JP2007255515A - 焼結含油軸受及びモータ - Google Patents
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Abstract
【課題】 ハウジング内周への圧入に伴う焼結含油軸受の不当な変形に起因してラジアル軸受面の真円度に狂いが生じ、軸を正規の状態で支持できなくなるという不具合を回避する。
【解決手段】 焼結金属1に潤滑油を含浸させてなると共に、内周面1aが軸6を回転自在に支持するラジアル軸受面とされ、且つ、ハウジング5の内周に圧入固定される焼結含油軸受2おいて、焼結金属1の外周を、ハウジング5内周への圧入に伴う径方向の変形量が焼結金属1よりも大きな圧入用覆設部材3で覆う。この圧入用覆設部材3としては、ヤング率が9806.65MPa以下の樹脂を焼結金属1の外周にインサート成形したものが使用される。
【選択図】図3
【解決手段】 焼結金属1に潤滑油を含浸させてなると共に、内周面1aが軸6を回転自在に支持するラジアル軸受面とされ、且つ、ハウジング5の内周に圧入固定される焼結含油軸受2おいて、焼結金属1の外周を、ハウジング5内周への圧入に伴う径方向の変形量が焼結金属1よりも大きな圧入用覆設部材3で覆う。この圧入用覆設部材3としては、ヤング率が9806.65MPa以下の樹脂を焼結金属1の外周にインサート成形したものが使用される。
【選択図】図3
Description
本発明は、焼結含油軸受及びモータに係り、詳しくは、ハウジングの内周に圧入固定される焼結含油軸受の圧入部の改良、並びにその焼結含油軸受を用いてなるモータに関する。
周知のように、銅や鉄等の多孔質体からなる焼結金属に潤滑油を含浸させてなる焼結含油軸受は、これに相対回転可能に支持された軸との間の軸受隙間に油膜が形成されることにより良好なすべり特性が得られる等の理由から、種々の装置の回転支持部に広範に亘って使用されるに至っている。
その使用の一例として、ハウジングの内周に焼結含油軸受を固定し、その焼結含油軸受の内周面(ラジアル軸受面)に軸を回転自在に支持することが行われる(例えば、下記の特許文献1参照)。その場合、焼結含油軸受は、ハウジングの内周に圧入によって固定されるのが一般的である。
この種の焼結含油軸受としては、鉄系、銅鉄系、銅系のものが広く採用されているが、これらの軸受がハウジングの内周に圧入固定された場合に、ハウジングが圧入に起因して変形を来たしたのでは、製品としての品位低下を招くばかりでなく、ハウジングを他部材に設置する際などに支障が生じる。
このような事情を勘案すれば、ハウジングの剛性は、上記何れの焼結含油軸受の剛性よりも高くすることが好ましい。然るに、ハウジングの製造は、その低コスト化や量産化を企図して、高精度仕上げが追及されていないのが現状である。そのため、焼結含油軸受の外周面及び内周面における真円度の狂い(径方向誤差)が1μm程度である場合に、それに対応する大きさのハウジングを例えば深絞り加工により形成した場合におけるその内周面の真円度の狂いは、数十μm程度となっているのが実情である。
ところで、上記のようにハウジングの剛性が高く且つその寸法精度(加工精度)が良くなければ、ハウジングの内周に圧入される焼結含油軸受が、その圧入に伴って径方向に不当な変形を来たすことになる。特に、ハウジングの内周の真円度に狂いが生じていれば、その内周に圧入される焼結含油軸受の内径精度にも狂いが生じ、焼結含油軸受のラジアル軸受面の真円度にも狂いが生じるという事態を招く。
すなわち、焼結含油軸受を如何に高精度に製作してラジアル軸受面で良好に軸を支持できるように加工しておいても、ハウジングの内周への圧入に起因して、高精度に加工されたラジアル軸受面の真円度に狂いが生じることになる。したがって、焼結含油軸受の高精度製作が無駄になるのはもとより、この焼結含油軸受のラジアル軸受面で軸を正確に回転自在に支持することが困難となる。
そのため、軸の不当な回転振れ或いは回転不良や、軸またはラジアル軸受面の偏磨耗等を招来し、この種の軸及び焼結含油軸受を有する装置(例えばモータ)の機能阻害を惹き起こす要因になると共に、耐久性の低下を招く要因となる。
本発明は、上記事情に鑑み、ハウジング内周への圧入に伴う焼結含油軸受の不当な変形に起因してラジアル軸受面の真円度に狂いが生じ、軸を正規の状態で支持できなくなるという不具合を回避することを技術的課題とする。
上記技術的課題を解決するためになされた本発明は、焼結金属に潤滑油を含浸させてなると共に、内周面が軸を回転自在に支持するラジアル軸受面とされ、且つ、ハウジングの内周に圧入固定される焼結含油軸受において、上記焼結金属の外周を、ハウジングの内周への圧入に伴う径方向の変形量が該焼結金属よりも大きな圧入用覆設部材で覆ったことに特徴づけられる。
このような構成によれば、ハウジングの剛性が高く且つその内周の真円度に狂いが生じていても、そのようなハウジングの内周に焼結含油軸受を圧入する際には、その焼結含油軸受の外周を覆っている圧入用覆設部材が主としてハウジングの真円度の狂いに対応して径方向に変形する。したがって、焼結含油軸受は、圧入用覆設部材の存在により、ハウジングの内周における真円度の狂いの影響を受け難くなり、焼結含油軸受のラジアル軸受面は、圧入固定後においても、当初の高精度な真円度(内径精度)に維持され得ることになる。この結果、軸の不当な回転振れ或いは回転不良や、軸またはラジアル軸受面の偏磨耗等が可及的に抑制され、これらを構成要素とする装置の高品質化並びに耐久性の向上が図られる。
この場合、上記圧入用覆設部材は、ヤング率が9806.65MPa以下(1000kgf/mm2以下)の樹脂を上記焼結金属の外周にインサート成形したものとすることができる。
このようにすれば、例えばハウジングのヤング率が20593.965MPa(21000kgf/mm2)程度であるとした場合に、焼結含油軸受が、鉄系のもので98066.5MPa(10000kgf/mm2)、銅鉄系のもので58839.9MPa(6000kgf/mm2)、銅系のもので49033.25MPa(5000kgf/mm2)程度のヤング率であることを考慮すれば、圧入用覆設部材がハウジングの内周の径方向誤差を吸収するように好適に径方向に変形して、焼結含油軸受のラジアル軸受面に悪影響を及ぼすことが効果的に回避される。この場合、樹脂としては、ヤング率が980.665MPa(100kgf/mm2)〜3922.66MPa(400kgf/mm2)のポリアミド樹脂やポリアセタール樹脂等を使用することが好適である。
また、上記圧入用覆設部材の外周面に、ローレット加工を施すようにしてもよい。
このようにすれば、圧入用覆設部材の外周のローレット形状により、ハウジングの内周への圧入時に、圧入用覆設部材が径方向に容易に変形できることになり、焼結含油軸受の真円度を高精度に維持できるのみならず、圧入作業の容易化をも図ることが可能となる。
更に、上記ハウジングは、深絞り加工により形成されたモータ用ハウジングとすることができる。
このようにすれば、低コストで量産性に優れたモータ用ハウジングの製作が可能であると共に、そのような深絞り加工に起因してハウジングの内周における真円度が犠牲になった場合であっても、既に述べた圧入用覆設部材により、焼結含油軸受の真円度は高精度に維持される。
また、上記技術的課題を解決するためになされた本発明に係るモータは、以上の構成を備えた焼結含油軸受が、ハウジングの内周に圧入固定されると共に、該ハウジングの内周側空間に、焼結含油軸受の内周面に回転可能に支持されるモータ出力軸と、その出力軸を回転駆動させる駆動要素とが収容されていることに特徴づけられる。
このような構成によれば、焼結含油軸受が圧入固定される単一のハウジングの内周側空間に、その軸受に支持されるモータ出力軸と、その出力軸を回転駆動させる駆動要素とが収容されているので、モータの小型化及び軽量化が図られるのみならず、その組立て作業も簡素化される。
以上のように本発明によれば、相対的に剛性が高いハウジングの内周に真円度の狂いが生じていても、そのハウジングの内周に焼結含油軸受を圧入する際には、その焼結含油軸受の外周を覆っている圧入用覆設部材が主としてハウジングの真円度の狂いに対応して径方向に変形する。したがって、焼結含油軸受は、圧入用覆設部材の存在により、ハウジングの内周における真円度の狂いの影響を受け難くなり、焼結含油軸受のラジアル軸受面は、圧入固定後においても、当初の高精度な真円度に維持され得ることになり、これらを構成要素とする装置の高品質化並びに耐久性の向上が図られる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る焼結含油軸受の縦断側面図、図2は、図1のA‐A線断面図、図3は、その焼結含油軸受を用いて構成したモータの縦断側面図である。
図1及び図2に示すように、鉄系または銅鉄系もしくは銅系の焼結金属1に潤滑油を含浸させてなる円筒状の焼結含油軸受2は、焼結金属1の内周面が、ラジアル軸受面1aとされると共に、焼結金属1の外周が、圧入用覆設部材3で覆われている。この圧入用覆設部材3は、ヤング率が9806.65MPa以下(1000kgf/mm2以下)の樹脂、例えばヤング率が980.665MPa(100kgf/mm2)〜3922.66MPa(400kgf/mm2)のポリアミド樹脂やポリアセタール樹脂等を、焼結金属1の外周にインサート成形したものである。
これに対して、焼結含油軸受2は、鉄系のもので98066.5MPa(10000kgf/mm2)、銅鉄系のもので58839.9MPa(6000kgf/mm2)、銅系のもので49033.25MPa(5000kgf/mm2)程度のヤング率である。したがって、この圧入用覆設部材3は、圧入に伴う変形量(特に径方向の変形量)が、焼結金属1よりも大きくなっている。
また、この圧入用覆設部材3の外周には、ローレット加工が施されて、複数の凸条3aが周方向等間隔で一体的に形成されている。これらの複数の凸条3aは、軸方向に沿って平行に形成されていることが好ましいが、軸方向に対して傾斜し且つ相互に交差する形態をなすものであってもよい。これらの形状によっても、圧入用覆設部材3の圧入に伴う変形量(特に径方向の変形量)が、焼結金属1よりも大きくなり、上記の材質面の相違と相俟って、圧入に伴う変形量の両者1、3の差は好適に大きくなる。尚、ローレット加工によらずに、圧入用覆設部材3の外周に、複数の凹凸を形成することによっても、同等の利点を享受することが可能である。
図3は、モータ(例えば自動車のワイパ駆動用モータ)4の反出力側部の概略構成を示す縦断側面図であって、このモータ4は、上記の焼結含油軸受2を、モータ用ハウジング5に圧入固定して作製されたものである。このモータ用ハウジング5は、ステンレス鋼等の鋼を深絞り加工することにより形成され、そのヤング率が205939.65MPa(21000kgf/mm2)であって、上記の焼結金属1のヤング率よりもかなり大きい。
このモータ4の構造を詳述すると、モータ用ハウジング5の大径円筒部5aの先端には、これと同軸上に小径円筒部5bが突設され、この小径円筒部5bの内周に上述の焼結含油軸受2が圧入固定されている。そして、この焼結含油軸受2の内周面(ラジアル軸受面)1aにモータ出力軸6の先端が回転自在に支持されている。また、このモータ用ハウジング5の大径円筒部5aの内周面には、ステータ7が固定されると共に、その内周側にはモータ出力軸6と一体回転するロータ8が配設されている。
以上のように構成されたモータ4は、例えば以下のような手法及び手順で作製される。先ず第1に、銅粉に対して錫(Sn)粉を8〜11%添加すると共に、固体潤滑剤である黒鉛を1〜3%添加し、この原料粉末を圧粉成形する。第2に、この成形により得られた圧粉体を、700〜800℃で焼結することにより焼結体(焼結金属)を得る。第3に、この得られた焼結体に対して所定の寸法になるようにサイジングを行う。第4に、このサイジングされた焼結体の外周に樹脂をインサート成形する。第5に、この樹脂がインサート成形された軸受に潤滑油を含浸させて焼結含油軸受2を得る。第6に、この焼結含油軸受2をモータ用ハウジング5に10〜50μm(直径)の締め代で圧入固定する。そして、適宜、モータ用ハウジング5の内周側空間に、ステータ7やロータ8を組み込むことにより、図3に示すモータ4が得られる。
以上のような構成であると、モータ用ハウジング5が深絞り加工で製作されるが故に焼結含油軸受2と嵌合する小径円筒部5bの真円度が良くなくても、焼結含油軸受2の外周を覆っている圧入用覆設部材3は、小径円筒部5bの内周への圧入に伴う径方向の変形量が焼結金属1よりも大きいことから、圧入用覆設部材3が主としてモータ用ハウジング5の真円度の狂いに対応して径方向に変形する。したがって、焼結含油軸受2の内周面1aの真円度が高精度に仕上げられていれば、圧入固定後においても、圧入用覆設部材3の存在により、モータ用ハウジング5の内周における真円度の狂いの影響を受けることなく、焼結含油軸受2の内周面1aが、当初の高精度な真円度(内径精度)に維持され得ることになる。この結果、モータ出力軸6の不当な回転振れ或いは回転不良や、モータ出力軸6またはラジアル軸受面1aの偏磨耗等が可及的に抑制され、これらを構成要素とするモータ4の高品質化並びに耐久性の向上が図られる。
1 焼結金属
1a 内周面(ラジアル軸受面)
2 焼結含油軸受
3 圧入用覆設部材
3a ローレット加工
4 モータ
5 ハウジング(モータ用ハウジング)
6 モータ出力軸
1a 内周面(ラジアル軸受面)
2 焼結含油軸受
3 圧入用覆設部材
3a ローレット加工
4 モータ
5 ハウジング(モータ用ハウジング)
6 モータ出力軸
Claims (5)
- 焼結金属に潤滑油を含浸させてなると共に、内周面が軸を回転自在に支持するラジアル軸受面とされ、且つ、ハウジングの内周に圧入固定される焼結含油軸受において、
上記焼結金属の外周を、ハウジングの内周への圧入に伴う径方向の変形量が該焼結金属よりも大きな圧入用覆設部材で覆ったことを特徴とする焼結含油軸受。 - 上記圧入用覆設部材は、ヤング率が9806.65MPa以下の樹脂を上記焼結金属の外周にインサート成形したものである請求項1に記載の焼結含油軸受。
- 上記圧入用覆設部材の外周面に、ローレット加工が施されている請求項1または2に記載の焼結含油軸受。
- 上記ハウジングが、深絞り加工により形成されたモータ用ハウジングである請求項1〜3の何れかに記載の焼結含油軸受。
- 請求項1〜4の何れかに記載の焼結含油軸受が、ハウジングの内周に圧入固定されると共に、該ハウジングの内周側空間に、上記焼結含油軸受の内周面に回転可能に支持されるモータ出力軸と、その出力軸を回転駆動させる駆動要素とが収容されていることを特徴とするモータ。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006078997A JP2007255515A (ja) | 2006-03-22 | 2006-03-22 | 焼結含油軸受及びモータ |
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Publications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018135820A (ja) * | 2017-02-22 | 2018-08-30 | ダイキン工業株式会社 | スクロール圧縮機 |
JPWO2021171556A1 (ja) * | 2020-02-28 | 2021-09-02 |
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2006
- 2006-03-22 JP JP2006078997A patent/JP2007255515A/ja not_active Withdrawn
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JPWO2021171556A1 (ja) * | 2020-02-28 | 2021-09-02 | ||
WO2021171556A1 (ja) * | 2020-02-28 | 2021-09-02 | 三菱電機株式会社 | 電動機、送風機及び空気調和装置 |
JP7234456B2 (ja) | 2020-02-28 | 2023-03-07 | 三菱電機株式会社 | 電動機、送風機及び空気調和装置 |
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Legal Events
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