JP2007253576A - 金属複合ホースとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温でも樹脂層が所要の柔軟性を有して割れを生じることが無く、樹脂層による水分に対する優れた耐透過性と金属層による高いガスバリア性とを有する金属複合ホース及びその製造方法を提供する。
【解決手段】PP樹脂にSIBSを分散状態に添加混合した材料を構成材料とする管状の樹脂層12と、その外周面に湿式メッキにて管状に積層形成された金属めっき層14との積層構造で金属複合ホース10を構成する。そしてその製造に際し、樹脂層12を形成した後に、メッキ前処理として有機溶剤にて樹脂層12の外周表面のSIBSを選択溶解させて樹脂層12の外周表面に凹凸形成する粗面化処理を行い、しかる後樹脂層12をめっき浴に浸漬して樹脂層12の外周面に金属めっき層14を積層形成する。
【選択図】 図1

Description

この発明はガスバリア層としての金属めっき層を有する流体輸送用の金属複合ホース及びその製造方法に関する。
従来、自動車の燃料輸送用等として振動吸収性,組付性等の優れたゴムホース、例えばNBR・PVC(アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド)等の一般的なゴムホース等が用いられてきたが、近年燃料等の輸送流体の透過に対する規制が厳しくなって来ており、流体輸送ホースに対する高いガスバリア性が求められている。
こうした事情の下で、流体輸送ホースの内面層にゴムよりも高いガスバリア性を有する樹脂層を形成したホースも開発されている。
しかしながら流体輸送ホースに対する流体不透過性、即ちガスバリア性に対する規制は今後もよりいっそう強化されることが予想される。また今後は燃料電池車で使用される水素ガスや、車両用エアコンで使用される炭酸ガス冷媒等の、透過性の高い流体輸送への対応も求められ、従来に増して高度のガスバリア性が求められている。
このような要求に対してゴムや樹脂といった有機材料のみで構成されたホースでは要求性能を満足することは困難である。
その対策として、極めて高度のガスバリア性を期待できる金属層をホースに設けることが検討されている。
ところでホースにこのような金属層を設ける場合の問題点として、金属層の場合、有機材料と比較してそれ自身変形に対する追従性が無いといった問題がある。
そこでホースの一部を蛇腹形状化したり、曲り形状とするといったことが考えられるが、この場合ホースに対して金属層を蛇腹形状部や曲り形状部にも均一に形成することが必要である。
このような問題点を解決することを目的としたものとして、下記特許文献1に、かかる金属層を湿式めっきにて形成する技術が開示されている。
この湿式めっきによる金属めっき層形成の場合、蛇腹形状部や曲り形状部にも均一な厚みで金属層を形成することができる。またホースに蛇腹形状部や曲り形状部等を設けることによって、ホース全体としての可撓性を確保することができる。
ところでホースに金属層を設けた場合の他の問題点として、湿式雰囲気下で金属層が腐食を生じるといった問題がある。
例えば燃料電池車に用いる水素ガスの輸送ホースでは、水素ガスとともに水蒸気(水分)がホース内部を流通するが、このような水分を伴った流体を輸送するホースにあっては、水分が金属層に接触すると、金属層が腐食を起こす恐れがある。
ホースにおける金属層は、ホースの可撓性確保のためにその膜厚を数百オングストローム(Å)〜500μm程度の薄膜とすることとなるが、この場合、僅かな腐食環境においても金属層に穴明きが発生し、ガスバリア性が低下する恐れがある。
その対策として、水分に対し優れた耐透過性を有するポリプロピレン樹脂を構成材料とする樹脂層を金属層の内側に形成し、そしてその外周面に、湿式めっきにて金属めっき層を積層形成するといったことが考えられる。
このようにすれば樹脂層によって水分を遮断し、金属層に水分が到達することによって金属層が腐食を生じる問題を解決することが可能と考えられる。
ところでポリプロピレン樹脂を構成材料とする樹脂層の外周面に湿式めっき処理をするに際して、その前処理として一般にクロム酸を用いて樹脂層の外周面をエッチングし、粗面化する処理を行うが、クロム酸は強酸であり、このエッチング処理によってポリプロピレン樹脂が特性劣化してしまう問題を生ずる。
これを避けるため、ブラスト処理等の機械的な粗面化処理を行うことが考えられるが、例えばホースに蛇腹形状部等複雑な形状部が形成されている場合には、樹脂層の外周面に対して均一且つ安定化した粗面化処理を行うことは困難である。
更にポリプロピレン樹脂の場合には低温特性が悪く、低温で軟らかさを失って、衝撃により割れを生じやすいといった問題がある。
自動車用ホースの場合、−40℃〜百数十℃までの幅広い温度環境下に曝されるが、ホースにおける樹脂層をポリプロピレン樹脂で構成した場合、低温時にそうした割れ等の不具合を生じる可能性がある。
本発明はこのような問題点を解決すべく案出されたものである。
尚、下記特許文献2にはシンジオタックチック構造を有するポリエチレンの連続した樹脂層中に、粒子状弾性体のドメイン成分としてSEBS(水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)を分散させておき、そしてその表面に物理的外力を加えてドメイン成分の一部を露出させ、その後塩酸等の希薄水溶液に浸漬してドメイン成分を除去することで表面を粗面化し、その後めっき処理する点が開示されているが、この特許文献2に開示のものでは本発明の課題を解決することはできない。
特開2003−127256号公報 特開平10−183362号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、低温でも樹脂層が所要の柔軟性を有して割れを生じることが無く、樹脂層による水分に対する優れた耐透過性と、金属層による高いガスバリア性とを有する金属複合ホース及びその製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1は金属複合ホースに関するもので、ポリプロピレン樹脂にスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を分散状態に添加混合した材料を構成材料とする管状の樹脂層と、その外周面に湿式めっきにて管状に積層形成されたガスバリア層としての金属めっき層との複合層を有することを特徴とする。
請求項2のものは、請求項1において、前記ポリプロピレン樹脂に対する前記スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体の添加比率を、重量部比率でポリプロピレン樹脂:スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体=50:50〜20:80となしてあることを特徴とする。
請求項3は金属複合ホースの製造方法に関するもので、請求項1若しくは2の金属複合ホースを製造するに際し、ポリプロピレン樹脂にスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を分散状態に添加混合した材料を構成材料として前記樹脂層を形成した後、めっき前処理として前記スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を選択的に溶解する有機溶剤にて該樹脂層の外周表面のスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を溶解させて、該樹脂層の外周表面に凹凸形成する粗面化処理を行い、しかる後該樹脂層をめっき浴に浸漬して該樹脂層の外周面に前記金属めっき層を積層形成することを特徴とする。
発明の作用・効果
以上のように請求項1のものは、ポリプロピレン(PP)樹脂にスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体(SIBS)を分散状態に添加混合した材料を構成材料とする管状の樹脂層と、その外周面に湿式めっきにて管状に積層形成されたガスバリア層としての金属めっき層との複合層を含んで金属複合ホースを構成したものである。
ここでSIBSは熱可塑性エラストマーに属し、軟らかいイソブチレンのブロックとポリスチレンの硬いブロックとで構成されていて、低温においても優れた柔軟性を保持し、従ってポリプロピレン樹脂にかかるSIBSを混合して構成した樹脂層には低温での柔軟性が付与される。
またこのSIBSは、PP樹脂と同様に水分に対して優れた耐透過性を有しており、従ってSIBSをPP樹脂に添加混合することによって、樹脂層自体の水分に対する耐透過性は特に損なわれない。即ち樹脂層自体が水分に対して高い耐透過性を保有する。
例えば特許文献2に開示されているようなSEBS(水素添加スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)をPP樹脂に分散状態に添加混合した場合、このSEBSは吸水性を有して水分に対する耐透過性が低く、従って樹脂材が水分に接触したときに、SEBSだけが吸水して体積膨張し、そのSEBSによる体積膨張によって樹脂材が割れを生じてしまう。
しかるに上記SIBSは、PPと同様に水分に対する耐透過性が高く、吸水を生じないものであることから、こうした不具合を生じない。
従って本発明の金属複合ホースでは、樹脂層の有する水分に対する優れた耐透過性により、水分を含んだ流体を輸送する場合にも、その水分が樹脂層を透過して外周面の金属めっき層に至るのを防いで、金属めっき層が水分により腐食を生ずるのを良好に防止することができる。即ち金属めっき層が水分による腐食によって穴明きを生じ、金属めっき層によるガスバリア性が低下するのを良好に防止することができる。
本発明の金属複合ホースはまた、樹脂層を構成するPP樹脂にSIBSが分散状態に添加混合されている結果、樹脂層の外周面に金属めっき層を湿式めっきにて形成するに際し、樹脂層の外周面のSIBSを部分的且つ選択的に溶解除去することによって、樹脂層の外周面を容易に凹凸状に粗面化処理することができる。
従って樹脂層とその外周面の金属めっき層との密着強度を高めることができる。
本発明では、PP樹脂にSIBSを添加混合した材料を管状の構成材料とする樹脂層をホースの最内層として設けて、その外周面に金属めっき層を形成することも可能であり、或いはまた最内層をPP樹脂にて構成して、そのPP樹脂の外層をPP樹脂にSIBSを添加混合して成るPP/SIBS層を設け、そのPP/SIBS層の外周面に金属めっき層を形成することも可能で、この場合には樹脂層により水分に対する高い耐透過性を付与することができる。
ここで上記SIBSのPP樹脂に対する添加比率は、重量部比率でPP:SIBS=50:50〜20:80とすることが望ましい(請求項2)。
請求項3は、請求項1若しくは2の金属複合ホースの具体的な製造方法に関するもので、この製造方法では、上記樹脂層を形成した後、めっき前処理としてSIBSを選択的に溶解する有機溶剤にて樹脂層の外周表面のSIBSを溶解除去し、これにより樹脂層の外周表面に凹凸形成する粗面化処理を行う。
そしてその後において、樹脂層をめっき浴に浸漬して樹脂層の外周面に金属めっき層を積層形成する。
ここで有機溶剤として例えばキシレン,トルエン,ベンゼンの何れかを好適に用いることができる。
また樹脂層の外周表面のSIBSを選択溶解するに際し、樹脂層を有機溶剤に浸漬する方法を好適に用いることができる。
この製造方法によれば、めっき処理に先立って強酸且つ有毒なクロム酸を用いたエッチング処理を行わなくても良く、従ってそのクロム酸を用いたエッチングにより樹脂層を劣化させることがなく、樹脂の機械的特性を低下させない利点が得れる。
また樹脂層の外周面に対する金属めっき層の高い密着強度が得られる。
また樹脂層の外周面が蛇腹形状その他複雑な形状であっても、その外周面に均一な凹凸面、即ち粗面を形成することができる。
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は本実施形態の金属複合ホースで、最内層に樹脂層12を有し、その外側の湿式めっきにて形成された金属めっき層(ガスバリア層)14,中間ゴム層16,補強層18,外側ゴム層20が順次積層形成されている。
ここでは樹脂層12が、PP樹脂にSIBSを分散状態に添加混合した材料で構成されている。
また金属めっき層14は、無電解めっきにて形成された導電化膜14Aと、その外側の電気めっき層14Bとからなっている。
この実施形態において、樹脂層12は蛇腹形状に形成されており、金属めっき層14はこの樹脂層12の蛇腹形状に沿ってその外周面に積層形成されている。図1(B)中22はその蛇腹形状部を表している。
中間ゴム層16はこの蛇腹形状部における外周側の谷間空間を充填するとともに、金属めっき層14とその外側の補強層18とを固着している。
この実施形態において、中間ゴム層16はEPDMにて構成されている。
また補強層18はポリエステル糸(PET糸)をブレード編組又はスパイラル巻して構成してある。
更に外側ゴム層20はEPDMにて構成してある。
図1の樹脂層12を、PP樹脂(株式会社プライムポリマーの銘柄:E111G)にSIBS(株式会社カネカの銘柄:シブスター103T-U)を種々の割合で分散状態に添加混合した材料を用いて単層に構成した。
尚その寸法は外径:18mm,内径:15mm,蛇腹のピッチ:3.2mm,肉厚:0.8mmとした。
尚PP樹脂に対するSIBSの添加の比率はPP:SIBS=90:10,PP:SIBS=80:20,PP:SIBS=50:50,PP:SIBS=30:70,PP:SIBS=20:80,PP:SIBS=10:90の6種類とした。
これら6種類の樹脂層12を単管状態で形成した後、その両端に密栓し、表1に示す工程に従って金属めっき処理(ここではニッケルめっき)を行った。尚表1には従来一般のめっき工程が参考のために比較して示してある。
表1に示しているようにこの実施例では最初の工程が、両端に密栓した樹脂層12をキシレン(若しくはトルエン若しくはベンゼン)などSIBSのみに溶解し得る溶剤に浸漬処理する工程となる。
この処理は従来のエッチング処理に相当するもので、この浸漬処理により、PP樹脂に分散状態に添加混合したSIBSが、樹脂層12の外周表面において溶剤中に部分的に選択溶解し、これにより樹脂層12の外周表面に凹凸形成され、その外周表面が粗面化される。
このキシレンへの浸漬処理後に樹脂層12をキシレンから取り出して、100℃(キシレンの沸点を超える温度)×1hrの条件で乾燥処理し、しかる後に奥野製薬工業(株)製のコンディライザーSPに浸漬した。
その後のキャタリスト以降の工程は一般的なめっきプロセスに従って実行した。
Figure 2007253576
上記6種の樹脂層12に対して以上のようなめっき処理を施したものについて密着性試験,透水性試験,シャルピー衝撃試験をそれぞれ実施し、各特性の評価を行った。
結果が表2,表3,表4に示してある。
ここで密着性試験,透水性試験,シャルピー衝撃試験はそれぞれ以下の条件に従って行った。
<密着性試験>
JIS K 6854「接着剤の剥離接着強さ試験方法」のうち、T型剥離試験を実施した。
<透水性試験>
GTRテック社製差圧ガスクロ透過試験機を用い、80℃×1atmで透過が一定となるまで測定を行い、その数値を透過係数とした。
<シャルピー衝撃試験>
ASTM D 638に規定するダンベル1号形状を用い、ASTM D 256に規定する試料作製方法及び評価方法を用いて行なった。
Figure 2007253576
Figure 2007253576
Figure 2007253576
表2に示しているように、密着性試験ではPP:SIBS=50:50〜20:80で目標値(7N/cm以上)を達成している。
SIBSの添加比率が50:50よりも少ないと、樹脂層12の外周表面の凹凸量が少なく、このため金属めっき層14の密着強度が低く、密着性試験における値が小さくなる。
逆に20:80よりも添加比率が多いと、樹脂層12の外周表面の凹凸は十分であるものの、キシレンへの浸漬により溶解するSIBSの量が過剰となり、樹脂層12が形状を保てなくなる。
従ってPPとSIBSの比率はPP:SIBS=50:50〜20:80とすることが好ましい。
一方透水性試験では、SIBSの添加比率がPP:SIBS=20:80以下でIIR並みの水蒸気遮断性を示している。
参考までにSIBSと同様の熱可塑性エラストマーであるSEBSでは透水性が大きく、PP:SEBS=50:50で非常に大きな水蒸気透過量を示している。
次にシャルピー衝撃試験では、PP樹脂単体及びPP:SIBS=80:20の下では折れが発生するが、PP:SIBS=50:50以上とすることで折れが生じず、衝撃特性が効果的に改善されている。
即ちPP:SIBS=50:50〜20:80の下で、透水性及びシャルピー衝撃特性の何れも良好な値を示している。
尚PP,SIBSのキシレンに対する溶解性は、PPは不溶、SIBSは著しく大きな溶解度を示す。
以上本発明の実施形態,実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態・態様で構成実施可能である。
本発明の一実施形態の金属複合ホースの積層構造を示す斜視図及び要部断面図である。
符号の説明
10 金属複合ホース
12 樹脂層
14 金属めっき層

Claims (3)

  1. ポリプロピレン樹脂にスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を分散状態に添加混合した材料を構成材料とする管状の樹脂層と、その外周面に湿式めっきにて管状に積層形成されたガスバリア層としての金属めっき層との複合層を有することを特徴とする金属複合ホース。
  2. 請求項1において、前記ポリプロピレン樹脂に対する前記スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体の添加比率を、重量部比率でポリプロピレン樹脂:スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体=50:50〜20:80となしてあることを特徴とする金属複合ホース。
  3. 請求項1若しくは2の金属複合ホースを製造するに際し、ポリプロピレン樹脂にスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を分散状態に添加混合した材料を構成材料として前記樹脂層を形成した後、めっき前処理として前記スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を選択的に溶解する有機溶剤にて該樹脂層の外周表面のスチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体を溶解させて、該樹脂層の外周表面に凹凸形成する粗面化処理を行い、しかる後該樹脂層をめっき浴に浸漬して該樹脂層の外周面に前記金属めっき層を積層形成することを特徴とする金属複合ホースの製造方法。
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