JP2005304438A - 新規スクリーニング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】循環器疾患改善の医薬の有効成分として有用な、PAMP受容体の活性を修飾する物質のスクリーニングツールを提供する。
【解決手段】前記スクリーニングツールは、MRGX2又はその機能的等価改変体若しくは相同ポリペプチド、あるいは、これらを発現している細胞からなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、循環器疾患を制御する物質のスクリーニング方法に関する。
強力な血圧拡張性の降圧ペプチドであるアドレノメジュリン(AM)を発現するAM前駆遺伝子からは、AMと全く構造の異なる生理活性ペプチドPAMP(Proadrenomedullin N-terminal 20 peptide)が産生される(非特許文献1)。20アミノ酸からなるペプチドであるPAMP(以下、PAMP−20)のほかに、PAMP−20のN末端側8残基が欠落したC末端側12残基からなるPAMP−12も主要分子型として存在し、PAMP−20及びPAMP−12(以下、PAMP類)は降圧作用を示すことが知られている(非特許文献2)。PAMP類は副腎クロマフィン細胞においてカルバコール刺激によるカテコラミン分泌を濃度依存的に抑制するとともにカテコラミンの合成も阻害することが観察されており(非特許文献3,4)、このことから、PAMP類の降圧作用は末梢交感神経活動を制御することを機序とするものであり、AMが血管に直接作用する機序とは異なるものであると考えられている(非特許文献5)。また、PAMP類は副腎からのアルドステロン分泌を阻害することも観察されており(非特許文献6)、この結果として降圧作用の発現に関連していることも考えられている。一方、PAMP類と病態との関連では、高血圧(非特許文献7)、鬱血性心不全(非特許文献8)、慢性腎疾患(非特許文献9)において血中PAMP類濃度が増加していることが観察されている。また、慢性糸球体腎炎患者では血中及び尿中PAMP類濃度の低下が観察されている(非特許文献10)。
しかしながら、これまでPAMP受容体が少なくとも副腎に存在し(非特許文献11)、かつその作用点がGタンパク質共役型受容体であることを示唆する報告があるものの(非特許文献12,13)、その受容体のタンパク質及びそれをコードする遺伝子は同定されておらず、簡便な化合物スクリーニング系の構築が困難であったため、PAMP受容体アゴニスト及びアンタゴニストの開発は進展していなかった。
また、Gタンパク質共役型受容体であるMRGX2をコードするDNA及び前記DNAがコードする推定アミノ酸配列については報告があり、更に内在性リガンドをコルチスタチンとする報告もあるが、PAMP類との関係は知られていない(非特許文献14)。
「フェブス・レター(FEBS Letter)」,(オランダ),1994年,351巻,35-37頁 「フェブス・レター(FEBS Letter)」,(オランダ),1997年,414巻,105-110頁 「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)」,(米国),1995年,96巻,1672-1676頁 「モレキュラー・ブレイン・リサーチ(Molecular Brain Research)」,(オランダ),2001年,87巻,175-183頁 「ペプチド(Peptide),(米国),2001年,22巻,1693-1711頁 「ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクリノロジー・アンド・メタボリズム(Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism)」,(米国),1998年,83巻,253-257頁 「アナルズ・オブ・クリニカル・バイオケミストリー(Annals of Clinical Biochemistry)」,(英国),1999年,36巻,622-628頁 「クリニカル・カルジオロジー(Clinical Cardiology)」,(米国),1999年,22巻,113-117頁 「キドニー・インターナショナル(Kidney International)」,(米国),1996年,55巻,S148-149頁 「アメリカン・ジャーナル・オブ・キドニー・ディジーズ(American Journal of Kidney Diseases)」,(米国),1999年,34巻,114-119頁 「ライフ・サイエンス(Life Science)」,(英国),1998年,62巻,439-443頁 「フェブス・レター(FEBS Letter)」,(オランダ),1997年,413巻,462-466頁 「サーキュレーション・リサーチ(Circulation Research)」,(米国),1999年,84巻,445-450頁 「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)」,(米国),2003年,278巻,44400-44404頁
本発明は、PAMP受容体を使用した該受容体の活性を修飾する物質のスクリーニング法、及び、当該受容体の活性を修飾する物質を有効成分とする医薬、特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患改善の医薬の提供を課題としている。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(以下、MRGX2と称することがある)が、PAMP類に反応する受容体であることを見出し、MRGX2それ自体、若しくはMRGX2を発現する細胞を用いて、PAMP受容体活性を修飾する物質、すなわち、PAMP受容体リガンド、PAMP−12若しくはPAMP−20アゴニスト又はアンタゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤をスクリーニングすることができることを明らかにした。また、MRGX2がGi及びGqに共役することを明らかにし、MRGX2若しくはMRGX2を発現する細胞を用い、試験物質がPAMP受容体活性を修飾する物質であるか否かを検出する方法、及び前記検出方法を用いた循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患)の治療及び/又は予防剤のスクリーニング方法を確立し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
〔1](1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、又は、
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列における1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド
からなる、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール;
[2]ポリペプチドが、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、[1]に記載のPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール;
[3][1]に記載のポリペプチドを発現している細胞からなる、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール;
[4]細胞が、[1]に記載のポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞である、[3]に記載のPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール;
[5](1)[1]に記載のポリペプチド又は[3]に記載の細胞と、試験物質とを、標識したPAMP受容体リガンド存在下で接触させる工程、及び
(2)前記ポリペプチド又は細胞への標識リガンドの結合量を分析する工程
を含む、試験物質がPAMP受容体リガンドであるか否かを検出する方法;
[6](1)[3]に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程、及び
(2)細胞内におけるcAMP濃度の変化を分析する工程
を含む、試験物質がPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法;
[7][3]に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程が、PAMP受容体アゴニスト共存下で行われる、[6]に記載の検出する方法;
[8](1)[3]に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程、及び
(2)細胞内におけるCa2+濃度の変化を分析する工程
を含む、試験物質がPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法;
[9][3]に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程が、PAMP受容体アゴニスト共存下で行われる、[8]に記載の検出する方法;
[10](1)[3]に記載の細胞と試験物質とを、標識したGTPγS存在下で接触させる工程、及び
(2)前記細胞への標識GTPγSの結合量を分析する工程
を含む、試験物質がPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法;
[11][3]に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程が、PAMP受容体アゴニスト共存下で行われる、[10]に記載の検出する方法;並びに
[12](1)[5]〜[11]に記載の方法からなる検出する工程、及び
(2)PAMP−12若しくはPAMP−20アゴニスト、又は、PAMP受容体活性増強剤を選択する工程
を含む、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患の治療及び/又は予防剤をスクリーニングする方法
に関する。
本明細書において、「検出用ツール」とは、検出のために用いる物(具体的には、検出のために用いるポリペプチド又はポリペプチドを発現している細胞)を意味する。「PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール」とは、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニストを検出するために、本発明の検出方法又はスクリーニング方法において、試験物質を接触させる対象となるポリペプチド又は細胞である。
[1]若しくは[2]に記載のポリペプチド、又は[3]若しくは[4]に記載の細胞の、PAMP受容体リガンド、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤検出のための使用、並びに、循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、例えば、高血圧、心不全、敗血症など)又は慢性腎疾患(例えば、腎不全、糸球体腎炎など)の治療及び/又は予防剤スクリーニングのための使用も、本発明に含まれる。
本発明のスクリーニング方法は、循環器疾患の内、特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、特に好ましくは高血圧の治療及び/又は予防剤をスクリーニングするのに適している。
前記「Gi」は、受容体と共役して細胞内へのシグナル伝達及び増幅因子として機能するGタンパク質のサブファミリーの1つであって、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制するGタンパク質である。アデニル酸シクラーゼの活性が抑制されると、例えば、細胞内cAMP濃度が低下する。従って、Giと共役している受容体のシグナル伝達の有無及び強弱は、細胞内におけるcAMP濃度の変動を指標として検出することができる。
また、前記「Gq」は、受容体と共役して細胞内へのシグナル伝達及び増幅因子として機能するGタンパク質のサブファミリーの1つであって、ホスホリパーゼCの活性を促進するGタンパク質である。ホスホリパーゼCの活性が促進されると、例えば、細胞内Ca2+濃度が上昇する。従って、Gqと共役している受容体のシグナル伝達の有無及び強弱は、細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として検出することができる。
更に、前記「フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12によって抑制される」及び「フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−20によって抑制される」とは、実施例2に記載のアッセイで、PAMP−12及びPAMP−20のEC50がそれぞれ60nmol/L以下及び260nmol/L以下であることをいう。
また、或るポリペプチドが「フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制される」か否かの判定方法は、特に限定されるものではないが、例えば、実施例2に記載の方法によって確認することができる。
具体的には、例えば、判定対象ポリペプチドをコードするDNAを挿入した発現ベクターで宿主細胞[例えば、CHO−dhfr(−)株]を形質転換することにより、判定対象ポリペプチドを安定発現する試験用細胞を作製し、得られた試験用細胞を所定期間(例えば、1日間)培養後、αMEM(核酸非存在)培地/1mmol/L 3−イソブチル−1−メチルキサンチン/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)で短時間(例えば、10分間)処理した後、1μmol/Lフォルスコリン/PAMP−12(0〜1μmol/L)を滴下し、所定期間(例えば、37℃で30分間)後に培養上清を除去し、細胞を溶解することによりcAMP産生量を測定する。得られた測定値から、PAMP−12共存下でのcAMP量の用量依存曲線を作製し、PAMP−12のEC50が60nmol/L以下である場合、前記判定対象ポリペプチドが「フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12によって抑制される」と判定することができる。
PAMP−12の代わりにPAMP−20を使用し、PAMP−20のEC50が260nmol/L以下である場合、前記判定対象ポリペプチドが「フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−20によって抑制される」と判定することができる。
「PAMP受容体」とは、PAMP−12及び/又はPAMP−20の受容体であり、すなわち、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、又は、
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列における1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチドをいう。
本発明の検出用ツール又はスクリーニング方法によれば、PAMP受容体リガンド、PAMP類アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤をスクリーニングすることができる。PAMP受容体リガンド、前記アゴニスト又はアンタゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤は、例えば、循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、例えば、高血圧、心不全、敗血症など)又は慢性腎疾患(例えば、腎不全、糸球体腎炎など)の治療及び/又は予防剤として有用な物質である。
1.検出用ツール
本発明のPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツールには、ポリペプチド型検出用ツールと、細胞型検出用ツールとが含まれる。
1)ポリペプチド型検出用ツール
本発明の検出用ツールとして使用することができるポリペプチドには、
(i)ヒトMRGX2、すなわち、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(ii)機能的等価改変体、すなわち、(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、あるいは、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列における1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド;並びに
(iii)相同タンパク質、すなわち、配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド
が含まれる。
本発明のポリペプチド型検出用ツールとして用いることのできる、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、330個のアミノ酸残基からなるPAMP受容体MRGX2である。配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一配列は知られていたが、これがPAMP受容体のアミノ酸配列であることは開示も示唆もなく、PAMP受容体は、本発明者が今回始めて解明するまで、その実体は同定されていなかった。
本発明のポリペプチド型検出用ツールとして用いることのできる機能的等価改変体として、(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及びPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、あるいは、(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、全体として1〜10個(好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及びPAMP−20によって抑制されるポリペプチドがより好ましい。
また、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチドとして、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等を付加したポリペプチド(すなわち、融合ポリペプチド)も、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制される限り、含まれる。
前記マーカー配列としては、例えば、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、あるいは、精製等を容易に行なうための配列を用いることができ、例えば、FLAGエピトープ、ヘキサ−ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを挙げることができる。
本発明のポリペプチド型検出用ツールとして用いることのできる機能的等価改変体の起源は、ヒトに限定されない。
例えば、前述の(a)又は(b)に該当するヒトPAMP受容体MRGX2のヒトにおける変異体が含まれるだけでなく、前述の(a)又は(b)に該当するヒト以外の生物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)由来のPAMP受容体及びヒトPAMP受容体を元にして遺伝子工学的に人為的に改変したタンパク質なども含まれる。なお、本明細書において「変異体」(variation)とは、同一種内の同一タンパク質にみられる個体差、あるいは、数種間の相同タンパク質にみられる差異を意味する。なお、遺伝子組換え技術については、特に断りがない場合、公知の方法(Maniatis, T. ら, "Molecular Cloning-A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1982等)に従って実施することが可能である。
例えば、ヒトMRGX2遺伝子の塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物[例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)]由来の試料(例えば、総RNA若しくはmRNA画分、cDNAライブラリー、又はファージライブラリー)とを用いてPCR法又はハイブリダイゼーション法を実施することにより、タンパク質の遺伝子を取得し、その遺伝子を適当な発現系を用いて発現させ、発現したタンパク質が、例えば、実施例2に記載の方法により、PAMP類に反応することを確認することにより、所望のタンパク質を取得することができる。
また、前記の遺伝子工学的に人為的に改変したタンパク質は、常法、例えば、部位特異的突然変異誘発法(site-specific mutagenesis; Mark, D. F. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5662-5666, 1984等)により、タンパク質の遺伝子を取得し、その遺伝子を適当な発現系を用いて発現させ、発現したタンパク質が、例えば、実施例2に記載の方法により、PAMP類に反応することを確認することにより、所望のタンパク質を取得することができる。
本発明のポリペプチド型検出用ツールとして用いることのできる相同タンパク質として好ましいポリペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列との配列同一性が80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及びPAMP−20によって抑制されるポリペプチドである。
なお、本明細書における前記「配列同一性」とは、BLAST(Basic local alingment search tool; Altschul, S. F. ら, J. Mol. Biol., 215, 403-410, 1990)検索により得られた同一性の値を意味し、アミノ酸配列の配列同一性は、BLAST検索アルゴリズムを用いて決定することができる。具体的には、BLASTパッケージ(sgi32bit版,バージョン2.0.12;NCBIより入手)のbl2seqプログラム(Tatiana A. Tatusova及びThomas L. Madden, FEMS Microbiol. Lett., 174, 247-250, 1999)を用い、デフォルトパラメーターに従って算出することができる。ペアワイズ・アラインメント・パラメーターとして、プログラム名「blastp」を使用し、Gap挿入Cost値を「0」で、Gap伸長Cost値を「0」で、Query配列のフィルターとして「SEG」を、Matrixとして「BLOSUM62」をそれぞれ使用する。
本発明のポリペプチド型検出用ツールとして用いることのできる各種ポリペプチド(すなわち、ヒトPAMP受容体MRGX2、機能的等価改変体、及び相同タンパク質;以下、検出用ツール用ポリペプチドと称する)は、種々の公知の方法によって得ることができ、例えば、目的タンパク質をコードする遺伝子を用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。より具体的には、後述する細胞(すなわち、検出用ツール用ポリペプチドを発現している細胞)を得、受容体タンパク質の分離及び精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から目的タンパク質を分離及び精製することにより調製することができる(国際公開WO02/36631号パンフレット参照)。
検出用ツール用ポリペプチドを調製する際に、それをコードする遺伝子を取得する方法は、常法を用いればよく特に限定されるものではない(国際公開WO02/36631号パンフレット参照)が、例えば、ヒトPAMP受容体MRGX2を調製する場合には、それをコードする遺伝子として、例えば、配列番号1で表される塩基配列からなるDNAを用いることができる。
2)細胞型検出用ツール
本発明のPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツールとして使用することができる細胞には、
(i)ヒトPAMP受容体MRGX2を発現している細胞;
(ii)機能的等価改変体を発現している細胞;及び
(iii)相同タンパク質を発現している細胞
が含まれる。
本発明の細胞型検出用ツールとして用いることのできる細胞(検出用ツール用ポリペプチドを含む膜画分を含む。以下、検出用ツール用細胞と称する)は、細胞型検出用ツールとして用いる際に前記検出用ツール用ポリペプチドを発現している限り、特に限定されるものではなく、人為的に前記ポリペプチドを発現させた形質転換細胞であることもできるし、又は、検出用ツール用ポリペプチドを発現することが知られている天然の細胞又はその細胞株であることもできるが、人為的に前記ポリペプチドを発現させた形質転換細胞がより好ましい。
本発明の細胞型検出用ツールとして用いることのできる各種形質転換細胞(以下、検出用ツール用形質転換細胞と称する)を作成するために使用することのできる宿主細胞は、検出用ツール用ポリペプチドを発現することができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、通常使用される公知の微生物、例えば、大腸菌又は酵母(Saccharomyces cerevisiae)、あるいは、公知の培養細胞、例えば、脊椎動物細胞(例えば、CHO細胞、HEK293細胞、又はCOS細胞)又は昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)を挙げることができる。前記脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y., Cell, 23, 175-182, 1981)、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub, G. 及びChasin, L. A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216-4220, 1980)、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞、あるいは、前記HEK293細胞にエプスタイン・バーウイルスのEBNA−1遺伝子を導入した293−EBNA細胞(Invitrogen社)を挙げることができる。
検出用ツール用形質転換細胞を作成するために使用することのできる発現ベクターは、検出用ツール用ポリペプチドを発現することができる限り、特に限定されるものではなく、使用する宿主細胞の種類に応じて、適宜選択することができる(国際公開WO02/36631号パンフレット参照)。
例えば、脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用することができ、更に必要により、複製起点を有していることができる。前記発現ベクターの例としては、例えば、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani, S. ら, Mol. Cell. Biol., 1, 854-864, 1981)、ヒトの延長因子プロモーターを有するpEF−BOS(Mizushima, S. 及びNagata, S., Nucleic Acids Res., 18, 5322, 1990)、又はサイトメガロウイルスプロモーターを有するpCEP4(Invitrogen社)等を挙げることができる。
検出用ツール用形質転換細胞は、常法に従って培養することができ、前記培養により細胞表面に検出用ツール用ポリペプチドが生産される。前記培養に用いることのできる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択することができる。例えば、COS細胞の場合には、例えば、RPMI−1640培地又はダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に、必要に応じて牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加した培地を使用することができる。また、293−EBNA細胞の場合には、牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えた培地を使用することができる。
2.PAMP受容体リガンド、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤検出方法
前記検出用ツール用ポリペプチド、又は検出用ツール用細胞(以下、検出用ツール用ポリペプチド及び前記細胞を総称して、リガンド検出用ツールと称する)を検出用ツールに用いて、試験物質がPAMP受容体リガンド、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出することができる。
本発明による、試験物質がPAMP受容体リガンド、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法には、
1)PAMP受容体に対するリガンドであるか否かを検出する方法(以下、リガンド検出方法と称する);
2)細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法(以下、Ca2+型検出方法と称する);
3)細胞内におけるcAMP量の変動を指標として、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法(以下、cAMP型検出方法と称する);及び
4)GTPγS結合法を利用するPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法(以下、GTPγS結合型検出方法と称する)
が含まれる。これらの検出方法について、順次説明する。
1)リガンド検出方法
本発明のリガンド検出方法は、(i)リガンド検出用ツールと、(ii)標識したPAMP受容体リガンドとを用いる限り、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により実施することができる。
まず、リガンド検出用ツールを調製する。アッセイ条件(例えば、使用する緩衝液の種類、温度、及び濃度、緩衝液に添加するイオンの種類及び濃度、並びにアッセイ系のpH)を最適化し、最適化したバッファー中で、リガンド検出用ツールと、標識リガンドとを、試験物質と共に一定時間インキュベーションする。前記標識リガンドとしては、例えば、[125I]−PAMP−12を用いることができる。標識リガンドは、例えば、フェニックス(Phoenix)社から購入することもできるが、クロラミン−T法などの一般的なヨウ素標識法により作製することもできる。反応後、反応液をガラスフィルター等で濾過し、適量のバッファーで洗浄した後、フィルターに残存する放射活性をガンマ線カウンター等で測定する。得られた放射活性リガンドの結合阻害を指標として、PAMP受容体に対するリガンドであるか否かを検出することができる。すなわち、試験物質不在下の場合のフィルター残存放射活性よりも、試験物質存在下の場合のフィルター残存放射活性が低下した場合には、前記試験物質は、PAMP受容体に対するリガンドであると判定することができる。好ましくは、IC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の場合リガンドと判定する。
2)Ca2+型検出方法
本発明のCa2+型検出方法は、細胞として、検出用ツール用ポリペプチドを発現している細胞を使用する。なお、前記細胞は、PAMP類を作用させても細胞内Ca2+濃度が上昇しない細胞に、検出用ツール用ポリペプチドを発現させた形質転換細胞であることが好ましい。
本発明のCa2+型検出方法においてアゴニストであるか否かを検出する場合には、前記細胞と試験物質とを接触させ、前記細胞のCa2+濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。Ca2+濃度の変化は、例えば、カルシウム結合性蛍光試薬(例えば、fura2又はFluo−3,AM等)を用いて、直接的にCa2+濃度の変化を分析することもできるし、あるいは、Ca2+濃度に依存して転写量が調節される遺伝子[例えば、ルシフェラーゼの遺伝子の上流にアクチベータープロテイン1(AP1)応答配列を挿入した遺伝子]の転写活性を分析することにより、間接的にCa2+濃度の変化を分析することもできる。
前記細胞と試験物質とを接触させた場合に、細胞内のCa2+濃度が上昇すれば、前記試験物質は、PAMP受容体に対するアゴニストであると判定することができる。なお、コントロールとして、検出用ツール用ポリペプチドを発現しているCa2+型検出用細胞の代わりに、検出用ツール用ポリペプチドが発現していない細胞を用いて同様の操作を行ない、前記試験物質により前記細胞内のCa2+濃度が上昇しないことを確認することが好ましい。例えば、実施例3に記載の条件で行なうことができ、アゴニストとしては、実施例3に記載の条件でEC50が10μmol/L以下の化合物がより好ましい。
本発明のCa2+型検出方法においてアンタゴニストであるか否かを検出する場合には、前記細胞と試験物質とを、PAMP受容体のアゴニスト(例えば、PAMP−12)の共存下において接触させ、Ca2+型検出用細胞内のCa2+濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。細胞と試験物質とを、PAMP受容体のアゴニストの共存下において接触させた場合に、前記アゴニストによる細胞内のCa2+濃度の上昇が、前記試験物質により阻害又は抑制されれば、前記試験物質は、PAMP受容体に対するアンタゴニストであると判定することができる。例えば、実施例3に記載の条件でPAMP−12を共存させ行なうことができ、好ましくは、前記条件でIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは、1μmol/L以下)の化合物をアンタゴニストと判定する。
なお、コントロールとして、前記細胞とPAMP受容体のアゴニストとを、試験物質の不在下において接触させ、前記アゴニストによるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇の程度を確認しておくことが望ましい。
また、GPCRには、内在性リガンドとは異なる部位に結合して、リガンドの親和性を亢進させたり(positive allosteric modulator)、リガンドの親和性を減弱させたり(negative allosteric modulator)する受容体活性増強剤又は減弱剤であるアロステリック化合物(allosteric modulator)が存在する(Pharmacological Reviews 54:323-374, 2002)。前述のアンタゴニストであるか否かを検出する場合と同様に、前記細胞と試験物質とを、PAMP受容体のアゴニスト(例えば、PAMP−12)の共存下において接触させ、Ca2+型検出用細胞内のCa2+濃度の変化を、直接的又は間接的に分析することにより、受容体活性増強剤又は減弱剤を検出することもできる。PAMP受容体のアゴニスト不在下ではCa2+濃度の変化は生じないが、試験物質とPAMP受容体のアゴニスト共存によってCa2+濃度の上昇が亢進する場合、受容体活性増強剤として判定することができる。また、アンタゴニストとして取得することができた化合物が、上記リガンド検出方法で示す実験において結合阻害が認められなかった場合(non-competitive)、受容体活性減弱剤として判定することができる。
3)cAMP型検出方法
本発明のcAMP型検出方法は、細胞として、検出用ツール用ポリペプチドを発現している細胞を使用し、検出用ツール用ポリペプチドを発現させた形質転換細胞であることが好ましい。通常の細胞ではGiが構成的に発現しているので、検出用ツール用ポリペプチドを発現することが知られている天然の細胞又はその細胞株を用いるか、あるいは、検出用ツール用ポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより、前記形質転換細胞を得ることができる。なお、前記形質転換細胞は、形質転換する前の宿主細胞が、PAMP類を作用させても細胞内cAMP濃度が低下しない細胞であることが好ましい。このような細胞としては、例えば、CHO−dhfr(−)細胞を挙げることができる。
本発明のcAMP型検出方法においてアゴニストであるか否かを検出する場合には、cAMP型検出用細胞と試験物質とを接触させ、前記細胞内のcAMP濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。細胞と試験物質とを接触させる際には、cAMP濃度を上昇させることのできる化合物(例えば、フォルスコリン)を共存させることが好ましい。
cAMP濃度の変化は、例えば、市販のcAMP測定キット(Amersham社等)を用いて、直接的にcAMP濃度の変化を分析することもできるし、あるいは、cAMP濃度に依存して転写量が調節される遺伝子[例えば、ルシフェラーゼの遺伝子の上流にcAMP応答配列(CRE)を挿入した遺伝子]の転写活性を分析することにより、間接的にcAMP濃度の変化を分析することもできる。
前記細胞と試験物質とを接触させた場合に、細胞内のcAMP濃度が低下すれば、前記試験物質は、PAMP受容体に対するアゴニストであると判定することができる。この場合、cAMP濃度を上昇させることのできる化合物(例えば、フォルスコリン)を共存させておくと、試験物質によるcAMP濃度の低下を、より容易に判定することができる。また、コントロールとして、検出用ツール用ポリペプチドを発現している細胞の代わりに、検出用ツール用ポリペプチドが発現されていない細胞を用いて同様の操作を行ない、前記試験物質により前記細胞内のcAMP濃度が低下しないことを確認することが好ましい。例えば、実施例2に記載の条件で行なうことができ、好ましくは、実施例2に記載の条件でEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは、1μmol/L以下)の化合物をアゴニストとして判定する。
本発明のcAMP型検出方法においてアンタゴニスト、又は受容体活性増強剤若しくは減弱剤であるか否かを検出する場合には、前記細胞と試験物質とを、PAMP受容体のアゴニストの共存下において接触させ、細胞内のcAMP濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。cAMP型検出用細胞と試験物質とを、PAMP受容体のアゴニストの共存下において接触させた場合に、前記アゴニストによるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の低下が、前記試験物質により阻害又は抑制されれば、前記試験物質は、PAMP受容体に対するアンタゴニストであると判定することができる。この場合、cAMP濃度を上昇させることのできる化合物(例えば、フォルスコリン)を共存させておくと、試験物質によるcAMP濃度の変動を、より容易に判定することができる。例えば、実施例2記載の条件でPAMP−12を共存させ行なうことができ、好ましくは、前記条件でIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは、1μmol/L以下)の化合物をアンタゴニストとして判定する。
PAMP受容体のアゴニスト不在下ではcAMP濃度の変化は生じないが、試験物質とPAMP受容体のアゴニスト共存によってcAMP濃度の低下が亢進する場合、受容体活性増強剤として判定する。また、アンタゴニストとして取得することができた化合物が、上記リガンド検出方法で示す実験において結合阻害が認められなかった場合(non-competitive)、受容体活性減弱剤として判定する。
また、コントロールとして、前記細胞とPAMP受容体のアゴニストとを、試験物質の不在下において接触させ、前記アゴニストによるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の低下の程度を確認しておくことが望ましい。
4)GTPγS結合型検出方法
本発明のGTPγS結合型検出方法は、GTPγS結合法(Lazareno, S. 及びBirdsall, N. J. M., Br. J. Pharmacol., 109, 1120-1127, 1993)を利用して、PAMP受容体に対するアンタゴニスト若しくはアゴニスト、又は受容体活性増強剤若しくは減弱剤であるか否かを検出することができる。本発明のGTPγS結合型検出方法では、検出用ツール用細胞を使用し、前記細胞は、検出用ツール用ポリペプチドを発現させた形質転換細胞であることが好ましい。
例えば、以下の手順により実施することができる。
すなわち、検出用ツール用ポリペプチドを発現させた細胞膜を、20mmol/L Tris−HCl(pH7.4)、100mmol/L NaCl、10mmol/L MgCl、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、及び10μmol/L GDP混合溶液中で、35Sで標識されたGTPγS(250pmol/L)と混合する。試験物質存在下と試験物質不在下とでインキュベートした後、反応液をガラスフィルター等で濾過し、フィルターに残存するGTPγSの放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。試験物質存在下における特異的なGTPγS結合の上昇を指標に、PAMP−12又はPAMP−20アゴニストであるか否かを検出することができる。
また、試験物質存在下における、PAMP受容体のアゴニスト(例えば、PAMP−12又はPAMP−20)によるGTPγS結合上昇の抑制を指標に、PAMP−12又はPAMP−20アンタゴニスト、又は受容体活性増強剤若しくは減弱剤であるか否かを検出することができる。
例えば、実施例4に記載の条件で行なうことができ、好ましくは、実施例4に記載の条件でEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは、1μmol/L)の化合物をアゴニスト、PAMP−12共存下でのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは、1μmol/L)の化合物をアンタゴニストとして判定する。
PAMP受容体のアゴニスト不在下ではGTPγS結合の上昇は生じないが、試験物質とPAMP受容体のアゴニスト共存によってGTPγS結合の上昇が亢進する場合、受容体活性増強剤として判定する。また、アンタゴニストとして取得できた化合物が、上記リガンド検出方法で示す実験において結合阻害が認められなかった場合、受容体活性減弱剤として判定する。
3.スクリーニング方法
本発明の検出用ツール(ポリペプチド型検出用ツール及び細胞型検出用ツールの両方を含む)を用いると、PAMP受容体に対するリガンド、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤をスクリーニングすることができる。
既に説明したように、PAMP受容体アゴニストであるPAMP−12又はPAMP−20は、降圧作用を示す(FEBS Letter,1997年,414巻,105-110頁)。また、心血管反射調節系、自律神経系、神経内分泌系に関連した心血管及び交感神経系に対する調節制御機構に深く関わっていると考えられている(Peptide,2001年,22巻,1693-1711頁)。従って、これまで説明した検出用ツール用ポリペプチドそれ自体、あるいは、検出用ツール用細胞それ自体を、循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、例えば、高血圧、心不全、敗血症など)又は慢性腎疾患(例えば、腎不全、糸球体腎炎など)の治療及び/又は予防剤スクリーニングに使用することができる。
本発明の検出用ツールを用いてスクリーニングにかけることのできる試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett, N. K. ら, Tetrahedron, 51, 8135-8137, 1995)によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(Felici, F. ら, J. Mol. Biol., 222, 301-310, 1991)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。
本発明のスクリーニング方法は、検出方法により、以下の4つに大別されるが、いずれかの方法を用いて、あるいは、これらを組み合わせて、PAMP受容体に対するリガンド、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出し、試験物質の中からアゴニスト又はPAMP受容体活性増強剤を選択することにより、循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、例えば、高血圧、心不全、敗血症など)又は慢性腎疾患(例えば、腎不全、糸球体腎炎など)の治療及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
以下、本発明のスクリーニング方法である、
1)PAMP受容体に対するリガンドをスクリーニングする方法(以下、リガンドスクリーニング方法と称する);
2)細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤をスクリーニングする方法(以下、Ca2+型スクリーニング方法と称する);
3)細胞内におけるcAMP量の変動を指標として、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤をスクリーニングする方法(以下、cAMP型スクリーニング方法と称する);及び
4)GTPγS結合法を利用するPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤をスクリーニングする方法(以下、GTPγS結合型スクリーニング方法と称する)
について、順次説明する。
1)リガンドスクリーニング方法
本発明のリガンドスクリーニング方法は、本発明のリガンド検出方法により、PAMP受容体リガンドであるか否かを検出する工程、及び受容体リガンドを選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
例えば、試験物質を一定時間作用させ、[125I]−PAMP−12の結合阻害を指標に、好ましくはそのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、リガンドとして選択することができる。
本発明のリガンドスクリーニング方法でスクリーニングしたリガンドを、更に、以下に説明するCa2+型スクリーニング方法、cAMP型スクリーニング方法、及び/又はGTPγS結合型スクリーニング方法にかけ、アゴニスト又はアンタゴニストをスクリーニングすることにより、循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、例えば、高血圧、心不全、敗血症など)又は慢性腎疾患(例えば、腎不全、糸球体腎炎など)の治療及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
2)Ca2+型スクリーニング方法
本発明のCa2+型スクリーニング方法は、本発明のCa2+型検出方法により、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する工程、及びPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
例えば、実施例3記載の条件で行ったCa2+型検出方法により、そのEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)を、アゴニスト活性を有する物質としてスクリーニングすることができる。
また、前記Ca2+型検出方法において、例えば、そのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
3)cAMP型スクリーニング方法
本発明のcAMP型スクリーニング方法は、本発明のcAMP型検出方法により、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する工程、及びPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
例えば、実施例2に記載の条件で行ったcAMP型検出方法により、そのEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)を、アゴニスト活性を有する物質としてスクリーニングすることができる。
また、前記cAMP型検出方法において、そのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
4)GTPγS結合型スクリーニング方法
本発明のGTPγS結合型スクリーニング方法は、本発明のGTPγS結合型検出方法により、PAMP受容体アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する工程、及びPAMP受容体アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤を選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
例えば、実施例4に記載の条件で行ったGTPγS結合型検出方法により、そのEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)を、アゴニスト活性を有する物質としてスクリーニングすることができ、PAMP−12共存下、実施例4に記載の条件で行ったGTPγS結合型検出方法により、そのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
本発明のCa2+型スクリーニング方法、cAMP型スクリーニング方法、又はGTPγS結合型スクリーニング方法でアゴニスト又はアンタゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤をスクリーニングすることにより、循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、例えば、高血圧、心不全、敗血症など)又は慢性腎疾患(例えば、腎不全、糸球体腎炎など)の治療及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:MRGX2のクローニング》
本実施例では、以下に示す手順に従って、ヒトゲノムDNA(genomic DNA;clontech社)をテンプレートとして、PCR法により、MRGX2の全長cDNAを取得した。
配列番号3で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号4で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用いた。なお、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーの各々の5’末端には、XbaI認識部位を含む塩基配列が付加されている。PCRは、Taq DNAポリメラーゼ(Ex Taq DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、5%ジメチルスルホキシド(DMSO)存在下で、94℃(20秒間)/58℃(20秒間)/74℃(1.5分間)からなるサイクルを5回、94℃(20秒間)/55℃(20秒間)/74℃(1.5分間)からなるサイクルを5回、そして、94℃(20秒間)/50℃(20秒間)/74℃(1.5分間)からなるサイクルを25回、順次繰り返した。その結果、約1.1kbpのDNA断片が増幅された。このDNA断片を制限酵素XbaIで消化した後、プラスミドpEF−BOS−dhfr(Nucleic Acids Research, 18, 5322, 1990)のXbaI部位に挿入することにより、プラスミドpEF−BOS−dhfr−MRGX2を得た。
プラスミドpEF−BOS−dhfr−MRGX2におけるMRGX2遺伝子の塩基配列は、DNAシークエンサー(ABI377 DNA Sequencer; Applied Biosystems社)を用いてジデオキシターミネーター法により決定した。MRGX2遺伝子の塩基配列は、配列番号1で表される塩基配列のとおりであった。
配列番号1で表される塩基配列は、993塩基のオープンリーディングフレーム(ORF)を有しており、このORFから予測されるアミノ酸配列(330アミノ酸)は、配列番号2で表されるアミノ酸配列のとおりであった。
《実施例2:MRGX2安定発現CHO細胞株の樹立とPAMP−12又はPAMP−20によるcAMP産生阻害実験》
実施例1で得られたプラスミドpEF−BOS−dhfr−MRGX2をCHO−dhfr(−)株に、トランスフェクション試薬(LipofectAMINE 2000; GIBCO BRL社製)を用いて遺伝子導入し、αMEM(核酸非存在)培地/100nmol/Lメトトレキセート(和光純薬社製)/10%牛胎仔血清(FBS)にて2週間培養後、出現したコロニーを個別に取得し、MRGX2安定発現CHO細胞とした。
MRGX2安定発現CHO細胞とコントロールプラスミド(pEF−BOS−dhfr)導入CHO細胞を96ウェルプレートに1×10細胞で播種した。1日培養後、αMEM(核酸非存在)培地/1mmol/L 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma社製)/0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)で10分間処理した後、1μmol/Lフォルスコリン(和光純薬社製)/PAMP−12又はPAMP−20(0〜1μmol/L)を滴下した。37℃で30分後に培養上清を除去し、0.2%トリトン−X/リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて細胞を溶解した。
各条件における細胞のcAMP産生量の測定はcAMP HTRFシステム(シェーリング社製)を用いて行い、添付プロトコールに従って実施した。1μmol/Lフォルスコリン単独刺激でのcAMP産生量を100%とし、PAMP−12又はPAMP−20共存下でのcAMP量の用量依存曲線を作製した。PAMP−12に関する結果を図1に示す。用量依存曲線から、MRGX2に対するPAMP−12の応答性はEC50=57.2nmol/Lであった。一方、PAMP−20に対する応答性はEC50=251.1nmol/Lであり、コントロールプラスミド導入CHO細胞(Mock)ではPAMP−12又はPAMP−20添加によるcAMP産生量に変化は見られなかった。また、MRGX2安定発現CHO細胞のフォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12又はPAMP−20によって抑制されたことから、MRGX2が細胞内三量体Gタンパク質の内、Giと共役しており、MRGX2発現細胞の細胞内cAMP濃度の変化を測定することでアゴニスト及び/又はアンタゴニストのスクリーニングが可能であることが解った。
《実施例3:MRGX2安定発現CHO細胞株に対するPAMP−12による細胞内Ca2+濃度の変化》
96ウェルプレート(96well Black/clear bottom plat;BECTON DICKINSON社製)に、実施例2で得られたMRGX2安定発現CHO細胞を1ウェル当たり2×10細胞で播種して24時間培養後、培地を廃棄し、4μmol/L Fluo−3,AM(Molecular Probe社製)、0.004%Pluronic(登録商標)F−127及び10%FBSを含むHanks BSS(GIBCO社製)を1ウェル当たり100μL添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、細胞を20mmol/L HEPESを含むHanks BSSで4回洗浄して、1ウェル当たり100μLの20mmol/L HEPESを含むHanks BSSを添加した。細胞内Ca2+濃度の変化はFLIPR(Moleucular Device社製)を用いて経時的に測定した。すなわち、測定開始10秒後にPAMP−12を最終濃度3×10−6mol/Lから1×10−10mol/Lになるように添加し、添加後、50秒間は1秒ごとに、更に4分間は6秒ごとに蛍光強度を測定した。
結果を図2に示す。図2において、pEF−BOS−MRGX2を遺伝子導入した細胞の細胞内Ca2+濃度の変化データの蛍光強度の最高値を縦軸に、PAMP−12の濃度を横軸にプロットした。一方、コントロールプラスミド導入CHO細胞(Mock)では、PAMP−12による細胞内Ca2+濃度の変化は観察されなかった。MRGX2安定発現CHO細胞のPAMP−12による細胞内Ca2+濃度の変化についてロジスティック(Logistic)回帰法により用量依存性を解析した。その結果、PAMP−12はED50=41.0nmol/Lであることがわかった。以上のように、MRGX2は細胞内三量体Gタンパク質のGqと共役しており、MRGX2発現細胞の細胞内Ca2+濃度の変化を測定することでアゴニスト及び/又はアンタゴニストのスクリーニングが可能であることが解った。
《実施例4:GTPγS結合型実験によるMRGX2とPAMP−12の結合の検出》
15cm培養プレートに293−EBNA細胞(Invitrogen社)を播種して24時間培養後、実施例1で得られたプラスミドpEF−BOS−dhfr−MRGX2(15μg)を、トランスフェクション試薬(LipofectAMINE 2000; GIBCO BRL社製)を用いて遺伝子導入した。遺伝子導入から24時間後に細胞を回収及び洗浄し、5mmol/L EDTAとプロテアーゼインヒビターカクテルセット(CompleteTM;ベーリンガーマンハイム社)とを含有する20mmol/L Tris−HCl(pH7.4)に懸濁して、ホモジナイザー(POLYTRON; KINEMATICA社)にてホモジェナイズした。超遠心を行なった後、50mmol/L Tris−HCl(pH7.4)に懸濁し、これをMRGX2発現細胞膜画分とした。またpEF−BOS−dhfr−MRGX2の代わりにpEF−BOS−dhfrを遺伝子導入した細胞膜も上記と同様に調製し、これをMRGX2非発現細胞膜画分とした。
それぞれの膜画分10μgを、反応溶液[20mmol/L Tris−HCl(pH7.4)、100mmol/L NaCl、10mmol/L MgCl、0.1%BSA、3μmol/L GDP、35Sで標識されたGTPγS(250pmol/L)、及びPAMP−12(最終濃度=1×10−10〜3×10−5mol/L)]200μL中で室温で1時間インキュベートした。反応液をセルハーベスターにてグラスフィルターに回収し、そのグラスフィルターにマイクロシンチレーターを加え、フィルターに残存するGTPγSの放射活性をトップカウント(パーキンエルマー社)にて測定した。
結果を図3に示す。図3に示すとおり、MRGX2発現細胞膜画分にはPAMP−12の用量依存的にGTPγSの結合を検出することができた。そのEC50値は20.8nmol/Lであった。一方、MRGX2非発現細胞膜画分(Mock)にはPAMP−12の濃度に関わらず、全くGTPγSの結合が検出されなかった。以上の結果から、MRGX2は、PAMP−12に反応し、Gタンパク質を活性化する受容体であることが明らかとなった。
《実施例5:ヒト副腎組織におけるMRGX2の発現分布解析》
ヒト副腎組織のパラフィンブロックよりマイクロトームを用いて4〜5μmのスライスを作成し、スライドに張りつけた。キシレン/アルコールにより脱パラフィンを実施した。免疫染色は、染色装置(DAKO Autostainer;DAKO社製)を用いて実施し、ブロッキング剤(DAKO serum free protein block;DAKO社製)にて20分間ブロックし、続いて、1次抗体[MRGX2に対するポリクローナル抗体(LifeSpan社製)]で45分間、ビオチン化二次抗体(Vector anti-rabbit BA-1000 secondary;Vector社)で30分間、インキュベートした。染色は、スライドを洗浄後、市販の染色剤(Vectro ABC-AP;Vector社)を用いて、ベクターレッド(Vector Red;Vector社)を基質として実施した。
結果を図4に示す。ヒト副腎組織において、副腎髄質のパラガングリオン細胞(交感神経節細胞)が染色されていることが分かった。PAMP類がカテコラミン分泌又は合成を濃度依存的に抑制することが知られている(Journal of Clinical Investigation,1995年,96巻,1672-1676頁、Molecular Brain Research,2001年,87巻,175-183頁)が、カテコラミン分泌は交感神経の活性化により引き起こされるので、本実施例結果は、MRGX2がカテコラミン分泌に関連していることを裏付けている。
《実施例6:MRGX2受容体安定発現CHO細胞を用いた細胞内Ca2+濃度の上昇を引き起こす化合物のスクリーニング》
実施例2で作製したMRGX2受容体安定発現CHO細胞を96ウェルプレート(96well Black/clear bottom plat;BECTON DICKINSON社製)に1ウェル当たり2×10細胞で播種して24時間培養後、培地を廃棄し、4μmol/L Fluo−3,AM(Molecular Probe社製)、0.004%Pluronic(登録商標)F−127、1%FBS、20mmol/L HEPES、2.5mmol/Lプロベネシドを含むHanks BSSを1ウェ当たり100μL添加し、37℃で1時間インキュベーションした。一定濃度の候補化合物を添加し、細胞内Ca2+濃度の変化は実施例3と同条件にてFLIPRを用いて測定した。このような条件で、EC50が10μmol/L以下の化合物を選択した。
《実施例7:MRGX2受容体安定発現CHO細胞を用いた細胞内cAMP濃度の低下を引き起こす化合物のスクリーニング》
実施例2で作製したMRGX2受容体安定発現CHO細胞を96ウェルプレートに1×10細胞で播種し、24時間培養後、αMEM(核酸非存在)培地/1mmol/L 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma社製)/0.1%BSAで10分間処理した後、1μmol/Lフォルスコリン(和光純薬社製)と一定濃度の候補化合物を共添加した。37℃で30分後に培養上清を除去し、実施例2と同条件にてcAMP濃度を測定した。このような条件で、EC50が10μmol/L以下の化合物を選択した。
本発明のスクリーニングツール及びスクリーニング方法によれば、循環器疾患(特に、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患、例えば、高血圧、心不全、敗血症など)又は慢性腎疾患(例えば、腎不全、糸球体腎炎など)の治療及び/又は予防剤に有用な物質をスクリーニングすることができる。
配列表の配列番号3又は4の配列で表される各塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。
MRGX2安定発現CHO細胞及びコントロール細胞において、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量に対するPAMP−12の作用を示すグラフである。 MRGX2安定発現CHO細胞及びコントロール細胞において、細胞内Ca2+濃度に対するPAMP−12の作用を示すグラフである。 MRGX2安定発現CHO細胞及びコントロール細胞において、GTPγS結合に対するPAMP−12の作用を示すグラフである。 ヒト副腎組織におけるMRGX2の発現を示す、図面に代わる顕微鏡写真である。

Claims (12)

  1. (1)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、
    (2)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有し、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド、又は、
    (3)配列番号2で表されるアミノ酸配列における1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、フォルスコリン刺激によるcAMP産生量がPAMP−12及び/又はPAMP−20によって抑制されるポリペプチド
    からなる、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール。
  2. ポリペプチドが、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項1に記載のPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール。
  3. 請求項1に記載のポリペプチドを発現している細胞からなる、PAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール。
  4. 細胞が、請求項1に記載のポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞である、請求項3に記載のPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト検出用ツール。
  5. (1)請求項1に記載のポリペプチド又は請求項3に記載の細胞と、試験物質とを、標識したPAMP受容体リガンド存在下で接触させる工程、及び
    (2)前記ポリペプチド又は細胞への標識リガンドの結合量を分析する工程
    を含む、試験物質がPAMP受容体リガンドであるか否かを検出する方法。
  6. (1)請求項3に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程、及び
    (2)細胞内におけるcAMP濃度の変化を分析する工程
    を含む、試験物質がPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法。
  7. 請求項3に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程が、PAMP受容体アゴニスト共存下で行われる、請求項6に記載の検出する方法。
  8. (1)請求項3に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程、及び
    (2)細胞内におけるCa2+濃度の変化を分析する工程
    を含む、試験物質がPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法。
  9. 請求項3に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程が、PAMP受容体アゴニスト共存下で行われる、請求項8に記載の検出する方法。
  10. (1)請求項3に記載の細胞と試験物質とを、標識したGTPγS存在下で接触させる工程、及び
    (2)前記細胞への標識GTPγSの結合量を分析する工程
    を含む、試験物質がPAMP−12若しくはPAMP−20アンタゴニスト又はアゴニスト、あるいは、PAMP受容体活性増強剤又は減弱剤であるか否かを検出する方法。
  11. 請求項3に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程が、PAMP受容体アゴニスト共存下で行われる、請求項10に記載の検出する方法。
  12. (1)請求項5〜11に記載の方法からなる検出する工程、及び
    (2)PAMP−12若しくはPAMP−20アゴニスト、又は、PAMP受容体活性増強剤を選択する工程
    を含む、カテコラミン及び/又はアルドステロンの関与する循環器疾患の治療及び/又は予防剤をスクリーニングする方法。
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