JP2007262431A - 皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板、その製造方法および使用方法 - Google Patents

皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板、その製造方法および使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な皮膜形成処理による、良好な皮膜を有するとともに大幅に鉄損が低減された電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】C:0.070%以下、Si:7.00%以下、Mn:6.50%以下、P:0.30%以下、S:0.080%以下、Al:8.0%以下、N:0.070%以下、O:0.070%以下を含有する鋼板に、質量%でNi:0.05%以上、Co:0.05%以上、Cr:0.05%以上、Cu:0.05%以上、Mo:0.05%以上、Nb:0.05%以上、Mn:0.05%以上の一種または二種以上を含有する、酸化物を主体とした物質を塗布し、熱処理を行なうことで皮膜を形成するとともに、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnを、母鋼板と皮膜の界面に濃化させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、簡易な皮膜形成処理による、良好な皮膜を有するとともに大幅に鉄損が低減された電磁鋼板、その製造方法および使用方法に関する。
モーターやトランスに使用される電磁鋼板は、通常、積層されて用いられるが、積層した鋼板同士が電気的に短絡してしまうと部材の特性が劣化、特に鉄損が増大してしまうため、特許文献1に示すように、鋼板表面に絶縁皮膜が形成されている。この絶縁皮膜には母鋼板に張力を付与し鉄損を改善する目的や、鋼板を加工し、モーター部品やトランス部品を作る際のすべり性、さらには、使用中の部品への錆の発生を抑制するための耐食性改善なども効果の一つとして期待されている。これらの目的を分担して行うため、種類が異なる皮膜が複層して形成されることも通常行われている。これらの目的で、この皮膜の形成物質として酸化物が用いられることが多い。特に上記の特性やコストを満足するものとしてSiを主体とした酸化物が用いられることが多い。
しかし、これまでに実用化されている酸化物を主体とする皮膜は金属である母鋼板との密着力を向上させることが難しく、現状の技術では、金属と酸化物の界面を大きな凹凸形状とし、いわゆるアンカー効果を持たせた、主として機械的な接合状態としたものであった。この母鋼板にとっての最表面の凹凸は、鋼板使用中に母鋼板の中で移動する磁壁の移動を阻害するため、磁気特性を顕著に劣化させる原因となっている。このような害を除くため、鋼板と皮膜の界面は平坦とし、密着性を皮膜中に含有させた有機物により、一般的な接着剤のような効果により密着性を高める特許文献2のような技術も開示されている。しかし、この技術では母鋼板に付与する張力を大きくすることが困難で、張力による磁気特性向上効果を充分に活用できないという欠点があった。
一方で、通常、電磁鋼板を積層して固定するために、溶接やかしめなどが多く適用されているが、これらによる鋼板短絡や、好ましくない歪の生成が、部材としての特性を劣化させる原因となることが指摘されている。このため、高温で溶融する有機物を接着剤のように用い、すなわち鋼板を重ねたまま高温で熱処理することで積層部材として固定する特許文献3のような技術も開示されている。しかし、この技術では接着力が弱く、また、部材を製造する工程で様々な目的から部材がさらされる高温状態の温度によって、また、長期間の使用による経時変化により、接着力が極端に低下し、問題を引き起こすことが指摘されている。
特開平2−301571号 特開平7−278833号 特開2000−12320号
本発明は、低コストで、かつての方法では到達できなかった皮膜の密着性と母鋼板への張力の付与を両立して実現すると同時に、部材としての積層鋼板の固定を確実に行うことを目的とする。
本発明は、主として酸化物からなる皮膜の構造および組成を好ましく制御することで、上記の目的を達成する。より具体的には、皮膜として塗布する物質中にNi、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上を含有させることで皮膜の特性を顕著に向上させる。特にこれら元素を皮膜と母鋼板との界面に偏析させ、また濃化部を界面上に偏在して形成させることで、界面を非常に細かい凹凸形状とすると同時に化学的な結合力を向上させ、結果として皮膜の鋼板への密着性の向上を図る。皮膜への添加物質、その量、さらには、皮膜に付与する熱処理を最適に制御することで、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの偏析が効率的に起きるようにする。さらに、鋼板を使用した部材の総合コスト低減や発明の効果を最大限に活かすため、皮膜形成工程として、鋼板を使用した部材を組み立てる工程を活用するものである。本発明の要旨は次のとおりである。
(1)質量%でC:0.070%以下(0を含む)、Si:以上7.00%以下(0を含む)、Mn:6.50%以下(0を含む)、P:0.30%以下(0を含む)、S:0.080%以下(0を含む)、Al:8.0%以下(0を含む)、N:0.070%以下(0を含む)、O:0.070%以下(0を含む)を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼板であって、かつ表面に酸化物を含有する皮膜を有し、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素について、(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の各元素濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)≧2.0かつ(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の各元素濃度)/(皮膜中の各元素平均濃度)≧2.0を満たすことを特徴とする皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(2)前記Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素について、母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の濃度が、0.10質量%以上であることを特徴とする(1)記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(3)母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均深さが5.0μm以下であることを特徴とする(1)または(2)記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(4)母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均周期が15.0μm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(5)皮膜層中に、質量%で、Ni:0.05%以上、Co:0.05%以上、Cr:0.05%以上、Cu:0.05%以上、Mo:0.05%以上、Nb:0.05%以上、Mn:0.05%以上の一種または二種以上を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(6)Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素が、(皮膜中の各元素平均濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)>1.00であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(7)皮膜層の組成が、酸化物:70質量%以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(8)皮膜層の組成が、SiO:30質量%以上であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(9)皮膜の平均厚さが20.0μm以下であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(10)(皮膜の平均厚さ)/(鋼板厚さ)≦1/10であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(11)皮膜が原因となり鋼板に発生している張力が1MPa以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
(12)鋼板表面に、質量%で、Ni:0.05%以上、Co:0.05%以上、Cr:0.05%以上、Cu:0.05%以上、Mo:0.05%以上、Nb:0.05%以上、Mn:0.05%以上の一種または二種以上を含有する物質または混合物を塗布し、この塗布物質を熱処理により、塗布物の少なくとも一部または全部を溶融固化させ皮膜を形成させることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(13)Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素が、(鋼板表面に塗布する物質または混合物中の各元素平均濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)>1.00であることを特徴とする(12)に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(14)鋼板表面に塗布する物質または混合物の組成について、酸化物:70質量%以上であることを特徴とする(12)または(13)に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(15)鋼板表面に塗布する物質または混合物の組成について、SiO:30質量%以上であることを特徴とする(12)〜(14)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(16)鋼板表面に塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理が、400〜1200℃の温度で、0.1〜3600秒間で行われることを特徴とする(12)〜(15)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(17)鋼板表面に塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理が、露点≦0℃の雰囲気中で行われることを特徴とする(12)〜(16)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(18)表面皮膜を形成するための物質または混合物がドライプロセスで塗布されることを特徴とする(12)〜(17)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(19)塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融固化させる熱処理を行う際に、母鋼板に作用する応力として、1Mpa以上の張力を付与した状態で行うことを特徴とする(12)〜(18)のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
(20)(1)〜(19)のいずれかの項に記載の鋼板または鋼板の製造方法が、鋼板使用部材として加工される工程で達成される皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の使用方法。
(21)(20)に記載の鋼板の使用方法が、皮膜形成物質の塗布を鋼板使用部材として加工される工程で行うことを特徴とする皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の使用方法。
(22)(20)または(21)に記載の鋼板の使用方法において、皮膜中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理を、鋼板使用部材として加工される工程で行うことを特徴とする皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の使用方法。
本発明の電磁鋼板は、良好な皮膜密着性を有し、皮膜に関連する機能の向上を図ることが可能となるばかりでなく、鋼板に安定して高い張力を発生させることで磁気特性の向上も達成される。
以下詳細に説明する。各成分元素の含有量は質量%である。
まず、母鋼板の組成について説明する。
Cは0.07% を超えると、脱炭処理を行っても磁気時効の起こらない50ppm以下まで低減することが困難になるので、Cは0.07%以下に制限した。また、磁気特性を劣化させる場合があるので0.0400%以下とすることが好ましい。また集合組織改善に有効に働き、磁性にとって好ましくない{111}方位の発達を抑制し、好ましい{110}や{100}、{114}等の方位の発達を促進する効果もある。この観点からは好ましくは0.0031〜0.0301%、さらに好ましくは0.0051〜0.0221%、さらに好ましくは0.0071〜0.0181%、さらに好ましくは0.0081〜0.0151%である。一般的には冷延後に脱炭焼鈍により0.0050%以下までCを減じる。製造コストの観点からは溶鋼段階で脱ガス設備によりC量を低減しておくことも可能で、0.0040%以下とすれば磁気時効抑制の効果が著しい。さらに鋼板中に粗大な炭化物が存在し、これが母鋼板の表面に存在し、皮膜塗布後の熱処理中に皮膜中の酸化物と反応すると、Cがガス化し皮膜中にボイド(バブル、泡)を形成し、皮膜の機能を著しく劣化させる場合がある。このため0.0030%以下とすることがさらに好ましく、0.0015%以下がさらに好ましい。0%であっても構わない。
Siは鋼の固有抵抗を高めて渦電流を減らし、鉄損を低下せしめるが、添加量が0.2%未満ではその効果が小さい。低Si鋼では鋼の脆化もほとんどなく、磁束密度も高くすることができる。とは言え、特に高周波用途等においてSi等の固溶元素による渦電流損失の低減効果を考えると、好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上Siを含有する鋼を対象とする。しかし7.00%を超えると鋼を脆化させ、さらに製品の磁束密度を低下させるため7.00%以下とする。好ましくは5.5%以下、さらに好ましくは4.5%以下である。
MnはMnSやMnSe等をインヒビターとして用い、二次再結晶を活用して磁気特性の改善を図る場合に重要な元素で、Siと同様に鋼の固有抵抗を高めて渦電流を減らし、鉄損を低下せしめる効果も有する。しかし過剰な添加は磁束密度を低下させるので、上限を6.50%とする。好ましくは0.05〜3.5%である。
Pは0.30%を超えると脆化が激しく、工業的規模での熱延、冷延等の処理が困難になるため、上限を0.30%とする。好ましくは0.10%以下である。
Sは硫化物を二次再結晶時のインヒビターとして用いる鋼では少なからず含有させる元素である。一方で、二次再結晶を活用しない場合には磁気特性、特に鉄損を劣化させる場合がある。さらにCと同様、鋼板中に粗大な硫化物が存在し、これが母鋼板の表面に存在し、皮膜塗布後の熱処理中に皮膜中の酸化物と反応すると、Sがガス化し皮膜中にボイド(バブル、泡)を形成し、皮膜の機能を著しく劣化させる場合がある。Sの含有量はできるだけ低いことが好ましく0%であっても構わない。本発明では0.080%を上限とする。好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.010%以下、さらに好ましくは0.0030%以下、さらに好ましくは0.0010%以下である。
Alは通常、脱酸剤として添加されるが、Alの添加を抑えSiにより脱酸を図ることも可能である。また、固溶Alとして鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減する効果もある。二次再結晶を活用した電磁鋼板ではインヒビターとしてのAlNが非常に重要な役割を担う。8.0%を超えると脆化が問題になるため、上限を8.0%とする。上限は好ましくは6.0%、さらに好ましくは5.0%、さらに好ましくは4.0%、さらに好ましくは3.0%である。下限は0でもよいが、不可避的に0.0001%以上は含有されることが多い。脱酸による鋳造性改善や磁気特性を考慮し、好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.08%、さらに好ましくは0.5%、さらに好ましくは1.0%である。
NもAlと同様、従来の二次再結晶を活用した電磁鋼板ではインヒビターとしてのAlNが非常に重要な役割を有する。NはCと同様に磁気特性を劣化させるので0.070%以下とする。好ましくは0.0301%以下、さらに好ましくは0.0221%以下、さらに好ましくは0.0181%以下、さらに好ましくは0.0151%以下である。ただしAlを0.010%程度以上含有する場合に多量のNを含有させると微細な窒化物を多量に形成し磁気特性を顕著に劣化させることがあるため避けることが好ましい。一方、鋼板中に粗大な窒化物が存在し、これが母鋼板の表面に存在した場合にはC同様、皮膜塗布後の熱処理中に皮膜中の酸化物と反応すると、Nがガス化し皮膜中にボイド(バブル、泡)を形成し、皮膜の機能を著しく劣化させる場合がある。窒化物の害を回避するために、製造工程において鋼板の脱窒を行うコストを考えると、Al脱酸鋼においては溶鋼段階でN含有量を低減しておくことが好ましく、0.0040%以下とすべきで、本発明鋼では低いほど好ましく、0.0027%以下とすれば磁気時効や窒化物形成による特性劣化の抑制効果は顕著で、さらに好ましくは0.0022%、さらに好ましくは0.0015%以下、0%であっても構わない。
Oは、鋼中で介在物を形成し磁気特性を劣化させると共に、用途によっては使用中の破壊の起点になることもある。また、鋼板製造時の鋳造時の鋳造性を劣化させるため低いことが好ましい。上限を0.070%、好ましくは0.030%、さらに好ましくは0.010%、さらに好ましくは0.005%、さらに好ましくは0.003%で、0%であっても構わない。
この他、従来の電磁鋼板で様々な特性を制御するために添加される、Bi、Sn、Sb、REM、Ca、Mg、B、Cu、Ni、Nb、Ti等の元素を添加しても本発明の効果が損なわれることはない。本発明の特徴は母鋼板自体にあるものではなく、皮膜と母鋼板の界面および皮膜にある。
次に、本発明鋼における最大の特徴となる皮膜と母鋼板の界面の状態について記述する。界面に存在し、本発明の特徴を発現させる元素を「特定元素」と呼ぶこととする。以下、本明細書中では「特定元素」とは「Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素」を表すものとする。
本発明鋼では特定元素について母鋼板と皮膜の界面で濃化することで特性が向上する。このメカニズムは明確ではないが、このような濃化が、皮膜の密着性を高めることで、上述のように、皮膜の欠陥を防止し、磁気特性や絶縁性、すべり性などの必要特性をも高めるものと考えられる。このような密着性向上は、特定元素の濃化部位と非濃化部位で、母鋼板と皮膜中の酸化物との反応性が異なり、これにより界面が微細な凹凸形状になることが原因の一つと考えられる。または、これらの濃化元素が、皮膜中の物質と、母鋼板中のFeの化学的な結合を強める効果が働いているものと考えられる。特にこの化学的な結合は皮膜に多量の酸化物を含有させた場合に顕著となることから、皮膜中の酸化物と母鋼板中のFeが皮膜中の酸素と結合して形成するFe酸化物との化学的結合状態を変化させるものと考えられる。
現象的にはこの効果は、特定元素が、母鋼板と皮膜の界面において「母鋼板および皮膜の各平均濃度を超えて濃化している部位を有することで顕著になり、その組成や形態により以下のように特徴付けることが可能である。特定元素について、(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の各元素濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)≧2.0かつ(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の各元素濃度)/(皮膜中の各元素平均濃度)≧2.0であることが好ましい。さらに好ましくは、各々が3.0以上、さらに好ましくは5.0以上、さらに好ましくは10.0以上であり、50.0以上に濃化した部位が存在すれば特性は顕著に向上し、濃化部位が純元素となっていても構わない。
上述の濃化は電子顕微鏡、X線分析、電子線分析、イオン分析等の最新の解析機器で十分に観測が可能なものである。もちろん化学分析などこれ以外の方法によっても同定が可能なものである。測定データを検討する際には、測定領域の面積のみならず特定の面から分析する場合には測定領域の深さも考慮して特定元素の濃度を決定する必要があるのは言うまでも無い。特に注意を有するのは例えば特定面に特定元素100%の領域が形成されていてもそれが非常に薄い場合、表面から電子線やX線を用いた解析機器で成分分析を行うと皮膜を透過し母材部も含めた領域の成分が検出されるため特定元素の含有量としては低い定量値が得られるような場合である。本発明では空間的に十分に微小な領域に限定した解析が必要である。もちろん、上の事例のように特定元素が濃化していない領域まで含めた広い領域を平均した定量値においてさえも本発明で規定する定量値、例えば特定元素の濃度が鋼中平均含有量の2.0倍以上、を満足する場合はそのデータを採用することは問題とはならない。
母鋼板と皮膜の界面に形成される特定元素の濃化部での特定元素濃度は、0.10%以上となっていることで発明の効果が顕著となる。好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは30.0%以上、さらに好ましくは50.0%以上、さらに好ましくは0.0%以上であり、濃度100%の領域を形成していても発明の効果を損なうことはない。注意を要するのは、微少領域の濃度は測定領域の大きさに敏感に影響されることである。つまり、十分に小さい領域、極限として原子1個を測定すれば、どのような場合にも濃度100%の空間が存在してしまうことにもなる。もちろん、このようなものは本発明で規定する濃化部からは除外する。と、いってあまりに広い領域を測定したのでは微少な濃化部の存在を見落とすことにもなる。測定領域の目安としては、後述の界面凹凸の大きさとも関連するが、0.1μm程度の広がりを持つ領域とすることが好ましい。もちろん、測定機器、手法により、これ以下の領域で得られた値が、全体の特徴を代表するものであることが認められるものであれば、それを用いても構わない。
上述のように母鋼板の成分と皮膜の成分や皮膜を形成する物質等を規定し、母鋼板と皮膜の界面での特定元素の濃化を制御することで目的とする特性のうち皮膜の密着性を格段に向上させることができる。上述のメカニズムの中でも触れたように、本発明鋼での密着性向上メカニズムは必ずしも解明されているものではないが、界面での微細な凹凸が変化することで特徴づけることができる。この凹凸は通常の電磁鋼板の母鋼板と皮膜の界面の形態に比べると非常に微細かつ緻密な状態となっていることが特徴である。
この特徴の一つとして界面の凹凸の深さを規定する。本発明鋼ではこの平均深さが5.0μm以下とする。凹凸の深さは、細かく観察すれば非常に微細な凹凸も観察することは可能であるが、本発明では鋼板の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、2000倍の像で観察できる程度の凹凸を測定するものとする。2000倍の写真で0.5mm以下の小さな凹凸は測定の精度に問題を生ずるため除外する。つまり、0.25μm以下の凹凸は無視するものとする。これは、これ以下の凹凸が密着性に影響を及ぼしていないということを意味するものではなく、あくまでも測定手法上の規定にすぎない。これ以下の微細な凹凸により密着性が向上することは、本発明にとっては好ましいことであり、このような状態になることがむしろ好ましい。このように測定される凹凸深さは、好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。下限は特に設ける必要はなく、0μmであっても構わない。
このような凹凸を数多く形成することで密着性は向上し、凹凸の平均周期が15.0μm以下、すなわち1mmの長さの中に凹凸を一組として100個以上存在することで、本発明の効果は著しく良好となる。さらに好ましくは、平均周期が10.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。下限は特に設ける必要はないが、測定手法上、深さ0.25μm以下の凹凸は無視しているので、周期はせいぜい0.05μmにとどまってしまう。
上述のように、本発明鋼では、皮膜と母鋼板の界面の粗度を規定しているが、これは皮膜を形成する前、皮膜形成物質を塗布する前の鋼板粗度にも影響されるものではある。しかし、本発明鋼では母鋼板の粗度については特に規定しない。皮膜形成後に本発明のような粗度に制御することが特性にとって決定的な要因だからである。本発明で制御する界面の粗度は、一般的に制御される鋼板の表面粗度より微細でするどい形態を示すものとなる。最終的な特性からは、母鋼板の粗度はできるだけ小さくしておくことが好ましい。母鋼板の粗度があまりに粗いと、界面に微細な凹凸とともに、粗い凹凸が存在することになり、これが鋼板の特性を劣化させるとともに、皮膜欠陥の原因ともなる。母鋼板の表面粗度は一般的なもので充分であるが、目安としてはRaで5μm以下、好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、さらには、0.2μm以下として、一般的な鋼板表面として平滑化しておくことは鋼板の特性からはむしろ好ましいことである。
以下、本発明で特徴となる皮膜について記述する。
本発明における皮膜とは、鋼板の表面に形成されている膜を総称して言う。ただし、体積率で皮膜の50%以上が金属相となるような、金属めっきに類する皮膜は除外する。皮膜を構成する物質としては、酸化物や炭化物、窒化物、硫化物、フッ化物等、塩化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩などあらゆる化合物を含有させることが可能である。また、皮膜中の含有物は意図して添加した物質ばかりでなく、皮膜を形成する処理中の反応により生成するものも含まれる。
皮膜の形成方法は特に限定されるものではなく、蒸着、プラズマ溶射、塗布、酸化、窒化などの一般的に知られる表面処理で形成させることができるものである。ただし、本発明は界面に特定元素の偏析部を形成する必要があり、その意味では多層構造となっているため、単純な均一な表面処理で目的を達成することは一般には困難である。本発明を達成する一つの方法としては、後述のように、母鋼板表面に特定元素を含む物質または混合物を適当量塗布、または母鋼板そのものに特定元素を含有させておき、その後、高温で処理することで皮膜を形成させるとともに特定元素を母鋼板と皮膜の界面に偏析させるようにすることが可能である。または、複数回の表面処理工程または表面改質を経ることでも、特定元素が界面部に濃化した構造を有する皮膜を形成することが可能である。たとえば、特定元素を有する物質をめっきした上に、皮膜を形成させる方法などが考えられる。好ましい皮膜形成方法については後述する。
発明の効果の観点からは、皮膜を酸化物を主とすることが好ましい。皮膜を構成する物質の組成のうち、質量%で70%以上を酸化物とすることで発明の効果が顕著になる。好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、99%以上を酸化物とすることで発明の効果はさらに顕著になり、100%であっても構わないが、一般的に各種ガラス等の酸化物を主とする物質中に含まれ得るものを想定する。
皮膜中の酸化物は素材物質のコストや生産性、処理のしやすさ等を勘案するとSiO2を主としたものが実用的である。皮膜中の質量%で30%以上とすることが好ましい。45%とすることがさらに好ましく、60%以上、さらには75%以上、さらには90%以上でも構わないが、SiO2が多くなることは特定元素の含有量が減ることも意味するため、適当な範囲にとどめる必要がある。また、他の酸化物を使用する場合、作業性やコスト、さらには上記の特定元素の添加を兼ねる場合も含めると、主たる酸化物をいくつかの酸化物に限定することが可能である。つまり、皮膜の組成について、NiO、CoO、Cr2O3、NbO2、Nb2O5、MnOのうち、1種または2種以上を含むようにすることが好ましい。補助的に含まれる酸化物としては、Na2O、K2O、MgO、ZnO、Al2O3、Sb2O5、P2O5、SnO2、ZrO2TiO2、B2O3、などがある。もちろんここに示さない酸化物を含有しても本発明の効果が損なわれるものではない。
なお、通常の電磁鋼板では、公知の技術として、Si、Mg、Al、Ti、Crの酸化物またはこれらの複合酸化物など酸化物を主体とする皮膜が形成されている。本発明の好ましい一形態は酸化物を主体とした皮膜でもあるが、界面も含めた皮膜構造、製造法、特性向上効果、特性向上メカニズム(技術思想)などの点では、従来技術とは全く異なるものである。
次に、特定元素の含有方法について述べる。
特定元素は、皮膜側または母鋼板側に添加しておくことで界面に濃化させることが可能であり、その方法自体は特に限定されるものではない。ただし、母鋼板側に添加すると、本発明の重要な最終目的そのものとも言える、母鋼板の磁気特性に好ましからざる影響を及ぼすことがある。また、界面という非常に狭い範囲に偏在させるべき元素を、皮膜と比べると格段に厚さが大きい鋼板中に分散させておくのは単純に考えても得策とは言えない。さらに、特定元素が界面に偏析するための移動を考えると、熱処理等によりその一部が溶融し、鋼板よりも流動性が高まることが期待できる皮膜側に特定元素を含有させておくことが有利となる。このような理由から、本発明鋼では特定元素について(皮膜中の各元素平均濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)>1.00とすることが好ましい。特定元素は鋼板中に含有させるよりも、皮膜中に含有させておくことが、本発明で特徴的な界面構造を形成し、その効果を十分に得るためには、非常に好ましい方法である。好ましくは10.00以上、さらに好ましくは100.00以上である。
本発明では特定元素を少なからず皮膜中に添加するが、その際の添加方法や、添加する物質の形態はいろいろと考えられる。純金属として、あるいは金属間化合物や非金属間化合物として添加することなどが考えられるが、特に限定されるものではない。主には塗布後に加える熱処理時の反応により上述のような界面の変化が起きるものである。
次に、特定元素の皮膜中の含有量について述べる。
特定元素のうち、Ni、Co、Crは効果が非常に顕著で特に重要な元素である。まず、これらについて説明する。
Niの含有量は0.05%未満では有益な効果はほとんど検知されない。有益な効果を得るには0.10%以上の添加が好ましく、さらに好ましくは0.50%以上、さらに好ましくは1.0%以上、2.0%以上添加すれば著しい効果が得られる。5.0%以上の添加では効果は飽和する傾向が見られる。過剰な添加はコストの点からも好ましくはないが、同時に皮膜と鋼の反応の不均一が大きくなり皮膜欠陥を生じやすくなるとともに張力の付与が困難になることから、20.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10.0%以下で、8.0%以下でも十分な効果を得ることができる。
CoはNiと同様に著しい効果を有することから本発明において添加することが可能である。0.05%未満では有益な効果はほとんど検知されない。有益な効果を得るには0.10%以上の添加が好ましく、さらに好ましくは0.50%以上、さらに好ましくは1.0%以上、2.0%以上添加すれば著しい効果が得られる。5.0%以上の添加では効果は飽和する傾向が見られる。過剰な添加はコストの点からも好ましくはないが、同時に皮膜と鋼の反応の不均一が大きくなり皮膜欠陥を生じやすくなるとともに張力の付与が困難になることから、20.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10.0%以下で、8.0%以下でも十分な効果を得ることができる。
CrもNi、Coと同様の効果を有することから本発明において添加することが可能である。0.05%未満では有益な効果はほとんど検知されない。有益な効果を得るには0.10%以上の添加が好ましく、さらに好ましくは0.50%以上、さらに好ましくは1.0%以上、2.0%以上添加すれば著しい効果が得られる。5.0%以上の添加では効果は飽和する傾向が見られる。過剰な添加はコストの点からも好ましくはないが、同時に皮膜と鋼の反応の不均一が大きくなり皮膜欠陥を生じやすくなるとともに張力の付与が困難になることから、20.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10.0%以下で、8.0%以下でも十分な効果を得ることができる。
次に特定元素のうち、特有の作用を持ち、発明の効果に著しい効果を示す元素である、CuとMoについて述べる。
CuはNiやCoと同様の効果を示すが、Cu単独ではその効果は比較的小さく、他の元素、特にNi、Coと同時に添加した際に効果が顕著になる。その含有量は0.05%未満では本発明の効果はほとんど検知されない。発明の効果を十分に得るには0.08%以上の添加が必要で、好ましくは0.10%以上、さらに好ましくは0.50%以上、1.0%以上添加すれば効果が得られる。2.0%以上の添加では効果は飽和する傾向が見られる。過剰な添加は合金コストの点からも好ましくはないが、同時に皮膜と鋼の反応の不均一が大きくなり皮膜に欠陥を生じやすくなるため、8.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは5.0%以下で、3.0%以下でも十分な効果を得ることができる。CuがNiやCoとの複合添加において効果が顕著になるメカニズムは明確ではないが、CuはNiやCoのように直接、界面形状の変化を誘起するのではなく、NiやCoの効果を増大させるものと考えられる。ひとつには、NiやCoが皮膜と母鋼板の界面に偏析する際に、その偏析挙動、特に偏析量や界面上での偏在の分布に影響を及ぼしているものと考えられる。Cuは酸化物を形成しにくく、皮膜中のCuは比較的界面に偏析しやすいと考えられ、Cuの偏析がNiやCoの偏析に影響しているとも考えられる。Cu偏析部にNiやCoが優先的に偏析するのか、Cu偏析部を避けることで、NiやCoの偏析が好ましい形態になるのかは判明していないが、界面部で何らかの相互作用を及ぼしていると考えられる。
MoはNiおよびCoとCuとの中間的な作用を有する。すなわち、NiやCoの効果を少なからず顕著にする効果を有すると共に、単独での効果も大きなものがある。0.05%未満では有益な効果はほとんど検知されない。有益な効果を得るには0.10%以上の添加が好ましく、さらに好ましくは0.50%以上、さらに好ましくは1.0%以上、2.0%以上添加すれば著しい効果が得られる。5.0%以上の添加では効果は飽和する傾向が見られる。過剰な添加はコストの点からも好ましくはないが、同時に皮膜と鋼の反応の不均一が大きくなり皮膜欠陥を生じやすくなるとともに張力の付与が困難になることから、20.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10.0%以下で、8.0%以下でも十分な効果を得ることができる。Moの効果は明確ではないが、Cuのような効果に加え、NiやCoとともに皮膜中の酸素と複合酸化物を形成し、NiやCoの挙動に影響を与える可能性がある。NiやCoとの吸引する相互作用が強く、これらの偏析部にも固溶しているような形態で少なからず存在するためと考えられる。
これ以外の特定元素としては、Nb、Mnがある。これらの元素は単独では効果が小さく、むしろ上記のNi、Co、Cr、Cu、Moの効果を大きくする作用を有する。このメカニズムは明確ではないが、これらが皮膜中で酸化物を形成し、上記の元素を鋼板側に排斥し偏析させるものか、または鋼板中に少なからず含有されるC、N、Sなどと結合し、鋼板表面で化合物を形成し、Ni等の偏析起点になるものと考えられる。この効果を得るにはNbであれば、0.05%以上、好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは1.0%以上含有させる。Mnであれば、0.05%以上、好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上含有させる。ただし、これらの元素は過剰に含有させると皮膜に欠陥を生じやすくなり、皮膜が有するべき絶縁性、すべり性、耐食性、密着性等を劣化させる。このためNbは20.0%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下とする。Mnは20.0%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下とする。
上で述べた7元素についての含有量は最終的な使用状況で母鋼板上に形成されている皮膜中の元素の含有量に関するものであるが、同様の範囲を、皮膜を形成するために母鋼板表面に塗布する物質または混合物についても規定する。
皮膜中の元素含有量と塗布した物質または混合物中の元素含有量は、皮膜形成にともなう処理工程、代表的には塗布物質または混合物の一部または全部が溶融固化するような熱処理、において、外部との物質の移動がなければ同じものになる。しかし、塗布物質または混合物の種類や、皮膜形成処理条件によっては、物質の外部との物質の収支が起こる。例えば、塗布物質中の窒化物が塗布物質中の酸化物または雰囲気中の酸素と反応し酸化物を生成する過程で窒素がガス化し雰囲気中に放散される場合や、母鋼板からFeが皮膜中に拡散し進入する場合などである。この時は、皮膜中の元素の含有量は、皮膜を形成するために母鋼板表面に塗布する物質または混合物のそれとは異なることとなる。そして、その変化は、熱処理条件によっても影響するため、一義的には決定できるものではない。そして、制御という観点では、最終的な皮膜中の物質よりも、事前に塗布する物質で制御するほうが工業生産の面からは容易にもなる。このため、本発明では、本発明の効果について必須となる7元素についての含有量を、皮膜中だけでなく、皮膜を形成するために母鋼板表面に塗布する物質または混合物についても規定するものである。その範囲は皮膜中のものと同一とはしているが、これは上述のように、含有量の変化が熱処理条件等により影響されるため一義的な決定が困難なことから、便宜上、同一としているものである。皮膜中の含有量であるにしろ、皮膜を形成するために母鋼板表面に塗布する物質または混合物中の含有量であるにしろ、本発明範囲内にあれば、界面への特定元素の偏析が起き、狙っている効果を十分に得られる範囲に規定しているものである。
次に皮膜の形態等について述べる。
皮膜の厚さは厚すぎると、電気部品として積層した場合に、磁気特性を担う鋼板の存在率、いわゆる占積率が低下してしまい、部材としての磁気特性を損ねてしまう。このため上限は20.0μmとすることが好ましい。さらに好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下である。皮膜が存在しない場合は、本発明鋼には含まれないが、厚さが1.0μm以下、さらには0.5μm以下、さらには0.1μm以下であっても本発明の効果は検出可能である。
この占積率は、母鋼板の板厚と関連するものであり、本発明においては、(皮膜の平均厚さ)/(鋼板厚さ)≦1/10とすることが好ましい。さらには1/20以下、さらには1/40以下であり、1/100以下であっても構わない。
ただし、張力の効果については皮膜の量、すなわち厚さで効果を担っている面もあるため、使用条件において問題とならない占積率の程度まで皮膜を厚くしても構わない。このような皮膜によって鋼板には張力が発生する。ここで述べる張力が発生しない場合、鋼板としての磁気特性が劣化するばかりでなく、皮膜が破壊しやすくなり、鋼板取り扱いや使用時のわずかな衝撃や変形で本発明で特徴的な皮膜に欠陥が生じ、密着性が低下するとともに、絶縁性、すべり性にも悪影響を及ぼす。本発明鋼では鋼板に生ずる張力が1Mpa以上であることが特徴の一つである。好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上、さらに好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは20MPa以上、さらに好ましくは30MPa以上で、さらに大きな張力が働いても何ら問題となるものではない。
このような鋼板張力は一般に良く知られているように、(皮膜の線膨張率)と(母鋼板の線膨張率)の差によって生ずるものであり、皮膜の線膨張率を母鋼板のそれより小さくすることで、熱処理後の冷却過程で鋼板に張力が発生するものである。基本的にはこれらの膨張率の差と皮膜厚さ、さらには熱処理温度や冷却速度などの熱処理条件等により、磁気特性に寄与する張力は制御される。膨張率の差は大きいほど大きな張力を鋼板に付与することが可能となるが、皮膜には鋼板面内方向に圧縮力が働くこととなり、皮膜に過大な圧縮力が働くと、この圧縮変形によって皮膜が破壊され欠陥を生ずることとなるので注意が必要である。本発明鋼は酸化物皮膜と母鋼板の密着力が非常に高いため、このような圧縮力による破壊に対して非常に強いという特徴を有している。
次に本発明鋼板の特徴的な製造方法、つまり皮膜の形成方法について述べる。皮膜形成方法はここに示す方法に限定されるものでないことは言うまでもないことであるが、本方法によれば効率よく、低コストで発明の効果を得ることが可能となる。
本発明鋼における表面皮膜は、鋼板に酸化物または酸化物を含有する物質を塗布し、その後、塗布した皮膜中に含有している酸化物の1種または2種以上が溶融する温度以上で熱処理し、その後固化させることで形成することが好ましい。この熱処理中に、特定元素の界面への偏析、それに伴う界面形態の変化、皮膜の緻密化、熱歪の発生、皮膜表面性状の変化等が起き、絶縁性、密着性、すべり性、耐食性、張力等が好ましい状態になる。
また、皮膜形成物質を塗布する鋼板表面は、実質的に酸化皮膜を有していないことが好ましい。初期酸化皮膜が形成した状態では、好ましく組成等が制御された物質を塗布したとしても、初期酸化皮膜が存在していた界面の状況が好ましからざる状態になってしまう危惧を生ずるためである。ここで実質的にと述べたのは、鋼板の製造工程は少なからず酸素を含む雰囲気中で行われるため、鋼板表面から完全に酸化膜を取り除くことは困難なためである。特別な雰囲気制御をしていない通常の鋼板の製造工程であれば、通常の冷延板でも初期酸化物層の厚さは0.5μmを超えることはない。もちろん、本製造法では、熱処理中に少なくとも酸化物の一部が溶融した状態になるため、初期酸化皮膜の除去、改質される効果も期待することができ、条件によっては完全に無害化または好ましい効果を発揮することも考えられる。ただし、このような状態にするには、初期酸化皮膜の形成が好ましいものとなるよう注意を払う必要が生ずるため、本発明では、実質的に初期酸化皮膜がない状態に塗布することを推奨する。
また、酸化物を含有する物質の塗布は、製造コストや、塗布に伴う廃棄物の処理等の面から、ドライプロセスで行われることが好ましい。さらにドライプロセスとすることで、後述のような雰囲気からのガス原子による皮膜欠陥発生を抑止することも可能となり、皮膜の均一性も向上し、鋼板特性向上効果も好ましくなる。ドライプロセスによる塗布は、通常、各種の塗装等で実績がある粉体静電塗装等を用いることが可能である。
次に塗布した皮膜中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理条件について述べる。この温度はあまりに低温では、酸化物の溶融が不十分で皮膜の緻密化やフラット化が不十分となり皮膜欠陥が発生するばかりでなく、特定元素の偏析等も不十分になり密着性も劣化する。また、あまりに高温ではエネルギーコストの問題が起きるばかりか、溶融した皮膜物質の粘度が低下しすぎて、皮膜の厚さの確保が困難になることや、皮膜中の酸化物と母鋼板の反応が激しすぎて、界面構造を含めた良好な皮膜の形成が困難になるとともに、目的とする機能の発揮を阻害する。適当な温度範囲は400〜1200℃、好ましくは500〜1000℃、さらに好ましくは600〜900℃、さらに好ましくは700〜850℃である。同様に熱処理時間も重要な要因であり、好ましくは0.1〜3600秒、さらに好ましくは0.2〜1200秒、さらに好ましくは0.5〜300秒、さらに好ましくは1.0〜60秒である。熱処理温度が高温であるほど時間の短縮が可能であることは言うまでもない。時間が短すぎると本発明の特徴である、特定元素の界面への濃化および界面での凹凸形成のための時間が不足することになり、長すぎると母鋼板から皮膜中へのFeの拡散量が多くなり、皮膜の特性が好ましからざるものに変質してしまう。
本プロセスのもう一つの特徴は皮膜形成熱処理時の露点の制御にある。本プロセスでは、あまりに露点が高い雰囲気中で熱処理を行うと、熱処理終了後に皮膜に欠陥を生ずる場合がある。この原因は明確ではないが、熱処理中に母鋼板中に浸入したガス原子が熱処理後の鋼板の冷却に伴い母鋼板から排出され、それが皮膜中または界面で泡状となり皮膜の欠陥となるものと考えられる。このガス原子は雰囲気ばかりでなく、塗布した皮膜形成物質からも発生する場合がある。このため皮膜を形成するために塗布する酸化物を含む物質には分解しやすい有機物や水分を含まないことが好ましい。雰囲気の制御は露点を0℃以下とすることで、この害を抑制する効果が顕著になる。好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下、さらに好ましくは−40℃以下、さらに好ましくは−60℃以下であり、低いほど好ましいことは言うまでもない。
本発明鋼の特徴として、母鋼板に張力を生じている状態にあることは前述の通りである。この張力は皮膜物質と母鋼板の熱膨張の差を原因として、皮膜形成熱処理およびその冷却中に発生させることも可能であるが、本発明鋼では、皮膜形成熱処理中に鋼板に張力を負荷しておき、皮膜形成後に張力を除去することで母鋼板に張力を残存させることも可能である。ただしこの方法では張力のかけ方によっては残存する張力に板面内の異方性が生成することになる。この異方性は何も害になるものではなく、用途によっては好ましいものにもなるものであり、必要とする特性や使用方法により張力の方向を制御することが可能である。例えば、コイルで鋼板を製造する場合であれば、コイルの長手方向に張力を付与しておくことでこの方向の張力が大きくなり鉄損が低下するし、また、皮膜には大きな圧縮力が働くため、この方向の変形に対する皮膜の耐破壊性が向上する。この効果を顕著に得るには1MPa以上の張力を付与しておくことが好ましい。張力が大きいほど効果も大きくなることは言うまでもないが、上述の異方性に注意する必要があることと、あまりに大きな張力では鋼板が変形したり、また、皮膜に生ずる圧縮力で皮膜自体が破壊してしまうことも考えられるので注意が必要である。
以上のような鋼板の特徴を生じさせる工程は、鋼板の製造工程のみに限定されるものではない。すなわち、上述のような特徴を有しない鋼板を用い、鋼板の加工工程、つまり電気部品の製造工程で上記の特徴を付与することも可能である。すわなち、上記のような皮膜形成物質の塗布を加工工程の途中、鋼板の積層前で行ったり、皮膜形成熱処理を鋼板を積層した後に行うこともできる。例えば、鋼板を打ち抜き加工した後、鋼板の片面のみに皮膜形成物質を塗布し、塗布面が同じ向きになるように積層した後、熱処理を行うことで、皮膜の形成と積層した鋼板の固定を同時に行うことも可能である。このようにすることで、従来、鋼板製造側で行われていた皮膜形成工程を省略したり、加工時に行っていたカシメや溶接などの積層鋼板の固定加工を省くことも可能となる。さらに、電磁鋼板の使用ユーザーで一般的に行なわれている歪取り焼鈍を皮膜形成熱処理として活用することでエネルギーコストの削減も可能となる。このように積層鋼板を固定した場合、本発明によると皮膜と母鋼板の密着が強固なため、従来法のように皮膜と母鋼板の界面での剥離というトラブルを完全に排除することが可能となる。もちろん、鋼板で皮膜を形成しておき、部材として積層した状態で熱処理だけを行い、皮膜を再溶融、固化させることで積層固定を図るというような使用法も可能である。
前記成分を含む母鋼板に関しては、通常の電磁鋼板と同様に転炉で溶製され、連続鋳造でスラブとされ、ついで熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍などの工程で製造される。これらの工程の中で冷延や焼鈍を複数回行うことや、脱炭工程などを経ることも本発明の効果を何ら損なうものではない。また通常の工程ではなく熱延工程を省略する薄スラブCCなどの工程によって製造しても問題ない。本発明は、通常、方向性電磁鋼板が用いられるトランス部品、無方向性電磁鋼板が用いられるモーター部品に限らず、電磁鋼板の種類や用途によらず、電気的および磁気的性質が要求されるすべての電磁鋼板の用途に適用可能である。皮膜は基本的には鋼板の表と裏の両面に同じ物質を同じ厚さで形成するが、これに限定されるものではない。使用方法や用途によって、表裏で異なる物質または異なる厚さで、本発明範囲内の皮膜を形成しても構わない。また、従来の電磁鋼板と同様に酸化物を主体とする皮膜の上に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂などの有機物を形成することで様々な表面特性を付与することも本発明の効果を損なうものではない。
表1に示した種々の電磁鋼板に各種の物質を塗布し、熱処理を行い皮膜を形成させ、特性を評価した。この際、鋼板表面に塗布する物質内に特定物質を含有させ、熱処理において鋼板表面への偏析を誘起し発明の効果を得るようにした。鋼板表面に塗布する物質は表2に示す酸化物を主体とした混合物を使用した。混合物中に含まれる酸化物等の割合は表2に示す通りであるが、実際の塗布はこれにさらに特定元素を含有した酸化物等を添加した。特定元素は表3に示すように、酸化物の他、純金属粉、炭化物、窒化物、硫化物等の形で添加し、最終的な特定元素の濃度が表3に示すように添加量を調整した。このため、最終的な塗布物質中の酸化物等の割合はトータルを100%とすると、表2の数字からはずれたものになっている。最終的に形成される皮膜は鋼板の表裏で同質、同厚となっている。塗布方法は2種を用いた。一つは塗布物質を粉体とし、電荷を帯びさせることで鋼板表面に付着させる方法で、一般的に静電粉体塗装として知られるものである。
この方法は、塗布工程で液体状の溶媒等を用いないため、一般的にドライプロセスと呼ばれており、表3においては「Dry」と記述した。もう一つの方法は、粉状にした塗布物質を液体に混ぜ、鋼板に吹き付けるものである。液体としては水、有機溶剤などが使用でき、一般的にウェットプロセスとして知られるもので、表3においては「Wet」と記述している。本実施例においては液体として水を用い、塗布物質の水中での混ざり具合や、鋼板への付着性を制御するため、表2のベース物質に、珪石、珪砂、ほう砂などのいわゆる「粘土」分を多少の添加物として加えた。
皮膜の密着性は、2kgの球頭の重りを2mの高さから落下し変形させた時の、変形部の皮膜剥離状態を目視観察し評価した。皮膜性状は、熱処理による皮膜形成後の皮膜を目視観察し、皮膜剥離、黒点、白濁などの皮膜異常の発生を評価した。
皮膜の密着および性状については、×:問題あり、△:使用可(従来皮膜レベル)、○:良好、◎:非常に良好 として評価を表示した。
磁気特性については、本発明の適用による磁束密度の変化は小さいので、鉄損により効果を評価した。鉄損は55mm角のSST試験により鉄損W15/50を測定し、コイルの圧延方向およびその直角方向についての平均値を求めた。鉄損は鋼板の成分や熱履歴によって大きく変化するため、発明の効果は、物質を塗布せず、皮膜形成材と同一の熱処理を施した材料と比較し、鉄損の差により評価した。
各種特性を表3−1、表3−2に示す。
鋼番号1、2、18、19、29、30、33〜36、39、44は塗布物質に特定元素を含まないか、含んでも少量過ぎて効果が現れていない事例である。これ以外のものは、特定物質が皮膜と鋼板の界面に濃化し皮膜密着強度が高まることで、皮膜による鋼板への張力が十分に作用し鉄損改善効果が現れる。
鋼番号52〜59は、皮膜を形成せず製造した鋼板から55mmSSTのサンプルを切り出し、この両面に皮膜形成物質を塗布したものを5枚重ねて熱処理して、皮膜を形成すると同時に積層した。このようにして得た、鋼板を5枚重ねた55mm角のSST用サンプルで鉄損を測定し、評価した。なお、表中の皮膜厚さは、同様の塗布と熱処理を鋼板1枚に行なった際の皮膜厚さを記している。鋼板使用ユーザーにおいて、モーターコアやトランスコアの製造工程において、皮膜形成と積層化を行なうような場合でも、本発明の効果が得られることを示している。
Figure 2007262431
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Claims (22)

  1. 質量%で、C:0.070%以下(0を含む)、Si:7.00%以下(0を含む)、Mn:6.50%以下(0を含む)、P:0.30%以下(0を含む)、S:0.080%以下(0を含む)、Al:8.0%以下(0を含む)、N:0.070%以下(0を含む)、O:0.070%以下(0を含む)を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼板であって、かつ表面に酸化物を含有する皮膜を有し、Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素について、(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の各元素濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)≧2.0、かつ(母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の各元素濃度)/(皮膜中の各元素平均濃度)≧2.0を満たすことを特徴とする皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  2. 前記Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素について、母鋼板と皮膜の界面での濃化部位の濃度が0.10質量%以上であることを特徴とする請求項1記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  3. 母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均深さが5.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  4. 母鋼板と皮膜の界面の凹凸の平均周期が15.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  5. 皮膜層中に、質量%で、Ni:0.05%以上、Co:0.05%以上、Cr:0.05%以上、Cu:0.05%以上、Mo:0.05%以上、Nb:0.05%以上、Mn:0.05%以上の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  6. Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素が、(皮膜中の各元素平均濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)>1.00であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  7. 皮膜層の組成が、酸化物:70質量%以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  8. 皮膜層の組成が、SiO:30質量%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  9. 皮膜の平均厚さが20.0μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  10. (皮膜の平均厚さ)/(鋼板厚さ)≦1/10であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  11. 皮膜が原因となり鋼板に発生している張力が1MPa以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板。
  12. 鋼板表面に、質量%で、Ni:0.05%以上、Co:0.05%以上、Cr:0.05%以上、Cu:0.05%以上、Mo:0.05%以上、Nb:0.05%以上、Mn:0.05%以上の一種または二種以上を含有する物質または混合物を塗布し、この塗布物質を熱処理により、塗布物の少なくとも一部または全部を溶融固化させ皮膜を形成させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  13. Ni、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Mnの一種または二種以上の元素が、(鋼板表面に塗布する物質または混合物中の各元素平均濃度)/(母鋼板中の各元素平均濃度)>1.00であることを特徴とする請求項12に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  14. 鋼板表面に塗布する物質または混合物の組成が、質量%で、酸化物:70%以上であることを特徴とする請求項12または13に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  15. 鋼板表面に塗布する物質または混合物の組成が、質量%で、SiO:30%以上であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  16. 鋼板表面に塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理が、400〜1200℃の温度で0.1〜3600秒間行われることを特徴とする請求項12〜15のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  17. 鋼板表面に塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理が、露点≦0℃の雰囲気中で行われることを特徴とする請求項12〜16のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  18. 表面皮膜を形成するための物質または混合物がドライプロセスで塗布されることを特徴とする請求項12〜17のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  19. 塗布した物質または混合物中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融固化させる熱処理を行う際に、母鋼板に作用する応力として、1Mpa以上の張力を付与した状態で行うことを特徴とする請求項12〜18のいずれかの項に記載の皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の製造方法。
  20. 請求項1〜19のいずれかの項に記載の鋼板または鋼板の製造方法が、鋼板使用部材として加工される工程で達成される皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の使用方法。
  21. 請求項20に記載の鋼板の使用方法が皮膜形成物質の塗布を鋼板使用部材として加工される工程で行うことを特徴とする皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の使用方法。
  22. 請求項20または21に記載の鋼板の使用方法において、皮膜中に含有している酸化物の1種または2種以上を溶融させる熱処理を、鋼板使用部材として加工される工程で行うことを特徴とする皮膜密着性が良好で磁気特性が優れた電磁鋼板の使用方法。
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