JP4103537B2 - 新規スクリーニング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストスクリーニングに関する。
【0002】
【従来の技術】
ニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸、別名「ナイアシン」)は水溶性ビタミンBの一種であり、広く動植物に分布し、生体内では、ほとんどがニコチンアミド(ピリジン−3−カルボン酸アミド)の形で存在しており、細胞内でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)やNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)に変換され、様々な酸化還元酵素の補酵素として生理活性を示すことが知られている。
【0003】
一方、薬理作用としては、血清コレステロールや中性脂肪を低下させる作用と血流促進作用が知られている(非特許文献1)。ニコチン酸とその誘導体は、様々なタイプの高脂血症、例えば、高・超低比重リポ蛋白(高VLDL)血症、高・低比重リポ蛋白(高LDL)血症、低・高比重リポ蛋白(低HDL)血症、高Lp(a)血症、又は家族性アポB欠損症等の治療、及びそれに伴う疾患(例えば、動脈硬化症や心筋梗塞)の予防及び治療に有効であることが、ヒトの大規模臨床試験で証明されている(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、及び非特許文献5)。それ故、ニコチン酸及びその誘導体は、脂質代謝改善、高脂血症や動脈硬化症の改善、又は血流促進等の目的で、古くから欧米を中心に医薬品として用いられており、その有効性が認められている。
【0004】
日本ではニコチン酸そのものは保険診療上、高脂血症治療薬として認可されておらず、ニコチン酸誘導体(ニコモール、ニセリトロール、又はニコチン酸トコフェロール)が適応とされ、使用されている。これらの薬剤の適応症としては、例えば、高脂血症、末梢性血行障害(例えば、凍瘡、閉塞性四肢動脈閉塞症、レイノー症候群、又はビュルガー病)、高血圧症、脳動脈硬化症の随伴症状、及び脳卒中後遺症がある。
【0005】
これまで明らかになっているニコチン酸とその誘導体の脂質低下の作用機序は以下の通りである。末梢脂肪細胞において、アデニレートシクラーゼ(adenylate cyclase)活性を抑制し(非特許文献6)、脂肪細胞での脂肪分解の律速酵素であるホルモン感受性リパーゼ(hormon sensitive lipase)の活性化を抑制することで末梢脂肪細胞における脂肪分解と血中への遊離脂肪酸の放出を抑制する。従って、トリグリセリド(triglyceride)合成の前駆物質である遊離脂肪酸の肝臓への流入が減少することにより、肝臓でのVLDLの合成分泌が抑制される。また、末梢組織でのリポタンパクリパーゼ活性を高め、VLDLの異化を促進する。VLDLにはコレステロールも組み込まれるため、コレステロールの血中への分泌も減少する。さらに、LDLに対する細胞膜受容体を活性化し、LDL受容体に親和性のあるLDL及びレムナントの異化と、それに続く胆汁酸中へのコレステロール排泄を促す。以上の機序によって、血中の脂質低下作用を示すと考えられている。
【0006】
また、作用機序は明らかになっていないが、ニコチン酸とその誘導体は、組織の余剰コレステロールを抜き取って肝臓に戻すコレステロール逆転送系の主役であるHDLの血中濃度増加作用がある。更に、虚血性心疾患の危険因子とされるリポタンパクLp(a)粒子の血中濃度を下げる作用もある。ニコチン酸は高Lp(a)血症に対して唯一効果のある薬剤である。
【0007】
ところで、ホルモン感受性リパーゼの内在性抑制ペプチドであるリリピン(Perilipin)のノックアウトマウスは、野生型マウスに比べ、高脂肪食負荷に対して有意に肥満を引き起こさないことが報告されている(非特許文献7)。これは末梢脂肪細胞における脂質分解が常に活性化されている為みられる作用と考えられている。つまり、ホルモン感受性リパーゼ活性化を引き起こす物質は抗肥満作用を示す。上述のように、ニコチン酸は脂肪細胞でのホルモン感受性リパーゼ活性を抑制することから、ニコチン酸受容体のアンタゴニストは抗肥満薬になると考えられる。
【0008】
以上の知見から、ニコチン酸受容体のアゴニスト又はアンタゴニストは、高脂血症(例えば、高VLDL血症、高LDL血症、低HDL血症、高Lp(a)血症、又は家族性アポB欠損症など)、及びそれに伴う疾患(例えば、動脈硬化症、心筋梗塞、糖尿病など)、末梢性血行障害(例えば、凍瘡、四肢動脈閉塞症、レイノー症、ビュルガー病、脳動脈硬化症の随伴症状、脳卒中後遺症など)、高血圧症、又は肥満の治療及び/又は予防剤になることが期待される。しかし、ニコチン酸及びその誘導体は、一度に大量(数100mg〜数g)に投与しなければ期待する作用が得られないため、それ自身の酸性という物性による胃腸障害を引き起こすという問題点、患者のコンプライアンスの悪さという問題点を抱えている。低容量の服用で効果を発揮し、更に、ニコチン酸誘導体がもつ物性を回避できる薬剤を取得できれば、上述の問題点は解決することができると期待される。
【0009】
しかしながら、これまでニコチン酸の第一作用点はGタンパク質共役型の受容体であることが示唆されていたが(非特許文献8)、その受容体のタンパク質及びそれをコードする遺伝子は同定されておらず、簡便な化合物スクリーニング系の構築が困難であったため、ニコチン酸受容体アゴニスト及びアンタゴニストの開発は進展していなかった。
【0010】
なお、Gタンパク質共役型の受容体であるHM74A、hRUP25、及びEX20をコードするDNA、及び前記DNAがコードする推定アミノ酸配列については報告があるが、いずれもリガンドが解明されておらず、ニコチン酸受容体であるとの記載もない(特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。
【0011】
【特許文献1】
国際公開WO98/56820号パンフレット
【特許文献2】
国際公開WO01/36471号パンフレット
【特許文献3】
国際公開WO02/13845号パンフレット
【非特許文献1】
日本ビタミン学会編,「ビタミンの辞典」,朝倉書店,1996年,p.228−254
【非特許文献2】
「ザ・ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)」,(米国),1975年,第231巻,p.360−371
【非特許文献3】
「ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・オブ・カーディオロジー(Journal of American College of Cadiology)」,(米国),1986年,第8巻,p.1245−1255
【非特許文献4】
「アテロスクレローシス(Atherosclerosis)」,(米国),1980年,第37巻,p.129−138
【非特許文献5】
「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)」,(英国),1990年,第323巻,p.1289−1298
【非特許文献6】
「フェブス・レターズ(FEBS letters)」,(デンマーク),1980年,第115巻,p.11−14
【非特許文献7】
「プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」,(米国),2001年,第98巻,p.6494−6499
【非特許文献8】
「モレキュラー・ファーマコロジー(Molecular Phamacology)」,(米国),2001年,第59巻,p.349−357
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高脂血症、それに伴う疾患(例えば、動脈硬化症、心筋梗塞、又は糖尿病など)、末梢性血行障害(例えば、凍瘡、四肢動脈閉塞症、レイノー症、ビュルガー病、脳動脈硬化症の随伴症状、又は脳卒中後遺症など)、高血圧症、又は肥満の治療及び/又は予防剤として有用なニコチン酸受容体のアゴニスト又はアンタゴニストを得るための検出ツール、並びに簡便なスクリーニング方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(以下、HM74bと称することがある)が、Giに共役し、ニコチン酸に反応する受容体であることを見出し、HM74bそれ自体、若しくはHM74bを発現する細胞がニコチン酸受容体アゴニスト又はアンタゴニスト検出ツールとなることを明らかにした。また、HM74b、若しくはHM74bを発現する細胞を用い、試験物質がニコチン酸受容体リガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストであるか否かを検出する方法、及び前記検出方法を用いた高脂血症、それに伴う疾患、末梢性血行障害、高血圧症、又は肥満の治療及び/又は予防剤のスクリーニング方法を確立し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、
〔1〕(1)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチド、又は
(3)配列番号4で表されるアミノ酸配列における1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチド
である、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;
〔2〕配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、〔1〕記載のニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;
〔3〕〔1〕記載のポリペプチドを発現している細胞である、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;
〔4〕細胞が、〔1〕記載のポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞である、〔3〕記載のニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;
〔5〕〔1〕記載のポリペプチド、〔3〕記載の細胞、又は〔3〕記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、標識したニコチン酸受容体リガンド存在下で接触させる工程、及び
前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識リガンドの結合量を分析する工程
を含む、試験物質がニコチン酸受容体リガンドであるか否かを検出する方法;
〔6〕C末端のアミノ酸配列が配列番号6で表されるアミノ酸配列であり、ホスホリパーゼC活性促進性Gタンパク質のホスホリパーゼC活性促進活性を有する部分ポリペプチドとGiの受容体共役活性を有する部分ポリペプチドとのキメラであるGタンパク質キメラを共発現している〔3〕記載の細胞と、試験物質とを接触させる工程、及び
細胞内におけるCa2+濃度の変化を分析する工程
を含む、試験物質がニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法;
〔7〕〔3〕記載の細胞と試験物質とを接触させる工程、及び
細胞内におけるcAMP濃度の変化を分析する工程
を含む、試験物質がニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法;
〔8〕〔1〕記載のポリペプチド、〔3〕記載の細胞、又は〔3〕記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、標識したGTPγS存在下で接触させる工程、及び
前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識GTPγSの結合量を分析する工程
を含む、試験物質がニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法;
〔9〕〔5〕〜〔8〕記載の方法、あるいは、これらを組み合わせることによる、ニコチン酸受容体リガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストであるか否かを検出する工程、及び
ニコチン酸受容体アゴニストを選択する工程
を含む、高脂血症、高脂血症に伴う疾患、末梢性血行障害、又は高血圧症治療及び/又は予防剤をスクリーニングする方法;並びに
〔10〕〔5〕〜〔8〕記載の方法、あるいは、これらを組み合わせることによる、ニコチン酸受容体リガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストであるか否かを検出する工程、及び
ニコチン酸受容体アンタゴニストを選択する工程
を含む、肥満治療及び/又は予防剤をスクリーニングする方法
に関する。
【0015】
本明細書において、「検出ツール」とは、検出のために用いる物(具体的には、検出のために用いるポリペプチド又はポリペプチドを発現している細胞)を意味する。「ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール」とは、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストを検出するために、本発明の検出方法又はスクリーニング方法において、試験物質を接触させる対象となるポリペプチド又は細胞である。〔1〕若しくは〔2〕に記載のポリペプチド、又は〔3〕若しくは〔4〕に記載の細胞の、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出のための使用も、本発明に含まれる。
【0016】
前記「Gi」は、受容体と共役して細胞内へのシグナル伝達及び増幅因子として機能するGタンパク質のサブファミリーの1つであって、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制するGタンパク質である。アデニル酸シクラーゼの活性が抑制されると、例えば、細胞内cAMP濃度が低下する。
【0017】
また、前記「ホスホリパーゼC活性促進性Gタンパク質」は、受容体と共役して細胞内へのシグナル伝達及び増幅因子として機能するGタンパク質のサブファミリーの1つであって、ホスホリパーゼCの活性を促進するGタンパク質である。ホスホリパーゼCの活性が促進されると、例えば、細胞内Ca2+濃度が上昇する。ホスホリパーゼC活性促進性Gタンパク質としては、例えば、Gqを挙げることができる。
【0018】
更に、前記「ニコチン酸受容体活性」を有するとは、ニコチン酸に反応することにより、Gタンパク質と共役して、細胞内に外界刺激を伝達する受容体としての活性を有することを意味する。前記活性を有するか否かは、ニコチン酸に反応して、例えば、実施例2に記載のアッセイで、ニコチン酸用量依存的にルシフェラーゼ活性が上昇するか否かにより判定することができる。この場合、ルシフェラーゼ活性が上昇すれば、「ニコチン酸受容体活性」を有すると判定することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
(1)検出ツール
本発明のニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツールには、ポリペプチド型検出ツールと、細胞型検出ツールとが含まれる。
1)ポリペプチド型検出ツール
本発明のポリペプチド型検出ツールには、
(i)ヒトHM74b、すなわち、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;
(ii)機能的等価改変体、すなわち、(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチド、あるいは、(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、全体で1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチドである、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;及び
(iii)相同タンパク質、すなわち、配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチドである、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツールが含まれる。
【0020】
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、363個のアミノ酸残基からなるニコチン酸受容体HM74bである。配列番号4で表されるアミノ酸配列と同一配列は知られていたが、これがニコチン酸受容体のアミノ酸配列であることは開示も示唆もなく、ニコチン酸受容体は、本発明者が今回始めて解明するまで、その実体は同定されていなかった。
【0021】
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる機能的等価改変体として、(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチド、あるいは、(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列の1又は複数の箇所において、全体として1〜10個(好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチドが好ましい。
また、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチドとして、例えば、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列等を付加したポリペプチド(すなわち、融合ポリペプチド)も、ニコチン酸受容体活性を有する限り、含まれる。
【0022】
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる機能的等価改変体の起源は、ヒトに限定されない。
例えば、前述の(a)又は(b)に該当するヒトニコチン酸受容体HM74bのヒトにおける変異体が含まれるだけでなく、前述の(a)又は(b)に該当するヒト以外の生物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)由来のニコチン酸受容体及びヒトニコチン酸受容体を元にして遺伝子工学的に人為的に改変したタンパク質なども含まれる。なお、本明細書において「変異体」(variation)とは、同一種内の同一タンパク質にみられる個体差、あるいは、数種間の相同タンパク質にみられる差異を意味する。なお、遺伝子組換え技術については、特に断りがない場合、公知の方法(Maniatis, T. ら, "Molecular Cloning-A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1982等)に従って実施することが可能である。
【0023】
例えば、ヒトHM74b遺伝子の塩基配列の情報を基にして適当なプライマー又はプローブを設計し、前記プライマー又はプローブと、目的とする生物〔例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、又はイヌ)〕由来の試料(例えば、総RNA若しくはmRNA画分、cDNAライブラリー、又はファージライブラリー)とを用いてPCR法又はハイブリダイゼーション法を実施することにより、タンパク質の遺伝子を取得し、その遺伝子を適当な発現系を用いて発現させ、発現したタンパク質が、例えば、実施例2〜実施例4に記載の方法により、ニコチン酸に反応することを確認することにより、所望のタンパク質を取得することができる。
【0024】
また、前記の遺伝子工学的に人為的に改変したタンパク質は、常法、例えば、部位特異的突然変異誘発法(site-specific mutagenesis; Mark, D. F. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5662-5666, 1984等)により、タンパク質の遺伝子を取得し、その遺伝子を適当な発現系を用いて発現させ、発現したタンパク質が、例えば、実施例2〜実施例4に記載の方法により、ニコチン酸に反応することを確認することにより、所望のタンパク質を取得することができる。
【0025】
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる相同タンパク質として好ましいポリペプチドは、配列番号4で表されるアミノ酸配列との相同性が90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる。
なお、本明細書における前記「相同性」とは、BLAST(Basic local alignment search tool; Altschul, S. F. ら, J. Mol. Biol., 215, 403-410, 1990)検索により得られた値を意味し、アミノ酸配列の相同性は、BLAST検索アルゴリズムを用いて決定することができる。具体的には、BLASTパッケージ(sgi32bit版,バージョン2.0.12;NCBIより入手)のbl2seqプログラム(Tatiana A. Tatusova及びThomas L. Madden, FEMS Microbiol. Lett., 174, 247-250, 1999)を用い、デフォルトパラメーターに従って算出することができる。ペアワイズ・アラインメント・パラメーターとして、プログラム名「blastp」を使用し、Gap挿入Cost値を「0」で、Gap伸長Cost値を「0」で、Query配列のフィルターとして「SEG」を、Matrixとして「BLOSUM62」をそれぞれ使用する。
【0026】
本発明のポリペプチド型検出ツールとして用いることのできる各種ポリペプチド(すなわち、ヒトニコチン酸受容体HM74b、機能的等価改変体、及び相同タンパク質;以下、検出ツール用ポリペプチドと称する)は、種々の公知の方法によって得ることができ、例えば、目的タンパク質をコードする遺伝子を用いて公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。より具体的には、後述する細胞(すなわち、検出ツール用ポリペプチドを発現している細胞)を得、受容体タンパク質の分離及び精製に一般的に用いられる方法により、その培養物から目的タンパク質を分離及び精製することにより調製することができる(国際公開WO02/36631号パンフレット参照)。
検出ツール用ポリペプチドを調製する際に、それをコードする遺伝子を取得する方法は、常法を用いればよく特に限定されるものではない(国際公開WO02/36631号パンフレット参照)が、例えば、ヒトニコチン酸受容体HM74bを調製する場合には、それをコードする遺伝子として、例えば、配列番号3で表される塩基配列からなるDNAを用いることができる。
【0027】
2)細胞型検出ツール
本発明の細胞型ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツールには、
(i)ヒトニコチン酸受容体HM74bを発現している細胞である、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;
(ii)機能的等価改変体を発現している細胞である、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール;及び
(iii)相同タンパク質を発現している細胞である、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出ツール
が含まれる。
【0028】
本発明の細胞型検出ツールとして用いることのできる細胞(以下、検出ツール用細胞と称する)は、細胞型検出ツールとして用いる際に前記検出ツール用ポリペプチドを発現している限り、特に限定されるものではなく、人為的に前記ポリペプチドを発現させた形質転換細胞であることもできるし、または、検出ツール用ポリペプチドを発現することが知られている天然の細胞又はその細胞株であることもできるが、人為的に前記ポリペプチドを発現させた形質転換細胞が好ましい。
【0029】
本発明の細胞型検出ツールとして用いることのできる各種形質転換細胞(以下、検出ツール用形質転換細胞と称する)を作成するために使用することのできる宿主細胞は、検出ツール用ポリペプチドを発現することができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、通常使用される公知の微生物、例えば、大腸菌又は酵母(Saccharomyces cerevisiae)、あるいは、公知の培養細胞、例えば、脊椎動物細胞(例えば、CHO細胞、HEK293細胞、又はCOS細胞)又は昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)を挙げることができる。前記脊椎動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y., Cell, 23, 175-182, 1981)、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub, G. 及びChasin, L. A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216-4220, 1980)、ヒト胎児腎臓由来HEK293細胞、あるいは、前記HEK293細胞にエプスタイン・バーウイルスのEBNA−1遺伝子を導入した293−EBNA細胞(Invitrogen社)を挙げることができる。
【0030】
検出ツール用形質転換細胞を作成するために使用することのできる発現ベクターは、検出ツール用ポリペプチドを発現することができる限り、特に限定されるものではなく、使用する宿主細胞の種類に応じて、適宜選択することができる(国際公開WO02/36631号パンフレット参照)。
例えば、脊椎動物細胞の発現ベクターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列等を有するものを使用することができ、更に必要により、複製起点を有していることができる。前記発現ベクターの例としては、例えば、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani, S. ら, Mol. Cell. Biol., 1, 854-864, 1981)、ヒトの延長因子プロモーターを有するpEF−BOS(Mizushima, S. 及びNagata, S., Nucleic Acids Res., 18, 5322, 1990)、又はサイトメガロウイルスプロモーターを有するpCEP4(Invitrogen社)等を挙げることができる。
【0031】
検出ツール用形質転換細胞は、常法に従って培養することができ、前記培養により細胞表面に検出ツール用ポリペプチドが生産される。前記培養に用いることのできる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種の培地を適宜選択することができる。例えば、COS細胞の場合には、例えば、RPMI−1640培地又はダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に、必要に応じて牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加した培地を使用することができる。また、293−EBNA細胞の場合には、牛胎仔血清(FBS)等の血清成分を添加したダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地にG418を加えた培地を使用することができる。
【0032】
検出ツール用細胞は、検出ツール用ポリペプチドに加え、C末端のアミノ酸配列が、配列番号6で表されるアミノ酸配列(Asp−Cys−Gly−Leu−Phe)であるGタンパク質を発現していることが好ましい。配列番号6で表されるアミノ酸配列は、GiのC末端の5アミノ酸残基からなるアミノ酸配列であり、以下、「C末端のアミノ酸配列が配列番号6で表されるアミノ酸配列であるGタンパク質」を「C末端Gi型Gタンパク質」と称する。
前記C末端Gi型Gタンパク質としては、例えば、(1)Gi、又は(2)C末端のアミノ酸配列が、配列番号6で表されるアミノ酸配列であり、しかも、ホスホリパーゼC活性促進性Gタンパク質(例えば、Gq)のホスホリパーゼC活性促進活性を有する部分ポリペプチドとGiの受容体共役活性を有する部分ポリペプチドとのキメラであるGタンパク質キメラを挙げることができる。以下、GqのホスホリパーゼC活性促進活性を有する部分ポリペプチドとGiの受容体共役活性を有する部分ポリペプチドとのキメラであるGタンパク質キメラを、Gqiと称する。
【0033】
検出ツール用ポリペプチドは、GiのC末端の5アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(すなわち、配列番号6で表されるアミノ酸配列)を認識して、Giと結合する。従って、検出ツール用ポリペプチドは、Giのみならず、Gqiとも結合することができる。検出ツール用細胞において、検出ツール用ポリペプチドとC末端Gi型Gタンパク質とが発現されると、これらのポリペプチドは細胞内で結合することができる。
【0034】
前記Gqiにおける「GqのホスホリパーゼC活性促進活性を有する部分ポリペプチド」は、Gqと共役する受容体との結合に必要なC末端アミノ酸配列を含まず、しかも、ホスホリパーゼCの活性を促進する活性を有する限り、特に限定されるものではないが、例えば、C末端の5アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を欠失したGqのN末端側部分ポリペプチドを挙げることができる。
前記Gqiにおける「Giの受容体共役活性を有する部分ポリペプチド」は、GiのC末端の5アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、しかも、アデニル酸シクラーゼの活性を抑制する活性を有しない限り、特に限定されるものではないが、例えば、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるGiのC末端側部分ポリペプチドを挙げることができる。
【0035】
(2)ニコチン酸受容体リガンド、アンタゴニスト、又はアゴニスト検出方法
前記検出ツール用ポリペプチド、又は検出ツール用細胞若しくはその膜画分(以下、検出ツール用ポリペプチド、前記細胞、及びその膜画分を総称して、リガンド検出ツールと称する)を検出ツールに用いて、試験物質がニコチン酸受容体リガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストであるか否かを検出することができる。
本発明による、試験物質がニコチン酸受容体リガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストであるか否かを検出する方法には、
1)ニコチン酸受容体に対するリガンドであるか否かを検出する方法(すなわち、リガンド検出方法);
2)細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法(すなわち、Ca2+型検出方法);
3)細胞内におけるcAMP量の変動を指標として、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法(すなわち、cAMP型検出方法);及び
4)GTPγS結合法を利用するニコチン酸受容体に対するアンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法(以下、GTPγS結合型検出方法と称する)
が含まれる。これらの検出方法について、順次説明する。
【0036】
1)リガンド検出方法
本発明のリガンド検出方法は、(i)リガンド検出ツールと、(ii)標識したニコチン酸受容体リガンドとを用いる限り、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により実施することができる。
【0037】
まず、リガンド検出ツールを調製する。アッセイ条件(例えば、使用する緩衝液の種類、温度、及び濃度、緩衝液に添加するイオンの種類及び濃度、並びにアッセイ系のpH)を最適化し、最適化したバッファー中で、リガンド検出ツールと、標識リガンドとを、試験物質と共に一定時間インキュベーションする。前記標識リガンドとしては、例えば、〔3H〕−ニコチン酸を用いることができる。反応後、反応液をガラスフィルター等で濾過し、適量のバッファーで洗浄した後、フィルターに残存する放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。得られた放射活性リガンドの結合阻害を指標として、ニコチン酸受容体に対するリガンドであるか否かを検出することができる。すなわち、試験物質不在下の場合のフィルター残存放射活性よりも、試験物質存在下の場合のフィルター残存放射活性が低下した場合には、前記試験物質は、ニコチン酸受容体に対するリガンドであると判定することができる。例えば、実施例4に記載の条件で行なうことができる。
【0038】
2)Ca2+型検出方法
本発明のCa2+型検出方法は、細胞として、(i)検出ツール用ポリペプチドと、(ii)C末端のアミノ酸配列が、配列番号6で表されるアミノ酸配列であり、しかも、ホスホリパーゼC活性促進性Gタンパク質のホスホリパーゼC活性促進活性を有する部分ポリペプチドとGiの受容体共役活性を有する部分ポリペプチドとのキメラであるGタンパク質キメラ(例えば、Gqi)とを共発現している細胞(以下、Ca2+型検出用細胞と称する)を使用する。なお、前記細胞は、ニコチン酸を作用させても細胞内Ca2+濃度が上昇しない細胞に(i)検出ツール用ポリペプチドと、(ii)C末端のアミノ酸配列が、配列番号6で表されるアミノ酸配列であり、しかも、ホスホリパーゼC活性促進性Gタンパク質のホスホリパーゼC活性促進活性を有する部分ポリペプチドとGiの受容体共役活性を有する部分ポリペプチドとのキメラであるGタンパク質キメラ(例えば、Gqi)とを共発現させた形質転換細胞が好ましい。好ましい宿主細胞としては、例えば、ヒト胎児腎臓由来の細胞株である293−EBNA細胞を挙げることができる。
【0039】
本発明のCa2+型検出方法においてアゴニストであるか否かを検出する場合には、Ca2+型検出用細胞と試験物質とを接触させ、前記Ca2+型検出用細胞内のCa2+濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。Ca2+濃度の変化は、例えば、カルシウム結合性蛍光試薬(例えば、fura2又はfluo3等)を用いて、直接的にCa2+濃度の変化を分析することもできるし、あるいは、Ca2+濃度に依存して転写量が調節される遺伝子〔例えば、ルシフェラーゼの遺伝子の上流にアクチベータープロテイン1(AP1)応答配列を挿入した遺伝子〕の転写活性を分析することにより、間接的にCa2+濃度の変化を分析することもできる。
【0040】
Ca2+型検出用細胞と試験物質とを接触させた場合に、Ca2+型検出用細胞内のCa2+濃度が上昇すれば、前記試験物質は、ニコチン酸受容体に対するアゴニストであると判定することができる。なお、コントロールとして、検出ツール用ポリペプチドとGqiとを共発現しているCa2+型検出用細胞の代わりに、検出ツール用ポリペプチドが発現されておらず、しかも、Gqiが発現しているコントロール用細胞、あるいは、形質転換前の宿主細胞を用いて同様の操作を行ない、前記試験物質により前記コントロール用細胞又は前記宿主細胞内のCa2+濃度が上昇しないことを確認することが好ましい。
【0041】
本発明のCa2+型検出方法においてアンタゴニストであるか否かを検出する場合には、Ca2+型検出用細胞と試験物質とを、ニコチン酸受容体のアゴニスト(例えば、ニコチン酸)の共存下において接触させ、Ca2+型検出用細胞内のCa2+濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。Ca2+型検出用細胞と試験物質とを、ニコチン酸受容体のアゴニストの共存下において接触させた場合に、前記アゴニストによるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇が、前記試験物質により阻害又は抑制されれば、前記試験物質は、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニストであると判定することができる。例えば、実施例2に記載の条件で行なうことができる。
なお、コントロールとして、Ca2+型検出用細胞とニコチン酸受容体のアゴニストとを、試験物質の不在下において接触させ、前記アゴニストによるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇の程度を確認しておくことが必要である。
【0042】
これまで説明したように、本発明のCa2+型検出方法においては、共役タンパク質としてGiをそのまま使用するのではなく、Gqiを使用するので、cAMP濃度ではなく、Ca2+濃度を分析することによりアンタゴニスト又はアゴニストであるか否かの検出を実施することができる。通常、cAMP濃度に比べ、Ca2+濃度の方が、より簡易且つ迅速に測定することができる。
【0043】
3)cAMP型検出方法
本発明のcAMP型検出方法は、細胞として、検出ツール用ポリペプチドを発現している細胞(以下、cAMP型検出用細胞と称する)を使用する。通常の細胞ではGiが構成的に発現しているので、検出ツール用ポリペプチドを発現することが知られている天然の細胞又はその細胞株を用いるか、あるいは、検出ツール用ポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより、cAMP型検出用細胞を得ることができる。なお、前記形質転換細胞は、形質転換する前の宿主細胞が、ニコチン酸を作用させても細胞内cAMP濃度が低下しない細胞であることが好ましい。このような細胞としては、例えば、293−EBNA細胞を挙げることができる。
【0044】
本発明のcAMP型検出方法においてアゴニストであるか否かを検出する場合には、cAMP型検出用細胞と試験物質とを接触させ、前記cAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。cAMP型検出用細胞と試験物質とを接触させる際には、cAMP濃度を上昇させることのできる化合物(例えば、フォルスコリン)を共存させることが好ましい。
cAMP濃度の変化は、例えば、市販のcAMP測定キット(Amersham社等)を用いて、直接的にcAMP濃度の変化を分析することもできるし、あるいは、cAMP濃度に依存して転写量が調節される遺伝子〔例えば、ルシフェラーゼの遺伝子の上流にcAMP応答配列(CRE)を挿入した遺伝子〕の転写活性を分析することにより、間接的にcAMP濃度の変化を分析することもできる。
【0045】
cAMP型検出用細胞と試験物質とを接触させた場合に、cAMP型検出用細胞内のcAMP濃度が低下すれば、前記試験物質は、ニコチン酸受容体に対するアゴニストであると判定することができる。この場合、cAMP濃度を上昇させることのできる化合物(例えば、フォルスコリン)を共存させておくと、試験物質によるcAMP濃度の低下を、より容易に判定することができる。また、コントロールとして、検出ツール用ポリペプチドを発現しているcAMP型検出用細胞の代わりに、検出ツール用ポリペプチドが発現されていない細胞を用いて同様の操作を行ない、前記試験物質により前記細胞内のcAMP濃度が低下しないことを確認することが好ましい。
【0046】
本発明のcAMP型検出方法においてアンタゴニストであるか否かを検出する場合には、cAMP型検出用細胞と試験物質とを、ニコチン酸受容体のアゴニストの共存下において接触させ、前記cAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の変化を、直接的又は間接的に分析する。cAMP型検出用細胞と試験物質とを、ニコチン酸受容体のアゴニストの共存下において接触させた場合に、前記アゴニストによるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の低下が、前記試験物質により阻害又は抑制されれば、前記試験物質は、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニストであると判定することができる。この場合、cAMP濃度を上昇させることのできる化合物(例えば、フォルスコリン)を共存させておくと、試験物質によるcAMP濃度の変動を、より容易に判定することができる。例えば、国際公開WO02/36631号パンフレットの実施例4又は実施例5に記載の条件で、行なうことができる。
また、コントロールとして、cAMP型検出用細胞とニコチン酸受容体のアゴニストとを、試験物質の不在下において接触させ、前記アゴニストによるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の低下の程度を確認しておくことが必要である。
【0047】
4)GTPγS結合型検出方法
本発明のGTPγS結合型検出方法は、リガンド検出ツールを用いて、GTPγS結合法(Lazareno, S. 及びBirdsall, N. J. M., Br. J. Pharmacol., 109, 1120-1127, 1993)を利用して、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出することができる。
【0048】
例えば、以下の手順により実施することができる。
すなわち、検出ツール用ポリペプチドを発現させた細胞膜を、20mmol/L−Tris−HCl(pH 7.4)、100mmol/L−NaCl、10mmol/L−MgCl2、0.1%−ウシ血清アルブミン(BSA)、及び10μmol/L−GDP混合溶液中で、35Sで標識されたGTPγS(250pmol/L)と混合する。試験物質存在下と試験物質不在下とでインキュベートした後、反応液をガラスフィルター等で濾過し、フィルターに残存するGTPγSの放射活性を液体シンチレーションカウンター等で測定する。試験物質存在下における特異的なGTPγS結合の上昇を指標に、ニコチン酸受容体に対するアゴニストであるか否かを検出することができる。また、試験物質存在下における、ニコチン酸受容体のリガンドによるGTPγS結合上昇の抑制を指標に、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニストであるか否かを検出することができる。例えば、実施例3に記載の条件で、行なうことができる。
【0049】
(3)スクリーニング方法
本発明の検出ツール(ポリペプチド型検出ツール及び細胞型検出ツールの両方を含む)を用いると、ニコチン酸受容体に対するリガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストをスクリーニングすることができる。
既に説明したように、ニコチン酸受容体アゴニストであるニコチン酸又はニコチン酸誘導体は、高脂血症〔例えば、高VLDL血症、高LDL血症、低HDL血症、高Lp(a)血症、又は家族性アポB欠損症など〕、それに伴う疾患(例えば、動脈硬化症、心筋梗塞、又は糖尿病など)、末梢性血行障害(例えば、凍瘡、四肢動脈閉塞症、レイノー症、ビュルガー病、脳動脈硬化症の随伴症状、又は脳卒中後遺症)、又は高血圧症の治療及び/又は予防効果があることが知られている。また、ニコチン酸受容体のアンタゴニストは、抗肥満治療及び/又は予防剤になると考えられる。従って、これまで説明した検出ツール用ポリペプチドそれ自体、あるいは、検出ツール用細胞それ自体を、前記疾患治療及び/又は予防剤スクリーニングに使用することができる。
【0050】
本発明の検出ツールを用いてスクリーニングにかけることのできる試験物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケミカルファイルに登録されている種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル・ケミストリー技術(Terrett, N. K. ら, Tetrahedron, 51, 8135-8137, 1995)によって得られた化合物群、あるいは、ファージ・ディスプレイ法(Felici, F. ら, J. Mol. Biol., 222, 301-310, 1991)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物若しくは海洋生物由来の天然成分、又は動物組織抽出物などもスクリーニングの試験物質として用いることができる。更には、ニコチン酸又は公知のニコチン酸誘導体を、化学的又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を用いることができる。
【0051】
本発明のスクリーニング方法は、検出方法により、以下の4つに大別されるが、いずれかの方法を用いて、あるいは、これらを組み合わせて、ニコチン酸受容体に対するリガンド、アンタゴニスト、又はアゴニストであるか否かを検出し、試験物質の中からアゴニストを選択することにより、高脂血症、高脂血症に伴う疾患、末梢性血行障害、又は高血圧症治療及び/又は予防剤として、アンタゴニストを選択することによって、肥満治療及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
【0052】
以下、本発明のスクリーニング方法、
1)ニコチン酸受容体に対するリガンドをスクリーニングする方法(以下、リガンドスクリーニング方法と称する);
2)細胞内におけるCa2+濃度の変動を指標として、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニスト又はアゴニストをスクリーニングする方法(以下、Ca2+型スクリーニング方法と称する);
3)細胞内におけるcAMP量の変動を指標として、ニコチン酸受容体に対するアンタゴニスト又はアゴニストをスクリーニングする方法(以下、cAMP型スクリーニング方法と称する);及び
4)GTPγS結合法を利用するニコチン酸受容体に対するアンタゴニスト又はアゴニストをスクリーニングする方法(以下、GTPγS結合型スクリーニング方法と称する)
について、順次説明する。
【0053】
1)リガンドスクリーニング方法
本発明のリガンドスクリーニング方法は、本発明のリガンド検出方法により、ニコチン酸受容体リガンドであるか否かを検出する工程、及び受容体リガンドを選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
前記リガンド検出方法により得られた放射活性リガンドの結合阻害を指標として、ニコチン酸受容体に対するリガンドをスクリーニングすることができる。例えば、実施例4に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、〔3H〕−ニコチン酸の結合阻害を指標に、そのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、リガンドとして選択することができる。
【0054】
本発明のリガンドスクリーニング方法でスクリーニングしたリガンドを、更に、以下に説明するCa2+型スクリーニング方法、cAMP型スクリーニング方法、及び/又はGTPγS結合型スクリーニング方法にかけ、アゴニスト又はアンタゴニストをスクリーニングすることにより、高脂血症、それに伴う疾患、末梢性血行障害、高血圧症、又は肥満の治療及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
【0055】
2)Ca2+型スクリーニング方法
本発明のCa2+型スクリーニング方法は、本発明のCa2+型検出方法により、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する工程、及びニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストを選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
【0056】
アゴニストは、前記Ca2+型検出方法において、試験物質によるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇を指標にスクリーニングすることができ、例えば、国際公開WO02/36631号パンフレットの実施例3に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、ニコチン酸による細胞内Ca2+濃度の上昇を指標に、そのEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)を、アゴニスト活性を有する物質としてスクリーニングすることができる。
【0057】
アンタゴニストは、前記Ca2+型検出方法において、ニコチン酸受容体のアゴニストによるCa2+型検出用細胞内のCa2+濃度の上昇が、試験物質により阻害又は抑制されることを指標に、スクリーニングすることができる。
例えば、国際公開WO02/36631号パンフレットの実施例3に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、ニコチン酸による細胞内Ca2+濃度の上昇の阻害を指標に、そのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
【0058】
3)cAMP型スクリーニング方法
本発明のcAMP型スクリーニング方法は、本発明のcAMP型検出方法により、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する工程、及びニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストを選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
【0059】
アゴニストは、前記cAMP型検出方法において、試験物質によるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度低下を指標にスクリーニングすることができ、例えば、国際公開WO02/36631号パンフレットの実施例4又は実施例5に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、ニコチン酸による細胞内cAMP濃度の低下を指標に、そのEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)を、アゴニスト活性を有する物質としてスクリーニングすることができる。
【0060】
アンタゴニストは、前記cAMP型検出方法において、ニコチン酸受容体のアゴニストによるcAMP型検出用細胞内のcAMP濃度の低下が、試験物質により阻害又は抑制されることを指標にスクリーニングすることができる。
例えば、国際公開WO02/36631号パンフレットの実施例4又は実施例5に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、ニコチン酸による細胞内cAMP濃度の低下の阻害を指標に、そのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
【0061】
4)GTPγS結合型スクリーニング方法
本発明のGTPγS結合型スクリーニング方法は、本発明のGTPγS結合型検出方法により、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する工程、及びニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストを選択する工程を含む限り、特に限定されるものではない。
【0062】
アゴニストは、前記GTPγS結合型検出方法における、試験物質による特異的なGTPγS結合の上昇を指標にスクリーニングすることができ、例えば、実施例3に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、ニコチン酸によるGTPγS結合の上昇を指標に、そのEC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)を、アゴニスト活性を有する物質としてスクリーニングすることができる。
【0063】
また、アンタゴニストは、ニコチン酸受容体のアゴニストによるGTPγS結合上昇が、試験物質により抑制されることを指標にスクリーニングすることができ、例えば、実施例3に記載の条件で、試験物質を一定時間作用させ、ニコチン酸によるGTPγS結合の上昇の阻害を指標に、そのIC50が10μmol/L以下(更に好ましくは1μmol/L以下)の試験物質を、アンタゴニスト活性を有する物質として選択することができる。
【0064】
本発明のCa2+型スクリーニング方法、cAMP型スクリーニング方法、又はGTPγS結合型スクリーニング方法でアゴニスト又はアンタゴニストをスクリーニングすることにより、高脂血症、それに伴う疾患、末梢性血行障害、高血圧症、又は肥満の治療及び/又は予防剤として有用な物質をスクリーニングすることができる。
【0065】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《HM74bのクローニング》
本実施例では、以下に示す手順に従って、ヒト脾臓cDNA(clontech社)をテンプレートとして、PCR法により、HM74bの全長cDNAを取得した。配列番号1で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをフォワードプライマーとして、配列番号2で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをリバースプライマーとして用いた。なお、前記フォワードプライマー及びリバースプライマーの各々の5’末端には、XbaI認識部位を含む塩基配列が付加されている。PCRは、Taq DNAポリメラーゼ(Ex Taq DNA polymerase;宝酒造社)を用いて、5%ジメチルスルホキシド(DMSO)存在下で、94℃(20秒間)/58℃(20秒間)/74℃(1.5分間)からなるサイクルを5回、94℃(20秒間)/55℃(20秒間)/74℃(1.5分間)からなるサイクルを5回、そして、94℃(20秒間)/50℃(20秒間)/74℃(1.5分間)からなるサイクルを25回、順次繰り返した。その結果、約1.1kbpのDNA断片が増幅された。このDNA断片をXbaIで消化した後、プラスミドpEF−BOS−dhfr(Nucleic Acids Research, 18, 5322, 1990)のXbaI部位に挿入することにより、プラスミドpEF−BOS−dhfr−HM74bを得た。
【0066】
プラスミドpEF−BOS−dhfr−HM74bにおけるHM74b遺伝子の塩基配列は、DNAシークエンサー(ABI377 DNA Sequencer; Applied Biosystems社)を用いてジデオキシターミネーター法により決定した。HM74b遺伝子の塩基配列は、配列番号3で表される塩基配列のとおりであった。
配列番号3で表される塩基配列は、1092塩基のオープンリーディングフレーム(ORF)を有しており、このORFから予測されるアミノ酸配列(363アミノ酸)は、配列番号4で表されるアミノ酸配列のとおりであった。
【0067】
【実施例2】
《HM74b及びGqiを共発現させた293−EBNA細胞における、ニコチン酸によるルシフェラーゼ活性上昇の検出》
本実施例では、HM74bタンパク質を発現させる細胞として293−EBNA(Invitrogen社)を使用した。また、HM74bタンパク質を発現させるための発現プラスミドとして、前記実施例1で得られたプラスミドpEF−BOS−dhfr−HM74bを用いた。
本実施例で使用したGqとGiとのキメラタンパク質を発現するための発現プラスミドは、Conklin,B.R.らの方法(Nature, 363, 274-276, 1993)に従い、GqのC末端側の5アミノ酸(Glu−Tyr−Asn−Leu−Val;配列番号5で表されるアミノ酸配列)を、GiのC末端側の5アミノ酸(Asp−Cys−Gly−Leu−Phe;配列番号6で表されるアミノ酸配列)と置換して構築した遺伝子(以下、Gqi遺伝子と称する)を、プラスミドpEF−BOS−dhfrにクローニングして作製した。構築したプラスミドは、プラスミドpEF−BOS−Gqiと命名した。
【0068】
24ウェルプレート(IWAKI社)に、293−EBNA細胞を、1ウェル当たり7×104細胞となるように、1%牛胎児血清(FCS)を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で播種して一晩培養後、プラスミドpEF−BOS−dhfr−HM74b(1ウェル当たり20ng)、プラスミドpEF−BOS−Gqi(1ウェル当たり10ng)、及びSREレポーター活性を測定する為のプラスミドpSRE−Luc(CLONTECH社)(1ウェル当たり20ng)を、トランスフェクション試薬(LipofectAMINE 2000; GIBCO BRL社製)を用いて遺伝子導入した。なお、コントロールとして、プラスミドpEF−BOS−dhfr−HM74bに代えて、プラスミドpEF−BOS−dhfr(すなわち、HM74b遺伝子を含まない空ベクター)、プラスミドpEF−BOS−Gqi、及びプラスミドpSRE−Lucを用いて遺伝子導入した。遺伝子導入した後、更に18〜20時間培養し、DMEM培地で希釈したニコチン酸を加え、5%CO2存在下、37℃で6時間インキュベートした。培地を吸引し、細胞溶解液(細胞溶解液LCβ;東洋インキ)で溶解した後、そのルシフェラーゼ活性を、市販の測定キット(ピッカジーン発光キット;東洋インキ)及び測定装置(ML3000 microtiter plate luminometer; Dynatech Laboratories社)を用いて測定した。
【0069】
プラスミドpEF−BOS−dhfr−HM74b、プラスミドpEF−BOS−Gqi、及びpSRE−Lucを遺伝子導入した細胞では、1μmol/L以上のニコチン酸添加において有意に、かつ用量依存的にルシフェラーゼ活性の上昇が観察された。一方、プラスミドpEF−BOS−dhfr(空ベクター)、プラスミドpEF−BOS−Gqi、及びプラスミドpSRE−Lucを遺伝子導入した細胞では、ニコチン酸によるルシフェラーゼ活性の変化は全く観察されなかった。
以上のように、HM74bとGqiを共発現させたCa2+型検出用形質転換細胞では、ニコチン酸に反応して用量依存的にルシフェラーゼ活性の変化を誘導することが確認された。
以上のことから、HM74bは、Giに共役している受容体であり、ニコチン酸に反応することが明らかとなった。
【0070】
【実施例3】
《GTPγS結合型実験によるHM74bとニコチン酸の結合の検出》
15cm培養プレートに293−EBNA細胞を播種して24時間培養後、実施例1で得られたプラスミドpEF−BOS−dhfr−HM74b(20μg)を、トランスフェクション試薬(LipofectAMINE 2000; GIBCO BRL社製)を用いて遺伝子導入した。遺伝子導入から36時間後に細胞を回収及び洗浄し、5mmol/L−EDTAとプロテアーゼインヒビターカクテルセットCompleteTM(ベーリンガーマンハイム社)とを含有する20mmol/L−Tris−HCl(pH7.4)に懸濁して、ホモジナイザー(POLYTRON; KINEMATICA社)にてホモジェナイズした。超遠心を行なった後、50mmol/L−Tris−HCl(pH7.4)に懸濁し、これをHM74b発現細胞膜画分とした。またpEF−BOS−dhfr−HM74bの代わりにpEF−BOS−dhfrを遺伝子導入した細胞膜も上記と同様に調整し、これをHM74b非発現細胞膜画分とした。
【0071】
それぞれの膜画分5μgを、反応溶液〔20mmol/L−Tris−HCl(pH 7.4)、100mmol/L−NaCl、10mmol/L−MgCl2、0.1%−ウシ血清アルブミン(BSA)、10μmol/L−GDP、35Sで標識されたGTPγS(250pmol/L)、及びニコチン酸(最終濃度=1×10-12〜1×10-5mol/L)〕200μL中で室温で1時間インキュベートした。反応液をセルハーベスターにてグラスフィルターに回収し、そのグラスフィルターにマイクロシンチレーターを加え、フィルターに残存するGTPγSの放射活性をトップカウント(パーキンエルマー社)にて測定した。
【0072】
その結果、HM74b発現細胞膜画分にはニコチン酸の用量依存的にGTPγSの結合を検出することができた。そのEC50値は25±3.2nmol/Lであった。一方、HM74b非発現細胞膜画分にはニコチン酸の濃度に関わらず、全くGTPγSの結合が検出されなかった。
以上の結果から、HM74bは、ニコチン酸に反応し、Gタンパク質を活性化する受容体であることが明らかとなった。
【0073】
【実施例4】
《HM74b発現細胞膜とニコチン酸の結合実験》
前記実施例3で作製したHM74b発現細胞膜画分及びHM74b非発現細胞膜画分のそれぞれ20μgに、〔3H〕−ニコチン酸(American Radiolabeled Chemicals社)を最終濃度0.5〜200nmol/Lになるように加え、1mmol/L−MgCl2及び0.02%CHAPSを含有する50mmol/L−Tris−HCl(pH7.4)200μL中で室温にて2時間インキュベーションした後、セルハーベスターにてグラスフィルターに回収した。グラスフィルターに液体シンチレーターを加え、液体シンチレーションカウンターで膜画分への総結合量を測定した。更に、前述の試験に最終濃度400μmol/L−ニコチン酸を加えることで、膜画分への非特異的結合量を測定した。
【0074】
その結果、〔3H〕−ニコチン酸はHM74b発現細胞膜画分に特異的に結合することが判った。この結合のスキャッチャード(Scatchard)分析の結果、HM74b発現細胞膜画分に対する〔3H〕−ニコチン酸の結合の解離定数はKd=63±3.9nmol/Lで、最大結合はBmax=4950±443fmol/mg proteinであった。一方、HM74b非発現細胞膜画分では特異的結合は全く検出されなかった。
【0075】
【実施例5】
《ヒト脂肪組織におけるHM74b発現分布解析》
HM74bの脂肪組織での発現解析を、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)法により行なった。具体的には、ヒト脂肪組織由来Poly+ARNA(BioChain社)5μgをDNアーゼ(DNaseI; Promega社)で処理した後、市販のキット(SUPERSCRIPT First-Strand Synthesis System for RT-PCR; Invitrogen社)を用いてcDNAを合成した。作製したcDNA(Poly+ARNA5ng分)を鋳型とし、DNAポリメラーゼ(Pyrobest DNA polymerase;宝酒造)を用いてPCRを行なった。PCR条件は、フォワードプライマーとして配列番号7で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用し、リバースプライマーとして、配列番号8で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを使用し、95℃(10分間)の後、95℃(15秒間)/69℃(1分間)のサイクルを30回繰り返した。
その結果、約100bpのDNA断片が増幅され、ヒト脂肪組織でのHM74bの発現が確認された。ニコチン酸及びその誘導体の脂質低下作用は、末梢脂肪細胞においてアデニレートシクラーゼ活性を抑制することに起因すると考えられており、本結果は、HM74bが末梢脂肪細胞において発現しており、脂質低下作用を担っていることを示している。
【0076】
【発明の効果】
本発明の検出ツール又はスクリーニング方法によれば、ニコチン酸受容体のアゴニスト又はアンタゴニストをスクリーニングすることができる。前記ニコチン酸受容体のアゴニスト又はアンタゴニストは、高脂血症、それに伴う疾患(例えば、動脈硬化症、心筋梗塞、又は糖尿病など)、末梢性血行障害(例えば、凍瘡、四肢動脈閉塞症、レイノー症、ビュルガー病、脳動脈硬化症の随伴症状、又は脳卒中後遺症)、高血圧症、又は肥満の治療及び/又は予防剤として有効な物質である。
【0077】
【配列表フリーテキスト】
配列表の配列番号1、2、7、及び8の配列で表される各塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である。
【0078】
【配列表】
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Claims (8)

  1. (1)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (2)配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチド、又は
    (3)配列番号4で表されるアミノ酸配列における1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、ニコチン酸受容体活性を有するポリペプチド
    、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出のための使用
  2. 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出のための使用
  3. 請求項1に記載のポリペプチドを発現している細胞ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出のための使用
  4. 求項1に記載のポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターで形質転換され、前記ポリペプチドを発現している形質転換細胞の、ニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニスト検出のための使用
  5. 請求項1に記載のポリペプチド、請求項3に記載の細胞、又は請求項3に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、標識したニコチン酸受容体リガンド存在下で接触させる工程、及び
    前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識リガンドの結合量を分析する工程を含む、試験物質がニコチン酸受容体リガンドであるか否かを検出する方法。
  6. C末端のアミノ酸配列が配列番号6で表されるアミノ酸配列であり、ホスホリパーゼC活性促進性Gタンパク質のホスホリパーゼC活性促進活性を有する部分ポリペプチドとGiの受容体共役活性を有する部分ポリペプチドとのキメラであるGタンパク質キメラを共発現している請求項3に記載の細胞と、試験物質とを接触させる工程、及び
    細胞内におけるCa2+濃度の変化を分析する工程
    を含む、試験物質がニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法。
  7. 請求項3に記載の細胞と試験物質とを接触させる工程、及び細胞内におけるcAMP濃度の変化を分析する工程
    を含む、試験物質がニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法。
  8. 請求項1に記載のポリペプチド、請求項3に記載の細胞、又は請求項3に記載の細胞の膜画分と、試験物質とを、標識したGTPγS存在下で接触させる工程、及び
    前記ポリペプチド、細胞、又は細胞膜画分への標識GTPγSの結合量を分析する工程を含む、試験物質がニコチン酸受容体アンタゴニスト又はアゴニストであるか否かを検出する方法。
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