JP2007217507A - 水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置 - Google Patents

水性インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置 Download PDF

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哲 岩田
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Shuichi Okazaki
秀一 岡崎
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政史 辻村
Kohei Nakagawa
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Abstract

【課題】特定の顔料表面処理を行った顔料を色材として含有する水性インクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録方法に用いた際に、良好な吐出安定性が得られる水性インクを提供すること。
【解決手段】熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録方法に用いる水性インクであって、該水性インク中に、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料、水溶性有機溶剤、及び、分子中の無機基の数と有機基の数の比(界面活性剤の分子中における、無機基の数/有機基の数)が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤を含有することを特徴とする水性インク。
【選択図】なし

Description

本発明は、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料と水性媒体(水と水溶性有機溶剤の混合媒体を意味する)とを含有してなる水性インク(以下、インクという)に関する。更に、該インクを用いたインクジェット記録方法、該インクが収容されてなるインクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法によって得られるインク画像の、耐光性、耐ガス性、更には耐水性等を満足させるために、インク中に含有させる色材として顔料を用いることは周知のことである。近年では、顔料の種類によって、画像の耐光性や耐ガス性に差があることから、特に優れた耐光性や耐ガス性を与える顔料を選択してインクに使用することについての提案もある(特許文献1)。しかし、染料を含むインクジェット用インクに比べて、顔料を含むインクジェット用インクの場合は、インクを吐出させるためのノズル先端部からの水分蒸発に伴って、ノズル先端部やインク流路内で目詰まりを起こしやすいという課題がある。このような課題に対して、インク中に含有させる有機溶剤種を工夫したり、顔料又は顔料を分散する樹脂(高分子分散剤)の特性を規定する提案が数多くされている(例えば、特許文献2及び3参照)。
特開2004−217765号公報 特開平9−194780号公報 特開2003−147243号公報
本発明者らは、インクの信頼性(保存安定性や吐出安定性)に優れ、更に、画像品位(定着性や耐マーカー性)に優れたインクを提供することを目的として下記の検討を行った。顔料を水溶性樹脂(高分子分散剤)によって分散する樹脂分散型顔料や、顔料粒子の表面に親水基が直接若しくは他の原子団を介して結合している自己分散型顔料等の種々の色材を用い、様々な信頼性についての評価を行った。検討には、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させるサーマル型のインクジェット記録装置を用いた。その結果、顔料表面処理が異なる他は全く同じ材料及び工程を経て作られた顔料分散体、同じインク組成で作成したインク、であるにも関わらず、吐出特性(周波数応答性、安定した吐出体積、安定した吐出速度等)に差があることが判明した。後述するように、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である特定の顔料表面特性を有する顔料を含有してなるインクに、この傾向がみられた。
更に、上記した吐出特性に差が生じる原因が、従来より認知しているインク吐出口(オリフィス)において生じる目詰まりではなく、下記に述べる新たな現象に起因したものであることを確認した。即ち、インクをノズルから連続して吐出させると、インク流路内及び吐出口近傍に堆積物が付着し、ノズル内のインク流路を塞いでしまい、これが原因となって十分な吐出安定性を得ることができない場合があることがわかった。
従って、本発明の目的は、上記した特定の顔料表面特性を有する顔料を用いたインクでありながら、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録方法に用いた際に、良好な吐出安定性が得られるインクを提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明のインクは、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録方法に用いるインクであって、顔料、水溶性有機溶剤及び界面活性剤を少なくとも含有し、上記顔料の親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲であり、且つ、上記界面活性剤の親水性度(界面活性剤の分子中における、無機基の数と有機基の数の比(界面活性剤の分子中における、無機基の数/有機基の数))が、2.1以上3.2以下の範囲にあることを特徴とする。
又、本発明の別の実施態様は、熱エネルギーの作用によりインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、インクが、上記構成のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法である。
又、本発明の別の実施態様は、インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、収容されるインクが上記構成のインクであることを特徴とするインクカートリッジである。
又、本発明の別の実施態様は、インクを収容するインク収容部と、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、インクが、上記構成のインクであることを特徴とする記録ユニットである。
又、本発明の別の実施態様は、インクを収容するインク収容部と、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、インクが、上記構成のインクであることを特徴とするインクジェット記録装置である。
本発明によれば、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出させるインクジェット記録装置に、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料を含有してなるインクを用いた場合でも、先に述べた吐出性能の劣化が抑制され、信頼性に優れたインクが提供される。
以下、最良の実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明者らは、前記した課題を解決すべく検討していく過程で、顔料表面の親水性度δmと、サーマル型のインクジェット記録装置のインク流路内及び吐出口近傍に発生する堆積物との間に大きな相関があることを見出した。即ち、特に、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料を含有してなるインクを連続して吐出させた場合に、インク流路内及び吐出口近傍に堆積物が発生することがわかった。そこで、本発明者らは、このような表面特性を有する顔料を使用した場合であっても、良好な吐出性能を満足する信頼性の高いインクを提供することを目的として更なる検討を進めた。その結果、インク流路内及び吐出口近傍に堆積物が発生する現象と、上記のインク中に含有させた界面活性剤の分子構造との間に相関があることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成したものである。
[発明の経緯]
(課題の存在)
先ず、本発明に至った経緯を詳細に説明する。本発明者らは、従来より提案されているインクジェット用のインクを用いた場合に比べて、より高い、耐光性、耐ガス性、更には耐水性等を満足し得る画像を安定して与えることができる顔料インクの検討を進めた。その結果、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料を使用したインクを、特に、サーマル型のインクジェット記録装置のノズルから連続して吐出させた場合に、下記の現象が起こることを見出した。即ち、この場合に特に、インク流路内及び吐出口近傍に堆積物が付着し、該堆積物が吐出安定性を低下させるといった現象が生じることが確認された。そこで、本発明者らは、このような現象が起きる原因を追求した結果、上記のような表面特性を有する顔料とサーマル型のインクジェット記録方式を組み合わせた場合には、以下のような現象が起きているという結論に至った。
(堆積物が発生するメカニズム)
図1は、サーマル型のインクジェット記録装置を用いる場合に、吐出口の近傍における堆積物発生のメカニズムを示す模式図である。図1において、(a)はヒータ1上に膜状の気泡6が生成した状態である。又、(b)〜(h)はそれぞれ、(a)の状態から、(b)約1μ秒後、(c)約2.5μ秒後、(d)約3μ秒後、(e)約4μ秒後、(f)約4.5μ秒後、(g)約6μ秒後、(h)約9μ秒後、の状態を示す。尚、図1の(a)〜(h)において水平方向にハッチングを施した部分は、オリフィスプレート又は流路壁を示す。
先ず、図1の(a)に示すように、記録信号等に基づいたヒータ1への通電に伴い、ヒータ1上のインク流路2の内部に気泡6が生成する。この際、ヒータ1近傍のインクの温度は約200℃まで上昇する。そして、温度が上昇したインク中では、顔料分散体の分散破壊が起こり、顔料からの分散剤(樹脂)の剥離、顔料の小片化等の現象が起きる。その結果、分散状態が不安定になった顔料がインク中に混在して存在することになる。この時、顔料に対する樹脂の吸着力が特に弱い場合や、顔料が安定な分散状態を維持するために必要な量の樹脂等が顔料に吸着していない場合に分散破壊が起こる。そして、顔料の分散状態が不十分である顔料の多くは、下記のような状態となる。即ち、顔料からの樹脂の剥離、顔料の小片化、更には、インク中に樹脂等が溶解した状態へと変化する等の現象が、急速に、そして過剰に起きるため、分散状態が不安定になった顔料が数多く存在することになる。
その後、図1の(b)及び(c)に示すように、約2.5μ秒の間に、気泡6は急激にその体積が膨張する。これに伴って、温度が上昇したインクは冷却される。インクの温度が低下するのにつれて、分散状態が不安定になった顔料は分散状態を維持することができなくなり、顔料の凝集が起こり、インク中に析出する顔料が現れるようになる。このようにして析出した顔料の凝集物4の一部は、吐出口3からインク滴5中に含まれた状態で吐出されるものもあるが、インク流路2の内部に残留して、流路壁に付着するものもある。このように、図1の(a)〜(h)に示すインク吐出を繰り返すことで、インク中に析出した凝集物4が流路壁に堆積していくものと考えられる。
[解決手段]
本発明者らは、インクを連続して吐出した場合に、インク流路内及び吐出口近傍に堆積物が付着する現象は、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料以外のものを使用した場合でも発生することを確認している。これに対して、本発明者らの検討によれば、特定の構造を有する界面活性剤をインクに含有させることで得られる上記現象の抑制効果は、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料を用いた場合に特に顕著となる。具体的には、その分子中の無機基の数と有機基の数の比(分子中の無機基の数/分子中の有機基の数、以後、これを親水性度と記す)が2.1倍以上3.2倍以下の範囲である界面活性剤を、上記表面特性を有する顔料を含むインクに含有させることで上記課題を解決することができる。
[界面活性剤の作用]
(親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤の場合)
ここで、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料を含有するインクが、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤を含有することで、吐出性能が向上する理由について述べる。
図2は、サーマル型のインクジェット記録装置に本発明のインクを用いた場合における、ヒータの近傍において、インク中に含まれる親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤の作用を示す模式図である。図2において、(a)は、記録信号等に基づいたヒータへの通電が行われる前の状態、(b)は、ヒータへの通電が開始され、膜状の気泡が生成するまでの状態、(c)は、気泡の成長に伴ってインクが吐出されるまでの状態、をそれぞれ示す。図中の7は顔料、8はポリマー(樹脂)、9は界面活性剤をそれぞれ示す。
先ず、図2(a)に示すように、ヒータへの通電に伴いヒータの温度が上昇し、インク流路の内部においてインクの温度が上昇する。そして、温度が上昇したインク中では、上記したように顔料分散体の分散破壊が起こり、顔料7から、ポリマー8の剥離、顔料7の小片化、更には、インク中にポリマーが溶解した状態へと変化する等の現象が起こる。ここで、インクが、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤9を含有する場合、図2の(b)に示すように、顔料7において、ポリマー8が剥離した部分や小片化により顔料の表面が剥き出しになった部分に、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤9が配位する。その後、気泡の膨張に伴って、温度が上昇したインクは冷却される。ここで、インクが、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤9を含有する場合、図2の(c)に示すように、顔料7において、ポリマー8が剥離した部分や、小片化により顔料の表面が剥き出しになった部分に、該界面活性剤9が配位することになる。このため、凝集物を形成しづらい。又、たとえ、一部の顔料9が凝集したとしても、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤9が配位した凝集物は、親水性が高い状態となる。その結果、インク中で凝集体が析出することがなく、インクに含まれた状態でインク流路外に排出されると考えている。
ここで、従来のインク、即ち、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤を含有しないインクを用いる場合、以下のような現象が起きる。上記した場合と同様に、図2の(a)に示すように、ヒータへの通電に伴いヒータの温度が上昇し、インク流路の内部においてインクの温度が上昇する。そして、温度が上昇したインク中では、上記したように顔料分散体の分散破壊が起こり、顔料7から、ポリマー8の剥離、顔料7の小片化、更には、インク中に溶解した状態へと変化する等の現象が起こる。その後、気泡の膨張に伴って、温度が上昇したインクは冷却される。インクの温度が低下するのにつれて、分散状態が不安定になった顔料7は分散状態を維持することができなくなり、顔料の凝集が起こる。インクの吐出のたびに上記したことが繰り返されるため、顔料の凝集が更に進み、凝集物が析出して堆積物が生じる。
上記した親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤を含有する本発明のインクに対し、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料を含有するインクに、親水性度が2.1より小さい又は3.2より大きい界面活性剤を含有させても、本発明者らが求める吐出特性のレベルには達しなかった。本発明者らは、これらの構成のインクの場合に十分な効果が得られない原因を、それぞれ以下のように推測している。
(親水性度が2.1より小さい界面活性剤の場合)
親水性度が2.1より小さい界面活性剤は、比較的疎水性が高い。疎水性の高い界面活性剤は、水性媒体中でより安定に存在するために、界面活性剤の分子同士が集合してミセル状態を形成するか、若しくは、疎水性部を有する顔料表面等に吸着する傾向がある。一方、親水性度δmが21.5より大きい顔料は、その表面の親水性が比較的高いため、界面活性剤が顔料に吸着しづらい。よって、親水性度δmが21.5以上の親水性が高い顔料と、親水性度が2.1よりも小さい疎水性が高い界面活性剤との間では、該界面活性剤が顔料に配位するよりも、界面活性剤の分子同士が集合してミセル状態を形成する傾向にある。無論、すべての界面活性剤がミセルを形成するのではなく、一部は顔料表面に配位するため、親水性度が2.1よりも小さい界面活性剤の添加が、堆積物抑制に全く効果がないわけではない。しかしながら、親水性度が2.1よりも小さい界面活性剤によって堆積物を抑制するレベルは十分なものではなく、本発明者らが求める吐出特性のレベルには達し得ない。
(親水性度が3.2より大きい界面活性剤の場合)
一方、親水性度が3.2より大きい界面活性剤は、親水性が非常に高いため、水性媒体中で安定な状態で存在することが可能である。即ち、顔料を含有するインク中に親水性度が3.2より大きい界面活性剤を含有させたとしても、その多くは顔料表面に吸着することなく水性媒体中に溶解した形で存在する。その結果、図2(b)で示すような、顔料表面が剥き出しになった部分に界面活性剤が配位する作用を引き起こしにくい。このために、親水性度が3.2より大きい界面活性剤では、堆積物を抑制する効果を得ることができなかったものと推測している。
尚、インクを連続して吐出する場合、インク流路内及び吐出口近傍に堆積物が付着する現象は、顔料の分散方法に関わらずに発生することが確認されている。具体的には、インクの色材が樹脂分散型顔料及び自己分散型顔料のいずれの場合においても、同様な現象が発生することを確認している。上記した界面活性剤の作用は、樹脂分散型顔料を例に説明を行ったが、自己分散型顔料の場合も親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤であれば、顔料表面に配位するために同様な効果が得られることは言うまでもない。
[顔料の親水性度δm]
本発明で使用する顔料の親水性度δmの算出方法について、以下に説明する。本発明者らは、顔料の親水性度δmを、「色材」[62〔8〕,524−528(1989)]に記載のアセトン滴定方法によって算出した。即ち、攪拌子、イオン交換水50mlが入ったビーカーに、顔料0.1gを加え、渦ができない程度に緩やかに攪拌する。攪拌している状態で、ビュレットを用いてアセトンを滴下する。浮遊している顔料がぬれて、沈降するまでに要した時点でのアセトンの滴下量をAとし、下記の式(1)から顔料の親水性度δmを算出した。尚、下記式(1)中の23.43及び9.75は、上記した文献に記載されている水及びアセトンのSP値(溶解性パラメータ)である。
Figure 2007217507
尚、インク中で樹脂や表面改質によって分散している状態の顔料(以下、顔料分散体という)について、顔料親水性度を測定する場合も上記と同じ方法によって算出することが可能である。しかし、顔料分散体の場合は、顔料表面に物理吸着している樹脂を剥離させた状態で測定しなければならない。樹脂を剥離する手段は様々あるが、具体的には、以下の方法が考えられる。
顔料分散体を有するインクに対して、塩析若しくは凝析する方法が挙げられる。具体的には、樹脂或いは顔料粒子表面の官能基(以下、樹脂等)が有する有機基がアニオン性基を有する場合は、塩酸又は硫酸等の酸を添加し、有機基がカチオン性基を有する場合には水酸化ナトリウム等のアルカリを添加する。この結果、インク中の顔料及び樹脂等を塩析により沈澱させることができる。又、場合によってはアルコールを過剰に加えることで凝析して、インク中の顔料及び樹脂等を沈澱させることが可能である。
又、インク中の顔料を沈澱させる方法として、塩析若しくは凝析を組み合わせる、又、遠心分離を行う等とすることで、有効にインク中の顔料を取り出すことが可能である。上記操作によって得られた顔料を含む沈澱物をろ過により分取して、ろ過した固形分を純水で十分に洗浄し、洗浄後の顔料含有固形物を、60℃のオーブンで一晩程度乾燥させた。そして、得られた顔料含有乾固物を、物理吸着している樹脂等の良溶媒で洗浄した。良溶媒は、樹脂等の種類によって選択することが必要であるが、例えば、テトラヒドロフランやクロロホルムを使用することができる。そして、顔料含有乾固物の良溶媒による洗浄作業を3回繰り返した後、残存水分や残存溶剤を揮発させるために、真空乾燥機を用いて、数百Pa以下の真空度で60℃×3時間程度乾燥させた。以上のような方法によって、インク中から、顔料のみからなる乾固物を得ることができる。尚、上記でいう良溶媒とは、樹脂を容易に溶解できる水溶性有機溶剤のことである。
[界面活性剤の親水性度]
本発明でいう「界面活性剤の親水性度」とは、界面活性剤を構成している有機基と無機基の割合から算出された値(界面活性剤の分子中における、無機基の数/有機基の数)のことである。尚、本発明者らは、界面活性剤の親水性度を算出するに当たり、「有機概念図−基礎と応用−」甲田善生著(三井出版(1984))、「系統的有機訂正分析(混合物編)」藤田穆・赤塚政美著(風間書房(1974))、「染色理論化学」黒木宣彦著(槙書店(1966))、「ファインケミカルズ」飛田満彦・内田安三著(丸善(1990))、「有機化合物分離法」井上博夫・上原赫・南後守著(裳華房(1990))を参考資料として用いた。尚、参考資料において、定数ではない値に関しては、軽金属(塩)の無機性は500、重金属(塩)並びにアミン及びアンモニウム塩の無機性は400として算出した。
<インク>
本発明のインクは、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲である顔料と、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲にある界面活性剤とを含んでなることを特徴とするが、それ以外は、従来の顔料インクと同様の構成とすればよい。即ち、本発明の特徴は、上記したような表面特性を有する顔料を含むインクをインクジェット記録方法に用いた場合における特有の課題を解決することを目的とし、該目的をインク中に上記したような界面活性剤を含有させることで解決した点にある。下記に、本発明のインクを構成する各成分について説明する。
[顔料]
(種類)
本発明のインクに用いられる顔料は、親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲であれば特に限定されず、下記に挙げるようなものをいずれも用いることができる。但し、顔料の親水性度δmは、顔料の表面処理状態によって値が異なるため、単にカラーインデックス(C.I.)ナンバーだけで判別することはできない。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等をいずれも使用することができる。具体的には、以下に挙げるような市販品を使用することができる。
例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア製);
ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L;
モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000;
ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット製);
カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170;プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V;
スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ製);
No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)等。
又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックをいずれも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
カーボンブラック以外に使用される顔料粒子としては、各種の有機顔料粒子が挙げられる。有機顔料は、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;
リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;
アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;
フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;
キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;
ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;
イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;
ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料;
ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料;
インジゴ系顔料;
縮合アゾ系顔料;
チオインジゴ系顔料;
ジケトピロロピロール系顔料;
フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
又、本発明で使用することのできる有機顔料を、C.I.ナンバーにて示すと、例えば、下記のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185等;
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71等;
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、184、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272等;
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50等;
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64等;
C.I.ピグメントグリーン7、36等;
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等。
本発明においては、顔料の含有量は、インク全質量に対して、質量基準で、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、特には、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
(顔料の分散方式)
本発明のインクを構成する顔料の分散方式は、いずれのものを用いても構わない。具体的には、高分子分散剤や界面活性剤を用いて分散させる、いわゆる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、界面活性剤分散タイプの顔料をいずれも用いることができる。又、表面を改質して顔料自体の分散性を高めて、分散剤等を用いることなく分散可能とした、マイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した、いわゆる自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)を使用することもできる。更に、顔料粒子の表面に高分子を含有する有機基が化学的に結合している表面改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)等を用いることができる。勿論、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
(樹脂分散型顔料)
樹脂分散型顔料で使用される分散剤としては、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられる。分散剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体;
スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体;
スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体;
ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体;
或いはこれらの塩等が含まれる。
又、これらの分散剤としては、重量平均分子量が1,000以上30,000以下の範囲のものを使用することができるが、本発明においては、1,500以上6,000以下、より好ましくは2,000以上5,000以下の範囲とするとよい。重量平均分子量が2,000以上5,000以下の樹脂を分散剤として使用することは、通常の顔料インクにおいては非常にまれである。しかしながら、本発明においては、下記に述べるように、このように分子量が小さい樹脂を用いる方がより好ましい。先に述べたように、本発明のインクでは、界面活性剤が配位することで凝集物の析出が抑制されるが、樹脂の分子量が小さいが故に、顔料表面に界面活性剤が配位する際に、吸着している樹脂による立体障害を受け難いからである。この結果、インク流路内及び吐出口近傍の堆積物をより緩和することが可能になる。
更に、インク中に含有させる樹脂の含有量は、インク中の顔料の含有量に対して、質量基準で、30.0%以上90.0%以下であることが好ましい。樹脂の含有量が、顔料の含有量に対して30.0%よりも少ない場合は、顔料の分散安定性を長期にわたり保持することが難しい場合がある。又、90.0%より多い場合は、インク吐出時に界面活性剤が顔料表面に配位する作用の妨げとなってしまう。その理由を以下に記す。
樹脂分散型顔料を含むインク中には、通常、顔料に吸着していない樹脂が存在する。該樹脂は、常温下で放置されているインク中では顔料表面に対し着脱作用が起きている。一方、樹脂は顔料よりも耐熱性が低いため、ヒータへの通電に伴う温度上昇により一部の樹脂は分解されてしまう。その結果、常温下で放置されているインク中では顔料表面に対し着脱作用が起きていた樹脂も、吐出時の高温作用により分解してしまった樹脂は、顔料表面に吸着することができなくなる。即ち、インク中に浮遊した状態で存在することになる。インク中に浮遊している本来の形状を失った樹脂は、界面活性剤の顔料への配位の妨げとなる。その結果、顔料に対し80.0質量%以下の樹脂量である顔料分散体を含むインクと吐出特性を比較した場合に、これよりも樹脂量の多い顔料分散体を含むインクは、やや効果のレベルが低下する傾向があったものと本発明者らは推測している。
(自己分散型顔料)
本発明のインク中に含有させる顔料としては、顔料表面にイオン性基(例えば、アニオン性基)を結合させることで、分散剤なしで水性媒体に分散させることのできる顔料、いわゆる自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料は、例えば、下記のようなアニオン性基が顔料表面に結合したアニオン性の顔料を挙げることができる。
アニオン性の自己分散型顔料としては、顔料の表面に、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32から選ばれる少なくとも1つのアニオン性基を結合させたものが挙げられる。上記式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。
(マイクロカプセル型顔料)
本発明のインク中に含有させる顔料としては、顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を使用することもできる。顔料を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法は、化学的製法、物理的製法、物理化学的製法及び機械的製法等が挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法及び転相乳化法等が挙げられる。
(ポリマー結合型自己分散顔料)
本発明のインク中に含有させる顔料としては、先に述べたように、顔料自体の分散性を高めた、分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散顔料も使用可能である。この分散剤を用いないポリマー結合型自己分散顔料は、顔料の表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むものを用いることが好ましい。
[親水性度が2.1以上3.2以下の範囲の界面活性剤]
以下、本発明のインク中に含有させる、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤について説明する。本発明のインクに用いる親水性度が2.1以上3.2以下の範囲の界面活性剤とは、いわゆる表面活性を示す物質である。例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、表面活性を示す水溶性有機溶剤から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。より具体的には、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム;
ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等が挙げられる。中でも特に、ドデシル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ドデジルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
尚、本発明のインクに含有させる界面活性剤は、親水性度が2.1以上3.2以下の範囲であれば、上記以外の物質でも問題はない。又、本発明のインク中に含有させる界面活性剤は、勿論、その親水性度が2.1以上3.2以下の範囲である界面活性剤を単独で使用してもよいが、それを添加することによる効果が得られ、且つ、本発明の効果を損なわない限り、他の界面活性剤と併用しても構わない。
本発明のインク中に含有させる親水性度が2.1以上3.2以下の範囲の界面活性剤の含有量は、インク中の顔料の含有量に対し、質量基準で、0.40倍以上であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、顔料に対して0.40倍以上とすることで、インク流路内及び吐出口近傍に堆積物が目視では確認できない程低減することが可能とできる。又、本発明のインク中に含有させる親水性度が2.1以上3.2以下の範囲の界面活性剤の含有量は、インク中の顔料の含有量に対し、質量基準で、2.0倍以下、更には1.0倍以下であることが好ましい。但し、親水性度が2.1以上の界面活性剤は非常に泡立ち易い。従って、本発明のインク中に含有される親水性度が2.1以上3.2以下の範囲の界面活性剤の含有量の上限は、インク全質量に対して、質量基準で3.0質量%以下で含有させるようにすることが好ましい。又、インク中に含有される親水性度が2.1以上3.2以下の範囲の界面活性剤の含有量の下限は、0.04質量%、更には0.4質量%とすることが好ましい。
(水溶性有機溶剤)
本発明のインクは、上述した特定の顔料と界面活性剤とを少なくとも含有し、これらを分散或いは溶解する水溶性有機溶剤を含む水性媒体とによって得られる。水性媒体、必要に応じて更に含有させる添加剤は、従来のインクジェット用インクを構成するものをいずれも使用することができる。水性媒体としては、水及び下記に挙げるような水溶性有機溶剤からなる混合媒体を使用することが好ましい。
例えば、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノール等の炭素数が、1乃至4のアルカノール;
N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;
アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン、又は、ケトアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、
1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジチオグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、
アセチレングリコール誘導体、トリメチロールプロパン等のような多価アルコール類;
エチレングリコールモノメチル(或いはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(或いはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリン等の複素環類;
ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;
尿素、及び、尿素誘導体等が好適な例として挙げられる。
上記した中でも特に、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、2−ピロリドンを用いることが好ましい。上記のごとき水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。尚、上記水溶性有機溶剤において、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等は表面活性を示す物質であるため、本発明においては、界面活性剤としても機能する。
又、前記したように、本発明においては、顔料を、重量平均分子量1,500以上6,000以下、更には、2,000以上5,000以下の範囲の樹脂で分散させることが好ましい。更に、この場合には、水溶性有機溶剤として、分子量が1,000以上のポリエチレングリコールを含有させることが好ましい。この理由は定かではないが、このような形態のインクを連続して吐出させて検討した結果、吐出特性において、より良好な結果が得られた。
本発明のインク中に含有させる水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、質量基準で、3.0質量%以上50.0質量%以下の範囲で含有させることが好ましい。
(水及びその他の添加剤)
本発明のインクに使用する水としては、脱イオン水を使用することが好ましい。又、インクに含有される水の含有量は、インク全質量に対して、質量基準で、50.0質量%以上95.0質量%以下の範囲であることが好ましい。本発明のインクは、上記で説明した成分のほかに、更に必要に応じて保湿剤を添加することができる。更に、所望の物性値を持つインクとするために、前記した以外の界面活性剤、消泡剤、防腐剤及び防黴剤等を、適宜に添加してもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクは、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する工程を有するインクジェット記録方法に用いるものである。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを吐出させる記録方法、及びインクに熱エネルギーを作用させてインクを吐出させる記録方法等がある。特に、本発明のインクは、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法に用いた場合に、顕著な効果が得られる。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、本発明のインクを収容したインク収容部を備えたものであることを特徴とする。
<記録ユニット>
本発明の記録ユニットは、本発明のインクを収容するインク収容部と、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するための記録ヘッドとを備えたものであることを特徴とする。特に、記録ヘッドが、記録信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる記録ユニットである場合に、本発明の顕著な効果が得られる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、本発明のインクを収容するインク収容部と、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するための記録ヘッドとを備えたものであることを特徴とする。特に、記録ヘッド室内のインクに、記録信号に対応した熱エネルギーを与え、該熱エネルギーによりインク液滴を発生させる方式の装置であることが好ましい。
以下に、インクジェット記録装置の機構部の概略構成を説明する。記録装置本体は、各機構の役割から、給紙部、用紙搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部及びこれらを保護し、意匠性を持たす外装部から構成されている。以下、これらの概略を説明していく。
図3は、記録装置の斜視図である。又、図4及び図5は、記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、図4は右上部からの斜視図、図5は記録装置本体の側断面図をそれぞれ示したものである。
記録装置において給紙を行う際には、先ず、給紙トレイM2060を含む給紙部において記録媒体の所定枚数のみが、給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる(図5参照)。送られた記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される(以上、図4及び図5参照)。
キャリッジ部では記録媒体に画像を形成する場合、記録ヘッドH1001(図6参照)を目的の画像形成位置に配置させ、電気基板E0014(図4参照)からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッドH1001についての詳細な構成は後述するが、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000(図4参照)が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラM3060(図4及び図5参照)により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体上に画像を形成していく構成となっている。
最後に画像を形成された記録媒体は、排紙部で第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ(図5参照)、搬送されて排紙トレイM3160(図3参照)に排出される。
クリーニング部において、画像記録前後の記録ヘッドH1001をクリーニングする目的のために、キャップM5010(図4参照)を記録ヘッドH1001のインク吐出口に密着させた状態で、ポンプM5000(図4参照)を作用させると、記録ヘッドH1001から不要なインク等が吸引されるようになっている。又、キャップM5010を開けた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引することにより、残インクによる固着及びその後の弊害が起こらないように配慮されている。
(記録ヘッド構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図6参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段、及びインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有しており、キャリッジM4000(図4参照)に対して着脱可能に搭載される。
図6は、ヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。記録装置は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、淡マゼンタ、淡シアン、及びグリーンインクによって画像を形成し、従ってインクタンクH1900も7色分が独立に用意されている。上記において、少なくとも一種のインクに、本発明のインクを用いる。そして、図に示すように、それぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。尚、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000(図4参照)にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
図7は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図を示したものである。図において、ヘッドカートリッジH1000は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、第2のプレートH1400、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700及びシールゴムH1800等から構成されている。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAl等の電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路も又、フォトリソグラフィ技術により形成されている。更に、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図8は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明するための正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインク色に対応する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、イエローインクの供給されるノズル列H2000、マゼンタインクの供給されるノズル列H2100、及びシアンインクの供給されるノズル列H2200の3色分のノズル列が構成されている。第2の記録素子基板H1101には、淡シアンインクの供給されるノズル列H2300、ブラックインクの供給されるノズル列H2400、グリーンインクの供給されるノズル列H2500、及び淡マゼンタインクの供給されるノズル列H2600の4色分のノズル列が構成されている。
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向に1,200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成され、約2ピコリットルのインクを吐出させる。各ノズル吐出口における開口面積は、およそ100μm2に設定されている。以下、図6及び図7を参照して説明する。上記した第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。
更に、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持している。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加するものであり、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し記録装置本体からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有している。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
一方、インクタンクH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が、例えば、超音波溶着により固定され、インクタンクH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成している。
インクタンクH1900と係合するインク流路H1501のインクタンク側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。又、インクタンクH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
更に、前述のようにタンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700及びシールゴムH1800から構成されるタンクホルダー部と、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される記録ヘッド部H1001とを、接着等で結合することにより、ヘッドカートリッジH1000が構成されている。
尚、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッドについて一例を挙げて述べた。
この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、いわゆる、オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長・収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
又、本発明のインクは、上記のインクジェット方式に限らず、下記に述べるような、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置においても使用することができる。かかる形態の装置は、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備えてなる。そして、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させる。このようなものとしては、オンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。
インクジェット記録装置は、上述のようにヘッドとインクタンクとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。又、インクタンクはヘッドに対し分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えば、チューブを介して記録ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。更に、記録ヘッドに対し好ましい負圧を作用させるための構成をインクタンクに設ける方法としては、下記のものが挙げられる。例えば、インクタンクのインク収容部に吸収体を配置した形態、或いは可撓性のインク収容袋とこれに対しその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態等、を採用することができる。又、記録装置は、上述のようにシリアル記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。尚、以下の記載で「部」及び「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
[各顔料の親水性度δm]
表1に記載した各顔料について、下記の方法で顔料の親水性度δmを求めた。先ず、攪拌子、イオン交換水50mlが入ったビーカーに、測定する顔料0.1gを加え、渦ができない程度に緩やかに攪拌した。攪拌している状態で、ビュレットを用いてアセトンを滴下し、浮遊している顔料が完全に沈下した時点でのアセトンの滴下量をAとした。そして、この滴下量Aを用いて下記の式(1)から顔料の親水性度δmをそれぞれ算出した。得られた結果を表1に示した。尚、下記式(1)中の23.43及び9.75は、前記で説明した文献に記載されている水及びアセトンのSP値(溶解性パラメータ)である。
Figure 2007217507
Figure 2007217507
[界面活性剤の親水性度]
各界面活性剤を構成する有機基と無機基の割合から算出された値を下記の表2に示す。
Figure 2007217507
[顔料分散液の調製]
(バイオレット顔料分散液1)
顔料には、C.I.ピグメントバイオレット23(製品名:Hostaperm Violet RL SP;クラリアント製)を用いた。先に測定したように、この顔料の親水性度δmは21.9であった。顔料の分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として、酸価250、重量平均分子量5,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Aを用いた。そして、先ず、上記顔料を10部と、上記樹脂Aを9部と、更にイオン交換水81部を加えて混合して、循環式のビーズミル分散機を用いて常法に従って周速8m/secで3時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過してバイオレット顔料分散液1を得た。このバイオレット顔料分散液1は、顔料濃度(顔料固形分)が10質量%、樹脂濃度が9質量%であった。
(バイオレット顔料分散液2)
顔料には、バイオレット顔料分散液1の調製に用いたと同様のC.I.ピグメントバイオレット23を使用した。顔料の分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として、酸価250、重量平均分子量6,000のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Bを用いた。そして、先ず、上記顔料を10部と、上記樹脂Bを8部と、更にイオン交換水82部を混合し、常法に従って循環式のビーズミル分散機を用いて周速8m/secで3時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過してバイオレット顔料分散液2を得た。このバイオレット顔料分散液2は、顔料濃度(顔料固形分)が10質量%、樹脂濃度が9質量%であった。
(バイオレット顔料分散液3)
顔料には、バイオレット顔料分散液1の調製に用いたと同様のC.I.ピグメントバイオレット23を使用した。顔料の分散剤には、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として、酸価250、重量平均分子量1,500のAB型ブロックポリマーを水酸化カリウム水溶液で中和して得られた樹脂Cを用いた。そして、先ず、上記顔料を10部と、上記樹脂Cを8部と、更にイオン交換水82部を混合し、常法に従って循環式のビーズミル分散機を用いて周速8m/secで3時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、更にポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過してバイオレット顔料分散液3を得た。このバイオレット顔料分散液3は、顔料濃度(顔料固形分)が10質量%、樹脂濃度が9質量%であった。
(シアン顔料分散液1)
顔料には、C.I.ピグメントブルー15:3(製品名:IRGALITE Blue 8700、チバスペシャルティー製)を用いた。先に測定したように、この顔料の親水性度δmは22.0であった。顔料の分散剤には、バイオレット顔料分散液1の調製で用いたと同様の樹脂Aを使用した。そして、先ず、上記顔料を10部と、上記樹脂Aを8部と、更にイオン交換水82部を加えて混合して、循環式のビーズミル分散機を用いて常法に従って周速8m/secで3時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過してシアン顔料分散液1を得た。このシアン顔料分散液1は、顔料濃度(顔料固形分)が10質量%、樹脂濃度が9質量%であった。
(イエロー顔料分散液1)
顔料には、C.I.ピグメントイエロー180(製品名:Novoperm Yellow H2G、クラリアント製)を用いた。先に測定したように、この顔料の親水性度δmは23.4であった。顔料の分散剤には、バイオレット顔料分散液1の調製で用いたと同様の樹脂Aを使用した。そして、先ず、上記顔料を10部と、上記樹脂Aを8部と、更にイオン交換水82部を加えて混合して、循環式のビーズミル分散機を用いて常法に従って周速8m/secで3時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過してイエロー顔料分散液1を得た。このイエロー顔料分散液1は、顔料濃度(顔料固形分)が10質量%、樹脂濃度が9質量%であった。
(ブラック顔料分散液1)
顔料には、カーボンブラック(製品名:モナク880、クラリアント製)を用いた。先に測定したように、この顔料の親水性度δmは22.7であった。顔料の分散剤には、バイオレット顔料分散液1の調製で用いたと同様の樹脂Aを使用した。そして、先ず、上記顔料を10部と、上記樹脂Aを8部と、更にイオン交換水82部を加えて混合して、循環式のビーズミル分散機を用いて常法に従って周速8m/secで3時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過してブラック顔料分散液1を得た。このブラック顔料分散液1は、顔料濃度(顔料固形分)が10質量%、樹脂濃度が9質量%であった。
(マゼンタ顔料分散液1)
顔料には、C.I.ピグメントレッド184(製品名:Permanent Rubine F6B、クラリアント製)を用いた。先に測定したように、この顔料の親水性度δmは21.2であり、本発明で規定する範囲から外れている。顔料の分散剤には、バイオレット顔料分散液1の調製で用いたと同様の樹脂Aを使用した。そして、先ず、上記顔料を10部と、上記樹脂Aを8部と、更にイオン交換水82部を加えて混合して、循環式のビーズミル分散機を用いて常法に従って周速8m/secで3時間分散させた。その後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、更に、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過してマゼンタ顔料分散液1を得た。このマゼンタ顔料分散液1は、顔料濃度(顔料固形分)が10質量%、樹脂濃度が9質量%であった。
[インクの調製]
上記で得た各顔料分散液を用い、下記のようにしてインク1〜14を調製した。表3の上段に示した各成分組成を混合し、十分攪拌して溶解及び分散した後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過して、インク1〜14をそれぞれ得た。尚、下記表3−1及び表3−2において、ポリエチレングリコールは、重量平均分子量が1,000のものを用いた。
Figure 2007217507
Figure 2007217507
[評価]
(1)連続吐出安定性
上記で得られた各インク1〜14を、熱エネルギーの作用によりインクを吐出させるインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)に搭載して、A4用紙200枚に、19cm×26cmのベタパターンを印字した。そして、200枚目の印字後にノズルチェックパターンを印字して、得られたノズルチェックパターンを目視で観察して連続吐出安定性を評価した。連続吐出安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果は、表4にまとめて示した。
(評価基準)
A:チェックパターンに乱れがなく、正常に印字できる。
B:チェックパターンに若干の乱れはあるが、不吐出はない。
C:チェックパターンに不吐出や乱れがはっきりと確認され、正常に印字できない。
(2)堆積物
上記で得た各インク1〜14を、熱エネルギーの作用によりインクを吐出させるインクジェット記録装置PIXUS990i(キヤノン製)にそれぞれ搭載して、A4用紙200枚に、19cm×26cmのベタパターンを印字した。そして、200枚目の印字後に、記録ヘッドをインクジェット記録装置から取り外して、ノズル内を光学顕微鏡で観察し、堆積物の有無を調べた。更に、印字前(初期)と、200枚目の印字後にそれぞれ任意のノズル50個を選択し、各ノズルより40,000発のインクを吐出させ、この吐出前後におけるインク1滴当たりの質量を下記のようにして求めた。先ず、40,000発の吐出前後におけるインクタンクの質量変化を測定し、吐出させた全インク滴の数から、インク1滴当たりの質量を測定した。そして、印字前と、200枚目における質量との変化率をそれぞれ求め、これを用いて評価した。堆積物の評価基準は下記の通りである。評価結果を表4にまとめて示した。
(評価基準)
A:堆積物がほとんどない。
B:堆積物がノズル壁に少し存在することが確認された。しかし、インク1滴当たりの質量は、印字前と、200枚目の印刷時とを比較して、変化率が5.0%未満であった。
C:堆積物がノズル内に全体的に存在することが確認された。更に、インク1滴当たりの質量は、印字前と、200枚目の印刷時とを比較して、変化率が5.0%以上であった。
Figure 2007217507
尚、実施例5、6、8、9、比較例10、11及び参考例1の堆積物の評価結果は同じである。しかしながら、19×26cmのベタパターンを200枚印字した後の全ノズルについて堆積物の発生の様子を比較すると、比較例及び参考例に比べて、実施例の堆積物の量は明らかに少なかった。
堆積物発生のメカニズムを示す模式図である。 界面活性剤の作用を示す模式図である。 記録装置の斜視図である。 記録装置の機構部の斜視図である。 記録装置の断面図である。 ヘッドカートリッジにインクタンクを装着する状態を示す斜視図である。 ヘッドカートリッジの分解斜視図である。 ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。
符号の説明
1:ヒータ
2:インク流路
3:吐出口
4:凝集物
5:インク滴
6:気泡
7:顔料
8:ポリマー(樹脂)
9:界面活性剤
M2041:分離ローラ
M2060:給紙トレイ
M2080:給紙ローラ
M3000:ピンチローラホルダ
M3030:ペーパーガイドフラッパー
M3040:プラテン
M3060:搬送ローラ
M3070:ピンチローラ
M3110:排紙ローラ
M3120:拍車
M3160:排紙トレイ
M4000:キャリッジ
M5000:ポンプ
M5010:キャップ
E0002:LFモータ
E0014:電気基板
H1000:ヘッドカートリッジ
H1001:記録ヘッド
H1100:第1の記録素子基板
H1101:第2の記録素子基板
H1200:第1のプレート
H1201:インク供給口
H1300:電気配線基板
H1301:外部信号入力端子
H1400:第2のプレート
H1500:タンクホルダー
H1501:インク流路
H1600:流路形成部材
H1700:フィルター
H1800:シールゴム
H1900:インクタンク
H2000:イエローノズル列
H2100:マゼンタノズル列
H2200:シアンノズル列
H2300:淡シアンノズル列
H2400:ブラックノズル列
H2500:グリーンノズル列
H2600:淡マゼンタノズル列

Claims (8)

  1. 熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録方法に用いる水性インクであって、顔料、水溶性有機溶剤及び界面活性剤を少なくとも含有し、上記顔料の親水性度δmが21.5以上23.4以下の範囲であり、且つ、上記界面活性剤の親水性度(界面活性剤の分子中における、無機基の数と有機基の数の比)が、2.1以上3.2以下の範囲にあることを特徴とする水性インク。
  2. 前記界面活性剤のインク中における含有量が、前記顔料のインク中における含有量に対して質量基準で0.40倍以上である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記顔料が、重量平均分子量が2,000以上5,000以下の樹脂によって分散されている請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. 前記水溶性有機溶剤が、少なくとも平均分子量が1,000以上のポリエチレングリコールを含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
  5. 熱エネルギーの作用によりインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法において、上記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  6. インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジにおいて、上記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  7. インクを収容するインク収容部と、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するための記録ヘッドとを備えた記録ユニットにおいて、上記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とする記録ユニット。
  8. インクを収容するインク収容部と、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するための記録ヘッドとを備えたインクジェット記録装置において、上記インクが、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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