以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。なお、本実施形態は本発明の放電灯装置100を車両用前照灯に適用したものである。図1に本実施形態における放電灯装置100の全体構成図、図2に本実施形態における放電灯装置100の制御系のブロック図を示す。
1は車両に搭載された直流電源(以下、バッテリという、定格電圧(バッテリ電圧VB)12V)であり、1aは電源端子、1bはアース端子、2は車両前照灯であるメタルハライドランプ等の高圧放電灯(以下、ランプという)である。SWは、車室内に設けられ、使用者の操作により、上記ランプ2の点灯消灯を設定する点灯スイッチである。50は、放電灯装置100に過電流が流れたときに溶断するヒューズである。
放電灯装置100は、図1に示すように逆接保護回路3、平滑回路4、フライバックトランス29を有する直流電源回路5、テークオーバー回路6、Hブリッジ回路7aを含むインバータ回路7、始動回路8等の回路機能部を有する。本実施形態では、図2に示すように上記回路機能部を制御する制御回路として、PWM(パルス幅変調)制御回路9、後述のランプ電圧VLおよびランプ電流ILに基づいて、ランプ電力を所望電力に制御するランプパワー制御回路10、上記Hブリッジ回路7aを制御するHブリッジ制御回路11等を有する。
また、本実施形態では、上記制御回路としてその他に、ランプ電圧VLを所定のタイミングでサンプリングおよびホールドするサンプルホールド回路12、ランプ点灯開始時に、上記始動回路8を制御して、ランプ2に高電圧を印加させてランプ2を電極間で絶縁破壊させる高電圧発生制御回路13、放電灯装置100が後述の異常状態となったときに、上記Hブリッジ制御回路11を通じてHブリッジ回路7aを制御するフェイルセーフ回路14と、ランプ2のコネクタ35の外れを検出するコネクタ外れ検出回路15とを有している。
さらに、各制御回路9〜15の駆動電力はバッテリ電圧VB等に基づいて行われるが、1次側電圧が過電圧となった際に、この過電圧から各制御回路9〜15を保護するための過電圧保護回路16も放電灯装置100には備えられている。ここで、先ず、放電灯装置100の点灯動作の概略を説明する。上記点灯スイッチSWがオンされると、フライバックトランス29にてバッテリ電圧VBが昇圧され、これにより、Hブリッジ回路7aを通じて始動回路8のコンデンサ53が充電される。そして、コンデンサ53が充電されると、始動回路8にて充電された電荷が放電されて、トランス47にてさらに高電圧化された電圧がランプ2に印加され、ランプ2が電極間で絶縁破壊し点灯されるようになる。
その後、ランプ2が点灯すると、Hブリッジ回路7aによりランプ2への放電電圧の極性(放電電流の向き)を交互に切り換えることで、ランプ2を交流点灯させる。次に、上記回路機能部および上記制御回路の構成の概略について簡単に説明する。
逆接保護回路3は、抵抗17、コンデンサ19、およびMOSトランジスタ21とからなる。逆接保護回路3は、後述する電源端子に負極性の高電圧が発生したときに、MOSトランジスタ21を保護するものである。また、バッテリ1を極性が逆にして車両に取り付けるといった逆接時には、ヒューズ50を溶断しないようにするものである。
平滑回路4は、上記電源端子1aに発生する電圧を平滑するものであり、コンデンサ23、25と、コイル27とからなるコンデンサ入力型平滑回路(チョーク入力型平滑回路)である。直流電源回路5は、一次側と二次側とが共に巻線で構成されたフライバックトランス29を有している。フライバックトランス29は、バッテリ側に配された一次巻線29aと、ランプ2側に配された二次巻線29bを有している。また、フライバックトランス29は、図1に示すように一次巻線29aと二次巻線29bとは電気的に導通可能となっている。直流電源回路5には、上記PWM回路9によりスイッチング制御されるMOSトランジスタ31が設けられている。上記一次巻線29aの一次電流は、このMOSトランジスタ31により制御される。
つまり、フライバックトランス29は、MOSトランジスタ31がオンのときには、一次巻線29aに一次電流が流れることで、一次巻線29aにエネルギーが蓄えられるようになっている。そして、フライバックトランス29は、MOSトランジスタ31がオフになると、一次巻線29aのエネルギーを二次巻線29bに供給するようになっている。
また、直流電源回路5の二次巻線29bには、整流用のダイオード33と、平滑用コンデンサ35が設けられている。テークオーバー回路6は、コンデンサ37と抵抗39とからなる。コンデンサ37は、上記点灯スイッチSWがオンされると電荷が充電されるようになっている。テークオーバー回路6は、上記始動回路8によりランプ2を電極間で絶縁破壊させたのち、速やかにアーク放電に移行させるものである。
インバータ回路7は、フライバックトランス29の二次巻線29b側に設けられ、バッテリ1からの電力を交流変換することで、ランプ2を交流点灯させるものである。インバータ回路7を構成するHブリッジ回路7aは、ランプ2の放電電流の向きを交互に反転させるものである。Hブリッジ回路7aは、Hブリッジ状に配置された複数のブリッジ用半導体スイッチング素子をなす4つのMOSトランジスタ41a〜41dを有する。これら4つのMOSトランジスタ41a〜41dは、図中43a、43bにて示すブリッジ駆動回路(本例ではIC素子、以下、IC素子という)によって制御される。
ブリッジ制御回路11は、IC素子43a、43bを制御することで、Hブリッジ回路7aのうち対角線上にあるMOSトランジスタ41a、41dがオフ状態であるときは、対角線上にあるMOSトランジスタ41b、41cをオン状態に切換制御し、MOSトランジスタ41b、41cがオン状態であるときは、MOSトランジスタ41aと41dをオフ状態に切換制御する。この結果、ランプ2の放電電流の向きが交互に切り換わる、言い換えるとランプ2の印加電圧(放電電圧)の極性が反転することで、ランプ2は交流点灯する。
Hブリッジ回路7aは、ランプ点灯開始時には長い一定周期でMOSトランジスタ41a〜41dをオン・オフさせ、その後は短い一定周期でMOSトランジスタ41a〜41dをオン・オフさせるようになっている。なお、図中45は、Hブリッジ回路7aを点灯始動時に発生する高圧パルスから保護する保護用のコンデンサである。
始動回路8は、ランプ2を点灯開始させるものであって、上記Hブリッジ回路7aの中点電位点と、アース端子1bとの間に設置されている。始動回路8は、一次巻線47aと二次巻線47bとからなるトランス47、ダイオード49、51、コンデンサ53、抵抗55、および一方向性半導体素子であるサイリスタ57とからなる。
サイリスタ57は、上記点灯スイッチSWがオンされたときには、オフとなっており、これにより、コンデンサ53は充電を開始する。その後、上記高電圧発生制御回路13によりサイリスタ57がオンとされる。この結果、コンデンサ53は放電を開始する。すると、コンデンサ53に蓄えられたエネルギーが、トランス47を通じて高電圧化されることで、ランプ2に高電圧が印加される。この結果、ランプ2は、電極間で絶縁破壊し点灯する。
PWM制御回路9は、鋸歯状波に対するスレッショルドレベルを可変にすることで、上記MOSトランジスタ31のオン・オフ時間、つまりデューティー比を制御するものである。ランプパワー制御回路10は、ランプ電流ILと、上記サンプルホールド回路12によってサンプルホールドされたランプ電圧VLとに基づいて、ランプ電力が所望値となるように制御するものである。なお、ランプ電流ILは、Hブリッジ回路7aに設けられた電流検出用抵抗59にて検出される。
本実施形態におけるランプパワー制御回路10によるランプパワー制御は、以下のようなものである。ランプパワー制御回路10は、ランプ2の点灯開始時にランプ2の電極温度が低いと、ランプ2に立ち消えが生じ易いので、ランプ電力を大きな値(例えば75W)として電極温度を迅速に高め、電極温度が徐々に高くなると、ランプ電力を徐々に低下させていき、ランプ2が安定状態になるとランプ電力を所定値(35W)一定に制御するものである。
また、ランプ電圧VLが高電圧(例えば400V)となってランプ2の点灯が開始された直後では、ランプ電圧VLは最も小さくなり、その後ランプ電圧VLは徐々に大きくなる。一方、ランプ電流ILは、ランプ2の点灯が開始された直後には、ランプ電圧VLに反して徐々に小さくなる。そして、このようなランプパワー制御を行うために、上記PWM制御回路9は、上記ランプパワー制御回路10の指令信号を受けて、上記MOSトランジスタ31のオン・オフのディーティ比を可変することで、ランプ電力を制御する。
上記サンプルホールド回路12は、ランプ電圧VLのうち、Hブリッジ回路7aの切換時に発生する後述の過渡電圧をマスクし、上記ランプパワー制御回路10による制御を精度良く行うものである。上記フェイルセーフ回路14は、放電灯装置100に何らかの異常が生じたときに、上記PWM制御回路9の制御を停止するとともに、Hブリッジ回路7aのMOSトランジスタ41a〜41dの導通を全てオフするものである。
なお、上記制御回路9〜15は、全て図示しない集積回路内に設けられている。
〔始動回路8について〕
次に、始動回路8の詳細について説明する。始動回路8は、ランプ2を点灯開始させるものであって、上記Hブリッジ回路7aの中点電位点と、アース端子1bとの間に設置されている。
始動回路8の作動について、図3に示すタイムチャートを基に説明する。但し、図3において(a)はランプ2の両端電圧Vlampであり、(b)はコンデンサの充電電圧Vcであり、(c)はサイリスタ57のゲートに出力されるゲート駆動信号であり、(d)は2次巻線47bに発生する高電圧である。上記点灯スイッチSWがオンされると、Hブリッジ回路7aを構成するMOSトランジスタ41a〜41dのオン・オフが開始される(図3のt1の時点)。MOSトランジスタ41a、41dがオンする時には、ゲート駆動信号はローレベル信号が出力されて、サイリスタ57はオフ状態となる。これにより、コンデンサ53は充電を始める(図3のt2の時点)。このコンデンサ53の充電がMOSトランジスタ41a、41dのオン期間中に十分になされた後、MOSトランジスタ41a、41dがオフして、MOSトランジスタ41b、41cがオンとなる(図3のt3の時点)。
そして、サイリスタ57のゲート駆動信号がハイレベル信号に変わるとサイリスタ57がオンして電流が流れ、トランス47の2次巻線47bに高電圧が発生する(図3のt4の時点)。この高電圧がランプ2に印加され、ランプ2の電極間で絶縁破壊し、ランプ2が点灯開始する(図3t5の時点)。さらに、サイリスタ57に対してダイオード51を並列接続することにより、サイリスタ57オン時にコンデンサ53と一次巻線47aとで、LC共振させている。2次巻線47bからの高電圧によりランプ2の電極間で絶縁破壊するとランプ2の電極間には、火花放電電流が流れ、この火花放電電流は、上記LC共振により減衰振動電流となる。これにより、火花放電電流の持続時間はダイオード51を接続しない場合に比べ、格段に長くすることができる。
ランプ2で火花放電電流が流れている間のランプ電圧は、コンデンサ35、及びコンデンサ37の充電電圧より低くなり、この時にHブリッジ回路7aを介してランプ2に流れ込むことにより、ランプ2は点灯を開始する。従って、ダイオード51を接続することにより、火花放電電流の持続時間が長くなり、コンデンサ35、およびコンデンサ37からHブリッジ回路7aを介して確実にランプ2へ点灯開始するに十分な電流を流れ込ませることができ、確実にランプ2を点灯させることができる。すなわちランプ2の点灯性を向上させることができる。
また、Hブリッジ回路7aの中点電位点にてコンデンサ53の充電を行っているため、MOSトランジスタ41a〜41dのオン・オフ切換え時にコンデンサの高圧側電位が0Vになる。このため、サイリスタ57を確実にオフさせることができる。つまり、サイリスタ57は1度オンすると、所定の条件(例えば、サイリスタ57のアノード側電位>カソード側電位)を満たすまでオフしないが、このような場合にはコンデンサ53への充電が再び行えなくなる。このため、仮にMOSトランジスタ41a〜41dのオン・オフの1周期目でランプ2が点灯しなかった場合に、その後ランプ2の点灯ができなくなってしまうが、Hブリッジ回路7aの中点電位点によってコンデンサ53の充電を行っているため、これを防止でき、ランプ2を確実に点灯させることができる。
さらに、フライバックトランス29の2次側である中点電位点にてコンデンサ53の充電を行っているため、直流電源回路5で高圧変換された電圧によってコンデンサ53の充電が成されることになる。従来では、コンデンサ53の両端電圧を高圧にするためのトランスを直流電源回路5とは別個に設けていたが、このためにのみトランスを設ける必要がない。このように、始動回路8と直流電源回路5とでフライバックトランス29を共用しているためトランスを1つにでき、コスト削減を図ることができる。
なお、上記ゲート駆動信号は、MOSトランジスタ41a〜41dの切換えタイミングに同期して高電圧発生制御回路13から出力されるが、高電圧発生制御回路13にはHブリッジ制御回路11からMOS41a〜41dの切換えタイミングを知らせる信号が入力されており、この信号に基づいてゲート駆動信号の出力タイミングが設定されている。
また、ランプ2が点灯すると始動回路8を駆動する必要がなくなるため、ゲート駆動信号はローレベル信号が出力される。このランプ点灯は、ランプ電流ILが所定値以上であるか否かによって判定している。すなわち、ランプ2が点灯するとHブリッジ回路7aを介して電流検出用抵抗32(59)にランプ電流ILが流れるため、ランプ電流ILが検出されるとゲート駆動信号をローレベル信号にするようになっている。
〔IC素子43a、43bの駆動回路について〕
次に、上記IC素子43a、43bの駆動について説明する。図4にIC素子43a、43bを駆動する回路図を示す。但し、図4は図1中の構成要件を一部削除してある。IC素子43aは、ハイアンドロードライバー回路(International Rectifier社製、IR2101)を使用している。なお、IC素子43a、43bの構成は全く同じである。
IC素子43a、43bの各電源端子Vccは、フライバックトランス29の二次側に接続されている。つまり、フライバックトランス29の二次側には、抵抗95とツェナーダイオード97よりなる第1電源回路96が設けられており、電源端子Vccへの印加電圧は、第1電源回路96により発生された所定電圧V2(15V)となる。
また、IC素子43aの高電圧側入力端子Hinと、IC素子43bの低電圧側入力端子Linとが接続されている。そして、これら2つの端子HinとLinには、Hブリッジ制御回路11中の端子11aからのハイレベル信号、もしくはローレベル信号が同じように入力される。さらにIC素子43aの低電圧側入力端子Linと、IC素子43bの高電圧側入力端子Hinとが接続されている。そして、これら2つの端子HinとLinとには、Hブリッジ制御回路11の端子11bからのハイレベル信号、もしくはローレベル信号が同じように入力される。そして、Hブリッジ制御回路11の端子11a、11bは、互いにハイレベル信号とローレベル信号とが反転するようになっている。
簡単に作動を説明すると、Hブリッジ制御回路11の端子11aからハイレベル信号が、端子11bからローレベル信号が出力されると、MOSトランジスタ41a、41dがオンとなり、MOSトランジスタ41b、41cがオフとなる。また、Hブリッジ制御回路11の端子11aからローレベル信号が出力され、端子11bからハイレベル信号が出力されると、MOSトランジスタ41b、41cがオンとなり、MOSトランジスタ41a、41dがオフとなる。
このように本実施形態では、IC素子43a、43bは、二次巻線29bにて発生する二次電圧(上記ランプ電圧)を利用して、上記Hブリッジ制御回路11にて制御されるようになっている。これにより、バッテリ電圧VBが低下しても、フライバックトランス29の二次側から駆動電圧を得ることで、MOSトランジスタ41a〜41dを安定して駆動制御することができる。
ところで、IC素子43a、43bは、トランス29の二次側の電圧の他に、一方向性半導体スイッチング素子であるダイオード99を介して一次側の電圧(バッテリ電圧VB)にて駆動制御可能になっている。このようにした理由は、以下の2つの理由からである。 (1)上述したランプパワー制御回路10により、ランプ2のランプ電力がランプ2の放電電圧に相当するランプ電圧VL(電圧信号)、およびランプ2の放電電流に相当するランプ電流IL(電流信号)に基づいて、所望値となるようにフィードバック制御が行われる。
そして、例えば上記点灯スイッチSWがオンされた直後には、二次巻線29b側には電圧は発生していない。従って、点灯スイッチSWがオンされた直後には、Hブリッジ回路7aは駆動制御できず、最悪の場合制御遅れやフィードバック制御が不安定になる可能性がある。そこで、本例では、上記点灯スイッチSWがオンされた直後にでも、Hブリッジ回路7aを駆動制御出来ようにするため、バッテリ電圧VBによってIC素子43a、43bを駆動できるようにしている。
(2)ランプ電圧VLが上記所定電圧Vr1より低下してしまう後述の異常状態になると、IC素子43a、43bの駆動電源が不足し、Hブリッジ回路7aをオフ(MOSトランジスタ41a〜41dの導通を全て遮断状態、以下これをHブリッジ回路7aをオフという)できない。そこで、本例ではIC素子43a、43bは、上記異常状態となると、バッテリ電圧VBにより駆動電源を得るようにした。これにより、上記異常状態において確実にHブリッジ回路7aをオフすることができる。
なお、上記異常状態のときには、図4中242で示す第1異常用回路の2つの出力信号を共にハイレベル信号とすることで、IC素子43a、43bを通じてHブリッジ回路7aをオフする。なお、バッテリ電圧VBが12Vであるときに、IC素子43a、43bの各電源端子Vccへの印加電圧は、ツェナーダイオード97により定電圧15Vに制御される。従って、図4中ダイオード99は逆流防止の機能を果たす。また、101は、ノイズ除去用のコンデンサであり、420は電流制限用の抵抗である。
〔MOSトランジスタ31の駆動電源について〕
次に上記MOSトランジスタ31の駆動電源の得方について図5を用いて説明する。トランス29の二次側には、上記抵抗95と上記ツェナーダイオード97とによって、二次側に発生する高電圧を所定電圧V2(例えば15V)に定電圧化する第1電源回路96が設けられている。
バッテリ1側(一次側)には、抵抗105とコンデンサ107とによって、バッテリ電圧によって決まる所定電圧V3(第2所定電圧)を得る第2電源回路110が設けられている。第1電源回路96と第2電源回路110との間には、第1電源回路96側に抵抗120を介して、切換手段をなすダイオード111が設けられている。
ダイオード111は、上記所定電圧V3と、所定電圧V2から抵抗120にて電圧降下した所定電圧V4(第1所定電圧)とのうち、所定電圧V3の方が高いときに、電流を流す。なお、本例では、バッテリ電圧VBがほぼ定格電圧にあるときには、抵抗120により所定電圧V3が所定電圧V4より高くなるようにしてある(以下、これを正常状態)。
第1電源回路96と第2電源回路110との間には、抵抗114を介して上記MOSトランジスタ31を駆動する駆動回路124を構成するダーリントン接続された2つのNPNトランジスタ112、113が接続されている。なお、ダイオード111は、NPNトランジスタ112、113の両コレクタ間に設けられている。
従って、上記正常状態においては所定電圧V3が所定電圧V4より高いため、ダイオード111は電流を流す。このため、トランス29の一次側よりNPNトランジスタ112にベース電流が流れて、NPNトランジスタ112がオンとなる。すると、NPNトランジスタ112のコレクタ電流がNPNトランジスタ113のベース電流となって、トランス29の一次側からNPNトランジスタ113にコレクタ電流が流れる。
一方、所定電圧V4が所定電圧V3より高いとき、例えば、バッテリ電圧が低下したときには、二次側からNPNトランジスタ112のベース電流が流れて、NPNトランジスタ112がオンとなる。すると、NPNトランジスタ113もオンとなって、トランス29の一次側よりNPNトランジスタ113にはコレクタ電流が流れる。
この時、所定電圧V4が所定電圧V3よりも高くなっているため、ダイオード111は、電流を流さない。このため、所定電圧V4が所定電圧V3より高いという関係が維持される。上記NPNトランジスタ112、113の作動は、図5に示すように上記PWM制御回路9の出力信号を受けて、オン・オフする5つのNPNトランジスタ115〜119にて制御されるようになっている。以下、この5つのNPNトランジスタ115〜119について説明する。
NPNトランジスタ115、116は、PWM制御回路9の出力信号(デューティー信号)に応じてオン・オフするようになっている。以下、出力信号のうち、ハイレベル信号をオン信号、ローレベル信号をオフ信号として説明する。例えば、出力信号がオン信号であると、NPNトランジスタ115、116がオンとなり、定電流源121からの定電流がNPNトランジスタ115のコレクタ電流となる。これにより、NPNトランジスタ117、118がオフし、NPNトランジスタ119もオフとなる。
つまり、デューティー信号がオン信号であると、NPNトランジスタ115、116はオン、NPNトランジスタ117〜119はオフとなる。従って、NPNトランジスタ112のコレクタ電流は、NPNトランジスタ113のベースに流れ込んで、NPNトランジスタ113がオンされる。この結果、NPNトランジスタ113のコレクタ電流がMOSトランジスタ31のゲートに流れ込み、MOSトランジスタ31がオンとなる。
一方、上記出力信号がオフ信号であると、NPNトランジスタ115、116がオフとなるので、定電流源121によりNPNトランジスタ117がオンされる。これにより、NPNトランジスタ117には定電流源122からの定電流が流れる。また、この際、定電流源121によりNPNトランジスタ118もオンとなる。これにより、NPNトランジスタ112のコレクタ電流は、NPNトランジスタ118に流れ込む。この結果、NPNトランジスタ113はオフとなる。
また、NPNトランジスタ116はオフであるので、NPNトランジスタ117を流れたコレクタ電流がNPNトランジスタ119のベースに流れ込み、NPNトランジスタ119がオンとなる。これにより、NPNトランジスタ113のコレクタ電流は、MOSトランジスタ31のゲートに流れ込まず、NPNトランジスタ119のコレクタ電流となり、MOSトランジスタ31はオフとなる。
このように上記オン信号およびオフ信号によって、MOSトランジスタ31がオン・オフするようになっている。また、図5に示すようにMOSトランジスタ31のゲートと、定電流源122との間には、ダイオード123が設けられている。このダイオード123は、MOSトランジスタ31がオンからオフになるときのスイッチング速度を高めるものである。つまり、MOSトランジスタ31がオンからオフになるときには、MOSトランジスタ31のゲートに蓄えられた電荷を、ダイオード123を通じて引き抜いて、NPNトランジスタ117のコレクタ電流を増加させる。これにより、NPNトランジスタ119のベース電流が増加するので、NPNトランジスタ131が迅速にオフとなる。この結果、MOSトランジスタ31のスイッチング速度を向上できる。
次に、上記図5の回路の作動を詳しく説明する。
(1)前提としてバッテリ電圧VBがほぼ定格電圧あり、第2電源回路110が所定電圧V3を発生し、この際、上記点灯スイッチSWがオンされ、PWM制御回路9の出力信号がオン信号であったとする。この際、上記点灯スイッチSWがオンされた直後には、トランス29の二次側には電圧が発生していない。従って、この場合は、第2電源回路110の所定電圧V3によりNPNトランジスタ112がオンされ、NPNトランジスタ113もオンとなる。つまり、NPNトランジスタ112、113のベース電流およびコレクタ電流は、第2電源回路110により流れる(得られる)。この結果、MOSトランジスタ31は、フライバックトランス29の一次側、つまり第2電源回路110から駆動電源を得て、オンとなる。
その後、PWM制御回路9がオン・オフ信号を繰り返すと、二次巻線29bが一次巻線29aのエネルギーを受け取ることで、二次側の電圧は徐々に上昇していく。これにより、第1電源回路96にて所定電圧V2が発生し、さらには所定電圧V4が発生する。
(2)次に前提としてランプ点灯中にバッテリ電圧が低下したために、所定電圧V3も低下して、所定電圧V3が所定電圧V4より低くなったとする。
すると、ダイオード111は、NPNトランジスタ112、113のベース電流をトランス29の二次側(第1電源回路96)から得るように電流経路を切換える。つまり、NPNトランジスタ112は、トランス29の二次側(第1電源回路96)より、駆動電源を得ることになる。この結果、本実施形態ではバッテリ1の電源電圧VBが点灯中に低下したときには、トランス29の二次側の第1電源回路96にてNPNトランジスタ112、113、およびMOSトランジスタ31を安定して駆動制御することができる。
従って、本実施形態では、上記所定電圧V3が上記所定電圧V4より低くなったときのみに、NPNトランジスタ112の駆動電源を第1電源回路96より得る。これにより、以下の効果がある。トランス29の二次側には、上述したように400Vといった高電圧が発生する。従って、ツェナーダイオード97を小型で安価なものとすると、抵抗95は抵抗値が非常に大きなものを使用する必要がある。しかしながら、このようにすると、抵抗値の大きな抵抗95にて大きな電力が消費されるといった問題がある。
そこで、本例では上記所定電圧V3が上記所定電圧V4より低くなったときのみに、上記抵抗95に電流が流れるようにしており、これにより、抵抗95での消費電力を小さくできる。また、トランス29の二次側には、上述したように400Vといった高電圧が発生するが、抵抗95での消費電力は、抵抗値が大きい程小さくなる。そして、この抵抗95の抵抗値の最大値R(95)=(VL−V2)/Isという関係がある。
なお、VLは、トランス29の二次側電圧(NPNトランジスタ112を正常作動させるに必要な最低値)であり、Isは第1電源回路96が負荷に供給する電流である。この様な関係において、上記V2とIsは回路によって決まる固定値である。よって、抵抗95の抵抗値は上記VLの最低値を何ボルトにするかによって決まる。従って、本例では上記所定電圧V3が上記所定電圧V4より低くなったときのみに、NPNトランジスタ112の駆動電源を第1電源回路96より得る。これにより、抵抗95の抵抗値を大きくすることができるので、抵抗95での消費電力を小さくすることができる。
また、本実施形態では、NPNトランジスタ112とNPNトランジスタ113とをダーリントン接続したことで、以下の効果がある。但し、上記抵抗114での電圧降下を無視して説明する。バッテリ電圧VBがほぼ定格電圧であるときには、上述したようにNPNトランジスタ112、113の各ベース電流およびコレクタ電流は、トランス29の一次側(第2電源回路110)から流れる。従って、NPNトランジスタ113のコレクタ−エミッタ間の電位差は、上記電圧降下分の和と、コレクタ−エミッタの電位降下分と、ダイオード111の順方向電圧降下分の和となる。
すなわち、本例ではMOSトランジスタ31のゲートに印加される電圧は、V3−(VBE112+VBE113)=V3−1.4(V)となる。なお、VBE112は、トランジスタ112のエミッタ−ベース間の順方向電圧降下分であり、VBE113は、トランジスタ113のエミッタ−ベース間の順方向電圧降下分である。
そして、例えば、バッテリ電圧VBが定格電圧から徐々に低下していき、所定電圧V3が所定電圧V4より低くなったとする。この場合は、上述したようにNPNトランジスタ113は、第1電源回路96によってオンされ、上記所定電圧V4とNPNトランジスタ113のエミッタとの間の電位差は、NPNトランジスタ112、113のベース−エミッタ間の各電圧降下分の和となる。
しかしながら、この場合は、ダイオード111により第1電源回路96と第2電源回路110とは分離していると考えられるので、この場合NPNトランジスタ113のエミッタ−コレクタ間の電位差は、エミッタ−コレクタ間の電圧降下分のみとなる。すなわち、MOSトランジスタ31のゲートに印加される電圧は、V3−VCE113=V3(V)となる。なお、VCEは、トランジスタ113のコレクタ−エミッタ間の電圧降下分=0(V)である。
従って、バッテリ電圧VBが、MOSトランジスタ31のスイッチング動作を行うのに必要なゲート電圧に低下するまでは、確実にMOSトランジスタ31をオンさせることができる。なお、図5中246はNPNトランジスタであり、これは後述する異常状態が発生したときに、PWM制御回路9の制御を停止、つまりMOSトランジスタ31をオフするために、第2異常用回路244にてNPNトランジスタ115、116を強制的に共にオフするものである。
〔ランプパワー制御回路10について〕
次に、ランプパワー制御回路10の具体的構成を図6に示す。ランプパワー制御回路10は、ランプ2の放電点灯状態を示す信号であるランプ電圧VLやランプ電流IL等に応じた出力を発生する誤差増幅回路(積分回路)61が備えられており、この誤差増幅回路61の出力がPWM制御回路9に入力されようになっている。このランプパワー制御回路10は、最終的に誤差増幅回路(積分回路)61の出力電圧(出力信号)を上記PWM制御回路9内で反転させることで、ランプ電力を制御する。
つまり、PWM制御回路9は、誤差増幅回路61の出力電位が高くなるほど、鋸歯状波に対するスレッショルドレベルを小さくして、MOSトランジスタ31のオン・オフデューティー比が大きくなるように制御する。これにより、ランプ電力が増加する。一方、PWM制御回路9は、誤差増幅回路61の出力電位が低くなるほど、鋸歯状波に対するスレッショルドレベルを大きくして、MOSトランジスタ31のオン・オフデューティー比が小さくなるように制御する。これにより、ランプ電力が低下する。
図6に示すように誤差増幅回路61の非反転入力端子には、基準電圧Vrefが入力されており、反転入力端子には、ランプ電力PLを制御するためのパラメータとなる電圧V1が入力されている。これにより、誤差増幅回路61は、電圧V1に応じた出力を発生し、この出力に基づき上記オン・オフデューティー比が設定される。
そして、電圧V1が基準電圧Vrefより高くなると、誤差増幅回路61の出力電圧は低くなり、電圧V1が基準電圧Vrefより低くなると、誤差増幅回路61の出力電圧は高くなるように作動する。この電圧V1は、ランプ電流IL及びランプ電圧VL等の複合信号、すなわちランプ電流ILと、定電圧V2により流れる電流i1 と、第1電流設定回路63にて設定される電流i2と、第2電流設定回路65にて設定される電流i3に基づいて決定される。
なお、ランプ電圧VLは、上記サンプルホールド回路12からの出力値である。また、電流i1 と電流i2 と電流i3 との和は、上記ランプ電流ILより十分小さく設定されている。
ここで、第1電流設定回路63は、図に示すようにランプ電圧VLが高くなる程、電流i2を大きく設定するものである。さらに、電流i2は、図に示すようにランプ電圧VLが高くなるほど傾きが緩やかになる異なる直線を繋げたような関係にて設定されるようになっている。第2電流設定回路65は、図に示すように電流i3を時間Tが長くなるほど大きくなるように設定する。なお、この時間Tは、ランプ2が消灯してからの経過時間に相当し、上記電極温度の状態を間接的に予測するものである。
つまり、ランプ2がある程度の時間継続して点灯されると、電極温度は十分温かくなっており、その後短時間ランプ2を消灯させて再度ランプ2を点灯したときには、電極温度の温度低下量は少ない。従って、この場合、ランプ電力は、例えば外気温程度まで電極が冷えきった状態に比べて小さくて良い。この結果、本実施形態では、ランプパワー制御回路10により電極温度を間接的に予測して、電極温度に応じてランプ電力を制御することができる。
このように、ランプパワー制御回路10は、ランプ電流IL及びランプ電圧VLに基づいて制御を行っているため、これらランプ電流IL及びランプ電圧VLを正確に検出することが重要となる。本実施形態では、これらランプ電圧VL及びランプ電流ILを正確に検出するために、クランプ回路69やサンプルホールド回路12が設けられている。以下これらクランプ回路69とサンプルホールド回路12について説明する。
クランプ回路69は、誤差増幅回路61の反転入力端子に入力される電圧V1をクランプするものである。図に示すように、クランプ回路69は電圧ホロワ回路を構成している。このクランプ回路69に備えられたオペアンプ69aの非反転入力端子には、誤差増幅回路61の非反転入力端子に入力される所定電圧Vrefよりも所定電圧低いVref−αの電圧が入力される。ただし、クランプ回路69の出力端子にはダイオード69bが接続されており、オペアンプ69aが出力端子側から電流を引き込めないようになっている。
このような構成において、電圧V1が所定電圧Vref−αよりも高い場合には、オペアンプ69aの非反転入力端子よりも反転入力端子の方が高電圧になるため、オペアンプ69aは出力端子側から電流を引き込もうとする。しかし、出力端子側にはダイオード69bが備えられているためにオペアンプ69aは電流を引き込むことができず、電圧V1は、クランプ回路69の影響を受けずに誤差増幅回路61に入力される。
また、電圧V1が所定電圧Vref−αよりも低くなると、オペアンプ69aの非反転入力端子の方が反転入力端子よりも高電圧になるため、オペアンプ69aは出力端子側へ電流を押し出す。これにより、電圧V1が所定電圧Vref−α以下にならないように維持される。このようにクランプ回路69を設けた場合の電圧V1の変化を図7に示す。図7に示すように、Hブリッジ回路7aにおけるMOSトランジスタ41a〜41dのオン・オフ切換え時において、ランプ電流ILが一瞬大きく低下し、電圧V1は瞬間的に変化する。しかしながら、クランプ回路69によって電圧V1が所定電圧Vref−α以下にならず、所定電圧Vref−α以上の電圧に維持される。このため、電圧V1の急激な変化は生じない。
これにより、MOSトランジスタ41a〜41dの切換え時(ランプ2の放電電流の切換え時)における電圧V1の変化を小さくすることができるため、バッテリ1からの供給電力をフィードバック制御するに際し、ランプ電流ILの瞬間的な変化による影響を抑制することができる。また、ランプ電流ILが低下する時間は、トランス47bのインダクタンスが大きくなればなるほど大きくなる。そして、本実施形態においては、始動回路8と直流電源回路5に必要なトランスをフライバックトランス29で共用していることから、トランス47bのインダクタンスが大きく、ランプ電流ILによる影響が大きくなる。しかしながら、このように、クランプ回路69を設けているため、このような場合でも効果的にランプ電流ILによるフィードバック制御への影響を抑制することができる。
なお、MOSトランジスタ41a〜41dのスイッチング周波数が高い場合には、フィードバック制御の遅れによってランプ電流ILの変化によるフィードバク制御への影響が顕著になるが、このようなスイッチング周波数が高い場合においても上記影響を抑制できるため有効である。また、誤差増幅回路61には積分用コンデンサ61aが備えられており、このコンデンサ61aの容量を大きくすることによりランプ電流ILの影響を緩和することも可能であるが、このようにコンデンサ61aの容量を大きくした場合には、誤差増幅回路61の応答性が確保できなくなるため、クランプ回路69を設けることが有効となる。
図8に、サンプルホールド回路12の回路構成を示す。サンプルホールド回路12は、二次巻線47b及びコンデンサ35によって生じる過渡電圧を排除するものである。このサンプルホールド回路12は反転入力端子125と出力端子147が接続されたバッファアンプ回路129と、バッファアンプ回路129における出力を所定期間維持するマスク回路131とを備えており、これらの回路によって過渡電圧を含んだランプ電圧VLから、過渡電圧を排除している。
サンプルホールド回路12には、演算増幅器152が備えられており、この演算増幅器152によって、サンプルホールド回路12の出力を発生し、最終的にランプパワー制御回路10にランプ電圧VLに応じた制御信号を送っている。
また、図9にサンプルホールド回路12を介して検出されるランプ電圧VLの模式図を示す。以下、図8に基づきサンプルホールド回路12の作動について説明する。サンプルホールド回路12は、デジタル回路(図示しない)からのタイミング信号に基づきマスク回路131におけるNPNトランジスタ133a、133bをオン・オフする。そして、サンプルホールド回路12は、マスク回路131へのタイミング信号(入力信号)がローレベル信号である場合にはその時のランプ電圧VLをサンプリングしてランプ電圧VLに応じた出力を発生し、タイミング信号がハイレベル信号に切り換わった場合にはその直前にサンプリングしたランプ電圧VLに応じた出力を維持(ホールド)する。以下、具体的な作動を、タイミング信号がローレベル信号である場合とハイレベル信号に切り換わった場合に分けて説明する。
(1)タイミング信号がローレベル信号である場合この場合には、NPNトランジスタ133a、133bがオフであるため、ランプ電圧VLに応じた出力を発生する。非反転入力端子127に入力されたランプ電圧VLが増加すると、反転入力端子125の電圧と非反転入力端子127の電圧との差電圧が大きくなり、トランジスタ135、155、137、139による差動回路の出力であるトランジスタ141のベース端子の電圧が上昇し、エミッタフォロア回路を構成するトランジスタ141、145により電流増幅し、バッファアンプ回路129の出力端子147の電圧は上昇する。この作動により非反転入力端子127の電圧と反転入力端子125の電圧(バッファアンプ回路129の出力端子147の電圧)は等しくなるように作動する。
すなわち、バッファアンプ回路129は、出力端子147の電圧がランプ電圧VLと同様の電圧になるように差動増幅回路としての作動を行う。従って、リップル平滑用抵抗149を介してコンデンサ151に流れ込む電流が増加し、コンデンサ151の充電電圧が増加する。そして、この充電電圧の増加に伴った出力を演算増幅器152は出力する。
なお、PNPトランジスタ135に流れる電流値の減少により、定電流源143からPNPトランジスタ155を流れる電流は増加し、反転入力端子125に流れるバイアス電流が増加するが、この電流は極めて微小であるためコンデンサ151の充電には影響を与えない。
また、非反転入力端子127に入力されたランプ電圧VLが減少すると、上述した作動とは逆の作動を行って、出力端子147の電圧がランプ電圧VLと同様の電圧になるようにする。
すなわち、タイミング信号がローレベル信号である時には、その時のランプ電圧VLに応じた電圧がコンデンサ151に蓄積されており、サンプルホールド回路12はその時のランプ電圧VLをサンプリングする。
(2)タイミング信号がハイレベル信号に切り換わった場合この場合には、NPNトランジスタ133a、133bがオンする。このため、定電流源143からの電流がトランジスタ133aに流れ込むと共に、定電流源157からの電流がトランジスタ133bに流れ込み、NPNトランジスタ145、159、161がオフする。従って、この時はコンデンサ151に電流が流れず、タイミング信号がハイレベル信号に切り換わる直前の充電電圧をコンデンサ151は保持する。すなわち、タイミング信号がハイレベルに切り換わった場合には、バッファアンプ回路129は差動増幅回路としての作動を行わない。
このように、過渡電圧発生時以外にはバッファアンプ回路129が差動増幅回路としての作動を行って、過渡電圧発生時にはバッファアンプ回路129が差動増幅回路としての作動を行わないように過渡電圧部分をマスクするようにしている。これにより、過渡電圧発生時にはランプ電圧VLをサンプリングしないようにすることができ、過渡電圧発生時以外の通常時におけるランプ電圧VLを検出することができる。従来においては、チョークコイルを用いてランプ電圧VLを平坦化して、これによって通常時におけるランプ電圧VLが検出できるようにしていたが、このようにサンプルホールド回路12を設けることにより、チョークコイルを用いなくても通常時のランプ電圧VLを検出することができる。
なお、上述したデジタル回路が発生するタイミング信号は、Hブリッジ回路7aにおけるMOSトランジスタ41a〜41dの切換えタイミングと同期したものにしており、具体的にはMOSトランジスタ41a〜41dの切換え後、数十μs〜数百μsの間ハイレベル信号を出力するように構成されている。
〔PWM制御回路9について〕
次に、PWM制御回路9の詳細について説明する。図10にPWM制御回路9の回路図を示す。
図10に示すように、PWM制御回路9は鋸歯状波を形成する鋸歯状波形成回路163と鋸歯状波におけるスレッショルドレベル(デューティー比)を設定するスレッショルドレベル設定回路165及び鋸歯状波とスレッショルドレベルを比較してMOSトランジスタ31のオン・オフのデューティー比を設定するコンパレータ167を備えている。
鋸歯状波形成回路163について説明する。この鋸歯状波形成回路163は、定電流源169からダイオード171を介して流れ込む電流Ikや定電圧源173における電圧に基づき抵抗175を介して流れ込む電流Itによって充電されるコンデンサ177の充電電圧を可変することによって鋸歯状波を形成している。すなわち、コンパレータ181の出力に基づいてNPNトランジスタ183a、183bをオン・オフさせ、これによって抵抗179a〜179cによって設定されるしきい電圧を可変させて鋸歯状波を形成している。以下、鋸歯状波形成回路163の基本作動について説明する。
この基本作動によって形成される鋸歯状波を図11(a)に示す。以下、図10及び図11(a)に基づき、鋸歯状波の形成について説明する。コンデンサ177の充電は、定電流源169からダイオード171を介して流れ込む電流Ikと、定電圧源173における電圧に基づき抵抗175を介して流れ込む電流Itによって行われる。
そして、コンデンサ177の充電電圧が抵抗179b、179cの両端電圧である第1のしきい電圧Vaになるまでコンデンサ177の充電が続き、この充電が完了するまでの間、コンデンサ177の充電電圧は所定の傾きをもって増加する。この後、コンデンサ177の充電電圧が電圧Vaになると、コンパレータ181はハイレベル信号を出力し、NPNトランジスタ183a、183bがオンする。これにより、第1のしきい電圧Vaが抵抗179bの両端電圧である第2のしきい電圧Vbに減少すると共に、抵抗201を介してコンデンサ177の放電が行われる。このコンデンサ177の放電によって、コンデンサ177の充電電圧が急激に低下する。
そして、コンデンサ177の充電電圧が第2のしきい電圧Vbまで低下すると、コンパレータ181はローレベル信号を出力し、NPNトランジスタ183a、183bがオフする。これにより、第2のしきい電圧Vbが第1のしきい電圧Vaに戻る。さらに、この後もコンデンサ177への充電・放電が同様に繰り返され、比較的周期が短い、すなわち比較的周波数の高い鋸歯状波が形成される。
このような作動を行う鋸歯状波形成回路は、周波数変更回路185を備え、この周波数変更回路185によって鋸歯状波の周波数を変更させている。周波数変更回路185は、ランプ2の点灯前・点灯後とでスイッチング周波数を変更する回路185aとバッテリ電圧VBに応じてスイッチング周波数を変更する回路185bとからなる。
これら、回路185aと回路185bはそれぞれランプ点灯前と点灯後において主に鋸歯状波形成回路163の作動に影響を与える。以下、回路185aと回路185bに分けて鋸歯状波形成回路163の作動説明を行う。まず、回路185aの構成について説明する。回路185aは、ランプ電流ILを電圧変換した電圧VIL(電流検出用抵抗59の高電圧側)と所定電圧Vsとを比較するコンパレータ187と、このコンパレータ187の出力信号によってオン・オフ制御が成されるNPNトランジスタ189を備えている。このように構成された回路185aを備えることによって、鋸歯状波形成回路163が形成する鋸歯状波の周波数が以下に示すように変更される。以下、ランプ2の点灯前・点灯後に分けて鋸歯状波の形成について説明する。
(1)ランプ2の点灯前
ランプ2の点灯前において形成される鋸歯状波を図11(b)に示す。ランプ2が点灯する前には電圧VILが零であるためコンパレータ187はハイレベル信号を出力し、NPNトランジスタ189はオンする。これにより、定電流源169からの電流Ikがコンデンサ177に流れ込まず、定電圧源173における電圧に基づき抵抗175を介して流れ込む電流Itのみによってコンデンサ177の充電が成される。従って、図11(b)に示すように、コンデンサ177の充電時間が長くなって鋸歯状波の周期が長くなる。
この後は、上述した基本作動と同様にコンデンサ177の放電と充電を繰り返して、鋸歯状波形成回路163が基本作動することによって形成される鋸歯状波よりも周波数が低下した、比較的周期の長い鋸歯状波が形成される。
(2)ランプの点灯後
ランプ2の点灯後には、電圧VILが所定の電圧となるため、コンパレータ187はローレベル信号を出力し、NPNトランジスタ189はオフする。このため、鋸歯状波形成回路163は、回路185aによって影響を受けることなく鋸歯状波を形成する。
次に、回路185bの構成について説明する。回路185bは、バッテリ電圧VBを分圧する抵抗191a、191bを備えている。そして、これらによって分圧された電圧VB1がオペアンプ193に入力されている。これにより、電圧VB1が定電圧源173における定電圧以上である場合にはトランジスタ197はオフし、定電圧未満である場合にはトランジスタ197はバッテリ電圧VBに応じた電流を流すようになっている。そして、バッテリ電圧VBが低下した際には、カレントミラー回路199を介して、トランジスタ197に流れる電流に比例した電流がトランジスタ199aに流れるようになっている。
このように構成された回路185aを備えることによって、鋸歯状波形成回路163が形成する鋸歯状波の周波数が以下に示すように変更される。以下、バッテリ電圧VBが十分な場合とバッテリ電圧VBが低下した場合に分けて鋸歯状波の形成について説明する。
(1)バッテリ電圧VBが十分にある場合この場合には、上述したようにトランジスタ197はオフしている。このため、コンデンサ177の充電は、定電流源169からダイオード171を介して流れ込む電流Ikと、定電圧源173における電圧に基づき抵抗175を介して流れ込む電流Itによって行われる。従って、鋸歯状波形成回路163は、上述した基本作動を行って、図11(a)と同様の鋸歯状波を形成する。
(2)バッテリ電圧VBが低下している場合バッテリ電圧VBが低下している場合において形成される鋸歯状波を図11(c)に示す。上述したようにトランジスタ197はバッテリ電圧VBに比例した電流を流す。このため、カレントミラー回路199を介して、バッテリ電圧VBに応じた電流がトランジスタ199aに流れ込む。その結果、バッテリ電圧VBに応じた電流が定電流源169からの定電流が引き抜かれる。
このため、定電流源169からの電流Ikが減少されてコンデンサ177に流れ込む。従って、コンデンサ177の充電は、バッテリ電圧VBの低下分減少された電流Ikと定電圧源173における電圧に基づき抵抗175を介して流れ込む電流Itによって成される。これにより、バッテリ電圧VBが十分にある場合に比べてコンデンサ177の充電時間が長くなって、図11(c)に示すように鋸歯状波の周期が長くなる。
この後、鋸歯状波形成回路163は、上記と同様にコンデンサ177の放電と充電を繰り返して、バッテリ電圧VBが十分にあるとともにランプ2が点灯している時よりも周波数が低下した比較的周期の長い鋸歯状波を形成する。このように、ランプ2の点灯前においては、上述したように回路185aによって鋸歯状波の周波数を一律に比較的低いものに変更しており、ランプ点灯後においては、回路185bによってバッテリ電圧VBに応じて鋸歯状波の周波数を変更している。
次に、スレッショルドレベル設定回路165について説明する。スレッショルドレベル設定回路165は、ランプパワー制御回路10(誤差増幅回路61)からの指令信号に応じたスレッシュルドレベルを設定すると共にランプが点灯していない状態の時に、ランプ電圧VLが所定電圧以上にならないように定電圧制御(例えば、400V制御)するためのスレッシュルドレベルを設定する。また、スレッシュルドレベル設定回路165は、ランプパワー制御回路10(誤差増幅回路61)からの指令信号を反転する反転回路を有している。ランプパワー制御回路10による指令信号のレベルは供給したいランプ電力PLに応じて変化し、供給したいランプ電力PLが大きいほどデューティー比を低くして電力供給を大きくする必要があるため、スレッシュルドレベル設定回路165の中に反転回路を設けて指令信号のレベルとスレッシュルドレベルが反転するようにしている。
なお、後で詳しく説明するが、スレッシュルドレベル設定回路165はデューティー比の上限値となるデューティーリミット値を設定する回路を設けている。続いて、コンパレータ167について説明する。コンパレータ167は、上述した鋸歯状波と、スレッショルドレベルを比較して、MOSトランジスタ31のオン・オフのデューティー比を設定している。
また、この時のMOSトランジスタ31のスイッチング周波数は、上述した鋸歯状波形成回路163で形成された鋸歯状波の周波数と同じであるため、(1)ランプ2が点灯する前にはバッテリ電圧VBの高低に係わらず比較的低い周波数であり、(2)ランプ2が点灯している時であって、バッテリ電圧VBが十分にある時には比較的高い周波数であり、(3)ランプ2が点灯している時であって、バッテリ電圧VBが低下している時にはバッテリ電圧VBの低下分に応じた比較的低い周波数である。
ここで、ランプ2の点灯前におけるランプ電圧VLの波形を図12に示す。図12の一点鎖線(a)はバッテリ電圧VBが十分な場合、実線(b)はバッテリ電圧VBが低下している場合、破線(c)はスイッチング周波数を低くしない場合を示す。図12(a)、(b)に示すように、MOSトランジスタ31のスイッチング周波数を比較的低くした場合には、ランプ電圧VLはランプ点灯に必要な所定値に達して所定値(例えば、上述した400V)に定電圧制御される。また、スイッチング周波数を変化させない場合は、(c)に示すようにランプ電圧VLはバッテリ電圧VBによって変化し、バッテリ電圧VBが低下するほどランプ電圧VLも低下する。つまり、スイッチング周波数を低くすることによりトランス29の一次巻線29aを流れる一次電流の遮断電流値を大きくでき、スイッチング周波数を変化させない場合に比べて直流電源回路5の出力電力を大きくすることができる。
また、単位時間当たりに一次巻線29aに蓄積されるエネルギー総和W(≒直流電源回路5の出力電力)は、数式1で表される。
(数1)
W=f×1/2LI2
但し、f:スイッチング周波数、L:1次巻線29aのインダクタンス、I:1次電流である。この数式1に表されるように、単位時間当たりに一次巻線29aに蓄積されるエネルギーの総和Wはスイッチング周波数や電流の二乗に比例して大きくなる。このため、MOSトランジスタ31のオン・オフ周期(=1/スイッチング周波数)を長くすることによって、スイッチング周波数が低下しても1次電流が大きくなるため、単位時間当たりに1次巻線29aに蓄積されるエネルギーの総和Wは大きくなる。
本実施形態においては、MOSトランジスタ31のスイッチング周波数を比較的低くしているため、上記したように単位時間当たりに1次巻線に蓄積されるエネルギーの総和Wは大きくなる。つまり、直流電源回路5の出力電力は大きくなり、ランプ点灯に必要な所定電圧値のランプ電圧VLをバッテリ電圧VBが低下している場合においても供給することができる。
このように、回路185aによって、ランプ2が点灯していない時にはランプ2が点灯している時よりもMOSトランジスタ31のスイッチング周波数を一律に低くすることにより、ランプ2の点灯に必要な電力を供給することができるため、ランプ2の点灯性を良好にすることができる。また、ランプ2の点灯後は所定のスイッチング周波数でランプ2の交流点灯を行うことにより、ランプ電流のリップルが低くでき、これにより音響共鳴現象を抑制することができる。
続いて、ランプ2が点灯している時において、バッテリ電圧VBが十分にある時とバッテリ電圧VBが低下した時における1次電流の波形の比較図をそれぞれ図13(a)、(b)に示す。本実施形態においては、バッテリ電圧低下に応じてMOSトランジスタ31のスイッチング周波数を低くしているため、図13(a)、(b)に示されるように、バッテリ電圧VBが十分にある時だけでなくバッテリ電圧VBが低下している時においても1次電流が十分に大きくなる。このため、上述したように、2次巻線29bに供給できる単位時間当たりのエネルギーの総和Wが大きくなる。また、周波数が低くなっているため、MOSトランジスタ31がオフする時間も長くなり、二次巻線29bへのエネルギー供給が十分に行えるようになる。
このように、ランプ2が点灯している時において、バッテリ電圧VBが十分にある場合にはMOSトランジスタ31のスイッチング周波数が比較的高い所定周波数にして、バッテリ電圧VBが低下している場合にはバッテリ電圧VBの低下分に応じて前記所定周波数を低くしているため、フライバックトランス29の2次側へのエネルギー供給が十分に行えるようになっている。
従って、ランプ2が点灯しているときにバッテリ電圧VBが低下した場合などにおいてもエネルギー消費効率を良好にすることができ、例えばランプ2が点灯している途中で消えてしまったりすることを抑制することができる。
〔スレッショルドレベル設定回路165について〕
次に、上記スレッショルドレベル設定回路165の詳細について、図14を用いて説明する。
スレッショルドレベル設定回路165は、ランプパワー制御回路10(誤差増幅回路61)が出力する指令信号を反転する反転回路165aと、デューティー比の上限値となる上記デューティーリミット値(以下、リミット値)を設定するリミット値設定回路165bと、ランプ2の点灯前におけるランプ電圧VLを所定値に定電圧制御する制御回路165cとを有する。
なお、上記リミット値は、上述のようにフライバックトランス29の二次側に十分エネルギーが供給されるようにするためのものである。つまり、フライバックトランス29の二次側出力は、上記デューティー比に対して上に凸の関係がある。従って、例えば大幅にランプ電力を増加しようとして、ランプパワー制御回路10がデューティー比を大きくするように機能したときに、逆にフライバックトランス29の二次側出力が低下するのを防止するために設定されている。
先ず、反転回路165aについて説明する。反転回路165aは、定電圧源203より電流が流れるカレントミラー回路205と、このカレントミラー回路205を流れる電流iSをベース電流とするNPNトランジスタ207とからなる。上記誤差増幅回路61の出力端子は、抵抗209を介して2つのNPNトランジスタ205a、205bよりなる上記カレントミラー回路205に接続されている。ここで、誤差増幅回路61の出力によりランプ電力が制御されているときには、上記制御回路165cのNPNトランジスタ404はオフ状態にある。そこで、この場合における反転回路165aの作動は、以下のようになる。
ランプ電力を低下させる場合には、誤差増幅回路61の出力電圧が下がり、抵抗209に流れる電流isaは増加する。この際、この電流をカレントミラー回路205でミラーした電流isbは、isaとなる。そして、この電流isbを抵抗210にて電圧に変換した電圧VMは高くなり、この電圧VMはエミッタフォロア回路をなすトランジスタ207を介してコンパレータ167の反転入力端子の入力電圧VNとなる。従って、入力電圧VNは高くなり、スレッショルドレベルが高くなって、デューティー比が小さくなる。
一方、ランプ電力を大きくさせる場合には、誤差増幅回路61の出力電圧が上がり、抵抗209を流れる電流isaは減少する。これにより、この電流isbを抵抗210にて電圧に変換した電圧VMは低下する。従って、コンパレータ167の反転入力端子の入力電圧VNは低下しスレッショルドレベルが低くなって、デューティー比が大きくなる。
次にリミット値設定回路165bについて説明する。リミット値設定回路165bは、バッテリ電圧VBに応じて上記リミット値を可変する第1リミット値設定回路211と、ランプ2の供給電力を示す(相当する)情報であるランプ電圧VLに応じて上記リミット値を可変する第2リミット値設定回路213と、バッテリ電圧VBが所定値以下になると、上記リミット値を回路上設定可能な最大値に設定する第3リミット値設定回路215とを有する。
第1リミット値設定回路211は、バッテリ1とフライバックトランス29の一次巻線29aとの間に設けられた上記端子Aからバッテリ電圧VBのみを検出するようになっている(図1参照)。第1リミット値設定回路211は、抵抗223〜225で構成されている。これら抵抗223〜225の接続点の電圧V0は、後述のトランジスタ227がオフ(バッテリ電圧が十分ある場合)で、ランプ電圧VLが0の場合は抵抗223〜225の分圧だけで決まり、バッテリ電圧VBに応じた値となる。そして、バッテリ電圧VBが低下すると、電圧V0は低下し、バッテリ電圧VBが高くなると、電圧V0は高くなる。
第2リミット値設定回路213は、抵抗222、カレントミラー回路221(NPNトランジスタ221a,221b)で構成されており、ランプ2の供給電力を示すランプ電圧VLのみを上記端子Cから検出するようになっている。第2リミット値設定回路213は、ランプ電圧VLが大きくなると、これに応じて上記リミット値を大きく設定するものである。
つまり、カレントミラー回路221を流れる電流は、ランプ電圧VLのみに応じて可変され、ランプ電圧が高くなる程大きくなり、ランプ電圧VLが高くなると、カレントミラー回路221のNPNトランジスタ221bのコレクタ電流は増加する。従って、電圧V0はNPNトランジスタ221bのコレクタ電流が増加した分低下する。一方、ランプ電圧VLが低下すると、NPNトランジスタ221bのコレクタ電流が減少し、電圧V0は高くなる。
すなわち、スレッショルドレベル設定回路165は、バッテリ電圧VBおよびランプ電圧VLとで決定される電圧をV0とし、誤差増幅回路61の出力電圧に相当するNPNトランジスタ207のベース側の電圧をVMとすると、以下のような機能を果たす。但し、説明上分かり易くするため、上記NPNトランジスタ207とNPNトランジスタ217との各ベース−コレクタ間の電圧降下を無視する。
例えば、誤差増幅回路61の出力信号により、ランプ電力を増加させようとして、電圧VMが低くなったとする。そして、この際、上記電圧VMが上記電圧V0より高いと、NPNトランジスタ217はオフとなる。これにより、入力電圧VNは、電圧VMとなり、誤差増幅回路61の出力信号に応じて、スレッショルドレベルが設定される。
一方、誤差増幅回路61の出力信号により、ランプ電力を大幅に増加させようとして、例えば電圧VMが上記電圧V0より低くなったとする。すると、NPNトランジスタ207はオフ、NPNトランジスタ217はオンとなる。これにより、入力電圧VNは、電圧V0で、この電圧V0が上記リミット値となり、スレッショルドレベルはこれ以上大きくならないように制限される。
つまり、第1リミット値設定回路211は、バッテリ電圧VBのみに応じ、バッテリ電圧VBが低下すると、上記電圧V0も低下するので、バッテリ電圧VBが低くなる程、上記リミット値を大きく設定する。また、第2リミット値設定回路213は、ランプ電圧VLのみに応じ、ランプ電圧VLが高くなると上記電圧V0は低くなるので、ランプ電圧VLが高くなる程、上記リミット値を大きく設定する。
このように、本例では、バッテリ電圧VBのみを検出する手段として、図1に示すように端子Aを設け、この端子Aより検出されるバッテリ電圧VBに応じて、上記リミット値を可変するようにした。これにより、バッテリ電圧VBに応じて、精度良く上記リミット値を設定できる。また、上述したランプ電圧VLのみを検出する手段として、図1に示すように端子Cを設け、この端子Cより検出されるランプ電圧VLに応じて、上記リミット値を可変するようにした。これにより、ランプ2の負荷であるランプ電圧VLに応じて、精度良く上記リミット値を設定できる。
また、上記ランプ2の負荷として、上記ランプパワー制御回路10で使用する制御信号(VL)を利用しているので、特別にランプ2の負荷を検出する手段を設ける必要は無く、コスト低減を図れる。ところで、上述した第1、第2リミット値設定回路211、213は、例えば抵抗223や225等にて決定される回路定数によって、上記リミット値を設定している。そして、本例では第1リミット値設定回路211は、バッテリ電圧VBが定格電圧12Vから約7Vまで低下する間に、リミット値が精度良く設定できるようにしてある。
従って、例えばバッテリ電圧VBが大きく低下して7Vより小さくなると、上記リミット値は適切で無く、リミット値をさらに大きくする必要がある。つまり、バッテリ電圧VBがさらに大幅に低下した場合では、フライバックトランス29の二次側出力も大きく低下するので、これに応じて上記リミット値を大きくしないと、二次側の出力が十分得られない。
そこで、上記第3リミット値設定回路215にて、バッテリ電圧VBが7Vより低下したときに、適切に上記リミット値を設定する。以下、これについて説明する。なお、この場合のリミット値は、上述したようにデューティー比が高くなった場合に、フライバックトランス29の二次巻線29bへのエネルギー供給が十分行える範囲で設定される。
上記第3リミット値設定回路215は、図14に示すように抵抗225と並列に接続されたNPNトランジスタ227と、このNPNトランジスタ227をオンオフするコンパレータ229とからなる。コンパレータ229は、非反転入力端子に所定電圧VK(7V)が入力されており、反転入力端子に上記端子Aよりバッテリ電圧VBが入力されている。従って、バッテリ電圧VBが7Vより低下すると、NPNトランジスタ227がオンとなる。これにより、上記電圧V0は、抵抗223と抵抗225との分圧で無く、ほぼ0Vになる。
この結果、上記リミット値は、デューティー比がほぼ100%にできる値まで低下する。これにより、バッテリ電圧VBが7Vより低下した場合にも、最適なリミット値を設定できる。
次に、制御回路165cについて説明する。制御165cは、ランプ2の点灯前におけるランプ電圧VLを所定値に定電圧化(例えば400V)制御する回路である。そして、端子401は、ランプ電圧VLを検出する端子で図1の端子Cに接続されている。点灯スイッチSWがオンされ、ランプ2が点灯するまで(ランプ2にランプ電流が流れていない状態)は、誤差増幅回路61の出力端子の電圧は、最も高い電圧となり、抵抗209には電流が流れない。すなわち、誤差増幅回路61はランプ2に最大電力を供給する指令信号を出力する。
従って、PWM制御回路9は、第2リミット値設定回路165bにより決まる最大デューティーの状態で作動する。これにより、直流電源回路5が作動し、ランプ電圧VLが上昇し、上記所定値に達すると、制御回路165cにより、ランプ電圧VLを定電圧制御する。詳しく説明すると、ランプ電圧VLを抵抗402、403で分圧した電圧と、基準電圧Vdとをコンパレータ230にて比較し、NPNトランジスタ404をオンオフ制御する。つまり、ランプ電圧VLが所定値以下ではNPNトランジスタ404はオフし、所定値以上ではNPNトランジスタ404はオンする。NPNトランジスタ404がオンとなると、抵抗405で決まる電流がNPNトランジスタ205aに流れる。そして、この電流と同じ電流がNPNトランジスタ205bに流れ、電圧VMが上昇し、入力電圧VNが上昇する。
但し、この際、出力電圧VNは、抵抗405の抵抗値の設定にて、コンパレータ167の非反転入力端子に入力される鋸歯状波のピーク電圧(図11中Va)より高くなる。従って、コンパレータ167の出力信号は、ローレベル信号に固定され、MOSトランジスタ31はオフとなり、ランプ電圧VLの上昇は停止する。
そして、この後、時間の経過とともにランプ2以外の箇所による電力消費により、ランプ電圧VLが、徐々に低下して上記所定値以下となると、NPNトランジスタ404は再度スイッチング動作して、ランプ電圧VLが上昇する。このように、この動作を繰り返して、ランプ電圧VLは定電圧制御される。
〔フェイルセーフ回路14について〕
次に上記フェイルセーフ回路14について説明する。先ず、フェイルセーフ回路14の機能の前提となるランプ2の車両取付構造について図15に基づき説明する。
図15に示すように車両前照灯231は、ランプ2の光を車両前方に向けて反射させるリフレクタ233を有する。リフレクタ233は、碗状に形成されており、内部にランプ2を収納している。ランプ2は、図15中左側からリフレクタ233内に挿入されており、コネクタ235によりリフレクタ233に取り付けられている。
簡単に説明すると、コネクタ235は、脱着可能なコネクタ部235a、235bとからなり、コネクタ部235aは、図15中左側からリフレクタ233内に挿入されており、挿入後に回転させることでリフレクタ233に取付られている。この後、コネクタ部235bが、235aにはめ込まれると、ランプ2が点灯可能となる。
コネクタ235bには、アルミニウム等にて形成されたシールド部237が覆うようにして取り付けられている。シールド部237は、図15に示すようにアースされるとともに、ランプ2の電気配線部239を押しつけるようにしてコネクタ部235bに取り付けられている。ここで、このシールド部237は、ランプ2の点灯にて発生する電波をランプ2(リフレクタ233)の外部に洩れださないようにするためのものである。これにより、電波により自車や他車の電気機器に悪影響を起こさないようにすることができる。また、このような電波発生を防止するために、リフレクタ233の内面にはアルミニウムが蒸着されており、このアルミニウムはアースされている。さらに、同様な理由により、図示しないがリフレクタ233内でランプ2の車両前方側にも、カップ状のシールド部が設けられている。
このような構成からなる車両全照明灯231においては、ランプ2を交換する時などに、ランプ2の電気配線部239がシールド部237に挟みこまれて、ランプ2の電気配線部239がアースされる可能性がある。この結果、上記一次巻線29aおよび二次巻線29bを通じて、例えばHブリッジ回路7aに過電流が流れ、Hブリッジ回路7aにて多大な熱が発生し、最悪ヒューズ50が溶断するといった問題が起こる。
そこで、このように異常状態に対処するため、上記フェイルセーフ制御回路14にて以下の異常制御を行う。以下、フェイルセーフ制御回路14の具体的構成および異常制御の内容を図16にて説明する。なお、以下の異常制御は、上記点灯スイッチSWがオンに設定されているときに行われる。図16に示すようにフェイルセーフ制御回路14は、大別して5つの機能ブロック241a〜241eとからなる。
241aは、コンパレータ243と抵抗245とからなる。コンパレータ243は、反転入力端子には、上記サンプルホールド回路12から上記ランプ電圧VLが入力されており、非反転入力端子には所定電圧Vr1が入力されている。つまり、241aは、ランプ電圧VLが所定電圧Vr1(例えば、20V)より小さい第1状態であるか否かを判定する電圧判定手段を構成してしている。
241bは、コンパレータ247とコンデンサ248と抵抗249とからなる。コンパレータ247は、反転入力端子に上記ランプ電流IL(電圧換算VIL)が入力されており、非反転入力端子に所定電圧Vr2が入力されている。つまり、241bは、上記VILと所定電圧Vr2とを比較することにより、ランプ電流ILが所定電流より小さい第2状態であるか否かを判定する電流判定手段を構成している。
241cは、上記コンパレータ243、247の出力が共にハイレベル信号になると、ハイレベル信号を出力するANDゲートである。つまり、ANDゲート241cの出力信号がハイレベル信号になるということは、上述した異常状態を検出したということである。すなわち、ANDゲート241cは、上記電気配線部239がアースされるといった異常状態を検出する手段で、ランプ電圧VL(電圧信号)が所定電圧値より低く、かつランプ電流(電流信号)が所定電流値より低いときに異常状態と検出する。
ここで、簡単にランプ電圧VLとランプ電流ILとで上記異常判定を行うことができる理由を説明する。上述したようにランプ2が電力制御されているときでは、ランプ電圧VLは例えば20V〜400Vの所定範囲にある。この際、電気配線部239がアースされると、フライバックトランス29の二次側に過電流が流れ、ランプ電圧VLは上記20Vより低くなる。従って、この場合は上記電気配線部239がアース接地されているおそれがある。
また、上述したようにランプ2が電力制御されているときでは、ランプ電流ILは、所定範囲(0.35〜2.6A)にある。そして、上記電気配線部239がアースされると、二次巻線29b側からの過電流は、上記Hブリッジ回路7aを流れずに電気配線部243からアースに落ちる。これにより、ランプ電流ILは、上記所定範囲より小さく、所定電流(例えば、0.2A)以下になる。従って、この場合電気配線部239がアースされているおそれがある。
このように本例では、異常状態をランプ電圧VLとランプ電流ILとのAND条件にて検出している。また、本例では、異常状態と検出するのは、上記第1状態と第2状態とが共に成り立ったときである。このような2つの状態を両方とも満足したときに、異常状態と判定するのは以下の理由がある。
例えば、何らかの異常が生じてランプ2の両端が短絡してしまうと、上記ランプ電圧VLは、上記所定電圧Vr1より小さくなるが、上記ランプ電流ILは上記所定電流より大きくなる。また、何らかの異常が生じてランプ2が開放してしまうと、上記ランプ電流ILは上記所定電流より小さくなるが、上記ランプ電圧VLは、上記所定電圧Vr1より大きくなる。
従って、一方の条件だけでは、電気配線部239がアースされたのか、ランプ2が短絡もしくは開放なのか判定できない。そこで、本例では、電気配線部239のアースを確実に検出するために、上記第1状態と第2状態との両方を満足したときに異常状態と判定する。これにより、確実に電気配線部239がアースされる異常状態を把握でき、精度良く過電流が流れることを防止できる。
時間計数回路241dは、D型フリップフロップ251と、NORゲート253と、ANDゲート255と、JK型フリップフロップ257とからなる。時間計数回路241dは、上記第1状態および第2状態の両方を満足する時間が、所定時間T以上経過したか否かを判定するものである。そして、D型フリップフロップ251およびJK型フリップフロップ257のクロック端子には、同一のクロック信号CLが入力されるようになっている。
リセット回路241eは、D型フリップフロップにて構成されている。D型フリップフロップリセット回路241eのD入力端子には、定電圧源259が入力されている。D型フリップフロップリセット回路241eの出力端子には、上記Hブリッジ制御回路11が接続されている。なお、定電圧源259は、上記点灯スイッチSWがオンのときに、定電圧(例えば5V)を発生するようになっている。
次に上述の回路241a〜リセット回路241eまでの作動を図17のタイムチャートにて説明する。但し、ANDゲート241cの出力信号をα、JK型フリップフロップ257の出力信号をβ、D型フリップフロップ241eの出力信号をγとする。また、上記点灯スイッチSWがオンされると、D型フリップフロップリセット回路241eは、図示しないリセット回路からのリセット信号によりリセットされる。また、本実施形態では、D型フリップフロップリセット回路241eの出力信号γがハイレベル信号のときに、Hブリッジ制御回路11によりHブリッジ回路7aをオフとする。
先ず、点灯スイッチSWがオンとなって、例えば時間t3になると、再度電気配線部239がアースされて出力信号αがローレベル信号からハイレベル信号になり、この状態が以後続いたとする。そして、出力信号αがハイレベル信号である状態が、クロックパルスCLの一周期時間より長く続くと、ANDゲート255cとNORゲート253を介して、JK型フリップフロップ257の出力信号βは、反転されてハイレベル信号になる。すると、D型フリップフロップ241eの出力信号γは、ハイレベル信号となる。これにより、図4に示すように第1異常用回路242の2つ出力端子から共にローレベル信号が、IC素子43a、43bに出力され、上記Hブリッジ回路7aがオフとされる。
これにより、電気配線部239のアースによる過電流が、MOSトランジスタ41a、41cにより遮断されることになる。この結果、Hブリッジ回路7aや、Hブリッジ回路7a以降の電流経路に所定値より大きい過電流が流れることを防止でき、ヒューズ50の溶断を防止できるとともに、放電灯装置100での多大な発熱を防止できる。
これに加え、この出力信号γがハイレベル信号になると、上記PWM制御回路9の制御を停止、つまりMOSトランジスタ31の導通を遮断する。具体的には、このような異常状態となると、図5に示すように第2異常用回路244にてハイレベル信号が出力されることで、NPNトランジスタ246がオンとされる。従って、NPNトランジスタ115、116は、PWM制御回路9の出力信号に係わらず、オフとなる。これにより、MOSトランジスタ31の導通が遮断され、放電灯装置100への全ての電力供給が停止される。このようにした理由を以下に説明する。
例えば、電気配線部239がアースされたときに、電気配線部239とシールド237との間にある接触抵抗があったとする。そして、この接触抵抗によりフライバックトランス29の二次側のエネルギー(電力)が大きく消費されるといった問題が起こったとする。すると、ランプパワー制御回路9は、一次巻線29aに蓄えられるエネルギーを増加させるように、PWM制御回路9のデューティ比が大きくなるように制御する。これにより、フライバックトランス29の一次巻線29aには過大な電流が流れるといった問題がある。
そこで、このような場合を考慮して、PWM制御回路9の制御を停止、つまり、MOSトランジスタ31の導通を遮断するので、一次電流が過大となることを防止できる。また、上記した以外にも異常状態には色々なモードが考えられる、例えば、MOSトランジスタ31の耐圧が劣化した場合には、点灯を開始するに必要なランプ電圧(例えば、400V)を発生することができず点灯できない。この場合、MOSトランジスタ31はPWM制御回路9からデューティー最大の駆動信号が与えられてスイッチング作動を行うが、耐圧劣化しているために一次巻線29aに蓄積したエネルギーのほとんどをMOSトランジスタ31自身が消費することになり、そのまま動作を続けると異常発熱しMOSトランジスタ31は短絡破壊する。その結果、ヒューズ50の溶断等の二次的故障に至る。
このような異常状態では、Hブリッジ回路7aをオフさせても前記結果は変わらない。そのため、このような異常状態の場合はPWM制御回路9の制御を停止し、MOSトランジスタ31をオフ状態にホールドするこにより二次的故障を回避できる。このように、各種異常状態において異常判定した結果によりHブリッジ回路7aをオフする事が有効な場合と、MOSトランジスタ31をオフさせることが有効な場合があり、異常状態に応じてHブリッジ回路7aをオフするのか、或いはMOSトランジスタ31をオフさせるかを使い分けることができる。しかしながら、このように使い分ける場合には回路が複雑になり規模も大きくなるので得策ではない。従って、異常判定した場合には、全てHブリッジ回路7aをオフすると同時に、MOSトランジスタ31をオフさせることにより回路は簡単化でき規模も小さくすることができる。
なお、図17に示すように時間t1において、電気配線部239がアースされて出力信号αがローレベル信号からハイレベル信号になり、この状態が時間t2まで続いたとする。この場合は、時間計数回路241dへの入力信号である信号αのハイレベル期間がクロックパルスCLの一周期時間より短いので時間計数回路241dの出力信号βは変化せず前の状態を維持している。従って、信号γも同様に変化しない。すなわち、Hブリッジ制御回路11は何ら影響を受けない。
つまり、上述したHブリッジ回路7aをオフする条件は、上記第1状態と第2状態とが共に成りたった時間が、所定時間T経過したときとなる。このようにした理由は、以下の通りである。例えば、点灯スイッチSWがオンとなっているときに、上記第1状態および第2状態が始めて成り立った後、短時間にて電気配線部239のアースが復帰し、電気配線部239が正常となったとする。この場合、夜間の乗員の視認性を確保するために、できる限りランプ2は点灯状態を維持する必要がある。
そこで、短時間の異常時には直ぐさまHブリッジ回路7aをオフしないようにし、上記第1状態と第2状態とが所定時間T経過したときに、始めてHブリッジ回路7aをオフする。なお、上記所定時間Tとは、上記ヒューズ50が溶断しない範囲の時間に設定されているので、ヒューズ50の溶断は未然に防止できる。また、上記所定時間Tは以下のように設定されている。本例では、図15に示すような比較的簡単な回路構成にて、上記異常状態を検出した。
しかしながら、上記電気配線部239は、図2に示すようにランプ2の両端にある配線部239a、239bを有し、これら2つの配線部239a、239bが共にアースされることはほどんど無く、例えば図1中一方の電気配線部239aのみがアースされることが多い。従って、例えば上記異常状態が続いているときに、Hブリッジ回路7aにてランプ2の放電電圧の極性が変わると、上記ランプ電圧VLは、所定電圧Vr1より高くなる。
従って、異常状態が発生しているにも係わらず上記第1状態にならないので、上記ANDゲート241cの出力信号は、ハイレベル信号にならず、異常状態を検出することができない。そこで、本例では上記所定時間Tは、上記Hブリッジ回路7aの切換周期時間より短くして、この切換周期時間の半分以下(0.8ms)に設定してある。これにより、簡単な回路構成にて上記異常状態が確実に検出できる。
また、上記異常状態を検出するために、上述したランプパワー制御の制御信号である上記ランプ電圧VLとランプ電流ILとを使用している。これにより、異常を判定するために別個に電圧検出用回路や電流検出用回路を設ける必要が無い。
〔コネクタ外れ検出回路15について〕
次に、コネクタ外れ検出回路15について図18を用いて説明する。
上記ランプ2は、破損故障等の際に2つのコネクタ部235a、235bよりなるコネクタ235にて脱着可能となっている。従って、ランプ2は、コネクタ部235a、235bがはめ込まれると、バッテリ1と電気的に接続されて点灯可能となる。図18に示すようにコネクタ235内には、コネクタ部235aと235bとが外れると、内部の電気的導通が遮断されるように電気配線部261が形成されている。具体的に説明すると、電気配線部261の一端側は、電源端子1aに接続されている。また、電気配線部261の他端側はアースされている。
各コネクタ235a、235bの電気配線部261の接続点261aは、コネクタ235の外れを検出するコネクタ外れ検出端子となっており、コネクタ部235a、235bが外れると、コネクタ外れ検出回路15内に内蔵された外れ検出回路15aのトランジスタ263がオフからオンとなるようにしてある。また、外れ検出回路15aは、信号発生回路13aと始動回路8との間に設けられ、コネクタ235の外れが検出されたときには、信号発生回路13aからの信号を強制的に始動回路8の作動を停止させる信号とするものである。
次に高電圧発生制御回路13について説明する。高電圧発生制御回路13は、上記サイリスタ57のゲート駆動信号を発生させ、上述したようにHブリッジ回路7aのオン・オフタイミングに同期して信号を出力する信号発生回路13aを有する。そして、信号発生回路13aは、例えば上記始動回路8が起動しても、ランプ2が点灯せずに消灯していると、ランプ2が点灯するまでは、上記信号発生回路13aにてサイリスタ57のオンオフを繰り返し、ランプ2に高電圧を印加するようになっている。
上記信号発生回路13aにて、ハイレベル信号が発生されると、トランジスタ265がオンとなる。これにより、トランジスタ267はオフとなり、トランジスタ269、275はオンとなる。また、トランジスタ271、273はオフとなる。この結果、サイリスタ57のゲート駆動信号はローレベル信号となり、サイリスタ57はオフとなる。
一方、上記信号発生回路13aにて、ローレベル信号が発生されると、トランジスタ265がオフとなる。これにより、トランジスタ267はオンとなり、トランジスタ269、275はオフとなる。また、トランジスタ271、273はオンとなる。この結果、サイリスタ57のゲート駆動信号はハイレベル信号となり、サイリスタ57はオンとなる。
このように信号発生回路13aが発生する信号が、ハイレベル信号であると、ゲート駆動信号はローレベル信号となり、サイリスタ57はオフとなる。一方、信号発生回路13aが発生する信号が、ローレベル信号であると、ゲート駆動信号はハイレベル信号となり、サイリスタ57はオンとなる。そして、本例では、上記トランジスタ263のオン信号により、サイリスタ57のゲート駆動信号を強制的にローレベル信号にすることができる。つまり、外れ検出回路15aにてコネクタ235が外れていると検出され、トランジスタ263がオンすると、上記信号発生回路13aにて、サイリスタ57をオンとするローレベル信号が発生されても、トランジスタ267はオフとなる。
従って、トランジスタ269、275はオン、トランジスタ271、273はオフとなって、サイリスタ57はオフとなる。この結果、例えば、コネクタ235が外れてランプ2が消灯したときに、サイリスタ57による高電圧発生が未然に防止される。ところで、上述したコネクタ235が外れたと検出されたときに、例えば電気配線部261の接触不良である場合は、ランプ2の点灯機能は正常にある。そして、このような場合は上記PWM制御回路9の制御を停止して、ランプ2を消灯する必要は無く、逆にランプ2の点灯を維持するのが好ましい。
そこで、コネクタ235の外れ検出と平行して、フェイルセーフ回路14にて、上記点灯スイッチSWがオンに設定されているにも係わらず、ランプ2が消灯する異常状態を検出する。つまり、コネクタ外れ検出回路15によりコネクタ235が外れていると検出されたときに、上記電気配線部261の接触不良で無く、本当にコネクタ235が外されて、ランプ2が消灯してしまったか否を判定する。
上記フェイルセーフ回路14を表す論理回路図を図19に示す。フェイルセーフ回路14は、点灯検出手段をなすコンパレータ277と、ディレー回路(タイマー回路)279と、ORゲート281と、D型フリップフロップ241eからなる。コンパレータ277の非反転入力端子には、所定電圧VRが入力されている。一方、コンパレータ277の反転入力端子には、上記端子Eが接続されている(図1参照)。つまり、コンパレータ277は、ランプ2が点灯してランプ電流が流れていると、ローレベル信号を出力し、ランプ電流が所定値以下となると、ランプ2が消灯しているとしてハイレベル信号を出力する。
ディレー回路279は、上記コンパレータ277の出力信号がハイレベル信号で、このハイレベル信号が所定時間Tm継続するとハイレベル信号を出力する。つまり、ディレー回路279は、ランプ2が消灯した時間が所定時間Tm経過するとハイレベル信号を出力する。ORゲート281では、ディレー回路279の出力信号が、ハイレベル信号となると、ハイレベル信号を出力する。ORゲート281の出力信号がハイレベル信号になると、D型フリップフロップ241eは、このハイレベル信号をクロックパルスとして、ハイレベル信号を出力する。そして、D型フリップフロップ241eの出力信号が、ハイレベル信号となると、バッテリ1からランプ2への電力を供給する電力制御手段をなす上記PWM制御回路9の制御を停止(MOSトランジスタ31をオフ)するとともに、上記第1異常用回路242にて上記Hブリッジ回路7aをオフとする。
このようにすることで、ランプ2が点灯している状態から消灯し、この消灯時間が所定時間Tm経過すると、PWM制御回路9の制御を停止することでランプ2への電力供給が停止されるようになる。また、ランプ2が消灯して所定時間Tm経過するまでは、PWM制御回路9の制御を継続し、ランプ2への電力供給を行う。
なお、図19に示すようにORゲート281には、上述した電気配線部261がアースされる配線異常状態となったときに対応するための入力端子や、他の異常状態に対応するための入力端子が設けられている。つまり、ORゲート281は、図16に示す上記JK型フリップフロップ257と、D型フリップフロップ241eとの間に設けられている。
次に、外れ検出回路15a、高電圧発生制御回路13、およびフェイルセーフ回路14の作動を図20のタイムチャートにて説明する。但し、外れ検出回路15aにて検出される信号をgとし、コネクタ235が外れているときにはハイレベル信号、コネクタが外れていないときにはローレベル信号とし、サイリスタ57のゲート駆動信号をf、点灯スイッチSWの信号をaとして点灯スイッチSWがオンの時にはハイレベル信号、オフのときにはローレベル信号とする。
また、信号発生回路13aの出力信号をdとし、PWM制御回路9の制御信号をcで、PWM制御回路9が制御を行っているときにはハイレベル信号、制御が停止しているときにはローレベル信号とし、コンパレータ277の出力信号をkとし、ランプ2が消灯しているときにはハイレベル信号、ランプ2が点灯しているときにはローレベル信号とする。さらにD型フリップフロップ241eのC入力信号をnとする。
先ず、時間t1にて点灯スイッチSWがオンされると、ランプ電圧VLが徐々に増加して、例えば時間t2となると、サイリスタ57のゲート駆動信号fがハイレベル信号なる。これにより、ランプ2が点灯してランプ電流ILが流れ始める。その後、ランプ2が安定制御状態(35W)となり、時間t3にて信号gがハイレベル信号となり、コネクタ235が外れたと検出されたとする(図20中(1))。
そして、時間t3にてランプ電流ILが所定値より小さく、例えば0となり、ランプ2が消灯する、つまり、電気配線部261の接触不良では無くてコネクタ235が本当に外れた場合には、信号kはハイレベル信号となる。しかし、この際、ディレー回路279によって信号nはローレベル信号のままであり、PWM制御回路9の制御も継続される。
これにより、ランプ2が消灯してしまうと、図20に示すように時間t4では、信号発生回路13aの信号dは、サイリスタ57をオフからオンとして、ランプ2を再度点灯させるようにハイレベル信号からローレベル信号に切り換わる。しかしながら、本例では、ランプ2の点灯に係わらずコネクタ外れを検出すると、信号gがハイレベル信号になることで、信号fはローレベル信号となる。従って、コネクタ235の外れが検出されたときに、始動回路8によるコンデンサン53の放電が停止され、コネクタ235での高電圧の発生が防止できる。
そして、時間t5にて、ランプ2が消灯した継続時間が、所定時間Tm経過したならば、信号nがハイレベル信号となって、PWM制御回路9の制御を停止するとともに、Hブリッジ回路7aをオフとする。つまり、コネクタ235が外れてランプ2が消灯する場合には、サイリスタ57をオフとして、所定時間Tm経過後、PWM制御回路9の制御を停止して、ランプ2への電力供給を停止する。
これにより、上記ランプ2の電気配線部261が、短時間接触不良を起こしたときには、ランプ2への電力供給を維持してランプ2の点灯が維持できるとともに、ランプ2が所定時間Tm継続して消灯しているときには、速やかにランプ2への電力供給を停止できる。次に、上記(1)の状態、つまリコネクタ235が実際に外れている状態から、一旦時間t6で点灯スイッチSWをオフとして、時間t7にて再度オンしたとする(図20中(2))。
すると、ランプ電圧VLが徐々に増加して、時間t8になると、信号発生回路13aの信号dは、サイリスタ57をオフからオンとして、ランプ2を点灯させるようにハイレベル信号からローレベル信号に切り換わる。しかし、上述したようにランプ2の点灯に係わらずコネクタ外れを検出すると、信号gがハイレベル信号になることで、信号fはローレベル信号となる。従って、コネクタ235が外れたときに、始動回路8によってコネクタ235での高電圧発生を防止できる。
その後、時間t9にて、コネクタ235が外れたと検出された継続時間が所定時間Tm経過すると、信号nがハイレベル信号となって、PWM制御回路9の制御を停止するとともに、Hブリッジ回路7aをオフとする。次に、上記(2)の状態、つまリコネクタ235が実際に外れているた状態から、一旦時間t10で点灯スイッチSWをオフとして、コネクタ235をはめ直し、時間t11にて再度オンしたとする(図20中(3))。
すると、時間t12では、上述のように信号gがローレベル信号になることで、信号fはハイレベル信号となり、始動回路8にてランプ2が点灯される。その後、例えば、時間t13にて電気配線部261が接触不良になったとする。この場合は、ランプ2は点灯しており、ランプ電流が所定値より大きくなっているので、信号kはローレベル信号である。
従って、電気配線部261が接触不良を起こしたときに、ランプ2が点灯していると、ランプ2への電力供給が維持される。この結果、電気配線部261の接触不良を起こしても、ランプ2の点灯機能に異常が無い場合には、ランプ2の点灯を維持できる。
〔逆接保護回路3について〕
次に、逆接保護回路3について図21を用いて説明する。なお、図21は図1に電気負荷として車両用電気機器であるオルタネータ71を加えたものである。
逆接保護回路3は、バッテリ1と、ランプ2との間に設けられている。MOSトランジスタ21のゲート(G)は、抵抗17を介してバッテリの正極側(電源端子1a)に接地されている。MOSトランジスタ21のソース(S)およびドレイン(D)は、アース端子1b側に接続され、放電灯装置100を流れた電流がソースからドレインに向かって流れるようになっている。
上記点灯スイッチSWをオンすると、バッテリ1からゲート(G)にゲート電圧を与えられ、MOSトランジスタ21は導通状態となり、バッテリ1の電力が放電灯装置100に供給される。これにより、放電灯装置100が作動する。MOSトランジスタ21のゲート−ソース間には、導通手段であるコンデンサ19が並列に接続されている。上記抵抗17は、電源端子1aとMOSトランジスタ21のゲートとの間で、MOS型トランジスタ21とコンデンサ19との並列接続と直列に接続されている。
そして、上記点灯スイッチSWがオンされると、抵抗17を介してコンデンサ19が充電される。コンデンサ19の充電電流経路は、バッテリ1の正極側から抵抗17、コンデンサ19、MOSトランジスタ21のソース−ドレイン間の寄生ダイオードを介して、バッテリ1の負極側に流れる。そして、コンデンサ19の充電電圧が所定値に達すると、MOSトランジスタ21はオンとなる。また、MOSトランジスタ21がオンするまでは、放電灯装置100を流れる電流は、MOSトランジスタ21のソース−ドレイン間の寄生ダイオードを通じて流れる。
上記MOSトランジスタ21は、以下のようなときに放電灯装置100に逆電圧が印加されないように保護する保護機能を有する。例えば、バッテリ1の交換時に、誤ってバッテリ1の極性が逆に取り付けられて、この状態で乗員の操作により上記点灯スイッチSWがオンされたとする。この場合は、放電灯装置100に印加される逆電圧は、バッテり電圧VB(第1逆電圧)である。
そして、このように放電灯装置100にバッテリ1の極性が逆に取り付けられたときには、MOSトランジスタ21のドレインーソース間の耐圧にて放電灯装置100への逆電圧印加を遮断し、放電灯装置100を保護する。これにより、従来のようにツェナーダイオードを通じてヒューズ50に過電流が流れるといったことが無く、ヒューズ50の溶断を未然に防止できる。
上記オルタネータ71は、バッテリ1に対して上記放電灯装置100と並列に接続されている。オルタネータ71は、図示しない界磁コイル等のリアクタンス成分を有する誘導性負荷(車両用電気機器)であり、車両の走行駆動源を起動する手段であるイグニッションスイッチIGがオンされると、発電を開始する。そして、上記イグニッションスイッチIGがオンで点灯スイッチSWがオンの状態から、イグニッションスイッチIGがオフされると、オルタネータ71に流れていた電流が遮断されることで、電源端子1aに負極性の大きなパルス電圧が発生する。このため、放電灯装置100には、上記バッテリ1の逆接時より大きな逆電圧が印加されることになる。
しかし、この際、コンデンサ19に充電された電荷は、コンデンサ19と抵抗17とで決まる時定数にて放電される。これにより、MOSトランジスタ21のゲートには所定時間、ゲート電圧が印加されるので、MOSトランジスタ21は所定時間導通状態が維持される。なお、電源端子1aとアース端子1bとの間に、大きなパルス電圧が一瞬発生したときには、オンしているMOSトランジスタ21を介してMOSトランジスタ31のソース−ドレイン間の寄生ダイオード、フライバックトランス29の一次巻線29a、コイル27といった電流経路でパルス電流を流すことにより、負極性パルスのエネルギーを消費する。
このように、電源端子1aとアース端子1bとの間に、大きな逆電圧が発生したときには、コンデンサ19によりMOSトランジスタ21が強制的に導通状態に維持されるので、MOSトランジスタ21の上記耐圧を全く考慮せずに済む。つまり、この耐圧は、上記バッテリ1の逆接時に、放電灯装置100に逆電圧が印加されない程度(例えば12V強)であれば良い。
従って、MOSトランジスタ21の上記耐圧を非常に小さくすることができ、これにより、MOSトランジスタ21の駆動抵抗を小さくでき、MOSトランジスタ21での電力損失が小さくできる。ひいては、MOSトランジスタ21のチップサイズを小さくすることができ、安価なMOSトランジスタ21を使用できる。
また、上述したようにコンデンサ19にて、MOSトランジスタ21は強制的に導通状態となるが、コンデンサ19と抵抗17が時定数回路を構成しているので、抵抗17によってコンデンサ19の放電時間が延長される。この結果、MOSトランジスタ21の導通時間を長くできるので、確実にMOSトランジスタ21の破壊破損を防止できる。なお、本発明者の検討によると、上記時定数回路の時定数は、0.01秒以上とすると、上記パルス電圧が発生している間、確実にMOSトランジスタ21をオン状態にすることができ、確実に放電灯装置100を保護できる。
〔過電圧保護回路16について〕
図22に、図2に示す過電圧保護回路16の回路構成図を示す。以下、図22に基づき過電圧保護回路16について説明する。過電圧保護回路16は、集積回路73に備えられた各制御回路9〜15を過電圧から保護するものである。この過電圧保護回路16は、1次側電圧が所定のしきい値電圧になると過電圧検出を行う過電圧検出回路77と、1次側電圧がしきい値電圧になったときに1次側電圧を分圧する分圧回路79とを備えている。そして、この過電圧保護回路16を介して印加された1次側電圧がこの定電圧回路75で定電圧化され、各制御回路9〜15の駆動電圧に使用される。
過電圧検出回路77は、比較的抵抗値が大きな抵抗81とツェナーダイオード83及び抵抗85で構成されている。このツェナーダイオード83のツェナーダイ電圧によって上記しきい値電圧が設定されている。また、抵抗81は電流I制限用としてツェナーダイオード83に直列に設けられており、これによってツェナーダイオード83の耐圧を低くする事ができる。なお、抵抗85はリーク防止のための逆バイアス抵抗である。
また、分圧回路79は、抵抗87、89及びダーリントン接続されたNPNトランジスタ91、93で構成されている。次に、このように構成された過電圧保護回路16の作動について説明する。1次側電圧が所定のしきい値電圧未満の時には、ツェナーダイオード83は電流を流さないため、ダーリントン接続されたNPNトランジスタ91、93がオンしない。このため、集積回路73内の定電圧回路75に印加される電圧VICは、1次側電圧から抵抗87での電圧降下を差し引いた電圧となる。
そして、1次側電圧が所定電圧以上に上昇すると、ツェナーダイオード83がツェナー降伏によって電流を流し、NPNトランジスタ91、93がオンする。このため、集積回路73内の定電圧回路75に印加される電圧VICは、1次側電圧が抵抗87及び抵抗89で分圧された電圧となる。なお、このとき分圧された電圧が各制御回路9〜15の耐圧以下になるように、抵抗87及び抵抗89の抵抗値を設定する必要がある。
なお、集積回路73の中に定電圧回路75や各制御回路9〜15等を形成したものを示したが、ツェナーダイオード83、抵抗85及びNPNトランジスタ91、93等の過電圧保護回路16の構成要素も集積回路73の中に形成しても良い。この場合には、これらの各構成要素を集積回路の他の部分と共に形成すれば良いため、よりコスト削減を図ることができる。
このように、分圧回路79にて過電圧を分圧しているため、集積回路73に過電圧が印加されないようにすることができる。これにより、比較的高耐圧のパワーツェナーダイオードを用いなくても、集積回路73の中の各制御回路9〜15を過電圧から保護することができ、コスト削減を図ることができる。また、過電圧検出回路77における抵抗81には、過電圧が発生したとき以外には電流がほとんど流れないようになっているため、過電圧が発生していないときにおける抵抗81の電力消費を防止することができる。
〔放電灯装置の検査について〕
次に、放電灯装置100を車両に取り付ける前の検査について、図23に示すコネクタ15内の回路構成等と、図24に示すクロック回路285の回路構成図に基づいて説明する。検査時においてクロック回路285が発生する信号の周波数を擬似的に短くする為に、図23及び図24に示すように、クロック切替え検出回路286、287が放電灯装置には備えられている。このクロック切替え検出回路286、287について説明する。
クロック切替え検出回路286、287は、検査時であることを検出してクロック切替え検出信号を出力する検査時検出回路286と、クロック切替え検出信号に基づきクロック回路285が数える時間を擬似的に速くするための時間短縮回路287とを備えている。検査時検出回路286には、上記コネクタ外れ検出端子261aに印加されているバッテリ電圧VBが同様に印加される。上述したように、コネクタ外れ検出はバッテリ電圧VBによって行われるため、コネクタ外れ検出端子261aにはバッテリ電圧VB以上の電圧が印加されることがない。これを利用して、コネクタ外れ検出端子261aにバッテリ電圧VB+α未満の電圧しか印加されていない時には、検出時ではないとして検査時検出回路286はハイレベル信号を出力し、コネクタ外れ検出端子261aにバッテリ電圧VB+α以上の電圧が印加されると検査時検出回路286はクロック切替え検出信号となるローレベル信号を出力するようになっている。これにより、コネクタ外れ検出端子261aを検査用及びコネクタ外れ検出用の端子として共用している。
時間短縮回路287は図24に示すようにクロック回路285に内蔵されている。クロック回路285は、連続的に並べられた複数のD型フリップフロップ289a〜289jを備えており、これらのD型フリップフロップ289a〜289jによって時間が数えられている。すなわち、図示しない変換器が出力するクロック信号CLがD型フリップフロップ289aに入力されると、D型フリップフロップ289aはこのクロック信号の2倍の周期となる信号を出力し、次のD型フリップフロップ289bでさらに2倍の周期の信号となって出力される。各D型フリップフロップ289a〜289jでこの動作を繰り返して、クロック信号の周期が倍々される。そして、各制御回路は、各D型フリップフロップ401a〜401jが出力する信号のうちから適合するものを選択し、各制御を行う際の時間に用いている。例えば、ランプパワー制御回路10においては、D型フリップフロップ289iの出力信号の周波数に基づいて制御時間を設定している。
このように並べられた複数のD型フリップフロップの間に時間短縮回路287が配置されている。以下、クロック回路285及びクロック切替え検出回路286、287における作動を実際にランプ2を使用する時と検査時に分けて説明する。
(1)実際にランプ2を使用する時
この時には、コネクタ35にランプ2が接続されているため、クロック切替え検出回路286、287はアース状態となる。この場合には、コネクタ外れ検出接続端子261aにバッテリ電圧VB+α以上の電圧が印加されないため、検査時検出回路286はハイレベル信号を出力する。
この時には、D型フリップフロップ289gのクロックCには、D型フリップフロップ289fの出力信号が入力される。すなわち、時間短縮回路287における処理によって、変換器が出力しているクロック信号が無視され、D型フリップフロップ289fの出力信号がD型フリップフロップ289gのクロック信号としてクロックCに入力される。従って、検査時以外には、D型フリップフロップ289a〜289fを介して変換器からのクロック信号CLの周期が倍々され、倍々された周期の信号がD型フリップフロップ289gのクロック信号となる。このため、ランプパワー制御回路10は通常の時間でランプパワー制御を行う。
なお、ランプ2がコネクタ35から外れた場合においてもクロック切替え検出回路286、287にはバッテリ電圧VBが印加されるだけであるから、検査時検出回路286はハイレベル信号を出力し、クロック回路285及びクロック切替え検出回路286、287は上記と同様の作動を行う。
(2)検査をする時
この時には、コネクタ外れ検出端子261aを検査用及びコネクタ外れ検出用の端子として共用する。そして、所定電源を用いて、バッテリ接続部分にバッテリ電圧と同様の電圧を印加する。これにより、コネクタ外れ検出端子261aにはバッテリ電圧VBが印加される。この段階では、検査時検出回路286はハイレベル信号を出力している。
そして、コネクタ外れ検出端子261aにバッテリ電圧VB+α以上の電圧を印加する。これにより、検査時検出回路286はクロック切替え検出信号としてローレベル信号を出力する。この時には、D型フリップフロップ289gのクロックCには、変換器からのクロック信号が直接入力される。すなわち、時間短縮回路287における処理によって、D型フリップフロップ289fが出力している信号が無視され、変換器からのクロック信号がD型フリップフロップ289gのクロックとして入力される。従って、検査時には、D型フリップフロップ289a〜289fを介さずに変換器からのクロック信号がそのままD型フリップフロップ289gのクロック信号となる。このため、D型フリップフロップ289gは変換器からのクロック信号を倍の周期の信号にして出力する。
従って、時間短縮回路287以降のD型フリップフロップ289g〜289jにおける出力信号の周期、すなわち各制御回路9〜15が基準にする時間が擬似的に短縮され、各制御回路9〜15は短縮された時間に基づいてランプパワー制御を行う。このため、ランプパワー制御時間が短縮化される。このように、コネクタ外れ検出端子261aに、コネクタ外れ検出に用いる電圧以上の電圧VBが印加された場合に、検査時検出回路286が検査時であると検出するようにし、この場合には時間短縮回路287によって短縮された時間に基づいて各制御回路9〜15が各制御を行うようにしている。
これにより、各制御回路9〜15が行う制御時間を短縮することができ、検査時間を短縮することができる。また、クロック切替え信号を時間短縮回路287に入力するための端子をコネクタ外れ検出端子261aで行っているため、クロック切替え信号を入力するためのみに端子を形成する必要がない。なお、コネクタ外れ検出端子261aはランプ2が接続されているときにはランプで覆われるため、錆防止のための特別な処理も必要ない。
(他の実施形態)
なお、第1実施形態においては、クランプ回路69によって電位V1が所定電圧Vref−α以下にならないようにして、これによりMOSトランジスタ41a〜41dの切換え時におけるランプ電流ILの変化が電力制御に与える影響を抑制しているが、クランプ回路69に代えて、ランプ電流ILが急激に低下する瞬間だけランプ電流ILをマスクして、この時にはランプ電流ILをサンプリングしないようにするサンプルホールド回路12をランプパワー制御回路10に備えることによっても同様の効果を得ることができる。
この場合、Hブリッジ回路7aにおけるMOSトランジスタ41a〜41dのオン・オフ切換えに同期させて、この切換えタイミングから所定時間経過後にランプ電流ILのサンプリングを行うよにすれば良い。
1…バッテリ、2…ランプ、5…直流電源回路、7…インバータ回路、7a…Hブリッジ回路、9…PWM制御回路、10…ランプパワー制御回路、29…トランス、41a〜41d…MOSトランジスタ、61…誤差増幅回路、69…クランプ回路、VL…ランプ電圧、IL…ランプ電流。