JP2007247604A - 内燃機関のトルク算出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】筒内圧センサの出力値に基づいて、簡便な処理によってトルクを算出することが可能な内燃機関のトルク算出装置を提供する。
【解決手段】内燃機関のトルク算出装置は、内燃機関のトルクを算出するために好適に利用される。筒内圧取得手段は、各気筒の筒内圧を相対圧として取得する。トルク算出手段は、筒内圧をそのまま用いて、全気筒のトルクの総和を算出する。即ち、取得された筒内圧を相対圧から絶対圧に補正する処理を行わないで、相対圧である筒内圧をそのまま用いてトルクの総和を算出する。したがって、上記した内燃機関のトルク算出装置によれば、全気筒におけるトルクの総和を算出する場合に、吸気管圧を計測する処理を省くことができると共に、トルクを算出する際に行う演算も削減することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関のトルク算出装置に関する。
従来より、各気筒の筒内圧を検出する筒内圧センサを備えた内燃機関において、筒内圧センサが検出した筒内圧に基づいて内燃機関のトルクを算出する技術が提案されている。一般的に、筒内圧センサが出力した筒内圧は相対圧であるため、これを絶対圧にする補正(以下、「絶対圧補正」とも呼ぶ。)が行われている。例えば、特許文献1には、筒内圧と大気圧が略等しい条件において、大気圧に基づいて筒内圧センサの出力を補正し、補正した値を用いてトルクを算出する技術が提案されている。
特開2002−276455号公報
しかしながら、上記した特許文献1に記載された技術では、トルクを算出するごとに、筒内圧センサの出力値を絶対圧補正する処理を行っていたため、トルクを算出する処理に手間がかかってしまう場合があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、筒内圧センサの出力値に基づいて、簡便な処理によってトルクを算出することが可能な内燃機関のトルク算出装置を提供することを目的とする。
本発明の1つの観点では、内燃機関のトルクを算出する内燃機関のトルク算出装置は、各気筒の筒内圧を相対圧として取得する筒内圧取得手段と、取得された前記筒内圧を補正せずにそのまま用いて、全気筒のトルクの総和を算出するトルク算出手段と、を備えることを特徴とする。
上記の内燃機関のトルク算出装置は、内燃機関のトルクを算出するために好適に利用される。筒内圧取得手段は、各気筒の筒内圧を相対圧として検出するセンサなどから、筒内圧を取得する。トルク算出手段は、筒内圧をそのまま用いて、全気筒のトルクの総和を算出する。即ち、トルク算出手段は、取得された筒内圧を相対圧から絶対圧に補正(絶対圧補正)する処理を行わないで、相対圧である筒内圧をそのまま用いてトルクの総和を算出する。こうするのは、相対圧である筒内圧をそのまま用いて算出されるトルクが、絶対圧補正が行われた筒内圧を用いて算出されるトルクと概ね一致するからである。したがって、上記した内燃機関のトルク算出装置によれば、全気筒におけるトルクの総和を算出する場合に、吸気管圧を計測する処理を省くことができると共に、トルクを算出する際に行う演算も削減することができる。よって、簡便な処理によってトルクを算出することが可能となる。
上記の内燃機関のトルク算出装置の一態様では、前記トルク算出手段は、前記内燃機関が、3気筒、4気筒、6気筒、8気筒、及び10気筒のうちのいずれかの気筒数によって構成される場合に、前記筒内圧取得手段によって取得された筒内圧を補正せずにそのまま用いて、全気筒のトルクの総和を算出する。この場合、トルク算出手段は、絶対圧補正が行われた筒内圧を用いて算出されるトルクと、相対圧である筒内圧を補正せずにそのまま用いて算出されるトルクと、が概ね一致するような気筒数の内燃機関に対して、相対圧である筒内圧をそのまま用いて全気筒のトルクの総和を算出する。
上記の内燃機関のトルク算出装置において好適には、前記トルク算出手段は、式(1)に基づいて前記全気筒のトルクの総和T(θ)を算出することができる。
Figure 2007247604
この場合、式(1)中の「θ」はクランク角を示し、「P(θ)」は取得された前記筒内圧(補正していない筒内圧)を示し、「V(θ)」は行程容積を示し、「A」はピストン頂面の投影面積を示し、「M」は往復部品の質量総和を示している。
本発明の他の観点では、内燃機関のトルクを算出する内燃機関のトルク算出装置は、各気筒の筒内圧を相対圧として取得する筒内圧取得手段と、取得された前記筒内圧を補正せずにそのまま用いて、前記内燃機関のトルクの360°CA平均を算出するトルク算出手段と、を備えることを特徴とする。
上記の内燃機関のトルク算出装置においては、トルク算出手段は、筒内圧をそのまま用いて、トルクの360°CA平均を算出する。即ち、トルク算出手段は、取得された筒内圧を相対圧から絶対圧に補正(絶対圧補正)する処理を行わないで、相対圧である筒内圧をそのまま用いてトルクの360°CA平均を算出する。こうするのは、相対圧である筒内圧をそのまま用いて算出されるトルクの360°CA平均が、絶対圧補正が行われた筒内圧を用いて算出されるトルクの360°CA平均と概ね同一になるからである。したがって、上記した内燃機関のトルク算出装置によれば、トルクの360°CA平均を算出する場合に、吸気管圧を計測する処理を省くことができると共に、トルクを算出する際に行う演算も削減することができる。
上記の内燃機関のトルク算出装置において好適には、前記トルク算出手段は、式(2)に基づいて前記トルクの360°CA平均を算出することができる。
Figure 2007247604
この場合、前記式(2)中の「θ」はクランク角を示し、「P(θ)」は取得された前記筒内圧(補正していない筒内圧)を示し、「K」は「180/π×dV(θ)/dθ」を示し、「V(θ)」は行程容積を示している。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[内燃機関の構成]
まず、本発明の実施形態に係る内燃機関の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関のトルク算出装置が適用された内燃機関1の構成を示す概略図である。なお、図1では、実線矢印がガスの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。
内燃機関1は、主に、吸気通路3と、スロットルバルブ4と、燃料噴射弁5と、気筒6aと、吸気弁7と、排気弁8と、排気通路9と、点火プラグ10と、筒内圧センサ11と、クランク角センサ12と、を有する。なお、図1においては、説明の便宜上、1つの気筒6aのみを示しているが、実際には内燃機関1は複数の気筒6aを有する。
吸気通路3には外部から導入された空気が通過し、スロットルバルブ4は吸気通路3を通過する空気の流量を調整する。吸気通路3を通過した空気は、気筒6aの燃焼室6bに供給される。また、燃焼室6bには、燃料噴射弁5によって噴射された燃料が供給される。燃焼室6b内では、点火プラグ10の点火により着火されることによって、供給された吸気と燃料との混合気が燃焼される。この場合、燃焼によってピストン6cが往復運動し、この往復運動がコンロッド6dを介してクランク軸(不図示)に伝達され、クランク軸が回転する。また、内燃機関1には排気通路9が接続されており、燃焼によって生じた排気は排気通路9から排出される。
更に、内燃機関1の燃焼室6bには、吸気弁7と排気弁8が設けられている。吸気弁7は、開閉することによって、吸気通路3と燃焼室6bとの導通/遮断を制御する。また、排気弁8は、開閉することによって、排気通路9と燃焼室6bとの導通/遮断を制御する。
筒内圧センサ11は、気筒6a内の圧力(筒内圧)を検出するセンサである。筒内圧センサ11は、相対圧として筒内圧を検出する。例えば、筒内圧センサ11は、点火プラグ10の座金として装着されるリング状の圧電素子から構成され、点火プラグ10の締め付け荷重に対する相対圧として筒内圧を検出する。また、筒内圧センサ11は、各気筒6aの点火プラグ10ごとに設けられ、各気筒6aの筒内圧を検出する。
クランク角センサ12は、各気筒6aに設けられ、各気筒6aにおけるクランク角を検出する。具体的には、クランク角センサ12は、単位クランク角毎の他に角度信号と、所定ピストン位置毎の基準角度信号とを、それぞれ出力する。
ECU(Engine Control Unit)50は、図示しないCPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インタフェイスなどを含んで構成されている。ECU50は、前述した筒内圧センサ11が検出した筒内圧を取得すると共に、クランク角センサ12が検出したクランク角を取得する。そして、ECU50は、これらの取得した値に基づいて、スロットルバルブ4の開度の制御や、燃料噴射弁5からの燃料噴射量の制御や、点火プラグ10による点火時期の制御などを実行する。本実施形態では、ECU50は、筒内圧センサ11から取得した筒内圧に基づいて、内燃機関1のトルクを算出する処理を行う。そして、ECU50は、算出されたトルクに基づいて種々の制御を実行する。このように、ECU50は、本発明に係る内燃機関のトルク算出装置として機能する。具体的には、ECU50は、筒内圧取得手段及びトルク算出手段として動作する。
[トルクの算出方法]
以下では、ECU50によって行われる、内燃機関1のトルクの算出方法について詳細に説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るトルクの算出方法について説明する。第1実施形態では、ECU50は、現在における全気筒6aのトルクの総和(以下、「総和トルク」と呼ぶ。)を求める。
基本的には、内燃機関1におけるトルクは、気筒6aの筒内圧を用いて算出される。ここで、前述したように、筒内圧センサ11から取得される筒内圧は相対圧であるので、筒内圧センサ11が検出した筒内圧を用いる場合には、相対圧を絶対圧に補正(絶対圧補正)する必要がある。一般的には、各気筒6aに接続された吸気通路3における圧力(以下、「吸気管圧」と呼ぶ。)を用いて絶対圧補正が行われる。具体的には、筒内圧センサ11から取得される筒内圧(以下、「検出筒内圧」と呼ぶ。)に対して、絶対圧補正値を加算することによって絶対圧補正が行われる。この絶対圧補正値は、上記した吸気管圧に基づいて算出される。このように、一般的には、検出筒内圧に対して絶対圧補正値を加算することによって得られた筒内圧(以下、「実筒内圧」と呼ぶ。)を用いて、トルクの算出が行われる。
しかしながら、第1実施形態では、実筒内圧を用いずに、検出筒内圧を用いて全気筒6aにおける総和トルクを算出する。即ち、検出筒内圧に対して絶対圧補正値を加算する絶対圧補正を行わないで、検出筒内圧をそのまま用いて総和トルクを算出する。こうするのは、全気筒6aにおける総和トルクを算出する場合に、絶対圧補正するために検出筒内圧に対して加算される項を全ての気筒6aで総和すると、概ね「0」になるからである。そのため、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出した総和トルクは、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出した総和トルクと概ね同一になる。したがって、第1実施形態では、検出筒内圧に対して絶対圧補正値を加算する絶対圧補正を行わないで、検出筒内圧をそのまま用いて総和トルクを算出する。よって、ECU50は、吸気管圧を計測しないで、筒内圧センサ11から取得される検出筒内圧のみを用いて、全気筒6aの総和トルクを算出する。
以下で、検出筒内圧をそのまま用いて算出される総和トルクと、絶対圧補正された実筒内圧を用いて算出される総和トルクと、が概ね同一になることを証明する。
通常、クランク角θにおけるトルクTi(θ)は、式(3)に基づいて算出される。このトルクTi(θ)は、1つの気筒6aにおける、クランク角θのときのトルクの瞬時値を示している。
Figure 2007247604
式(3)において、「P(θ)」は筒内圧[Pa]を示し、「V(θ)」は行程容積[m]を示し、「A」はピストン頂面の投影面積[m]を示し、「M」は往復部品の質量総和[kg]を示している。また、式(3)の右辺の式において、左の項が「筒内圧によるトルク」を示し(以下、「T」と表記する。)、右の項が「往復運動による慣性トルク」を示している。吸気管圧による絶対圧補正の影響を受けるのは、筒内圧P(θ)が乗算されている筒内圧によるトルクTである。
式(4)は、上記した筒内圧によるトルクTを示す式である。なお、式(4)中の「K」は、「K=180/π×dV(θ)/dθ」を示している。
Figure 2007247604
筒内圧によるトルクTを、全ての気筒6aにおけるトルクを総和した総和トルクとして表現すると、式(5)のように表される。
Figure 2007247604
この場合、式(5)中の「T」は、クランク角θにおける筒内圧による総和トルク(詳しくは、クランク角θにおける総和トルクの瞬時値)を示している。また、式(5)中の「Tpk(θ)」は、第k気筒の筒内圧から求めた筒内圧によるトルクを示している。n気筒の内燃機関1においては、「1≦k≦n」となる。
式(6)は、式(5)中に式(4)で示した式を代入することによって得られる式を示している。なお、式(6)中の「P(θ)」は絶対圧補正を行っていない場合の筒内圧(即ち、検出筒内圧)を示している。つまり、式(6)は、検出筒内圧による総和トルクを示している。
Figure 2007247604
ここで、吸気管圧による絶対圧補正を行う場合を考える。第k気筒の絶対圧補正値を「ΔP」とし、第k気筒の検出筒内圧を「P(θ)」とすると、第k気筒における実筒内圧は「P(θ)+ΔP」となる。したがって、絶対圧補正を行った場合の筒内圧によるトルクTは、上記した式(6)に、第k気筒における実筒内圧を示す「P(θ)+ΔP」を代入することによって、式(7)が得られる。
Figure 2007247604
式(7)は、絶対圧補正が行われた実筒内圧による総和トルクを示している。詳しくは、式(7)の右辺の式において、左の項は、検出筒内圧による総和トルクを示しており、右の項は、各気筒6aの絶対圧補正値による総和トルクを示している。
ここで、絶対圧補正値ΔPは瞬時では(言い換えると準静的には)各気筒6aにおいてほとんど差が生じないため、n気筒の内燃機関1においては、「ΔP1≒ΔP≒ΔP3≒…≒ΔP」と考えることができる。即ち、「ΔP」を共通の値として用いて、各気筒6aの絶対圧補正値を表現すると、式(8)のように表現することができる。
Figure 2007247604
この式(8)を式(7)に代入することによって、式(9)が得られる。
Figure 2007247604
ここで、一般的に、行程容積V(θ)は式(10)で表され、式(10)中の「x(θ)」は式(11)で表される。式(10)及び式(11)において、「V」は隙間容積[m]を示しており、「r」はクランク半径[m]を示しており、「l」はコンロッド長[m]を示しており、「λ」は連桿比を示している。
Figure 2007247604
Figure 2007247604
この場合、式(10)中の行程容積V(θ)をθで微分すると、式(12)が得られる。
Figure 2007247604
次に、具体的な気筒数を当てはめて、総和トルクを求める場合を考える。
(a)6気筒の場合
6気筒の内燃機関1では、点火間隔は120°CA毎である。よって、上記した式(12)に基づいて、行程容積V(θ)を「θ」、「θ+120」、「θ+240」で微分したものを加算すると、式(13)が得られる。
Figure 2007247604
式(13)より、行程容積V(θ)を「θ」、「θ+120」、「θ+240」で微分したものを加算すると「0」になることがわかる。ここで、前述したように「K=180/π×dV(θ)/dθ」という関係が成立する(式(4)参照)。したがって、6気筒の内燃機関1では、「K=K=180/π×dV(θ)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ+120)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ+240)/dθ」と表される。この場合、K、K、Kを加算した値、及びK、K、Kを加算した値は、式(14)に示すように「0」となる。
Figure 2007247604
次に、この式(14)を上記した式(9)に代入すると、式(9)の右辺の右の項が「ΔP」の値に関わらずに「0」となり、式(6)と同一の式が得られる。これは、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される筒内圧による総和トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される筒内圧による総和トルクと、が概ね一致することを意味している。したがって、式(3)中の「P(θ)」に実筒内圧を代入することによって得られる総和トルクと、式(3)中の「P(θ)」に検出筒内圧を代入することによって得られる総和トルクと、が概ね一致することになる。
以上より、6気筒の内燃機関1の場合、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される総和トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される総和トルクと、が概ね一致することが証明された。即ち、吸気管圧を用いて絶対圧補正を行う場合、吸気管圧を「0」に設定して絶対圧補正した筒内圧を用いて算出される総和トルクは、実筒内圧(実際の吸気管圧によって絶対圧補正した筒内圧)を用いて算出される総和トルクに対してほとんど差異がないといえる。よって、6気筒の内燃機関1の場合には、式(3)中の「P(θ)」に検出筒内圧をそのまま代入することによって総和トルクを算出すればよい。したがって、第1実施形態によれば、6気筒の内燃機関1における総和トルクを算出する場合に、吸気管圧を計測する処理を省くことができると共に、総和トルクを算出する際に行う演算も削減することができる。
(b)8気筒の場合
8気筒の内燃機関1では、点火間隔は90°CA毎である。よって、上記した式(12)に基づいて、行程容積V(θ)を「θ」、「θ+90」、「θ+180」、「θ+270」で微分したものを加算すると、式(15)が得られる。この場合も、加算した値が「0」になることがわかる。
Figure 2007247604
この場合、「K=K=180/π×dV(θ)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ+90)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ+180)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ+270)/dθ」となる。したがって、K、K、K、Kを加算した値、及びK、K、K、Kを加算した値は、「0」となる。
そのため、8気筒の内燃機関1においても、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される筒内圧による総和トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される筒内圧による総和トルクと、が概ね一致する。したがって、8気筒の内燃機関1の場合にも、式(3)中の「P(θ)」に検出筒内圧を代入することによって総和トルクを算出すればよい。
(c)3気筒の場合
3気筒の内燃機関1では、点火間隔は240°CA毎である。よって、上記した式(12)に基づいて、行程容積V(θ)を「θ」、「θ+240」、「θ+480」で微分したものを加算すると、式(16)が得られる。この場合も、加算した値が「0」になることがわかる。
Figure 2007247604
この場合、「K=180/π×dV(θ)/dθ」、「K=180/π×dV(θ+240)/dθ」、「K=180/π×dV(θ+480)/dθ」となる。したがって、K、K、Kを加算した値は「0」となる。
そのため、3気筒の内燃機関1においても、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される筒内圧による総和トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される筒内圧による総和トルクと、が概ね一致する。したがって、3気筒の内燃機関1の場合にも、式(3)中の「P(θ)」に検出筒内圧を代入することによって総和トルクを算出すればよい。
(d)4気筒の場合
4気筒の内燃機関1では、点火間隔は180°CA毎である。よって、上記した式(12)に基づいて、行程容積V(θ)を「θ」、「θ+180」で微分したものを加算すると、式(17)が得られる。この場合も、加算した値が「0」になることがわかる。
Figure 2007247604
この場合、「K=K=180/π×dV(θ)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ+180)/dθ」となる。したがって、K、Kを加算した値、及びK、Kを加算した値は、「0」となる。
そのため、4気筒の内燃機関1においても、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される筒内圧による総和トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される筒内圧による総和トルクと、が概ね一致する。したがって、4気筒の内燃機関1の場合にも、式(3)中の「P(θ)」に検出筒内圧を代入することによって総和トルクを算出すればよい。
(e)10気筒の場合
10気筒の内燃機関1では、点火間隔は72°CA毎である。よって、上記した式(12)に基づいて、行程容積V(θ)を「θ−144」、「θ−72」、「θ」、「θ+72」、「θ+144」で微分したものを加算すると、式(18)が得られる。この場合も、加算した値が「0」になることがわかる。
Figure 2007247604
この場合、「K=K=180/π×dV(θ−144)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ−72)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ)/dθ」、「K=K=180/π×dV(θ+72)/dθ」、「K=K10=180/π×dV(θ+144)/dθ」となる。したがって、K、K、K、K、Kを加算した値、及びK、K、K、K、K10を加算した値は、「0」となる。
そのため、10気筒の内燃機関1においても、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される筒内圧による総和トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される筒内圧による総和トルクと、が概ね一致する。したがって、10気筒の内燃機関1の場合にも、式(3)中の「P(θ)」に検出筒内圧を代入することによって総和トルクを算出すればよい。
以上より、3気筒、4気筒、6気筒、8気筒、及び10気筒の内燃機関1の場合、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される総和トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される総和トルクと、が概ね一致することが証明された。したがって、上記の気筒数を有する内燃機関1の場合、式(3)中の「P(θ)」に検出筒内圧をそのまま代入することによって総和トルクを得ることが可能となる。これにより、第1実施形態によれば、吸気管圧を計測する処理を省くことができると共に、総和トルクを算出する際に行う演算も削減することができる。よって、簡便な処理によって総和トルクを算出することが可能となる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るトルクの算出方法について説明する。第2実施形態では、ECU50は、内燃機関1のトルクの360°CA平均(以下、「360°CA平均トルク」と呼ぶ。)を算出する点で、第1実施形態とは異なる。
第2実施形態でも、前述した第1実施形態と同様に、実筒内圧を用いずに、検出筒内圧を用いて全気筒6aにおける360°CA平均トルクを算出する。即ち、検出筒内圧に対して絶対圧補正値を加算する補正を行わないで、検出筒内圧をそのまま用いて360°CA平均トルクを算出する。こうするのは、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される360°CA平均トルクが、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される360°CA平均トルクと概ね同一になるからである。したがって、第2実施形態では、検出筒内圧に対して絶対圧補正値を加算する補正を行わないで、検出筒内圧をそのまま用いて360°CA平均トルクを算出する。そのため、ECU50は、吸気管圧を計測しないで、筒内圧センサ11から取得される検出筒内圧のみを用いて、全気筒6aの360°CA平均トルクを算出する。
以下で、検出筒内圧をそのまま用いて算出される360°CA平均トルクと、絶対圧補正した実筒内圧を用いて算出される360°CA平均トルクと、が概ね同一になることを証明する。
式(19)は、絶対圧補正していない検出筒内圧を用いた場合に得られる360°CA平均トルクを示す式である。
Figure 2007247604
式(19)に示すように、360°CA平均トルクは、筒内圧によるトルクTを0°CA〜360°CAまでのクランク角において積分した値を、360°CAで除算することによって得られる。また、式(19)の右辺の式は、「T」に前述した式(6)を代入することによって得られる。
ここで、吸気管圧による絶対圧補正を行う場合を考える。第k気筒の絶対圧補正値を「ΔP」とし、第k気筒の検出筒内圧を「P(θ)」とすると、第k気筒における実筒内圧は「P(θ)+ΔP」となる。したがって、絶対圧補正を行った場合の360°CA平均トルクは、上記した式(19)に、第k気筒における実筒内圧を示す「P(θ)+ΔP」を代入することによって得られる。式(20)は、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いた場合に得られる360°CA平均トルクを示している。
Figure 2007247604
式(20)の右辺の式において、左の項は、絶対圧補正していない検出筒内圧による360°CA平均トルクを示しており、右の項は、各気筒6aの絶対圧補正値による360°CA平均トルクを示している。
前述したように、絶対圧補正値ΔPは瞬時では(言い換えると準静的には)各気筒6aにおいてほとんど差が生じないため、n気筒の内燃機関1においては、「ΔP1≒ΔP≒ΔP3≒…≒ΔP」と考えることができる。即ち、「ΔP」を共通の値として用いて、各気筒6aの絶対圧補正値を表現すると、式(21)のように表現することができる。
Figure 2007247604
式(21)を式(20)に代入することによって、式(22)が得られる。
Figure 2007247604
ここで、行程容積V(θ)を微分した値を360°CA平均すると、式(23)が得られる。
Figure 2007247604
式(23)より、行程容積V(θ)を微分した値を360°CA平均した値は「0」になることがわかる。これは、1サイクル(360°CA)経過後にピストン6cは元の位置に戻るからである。なお、式(23)は、内燃機関1の気筒数に関係なく成り立つ。
式(22)の右辺の右の項において「K=180/π×dV(θ)/dθ」という関係が成立するため(式(4)参照)、これに式(23)を代入すると、式(22)の右辺の右の項は「ΔP」に関わらずに「0」となることがわかる。つまり、式(22)が、式(19)と同一の式になることがわかる。これは、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出される360°CA平均トルクと、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出される360°CA平均トルクと、が概ね一致することを意味している。
以上より、絶対圧補正を行わずに検出筒内圧をそのまま用いて算出した360°CA平均トルクと、絶対圧補正が行われた実筒内圧を用いて算出した360°CA平均トルクとが概ね一致することが証明された。よって、式(19)中の「P(θ)」に検出筒内圧をそのまま代入することによって360°CA平均トルクを算出すればよい。したがって、第2実施形態によれば、360°CA平均トルクを算出する場合に、吸気管圧を計測する処理を省くことができると共に、360°CA平均トルクを算出する際に行う演算も削減することができる。よって、簡便な処理によって360°CA平均トルクを算出することが可能となる。
本発明の本実施形態に係る内燃機関のトルク算出装置が適用された内燃機関の構成を示す概略図である。
符号の説明
1 内燃機関
3 吸気通路
4 スロットルバルブ
5 燃料噴射弁
6a 気筒
9 排気通路
10 点火プラグ
11 筒内圧センサ
12 クランク角センサ
50 ECU

Claims (5)

  1. 内燃機関のトルクを算出する内燃機関のトルク算出装置であって、
    各気筒の筒内圧を相対圧として取得する筒内圧取得手段と、
    取得された前記筒内圧を補正せずにそのまま用いて、全気筒のトルクの総和を算出するトルク算出手段と、を備えることを特徴とする内燃機関のトルク算出装置。
  2. 前記トルク算出手段は、前記内燃機関が、3気筒、4気筒、6気筒、8気筒、及び10気筒のうちのいずれかの気筒数によって構成される場合に、前記筒内圧取得手段によって取得された筒内圧を補正せずにそのまま用いて、全気筒のトルクの総和を算出することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のトルク算出装置。
  3. 前記トルク算出手段は、式(1)に基づいて前記全気筒のトルクの総和T(θ)を算出し、
    Figure 2007247604
    前記式(1)中の「θ」はクランク角を示し、「P(θ)」は取得された前記筒内圧を示し、「V(θ)」は行程容積を示し、「A」はピストン頂面の投影面積を示し、「M」は往復部品の質量総和を示していることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関のトルク算出装置。
  4. 内燃機関のトルクを算出する内燃機関のトルク算出装置であって、
    各気筒の筒内圧を相対圧として取得する筒内圧取得手段と、
    取得された前記筒内圧を補正せずにそのまま用いて、前記内燃機関のトルクの360°CA平均を算出するトルク算出手段と、を備えることを特徴とする内燃機関のトルク算出装置。
  5. 前記トルク算出手段は、式(2)に基づいて前記トルクの360°CA平均を算出し、
    Figure 2007247604
    前記式(2)中の「θ」はクランク角を示し、「P(θ)」は取得された前記筒内圧を示し、「K」は「180/π×dV(θ)/dθ」を示し、「V(θ)」は行程容積を示していることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関のトルク算出装置。
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JP2016098754A (ja) * 2014-11-25 2016-05-30 本田技研工業株式会社 内燃機関の燃焼状態パラメータ算出装置

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