi2、Gi3タンパク質があり、Gi1とGi2のC末端の5アミノ酸残基の配列は共通の配列番号22に記載の配列である。GqiキメラはGqタンパク質のC末端の5アミノ酸残基をこのGi1とGi2のC末端の5アミノ酸残基(配列番号22)に組み換えて作製した。Gqi3キメラ、Gqoキメラ、及びGqzキメラは、GqのC末端の5アミノ酸残基を、それぞれ、Gi3のC末端の5アミノ酸残基(配列番号23)、GoのC末端の5アミノ酸残基(配列番号24)、GzのC末端の5アミノ酸残基(配列番号25)に組み換えて作製した。これらのGタンパク質キメラは、共役する受容体から刺激が入った場合、Gqを介した細胞内へのシグナル伝達及び増幅因子として機能するので、SREへシグナルを伝達することができる。
コラーゲンIコートされた96ウェルプレート(IWAKI社)に、293EBNA細胞を、1ウェル当たり1.5×104細胞となるように、10% FCSを含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で播種して一晩培養後、1) プラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1(1ウェル当たり1 ng)、及び2) SREのレポーター活性を測定する為のプラスミドpSRE-Luc(CLONTECH社)(1ウェル当たり10 ng)を、或いは1)及び2)のプラスミドとさらに3) 各種Gタンパクの過剰発現による作用を調べる為のプラスミドpEF-BOS-dhfr-Gq、pEF-BOS-dhfr-G11、pEF-BOS-dhfr-G12、pEF-BOS-dhfr-G13、pEF-BOS-dhfr-G14、pEF-BOS-dhfr-G16、pEF-BOS-dhfr-Gqi、pEF-BOS-dhfr-Gqi3、pEF-BOS-dhfr-Gqo、またはpEF-BOS-dhfr-Gqz(1ウェル当たり10 ng)をトランスフェクション試薬(LipofectAMINE 2000; Invitrogen社)を用いて遺伝子導入した。なお、コントロールとして、1)のプラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1をプラスミドpEF-BOS-dhfr(すなわち、LPSR1遺伝子を含まない空ベクター)に代え、及び2)のプラスミドを、或いはこれらのプラスミドにさらに3)のプラスミドを遺伝子導入した。
その後、さらに一晩培養し、FCSを含まないDMEM培地に置換して6時間培養した。培地を吸引し、細胞溶解液(細胞溶解液LCβ;東洋インキ)で溶解した後、そのルシフェラーゼ活性を、市販の測定キット(ピッカジーン発光キット;東洋インキ)及び測定装置(ML3000 microtiter plate luminometer; Dynatech Laboratories社)を用いて測定した。
その結果、コントロールのpEF-BOS-dhfrとpSRE-Lucを遺伝子導入した結果と比べて、プラスミドpEF-BOS-dhfr-hLPSR1とpSRE-Lucを遺伝子導入した細胞では、pEF-BOS-dhfr-G13をさらに遺伝子導入した条件でのみ、有意にルシフェラーゼ活性の上昇が観察された。その他のGタンパク及びGタンパク質キメラを発現するプラスミドを遺伝子導入した条件では、コントロールのpEF-BOS-dhfrとpSRE-Lucを遺伝子導入した結果と比べて有意な差は認められなかった。
以上のことから、LPSR1は各種Gタンパクのうち、G13に共役し、G13を介して細胞内へシグナルを伝達する受容体であることが明らかとなった。
実施例2ではpEF-BOS-dhfr-G13をさらに遺伝子導入していないが、使用した293EBNA細胞には内在的にG13を発現していることが確認できており、LPSR1は、内在性のG13を介してLysoPSによるアゴニスト活性をSREに伝達していると考えられる。
[実施例4]
ラット腹腔由来の肥満細胞におけるLPSR1の発現解析
ラット(Wister rat;日本チャールズリバー社)をエーテル麻酔にかけ、大腿部動脈切断により放出致死させた後、50 mlの溶液A(1 unit/ml ヘパリン、0.1% ウシ血清アルブミン、1×Hanks’Balanced Salt Solution)を腹腔内投与した。3分間腹部をマッサージした後、腹水を回収して300gで1分間遠心した。沈殿した細胞を2 mlの溶液Aで再懸濁し、4 mlの35%ウシ血清アルブミン溶液(Sigma社)上に重層し、25分間室温で静置した。その後、400×gで20分遠心し、沈殿した肥満細胞層を回収した。調製した肥満細胞の純度はCytospin 3(Shandon Scientific Limited社)で遠心し、細胞塗沫標本を作製して確認した。細胞塗沫標本を鑑別用血液染色(Diff-Quik;国際試薬社)で染色後、顕微鏡下で観察し、形態的特徴から肥満細胞の割合を求めたところ、90%以上が肥満細胞であった。
調製したラット腹腔肥満細胞のcDNA合成は市販のキットを用いて添付のマニュアルに従い行った。全RNA精製はRNeasy(Qiagen社)を用い、精製した全RNA 5μgからSUPERSCRIPT First-Strand Sybthesis System for RT-PCR(Invitrogen社)を用いてcDNAを合成し、1 mlのcDNA溶液を得た。
作製したラット腹腔肥満細胞由来cDNAを鋳型として、定量的PCR法にてLPSR1の発現量を定量した。解析はシークエンスディテクター(Prism7900 Sequence Detector;Applied Biosystems社)を用いて行なった。rLPSR1を特異的に認識するプライマーセットとして、配列番号26で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、配列番号27で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いた。PCRは、5 μlのSYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems社)に40 μMの前記プライマーをそれぞれ0.075 μlと前記のcDNA溶液の10倍希釈液を4 μlと水を0.85 μl加えて、95℃で10分間インキュベーションした後、95℃(15秒間)/59℃(60秒間)からなるサイクルを45回繰り返した。また、mRNA発現量算出の標準曲線を得るために、ラットゲノムDNA(CLONTECH社)を鋳型として、前記プライマーセットを用いて同条件のPCRを行った(Andrewら、J. Neurosci. Methods.、第98巻、第9-20頁、2000年)。
さらに肥満細胞の発現マーカー遺伝子である、ラットc-kit、及びラットmast cell protease-II(以下RMCP-IIと略す)の発現量を算出するために、cDNA及びラットゲノムDNAをそれぞれ鋳型として、ラットc-kitを特異的に認識するプライマーセットとして、配列番号28で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、配列番号29で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとをプライマーセットとし、RMCP-IIを特異的に認識するプライマーセットとして、配列番号30で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、配列番号31で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとをプライマーセットとして用い、同条件のPCRを行った。
その結果、LPSR1、c-kit、及びRMCP-IIのmRNA発現量は13300コピー、599000コピー、及び16000コピーであった。肥満細胞マーカー遺伝子であるc-kit、及びRMCP-IIの発現が確認されたことから、調製した細胞が肥満細胞であることが確認された。また、その肥満細胞にはLPSR1のmRNAが発現していることが判明した。LysoPSがラット腹腔由来の肥満細胞の脱顆粒反応を惹起、促進させることが知られているが、本実施例の結果は、肥満細胞に発現したLPSR1が脱顆粒反応の惹起、及び増強に関わることを裏付けている。
[実施例5]
ヒト組織におけるLPSR1の免疫組織染色解析
正常ヒト組織(胃、大腸、小腸、胸腺、扁桃、鼻粘膜、滑膜、気管支)、及び病態ヒト組織(喘息患者の気管、気管支炎患者の気管支、クローン病患者の小腸、リウマチ患者の滑膜、アレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜)を、パラフィンブロックよりマイクロトームを用いて4〜5ミクロンのスライスを作成し、スライドに張りつけた。キシレン/アルコールにより脱パラフィンを実施した。免疫染色はDAKO Autostainer(DAKO社)を用いて、DAKO serum free protein block(DAKO社)にて20分間ブロックし、続いて、1次抗体(LPSR1に対するウサギポリクローナル抗体(LifeSpan社))で45分間、ビオチン化二次抗体(Vector anti-rabbit BA-1000 secondary; Vector社)で30分間、インキュベートした。染色は、スライドを洗浄後、Vector ABC-AP(Vector社)を用いて、Vector Red(Vector社)を基質として実施した。
その結果、正常ヒト組織(胃、大腸、小腸、胸腺、扁桃、鼻粘膜)にある肥満細胞が強く染色されていることがわかった。また、病態ヒト組織(喘息患者の気管、気管支炎患者の気管支、クローン病患者の小腸、リウマチ患者の滑膜、アレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜)にある肥満細胞においても強い染色が認められた。例として、図2の(A)に小腸、(B)にリウマチ患者の滑膜、(C)に気管支炎患者の気管支の染色像を示す(肥満細胞を矢印で示した)。特に、リウマチ患者の滑膜と、喘息患者及び気管支炎患者の気管支での肥満細胞の染色度合いは、正常のそれらと比較して上昇していた。本実施例の結果は、LPSR1タンパクが種々のヒト組織の肥満細胞に発現しており、炎症に伴う肥満細胞の脱顆粒反応の惹起、及び増強に関わっていることを裏付けている。
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。具体的には、配列表の配列番号5-20の配列で表される各塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。
LysoPS受容体LPSR1を発現させた細胞におけるLysoPSの細胞内シグナル伝達への効果を示すグラフである。縦軸はシグナル伝達の強度を表すルシフェラーゼ活性(未刺激時との比率)を表している。横軸はLysoPSの濃度(μM)を示す。○はヒトLysoPS受容体を発現させた細胞、●はラットLysoPS受容体を発現させた細胞、△はヒト及びラットLysoPS受容体遺伝子が組み込まれていない空ベクターを発現させた細胞を示す。 (A)健常人の小腸、(B)リウマチ患者の滑膜、(C)気管支炎患者の気管支におけるLysoPS受容体の免疫染色像を示す図である。矢印は肥満細胞を示す。

Claims (9)

  1. (a) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、しかもリゾホスファチジルセリン受容体活性を有するポリペプチド、
    (c) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/若しくは挿入されたアミノ酸配列を含み、しかもリゾホスファチジルセリン受容体活性を有するポリペプチド、又は
    (d) 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が80%以上であるアミノ酸配列を含み、しかもリゾホスファチジルセリン受容体活性を有するポリペプチド
    である、リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール。
  2. 配列番号2若しくは配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項1に記載のリゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール。
  3. 請求項1に記載のポリペプチドを発現している細胞である、リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール。
  4. 細胞が、請求項1に記載のポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞である、請求項3に記載のリゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤の検出ツール。
  5. 請求項3に記載の細胞と、試験物質とを、リゾホスファチジルセリン存在下で接触させる工程、及び
    試験物質による細胞内シグナル伝達の誘導又は抑制を分析する工程
    を含む、試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法。
  6. 請求項1に記載のポリペプチド、請求項3に記載の細胞、又は請求項3に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、標識したリゾホスファチジルセリン存在下で接触させる工程、及び
    前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識したリゾホスファチジルセリンの結合量を分析する工程
    を含む、試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体リガンドであるか否かを検出する方法。
  7. 請求項1に記載のポリペプチド、請求項3に記載の細胞、又は請求項3に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、リゾホスファチジルセリン及び標識したGTPγS存在下で接触させる工程、並びに
    前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識GTPγSの結合量を分析する工程を含む、試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する方法。
  8. 請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法、或いは、これらを組み合わせることによる、リゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、及び
    リゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤を選択する工程
    を含む、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療及び/又は予防剤をスクリーニングする方法。
  9. 請求項1に記載のポリペプチド、請求項3に記載の細胞、又は請求項3に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、リゾホスファチジルセリン存在下で接触させる工程、
    試験物質がリゾホスファチジルセリン受容体リガンド若しくはアンタゴニスト、又はリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤であるか否かを検出する工程、並びに
    リゾホスファチジルセリン受容体アンタゴニスト若しくはリゾホスファチジルセリン受容体活性減弱剤を選択する工程
    を含む、アレルギー性疾患及び/又は慢性炎症疾患の治療剤及び/又は予防剤をスクリーニングする方法。
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