JP2007259846A - 悪性腫瘍の性質の判定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】悪性腫瘍の性質を精度良く判定することのできる方法を提供する。
【解決手段】 パラメータを獲得する工程と第一比較工程と第二比較工程と判定工程とを含む悪性腫瘍の性質の判定方法を提供する。パラメータを獲得する工程では、悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、腫瘍細胞に含まれる第二のサイクリン依存性キナーゼ(第二CDK)の活性値及び発現量から得られる第二パラメータと、第一パラメータと第二パラメータに基づいて得られる第三パラメータと、前記腫瘍細胞のサイクリンの発現量から得られる第四パラメータとが獲得される。第一比較工程では、前記第三パラメータが第一の閾値と比較される。第二比較工程では、前記第四パラメータが、第二の閾値と比較される。判定工程では、第一比較結果及び第二比較結果に基づいて悪性腫瘍の性質が判定される。
【選択図】なし

Description

本発明は、患者から採取した悪性腫瘍の腫瘍細胞において発現しているタンパク質を分析し、分析結果に基づいて悪性腫瘍の性質を判定する方法に関する。
従来、悪性腫瘍細胞のサイクリンの発現量を測定することによって悪性腫瘍の性質を判定できることが知られている。例えば、非特許文献1では、乳がんの予後予測をサイクリンEの発現量を用いて行っている。非特許文献1では、乳がん患者から採取した腫瘍細胞におけるサイクリンEの発現量を測定し、サイクリンEの発現量が多い場合は生存率が低い、即ち予後が悪いということが報告されている。しかしながら、サイクリンEが低発現の悪性腫瘍であっても再発する場合などがあり、サイクリンEの発現量に基づく悪性腫瘍の予後予測や再発リスク判定の精度は充分ではない。
また、非特許文献2では、悪性及び非悪性のヒト乳房病変におけるサイクリンB1及びCDK1の発現量を測定している。この文献では、サイクリンB1やCDK1の発現量を用いることにより、良性又は前癌病変と乳がんとを区別できうることが報告されている。しかしながら、この文献では、サイクリンB1やCDK1の発現量しか測定されておらず、また、悪性腫瘍の再発リスクなどの悪性腫瘍の性質を判定する方法については一切記載されていない。
Keyomarsi K., et al., The New England Journal of Medicine, vol. 347, No. 20, 2002, pages 1566-1575. Hisanori Kawamoto., et al., American Journal of Pathology, vol. 150, No. 1, 1997, pages 15-23
本発明の目的は、患者から採取した悪性腫瘍の腫瘍細胞で発現している分子の分析結果に基づいて悪性腫瘍の性質を精度良く判定することのできる方法を提供することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
本発明の第一の局面による悪性腫瘍の性質の判定方法は、悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれる第二のサイクリン依存性キナーゼ(第二CDK)の活性値及び発現量から得られる第二パラメータと、前記第一パラメータ及び前記第二パラメータに基づいて得られる第三パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータを獲得する工程と、前記第三パラメータを、第一の閾値と比較する第一比較工程と、前記第四パラメータを、第二の閾値と比較する第二比較工程と、第一比較結果及び第二比較結果に基づいて前記悪性腫瘍の性質を判定する工程と、を含む。
この方法によると、悪性腫瘍の腫瘍細胞で発現している複数のCDK及びサイクリンの分析結果を用いるため、悪性腫瘍の性質を精度良く判定することができる。
本発明の第二の局面による悪性腫瘍の性質の判定方法は、悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれる第二のサイクリン依存性キナーゼ(第二CDK)の活性値及び発現量から得られる第二パラメータと、前記第一パラメータ及び前記第二パラメータに基づいて得られる第三パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータとを獲得する工程と、前記第三パラメータを、第一の閾値と比較する第一比較工程と、第一比較結果に基づいて、前記悪性腫瘍の性質を判定する第一判定工程と、を含み、前記第一判定工程で判定が確定されなかった場合、前記第四パラメータを、第二の閾値と比較する第二比較工程と、第二比較結果に基づいて前記悪性腫瘍の性質を判定する第二判定工程と、をさらに含む。
この方法によると、悪性腫瘍の腫瘍細胞で発現している複数のCDK及びサイクリンの分析結果を用い、さらに第一判定工程で判定が確定されなかった腫瘍細胞について第二比較工程及び第二判定工程を実行するため、悪性腫瘍の性質を精度良く且つより少ないステップで判定することができる。
本発明の第三の局面による悪性腫瘍の再発リスクの判定方法は、悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれる第二のサイクリン依存性キナーゼ(第二CDK)の活性値及び発現量から得られる第二パラメータと、前記第一パラメータ及び前記第二パラメータに基づいて得られる第三パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータとを獲得する工程と、前記第三パラメータを、第一の閾値と比較する第一比較工程と、第一比較結果に基づいて、前記悪性腫瘍を、A群及び前記A群よりも再発リスクが高い群の何れかに分類する第一分類工程と、を含み、前記悪性腫瘍が前記A群よりも再発リスクが高い群に含まれると判定された場合、前記第四パラメータを、第二の閾値と比較する第二比較工程と、第二比較結果に基づいて前記A群よりも再発リスクが高い群を、B群と前記B群よりも再発リスクが高いC群とに分類する第二分類工程と、をさらに含む。
この方法によると、悪性腫瘍の腫瘍細胞で発現している複数のCDKの分析結果を用いて、腫瘍細胞を、A群及びA群よりも再発リスクが高い群の何れかに分類し、A群よりも再発リスクが高い群に分類された場合、さらにサイクリンの分析結果を用いてB群及びC群に分類するため、悪性腫瘍を再発リスクの程度の異なる三群に分類することができる。
本実施形態の判定方法は、悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一CDK、第二CDK及びサイクリンを用いて悪性腫瘍の性質を判定する方法である。
本明細書における悪性腫瘍とは、造血器由来の悪性腫瘍、上皮細胞由来の癌腫、肉腫などを含む。造血器由来の悪性腫瘍としては、白血病や悪性リンパ腫などを例示することができる。癌腫としては、乳がん、胃がん、大腸がん、食道がん、前立腺がんなどを例示することができる。肉腫としては、骨肉腫や軟部肉腫などを例示することができる。
判定に用いられる腫瘍細胞は、早期がんの腫瘍細胞であることが好ましい。本明細書における早期がんとは、ステージ分類においてステージI及びステージIIAと判定されるがんのことである。
ステージ分類とは悪性腫瘍の悪性度を示す分類である。悪性腫瘍の種類により、分類方法は多少異なるが、例えば乳がんの場合、悪性度の低い順にステージ0〜IVに分類される。また、一般的にステージIIは、悪性度の低い順にステージIIA及びステージIIBに分類され、ステージIIIは、悪性度の低い順にステージIIIA及びステージIIIBに分類される。このステージ分類は、TNM分類に基づいている。TNM分類とは、国際対がん連合(UICC)による悪性腫瘍の病期分類である。「T」は原発腫瘍の規模
を示し、T0(原発巣が確認できない)〜T4(腫瘤が体外へ露出)に分けられる。「N」は近傍リンパ節への浸潤度合いを示し、N0(リンパ節転移なし)〜N3(体の正中に近いところにあるリンパ節(胸骨傍リンパ節)に転移が疑われる)に分けられる。「M」は遠隔転移の有無を示し、M0(遠隔転移なし)及びM1(遠隔転移あり)に分けられる。
乳がんの場合、ステージIの悪性腫瘍とは、TNM分類において「T1,N0,M0」である悪性腫瘍を指し、ステージIIAとは、TNM分類において「T0,N1,M0」、「T1,N1,M0」又は「T2,N0,M0」である悪性腫瘍を指し、ステージIIBとは、TNM分類において「T2,N1,M0」又は「T3,N0,M0」である悪性腫瘍を指す。
上記判定方法で判定される悪性腫瘍の性質としては、腫瘍細胞の増殖能、再発リスク(転移のしやすさ)などが挙げられる。この判定方法は特に再発リスクの判定を行なうために用いられることが好ましい。再発とは、腫瘍の治療(摘出、抗がん剤治療、ホルモン治療など)から一定期間経過した後、同じ部位に悪性腫瘍が再現する場合及び腫瘍細胞が原発巣から分離して遠隔組織へ運ばれそこで自立的に増殖する場合をいう。再発が起こるか否かは腫瘍細胞の増殖能、生存能、移動能などに左右される。
本発明の一実施形態による悪性腫瘍の判定方法は、各パラメータを獲得するパラメータ獲得工程と、第一比較工程と、第二比較工程と、判定工程とを含む。
パラメータ獲得工程では、腫瘍細胞に含まれる第一CDKの第一パラメータと、腫瘍細胞に含まれる第二CDKの第二パラメータと、第一パラメータと第二パラメータから得られる第三パラメータと、腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータとを求める。
CDKとは、サイクリンというタンパク質が結合することによって活性化される酵素の総称で、その種類に応じて細胞周期の特定時期で機能している。CDKの種類としては、CDK1、CDK2、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7などが挙げられる。本実施形態では少なくとも二種類のCDK(第一CDK及び第二CDK)が用いられ、CDK1、CDK2、CDK4及びCDK6からなる群から選択される二種類のCDKを組み合わせて用いることが好ましい。これは、CDK1、CDK2、CDK4及びCDK6が、細胞周期の時期の移行に直接的に関与しているからである。例えば、細胞周期のG1期からS期への移行の引き金を引くのはCDK4又はCDK6とサイクリンD との複合体であり、それによってCDK2とサイクリンEとの複合体の活性化がおこり,細胞は本格的にS期に突入することになる。その後CDK2とサイクリンAとの複合体の活性化により細胞はS期からG2期へ移行し、CDK1とサイクリンBとの複合体の活性化によって細胞はM期へ進むことができる。また、CDK1及びCDK2の組み合わせを用いることがより好ましい。即ち、第一CDKがCDK1であり、第二CDKがCDK2であることがより好ましい。
第一パラメータは第一CDKの活性値及び発現量から得られるパラメータであり、第二パラメータは第二CDKの活性値及び発現量から得られるパラメータである。これらのパラメータとして、活性値及び発現量の何れかを単独で用いてもよいし、活性値と発現量とを加減乗除などして計算される値を用いてもよいが、活性値と発現量との比を用いることが好ましい。活性値と発現量との比としては、活性値を発現量で除することにより得られる値(比活性)、発現量を活性値で除することにより得られる値(比活性の逆数)などを用いることができる。
第三パラメータは第一パラメータと第二パラメータとに基づいて得られるパラメータである。第三パラメータとしては、第一パラメータと第二パラメータとを加減乗除などして計算される値を用いることができるが、第一パラメータと第二パラメータとの比を用いることが好ましい。第一パラメータと第二パラメータの比としては、第一パラメータを第二パラメータで除することにより得られる値、第二パラメータを第一パラメータで除することにより得られる値などを用いることができる。
サイクリンとは、細胞周期関連因子として知られるタンパク質の一種であり、CDKなどのタンパク質リン酸化酵素の調節サブユニットを構成する。サイクリンの種類としては、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンC、サイクリンD、サイクリンE、サイクリンH、サイクリンK、サイクリンTなどが挙げられる。用いるサイクリンとしては、第一CDK又は第二CDKと複合体を形成しうるサイクリンが好ましい。具体的には、上述したような理由から、CDK1、CDK2、CDK4及びCDK6からなる群から選択されるCDKと複合体を形成するサイクリンが好ましく、このようなサイクリンとしては、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンD、サイクリンEが挙げられる。また、この中でも、サイクリンBやサイクリンEを用いることがより好ましい。なお、本明細書におけるサイクリンBとは、サイクリンB1、サイクリンB2なども含む。本明細書におけるサイクリンEとは、サイクリンE1、サイクリンE2なども含む。
第四パラメータは、発現量から得られるパラメータである。第四パラメータとしては、発現量と活性値とを加減乗除などして計算される値を用いてもよいが、発現量を単独で用いることが好ましい。
第一比較工程では、第一CDKに基づいた第一パラメータと第二CDKに基づいた第二パラメータから得られる第三パラメータを、このパラメータに対応する閾値(以下、第一の閾値とする)と比較する。
第一の閾値は、腫瘍細胞のどのような性質を判定するかによって適宜設定される。例えば、腫瘍細胞の再発リスクを判定する場合、複数の患者から採取された乳がん細胞のうち摘出手術後5年間の再発の有無が既知の細胞について、第三パラメータを算出し、算出された値を小さい順に並べて、患者集団を所定の分離比率で高値群(再発リスクが高い群)と低値群(再発リスクが低い群)とに分離できる値を第一の閾値とすることができる。分離比率としては、例えば、乳がんの場合、摘出手術後5年間の再発率が約30%であるため、高値群の分離比率が少なくとも患者集団の30%であることが好ましいが、低値群に分類された患者が再発を起こすということのないようにするため、高値群を30%よりも高い割合とすることがより好ましい。即ち、第一の閾値として、患者集団を、高値群:低値群が30:70となる値、好ましくは40:60となる値、より好ましくは50:50となる値(中央値)、60:40となる値などを用いることができる。なお、正確に患者集団を50:50や60:40に分離できる値が存在しないことも考えられるため、分離比率は厳密に設定する必要はない。例えば、患者集団を構成する患者数が99である場合は患者集団を50:50に分離できる値が存在しない。このような場合は分離比率を50:49などに設定してもよい。
腫瘍細胞によっては、第一パラメータ、第二パラメータ又はこれら両方の値が非常に小さい場合や、逆に、非常に大きい場合があり、第三パラメータが第一の閾値とはかけ離れた値となることがある。このような場合、第一の閾値だけでなく、第一パラメータ及び第二パラメータのそれぞれに対しても閾値を設定することが好ましい。即ち、第一比較工程において、第一パラメータとこれに対応する閾値との比較、第二パラメータとこれに対応する閾値との比較、及び第三パラメータと第一の閾値との比較を実行してもよい。例えば、第一パラメータが対応する閾値未満であり、且つ第二パラメータが対応する閾値未満であった場合は、第三パラメータと第一の閾値との比較結果に関わらず再発リスクが低いと判定してもよい。また、第二パラメータが対応する閾値以上であった場合は、第三パラメータと第一の閾値との比較結果に関わらず再発リスクが高いと判定してもよい。
また、第三パラメータとして、第一パラメータと第二パラメータとの比の値を用いると、分母が0となることがある。このような場合は比の値を算出することができないため、無限大として取り扱い、第一の閾値以上であるとすることができる。
第二比較工程では、腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータを、このパラメータに対応する閾値(以下、第二の閾値とする)と比較する。
第二の閾値は、腫瘍細胞のどのような性質を判定するかによって適宜設定される。例えば、腫瘍細胞の再発リスクを判定する場合、一定期間経過後の再発の有無が既知である腫瘍細胞について、上記の第一比較工程の結果と組み合わせて再発リスクを判定する際に実際の再発の有無と高確率で合致する第二の閾値を設定することができる。
第一比較工程及び第二比較工程は、判定工程を実行する前であれば、どちらを先に実行してもよい。
活性値や発現量の測定に供される測定用試料は、患者から採取した腫瘍細胞を用いて調製することができる。CDKやサイクリンの所定のパラメータを測定することができれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、測定用試料としては、細胞を可溶化した試料(細胞可溶化液)を用いることができる。細胞可溶化液は、患者から採取した腫瘍細胞に界面活性剤を含む緩衝液を添加し、緩衝液中で腫瘍細胞を物理的及び/又は化学的に処理することにより調製される。このような処理を行うことにより、細胞に含まれるCDKやサイクリンなどのタンパク質が液中に遊離する。この細胞可溶化液を遠心分離してCDKやサイクリンを含む上清を採取し、これを測定用試料とすることができる。
CDKの活性値の測定方法は特に限定されず、従来公知の方法で測定することができる。例えば、32P標識したATP(γ−〔32P〕−ATP)を用いる方法が挙げられる。この方法によると、測定用試料と、基質と、γ−〔32P〕−ATPとを混合し、キナーゼの作用によって基質に32Pを導入する。次に、32Pで標識されたリン酸化基質の標識量を測定し、キャリブレータで作成された検量線をもとにリン酸化基質を定量する。定量されたリン酸化基質量に基づいてキナーゼの活性値を算出する。また、放射性物質を用いない方法として、特開2002−335997号公報に開示の方法を用いることができる。この方法によると、先ずこれらキナーゼの何れか又は両方を含む試料と、基質と、アデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(ATP−γS)とを混合し、キナーゼの作用によって基質にモノチオリン酸基を導入する。導入されたモノチオリン酸基の硫黄原子に標識蛍光物質又は標識酵素を結合させることによって基質を標識し、標識されたモノチオリン酸化基質の標識量を測定し、キャリブレータで作成された検量線を基にモノチオリン酸化基質を定量する。定量されたモノチオリン酸化基質量に基づいてキナーゼの活性値を算出する。測定は、抗CDK抗体を含む試薬、CDKの基質を含む試薬、ATP−γSを含む試薬及びリン酸化された基質に結合可能な標識物質を含む試薬を備えた試薬キットを用いて行うことができる。なお、CDKの基質及びATP−γSは同一の容器に収容されていてもよい。
CDKやサイクリンの発現量の測定方法は特に限定されず、従来公知の方法で測定することができる。例えば、ELISA、ウェスタンブロッティング、特開2003−130871号公報に開示の方法などを用いて測定用試料を測定して、CDKやサイクリンの発現量を得ることができる。特開2003−130871号公報に開示の方法を利用する場合、下記に示す方法でCDKやサイクリンの発現量を測定することができる。まず、測定用試料を疎水性多孔性膜に接触させて、測定用試料中のCDK又はサイクリンを該膜に結合させる。次に、標識化されているか、または標識との反応性部位を有し、かつCDK又はサイクリンと特異性を有する抗体を、CDK又はサイクリンと結合させる。標識化されていない抗体を用いた場合には、標識との反応性部位に標識を作用させて該抗体を標識化する。そして、CDK又はサイクリンに結合した標識の量を測定する。予め作製した検量線をもとに、該標識の量を用いて、CDK又はサイクリンの発現量を測定する。
測定用試料は患者から採取した腫瘍細胞から調製されるため、測定用試料によって含まれる腫瘍細胞数が異なる。このため、サイクリンなどのタンパク質の発現量の測定値は測定用試料に含まれる腫瘍細胞の多寡によって変動してしまう。従って、発現量の測定値を補正することが好ましい。発現量の測定値の補正としては、例えば、ハウスキーピング遺伝子によってコードされるタンパク質(以下、ハウスキーピングタンパク質とする)の発現量を用いて行なうことができる。ハウスキーピングタンパク質はどの細胞でもほぼ一定量発現しているタンパク質であり、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)やアクチンなどを例示することができる。具体的には、測定用試料のタンパク質の発現量だけでなく、ハウスキーピングタンパク質の発現量も測定し、測定用試料のタンパク質の発現量をハウスキーピングタンパク質の発現量で除することにより発現量の測定値を補正することができる。なお、第一パラメータとして発現量又は活性値と発現量との比を用い、第二パラメータとして発現量又は活性値と発現量との比を用い、第三パラメータとして第一パラメータと第二パラメータとの比を用いる場合、第一CDKの発現量及び第二CDKの発現量が測定されるが、ハウスキーピングタンパク質の発現量は計算上相殺されるため上記のような補正は必要ない。
判定工程では、第一CDKの活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、第二CDKの活性値及び発現量から得られる第二パラメータとに基づいて得られる第三パラメータを対応する第一の閾値と比較した結果と、サイクリンの発現量から得られる第四パラメータを対応する第二の閾値と比較した結果とに基づいて悪性腫瘍の性質を判定する。例えば、悪性腫瘍の性質として再発リスクの判定を行う場合、これらの結果に基づいて、判定対象の悪性腫瘍を再発リスクの程度の異なる三群(例えば、高、中及び低)の何れかに分類することができる。判定の具体的な方法としては、例えば、下記に示す第一の判定方法〜第五の判定方法の何れかを用い、再発リスクを判定することができる。
第一の判定方法では、第三パラメータを第一の閾値と比較した結果と、第四パラメータを第二の閾値と比較した結果とを組み合わせて再発リスクを判定する。これらの比較結果の両方で閾値未満の場合には再発リスクが低いと考えられ、「A群」と判定する。これらの比較結果の何れか一方が閾値以上、他方が閾値未満の場合には、「A群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが高い「B群」と判定する。これらの比較結果の両方が閾値以上の場合には、「B群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが高い「C群」と判定する。
また、ここで、「B群」と判定されるものについて、第三パラメータが第一の閾値以上のものと第四パラメータが第二の閾値以上のものと再発リスクの程度の異なる場合も考えられる。そのような場合は、さらに、第三パラメータが第一の閾値以上のものを「B−1群」と判定し、第四パラメータが第二の閾値以上のものを「B−2群」と判定してもよい。これにより、判定対象の悪性腫瘍を再発リスクの程度の異なる四群の何れかに分類することができる。
第二の判定方法は、第三パラメータを第一の閾値と比較し、第三パラメータが閾値以上の場合には「C群」であるとの判定を確定させる。第三パラメータが閾値未満の場合は判定が確定されないため、第四パラメータを第二の閾値と比較する。第四パラメータが閾値以上の場合には、「C群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが低い「B群」と判定する。第四パラメータが閾値未満の場合には、「B群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが低い「A群」と判定する。
第三の判定方法では、第四パラメータを第二の閾値と比較し、第四パラメータが閾値以上の場合には「C群」であるとの判定を確定させる。第四パラメータが閾値未満の場合は判定が確定されないため、第三パラメータを第一の閾値と比較する。第三パラメータが閾値以上の場合には、「C群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが低い「B群」と判定する。第三パラメータが閾値未満の場合には、「B群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが低い「A群」と判定する。
第四の判定方法では、第三パラメータを第一の閾値と比較し、第三パラメータが閾値未満の場合には、「A群」であるとの判定を確定させる。第三パラメータが閾値以上の場合は判定が確定されないため、第四パラメータを第二の閾値と比較する。第四パラメータが閾値未満の場合には、「A群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが高い「B群」と判定する。第四パラメータが閾値以上の場合には、「B群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが高い「C群」と判定する。
第五の判定方法では、第四パラメータを第二の閾値と比較し、第四パラメータが閾値未満の場合には、「A群」であるとの判定を確定させる。第四パラメータが閾値以上の場合は判定が確定されないため、第三パラメータを第一の閾値と比較する。第三パラメータが閾値未満の場合には、「A群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが高い「B群」と判定する。第三パラメータが閾値以上の場合には、「B群」と判定された腫瘍細胞よりも再発リスクが高い「C群」と判定する。
なお、第一〜第五の判定方法において、A群、B群及びC群は、それぞれの判定方法における相対的な再発リスクの相違を示している。各判定方法において、Aは相対的に再発リスクが低いことを示し、Cは相対的に再発リスクが高いことを示し、BはAとCとの中間であることを示す。なお、閾値は各判定方法で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
第一の判定方法〜第五の判定方法の何れを用いるかは、悪性腫瘍の種類、パラメータの種類、臨床データとの相関などを考慮して決定することができる。悪性腫瘍の再発リスクを判定する場合、第一及び第四の判定方法の何れかを用いることが好ましく、第四の判定方法を用いることがより好ましい。
第一の判定方法を用いる場合、第三パラメータを第一の閾値と比較する第一比較工程及び第四パラメータを第二の閾値と比較する第二比較工程は、再発リスクを判定する工程の前であれば、どちらを先に実行してもよい。
第二〜第五の判定方法を用いる場合、第三パラメータを第一の閾値と比較する第一比較工程又は第四パラメータを第二の閾値と比較する第二比較工程のうち、まず、いずれか一方の比較工程を実行し、その比較結果に基づいて第一の再発リスク判定工程を実行し、ここで判定が確定されない場合においてのみ、他方の比較工程を実行し、その比較結果に基づいて第二の再発リスク判定工程を実行するようにしてもよい。これにより、より少ないステップで再発リスクの判定を行うことができる。具体的には、第四の判定方法では、第三パラメータを第一の閾値と比較する第一比較工程を実行し、この比較結果に基づいて、前記悪性腫瘍を、A群及び前記A群よりも再発リスクが高い群の何れかに分類する工程を実行し、悪性腫瘍が前記A群よりも再発リスクが高い群に含まれると判定された場合、さらに、第四パラメータを第二の閾値と比較する第二比較工程を実行し、この比較結果に基づいて前記A群よりも再発リスクが高い群を、B群と前記B群よりも再発リスクが高いC群とに分類する工程を実行する。これにより、より少ないステップで再発リスクの程度の異なる三群に分類することができる。
CDKは細胞の増殖に深く関わるため、CDKを用いた比較工程(第一比較工程)を実行することにより、腫瘍細胞の増殖能を精度良く捉えることができる。前述のように細胞の増殖能は細胞の再発リスクを左右する一つの大きな要素である。また、細胞周期関連因子であるサイクリンも細胞の増殖に関連し、悪性腫瘍の再発リスクを判定する有用な因子であるが、判定の精度が充分ではない。また、第一比較工程及び第二比較工程の何れか一方を用いると、悪性腫瘍を再発リスクの異なる二群に分類することができる。さらに、例えば本実施形態の第四の判定方法を用いると、これらの比較工程の結果を組み合わせることにより、第一比較工程の結果を用いて再発リスクが高いと判定された群を、第二比較工程の結果を用いてさらに再発リスクが極めて高い群と一般的な再発率を示す群とに分類することができる。このため、悪性腫瘍の再発リスクをより精度良く予測することができる。
上記のような悪性腫瘍の性質の判定結果は、治療方法を選択する際の指標となり得る。例えば、悪性腫瘍を患う患者に対して化学療法(抗がん剤療法)などのアグレッシブな治療を行なうか、ホルモン療法などのマイルドな治療を行なうかなどを決定する一助となる。また判定結果によって薬剤の投与量や種類を調節することも可能である。
上記本実施形態の方法は、コンピュータにおいて実行されることが好ましい。以下、上記の方法を実施するためのコンピュータシステム(図1)及び判定フロー(図2)について説明する。
図1に示すシステム100は、コンピュータ本体110、必要データをコンピュータ本体110に入力する入力デバイス130、及び入出力データ等を表示するディスプレイ120を備え、さらに必要に応じて外部記録媒体140が含まれ得る。ここで、本実施形態のプログラム140aは、外部記録媒体140に記録されていてもよいし、コンピュータ本体110に備え付けのメモリ110b〜110dに保存されていてもよい。コンピュータ本体110内において、CPU110a、メモリ110b〜110d、入出力インターフェイス110f、画像出力インターフェイス110h、読出装置110eは、それぞれバス110iにて、データの送受信可能なように接続されている。
図2は、上記第一の判定方法による再発リスク判定を実行するためのプログラムの動作を示すフローチャートであり、このプログラムはメモリ110dに格納されている。
まず、入力デバイス130により検体のCDK2比活性とCDK1比活性との比(CDK2比活性/CDK1比活性:第三パラメータ)及びサイクリンの発現量(第四パラメータ)が入力されると、CPU110aが入出力インターフェイス110fを介してこれらのパラメータデータを取得し、RAM110cに記憶させる(ステップS11)。
CPU110aは、予めプログラムのデータとしてメモリ110dに記憶されていた第三パラメータに対応する閾値、および第四パラメータに対応する閾値を呼び出して、これらの閾値とパラメータデータとの比較を実行する(ステップS12)。
次に、CPU110aは、比較結果に基づいて再発リスクの予測判定を行う(ステップS13)。CPU110aは、第三パラメータが閾値以上であり、且つ第四パラメータが閾値以上である場合には、再発リスク「高」と判定する。第三パラメータが閾値以上であり、且つ第四パラメータが閾値未満である場合には、再発リスク「中」と判定する。第三パラメータが閾値未満であり、且つ第四パラメータが閾値以上である場合には、再発リスク「中」と判定する。第三パラメータが閾値未満であり、且つ第四パラメータが閾値未満である場合には、再発リスク「低」と判定する。
そして、CPU110aは、上記の判定結果を、RAM110cに格納するとともに画像出力インターフェイス110hを介してディスプレイ120に出力する(ステップS14)。
なお、本実施形態においては、各種パラメータデータや活性値、発現量などを、入力デバイス130を用いて入力したが、これに限定されるものではなく、例えば、操作者による入力ではなく、各種パラメータデータや活性値、発現量などが測定装置から入出力インターフェイス110fを介して自動的に取得されるようにしてもよい。また、第三パラメータとして、CDK2比活性/CDK1比活性の値を入力したが、CDK1の発現量と活性値およびCDK2の発現量と活性値を入力し、CPU110aがこれらの値からCDK2比活性/CDK1比活性の値を算出して、この値を閾値との比較に用いてもよい。
(実施例1)
(1)測定用試料の調製
乳がんステージ分類においてステージI又はステージIIAに分類される乳がん患者51名(患者1〜51)から摘出した腫瘍細胞塊51検体を用いて、下記のような手順で測定用試料1〜51を調製した(なお、各患者のステージ分類は下記表1に示される)。
先ず、緩衝液中の腫瘍細胞塊が約150mg/mlとなるように、緩衝液A(0.1w/v%のノニデットP−40(カルビオケム社)、50mMのトリス塩酸(pH7.4)、5mMのEDTA、50mMのフッ化ナトリウム、1mMのオルトバナジン酸ナトリウム及び100μl/mlのプロテアーゼ阻害剤カクテル(シグマ社)を含む)と腫瘍細胞塊とをチューブに収容した。
電動ホモジナイザを用いて、緩衝液A中で腫瘍細胞塊をホモジナイズし、腫瘍細胞を破砕して細胞可溶化液を調製した。次に、細胞可溶化液を4℃で15000rpm、5分間遠心分離し、上清を測定用試料として用いた。
(2)サイクリンE及びGAPDH発現量の測定
タンパク質含有量が15μgとなる量の測定用試料と、この測定用試料の3分の1の量のSDSローディングバッファ(200mMのトリス塩酸(pH6.8)、40%のグリセロール、8%のSDS及び10%の2−メルカプトエタノールを含む)とを混合し、100℃で5分間加熱した。
加熱後の測定用試料を用いてSDS−PAGEを行い、ゲルを室温で15分間トランスファーバッファー(39mMのグリシン、48mMのトリス、0.1%のSDS及び20%のメタノールを含む)に浸漬して平衡化した。
ゲル中のタンパク質を、Mini Trans-Blot cell transfer system(バイオラッド社)を用いて100V、4℃、一時間でImmobilon FL membrane(ミリポア社)に転写した。
メンブレンを、ブロッキング試薬A(ブロックエース(商品名:大日本製薬)を含む)で37℃、1時間ブロッキングを行い、さらに洗浄液A(25mMのトリス塩酸(pH7.4)、150mMのNaCl及び0.02%のTween20を含む)で洗浄した。
洗浄後、メンブレンに、サイクリンEに特異的に結合するマウス抗サイクリンE抗体(クローンHE)(一次抗体:サンタクルズ社)溶液5mlをブロットし、メンブレンのサイクリンと一次抗体とを反応させた。
メンブレンを20mlの洗浄液Aで洗浄した後、メンブレンに、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識ウサギ抗マウスIgG(二次抗体:ダコ社)溶液5mlをブロットし、メンブレンの一次抗体と二次抗体とを反応させた。
メンブレンを20mlの洗浄液Aで洗浄した後、メンブレンをECLplus(GEヘルスケア社)に5分間浸漬し、メンブレンに吸着したサイクリンEの量を蛍光イメージアナライザMolecular Imager FX(バイオラッド社)によって蛍光の検出を行った。
GAPDH発現量の測定は、ブロッキング試薬として、ブロッキング試薬Aではなくブロッキング試薬B(4%のBSA、25mMのトリス塩酸(pH7.4)、150mMのNaCl及び0.02%のTween20を含む)を用いること、一次抗体として、ウサギ抗サイクリンE抗体ではなくウサギ抗GAPDH抗体を用いること、二次抗体としてHRP標識ウサギ抗マウスIgGではなく、ビオチン標識化ヤギ抗ウサギ抗体を用いること、及びECLplusにメンブレンを浸漬するのではなくメンブレン上でFITC conjugated streptavidin(ベクター社)をビオチン標識化ヤギ抗ウサギ抗体に結合させることにより蛍光の検出を行うこと以外は、上述のサイクリンEの発現量測定と同様の実験手順で行なった。
GAPDHの発現量は、サイクリンEの発現量の測定値を補正するために用いられた。以下でサイクリンEの発現量とされる値は、GAPDHの発現量による補正後の値(サイクリンE発現量/GAPDH発現量で算出される値)である。
サイクリンE発現量の測定結果は、下記表1に示される。
(3)CDK1及びCDK2発現量の測定
PVDFメンブレン(ミリポア社製)をセットしたブロッターの各ウェルに、測定用試料を50μlずつ収容し、ウェルの底面、すなわちメンブレンの裏面から負圧約250mmHgで約30秒間吸引してメンブレンに測定用試料中のタンパク質を吸着させた。
ウェルに洗浄液B(25mMのトリス塩酸(pH7.4)及び150mMのNaClを含む)を100μl収容し、負圧500mmHgで15秒間吸引してメンブレンを洗浄した。
洗浄後、ブロッキング試薬B(4%のBSA、25mMのトリス塩酸(pH7.4)及び150mMのNaClを含む)を各ウェルに40μl収容し、15分間静置した後、負圧500mmHgで15秒間吸引してメンブレンをブロッキングした。
ブロッキング後、ウェルにCDK1に特異的に結合するウサギ抗CDK1抗体(一次抗体:サンタクルズ社)溶液40μlを収容し、室温で約30分間静置してメンブレンのCDK1と一次抗体とを反応させた後、ウェル底面から負圧500mmHgで約15間吸引した。
ウェルに洗浄液Bを100μl収容し、負圧500mmHgで15秒間吸引してメンブレンを洗浄した。
ウェルにビオチン化した抗ウサギIgG−B抗体(二次抗体:サンタクルズ社)溶液40μlを収容し、室温で約30分間静置してメンブレンの一次抗体と二次抗体とを反応させた後、ウェル底面から負圧500mmHgで約15秒間吸引した。
ウェルに洗浄液Bを100μl収容し、負圧500mmHgで15秒間吸引してメンブレンを洗浄した。
ウェルにFITCで標識したストレプトアビジンを含む標識溶液50μlを収容し、室温で約30分間静置して、メンブレンの二次抗体をFITCで標識した後、ウェル底面から負圧500mmHgで約15秒間吸引した。
ウェルに洗浄液Bを50μl収容し、負圧500mmHgで15秒間吸引した。これを5回繰り返し、メンブレンを洗浄した。
メンブレンをブロッターからとりはずし、20%メタノール約5分間濯ぎ、約20分間室温で乾燥させた後、メンブレンに吸着されたタンパク質の蛍光強度を、蛍光イメージアナライザMolecular Imager FX(バイオラッド社)によって分析、測定した。測定値は検量線をもとに算出した。
検量線は、0.005%のノニデットP−40及び50μg/mlのBSAを含む洗浄液B中に、5種類の濃度の組換えCDK1を溶解した溶液を、上記と同様に処理したウェルに50μlずつ注入し、上記と同様の実験手順でFITC標識し、蛍光強度を測定して、蛍光強度とCDK1発現量との関係を表すことにより検量線を作成した。
CDK2発現量の測定は、一次抗体としてウサギ抗CDK1抗体ではなくウサギ抗CDK2抗体を用いること以外は上述のCDK1の発現量測定と同様の実験手順で行なった。
(4)CDK1及びCDK2の活性測定
1.5mlエッペンドルフチューブに緩衝液Aを500μl収容し、さらに測定用試料を添加した。測定用試料は、チューブに収容した混合液中の全タンパク質量が100μgとなるように調節して添加された。
ここに抗CDK1抗体(サンタクルズ社)2μg及び20μlのプロテインAをコートしたセファロースビーズ(バイオラッド社)を加えて4℃、1時間静置してCDK1と抗CDK1抗体とを反応させた。
反応後、ビーズをビーズ洗浄用緩衝液(0.1w/v%のノニデットP−40及び50mMのトリス塩酸(pH7.0)を含む)で三回洗浄し、15μlの溶解緩衝液A中に再懸濁させて、抗CDK1抗体を介してCDK1が結合したセファロースビーズを含む試料を得た。
この試料に、CDK1の基質溶液(10μgヒストンH1(アップステイトバイオテクノロジー社)10μg、5mMのATP−γS(シグマ社)、20mMのトリス塩酸(pH7.4)及び0.1%のTritonX−100を含む)を添加した。基質溶液は、チューブに収容した混合液の総量が50μlとなるように調節して添加された。これを37℃で10分間震蕩してキナーゼ反応を行ない、ヒストンH1にモノチオリン酸基を導入した。
キナーゼ反応後、2000rpmで20秒間遠心分離してビーズを沈殿させ、上清18μlを採取した。
この上清に、結合緩衝液(150mMのトリス塩酸(pH9.2)及び5mMのEDTAを含む)15μlと、10mMのヨードアセチルビオチン溶液(100mMのトリス塩酸(pH7.5)及び1mMのEDTAを含む)とを添加して90分間、室温、暗所で静置することにより、モノチオリン酸基を導入された基質(モノチオリン酸化基質)の硫黄原子にヨードアセチルビオチンを結合させた。
ヨードアセチルビオチンとモノチオリン酸基との反応の停止は、2−メルカプトエタノールの添加により行なった。
ヨードアセチルビオチンが結合したモノチオリン酸化基質0.4μgを含む試料を、スロットブロッターを用いてPVDFメンブレン上にブロットした。
このPVDFメンブレンを1w/v%のBSAを含む溶液でブロッキングし、ストレプトアビジン−FITC(ベクター社)を添加して37℃で一時間反応させた。
反応後、PVDFメンブレンを50mMの洗浄液Bで三回洗浄した。
洗浄後、蛍光イメージアナライザMolecular Imager FX(バイオラッド社)を用いてPVDFメンブレンの蛍光分析を行なった。活性値は、検量線に基づいて算出された。
検量線は、二種類の濃度のタンパク質(ビオチン標識免疫グロブリン)を含む溶液をPVDFメンブレンにブロットし、上記と同様の方法でFITC標識し、タンパク質の蛍光強度を蛍光イメージアナライザで測定することによって作成した。従って、測定されるCDK1の活性1U(ユニット)は、前記タンパク質1ngのときの蛍光量と同等の蛍光強度を示す値をいう。
CDK2の活性値は、抗CDK1抗体ではなく、抗CDK2抗体(サンタクルズ社)を用いること以外はCDK1の活性値の測定と同様にして測定された。
(5)CDK比活性の算出
上記で測定したCDK活性値及びCDK発現量から、下記式により、CDK比活性(mU/ng)を算出した。
CDK比活性=CDK活性値/CDK発現量
算出されたCDK1の比活性及びCDK2の比活性を基に、CDK1比活性とCDK2比活性との比(CDK2比活性/CDK1比活性;以下、比活性の比とする)を算出した。CDK1比活性、CDK2比活性及び比活性の比は、下記表1に示される。
(6)閾値の設定及び再発リスク判定
サイクリンE発現量に対応する閾値と、比活性の比に対応する閾値とを設定した。サイクリンE発現量と閾値との比較結果と、比活性の比と閾値との比較結果とを組み合わせて悪性腫瘍の性質の判定を行なった。
比活性の比の閾値は、46に設定した。この値は、乳がん患者129名から採取した腫瘍細胞129検体の比活性の比を算出し、比活性の比の値を小さい方から順に並べた際に、129検体を65:64に分離できる値である。比活性の比の値が46以上の場合に「High」とし、46未満の場合に「Low」とした。また、CDK1比活性が20未満且つCDK2比活性が500未満の場合は比活性の比の値に関わらず「Low」とした。さらに、CDK2比活性が10000以上の場合は比活性の比の値に関わらず「High」とした。この比較結果は、下記表1に示される。
サイクリンE発現量の閾値は、1.7に設定した。この値は、患者1〜61の再発の有無と、比活性の比と対応する閾値との比較結果を考慮に入れて設定された値である。サイクリンE発現量が1.7以上の場合は「High」とし、0.7未満の場合は「Low」とした。この比較結果は、下記表1に示される。
これらの比較結果を用い、下記判定条件に基づいて再発リスク判定を行なった。
比活性の比と閾値との比較結果が「Low」であった場合は、サイクリンEの発現量に関わらず、「再発リスク低」と判定した。
比活性の比と閾値との比較結果が「High」であり、サイクリンE発現量と閾値との比較結果が「Low」であった場合は、「再発リスク中」と判定した。
比活性の比と閾値との比較結果が「High」であり、サイクリンE発現量と閾値との比較結果が「High」であった場合は、「再発リスク高」と判定した。
再発リスク判定において、「再発リスク低」と判定された腫瘍細胞は、細胞の増殖能が低く、生存能や移動能なども低いと考えられるため、再発の可能性は低いと解される。「再発リスク中」と判定された腫瘍細胞は、「再発リスク低」と判定された腫瘍細胞よりも再発のリスクが高いと解される。「再発リスク高」と判定された腫瘍細胞は、「再発リスク中」と判定された腫瘍細胞よりも再発のリスクが高いと解される。
再発リスクの判定結果及び再発の有無を下記表1に示す。表中「再発」の列において、0は「再発無し」を示し、1は「再発有り」を示す。なお、再発の有無は、患者1〜51から腫瘍細胞塊を摘出した後、各患者に対してホルモン治療を施し、摘出手術後5年間で再発が認められたか否かを示したものである。
Figure 2007259846
表1において、発現量や活性値が検出限界以下であった場合は0として取り扱った。また、CDK1比活性が0であり、CDK2比活性が0よりも高値であった場合は、比活性の比が「無限大(∞)」であるとし、比活性の比の閾値46に比べて「High」であると判定した。また、CDK1比活性及びCDK2比活性の両方が0であった場合は、比活性の比が「0」であるとし、比活性の比の閾値46に比べて「Low」であると判定した。なお、表1において患者35は、比活性の比が無限大となっているが、CDK1比活性が20未満且つCDK2比活性が500未満であるため、上述の通り、比活性の比と閾値46との比較結果は、「Low」となった。
再発リスク毎の再発率を下記表2に示す。表2において、「患者数」の列には、各再発リスクの患者の総数が示されており、「再発者数」の列には、各再発リスクの患者のうち悪性腫瘍の再発が確認された患者数を示す。再発リスク高と判定された患者5名(患者1〜5)は何れも、ホルモン治療を行ったにも関わらず術後5年間で再発を起こした(再発率100%)。再発リスク中と判定された患者11名(患者6〜16)のうち術後5年間で再発を起こしたのは二名であった(再発率18%)。再発リスク低と判定された患者35名(患者17〜51)は何れも術後5年間では再発を起こさなかった(再発率0%)。
Figure 2007259846
以上の結果より、本実施例の方法によって「再発リスク高」と判定された場合は、ホルモン治療を行っても悪性腫瘍が再発する可能性が非常に高い、と予想することができる。また、「再発リスク低」と判定された場合は、ホルモン治療を行うと悪性腫瘍が再発する可能性が非常に低くなる、と予想することができる。また、「再発リスク中」と判定された患者に対してホルモン治療を行った場合の再発率18%は、一般的な早期乳がんの再発率(10〜20%)とほぼ等しい。
特に、本実施例の方法によると、CDK比活性の比と閾値との比較結果が「High」である患者を、サイクリンの発現量と閾値との比較結果を用いて「再発リスク高」及び「再発リスク中」の何れかに細分類することができ、再発予測の精度を向上することができる。
(実施例2)
(1)測定用試料の調製
乳がんステージ分類においてステージI又はステージIIAに分類される乳がん患者76名(患者1〜76)から摘出した腫瘍細胞塊76検体を用いて、実施例1の測定用試料の調製と同様の手順で測定用試料1〜76を調製した(なお、各患者のステージ分類は下記表3及び表4に示される)。
(2)サイクリンB1発現量の測定
サイクリンB1の発現量の測定は、一次抗体としてウサギ抗CDK1抗体ではなく、サイクリンB1に特異的に結合するウサギ抗サイクリンB1抗体(サンタクルズ社)を用いること以外は実施例1のCDK1の発現量測定と同様の実験手順で行なった。
(3)CDK1及びCDK2発現量の測定
CDK1及びCDK2発現量の測定は、実施例1のCDK1及びCDK2の発現量測定と同様の実験手順で行なった。
(4)CDK1及びCDK2の活性測定
CDK1及びCDK2の活性の測定は、実施例1のCDK1及びCDK2の活性測定と同様の実験手順で行なった。
(5)CDK比活性の算出
CDK1比活性、CDK2比活性及びCDK1比活性とCDK2比活性との比(比活性の比)は、実施例1のCDK比活性の算出で用いた式と同じ式を用いて算出した。
CDK1比活性、CDK2比活性及び比活性の比は、下記表3及び表4に示される。
(6)閾値の設定及び再発リスク判定
サイクリンB1発現量に対応する閾値と、比活性の比に対応する閾値とを設定した。サイクリンB1発現量と閾値との比較結果と、比活性の比と閾値との比較結果とを組み合わせて悪性腫瘍の性質の判定を行なった。
比活性の比の閾値は、46に設定した。この値は、乳がん患者129名から採取した腫瘍細胞129検体の比活性の比を算出し、比活性の比の値を小さい方から順に並べた際に、129検体を65:64に分離できる値である。比活性の比の値が46以上の場合に「High」とし、46未満の場合に「Low」とした。また、CDK1比活性が20未満且つCDK2比活性が500未満の場合は比活性の比の値に関わらず「Low」とした。さらに、CDK2比活性が10000以上の場合は比活性の比の値に関わらず「High」とした。この比較結果は、下記表3及び表4に示される。
サイクリンB1発現量の閾値は、0.0195に設定した。この値は、患者1〜76の再発の有無と、比活性の比と対応する閾値との比較結果を考慮に入れて設定された値である。サイクリンB1発現量が0.0195以上の場合は「High」とし、0.0195未満の場合は「Low」とした。この比較結果は、下記表3及び表4に示される。
これらの比較結果を用い、下記判定条件に基づいて再発リスク判定を行なった。
比活性の比と閾値との比較結果が「Low」であり、サイクリンB1発現量と閾値との比較結果が「Low」であった場合は、「再発リスク低」と判定した。
比活性の比と閾値との比較結果が「High」であり、サイクリンB1発現量と閾値との比較結果が「Low」であった場合は、「再発リスク中」と判定した。また、比活性の比と閾値との比較結果が「Low」であり、サイクリンB1発現量と閾値との比較結果が「High」であった場合も、「再発リスク中」と判定した。
比活性の比と閾値との比較結果が「High」であり、サイクリンB1発現量と閾値との比較結果が「High」であった場合は、「再発リスク高」と判定した。
再発リスク判定において、「再発リスク低」と判定された腫瘍細胞は、細胞の増殖能が低く、生存能や移動能なども低いと考えられるため、再発の可能性は低いと解される。「再発リスク中」と判定された腫瘍細胞は、「再発リスク低」と判定された腫瘍細胞よりも再発のリスクが高いと解される。「再発リスク高」と判定された腫瘍細胞は、「再発リスク中」と判定された腫瘍細胞よりも再発のリスクが高いと解される。
再発リスクの判定結果及び再発の有無を下記表3及び表4に示す。表中「再発」の列において、0は「再発無し」を示し、1は「再発有り」を示す。なお、再発の有無は、腫瘍細胞塊を摘出した後に治療を施さなかったもしくはホルモン治療を施した患者1〜76について、摘出手術後5年間で再発が認められたか否かを示したものである。
Figure 2007259846
Figure 2007259846
表3及び表4において、発現量や活性値が検出限界以下であった場合は0として取り扱った。また、CDK1比活性が0であり、CDK2比活性が0よりも高値であった場合は、比活性の比が「無限大(∞)」であるとし、比活性の比の閾値46に比べて「High」であると判定した。また、CDK1比活性及びCDK2比活性の両方が0であった場合は、比活性の比が「0」であるとし、比活性の比の閾値46に比べて「Low」であると判定した。なお、表4において患者58は、比活性の比が無限大となっているが、CDK1比活性が20未満且つCDK2比活性が500未満であるため、上述の通り、比活性の比と閾値46との比較結果は、「Low」となった。
再発リスク毎の再発率を下記表5に示す。表5において、「患者数」の列には、各再発リスクの患者の総数が示されており、「再発者数」の列には、各再発リスクの患者のうち悪性腫瘍の再発が確認された患者数を示す。再発リスク高と判定された患者15名(患者1〜15)は何れも、ホルモン治療を行ったにも関わらず15人中9人が術後5年間で再発を起こした(再発率60%)。なお、「再発リスク高」と判定された患者に対してホルモン治療を行った場合の再発率60%は、ステージ分類でステージIIIに分類される乳がんの再発率と同等である。「再発リスク中」と判定された患者29名(患者16〜44)のうち術後5年間で再発を起こしたのは二名であった(再発率6.9%)。なお、この二名のうち、患者22は比活性の比と閾値との比較結果では「Low」に分類され、患者44はサイクリンB1発現量と閾値との比較結果では「Low」に分類される。「再発リスク低」と判定された患者32名(患者45〜76)は何れも術後5年間では再発を起こさなかった(再発率0%)。
Figure 2007259846
以上の結果より、本実施例の方法によって「再発リスク高」と判定された場合は、ホルモン治療を行っても悪性腫瘍が再発する可能性が高い、と予想することができる。また、「再発リスク低」と判定された場合は、ホルモン治療を行うと悪性腫瘍が再発する可能性が非常に低くなる、と予想することができる。
特に、本実施例の方法によると、CDK比活性の比と閾値との比較結果とサイクリンの発現量と閾値との比較結果とを組み合わせることにより、個々の比較結果では「Low」と分類されてしまう患者の中から再発する可能性のある患者を「再発リスク中」として分類することができ、再発予測の精度を向上することができる。
上述したような再発リスクの予測結果は、悪性腫瘍患者の治療方針を決定する際の指標として有用である。例えば、再発リスク高と判定された場合はよりアグレッシブな治療法(例えば、化学療法など)を選択することができる。また、再発リスク中と判定された場合は、その患者に応じて、他の様々な要因(例えば、年齢、核異型度、腫瘍径など)を複合的に鑑みて治療方法を選択することができる。また、再発リスク低と判定された場合は、副作用が強く経済的負担の重い化学療法ではなく、ホルモン治療によって再発を抑制できる可能性が高いことがわかる。
本実施形態の方法を実施するためのコンピュータシステムの概略図である。 第一の判定方法に基づいた判定フローである。

Claims (18)

  1. 悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれる第二のサイクリン依存性キナーゼ(第二CDK)の活性値及び発現量から得られる第二パラメータと、前記第一パラメータ及び前記第二パラメータに基づいて得られる第三パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータとを獲得する工程と、
    前記第三パラメータを、第一の閾値と比較する第一比較工程と、
    前記第四パラメータを、第二の閾値と比較する第二比較工程と、
    第一比較結果及び第二比較結果に基づいて前記悪性腫瘍の性質を判定する工程と、
    を含む悪性腫瘍の性質の判定方法。
  2. 前記第一パラメータが、前記第一CDKの比活性である請求項1記載の判定方法。
  3. 前記第二パラメータが、前記第二CDKの比活性である請求項1又は2記載の判定方法。
  4. 前記第三パラメータが、第一パラメータと第二パラメータとの比である請求項1〜3の何れかに記載の判定方法。
  5. 前記第一CDK及び前記第二CDKが、CDK1、CDK2、CDK4及びCDK6からなる群から選択される請求項1〜4の何れかに記載の判定方法。
  6. 前記サイクリンが、前記第一CDK又は前記第二CDKと複合体を形成する請求項1〜5の何れかに記載の判定方法。
  7. 前記サイクリンが、CDK1、CDK2、CDK4及びCDK6からなる群から選択される少なくとも1つのCDKと複合体を形成する請求項1〜6の何れかに記載の判定方法。
  8. 前記サイクリンが、サイクリンA、サイクリンB、サイクリンD及びサイクリンEからなる群から選択される請求項7に記載の判定方法。
  9. 前記第一CDKがCDK1である請求項5の何れか記載の判定方法。
  10. 前記第二CDKがCDK2である請求項5の何れかに記載の判定方法。
  11. 前記サイクリンがサイクリンB又はサイクリンEである請求項8の何れかに記載の判定方法。
  12. 前記悪性腫瘍が上皮細胞由来のがんである請求項1〜11の何れかに記載の判定方法。
  13. 前記悪性腫瘍が乳がんである請求項1〜12の何れかに記載の判定方法。
  14. 前記悪性腫瘍の性質が、前記悪性腫瘍の再発リスクである請求項1〜13の何れかに記載の判定方法。
  15. 前記判定工程において、前記第一比較結果及び前記第二比較結果に基づいて、前記悪性腫瘍を再発リスクの異なる三群の何れかに分類する、請求項1〜14の何れかに記載の判定方法。
  16. 前記悪性腫瘍が、ステージ分類においてステージI又はステージIIAの悪性腫瘍である、請求項1〜15の何れかに記載の判定方法。
  17. 悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれる第二のサイクリン依存性キナーゼ(第二CDK)の活性値及び発現量から得られる第二パラメータと、前記第一パラメータ及び前記第二パラメータに基づいて得られる第三パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータとを獲得する工程と、
    前記第三パラメータを、第一の閾値と比較する第一比較工程と、
    第一比較結果に基づいて、前記悪性腫瘍の性質を判定する第一判定工程と、を含み、
    前記第一判定工程で判定が確定されなかった場合、
    前記第四パラメータを、第二の閾値と比較する第二比較工程と、
    第二比較結果に基づいて前記悪性腫瘍の性質を判定する第二判定工程と、
    をさらに含む悪性腫瘍の性質の判定方法。
  18. 悪性腫瘍の腫瘍細胞に含まれる第一のサイクリン依存性キナーゼ(第一CDK)の活性値及び発現量から得られる第一パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれる第二のサイクリン依存性キナーゼ(第二CDK)の活性値及び発現量から得られる第二パラメータと、前記第一パラメータ及び前記第二パラメータに基づいて得られる第三パラメータと、前記腫瘍細胞に含まれるサイクリンの発現量から得られる第四パラメータとを獲得する工程と、
    前記第三パラメータを、第一の閾値と比較する第一比較工程と、
    第一比較結果に基づいて、前記悪性腫瘍を、A群及び前記A群よりも再発リスクが高い群の何れかに分類する第一分類工程と、を含み、
    前記悪性腫瘍が前記A群よりも再発リスクが高い群に含まれると判定された場合、
    前記第四パラメータを、第二の閾値と比較する第二比較工程と、
    第二比較結果に基づいて前記A群よりも再発リスクが高い群を、B群と前記B群よりも再発リスクが高いC群とに分類する第二分類工程と、
    をさらに含む悪性腫瘍の再発リスクの判定方法。
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