JP2007248318A - バイオセンサーアレイ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バイオセンサーアレイは、特異的結合物質を表面に固定した真球状粒子からなる構造体であって、特異的結合物質及び真球状粒子のうち少なくとも特異的結合物質が異なる各構造体を、基板上の異なる位置に集積することにより構成した構造体の集合体を主要構成素子とすることを特徴とする。バイオセンサーアレイに、ターゲット物質を含有する被検体を接触させて、被検体中に含まれるターゲット物質と特異的結合物質を結合させ、バイオセンサーと被検体を接触させる前後において、特定波長の電磁波をフォトニック結晶に照射して得られる反射スペクトルのピーク波長を比較することにより、ターゲット物質を検出することができる。
【選択図】図2
Description
現行のDNAチップは、被検体を蛍光色素で標識して用いる必要があるため、分析操作が煩雑であり、今後臨床検査用等に広く普及させるためには更なる分析操作の簡素化が必要である。また、DNAプローブの代わりにタンパク質をチップ上にスポットしたタンパク質チップも盛んに研究されているが、タンパク質は蛍光色素等で標識すると変性するものが多く、標識が不要なタンパク質チップが求められている。
また、本発明の代表的なターゲット物質(Y)の検出方法は、上記バイオセンサーアレイ(SA)に、ターゲット物質(Y)を含有する被検体(A)を接触させて、被検体(A)中に含まれるターゲット物質(Y)と特異的結合物質(X)を結合させ、バイオセンサー(S)と被検体(A)を接触させる前後において、特定波長の電磁波をフォトニック結晶(C)に照射して得られる反射スペクトルのピーク波長を比較することにより、ターゲット物質(Y)を検出することを特徴とする。
また、本発明のバイオセンサーアレイは、センシング部位が微細であるため、被検体量を低減することができ患者の負担を軽減することができる。
ここで被検体(A)としては、血液(血清、血漿)、尿、大便、喀痰、髄液等が挙げられる。
被検体(A)中に含まれる特異的結合物質(X)と特異的に結合するターゲット物質とは、特異的結合物質(X)と同様のものであって、例えば(X)が抗体の場合、ターゲット物質は、その抗体が認識する抗原であり、例えば(X)が糖鎖の場合、ターゲット物質は、レクチン、例えば(X)が遺伝子の場合、ターゲット物質は、相補的な遺伝子である。
微生物としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物を使用することができる。
低分子有機化合物としては通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられる。
非免疫蛋白質としては、特に限定されることなく、例えばアビジン(ストレプトアビジン)、ビオチン又はレセプターなどを使用できる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインAあるいはプロテインG、リウマチ因子等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
特異的結合物質(X)を固定化する方法としては、化学的に結合する方法、物理吸着による方法など公知の方法が使用できる。
特異的結合物質(X)が核酸である場合、物理的に結合する方法としては、周期構造体(N)又は固体物質(M)に正電荷を付与し、電気的引力により結合するものである。この方法は、DNA が負電荷を有していることを利用するものであり、ポリリジンを表面にコートする方法やアミノシランを周期構造体(N)又は固体物質(M)に反応させアミノ基を導入する方法など、公知の方法を使用することができる。
数十程度の塩基からなる、いわゆるオリゴDNA と呼ばれる短いDNA 鎖の固定には、化学的に結合する方法が好ましい。最も知られている方法は、前述のように周期構造体(N)又は固体物質(M)にアミノ基を導入し、DNA 断片鎖の末端にもアミノ基を導入して、グルタルアルデヒドのような架橋剤により固定する方法である。
また、真球状粒子(P)の粒度分布はシャープなものであることが好ましく、具体的には変動係数が10%以下であることが好ましく、7%以下が更に好ましく、5%以下が特に好ましい。粒度分布がこの範囲内であると、更に精度の高いバイオセンサーアレイ(SA)を作製することが可能となる。ここで変動係数とは、標準偏差を平均値で除した値の百分率を意味する。不定形の粒子であったり、粒度分布がブロードであったりすると周期構造中に粒子が集積されていない欠陥が存在する等、バイオセンサーアレイ(SA)に適した周期構造体(N)を作製することができない。
開環重合系ポリマー、重付加系ポリマー、重縮合系ポリマーなどの非ビニル重合系ポリマーとしては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等が挙げられる。
ビニル重合系ポリマーは、ビニル基を有するモノマーを構成単位とするポリマーであり、
シアノ基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリレート(アクリル樹脂)、カルボキシル基含有ビニルモノマー、芳香族ビニル炭化水素、脂肪族ビニル炭化水素、脂環式ビニル炭化水素、(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸、炭ビニルエーテル、ビニルケトン、架橋性モノマー、フッ素系モノマー等を構成単位として使用することができる。具体的には、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどのホモポリマー、又は、これらの構成単位を共重合したコポリマーが挙げられる。
その他、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等に感光性を付与した感光性樹脂も使用することができる。光重合型のオリゴマー、光重合型モノマー、光重合開始剤および光増感剤からなる。光重合型のオリゴマーとしては、例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、アルキドアクリレート等が使用可能である。光重合型モノマーとしては、例えば単官能アクリレート、2官能アクリレート、3官能アクリレート、4官能アクリレート等のアクリルモノマーが使用可能である。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン系、アセトフェノン系、パーオキサイド系、チオキサンソン系等の種々の光重合開始剤が使用可能である。光増感剤としては、例えばアミン系、キノン系等の種々の光増感剤が使用可能である。
金属化合物としては、元素の周期率表において、1族〜16族の金属酸化物(酸化チタン、酸化ケイ素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化スズ、酸化鉄(磁性酸化鉄を含む)及び酸化インジウム等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化金、水酸化マグネシウム等)、金属硫化物(硫化銅、硫化ナトリウム、硫化カドミウム、硫化亜鉛、硫化鉛、硫化ニッケル及び硫化白金等)、金属ハロゲン化物(フッ化カルシウム、フッ化スズ及びフッ化カリウム等)、金属炭化物(炭化カルシウム、炭化チタン、炭化鉄及び炭化ナトリウム等)、金属窒化物(窒化アルミニウム、窒化クロム、チッ化ケイ素、窒化ゲルマニウム及び窒化コバルト等)、炭酸金属塩(炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸鉄等)、硫酸金属塩(硫酸アルミニウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸銅、硫酸ニッケル及び硫酸バリウム等)及びその他の金属塩(チタン酸塩(チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カリウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アルミニウム、ホウ酸亜鉛等)、燐酸塩(リン酸カルシウム、燐酸ナトリウム、燐酸マグネシウム等)、アルミン酸塩(アルミン酸イットリウム(YAG)等)及び硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸鉄、硝酸鉛等)など又はこれらの固溶体(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛等)などが挙げられる。
有機物を前躯体とする炭化物としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、活性炭、竹炭、木炭及びフラーレン等が挙げられる。
有機無機複合物(M3)として、有機化合物(M1)及び無機化合物(M2)を各々粉砕又は溶融して混合したものやシランカップリング剤等を介して有機化合物(M1)と無機化合物(M2)を化学結合したもの等を使用することができる。
フォトニック結晶(C)とは、特定の電磁波の波長と同程度の周期的な屈折率変化を内部にもつ構造体を意味し、3次元的な屈折率分布をもつ3次元フォトニック結晶である。このような構造では、半導体において原子核の周期ポテンシャルによって電子(電子波)がブラッグ反射を受けバンドギャップが形成されるのと同様に、周期的な屈折率分布によって対応する波長の電磁波がブラッグ反射を受け、電磁波に対するバンドギャップ(フォトニックバンドギャップ)が形成されるという特長がある。
フォトニック結晶(C)の周期構造としては、結晶性無機固体と同様の結晶構造等が挙げられ、具体的には、立方最密充填構造、六方最密充填構造、スパイラル構造、ダイヤモンド構造等である。これらの周期構造のうち、生産性向上等の観点から、立方最密充填構造、六方最密充填構造が好ましい。
後者の方法によれば構造体(N)の周期構造は六方最密充填構造及び/又は立方最密充填構造となる。後述のように、ある特定形状のテンプレートを使用する場合には、選択的に立方最密充填構造が得られる。
ここで立方最密充填構造及び六方最密充填構造とは、いずれも最密充填構造であって、充填率は74体積%である。
立方最密充填構造は、面心立方格子構造とも呼ばれ、正四角形の単位格子の各頂点および各面の中心に粒子が位置し、最稠密面をABCABCABCの順に重ねた構造となっている。
六方最密充填構造は、単位格子を正六角柱で表し、この正六角柱の上面および底面の各角および中心と、六角柱の内部で高さ 1/2 のところに 3 つの粒子が存在する。底面の中心に位置する原子は、底面の角の 6 粒子および上下の各3粒子(計 12 粒子)と接しており、最稠密面をABABABの順に重ねた構造となっている。
基板(Q)を構成する材料としては、シリコンやシリカ、酸化チタン等の無機化合物からなるものやアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂や感光性樹脂などの合成ポリマー等からなるものを使用することができる。
例えば、図1に示す逆ピラミッド型基板は、電子線リソグラフィーと異方性エッチングにより作製することができる。具体的には、シリコン基板状に塗布したレジスト膜を電子線によりパターンニング(電子線リソグラフィー)した後、水酸化カリウム水溶液にて100面を選択的に溶解(異方性エッチング)することにより作製できる。逆ピラミッド型の穴を形成した基板を使用して、ピラミッドの先端部より順に真球状粒子(P)を集積すれば、立方最密充填構造のみからなる周期構造を作製することもできる。但し、立方最密充填構造と六方最密充填構造はいずれも最密充填構造であり、どちらの構造であっても又は両者の混合した構造であっても、フォトニックバンドギャップの効果等が変化することはない。
この方法を使用すれば、逆ピラミッド型の穴だけでなく、断面がV字型のアスペクト比が高い溝も精度良く作製することができるし、同様の微細加工技術を利用して、円柱型、柱状型の穴等も作製することができる。
1つの穴の大きさ(μm)としては、直径が1〜1000であることが好ましく、更に好ましくは5〜500、特に好ましくは10〜100であり、大きさがこの範囲内であれば、短径と長径が存在してもよい。
溝の断面の形状としては、四角形や図2のようなV字型等が挙げられる。
1つの溝の大きさ(μm)としては、短径が1〜1000、長径が10〜50000であることが好ましく、更に好ましくは短径が5〜500、長径が50〜20000、特に好ましくは短径が10〜100、長径が100〜10000である。
これらの溝としては、溝の両端が切り出されているもの、即ち、基板の端部に溝の両端が存在するものや片端だけが切り出されているもの、又は両端とも切り出されていないものを使用することができる。
チューブ断面の形状としては、四角形や球形、三角形等が挙げられる。
1つのチューブの大きさ(μm)としては、短径が1〜1000、長径が10〜50000であることが好ましく、更に好ましくは短径が5〜500、長径が50〜20000、特に好ましくは短径が10〜100、長径が100〜10000である。
チューブ状の基板としては、樹脂膜やフィルム等にレーザー加工やフォトリソグラフィーによりチューブを形成した基板や、市販されているキャピラリーチューブ(石英キャピラッリーチューブ(モリテックス社製、TCI社製など))やマイクロチューブ(フッ素樹脂マイクロチューブなど(テックジャム社製))等を使用することができる。
重力による真球状粒子の集積方法は、自然沈降法とも呼ばれ、基板(Q)に真球状粒子のスラリーを滴下し、重力を集積ドライビングフォースとして真球状粒子を集積する方法である。ここで集積ドライビングフォースとは、真球状粒子(P)を基板(Q)に集積させるために働かせる力を意味する。
液架橋力による真球状粒子の集積方法(液架橋力法)は、基板(Q)に真球状粒子のスラリーを滴下し、溶媒の蒸発によって発生する液架橋力を集積ドライビングフォースとして真球状粒子を集積する方法である。
F = mrω2
ここで、mは真球状粒子(P)の質量、rは遠心場の中心から真球状粒子(P)までの距離、ωは角速度(回転数×2π)である。rは、正確には遠心場の中心(遠心機の中心)から真球状粒子(P)までの距離であるが、粒子は常に移動するので、便宜上遠心機の中心から基板(Q)までの距離として扱う。
使用する遠心力の強さとしては、粒子径や粒子の比重により好ましい強さは異なるが、生産速度向上の観点からは強い方がよい。但し、規則性の高い均一な真球状粒子(P)の集積体を作製するためには、遠心力の強さだけでなく、処理時間、粒子スラリーの濃度、溶媒の蒸発速度等のパラメーターを最適化する必要がある。
遠心力の強さとしては、10〜10000Gであることが好ましく、更に好ましくは100〜8000G、特に好ましくは500〜5000Gである。
処理時間としては、遠心力の強さによっても異なるが、5〜3600分であることが好ましく、更に好ましくは10〜1000分、特に好ましくは15〜120分である。
真球状粒子スラリーの濃度としては、粒子スラリーの量によっても異なるが、0.01〜20重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.02〜15重量%、特に好ましくは0.05〜10重量%である。真球状粒子スラリーの調製方法としては、真球状粒子を水等に界面活性剤や超音波分散機を使用して分散することにより調整できるが、水中にて原料モノマー等からソープフリー乳化重合等により真球状粒子を合成して、そのまま真球状粒子スラリーとして用いることが好ましい。
溶媒の蒸発は、前述のように、集積処理中に行わないことが好ましい。
真球状粒子(P)をそのまま使用するのではなく、溶媒に分散したスラリーとして使用するのは、粒子に機動性を持たせるためである。溶媒がない場合又は溶媒が蒸発してなくなった場合、粒子間や粒子と基板間において直ちに固着が起こり、粒子の機動性が無くなるため、均一性の高い構造体(N)を作製することができない。
粒子のブラウン運動は規則的な集積を促進するため、遠心力の強度を定期的に増減させる、温度を高くする、何らかの振動を与える等に粒子に更に機動性を付与する方法は、均一性の高い構造体(N)を作製する方法として有効である。
基板(Q)の表面に対して垂直に遠心力を加えるとは、真球状粒子(P)が 基板(Q)の表面、穴や溝が形成された基板であれば、穴や溝の底部に対して垂直な力によって集積されることを意味する。具体的な方法としては、遠心力の増加に伴って基板(Q)を設置した遠心管の角度が変化する、所謂、スイングローター型の遠心機を使用する方法や遠心力が強い場合であって、遠心力がかかる方向に対して垂直に基板(Q)を設置することができる遠心機を使用する方法等が挙げられる。後者の方法において、遠心力が強い場合とは大凡500G以上の遠心力を加える場合を意味する。遠心力が大きくなると重力の影響が無視できるからである。
この方法は、基板(Q)に形成した溝に必要により上部カバーを設置し、遠心場の外側に位置する溝の片端又はその片端直上の上部カバーに液量調整部を設け、溝に真球状粒子(P)のスラリーを充填した後、基板(Q)の表面に対して平行の方向に遠心力を加えて、必要により液量調整部を調整しながら、溝に真球状粒子(P)を集積する方法である。この方法に使用する装置の概念図を図3に示す。なお、遠心中心から基板(Q)までの距離が短い場合や基板(Q)が大きい場合等には、基板(Q)に形成される溝は遠心場の外側に位置する溝の片端から遠心中心に引いた線上に溝を形成することが好ましい。
遠心場の外側に位置する溝の片端又はその片端直上の上部カバーに設置した液量調整部とは、溶媒のみを排出し真球状粒子(P)を透過させないフィルターや弁等であって、溶媒の排出速度を任意に調整できることが好ましい。真球状粒子(P)が集積された後において、閉じていた弁を開き溶媒を排出してもよいし、フィルターや適当に開いた弁を使用して真球状粒子(P)の集積過程において溶媒を排出してもよい。但し、フォトニック結晶の均一性向上等の観点から、真球状粒子(P)の集積が完了するまで、溶媒を完全に排出しないことが好ましい。
溝に真球状粒子(P)のスラリーを充填した後、基板(Q)の表面に対して平行の方向に遠心力を加えるとは、基板に形成した遠心場の外側に位置する溝の片端断面に対して垂直に遠心力をかけることを意味する。従って、真球状粒子(P)は遠心場外側に位置する溝の片端より順に集積されることになる。
この方法に使用する装置の概念図を図4に示す。遠心中心に真球状粒子(P)のスラリーを滴下し一時的に溜めておくための凹部(WP)があり、その周囲に基板(Q)を設置する。基板装着部(QS)は凹部の壁が除去されており、基板(Q)に形成された溝の底部とWPの底部が同じ高さとなるように設計及び設置することが好ましい。本発明の構成上、基板装着部(QS)の数に制限はなく、多数も受けることにより、更に生産性が向上する。
上部カバーを設置する場合には、遠心中心に真球状粒子(P)スラリーの供給部(WI)を設けておき、ここから遠心中心にスラリーを滴下することができる。
スピンコーターの回転数としては、回転半径等によって好ましい回転数が異なるが、前述の強さの遠心力が加わるように調整することが好ましい。
溶媒が上昇する高さは、溶媒の表面張力、管の濡れ易さ、溶媒の密度等によって決まり、次式により計算することができる。
h= 2Tcosθ/pgr
ここでTは表面張力(N/m)、θは接触角、pは溶媒の密度(kg/m3)、gは重力加速度(m/s2)
、rは管の半径(m)である。
溶媒中に分散されている真球状粒子(P)は溶媒の上昇により一緒に上昇し、管の上から順に集積されていく。真球状粒子(P)の集積は、溶媒が蒸発することにより発生する液架橋力によって最終的に行われるが、通常の液架橋力とは異なり力がほぼ垂直方向のみに働く。溶媒の蒸発が管の上から順に起こるため、通常の液架橋力のように四方八方に力が働くものではない。この点で液架橋力とは区別され、非常に集積条件を制御しやすく、均一性の高い構造体(N)を作製することが可能な方法である。
具体的な方法としては、チューブ状の基板を真球状粒子(P)のスラリーに片端を浸漬するだけであるが、浸漬していない上部の片端から吸引する方法など、生産効率の向上等を目的とした改良方法を幾つか挙げることができる。また、管表面の親疎水性を調整する等集積の条件を最適化することにより、更に均一性の高い構造体(N)を作製することができる。
ここで特異的結合物質(X)及び真球状粒子(P)のうち少なくとも特異的結合物質(X)が異なる各構造体(Nm)[mは正の整数を表す。]とは、表面に固定化された特異的結合物質(X)の種類が異なるm種類の真球状粒子(P)からなる構造体(N)がm個存在することを意味する。
一方、真球状粒子(P)表面に固定化された特異的結合物質(X)は、各構造体(Nm)において全て異なっており、m種類の特異的結合物質(X)が存在することを意味する。従って、本発明のバイオセンサーアレイ(SA)は、m種類の特異的結合物質(X)に対応した、m種類のターゲット物質(Y)を検出することができる。
mの数としては、本発明の構成上2以上であれば特に限定されず、ニーズに対応して任意の数に設定することができる。例えば、腫瘍マーカーアレイとして使用する場合には、mの数は5〜100が好ましく、更に好ましくは10〜50である。
基板上の異なる位置に集積するとは、各構造体(Nm)にIDを付与することを意味し、基板上の特定の位置に、特定の特異的結合物質(X)を固定化した真球状粒子(P)からなる特定の構造体(N)が存在するように集積することである。各構造体(Nm)の基板上の位置は全て特定されており、従って、基板上のどの位置にどの種類の特異的結合物質(X)が集積されているのかが特定されている。特異的結合物質(X)の基板上の集積位置を特定しておくことで、後述する電磁波等のスキャンにより直ちにその特異的結合物質(X)と特異的に結合するターゲット物質(Y)を検出することができる。
その他にも、高圧をかけて注入する方法などが挙げられる。具体的には、構造体(N)を含有したテンプレート基板(Q)と移動先の基板を結合して、5〜20MPaの高圧をかけて水等の流体や空気などをテンプレート基板(Q)側から注入することにより別の基板に移動させることができる。この操作を構造体(N)の種類を変更して順次行えば、集合体(F)が得られる。
この方法により作成した集合体(F)は、長さ方向の異なる位置に各構造体(Nm)が集積したストライブ上の構造となる。1つの構造体の長さ(μm)は、遠心力やスラリーの供給量等を制御することにより任意に制御することができ、断面の直径や集積する構造体(N)の数によっても異なるが、センシング部位の微細化の観点等から、1〜1000が好ましく、更に好ましくは2〜300、特に好ましくは3〜100である。
具体的な方法は、構造体(N)の作製の場合と同じであり、浸漬する特異的結合物質(X)を表面に固定した真球状粒子(P)のスラリーが多種類であるという点だけが異なる。この方法により作成した集合体(F)も同様に、長さ方向の異なる位置に各構造体(Nm)が集積したストライブ上の構造となる。
生産効率等の観点から、テンプレート基板に集積された状態でバイオセンサーアレイ(SA)として使用できることが好ましく、基板(Q)はテンプレートとしての役割だけでなく、バイオセンサーアレイ(SA)の主要構成素子である集合体(F)の固定部品としての機能を有することが好ましい。
本バイオセンサーアレイ(SA)は、特異的結合物質(X)が被検体中のターゲット物質と特異的に結合し、その結合により、集合体(F)、正確には、集合体(F)を構成する構造体(N)ごとに生じる変化を各々観測してターゲット物質を検出・定量するものである。
従って、集合体(F)の任意の部位に検出用の電磁波等をスキャンニングできるような検出装置が必要である。
構造体(N)がフォトニック結晶の場合、具体的な検出方法としては、バイオセンサーアレイ(SA)の主要構成素子である集合体(F)部位と被検体物質とを接触させる前後において、特定波長の電磁波を集合体(F)部位、正確には、各フォトニック結晶(C)に照射して得られる反射スペクトルの検出波長を比較することにより、被検体物質中に含まれる特異的結合物質(X)と特異的に結合するターゲット物質を検出する方法であり、フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップを利用した検出方法である。この検出方法によれば、フォトニック結晶の表面における極わずかな屈折率の変化も感知することが可能である。特異的結合物質(X)と特異的に結合したターゲット物質がフォトニック結晶(C)の表面に付着することによりフォトニック結晶(C)表面の屈折率が変化し、フォトニックバンドギャップに由来する反射スペクトルが高波長側若しくは低波長側にシフトする。このシフトにより、ターゲット物質を検出し、シフト量により、ターゲット物質の存在量を定量することができる。
これらのうち、X線、紫外線、可視光線、赤外線を使用することが好ましく、更に好ましくは、波長100〜1000nmの紫外線、可視光線、赤外線であり、特に好ましくは、波長300〜750nmの紫外線、可視光線である。この特定波長の電磁波を使用すれば、検出感度が良好なものとなり、また、汎用的で安価な検出装置を使用することができる。
反射スペクトルの検出装置としては、汎用の分光光度計等を使用することができる。例えば、顕微紫外可視分光光度計MSV-350(日本分光社製)、分光測光装置PMA-11(浜松ホトニクス社製)、マルチスペクトロフォトメーターATRAS-25、FTIR-IRT-3000(日本分光社製)、紫外可視近赤外分光光度計UV-3600(島津社製)、反射測定装置MCPD-3000(大塚電子社製)などが挙げられる。
接触の条件、即ち、反応時の温度、時間等の条件は、公知の条件を適用することができ、例えば、免疫蛋白質の場合、37℃で3〜60分反応させる。
フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップを利用した検出方法においては、未反応のターゲット物質の除去は必ずしも必要ではないが、バイオセンサーアレイ(SA)の検出感度向上等の観点から除去することが好ましい。除去の方法としては、緩衝液や超純水を流し洗浄する方法が挙げられる。
検出方法としては、現行のDNAチップ等に使用されている公知の方法であり、特異的結合物質(X)と特異的に結合したターゲット物質(Y)のマーカーである蛍光体を観測する(蛍光スペクトルを測定する)ことによりターゲット物質を検出し、蛍光体量により、ターゲット物質の存在量を定量することができる。
蛍光スペクトルの検出装置としては、前述のように集合体(F)をスキャンニングできる分光蛍光光度計等を使用することができる。例えば、分光蛍光光度計RF5300PC(島津社製)などが挙げられる。
構造体(N)がフォトニック結晶の場合は、この検出方法によってもターゲット物質(Y)を検出することができるが、分析操作の簡素化や特異的結合物質(X)の変成を防止する等の観点から、前述のフォトニック結晶のフォトニックバンドギャップを利用した検出方法を採用することが好ましい。
基板(Q)から取り出す場合には、粒子同士を固定化することが好ましい。粒子同士を固定化する方法としては、熱有着する方法が一般的であり、真球状微粒子(P)が有機化合物からなる場合だけでなく、無機化合物からなる場合にも適用することができる。例えば、真球状微粒子(P)がポリスチレンからなる場合には、90℃付近にて1〜5分程度熱処理することにより固定化することができ、シリカの場合も500℃付近にて1〜5分程度熱処理することにより固定化することができる。その他の方法としては、真球状微粒子(P)に反応性官能基を導入し、その官能基と反応する基を有する架橋剤を加えて化学的に結合する方法が挙げられる。これらの方法により、フォトニック結晶(C)を取り出す場合には、特異的結合物質(X)の変性を防止するため、構造体(N)を作製した後に(X)を固定化することが好ましい。
基板(Q)から取り出す具体的な方法としては、上記の方法により固定化した3次元フォトニック結晶を粘着テープ等を表面に付着させて物理的に取り出す方法や基板(Q)を酸やアルカリ、有機溶剤等を使用して除去する方法等が挙げられる。
生産効率等の観点から、テンプレート基板に集積された状態でバイオセンサーアレイ(SA)として使用できることが好ましく、テンプレート基板はテンプレートとしての役割だけでなく、バイオセンサー(S)の主要構成要素であるフォトニック結晶(C)の固定部品としての機能を有することが好ましい。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
(1)溝を形成した基板(基板(Q-1))
外観;図4参照
溝の断面形状;V字型
溝のサイズ;幅;10μm、長さ;1000μm、深さ;12μm、溝の数;100個
基板の大きさ;扇型、内円半径0.7cm、外円半径1.1cm、面積2.1cm2(溝の数;300個)
その他;基板の両端部に溝の両端が位置する
溝は遠心場の外側に位置する溝の片端から遠心中心に引いた線上に溝を形成。
(上記条件を満たす位置に基板(Q-1)を設置する)
作製方法;
内円半径0.7cm、外円半径1.1cmの扇型にカットしたシリコン基板(基板(Q))を1000℃で1.5時間、大気中で加熱することにより酸化膜を形成した後、ピラニア液(硫酸と30%過酸化水素水を体積比1:9で混合したもの)にて洗浄して有機物を完全に除去した。
乾燥後、スピンコーターによりレジストを塗布し、約400nmの膜厚のレジスト膜をシリコン基板上に形成した(180℃で3分間プリベーク)。レジストはαメチルスチレン-αクロロアクリレート共重合体(ZEP520(ポジ型レジスト)、日本ゼオン社製)を使用した。
このレジスト膜に電子線描画装置にて上記の溝のサイズ等に対応するようにパターンを描画した後、現像液(ZEP-RD、日本ゼオン社製)に浸漬してマスクパターンを作製した。
BHF(フッ化アンモニウムとフッ酸を体積比1:9で混合したもの)に数分間浸漬して酸化膜のみを取り除いた後、水酸化カリウム(30%)とイソプロピルアルコール(12%)からなる水溶液に1時間浸漬して、異方性エッチングを行った。最後に、酸化膜をBHFにて取り除き、基板(Q-1)を得た。
(2)チューブ状の基板(基板(Q-2))
以下の内径、長さを有する石英キャピラリーチューブ(TSP010150、ポリミクロ社製)を使用した。
内径;10μm (外径;150μm)
長さ;3cm
(1)AFP抗体固定化ポリスチレン真球状粒子(PX-1)
真球状微粒子(P);カルボキシル基含有ポリスチレン真球状微粒子(P-1)
(数平均粒子径320nm、標準偏差3.0%、屈折率1.59)
特異的結合物質(X);AFP抗体
作製方法;
数平均粒子径320nm、標準偏差3.0%のカルボキシル基のついたポリスチレン真球状粒子(P-1)の水スラリー(W030CA、固形分濃度4重量%、モリテックス社製)250μlに、0.2重量%の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミド水溶液100μlを加え、室温で1時間反応させる。未反応の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミドをリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、0.2重量%のAFP抗体を含有するリン酸緩衝液100μlを加えて室温で2時間反応させることによりカルボジイミドを介してAFP抗体を真球状粒子(P-1)の表面に固定化した。未反応のAFP抗体をリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、粒子濃度をリン酸緩衝液にて0.1重量%に調整した。
真球状微粒子(P);カルボキシル基含有ポリスチレン真球状微粒子(P-1)
(数平均粒子径320nm、標準偏差3.0%、屈折率1.59)
特異的結合物質(X);CEA抗体
作製方法;
真球状粒子(P-1)の水スラリー(W030CA、モリテックス社製)250μlに、0.2重量%の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミド水溶液100μlを加え、室温で1時間反応させる。未反応の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミドをリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、0.2重量%のCEA抗体を含有するリン酸緩衝液100μlを加えて室温で2時間反応させることによりカルボジイミドを介してCEA抗体を真球状粒子(P-1)の表面に固定化した。未反応のCEA抗体をリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、粒子濃度をリン酸緩衝液にて0.1重量%に調整した。
真球状微粒子(P);カルボキシル基含有ポリスチレン真球状微粒子(P-1)
(数平均粒子径320nm、標準偏差3.0%、屈折率1.59)
特異的結合物質(X);CA125抗体
作製方法;
真球状粒子(P-1)の水スラリー(W030CA、モリテックス社製)250μlに、0.2重量%の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミド水溶液100μlを加え、室温で1時間反応させる。未反応の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミドをリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、0.2重量%のCA125抗体を含有するリン酸緩衝液100μlを加えて室温で2時間反応させることによりカルボジイミドを介してCA125抗体を真球状粒子(P-1)の表面に固定化した。未反応のCA125抗体をリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、粒子濃度をリン酸緩衝液にて0.1重量%に調整した。
真球状微粒子(P);カルボキシル基含有ポリスチレン真球状微粒子(P-1)
(数平均粒子径320nm、標準偏差3.0%、屈折率1.59)
特異的結合物質(X);PSA抗体
作製方法;
真球状粒子(P-1)の水スラリー(W030CA、モリテックス社製)250μlに、0.2重量%の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミド水溶液100μlを加え、室温で1時間反応させる。未反応の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミドをリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、0.2重量%のPSA抗体を含有するリン酸緩衝液100μlを加えて室温で2時間反応させることによりカルボジイミドを介してPSA抗体を真球状粒子(P-1)の表面に固定化した。未反応のPSA抗体をリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、粒子濃度をリン酸緩衝液にて0.1重量%に調整した。
真球状微粒子(P);カルボキシル基含有ポリスチレン真球状微粒子(P-1)
(数平均粒子径320nm、標準偏差3.0%、屈折率1.59)
特異的結合物質(X);BCA225抗体
作製方法;
真球状粒子(P-1)の水スラリー(W030CA、モリテックス社製)250μlに、0.2重量%の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミド水溶液100μlを加え、室温で1時間反応させる。未反応の1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミドをリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、0.2重量%のBCA225抗体を含有するリン酸緩衝液100μlを加えて室温で2時間反応させることによりカルボジイミドを介してBCA225抗体を真球状粒子(P-1)の表面に固定化した。未反応のBCA225抗体をリン酸緩衝液にて十分に洗浄除去した後、粒子濃度をリン酸緩衝液にて0.1重量%に調整した。
カルボキシル基含有ポリスチレン真球状微粒子(P-1)に代えて、数平均粒子径6.0μm、標準偏差1.2%のカルボキシル基含有ポリスチレン真球状粒子(P-3)(4206A、モリテックス社製)を使用する以外は、(PX-1)〜(PX-5)と同様にして(PX-6)〜(PX-10)を得た。
(1)ターゲット物質(Y)が免疫蛋白質の場合
ボランティア3名(被検者b1、b2、b3)から採集した血液をそれぞれ遠心分離機にて10000rpmで15分間遠心処理して上澄みの血漿を採取し、これを被検体(A-b1)、(A-b2)、(A-b3)とした。
(2)ターゲット物質(Y)が核酸の場合
DNA固定化ポリスチレン真球状粒子(PX-7〜9)に固定化された一本鎖DNAと相補的な塩基配列を有する一本鎖DNAを20.0ng/mlと、該一本鎖DNAと塩基配列が異なる一本鎖DNAが100種類をそれぞれ10〜100ng/mlの濃度で含有するリン酸緩衝液を調整し、これを被検体(A-7)、(A-8)、(A-9)とした。
基板(Q-1)に液量調整弁を設けた上部カバーを設置し、スピンコーター(1H360S、ミカサ社製)を使って1500Gの遠心力を加えた後、AFP抗体固定化ポリスチレン真球状粒子(PX-1)のスラリー0.01gを上部カバーのスラリー供給部からスピンコーターの中心の液溜に0.001g/分の速度で滴下して(PX-1)を集積し、(PX-1)からなる構造体(N-11)を作製した。集積処理中において液量調整弁を開き、ポリスチレン粒子が完全に集積した後に溶媒が排出されるように設定した(図4参照)。
続けて、CEA抗体固定化ポリスチレン真球状粒子(PX-2)のスラリーを同様に供給し、(PX-2)からなる構造体(N-12)を作製した。この操作を(PX-3)、(PX-4)、(PX-5)についても行い、構造体(N-13)、(N-14)、(N-15)を作製した。各構造体(N)について後述する反射スペクトルの測定を行うと、フォトニックバンドギャップに由来する明確な反射スペクトルのピークが得られるので、これら構造体(N-11〜N-15)はフォトニック結晶(C-11〜C-15)である。
各構造体(N-11〜N-15)は基板(Q)に形成された溝の長さ方向に100μm単位で集積されており、断面が幅10μm、深さ12μmのV字型で、長さ500μmの5つの構造体(N)からなる集合体(F1)が得られた。
集合体(F1)が集積された基板(Q-1)上に、親水性スライドガラス(極東製薬工業社製)を設置してバイオセンサーアレイ(SA-1)とした。基板(Q-1)の溝内にはリン酸緩衝液が充填されており、集合体(F1)はリン酸緩衝液にて満たされている。
基板(Q-2)の片端を、AFP抗体固定化ポリスチレン真球状粒子(PX-1)のスラリーに2cm浸漬して、5時間静置することにより毛細管力を利用して(PX-1)を集積し、(PX-21)からなる構造体(N-21)を作製した。
続けて、CEA抗体固定化ポリスチレン真球状粒子(PX-2)のスラリーに同様に浸漬して、5時間静置することにより毛細管力を利用して(PX-2)を集積し、(PX-2)からなる構造体(N-22)を作製した。
この操作を(PX-3)、(PX-4)、(PX-5)についても行い、構造体(N-23)、(N-24)、(N-25)を作製した。実施例1と同様の理由から、構造体(N-21〜N-25)はフォトニック結晶(C-21〜C-25)である。
各構造体(N-21〜N-25)は基板(Q)に形成された溝の長さ方向に100μm単位で集積されており、断面が直径10μmの球型で、長さ500μmの5つの構造体(N)からなる集合体(F2)が得られた。
基板(Q-2)に集合体(F2)が集積された状態でバイオセンサーアレイ(SA-2)とした。基板(Q-2)のチューブ内にはリン酸緩衝液が充填されており、集合体(F2)はリン酸緩衝液にて満たされている。
(PX-1)のスラリーの代わりに、数平均粒子径300nm、標準偏差1.3%のポリスチレン真球状粒子(P-2)の水スラリー(3300A、固形分濃度1重量%、モリテックス社製)を使用する以外は、実施例2と同様にして構造体(N-3)を得た。得られた構造体(N-3)の大きさは、断面が直径10μmの球型で、長さ200μmであった。得られた構造体(N-3)を90℃で5分間加熱処理することにより粒子間を強固に固定化した。
同じ構造体(N-3)を同様の方法にて5つ作製した。
濃度1mg/mlのAFP抗体含有リン酸緩衝液5μlを基板(Q-2)内に注入してAFP抗体を構造体(N-31)の表面に物理的に固定化した。余分なAFP抗体をリン酸緩衝液で洗浄除去した後、直径15μm、長さ3000μmの石英キャピラリーチューブ(本チューブは微粒子集積のテンプレートとしてではなく、集合体(F)を固定化してする基板として機能する。以下、基板Zと称する。)(TSP015150、ポリミクロ社製)と基板(Q-2)とをシーリングチューブにて結合し、5MPaの圧力でリン酸緩衝液を基板(Q-2)側から15分間注入して、構造体(N-31)を基板(Z)に移した。この操作をCEA抗体、CA125抗体、PSA抗体BCA225抗体についても同様に行い、構造体(N-32)、(N-33)、(N-34)、(N-35)の順で基板(Z)に集積し、構造体(N-31〜N-35)からなる長さ1000μmの集合体(F3)が得られた。実施例1と同様の理由から、構造体(N-31〜N-35)はフォトニック結晶(C-31〜C-35)である。
基板(Z3)に集合体(F3)が集積された状態でバイオセンサーアレイ(SA-3)とした。なお、基板(Z3)の片端には目開き3μmのメッシュを設置して、分析走査操作中における集合体(F3)の流出を防止した。基板(Z3)のチューブ内にはリン酸緩衝液が充填されており、集合体(F3)はリン酸緩衝液にて満たされている。
(PX-1)〜(PX-5)のスラリーに代えて、(PX-6)〜(PX-10)のスラリーを使用する以外は、実施例1と同様にして、長さ500μmの5つの構造体(N)からなる集合体(F4)を得た。得られた構造体(N)は、3次元的に集積されていない2次元構造体であり、明確な反射スペクトルのピークが得られず、これらは非フォトニック結晶である。
基板(Q-1)に集合体(F4)が集積された状態でバイオセンサーアレイ(SA-4)とした。
AFP抗原、CEA抗原、CA125抗原、PSA抗原、BCA225抗原を各々20ng含有するリン酸緩衝液100μLと被検体(A-b1〜3)100μlとを混合して試験サンプルA-b1、A-b2、A-b3を作製した。
顕微紫外可視分光光度計MSV-350(日本分光社製)を使用して、バイオセンサーアレイ(SA-1)の1本の集合体(F1)を構成する5つの構造体(N-11〜N-15)について反射スペクトル(RS)を測定した(ブランク測定)。RSのピークは、構造体(N-11)が波長710.00nm、構造体(N-12)が波長705.10nm、構造体(N-13)が波長711.00nm、構造体(N-14)が波長712.50nm、構造体(N-15)が波長707.20nmに観測された。ここで1本の集合体(F1)とは、基板(Q-1)に形成された溝1個に集積された5つの構造体(N-11〜N-15)から構成される集合体(F1)を意味し、以下の全ての処理及び測定は、この1本の集合体(F1)について行う。
集合体(F1)の片端からマイクロシリンジを使用して、試験サンプルAFPb1を10μl注入し、各構造体(N-11〜N-15)に固定化した各抗体と試験サンプルAFPb1中の各抗原(ターゲット物質(Y))とを反応させた。ここで試験サンプルA-b1は集合体(F1)(基板(Q-1)に形成された溝内)を通過して、もう一方の片端より排出される。試験サンプルAFPb1の注入終了後、リン酸緩衝液20μlを注入して、ターゲット抗原以外の未反応の蛋白質等を洗浄除去した後、リン酸緩衝液を再び充填した。
ブランク測定と同様にRSを測定した。RSのピークは、構造体(N-11)が波長714.00nm、構造体(N-12)が波長709.50nm、構造体(N-13)が波長715.40nm、構造体(N-14)が波長716.10nm、構造体(N-15)が波長711.80nmに観測された。同様の操作を試験サンプルA-b2、A-b3についても行ないほぼ同等のピークシフトが観測された。ここで使用したバイオセンサーアレイ(SA-1)は同一のものであって、同一基板(Q)上の異なる集合体(F1)を使用して測定を行った。
各抗原の濃度を増減させて、前述と同様の条件にて、検出下限濃度及び検出上限濃度(ng/ml)を決定した。検出下限濃度は、RSピークのシフト量(ターゲット物質(Y)との反応後のRSピーク波長から、ブランク測定のRSピーク波長を引いた値)が観測不可能になる濃度、具体的にはシフト量が0.1nmとなる濃度とした。検出上限濃度は、RSピークのシフト量が増加しなくなる濃度、具体的には抗原濃度を3%増加させた時のシフト量が0.1nm未満となった場合の3%増加させる前の濃度とした。
バイオセンサーアレイ(SA-1)の検出下限濃度(ng/ml)は全ての抗原において0.001、検出上限濃度(ng/ml)は全ての抗原において10000以上(検出上限濃度が10000を超える場合には10000以上とする、以下同様)であった。従って、検出濃度範囲(ng/ml)は0.05〜10000以上である。
バイオセンサーアレイ(SA-1)に代えてバイオセンサーアレイ(SA-2)を使用した以外は実施例5と同様にして、検出下限濃度及び検出上限濃度の測定を行った。
バイオセンサーアレイ(SA-1)に代えてバイオセンサーアレイ(SA-3)を使用した以外は実施例5と同様にして、検出下限濃度及び検出上限濃度の測定を行った。
集合体(F1)の片端からマイクロシリンジを使用して、試験サンプルAFPb1を10μl注入し、各構造体(N-41〜N-45)に固定化した各抗体と試験サンプルAFPb1中の各抗原(ターゲット物質(Y))とを反応させた。ここで試験サンプルA-b1は集合体(F1)(基板(Q-1)に形成された溝内)を通過して、もう一方の片端より排出される。
試験サンプルAFPb1の注入終了後、リン酸緩衝液20μlを注入して、ターゲット抗原以外の未反応の蛋白質等を洗浄除去した。
ターゲット抗原の別の部位を認識するビオチン標識抗体リン酸緩衝液を1μL注入した後、Cy5標識されたストレプトアビジンと反応させて、各構造体(N)について蛍光量を測定しターゲット抗原の定量を行った。蛍光量の測定は、分光蛍光光度計RF5300PC(島津社製)を使用して行った。
各抗原の濃度を増減させて、前述と同様の条件にて、検出下限濃度及び検出上限濃度(ng/ml)を決定した。
表面プラズモンセンサーを使用して、試験サンプルA-b1〜A-b3の測定を行った。
表面プラズモンセンサーとしてはビアコアX(ビアコア社製)、センサーチップとしてCM5(ビアコア社製)を使用した。構成単位(L-1)の作製の場合と同様にして、CM5の表面にAFP抗体を固定化した。具体的には、1-エチル-3ジメチルアミノプロピルカルボジイミドでカルボキシル基を活性化した後、AFP抗体を含有するリン酸緩衝液を加えて室温で2時間反応させることにより固定化した。CEA抗体、CA125抗体、PSA抗体、BCA225抗体についても同様の操作を行い、各々の抗体を固定化したCM5チップを5つ準備した。
ビアコアXによれば、洗浄処理や試料サンプルの供給、表面プラズモンシグナルの観測等は、全て自動で行われる。ビアコアセンサーグラムは、センサーチップ表面の質量変化(縦軸)と質量の時間変化(横軸)を測定データーとして表示し、質量変化量が平衡になった時点の質量変化量からターゲット物質の定量を行うものである。
試料サンプルは、1分間に20μlの速度で5分間供給し、合計100μl必要であった。
各試料サンプルA-b1〜A-b3を、各抗体を固定化したCM5チップに、100μlそれぞれ供給して測定を行ったところ、質量変化が観測された。
実施例の場合と同様に、抗原の濃度を増減させて、前述と同様の条件にて、検出下限濃度及び検出上限濃度(ng/ml)を決定した。
実施例のいずれのバイオセンサーにおいても、必要な試験サンプル量は10μlであり、かつ、検出下限濃度は0.11ng/ml以下であった。
比較例の表面プラズモンセンサーよりも、検出感度は100倍〜10000倍も優れていた。検出上限濃度についても表面プラズモンセンサーよりも大幅に高く、検出濃度範囲が広いことが分かった。
C:上部カバー
SQ:スピンコーター基板
DI:溝部
PIN:固定用ビス
VA:液量調整部(調整弁)
QS:基板装着部
WI:粒子スラリー供給部
WP:粒子スラリー溜
CW:溶媒蒸発防止カバー
OR:オーリング
F;集合体(F)
Claims (11)
- 特異的結合物質(X)を表面に固定した真球状粒子(P)からなる構造体(N)であって、特異的結合物質(X)及び真球状粒子(P)のうち少なくとも特異的結合物質(X)が異なる各構造体(Nm)[mは正の整数を表す。]を、基板上の異なる位置に集積することにより構成した構造体(Nm)の集合体(F)を主要構成素子とするバイオセンサーアレイ(SA)。
- 構造体(N)がフォトニック結晶(C)である請求項1に記載のバイオセンサーアレイ(SA)。
- 基板(Q)として溝を形成した基板を使用して、長さ方向の異なる位置に各構造体(Nm)が集積した請求項1又は2に記載のバイオセンサーアレイ(SA)。
- 基板(Q)としてチューブ状の基板を使用して、長さ方向の異なる位置に各構造体(Nm)が集積した請求項1又は2に記載のバイオセンサーアレイ(SA)。
- 真球状粒子(P)の数平均粒子径が100〜10000nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイオセンサーアレイ(SA)。
- フォトニック結晶(C)の周期構造が立方最密充填構造及び六方最密充填構造の少なくとも一方である請求項2〜5のいずれか1項に記載のバイオセンサーアレイ(SA)。
- 特異的結合物質(X)が免疫蛋白質である請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイオセンサーアレイ(SA)。
- 基板(Q)に形成した溝に必要により上部カバーを設置し、遠心場の外側に位置する溝の片端又はその片端直上の上部カバーに必要により液量調整部を設け、基板(Q)の表面に対して平行の方向に遠心力を加えた状態で、異なる特異的結合物質(Xm)[mは正の整数を表す。]を表面に固定した真球状粒子(Pm)のスラリーを遠心場の内側に位置する溝の片端から順次充填することにより溝又はチューブに真球状粒子(P)を集積することを特徴とする請求項3に記載のバイオセンサーアレイ(SA)の製造方法。
- チューブ状の基板の片端を異なる特異的結合物質(Xm)[mは正の整数を表す。]を表面に固定した真球状粒子(Pm)のスラリーに順次浸漬することを特徴とする請求項4に記載のバイオセンサーアレイ(SA)の製造方法。
- 特異的結合物質(X)を表面に固定した真球状粒子(P)からなる構造体(N)であって、特異的結合物質(X)及び真球状粒子(P)のうち少なくとも特異的結合物質(X)が異なる各構造体(Nm)[mは正の整数を表す。]を、基板上の異なる位置に集積することにより構成した構造体(Nm)の集合体(F)を主要構成素子とし、構造体(N)がフォトニック結晶(C)であるバイオセンサーアレイ(SA)に、ターゲット物質(Y)を含有する被検体(A)を接触させて、被検体(A)中に含まれるターゲット物質(Y)と特異的結合物質(X)を結合させ、バイオセンサー(S)と被検体(A)を接触させる前後において、特定波長の電磁波をフォトニック結晶(C)に照射して得られる反射スペクトルのピーク波長を比較することにより、ターゲット物質(Y)を検出することを特徴とするターゲット物質(Y)の検出方法。
- 特異的結合物質(X)を表面に固定した真球状粒子(P)からなる構造体(N)であって、特異的結合物質(X)及び真球状粒子(P)のうち少なくとも特異的結合物質(X)が異なる各構造体(Nm)[mは正の整数を表す。]を、基板上の異なる位置に集積することにより構成した構造体(Nm)の集合体(F)を主要構成素子とするバイオセンサーアレイ(SA)に、蛍光体にてマーキングしたターゲット物質(Y)を含有する被検体(A)を接触させて、被検体(A)中に含まれるターゲット物質(Y)と特異的結合物質(X)を結合させ、未反応のターゲット物質(Y)を除去した後、残存する蛍光体を観測することによりターゲット物質(Y)を検出することを特徴とするターゲット物質(Y)の検出方法。
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