JP2007246890A - 水性インク、インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

水性インク、インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】インクジェット用のインクの色材として、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を用いているにもかかわらず、吐出安定性及び保存安定性に優れた水性インクを提供すること、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を用いているインクを組み合わせたインクセットにおいて、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲の画像の形成を実現できるインクセットを提供すること。
【解決手段】少なくとも、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含有してなるインクジェット用の水性インクであって、前記グリーン顔料を蛍光X線分析することによって得られる塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が、3.3以上10.0以下である水性インク。
【選択図】なし

Description

本発明は、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を水性インクの色材として使いこなす技術に関する。より具体的には、水性インク(以下、インクという)、インクセット、前記インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法によって得られる画像の、耐光性、耐ガス性、さらには耐水性などを優れたものとするために、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)を用いることは周知である。しかし、顔料は染料と比較して、一般的に発色性が劣る。このため、シアン、マゼンタ、及びイエローの3原色のインクを用いて形成したカラーの画像では、染料インクを使用した場合と、顔料インクを使用した場合とを比較すると、顔料インクで形成した画像が、明らかに色再現範囲が狭くなる。このため、顔料インクによって、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲を実現した画像を形成することができる技術の開発が要望されている。
これに対して、顔料インクを用いる場合に、シアン、マゼンタ、及びイエローの3原色のインクに加えて、レッド、グリーン、及びブルーなどの中間色のインクを用いて画像を形成することが行われている(特許文献1〜3参照)。このとき、インクジェット用のグリーンインクの色材には、一般的に、ハロゲン化フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン36が用いられていることが多い(例えば、特許文献4〜7参照)。
特開2001−354886号公報 特開2004−155826号公報 国際公開第2002/100959号パンフレット 特開2000−355665号公報 特開2004−339355号公報 特開2002−332440号公報 特開2003−012982号公報
本発明者らは、顔料インクで形成した画像の色再現範囲を広げることを目的として、色材として銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料(以下、単に「グリーン顔料」ということがある)を含有するグリーンインクを主として検討を行った。その検討の過程で、インクジェット記録装置を用いて前記したグリーンインクを吐出したところ、周波数応答性、安定した吐出体積、安定した吐出速度などの吐出安定性が得られない場合があることがわかった。この現象は、特に、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置において顕著であった。さらに、前記したインクを長期間保存した場合に、インク中の顔料粒子の平均粒径が増大したり、凝集物が析出する場合があった。
したがって、本発明の第1の目的は、インクジェット用のインクの色材として、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を用いているにもかかわらず、吐出安定性及び保存安定性に優れたインクを提供することにある。また、本発明の第2の目的は、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を用いているインクを組み合わせたインクセットにおいて、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲の画像の形成を実現できるインクセットを提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、前記インクやインクセットを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明のインクは、少なくとも、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含有してなるインクジェット用の水性インクであって、前記グリーン顔料を蛍光X線分析することによって得られる塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)が、3.3以上10.0以下であることを特徴とする。
また、本発明のインクセットは、複数の水性インクを組み合わせてなるインクセットにおいて、前記複数の水性インクが、少なくとも、グリーンインク、レッドインク、及びブルーインクを有してなり、前記グリーンインクの色材が、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン7であり、前記レッドインクの色材が、C.I.ピグメントレッド149であり、前記ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることを特徴とする。
また、本発明の別の実施態様にかかるインクジェット用のインクセットは、複数の水性インクを組み合わせてなるインクセットにおいて、前記複数の水性インクが、少なくとも、グリーンインク、レッドインク、及びブルーインクを有してなり、前記グリーンインクが、前記の水性インクであり、前記レッドインクの色材が、C.I.ピグメントレッド149であり、前記ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット記録方式でインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記の水性インク又は上記のインクジェット用のインクセットを用いることを特徴とする。
また、本発明のインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、収容されるインクが、前記の水性インク又は上記のインクジェット用のインクセットを構成するインクであることを特徴とする。
また、本発明の記録ユニットは、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、収容されるインクが、前記の水性インク又は上記のインクジェット用のインクセットを構成するインクであることを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、収容されるインクが、前記の水性インク又は上記のインクジェット用のインクセットを構成するインクであることを特徴とする。
本発明によれば、特に、熱エネルギーの作用によって記録ヘッドからインクを連続して吐出するインクジェット記録方式に用いた場合に、良好な吐出安定性が得られ、さらにインクを長期間保存した際の保存安定性にも優れた顔料インクが提供される。また、本発明の別の実施態様によれば、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲の画像を形成できるインクセットが提供される。さらに、本発明の別の実施態様によれば、高品質な画像が安定して得られるインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置を提供することができる。
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。先ず、本発明に至った経緯について説明する。本発明者らは、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含有するグリーンインクについて検討する過程で、当該顔料の骨格に置換した置換基の違いによって、インクの吐出安定性や保存安定性に影響を生じることを見いだした。
本発明者らは、上記知見に基づき、この銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を水性インクの色材として使いこなすために、さらに詳細な検討を行った。本発明の水性インクに用いる銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料には、C.I.ピグメントグリーン7及びC.I.ピグメントグリーン36が含まれる。C.I.ピグメントグリーン7及びC.I.ピグメントグリーン36は、ともに置換基として塩素原子や臭素原子を有するハロゲン化銅フタロシアニン顔料である。また、C.I.ピグメントグリーン36は、C.I.ピグメントグリーン7と比較して、臭素原子の割合が高いことが知られている。本発明では、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料の中でも、置換基に塩素原子と臭素原子とをいずれも含むハロゲン化銅フタロシアニン、特に好ましくは、塩素原子と臭素原子とが特定の割合で含有されているものを用いる。
本発明者らの詳細な検討の結果、該顔料におけるハロゲン化銅フタロシアニン骨格に置換する塩素原子と臭素原子との比率が、インクの吐出安定性や保存安定性に大きな影響を及ぼすことがわかった。特に、吐出安定性に及ぼす影響は、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出する、いわゆるサーマル型のインクジェット記録装置を用いてインクを吐出した場合に顕著に表れることもわかった。
そこで、本発明者らは、ハロゲン化銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含むインクでありながら、吐出安定性や保存安定性に優れたインクとすることができる上記グリーン顔料の構成を見いだすことを第1の目的として検討を行った。具体的には、下記のようにして、銅フタロシアニン骨格に置換する塩素原子と臭素原子との含有割合(置換割合)を変えた数種類のグリーン顔料を合成し、これらの顔料を含有するインクと、その特性との相関についての検討を行った。
先ず、塩化アルミニウム及び塩化ナトリウムの共融塩に、銅フタロシアニンを溶解し、そこに塩素ガスと臭素ガスを導入することによりハロゲン化する方法で、銅フタロシアニン骨格に置換する塩素原子と臭素原子との含有割合を変えた。さらに、このようにして調製した各顔料の銅フタロシアニン骨格に置換基として結合している塩素原子と臭素原子との割合の定量を、蛍光X線分析装置を用いて塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を測定することで行った。その後、前記で得た各顔料を用いて顔料分散体を調製し、前記顔料分散体や水性媒体などのインクの材料を混合してインクを調製した。そして、得られた各インクを用いて吐出安定性と保存安定性の評価を行い、グリーン顔料の銅フタロシアニン骨格に置換する塩素原子と臭素原子の含有割合との相関を調べた。
本発明において、グリーン顔料を規定するために使用する塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)は、下記の方法で測定した。すなわち、蛍光X線分析装置ZSXmin(理学電気工業製)を用い、加速電圧40KV、1.20mAの条件で測定して得られる、塩素原子と臭素原子のピーク強度比を用いることで算出できる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
ここで、未知のインクが、前記した特性のグリーン顔料を含有するか否かの検証は、下記の手段によって行うことができる。先ず、インクを遠心分離して、インク中の固形成分と液体成分を分離する。その後、沈殿した固形成分のみを採取し、イオン交換水で洗浄する。洗浄した固形成分を乾固した後、蛍光X線分析装置を用いて塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を測定し、これらの比率を求めることで、検証することが可能である。
前記の検討の結果、上記したグリーン顔料における塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が、3.3よりも小さい顔料を使用した場合は吐出安定性が低下することがわかった。一方、10.0よりも大きい顔料を使用した場合は保存安定性が低下することがわかった。そこで、本発明においては、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料として、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が、特定の範囲内にあるものを用いることとした。すなわち、本発明では、上記効果を得るためのグリーン顔料を選択する場合に、顔料を蛍光X線分析して得られる塩素原子のKα線強度及び臭素原子のKα線強度を測定し、測定値から求めた両者の割合が上記特定の範囲内となるように規定する。この結果、前記効果を得る目的に対して良好に機能し得る銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料が規定できる。
銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料における塩素原子と臭素原子の含有割合(置換割合)を変えることで、インクの吐出安定性や保存安定性に大きな差が生じる理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
[塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合(=塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)が3.3よりも小さい場合]
本発明で用いるグリーン顔料は、フタロシアニン骨格の水素原子の一部が塩素原子と臭素原子に置換された分子の集合体である。ここで、臭素原子の原子半径は塩素原子の原子半径に比べて大きい。このため、グリーン顔料における臭素原子の割合が高まるほど、より嵩高い分子の集合体となると考えられる。インクジェット用インクは、水性媒体を含む水性インクであり、顔料は水不溶性であるため、色材としての顔料は、顔料粒子表面に、樹脂(高分子分散剤)や界面活性剤、さらには親水性基などが吸着又は結合した状態でインク中に存在する。本発明者らの検討の結果、顔料を構成している分子が嵩高い程、この樹脂や界面活性剤、さらには親水性基などが、顔料表面に吸着又は結合しづらくなることがわかった。本発明者らは、さらなる詳細な検討の結果、グリーン顔料の場合には、蛍光X線分析で測定した塩素原子と臭素原子の各Kα線強度との割合により、樹脂や界面活性剤などが顔料表面に吸着又は結合しづらくなる範囲を定量化できることを見いだした。より具体的には、塩素原子のKα線強度の、臭素原子のKα線強度に対する割合が3.3よりも小さいグリーン顔料を用いた場合には、顔料表面の、樹脂などの親水性を高める物質が吸着又は結合している量が少なくなることがわかった。特に、親水性を高める物質として樹脂を用いた場合は、樹脂の分子量が大きい又は親水性が高い程、立体障害の影響を受けやすく、樹脂が顔料表面に吸着しづらいこともわかった。
前記したような親水性を高める物質が十分に吸着していない顔料分散体を含有するインクを、サーマル型のインクジェット記録装置を用いて吐出すると、吐出時にインクに加えられる熱による分散破壊が発生する頻度が高くなると考えられる。本発明者らは、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が3.3より小さいグリーン顔料を含有するインクにおいて吐出不良が生じる理由は、下記のようであると推測している。すなわち、このようなインクをインクジェット記録に用いると、顔料表面の親水性を高める物質が不足しているために、インクを連続して吐出する過程で、大量の分散破壊物が発生すると考えられる。この結果、前記の特性を有するグリーン顔料を含有するインクでは、周波数応答性、吐出体積、吐出速度の低下が起ったものと推測している。
[塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度の割合(=塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)を10.0よりも大きい場合]
一方、臭素原子に比べて塩素原子の原子半径は小さいため、臭素原子の割合が小さくなるほど、立体障害が小さくなると考えられる。その結果、樹脂や界面活性剤、さらには親水性基などの顔料表面の親水性を高める物質は、顔料表面に吸着又は結合しやすくなるので、分散安定性が良くなる傾向となるはずである。しかし、本発明者らの検討によれば、臭素原子の割合が小さくなりすぎると、より具体的には、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が10.0より大きくなると、分散安定性は逆に低下する傾向になることがわかった。本発明者らは、この理由を以下のように推測している。顔料粒子は分子が幾重にも重なり合い1つの粒子を形成している。このとき、原子半径の大きい臭素原子の割合が少なすぎると、分子の対称性が向上するため、顔料粒子を構成している分子の結晶化が進行しやすくなることが原因であると考えている。すなわち、本発明者らは、結晶成長しすぎることで、分散しづらくなり、その結果、分散安定性が低下すると推測している。
以上の知見に基づき、本発明者らは、以下のことを見いだした。すなわち、蛍光X線分析によって得られる塩素原子のKα線強度と、臭素原子のKα線強度との割合が3.3以上10.0以下であるグリーン顔料を色材として用いることで、インクの吐出安定性及び保存安定性を両立できることがわかった。ここで、図7に、本発明で用いることができるグリーン顔料の蛍光X線分析の結果の一例を示す。図7では、このグリーン顔料における、塩素原子のKα線強度は43.5kcpsであり、臭素原子のKα線強度は11.2kcpsである。したがって、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)は、3.9となる。本発明のインクにおいては、塩素原子のKα線強度の、臭素原子のKα線強度に対する割合の上限は5.0以下であることがより好ましい。また、塩素原子の、Kα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合の下限は4.0以下であることがより好ましい。
なお、インクジェット用インクの色材として、先に挙げたC.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン36を用いることは周知のことである。しかし、本発明者らがインクジェット用として市販されているC.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン36について、前記の方法で、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合を調べたところ、以下のことがわかった。すなわち、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合は、調査した全てのC.I.ピグメントグリーン7において、10.0よりも大きい値であった。また、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合は、調査した全てのC.I.ピグメントグリーン36において、3.0よりも小さい値であった。この理由は定かではないが、以下のように推測される。そして、このようなものであったため、インクジェット用に市販されているC.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン36を用いた場合に、インクの保存安定性が十分でなかったり、吐出不良の問題が生じていたものと考えられる。
先ず、市販のC.I.ピグメントグリーン7には、結晶阻害剤という第3の物質が含まれているために、前記したような分子の対称性の向上による結晶化(顔料の凝集)が起きにくい。また、本発明者らの検討によれば、塩素原子の割合が増加する程、立体障害の影響を受けにくくなるため、顔料表面に樹脂や界面活性剤、さらには親水性基などの顔料表面の親水性を高める物質が吸着しやすくなる傾向がある。上記のことから、インクジェット用に市販されているC.I.ピグメントグリーン7では、安定した顔料分散体を得るために、結晶阻害剤を含有させ、さらに塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度の割合が10.0よりも大きくなっていたと思われる。
また、インクジェット用として市販されているC.I.ピグメントグリーン36は、銅フタロシアニン骨格に置換する臭素原子が多いため、色材の分子骨格が大きくなると考えられる。このために、従来のC.I.ピグメントグリーン36を含有させたインクでは、インクの保存安定性が十分に得られない原因となっていたと考えられる。さらには上記のような分子構造を有するために、市販のC.I.ピグメントグリーン36を含有するインクをサーマル型のインクジェット記録装置に適用すると、インクの吐出安定性が十分に得られない原因となっていたものと考えられる。
本発明者らの検討によれば、上記の理由から、特にサーマル型のインクジェット記録装置に適用するインクの色材に、従来のC.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン36を用いた場合に、下記の問題が起こる。すなわち、結晶阻害剤がコゲーションの要因となったり、吐出安定性についても好ましくない場合があったものと考えられる。
そこで、本発明者らは、特に、上記したインクジェット用インクの保存安定性や吐出安定性の問題を解決できる銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含有してなる水性インクの構成として、下記の構成を見いだした。すなわち、従来より使用されていた市販のC.I.ピグメントグリーン7やC.I.ピグメントグリーン36とは異なる構成の銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を用いる。具体的には、「塩素原子のKα線強度の、臭素原子のKα線強度に対する割合が3.3以上10.0以下である」銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を用いる。
<水性インク>
本発明の前記した第1の目的を達成できるインクジェット用の水性インクは、下記の通りである。すなわち、蛍光X線分析によって得られる塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が3.3以上10.0以下である銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含んでなることを特徴とする。しかし、それ以外のインクの構成については、従来の、インクジェット用の水性顔料インクと同様とすればよい。下記に、本発明の水性インクを構成する各成分について説明する。
(グリーン顔料の含有量)
本発明の水性インク中における、色材であるグリーン顔料の含有量は、水性インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下、さらには、2.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。グリーン顔料の含有量が、1.0質量%未満であると、十分な光学濃度が得られない場合があり、10.0質量%を超えると、耐固着性が低下する場合がある。
(顔料の分散方式)
本発明のインクを構成するグリーン顔料の分散方式は、いずれのものも用いることができる。具体的には、分散剤を用いて分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)を用いることができる。また、顔料の表面を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化したマイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることもできる。さらに、顔料粒子の表面に高分子を含有する有機基を化学的に結合した顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)を用いることもできる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて用いることも可能である。以下、これらの方式の顔料について説明する。
[樹脂分散型顔料]
樹脂分散型顔料に用いる分散剤は、親水性基、特にはアニオン性基の作用により顔料を水性媒体に安定に分散することのできるものを用いることが好ましい。分散剤は、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体。スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体。ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体など。又はこれらの共重合体の塩など。
また、分散剤として用いる樹脂の形態は、ブロックポリマーであることが好ましい。この理由は以下の通りである。ブロックポリマーは、分子構造中に親水性ユニット及び疎水性ユニットが規則的に並んでいる。一方、ランダムポリマーは、分子構造中に疎水性ユニット及び親水性ユニットが不規則に並んでいる。このため、ブロックポリマーは、ランダムポリマーと比較して、顔料へ吸着しやすい疎水性ユニットが樹脂の構造中においてある程度局所的に存在する。このような樹脂の形態の違いから、ブロックポリマーはランダムポリマーと比較して顔料からの剥離が起きづらく、高い吐出安定性をより維持しやすい。なお、本発明において用いることができるブロックポリマーは、以下のものが挙げられる。疎水性モノマーユニット(Aブロックと呼ぶ)及びイオン性親水性モノマーユニット(Bブロックと呼ぶ)がそれぞれ局在化したABブロックタイプ、又は、さらに非イオン性親水性モノマーユニット(Cブロックと呼ぶ)を加えたABCブロックタイプが挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
上記した分散剤の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましい。本発明においては、特に、分散剤の重量平均分子量が、1,500以上6,000以下、さらには2,000以上5,000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量が1,500以上6,000以下である樹脂を分散剤として用いることは、通常のインクジェット用の顔料インクにおいては非常にまれである。しかし、本発明においては、下記に述べる理由から、このように重量平均分子量が小さい樹脂を用いることが特に好ましい。本発明で用いるグリーン顔料は、臭素原子のようなかさ高い原子がある割合で付加しているため、顔料表面の親水性を高める樹脂などの物質が吸着しづらいと考えられる。このため、本発明の場合には、重量平均分子量が1,500以上6,000以下、さらには2,000以上5,000以下である樹脂を用いることが、インクの吐出安定性や長期保存安定性を向上するためにはより好ましいと考えられる。この理由は定かではないが、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、重量平均分子量が6,000以下、さらには5,000以下の樹脂の場合、重量平均分子量が小さいため、本発明で用いるグリーン顔料に特有の立体障害による樹脂の吸着量が減少することの影響を受けづらくなる。その結果、インク中の樹脂の含有量が小さい場合であっても、グリーン顔料を安定な状態で分散するために十分な樹脂が顔料表面に吸着することができる。また、重量平均分子量が1,500以上、さらには2,000以上の樹脂は、顔料を十分に安定な状態で分散することができる。なお、本発明者らは、重量平均分子量が6,000、さらには5,000よりも大きい樹脂に比べて、重量平均分子量が6,000以下、さらには5,000以下の樹脂を用いると、グリーン顔料表面への樹脂の吸着量が増加することを下記の方法で確認した。すなわち、重量平均分子量が異なる樹脂を用いてグリーン顔料を分散した顔料分散体の水溶液を遠心分離し、上澄みを酸析して得られた化合物の質量を比較することで確認した。
さらに、本発明で用いる置換基である塩素原子と臭素原子の割合が特定の範囲にあるグリーン顔料を、重量平均分子量が1,500以上6,000以下の範囲の樹脂で分散する場合の好ましい樹脂の含有量は下記の通りである。すなわち、インク中の樹脂の含有量(質量%)は、グリーン顔料の含有量(質量%)を基準として(樹脂の含有量/グリーン顔料の含有量)、0.5倍以上1.0倍以下であることが好ましい。
インク中の樹脂の含有量を、上記顔料の含有量を基準として0.5倍以上とすれば、たとえ樹脂が顔料表面から剥離したとしても、前記樹脂が顔料表面から剥離した部位に樹脂が再び吸着するために十分な樹脂がインク中に存在する状態となる。その結果、立体障害の影響で顔料表面に樹脂が吸着しづらいグリーン顔料でも、上記のように構成することで、顔料を安定な状態で分散するのに十分な樹脂を顔料に吸着させることができると推測される。一方、インク中の樹脂の含有量が、顔料の含有量を基準として1.0倍よりも大きくすると、本発明で用いる前記特定のグリーン顔料の場合には、顔料に吸着していない樹脂が増加することが起こる。このため、記録ヘッドの吐出口近傍におけるインク中の水分蒸発に伴うインクの粘度の上昇や、吐出口などへの樹脂の付着により、吐出安定性が低下する場合がある。
また、インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上10.0質量%以下、さらには0.5質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。中でも、本発明においては、インク中の樹脂の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.9質量%以上1.8質量%以下であることが特に好ましい。樹脂の含有量が上記したように0.9質量%以上1.8質量%以下であると、吐出安定性の低下が起こることがなく、また、長期間に渡って優れた分散安定性が得られるためである。
[自己分散型顔料]
本発明では、顔料表面にイオン性基(例えば、アニオン性基)を結合することで、分散剤を用いることなく水性媒体に顔料を分散することができる自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料は、例えば、下記のようなアニオン性基が顔料表面に結合したアニオン性の顔料を挙げることができる。
アニオン性の自己分散型顔料は、顔料の表面に、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32などの少なくとも1つのアニオン性基を結合したものが挙げられる。前記式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムを表わす。
[マイクロカプセル型顔料]
本発明では、顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を用いることもできる。顔料をマイクロカプセル化する方法は、化学的製法、物理的製法、物理化学的製法、及び機械的製法などが挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法及び転相乳化法などが挙げられる。
[ポリマー結合型自己分散顔料]
本発明では、顔料粒子の表面に高分子を含有する有機基を化学的に結合した、ポリマー結合型自己分散顔料を用いることもできる。ポリマー結合型自己分散顔料は、グリーン顔料の表面に直接又は他の原子団を介して化学的に結合した官能基と、イオン性モノマー及び疎水性モノマーの共重合体との反応物を含むものを用いることが好ましい。
次に、本発明のインクを構成するグリーン顔料以外の成分について説明する。本発明で用いるグリーン顔料以外の成分は、従来のインクジェット用インクを構成するものをいずれも用いることができる。
(水性媒体)
インクには、水又は水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中における水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中における水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水は、脱イオン水を用いることが好ましい。また、水溶性有機溶剤は、例えば、以下のものを用いることができる。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノールなどの炭素数が1乃至4のアルカノール。N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド。アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オンなどのケトン又はケトアルコール。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル。グリセリン。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジチオグリコールなどのグリコール類。1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどの多価アルコール類。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類。2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリンなどの複素環類。ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物。これらの水溶性有機溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、上記した水溶性有機溶剤の中でも、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、2−ピロリドンを用いることが特に好ましい。また、グリーン顔料の分散剤として、上記した重量平均分子量が1,500以上6,000以下、さらには2,000以上5,000以下の樹脂を用いる場合、水溶性有機溶剤として平均分子量が1,000以上のポリエチレングリコールを用いることが特に好ましい。上記した重量平均分子量の樹脂と平均分子量が1,000以上のポリエチレングリコールとを含有するインクは、長期間連続して吐出を行う場合の吐出安定性が特に良好となるためである。なお、ポリエチレングリコールの平均分子量の上限は1,500以下であることが好ましい。さらに、インクがポリエチレングリコールを含有する場合には、インク中のグリーン顔料の含有量を基準として、ポリエチレングリコールの含有量が等量以上である場合、特に優れた吐出安定性を得ることができる。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、前記で説明した成分の他に、さらに必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。例えば、尿素及び尿素誘導体、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの固体の保湿剤を用いることができる。さらに、所望の物性を有するインクとするために、アセチレングリコール誘導体などの界面活性剤、消泡剤、防腐剤、及び防黴剤などを用いることができる。
<インクセット>
次に、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲の画像を形成することができるインクセットについて説明する。本発明者らは、グリーン顔料を含有するインクを含む複数の顔料インクで形成した画像における色再現範囲を、染料インクで形成した画像と同等に優れたものとすることを第2の目的として、様々な検討を行った。
その結果、顔料インクで形成した画像における色再現範囲を広げるためには、シアン、マゼンタ、及びイエローの3原色インクに加えて、単純に彩度が高い色材を含有するインクを用いただけでは十分な効果が得られないことがわかった。また、画像の色再現範囲を広げるためには、特に、レッド、グリーン、及びブルーの各インクに用いる色材の吸光特性が相互に及ぼす影響を考慮し、これらのインクに用いる色材を選択することが重要であることもわかった。そして、本発明者らは、これらのことを考慮して選択した色材をそれぞれに含有するレッド、グリーン、及びブルーのインクを組み合わせたインクセットを用いることで、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲の画像形成の実現が可能となることを知見した。
そこで、本発明者らは、シアン、マゼンタ、及びイエローの3原色のインクに加えて用いる、これら以外の、第4、第5、及び第6のカラーインクについての検討を行うことにした。具体的には、顔料の粒度分布や分散剤をほぼ揃えた数十種類の顔料分散体を調製した後、インクジェット用のインクに通常用いられる水性媒体などのインクの材料を混合して、数十種類の水性インクを調製した。次に、上記で得られた各インクをインクジェット記録方法により、それぞれ数種類の記録媒体に付与して画像を形成した。得られた画像について、CIE(国際照明委員会)で規定するL***表色系におけるa*値及びb*値を測定し、これらの値から彩度を算出した。さらに、この彩度の測定結果をもとに、ブルーの領域、レッドの領域、及びグリーンの領域において、最も高い彩度が得られる3種類のインクを選択した。そして、かかる3種類のインクで、多次色(2次色や3次色など)の領域を含む画像を形成して、色バランス及び色再現範囲の評価を行った。このようにして選択した最も高い彩度を与える3種類のインクを組み合わせれば、従来の顔料インクセットにより得られる色バランス及び色再現範囲と同等のレベルには到達する。しかし、それ以上のレベルには勿論のこと、染料インクと同等のレベルにも達することはなかった。
そこで本発明者らは、上記で得られた数十種類のインクを任意に組み合わせて、多次色(2次色や3次色など)の領域を含む画像を形成して、得られた画像について、上記と同様にして色バランス及び色再現範囲の評価を行った。その結果、以下に述べる本発明のインクセットを構成するインクを組み合わせて用いて形成した画像が、ブルーの領域、レッドの領域、及びグリーンの領域における色バランス及び色再現範囲が最も優れることがわかった。このことは、各色相において最も高い彩度を与える色材を含有する複数のインクを組み合わせて用いて多次色の画像を形成しても、最も優れた色バランス、さらに色再現範囲が最も広くなるわけではないことを意味する。
上記したような検討の結果をふまえて本発明者らが見いだした、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲の画像の形成が可能となる本発明のインクセットを構成するそれぞれの顔料インクについて述べる。
先ず、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第3象限及び第4象限の領域の画像を形成する場合に用いるグリーンインク及びブルーインクとして、それぞれ以下の色材を含有するインクを用いることが好ましい。すなわち、グリーンインクの色材が、C.I.ピグメントグリーン7であり、ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることが好ましい。このようなグリーンインク及びブルーインクを組み合わせて用いることで、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第3象限及び第4象限の色再現範囲を特に広げることができる。
また、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第1象限及び第2象限の領域の画像を形成する場合に用いるレッドインクの色材は、C.I.ピグメントレッド149であることが好ましい。このようなレッドインクを用いることで、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第1象限及び第2象限の色再現範囲を特に広げることができる。
また、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第1象限及び第4象限の領域の画像を形成する場合に用いるレッドインク及びブルーインクとして、それぞれ以下の色材を含有するインクを用いることが好ましい。すなわち、レッドインクの色材が、C.I.ピグメントレッド149であり、ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることが好ましい。このようなレッドインク及びブルーインクを組み合わせて用いることで、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第1象限及び第4象限の色再現範囲を特に広げることができる。
上記の検討の結果、インクセットを構成する最適なグリーンインク、ブルーインク、及びレッドインクの組み合わせを、それぞれ以下の特定の色材を含有するインクとすることとした。すなわち、本発明のインクセットに使用する色材を、グリーンインクの色材をC.I.ピグメントグリーン7とし、ブルーインクの色材をC.I.ピグメントバイオレット23とし、レッドインクの色材をC.I.ピグメントレッド149とする。このようなグリーンインク、ブルーインク、及びレッドインクを組み合わせてセットとして用いることで、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第1象限から第4象限の領域の色再現範囲を特に広げることができる。さらには、かかるインクセットを用いることで、色バランスにも優れた画像を得ることができる。
上記の特定の色材をそれぞれに含有する複数のインクで形成した画像が、各色相において最も高い彩度を与える色材をそれぞれに含有する複数のインクで形成した画像よりも、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲のものとなる理由は明確には定かではない。本発明者らは、この理由について、以下のように推測している。
本発明のインクセットを構成する各インクを用いて多次色(2次色や3次色など)の領域を含む画像を形成すると、記録媒体上の前記画像の領域には複数の色材が混在した状態で存在する。このとき、各色材に固有の吸光特性が、互いの吸光特性に対して何らかの影響を及ぼし合うものと考えられる。本発明のインクセットを構成する各インクが含有する各色材が、記録媒体上で具体的にどのような影響を及ぼしあっているかは現在のところ不明である。しかし、上記した事実から、本発明のインクセットを構成する各インクの組み合わせとすることで、特に、各色材が本来有する吸光特性を互いに向上し合うような何らかの相乗効果が生じるものと考えられる。この結果、各色材に固有の性能以上に、広い色再現範囲を得ることができるものと推測している。
上記した特定の色材をそれぞれ含有するブルー、レッド、及びグリーンの各インクを組み合わせた本発明のインクセットは、これら以外のインクをさらに組み合わせて用いても良い。例えば、本発明のインクセットを構成する各インクに加えて、シアン、マゼンタ、及びイエローの3原色のインクや、さらにブラックインクを用いることができる。このときも、各色相において最も高い彩度を与える色材を含有する複数のインクを組み合わせと比較して、本発明のブルー、レッド、及びグリーンの各インクで構成されるインクセットを用いる場合の方が、色バランス及び色再現範囲がより優れたものとなる。上記した効果は、3原色のインクとして、下記のインクを用いる場合に特に顕著に得ることができる。すなわち、C.I.ピグメントイエロー74を含有するイエローインク、C.I.ピグメントレッド122を含有するマゼンタインク、及びC.I.ピグメントブルー15:3を含有するシアンインク、の3原色のインクを用いことが特に好ましい。勿論、本発明のインクセットに加えて用いることができるインクは上記に限られるものではない。
本発明のインクセットを構成する各インクは、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法に用いた場合に、顕著な効果を得ることができる。これは、本発明のインクセットを構成する各インクは、良好な吐出安定性を有するため、吐出量が小さい場合であっても、より広い色再現範囲を得ることができるためである。
次に、本発明のインクセットを構成するグリーンインク、ブルーインク、及びレッドインクを特徴づける構成について、それぞれ具体的に説明する。
(グリーンインク)
前記したように、本発明のインクセットを構成するグリーンインクは、色材としてC.I.ピグメントグリーン7を含有することを特徴とする。グリーンインク中のC.I.ピグメントグリーン7の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下、さらには2.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。
ここで、本発明のインクセットを構成するグリーンインクとしては、先に説明した本発明の水性インクの中でも、置換基が特定されたグリーン顔料を含むインクを用いることが特に好ましい。具体的には、グリーンインクは、含有するグリーン顔料を蛍光X線分析することによって得られる、塩素原子のKα線強度の、臭素原子のKα線強度に対する割合が、3.3以上10.0以下のものであることが好ましい。また、グリーンインクは、上記のグリーン顔料を分散する樹脂として、重量平均分子量が2,000以上5,000以下の範囲の樹脂を含有することが特に好ましい。
(ブルーインク)
本発明のインクセットを構成するブルーインクは、色材としてC.I.ピグメントバイオレット23を含有することを特徴とする。ブルーインク中のC.I.ピグメントバイオレット23の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下、特には1.0質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクセットを構成するブルーインクには、下記の吸光特性を有するものを用いることが好ましい。すなわち、さらに、波長530nm以上540nm以下の範囲と、波長550nm以上570nm以下の範囲にそれぞれ極大吸収波長を持ち、これらの極大吸収波長における吸光度が下記の関係を満たすことが好ましい。波長530nm以上540nm以下の範囲にある極大吸収波長における吸光度(A)と、波長550nm以上570nm以下の範囲にある極大吸収波長における吸光度(B)との関係が、下記式(1)の条件を満たすことが好ましい。ブルーインクが下記式(1)の条件を満たすことで、ブルーインクで形成した画像における発色性を特に優れたものとすることができる。
Figure 2007246890
(レッドインク)
本発明のインクセットを構成するレッドインクは、色材としてC.I.ピグメントレッド149を含有することを特徴とする。当該レッドインク中のC.I.ピグメントレッド149の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下、さらには3.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
C.I.ピグメントレッド122を含有するマゼンタインクを、本発明のインクセットを構成する各インクと組み合わせて画像を形成する場合に、該マゼンタインクとインクセットを構成するレッドインクが以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち、マゼンタインク及びレッドインクをそれぞれ水を用いて同一の倍率に希釈して得られた希釈インクについて、吸収度の測定を行う。得られた各希釈インクの吸収スペクトルから、各波長における吸光度を合算する。これを、吸光度を合算した吸収スペクトルとする。このとき、吸光度を合算した吸収スペクトルにおいて、450nm以上570nm以下の範囲における最大吸光度(C)及び最小吸光度(D)の関係が、下記式(2)の条件を満たすことが好ましい。マゼンタインク及びレッドインクが下記式(2)の条件を満たすことで、赤領域の色再現範囲、すなわち、CIEで規定するL***表色系におけるa**座標で表される第1象限の色再現範囲を、特に効果的に広げることができる。
Figure 2007246890
(顔料の分散方式)
本発明のインクセットを構成するブルーインク、レッドインク、及びグリーンインクは、各インクに用いる顔料が、水又は水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体中に分散してなるインクとすることが好ましい。これらの顔料を水性媒体中に分散する方法は、特に限られるものではなく、前記した本発明の水性インク(グリーン顔料を含有する水性インク)と同様の分散方式とすることができる。また、この際に、顔料を分散する分散剤も、前記した本発明の水性インクに用いる樹脂と同様のものを用いることができる。
(水性媒体及びその他の添加剤)
本発明のインクセットを構成するブルーインク、レッドインク、及びグリーンインクに用いる水性媒体及びその他の添加剤は、上記したような本発明の水性インクに用いる水性媒体及びその他の添加剤と同様のものを用いることができる。また、この際の、水性媒体及びその他の添加剤の含有量も、前記した本発明の水性インクと同様とすることができる。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクやインクセットを構成する各インクは、インクジェット記録方式でインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを付与することによりインクを吐出する方法や、インクに熱エネルギーを付与することによりインクを吐出する方法などがある。特に、本発明のインクやインクセットを構成する各インクは、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法に用いた場合に、顕著な効果を得ることができる。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクやインクセットを構成する各インクを収容したインク収容部を備えたものであることを特徴とする。
<記録ユニット>
本発明の記録ユニットは、本発明のインクやインクセットを構成する各インクを収容するインク収容部と、前記インクを吐出する記録ヘッドとを備えたものであることを特徴とする。特に、記録ヘッドが、熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出する記録ユニットである場合に、顕著な効果を得ることができる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクやインクセットを構成する各インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えたものであることを特徴とする。特に、記録ヘッドが、熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出するインクジェット記録装置である場合に、顕著な効果を得ることができる。
以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。インクジェット記録装置は、各機構の役割から、給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部、及びこれらを保護し、意匠性を持たせる外装部で構成される。以下、これらの概略を説明する。
図1は、インクジェット記録装置の斜視図である。また、図2及び図3は、インクジェット記録装置の内部機構を説明するための図であり、図2は右上部からの斜視図、図3はインクジェット記録装置の側断面図をそれぞれ示したものである。
給紙を行う際には、先ず、給紙トレイM2060を含む給紙部において所定枚数の記録媒体が、給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる(図1及び図3参照)。記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される(以上、図2及び図3参照)。
画像を形成する際には、キャリッジ部は記録ヘッドH1001(図4参照)を目的の画像形成位置に配置して、電気基板E0014(図2参照)からの信号にしたがって記録媒体にインクが吐出される。なお、記録ヘッドH1001についての詳細な構成は後述する。記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000(図2参照)が列方向に走査する主走査と、搬送ローラM3060(図2及び図3参照)が記録媒体を行方向に搬送する副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像を形成する。
最後に、記録媒体は、排紙部で第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ(図3参照)、搬送されて排紙トレイM3160(図1参照)に排出される。
クリーニング部は、記録ヘッドH1001のクリーニングを行う。クリーニング部は、キャップM5010(図2参照)を記録ヘッドH1001の吐出口に密着させた状態で、ポンプM5000(図2参照)を作動すると、記録ヘッドH1001からインクなどを吸引する。また、キャップM5010を開いた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引すると、インクの固着やその他の弊害が起こらないようになっている。
(記録ヘッドの構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図4参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有する。そして、ヘッドカートリッジH1000は、キャリッジM4000(図2参照)に対して着脱可能に搭載される。
図4は、ヘッドカートリッジH1000にインクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。インクジェット記録装置は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、レッド、グリーン、及びブルーの各インクで画像を形成する。したがって、インクカートリッジH1900も7色分が独立に用意されている。前記において、少なくとも一種のインクに、本発明のインクやインクセットを構成する各インクを用いる。そして、図4に示すように、それぞれのインクカートリッジは、ヘッドカートリッジH1000に対して着脱可能となっている。なお、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジM4000(図2参照)にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行うことができる。
図5は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録素子基板、プレート、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などで構成される。記録素子基板は第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101で構成され、プレートは第1のプレートH1200及び第2のプレートH1400で構成される。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソグラフィ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAlなどの電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路もまた、フォトリソグラフィ技術により形成されている。さらに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図6は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明する正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインクを供給する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、イエローインクのノズル列H2000、マゼンタインクのノズル列H2100、及びシアンインクのノズル列H2200の3色分のノズル列が形成されている。第2の記録素子基板H1101には、レッドインクのノズル列H2300、ブラックインクのノズル列H2400、グリーンインクのノズル列H2500、及びブルーインクのノズル列H2600、の4色分のノズル列が形成されている。
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向に1,200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成され、約2ピコリットルのインクを吐出する。各吐出口における開口面積は、およそ100μm2に設定されている。
以下、図4及び図5を参照して説明する。前記した第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持する。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加する。この電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し、インクジェット記録装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有する。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
インクカートリッジH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が、例えば、超音波溶着により固定され、インクカートリッジH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成する。インクカートリッジH1900と係合するインク流路H1501のインクカートリッジ側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。また、インクカートリッジH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
さらに、上記したように、タンクホルダー部と記録ヘッド部H1001とを接着などで結合することで、ヘッドカートリッジH1000が構成される。なお、タンクホルダー部は、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、及びシールゴムH1800から構成される。また、記録ヘッド部H1001は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される。
なお、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じた膜沸騰をインクに生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うサーマルインクジェット方式の記録ヘッドについて述べた。この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、いわゆる、オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用することができる。
サーマルインクジェット方式は、オンデマンド型に適用することが特に有効である。オンデマンド型の場合には、インクを保持する液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加する。このことによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、インクに膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応したインク内の気泡を形成できる。この気泡の成長及び収縮により吐出口を介してインクを吐出することで、少なくともひとつの滴を形成する。駆動信号をパルス形状とすると、即時、適切に気泡の成長及び収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。
また、本発明のインクやインクセットを構成する各インクは、前記のサーマルインクジェット方式に限らず、下記に述べるような、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置においても好ましく用いることができる。かかる形態のインクジェット記録装置は、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備えてなる。そして、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクをノズルから吐出する。
インクジェット記録装置は、上記したように、記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。さらに、インクカートリッジは記録ヘッドに対して分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもの、また、インクジェット記録装置の固定部位に設けられて、チューブなどのインク供給部材を介して記録ヘッドにインクを供給するものでもよい。また、記録ヘッドに対して、好ましい負圧を作用させるための構成をインクカートリッジに設ける場合には、以下の構成とすることができる。すなわち、インクカートリッジのインク収容部に吸収体を配置した形態、又は可撓性のインク収容袋とこれに対してその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態などとすることができる。また、インクジェット記録装置は、上記したようなシリアル型の記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、これらに限られるものではない。なお、以下の記載で「部」及び「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
<グリーン顔料の調製>
(グリーン顔料Aの調製)
撹拌機及びハロゲンガス導入管を有する反応器で、塩化アルミニウム180g及び塩化ナトリウム42gを、160℃で5時間、混合しながら加熱した。その後、さらに2時間撹拌した後、温度を100℃にして、60gの銅フタロシアニンを加えた。さらに、この反応器内に、10:1の割合の塩素ガスと臭素ガスを9g/hの流速で導入し、銅フタロシアニンのハロゲン化を行った。得られた物質を水中に排出し、洗浄、乾燥を行い、80gのグリーン顔料Aを得た。得られたグリーン顔料Aの蛍光X線分析を行って、塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を算出して、これらの割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)を求めた。結果を表1に示した。
(グリーン顔料B、C、D、及びEの調製)
上記したグリーン顔料Aの調製における、塩素ガスと臭素ガスの割合を変更すること以外は、グリーン顔料Aと同様にして、塩素原子と臭素原子の含有割合の異なるグリーン顔料B、C、D、及びEを調製した。なお、グリーン顔料における、塩素原子と臭素原子の含有割合は、銅フタロシアニンのハロゲン化の際に用いる塩素ガス及び臭素ガスの混合割合を適宜変えることにより変更した。ここで、一般に、塩素ガス及び臭素ガスの混合ガスにおいて、臭素ガスの含有量を増やすことで、銅フタロシアニン骨格に置換する臭素原子の含有割合が高くなる。そして、得られたグリーン顔料B、C、D、及びEの蛍光X線分析をそれぞれ行って、塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を算出して、これらの割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)を求めた。結果を表1に示した。
Figure 2007246890
<グリーン顔料分散体の調製>
上記で得られた各グリーン顔料を用いて、下記の手順及び組成で各グリーン顔料分散体を調製した。
(グリーン顔料分散体1の調製)
前記グリーン顔料Aを15部、分散剤を7.5部、及びイオン交換水を77.5部、を混合して顔料溶液を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量6,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Aを用いた。この顔料溶液をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mmのジルコニアビーズを85部充填し、水冷しながら3時間分散した。その後、遠心分離を行うことで粗大粒子を含む非分散物を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過することで、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%のグリーン顔料分散体1を調製した。
(グリーン顔料分散体2の調製)
グリーン顔料Aに代えてグリーン顔料Bを用いること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体2を調製した。得られたグリーン顔料分散体2は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体3の調製)
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体3を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量5,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Bを用いた。得られたグリーン顔料分散体3は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体4の調製)
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体4を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量2,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Cを用いた。得られたグリーン顔料分散体4は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体5の調製)
前記グリーン顔料Bを15部、前記樹脂Bを6部、及びイオン交換水を79部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体5を調製した。得られたグリーン顔料分散体5は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が4質量%であった。
(グリーン顔料分散体6の調製)
前記グリーン顔料Aを15部、前記樹脂Bを16.5部、及びイオン交換水を68.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体6を調製した。得られたグリーン顔料分散体6は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が11質量%であった。
(グリーン顔料分散体7の調製)
前記グリーン顔料Cを15部、前記樹脂Aを7.5部、及びイオン交換水を77.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体7を調製した。得られたグリーン顔料分散体7は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体8の調製)
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体8を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量1,500のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Dを用いた。得られたグリーン顔料分散体8は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体9の調製)
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体9を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量5,000のランダムポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Eを用いた。得られたグリーン顔料分散体9は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体10の調製)
前記グリーン顔料Aを15部、前記樹脂Bを3部、及びイオン交換水を87部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体10を調製した。得られたグリーン顔料分散体10は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が2質量%であった。
(グリーン顔料分散体11の調製)
前記グリーン顔料Dを15部、前記樹脂Aを7.5部、及びイオン交換水を77.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体11を調製した。得られたグリーン顔料分散体11は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体12の調製)
前記グリーン顔料Eを15部、前記樹脂Aを7.5部、及びイオン交換水を77.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体12を調製した。得られたグリーン顔料分散体12は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
(グリーン顔料分散体13の調製)
前記グリーン顔料Aを10部、前記樹脂Bを9部、及びイオン交換水を81部、を混合して顔料溶液を調製した。この顔料溶液を循環式ビーズミルに仕込み、0.3mmのジルコニアビーズを85部充填し、水冷しながら周速4m/秒で3時間分散した。その後、遠心分離を行うことで粗大粒子を含む非分散物を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過することで、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%のグリーン顔料分散体13を調製した。
(グリーン顔料分散体14の調製)
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントグリーン36(製品名:リオノールグリーン6YK;東洋インキ製造製)を用い、分散時間を5時間とすること以外は、グリーン顔料分散体3と同様にして、グリーン顔料分散体14を調製した。得られたグリーン顔料分散体14は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。なお、前記C.I.ピグメントグリーン36の蛍光X線分析を行って、塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を算出して、これらの割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)を求めたところ、0.06であった。
<各色の顔料分散体の調製>
市販の各顔料を用いて、下記の手順及び組成で各色の顔料分散体を調製した。
(ブルー顔料分散体1の調製)
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントバイオレット23(製品名:Hostaperm Violet RL SP;クラリアント製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、ブルー顔料分散体1を調製した。得られたブルー顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
(ブルー顔料分散体2の調製)
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントブルー60(製品名:Micracet Blue R;チバスペシャリティーケミカルス製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、ブルー顔料分散体2を調製した。得られたブルー顔料分散体2は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
(レッド顔料分散体1の調製)
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントレッド149(製品名:Hostaprint Red B 32;クラリアント製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、レッド顔料分散体1を調製した。得られたレッド顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
(レッド顔料分散体2の調製)
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントレッド177(製品名:クロモフタールレッドA2B;チバスペシャリティーケミカルス製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、レッド顔料分散体2を調製した。得られたレッド顔料分散体2は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
(イエロー顔料分散体1の調製)
顔料を10部、分散剤を9部、及びイオン交換水を81部、を混合して顔料溶液を調製した。なお、前記顔料には、C.I.ピグメントイエロー74(製品名:Hansa Brilliant Yellow 5GX;クラリアント製)を用いた。また、前記分散剤には、スチレンとブチルアクリレートとアクリル酸を原料として常法により合成した、酸価202、重量平均分子量6,500のランダムポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Fを用いた。この顔料溶液をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mmのジルコニアビーズを150部充填し、水冷しながら12時間分散した。その後、遠心分離を行うことで粗大粒子を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過することで、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%のイエロー顔料分散体1を調製した。
(マゼンタ顔料分散体1の調製)
C.I.ピグメントイエロー74に代えてC.I.ピグメントレッド122(製品名:Hostaperm PinkE;クラリアント製)を用い、分散時間を3時間とすること以外は、イエロー顔料分散体1と同様にして、マゼンタ顔料分散体1を調製した。得られたマゼンタ顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
(シアン顔料分散体1の調製)
C.I.ピグメントイエロー74に代えてC.I.ピグメントブルー15:3(製品名:IRGALITE Blue 8700;チバスペシャリティーケミカルス製)を用いること以外は、イエロー顔料分散体1と同様にして、シアン顔料分散体1を調製した。得られたシアン顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
<インクの調製>
下記表2及び表3に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、インク1〜17を調製した。なお、インク1〜14は本発明の実施例のインクであり、インク15〜17は比較例のインクである。また、表2及び表3中、樹脂MWとあるのは、樹脂の重量平均分子量のことである。
Figure 2007246890
Figure 2007246890
<グリーンインクの評価>
(1)吐出安定性
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)を、片方向記録を行うように改造したもののシアンインクのポジションに搭載した。その後、PPC用紙オフィスプランナー(キヤノン製)に、記録デューティを25、50、75、及び100%と、段階的に変化して、2cm×8cmのベタ画像をそれぞれ記録した。この際、プリンタドライバはデフォルトモードを選択した。そして、不吐出の様子や、得られたベタ画像の濃度や記録ムラの様子を目視で観察し、吐出安定性を評価した。吐出安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4に示す。
AA:記録デューティ100%まで不吐出がなく、また、全ての記録デューティにおいて記録ムラがない。
A:記録デューティ100%まで不吐出はないが、記録デューティ25%の画像において着弾位置のずれによる記録ムラが多少発生する。
B:記録デューティ100%まで不吐出はないが、記録デューティ25%の画像において着弾位置のずれ、及び、記録デューティ25%の画像において吐出体積の減少による画像濃度の低下が発生する。
C:記録デューティ100%において不吐出が発生するか、全てのノズルで不吐出はないがベタ画像にかすれが発生する。
(2)保存安定性
上記で得られた各インクをそれぞれガラス瓶に入れて密栓し、60℃の温度に保ったオーブン中で3ケ月間保存した。その後、ガラス瓶をオーブンから取り出し、インクが常温になるまで放置した。そして、瓶の蓋を下にして立たせ、瓶の底にある付着物の量及び大きさを目視で確認した。保存前後における付着物の量及び大きさの違いで保存安定性を評価した。また、保存前後における各インクの粘度、表面張力、顔料の平均粒径及び吸光特性を、常法によって測定して、保存安定性を評価した。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4に示す。
AA:60℃での保存前と比較して、付着物の量及び大きさは共に変化がなかった。
A:60℃での保存前と比較して、付着物の量の増加は見られないが、大きさがやや大きくなっていた。
B:60℃での保存前と比較して、付着物の量がやや増加していたが、インクの粘度、表面張力、平均粒径及び吸光特性にはほとんど変化がなかった。
C:60℃での保存前と比較して、付着物の量が大幅に増加し、かつ、インクの粘度、表面張力、平均粒径及び吸光特性のいずれかが60℃での保存前の値と比較して変化していた。
Figure 2007246890
<インクの調製>
下記表5に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、インク18〜26を調製した。
なお、インク18をイオン交換水で1,500倍(質量倍)に希釈して得られた希釈インクについて、分光光度計(商品名:U−3300、日立製作所製)を用いて、400nm以上700nm以下の範囲における吸光度の測定を行った。その結果、530nm以上540nm以下の範囲にある極大吸収波長における吸光度(A)が1.01、550nm以上570nm以下の範囲にある極大吸収波長における吸光度(B)が0.97であった。したがって、(B)/(A)の値は0.96となり、下記式(1)の条件を満たしていた。
Figure 2007246890
また、インク22及びインク25をそれぞれイオン交換水で1,000倍に希釈して得られた希釈インクについて、分光光度計(商品名:U−3300、日立製作所製)を用いて、吸光度の測定を行った。得られた各希釈インクの吸収スペクトルから、各波長における吸光度を合算した。これを、吸光度を合算した吸収スペクトルとした。このとき、吸光度を合算した吸収スペクトルにおいて、450nm以上570nm以下の範囲における最大吸光度(C)が1.91、最小吸光度(D)が1.61であった。したがって、(D)/(C)の値は0.84となり、下記式(2)の条件を満たしていた。
Figure 2007246890
Figure 2007246890
<実施例15及び16、並びに比較例4〜7のインクセットを構成するインクの組み合わせ>
上記で得られたインク15、18〜23を、下記表6に示す組み合わせで用いて、実施例15及び16、並びに比較例4〜7のインクセットとした。なお、インク15に使用したグリーン顔料Dは、市販のC.I.ピグメントグリーン7に相当する。
Figure 2007246890
<実施例15及び16、並びに比較例4〜7のインクセットの評価>
実施例15及び16、比較例4〜7のインクセットを構成する各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)を、片方向記録を行うように改造したものに搭載した。そして、ISO/JIS−SCID高精細カラーデジタル標準画像のカラーチャートを記録した。なお、記録条件及び記録媒体は下記の通りである。
記録条件
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
記録媒体
・プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(キヤノン製)
(1)色再現範囲
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL***表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例15及び16のインクセットで形成した画像と、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像との、色面積を比較した。その結果、実施例15及び16のインクセットで形成した画像の色空間の面積は、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像の色空間の面積よりもはるかに大きかった。
(2)色バランス
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL***表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例15及び16のインクセットで形成した画像と、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像との、色バランスを目視で確認して比較した。その結果、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像の色バランスは、実施例15及び16のインクセットで形成した画像の色バランスと比較して、局所的に彩度が得られない部分(色バランスが崩れた部分)があった。
<実施例17及び比較例8のインクセットを構成するインクの組み合わせ>
上記で得られたインク18〜26を、下記表7に示す組み合わせで用いて、実施例17及び比較例8のインクセットとした。
Figure 2007246890
<実施例17及び比較例8のインクセットの評価>
実施例17及び比較例8のインクセットを構成する各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)を、片方向記録を行うように改造したものに搭載した。そして、ISO/JIS−SCID高精細カラーデジタル標準画像のカラーチャートを記録した。なお、記録条件及び記録媒体は下記の通りである。
記録条件
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
記録媒体
・プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(キヤノン製)
(1)色再現範囲
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL***表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例17のインクセットで形成した画像と、比較例8のインクセットで形成した各画像との、色面積を比較した。その結果、実施例17のインクセットで形成した画像の色空間の面積は、比較例8のインクセットで形成した各画像の色空間の面積よりもはるかに大きかった。
(2)色バランス
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL***表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例17のインクセットで形成した画像と、比較例8のインクセットで形成した各画像との、色バランスを目視で確認して比較した。その結果、比較例8のインクセットで形成した各画像の色バランスは、実施例17のインクセットで形成した画像の色バランスと比較して、局所的に彩度が得られない部分(色バランスが崩れた部分)があった。
インクジェット記録装置の斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部の斜視図である。 インクジェット記録装置の断面図である。 ヘッドカートリッジにインクカートリッジを装着する状態を示す斜視図である。 ヘッドカートリッジの分解斜視図である。 ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。 グリーン顔料の蛍光X線分析の結果の一例を示すグラフである。
符号の説明
M2041:分離ローラ
M2060:給紙トレイ
M2080:給紙ローラ
M3000:ピンチローラホルダ
M3030:ペーパーガイドフラッパー
M3040:プラテン
M3060:搬送ローラ
M3070:ピンチローラ
M3110:排紙ローラ
M3120:拍車
M3160:排紙トレイ
M4000:キャリッジ
M5000:ポンプ
M5010:キャップ
E0002:LFモータ
E0014:電気基板
H1000:ヘッドカートリッジ
H1001:記録ヘッド
H1100:第1の記録素子基板
H1101:第2の記録素子基板
H1200:第1のプレート
H1201:インク供給口
H1300:電気配線基板
H1301:外部信号入力端子
H1400:第2のプレート
H1500:タンクホルダー
H1501:インク流路
H1600:流路形成部材
H1700:フィルター
H1800:シールゴム
H1900:インクカートリッジ
H2000:イエローノズル列
H2100:マゼンタノズル列
H2200:シアンノズル列
H2300:レッドノズル列
H2400:ブラックノズル列
H2500:グリーンノズル列
H2600:ブルーノズル列

Claims (9)

  1. 少なくとも、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含有してなるインクジェット用の水性インクであって、
    前記グリーン顔料を蛍光X線分析することによって得られる塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が、3.3以上10.0以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記水性インクが、重量平均分子量が2,000以上5,000以下の範囲である樹脂を含有してなる請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記水性インクが、水溶性有機溶剤として少なくとも、重量平均分子量が1,000以上のポリエチレングリコールを含有する請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. 複数の水性インクを組み合わせてなるインクセットにおいて、
    該複数の水性インクが、少なくとも、グリーンインク、レッドインク、及びブルーインクを有してなり、
    前記グリーンインクの色材が、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン7であり、
    前記レッドインクの色材が、C.I.ピグメントレッド149であり、
    前記ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることを特徴とするインクセット。
  5. 複数の水性インクを組み合わせてなるインクジェット用のインクセットにおいて、
    該複数の水性インクが、少なくとも、グリーンインク、レッドインク、及びブルーインクを有してなり、
    前記グリーンインクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インクであり、
    前記レッドインクの色材が、C.I.ピグメントレッド149であり、
    前記ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることを特徴とするインクセット。
  6. インクジェット記録方式でインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  8. インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とする記録ユニット。
  9. インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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