以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図2は、図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細を示した拡大断面図である。まず、図1および図2を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。
第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図1に示すように、約100μmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のキャリア濃度を有する酸素がドープされたウルツ鉱型構造のn型GaN基板1の(0001)面上に、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層2が形成されている。n型層2上には、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層3が形成されている。なお、n型GaN基板1は、本発明の「基板」および「窒化物系半導体基板」の一例であり、n型層2およびn型クラッド層3は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
n型クラッド層3上には、発光層4が形成されている。この発光層4は、図2に示すように、n型キャリアブロック層4aと、n型光ガイド層4bと、多重量子井戸(MQW)活性層4eと、p型光ガイド層4fと、p型キャップ層4gとから構成されている。n型キャリアブロック層4aは、約5nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.1Ga0.9Nからなる。n型光ガイド層4bは、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaNからなる。また、MQW活性層4eは、約20nmの厚みを有するアンドープIn0.05Ga0.95Nからなる4層の障壁層4cと、約3nmの厚みを有するアンドープIn0.15Ga0.85Nからなる3層の井戸層4dとが交互に積層されている。また、p型光ガイド層4fは、約100nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなる。p型キャップ層4gは、約20nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.1Ga0.9Nからなる。なお、発光層4は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
そして、図1に示すように、発光層4上には、凸部を有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層5が形成されている。このp型クラッド層5の凸部は、約1.5μmの幅と約300nmの高さとを有する。また、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部は、約100nmの厚みを有する。そして、p型クラッド層5の凸部上には、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層6が形成されている。そして、p型クラッド層5の凸部とp型コンタクト層6とによって、所定の方向に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部7が構成される。なお、p型クラッド層5およびp型コンタクト層6は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
そして、リッジ部7を構成するp型コンタクト層6上には、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極9が形成されている。なお、p側オーミック電極9は、本発明の「表面側電極」の一例である。また、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面上には、リッジ部7およびp側オーミック電極9の側面を覆うように、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜10が形成されている。絶縁膜10の表面上には、p側オーミック電極9の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極11が形成されている。
ここで、n型GaN基板1および窒化物系半導体各層(2〜5)の端部の近傍には、n型GaN基板1の裏面からp型クラッド層5の平坦部の表面まで延びるとともに、約10μmの幅を有する転位の集中している領域8が、約400μmの周期でストライプ状(細長状)に形成されている。そして、第1実施形態では、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域8を覆うように、約250nmの厚みと約40μmの幅とを有するSiO2膜からなる絶縁膜12が形成されている。また、n型GaN基板1の裏面上には、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8以外の領域に接触するとともに、絶縁膜12を覆うように、n側電極13が形成されている。このn側電極13は、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなる。なお、n側電極13は、本発明の「裏面側電極」の一例である。
第1実施形態では、上記のように、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域8に、絶縁膜12を形成するとともに、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8以外の領域に接触するように、n側電極13を形成することによって、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8は、絶縁膜12により露出しないように覆われるので、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を容易に抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、容易に、半導体素子の動作を安定化することができる。また、転位の集中している領域8に流れる電流を低減することができるので、転位の集中している領域8からの不必要な発光を低減できる。
図3〜図12は、図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図1〜図12を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図3〜図6を参照して、n型GaN基板1の形成プロセスについて説明する。具体的には、図3に示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相堆積)法を用いて、基板温度を約600℃に保持した状態で、サファイア基板21上に、約20nmの厚みを有するAlGaN層22を成長させる。その後、基板温度を約1100℃に変えて、AlGaN層22上に、約1μmの厚みを有するGaN層23を成長させる。この際、GaN層23の全領域に、縦方向に伝播された転位が、約5×108cm−2以上(たとえば、約5×109cm−2)の密度で形成される。
次に、図4に示すように、プラズマCVD法を用いて、GaN層23上に、約10μmの間隔を隔てて、約390μmの幅と約200nmの厚みとを有するSiNまたはSiO2からなるマスク層24を、約400μmの周期でストライプ状(細長状)に形成する。
次に、図5に示すように、HVPE(Halide Vapor Phase Epitaxy:ハライド気相成長)法を用いて、基板温度を約1100℃に保持した状態で、マスク層24を選択成長マスクとして、GaN層23上に、約150μmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のキャリア濃度を有する酸素がドープされたn型GaN層1aを横方向成長させる。この際、n型GaN層1aは、マスク層24が形成されていないGaN層23上に選択的に縦方向に成長した後、徐々に横方向に成長する。このため、マスク層24が形成されていないGaN層23上に位置するn型GaN層1aには、約5×108cm−2以上(たとえば、約5×109cm−2)の密度で縦方向に伝播された転位の集中している領域8が、約10μmの幅でストライプ状(細長状)に形成される。その一方、マスク層24上に位置するn型GaN層1aには、n型GaN層1aが横方向に成長することにより転位が横方向へ曲げられるので、縦方向に伝播された転位が形成されにくく、転位密度は、約5×107cm−2以下(たとえば、約1×106cm−2)である。この後、n型GaN層1a下に位置するマスク層24を含む領域(サファイア基板21など)を除去する。このようにして、図6に示すように、約5×1018cm−3のキャリア濃度を有する酸素がドープされたn型GaN基板1を形成する。
次に、図7に示すように、MOCVD法を用いて、n型GaN基板1上に、n型層2、n型クラッド層3、発光層4、p型クラッド層5およびp型コンタクト層6を順次成長させる。
具体的には、基板温度を約1100℃の成長温度に保持した状態で、H2およびN2からなるキャリアガスと、NH3およびTMGaからなる原料ガスと、SiH4からなるドーパントガスとを用いて、n型GaN基板1上に、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層2を成長させる。この後、原料ガスにTMAlをさらに加えて、n型層2上に、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層3を成長させる。
続いて、図2に示したように、n型クラッド層3(図7参照)上に、約5nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.1Ga0.9Nからなるn型キャリアブロック層4aを成長させる。
次に、基板温度を約800℃の成長温度に保持した状態で、H2およびN2からなるキャリアガスと、NH3およびTMGaからなる原料ガスと、SiH4からなるドーパントガスとを用いて、n型キャリアブロック層4a上に、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型光ガイド層4bを成長させる。
この後、原料ガスにTMInをさらに加えるとともに、ドーパントガスを用いないで、n型光ガイド層4b上に、約20nmの厚みを有するアンドープIn0.05Ga0.95Nからなる4層の障壁層4cと、約3nmの厚みを有するアンドープIn0.15Ga0.85Nからなる3層の井戸層4dとを交互に成長させることによりMQW活性層4eを形成する。
そして、原料ガスをNH3およびTMGaに変えるとともに、Cp2Mgからなるドーパントガスを用いて、MQW活性層4e上に、約100nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型光ガイド層4fを成長させる。この後、原料ガスにTMAlをさらに加えて、p型光ガイド層4f上に、約20nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.1Ga0.9Nからなるp型キャップ層4gを成長させる。これにより、n型キャリアブロック層4a、n型光ガイド層4b、MQW活性層4e、p型光ガイド層4fおよびp型キャップ層4gからなる発光層4が形成される。
次に、図7に示すように、基板温度を約1100℃の成長温度に保持した状態で、H2およびN2からなるキャリアガスと、NH3、TMGaおよびTMAlからなる原料ガスと、Cp2Mgからなるドーパントガスとを用いて、発光層4上に、約400nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層5を成長させる。この後、原料ガスをNH3およびTMGaに変えて、p型クラッド層5上に、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層6を成長させる。
この際、n型GaN基板1の転位が伝播することにより、n型GaN基板1の裏面からp型コンタクト層6の上面まで延びる転位の集中している領域8が形成される。
この後、窒素ガス雰囲気中で、約800℃の温度条件下でアニール処理する。
次に、図8に示すように、真空蒸着法を用いて、p型コンタクト層6上の所定領域に、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極9を形成した後、p側オーミック電極9上に、約250nmの厚みを有するNi層25を形成する。この際、p側オーミック電極9およびNi層25が、約1.5μmの幅を有するストライプ状(細長状)になるように形成する。
次に、図9に示すように、Cl2系ガスによるドライエッチングを用いて、Ni層25をマスクとして、p型コンタクト層6およびp型クラッド層5の上面から約300nmの厚み分をエッチングする。これにより、p型クラッド層5の凸部とp型コンタクト層6とから構成されるとともに、所定の方向に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部7が形成される。この後、Ni層25を除去する。
次に、図10に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面を覆うように、約250nmの厚みを有するSiN膜(図示せず)を形成した後、p側オーミック電極9の上面上に位置するSiN膜を除去することによって、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜10を形成する。
次に、図11に示すように、真空蒸着法を用いて、絶縁膜10の表面上に、p側オーミック電極9の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極11を形成する。この後、n型GaN基板1の厚みが約100μmになるように、n型GaN基板1の裏面を研磨する。
次に、第1実施形態では、プラズマCVD法、SOG(スピンオングラス)法(塗布法)、または、電子ビーム蒸着法を用いて、n型GaN基板1の裏面上の全面に、約250nmの厚みを有するSiO2膜(図示せず)を形成する。その後、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域8以外の領域に位置するSiO2膜を除去することによって、図12に示すように、約250nmの厚みと約40μmの幅とを有するSiO2膜からなる絶縁膜12を形成する。これにより、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8が、絶縁膜12により覆われる。
この後、図1に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板1の裏面上に、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8以外の領域に接触するとともに、絶縁膜12を覆うように、n側電極13を形成する。なお、n側電極13を形成する際には、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とを形成する。最後に、素子のp側パッド電極11が形成された側からスクライブライン(図示せず)を形成した後、そのスクライブラインに沿って素子を各チップに劈開することによって、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
(第2実施形態)
図13は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図13を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、n型GaN基板1および窒化物系半導体各層(2〜5)の端部の所定領域が除去されている。このため、図1に示した第1実施形態のような転位の集中している領域8が存在しない。また、n型GaN基板1の裏面上には、n型GaN基板1の裏面の全面に接触するように、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなるn側電極33が形成されている。なお、n側電極33は、本発明の「裏面側電極」の一例である。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
図14および図15は、図13に示した第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図13〜図15を参照して、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図3〜図11に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、p側パッド電極11までを形成した後、n型GaN基板1の裏面を研磨する。この後、n型GaN基板1の裏面上に、n型GaN基板1の裏面の全面に接触するように、上記第1実施形態と同様の厚みおよび組成を有するn側電極33を形成することによって、図14に示す構造が得られる。
最後に、第2実施形態では、転位の集中している領域8を挟むように、素子のp側パッド電極11が形成された側からスクライブライン40を形成する。具体的には、隣接する素子間の中心線(図示せず)から約10μmの位置にスクライブラインを形成する。この後、図15に示すように、そのスクライブライン40(図14参照)に沿って、n型GaN基板1の裏面からp型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面まで延びる転位の集中している領域8が同じ幅で除去されるように、素子を各チップに劈開する。このようにして、図13に示した第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
第2実施形態の製造プロセスでは、上記のように、n型GaN基板1の裏面からp型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面まで延びる転位の集中している領域8が同じ幅で除去されるように、素子を各チップに劈開することによって、転位の集中している領域8に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を容易に抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、動作の安定した窒化物系半導体レーザ素子を容易に製造することができる。
また、発光層4で発生した光が、転位の集中している領域8で吸収されるのを容易に抑制することができる。これにより、容易に、転位の集中している領域8で吸収された光が意図しない波長で再び発光するのを抑制することができるので、このような再発光に起因する色純度の劣化を抑制することができる。
(第3実施形態)
図16は、本発明の第3実施形態による発光ダイオード素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図17は、図16に示した第3実施形態による発光ダイオード素子の発光層の詳細を示した拡大断面図である。図16および図17を参照して、この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、本発明を発光ダイオード素子に適用する場合の例について説明する。
すなわち、この第3実施形態では、図16に示すように、n型GaN基板1上に、約5μmの厚みを有するSiがドープされたn型GaNからなるn型クラッド層52が形成されている。なお、n型クラッド層52は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
n型クラッド層52上には、発光層53が形成されている。この発光層53は、図17に示すように、約5nmの厚みを有するアンドープGaNからなる6層の障壁層53aおよび約5nmの厚みを有するアンドープIn0.35Ga0.65Nからなる5層の井戸層53bが交互に積層されたMQW活性層53cと、約10nmの厚みを有するアンドープGaNからなる保護層53dとによって構成されている。なお、発光層53は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
そして、図16に示すように、発光層53上には、約0.15μmの厚みを有するMgがドープされたp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層54が形成されている。p型クラッド層54上には、約0.3μmの厚みを有するMgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層55が形成されている。なお、p型クラッド層54およびp型コンタクト層55は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
そして、n型GaN基板1および窒化物系半導体各層(52〜55)の端部の近傍には、n型GaN基板1の裏面からp型コンタクト層55の上面まで延びる転位の集中している領域56が形成されている。
ここで、第3実施形態による発光ダイオード素子では、p型コンタクト層55上の転位の集中している領域56に、約250nmの厚みと約40μmの幅とを有するSiO2膜からなる絶縁膜57が形成されている。また、p型コンタクト層55上には、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するとともに、絶縁膜57を覆うように、p側オーミック電極58が形成されている。このp側オーミック電極58は、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなる。なお、p側オーミック電極58は、本発明の「表面側電極」の一例である。そして、p側オーミック電極58上には、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極59が形成されている。
また、第3実施形態では、n型GaN基板1の裏面上に、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するように、n側オーミック透明電極60が形成されている。このn側オーミック透明電極60は、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、約5nmの厚みを有するAl層と、約15nmの厚みを有するPt層と、約40nmの厚みを有するAu層とからなる。また、n側オーミック透明電極60の端面と素子の端面との間の距離Wは、約40μmである。なお、n側透明電極60は、本発明の「裏面側電極」の一例である。そして、n側オーミック透明電極60の裏面上の所定領域には、n側オーミック透明電極60の裏面に近い方から順に、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるn側パッド電極61が形成されている。
第3実施形態では、上記のように、p型コンタクト層55上の転位の集中している領域に、絶縁膜57を形成するとともに、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するように、p側オーミック電極58を形成することによって、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56は、絶縁膜57により露出しないように覆われるので、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を容易に抑制することができる。また、n型GaN基板1の裏面上に、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するように、n側オーミック透明電極60を形成することによって、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56に電流が流れることに起因するリーク電流の発生も抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、容易に、半導体素子の動作を安定化することができる。また、転位の集中している領域56に流れる電流を低減することができるので、転位の集中している領域56からの不必要な発光を低減できる。
また、第3実施形態では、n側オーミック透明電極60の端面と素子の端面との間の距離Wを、約40μmにすることによって、n側オーミック透明電極60上に形成されたn側パッド電極61に半田を融着する場合に、半田が素子の側面にまで流れるのを抑制することができる。これにより、素子の短絡不良の発生を抑制することができる。
図18〜図21は、図16に示した第3実施形態による発光ダイオード素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図16〜図21を参照して、第3実施形態による発光ダイオード素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図18に示すように、MOCVD法を用いて、n型GaN基板1上に、n型クラッド層52、発光層53、p型クラッド層54およびp型コンタクト層55を順次成長させる。
具体的には、基板温度を約1000℃〜約1200℃(たとえば、約1150℃)の成長温度に保持した状態で、H2およびN2からなるキャリアガス(H2含有率:約50%)と、NH3およびTMGaからなる原料ガスと、SiH4からなるドーパントガスとを用いて、n型GaN基板1上に、約5μmの厚みを有するSiがドープされたn型GaNからなるn型クラッド層52を、約3μm/hの成長速度で成長させる。
次に、図17に示したように、基板温度を約700℃〜約1000℃(たとえば、約850℃)の成長温度に保持した状態で、H2およびN2からなるキャリアガス(H2含有率:約1%〜約5%)と、NH3、TEGaおよびTMInからなる原料ガスとを用いて、n型クラッド層52(図18参照)上に、約5nmの厚みを有するアンドープGaNからなる6層の障壁層53aと、約5nmの厚みを有するアンドープIn0.35Ga0.65Nからなる5層の井戸層53bとを、約0.4nm/sの成長速度で交互に成長させることによりMQW活性層53cを形成する。続いて、約10nmの厚みを有するアンドープGaNからなる保護層53dを、約0.4nm/sの成長速度で成長させる。これにより、MQW活性層53cおよび保護層53dからなる発光層53が形成される。
次に、図18に示すように、基板温度を約1000℃〜約1200℃(たとえば、約1150℃)の成長温度に保持した状態で、H2およびN2からなるキャリアガス(H2含有率:約1%〜約3%)と、NH3、TMGaおよびTMAlからなる原料ガスと、Cp2Mgからなるドーパントガスとを用いて、発光層53上に、約0.15μmの厚みを有するMgがドープされたp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層54を、約3μm/hの成長速度で成長させる。続いて、原料ガスをNH3およびTMGaに変えて、p型クラッド層54上に、約0.3μmの厚みを有するMgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層55を、約3μm/hの成長速度で成長させる。
この際、n型GaN基板1の転位が伝播することにより、n型GaN基板1の裏面からp型コンタクト層55の上面まで延びる転位の集中している領域56が形成される。また、H2およびN2からなるキャリアガスのH2の含有率を低くすることによって、窒素ガス雰囲気中でアニール処理することなく、Mgドーパントを活性化させることができる。
次に、第3実施形態では、プラズマCVD法、SOG法(塗布法)、または、電子ビーム蒸着法を用いて、p型コンタクト層55上の全面に、約250nmの厚みを有するSiO2膜(図示せず)を形成する。その後、p型コンタクト層55上の転位の集中している領域56以外の領域に位置するSiO2膜を除去することによって、図19に示すように、約250nmの厚みと約40μmの幅とを有する絶縁膜57を形成する。これにより、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56が、絶縁膜57により覆われる。
次に、図20に示すように、真空蒸着法を用いて、p型コンタクト層55上に、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するとともに、絶縁膜57を覆うように、p側オーミック電極58を形成する。なお、p側オーミック電極58を形成する際には、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とを形成する。次に、真空蒸着法を用いて、p側オーミック電極58上に、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極59を形成する。この後、n型GaN基板1の厚みが約100μmになるように、n型GaN基板1の裏面を研磨する。
次に、第3実施形態では、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板1の裏面上の全面に、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、約5nmの厚みを有するAl層と、約15nmの厚みを有するPt層と、約40nmの厚みを有するAu層とからなる金属層(図示せず)を形成する。その後、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域56以外の領域に位置する金属層を除去することによって、図21に示すように、n側オーミック透明電極60を形成する。この際、n側オーミック透明電極60の端面と素子の端面との間の距離Wが、約40μmになるように金属層を除去する。
この後、図16に示したように、真空蒸着法を用いて、n側オーミック透明電極60の裏面上の所定領域に、n側オーミック透明電極60の裏面に近い方から順に、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるn側パッド電極61を形成する。最後に、素子のp側パッド電極59が形成された側からスクライブライン(図示せず)を形成した後、そのスクライブラインに沿って素子を各チップに劈開することによって、第3実施形態による発光ダイオード素子が形成される。
(第4実施形態)
図22は、本発明の第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図22を参照して、この第4実施形態では、上記第1実施形態と異なり、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面上に、約0.4μmの厚みを有するGeがドープされたn型Al0.12Ga0.88Nからなるn型電流ブロック層80が形成されている。
そして、この第4実施形態では、n型GaN基板1および窒化物系半導体各層(2〜5、80)の端部の近傍には、n型GaN基板1の裏面からn型電流ブロック層80の上面まで延びる転位の集中している領域8が形成されている。また、n型電流ブロック層80上には、リッジ部7を構成するp型コンタクト層6の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極79が形成されている。また、p側オーミック電極79上には、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極81が形成されている。なお、n型電流ブロック層80は、本発明の「半導体素子層」の一例であり、p側オーミック電極79は、本発明の「表面側電極」の一例である。
ここで、第4実施形態では、上記第1実施形態と同様、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域8を覆うように、約250nmの厚みと約40μmの幅とを有するSiN膜からなる絶縁膜12が形成されている。また、n型GaN基板1の裏面上には、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8以外の領域に接触するとともに、絶縁膜12を覆うように、n側電極13が形成されている。
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第4実施形態では、上記のように、電流ブロック層として、n型Al0.12Ga0.88Nからなるn型電流ブロック層80が形成された窒化物系半導体レーザ素子においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域8に、絶縁膜12を形成するとともに、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8以外の領域に接触するように、n側電極13を形成することによって、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8は、絶縁膜12により露出しないように覆われるので、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を容易に抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、容易に、半導体素子の動作を安定化することができる。ただし、第4実施形態では、n型電流ブロック層80の上面の転位が集中している領域8がp側オーミック電極79と接触しているので、上記第1実施形態よりもリーク電流が発生しやすい。
図23〜図26は、図22に示した第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図22〜図26を参照して、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図3〜図7に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、p型コンタクト層6までを形成した後、窒素ガス雰囲気中でアニール処理する。次に、図23に示すように、プラズマCVD法を用いて、p型コンタクト層6上の所定領域に、約200nmの厚みを有するSiN層91を形成した後、SiN層91上に、約250nmの厚みを有するNi層92を形成する。この際、SiN層91およびNi層92が、約1.5μmの幅を有するストライプ状(細長状)になるように形成する。
次に、図24に示すように、Cl2系ガスによるドライエッチングを用いて、Ni層92をマスクとして、p型コンタクト層6およびp型クラッド層5の上面から約300nmの厚み分をエッチングする。これにより、p型クラッド層5の凸部とp型コンタクト層6とから構成されるとともに、所定の方向に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部7が形成される。この後、Ni層92を除去する。
次に、図25に示すように、MOCVD法を用いて、SiN層91を選択成長マスクとして、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面上に、約0.4μmの厚みを有するGeがドープされたn型Al0.12Ga0.88Nからなるn型電流ブロック層80を形成する。この際、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面の転位が伝播するので、n型GaN基板1の裏面からn型電流ブロック層80の上面まで延びる転位の集中している領域8が形成される。この後、SiN層91を除去する。
次に、図26に示すように、真空蒸着法を用いて、n型電流ブロック層80上に、リッジ部7を構成するp型コンタクト層6の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極79を形成する。その後、p側オーミック電極79上に、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極81を形成する。この後、n型GaN基板1の厚みが約100μmになるように、n型GaN基板1の裏面を研磨する。
次に、図12に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、図22に示したように、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8を覆うように、絶縁膜12を形成する。この後、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板1の裏面上に、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域8以外の領域に接触するように、かつ、絶縁膜12を覆うように、n側電極13を形成する。最後に、素子のp側パッド電極81が形成された側からスクライブライン(図示せず)を形成した後、そのスクライブラインに沿って素子を各チップに劈開することによって、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
(第5実施形態)
図27は、本発明の第5実施形態による発光ダイオード素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図27を参照して、この第5実施形態では、上記第3実施形態と異なり、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域56に、約250nmの厚みと約40μmの幅とを有するSiO2膜からなる絶縁膜100が形成されている。
また、第5実施形態では、n型GaN基板1の裏面上に、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するとともに、絶縁膜100を覆うように、上記第3実施形態と同様の厚みおよび組成を有するn側オーミック透明電極110が形成されている。このn側オーミック透明電極110は、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、約5nmの厚みを有するAl層と、約15nmの厚みを有するPt層と、約40nmの厚みを有するAu層とからなる。n側オーミック透明電極110の裏面上の所定領域には、n側オーミック透明電極110の裏面に近い方から順に、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるn側パッド電極111が形成されている。なお、n側オーミック透明電極110は、本発明の「裏面側電極」の一例である。なお、第5実施形態のその他の構成は、上記第3実施形態と同様である。
第5実施形態では、上記のように、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域56に、絶縁膜100を形成するとともに、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するように、n側オーミック透明電極110を形成することによって、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56は、絶縁膜100により露出しないように覆われるので、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を容易に抑制することができる。また、上記第3実施形態と同様、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56は、絶縁膜57により露出しないように覆われるので、p型コンタクト層55の上面の転位の集中している領域56に電流が流れることに起因するリーク電流の発生も容易に抑制することができる。これらの結果、素子の定電流駆動時の光出力をより容易に安定化することができるので、より容易に、半導体素子の動作を安定化することができる。また、転位の集中している領域56に流れる電流を低減することができるので、転位の集中している領域56からの不必要な発光を低減できる。
図28は、図27に示した第5実施形態による発光ダイオード素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図27および図28を参照して、第5実施形態による発光ダイオード素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図18〜図20に示した第3実施形態と同様の製造プロセスを用いて、p側パッド電極59までを形成した後、n型GaN基板1の裏面を研磨する。次に、第5実施形態では、プラズマCVD法、SOG法(塗布法)、または、電子ビーム蒸着法を用いて、n型GaN基板1の裏面上の全面に、約250nmの厚みを有するSiO2膜(図示せず)を形成する。その後、n型GaN基板1の裏面上の転位の集中している領域56以外の領域に位置するSiO2膜を除去することによって、図28に示すように、約250μmの厚みと約40μmの幅とを有するSiO2膜からなる絶縁膜100を形成する。これにより、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56が、絶縁膜100により覆われる。次に、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板1の裏面上に、n型GaN基板1の裏面の転位の集中している領域56以外の領域に接触するとともに、絶縁膜100を覆うように、n側オーミック透明電極110を形成する。なお、n側オーミック透明電極110を形成する際には、n型GaN基板1の裏面に近い方から順に、約5nmの厚みを有するAl層と、約15nmの厚みを有するPt層と、約40nmの厚みを有するAu層とを形成する。
この後、図27に示したように、真空蒸着法を用いて、n側オーミック透明電極110の裏面上の所定領域に、n側オーミック透明電極110の裏面に近い方から順に、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるn側パッド電極111を形成する。最後に、素子のp側パッド電極59が形成された側からスクライブライン(図示せず)を形成した後、そのスクライブラインに沿って素子を各チップに劈開することによって、第5実施形態による発光ダイオード素子が形成される。
(第6実施形態)
図29は、本発明の第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図29を参照して、この第6実施形態では、上記第1実施形態と異なり、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面からn型クラッド層3中に達する深さを有するイオン注入層120が、転位の集中している領域8に設けられている。このイオン注入層120は、炭素(C)などの不純物をイオン注入することにより形成されているため、イオン注入層120が設けられた領域は、高抵抗領域となる。なお、イオン注入層120は、本発明の「高抵抗領域」の一例である。なお、第6実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第6実施形態では、上記のように、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面からn型クラッド層3中に達する深さを有するイオン注入層120を、転位の集中している領域8に設けることによって、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面の転位の集中している領域8は、イオン注入層120により電流が流れにくくなるので、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面の転位の集中している領域8に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、容易に、半導体素子の動作を安定化することができる。
なお、第6実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
次に、第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスとしては、図9に示した第1実施形態の製造プロセスの後、絶縁膜10を形成する前に、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面の転位の集中している領域8に、炭素(C)を、約150keVでイオン注入する。これにより、p型クラッド層5の凸部以外の平坦部の表面からn型クラッド層3中に達するイオン注入深さ(厚み)を有するとともに、転位の集中している領域8に配置されるイオン注入層120を形成する。なお、イオン注入条件としては、ドーズ量を、約1×1014cm−2以上にするのが好ましい。
(第7実施形態)
図30は、本発明の第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図30を参照して、この第7実施形態では、上記第4実施形態の構造(図22参照)において、n型電流ブロック層80の上面からn型クラッド層3の上面に達する深さを有する凹部130が、転位の集中している領域8よりも内側の領域(素子の両端部から約50μm〜約100μmの範囲)に設けられている。また、n型電流ブロック層80上の凹部130よりも内側の領域には、p型コンタクト層6の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極149が形成されている。また、p側オーミック電極149上には、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極151が形成されている。なお、p側オーミック電極149は、本発明の「表面側電極」の一例である。なお、第7実施形態のその他の構成は、上記第4実施形態と同様である。
第7実施形態では、上記のように、n型電流ブロック層80の上面からn型クラッド層3の上面に達する深さを有する凹部130を、転位の集中している領域8よりも内側の領域(両端部から約50μm〜約100μmの範囲)に設けるとともに、n型電流ブロック層80上の凹部130よりも内側の領域に、p型コンタクト層6の上面に接触するように、p側オーミック電極149を形成することによって、n型電流ブロック層80の上面の転位の集中している領域8に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を安定化することができるので、半導体素子の動作を安定化することができる。また、発光層4、p型クラッド層5およびn型電流ブロック層80の転位の集中している領域8よりも内側の領域と集中している領域8とが凹部130により分断されるので、転位の集中している領域8よりも内側の発光層4で発生した光が、転位の集中している領域8で吸収されるのを抑制することができる。これにより、転位の集中している領域8で吸収された光が意図しない波長で再び発光するのを抑制することができるので、このような再発光に起因する色純度の劣化を抑制することができる。
なお、第7実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
次に、第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスとしては、図25に示した第4実施形態の製造プロセスにおいて、n型電流ブロック層80を形成した後に、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)法を用いて、転位の集中している領域8よりも内側の領域に、n型電流ブロック層80の上面からn型クラッド層3の上面に達する深さを有する凹部130を形成する。そして、真空蒸着法を用いて、凹部130の内面上を含む全面に、p側オーミック電極149およびp側パッド電極151を構成する金属層(図示せず)を形成する。この後、n型電流ブロック層80上の転位の集中している領域8および凹部130の内面上に位置する金属層を除去する。これにより、n型電流ブロック層80上の凹部130よりも内側の領域に、p型コンタクト層6の上面と接触するように、p側オーミック電極149を形成するとともに、p側オーミック電極149上に、p側パッド電極151を形成する。
図31は、図30に示した第7実施形態の第1変形例による窒化物系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図31を参照して、この第7実施形態の第1変形例による窒化物系半導体レーザ素子では、転位の集中している領域8よりも内側の領域に設けられている凹部160の深さが、n型電流ブロック層80の上面からn型クラッド層3中に達している。このように構成しても、上記第7実施形態と同様の効果が得られる。
図32は、図30に示した第7実施形態の第2変形例による窒化物系半導体レーザ素子の構造を示した断面図である。図32を参照して、この第7実施形態の第2変形例による窒化物系半導体レーザ素子では、n型電流ブロック層80の上面上の転位の集中している領域8および凹部130を埋め込むように、絶縁膜170が形成されている。また、n型電流ブロック層80、絶縁膜170およびp型コンタクト層6上の全面には、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極179が形成されている。また、p側オーミック電極179上には、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極181が形成されている。このように構成しても、上記第7実施形態と同様の効果が得られる。
(第8実施形態)
図33は、本発明の第8実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図33を参照して、この第8実施形態では、上記第4実施形態の構造(図22参照)において、n型電流ブロック層80の上面から約0.2μmの深さを有するイオン注入層190が、転位の集中している領域8に設けられている。このイオン注入層190は、炭素(C)などの不純物をイオン注入することにより形成されているため、イオン注入層190が設けられた領域は、高抵抗領域となる。なお、イオン注入層190は、本発明の「高抵抗領域」の一例である。なお、第8実施形態のその他の構成は、上記第4実施形態と同様である。
第8実施形態では、上記のように、n型電流ブロック層80の上面から約0.2μmの深さを有するイオン注入層190を、転位の集中している領域8に設けることによって、n型電流ブロック層80の上面の転位の集中している領域8は、イオン注入層190により電流が流れにくくなるので、n型電流ブロック層80の上面の転位の集中している領域8に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、容易に、半導体素子の動作を安定化することができる。
なお、第8実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
次に、第8実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスとしては、上記第4実施形態の製造プロセスにおいて、p側オーミック電極79を形成する工程(図26参照)の前に、n型電流ブロック層80の上面の転位の集中している領域8に、炭素(C)を、約40keVでイオン注入する。これにより、図33に示すように、n型電流ブロック層80の上面から約0.2μmのイオン注入深さ(厚み)を有するとともに、転位の集中している領域8に配置されるイオン注入層190を形成する。なお、イオン注入条件としては、ドーズ量を、約1×1014cm−2以上にするのが好ましい。
(第9実施形態)
図34は、本発明の第9実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。この第9実施形態では、上記第1〜第8実施形態と異なり、サファイア基板を含む窒化物系半導体層を、窒化物系半導体レーザ素子の基板として用いる場合の例について説明する。
すなわち、この第9実施形態では、図34に示すように、サファイア基板201a上に、約20nmの厚みを有するAlGaN層201bが形成されている。AlGaN層201b上には、約1μmの厚みを有するGaN層201cが形成されている。このGaN層201cの全領域には、縦方向に伝播された転位が形成されている。そして、GaN層201c上の所定領域には、約200nmの厚みを有するSiNまたはSiO2からなるマスク層201dが形成されている。このマスク層201dは、後述する製造プロセスにおいて、選択成長マスクとして機能する。また、GaN層201c上には、マスク層201dを覆うように、約5μmの厚みを有するアンドープのGaN層201eが形成されている。そして、この第9実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の基板201は、サファイア基板201aと、AlGaN層201bと、GaN層201cと、マスク層201dと、GaN層201eとによって構成される。なお、基板201のGaN層201eは、本発明の「窒化物系半導体基板」の一例である。
基板201上には、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層202が形成されている。n型層202上には、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層203が形成されている。n型クラッド層203上には、図2に示した第1実施形態の発光層4と同様の構成を有する発光層204が形成されている。なお、n型層202、n型クラッド層203および発光層204は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
発光層204上には、凸部を有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層205が形成されている。このp型クラッド層205の凸部は、約1.5μmの幅と約300nmの高さとを有する。また、p型クラッド層205の凸部以外の平坦部は、約100nmの厚みを有する。そして、p型クラッド層205の凸部上には、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層206が形成されている。そして、p型クラッド層205の凸部とp型コンタクト層206とによって、所定の方向に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部207が構成される。なお、p型クラッド層205およびp型コンタクト層206は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
また、p型クラッド層205の凸部以外の平坦部からn型層202までの所定領域が除去されることにより、n型クラッド層202の表面の一部が露出されている。そして、基板201を構成するGaN層201eおよび窒化物系半導体各層(202〜205)の一方の端部の近傍には、GaN層201cのAlGaN層201b側の界面からp型クラッド層205の凸部以外の平坦部の表面まで延びる転位の集中している領域208が形成されている。また、基板201を構成するGaN層201eおよびn型層202の他方の端部の近傍にも、GaN層201cのAlGaN層201b側の界面からn型層202の露出された表面まで延びる転位の集中している領域208が形成されている。
そして、リッジ部207を構成するp型コンタクト層206上には、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極209が形成されている。なお、p側オーミック電極209は、本発明の「表面側電極」の一例である。
ここで、第9実施形態では、p側オーミック電極209の上面と、n型層202の露出された表面の転位の集中している領域208以外の所定領域とが露出されるように、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜210が形成されている。すなわち、p側およびn側の転位の集中している領域208の表面は、絶縁膜210により覆われている。
そして、p型クラッド層205の凸部以外の平坦部の表面上に位置する絶縁膜210の表面上には、p側オーミック電極209の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極211が形成されている。
また、第9実施形態では、n型層202の露出された表面の転位の集中している領域208以外の領域に接触するように、n側電極212が形成されている。このn側電極212は、下層から上層に向かって、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなる。なお、n側電極212は、本発明の「表面側電極」の一例である。
第9実施形態では、上記のように、n型層202の露出された表面の転位の集中している領域208以外の所定領域が露出されるように絶縁膜210を形成するとともに、n型層202の露出された表面の転位の集中している領域208以外の領域に接触するように、n側電極212を形成することによって、n型層202の露出された表面の転位の集中している領域208は、絶縁膜210により露出しないように覆われるので、n型層202の露出された表面の転位の集中している領域208に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を容易に抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、容易に、半導体素子の動作を安定化することができる。また、転位の集中している領域208に電流が流れることに起因する不必要な発光を抑制することができる。
図35〜図38は、図34に示した第9実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図34〜図38を参照して、第9実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図35を参照して、基板201の形成プロセスについて説明する。具体的には、図35に示すように、MOCVD法を用いて、基板温度を約600℃に保持した状態で、サファイア基板201a上に、約20nmの厚みを有するAlGaN層201bを成長させる。その後、基板温度を約1100℃に変えて、AlGaN層201b上に、約1μmの厚みを有するGaN層201cを成長させる。この際、GaN層201cの全領域に、縦方向に伝播された転位が形成される。次に、プラズマCVD法を用いて、GaN層201c上に所定の間隔を隔てて、約200nmの厚みを有するSiNまたはSiO2からなるマスク層201dを形成する。
次に、HVPE法を用いて、基板温度を約1100℃に保持した状態で、マスク層201dを選択成長マスクとして、GaN層201c上に、約5μmの厚みを有するアンドープのGaN層201eを横方向成長させる。この際、GaN層201eは、マスク層201dが形成されていないGaN層201c上に選択的に縦方向に成長した後、徐々に横方向に成長する。このため、マスク層201dが形成されていないGaN層201c上に位置するGaN層201eには、縦方向に伝播された転位の集中する領域208が形成される。その一方、マスク層201d上に位置するGaN層201eには、GaN層201eが横方向に成長することにより転位が横方向へ曲げられるので、縦方向に伝播された転位が形成されにくい。そして、サファイア基板201aと、AlGaN層201bと、GaN層201cと、マスク層201dと、GaN層201eとによって、基板201が構成される。
次に、図36に示すように、MOCVD法を用いて、基板201上に、n型層202、n型クラッド層203、発光層204、p型クラッド層205およびp型コンタクト層206を順次成長させる。そして、p型コンタクト層206上の所定領域に、ストライプ状(細長状)のp側オーミック電極209を形成する。その後、p型コンタクト層206およびp型クラッド層205の上面から約300nmの厚み分をエッチングすることによって、p型クラッド層205の凸部とp型コンタクト層206とから構成されるとともに、所定の方向に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部207を形成する。
次に、図37に示すように、p型クラッド層205の凸部以外の平坦部の表面からn型層202までの所定領域をエッチングすることにより、n型層202の表面の一部を露出させる。
次に、プラズマCVD法を用いて、全面を覆うように、約250nmの厚みを有するSiN膜(図示せず)を形成する。その後、p側オーミック電極209上に位置するSiN膜と、n型層202の露出された表面上の転位の集中している領域208以外の所定領域に位置するSiN膜とを除去することによって、図38に示すように、絶縁膜210を形成する。
次に、図34に示したように、真空蒸着法を用いて、p型クラッド層205の凸部以外の平坦部の表面上に位置する絶縁膜210の表面上に、p側オーミック電極209の上面に接触するように、p側パッド電極211を形成する。この後、第9実施形態では、n型層202の露出された表面上に位置する絶縁膜210上の所定領域に、n型層202の露出された表面の転位の集中している領域208以外の領域に接触するように、n側電極212を形成する。最後に、素子のp側パッド電極211が形成された側からスクライブライン(図示せず)を形成した後、そのスクライブラインに沿って素子を各チップに劈開することによって、第9実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
(第10実施形態)
図39は、本発明の第10実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図39を参照して、この第10実施形態では、上記第1〜第9実施形態と異なり、基板としてn型GaN基板を用いるとともに、n型クラッド層の転位の集中している領域の厚みを、n型クラッド層の転位の集中している領域以外の領域の厚みよりも小さくする場合について説明する。
この第10実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図39に示すように、約100μmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のキャリア濃度を有する酸素がドープされたn型GaN基板221上に、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層222が形成されている。なお、n型GaN基板221は、ウルツ鉱型構造を有するとともに、(0001)面の表面を有する。n型層222上には、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.05Ga0.95Nからなるn型クラッド層223が形成されている。また、n型GaN基板221、n型層222およびn型クラッド層223の端部の近傍には、n型GaN基板221の裏面からn型クラッド層223の表面にまで延びるとともに、約10μmの幅を有する転位の集中している領域228が、約400μmの周期でストライプ状(細長状)に形成されている。なお、n型GaN基板221は、本発明の「基板」の一例であり、n型層222およびn型クラッド層223は、本発明の「半導体素子層」および「第1半導体層」の一例である。
ここで、第10実施形態では、n型クラッド層223の転位の集中している領域228の厚みが、n型クラッド層223の転位の集中している領域228以外の領域の厚みよりも小さくなるように、n型クラッド層223の上面から所定の深さまでが除去されている。また、n型クラッド層223上の転位の集中している領域228以外の領域には、MQW活性層を有する発光層224が形成されている。この発光層224は、図2に示した第1実施形態の発光層4と同様の厚みおよび組成を有する窒化物系半導体各層からなるとともに、n型クラッド層223の転位の集中している領域228以外の領域の幅よりも小さい幅(約7.5μm)を有する。なお、発光層224は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
発光層224上には、凸部を有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.05Ga0.95Nからなるp型クラッド層225が形成されている。このp型クラッド層225の凸部は、約1.5μmの幅を有するとともに、平坦部の上面から約300nmの突出高さを有する。また、p型クラッド層225の平坦部は、約100nmの厚みを有する。そして、p型クラッド層225の凸部上には、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層226が形成されている。そして、p型クラッド層225の凸部とp型コンタクト層226とによって、所定の方向に延びるストライプ状(細長状)のリッジ部227が構成される。なお、p型クラッド層225およびp型コンタクト層226は、本発明の「半導体素子層」および「第2半導体層」の一例である。
そして、リッジ部227を構成するp型コンタクト層226上には、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とからなるp側オーミック電極229が形成されている。なお、p側オーミック電極229は、本発明の「表面側電極」の一例である。また、n型クラッド層223の除去されて露出した表面およびp側オーミック電極229の上面以外の領域上には、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜230が形成されている。絶縁膜230の表面上には、p側オーミック電極229の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極231が形成されている。また、n型GaN基板221の裏面上には、n型GaN基板221の裏面の全面に接触するように、n型GaN基板221の裏面に近い方から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなるn側電極232が形成されている。
第10実施形態では、上記のように、n型クラッド層223の転位の集中している領域228の厚みを、n型クラッド層223の転位の集中している領域228以外の領域の厚みよりも小さくするとともに、n型クラッド層223上の転位の集中している領域228以外の領域に、発光層224を形成することによって、発光層224を介して形成されるn型クラッド層223とp型クラッド層225とのpn接合領域には転位の集中している領域228が形成されないので、転位の集中している領域228に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を容易に安定化することができるので、容易に、窒化物系半導体レーザ素子の動作を安定化することができる。また、転位の集中している領域228に流れる電流を低減することができるので、転位の集中している領域228からの不必要な発光を低減することができる。
また、第10実施形態では、発光層224の幅を、n型クラッド層223の転位の集中している領域228以外の領域の幅よりも小さくすることによって、発光層224を介して形成されるn型クラッド層223とp型クラッド層225とのpn接合領域が小さくなるので、n型クラッド層223とp型クラッド層225とによるpn接合容量を小さくすることができる。これにより、窒化物系半導体レーザ素子の応答速度を高速化することができる。
図40〜図45は、図39に示した第10実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図39〜図45を参照して、第10実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図40に示すように、図3〜図9に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、p型クラッド層225の凸部とp型コンタクト層226とによって構成されるリッジ部227およびp側オーミック電極229までを形成する。この後、p型クラッド層225の平坦部上の転位の集中している領域228以外の所定領域に、p側オーミック電極229およびリッジ部227の表面を覆うように、レジスト241を形成する。
次に、図41に示すように、レジスト241をマスクとして、p型クラッド層225の平坦部の上面から発光層224までをエッチングする。これにより、p型クラッド層225および発光層224の転位の集中している領域228を除去するとともに、p型クラッド層225および発光層224の幅を、n型クラッド層223の転位の集中している領域228以外の領域の幅よりも小さくする。この後、レジスト241を除去する。
次に、図42に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面を覆うように、約250nmの厚みを有するSiN膜(図示せず)を形成した後、p側オーミック電極229の上面上に位置するSiN膜を除去することによって、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜230を形成する。
次に、図43に示すように、真空蒸着法を用いて、絶縁膜230の表面上の所定領域に、p側オーミック電極229の上面に接触するように、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とからなるp側パッド電極231を形成する。そして、n型GaN基板221の厚みが約100μmになるように、n型GaN基板221の裏面を研磨する。この後、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板221の裏面上に、n型GaN基板221の裏面の全面に接触するように、n型GaN基板221の裏面に近い方から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とからなるn側電極232を形成する。
次に、図44に示すように、塩素によるRIE法を用いて、隣接する素子の境界領域におけるp側パッド電極231の表面から、絶縁膜230およびn型クラッド層223の所定の深さまでの転位の集中している領域228を除去する。これにより、素子の転位の集中している領域228に、転位の集中している領域228の幅よりも大きい幅W2(たとえば、約60μm)を有する溝部233を形成する。
次に、図45に示すように、ダイヤモンドポイントを用いて、溝部233の底部の中央部に、スクライブライン234を形成する。この後、そのスクライブライン234に沿って、素子を各チップに分離する。このようにして、図39に示した第10実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
(第11実施形態)
図46は、本発明の第11実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図46を参照して、この第11実施形態では、上記第10実施形態と異なり、発光層224aがn型クラッド層223aと同じ幅を有する。また、n型GaN基板221aの転位の集中している領域228の厚みが、n型GaN基板221aの転位の集中している領域228以外の領域の厚みよりも小さくなるように、n型GaN基板221aの上面から所定の深さまでが除去されている。そして、n型GaN基板221a上の転位の集中している領域228以外の領域に、n型層222a、n型クラッド層223a、発光層224a、p型クラッド層225aおよびp型コンタクト層226aが順次形成されている。
また、p型クラッド層225aの平坦部上、リッジ部227aおよびp側オーミック電極229aの側面上には、絶縁膜260が形成されている。絶縁膜260の表面上には、p側オーミック電極229aの上面に接触するように、p側パッド電極261が形成されている。なお、n型GaN基板221a、n型層222a、n型クラッド層223a、発光層224a、p型クラッド層225a、p型コンタクト層226aおよびp側オーミック電極229aは、それぞれ、上記第10実施形態のn型GaN基板221、n型層222、n型クラッド層223、発光層224、p型クラッド層225、p型コンタクト層226およびp側オーミック電極229と同様の厚みおよび組成を有する。また、絶縁膜260およびp側パッド電極261は、それぞれ、上記第10実施形態の絶縁膜230およびp側パッド電極231と同様の厚みおよび組成を有する。
なお、第11実施形態のその他の構成は、上記第10実施形態と同様である。
第11実施形態では、上記のように、n型GaN基板221aの転位の集中している領域228の厚みを、n型GaN基板221aの転位の集中している領域228以外の領域の厚みよりも小さくするとともに、n型GaN基板221a上の転位の集中している領域228以外の領域に、n型層222a、n型クラッド層223a、発光層224a、p型クラッド層225aおよびp型コンタクト層226aを順次形成することによって、発光層224aを介して形成されるn型クラッド層223aとp型クラッド層225aとのpn接合領域には転位の集中している領域228が形成されないので、上記第10実施形態と同様、容易に窒化物系半導体レーザ素子の動作を安定化することができるとともに、転位の集中している領域228からの不必要な発光を低減できる。
図47および図48は、図46に示した第11実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図46〜図48を参照して、第11実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図47に示すように、図3〜図11に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、p側パッド電極261までを形成するとともに、n型GaN基板221aの裏面を研磨する。この後、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板221aの裏面上に、n型GaN基板221aの裏面の全面に接触するように、n側電極232を形成する。
次に、図48に示すように、隣接する素子の境界領域に、YAGレーザ(基本波長:1.06μm)の第3高調波(355nm)を照射することによって、p側パッド電極261の表面から、絶縁膜260を含むn型GaN基板221a、p型クラッド層225a、発光層224a、n型クラッド層223aおよびn型層222aの所定の深さまでの転位の集中している領域228を部分的に除去する。この際の照射条件としては、パルス周波数を約10kHzに設定するとともに、走査スピードを約0.75mm/secに設定する。これにより、素子の転位の集中している領域228に、転位の集中している領域228の幅よりも大きい幅W3(たとえば、約100μm)を有する溝部263を形成する。この後、その溝部263に沿って、素子を各チップに分離する。このようにして、図46に示した第11実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
第11実施形態の製造プロセスでは、上記のように、YAGレーザを用いて素子を各チップに分離するための溝部263を形成することによって、溝部263の幅W3を転位の集中している領域228の幅よりも大きくすることができるので、容易に、転位の集中している領域228を除去することができる。これにより、素子を各チップに分離するための溝部263を形成する工程に加えて、転位の集中している領域228を除去する工程を増やす必要がない。その結果、製造工程を簡略化することができる。
(第12実施形態)
図49は、本発明の第12実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図49を参照して、この第12実施形態では、上記第10実施形態と異なり、n型GaN基板221bの転位の集中している領域228の厚みが、n型GaN基板221bの転位の集中している領域228以外の領域の厚みよりも小さくなるように、n型GaN基板221bの上面から所定の深さまでが除去されている。そして、n型GaN基板221b上の転位の集中している領域228以外の領域に、n型層222b、n型クラッド層223b、発光層224、p型クラッド層225およびp型コンタクト層226が順次形成されている。なお、n型GaN基板221b、n型層222bおよびn型クラッド層223bは、それぞれ、上記第10実施形態のn型GaN基板221、n型層222およびn型クラッド層223と同様の厚みおよび組成を有する。ここで、発光層224およびp型クラッド層225の平坦部は、n型クラッド層223bの幅よりも小さい幅(約4.5μm)を有する。
なお、第12実施形態のその他の構成は、上記第10実施形態と同様である。
第12実施形態では、上記のように構成することによって、転位の集中している領域228に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができるなどの上記第10実施形態と同様の効果を得ることができる。
図50は、図49に示した第12実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図49および図50を参照して、第12実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図40〜図43に示した第10実施形態と同様の製造プロセスを用いて、n側電極232までを形成する。
次に、図50に示すように、ダイシングを用いて、窒化物系半導体レーザ素子と隣接する素子との境界領域において、p側パッド電極231の表面から、絶縁膜230を含むn型GaN基板221b、n型クラッド層223bおよびn型層222bの所定の深さまでの転位の集中している領域228を部分的に除去する。これにより、素子の転位の集中している領域228に、転位の集中している領域228の幅よりも大きい幅W4(たとえば、約60μm)を有する溝部273を形成する。この後、その溝部273に沿って、素子を各チップに分離する。このようにして、図49に示した第12実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
第12実施形態の製造プロセスでは、上記のように、ダイシングを用いて素子を各チップに分離するための溝部273を形成することによって、溝部273の幅W4を転位の集中している領域228の幅よりも大きくすることができるので、上記第11実施形態の製造プロセスと同様、容易に、転位の集中している領域228を除去することができる。その結果、製造工程を簡略化することができる。
(第13実施形態)
図51は、本発明の第13実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図51を参照して、この第13実施形態では、上記第10〜第12実施形態と異なり、n型GaN基板上の転位の集中している領域よりも内側の領域に、選択成長マスクを形成する場合について説明する。
この第13実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図51に示すように、n型GaN基板281の端部の近傍に、n型GaN基板281の裏面から表面にまで延びるとともに、約10μmの幅を有する転位の集中している領域288が、約400μmの周期でストライプ状(細長状)に形成されている。なお、n型GaN基板281は、上記第10実施形態のn型GaN基板221と同様の厚みおよび組成を有する。なお、n型GaN基板281は、本発明の「基板」の一例である。
ここで、第13実施形態では、図52に示すように、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288よりも内側の領域に、約200nmの厚みを有するSiN膜からなるストライプ状(細長状)の選択成長マスク293が形成されている。この選択成長マスク293は、転位の集中している領域288の幅よりも小さい幅W5(約3μm)を有する。また、素子端部から選択成長マスク293の端部までの間隔W6は、約30μmである。なお、選択成長マスク293は、本発明の「第1選択成長マスク」の一例である。
n型GaN基板281上の選択成長マスク293が形成された領域以外の領域には、図51に示すように、n型層282、n型クラッド層283、発光層284、p型クラッド層285およびp型コンタクト層286が順次形成されている。なお、p型クラッド層285は、凸部を有するとともに、p型コンタクト層286は、p型クラッド層285の平坦部以外の領域上に形成されている。そして、選択成長マスク293よりも内側に位置するp型クラッド層285の凸部と、そのp型クラッド層285の凸部上に形成されたp型コンタクト層286とによって、リッジ部287が構成される。また、選択成長マスク293よりも外側に位置するn型層282、n型クラッド層283、発光層284、p型クラッド層285およびp型コンタクト層286には、n型GaN基板281の転位が伝播することにより、転位の集中している領域288が形成されている。なお、n型層282、n型クラッド層283、発光層284、p型クラッド層285およびp型コンタクト層286は、それぞれ、上記第10実施形態のn型層222、n型クラッド層223、発光層224、p型クラッド層225およびp型コンタクト層226と同様の厚みおよび組成を有する。なお、n型層282、n型クラッド層283、発光層284、p型クラッド層285およびp型コンタクト層286は、本発明の「半導体素子層」の一例である。
ここで、第13実施形態では、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288よりも内側の領域に位置する窒化物系半導体各層(282〜286)と、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288に位置する窒化物系半導体各層(282〜286)との間には、凹部294が形成されている。
リッジ部287を構成するp型コンタクト層286上には、p側オーミック電極289が形成されている。そして、p側オーミック電極289の上面以外の領域を覆うように、絶縁膜290が形成されている。凹部294よりも内側に位置する絶縁膜290の表面上には、p側オーミック電極289の上面に接触するように、p側パッド電極291が形成されている。なお、p側オーミック電極289、絶縁膜290およびp側パッド電極291は、それぞれ、上記第10実施形態のp側オーミック電極229、絶縁膜230およびp側パッド電極231と同様の厚みおよび組成を有する。なお、p側オーミック電極289は、本発明の「表面側電極」の一例である。
また、n型GaN基板281の裏面上には、n型GaN基板281の裏面の転位の集中している領域288以外の領域に接触するように、n側電極292が形成されている。なお、n側電極292は、上記第10実施形態のn側電極232と同様の厚みおよび組成を有する。
第13実施形態では、上記のように、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288よりも内側の領域に、選択成長マスク293を形成することによって、n型GaN基板281上に窒化物系半導体各層(282〜286)を成長させる際に、選択成長マスク293上には窒化物系半導体各層(282〜286)が成長しないので、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288よりも内側の領域に形成された窒化物系半導体各層(282〜286)と、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288に形成された窒化物系半導体各層(282〜286)との間に凹部294を形成することができる。このため、転位の集中している領域288が形成された窒化物系半導体各層(282〜286)と、転位の集中している領域288が形成されていない窒化物系半導体各層(282〜286)とを凹部294により分断することができる。これにより、選択成長マスク293よりも内側に位置するp型コンタクト層286上にp側オーミック電極289を形成することによって、転位の集中している領域288に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を安定化することができるので、窒化物系半導体レーザ素子の動作を安定化することができる。また、転位の集中している領域288が形成された窒化物系半導体各層(282〜286)と、転位の集中している領域288が形成されていない窒化物系半導体各層(282〜286)とが凹部294により分断されるので、転位の集中している領域288よりも内側の領域に位置する発光層284で発生した光が、転位の集中している領域288で吸収されるのを抑制することができる。これにより、転位の集中している領域288で吸収された光が意図しない波長で再び発光するのを抑制することができるので、このような再発光に起因する色純度の劣化を抑制することができる。
図52〜図55は、図51に示した第13実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための平面図および断面図である。次に、図51〜図55を参照して、第13実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図52および図53に示すように、図3〜図6に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、n型GaN基板281を形成した後、プラズマCVD法を用いて、n型GaN基板281上の所定領域に、約200nmの厚みを有するSiN膜からなるストライプ状(細長状)の選択成長マスク293を形成する。具体的には、n型GaN基板281上に、転位の集中している領域288を挟むように約60μmの間隔W7(W6×2)を隔てて、約3μmの幅W5を有する選択成長マスク293を形成する。
次に、図54に示すように、MOCVD法を用いて、選択成長マスク293が形成されたn型GaN基板281上に、n型層282、n型クラッド層283、発光層284、p型クラッド層285およびp型コンタクト層286を順次形成する。
この際、第13実施形態では、選択成長マスク293上には、窒化物系半導体各層(282〜286)が形成されないので、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288よりも内側の領域に形成された窒化物系半導体各層(282〜286)と、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288に形成された窒化物系半導体各層(282〜286)との間には、凹部294が形成される。また、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288に形成された窒化物系半導体各層(282〜286)には、n型GaN基板281の転位が伝播することにより、n型GaN基板281の裏面からp型コンタクト層286の上面にまで延びる転位の集中している領域288が形成される。
次に、図55に示すように、図8〜図11に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、凹部294よりも内側に位置するp型コンタクト層286上にp側オーミック電極289を形成するとともに、p型クラッド層285の凸部とp型コンタクト層286とによって構成されるリッジ部287を形成する。また、p側オーミック電極289の上面以外の領域を覆うように、絶縁膜290を形成した後、凹部294よりも内側に位置する絶縁膜290の表面上に、p側オーミック電極289の上面に接触するように、p側パッド電極291を形成する。この後、n型GaN基板281の裏面を研磨する。
最後に、図51に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板281の裏面上の全面に、n側電極292を構成する金属層(図示せず)を形成した後、転位の集中している領域288に位置する金属層を除去することによって、第13実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
第13実施形態の製造プロセスでは、上記のように、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288よりも内側の領域に、転位の集中している領域288の幅よりも小さい幅W5を有する選択成長マスク293を形成することによって、選択成長マスク293の表面全体に達する原料ガスの総量が少なくなるので、その分、選択成長マスク293の表面から、選択成長マスク293の近傍に位置する成長中の窒化物系半導体各層(282〜286)の表面へ表面拡散する原料ガスやその分解物の量が少なくなる。これにより、選択成長マスク293の近傍に位置する成長中の窒化物系半導体各層(282〜286)の表面に供給される原料ガスやその分解物の量の増加を低減できるので、選択成長マスク293の近傍に位置する窒化物系半導体各層(282〜286)の厚みが大きくなるのを抑制することができる。その結果、窒化物系半導体各層(282〜286)の厚みが、選択成長マスク293の近傍の位置と選択成長マスク293から遠い位置とで不均一になるのを抑制することができる。
(第14実施形態)
図56は、本発明の第14実施形態による窒化物系半導体レーザ素子(半導体素子)の構造を示した断面図である。図56を参照して、この第14実施形態では、上記第13実施形態と異なり、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288および転位の集中している領域288よりも内側の領域に、それぞれ、約100nmの厚みを有するSiN膜からなる選択成長マスク313aおよび313bが形成されている。選択成長マスク313aは、転位の集中している領域288の幅よりも大きい幅W8(約188μm)を有する。また、選択成長マスク313bは、転位の集中している領域288の幅よりも小さい幅W9(約2μm)を有する。そして、選択成長マスク313bは、選択成長マスク313aから約5μmの間隔W10を隔てて配置されている。また、選択成長マスク313b間の間隔W11は、約10μmである。なお、選択成長マスク313aは、本発明の「第2選択成長マスク」の一例であり、選択成長マスク313bは、本発明の「第1選択成長マスク」の一例である。
そして、n型GaN基板281上の選択成長マスク313aおよび313bが形成された領域以外の領域には、n型層282a、n型クラッド層283a、発光層284a、p型クラッド層285aおよびp型コンタクト層286aが順次形成されている。また、p型クラッド層285aは、凸部を有するとともに、p型コンタクト層286aは、p型クラッド層285aの平坦部以外の領域上に形成されている。そして、選択成長マスク313bよりも内側に位置するp型クラッド層285aの凸部と、そのp型クラッド層285aの凸部上に形成されたp型コンタクト層286aとによって、リッジ部287aが構成される。そして、発光層284aおよびp型クラッド層285aの平坦部は、n型クラッド層285aの幅よりも小さい幅(約10.5μm)を有する。
ここで、第14実施形態では、n型GaN基板281上に形成された窒化物系半導体各層(282a〜286a)に、転位の集中している領域288が形成されていない。また、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288側に位置する窒化物系半導体各層(282a〜286a)と、n型GaN基板281上の中央部に位置する窒化物系半導体各層(282a〜286a)との間には、凹部314が形成されている。
また、リッジ部287aを構成するp型コンタクト層286a上には、p側オーミック電極289aが形成されている。そして、p側オーミック電極289aの上面以外の領域を覆うように、絶縁膜310が形成されている。絶縁膜310の表面上の所定領域には、p側オーミック電極289aの上面に接触するように、p側パッド電極311が形成されている。このp側パッド電極311の一方の端部は、転位の集中している領域288上に位置する絶縁膜310上に配置されているとともに、他方の端部は、p型クラッド層285aの平坦部上に位置する絶縁膜310上に配置されている。なお、n型GaN基板281、n型層282a、n型クラッド層283a、発光層284a、p型クラッド層285a、p型コンタクト層286aおよびp側オーミック電極289aは、それぞれ、上記第10実施形態のn型GaN基板221、n型層222、n型クラッド層223、発光層224、p型クラッド層225、p型コンタクト層226およびp側オーミック電極229と同様の厚みおよび組成を有する。また、絶縁膜310およびp側パッド電極311は、それぞれ、上記第10実施形態の絶縁膜230およびp側パッド電極231と同様の厚みおよび組成を有する。
また、n型GaN基板281の裏面上には、上記第13実施形態と同様、n型GaN基板281の裏面の転位の集中している領域288以外の領域に接触するように、n側電極292が形成されている。
第14実施形態では、上記のように、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288に、選択成長マスク313aを形成することによって、n型GaN基板281上に窒化物系半導体各層(282a〜286a)を成長させる際に、選択成長マスク313a上には窒化物系半導体各層(282a〜286a)が成長しないので、窒化物系半導体各層(282a〜286a)に転位の集中している領域288が形成されるのを抑制することができる。これにより、転位の集中している領域288に電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができる。その結果、素子の定電流駆動時の光出力を安定化することができるので、窒化物系半導体レーザ素子の動作を安定化することができる。また、転位の集中している領域288に流れる電流を低減することができるので、転位の集中している領域288からの不必要な発光を低減できる。
図57〜図60は、図56に示した第14実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための平面図および断面図である。次に、図56〜図60を参照して、第14実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
まず、図57および図58に示すように、図3〜図6に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、n型GaN基板281を形成した後、プラズマCVD法を用いて、n型GaN基板281上の所定領域に、約100nmの厚みを有するSiN膜からなるストライプ状(細長状)の選択成長マスク313aおよび313bを形成する。具体的には、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288に、約376μmの幅W12(W8×2)を有する選択成長マスク313aを形成する。また、n型GaN基板281上に、選択成長マスク313aから約5μmの間隔W10を隔てて、約2μmの幅W9を有する選択成長マスク313bを形成する。また、選択成長マスク313b間の間隔W11は、約10μmにする。
次に、図59に示すように、MOCVD法を用いて、選択成長マスク313aおよび313bが形成されたn型GaN基板281上に、n型層282a、n型クラッド層283a、発光層284a、p型クラッド層285aおよびp型コンタクト層286aを順次形成する。
この際、第14実施形態では、選択成長マスク313aおよび313b上に、窒化物系半導体各層(282a〜286a)が形成されない。このため、窒化物系半導体各層(282a〜286a)には、転位の集中している領域288が形成されない。また、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288側に形成された窒化物系半導体各層(282a〜286a)と、n型GaN基板281上の中央部に形成された窒化物系半導体各層(282a〜286a)との間には、凹部314が形成される。
次に、図60に示すように、図8〜図11に示した第1実施形態と同様の製造プロセスを用いて、凹部314よりも内側に位置するp型コンタクト層286a上にp側オーミック電極289aを形成するとともに、p型クラッド層285aの凸部とp型コンタクト層286aとによって構成されるリッジ部287aを形成する。また、p側オーミック電極289aの上面以外の領域を覆うように、絶縁膜310を形成した後、絶縁膜310の表面上の所定領域に、p側オーミック電極289aの上面に接触するように、p側パッド電極311を形成する。この後、n型GaN基板281の裏面を研磨する。
最後に、図56に示したように、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板281の裏面上の全面に、n側電極292を構成する金属層(図示せず)を形成した後、転位の集中している領域288に位置する金属層を除去することによって、第14実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
第14実施形態の製造プロセスでは、上記のように、n型GaN基板281上の転位の集中している領域288よりも内側の領域に、転位の集中している領域288の幅よりも小さい幅W9を有する選択成長マスク313bを形成することによって、窒化物系半導体各層(282a〜286a)を成長させる際に、選択成長マスク313bの表面全体に達する原料ガスの総量が少なくなるので、その分、選択成長マスク313bの表面から、選択成長マスク313bの近傍に位置する成長中の窒化物系半導体各層(282a〜286a)の表面へ表面拡散する原料ガスやその分解物の量が少なくなる。これにより、選択成長313bの近傍に位置する成長中の窒化物系半導体各層(282a〜286a)の表面に供給される原料ガスやその分解物の量の増加を低減できるので、選択成長マスク313bの近傍に位置する窒化物系半導体各層(282a〜286a)の厚みが大きくなるのを抑制することができる。その結果、窒化物系半導体各層(282a〜286a)の厚みが、選択成長マスク313bの近傍の位置と選択成長マスク313bから遠い位置とで不均一になるのを抑制することができる。
図61は、第14実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための平面図である。次に、図61を参照して、第14実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
この第14実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスでは、図61に示すように、n型GaN基板281上に、転位の集中している領域(図示せず)の幅よりも小さい幅W13(約3μm)を有する選択成長マスク323bを、素子形成領域281bを囲むように形成する。この際、複数の開口部323c(素子形成領域281b)が素子分離方向(図61のA方向)に沿って所定のピッチで配置され、かつ、劈開方向(図61のB方向)に隣接する開口部323c(素子形成領域281b)が互い違いに配置されるように、選択成長マスク323bを形成する。なお、開口部323c(素子形成領域281b)のB方向の幅W14は、約12μmに設定する。また、選択成長マスク323aを、選択成長マスク323bから約8μmの間隔W15を隔てた全領域に形成する。
この後、上記第14実施形態の製造プロセスと同様、窒化物系半導体各層(図示せず)を形成した後、絶縁膜(図示せず)および電極各層(図示せず)を形成する。
第14実施形態の変形例による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスでは、上記のように、n型GaN基板281上に、複数の開口部323cを有するとともに、その開口部323cがA方向に沿って所定のピッチで配置され、かつ、B方向に隣接する開口部323cが互い違いに配置された選択成長マスク323bを形成した後、n型GaN基板281の選択成長マスク323bが形成された領域以外の領域上に窒化物系半導体各層を形成することによって、選択成長マスク323b上には窒化物系半導体各層が形成されないので、窒化物系半導体各層は、n型GaN基板281上の開口部323cに対応する領域にのみ形成される。これにより、n型GaN基板281の開口部323cに対応する領域上に形成された窒化物系半導体各層のA方向の距離は、n型GaN基板281上にA方向に連続して窒化物系半導体各層が形成される場合の窒化物系半導体各層のA方向の距離よりも小さくなるので、A方向の距離が小さくなる分、クラックが発生するのを抑制することができる。この場合、B方向に隣接する開口部323c(素子形成領域281b)が互い違いに配置されているので、A方向にも素子形成領域281bを互い違いに隣接して配置することができる。これにより、クラックの発生を防止しながら、n型GaN基板281上にA方向に連続して窒化物系半導体各層を形成する場合と同等の素子形成領域を得ることができるので、クラックの発生を防止しながら、n型GaN基板281の利用効率が低下するのを抑制することができる。
(第15実施形態)
図62は、本発明の第15実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を示した平面図である。図63は、図62の500−500線に沿った断面図である。図64は、図62および図63に示した第15実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細を示した断面図である。図62〜図64を参照して、この第15実施形態では、上記第10〜第14実施形態と異なり、n型クラッド層までの転位の集中している領域を除去するとともに、窒化物系半導体レーザ素子を半導体レーザ内部に装着する場合について説明する。
第15実施形態による窒化物系半導体レーザ素子330では、図63に示すように、約100μmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のキャリア濃度を有する酸素がドープされたn型GaN基板331上に、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量を有するSiがドープされたn型GaNからなるn型層332が形成されている。なお、n型GaN基板331は、ウルツ鉱型構造を有するとともに、(0001)面の表面を有している。また、n型GaN基板331およびn型層332の両端部の近傍には、それぞれ、n型GaN基板331の裏面からn型層332の上面にまで延びるとともに、約10μmの幅を有する転位の集中している領域331aがストライプ状(細長状)に形成されている。なお、n型GaN基板331は、本発明の「基板」の一例であり、n型層332は、本発明の「半導体素子層」および「第1半導体層」の一例である。
ここで、第15実施形態では、n型層332の転位の集中している領域331a以外の領域上に、n型GaN基板331の幅よりも小さい幅D1(約7.5μm)を有するn型クラッド層333、発光層334およびp型クラッド層335が順次形成されている。
n型クラッド層333は、約400nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.05Ga0.95Nからなる。なお、n型クラッド層333は、本発明の「半導体素子層」および「第1半導体層」の一例である。
また、発光層334は、図64に示すように、n型キャリアブロック層334aと、n型光ガイド層334bと、MQW活性層334eと、アンドープの光ガイド層334fと、p型キャップ層334gとによって構成されている。n型キャリアブロック層334aは、約5nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型Al0.1Ga0.9Nからなる。n型光ガイド層334bは、約100nmの厚みを有するとともに、約5×1018cm−3のドーピング量および約5×1018cm−3のキャリア濃度を有するSiがドープされたn型GaNからなる。また、MQW活性層334eは、約20nmの厚みを有するアンドープIn0.05Ga0.95Nからなる4層の障壁層334cと、約3nmの厚みを有するアンドープIn0.15Ga0.85Nからなる3層の井戸層334dとが交互に積層されている。なお、発光層334は、本発明の「半導体素子層」の一例であり、MQW活性層334eは、本発明の「活性層」の一例である。また、アンドープの光ガイド層334fは、約100nmの厚みを有するアンドープGaNからなる。p型キャップ層334gは、約20nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.1Ga0.9Nからなる。
また、図63に示すように、p型クラッド層335は、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型Al0.05Ga0.95Nからなる。このp型クラッド層335は、平坦部335aと、平坦部335aの中央から上方に突出するように形成された凸部335bとを含んでいる。そして、p型クラッド層335の平坦部335aが、上記したn型GaN基板331の幅よりも小さく、かつ、発光層334の幅と同じ幅D1(約7.5μm)を有するとともに、約100nmの厚みを有している。また、p型クラッド層335の凸部335bは、発光層334の幅よりも小さい幅W16(約1.5μm)を有するとともに、平坦部335aの上面から約300nmの突出高さを有している。なお、p型クラッド層335は、本発明の「半導体素子層」および「第2半導体層」の一例である。
p型クラッド層335の凸部335b上には、約10nmの厚みを有するとともに、約4×1019cm−3のドーピング量および約5×1017cm−3のキャリア濃度を有するMgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層336が形成されている。そして、p型クラッド層335の凸部335bとp型コンタクト層336とによって、電流通路領域となるストライプ状(細長状)のリッジ部337が構成されている。また、リッジ部337を構成するp型コンタクト層336上には、下層から上層に向かって、約5nmの厚みを有するPt層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約150nmの厚みを有するAu層とによって構成されるp側オーミック電極338が形成されている。なお、p型クラッド層335およびp型コンタクト層336は、本発明の「半導体素子層」および「第2半導体層」の一例であり、p側オーミック電極338は、本発明の「表面側電極」の一例である。また、p側オーミック電極338の上面以外の領域を覆うように、約250nmの厚みを有するSiN膜からなる絶縁膜339が形成されている。
ここで、第15実施形態では、図62および図63に示すように、絶縁膜339の所定領域上に、p側オーミック電極338の上面と接触するように、n型GaN基板331の幅よりも小さい幅B1(約150μm)を有するp側パッド電極341が形成されている。このp側パッド電極341は、図62に示すように、平面的に見て、四角形状に形成されている。そして、p側パッド電極341の一方の端部341aは、発光層334の一方の端部334hが位置する領域を越える領域にまで延びるように、n型層332の上面上に位置する絶縁膜339上に形成されている。また、p側パッド電極341の他方の端部341bは、発光層334の他方の端部334iが位置する領域を越える領域にまで延びるように、n型クラッド層333の側面上に位置する絶縁膜339上に形成されている。なお、p側パッド電極341の一方の端部341aは、ワイヤボンディング可能な平坦面を有するように形成されている一方、p側パッド電極341の他方の端部341bは、ワイヤボンディング可能な平坦面は設けられていない。このため、p側パッド電極341の他方の端部341bは、一方の端部341aに比べて、リッジ部337からの距離が小さい。また、p側パッド電極341は、下層から上層に向かって、約100nmの厚みを有するTi層と、約100nmの厚みを有するPd層と、約3μmの厚みを有するAu層とによって構成されている。そして、p側パッド電極341の一方の端部341a上には、p側パッド電極341の一方の端部341aと外部とを電気的に接続するためのワイヤ342がボンディングされている。
また、n型GaN基板331の裏面の転位の集中している領域331a以外の領域上には、n型GaN基板331の裏面に近い方から順に、約10nmの厚みを有するAl層と、約20nmの厚みを有するPt層と、約300nmの厚みを有するAu層とによって構成されるn側電極343が形成されている。
図65は、図62および図63に示した第15実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を用いた半導体レーザの構造を示した斜視図である。次に、図62、図63および図65を参照して、第15実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を用いた半導体レーザの構造について説明する。
第15実施形態による窒化物系半導体レーザ素子330を用いた半導体レーザは、図65に示すように、窒化物系半導体レーザ素子330が装着されるステム351と、気密封止するためのキャップ352とを備えている。ステム351には、3本のリード351a〜351cが設けられているとともに、3本のリード351a〜351cのうち、リード351aおよび351bは、ステム351の上面から突出している。また、ステム351の上面上には、ブロック353が設けられているとともに、ブロック353の側面上には、サブマウント354が設けられている。そして、このサブマウント354上に、第15実施形態による窒化物系半導体レーザ素子330が装着されている。具体的には、レーザ光がステム351の上面に対して垂直な方向に出射されるように、窒化物系半導体レーザ素子330のへき開面がステム351の上面に対して平行に配置されている。また、窒化物系半導体レーザ素子330を構成するp側パッド電極341の端部341a(図62および図63参照)にボンディングされたワイヤ342は、リード351aと電気的に接続されている。また、ステム351の上面上の窒化物系半導体レーザ素子330のへき開面と対向する領域には、受光素子355が装着されている。この受光素子355には、ワイヤ356の一方端がボンディングされているとともに、そのワイヤ356の他方端は、リード351bにボンディングされている。そして、キャップ352は、窒化物系半導体レーザ素子330および受光素子355を覆うように、ステム351の上面上に溶接されている。
第15実施形態では、上記のように、n型クラッド層333上に形成される発光層334の幅D1(約7.5μm)をn型GaN基板331の幅よりも小さくするとともに、発光層334上に形成されるp型クラッド層335の幅を発光層334の幅と同じにすることによって、発光層334を介して形成されるn型クラッド層333とp型クラッド層335とのpn接合領域が小さくなるので、pn接合容量を小さくすることができる。また、絶縁膜339の所定領域上に形成されるp側パッド電極341の幅B1(約150μm)を、n型GaN基板331の幅よりも小さくすることによって、p側パッド電極341と、絶縁膜339と、n型層332とにより形成される寄生容量も小さくすることができる。その結果、窒化物系半導体レーザ素子330の応答速度を高速化することができる。
また、第15実施形態では、p側パッド電極341の端部341aを、発光層334の一方の端部334hが位置する領域を越える領域にまで延びるように、n型層332の上面上に位置する絶縁膜339上に形成することによって、p側パッド電極341の幅B1(約150μm)をn型GaN基板331の幅よりも小さくしたとしても、発光層334の一方の端部334hが位置する領域を越えるp側パッド電極341の一方の端部341aにおいて、リード351aと電気的に接続することができる。これにより、p側パッド電極341の幅B1(約150μm)をn型GaN基板331の幅よりも小さくした場合にも、p側パッド電極341とリード351aとの接続が困難になることがない。また、発光層334上に形成されるp型クラッド層335に平坦部335aを設けることによって、p型クラッド層335に発光層334の幅よりも小さい幅W16(約1.5μm)を有する凸部335bを設けたとしても、平坦部335aにより光の横方向の閉じ込めが強くなり過ぎるのを抑制することができるので、横モードを安定化させることができる。これにより、窒化物系半導体レーザ素子330の発光特性が低下するのを抑制することができる。
また、第15実施形態では、n型層332の転位の集中している領域331a以外の領域上に、n型クラッド層333、発光層334およびp型クラッド層335を形成することによって、n型クラッド層333、発光層334およびp型クラッド層335には転位の集中している領域331aが形成されないので、転位の集中している領域331aに電流が流れるのを抑制することができる。これにより、転位の集中している領域331aに電流が流れることに起因するリーク電流の発生を抑制することができる。また、転位の集中している領域331aに流れる電流を抑制することができるので、転位の集中している領域331aからの不必要な発光を低減することができる。これにより、窒化物系半導体レーザ素子330の動作を安定化させることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第15実施形態では、半導体素子の一例として窒化物系半導体レーザ素子や発光ダイオード素子に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限らず、窒化物系半導体レーザ素子や発光ダイオード素子以外の他の半導体素子にも適用可能である。
また、上記第1〜第15実施形態では、基板として、n型GaN基板または窒化物系半導体層を含むサファイア基板を用いるようにしたが、本発明はこれに限らず、スピネル基板、Si基板、SiC基板、GaAs基板、GaP基板、InP基板、水晶基板およびZrB2基板などの基板を用いるようにしてもよい。
また、上記第1〜第15実施形態では、ウルツ鉱型構造の窒化物系半導体各層を形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、閃亜鉛鉱型構造の窒化物系半導体各層を形成するようにしてもよい。
また、上記第1〜第15実施形態では、MOCVD法を用いて、窒化物系半導体各層を結晶成長させるようにしたが、本発明はこれに限らず、HVPE法、および、TMAl、TMGa、TMIn、NH3、SiH4、GeH4およびCp2Mgなどを原料ガスとして用いるガスソースMBE法(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシャル成長法)などを用いて、窒化物系半導体各層を結晶成長させるようにしてもよい。
また、上記第1〜第15実施形態では、窒化物系半導体各層の表面が(0001)面になるように積層したが、本発明はこれに限らず、窒化物系半導体各層の表面が他の方向になるように積層してもよい。たとえば、窒化物系半導体各層の表面が(1−100)面や(11−20)面などの(H、K、−H−K、0)面になるように積層してもよい。この場合、MQW活性層内にピエゾ電場が発生しないので、井戸層のエネルギバンドの傾きに起因する正孔と電子との再結合確率の低下を抑制することができる。その結果、MQW活性層の発光効率を向上させることができる。また、(1−100)面や(11−20)面から傾斜している基板を用いてもよい。
また、上記第1〜第15実施形態では、活性層としてMQW構造の活性層を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、量子効果を有しない大きな厚みを有する単層または単一量子井戸構造の活性層であっても同様の効果を得ることができる。
また、上記第1〜第15実施形態では、転位の集中している領域がストライプ状に形成された基板を用いるようにしたが、本発明はこれに限らず、転位の集中している領域がストライプ以外の他の形状に形成された基板を用いてもよい。たとえば、図4において、マスク24に変えて、三角格子状に開口部が点在するマスクを用いることにより、転位の集中している領域が三角格子状に点在した基板を形成してもよい。この場合、点在する転位の集中している領域に対応して、点在する絶縁膜や点在する高抵抗領域を形成すれば、同様の効果を得ることができる。また、点在する転位の集中している領域を囲むように凹部を形成しても、同様の効果を得ることができる。
また、上記第1〜第8および第10〜第15実施形態では、サファイア基板上にn型GaN層を成長させることによって、n型GaN基板を形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、GaAs基板上にn型GaN層を成長させることによりn型GaN基板を形成するようにしてもよい。具体的には、HVPE法を用いて、GaAs基板上に、約120μm〜約400μmの厚みを有する酸素がドープされたn型GaN層を形成した後、GaAs基板を除去することによりn型GaN基板を形成する。この際、n型GaN基板のホール効果測定によるキャリア濃度が、約5×1018cm−3で、かつ、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy:2次イオン質量分析)による不純物濃度が、約1×1019cm−3になるように形成するのが好ましい。また、GaAs基板上の所定領域に、選択成長マスク層を形成することにより、n型GaN層を横方向に成長させるようにしてもよい。
また、上記第1、第2、第4、第6〜第9および第10〜第15実施形態では、転位の集中している領域間のほぼ中央部にリッジ部を形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、一方の端部から約150μm、他方の端部から約250μmの位置にリッジ部を形成するようにしてもよい。この場合、転位の集中している領域間のほぼ中央部に位置する窒化物系半導体よりも、転位の集中している領域間の中央部からずれた領域に位置する窒化物系半導体の方が結晶性が良好であるので、窒化物系半導体レーザ素子の寿命を向上することができる。
また、上記第3および第5実施形態では、n側にオーミック透明電極を形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、p側にオーミック透明電極を形成するようにしてもよい。