JP2007253316A - 刃先交換型切削チップ - Google Patents

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Naoya Omori
直也 大森
Yoshio Okada
吉生 岡田
Minoru Ito
実 伊藤
Shinya Imamura
晋也 今村
Susumu Okuno
晋 奥野
Hiroyuki Morimoto
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Abstract

【課題】逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性とを高度に両立させた刃先交換型切削チップを提供する。
【解決手段】基材と、基材上に形成された被覆層とを有する刃先交換型切削チップであって、基材は、少なくとも1つの逃げ面と少なくとも1つのすくい面とを有し、被覆層は、その1層として少なくともアルミナ層を含み、該アルミナ層は、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、上記すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含む。
【選択図】図3

Description

本発明は、刃先交換型切削チップ(スローアウェイチップと呼ぶこともある)に関する。
従来より、着脱自在に工具に取り付けて被削材を切削加工する刃先交換型切削チップが知られている。このような刃先交換型切削チップは、耐摩耗性や靭性を向上させることを目的として、超硬合金やサーメットからなる基材上にセラミックス等の硬質被膜を形成する構成のものが多数提案されている。中でもアルミナは、耐摩耗性に優れるとともに基材の表面酸化を防止する効果が期待されることから、基材上に形成される被膜として古くから用いられてきた。
近年、このようなアルミナの結晶構造に着目して、種々の結晶構造のアルミナをこのような被膜に用いることにより、耐摩耗性や靭性を向上させる提案が種々なされている(特許文献1〜4)。
しかしながら、昨今の切削加工技術は複雑多岐に亘っており、様々な機能が要求されることから更なる改良が求められている。たとえば、鉛レス快削鋼等の被削材を切削加工するためには切削チップの逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性との両立が要求されるが、被膜(被覆層)にアルミナを用いた刃先交換型切削チップにおいてこのような要求を十分に満たすものは未だに知られていない。
特開平09−125250号公報 特開平10−237652号公報 特開平11−335816号公報 特開2000−024808号公報
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性とを高度に両立させた刃先交換型切削チップを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために、切削加工時における刃先交換型切削チップと被削材との接触状態を鋭意研究したところ、図1に示したように刃先交換型切削チップ1の刃先稜線4の周辺部が被削材5に接し、逃げ面3が被削材5と対面するのに対してそのすくい面2が切り屑6側に位置することが明らかとなるとともに、耐摩耗性を向上させるためには被覆層の硬度を高くしたり化学的安定性を向上させることが理想であると考えられ、また耐溶着性を向上させるためには被覆層の平滑性を高めることや被削材との低い化学的親和性を有することが理想であると推測された。本発明は、これらの知見に基づきさらに研究を重ねることによりついに完成させるに至ったものである。
すなわち、本発明は、基材と、該基材上に形成された被覆層とを有する刃先交換型切削チップであって、該基材は、少なくとも1つの逃げ面と少なくとも1つのすくい面とを有し、該被覆層は、その1層として少なくともアルミナ層を含み、該アルミナ層は、上記逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、上記すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むことを特徴としている。
ここで、上記アルミナ層は、上記すくい面においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むことが好ましく、あるいは上記すくい面においてγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むことが好ましい。
また、上記被覆層は、上記アルミナ層とともに、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属によって構成される層、または該金属の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される層のうち、それらの少なくとも1以上の層を含むことが好ましい。
また、上記アルミナ層は、上記被覆層の最外層となることが好ましく、上記被覆層は、0.05μm以上30μm以下の厚みを有することが好ましい。
また、上記被覆層は、少なくともその一部において圧縮応力を有していることが好ましく、上記アルミナ層は、切削に関与する刃先稜線部の一部または全部において形成されていないことが好ましい。
また、上記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、または窒化硅素焼結体のいずれかにより構成されることが好ましく、上記刃先交換型切削チップは、ドリル加工用、エンドミル加工用、フライス加工用、旋削加工用、メタルソー加工用、歯切工具加工用、リーマ加工用、タップ加工用、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用のいずれかのものであることが好ましい。
本発明の刃先交換型切削チップは、上述の通りの構成を有することから、逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性とを高度に両立させることに成功したものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明では、図面を用いて説明しているが、本願の図面において同一の参照符号を付したものは、同一部分または相当部分を示している。また、各図面はあくまでも説明用の模式的なものであって、被覆層の膜厚と基材とのサイズ比やコーナーのアール(R)のサイズ比は実際のものとは異なっている。
<刃先交換型切削チップ>
本発明の刃先交換型切削チップは、基材と、該基材上に形成された被覆層とを有するものである。そして、本発明の刃先交換型切削チップは、ドリル加工用、エンドミル加工用、フライス加工用、旋削加工用、メタルソー加工用、歯切工具加工用、リーマ加工用、タップ加工用またはクランクシャフトのピンミーリング加工用のものとして特に有用である。
なお、本発明は、ネガティブタイプまたはポジティブタイプのいずれの刃先交換型切削チップに対しても有効であり、またチップブレーカが形成されているものおよびそれが形成されていないものの両者いずれに対しても有効である。
<基材>
本発明の基材を構成する材料としては、このような刃先交換型切削チップの基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができ、たとえば超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭化物、窒化物、炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、または窒化硅素焼結体等を挙げることができる。
また、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層、β相富化層またはCo相富化層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていても良く、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。また、超硬合金やサーメットの場合、合金組織中の遊離炭素およびε相の存在の有無に関わらず本発明の効果は示される。
一方、基材の形状は、このような刃先交換型切削チップの基材の形状として知られる従来公知のものを特に限定なく採用することができる。たとえば、基材表面(上面)に平行な断面形状で表せば、菱形、正方形、三角形、円形、楕円形等の形状のものが含まれる。
そして、このような基材8は、たとえば図2に示すように少なくとも1つの逃げ面3と少なくとも1つのすくい面2とを有する構造を備えたものであり、この逃げ面3とすくい面2とは刃先稜線4を挟んで繋がり、この刃先稜線4が被削材に対する切削作用の中心的作用点となる。そして、逃げ面3は被削材5と対面するように配置されるものであり、これに対してすくい面2は切り屑6側に位置するように配置されるものである。
より好ましくは、このような基材8は、少なくとも2つの逃げ面3と、少なくとも1つのすくい面2と、少なくとも1つのコーナー9とを有する構造を備えたものであり、このコーナー9は2つの逃げ面3と1つのすくい面2とが交差する交点であり、切削作用の最も中心的作用点となる場合が多い。
なお、本願で用いる逃げ面、すくい面、刃先稜線およびコーナー等という表現は、基材の表面部だけではなく刃先交換型切削チップ1の最表面部に位置する部分や面とともに、後述する各被覆層の表面部や内部等に位置する相当部分をも含む概念である。
また、上記刃先稜線4は図2では直線状に形成されているがこれのみに限られるものではなく、たとえば円周状のもの、波打ち状のもの、湾曲状のもの、または屈折状のもの等も含まれる。また、このような刃先稜線やコーナー、あるいはその他の稜に対しては、面取り加工および/またはコーナーのアール(R)付与加工等の刃先処理加工を施すことができるが、このような刃先処理加工等により刃先稜線が明瞭な稜を構成しなくなったり、コーナーが明瞭な交点を形成しなくなった場合には、そのような刃先処理加工等がされたすくい面および逃げ面に対して刃先処理加工等がされない状態を想定してそれぞれの面を幾何学的に延長させることにより双方の面が交差する稜や交点を仮定的な稜や交点と定め、その仮定的に定められた稜を刃先稜線とし、仮定的に定められた交点をコーナーとするものとする。なお、すくい面と逃げ面とが刃先稜線を挟んで繋がるという表現および刃先稜線を有するという表現は、いずれも刃先稜線に対して上記のような刃先処理加工が施された場合も含むものとする。また、2つの逃げ面と1つのすくい面とが交差する交点という表現およびその交点がコーナーとなるという表現は、いずれもそのコーナーに対して上記のような刃先処理加工が施された場合も含むものとする。
また図2においては、すくい面2は平坦な面として示されているが、必要に応じてすくい面は他の構造、たとえばチップブレーカ等を有していてもよい。また、逃げ面3は図2において平坦な面として示されているが、必要に応じて(複数の面区域に区分する)面取りをしまたは別の仕方で平坦な面と異なる形状や曲面にしたり、チップブレーカを設けた形状にすることもできる。
なお、本発明の基材には、刃先交換型切削チップ1を工具に取り付ける固定孔として使用される貫通孔7が、上面と底面を貫通するように形成されていても良い。必要に応じ、この固定孔の他にまたはその代わりに、別の固定手段を設けることもできる。
<被覆層>
本発明の被覆層14は、たとえば図3に示したように上記基材8上に形成されるものであって、その1層として少なくともアルミナ層11を含み、さらにこのアルミナ層とともに他の1以上の層(以下便宜的に非アルミナ層15と記す。なお図3ではこの非アルミナ層15は便宜的に1の層として表されている)を含み得るものである。このような被覆層14は、基材8上に形成されるものであるが、必ずしも基材8の全面を覆うようにして形成する必要はなく、被覆層14が形成されていない部分が含まれていても本発明の範囲を逸脱するものではない。
本発明の被覆層14の厚み(アルミナ層11と非アルミナ層15とからなる全体の厚み)は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましい。その厚みが0.05μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されないためであり、一方、30μmを超えてもそれ以上の諸特性の向上が認められないことから経済的に有利ではない。しかし、経済性を無視する限りその厚みは30μm以上としても何等差し支えなく、本発明の効果は示される。このような厚みの測定方法としては、たとえば刃先交換型切削チップを切断し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。
なお、このような被覆層は、少なくともその一部において圧縮応力を有していることが好ましい。ここにおける一部という表現は、被覆層のうちのいずれか1以上の層という意味と、面積的に被覆層全体のうちのいずれか一部分という意味と、いずれか1以上の層の面積的に一部分という意味のいずれをも含み得る概念である。とりわけ、アルミナ層および/または非アルミナ層の少なくともその一部において圧縮応力が付与されていることが好ましい。
以下、アルミナ層11と非アルミナ層15とに分けて説明する。
<アルミナ層>
本発明のアルミナ(酸化アルミニウムやAl23とも呼ばれる)層は、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナ(本願では単にα−Al23と記すこともある)を主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むものである。すなわち、図3に示されるように、本発明のアルミナ層11は、逃げ面3とすくい面2とにおいて該層を構成するアルミナの結晶構造が異なることを特徴としており、逃げ面3はα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含む部分13となるとともに、すくい面2はα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含む部分12となっている。
このように本発明のアルミナ層は、上記逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むこと(すなわちα型の結晶構造を有するアルミナを主体として構成されること)により、刃先交換型切削チップの逃げ面側における耐摩耗性が高度に向上すると推測され、また上記すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むこと(すなわちα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として構成されること)により、刃先交換型切削チップのすくい面側における耐溶着性が高度に向上すると推測される。すなわち、本発明の刃先交換型切削チップは、とりわけアルミナ層をこのような構成とすることにより、逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性とを高度に両立させることに成功したものである。
このように優れた効果が得られるのは次のように推測される。すなわち、α型の結晶構造を有するアルミナが高い化学的安定性および/または硬度を備えるという特性と、α型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナが微細な結晶組織を備えることから平滑性を提供できるという特性とを、逃げ面およびすくい面という刃先交換型切削チップの特定部位において各々選択的かつ有効に発現するような構成としたことにより上記のような優れた効果が発現されるのではないかと推測される。要するに、α−Al23の長所を担保しつつ、α−Al23以外のアルミナが有する長所を巧みに組み入れたところに本発明の特徴が存する。
このような本発明のアルミナ層は、公知の化学的蒸着法(CVD法)、または物理的蒸着法(PVD法、なおスパッタリング法等も含む)により形成することができ、その形成方法は何等限定されるものではない。
このアルミナ層を化学的蒸着法により形成する場合は、たとえばその形成初期においてα型の結晶構造を有するアルミナの核形成を促進するためCOガスを刃先交換型切削チップの逃げ面側に十分に供給できるように、このCOガスの化学的蒸着装置内の流れを制御することにより、逃げ面においてα−Al23を主体として含む構造とすることができる。なお、核形成後に引き続きCOガスを供給する必要はなく、核成長後においてはCOガスの提供を停止することが好ましい。
また、このアルミナ層を物理的蒸着法により形成する場合は、α型の結晶構造を有するアルミナの形成温度とα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナの形成温度との差を利用して形成することが好ましく、このため物理的蒸着装置内において刃先交換型切削チップの逃げ面側の温度とすくい面側の温度とを制御することにより、逃げ面においてα−Al23を主体として含む構造とすることができる。
ここで、本発明のアルミナ層のすくい面を構成するα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナとしては、α型以外の結晶構造(たとえばγ型、δ型、η型、θ型、κ型、ρ型、χ型等)を有するアルミナをはじめアモルファス状態のアルミナ等を挙げることができる。より好ましくは、本発明のアルミナ層のすくい面は、κ型の結晶構造を有するアルミナ(本願では単にκ−Al23と記すこともある)を主体として含むことが好適であり、あるいはまたγ型の結晶構造を有するアルミナ(本願では単にγ−Al23と記すこともある)を主体として含むことが好適である。これらの結晶構造を有するアルミナは、好適な微細構造の結晶構造を有しており、すくい面の表面面粗度を極めて平滑にすることができるからである。
なお、アルミナ層とは、アルミナを50質量%以上含有する層をいい、またアルミナの結晶構造は、以下のようにX線回折法(XRD)により同定することができるため、その結晶構造は以下のように定義することとする。
すなわち、本発明においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとは、XRDの測定結果においてアルミナに関する回折角度と回折強度のデータを収集することにより、その強度が最大となるものから順にその大きさが5番目のものまでの5つの強度データ(すなわち5つのピーク)を確認し、その5つのデータのうち3つ以上のデータがα−Al23に関するものである場合をいうものとする。この場合、面間隔d(Å)が3.47、2.55、2.37、2.08、1.74、1.60、1.40および1.37である計8個のピーク位置(小数第3位以下は切り捨て)にあるピークをα−Al23に関するピークとする。なお、この面間隔dはJCPDS(Joint Comittee on Powder Diffraction Standards)のNo.46−1212およびNo.010−0173(Huang,T.,Parrish,W.,Masciocchi,N.,Wang,P.,Adv.X−Ray Anal.,33,295.(1990)、Acta Crystallogr.,Sec.B:Structural Science.49,973,(1993))を基準とするものである。
なお、上記において明瞭なピークが4つ以下しか確認されない場合は、以下の基準に従うものとする。すなわち、ピークが3つまたは4つの場合、そのうち2つ以上のピークがα−Al23に関するものであればα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとする。また、ピークが2つの場合は、ピーク強度の高い方のピークがα−Al23に関するものであればα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとし、ピークが1つの場合は、そのピークがα−Al23に関するものであればα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとする。なお、上記の判断が困難となる場合は透過型電子顕微鏡観察による同定を併用するものとする。
なお、この部分にα−Al23以外のものが含まれる場合は、通常それらはα型以外の結晶構造を有するアルミナやアモルファス状態のアルミナとなる。
一方、上記に対して、α型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むとは、XRDの測定結果が上記以外の結果を示すアルミナを含む層をいう。
また、κ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとは、XRDの測定結果においてアルミナに関する回折角度と回折強度のデータを収集することにより、その強度が最大となるものから順にその大きさが5番目のものまでの5つの強度データ(すなわち5つのピーク)を確認し、その5つのデータのうち3つ以上のデータがκ−Al23に関するものである場合をいうものとする。この場合、面間隔d(Å)が3.04、2.80、2.57、2.32、2.11、1.64、1.43および1.39である計8個のピーク位置(小数第3位以下は切り捨て)にあるピークをκ−Al23に関するピークとする。なお、この面間隔dはJCPDSのNo.052−0803およびNo.004−0878(Halvarsson,M.,Langer,V.,Vuorinen,S.,Powder Diffraction,14,61,(1999)、Yourdshahyan,Y.,Ruberto,C.,Halvarsson,M.,Bengtsson,L.,Langer,V.,Lundqvist,B.,J.Am.Ceram.Soc.,82,1365.(1999)、Stumpf et al.,Ind.Eng.Chem.,42,1398,(1950))を基準とするものである。
なお、上記において明瞭なピークが4つ以下しか確認されない場合は、以下の基準に従うものとする。すなわち、ピークが3つまたは4つの場合、そのうち2つ以上のピークがκ−Al23に関するものであればκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとする。また、ピークが2つの場合は、ピーク強度の高い方のピークがκ−Al23に関するものであればκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとし、ピークが1つの場合は、そのピークがκ−Al23に関するものであればκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとする。なお、上記の判断が困難となる場合は透過型電子顕微鏡観察による同定を併用するものとする。
また、上記の面間隔dにおいて1.39Åは、後述のγ−Al23と重複する。このため、面間隔dとして1.39Åを含む場合はそのピークを除外して上記の判断を行なうものとする。ただし、面間隔dとして1.39Åのピークのみが確認される場合は、透過型電子顕微鏡により観察して同定するものとする。
なお、この部分にκ−Al23以外のものが含まれる場合は、通常それらはκ型以外の結晶構造を有するアルミナやアモルファス状態のアルミナとなる。
また、同様にしてγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとは、XRDの測定結果においてアルミナに関する回折角度と回折強度のデータを収集することにより、その強度が最大となるものから順にその大きさが5番目のものまでの5つの強度データ(すなわち5つのピーク)を確認し、その5つのデータのうち3つ以上のデータがγ−Al23に関するものである場合をいうものとする。この場合、面間隔d(Å)が4.56、2.39、2.28、1.97および1.39である計5個のピーク位置(小数第3位以下は切り捨て)にあるピークをγ−Al23に関するピークとする。なお、この面間隔dはJCPDSのNo.010−0425(Similar powder data given in second edition,page 384(1961).Synthetic form. Slow transition to corundum at 1000 C.)を基準とするものである。
なお、上記において明瞭なピークが4つ以下しか確認されない場合は、以下の基準に従うものとする。すなわち、ピークが3つまたは4つの場合、そのうち2つ以上のピークがγ−Al23に関するものであればγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとする。また、ピークが2つの場合は、ピーク強度の高い方のピークがγ−Al23に関するものであればγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとし、ピークが1つの場合は、そのピークがγ−Al23に関するものであればγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものとする。なお、上記の判断が困難となる場合は透過型電子顕微鏡観察による同定を併用するものとする。
また、上記の通り、面間隔dにおいて1.39Åは、上記κ−Al23と重複する。このため、面間隔dとして1.39Åを含む場合はそのピークを除外して上記の判断を行なうものとする。ただし、面間隔dとして1.39Åのピークのみが確認される場合は、上記同様透過型電子顕微鏡により観察して同定するものとする。
なお、この部分にγ−Al23以外のものが含まれる場合は、通常それらはγ型以外の結晶構造を有するアルミナやアモルファス状態のアルミナとなる。
一方、本発明において、逃げ面3のα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含む部分13と、すくい面2のα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含む部分12との境界は、便宜的には図3に示したように刃先稜線4となる。しかし、刃先交換型切削チップの製造技術上この刃先稜線4上において両部分のアルミナの構成を正確に変化させることは困難であるため、必ずしもこの刃先稜線4上において両部分のアルミナの構成を正確に変化させる必要はない。このため本発明においては、この刃先稜線4に対して各々少なくとも0.05mm離れた地点において逃げ面3およびすくい面2の各々のアルミナ層の結晶構造が上記のような構成のものとなっている限り、上記の条件は満たされるものとする。
また、本発明のアルミナ層は、被削材に対する耐溶着性の見地から被覆層の最外層となることが好ましい。上記のような優れた効果を十分に発揮することができるからである。しかしながら、このアルミナ層上に後述の非アルミナ層等のアルミナ層以外の層が形成されていても本発明の効果は発揮される。そのようなアルミナ層上に形成されるアルミナ層以外の層は、切削初期において摩滅してしまうため使用された刃先を認識することができるというメリットを有するものの、結局のところアルミナ層の特性が切削性能に大きく影響するからである。したがって、アルミナ層上にアルミナ層以外の層が形成されていても本発明の範囲を逸脱するものではない。
さらに、本発明のアルミナ層は、少なくともその一部において圧縮応力を有していることが好ましく、これにより刃先交換型切削チップの靭性を効果的に向上させることができる。この場合、逃げ面の圧縮応力をすくい面の圧縮応力よりも大きくすることにより、靭性をさらに向上させることができるため好ましい。
そして、特に好ましくは、このアルミナ層は、切削に関与する部位において圧縮応力を有していることが好適である。最も直接的に靭性の向上に寄与することができるからである。ここで、切削に関与する部位とは、刃先交換型切削チップの形状、被削材の種類や大きさ、切削加工の態様等により異なるものであるが、通常被削材が接触する(または最接近する)刃先稜線から逃げ面側およびすくい面側にそれぞれ3mmの幅を有して広がった領域を意味するものとする。
なお、圧縮応力を付与する方法は、アルミナ層を形成した後に、ブラスト処理、ブラシ処理またはバレル処理等をアルミナ層(あるいはアルミナ層の所望される部位)に対して施すことにより行なうことが好ましい。なお、ブラスト処理を行なう場合は、逃げ面および/またはすくい面に対してほぼ垂直方向からスラリーを照射しても良いし、逃げ面またはすくい面のいずれか一方の面に対して所定の角度を有する方向からスラリーを照射することにより複数の面を同時に処理するようにしても良い。加えて、これらの処理を行なうことにより、被覆層の少なくとも1層に対して圧縮応力を発生させ、以って刃先強度を向上させることができるというメリットが享受される。
ここで、圧縮応力とは、このような被覆層に存する内部応力(固有ひずみ)の一種であって、「−」(マイナス)の数値(単位:本発明では「GPa」を使う)で表される応力をいう。このため、圧縮応力が大きいという概念は、上記数値の絶対値が大きくなることを示し、また、圧縮応力が小さいという概念は、上記数値の絶対値が小さくなることを示す。因みに、引張応力とは、被覆層に存する内部応力(固有ひずみ)の一種であって、「+」(プラス)の数値で表される応力をいう。なお、単に残留応力という場合は、圧縮応力と引張応力との両者を含むものとする。
そして、このような圧縮応力は、その絶対値が0.1GPa以上の応力であることが好ましく、より好ましくは0.2GPa以上、さらに好ましくは0.5GPa以上の応力である。その絶対値が0.1GPa未満では、十分な靭性を得ることができない場合があり、一方、その絶対値は大きくなればなる程靭性の付与という観点からは好ましいが、その絶対値が8GPaを越えると被覆層自体が剥離することがあり好ましくない。
なお、上記残留応力は、X線応力測定装置を用いたsin2ψ法により測定することができる。そしてこのような残留応力は被覆層中の圧縮応力が付与される領域に含まれる任意の点(好ましくは2点、より好ましくは5点、さらに好ましくは10点(複数点で測定する場合の各点は当該層の該領域の応力を代表できるように互いに0.1mm以上の距離を離して選択することが好ましい))の応力を該sin2ψ法により測定し、その平均値を求めることにより測定することができる。
このようなX線を用いたsin2ψ法は、多結晶材料の残留応力の測定方法として広く用いられているものであり、たとえば「X線応力測定法」(日本材料学会、1981年株式会社養賢堂発行)の54〜67頁に詳細に説明されている方法を用いれば良い。
また、上記残留応力は、ラマン分光法を用いた方法を利用することにより測定することも可能である。このようなラマン分光法は、狭い範囲、たとえばスポット径1μmといった局所的な測定ができるというメリットを有している。このようなラマン分光法を用いた残留応力の測定は、一般的なものであるがたとえば「薄膜の力学的特性評価技術」(サイぺック(現在リアライズ理工センターに社名変更)、1992年発行)の264〜271頁に記載の方法を採用することができる。
さらに、上記残留応力は、放射光を用いて測定することもできる。この場合、被覆層の厚み方向で残留応力の分布を求めることができるというメリットがある。
一方、このようなアルミナ層は、図4〜図6に表したように切削に関与する刃先稜線部の一部または全部において形成されていないことが好ましい。このようにアルミナ層を上記のような特定の部位で設けないことにより、さらに良好な耐溶着性が得られるとともに、さらに優れた耐摩耗性と靭性が得られるという優れた効果が奏される。
ここで、切削に関与する刃先稜線部とは、実際に被削材が接触する(または最接近する)刃先稜線部を含むとともに、刃先稜線部近傍に被削材が接触し、該刃先稜線部もその切削に実質的に関与するような場合(たとえば温度が上昇するような場合)を含むものである。しかし、単に切削加工時の被削材の切り屑が飛散して接触するような刃先稜線部は含まれない。
また、刃先稜線部とは、図5や図6における領域aによって示されるような領域であり、より具体的には刃先稜線(刃先処理加工がなされている場合には前述の通り仮定的な稜をいう)から逃げ面側およびすくい面側にそれぞれ2000μm以下の幅を有して広がった領域をいう。当然この領域は、コーナーを含み得るものであるとともに、切削に関与する部位の一部となり得るものである。
なお、アルミナ層が形成されていないとする判断は、切削に関与する刃先稜線部における切れ刃長さの10%以上の領域で形成されていなければ、アルミナ層が形成されていないとみなすものとし、上記のような優れた効果が示される。そして、その形成されていない領域は好ましくは50%以上、より好ましくは100%(すなわちその領域の全部)であり、その領域が広がるにつれ効果はより優れたものとなる。ここで、上記切れ刃長さとは、切削に関与する刃先稜線部の刃先稜線に平行な方向の長さをいう。
そして、アルミナ層が形成されていないとする判断のより具体的な方法は、走査電子顕微鏡で刃先交換型切削チップを観察して刃先稜線部のアルミナ層の存在状態を確認できる写真撮影を行なうことにより実行され、その写真上で切れ刃長さに相当する刃先稜線に平行な任意の線を引き、その線上でアルミナ層が存在しない領域をパーセンテージで表わしたものとする。
これらの図4〜6は、上記の方法をより具体的に図示したもの(走査電子顕微鏡写真を模式化した図)である。すなわち、図4におけるαの範囲が切れ刃長さを表わしている。図5および図6は、αの範囲の拡大図であり、図5が切削に関与する刃先稜線部の全部においてアルミナ層が形成されていない場合であり、図6が切削に関与する刃先稜線部の一部においてアルミナ層が形成されていない場合である。
そして、図5および図6において、刃先稜線と平行な線bを引き、この線b上でアルミナ層が形成されていない部分の長さを測定する。図5では、線b上にアルミナ層が全く存在せず、したがってアルミナ層が形成されていない範囲が100%(全部)となる。一方、図6の場合、線b上にアルミナ層が形成されていない部分(b1、b3、b5)が存在し、(b1+b3+b5)/(b1+b2+b3+b4+b5)で計算されるパーセンテージがアルミナ層が形成されていない範囲の比率となる。なお、上記線bは、刃先稜線部の中央を通る線を選択するものとする。
なお、アルミナ層が形成されていない範囲には、非アルミナ層または基材が表面に露出することとなるが、非アルミナ層が露出する場合、その露出部は非アルミナ層の最上層によって構成されていても良いし、あるいはさらにその下層の非アルミナ層が略同心状に現れるような構成であってもよい。
また、このようにアルミナ層が形成されていない領域を形成する方法は、従来公知の種々の方法を採用することができ、その方法は何等限定されるものではない。たとえば、非アルミナ層上にアルミナ層を形成した後に、アルミナ層を形成しない所定領域のアルミナ層に対してブラスト処理、ブラシ処理またはバレル処理等を施すことによって該アルミナ層を除去することにより形成させることができる。しかし、このような方法のみに限られるものではない。
なお、本発明のアルミナ層は、アルミナ以外にZrO2、Y23(アルミナにZrやYが添加されたとみることもできる)等を含んでいても差し支えなく、また塩素、炭素、ホウ素、窒素等を含んでいても良い。
また、アルミナ層の厚みは、0.05μm以上15μm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.1μm以上10μm以下である。0.05μm未満では、所定部位に均一に被覆することが工業的に困難となる。また、15μmを超えても機能に大差なく、却って経済的に不利となる。この厚みの測定方法としては、上記と同様の測定方法を採用することができる。
<非アルミナ層>
本発明の被覆層は、上記アルミナ層とともに非アルミナ層として、周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属によって構成される層、または該金属の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される層のうち、それらの少なくとも1以上の層を含むことができる。
このような非アルミナ層は、基材と上記アルミナ層との間に1以上の層として形成することができるとともに、上記アルミナ層上に形成することもでき、また上記アルミナ層の上下双方に形成することもできる。非アルミナ層をアルミナ層上に形成する場合は、アルミナ層上の特定部位のみに形成するようにしても良い。なお、このような非アルミナ層は、逃げ面とすくい面とにおいて結晶構造や組成が異なっていなくてもよい。
このように非アルミナ層を形成することにより、刃先交換型切削チップの耐摩耗性や靭性等の諸特性を向上させることができる。なお、非アルミナ層をアルミナ層上に形成する場合には、非アルミナ層の色としてアルミナ層の色とは異なる色を採用することにより刃先交換型切削チップの使用の有無を容易に識別することができるものとすることもできる。
このような非アルミナ層を構成する上記金属または化合物としては、たとえばCr、Ti、Al、Si、V、Zr、Hf、TiC、TiN、TiCN、TiNO、TiCNO、TiB2、TiBN、TiBNO、TiCBN、ZrC、ZrO2、HfC、HfN、TiAlN、AlCrN、CrN、VN、TiSiN、TiSiCN、AlTiCrN、TiAlCN、ZrCN、ZrCNO、AlN、AlCN、ZrN、TiAlC等を挙げることができる。なお、上記化合物の組成比(原子比)は、従来公知のように金属と金属以外の元素(炭素、窒素、酸素、硼素)との原子比が必ずしも1:1に限定されるわけではなく、金属1に対して、後者の元素を0.5〜1程度とすることができる(たとえばTiabとした場合であってa+b=100原子%とする場合、bは35〜50原子%程度となる)。また、後者の元素が複数の元素で構成される場合は、各元素の原子比は必ずしも等比に限定されるわけではなく、従来公知の原子比を任意に選択することができる。したがって、以下の実施例等において当該化合物を表す場合において特に断りのない場合は、その化合物を構成する原子比は従来公知の原子比を任意に選択することができるものとする。
そして、このような非アルミナ層を形成する各層のうちアルミナ層と接する層(特にアルミナ層の下層として形成されることが好ましく、非アルミナ層が基材とアルミナ層との間に複数形成される場合において非アルミナ層の最上層として形成することが好ましい)は、Tiと、炭素、窒素、酸素またはホウ素の1種以上の元素と、を少なくとも含む化合物によって形成されることが好ましい。これにより、アルミナ層が剥離することを極めて有効に防止することができるという極めて有利な効果が示される。これは、恐らく上記Tiと、炭素、窒素、酸素またはホウ素の1種以上の元素と、を少なくとも含む化合物からなる層と、アルミナ層との間で極めて高い密着性が得られるためであると考えられる。
このようなTiと、炭素、窒素、酸素またはホウ素の1種以上の元素と、を少なくとも含む化合物としては、TiN、TiCN、TiBN、TiCBN、TiBNO、TiNO、TiCNO等を挙げることができる。なお、これらの化合物は、非化学量論域の組成を有することができる。
そして特に、この化合物としては、TiBXY(ただし式中、X、Yはそれぞれ原子%であって、0.001<X/(X+Y)<0.04である)で表される硼窒化チタン、またはTiBXYZ(ただし式中、X、Y、Zはそれぞれ原子%であって、0.0005<X/(X+Y+Z)<0.04であり、かつ0<Z/(X+Y+Z)<0.5である)で表される硼窒酸化チタンであることが好ましい。これらの化合物を使用すれば、アルミナ層との間で特に優れた密着性が得られるからである。
上記TiBXYにおいて、X/(X+Y)が0.001以下になると、アルミナ層に対して優れた密着性を示さない場合があり、逆に0.04以上になると、被削材との反応性が高くなりこの層が表面に露出した場合に被削材と反応して、その溶着物が刃先に強固に付着し被削材の外観を害する場合がある。X/(X+Y)は、より好ましくは0.003<X/(X+Y)<0.02である。なお、上記式においてTiとBNの合計との原子比は、既に説明したように1:1である必要はない。
また、上記TiBXYZにおいて、X/(X+Y+Z)が0.0005以下になると、アルミナ層に対して優れた密着性を示さない場合があり、逆に0.04以上になると、被削材との反応性が高くなりこの層が表面に露出した場合に被削材と反応して、その溶着物が刃先に強固に付着し被削材の外観を害する場合がある。X/(X+Y+Z)は、より好ましくは0.003<X/(X+Y+Z)<0.02である。また、Z/(X+Y+Z)が0.5以上になると、膜の硬度は高くなるものの靭性が低下し耐欠損性が低くなってしまう場合がある。Z/(X+Y+Z)は、より好ましくは0.0005<Z/(X+Y+Z)<0.3である。なお、上記式においてTiとBNOの合計との原子比は1:1である必要はない。
このような非アルミナ層は、公知の化学的蒸着法(CVD法)、物理的蒸着法(PVD法、なおスパッタリング法等も含む)により形成することができ、その形成方法は何等限定されるものではない。たとえば、刃先交換型切削チップがドリル加工用やエンドミル加工用として用いられる場合、非アルミナ層は抗折力を低下させることなく形成できるPVD法により形成することが好ましい。また、非アルミナ層の膜厚の制御は、成膜時間により調整を行なうと良い。
また、公知のCVD法を用いて非アルミナ層を形成する場合には、MT−CVD(medium temperature CVD)法により形成された層を含むことが好ましい。特にその方法により形成した耐摩耗性に優れる炭窒化チタン(TiCN)層を含むことが最適である。従来のCVD法は、約1020〜1030℃で成膜を行なうのに対して、MT−CVD法は約850〜950℃という比較的低温で行なうことができるため、成膜の際加熱による基材のダメージを低減することができる。したがって、MT−CVD法により形成した層は、基材に近接させて備えることがより好ましい。また、成膜の際に使用するガスは、ニトリル系のガス、特にアセトニトリル(CH3CN)を用いると量産性に優れて好ましい。なお、上記のようなMT−CVD法により形成される層と、HT−CVD(high temperature CVD、上記でいう従来のCVD)法により形成される層とを積層させた複層構造のものとすることにより、これらの被覆層の層間の密着力が向上する場合があり、好ましい場合がある。
なお、このような非アルミナ層は、上記の通り種々の形成方法により形成することができるものであるが、特に好ましくは上記のアルミナ層と同一の形成方法により形成することが好適である。優れた製造効率が得られるとともにアルミナ層との密着性を高めることができるためである。したがって、アルミナ層が化学的蒸着法により形成されている場合は、この非アルミナ層も化学的蒸着法により形成されていることが好ましく、アルミナ層が物理的蒸着法により形成されている場合は、この非アルミナ層も物理的蒸着法により形成されていることが好ましい。
このような非アルミナ層の厚み(2以上の層として形成される場合は全体の厚み)は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましい。厚みが0.05μm未満では耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されず、逆に30μmを超えてもそれ以上の諸特性の向上が認められないことから経済的に有利ではない。しかし、経済性を無視する限りその厚みは30μm以上としても何等差し支えなく、本発明の効果は示される。このような厚みの測定方法としては、たとえば刃先交換型切削チップを切断し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することにより測定することができる。
なお、このような非アルミナ層は、1以上の層のうち少なくとも1の層の少なくともその一部において圧縮応力を有していることが好ましい。これにより、より優れた靭性の向上効果を得ることができる。なお、圧縮応力の付与方法およびその測定方法は、前述のアルミナ層と同様にして行なうことができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
2.0質量%のTaC、9.0質量%のCoおよび残部WCからなる組成(ただし不可避不純物を含む)の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1420℃、1時間焼結し、その後平坦研磨処理および刃先稜線部に対してSiCブラシによる刃先処理(すくい面側から見て0.05mm幅のホーニングを施す)を行なうことにより、切削チップCNMG120408N−UX(住友電工ハードメタル(株)製)の形状と同形状の超硬合金製チップを作製し、これを基材とした。この基材は、表面に脱β層が15μm形成されており、2つの面がすくい面となり、4つの面が逃げ面となるとともに、そのすくい面は刃先稜線(上記の通り刃先処理がされているので仮定的な稜となっている)を挟んで逃げ面と繋がるものであった。刃先稜線は、計8つ存在した。
この基材の全面に対して、下層から順に下記の層を被覆層として公知の熱CVD法により形成した。すなわち、基材の表面側から順に、0.3μmのTiNおよび5.6μmのTiCN(MT−CVD法により形成)をそれぞれ非アルミナ層として形成し、その上に4.2μmのアルミナ層を形成した(この被覆層を被覆層No.1とする)。
なお、このアルミナ層は、反応ガスとしては基本的に下記組成Aのものを用いて成膜した(成膜時間は5時間、温度は1000℃、反応圧力は6.6kPa)。ただし、成膜開始後1時間は、カーボン治具により化学的蒸着装置内の反応ガスの流れを制御することにより逃げ面に対しては下記組成Bの反応ガスのみが供給されるようにして成膜した。
組成A:AlCl3(4体積%)、CO2(4体積%)およびH2(残部)
組成B:AlCl3(4体積%)、CO2(4体積%)、CO(2体積%)およびH2(残部)
このようにして得られたアルミナ層は、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった。なお、このアルミナの結晶構造は刃先稜線から逃げ面側およびすくい面側にそれぞれ1mm離れた地点(逃げ面/すくい面それぞれ任意に3箇所ずつを選択)をXRDにより測定することにより同定した。すなわち、逃げ面における上位5個(強度が最大となるものから順にその大きさが5番目のものまでをいう。以下同じ)のピーク強度の面間隔dは、2.57Å、2.55Å、1.60Å、1.43Å、1.37Åであり、このうち3個のピーク(すなわち2.55Å、1.60Å、1.37Å)がα−Al23に関するものであり、またすくい面における4個のピーク(明瞭なピークが4個のみであるため)の面間隔dは、2.80Å、2.57Å、2.11Å、1.43Åであり、いずれのピークもκ−Al23に関するものであった。
なお、上記の面間隔の測定結果は、たとえアルミナ層の成膜条件として同一の条件を採用する場合であっても基材の特性(組成、焼結条件、表面状態など)によりXRDの回折角度および/または回折強度は変化する場合があるため、その影響を受けて異なる場合がある点に留意する必要がある(以下の各実施例において同じ)。
このようにして基材と該基材上に形成された被覆層とを有する本発明の刃先交換型切削チップNo.1を得た。
また、以下同様にして上記被覆層No.1に代えて下記の表1に記載した被覆層No.2〜5をそれぞれ基材の全面に被覆させた本発明の刃先交換型切削チップNo.2〜5を得た(被覆層No.とチップNo.は各々対応している)。これらの刃先交換型切削チップNo.2〜5においては、アルミナ層の形成条件は全て刃先交換型切削チップNo.1と同一とした(ただし、刃先交換型切削チップNo.5についてのみ組成Aの反応ガスにZrCl2を1体積%添加した)。
なお、表1中、被覆層は左側のものから順に基材上に形成したことを示し、最右欄の非アルミナ層が形成されているものは、アルミナ層上にそれが形成されていることを示している。
Figure 2007253316
このようにして得られた刃先交換型切削チップNo.2〜5のアルミナ層の結晶構造を、刃先交換型切削チップNo.1と同様にXRDにより同定したところ、いずれも逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった。
一方、上記の本発明の刃先交換型切削チップNo.1〜5において、アルミナ層の形成時に反応ガスとして組成Bのガスを用いずに組成Aのガスのみを用い、かつ化学的蒸着装置内の反応ガスの流れを制御することなくアルミナ層を形成することを除き、他は全て上記本発明の刃先交換型切削チップNo.1〜5と同様にして、比較例の刃先交換型切削チップNo.1〜5を製造した。
また、同様にして、アルミナ層の形成時において成膜開始後1時間は装置内全体に組成Bのガスのみを供給し、その後は組成Aのガスのみを流すようにしてさらに比較例の刃先交換型切削チップNo.6〜10(順に本発明の刃先交換型切削チップNo.1〜5に対応)を製造した。
このようにして得られた比較例の刃先交換型切削チップNo.1〜10のアルミナ層(いずれも厚みは4.2μm)の結晶構造を、上記と同様にXRDにより同定したところ、No.1〜5のチップにおいてはいずれも逃げ面およびすくい面の双方においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであり(上位5個のピーク強度の面間隔dは、2.80Å、2.57Å、2.11Å、1.43Å、1.39Åであり、1.39Åを除く4つのピーク全てがκ−Al23に関するものであった)、No.6〜10のチップにおいてはいずれも逃げ面およびすくい面の双方においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった(上位5個のピーク強度の面間隔dは、3.47Å、2.55Å、1.74Å、1.60Å、1.37Åであり、いずれのピークもα−Al23に関するものであった)。
そして、これらの本発明の刃先交換型切削チップNo.1〜5および比較例の刃先交換型切削チップNo.1〜10について、下記条件で切削試験を行ない、刃先交換型切削チップの逃げ面摩耗量(Vb)を測定するとともに切削開始1分後の被削材の刃先およびすくい面への溶着状態を確認した。その結果を以下の表2に示す。なお、逃げ面摩耗量(Vb)は、小さい数値のもの程、耐摩耗性に優れていることを示し、刃先およびすくい面への被削材の溶着量が多い程、被削材の面粗度が悪化することを示している。
<切削試験の条件>
被削材:S45C(Pbフリー)直径250mm溝入り丸棒
切削速度:400m/min.
送り:0.3mm/rev.
切込み:0.5mm
湿式/乾式:湿式(水溶性油)
切削時間:20分
また、本発明の刃先交換型切削チップNo.1〜5および比較例の刃先交換型切削チップNo.1〜10について、アルミナ層の硬度をナノインデンテーション法により測定した。なお、測定箇所は、逃げ面およびすくい面ともに上記においてアルミナの結晶構造を同定した箇所と同じ箇所(3箇所)においてそれぞれ10点測定し、計30点の平均値を求めた(押し込み力は2gfで実施した)。この結果、本発明の刃先交換型切削チップNo.1〜5については、すくい面がほぼ4100mgf/μm2、逃げ面がほぼ4650mgf/μm2であったのに対して、比較例の刃先交換型切削チップNo.1〜5は、すくい面および逃げ面ともほぼ4100mgf/μm2であり、比較例の刃先交換型切削チップNo.6〜10は、すくい面および逃げ面ともほぼ4650mgf/μm2であった。
Figure 2007253316
表2より明らかなように、本発明の刃先交換型切削チップは比較例の刃先交換型切削チップNo.1〜5に比し逃げ面において優れた耐摩耗性が示されたとともに、比較例の刃先交換型切削チップNo.6〜10に比し刃先およびすくい面において被削材の溶着が極めて低減されていた。
したがって、刃先交換型切削チップにおけるアルミナ層の構成を逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むという構成とすることにより、逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性とが高度に両立されることが確認された。
<実施例2>
実施例1において、本発明の刃先交換型切削チップNo.1、No.2、および比較例の刃先交換型切削チップNo.1、No.2、No.6、No.7のアルミナ層について残留応力を測定した。この残留応力の測定は、これらの刃先交換型切削チップの逃げ面における実施例1においてXRDの測定を行なった位置と同じ位置を測定した(具体的測定方法は、上述のX線応力測定装置を用いたsin2ψ法を採用した)。なお、この測定領域は、逃げ面の切削に関与する部位を代表する領域である。
一方、本発明の刃先交換型切削チップNo.1について、公知の湿式ブラスト法(砥粒:アルミナサンド(粒径50μm)、吐出圧:0.01〜0.5MPa、投射距離:0.5〜200mm)による処理を逃げ面またはチップ全体に対して実施することにより異なった残留応力を付与した4種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.1−2、No.1−3、No.1−4およびNo.1−5)をさらに得、上記と同様にして逃げ面における残留応力を測定した。また、同様にして本発明の刃先交換型切削チップNo.2についても、異なった残留応力を付与した4種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.2−2、No.2−3、No.2−4およびNo.2−5)を得、これらについても逃げ面の残留応力を測定した。その結果を以下の表3に示す。
なお、上記刃先交換型切削チップNo.1−2、No.1−3、No.1−4、No.1−5、No.2−2、No.2−3、No.2−4およびNo.2−5についてアルミナ層のアルミナの結晶構造を実施例1と同様にして測定したところ、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むことを確認した。
そして、これらの刃先交換型切削チップについて、実施例1と同様にして逃げ面摩耗量(Vb)を測定するとともに下記の条件による靭性試験を実施することにより破損率を測定した。これらの結果を同じく表3に示す。なお、破損率が小さくなる程、靭性(耐欠損性)に優れていることを示している。
<靭性試験の条件>
被削材:Scr420(Pbフリー)角材
切削速度:100m/min.
送り:0.5mm/rev.
切込み:2.0mm
湿式/乾式:乾式
切削時間:30秒
評価:20切れ刃を30秒間切削した場合の破損数(破損した切れ刃の数)から破損率を求める(すなわち、破損率(%)=破損数/20×100)。
Figure 2007253316
表3の結果より明らかなように、逃げ面においてアルミナ層が圧縮応力を有すると優れた靭性が示され、特にその圧縮応力が大きくなる程、靭性(耐欠損性)がさらに向上することが確認できた。
<実施例3>
実施例2における本発明の刃先交換型切削チップNo.1−4を用いて、その切削に関与する刃先稜線部(少なくとも刃先処理部を含む)に対してSiCブラシ(#800)による処理を施すことによりその部分に存するアルミナ層の一部または全部を除去し、各々除去率の異なる5種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.1−4−2、No.1−4−3、No.1−4−4、No.1−4−5およびNo.1−4−6)を得た。
そして、これらの刃先交換型切削チップについてその除去率を求めた。その結果を以下の表4に示す。なお、除去率とは、切削に関与する刃先稜線部において、前述の方法(図6のように領域aの中央部に線bを引くものとし、切れ刃長さを0.8mmとした)により求めたアルミナ層が形成されていないパーセンテージを示している。
また、同様にして実施例2における本発明の刃先交換型切削チップNo.2−5についても、異なったアルミナ層の除去率を有する2種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.2−5−2およびNo.2−5−3)を得、同様にして除去率を求めた。その結果を以下の表4に示す。
なお、上記の各刃先交換型切削チップにおいては、SiCブラシによる処理により残留応力の数値が変化していないことを確認した。また、同じく上記の各刃先交換型切削チップについてアルミナ層のアルミナの結晶構造を実施例1と同様にして測定したところ、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むことを確認した。
そして、これらの刃先交換型切削チップについて、実施例2と同様にして逃げ面摩耗量(Vb)および破損率を測定した。これらの結果を同じく表4に示す。
Figure 2007253316
表4より明らかなように、アルミナ層が切削に関与する刃先稜線部の一部または全部において形成されていない場合において、耐摩耗性および靭性がさらに向上することが確認できた。
<実施例4>
2.5質量%のTiC、2.0質量%のTaC、1.0質量%のNbC、10.5質量%のCoおよび残部WCからなる組成(ただし不可避不純物を含む)の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1380℃、1時間焼結し、その後平坦研磨処理および刃先稜線部に対してSiCブラシによる刃先処理(すくい面側から見て0.05mm幅のホーニングを施す)を行なうことにより、切削チップSEMT13T3AGSN−G(住友電工ハードメタル(株)製)の形状と同形状の超硬合金製チップを作製し、これを基材とした。この基材は、表面に脱β層が形成されておらず、1つの面がすくい面となり、4つの面が逃げ面となるとともに、そのすくい面は刃先稜線(上記の通り刃先処理がされているので仮定的な稜となっている)を挟んで逃げ面と繋がるものであった。刃先稜線は、計4つ存在した。
そして、この基材を成膜装置(物理的蒸着装置)であるカソードにパルスDC電源を用いたアンバランストマグネトロンスパッタリング装置(冷陰極アーク式のイオンプレーティング/アンバランストマグネトロンスパッタリング複合機)に装着した。
図7は、この成膜装置20の概略構成を示す模式図である。図7に示す成膜装置20内に複数のアーク蒸発源21、22およびアンバランストマグネトロンスパッタ蒸発源(以下、UBMスパッタ源と呼ぶ)23、24を配置し、各蒸発源間の中心点Cを中心とし蒸発源21〜24に各対向するようにして回転する保持具27に基材8である上記切削チップを装着した。なお、必要なガスは、ガス導入口25から成膜装置20内へ導入される。また、成膜装置20内にはヒーター26が備えられている。
本実施例では、アーク蒸発源21に所定のTiAl合金ターゲットをセットするとともにアーク蒸発源22に所定のTiターゲットをセットし、UBMスパッタ源23、24にAlをセットした。すなわち、UBMスパッタ源によりアルミナ層を形成し、アーク蒸発源により非アルミナ層を形成するものである。
まず、真空ポンプにより該装置のチャンバー内を1×10-3Pa以下に減圧するとともに、該装置内に設置されたヒーター26により上記基材8の温度を510℃に加熱した。
次に、ガス導入口25からアルゴンガスを導入してチャンバー内の圧力を3Paに保持しながら、基板バイアス電源の電圧を徐々に上げ基材8に−950Vの電圧をかけることにより、アルゴンガス中でグロー放電を発生させてアルゴンイオンによる基材の表面のクリーニングを15分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
次いで、基材8に−50Vのバイアス電圧をかけながらガス導入口25からN2(窒素ガス)を導入した状態で、100Aのアーク電流によりアーク蒸発源21を真空アーク放電させて、上記TiAl合金ターゲットをイオン化させることにより、基材8上に非アルミナ層として2.3μmのTiAlN層を形成した。
続いて、保持具27を調整することにより基材8とヒーター26との距離を調節し、基材8の逃げ面の温度が720℃、すくい面の温度が620℃となるように基材8の温度を制御した。その後、この基材8に対して基板バイアス電圧が−100VのパルスDC(パルス周波数250kHz、ON時間およびOFF時間とも2μsec.)を印加した状態で、40sccm(標準状態における1分間に40ccの流量)の酸素ガスおよび360sccmのアルゴンガスをガス導入口25から装置内に導入し装置内の圧力を1.1Paとした条件下、UBMスパッタ源23、24を放電させることにより基材8の上記非アルミナ層上に2.1μmのアルミナ層を形成した。なお、この場合、UBMスパッタ源に対してはパルスDC(パルス周波数100kHz、ON時間を8μsec.とし、OFF時間を2μsec.)を用い、スパッタ電力は2.8kWとした。
次いで、基材8に−80Vのバイアス電圧をかけながらガス導入口25からN2(窒素ガス)とCH4(メタンガス)を導入した状態で、120Aのアーク電流によりアーク蒸発源22を真空アーク放電させて、上記Tiターゲットをイオン化させることにより、アルミナ層上に非アルミナ層として0.2μmのTiCN層を形成した。
このようにして、基材と、該基材上に形成された被覆層とを有する本発明の刃先交換型切削チップを得た。この被覆層は、基材上に非アルミナ層として2.3μmのTiAlN層が形成され、その上に2.1μmのアルミナ層が形成され、さらにその上に非アルミナ層として0.2μmのTiCN層が形成された構成であった。
また、このアルミナ層のアルミナの結晶構造は、実施例1と同様にして測定したところ、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった。すなわち、逃げ面における上位5個のピーク強度の面間隔dは、3.47Å、1.97Å、1.74Å、1.39Å、1.37Åであり、このうち3個のピーク(すなわち3.47Å、1.74Å、1.37Å)がα−Al23に関するものであり、またすくい面における3個のピーク(明瞭なピークが3個のみであるため)の面間隔dは、2.28Å、1.97Å、1.39Åであり、1.39Åを除く2つのピークが両者ともγ−Al23に関するものであった。
一方、上記の本発明の刃先交換型切削チップにおいて、アルミナ層の形成時に基材の温度を逃げ面およびすくい面の双方において620℃とすることを除き、他は全て上記本発明の刃先交換型切削チップと同様にして、比較例の刃先交換型切削チップAを製造した。
また同様に、アルミナ層の形成時に基材の温度を逃げ面およびすくい面の双方において720℃とすることを除き、他は全て上記本発明の刃先交換型切削チップと同様にして、比較例の刃先交換型切削チップBを製造した。
このようにして得られた比較例の刃先交換型切削チップAおよびBのアルミナ層(厚みは2.1μm)の結晶構造を、上記と同様に同定したところ、刃先交換型切削チップAは逃げ面およびすくい面の双方においてγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであり(3個のピーク(明瞭なピークが3個のみであるため)の面間隔dは、2.28Å、1.97Å、1.39Åであり、1.39Åを除く2つのピークが両者ともγ−Al23に関するものであった)、また刃先交換型切削チップBは逃げ面およびすくい面の双方においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった(3個のピーク(明瞭なピークが3個のみであるため)の面間隔dは、3.47Å、1.74Å、1.37Åであり、いずれのピークもα−Al23に関するものであった)。
そして、これらの本発明の刃先交換型切削チップおよび比較例の刃先交換型切削チップA、Bについて、下記条件で切削試験を行ない、刃先交換型切削チップの逃げ面摩耗量(Vb)を測定するとともに切削開始0.5m後の被削材の刃先およびすくい面への溶着状態を確認した。
<切削試験の条件>
被削材:S35C(Pbフリー)ブロック材
使用カッター:WGC4100R
切削速度:200m/min.
送り:0.2mm/刃
切込み:1.0mm
湿式/乾式:湿式
切削距離:5m
上記切削試験の結果、本発明の刃先交換型切削チップは、被削材の刃先およびすくい面への溶着量は少なく、逃げ面摩耗量Vbは0.065mmであった。これに対して、比較例の刃先交換型切削チップAは逃げ面摩耗量Vbが0.183mmであり、同Bは被削材の刃先およびすくい面への溶着のため5m切削する前に欠損した。
上記試験結果より明らかなように、本発明の刃先交換型切削チップは比較例の刃先交換型切削チップに比し、逃げ面において優れた耐摩耗性が示されたとともに、刃先およびすくい面において被削材の溶着が極めて低減されていた。
したがって、刃先交換型切削チップにおけるアルミナ層の構成を逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むという構成とすることにより、逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性とが高度に両立されることが確認された。
<実施例5>
0.2質量%のTiC、0.4質量%のTaC、0.2質量%のNbC、5.5質量%のCoおよび残部WCからなる組成(ただし不可避不純物を含む)の超硬合金粉末をプレスし、続けて真空雰囲気中で1450℃、1時間焼結し、その後平坦研磨処理および刃先稜線部に対してSiCブラシによる刃先処理(すくい面側から見て0.05mm幅のホーニングを施す)を行なうことにより、切削チップCNMG120408N−UX(住友電工ハードメタル(株)製)の形状と同形状の超硬合金製チップを作製し、これを基材とした。この基材は、表面に脱β層が形成されておらず、2つの面がすくい面となり、4つの面が逃げ面となるとともに、そのすくい面は刃先稜線(上記の通り刃先処理がされているので仮定的な稜となっている)を挟んで逃げ面と繋がるものであった。刃先稜線は、計8つ存在した。
この基材の全面に対して、下層から順に下記の層を被覆層として公知の熱CVD法により形成した。すなわち、基材の表面側から順に、0.2μmのTiNおよび5.5μmのTiCN(MT−CVD法により形成)をそれぞれ非アルミナ層として形成し、その上に4.1μmのアルミナ層を形成した(この被覆層を被覆層No.11とする)。
なお、このアルミナ層は、反応ガスとしては基本的に下記組成Cのものを用いて成膜した(成膜時間は5時間、温度は1000℃、反応圧力は7.0kPa)。ただし、成膜開始後1時間は、カーボン治具により化学的蒸着装置内の反応ガスの流れを制御することにより逃げ面に対しては下記組成Dの反応ガスのみが供給されるようにして成膜した。
組成C:AlCl3(4体積%)、CO2(3体積%)およびH2(残部)
組成D:AlCl3(4体積%)、CO2(3体積%)、CO(3体積%)およびH2(残部)
このようにして得られたアルミナ層は、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった。
なお、このアルミナの結晶構造は、すくい面については図8(本実施例の刃先交換型切削チップのすくい面のコーナー部を模式化した拡大平面図であり、表面に形成されている各線はチップブレーカの凹凸状態を示す)における領域Sをスポット径0.1mmで任意の3点(各スポット間の距離は各スポットの中心が0.1mm以上離れるようにして設定した)をXRDにより測定することにより同定し、また逃げ面については図9(本実施例の刃先交換型切削チップの逃げ面のコーナー部を模式化した拡大側面図であり、上記図8と同一のコーナーに関わるものである)における領域Tをスポット径0.1mmで任意の5点(各スポット間の距離は各スポットの中心が0.1mm以上離れるようにして設定した)をXRDにより測定することにより同定した。すなわち、逃げ面における上位5個のピーク強度の面間隔dは、3.47Å、2.57Å、2.55Å、1.60Å、1.37Åであり、このうち4個のピーク(すなわち3.47Å、2.55Å、1.60Å、1.37Å)がα−Al23に関するものであり、またすくい面における4個のピーク(明瞭なピークが4個のみであるため)の面間隔dは、2.80Å、2.57Å、2.11Å、1.43Åであり、いずれのピークもκ−Al2Oに関するものであった。
このようにして基材と該基材上に形成された被覆層とを有する本発明の刃先交換型切削チップNo.11を得た。
また、以下同様にして上記被覆層No.11に代えて下記の表5に記載した被覆層No.12〜15をそれぞれ基材の全面に被覆させた本発明の刃先交換型切削チップNo.12〜15を得た(被覆層No.とチップNo.は各々対応している)。これらの刃先交換型切削チップNo.12〜15においては、アルミナ層の形成条件は全て刃先交換型切削チップNo.11と同一とした(ただし、刃先交換型切削チップNo.15についてのみ組成Cの反応ガスにZrCl2を1体積%添加した)。
なお、表5中、被覆層は左側のものから順に基材上に形成したことを示し、最右欄の非アルミナ層が形成されているものは、アルミナ層上にそれが形成されていることを示している。
Figure 2007253316
このようにして得られた刃先交換型切削チップNo.12〜15のアルミナ層の結晶構造を、刃先交換型切削チップNo.11と同様にXRDにより同定したところ、いずれも逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった。
一方、上記の本発明の刃先交換型切削チップNo.11〜15において、アルミナ層の形成時に反応ガスとして組成Dのガスを用いずに組成Cのガスのみを用い、かつ化学的蒸着装置内の反応ガスの流れを制御することなくアルミナ層を形成することを除き、他は全て上記本発明の刃先交換型切削チップNo.11〜15と同様にして、比較例の刃先交換型切削チップNo.11〜15を製造した。
また、同様にして、アルミナ層の形成時において成膜開始後1時間は装置内全体に組成Dのガスのみを供給し、その後は組成Cのガスのみを流すようにしてさらに比較例の刃先交換型切削チップNo.16〜20(順に本発明の刃先交換型切削チップNo.11〜15に対応)を製造した。
このようにして得られた比較例の刃先交換型切削チップNo.11〜20のアルミナ層(いずれも厚みは4.1μm)の結晶構造を、上記と同様にXRDにより同定したところ、No.11〜15のチップにおいてはいずれも逃げ面およびすくい面の双方においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであり(4個のピーク(明瞭なピークが4個のみであるため)の面間隔dは、2.80Å、2.57Å、2.11Å、1.43Åであり、いずれのピークもκ−Al23に関するものであった)、No.16〜20のチップにおいてはいずれも逃げ面およびすくい面の双方においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むものであった(上位5個のピーク強度の面間隔dは、3.47Å、2.55Å、1.74Å、1.60Å、1.37Åであり、いずれのピークもα−Al23に関するものであった)。
そして、これらの本発明の刃先交換型切削チップNo.11〜15および比較例の刃先交換型切削チップNo.11〜20について、下記条件で切削試験を行ない、刃先交換型切削チップの逃げ面摩耗量(Vb)を測定するとともに切削開始1分後の被削材の刃先およびすくい面への溶着状態を確認した。その結果を以下の表6に示す。なお、逃げ面摩耗量(Vb)は、小さい数値のもの程、耐摩耗性に優れていることを示し、刃先およびすくい面への被削材の溶着量が多い程、被削材の面粗度が悪化することを示している。
<切削試験の条件>
被削材:S48C(Pbフリー)直径250mm溝入り丸棒
切削速度:350m/min.
送り:0.28mm/rev.
切込み:0.5mm
湿式/乾式:湿式(水溶性油)
切削時間:20分
Figure 2007253316
表6より明らかなように、本発明の刃先交換型切削チップは比較例の刃先交換型切削チップNo.11〜15に比し逃げ面において優れた耐摩耗性が示されたとともに、比較例の刃先交換型切削チップNo.16〜20に比し刃先およびすくい面において被削材の溶着が極めて低減されていた。
したがって、刃先交換型切削チップにおけるアルミナ層の構成を逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むという構成とすることにより、逃げ面側における高度な耐摩耗性とすくい面側における優れた耐溶着性とが高度に両立されることが確認された。
<実施例6>
実施例5において、本発明の刃先交換型切削チップNo.11、No.12、および比較例の刃先交換型切削チップNo.11、No.12、No.16、No.17のアルミナ層について残留応力を測定した。
この残留応力の測定は、逃げ面について図10(本実施例の刃先交換型切削チップの逃げ面のコーナー部を模式化した拡大側面図であり、上記図9と同一コーナーに関わるものである)における領域Uに対してそれぞれスポット径0.3mmで任意の3点(各スポット間の距離は各スポットの中心が0.3mm以上離れるようにして設定した)を上述のX線応力測定装置を用いたsin2ψ法により測定し、その平均値を残留応力とした。
一方、本発明の刃先交換型切削チップNo.11について、公知の湿式ブラスト法(砥粒:アルミナサンド(粒径50μm)、吐出圧:0.01〜0.5MPa、投射距離:0.5〜200mm)による処理を逃げ面またはチップ全体に対して実施することにより異なった残留応力を付与した4種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.11−2、No.11−3、No.11−4およびNo.11−5)をさらに得、上記と同様にして逃げ面における残留応力を測定した。また、同様にして本発明の刃先交換型切削チップNo.12についても、異なった残留応力を付与した4種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.12−2、No.12−3、No.12−4およびNo.12−5)を得、これらについても逃げ面の残留応力を測定した。その結果を以下の表7に示す。
なお、上記刃先交換型切削チップNo.11−2、No.11−3、No.11−4、No.11−5、No.12−2、No.12−3、No.12−4およびNo.12−5についてアルミナ層のアルミナの結晶構造を実施例5と同様にして測定したところ、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むことを確認した。
そして、これらの刃先交換型切削チップについて、実施例5と同様にして逃げ面摩耗量(Vb)を測定するとともに下記の条件による靭性試験を実施することにより破損率を測定した。これらの結果を同じく表7に示す。なお、破損率が小さくなる程、靭性(耐欠損性)に優れていることを示している。
<靭性試験の条件>
被削材:S30C(Pbフリー)角材
切削速度:90m/min.
送り:0.5mm/rev.
切込み:2.5mm
湿式/乾式:乾式
切削時間:30秒
評価:20切れ刃を30秒間切削した場合の破損数(破損した切れ刃の数)から破損率を求める(すなわち、破損率(%)=破損数/20×100)。
Figure 2007253316
表7の結果より明らかなように、逃げ面においてアルミナ層が圧縮応力を有すると優れた靭性が示され、特にその圧縮応力が大きくなる程、靭性(耐欠損性)がさらに向上することが確認できた。
<実施例7>
実施例6における本発明の刃先交換型切削チップNo.11−4を用いて、その切削に関与する刃先稜線部(少なくとも刃先処理部を含む)に対してSiCブラシ(#800)による処理を施すことによりその部分に存するアルミナ層の一部または全部を除去し、各々除去率の異なる5種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.11−4−2、No.11−4−3、No.11−4−4、No.11−4−5およびNo.11−4−6)を得た。
そして、これらの刃先交換型切削チップについてその除去率を求めた。その結果を以下の表8に示す。なお、除去率とは、切削に関与する刃先稜線部において、前述の方法(図6のように領域aの中央部に線bを引くものとし、切れ刃長さを0.8mmとした)により求めたアルミナ層が形成されていないパーセンテージを示している。
また、同様にして実施例6における本発明の刃先交換型切削チップNo.12−5についても、異なったアルミナ層の除去率を有する2種類の刃先交換型切削チップ(刃先交換型切削チップNo.12−5−2およびNo.12−5−3)を得、同様にして除去率を求めた。その結果を以下の表8に示す。
なお、上記の各刃先交換型切削チップにおいては、SiCブラシによる処理により残留応力の数値が変化していないことを確認した。また、同じく上記の各刃先交換型切削チップについてアルミナ層のアルミナの結晶構造を実施例5と同様にして測定したところ、逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むことを確認した。
そして、これらの刃先交換型切削チップについて、実施例6と同様にして逃げ面摩耗量(Vb)および破損率を測定した。これらの結果を同じく表8に示す。
Figure 2007253316
表8より明らかなように、アルミナ層が切削に関与する刃先稜線部の一部または全部において形成されていない場合において、耐摩耗性および靭性がさらに向上することが確認できた。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
切削加工時における刃先交換型切削チップと被削材との接触状態を模式的に示した概略図である。 本発明の刃先交換型切削チップの一例を示す概略斜視図である。 刃先交換型切削チップの概略断面図である。 切れ刃長さを表わした刃先交換型切削チップの模式図である。 図4におけるαの範囲を拡大した走査電子顕微鏡写真の模式図である。 図4におけるαの範囲を拡大した走査電子顕微鏡写真の別の模式図である。 成膜装置の概略構成を示す模式図である。 刃先交換型切削チップのすくい面のコーナー部を模式化した拡大平面図である。 刃先交換型切削チップの逃げ面のコーナー部を模式化した拡大側面図である。 刃先交換型切削チップの逃げ面のコーナー部を模式化した図9同様の拡大側面図である。
符号の説明
1 刃先交換型切削チップ、2 すくい面、3 逃げ面、4 刃先稜線、5 被削材、6 切り屑、7 貫通孔、8 基材、9 コーナー、11 アルミナ層、12 α型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含む部分、13 α型の結晶構造を有するアルミナを主体として含む部分、14 被覆層、15 非アルミナ層、20 成膜装置、21,22 アーク蒸発源、23,24 アンバランスドマグネトロンスパッタ蒸発源、25 ガス導入口、26 ヒーター、27 保持具。

Claims (10)

  1. 基材と、該基材上に形成された被覆層とを有する刃先交換型切削チップであって、
    前記基材は、少なくとも1つの逃げ面と少なくとも1つのすくい面とを有し、
    前記被覆層は、その1層として少なくともアルミナ層を含み、
    前記アルミナ層は、前記逃げ面においてα型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むとともに、前記すくい面においてα型の結晶構造を有するアルミナ以外のアルミナを主体として含むことを特徴とする刃先交換型切削チップ。
  2. 前記アルミナ層は、前記すくい面においてκ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むことを特徴とする請求項1記載の刃先交換型切削チップ。
  3. 前記アルミナ層は、前記すくい面においてγ型の結晶構造を有するアルミナを主体として含むことを特徴とする請求項1記載の刃先交換型切削チップ。
  4. 前記被覆層は、前記アルミナ層とともに、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属によって構成される層、または該金属の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物によって構成される層のうち、それらの少なくとも1以上の層を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の刃先交換型切削チップ。
  5. 前記アルミナ層は、前記被覆層の最外層となることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の刃先交換型切削チップ。
  6. 前記被覆層は、0.05μm以上30μm以下の厚みを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の刃先交換型切削チップ。
  7. 前記被覆層は、少なくともその一部において圧縮応力を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の刃先交換型切削チップ。
  8. 前記アルミナ層は、切削に関与する刃先稜線部の一部または全部において形成されていないことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の刃先交換型切削チップ。
  9. 前記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体、または窒化硅素焼結体のいずれかにより構成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の刃先交換型切削チップ。
  10. 前記刃先交換型切削チップは、ドリル加工用、エンドミル加工用、フライス加工用、旋削加工用、メタルソー加工用、歯切工具加工用、リーマ加工用、タップ加工用、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用のいずれかのものであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の刃先交換型切削チップ。
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