JP2004515764A - マイクロキャビティ構造を使用するコンパクトなセンサ - Google Patents

マイクロキャビティ構造を使用するコンパクトなセンサ Download PDF

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Abstract

低濃度の化学的化合物および/または生物学的化合物を検出するコンパクトなセンサ。このセンサは電磁マイクロキャビティを備える。検出すべき作用物質はマイクロキャビティを通過し、マイクロキャビティによって吸着され、そして/または、吸収され、マイクロキャビティ内部の電磁場を変更する。作用物質が吸着され、そして/または、吸収された後、探査ビームをマイクロキャビティに当てる。検出器によって電磁場の変化が検出され、共振が観察される探査ビームの周波数により、存在する特定の作用物質が示唆される。このセンサを使用して、化学的化合物および/または生物学的化合物を検出する方法。

Description

【0001】
(I.発明の背景)
1.発明の分野
本発明は、電磁マイクロキャビティ素子またはマイクロキャビティ素子のアレイまたはアセンブリを使用して化学作用物質または生物学的作用物質の存在を遠隔的に検出するコンパクトなデバイスの分野に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、マイクロキャビティの内部または周囲に配置した状態選択性材料を使用して化学作用物質または生物学的作用物質を検出するデバイスに関する。マイクロキャビティの複素誘電率は検出すべき化合物の存在によって変更される。本発明によれば、非常に低い濃度でも化学作用物質および生物学的作用物質の存在を検出することができる。
【0003】
言い換えれば、本発明は、化学的または生物学的に活性な物質の導入によって分散特性が変更され、その後そのような変更が検出される、フォトニックバンドギャップ結晶に関する。化学種または生物種の存在下でのキャビティの変化は、光、赤外線、またはRFの探査ビーム、あるいはそれらの組合せを使用して検出することができる。
【0004】
2.関連技術の説明
従来技術において、低い濃度で、化学作用物質および/または生物学的作用物質を検出するための技術がいくつも試みられてきた。たとえば、種の分類にシングルパス吸収セル技術が使用されている。マルチパスセルも低濃度での種の検出に使用可能である。
【0005】
マルチパスセルの最も簡単な例はホワイトセルである。それは、探査ビームが同一のセルボリュームを通って複数回反射することができる1対のミラーまたは回折素子からなり、物質の希薄な量を検出することができる。
【0006】
しかし、標準のホワイトセルは、本発明によるマイクロキャビティよりもはるかに大型であり、大型のキャビティを正確な共振周波数に同調させることは難しいことがある。さらに、ホワイトセルでは、一般に、サンプルを通過する回数が比較的少ないが(10〜100回程度)、本発明による微小共振器では、下記に示すように、10,000,000回まで通過させることができることが、本発明の魅力的な特徴の1つである。
【0007】
極めて選択的な化学センサを製作するための別の種類の技術が、Lipskierの米国特許第5,910,286号に教示されている。Lipskierが開示している化学センサは、音波トランスデューサおよび分子フィンガープリント材料層を有し、後者は、センサを極めて選択的にする感応層を備える。この材料はマクロ孔質架橋生成物であり、その立体的かつ機能的構造が分子種またはイオン種あるいはその両方を捕捉するのに特に適したキャビティを有する。Lipskierは、吸収または吸着プロセスによって検出すべき化合物を捕捉することができる選択性材料を製作する方法を教示している。
【0008】
その他の選択的な表面も述べられている。たとえば、選択的な表面として重合体を使用することが、D.Bucherらの「Detection of Influenza Viruses Through Selective Adsorption and Detection of the M−protein」、J.Immunol.Methods,96,pp.77、1987年に記載されている。セラミックの使用が、R.Diefesらの「Sample/Reagent Adsorption on Alumina Versus Pyrex Substrates of Microfabricated Electrochemical Sensors」、Sensors and Actuators,B30,pp.133、1996年に開示されている。複合有機化合物の使用が、J−F.Leeらの「Shape−Selective Adsorption of Aromatic Molecules from Water by Tetramethylammonium Smectite」、J.Chem.Soc.Faraday Trans.,I85,pp.2953、1989年に教示されている。最後に、膜の使用が、D.Petschらの「Membrane Adsorbers for Selective Removal of Bacterial Endotoxin」、J.Chromatography,B693,pp.79、1997年に記載されている。
【0009】
しかし、Lipskier、Bucher、Diefes、Lee、Petschの誰も、微量な問題の化合物を検出する際に極めて重要である電磁キャビティ共振効果を論じていない。
【0010】
Lescouzeresらの米国特許第5,907,765号は、化学センサを製造するために、半導体デバイスの上にキャビティをパターン付けする方法を開示している。この方法は、基板の上に犠牲層を形成し、続いてこの層にパターン付けしそれをエッチングして、その一部を基板上に残すものである。次いで、基板および犠牲層の残りの部分を分離層で覆い、その上に導電層を形成する。この導電層は、センサデバイス用のヒータを提供するように機能する。次いで、犠牲層の残りの部分を選択的にエッチング除去して、分離層と基板の間にキャビティを形成する。このキャビティは、ヒータと基板の間に熱分離をもたらす。
【0011】
Lescouzeresらは、キャビティを形成する方法を教示しているが、そのキャビティの目的は熱分離である。Lescouzeresらは、そのキャビティを探査電場の増強には使用していない。また、周波数の選択性や電磁増強にも言及していない。
【0012】
Growの米国特許第5,866,430号は、ラマン散乱技術を使用して、化学種または微生物種を検出し、同定し、モニタする方法およびデバイスを論じている。Growの方法は、以下の4つのステップを含む。(a)分析あるいはモニタすべき気体または液体を生物濃縮体に接触させ、後者を使用して、種と結合あるいは種を収集または濃縮する、(b)生物濃縮体−種の複合体を1つまたは複数の所定の波長で照射し、ラマン散乱スペクトルバンドを生成する、(c)このラマンスペクトルバンドを処理して電気信号を得る、(d)この電気信号を処理して、この種を、定量的にまたは定性的にあるいは定量的かつ定性的に検出し同定する。
【0013】
Growの発明は、ラマン散乱スペクトル情報を集め処理し、それを電気信号に変換することができるラマン分光器を備えるラマンオプトロード機器を使用する。この方法では、分析にラマン分光法を使用する。この方法は、吸着および吸収技術を利用する生物濃縮体の使用を教示している。しかし、Growは、場を増強するキャビティの使用を開示していない。
【0014】
Pipinoの米国特許第5,835,231号は、極めて透明度が高く多角形の光学材料から製作された小型で極めて低損失の一体構造型光学キャビティの使用によって化学物質を検出する、広帯域で超高感受性の化学センサを開示している。この発明では、光放射は、2つの全反射面を近接させたフォトントンネリングによって、一体構造型キャビティに入射し、それから出射する。吸収材料の存在下では、1回の通過当たりの損失が増加し、注入したパルスの減衰速度が決まる。この減衰速度の変化を利用して、1回の通過当たり1ppm(百万分率)またはそれ以上の感度をもつ定量センサが得られる。同様のアイデアが、A.Pipinoの「Ultrasensitive Surface Spectroscopy with a Miniature Optical Resonator」、Phys.Rev.Let.Vol.83,No.15,pp.3093、1999年にも記載されている。
【0015】
Pipinoは、キャビティ内における光学場増強の概念を用いてはいるが、単一のマイクロキャビティおよびアレイしか使用していない。そのため、Pipinoは、広い区域全体で増強効果が生じ得るようにしていないし、検出すべき種を引きつける、あるいは濃縮する手段も教示していない。
【0016】
最後に、Vigの米国特許第5,744,902号は、塗布したアレイから形成した化学センサまたは生物センサを開示している。特定の物質または作用物質の存在による質量および温度の変化が出力周波数の変化を引き起こし、この変化が分析すべき種に関連づけられる。さらに、質量の負荷による周波数出力の変化を、温度変化による変化から区別している。Vigは微小共振器アレイを教示しているが、その共振器は機械式のものであり、電磁式のものではない。
【0017】
しかし、後で論じる本発明による微小共振器は、Vigの発明によるものと比べて、大きな利点を有する。マイクロキャビティを光学的に探査することが簡単になるほど、感度が大きくなることがあり、本発明は、光ビームまたはRFビームを使用して、遠隔的に探査する手段を提供する。Vigの発明は、このような遠隔的な探査機能をもたない。
【0018】
化学種および/または生物種用のコンパクトで低コストな遠隔探査センサであって、
(a)コンパクトなサイズに見合って非常に感度が高く、極めて少量の問題の化合物を検出することができ、
(b)スペクトルの可視部分、赤外線部分全域およびテラヘルツあるいはマイクロ波領域まで機能するようにスケーリングすることができ、
(c)様々な基板上に標準のフォトリソグラフィ技術を使用して容易に製作することができ、
(d)導波路構造に統合された一体構造型平面デバイスとして製作し、あるいはボリューメトリックセンサとして構成することができ、
(e)軽量であり、
(f)遠隔探知用にUAV(無人航空機)またはマイクロUAV(μ−UAV)プラットホームに使用することができ、
(g)1つまたは複数の物質内の多重共振を検出することができ、
(h)偽陽性結果を無視する(アンチスプーフィング)ようにすることができ、
(i)自己較正機能をもつように製作することができ、
(j)比較的長い寿命と高い生産歩留まりを有することができ、
(k)使い捨て可能である、
センサが必要とされている。
【0019】
マイクロキャビティ構造を使用したコンパクトなセンサは、これらすべての要件を満足する。以前は、周知のセンサは、少量の所与の種の検出を可能にするために長い相互作用長を必要とした。したがって、検出すべき物質が構造を多数回通過する、扱いにくいホワイトセル構成が必要とされた。
【0020】
状態選択性マイクロキャビティアレイの概念により、新規な生化学センサが作り出されることになる。下記に示すように、本発明では、電磁キャビティ共振効果を利用するとともに、分析中の種の電磁場を増強することによって、以前から知られているセンサに伴う問題を回避する。
【0021】
探査電磁場を増強するマイクロキャビティを使用したコンパクトなセンサを得るための周知の従来技術は存在しない。依然として、このようなセンサの要求は切実である。
【0022】
前記の理由から、マイクロキャビティを使用して、極めて少量の化学物質および/または生物学的物質を検出するコンパクトで低コストのセンサが必要とされている。本発明は、このようなセンサを開示する。
【0023】
(II.発明の概要)
本発明は、マイクロキャビティを使用した、化学作用物質および/または生物学的作用物質用のコンパクトなセンサを対象とするものである。検出すべき作用物質は、マイクロキャビティを通過し、マイクロキャビティの特性を変更する。また、別の実施形態では、デバイスの感度がマイクロキャビティによって大きく増強されるので、作用物質を検出することができる。
【0024】
生物種または化学種を検出しようと試みるとき、1つの肝要なファクタは、希薄な濃度に対する検出器の感受性である。最も危険な生物毒素の中には、たかだか数ppm(百万分率)のレベルで致死量となり得るものもあり、また、バクテリアあるいはウイルスでは、極めて少ない数の生物体で感染に至り得るからである。致死的な結果をもたらすのにこのような極めて少ない量が必要とされるので、検出の際に難しい問題が生じることになる。人間の検出機構では、電気的検出器または他の部類のセンサが記録することができるものよりも格段に低い濃度で、症状が明らかになるからである。
【0025】
可視光、赤外線、あるいはミリ波によるセンシングでは、しばしば、検出は、検査中の材料を通過する、あるいはそこから反射する波動の振幅または位相の変化を感知することを意味する。例として、探査ビームを空気中に通し、あるいは地面その他の表面から波動を反射させ、特定の吸収線を探すことが挙げられる。
【0026】
検出すべき物質が非常に希薄な場合、その作用は、検出システムのノイズレベルに達しないことがある。その材料を、たとえば光学キャビティ内で、単一の探査ビームで多数回サンプリングすることによって、この問題に対処することができる。探査ビームの吸収または位相ずれにキャビティのQファクタを乗算するのが効果的であり、より大きい信号が得られる。
【0027】
可視光、赤外線、あるいはミリ波の信号のキャビティ増強を実現するのに、精密に位置合わせされたミラーを備える大型のキャビティ構造は必要ない。同一の効果が、自然に生じる形で数多く見られる。たとえば、表面増強ラマン分光法では、単に金属表面に吸着させることによって、数個という少なさの分子を検出することができる。金属表面の自然の粗さは、ごく小さな光学キャビティとみなせるミクロンスケールの凹凸を形成する。
【0028】
分子がこれらの自然のマイクロキャビティの1つに落ち込むとき、探査ビームの電場は、キャビティの壁によって増強され、はるかに大きい受信信号が得られる。これは、単一の探査ビームで同一分子を多数回サンプリングすることと等価である。ラマン分光法は非線形光学効果を利用しているが、同一の増強が光吸収などの線形効果についても当てはまる。
【0029】
粗い金属表面では、はっきりとその表面上への化学物質の吸収がいくらか増加するが、それはランダムな制御されない形でなされるものである。それぞれがまったく異なる電磁標識をもつ様々な生物種または化学種を感知しようとする場合には、広帯域源が必要である。自然のマイクロキャビティのランダムな寄せ集めでは、受信信号は、近傍のすべての化合物または有機体の電磁標識の重ね合わせを含む判読不能なスペクトルになるはずである。
【0030】
より賢明な手法は、このマイクロキャビティの電磁増強の知識を最新の製作技術とともに適用するものであり、それによって明確な特性をもつ検出器を作り出す。こうした検出器は、ある特定の種または化学物質の単一の吸収線だけを、あるいは、検出すべき種の特有な「フィンガープリント」として、全体として働く1組の明確なスペクトルの特徴を感知するように設計したマイクロキャビティアレイからなる。
【0031】
これは、マイクロキャビティの共振周波数を、検出すべき材料の共振と一致するように選択することによって実現される。ある種の化学物質または有機体を選択的に吸着するが他は阻止するゲルを検出器に付着させた場合、検出器の選択性が増強される。様々な共振周波数をもつ多くのこうしたアレイを組み合わせて単一の検出器にすることによって、この検出器は、様々に異なる種を検出することができる。電気論理回路と一体化すると、この検出器は、他の物質からの「偽陽性」指示値に対して感応しなくなる。このセンサアレイ全体を、単一の一体構造型基板上に存在する多くの構成要素とともに、フォトリソグラフィ技術およびMEMS処理技術を使用して形成し、チップスケールのパッケージに組み立てることができるはずである。
【0032】
微小構造は、いろいろな方法で定義することができるQ特性を有する。Qは、キャビティ内部に保存されるエネルギーと、サイクルごとに失われるエネルギーの比である。本発明では、Qを次式のようにも解釈することができる。
【0033】
【数1】
Figure 2004515764
ただし、Eはキャビティ内部の電磁場であり、Eは探査ビームの電磁場である。
【0034】
Qを、キャビティ内部における探査ビームの等価通過回数、たとえば、サンプルを探査する回数とみなすこともできる。
【0035】
この微小構造素子の有効キャビティQは大きい。したがって、この構造の感度は、従来型の手法と比べて向上する。
【0036】
マイクロキャビティの最小サイズは、1立方半波長程度である。一般に、本発明によるマイクロキャビティの多孔性の程度は、2次元構造上では平方波長当たり約1マイクロキャビティ、また、3次元構造上では立方波長当たり1マイクロキャビティである。一般に、これらの細孔のサイズは、立方半波長よりも小さく、マイクロキャビティのQに関係している。マイクロキャビティの半径をr、波長をλとすると、次式のようになる。
【0037】
【数2】
Figure 2004515764
一態様では、本発明は、マイクロキャビティを有する電磁構造を形成する方法を提供する。この構造は、既知の1組の設計パラメータに応じて、キャビティの物理的パラメータを変更することによって調整が可能である明確な動作周波数を有する。これらのマイクロキャビティを状態選択性の吸収材と組み合わせてセンサを製作し、まず測定すべき生化学物質を引きつけ濃縮し、次いで、キャビティ増強効果による高い感度でそれを検出する。システム全体は、チップスケールで超小型電子回路を統合するのに適しており、小型のパッケージ内にインテリジェントセンサを形成する。
【0038】
マイクロキャビティは、アレイの形に製造することが好ましい。このようなアレイが有用なのは、大面積のマイクロキャビティを提供するからである。原理上は、単一のマイクロキャビティ、特に後で論じる処理した微小球も使用することができる。しかし、単一のキャビティでは、サイズが小さいため探査するのがより難しくなることがあるので、マイクロキャビティアレイのほうが好ましい。
【0039】
マイクロキャビティアレイは、状態選択性の吸着材料をも含む受動的な平面構造の表面上に製作することができる。この状態選択性の吸着材料は、検出すべき材料の存在に応答して変化する任意のものでよい。たとえば、検出しようとしているある特定の抗原の抗体を、状態選択性の材料とすることができる。
【0040】
化学種または生物種は、この構造内で、処理済み材料によって吸着または吸収される。その結果、探査ビームによって決まるこの構造の透過特性および/または反射特性が、所与の化学種または生物種の存在により、位相および/または振幅の点で変更される。
【0041】
この基本構造は、微小共振器アレイを備える。この構造は、状態選択性の吸収材料を伴うフォトニックバンドギャップ結晶として分類することもできる。この構造は、これらの素子からなる2次元平面アレイの形にすることもできるし、こうしたマイクロキャビティからなる3次元ボリュームの集合体とすることもできる。このデバイスを一体型構造として製作することもできるし、あるいは、複数の個別の微小球または複数のディスクを共通の基板上に自己集積させる、あるいは光ファイババンドルまたはRF導波管の端部に取り付けることもできる。さらに別のデバイス構造は、1対の導波路チャネルであり、その間に微小球または微小環共振器が位置する。
【0042】
マイクロキャビティアレイを、自己集積技術を使用して共通の基板上に製作することができる複数の微小共振器、微小ディスク、または微小球の集合体の形にすることもできる。その他の3次元構造も同様に使用することができる。
【0043】
こうした自己集積技術は、当業者には周知のものである。それらには、たとえば、複数の球を含む液体、通常は水から基板を引き出し、誘電体の球の単層を組み付ける技術が含まれる。そうすると、それらの球が、基板上で単層を形成する。
【0044】
このシステムを、マイクロキャビティ素子のスケールサイズに応じて、可視範囲、赤外線範囲、またはテラヘルツ範囲におけるスペクトル解析に使用することができる。より複雑な化合物のハイパースペクトル解析を行うために、複数のサイズの素子を同一の基板上に容易に統合することができる。この場合、複数の類似の種を区別するために、より詳細な分光評価が必要になることがある。これは、あるクラスの毒性種はその非毒性類似体のものに類似したスペクトル特性および構造特性を有するので、非常に重要である。
【0045】
様々な微分検出方法を用いてこのアレイを探査して、放射源ノイズおよび環境ノイズのコモンモードを排除することができ、その結果、より頑強なセンサのパッケージが得られる。様々な技術を用いてその性能を向上させることができる。たとえば、微分吸収、変調分光法、または周波数シフト源が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの方法および技術は、分光分野の技術者にはよく知られているものである。
【0046】
本特許は、種を検出するための2つの関連するシステムを開示しており、その2つのシステムを下記に詳しく説明する。第1のシステムによれば、種がマイクロキャビティのQを変更し、共振するまたはほぼ共振する探査ビームの吸収によって、この変更が検出される。第2のシステムによれば、マイクロキャビティは変更されないが、種が位相シフトに影響を及ぼし、この構造の高いQによって感度が増強された、共振するまたは共振しない探査ビームでこの構造をサンプリングすることによって、この位相シフトが検出される。
【0047】
本開示では、「共振」という用語は、探査ビームの波長が状態選択性材料の吸収線と一致した状態と定義する。
【0048】
上記2つのシステムはそれぞれ、複数の実施形態によって実施することができる。
【0049】
本発明の一態様は、基板上に設けられた複数のマイクロキャビティを有する第1素子と、電磁放射源および電磁放射検出器を有する第2素子とを備える、化学的化合物および/または生物学的化合物を検出するセンサを提供する。このセンサでは、化学的化合物および/または生物学的化合物が、マイクロキャビティによって吸着され、そして/または、吸収され、マイクロキャビティの電磁場の変化を引き起こし、その変化が第2素子によって検出される。
【0050】
本発明の別の態様は、複数のマイクロキャビティが上面に設けられた基板を提供するステップと、電磁放射源および電磁放射検出器を備える探査デバイスを提供するステップと、化学的化合物および/または生物学的化合物をマイクロキャビティに送るステップと、マイクロキャビティによって化学的化合物および/または生物学的化合物を吸着し、そして/または吸収し、マイクロキャビティの電磁場の変化を引き起こすステップと、探査デバイスによってこの電磁場の変化を検出するステップとを含む、化学的化合物および/または生物学的化合物を検出する方法を提供する。
【0051】
本発明の特徴および利点は、下記の説明、下記の特許請求の範囲、および添付の図面を参照してよりよく理解されよう。
【0052】
(IV.発明の詳細な説明)
1.センサ一般
マイクロキャビティアレイの簡単な例を図1に示す。金属または誘電体表面1に格子でテクスチャを付けて、検出すべき材料3の粒子が中に落ち込み得るマイクロキャビティ2を形成する。下記により詳しく説明するように、探査ビーム4の吸収は、キャビティ2内部における場の増強により、単にその粒子が自由空間中または滑らかな表面上にある場合の吸収よりもはるかに大きくなる。
【0053】
本発明が基礎とする基本原理は、マイクロキャビティアレイによる電磁場の増強の原理であり、それを以下に説明する。探査ビームがキャビティの共振周波数に近いとき、マイクロキャビティの1つに入る化学的化合物は、はるかに大きな印加電磁場を感じる。実際には、探査ビームが、この化学的化合物を多数回サンプリングする。この増強の大きさは、キャビティのQに比例する。これは、表面増強ラマン分光法で見られる増強効果に類似のものである。
【0054】
しかし、この場合、キャビティ2の共振は先鋭なので、この効果は、キャビティ2の共振が被検査材料3の吸収線と一致するときにしか起こらない。
【0055】
無線周波領域および光の領域において、「受動的」なマイクロキャビティ(すなわち、状態選択性の吸収材料でマイクロキャビティを処理していないもの)を含むこれらの基本構造の多くが他の人々によって研究されてきた。
【0056】
典型的な用途には、光の周波数または無線周波数のフィルタリング、再構成可能なアンテナ、光多重化/アッドドロップネットワーク、および自己動作効果用の非線形位相シフタ(たとえば、光学的に制御されるアッドドロップチャネル)がある。これらの用途の多くにおいては、それらの構造では高いQが得られるので、自己動作効果を実現するために低パワーの光またはRFが必要であるということを利用している。マイクロキャビティ内におけるこの局所的な高電磁場の増強も、ラマン散乱および2次高調波発生を含む表面増強非線形光学効果に関して以前に観察されたものにいくらか類似している。
【0057】
しかし、本発明では、高電磁場領域をフォトリソグラフィ技術により決定的なやり方で基本構造内に製作し、それによって、各構造を容易にかつ高い信頼性で再現することができ、その特性が明確になる。
【0058】
最も一般的な形では、本発明によるセンサは、検出すべき作用物質3を特異的に引きつける材料を含む電磁マイクロキャビティ2のアレイを備える。複数のマイクロキャビティ2は、同一の周波数または異なる周波数で共振するように設計することができる。
【0059】
キャビティ2をそれぞれ同一の周波数で共振させるのが好ましい設計であるが、使用する周波数は、検出すべき作用物質3が吸収する電磁放射の周波数である。共振が単一のバージョンの設計は、共振が異なるバージョンのものよりも簡単であり、したがって、コスト効果がより高い。代替方法として、検出すべき作用物質3とそれを引きつける材料が接触するときに、これら2つの物質の化学的な組合せが電磁放射を吸収する周波数で、キャビティが共振するように設計することができる。
【0060】
複数のマイクロキャビティ2を異なる周波数で共振するように設計する場合、これらの周波数を、検出すべき作用物質3の様々な吸収バンド(または、検出すべき作用物質3とそれを引きつける材料の化学的な組合せの吸収バンド)に一致するように選択すべきである。異なる共振周波数を有するマイクロキャビティを備えるバージョンでは、同一共振バージョンよりも正確な結果を得ることができる。
【0061】
さらに、マイクロキャビティ2の共振周波数が、検出すべき作用物質3の吸収バンド内に入らない周波数を含むように設計することができ、このバンド内では吸収がないことが偽陽性結果を妨げるように働き得る。
【0062】
(感知すべき特定の作用物質に重なるものと重ならないものがある)異なるキャビティ共振をもつセンサの別の利益は、広帯域バックグラウンド吸収、たとえば、伝搬経路散乱、ならびにセンサ機器のゆるやかな劣化(たとえば、放射源の変動、検出器のドリフトなど)が存在する状況があることである。この場合、共振または非共振キャビティ素子からの信号の後処理(たとえば、位相および/または振幅の差異化)により、コモンパス照合を行うことができる。
【0063】
センサを、同一の周波数で共振するキャビティで設計する場合、また異なる周波数で共振するキャビティで設計する場合、キャビティ内部の電磁場の増強機構は同一である。それを図2に示す。
【0064】
センサのマイクロキャビティ2を、検出すべき所望の化学的化合物または生物学的化合物3を選択的に吸着することができる材料5で処理する。所望の化合物3がキャビティ2に結合または連結したとき、この構造のインピーダンスは変更されることになる。デバイスのQが高ければ、センサの感度は、マイクロキャビティのQにほぼ等しい倍率だけ、大きく向上する。本質的には、マイクロキャビティにより、探査ビーム4が種を多数回通過することができ、デバイスの感度が向上する。マイクロキャビティのQは、約数千〜約1千万以上の範囲にあり、したがって、この増強は大きなものとなり得る。
【0065】
このようなセンサを、マイクロキャビティのスケールサイズ、所望の探査波長、および個々の状態選択性材料に応じて、無線周波数/光スペクトルの広い領域全体で使用することができる。放射源には、狭帯域レーザならびにテラヘルツ放射器という例が含まれる。
【0066】
上記のいずれかのタイプのキャビティを有する本発明によるセンサの動作モードを、以下のように記述することができる。
【0067】
すべてのマイクロキャビティ2を同一の周波数で共振するように設計した場合、従来型の電磁検出器と比べて、それらは単にこの検出器から得られた信号を増強するように働く。以下の2つの理由から、この増強が生じる。
【0068】
(1)電磁場が、マイクロキャビティ2の中の特定領域内で増強される。
【0069】
(2)引きつける材料5の存在により、キャビティのその同一の領域内で検出すべき作用物質3を濃縮させる。
【0070】
この増強の機構は、以下の説明により理解することができる。第1に、電磁キャビティは、キャビティ内のある場所で探査信号の電場の増大を引き起こす。探査ビーム4は、キャビティから脱出する前にその壁によって多数回反射するので、自由空間の同一の距離を通過する場合よりも、キャビティ内部に長時間留まる。その増強倍率は、キャビティのQに大雑把に等しくなる。Qは、その個々の設計に依存しており、数十〜数百万またはそれ以上の範囲の値をとることができる。
【0071】
検出すべき作用物質3が、このようなキャビティのその領域に落ち込んだ場合、作用物質3による電磁吸収が、電場が増強されるのと同一の量だけ増強される。ここで述べたことは、この吸収が、作用物質あるいは作用物質中のいくつかの化学種の電気双極子モードによって生じることを仮定している。この吸収の増強は、作用物質3がキャビティ内に落ち込む場合にしか生じ得ないので、電場の増強が生じるところと同一の領域内に作用物質3を濃縮させる必要がある。
【0072】
したがって、信号を増強させる第2の方法は、検出すべき作用物質を引きつける材料をキャビティ内に配置することである。検出すべき作用物質または対象とする1つのクラスの作用物質に対して選択的であるように、特異的にこの材料を選択する。この場合、信号の増強の合計は、周囲空間と比べたときのキャビティ内の作用物質濃度の増加を記述する吸収効率係数を乗算したキャビティのQに等しくなる。
【0073】
図2に示すように、マイクロキャビティ2を3D格子内に配置する。この場合、この材料は、透過モードで機能する。探査ビーム4はこの材料を通って伝播し、検出すべき化合物3を吸収する状態選択性材料5が充満したマイクロキャビティ2内で、電磁場6が増強される。マイクロキャビティの状態選択性の処理は、その表面を処理する、また固体のマイクロキャビティ(たとえば、固体微小球)の場合には、そのボリュームを処理することによって実現することができる。
【0074】
HP−HFSSソフトウエアを使用して行った、キャビティ増強効果のコンピュータシミュレーションを図3に示す。このシミュレーションは、金属表面上にパターン付けした金属マイクロキャビティアレイの単一ユニットセル構造を含んでいた。キャビティ2内には、損失の大きい誘電体としてモデル化した少量の吸着材料3を配置した。曲線8は、50GHzの共振周波数で測定可能な損失を示すこの表面の反射強度を示す。キャビティがない同一の体積の損失の大きい材料を測定した場合、曲線7となる。どちらのシミュレーションでも、この損失の大きい材料は、広帯域であり、明瞭な吸収線をもたない。実際には、マイクロキャビティアレイの共振周波数を、検出すべき材料の吸収線に一致するように同調させるはずである。
【0075】
約50GHzのキャビティ共振周波数では、吸収は測定可能な程度まで増加する。キャビティ2がないと、損失の大きい材料3はほとんど検出不可能である。このシミュレーションはミリ波周波数で行ったが、キャビティ2の寸法をスケーリングすれば、同一の結果がテラヘルツ、赤外線、または可視光周波数にも適用可能なはずである。
【0076】
2.センサの動作、基本的実装形態、および様々な可能な実施形態
このセンサの動作を下記に説明する。このセンサは、検出すべき作用物質3を引きつける材料5を含むマイクロキャビティ2を備える。次いで、このセンサを、探査ビーム4を出す電磁放射源(図示せず)と電磁放射検出器(図示せず)とともに構成して配置する。
【0077】
電磁放射源は、検出すべき個々の作用物質に応じて、可視、テラヘルツ、赤外線、または紫外線スペクトル領域で動作するレーザまたはRF発振器であり、または、この構造を光の周波数で働くように設計する場合には、発光ダイオードである。白熱光源、蛍光光源、または燐光光源など他の任意の光学光源とすることもできる。
【0078】
検出器は、マイクロ波、テラヘルツ、赤外線、可視光、および紫外線範囲のいずれかの周波数で動作するフォトダイオードその他の任意の光検出器である。これらの放射源および検出器はそれぞれ、光学分野の技術者には周知のものである。
【0079】
この構造をマイクロ波周波数で動作するように設計する場合、放射源はマイクロ波源であり、検出器はマイクロ波検出器である。どちらのデバイスも、無線周波数回路またはマイクロ波回路の分野の技術者には周知のものである。
【0080】
この構造は、光の周波数とマイクロ波周波数の間にあるテラヘルツ範囲でも動作することができるはずである。放射源および検出器は、この範囲用にも存在しており、テラヘルツ放射の分野の技術者には周知のものである。本発明は、特定の種類の電磁放射、または特定の放射源や検出器に限定されるものではない。放射源および放射検出器の位置は、センサの個々の用途に依存しており、当業者にはよく知られている。
【0081】
マイクロキャビティ構造は、検出すべき種が、多段分子エネルギー励起機構、または非線形のスペクトル的に増強された探査すべき特徴を有する場合、「多重共振構造」とすることもできる。
【0082】
吸引材料5を備えるマイクロキャビティ構造を、放射源および放射検出器とともに配置した後、そのユニットを検出すべき作用物質3に露出させる。これは、このユニットを通して対象とする作用物質3を含む疑いがある空気をポンプで供給し、または、マイクロキャビティ構造全体に対象とする作用物質を含む疑いがある水その他の液体をポンプで供給することによって行うことが好ましい。あるいは、この液体の急激な曝気により、空気から液体に作用物質3を通すこともできる。様々な既存の液体/蒸気移送デバイスが、従来型ポンプならびにミニチュアMEMS(超小型電子機械)デバイスも含めて、この機能を実現するために利用可能である。これらの液体/蒸気移送デバイスならびにMEMSデバイスは、当業者には周知のものである。
【0083】
マイクロキャビティ2を露出させた後、探査ビーム4を発生する放射源により、それを照明することが好ましい。その放射は、場合に応じて、マイクロキャビティ2を通過し、あるいはそれから反射し、放射検出器で受け取られる。受け取った信号の減少は、陽性結果とみなされ、マイクロキャビティ2は、放射を吸収した対象とする作用物質3を含んでいるとみなされる。
【0084】
あるいは、マイクロキャビティの1つの組は露出させ、マイクロキャビティの第2の組は露出させない、2つのテストを並行して行うこともできる。この場合、マイクロキャビティ2のどちらの組も照明し、その差信号を使用して、対象とする作用物質が存在するかどうか判定する。この方法を使用して、放射源または放出検出器の性能上のばらつきの影響を無効にすることができる。個々の状態選択性材料の特性に応じて、使用のたびに材料を付着し直すことが必要なこともあり、再使用可能なこともある。
【0085】
このセンサの発明の別の実施形態では、マイクロキャビティ2はそれぞれ異なる共振周波数を有し、あるいはマイクロキャビティ2が複数のグループにクラスタ化され、各グループが異なる共振周波数を有する。この方法は、検出すべき作用物質3が多重バンドにおいて吸収を行う場合、それらの吸収バンドをそれぞれ探査することができるので、より正確な検出システムを提供する。
【0086】
さらに、作用物質3が特定の複数のバンドにおいて吸収を行わない場合、これらのバンドを使用して偽陽性結果が提供されることを防止することができる。このセンサは、それぞれ個々の周波数バンドに同調させた、上記の構造の複数の平行コピーからなる。それらを、同一の基板1上に製作する、または別々に製作してその後組み立てることができる。基板1の好ましい材料は、好ましくは少なくとも厚さ約1mmのガラスである。
【0087】
各マイクロキャビティは同時に照明されることが好ましく、それぞれ個々の検出器に連結されている。マイクロキャビティ2が異なる共振周波数を有するこの実施形態の代替方法では、マイクロキャビティアレイを単一の放射源または検出器により順次走査することができる。マイクロキャビティ2のあるサブセットから、受け取った電磁エネルギーの減少が得られ、このサブセットが、検出すべき作用物質3が電磁放射を吸収することがわかっている周波数だけに対応する場合、陽性結果が得られる。
【0088】
しかし、ある周波数では受け取ったエネルギーの減少が示されず、検出すべき作用物質3がそれらの周波数で吸収を行うことがわかっている場合には、陰性結果が得られる。さらに、ある周波数では受け取ったエネルギーの減少が示されるが、検出すべき作用物質3がそれらの周波数で吸収を行わないことがわかっている場合、別の作用物質が存在している可能性もある。
【0089】
本発明のさらに別の実施形態は、マイクロキャビティ2が複数の作用物質3を引きつける材料を含むものである。この場合も、上記の手順がすべてのマイクロキャビティ2に対して行われ、周波数ごとに結果が分類される。吸収を示したマイクロキャビティ2が、対象とする特定の作用物質3の吸収周波数に対応する場合、その作用物質3に対して陽性結果が得られる。これは、複数の作用物質3が同時に存在する可能性がある場合に重要となり得る。
【0090】
ほぼ共振する手法と共振しない方式の、(それぞれいくつかの実施形態を含む)2つの基本的なデバイス実装形態がある。ここでは、「共振」は、探査ビーム4の波長が状態選択性材料5の吸収線と一致した状態と定義する。
【0091】
共振するまたはほぼ共振する実装形態では、感知すべき種3はマイクロキャビティを変更し、ほぼ共振する探査ビーム4による構造の吸収または反射を介して、その変更を探査することができる。
【0092】
共振しない実施形態では、作用物質3はマイクロキャビティ2を変更せず、その代わり、共振しない探査による構造のサンプリングにより受ける位相シフトに影響を及ぼし、その探査の感度はその構造の高いQによって増強される。この後者の実施形態の場合、このセンサを、バルクのマイクロキャビティすなわち位置合わせを必要としない、非常にコンパクトで堅牢なソリッドステートホワイトセルとみることができる。共振しない手法の一実施形態では、ドープした微小球または微小環共振器を使用して、探査ビームを1対の光導波路(2本のファイバまたは2つのチャネル平面導波路)間に結合することができる。このシステムを所望の種に露出させるとき、位相シフトが変更され、その結合力が影響を受ける。この方式はバイアスをかけることができ、それによって、種が存在しないときにゼロレベルを検出し、それによりバックグラウンドのノイズを減少させることができる。
【0093】
共振しない手法の別の実施形態では、共振の特徴がテラヘルツの領域にありまた半導体ベースの構造(たとえば、シリコン、ガリウムヒ素など)を使用すると仮定すると、そのデバイスは、ドープしたマイクロキャビティアレイの領域内を除いて、テラヘルツ放射に対して透明になるはずである。これにより、この構造を様々な方向から探査することができ、また、潜在的に、回折素子を使用してコンパクトな幾何形状を実現することができる。
【0094】
共振しない手法のさらに別の実施形態は、図4に示す平面(2次元)フォトニック結晶の反射構造であり、その放射パターン、偏光、および/または反射率を、外来種の吸着によって変更することができる。この構造は、「LIGA」などの技術を使用して形成することができるより精巧な表面テクスチャを含む。微細加工分野の技術者には周知の「LIGA」技術は、金属の電気メッキを犠牲誘電体のパターン形成/エッチング処理と組み合わせて、サブミクロンスケールの金属構造を形成するものである。テラヘルツまたは光のスケールの高インピーダンス表面(「高Z表面」)を製作することによって、幾何形状によって決まる共振周波数および帯域をもつ構造を形成することができる。このような構造は、既知の1組の設計パラメータを特徴とする。その表面に、化学種または生物種を吸収する状態選択性ゲルを付着させることによって、検出すべき材料を増強された電場領域内で濃縮することができる。
【0095】
再度、二重探査方式を使用して、in situ較正を実現することができ、それによって、グローバルな摂動をリアルタイムで補正することができる。そうすると、この構造に対して楕円偏光法を行って、外来種の存在を推測することができる。
【0096】
この反射式実施形態の変形では、平面反射構成要素を使用して、導波路壁、カプラ、またはエンドキャップを備える導波路構造を組み立てることができる。この場合、この構造に結合される無線周波数探査信号は、所望の複合物の存在によって影響を受ける。というのは、導波路の分散が、この分子制御可能な無線周波数構造による化学材料または生物学的材料の吸着によって変更されるからである。
【0097】
この全体システムでは、差信号/基準の手法を使用して、センサを探査する。この場合、探査ビームが基底構造をサンプリングする間、信号ビームはその構造(たとえば、位相シフト、偏光回転、または吸収変化を受ける構造)によって変更される。この2つのビームを、構造、用途のシナリオなどに応じて、様々な技術を使用して区別することができる。いくつかの候補となる技術には、(キャリアを基準として使用し、サイドバンドが共振の特徴を探査する)FMまたはAM変調分光法、(たとえば、周波数櫛形発生器を使用する)二重周波数吸収測定または二重周波数位相測定、時間領域技術(たとえば、周波数シフト変調)などの例が含まれる。
【0098】
システムの全体的構成の点で、このセンサは、内蔵の放射源、変調器および検出器を有することもできるし、完全に受動的とすることもできる。センサ素子のコストが激減し、その必要電力が本質的にゼロであり、またその重量が能動デバイスよりも大幅に軽いという点で、後者が望ましいことがある。受動デバイスは、たとえば、二重ビーム方式により遠隔的に探査され、その後廃棄される。戦場という状況では、(脱離時間定数が飛行移動時間よりもはるかに長いと仮定すると)この低コストデバイスを、UAVを使用して、まず毒素を探査すべき区域全体にわたって飛ばし、次いで、このデバイスが探査され得る別の区域全体にわたって飛ばすことができる。能動デバイスはよりコストがかかるが、用途の状況に応じて、内蔵の処理機能および無線ネットワーク機能を有することができる。
【0099】
同一の検出器で様々な物質を検出するために、図5(a)に示すようなパネル化手法を用いることができる。矩形9a〜9pはそれぞれ、異なる共振周波数を有するマイクロキャビティ2のアレイを表す。そられが集合した表面は、波動が、可視、赤外線、あるいはテラヘルツ領域のスペクトルであろうが、対象とするスペクトル全体をカバーする。
【0100】
所与の領域で、探査ビーム4の印加電場は、その領域の共振周波数においてのみ増強され、したがって、この表面が、表面全体のスペクトル内にある複数の吸収線を有する物質と接触するとき、表面のある区画しか陽性結果を記録しないはずである。特定の吸収スペクトルを有する化合物3に遭遇したとき、化合物3は、9d、9iおよび9nの区域内に十字で示すように、マイクロキャビティの共振が検出中の化合物の吸収ピークの1つである領域において検出されることになる。
【0101】
ある特定の化学物質または種に対する陽性指示値は、検出器のある区域からの陽性信号を必要とする。図5(b)に示すように、共振周波数がその物質の吸収線と一致する区画しか、陽性結果を示さない。図5(b)に示す例から、9d、9iおよび9n内に蓄積される化合物3のみが共振ピークを与えることがわかる。したがって、検出すべき作用物質は、その3つの領域にしか存在せず、他の領域には存在しない。
【0102】
化合物3が何であるかは、その化合物がどの領域で検出されたかによって決まる。検出器に埋め込まれた論理回路が、どの種または化学物質が検出されたかを決定する。
【0103】
図6に示すように、マイクロキャビティ2を有する表面1を、広帯域放射源10および走査検出器11と組み合わせることによって、表面1の各区域からの信号を測定する。パネル化した検出表面1は、コンパクトなパッケージ内で一体構造として製作するのに適している。検査表面1を照明し、上記で述べかつ図5(a)および5(b)に示す技術を使用して、様々な領域の吸収をモニタする。
【0104】
3.センサの好ましい実施形態
基本構造および原理を上記で述べた、いくつかのこうしたセンサの好ましい実施形態は下記のとおりである。
【0105】
光の周波数で吸収する作用物質を検出するために、マイクロキャビティは、ガラスまたは重合体の微小球を含むことが好ましい。この微小球を、球のサイズがすべてほぼ同一である単分散の形に形成する。単分散のガラスまたは重合体微小球の製作方法は、当業者には周知のものである。重合体の微小球を使用する場合、ポリスチレンが好ましい重合体である。状態選択性の材料は、微小球を基板表面上の定位置に保持する接着剤として機能する。微小球は、ただ1種類の光共振マイクロキャビティを含む。任意の光マイクロキャビティ2のアレイを使用することができることを理解されたい。
【0106】
マイクロキャビティ2のサイズは、微小球の直径によって決まるとともに、検出すべき作用物質3の吸収バンドの波長によっても規定される。こうした微小球の直径の範囲は、選択した材料および波長に応じて、約10ミクロン〜約500ミクロンであることが好ましい。
【0107】
一実施形態では、マイクロキャビティ2を同一の波長で共振するように設計する。マイクロキャビティ2を異なる波長で共振するように設計することもできる。有効光学直径が約半波長であるキャビティ2が好ましい幾何形状であり、光学場が微小球内で低次モードを形成する。あるいは、有効周囲長が半波長の整数倍であるキャビティ2を使用すると、光学場が微小球内で一種のウィスパリングギャラリーモードを形成する。
【0108】
図7に示すように、マイクロキャビティ2を平面光導波路12上に配置することが好ましく、導波路の一方の端部13は光源14の入力として機能し、他方の端部15は検出器16への出力として機能する。この実施形態を図7に示す。微小球2(a)の形のマイクロキャビティ2に、検出すべき作用物質3を引きつける材料5を付着させ、前記のように、探査ビーム4を使用して検出を行う。
【0109】
検出すべき作用物質3がそれを引きつける作用物質5と接触するとき、その検出すべき作用物質3は微小球2(a)の表面上に吸着される。広範な吸引作用物質を使用することができる。吸引作用物質の例は、人体内で自然にまたは合成によって生成され得る特定の抗原に対する同一の抗体である。ガラス基板自体が多くの生物学的化合物を引きつけるが、選択的に行われるわけではない。選択性を得るために、抗体を使用することが好ましい。
【0110】
微小球を含む液体中にこれらの吸引作用物質を低濃度で溶解することによって、微小球に吸引作用物質を付着させることが好ましい。こうすると、その微小球を基板に付着させるときには、微小球にはすでに吸引作用物質が付着している。
【0111】
導波路12を通過する光学場は、エバネッセント結合によって各微小球2(a)を励起し、エバネッセント結合によって表面上の作用物質3をサンプリングする。光導波路12を通って伝搬する光信号は、エバネッセント場17によって微小球2(a)に結合する。
【0112】
次いで、作用物質3の存在が、光信号の吸収として記録される。図7に示すように、多数の微小球2(a)が直列に並ぶので、1つの微小球における吸収が信号レベル全体に影響を及ぼす。これにより、検出すべき作用物質3が低濃度でも、比較的大きな信号増強がもたらされる。このため、微小球2(a)の2次元アレイを使用する場合には、必要な面積を維持しながら、直列に並べたできるだけ多くの微小球2(a)を備える、アスペクト比が大きいアレイとすることが望ましい。使用する微小球2(a)の数を制限するものは所望の検出器サイズだけであり、必要とされる検出面積に応じて、何千またはさらに何百万もの多さとすることができる。
【0113】
図8に示す別の実施形態は、低コストおよび製作の容易さのためにやはり好ましい実施形態であるが、マイクロキャビティ2は、標準のフォトリソグラフィ技術または電子ビームリソグラフィ技術を使用して形成される、エッチングされた誘電体共振器2(b)である。たとえば、光学ビーム、電子ビーム、プラズマエッチングなどの従来型フォトリソグラフィ製作方法を使用して、これらのデバイスを構築することができる。これらの方法は、当業者には周知のものである。
【0114】
そのように形成したマイクロキャビティ2(b)は、約半波長の有効光路長を有する。この技術により、欠陥のより少ない均一なアレイをより容易に製作することができる。前述のように、この技術により、多重周波数を探査するためのテーパ付きアレイ(たとえば、段差テーパ付きアレイ)を形成することも容易になる。
【0115】
一実施形態では、マイクロキャビティ2(b)を、基板上に設けられたテーパ付きリニアアレイ中に配置する。その中では、セルの共振周波数がアレイ全体にわたって変動することになる。基板の好ましい材料は、ガラスおよび石英を含む。それぞれの周波数の光が、平面光導波路12の正しい場所に注入され、その特定の周波数で共振するマイクロキャビティ2(b)の列に結合する。
【0116】
マイクロキャビティのテーパ付きアレイを励起する別の方法は、広帯域の光をアレイ全体に注入し、次いで、検出器の前にテーパ付きフィルタを配置することによって所望の波長を濾波することである。所与のマイクロキャビティの共振周波数の光だけが、エバネッセント場17によって、そのマイクロキャビティ2に結合する。前の場合と同様に、マイクロキャビティ2(b)に、検出すべき作用物質3を引きつける材料5を付着させる。好ましい吸引材料5は、前の場合と同様に、検出すべき所望の抗原に対する抗体である。
【0117】
図9に示すように、さらに別の可能な幾何形状は、誘電体ミラー19を含む誘電体基板1にエッチングした光学的マイクロキャビティ2である。
【0118】
この実施形態のセンサは反射モードで動作し、光源および検出器はともにマイクロキャビティ2(b)のアレイに照準を合わせ、信号はマイクロキャビティからの反射を含む。探査ビーム4はマイクロキャビティ2(b)のアレイに向けられ、その反射が反射ビーム18として示されている。マイクロキャビティ2(b)は、半波長に等しい有効光学厚さを有する。
【0119】
誘電体ミラー19は、2つの異なる誘電体材料からなる交互の層の化学的気相成長によって形成することができる。化学的気相成長法は、当業者には周知のものである。好ましい誘電体材料は、ガラス、様々な金属酸化物、たとえば酸化チタンなど、および大小の誘電率を交互に有するセラミック材料を含む。半導体材料も使用することができる。
【0120】
この誘電体材料の各層は、光の波長の4分の1の有効厚さを有する。マイクロキャビティ2(b)は、厚さ半波長の誘電体材料の最上層に溝をエッチングすることによって製作する。
【0121】
あるいは、この誘電体材料の最上層を、エッチングしないまま残し、1つの大型のキャビティとして機能させることもできる。しかし、この代替方法の場合、このような大型のキャビティは、多数の小型のマイクロキャビティ2(b)よりも表面積が小さくなるはずであり、センサの感度が低下することがある。いずれの場合も、堆積プロセス中で、(図9には図示しない)テーパを導入することもでき、それにより、マイクロキャビティ2(b)の異なる領域が異なる周波数で共振するようにでき、検出すべき作用物質中における多重共振を検出することができる。
【0122】
図2に示すものと類似の超格子構造を使用することができ、その場合、好ましくはMBE(分子線エピタキシャル)またはMO−CVD(金属酸膜化学的気相成長)技術を使用して、この種類のデバイスを製作する。MBEおよびMO−CVD堆積法は、当業者には周知のものである。
【0123】
再度、検出すべき作用物質3をマイクロキャビティに引きつける吸引材料5を、マイクロキャビティ2(b)に付着させる。前の場合と同様に、好ましい吸引作用物質5は抗体である。
【0124】
上記で論じかつ図9に示す反射モードバージョンのセンサに、様々なセンサ構成を使用することができ、それに応じて、センサがトランシーバー(すなわち、図9には図示しない探査ビーム4および検出装置を一緒に配置したもの)によって探査される。
【0125】
例として、その構造を、再帰反射器コーナーキューブアレイまたは「キャッツアイ」アレイとして構成することができる。「キャッツアイ」アレイの場合、たとえば、レンズレットアレイにより、(レンズレットアレイの焦点面に配置した)マイクロキャビティアレイの表面上に放射が焦点を結ぶ。(光、マイクロ波などの)探査ビーム4は、構造から反射するとすぐに、そのビームが最初にセンサに到着した方向とは逆方向に向けられる。「キャッツアイ」アレイは、当業者には周知のものである。キューブの角に置かれた反射体を有するコーナーキューブアレイは、「キャッツアイ」アレイと同一の働きをする。
【0126】
したがって、「キャッツアイ」アレイを有するこの実施形態は、ビームのふらつきおよびデバイスの位置合わせを自動的に補償し、センサからの1つ(または複数)の戻りビームが最初の放射源の位置に戻ることを保証する。システムのこの要素は、動作スペクトル領域に合うように選択する。例として、光学システムの場合には、従来型のレンズレットアレイまたは誘電体を付着したミラー構造を、再帰反射器デバイスとして使用することができる。
【0127】
測定をマイクロ波周波数で行う場合には、この構造を金属で作ることができる。金属は、マイクロ波周波数で損失が許容できる程度に低いからである。この場合、図10に示すように、この構造は、マイクロキャビティ2を有する高インピーダンスの表面20を備える。これは、それぞれ波長よりもはるかに小さいサイズの複数の小型共振器21からなる格子で覆われた金属表面20である。この形状のサイズのスケールのおかげで、当業者には周知の従来方式のPCボード製作技術を使用することができる。
【0128】
この共振器は、実効的なコンデンサおよびインダクタの組合せによって形成され、その共振周波数は、その実効容量と実効インダクタンスの積の平方根の逆数により与えられる。容量は隣接する金属突起間の距離によって決まり、インダクタンスはその高さによって決まる。
【0129】
共振条件の存在により、探査ビーム4に伴って入射する入射波の電場は、コンデンサによって画定される領域内で大きく増強される。この電場はこの構造のQに等しい倍率だけ増強される。この倍率は、大雑把に、377を実効インダクタンスと実効容量の比の平方根で割ったものに等しい。検出すべき作用物質3が容量性領域内に落ち込み、マイクロキャビティ2の共振周波数が、検出すべき作用物質3の吸収バンドに近い場合、マイクロキャビティの電磁損失は大きく増強されることになる。検出すべき作用物質3を引きつける材料5を、マイクロキャビティ2の容量性領域内に配置し、この容量性領域すなわち「マッシュルーム」形状間の領域に、検出すべき作用物質3をより多く引きつけることによって、さらにその損失を増強させることができる。
【0130】
このマイクロ波バージョンのセンサは、動作周波数に応じて、いくつかの方法のうちの1つを使用して構築することができる。その構造は、水平な金属プレート23を支持する垂直な金属支柱22を含むことが好ましい。その構造は、次の基準にしたがって設計することが好ましい。
【0131】
共振周波数はω=(LC)―である。ただし、Lはインダクタンス、Cは容量である。
【0132】
【数3】
Figure 2004515764
ただし、μは構造の内部を満たす材料の透磁率、tは構造の厚さ、aは各金属プレートの幅、gはプレート間隙、Εeffは容量性領域内の実効誘電率である。
【0133】
表面20を、標準のフォトリソグラフィ技術を使用して、犠牲誘電体基板上に構築する。このようなフォトリソグラフィ技術は、当業者には周知のものである。エッチングまたはドリルで基板を貫通して穴をあけ、その穴を通って表面上まで金属をメッキする。次いで、最上層の金属にパターン付けし、それをエッチングして、上部プレートを形成する。次いで、犠牲誘電体層を溶解して露出金属構造を残し、それに吸引材料5を付着させる。
【0134】
上記の各実施形態では、使用する吸引材料5は、検出すべき作用物質に依存する。この作用物質が生物種または胞子である場合、吸引材料はその種または胞子に対する抗体とすることが好ましい。
【0135】
上記のように、これらの吸引作用物質は例として抗体を含むが、それに限定されるものではない。特定の生物学的作用物質または化学作用物質、ならびに酵素を引きつける材料の生成は、免疫学または生物学分野の技術者には周知のものである。
【0136】
本発明は、ある特定の作用物質または材料に限定されるものではなく、任意の検出すべき生物学的その他の作用物質3、およびそれらを引きつける材料を含むことを想定するものである。さらに、上記構造における電磁エネルギーの吸収は、検出すべき作用物質3によっても生じ得るし、吸引材料5と作用物質3が接触したときのそれらの化学的な組合せによっても生じ得る。
【0137】
いくつかの実施形態に関連して本発明を説明してきたので、いまや当業者には変更が想起されよう。開示した実施形態を組み合わせることも可能である。したがって、本発明は、下記の特許請求の範囲が要求する以外は、記載の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
マイクロキャビティアレイによる電場の増強の原理を示す概略図である。
【図2】
マイクロキャビティ内部の電磁場の増強の機構を示す概略図である。
【図3】
キャビティの増強効果を示すグラフである。
【図4】
「LIGA」技術を使用して形成した表面テクスチャを併用したマイクロキャビティを示す概略図である。
【図5(a)、5(b)】
吸収スペクトルによって異なる化学種および/または生物種を区別する方法を示す概略図である。
【図6】
広帯域放射源および広帯域検出器を使用して、様々な化学種および/または生物種の検出方法を示す概略図である。
【図7】
平面光導波路を備える基板上にマイクロキャビティアレイを配置した、センサの好ましい実施形態を示す概略図である。
【図8】
平面光導波路の上に配置した誘電材料にマイクロキャビティをエッチングした、センサの実施形態を示す概略図である。
【図9】
エッチングされたマイクロキャビティアレイの反射バージョンを示す概略図である。
【図10】
金属で構築した微小共振器のマイクロ波バージョンを示す概略図である。

Claims (61)

  1. (a)基板上に設けられた複数のマイクロキャビティと、
    (b)電磁放射源および電磁放射検出器を含む探査デバイスと
    を備える、化学的化合物および/または生物学的化合物を検出するためのセンサであって、
    前記化学的化合物および/または生物学的化合物が、前記マイクロキャビティによって吸着され、そして/または、吸収され、前記マイクロキャビティの電磁場の変化を引き起こし、前記変化が前記電磁放射検出器によって検出されるところのセンサ。
  2. 前記探査デバイスが、前記電磁放射源から放射される探査ビームを前記複数のマイクロキャビティに向け、そして、前記電磁放射検出器が、前記複数のマイクロキャビティから反射され、そして/または、それを通過するビームによって伝達される電磁エネルギーの減少を、前記探査ビームにより伝達される電磁エネルギーと比較して検出する、請求項1に記載のセンサ。
  3. すべての前記複数のマイクロキャビティが同一の周波数で共振する、請求項1または2に記載のセンサ。
  4. 前記複数のマイクロキャビティのうち選択されたものが、異なる周波数で共振する、請求項1または2に記載のセンサ。
  5. 前記電磁放射源が、レーザおよび紫外線スペクトル領域光源、並びに、光学光源を含む、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のセンサ。
  6. 前記レーザが、可視領域、赤外線スペクトル領域または紫外線スペクトル領域で動作するレーザをさらに含む、請求項5に記載のセンサ。
  7. 前記光学光源が、発光ダイオード、白熱光源、蛍光光源、および燐光光源をさらに含む、請求項5に記載のセンサ。
  8. 前記検出器が、マイクロ波、テラヘルツ、赤外線、可視光、および紫外線の範囲の周波数を含む周波数範囲で動作する光検出器を含む、請求項1乃至7のいずれか1つに記載のセンサ。
  9. 前記複数のマイクロキャビティのQが、約数千〜約1千万以上の範囲内である、請求項1乃至8のいずれか1つに記載のセンサ。
  10. 前記複数のマイクロキャビティが、3次元格子、2次元アレイおよび超格子構造を含むパターンに配置される、請求項1乃至9のいずれか1つに記載のセンサ。
  11. 前記複数のマイクロキャビティが、前記化学的化合物および/または生物学的化合物を引きつける状態選択性材料でさらに被覆される、請求項1乃至10のいずれか1つに記載のセンサ。
  12. 前記探査デバイスが、再帰反射器コーナーキューブアレイおよびキャッツアイアレイをさらに備える、請求項1乃至11のいずれか1つに記載のセンサ。
  13. 前記複数のマイクロキャビティの少なくとも1つが微小球を含む、請求項1乃至12のいずれか1つに記載のセンサ。
  14. 前記複数のマイクロキャビティの少なくとも1つがエッチングされた誘電体共振器を含む、請求項1乃至13のいずれか1つに記載のセンサ。
  15. 前記基板が誘電体基板を含み、前記誘電体基板が、最上層およびベース層を有しており、そして、誘電体ミラーをさらに備えており、前記複数のマイクロキャビティが、前記誘電体基板の前記最上層にエッチングされている、請求項1乃至14のいずれか1つに記載のセンサ。
  16. 前記光検出器がフォトダイオードをさらに含む、請求項8から15のいずれか1つに記載のセンサ。
  17. 前記マイクロ波の範囲の周波数で測定が行われ、
    (a)金属を含む材料で構成された前記基板と、
    (b)複数の垂直な金属支柱と、
    (c)前記垂直な金属支柱によって支持された複数の水平な金属プレートと、
    (d)前記基板上に配置された複数の共振器からなる格子と
    を備える、請求項8から16のいずれか1つに記載のセンサ。
  18. 前記複数の微小球が平面光導波路上に配置される、請求項13から17のいずれか1つに記載のセンサ。
  19. 前記化学的化合物および/または生物学的化合物が光の周波数で電磁エネルギーを吸収し、そして、前記微小球がガラスまたは重合体からなる材料で形成される、請求項13から18のいずれか1つに記載のセンサ。
  20. 前記微小球の前記電磁場がウィスパリングギャラリーモードを形成し、そして、前記微小球がその共振波長の半分の整数倍である有効周囲長を有する、請求項13から19のいずれか1つに記載のセンサ。
  21. 前記エッチングされた誘電体共振器がテーパ付きリニアアレイ内に配置される、請求項14から20のいずれか1つに記載のセンサ。
  22. 前記誘電体基板が、前記複数のマイクロキャビティが共振する波長の約50%に等しい厚さを有する、請求項15から21のいずれか1つに記載のセンサ。
  23. 前記複数のマイクロキャビティが、前記誘電体基板の前記最上層を含んでおり、前記最上層はエッチングされずに残されている、請求項15から22のいずれか1つに記載のセンサ。
  24. 前記共振器がコンデンサおよびインダクタを備える、請求項14から23のいずれか1つに記載のセンサ。
  25. 前記微小球が単分散の形で形成されている、請求項13から24のいずれか1つに記載のセンサ。
  26. 前記微小球が、約10ミクロン〜約500ミクロンの範囲内の直径を有する、請求項13から25のいずれか1つに記載のセンサ。
  27. 前記複数のマイクロキャビティが、その共振波長の約50%の有効光学直径を有する、請求項1乃至26のいずれか1つに記載のセンサ。
  28. 前記複数のマイクロキャビティが、複数のパネルとして配置されており、各パネルが、前記複数のマイクロキャビティのアレイを含む、請求項1に記載のセンサ。
  29. 各パネルが異なる共振周波数を有する、請求項28に記載のセンサ。
  30. 前記異なる共振周波数が、可視、赤外線、およびテラヘルツ領域のスペクトルを含む、請求項29に記載のセンサ。
  31. 化学的化合物および/または生物学的化合物を検出するための方法であって、
    (a)基板に複数のマイクロキャビティを設けるステップと、
    (b)電磁放射源および電磁放射検出器を含む探査デバイスを設けるステップと、
    (c)前記化学的化合物および/または生物学的化合物を前記複数のマイクロキャビティに向けるステップと、
    (d)前記複数のマイクロキャビティによって、前記化学的化合物および/または生物学的化合物を吸着し、そして/または吸収し、前記複数のマイクロキャビティの電磁場の変化を引き起こすステップと、
    (e)前記探査デバイスによって電磁場の前記変化を検出するステップと
    を含む方法。
  32. 前記探査デバイスによって前記変化を検出する前記ステップが、
    (a)前記電磁放射源から放射される探査ビームを前記複数のマイクロキャビティに向けるステップと、
    (b)前記電磁放射検出器を使用して、前記複数のマイクロキャビティから反射され、そして/または、それを通過するビームによって伝達される電磁エネルギーの減少を、前記探査ビームにより伝達される電磁エネルギーと比較して検出するステップと
    をさらに含む、請求項31に記載の方法。
  33. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティのすべてが同一の周波数で共振する、請求項31または32に記載の方法。
  34. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティのうちの選択されたものが異なる周波数で共振する、請求項31または32に記載の方法。
  35. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティのQが、約数千〜約1千万以上の範囲内である、請求項31から34のいずれか1つに記載の方法。
  36. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティを、3次元格子、2次元アレイおよび超格子構造を含むパターンに配置する、請求項31から34のいずれか1つに記載の方法。
  37. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティを、前記化学的化合物および/または生物学的化合物のうち選択されたものを引きつける状態選択性材料でさらに被覆する、請求項31から34のいずれか1つに記載の方法。
  38. 前記探査デバイスを設ける前記ステップにおいて、前記電磁放射源がレーザおよび光学光源を含む、請求項31から37のいずれか1つに記載の方法。
  39. 前記探査デバイスを設ける前記ステップにおいて、前記検出器が、マイクロ波およびテラヘルツ範囲の周波数を含む周波数範囲で動作する光検出器を含む、請求項31から38のいずれか1つに記載の方法。
  40. 前記化学的化合物および/または生物学的化合物を前記マイクロキャビティに向ける前記ステップを、
    (a)前記化学的化合物および/または生物学的化合物を含む疑いがある空気を、前記マイクロキャビティ全体にポンプで供給するステップと、
    (b)前記化学的化合物および/または生物学的化合物を含む疑いがある液体を、前記マイクロキャビティ全体にポンプで供給するステップと、
    (c)前記化学的化合物および/または生物学的化合物を含む疑いがある前記液体を急激に曝気するステップと
    を含む1つまたは複数の方法を使用することによって実施する、請求項31から39のいずれか1つに記載の方法。
  41. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティの少なくとも1つが微小球を含む、請求項31から40のいずれか1つに記載の方法。
  42. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティの少なくとも1つがエッチングされた誘電体共振器を含む、請求項31から41のいずれか1つに記載の方法。
  43. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記基板が誘電体基板を含み、前記誘電体基板が、最上層およびベース層を有しており、そして、誘電体ミラーをさらに備えており、前記複数のマイクロキャビティが、前記誘電体基板の前記最上層にエッチングされている、請求項31から42のいずれか1つに記載の方法。
  44. 前記探査デバイスを設ける前記ステップにおいて、前記レーザが可視領域、赤外線スペクトル領域または紫外線スペクトル領域で動作するレーザをさらに含む、請求項38から43のいずれか1つに記載の方法。
  45. 前記探査デバイスを設ける前記ステップにおいて、前記光学光源が、発光ダイオード、白熱光源、蛍光光源、および燐光光源をさらに含む、請求項38から43のいずれか1つに記載の方法。
  46. 前記探査デバイスを設ける前記ステップにおいて、前記光検出器がフォトダイオードをさらに含む、請求項39から45のいずれか1つに記載の方法。
  47. 前記探査デバイスを設ける前記ステップにおいて、前記マイクロ波の範囲の周波数で測定が行われ、前記センサが、
    (a)金属を含む材料で構成された前記基板と、
    (b)複数の金属支柱と、
    (c)前記垂直な金属支柱によって支持された複数の水平な金属プレートと、
    (d)前記基板上に配置された複数の共振器からなる格子と
    を備える、請求項39から46のいずれか1つに記載の方法。
  48. 空気および/または前記液体のポンプでの前記供給を、従来型ポンプおよび微小電子機械デバイスを含む装置を使用することによって実現する、請求項40から47のいずれか1つに記載の方法。
  49. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数の微小球を平面光導波路上に配置する、請求項41から48のいずれか1つに記載の方法。
  50. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記化学的化合物および/または生物学的化合物が光の周波数において電磁エネルギーを吸収し、そして、前記微小球がガラスまたは重合体からなる材料で形成される、請求項41から49のいずれか1つに記載の方法。
  51. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記微小球の前記電磁場がウィスパリングギャラリーモードを形成し、そして、前記微小球がその共振波長の半分の整数倍である有効周囲長を有する、請求項41から50のいずれか1つに記載の方法。
  52. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記エッチングされた誘電体共振器をテーパ付きリニアアレイ内に配置する、請求項43から51のいずれか1つに記載の方法。
  53. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記誘電体基板が、前記マイクロキャビティが共振する波長の約50%に等しい厚さを有する、請求項43から51のいずれか1つに記載の方法。
  54. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティが、前記誘電体基板の前記最上層を含んでおり、前記最上層はエッチングされずに残されている、請求項43から53のいずれか1つに記載の方法。
  55. 前記探査デバイスを設ける前記ステップにおいて、前記共振器がコンデンサおよびインダクタを備える、請求項47から54のいずれか1つに記載の方法。
  56. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記微小球を単分散の形で形成する、請求項41から55のいずれか1つに記載の方法。
  57. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記微小球が、約10ミクロン〜約500ミクロンの範囲の直径を有する、請求項41から56のいずれか1つに記載の方法。
  58. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記マイクロキャビティが、その共振波長の約50%の有効光学直径を有する、請求項31乃至57のいずれか1つに記載の方法。
  59. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、前記複数のマイクロキャビティを、複数のパネルとして配置し、各パネルが、前記複数のマイクロキャビティのアレイを含む、請求項31に記載の方法。
  60. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、各パネルが異なる共振周波数を有する、請求項59に記載の方法。
  61. 前記基板に前記複数のマイクロキャビティを設ける前記ステップにおいて、各パネルの前記異なる共振周波数が、可視、赤外線、およびテラヘルツ領域のスペクトルを含む、請求項60に記載の方法。
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