JP2007246519A - 光学活性カルボン酸化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、アシル化カンファースルタムから安全にかつ安価に対応する光学活性カルボン酸化合物を製造できる方法を提供する。
【解決手段】光学活性なアシル化カンファースルタムを、分枝アルカノールの存在下、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液で処理して加水分解することで、安全かつ安価に対応する光学活性カルボン酸化合物を製造する方法。
【選択図】なし
【解決手段】光学活性なアシル化カンファースルタムを、分枝アルカノールの存在下、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液で処理して加水分解することで、安全かつ安価に対応する光学活性カルボン酸化合物を製造する方法。
【選択図】なし
Description
本発明は光学活性カルボン酸化合物の製造方法に関する。更に詳しくは、アシル化カンファースルタムを加水分解して対応する光学活性カルボン酸化合物を製造する方法に関する。
上記のような光学活性カルボン酸を効率よく製造する方法として、アシル化カンファースルタムを用いる方法が開発されている。たとえば、特許文献1には、(1)アシル化カンファースルタムを、水混和性溶媒中、過酸(過酸化水素の水溶液)の存在下、水酸化アルカリ金属で処理する方法、および(2)アシル化カンファースルタムを水混和性有機溶媒中、過酸(たとえば、過酸化水素の水溶液)存在下に、水酸化テトラアルキルアンモニウム(たとえば、水酸化テトラブチルアンモニウム)で処理する方法が開示されている。
前記(1)または(2)の方法により、N−[(2S)−2−(2−プロペニル)オクタノイル]−(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムから(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸[実施例3]が、N−[(2S)−2−(2−プロピニル)オクタノイル]−(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムから(2S)−2−(2−プロピニル)オクタン酸[実施例8(a)、(b)]が、またN−[(2R)−2−プロピルオクタノイル]−(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムから(2R)−2−プロピルオクタン酸[実施例6]が製造されている。
しかしながら、前記(1)の方法は、アシル化カンファースルタムが、例えばN−[(2S)−2−(2−プロペニル)オクタノイル]−(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムである場合、効率よく加水分解されず、カンファースルタムの回収率も低く、しかもイミン体であるカンファースルホニミンを含むため、回収して再利用するにはナトリウムボロヒドリド(SBH)などで還元する必要があるなど、工業的には好ましい方法ではない。
また、前記(2)の方法では、酸素が発生し、爆発の恐れがあるため、引火点の低い溶媒系では大量の窒素ガスを流すことで安全なレベルまで酸素濃度を下げる必要があり、工業的に実施するには問題があった。また、溶媒の引火点を上げて爆発の危険を避けるには、ジグライムなどの高価な溶媒を使用しなければならず、工業的に実施するにはやはり問題があった。
本発明の課題は、アシル化カンファースルタムの加水分解を安全にかつ安価に実施して対応する光学活性カルボン酸化合物を製造でき、しかも副生するカンファースルタムを高収率で回収できる新規な方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、アシル化カンファースルタムを加水分解して対応する光学活性カルボン酸化合物を製造するに際して、塩基に水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いると、過酸化水素(H2O2)などの過酸を使用しなくても、イソプロパノール、第三級ブタノールなどの安価な分枝アルカノールの存在下で、効率良くかつ安全に加水分解が進行し、しかも高純度のカンファースルタムを高い収率で回収できることを見出し、更に検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は次の通りである。
(1)一般式[I]
(式中、Rは少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基を表す。)
で示されるアシル化カンファースルタムを、分枝アルカノールの存在下、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液で処理して加水分解することを特徴とする一般式[II]
(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で示される光学活性カルボン酸化合物の製造方法、
(1)一般式[I]
で示されるアシル化カンファースルタムを、分枝アルカノールの存在下、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液で処理して加水分解することを特徴とする一般式[II]
で示される光学活性カルボン酸化合物の製造方法、
(2)アルカリ土類金属水酸化物が水酸化バリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウムである前記(1)記載の方法、
(3)分枝アルカノールが二級アルカノールまたは三級アルカノールである前記(1)または(2)記載の方法、
(4)分枝アルカノールがイソプロパノールまたは第三級ブタノールである前記(1)または(2)記載の方法、
(5)アルカリ土類金属水酸化物が水酸化バリウムまたは水酸化カルシウムであり、分枝アルカノールがイソプロパノールである前記(1)記載の方法、
(6)Rが、アルキル基、アルコキシ基、保護されていてもよい水酸基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、保護されていてもよいアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、オキソ基、アルキルチオ基、およびアリールチオ基からなる群より選択される少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(7)炭化水素基が、飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基、または飽和もしくは不飽和の環式炭化水素基である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法、
(8)飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基が、直鎖もしくは分枝アルキル基、直鎖もしくは分枝アルケニル基、または直鎖もしくは分枝アルキニル基である前記(7)記載の方法、
(9)Rが、少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な分枝アルケニル基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(10)Rが、式
(式中、R1はC1〜C10のアルキル基を表し、R2はC1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基、またはC2〜C6のアルキニル基を表し、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(11)R2がC2〜C6のアルケニル基である前記(10)記載の方法、
(3)分枝アルカノールが二級アルカノールまたは三級アルカノールである前記(1)または(2)記載の方法、
(4)分枝アルカノールがイソプロパノールまたは第三級ブタノールである前記(1)または(2)記載の方法、
(5)アルカリ土類金属水酸化物が水酸化バリウムまたは水酸化カルシウムであり、分枝アルカノールがイソプロパノールである前記(1)記載の方法、
(6)Rが、アルキル基、アルコキシ基、保護されていてもよい水酸基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、保護されていてもよいアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、オキソ基、アルキルチオ基、およびアリールチオ基からなる群より選択される少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(7)炭化水素基が、飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基、または飽和もしくは不飽和の環式炭化水素基である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の方法、
(8)飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基が、直鎖もしくは分枝アルキル基、直鎖もしくは分枝アルケニル基、または直鎖もしくは分枝アルキニル基である前記(7)記載の方法、
(9)Rが、少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な分枝アルケニル基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(10)Rが、式
で示される基である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(11)R2がC2〜C6のアルケニル基である前記(10)記載の方法、
(12)一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタムが、式[I−A]
(式中、*は不斉炭素原子を表す。)
で示されるアシル化カンファースルタムであり、一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物が式[II−A]
(式中、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性2−(2−プロペニル)オクタン酸である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(13)式[II−A]で示される光学活性2−(2−プロペニル)オクタン酸および式[I−A]で示されるアシル化カンファースルタムにおける2−プロペニル基が結合している不斉炭素原子の立体配置がS配置である前記(12)記載の方法、
(14)分枝アルカノールがイソプロパノールであり、アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである前記(12)または(13)記載の方法、および
で示されるアシル化カンファースルタムであり、一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物が式[II−A]
で示される光学活性2−(2−プロペニル)オクタン酸である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の方法、
(13)式[II−A]で示される光学活性2−(2−プロペニル)オクタン酸および式[I−A]で示されるアシル化カンファースルタムにおける2−プロペニル基が結合している不斉炭素原子の立体配置がS配置である前記(12)記載の方法、
(14)分枝アルカノールがイソプロパノールであり、アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである前記(12)または(13)記載の方法、および
本発明の方法によれば、アシル化カンファースルタムの加水分解を安全にかつ安価に実施して対応する光学活性カルボン酸が製造でき、しかも高純度のカンファースルタムを高収率で回収できる。
本発明によれば、一般式[I]
(式中、Rは少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基を表す。)
で示されるアシル化カンファースルタムを、分枝アルカノールの存在下、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液で処理して加水分解することにより、一般式[II]
(式中、Rは前記と同一意味を有する。)
で示される光学活性カルボン酸化合物を製造することができる。
で示されるアシル化カンファースルタムを、分枝アルカノールの存在下、アルカリ土類金属水酸化物の水溶液で処理して加水分解することにより、一般式[II]
で示される光学活性カルボン酸化合物を製造することができる。
本発明の原料化合物である一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタムにおいて、カンファースルタム部分は、(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムであっても、(1R)−(+)−2,10−カンファースルタムであってもよい。
また、本発明の原料化合物である一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタムにおいて、Rで示される基は「少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基」である。
“少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基”における「炭化水素基」としては、飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基、または、飽和もしくは不飽和の環式炭化水素基が挙げられる。ここで、飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基としては、例えば、直鎖もしくは分枝アルキル基、直鎖もしくは分枝アルケニル基、または直鎖もしくは分枝アルキニル基などが挙げられる。これらの基における炭素原子の総数は20以下、好ましく16以下である。具体的には、例えば、式
(式中、R1はC1〜C10のアルキル基を表し、R2はC1〜C6のアルキル基、C2〜C6のアルケニル基、またはC2〜C6のアルキニル基を表し、*は不斉炭素原子を表す。)で示される基が挙げられ、より具体的には、例えば、式
(式中、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される基が挙げられる。
“少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基”における「炭化水素基」としては、飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基、または、飽和もしくは不飽和の環式炭化水素基が挙げられる。ここで、飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基としては、例えば、直鎖もしくは分枝アルキル基、直鎖もしくは分枝アルケニル基、または直鎖もしくは分枝アルキニル基などが挙げられる。これらの基における炭素原子の総数は20以下、好ましく16以下である。具体的には、例えば、式
で示される基が挙げられる。
また、飽和もしくは不飽和の環式炭化水素基としては、例えば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基などが挙げられる。これらの基における炭素原子の総数は20以下、好ましくは12以下である。具体的には、例えば、
(式中、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される基が挙げられる。
で示される基が挙げられる。
また、“少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基”における「置換基」としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、オキソ基、アルキルチオ基、アリールチオ基などが挙げられる。これら置換基のうち、アルコキシ基はC1〜C6のアルコキシ基が挙げられ、アリール基、アリールオキシ基およびアリールチオ基におけるアリール部分としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、アラルキルオキシ基におけるアラルキル部位としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられ、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキルチオ基におけるアルキル部分としては、例えばC1〜C6のアルキル基が挙げられ、アシルアミノ基におけるアシル基としては、例えばC2〜C6のアルカノイル基が挙げられる。また、前記の置換基は同一または異なって前記炭化水素基に1個ないし複数個置換していてもよい。なお、これら置換基の置換により、前記の「炭化水素基」に不斉を持たせてもよい。
本発明の加水分解反応に溶媒として使用される「分枝アルカノール」としては、C3〜C6の第二級アルカノール(例えば、イソプロパノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコールなど)またはC4〜C6の第三級アルカノール(第三級ブタノール、第三級ペンタノールなど)が挙げられる。これらのうち、イソプロパノール、第三級ブタノールが好ましく、イソプロパノールが最も好ましい。
また、本発明の加水分解反応に使用される「アルカリ土類金属水酸化物」としては、例えば、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムなどが挙げられ、これらのうち、水酸化バリウムまたは水酸化カルシウムが好ましく、水酸化カルシウムが最も好ましい。
本発明の加水分解反応に使用されるアルカリ土類金属水酸化物の使用量は、一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタム1モルに対して、0.5〜5.0モル、好ましくは1.0〜3.0モル、さらに好ましくは1.0〜2.5モル、特に好ましくは1.0〜2.0モルの範囲にあるのが好ましい。一方、分枝アルカノールの使用量は、一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタムを溶解するに十分な量であればよいが、通常、一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタム100重量部に対して、300〜1500容量部、好ましくは400〜800容量部である。
本発明の加水分解反応は、一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタム、分枝アルカノール、水、アルカリ土類金属水酸化物を混合するか、あるいは一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタムの分枝アルカノール溶液とアルカリ土類金属水酸化物の水溶液を予め調製して置き、この両液を混合し、混合物を加熱することによって好適に実施できる。加熱する温度(反応温度)は、40℃から溶媒の還流温度の範囲にあるのが好ましく、50℃から溶媒の還流温度の範囲にあるのがより好ましい。
かくして、反応液中に、加水分解物である一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物が生成される。この一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物は、必要により、適当な塩(例えば、シクロヘキシルアミンなどの有機アミンとの塩)に変換したのち、例えば、冷却、晶析、濾過などにより、一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物またはその塩として単離することができる。例えば、加水分解後の反応液から粗製の一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物を取得し、そのヘプタン溶液をシクロヘキシルアミンまたはその溶液に20℃前後で滴下したのち、冷却し、析出する結晶をろ取することにより、高純度の一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物をシクロヘキシルアミン塩として単離することができる(XRDチャートを示せば図1、図2)。得られた塩は常法により遊離の一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物とすることができる。
また、反応液中には、副生物としてカンファースルタムが生成するが、反応終了液からのカンファースルタムの単離・精製は常法にしたがって実施できる。単離・精製したカンファースルタムは一般式[I]で示されるアシル化カンファースルタムの製造のために再利用することができる。
なお、前記本発明方法により得られる一般式[II]で示される光学活性カルボン酸化合物が、例えば(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸またはその塩(例えば、シクロヘキシルアミン塩)である場合、該化合物は、国際公開第99/58513号パンフレットや国際公開第00/48982号パンフレットに記載の方法に準じて還元することにより、医薬として有用な(2R)−2−プロピルオクタン酸またはその塩に導くことができる。
次に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。また、後記実施例および比較例で使用する原料化合物であるN−[(2S)−2−(2−プロペニル)オクタノイル]−(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムは、構造式
で示され、IUPAC命名法により命名すると、(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドである。また、副生する(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムは、IUPAC命名法により命名すると、(3aS,6R,7aR)−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドである。さらに、比較例で(1S)−(−)−2,10−カンファースルタムに混在してくる(1S)−(−)−2,10−カンファースルホニミン(イミン体)は、構造式
で示され、IUPAC命名法により命名すると、(3aS,6R)−8,8−ジメチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドである。
[実施例1]
(1)(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩の製造(水酸化カルシウム法)
丸底コルベンに(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド40.00g(0.104mol)、イソプロパノール200ml、水76ml、水酸化カルシウム15.53g(0.210mol)を仕込んだ後、還流(約82℃)まで昇温して、同温度に16時間保温した。反応混合物を水80mlと35%塩酸54.60g(0.524mol)の混合液の中に、10〜24℃で滴下した。これにメチルtert−ブチルエーテル200mlを流入し、10分間攪拌した後、分液によって水層を除去し、有機層を水200mlで2回洗浄した。有機層の内、0.103mol相当を減圧濃縮した後、残渣にn−ヘプタンを135ml加え、減圧濃縮する操作を3回繰り返し行った。次にn−ヘプタン135mlを加え、結晶をろ過し、n−ヘプタン39.7mlで洗浄し、減圧乾燥して(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム21.34g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対し95.0%、GC面百値99.47%)を回収した。
(1)(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩の製造(水酸化カルシウム法)
丸底コルベンに(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド40.00g(0.104mol)、イソプロパノール200ml、水76ml、水酸化カルシウム15.53g(0.210mol)を仕込んだ後、還流(約82℃)まで昇温して、同温度に16時間保温した。反応混合物を水80mlと35%塩酸54.60g(0.524mol)の混合液の中に、10〜24℃で滴下した。これにメチルtert−ブチルエーテル200mlを流入し、10分間攪拌した後、分液によって水層を除去し、有機層を水200mlで2回洗浄した。有機層の内、0.103mol相当を減圧濃縮した後、残渣にn−ヘプタンを135ml加え、減圧濃縮する操作を3回繰り返し行った。次にn−ヘプタン135mlを加え、結晶をろ過し、n−ヘプタン39.7mlで洗浄し、減圧乾燥して(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム21.34g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対し95.0%、GC面百値99.47%)を回収した。
一方、ろ液は濃縮して、n−ヘプタンを加えて(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液71.69g(0.103mol相当)を得た。この内、0.099mol相当を(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩に誘導した。
すなわち、丸底コルベンに酢酸エチル273ml、シクロヘキシルアミン8.81g(0.089mol)を仕込み、上記で得た(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液10.19g(0.015mol相当)を20℃で30分間かけて滴下した後、20〜21℃で1時間撹拌した。これに、さらに(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液57.76g(0.084mol相当)を20〜21℃で2時間30分かけて滴下した。次いで冷却し、−3〜3℃で1時間保冷し、析出した結晶をろ過し、冷やした酢酸エチル73mlで洗浄を行い、減圧乾燥して(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩23.03g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率82.3%;光学純度:100%)を得た。
すなわち、丸底コルベンに酢酸エチル273ml、シクロヘキシルアミン8.81g(0.089mol)を仕込み、上記で得た(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液10.19g(0.015mol相当)を20℃で30分間かけて滴下した後、20〜21℃で1時間撹拌した。これに、さらに(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液57.76g(0.084mol相当)を20〜21℃で2時間30分かけて滴下した。次いで冷却し、−3〜3℃で1時間保冷し、析出した結晶をろ過し、冷やした酢酸エチル73mlで洗浄を行い、減圧乾燥して(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩23.03g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率82.3%;光学純度:100%)を得た。
(2)回収カンファースルタムの精製
丸底コルベンに回収した(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム10.00g(0.046mol)、イソプロパノール10ml、活性炭0.30gを仕込んだ後、還流(81〜82℃)まで昇温して、同温度に30分間保温後、活性炭をろ過し、加熱したイソプロパノール5mlで洗浄した。ろ液に水20.0mlを81〜83℃で1時間かけて滴下した後、50℃まで冷却し晶析を確認後、49〜50℃で30分間撹拌した。次いで、冷却し、2〜5℃で1時間保冷し、析出した結晶をろ過し、冷やしたイソプロパノール水(イソプロパノール3.8ml、水5ml)で洗浄を行い、減圧乾燥して(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム7.61g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率72.3%、GC面百値100.0%、含量101.4%)を得た。
丸底コルベンに回収した(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム10.00g(0.046mol)、イソプロパノール10ml、活性炭0.30gを仕込んだ後、還流(81〜82℃)まで昇温して、同温度に30分間保温後、活性炭をろ過し、加熱したイソプロパノール5mlで洗浄した。ろ液に水20.0mlを81〜83℃で1時間かけて滴下した後、50℃まで冷却し晶析を確認後、49〜50℃で30分間撹拌した。次いで、冷却し、2〜5℃で1時間保冷し、析出した結晶をろ過し、冷やしたイソプロパノール水(イソプロパノール3.8ml、水5ml)で洗浄を行い、減圧乾燥して(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム7.61g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率72.3%、GC面百値100.0%、含量101.4%)を得た。
なお、本実施例および後記実施例2ならびに比較例1において、GC分析は島津GC−17A[カラム:C4A−802(GLサイエンス社)、検出:FID]を用いて行った。
[実施例2]
(1)(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩の製造(水酸化バリウム法)
丸底コルベンに(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド40.00g(0.104mol)、イソプロパノール200ml、水45.8ml、水酸化バリウムの8水和物66.14g(0.210mol)を仕込んだ後、50℃まで昇温して、同温度に3時間保温した。反応混合物を水160mlと35%塩酸54.60g(0.524mol)の混合液の中に、10〜24℃で滴下した。これにメチルtert−ブチルエーテル200mlを流入し、10分間攪拌した後、分液によって水層を除去し、有機層を水200mlで1回、食塩水202.0g(水200ml、食塩2.0g)で1回洗浄した。有機層の内、0.103mol相当を減圧濃縮した後、残渣にn−ヘプタンを135ml加え減圧濃縮した。次にn−ヘプタン135mlを加え、結晶をろ過し、n−ヘプタン39.7mlで洗浄し、減圧乾燥して(3aS,6R,7aR)−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド、すなわち(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム19.94g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対し88.9%、GC面百値99.14%)を回収した。一方、ろ液は濃縮して、n−ヘプタンで調整して(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液71.69g(0.103mol相当)を得た。この内、0.099mol相当を(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩に誘導した。
(1)(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩の製造(水酸化バリウム法)
丸底コルベンに(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド40.00g(0.104mol)、イソプロパノール200ml、水45.8ml、水酸化バリウムの8水和物66.14g(0.210mol)を仕込んだ後、50℃まで昇温して、同温度に3時間保温した。反応混合物を水160mlと35%塩酸54.60g(0.524mol)の混合液の中に、10〜24℃で滴下した。これにメチルtert−ブチルエーテル200mlを流入し、10分間攪拌した後、分液によって水層を除去し、有機層を水200mlで1回、食塩水202.0g(水200ml、食塩2.0g)で1回洗浄した。有機層の内、0.103mol相当を減圧濃縮した後、残渣にn−ヘプタンを135ml加え減圧濃縮した。次にn−ヘプタン135mlを加え、結晶をろ過し、n−ヘプタン39.7mlで洗浄し、減圧乾燥して(3aS,6R,7aR)−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド、すなわち(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム19.94g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対し88.9%、GC面百値99.14%)を回収した。一方、ろ液は濃縮して、n−ヘプタンで調整して(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液71.69g(0.103mol相当)を得た。この内、0.099mol相当を(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩に誘導した。
別途、丸底コルベンに酢酸エチル273ml、シクロヘキシルアミン8.81g(0.089mol)を仕込み、(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液10.19g(0.015mol相当)を20℃で30分間かけて滴下した後、20〜21℃で1時間撹拌した。(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液57.76g(0.084mol相当)を20〜21℃で2時間30分かけて滴下した。冷却し−3〜3℃で1時間保冷して結晶をろ過し、冷やした酢酸エチル73mlで洗浄を行い、減圧乾燥して(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩22.67g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率81.0%;光学純度:100%)を得た。
(2)回収カンファースルタムの精製
丸底コルベンに回収(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム10.00g(0.046mol)、イソプロパノール10ml、活性炭0.30g仕込んだ後、還流(81〜82℃)まで昇温して、30分間保温後、活性炭をろ過し、加熱したイソプロパノール5mlで洗浄した。ろ液に水20.0mlを81〜82℃で1時間かけて滴下した後、50℃まで冷却し晶析を確認後、49〜50℃で30分撹拌した。次いで、冷却し、2〜5℃で1時間保冷して結晶をろ過し、冷やしたイソプロパノール水(イソプロパノール3.8ml、水5ml)で洗浄を行い、減圧乾燥して(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム7.39g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率65.7%、GC面百値100.0%、含量101.4%)を得た。
丸底コルベンに回収(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム10.00g(0.046mol)、イソプロパノール10ml、活性炭0.30g仕込んだ後、還流(81〜82℃)まで昇温して、30分間保温後、活性炭をろ過し、加熱したイソプロパノール5mlで洗浄した。ろ液に水20.0mlを81〜82℃で1時間かけて滴下した後、50℃まで冷却し晶析を確認後、49〜50℃で30分撹拌した。次いで、冷却し、2〜5℃で1時間保冷して結晶をろ過し、冷やしたイソプロパノール水(イソプロパノール3.8ml、水5ml)で洗浄を行い、減圧乾燥して(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム7.39g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率65.7%、GC面百値100.0%、含量101.4%)を得た。
[実施例3〜6]
(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド100重量部を用い、実施例1または実施例2と同様にして、下記表1に示した条件で、加水分解を行った。反応液中に生成した(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸の量をLCにて測定し、生成率を算出した。その結果は下記表1の通りである。
(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド100重量部を用い、実施例1または実施例2と同様にして、下記表1に示した条件で、加水分解を行った。反応液中に生成した(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸の量をLCにて測定し、生成率を算出した。その結果は下記表1の通りである。
実施例3〜6で生成した(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸をそれぞれシクロヘキシミルアミン塩に誘導し、光学純度を測定したところ、いずれも光学純度100%であった。
[比較例1]
(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩の製造(過酸化水素/水酸化カリウム法)
丸底コルベンに(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド40.00g(0.105mol)、ジグライム160mlを仕込み、反応終了まで酸素濃度を5%以下とする目的で窒素を吹き込みながら17℃に冷却した。35%過酸化水素水0.51g(0.005mol)流入した後、35%過酸化水素水15.79g(0.162mol)、48%水酸化カリウム水溶液19.61g(0.168mol)を17℃で9時間かけて併注し、17℃で2時間撹拌して、反応の終了をHPLCで確認した。
別途、コック付きコルベンに室温で亜硫酸ナトリウム21.14g(0.168mol)、水110mlを仕込んで溶かし、35%塩酸58.97g(0.566mol)を9〜10℃で滴下し、ここに先の反応混合物を5〜12℃で1時間かけて滴下した。21℃まで昇温して、同温度で35分間撹拌した後、メチルtert−ブチルエーテル200mlを流入し、10分間撹拌して、分液によって水層を除去した。有機層を食塩水(食塩1.60g/水道水200ml)で洗浄した後、n−ヘプタン2.40g、食塩水(食塩1.60g/水道水200ml)を加え15分間攪拌して、分液によって水層を除去し、洗浄の終了をGCで確認した。有機層を常圧濃縮し、得られた残渣にn−ヘプタン240mlを加えて、濃縮残渣が約160mlとなるまで減圧濃縮した。次いで冷却し、0〜10℃で30分撹拌した後、結晶をろ過し、n−ヘプタン40mlで洗浄し、減圧乾燥してカンファースルタム6.48g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対し28.7%、GC面百値98.23%)を回収した。 なお、回収したカンファースルタムには(1S)−2,10−カンファースルホニミン(イミン体)を含み、これは精製によっては除去できなかった。
(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩の製造(過酸化水素/水酸化カリウム法)
丸底コルベンに(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド40.00g(0.105mol)、ジグライム160mlを仕込み、反応終了まで酸素濃度を5%以下とする目的で窒素を吹き込みながら17℃に冷却した。35%過酸化水素水0.51g(0.005mol)流入した後、35%過酸化水素水15.79g(0.162mol)、48%水酸化カリウム水溶液19.61g(0.168mol)を17℃で9時間かけて併注し、17℃で2時間撹拌して、反応の終了をHPLCで確認した。
別途、コック付きコルベンに室温で亜硫酸ナトリウム21.14g(0.168mol)、水110mlを仕込んで溶かし、35%塩酸58.97g(0.566mol)を9〜10℃で滴下し、ここに先の反応混合物を5〜12℃で1時間かけて滴下した。21℃まで昇温して、同温度で35分間撹拌した後、メチルtert−ブチルエーテル200mlを流入し、10分間撹拌して、分液によって水層を除去した。有機層を食塩水(食塩1.60g/水道水200ml)で洗浄した後、n−ヘプタン2.40g、食塩水(食塩1.60g/水道水200ml)を加え15分間攪拌して、分液によって水層を除去し、洗浄の終了をGCで確認した。有機層を常圧濃縮し、得られた残渣にn−ヘプタン240mlを加えて、濃縮残渣が約160mlとなるまで減圧濃縮した。次いで冷却し、0〜10℃で30分撹拌した後、結晶をろ過し、n−ヘプタン40mlで洗浄し、減圧乾燥してカンファースルタム6.48g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対し28.7%、GC面百値98.23%)を回収した。 なお、回収したカンファースルタムには(1S)−2,10−カンファースルホニミン(イミン体)を含み、これは精製によっては除去できなかった。
一方、ろ液は減圧濃縮して、n−ヘプタンを加えて(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液72.17g(0.105mol相当)を得た。この内、0.087mol相当を(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩に誘導した。
丸底コルベンに酢酸エチル241ml、シクロヘキシルアミン7.78g(0.078mol)を仕込み、(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液9.00g(0.013mol相当)を20℃で30分間かけて滴下した後、20〜21℃で1時間撹拌した。(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液51.00g(0.074mol相当)を20℃で2時間30分かけて滴下した。次いで冷却し、−3〜3℃で1時間保冷して結晶をろ過し、冷やした酢酸エチル64mlで洗浄を行い、減圧乾燥して(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩20.29g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率82.1%;光学純度:100%)を得た。
丸底コルベンに酢酸エチル241ml、シクロヘキシルアミン7.78g(0.078mol)を仕込み、(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液9.00g(0.013mol相当)を20℃で30分間かけて滴下した後、20〜21℃で1時間撹拌した。(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸/ヘプタン溶液51.00g(0.074mol相当)を20℃で2時間30分かけて滴下した。次いで冷却し、−3〜3℃で1時間保冷して結晶をろ過し、冷やした酢酸エチル64mlで洗浄を行い、減圧乾燥して(2S)−2−(2−プロペニル)オクタン酸シクロヘキシルアミン塩20.29g((3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドに対して、収率82.1%;光学純度:100%)を得た。
[原料製造例]
(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドの製造
(1)(3aS,6R,7aR)−8,8−ジメチル−1−オクタノイルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド
丸底コルベンに(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム80g、メチルtert−ブチルエーテル236.4g、4−ジメチルアミノピリジン2.27gおよびトリエチルアミン41.36gを加え、室温でカプリル酸クロリド63.46gを滴下した。1時間攪拌後、35%塩酸7.75gと水200gの混合液に反応液を加え、有機層を分液した。25%水酸化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄し、有機層を減圧濃縮し、標記化合物125.34gを得た。(品質99.7%(GC分析法))。
なお、GC分析は、島津GC−14A[カラム:5%Silicone OV−17(GLサイエンス社)、検出:FID]を用いて行った。
(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシドの製造
(1)(3aS,6R,7aR)−8,8−ジメチル−1−オクタノイルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド
丸底コルベンに(1S)−(−)−2,10−カンファースルタム80g、メチルtert−ブチルエーテル236.4g、4−ジメチルアミノピリジン2.27gおよびトリエチルアミン41.36gを加え、室温でカプリル酸クロリド63.46gを滴下した。1時間攪拌後、35%塩酸7.75gと水200gの混合液に反応液を加え、有機層を分液した。25%水酸化ナトリウム水溶液、次いで水で洗浄し、有機層を減圧濃縮し、標記化合物125.34gを得た。(品質99.7%(GC分析法))。
なお、GC分析は、島津GC−14A[カラム:5%Silicone OV−17(GLサイエンス社)、検出:FID]を用いて行った。
(2)(3aS,6R,7aR)−1−[(2S)−2−アリルオクタノイル]−8,8−ジメチルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド
前記(1)で得た化合物にメチルtert−ブチルエーテル92.75gを加え全量218.09gとした。窒素雰囲気下、丸底コルベンに、前記で得た(3aS,6R,7aR)−8,8−ジメチル−1−オクタノイルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド/メチルtert−ブチルエーテル溶液213.92g、1,3−ジメチルイミダゾリジノン61.64g、テトラヒドロフラン226.24gを仕込み、−72℃に冷却した。これに、17.15%n−BuLi/n−ヘキサン溶液143.94gを−72〜−66℃で滴下した後、同温で30分攪拌した。−74〜−69℃で臭化アリル65.33gを滴下し、−20℃まで昇温して同温で15時間反応させた。反応の終了をLCで確認した。−5℃まで昇温し、−5〜1℃で2時間撹拌した(反応液A)。
丸底コルベンに水241g、35%塩酸45.00g(0.431mol)を仕込み、19〜21℃で先の反応液Aを滴下し、テトラヒドロフラン22.93gにて洗い込みをして分液した。水258.2gに食塩2.58gを溶解した食塩水で有機層を洗浄し、分液した。有機層を減圧濃縮し、残渣にイソプロパノール764.59gを加え、再度減圧濃縮した。残渣にイソプロパノール522.02gを加えて65℃に昇温して溶解し、水681gを滴下した。冷却して57℃で2時間撹拌した。10℃まで徐々に冷却し、5〜10℃で1時間撹拌し、結晶をろ過した。得られた結晶をイソプロパノール86.82gと水61.5gの混液で洗浄し、減圧乾燥した。この結晶105.00gにイソプロパノール675.88gを加え、昇温して溶解し、水315gを滴下した。冷却して57℃で2時間撹拌した。10℃まで徐々に冷却し、5〜10℃で1時間撹拌し、析出した結晶をろ過し、イソプロパノール65.94gと水31.5gの混液で洗浄し、減圧乾燥して標記化合物99.7g(カンファースルタムからの収率:74.7%、品質:99.9%d.e(HPLCにて分析))を得た。
なお、HPLC分析は島津LC−10AVP[カラム:CHIRALCELL OJ−RH(ダイセル化学)、移動相:アセトニトリル水溶液、波長:210nm]を用いて行った。
前記(1)で得た化合物にメチルtert−ブチルエーテル92.75gを加え全量218.09gとした。窒素雰囲気下、丸底コルベンに、前記で得た(3aS,6R,7aR)−8,8−ジメチル−1−オクタノイルヘキサヒドロ−3a,6−メタノ−2,1−ベンゾイソチアゾール 2,2−ジオキシド/メチルtert−ブチルエーテル溶液213.92g、1,3−ジメチルイミダゾリジノン61.64g、テトラヒドロフラン226.24gを仕込み、−72℃に冷却した。これに、17.15%n−BuLi/n−ヘキサン溶液143.94gを−72〜−66℃で滴下した後、同温で30分攪拌した。−74〜−69℃で臭化アリル65.33gを滴下し、−20℃まで昇温して同温で15時間反応させた。反応の終了をLCで確認した。−5℃まで昇温し、−5〜1℃で2時間撹拌した(反応液A)。
丸底コルベンに水241g、35%塩酸45.00g(0.431mol)を仕込み、19〜21℃で先の反応液Aを滴下し、テトラヒドロフラン22.93gにて洗い込みをして分液した。水258.2gに食塩2.58gを溶解した食塩水で有機層を洗浄し、分液した。有機層を減圧濃縮し、残渣にイソプロパノール764.59gを加え、再度減圧濃縮した。残渣にイソプロパノール522.02gを加えて65℃に昇温して溶解し、水681gを滴下した。冷却して57℃で2時間撹拌した。10℃まで徐々に冷却し、5〜10℃で1時間撹拌し、結晶をろ過した。得られた結晶をイソプロパノール86.82gと水61.5gの混液で洗浄し、減圧乾燥した。この結晶105.00gにイソプロパノール675.88gを加え、昇温して溶解し、水315gを滴下した。冷却して57℃で2時間撹拌した。10℃まで徐々に冷却し、5〜10℃で1時間撹拌し、析出した結晶をろ過し、イソプロパノール65.94gと水31.5gの混液で洗浄し、減圧乾燥して標記化合物99.7g(カンファースルタムからの収率:74.7%、品質:99.9%d.e(HPLCにて分析))を得た。
なお、HPLC分析は島津LC−10AVP[カラム:CHIRALCELL OJ−RH(ダイセル化学)、移動相:アセトニトリル水溶液、波長:210nm]を用いて行った。
本発明によれば、アシル化カンファースルタムから安全にかつ安価に対応する光学活性カルボン酸を製造することができる。また、副生するカンファースルタムは回収されて原料製造のために再利用できる。
Claims (15)
- アルカリ土類金属水酸化物が水酸化バリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化ストロンチウムである請求項1記載の方法。
- 分枝アルカノールが二級アルカノールまたは三級アルカノールである請求項1または2記載の方法。
- 分枝アルカノールがイソプロパノールまたは第三級ブタノールである請求項1または2記載の方法。
- アルカリ土類金属水酸化物が水酸化バリウムまたは水酸化カルシウムであり、分枝アルカノールがイソプロパノールである請求項1記載の方法。
- Rが、アルキル基、アルコキシ基、保護されていてもよい水酸基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、保護されていてもよいアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、オキソ基、アルキルチオ基、およびアリールチオ基からなる群より選択される少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な炭化水素基である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 炭化水素基が、飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基、または飽和もしくは不飽和の環式炭化水素基である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 飽和もしくは不飽和の非環式炭化水素基が、直鎖もしくは分枝アルキル基、直鎖もしくは分枝アルケニル基、または直鎖もしくは分枝アルキニル基である請求項7記載の方法。
- Rが、少なくとも1個の置換基を有していてもよい、少なくとも1個の不斉炭素原子を有する光学活性な分枝アルケニル基である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- R2がC2〜C6のアルケニル基である請求項10記載の方法。
- 式[II−A]で示される光学活性2−(2−プロペニル)オクタン酸および式[I−A]で示されるアシル化カンファースルタムにおける2−プロペニル基が結合している不斉炭素原子の立体配置がS配置である請求項12記載の方法。
- 分枝アルカノールがイソプロパノールであり、アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである請求項12または13記載の方法。
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