JP2007246890A - 水性インク、インクセット、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含有してなるインクジェット用の水性インクであって、前記グリーン顔料を蛍光X線分析することによって得られる塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が、3.3以上10.0以下である水性インク。
【選択図】なし
Description
本発明で用いるグリーン顔料は、フタロシアニン骨格の水素原子の一部が塩素原子と臭素原子に置換された分子の集合体である。ここで、臭素原子の原子半径は塩素原子の原子半径に比べて大きい。このため、グリーン顔料における臭素原子の割合が高まるほど、より嵩高い分子の集合体となると考えられる。インクジェット用インクは、水性媒体を含む水性インクであり、顔料は水不溶性であるため、色材としての顔料は、顔料粒子表面に、樹脂(高分子分散剤)や界面活性剤、さらには親水性基などが吸着又は結合した状態でインク中に存在する。本発明者らの検討の結果、顔料を構成している分子が嵩高い程、この樹脂や界面活性剤、さらには親水性基などが、顔料表面に吸着又は結合しづらくなることがわかった。本発明者らは、さらなる詳細な検討の結果、グリーン顔料の場合には、蛍光X線分析で測定した塩素原子と臭素原子の各Kα線強度との割合により、樹脂や界面活性剤などが顔料表面に吸着又は結合しづらくなる範囲を定量化できることを見いだした。より具体的には、塩素原子のKα線強度の、臭素原子のKα線強度に対する割合が3.3よりも小さいグリーン顔料を用いた場合には、顔料表面の、樹脂などの親水性を高める物質が吸着又は結合している量が少なくなることがわかった。特に、親水性を高める物質として樹脂を用いた場合は、樹脂の分子量が大きい又は親水性が高い程、立体障害の影響を受けやすく、樹脂が顔料表面に吸着しづらいこともわかった。
一方、臭素原子に比べて塩素原子の原子半径は小さいため、臭素原子の割合が小さくなるほど、立体障害が小さくなると考えられる。その結果、樹脂や界面活性剤、さらには親水性基などの顔料表面の親水性を高める物質は、顔料表面に吸着又は結合しやすくなるので、分散安定性が良くなる傾向となるはずである。しかし、本発明者らの検討によれば、臭素原子の割合が小さくなりすぎると、より具体的には、塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が10.0より大きくなると、分散安定性は逆に低下する傾向になることがわかった。本発明者らは、この理由を以下のように推測している。顔料粒子は分子が幾重にも重なり合い1つの粒子を形成している。このとき、原子半径の大きい臭素原子の割合が少なすぎると、分子の対称性が向上するため、顔料粒子を構成している分子の結晶化が進行しやすくなることが原因であると考えている。すなわち、本発明者らは、結晶成長しすぎることで、分散しづらくなり、その結果、分散安定性が低下すると推測している。
本発明の前記した第1の目的を達成できるインクジェット用の水性インクは、下記の通りである。すなわち、蛍光X線分析によって得られる塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が3.3以上10.0以下である銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含んでなることを特徴とする。しかし、それ以外のインクの構成については、従来の、インクジェット用の水性顔料インクと同様とすればよい。下記に、本発明の水性インクを構成する各成分について説明する。
本発明の水性インク中における、色材であるグリーン顔料の含有量は、水性インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下、さらには、2.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。グリーン顔料の含有量が、1.0質量%未満であると、十分な光学濃度が得られない場合があり、10.0質量%を超えると、耐固着性が低下する場合がある。
本発明のインクを構成するグリーン顔料の分散方式は、いずれのものも用いることができる。具体的には、分散剤を用いて分散する樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)を用いることができる。また、顔料の表面を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化したマイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を用いることもできる。さらに、顔料粒子の表面に高分子を含有する有機基を化学的に結合した顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)を用いることもできる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて用いることも可能である。以下、これらの方式の顔料について説明する。
樹脂分散型顔料に用いる分散剤は、親水性基、特にはアニオン性基の作用により顔料を水性媒体に安定に分散することのできるものを用いることが好ましい。分散剤は、例えば、以下のものを用いることができる。スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体。スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体。ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体など。又はこれらの共重合体の塩など。
本発明では、顔料表面にイオン性基(例えば、アニオン性基)を結合することで、分散剤を用いることなく水性媒体に顔料を分散することができる自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料は、例えば、下記のようなアニオン性基が顔料表面に結合したアニオン性の顔料を挙げることができる。
本発明では、顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を用いることもできる。顔料をマイクロカプセル化する方法は、化学的製法、物理的製法、物理化学的製法、及び機械的製法などが挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法及び転相乳化法などが挙げられる。
本発明では、顔料粒子の表面に高分子を含有する有機基を化学的に結合した、ポリマー結合型自己分散顔料を用いることもできる。ポリマー結合型自己分散顔料は、グリーン顔料の表面に直接又は他の原子団を介して化学的に結合した官能基と、イオン性モノマー及び疎水性モノマーの共重合体との反応物を含むものを用いることが好ましい。
インクには、水又は水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体を用いることが好ましい。インク中における水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中における水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクは、前記で説明した成分の他に、さらに必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。例えば、尿素及び尿素誘導体、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの固体の保湿剤を用いることができる。さらに、所望の物性を有するインクとするために、アセチレングリコール誘導体などの界面活性剤、消泡剤、防腐剤、及び防黴剤などを用いることができる。
次に、色バランスに優れ、さらに広い色再現範囲の画像を形成することができるインクセットについて説明する。本発明者らは、グリーン顔料を含有するインクを含む複数の顔料インクで形成した画像における色再現範囲を、染料インクで形成した画像と同等に優れたものとすることを第2の目的として、様々な検討を行った。
前記したように、本発明のインクセットを構成するグリーンインクは、色材としてC.I.ピグメントグリーン7を含有することを特徴とする。グリーンインク中のC.I.ピグメントグリーン7の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下、さらには2.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクセットを構成するブルーインクは、色材としてC.I.ピグメントバイオレット23を含有することを特徴とする。ブルーインク中のC.I.ピグメントバイオレット23の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下、特には1.0質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクセットを構成するレッドインクは、色材としてC.I.ピグメントレッド149を含有することを特徴とする。当該レッドインク中のC.I.ピグメントレッド149の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上10.0質量%以下、さらには3.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクセットを構成するブルーインク、レッドインク、及びグリーンインクは、各インクに用いる顔料が、水又は水及び水溶性有機溶剤を含有する水性媒体中に分散してなるインクとすることが好ましい。これらの顔料を水性媒体中に分散する方法は、特に限られるものではなく、前記した本発明の水性インク(グリーン顔料を含有する水性インク)と同様の分散方式とすることができる。また、この際に、顔料を分散する分散剤も、前記した本発明の水性インクに用いる樹脂と同様のものを用いることができる。
本発明のインクセットを構成するブルーインク、レッドインク、及びグリーンインクに用いる水性媒体及びその他の添加剤は、上記したような本発明の水性インクに用いる水性媒体及びその他の添加剤と同様のものを用いることができる。また、この際の、水性媒体及びその他の添加剤の含有量も、前記した本発明の水性インクと同様とすることができる。
本発明のインクやインクセットを構成する各インクは、インクジェット記録方式でインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを付与することによりインクを吐出する方法や、インクに熱エネルギーを付与することによりインクを吐出する方法などがある。特に、本発明のインクやインクセットを構成する各インクは、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法に用いた場合に、顕著な効果を得ることができる。
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクやインクセットを構成する各インクを収容したインク収容部を備えたものであることを特徴とする。
本発明の記録ユニットは、本発明のインクやインクセットを構成する各インクを収容するインク収容部と、前記インクを吐出する記録ヘッドとを備えたものであることを特徴とする。特に、記録ヘッドが、熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出する記録ユニットである場合に、顕著な効果を得ることができる。
本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクやインクセットを構成する各インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えたものであることを特徴とする。特に、記録ヘッドが、熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出するインクジェット記録装置である場合に、顕著な効果を得ることができる。
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図4参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有する。そして、ヘッドカートリッジH1000は、キャリッジM4000(図2参照)に対して着脱可能に搭載される。
(グリーン顔料Aの調製)
撹拌機及びハロゲンガス導入管を有する反応器で、塩化アルミニウム180g及び塩化ナトリウム42gを、160℃で5時間、混合しながら加熱した。その後、さらに2時間撹拌した後、温度を100℃にして、60gの銅フタロシアニンを加えた。さらに、この反応器内に、10:1の割合の塩素ガスと臭素ガスを9g/hの流速で導入し、銅フタロシアニンのハロゲン化を行った。得られた物質を水中に排出し、洗浄、乾燥を行い、80gのグリーン顔料Aを得た。得られたグリーン顔料Aの蛍光X線分析を行って、塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を算出して、これらの割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)を求めた。結果を表1に示した。
上記したグリーン顔料Aの調製における、塩素ガスと臭素ガスの割合を変更すること以外は、グリーン顔料Aと同様にして、塩素原子と臭素原子の含有割合の異なるグリーン顔料B、C、D、及びEを調製した。なお、グリーン顔料における、塩素原子と臭素原子の含有割合は、銅フタロシアニンのハロゲン化の際に用いる塩素ガス及び臭素ガスの混合割合を適宜変えることにより変更した。ここで、一般に、塩素ガス及び臭素ガスの混合ガスにおいて、臭素ガスの含有量を増やすことで、銅フタロシアニン骨格に置換する臭素原子の含有割合が高くなる。そして、得られたグリーン顔料B、C、D、及びEの蛍光X線分析をそれぞれ行って、塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を算出して、これらの割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)を求めた。結果を表1に示した。
上記で得られた各グリーン顔料を用いて、下記の手順及び組成で各グリーン顔料分散体を調製した。
前記グリーン顔料Aを15部、分散剤を7.5部、及びイオン交換水を77.5部、を混合して顔料溶液を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量6,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Aを用いた。この顔料溶液をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mmのジルコニアビーズを85部充填し、水冷しながら3時間分散した。その後、遠心分離を行うことで粗大粒子を含む非分散物を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過することで、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%のグリーン顔料分散体1を調製した。
グリーン顔料Aに代えてグリーン顔料Bを用いること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体2を調製した。得られたグリーン顔料分散体2は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体3を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量5,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Bを用いた。得られたグリーン顔料分散体3は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体4を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量2,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Cを用いた。得られたグリーン顔料分散体4は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
前記グリーン顔料Bを15部、前記樹脂Bを6部、及びイオン交換水を79部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体5を調製した。得られたグリーン顔料分散体5は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が4質量%であった。
前記グリーン顔料Aを15部、前記樹脂Bを16.5部、及びイオン交換水を68.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体6を調製した。得られたグリーン顔料分散体6は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が11質量%であった。
前記グリーン顔料Cを15部、前記樹脂Aを7.5部、及びイオン交換水を77.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体7を調製した。得られたグリーン顔料分散体7は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体8を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量1,500のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Dを用いた。得られたグリーン顔料分散体8は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
分散剤である樹脂Aを代えること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体9を調製した。なお、前記分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として常法により合成した、酸価250、重量平均分子量5,000のランダムポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Eを用いた。得られたグリーン顔料分散体9は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
前記グリーン顔料Aを15部、前記樹脂Bを3部、及びイオン交換水を87部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体10を調製した。得られたグリーン顔料分散体10は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が2質量%であった。
前記グリーン顔料Dを15部、前記樹脂Aを7.5部、及びイオン交換水を77.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体11を調製した。得られたグリーン顔料分散体11は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
前記グリーン顔料Eを15部、前記樹脂Aを7.5部、及びイオン交換水を77.5部とすること以外は、グリーン顔料分散体1と同様にして、グリーン顔料分散体12を調製した。得られたグリーン顔料分散体12は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。
前記グリーン顔料Aを10部、前記樹脂Bを9部、及びイオン交換水を81部、を混合して顔料溶液を調製した。この顔料溶液を循環式ビーズミルに仕込み、0.3mmのジルコニアビーズを85部充填し、水冷しながら周速4m/秒で3時間分散した。その後、遠心分離を行うことで粗大粒子を含む非分散物を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過することで、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%のグリーン顔料分散体13を調製した。
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントグリーン36(製品名:リオノールグリーン6YK;東洋インキ製造製)を用い、分散時間を5時間とすること以外は、グリーン顔料分散体3と同様にして、グリーン顔料分散体14を調製した。得られたグリーン顔料分散体14は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が5質量%であった。なお、前記C.I.ピグメントグリーン36の蛍光X線分析を行って、塩素原子のKα線強度と臭素原子のKα線強度を算出して、これらの割合(塩素原子のKα線強度/臭素原子のKα線強度)を求めたところ、0.06であった。
市販の各顔料を用いて、下記の手順及び組成で各色の顔料分散体を調製した。
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントバイオレット23(製品名:Hostaperm Violet RL SP;クラリアント製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、ブルー顔料分散体1を調製した。得られたブルー顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントブルー60(製品名:Micracet Blue R;チバスペシャリティーケミカルス製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、ブルー顔料分散体2を調製した。得られたブルー顔料分散体2は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントレッド149(製品名:Hostaprint Red B 32;クラリアント製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、レッド顔料分散体1を調製した。得られたレッド顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
グリーン顔料Aに代えてC.I.ピグメントレッド177(製品名:クロモフタールレッドA2B;チバスペシャリティーケミカルス製)を用いること以外は、グリーン顔料分散体13と同様にして、レッド顔料分散体2を調製した。得られたレッド顔料分散体2は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
顔料を10部、分散剤を9部、及びイオン交換水を81部、を混合して顔料溶液を調製した。なお、前記顔料には、C.I.ピグメントイエロー74(製品名:Hansa Brilliant Yellow 5GX;クラリアント製)を用いた。また、前記分散剤には、スチレンとブチルアクリレートとアクリル酸を原料として常法により合成した、酸価202、重量平均分子量6,500のランダムポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Fを用いた。この顔料溶液をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mmのジルコニアビーズを150部充填し、水冷しながら12時間分散した。その後、遠心分離を行うことで粗大粒子を除去した。さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過することで、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%のイエロー顔料分散体1を調製した。
C.I.ピグメントイエロー74に代えてC.I.ピグメントレッド122(製品名:Hostaperm PinkE;クラリアント製)を用い、分散時間を3時間とすること以外は、イエロー顔料分散体1と同様にして、マゼンタ顔料分散体1を調製した。得られたマゼンタ顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
C.I.ピグメントイエロー74に代えてC.I.ピグメントブルー15:3(製品名:IRGALITE Blue 8700;チバスペシャリティーケミカルス製)を用いること以外は、イエロー顔料分散体1と同様にして、シアン顔料分散体1を調製した。得られたシアン顔料分散体1は、顔料の含有量(固形分)が10質量%、樹脂の含有量が9質量%であった。
下記表2及び表3に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、インク1〜17を調製した。なお、インク1〜14は本発明の実施例のインクであり、インク15〜17は比較例のインクである。また、表2及び表3中、樹脂MWとあるのは、樹脂の重量平均分子量のことである。
(1)吐出安定性
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)を、片方向記録を行うように改造したもののシアンインクのポジションに搭載した。その後、PPC用紙オフィスプランナー(キヤノン製)に、記録デューティを25、50、75、及び100%と、段階的に変化して、2cm×8cmのベタ画像をそれぞれ記録した。この際、プリンタドライバはデフォルトモードを選択した。そして、不吐出の様子や、得られたベタ画像の濃度や記録ムラの様子を目視で観察し、吐出安定性を評価した。吐出安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4に示す。
A:記録デューティ100%まで不吐出はないが、記録デューティ25%の画像において着弾位置のずれによる記録ムラが多少発生する。
B:記録デューティ100%まで不吐出はないが、記録デューティ25%の画像において着弾位置のずれ、及び、記録デューティ25%の画像において吐出体積の減少による画像濃度の低下が発生する。
C:記録デューティ100%において不吐出が発生するか、全てのノズルで不吐出はないがベタ画像にかすれが発生する。
上記で得られた各インクをそれぞれガラス瓶に入れて密栓し、60℃の温度に保ったオーブン中で3ケ月間保存した。その後、ガラス瓶をオーブンから取り出し、インクが常温になるまで放置した。そして、瓶の蓋を下にして立たせ、瓶の底にある付着物の量及び大きさを目視で確認した。保存前後における付着物の量及び大きさの違いで保存安定性を評価した。また、保存前後における各インクの粘度、表面張力、顔料の平均粒径及び吸光特性を、常法によって測定して、保存安定性を評価した。保存安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4に示す。
A:60℃での保存前と比較して、付着物の量の増加は見られないが、大きさがやや大きくなっていた。
B:60℃での保存前と比較して、付着物の量がやや増加していたが、インクの粘度、表面張力、平均粒径及び吸光特性にはほとんど変化がなかった。
C:60℃での保存前と比較して、付着物の量が大幅に増加し、かつ、インクの粘度、表面張力、平均粒径及び吸光特性のいずれかが60℃での保存前の値と比較して変化していた。
下記表5に示す各成分を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、インク18〜26を調製した。
上記で得られたインク15、18〜23を、下記表6に示す組み合わせで用いて、実施例15及び16、並びに比較例4〜7のインクセットとした。なお、インク15に使用したグリーン顔料Dは、市販のC.I.ピグメントグリーン7に相当する。
実施例15及び16、比較例4〜7のインクセットを構成する各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)を、片方向記録を行うように改造したものに搭載した。そして、ISO/JIS−SCID高精細カラーデジタル標準画像のカラーチャートを記録した。なお、記録条件及び記録媒体は下記の通りである。
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
記録媒体
・プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(キヤノン製)
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL*a*b*表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例15及び16のインクセットで形成した画像と、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像との、色面積を比較した。その結果、実施例15及び16のインクセットで形成した画像の色空間の面積は、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像の色空間の面積よりもはるかに大きかった。
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL*a*b*表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例15及び16のインクセットで形成した画像と、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像との、色バランスを目視で確認して比較した。その結果、比較例4〜7のインクセットで形成した各画像の色バランスは、実施例15及び16のインクセットで形成した画像の色バランスと比較して、局所的に彩度が得られない部分(色バランスが崩れた部分)があった。
上記で得られたインク18〜26を、下記表7に示す組み合わせで用いて、実施例17及び比較例8のインクセットとした。
実施例17及び比較例8のインクセットを構成する各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)を、片方向記録を行うように改造したものに搭載した。そして、ISO/JIS−SCID高精細カラーデジタル標準画像のカラーチャートを記録した。なお、記録条件及び記録媒体は下記の通りである。
・用紙の種類:プロフォトペーパー
・印刷品質:きれい
・色調整:自動
記録媒体
・プロフェッショナルフォトペーパーPR−101(キヤノン製)
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL*a*b*表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例17のインクセットで形成した画像と、比較例8のインクセットで形成した各画像との、色面積を比較した。その結果、実施例17のインクセットで形成した画像の色空間の面積は、比較例8のインクセットで形成した各画像の色空間の面積よりもはるかに大きかった。
上記で得られた画像について、Spectrolino(Gretag Macbeth製)を用いて、CIEで規定するL*a*b*表色系におけるa*値及びb*値を測定して、a*値及びb*値をプロットした。そして、実施例17のインクセットで形成した画像と、比較例8のインクセットで形成した各画像との、色バランスを目視で確認して比較した。その結果、比較例8のインクセットで形成した各画像の色バランスは、実施例17のインクセットで形成した画像の色バランスと比較して、局所的に彩度が得られない部分(色バランスが崩れた部分)があった。
M2060:給紙トレイ
M2080:給紙ローラ
M3000:ピンチローラホルダ
M3030:ペーパーガイドフラッパー
M3040:プラテン
M3060:搬送ローラ
M3070:ピンチローラ
M3110:排紙ローラ
M3120:拍車
M3160:排紙トレイ
M4000:キャリッジ
M5000:ポンプ
M5010:キャップ
E0002:LFモータ
E0014:電気基板
H1000:ヘッドカートリッジ
H1001:記録ヘッド
H1100:第1の記録素子基板
H1101:第2の記録素子基板
H1200:第1のプレート
H1201:インク供給口
H1300:電気配線基板
H1301:外部信号入力端子
H1400:第2のプレート
H1500:タンクホルダー
H1501:インク流路
H1600:流路形成部材
H1700:フィルター
H1800:シールゴム
H1900:インクカートリッジ
H2000:イエローノズル列
H2100:マゼンタノズル列
H2200:シアンノズル列
H2300:レッドノズル列
H2400:ブラックノズル列
H2500:グリーンノズル列
H2600:ブルーノズル列
Claims (9)
- 少なくとも、銅フタロシアニン骨格を有するグリーン顔料を含有してなるインクジェット用の水性インクであって、
前記グリーン顔料を蛍光X線分析することによって得られる塩素原子のKα線強度の臭素原子のKα線強度に対する割合が、3.3以上10.0以下であることを特徴とする水性インク。 - 前記水性インクが、重量平均分子量が2,000以上5,000以下の範囲である樹脂を含有してなる請求項1に記載の水性インク。
- 前記水性インクが、水溶性有機溶剤として少なくとも、重量平均分子量が1,000以上のポリエチレングリコールを含有する請求項1又は2に記載の水性インク。
- 複数の水性インクを組み合わせてなるインクセットにおいて、
該複数の水性インクが、少なくとも、グリーンインク、レッドインク、及びブルーインクを有してなり、
前記グリーンインクの色材が、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン7であり、
前記レッドインクの色材が、C.I.ピグメントレッド149であり、
前記ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることを特徴とするインクセット。 - 複数の水性インクを組み合わせてなるインクジェット用のインクセットにおいて、
該複数の水性インクが、少なくとも、グリーンインク、レッドインク、及びブルーインクを有してなり、
前記グリーンインクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インクであり、
前記レッドインクの色材が、C.I.ピグメントレッド149であり、
前記ブルーインクの色材が、C.I.ピグメントバイオレット23であることを特徴とするインクセット。 - インクジェット記録方式でインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
- インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
- インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とする記録ユニット。
- インクを収容するインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク又は請求項4或いは5のインクセットを構成する複数のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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