以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1〜図24は本発明に係る基板研磨方法を実行する基板研磨装置の一実施形態を示す図である。
図1は、本発明に係る基板研磨装置の各部の配置構成を示す平面図である。この基板研磨装置は、研磨面を有する研磨テーブルと、研磨対象の基板を保持して研磨テーブルの研磨面に押圧する基板保持装置と、基板上に形成されている膜の膜厚を測定する膜厚測定装置と、を備えている。
この基板研磨装置は、走行レール1003上を移動する搬送ロボット1004がカセット1001内にストックされている半導体ウェハなどの基板の取出・収納を行うとともに、その未研磨・研磨済みの基板を載置台1050および搬送ロボット1020に中継させてロータリートランスポーター1027との間を往復させる。そして、そのロータリートランスポーター1027上の基板を後述する基板保持装置のトップリング1に保持させつつ研磨テーブル100上に位置させることにより、複数枚の基板を連続して研磨処理することができるように、この基板研磨装置はシステム化されている。なお、図1において、1005,1022は洗浄機であり、研磨後の基板を洗浄乾燥することができるように構成されている。また、1036も研磨テーブルであり、基板を2段研磨することができるように構成されている。1038,3000は研磨テーブル100,1036のドレッシングを行うためのドレッサであり、1043はそのドレッサ1038を洗浄するための水桶である。
この基板研磨装置には、研磨後に洗浄及び乾燥処理が完了した半導体ウェハ等の膜厚を測定するIn-line膜厚測定装置200’を備えている。図1に示すように、搬送ロボット1004が研磨後のウェハをカセット1001内に収納する前、もしくは搬送ロボット1004が研磨前のウェハをカセット1001から取出した後(In-line)に、センサコイルによる渦電流信号、光学的手段による研磨面への入射および反射の光学信号、研磨面の温度信号、あるいはマイクロ波の反射信号などの単独または適切なる組合せから、その半導体ウェハなどの基板の導電性膜のCu膜やバリア層または、酸化膜等の絶縁膜の膜厚を測定する膜厚測定装置(測定手段)200’が配置されている。そして、この基板研磨装置は、その基板の研磨中または/および研磨後に、導電性膜が配線部などの必要な領域を除いて除去され、または絶縁膜が除去されることをこれらのセンサ信号や計測値を監視することにより検出して、CMPプロセスの終点を決定し、適切な研磨処理を繰り返すことができるようになっている。
また、図示しないが、研磨テーブル100には、研磨中の半導体ウェハ等の膜厚を測定するIn-situ膜厚測定装置を備えている。そして、これらの測定結果は、後述するコントローラに伝達され、研磨装置の動作データ(レシピ)の修正等に用いられる。そして、研磨ステップの各研磨プロセスの条件、たとえば研磨テーブル、トップリングの回転数、圧力等と連動して、センサ出力を単独または組合せることで、研磨ステップ毎の研磨対象物の金属膜、酸化膜などの非金属の厚膜から薄膜までの膜厚計測、相対増減変化を検出することで、研磨工程における各種の条件設定、例えば研磨終点の検出に用いられる。そして、これらの膜厚測定装置では、半導体ウェハの半径方向に区画された各領域の膜厚の計測が可能であり、基板保持装置の半導体ウェハの領域毎に加える押圧力は、膜厚測定装置による当該領域毎の膜厚の測定情報に基づいて調整される。
この基板研磨装置の基板保持装置は、上述したように研磨対象である半導体ウェハ等の基板を保持して研磨テーブル上の研磨面に押圧して研磨する装置である。図2に示すように、基板保持装置を構成するトップリング1の下方には、上面に研磨パッド(研磨布)101を貼付した研磨テーブル100が設置されている。また、研磨テーブル100の上方には研磨液供給ノズル102が設置されており、この研磨液供給ノズル102によって研磨テーブル100上の研磨パッド101上に研磨液Qが供給されるようになっている。
なお、市場で入手できる研磨パッドとしては種々のものがあり、例えば、ロデール社製のSUBA800、IC−1000、IC−1000/SUBA400(二層クロス)、フジミインコーポレイテッド社製のSurfin xxx−5、Surfin 000等がある。SUBA800、Surfin xxx−5、Surfin 000は繊維をウレタン樹脂で固めた不織布であり、IC−1000は硬質の発泡ポリウレタン(単層)である。発泡ポリウレタンは、ポーラス(多孔質状)になっており、その表面に多数の微細なへこみ又は孔を有している。
トップリング1は、自在継手部10を介してトップリング駆動軸11に接続されており、トップリング駆動軸11はトップリングヘッド110に固定されたトップリング用エアシリンダ111に連結されている。このトップリング用エアシリンダ111によってトップリング駆動軸11は上下動し、トップリング1の全体を昇降させると共にトップリング本体2の下端に固定されたリテーナリング3を研磨テーブル100に押圧するようになっている。トップリング用エアシリンダ111はレギュレータRE1を介して圧縮空気源120に接続されており、レギュレータRE1によってトップリング用エアシリンダ111に供給される加圧空気の空気圧等の流体圧力を調整することができる。これにより、リテーナリング3が研磨パッド101を押圧する押圧力を調整することができる。
また、トップリング駆動軸11はキー(図示せず)を介して回転筒112に連結されている。この回転筒112はその外周部にタイミングプーリ113を備えている。トップリングヘッド110にはトップリング用モータ114が固定されており、上記タイミングプーリ113は、タイミングベルト115を介してトップリング用モータ114に設けられたタイミングプーリ116に接続されている。従って、トップリング用モータ114を回転駆動することによってタイミングプーリ116、タイミングベルト115、及びタイミングプーリ113を介して回転筒112及びトップリング駆動軸11が一体に回転し、トップリング1が回転する。なお、トップリングヘッド110は、フレーム(図示せず)に固定支持されたトップリングヘッドシャフト117によって支持されている。
次に、基板保持装置を構成するトップリング1について、図3および図4を用いてより詳細に説明する。図3は本実施形態におけるトップリング1を示す縦断面図、図4は図3に示すトップリング1の底面図である。
図3に示すように、基板保持装置を構成するトップリング1は、内部に収容空間を有する円筒容器状のトップリング本体2と、トップリング本体2の下端に固定されたリテーナリング3とを備えている。トップリング本体2は金属やセラミックス等の強度及び剛性が高い材料から形成されている。また、リテーナリング3は、剛性の高い樹脂材又はセラミックス等から形成されている。
トップリング本体2は、円筒容器状のハウジング部2aと、ハウジング部2aの円筒部の内側に嵌合される環状の加圧シート支持部2bと、ハウジング部2aの上面の外周縁部に嵌合された環状のシール部2cとを備えている。トップリング本体2のハウジング部2aの下端に固定されているリテーナリング3の下部は内方に突出している。なお、リテーナリング3をトップリング本体2と一体的に形成することとしてもよい。
トップリング本体2のハウジング部2aの中央部の上方には、上述したトップリング駆動軸11が配設されており、トップリング本体2とトップリング駆動軸11とは自在継手部10により連結されている。この自在継手部10は、トップリング本体2及びトップリング駆動軸11とを互いに傾動可能とする球面軸受け機構と、トップリング駆動軸11の回転をトップリング本体2に伝達する回転伝達機構とを備えており、トップリング駆動軸11からトップリング本体2に対して互いの傾動を許容しつつ押圧力及び回転力を伝達する。
球面軸受機構は、トップリング駆動軸11の下面の中央に形成された球面状凹部11aと、ハウジング部2aの上面の中央に形成された球面状凹部2dと、両凹部11a、2d間に介装されたセラミックスのような高硬度材料からなるベアリングボール12とから構成されている。一方、回転伝達機構は、トップリング駆動軸11に固定された駆動ピン(図示せず)とハウジング部2aに固定された被駆動ピン(図示せず)とから構成される。トップリング本体2が傾いても被駆動ピンと駆動ピンは相対的に上下方向に移動可能であるため、これらは互いの接触点をずらして係合し、回転伝達機構がトップリング駆動軸11の回転トルクをトップリング本体2に確実に伝達する。
トップリング本体2及びトップリング本体2に一体に固定されたリテーナリング3の内部に画成された空間内には、トップリング1によって保持される半導体ウェハWに当接する弾性パッド4と、環状のホルダーリング5と、弾性パッド4を支持する概略円盤状のチャッキングプレート6とが収容されている。弾性パッド4は、その外周部がホルダーリング5とホルダーリング5の下端に固定されたチャッキングプレート6との間に挟み込まれており、チャッキングプレート6の下面を覆っている。これにより弾性パッド4とチャッキングプレート6との間には空間が形成されている。
なお、チャッキングプレート6は金属材料から形成されていてもよいが、研磨すべき半導体ウェハがトップリングに保持された状態で、後述する渦電流を用いた膜厚測定方法でその表面に形成された薄膜の膜厚を測定する場合などにおいては、磁性を持たない材料、例えば、4フッ化エチレン樹脂などのフッ素系樹脂、もしくはSiC(炭化ケイ素)、Al2O3(アルミナ)などのセラミックスなどの絶縁性の材料から形成されていることが好ましい。
ホルダーリング5とトップリング本体2との間には弾性膜からなる加圧シート7が張設されている。この加圧シート7は、一端をトップリング本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込み、他端をホルダーリング5の上端部5aとストッパ部5bとの間に挟み込んで固定されている。トップリング本体2、チャッキングプレート6、ホルダーリング5、及び加圧シート7によってトップリング本体2の内部に圧力室21が形成されている。図3に示すように、圧力室21にはチューブ、コネクタ等からなる流体路31が連通されており、圧力室21は流体路31上に配置されたレギュレータRE2を介して圧縮空気源120に接続されている。なお、加圧シート7は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴムなどの強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
なお、加圧シート7がゴムなどの弾性体である場合に、加圧シート7をリテーナリング3とトップリング本体2との間に挟み込んで固定した場合には、弾性体としての加圧シート7の弾性変形によってリテーナリング3の下面において好ましい平面が得られなくなってしまう。従って、これを防止するため、本実施形態では、別部材として加圧シート支持部2bを設けて、これをトップリング本体2のハウジング部2aと加圧シート支持部2bとの間に挟み込んで固定している。なお、特願平8−50956(特開平9−168964)や特願平11−294503に記載されているように、リテーナリング3をトップリング本体2に対して上下動可能としたり、リテーナリング3をトップリング本体2とは独立に押圧可能な構造としたりすることもでき、このような場合には、必ずしも上述した加圧シート7の固定方法が用いられるとは限らない。
トップリング本体2のシール部2cが嵌合されるハウジング部2aの上面の外周縁付近には、環状の溝からなる洗浄液路51が形成されている。この洗浄液路51はシール部2cの貫通孔52を介して流体路32に連通されており、この流体路32を介して洗浄液(純水)が供給される。また、洗浄液路51からハウジング部2a、加圧シート支持部2bを貫通する連通孔53が複数箇所設けられており、この連通孔53は弾性パッド4の外周面とリテーナリング3との間のわずかな間隙Gへ連通されている。
弾性パッド4とチャッキングプレート6との間に形成される空間の内部には、弾性パッド4に当接する当接部材としてのセンターバッグ8(中心部当接部材)及びリングチューブ9(外側当接部材)が設けられている。本実施形態においては、図3及び図4に示すように、センターバッグ8はチャッキングプレート6の下面の中心部に配置され、リングチューブ9はこのセンターバッグ8の周囲を取り囲むようにセンターバッグ8の外側に配置されている。なお、弾性パッド4、センターバッグ8及びリングチューブ9は、加圧シート7と同様に、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度及び耐久性に優れたゴム材によって形成されている。
チャッキングプレート6と弾性パッド4との間に形成される空間は、上記センターバッグ8及びリングチューブ9によって複数の空間に区画されており、これによりセンターバッグ8とリングチューブ9の間には圧力室22が、リングチューブ9の外側には圧力室23がそれぞれ形成されている。
センターバッグ8は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜81と、弾性膜81を着脱可能に保持するセンターバッグホルダー82(保持部)とから構成されている。センターバッグホルダー82にはネジ穴82aが形成されており、このネジ穴82aにネジ55を螺合させることにより、センターバッグ8がチャッキングプレート6の下面の中心部に着脱可能に取付けられている。センターバッグ8の内部には、弾性膜81とセンターバッグホルダー82とによって中心部圧力室24が形成されている。
同様に、リングチューブ9は、弾性パッド4の上面に当接する弾性膜91と、弾性膜91を着脱可能に保持するリングチューブホルダー92(保持部)とから構成されている。リングチューブホルダー92にはネジ穴92aが形成されており、このネジ穴92aにネジ56を螺合させることにより、リングチューブ9がチャッキングプレート6の下面に着脱可能に取付けられている。リングチューブ9の内部には、弾性膜91とリングチューブホルダー92とによって中間部圧力室25が形成されている。
圧力室22,23、中心部圧力室24、及び中間部圧力室25には、チューブ、コネクタ等からなる流体路33,34,35,36がそれぞれ連通されており、各圧力室22〜25はそれぞれの流体路33〜36上に配置されたレギュレータRE3,RE4,RE5,RE6を介して供給源としての圧縮空気源120に接続されている。なお、上記流体路31〜36は、トップリングシャフト110の上端部に設けられたロータリージョイント(図示せず)を介してそれぞれ純水供給源、及び各レギュレータRE2〜RE6に接続されている。
上述したチャッキングプレート6の上方の圧力室21及び上記圧力室22〜25には、各圧力室に連通される流体路31,33,34,35,36を介して加圧空気等の加圧流体又は大気圧や真空が供給されるようになっている。図2に示すように、圧力室21〜25の流体路31,33,34,35,36上に配置されたレギュレータRE2〜RE6によってそれぞれの圧力室に供給される加圧流体の圧力を調整することができる。これにより各圧力室21〜25の内部の圧力を各々独立に制御する又は大気圧や真空にすることができるようになっている。このように、レギュレータRE2〜RE6によって各圧力室21〜25の内部の圧力を独立に可変とすることにより、弾性パッド4を介して半導体ウェハWを研磨パッド101に押圧する押圧力を半導体ウェハWの部分(区画領域)毎に調整することができる。なお、場合によっては、これらの圧力室21〜25を真空源121に接続することとしてもよい。
この場合において、各圧力室22〜25に供給される加圧流体や大気圧の温度をそれぞれ制御することとしてもよい。このようにすれば、半導体ウェハ等の研磨対象物の被研磨面の裏側から研磨対象物の温度を直接制御することができる。特に、各圧力室の温度を独立に制御することとすれば、CMPにおける化学的研磨の化学反応速度を制御することが可能となる。
弾性パッド4には、図4に示すように複数の開口部41が設けられている。そして、センターバッグ8とリングチューブ9との間の開口部41から露出するようにチャッキングプレート6から下方に突出する内周部吸着部61が設けられており、また、リングチューブ9の外側の開口部41から露出するように外周部吸着部62が設けられている。本実施形態においては、弾性パッド4には8個の開口部41が設けられ、各開口部41に吸着部61,62が露出するように設けられている。
内周部吸着部61及び外周部吸着部62には、流体路37,38にそれぞれ連通する連通孔61a,62aがそれぞれ形成されており、内周部吸着部61及び外周部吸着部62は流体路37,38及びバルブV1,V2を介して真空ポンプ等の真空源121に接続されている。そして、内周部吸着部61及び外周部吸着部62の連通孔61a,62aが真空源121に接続されると、連通孔61a,62aの開口端に負圧が形成され、内周部吸着部61及び外周部吸着部62に半導体ウェハWが吸着される。なお、内周部吸着部61及び外周部吸着部62の下端面には薄いゴムシート等からなる弾性シート61b,62bが貼着されており、内周部吸着部61及び外周部吸着部62は半導体ウェハWを柔軟に吸着保持するようになっている。
また、図3に示すように、半導体ウェハWの研磨中には、内周部吸着部61及び外周部吸着部62は弾性パッド4の下端面より上方に位置して、弾性パッド4の下端面より突出することはない。半導体ウェハWを吸着する際には、内周部吸着部61及び外周部吸着部62の下端面は弾性パッド4の下端面と略同一面になる。
ここで、弾性パッド4の外周面とリテーナリング3との間には、わずかな間隙Gがあるので、ホルダーリング5とチャッキングプレート6及びチャッキングプレート6に取付けられた弾性パッド4等の部材は、トップリング本体2及びリテーナリング3に対して上下方向に移動可能で、フローティングする構造となっている。ホルダーリング5のストッパ部5bには、その外周縁部から外方に突出する突起5cが複数箇所に設けられており、この突起5cがリテーナリング3の内方に突出している部分の上面に係合することにより、上記ホルダーリング5等の部材の下方への移動が所定の位置までに制限される。
次に、このように構成されたトップリング1の動作について説明する。
上記構成の基板研磨装置において、半導体ウェハWの搬送時には、トップリング1の全体を半導体ウェハの移送位置に位置させ、内周部吸着部61及び外周部吸着部62の連通孔61a,62aを、流体路37,38を介して真空源121に接続する。連通孔61a,62aの吸引作用により内周部吸着部61及び外周部吸着部62の下端面に半導体ウェハWが真空吸着される。そして、半導体ウェハWを吸着した状態でトップリング1を移動させ、トップリング1の全体を研磨面(研磨パッド101)を有する研磨テーブル100の上方に位置させる。なお、半導体ウェハWの外周縁はリテーナリング3によって保持され、半導体ウェハWがトップリング1から飛び出さないようになっている。
研磨時には、吸着部61,62による半導体ウェハWの吸着を解除し、トップリング1の下面に半導体ウェハWを保持させると共に、トップリング駆動軸11に連結されたトップリング用エアシリンダ111を作動させてトップリング1の下端に固定されたリテーナリング3を所定の押圧力で研磨テーブル100の研磨面に押圧する。この状態で、圧力室22,23、中心部圧力室24、及び中間部圧力室25にそれぞれ所定の圧力の加圧流体を供給し、半導体ウェハWを研磨テーブル100の研磨面に押圧する。そして、研磨液供給ノズル102から研磨液Qを流すことにより、研磨パッド101に研磨液Qが保持され、半導体ウェハWの研磨される面(下面)と研磨パッド101との間に研磨液Qが存在した状態で研磨が行われる。
ここで、半導体ウェハWの圧力室22,23の下方に位置する部分は、それぞれ圧力室22,23に供給される加圧流体の圧力で研磨面に押圧される。また、半導体ウェハWの中心部圧力室24の下方に位置する部分は、センターバッグ8の弾性膜81及び弾性パッド4を介して、中心部圧力室24に供給される加圧流体の圧力で研磨面に押圧される。半導体ウェハWの中間部圧力室25の下方に位置する部分は、リングチューブ9の弾性膜91及び弾性パッド4を介して、中間部圧力室25に供給される加圧流体の圧力で研磨面に押圧される。
従って、半導体ウェハWに加わる研磨圧力は、各圧力室22〜25に供給される加圧流体の圧力をそれぞれ制御することにより、半導体ウェハWの半径方向に各部分毎に調整することができる。即ち、後述するコントローラ(制御部)400がレギュレータRE3〜RE6(調整手段)によって各圧力室22〜25に供給する加圧流体の圧力をそれぞれ独立に調整し、半導体ウェハWを研磨テーブル100上の研磨パッド101に押圧する押圧力を半導体ウェハWの部分毎に調整している。このように、半導体ウェハWの部分毎に研磨圧力が所望の値に調整された状態で、回転している研磨テーブル100の上面の研磨パッド101に半導体ウェハWが押圧される。同様に、レギュレータRE1によってトップリング用エアシリンダ111に供給される加圧流体の圧力を調整し、リテーナリング3が研磨パッド101を押圧する押圧力を変更することができる。このように、研磨中に、リテーナリング3が研磨パッド101を押圧する押圧力と半導体ウェハWを研磨パッド101に押圧する押圧力を適宜調整することにより、半導体ウェハWの中心部(図4のC1)、中心部から中間部(C2)、外方部(C3)、そして周縁部(C4)、更には半導体ウェハWの外側にあるリテーナリング3の外周部までの各部分における研磨圧力の分布を所望の分布とすることができる。
なお、半導体ウェハWの圧力室22,23の下方に位置する部分には、弾性パッド4を介して流体から押圧力が加えられる部分と、開口部41の箇所のように、加圧流体の圧力そのものが半導体ウェハWに加わる部分とがあるが、これらの部分に加えられる押圧力は、同一圧力でもよく、それぞれ任意の圧力でも押圧ができる。また、研磨時には、弾性パッド4は開口部41の周囲において半導体ウェハWの裏面に密着するため、圧力室22,23の内部の加圧流体が外部に漏れることはほとんどない。
このように、半導体ウェハWを同心の4つの円及び円環部分(C1〜C4)に区画し、それぞれの部分(領域)を独立した押圧力で押圧することができる。研磨レートは半導体ウェハWの研磨面に対する押圧力に依存するが、上述したように各部分の押圧力を制御することができるので、半導体ウェハWの4つの部分(C1〜C4)の研磨レートを独立に制御することが可能となる。従って、半導体ウェハWの表面の研磨すべき薄膜の膜厚に半径方向の分布があっても、半導体ウェハ全面に亘って研磨の不足や過研磨をなくすことができる。即ち、半導体ウェハWの表面の研磨すべき薄膜が、半導体ウェハWの半径方向の位置によって膜厚が異なっている場合であっても、上記各圧力室22〜25のうち、半導体ウェハWの表面の膜厚の厚い部分の上方に位置する圧力室の圧力を他の圧力室の圧力よりも高くすることにより、あるいは、半導体ウェハWの表面の膜厚の薄い部分の上方に位置する圧力室の圧力を他の圧力室の圧力よりも低くすることにより、膜厚の厚い部分の研磨面への押圧力を膜厚の薄い部分の研磨面への押圧力より大きくすることが可能となり、その部分の研磨レートを選択的に高めることができる。これにより、成膜時の膜厚分布に依存せずに半導体ウェハWの全面に亘って過不足のない研磨が可能となる。
ここで、半導体ウェハWの周縁部に起こる縁だれは、リテーナリング3の押圧力を制御することにより防止することができる。また、半導体ウェハWの周縁部において研磨すべき薄膜の膜厚に大きな変化がある場合には、リテーナリング3の押圧力を意図的に大きく、あるいは、小さくすることで、半導体ウェハWの周縁部の研磨レートを制御することができる。なお、上記各圧力室22〜25に加圧流体を供給すると、チャッキングプレート6は上方向の力を受けるので、本実施形態では、圧力室21には流体路31を介して圧力流体を供給し、各圧力室22〜25からの力によりチャッキングプレート6が上方に持ち上げられるのを防止している。
上述のようにして、トップリング用エアシリンダ111によるリテーナリング3の研磨パッド101への押圧力と、各圧力室22〜25に供給する加圧空気による半導体ウェハWの部分毎の研磨パッド101への押圧力とを適宜調整して半導体ウェハWの研磨が行われる。そして、研磨が終了した際は、半導体ウェハWを内周部吸着部61及び外周部吸着部62の下端面に再び真空吸着する。この時、半導体ウェハWを研磨面に対して押圧する各圧力室22〜25への加圧流体の供給を止め、大気圧に開放することにより、内周部吸着部61及び外周部吸着部62の下端面を半導体ウェハWに当接させる。また、圧力室21内の圧力を大気圧に開放するか、もしくは負圧にする。これは、圧力室21の圧力を高いままにしておくと、半導体ウェハWの内周部吸着部61及び外周部吸着部62に当接している部分のみが、研磨面に強く押圧されることになってしまうためである。従って、圧力室21の圧力を速やかに下げる必要があり、図3に示すように、圧力室21からトップリング本体2を貫くようにリリーフポート39を設けて、圧力室21の圧力が速やかに下がるようにしてもよい。この場合には、圧力室21に圧力をかける際には流体路31から常に圧力流体を供給し続ける必要がある。また、リリーフポート39は逆止弁を備えており、圧力室21内を負圧にする際には外気が圧力室21に入らないようにしている。
上述のように半導体ウェハWを吸着させた後、トップリング1の全体を半導体ウェハの移送位置に位置させ、内周部吸着部61及び外周部吸着部62の連通孔61a,62bから半導体ウェハWに流体(例えば、圧縮空気もしくは窒素と純水を混合したもの)を噴射して半導体ウェハWをリリースする。
ところで、弾性パッド4の外周面とリテーナリング3との間のわずかな間隙Gには、研磨に用いられる研磨液Qが侵入してくるが、この研磨液Qが固着すると、ホルダーリング5、チャッキングプレート6、及び弾性パッド4などの部材のトップリング本体2及びリテーナリング3に対する円滑な上下動が妨げられる。そのため、流体路32を介して洗浄液路51に洗浄液(純水)を供給する。これにより、複数の連通孔53より間隙Gの上方に純水が供給され、純水が間隙Gを洗い流して上述した研磨液Qの固着が防止される。この純水の供給は、研磨後の半導体ウェハがリリースされ、次に研磨される半導体ウェハが吸着されるまでの間に行われるのが好ましい。また、次の研磨までに供給された純水が全て外部に排出されるように、リテーナリング3には図3に示すような複数の貫通孔3aを設けるのが好ましい。更に、リテーナリング3、ホルダーリング5、及び加圧シート7により形成される空間26内に圧力がこもっていると、チャッキングプレート6の上昇を妨げることとなるので、スムーズにチャッキングプレート6を上昇させるためにも上記貫通孔3aを設け、空間26を大気と同圧にすることが好ましい。
以上説明したように、圧力室22,23、センターバッグ8の内部の圧力室24、及びリングチューブ9の内部の圧力室25の圧力を独立に制御することにより半導体ウェハに対する押圧力を制御することができる。更に、この基板保持装置によれば、センターバッグ8及びリングチューブ9の位置や大きさなどを変更することによって、押圧力の制御を行う範囲を簡単に変更することができる。
すなわち、半導体ウェハの表面に形成される薄膜の膜厚分布は成膜の方法や成膜装置の種類により変化するが、本発明に係る基板保持装置によれば、半導体ウェハに押圧力を加える圧力室の位置や大きさをセンターバッグ8及びセンターバッグホルダー82、又はリングチューブ9及びリングチューブホルダー92を交換するだけで変更することができる。従って、研磨すべき薄膜の膜厚分布に合わせて押圧力を制御すべき位置や範囲をトップリング1の極一部を交換するだけで容易かつ低コストで変更することが可能となる。換言すれば、研磨すべき半導体ウェハの表面の研磨すべき薄膜の膜厚分布に変化があった場合にも、容易かつ低コストで対応することができる。なお、センターバッグ8又はリングチューブ9の形状及び位置を変更すると、結果的にセンターバッグ8とリングチューブ9に挟まれる圧力室22及びリングチューブ9を取り囲む圧力室23の大きさを変えることにもなる。
この基板研磨装置の研磨対象の半導体ウェハ上には、配線を形成するための銅めっき膜が成膜されているとともに、その下地材料としてバリア層が成膜されている。この基板研磨装置の研磨対象の半導体ウェハの最上層に酸化シリコン等の絶縁膜が成膜されているときには、光学式センサやマイクロ波センサによりその絶縁膜の膜厚を検知する。光学式センサの光源としては、ハロゲンランプやキセノンフラッシュランプ、LED、レーザー光源などが用いられる。基板研磨装置は、その半導体ウェハ上で不要な領域(配線領域外など)における絶縁膜や導電性膜などの研磨対象膜を除去するために、その研磨対象膜の有無を各種センサにより、例えば図2に示すように、渦電流センサ(膜厚測定装置)200によりその研磨対象膜201の膜厚を検出しつつ、コントローラ400がその半導体ウェハWの表面上の研磨処理を制御する。
以下、本発明に係る基板研磨装置のコントローラ400が実行する基板研磨方法について図5から図9を用いてより詳細に説明する。
図5は、基板研磨装置の概略全体構成を示すブロック図である。コントローラ400は、操作パネルなどのマン−マシンインターフェイス401からの入力や、各種データ処理を行うホストコンピュータ402からの入力に基づいて、所望形状などの目標プロフィールになるように半導体ウェハWを目標研磨レート(研磨量)で研磨する。閉ループ制御システム403は、不図示のハードディスク装置内などに予め格納準備されているシミュレーションソフトに従って、半導体ウェハWの領域C1〜C4毎に対応する研磨レシピ(研磨条件等)を自動作成するようになっている。そして、その研磨レシピをメモリ(記憶手段)404内に一時記憶させて、その研磨レシピに応じた研磨の制御処理を実行する。この研磨処理においては、膜厚測定装置200,200’からの測定結果に基づいて、演算回路405により算出した研磨対象膜201の膜厚や研磨量を、目標プロフィールや目標研磨レートなどと比較・検討し、その結果に応じて研磨レシピを修正するフィードバック処理を行うことにより、最適条件で半導体ウェハWの研磨処理を繰り返すようになっている。
この研磨処理のフィードバック処理は、半導体ウェハの研磨工程の終了後または研磨処理中のいずれで行うかを選択設定することができ、コントローラ400は、その選択設定に従って研磨後または研磨中の一方あるいは双方において研磨レシピの修正を行う。
具体的には、図6に示すように、オペレータにより、ホストコンピュータ402からドライシステム(研磨後の乾燥状態での膜厚測定)が選択入力されるとともに、目標プロフィールや研磨レート(リムーバルレート)が入力設定されると(ステップS1)、シミュレーションソフトで研磨レシピを自動作成し(ステップS2)、そのレシピの研磨条件をホストコンピュータ402のモニターなどに表示して修正の要否を判断・入力することをオペレータに要求し(ステップS3)、修正が必要な場合にはその修正入力に従ってレシピの修正処理を行った後に(ステップS4)、研磨処理をスタートする(ステップS5)。
そして、その研磨レシピに従った研磨処理を実行・完了するとともに研磨処理回数Nをインクリメント(+1)した後に(ステップS11)、研磨した半導体ウェハWの洗浄・乾燥を行う(ステップS12,S13)。
この後に、ドライシステム(研磨後の乾燥した状態での膜厚測定)においては、膜厚測定装置200’により半導体ウェハWの研磨対象膜201の膜厚を測定して(ステップS14)、絶縁膜あるいは金属膜を研磨済みの半導体ウェハWを特定する識別子と共にその研磨結果を格納(記憶)する。これと同時に、その半導体ウェハWをカセット1001内に戻して収納する処理を行う(ステップS15)。この収納処理と並行して、研磨済みの半導体ウェハWの研磨対象膜201の膜厚測定結果に応じてシミュレーションソフトにより、研磨時間や半導体ウェハWの領域C1〜C4毎の研磨パッド101への押圧力などの研磨条件の研磨レシピを修正する自動作成処理を行った後に(ステップS16)、ステップS11に戻って、次の半導体ウェハW、あるいは数回後に研磨されるウェハの研磨処理を繰り返す。また、測定されたウェハに絶縁膜や導電性膜等の研磨対象膜が完全に除去されずに一部残存している場合は、その研磨対象膜の残存部のみを研磨するよう(研磨済みの部分を過研磨しないよう)に、残存部に対応する領域の圧力室のみに加圧するなど、再研磨条件を作成し、再研磨を行う。
また、上記ドライシステムは、主に研磨後のウェハを測定すればよいから、乾燥後のウェハでなくても、研磨後で、かつ乾燥前のウェハを測定する膜厚測定器を用いてもよい。
一方、ホストコンピュータ402からウェットシステム(研磨中の濡れている状態での膜厚測定)が選択入力された場合にも同様に、図7に示すように、目標プロフィールや研磨レートが入力設定されると(ステップS1)、シミュレーションソフトで研磨レシピを自動作成して、研磨処理をスタートした後に(ステップS2〜S5)、その研磨レシピに従った研磨処理の途中に、研磨処理回数(レシピ作成数)Nをインクリメント(+1)するとともに(ステップS21)、渦電流センサ(膜厚測定装置)200あるいは光学センサ、マイクロ波センサにより半導体ウェハWの研磨対象膜201の膜厚を測定する(ステップS22)。
この半導体ウェハWの研磨対象膜201の膜厚測定結果が研磨処理を追加する必要がある程度にその研磨対象膜201が残留している場合には、その半導体ウェハWの研磨対象膜201の膜厚測定結果に応じてシミュレーションソフトにより研磨条件を修正する研磨レシピの自動作成処理を行った後に(ステップS23)、テップS21に戻って、同一の半導体ウェハWの研磨処理を繰り返す。その一方で、半導体ウェハWの研磨対象膜201の膜厚測定結果が研磨処理の追加が不要な場合には、研磨の完了した半導体ウェハWの洗浄・乾燥を行って(ステップS24,S25)、その研磨済みの半導体ウェハWの研磨結果などの格納処理やカセット1001内への収納処理を行って(ステップS26)、ステップS21に戻って、次の半導体ウェハWの研磨処理を繰り返す。
ここで、上記のシミュレーションソフトによる研磨レシピの修正は、図8に示すように、目標プロフィールと現実のプロフィールを比較して(ステップS31)、半導体ウェハWの領域C1〜C4毎における研磨レートの差をその各領域毎の押圧力差に変換するとともに(ステップS32)、目標研磨レートと現実の研磨レートとを比較して(ステップS33)、半導体ウェハWの各領域C1〜C4を研磨するのに必要な時間を計算し(ステップS34)、研磨条件における各領域の押圧力や研磨時間などを調整する研磨レシピを自動作成する。これとともに、これらを反映した自動補正を行って(ステップS35)、次の半導体ウェハWの研磨処理を実行するための修正研磨レシピを自動作成する(ステップS36)。これにより、半導体ウェハを半径方向に沿って均一に研磨することができる。
また、上記のIn-situにおける半導体ウェハWの研磨対象膜201の膜厚測定は、その半導体ウェハの各領域C1〜C4の特定領域、あるいは全領域において、所望の研磨処理が完了しているか否かを判定するために測定するものであるため、その判定方式を適宜選択設定して実行すればよい。例えば、特定領域の測定結果や領域個々の測定結果や測定結果の平均値などを用いて、研磨対象膜201の除去完了や予め決めておいた所定研磨対象膜厚値などを、その測定値自体の時間的変化パターンで判定する。また、その測定結果の時間的変化を1次微分あるいはn次微分して判定し易くすることもできる。
具体的には、図9に示すように、その研磨対象膜201の膜質や膜種などに応じて、その測定結果や微分値などが、設定値以上になるタイミング(検出パターン0)、設定値以下になるタイミング(検出パターン1)、極大値を取るタイミング(検出パターン2)、極小値を取るタイミング(検出パターン3)、上昇を開始するタイミング(検出パターン4)、上昇が終了したタイミング(検出パターン5)、下降を開始するタイミング(検出パターン6)、下降が終了したタイミング(検出パターン7)等により、所望の研磨処理が完了したと判定することができる。また、その微分値(勾配)が指定範囲内に入る、あるいは極大値または極小値を取るタイミング(検出パターン8〜10)に、所望の研磨処理が完了したと判定することもできる。さらに、特定の測定結果が指定範囲内に入って収束するタイミング(検出パターン11)に所望の研磨処理が完了したと判定することもできる。さらに、より高い均一性を求める場合には、全領域の測定結果の全てが指定範囲内に入った(収束した)タイミング(検出パターン12)に、所望の研磨処理が完了したと判定することもできる。
また例えば、膜厚測定値の一次微分値を監視対象とする。被測定対象であるウェハの予め指定した複数の領域(例えば所定半径値範囲や基準点からみた所定角度範囲)のうちで指定したウェハ領域と別のウェハ領域の膜厚測定一次微分値差を算出する。この差が所定のしきい値範囲内に入った点を特徴点(例えば、終点)として検出することも考えられる。更には渦電流センサの研磨開始時点からのインピーダンス積分値Sz(もしくはレジスタンス値Sxやリアクタンス値Sy、膜厚積分値St)を計算し、前もって基準となる前述したインピーダンス積分値S0と比較演算することで研磨状態モニター、研磨終点モニターに使用することができる。
このようにして研磨対象膜201の膜厚を判定することにより、その膜厚自体を測定することができるとともに、研磨処理中に研磨対象膜のCu層やバリア層の研磨終了を検出する必要がある場合には、迅速にそのタイミングを検知して、研磨処理を直ちに終了するなどを実行することができる。また後述する渦電流センサではバリア層として使用されるタングステン(W)の膜厚が1000Åで低圧研磨プロセスに変えて研磨速度を遅くする、といった要求があっても金属膜の絶対膜厚値が随時測定できるため、膜厚値をモニターしながら低圧研磨プロセスに変更することができ、デイッシングやエロージョン量の低減が達成できる。渦電流モニターを使用することで光学式モニターではIn-situで計測が困難であった薄いバリア膜やCVD成膜も膜厚変化モニターが可能になった。
また渦電流センサでは渦電流が形成される領域において、金属がベタ膜状(ある領域全体を覆うような膜形状)に存在していれば、金属バリアの終点検出が可能である。このとき、面内均一性やウェハ特定領域の研磨速度(研磨レート)などの膜厚測定結果が、予め設定されている限界値や限界範囲を超えるような異常が発生した場合には、直ちに異常発生処理を行って研磨動作を停止し、また、半導体ウェハに傷などの欠陥がある場合の測定結果が取得された場合には、その旨を研磨結果に添付することが好ましい。
このように本実施形態においては、半導体ウェハWの領域C1〜C4毎の膜厚に応じて、研磨パッド101に押圧する押圧力をその領域C1〜C4毎に調整することができ、半導体ウェハWの研磨対象膜201をその膜厚等の形状や膜質などに応じた研磨レートで研磨することができる。したがって、半導体ウェハWの研磨対象膜201を高精度に研磨・除去することができる。ここで、研磨対象膜のうち、導電性膜研磨プロセスにおいては、ウェット処理の膜厚測定装置としては、研磨パッド101に窓等の開口を形成する加工を省いて低コスト且つ高精度に半導体ウェハWの研磨処理を行うことができることから、以下に詳述する渦電流センサが好適である。しかしながら、研磨対象物の特性により、マイクロ波センサ、光学センサ等を用いるようにしても勿論よい。
以下、本発明に係る基板研磨装置が備える膜厚測定装置を構成する渦電流センサ(膜厚測定装置)200について、図10から図24を用いてより詳細に説明する。
渦電流センサ(膜厚測定装置)200は、図10(a)に示すように、検出対象の導電性膜201’の近傍にセンサコイル202を配置し、そのコイルに交流信号源203が接続されている。ここで、検出対象の導電性膜201’は例えば半導体ウェハW上に形成された厚さが0〜1μm程度の銅めっき膜(Au,Cr,Wなどのメタル材料の蒸着膜でもよい)、あるいはその下地に形成された厚さがオングストロームオーダのバリア層である。バリア層は、Ta,TaN,Ti,TiN,WNなどからなる高抵抗層であり、この膜厚検出は上述した化学機械研磨における終点を正確に検出する上で重要である。センサコイル202は、検出用のコイルであり、検出対象の導電性膜に対して例えば1.0〜4.0mm程度の近傍に配置される。また渦電流センサの測定対象としてはAl(アルミニウム膜)、コンタクトプラグに使用されるポリシリコン、ハードディスク磁気ヘッドに使用されるCoFe,Zr(ジルコニア)などの導電性物質、金属物質が挙げられる。もちろん半導体ウェハ上に成膜された金属膜や金属配線パターンを含む半導体基板も測定対象である。
渦電流センサには、導電性膜201’に渦電流が生じることにより、発振周波数が変化し、この周波数変化から膜厚を検出する周波数タイプと、インピーダンスが変化し、このインピーダンス変化から膜厚を検出するインピーダンスタイプとがある。即ち、周波数タイプでは、図10(b)に示す等価回路において、渦電流I2が変化することで、インピーダンスZが変化し、信号源(可変周波数発振器)203の発振周波数が変化すると、検波回路205でこの発振周波数の変化を検出し、膜厚の変化を検出することができる。インピーダンスタイプでは、図10(b)に示す等価回路において、渦電流I2が変化することで、インピーダンスZが変化し、信号源(固定周波数発振器)203から見たインピーダンスZが変化すると、検波回路205でこのインピーダンスZの変化を検出し、膜厚の変化を検出することができる。
インピーダンスタイプの渦電流センサでは、信号出力X、Y、位相、合成インピーダンスZ、が後述するように取り出される。周波数F、またはインピーダンスX、Y等から、変換した膜厚値により、金属膜Cu,Al,Au,W、バリヤ膜Ta,TaN,Ti,TiN,WN、コンタクトプラグのポリシリコン等の膜厚の測定情報が得られる。これらを単独、複合、または組合せて終点検出等の研磨工程の判断に用いることができる。渦電流センサは研磨テーブルの内部の表面付近の位置に内蔵することができ、研磨対象の半導体ウェハに対して研磨パッドを介して対面するように位置し、半導体ウェハ上の導電性膜に流れる渦電流からその膜厚を検出することができる。
渦電流センサの周波数は、単一電波、混合電波、AM変調電波、FM変調電波、関数発生器の掃引出力または複数の発振周波数源を用いることができ、金属膜の膜種に適合させて、感度の良い発振周波数や変調方式を選択することが好ましい。
以下に、インピーダンスタイプの渦電流センサについて具体的に説明する。交流信号源203は、2〜8MHz程度の固定周波数の発振器であり、例えば水晶発振器が用いられる。そして、交流信号源203により供給される交流電圧により、センサコイル202に電流I1が流れる。導電性膜201’の近傍に配置されたコイル202に電流が流れることで、この磁束が導電性膜201’と鎖交することでその間に相互インダクタンスMが形成され、導電性膜201’中に渦電流I2が流れる。ここでR1はセンサコイルを含む一次側の等価抵抗であり、L1は同様にセンサコイルを含む一次側の自己インダクタンスである。導電性膜201’側では、R2は渦電流損に相当する等価抵抗であり、L2はその自己インダクタンスである。交流信号源203の端子a,bからセンサコイル側を見たインピーダンスZは、導電性膜201’中に形成される渦電流損の大きさによって変化する。
図11は、本実施形態の渦電流センサにおけるセンサコイルの構成例を示す。センサコイル202は、導電性膜に渦電流を形成するためのコイルと、導電性膜の渦電流を検出するためのコイルとを分離したもので、ボビン311に巻回された3層のコイル312,313,314により構成されている。ここで中央のコイル312は、交流信号源203に接続される発振コイルである。この発振コイル312は、交流信号源203より供給される電圧の形成する磁界により、近傍に配置される半導体ウェハW上の導電性膜201’に渦電流を形成する。ボビン311の上側(導電性膜側)には、検出コイル313が配置され、導電性膜に形成される渦電流により発生する磁界を検出する。そして、発振コイル312の検出コイル313と反対側にはバランスコイル314が配置されている。
図12は、各コイルの接続例を示す。コイル312,313,314は、この実施形態においては同じターン数(1〜20t)のコイルにより形成され、検出コイル313とバランスコイル314とは互いに正相に接続されている。
検出コイル313とバランスコイル314とは、上述したように正相の直列回路を構成し、その両端はこの図12に示すように可変抵抗316を含む抵抗ブリッジ回路317に接続されている。コイル312は交流信号源203に接続され、交番磁束を生成することで、近傍に配置される導電性膜201’に渦電流を形成する。可変抵抗316の抵抗値を調整することで、コイル313,314からなる直列回路の出力電圧が、導電性膜が存在しないときにはゼロとなるように調整可能としている。コイル313,314のそれぞれに並列に入る可変抵抗316(VR1,VR2)でL1,L3の信号を同位相にするように調整する。即ち、図12(b)の等価回路において、
VR1-1×(VR2-2+jωL3)=VR1-2×(VR2-1+jωL1) (1)
となるように、可変抵抗VR1(=VR1-1+VR1-2)およびVR2(=VR2-1+VR2-2)を調整する。これにより、図12(c)に示すように、調整前のL1,L3の信号(図中点線で示す)を、同位相・同振幅の信号(図中実線で示す)とする。
そして、導電性膜が検出コイル313の近傍に存在する時には、導電性膜中に形成される渦電流によって生じる磁束が検出コイル313とバランスコイル314とに鎖交するが、検出コイル313のほうが導電性膜に近い位置に配置されているので、両コイル313,314に生じる誘起電圧のバランスが崩れ、これにより導電性膜の渦電流によって形成される鎖交磁束を検出することができる。即ち、交流信号源に接続された発振コイル312から、検出コイル313とバランスコイル314との直列回路を分離して、抵抗ブリッジ回路でバランスの調整を行うことで、ゼロ点の調整が可能である。従って、導電性膜に流れる渦電流をゼロの状態から検出することが可能になるので、導電性膜中の渦電流の検出感度が高められる。これにより、広いダイナミックレンジで導電性膜に形成される渦電流の大きさの検出が可能となる。
そして、図13は、交流信号源側203からセンサコイル202側を見たインピーダンスZの計測回路例を示している。この図13に示すインピーダンスZの計測回路においては、膜厚の変化に伴う抵抗成分(R)、リアクタンス成分(X)、振幅出力(Z)および位相出力(tan−1R/X)を取り出すことができる。従って、これらの信号出力を用いることで、例えば振幅の大きさにより膜厚を計測するなど、より多面的な研磨の進行状況の検出が可能となる。
上述したように、検出対象の導電性膜201’が成膜された半導体ウェハW近傍に配置されたセンサコイル202に、交流信号を供給する信号源203は、水晶発振器からなる固定周波数の発振器であり、例えば、2MHz,8MHzの固定周波数の電圧を供給する。信号源203で形成される交流電圧は、バンドパスフィルタ302を介してセンサコイル202に供給される。センサコイル202の端子で検出された信号は、高周波アンプ303および位相シフト回路304を経て、cos同期検波回路305およびsin同期検波回路306からなる同期検波部により検出信号のcos成分とsin成分とが取り出される。ここで、信号源203で形成される発振信号は、位相シフト回路304により信号源203の同相成分(0゜)と直交成分(90゜)の2つの信号が形成され、それぞれcos同期検波回路305とsin同期検波回路306とに導入され、上述の同期検波が行われる。
同期検波された信号は、ローパスフィルタ307,308により、信号成分以上の不要な高周波成分が除去され、cos同期検波出力である抵抗成分(R)出力と、sin同期検波出力であるリアクタンス成分(X)出力とがそれぞれ取り出される。また、ベクトル演算回路309により、抵抗成分(R)出力とリアクタンス成分(X)出力とから振幅出力(R2+X2)1/2が得られる。また、ベクトル演算回路310により、同様に抵抗成分出力とリアクタンス成分出力とから位相出力(tan−1R/X)が得られる。ここで、膜厚測定装置本体には、各種フィルタがセンサ信号の雑音成分を除去するために設けられている。各種フィルタは、それぞれに応じたカットオフ周波数が設定されており、例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数を0.1〜10Hzの範囲で設定することにより、研磨中のセンサ信号に混在する雑音成分を除去して測定対象の膜厚等を高精度に測定することができる。
図14は、交流信号源側から見たインピーダンスZの変化を示し、横軸は抵抗成分(R)であり、縦軸はリアクタンス成分(X)である。点Aは膜厚が例えば100μm以上と極めて大きい場合である。この場合には、交流信号源203の端子a,bからセンサコイル202側を見たインピーダンスZは、センサコイルに近接して配置された導電性膜201の渦電流が極めて大きく、センサコイル202と等価的に並列に接続された抵抗成分(R2)とリアクタンス成分jω(M+L2)が極めて小さくなる。従って、抵抗成分(R)およびリアクタンス成分(X)が共に小さくなる。
研磨が進行して導電性膜が薄くなると、センサコイル入力端(端子a,b)から見たインピーダンスZは、等価的な抵抗成分(R2)が増大し、リアクタンス成分jω(M+L2)も増大する。センサコイル入力端から見たインピーダンスZの抵抗成分(R)が最大となる点をBで示す。この時、センサコイル入力端から見た渦電流損が最大となる。さらに研磨が進行し、導電性膜がより薄くなると、渦電流が減少し、センサコイルから見た抵抗成分は、渦電流損が徐々に減少することから、抵抗成分(R)は徐々に小さくなる。そして、導電性膜が全て研磨により除去されると、そこには渦電流損が存在せず、等価的に並列接続された抵抗成分(R2)は無限大となり、センサコイル自体の抵抗分(R1)のみが残ることになる。この時のリアクタンス成分(X)は、センサコイル自体のリアクタンス成分(L1)のみである。この状態を、点Cで示す。
実際に、例えばシリコン酸化膜中に設けられた溝に銅配線を、いわゆるダマシンプロセスで形成する場合には、シリコン酸化膜上に窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)等のバリア層が設けられ、その上に導電率の高い銅またはタングステン等の金属配線が設けられる。従って、これらの導電性膜の研磨にあたっては、バリア層の研磨の終点検出が重要となる。ところが、バリア層は上述したように窒化タンタル(TaN)または窒化チタン(TiN)等の導電率が比較的低く、かつ膜厚がオングストロームオーダの極めて薄い膜が採用されている。
しかるに、本実施形態の渦電流センサにおいては、このようなバリア層の研磨終点近傍の膜厚検出および研磨中の膜厚値(相対的な膜厚データではなく、絶対的な長さとしての膜厚値)測定が容易に可能となる。即ち、図14に示す、点Dは例えば膜厚が1000Å程度の位置を示し、これより膜厚がゼロとなる、点Cに向けて、膜厚の変化に対応して抵抗成分の変化が極めて大きく、かつ略直線的に変化する。この時に、リアクタンス成分(X)は、図示するように抵抗成分と比較して、極めて変化量が小さい。このため、リアクタンス分の変化に伴って生じる発振周波数の変化に基づいて膜厚を検出するという原理に基づく渦電流センサでは、この膜厚変化に対して発振周波数の変化は極めて小さい。このため、周波数変化の分解能を上げるためには、周波数を高くする必要があった。しかしながら、この渦電流センサ(膜厚測定装置)200によれば、発振周波数は固定したままで、抵抗成分の変化を見ることにより膜厚の変化を検出することができ、比較的低い周波数でこの極めて薄い膜厚の研磨状態を明瞭に観察することが可能となる。ここで、本実施形態では、リアクタンス分の変化に伴って生じる抵抗成分の変化に基づいて膜厚を検出する方式を採用するが、測定対象によっては、発振周波数の変化に基づいて膜厚を検出する方式を採用してもよく、また、リアクタンス成分と抵抗成分との合成インピーダンスに基づいて膜厚を検出するようにしてもよいことはいうまでもない。
なお、図15は、オングストロームオーダの微細な導電性層の膜厚の検出結果を示している。それぞれ横軸は残膜厚を示し、縦軸の実線は抵抗成分(R)を示し、また、縦軸の点線はリアクタンス成分(X)を示している。図15(a)は、タングステン(W)膜に関するデータであり、1000Å以下の微細な残膜厚で抵抗成分の変化を見ることにより明瞭に膜厚の変化を検出できることがわかる。図15(b)は、窒化チタン(TiN)膜に関するデータであり、同様に1000Å以下の領域で膜厚の変化を明瞭に検出できる。図15(c)は、チタン(Ti)膜に関するデータであり、図示するように、膜厚が500〜0Åに変化する間に、その抵抗成分が大幅に変化することで、明瞭にその膜厚の変化を検出することができる。
この図15に示す各例において、抵抗成分(R)の変化に対して、リアクタンス成分(X)の変化は極めて小さい。バリア層の膜厚検出例で、タンタル膜において、残膜厚が0Åと250Åでリアクタンス成分(X)の変化は、0.005%であった。これに対して抵抗成分(R)の変化は、1.8%であった。よって、検出感度の向上はリアクタンス成分の変化を見る方式に対して、約360倍検出感度が向上することになる。
ただし、交流信号源の発振周波数は、導電率が比較的低いバリア層の検出では、発振周波数を例えば8〜16MHz程度に高くすることが望ましい。発振周波数を高くすることにより、バリア層の0〜250Åの膜厚の変化を明瞭に観察することができる。これに対して、例えば銅膜等の導電率が比較的高い金属においては、2MHz程度の低い発振周波数でも明瞭に膜厚の変化の検出が可能である。また、タングステン膜の場合には、8MHz程度の発振周波数が好適である。このように、研磨対象膜の種類に対応して、発振周波数やセンサ増幅度、センサ信号値のOFF-SET値を選択することが好ましい。
また、研磨テーブル100に埋め込まれた渦電流センサにウェハが近接・対向した時にのみ、渦電流センサが図示しない電気・電子回路によって交番バースト電磁界、または正弦波に印加した平衡変調、振幅変調、パルス変調をかけた電磁界をウェハ測定箇所に照射する構成を有する渦電流センサーモジュールでも良い。また更に渦電流の膜厚データ計測タイミングは連続に電磁界を照射しつづける回路構成、あるいは渦電流センサにウェハが近接・対向した時にのみウェハに電磁界を照射する回路構成を取ることができる。電磁界を照射し続ける回路構成を採用したときには、渦電流センサにウェハが近接していない時、対向していない時には過去に取得したデータから予想した膜厚データを補完することで将来の膜厚時間変化、終点時間を予想したり、実際の研磨時間との比較を行うことで、研磨異常検知、装置の異常検出などに使用することもできる。場合によっては渦電流センサにウェハが近接・対向した時以外は非研磨時、研磨布のドレッシング時にセンサの膜厚検出機能を無効にしたり、渦電流信号をサンプリングしないという場合もある。
図16(a)は、これらの渦電流センサを備えた基板研磨装置の要部構成を示す縦断面図であり、図17はその平面図である。図16(a)に示されるように、基板研磨装置の研磨テーブル100は矢印で示すようにその軸心まわりに回転可能になっている。この研磨テーブル100内には、交流信号源および同期検波回路を含むプリアンプ一体型のセンサコイル202が埋め込まれている。センサコイル202の接続ケーブルは、研磨テーブル100の研磨テーブル支持軸321a内を通り、研磨テーブル支持軸321aの軸端に設けられたロータリジョイント334を経由して、ケーブルによりメインアンプ200aを介して膜厚測定装置本体(コントロール部)200bに接続されている。
ここで、膜厚測定装置本体200bには、各種フィルタがセンサ信号の雑音成分を除去するために設けられている。各種フィルタは、それぞれに応じたカットオフ周波数が設定されており、例えば、ローパスフィルタのカットオフ周波数を0.1〜10Hzの範囲で設定することにより、研磨中のセンサ信号に混在する雑音成分を除去して測定対象の膜厚等を高精度に測定することができる。
図16(b)は、渦電流センサ部分の拡大断面図である。研磨テーブル100に埋め込まれたセンサコイル202の研磨パッド側の端面には4フッ化エチレン樹脂などのフッ素系樹脂のコーティング202mを有することで研磨パッドをはがす場合に、研磨パッドと渦電流センサが共にはがれてこないようにできる。また渦電流センサの研磨パッド側の端面は研磨パッド101近傍のSiCなどの材料で構成された研磨テーブル100の面(研磨パッド側の面)からは0〜0.05mm凹んだ位置に設置され、研磨時にウェハに接触することを防止している。この研磨テーブル面と渦電流センサ面の位置の差はできる限り小さい方が良いが実際の装置では0.02mm前後に設定することが多い。またこの位置調整にはシム(薄板)202nによる調整やネジによる調整手段が取られる。
ここで、センサコイル202と膜厚測定装置本体200bを接続するロータリジョイントは、回転部においても信号を伝送することはできるが、伝送する信号線数に制限がある。このことから、接続する信号線は、8本に制限され、DC電圧源、出力信号線、および各種制御信号の伝送線のみに限られる。なお、このセンサコイル202は、発振周波数が、2から8MHzで切り替え可能となっていて、プリアンプのゲインも研磨対象の膜質に応じて切り替え可能となっている。
この研磨テーブル100の回転は、図17に示すように、その研磨テーブル100の外周面に取り付けられたドグ351をドグセンサ350が検出するようになっており、膜厚測定装置本体200bは、ドグセンサ350からの検出信号により、トップリング1の保持する半導体ウェハWの信号処理を開始する。即ち、研磨テーブル100の回転に伴って、センサ軌跡Rが半導体ウェハWを横切るようにトレースする。
このことから、膜厚測定装置本体200bは、図18に示すように、研磨テーブル100が1周する間に、まずドグセンサ350からの信号を受け取る。この時は、まだセンサコイル202上には半導体ウェハWが来ていないので、ウェハ外の信号を受け取る。その後、半導体ウェハWの下にセンサコイル202が位置すると、導電性膜201’などに生じる渦電流に応じたレベルのセンサ信号を受け取る。そして、半導体ウェハWがセンサコイル202上を通過した後には、渦電流が発生していないレベルのウェハ外のセンサ信号を受け取ることになる。
このとき、膜厚測定装置本体200bは、センサコイル202を常にセンシング可能に起動させた状態にあるが、そのまま測定対象の半導体ウェハWの導電性膜201’の膜厚を測定するのではその膜厚が研磨に応じて変化して、受け取るセンサ信号のレベル自体が変化することにより、測定タイミングが不安定になってしまう。このことから、研磨砥液供給ノズル102から水を供給して基準ウェハのダミー研磨を行う水ポリッシング(例えば、1000nmのCu層が成膜された基準ウェハを60回転/分の研磨テーブル100により120秒の水研磨)を行って、半導体ウェハWの研磨領域の測定開始タイミングのレベルを予め取得して設定しておく。詳細には、ドグセンサ350によるウェハの検出信号を受け取ってからの半導体ウェハ有無によるセンサレベルの中間値を半導体ウェハWの縁部の到達判定レベルとする。従って、ドグセンサの信号到達後の半導体ウェハWの縁部の到達判定レベルを超えたタイミングで、例えば、1ミリ秒(msec)毎にセンサ信号を取得する。このセンサ信号の取得は、ウェハがセンサ上を離脱したタイミングで終了する。得られたセンサ信号は、物理的な寸法に対応させて、各領域に割り振られる。
この膜厚測定装置本体200bが受け取るセンサ信号は、図19(a)に示すように、半導体ウェハW内におけるセンサ軌跡Rを直線化すると、その半導体ウェハW下方の中心部(図4のC1)から周縁部(C4)までに対応させることができ、例えば、図19(b)に示すように、半導体ウェハWを3分割した中心部(C1)、中間部(C2)、周縁部(C3,C4)毎の導電性膜201の膜厚を研磨前から研磨後に亘って計測することができる。各領域のセンサ信号は例えば平均等の演算処理が施され、各領域の計測値とされる。
なお、半導体ウェハWは、最外周領域は導電性膜201’を形成しない部分であることから、当該領域のセンサ信号を破棄して処理する、所謂エッジカット処理を行う。また、本実施形態では、半導体ウェハWを3つの領域に分割して5領域での計測値を取得しているが、押圧力を調整可能な領域に対応させて4つの領域C1〜C4に分割して7領域での計測値を取得・制御するようにしてもよい。さらに、半導体ウェハWの研磨面をより細かく、あるいはより粗く区画してもよいことはいうまでもない。
図20に示すように、取得したセンサ信号を各領域C1〜C4毎に割り振って、その領域幅に応じた個数の計測値を算出・取得する。例えば、半導体ウェハW下方へのセンサコイル202の進入から離脱までの間において、進入時の周縁部(C3,C4)の領域1では2個の計測値を取得し、次いで、中間部(C2)の領域2でも2個の計測値を取得し、次いで、中心部(C1)の領域3では1個の計測値を取得する。この後に、再度、中間部(C2)の領域4では2個の計測値を取得し、最終に周縁部(C3,C4)の領域5でも2個の計測値を取得する。
ここで、膜厚測定装置本体200bは、各領域毎に取得した計測値に基づいて、半導体ウェハW下方のセンサコイル202の通過(研磨)毎に導電性膜201’の膜厚を測定すると共に、各領域毎の膜厚を表示装置(ディスプレイ)に表示するなどの処理を行うことから、図20に示すように、対象領域外(ウェハ外や領域外)のセンサ信号に基づく計測値に代えて、補完データを生成して表示処理などをするようになっている。この補完データ(値)は、表示データが大きく振れないように、導電性膜201’が存在すると仮想して表示処理などをすることから、例えば、予め設定されている個数の直近の有効な計測値を用いて、次の演算式から算出する。
補完値=[計測最大値−計測最小値]×係数(変換率%)−計測最小値
ここでは研磨テーブルの回転毎に渦電流センサと被研磨物であるウェハが対向している期間のみ膜厚データを計測する回分式で計測するものである。また測定対象の膜厚変化に応じた渦電流センサからの信号は前述したドグセンサ350からの信号主導の外部同期型のA/D変換器により10μ秒乃至数100μ秒(例えば100μ秒)毎に連続計測された複数個のデータを同期加算(例えばここではドグセンサ350から得られた連続した100μ秒毎のデータを10個分を加算して平均し、このデータを1m秒のデータとすることを意味する)し、この加算し平均化することでデータのノイズを減少することもできる。
図21は、図16に示す研磨テーブル100の他の実施形態である。図示するように、センサコイル202a〜202fは、トップリング1に保持された研磨中の半導体ウェハWの中心Cwが通過する位置に、この場合は6ヶ所に設置されている。符号CTは研磨テーブル100の回転中心である。センサコイル202a〜202fは、半導体ウェハW下方の中心部(図4のC1)、中心部から中間部(C2)、外方部(C3)、そして周縁部(C4)を通過している間、その通過軌跡上で連続的に(1周するのを待つことなく)半導体ウェハWのCu層およびバリア層等の導電性膜の膜厚を検出できるようになっている。すなわち、渦電流センサ(膜厚測定装置)200は、半導体ウェハWの押圧力を調整可能に区画されている領域C1〜C4の膜厚を、センサコイル(測定手段)202によりそれぞれ測定可能に構成されている。ここで、センサコイルの周波数を高低の複数種類用いるようにしてもよい。これにより、高い方でバリア層の膜厚変化を主として検出し、低い方でCu層の膜厚変化を主として検出する等の管理を行うことができる。
この場合は、センサコイルを6ヶ所に配置しているが、配置数は適宜変更することができる。また、研磨テーブルに研磨パッドを配置した例について説明するが、固定砥粒プレートを用いるようにしてもよい。また、この場合には固定砥粒プレート内にセンサコイルを配置するようにしてもよい。
上記構成の基板研磨装置において、トップリング1の下面に半導体ウェハWを保持させ、半導体ウェハWを回転している研磨テーブル100の上面の研磨パッド101に昇降シリンダにより押圧する。一方、研磨砥液供給ノズル102から研磨砥液Qを流すことより、研磨パッド101に研磨砥液Qが保持されており、半導体ウェハWの被研磨面(下面)と研磨パッド101の間に研磨砥液Qが存在した状態でポリッシングが行われる。
この研磨中に、センサコイル202a〜202fは、研磨テーブル100が一回転する毎にそれぞれ半導体ウェハWの被研磨面の直下を通過する。この場合、センサコイル202a〜202fは半導体ウェハWの中心Cwを通る軌道上に設置されているため、センサの移動に伴って半導体ウェハWの被研磨面の円弧状の軌道上で連続的に膜厚検出が可能である。そして、この場合には、センサコイルが6ヶ所に設けられているので、断続的にではあるが短い間隔で研磨の進行状況をいずれかのセンサコイルで検出できる。
そして、図22(a)(b)に示すように、研磨が進行するにつれて、センサコイル202a〜202fの信号を膜厚測定装置本体200bで処理する検出値は漸次減少してゆく。即ち、導電性膜の膜厚が減少するにつれて、センサコイル202a〜202fの信号を膜厚測定装置本体200bで処理した値である検出値が減少してゆく。したがって、予め、導電性膜が配線部を除いて除去されたときの検出値の値を調べておけば、検出出力の値をモニターすることにより、CMPプロセスの終点を検出できる。
図23は、膜厚と抵抗成分出力との関係を較正した例を示す。例えば、1000Å(t1)または200Å(t2)等の基準ウェハを準備し、この基準ウェハにおける検出出力を測定し、これらの点を基準点とする。そして、実際の研磨の進行状況に伴う検出出力に対する膜厚変化のデータを取得し、これを点線で示す。この検出出力は、抵抗成分出力の他に、リアクタンス成分出力、インピーダンス(振幅)出力、位相出力が可能である。このデータを上記基準点に対して最小二乗法等の手法によりカーブを形成する。このような手法により、渦電流センサの特性を較正・格納しておくことで、検出出力を適宜増幅処理・オフセット処理などして、渦電流センサの個体差に影響されることなく、その検出出力の変化から直接膜厚の変化を正確に読みとることが可能となる。
このような渦電流センサを多数備えた基板研磨装置によれば、終点検出を半導体ウェハの全面について行うことができ、且つ短時間間隔で行うことができる。そして、上述したようにバリア層であるTa,TaN,TiN層等の研磨終点を検出できるので、極めて高精度の研磨終点の検出を行える。このとき、このように構成された渦電流センサでは、研磨プロセスの最終段階で導電性膜のパッチ残り(研磨除去されなかった金属)が発生しても、半導体ウェハ側の研磨面とセンサコイルの上端との間が3.5mm以下であれば、直径(φ)5mm以上のパッチ残りを検出することができ、後述の研磨プロセスにおいてそのパッチ残りを確実に研磨・除去することができる。さらに、研磨対象の半導体ウェハWの導電性材料による配線が多層化されているような場合でも、このように構成された渦電流センサでは、その配線密度が90%以下であれば確実に表層の導電性膜を検出して研磨・除去することができる。
この膜厚測定装置本体200bにあっては、所定の膜厚で研磨モードを切り替える必要がある場合には、オングストロームオーダの膜厚を測定可能なレンジに当初よりプリアンプまたはメインアンプを選択設定して、正確な膜厚の確認処理を行うことができる。例えば、300Å程度で研磨モードを切り替えることを目的とする場合には、300Å程度以上のW層の研磨中には測定対象の膜厚の測定結果は実測不能なオーバレンジ(飽和)とし、その研磨が進んで300Å程度以下で直線的な特性が得られるようにする。
即ち、図24(a)に示すように、アンプのゲインを300Å相当の信号以上で飽和するように設定する。例えばW層の層膜を研磨する場合に、図24(b)に示すようにW層の研磨が点線で示すように進行しても、アンプ出力は図中実線で示すように飽和のために一定となる。しかしながら、膜厚が300Å程度を切ると、アンプが直線的に動作するため、アンプ出力は図中実線で示すように低下する。従って、図24(c)に示すように、この1次微分を取ることで、膜厚が300Å程度に到達したことを明確に検出することができる。
この測定結果を得て、研磨装置の動作モード(レシピ)を、バリア層用に切り替えることで、高精度な研磨処理を実行可能にする。また、センサの動作モード(レシピ)も発振周波数の切り替えや、増幅度の切り替えにより、微小な膜厚のバリア層の有無を確実に検知して、研磨の終了タイミングを適切に判断することができるようになる。
そこで、この基板研磨装置のコントローラ400(図2参照)は、マイクロ波センサ、渦電流センサ等の膜厚測定装置200,200’による半導体ウェハWの中心部(図4のC1)、中間部(C2)、周縁部(C3,C4)の膜厚の測定結果に基づいて、レギュレータRE3〜RE6がトップリング1の各圧力室22〜25に供給する加圧流体の圧力をそれぞれ独立に調整し、研磨テーブル100上の研磨パッド101に押圧する押圧力を半導体ウェハWの領域C1〜C4毎に最適化するようになっている。
ここで、膜厚測定装置200,200’は、研磨テーブル100上の研磨パッド101に押圧する押圧力を半導体ウェハWの領域C1〜C4毎に最適化するために、導電性膜201の膜厚の測定結果をコントローラ400に受け渡す一方、コントローラ400は、その膜厚の測定結果に基づいて膜厚測定装置200,200’への指示命令を生成する。すなわち、膜厚測定装置200,200’は、自身の膜厚測定結果に基づくコントローラ400からの指示命令に従って、例えば、測定対象の膜種や多層膜などの種別に適合したパラメータ等を選択切換する動作モードの切換制御を実行することにより、そのパラメータを用いたセンサ信号の演算処理などを行って膜厚測定を行う。
ここで、本実施形態においては、半導体ウェハの研磨対象膜を研磨により除去する場合を説明したが、所謂、エッチング、無電解研磨、超純水電解研磨においても、同様に研磨対象膜の膜厚測定を行ってプロセス制御することができる。また、研磨対象膜を除去する場合だけでなく、成膜工程においても、同様に研磨対象膜の膜厚測定を行って、そのプロセス制御を行ってもよいことはいうまでもない。
また例えば、渦電流センサ(2MHz、8MHz、20MHz、160MHzの発振周波数から適宜選択する)や周波数が30GHzから300GHz帯の電磁波を研磨プロセス中で発生するパッド上のスラリ廃液、排液されるスラリー反応液に電磁印加することにより発生する反磁場、反射波の振幅、反射波のインピーダンス変化を検出し、研磨前の基準インピーダンスと比較したり、インピーダンスの時間微分の変化を観察することでウェハ研磨終点、異常判定のための研磨モニターの信号として使用することもできる。またこの廃液や反応液の渦電流センサや電磁波による観察はめっき装置、超純水電解研磨装置、無電解めっき装置、無電解研磨装置の成膜工程、膜除去工程の電解液・超純水のモニターにおいても採用することができる。
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもなく、例えば、基板研磨装置の基板保持装置や渦電流センサは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。