JP2007244203A - ヨシ群落の植生基盤造成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】沿岸部分10のうち、植生基盤20を造成しようとする造成区域10Aは、事前に土嚢や鋼矢板などにより締め切り、ポンプアップするなどの排水工事により水位を、例えば、水深1.5m以下に低下させておく。底泥16を従来公知の方法により浚渫することにより浚渫土16を得る。浚渫土16に多孔質セラミック状の土質改良材を添加し攪拌混合して浚渫改良土18を製造する。浚渫改良土18を造成区域10Aに盛土し、盛土された浚渫改良土18をブルドーザーなどの重機により転圧することで、所定の地盤高および所定の基盤硬度を有する植生基盤20を造成する。植生基盤20が造成されたならば水位を元に戻し、植生基盤20にヨシ22を植栽する。
【選択図】図2
Description
一方、浚渫土を利用し、この浚渫土に石灰やセメントなどの脱水助剤および木質系堆肥あるいは製紙スラッジ灰を加えて植物育成培地とすることが知られている(特許文献1、2参照)。
従来、ヨシ群落の植生基盤の土壌としては川砂や山砂、あるいは、砂の含有率が高い浚渫土が使用され、それら川砂、山砂、砂の含有率が高い浚渫土を沿岸に覆砂して湿地ブルドーザー等で敷き均すことによって植生基盤を造成している。
また、浚渫土として砂含有率の高いものを使用する場合、浚渫土に含有される栄養塩(窒素、リン)が溶出し、水域の水質に悪影響する可能性があること、また、浚渫土の粒度分布等の土質性状は一定でなく、砂含有率の高い浚渫土を安定して確保することが困難である。
また、浚渫土としてシルト・粘土含有率の高いものを使用する場合、砂含有率の高い浚渫土の場合と同様に栄養塩が溶出することに加えて、一般に泥質では生育しにくいといわれるヨシの生育不良や波浪等による基盤材の巻き上がりとそれに伴う水質汚濁、水生生物等への悪影響が懸念される。
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、その目的は、ヨシの成長量を促進でき、環境に影響を与えることがなく、コストを抑制する上で有利なヨシ群落の植生基盤造成方法を提供することにある。
また、浚渫土に土質改良材を混合することで浚渫改良土を容易に製造できるので、浚渫改良土を安定して確保でき有利であり、川砂や山砂を購入する場合に比較してコストがかからず、また、砂を採取することにより砂採取場所の環境に与える悪影響もなく有利となる。
また、浚渫改良土によって造成された植生基盤を締め固めることにより所定の基盤硬度を得ることで、浚渫土に含有される栄養塩の溶出速度を著しく低減することが可能となり、水質への悪影響を抑制する上で有利となる。
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は湖沼の沿岸部分にヨシ群落の植生基盤20が造成される前の状態を示す説明図、図2は沿岸部分にヨシ群落の植生基盤20が造成された後の状態を示す説明図である。
図1に示すように、湖沼の沿岸部分10(特許請求の範囲の水域に相当)では湖底12上に湖水14が湛えられ、湖底12の上には底泥16が堆積している。
まず、沿岸部分10にヨシ群落の植生基盤20を造成する工程について説明する。
まず、沿岸部分10のうち、植生基盤20を造成しようとする造成区域10Aは、事前に土嚢や鋼矢板2などにより締め切り、ポンプアップするなどの排水工事により水位を、例えば、水深1.5m以下に低下させておく。
そして、浚渫土16に多孔質セラミック状の土質改良材を添加し攪拌混合して浚渫改良土18(図2参照)を製造する。
浚渫改良土18の製造にあたっては、従来公知のサイロ、スクリューミキサ、搬送ベルトコンベアなどを含む改質装置を用いて浚渫土16に土質改良材を添加し攪拌混合する。
多孔質セラミック状の土質改良材は吸水効果を有するものである。
浚渫土16に添加する土質改良材の配合量は、浚渫土16の含水量と植生基盤20の基盤硬度に応じて調整する。
次に、浚渫改良土18を造成区域10Aに盛土し、盛土された浚渫改良土18をブルドーザーなどの重機により転圧することで、図2に示すように、所定の地盤高および所定の基盤硬度を有する植生基盤20を造成する。
植生基盤20が造成されたならば、水位を元に戻す。
水位を元に戻した後、植生基盤20にヨシ22を植栽する。ヨシ22の植栽方法は、例えば、鉢植え、株植え、茎植え、植生マット法など従来公知の様々な種々の方法が採用可能である。
次に実施例について説明する。
図3は実施例における浚渫土16の性状を示す図である。本実施例では、浚渫土16は琵琶湖内湖から採取したものであり、液性限界よりも高い泥状な性状を有している。
図4は土質改良材の性状を示す図である。本実施例では、土質改良材として、製紙工場から発生するペーパースラッジを焼成した灰(PS灰)を高温焼成して製造されたものである。
図5は浚渫改良土18の基盤硬度をコーン指数でqc300kN/m2、qc500kN/m2としたときの土質改良材の配合量の具体例を示す図であり、図6は土質改良材の配合量と浚渫改良土18の基盤硬度をコーン指数の関係を示す図である。
実施例では、図6に示すように、基盤硬度がコーン指数でqc=300kN/m2、500kN/m2、800kN/m2となるように土質改良材を配合し、植生基盤20を造成した。
なお、一般に、ヨシ群落の植栽に適した基盤硬度はコーン指数でqc200〜800kN/m2とされているが、図12に示すように、発明者らの実験結果によれば、植生基盤20の基板硬度がコーン指数でqc=100kN/m2以上1100kN/m2以下であれば、植生基盤20の基板硬度の影響を受けずにヨシが生育することが確認されている。
A区、B区は本実施例の浚渫改良土18によって造成された植生基盤20にヨシを植栽しており、対照区は川砂によって造成された植生基盤20にヨシを植栽している。
図7に示すように、地盤高(水深)別のヨシ地上部の乾燥重量を比較すると、A区とB区は、対照区と比較して湛水部の生育密度・生産性が高い。
具体的には、A区のヨシの乾燥重量の平均値は対照区のヨシの乾燥重量の1.7倍であり、B区のヨシの乾燥重量の平均値は対照区のヨシの乾燥重量の2.3倍である。
また、A区、B区では、ヨシが比較的深い水深(約20cm以上)でも生育しているのに対し、対照区では、水深が約20cm以上になると成長量が著しく低下している。
図8に示すように、B区は、対照区と比較して湛水部の地下茎の生育密度・生産性が高く、B区のヨシの乾燥重量は対照区のヨシの乾燥重量の2.7倍となっている。
そこで、本発明者らは、浚渫土16を沿岸水域の植生基盤20に使用する場合に問題となる栄養塩の溶出の抑制効果について、(1)土質改良材の配合による効果(底泥抽出実験)、(2)土質改良材の配合・締め固めによる効果(室内カラム溶出試験)に関する試験を行い、検証した。
(1)底泥抽出実験
植生基盤20の土壌からの栄養塩の溶出が水質におよぼす影響を予測するため、土壌を蒸留水で抽出して、抽出液中の窒素およびリンの溶出量(最大溶出量)を測定した。
試験方法は、沿岸環境調査マニュアル・底質・生物編(日本海洋学会編)4)に基づき、窒素およびリンの溶出試験に準じて実施した。実験結果は次のとおりである。
土質改良材の混合による溶出速度低減効果は配合量により異なるが、浚渫土16の含水比80%に対して基盤硬度がコーン指数でqc=300kN/m2、500kN/m2、800kN/m2になるように配合した場合、溶出速度低減効果は窒素で30%乃至49%、リンで20%乃至39%であった。
土質改良材の配合による栄養塩溶出抑制効果は、主に土質改良材の混合による土壌中の見かけの窒素含有率が減少する効果、土質改良材による吸着効果等が考えられる。
(2)室内カラム溶出試験
実際の施工では、土質改良材の浚渫土16への配合と重機による締め固めを行う。本実験では、所定の締め固め強度での植生基盤20からの栄養塩溶出特性を把握するため実施した。試験方法は、(社)底質浄化協会「底質の調査・試験マニュアル」2)の栄養塩類溶出試験(窒素、リン)に準拠して実施した。実験結果は次のとおりである。
図9は浚渫改良土18の基盤硬度をパラメータとして窒素の溶出量の変化量を示す図、図10は浚渫改良土18の基盤硬度をパラメータとしてリンの溶出量の変化量を示す図である。
試験方法は、(社)底質浄化協会「底質の調査・試験マニュアル」2)の栄養塩類溶出試験(窒素、リン)に準拠して実施した。
図9、図10に示すように、締め固めにより地盤の硬さを高めることにより植生基盤20からの栄養塩溶出速度を低減できることが示された。
図9に示すように、窒素については、土質改良材を混合していない無処理の浚渫土16(原土)に比較して、基盤硬度がqc=300kN/m2の浚渫改良土18では、溶出速度が約80%に低減されていることがわかる。
図10に示すように、リンについては、無処理の浚渫土16に比較して浚渫改良土18の方が若干溶出する傾向にあるが、基盤強度がqc=300kN/m2の浚渫改良土18ではほとんど無処理の浚渫土16と同様の溶出量に留まっている。
上記のことから、ヨシ群落の生育上、基盤硬度をコーン指数でqc=100kN/m2以上1100kN/m2以下とすることが好ましい。
また、植生基盤20の造成後にヨシの植え付け、維持管理、安全上の理由で人が立ち入る場合には、人が植生基盤20上を支障なく歩行できるように基盤硬度をコーン指数でqc=200kN/m2以上1100kN/m2以下とすればよい。
また、植生基盤20からの栄養塩の溶出による水質汚濁が問題となる場合には、基盤硬度をコーン指数でqc=500kN/m2以上1100kN/m2以下とすることで栄養塩の溶出量(溶出速度)を低減でき好ましい。
図11は植生基盤20の平均地盤高の変化量を示す図であり、(A)、(B)は本実施例の浚渫改良土18によって造成された植生基盤20にヨシを植栽した実験区A,Bの測定結果を示し、(C)は川砂によって造成された植生基盤20にヨシを植栽した対照区の測定結果である。
図中、S3は湛水部の水深が約20cm乃至30cmの部分の測定結果を示し、S5は湛水部の水深が約20cmの部分の測定結果を示し、S14は湛水部の水深が約10cm乃至20cmの部分の測定結果を示し、S20は陸部(地盤高が水面よりも約40cm高い)の部分の測定結果を示す。
図11に示すように、浚渫改良土18をヨシの植生基盤20に使用した植栽地盤18では大きな沈下は見られず地形が安定しているのに対し、対照区の植栽地盤では、若干の継続的な沈下傾向が見られた。
また、湖沼などの浚渫土16に土質改良材を混合することで浚渫改良土18を容易に製造できるので、浚渫改良土18を安定して確保でき有利であり、川砂や山砂を購入する場合に比較してコストがかからず、また、砂を採取することにより砂採取場所の環境に与える悪影響もなく有利となる。
また、浚渫改良土18によって造成された植生基盤20を締め固めることにより所定の基盤硬度を得ることで、浚渫土16に含有される栄養塩の溶出速度を著しく低減することが可能となり、水質への悪影響を抑制する上で有利となる。
土質改良材は吸水作用によるものであり、化学反応がほとんどないため、水域のpH値を高めることがなく、したがって、水域の生態系への悪影響がない。
なお、シルト・粘土含有率の高い浚渫土16を用いてヨシ群落の植生基盤20を造成する場合、浚渫土16をセメント等により改良したものを用いて植生基盤20を造成し、植生基盤20の地表面を川砂等で被覆する方法があるが、この方法では、浚渫土16のセメント改良により水域のpH値が高められるため、水生生物に対する悪影響を及ぼすことや、基盤硬度が高くなり過ぎてヨシの根が生育しにくいこと、覆砂に要するコストが高いことが懸念されるのに対し、本実施の形態ではそのような悪影響がなく有利である。
また、湖沼等の浚渫土16は含水量が一様でないが、含水比に応じて土質改良材の配合量を調整することで所定の基盤硬度を有する植生基盤20を造成することができ、安定した品質の植生基盤20を造成する上で有利となる。
また、ヨシ群落の成立に最も影響する因子は水深であり、したがって、施工後の植生基盤20の沈下等の地形変動によってヨシ群落の生長は著しく影響を受けるが、浚渫改良土18によって植生基盤20を造成することにより所定の基盤強度に施工することができる。そのため、浚渫土16としてシルト・粘土含有率の高い浚渫土16を用いたとしても圧密沈下等の地形の変化が発生しにくくなり、ヨシ群落の生育を向上させる上で有利となる。
Claims (6)
- 水域にヨシ群落の植生基盤を造成する方法であって、
浚渫土に多孔質セラミック状の土質改良材を添加し攪拌混合して浚渫改良土を製造し、
前記浚渫改良土を前記水域に盛土し、
前記盛土された浚渫改良土を重機により転圧することで所定の基盤硬度を有する前記植生基盤を造成する、
ことを特徴とするヨシ群落の植生基盤造成方法。 - 前記基盤硬度をコーン指数でqc=100kN/m2以上1100kN/m2以下とすることを特徴とする請求項1記載のヨシ群落の植生基盤造成方法。
- 前記土質改良材は吸水効果を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載のヨシ群落の植生基盤造成方法。
- 前記吸水効果を有する材料は多孔質セラミック質材料であることを特徴とする請求項3記載のヨシ群落の植生基盤造成方法。
- 前記基盤硬度をコーン指数でqc=200kN/m2以上1100kN/m2以下とすることを特徴とする請求項1記載のヨシ群落の植生基盤造成方法。
- 前記基盤硬度をコーン指数でqc=500kN/m2以上1100kN/m2以下とすることを特徴とする請求項1記載のヨシ群落の植生基盤造成方法。
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