JP2007242669A - 半導体発光装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】半導体発光装置の光取り出し面に設ける凹凸形状を均一に且つ低抵抗に形成でき、外部量子効率を向上できるようにする。
【解決手段】半導体発光装置は、第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する窒化物半導体からなる活性層3と、該活性層3の第1主面上に上部が凹凸状に形成された凸部4aを有し、活性層3からの発光光を取り出すn型半導体層4と、活性層3の第2主面上に形成されたp型半導体層2とを有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体発光装置に関し、特に、窒化物系半導体を用いた半導体発光装置及びその製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)に代表される窒化物系半導体を用いることにより、これまで高い発光強度を得ることが困難であった紫外域から青色さらには緑色の波長帯を有する発光ダイオード(LED)装置及び半導体レーザ装置等の半導体発光装置が実用化されつつある。LED装置は蛍光灯と比べて長寿命であるため、特に、窒化物系化合物半導体からなるLED装置は照明用光源として期待されている。
以下、従来の窒化物系半導体からなるLED装置の一例について説明する。図7は第1の従来例に係る窒化物系半導体からなるLED装置を示している。
図7に示すように、第1の従来例に係るLED装置は、主面の面方位が(0001)面であるサファイア基板101の主面上に、n型GaN層102、窒化インジウムガリウム(InGaN)からなる活性層103及びp型GaN層104がエピタキシャル成長により順次積層されて構成されている。なお、主面の面方位が(0001)面であるサファイア基板101上には、他の面方位を持つ基板よりも高品質のGaN層を得られることが広く知られている。
p型GaN層104及び活性層103の一部はエッチングにより除去されて、n型GaN層102を露出する切り欠き状の開口部108が設けられ、該開口部108からの露出領域の上にはn側電極106が形成されている。
p型GaN層104の上には、p側透明電極105が設けられ、該p側透明電極105上の一部にp側ボンディング電極107が形成されている。
次に、第1の従来例に係るLED装置の動作を説明する。
まず、動作電流としてp側ボンディング電極107から注入された正孔は、p側透明電極105によりp型GaN層104に拡げられた後、p型GaN層104から活性層103に注入される。一方、n側電極106から注入された電子は、n型GaN層102を通じて活性層103に注入される。活性層103において注入された正孔と電子とが再結合することにより発光光が生じ、生じた発光光はp側透明電極105を通して該LED装置の外部に放出される。
ところで、このような第1の従来例に係るLED装置は光取り出し効率が低いという問題がある。光取り出し効率とは、活性層103で発生した光のうち、LED装置から空気中に放出される割合である。光取り出し効率が低い原因は、半導体の屈折率が空気よりも大きいため、活性層103で生じた光の一部が半導体と空気の界面で全反射されてLEDの内部に閉じ込められるからである。例えば、GaNの屈折率は波長が450nmで約2.45であるため、全反射が生じる臨界屈折角は約23°と小さい。
すなわち、半導体と空気との界面における法線に対して、この臨界屈折角よりも大きい角度で活性層103から放射された光は、半導体と空気との界面で全反射されるため、結局、活性層103から放出される光のうちの約4%しかLED装置の外部へ取り出すことができない。従って、外部量子効率(LED装置に投入した電流のうち、該LED装置から光として取り出せる効率)が低く、蛍光灯と比べて電力変換効率(投入した電力のうち、外部へ取り出せる光出力としての効率)が低いという問題がある。
この問題に対する解決策として、特許文献1に記載されているように、光取り出し面に2次元周期構造を有する凹凸部を形成して、該凹凸部による光の回折効果を利用する技術が提案されている。図8は下記の特許文献1の図1に開示されている第2の従来例に係るLED装置を示している。
図8に示すように、2次元周期構造を有する凹凸部が光取り出し面であるp型GaN層104に形成されており、該p型GaN層104の上には、凹凸部を含めその表面を透明電極105が覆っている。第2の従来例においては、p側透明電極105の平面部分と空気との界面に対して臨界屈折角よりも大きい放射角度で活性層103から発せられた光が、2次元周期構造の凹凸部分によって全反射とならない角度に回折される。このため、LED装置の外部に放出される光の割合が高くなって、光取り出し効率が向上する。
また、第2の従来例においては、特許文献1の図11に示されているように、活性層103から凹凸部分までの距離がLED内部における光の波長の5倍以下である場合に、光取り出し効率が向上すると記載されている。加えて、この場合に、活性層103と凹凸部分とが近接するため、凹凸部の高低差をそれほど大きくしなくても回折作用による光取り出し効率が向上すると共に、加工が容易となる旨が記載されている。
特開2005−005679号公報
しかしながら、前記第2の従来例に係るLED装置は、活性層103と凹凸部との距離を近接させるには、凹凸部を形成するp型GaN層104の厚さを小さくする必要がある。例えば、発光波長が450nmの場合には、LED内部での光の波長は、GaNの屈折率を2.5とすると180nmとなるため、p型GaN層104の厚さは180nmの5倍以下、すなわち0.9μm以下が好ましい。ところが、p型GaN層104の厚さを小さくすると、p型GaN層104の断面積が小さくなって、表面抵抗(半導体層の面方向の抵抗)が増大するため、半導体層の面方向へは電流が拡がりにくくなる。
従って、p型GaN層104の表面抵抗を低減するには、p型GaN層104に高濃度の不純物をドーピングしなければならない。そこで、例えばp型GaNのドーパントであるマグネシウム(Mg)を高濃度にドープしてp型GaN層104を形成すると、その上部を凹凸状に加工する際に表面荒れが発生する。このp型GaN層104に生じる表面荒れにより、2次元周期構造を持つ凹凸部による回折効果が低下するという問題がある。なお、p型GaN層104を凹凸状に加工する際の表面荒れは、Mgを高濃度にドープしてp型GaN層104を形成すると、形成したp型GaN層104の一部に極性反転が発生し、凹凸加工時のエッチング速度がばらつくことにより生じる。また、極性反転とは、以下のようにして生じる。すなわち、主面の面方位が(0001)面、いわゆるC面であるサファイア基板101の主面上に成長するGaN層は、(0001)面の法線方向である晶帯軸の[0001]方向に成長する。この(0001)面を持つGaN結晶は、結晶の対称性から、Ga原子で終端される場合(終端面がガリウム(Ga)面であるという。)と、N原子で終端される場合(終端面が窒素(N)面であるという。)との2つの極性がある。Ga面及びN面のうちの一方の原子で終端されるべき半導体層の一部が他方の原子で終端されてしまうことを極性反転という。
本発明は、前記従来の問題を解決し、半導体発光装置の光取り出し面に設ける凹凸部を均一に且つ低抵抗に形成でき、外部量子効率を向上できるようにすることを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体発光装置の光取り出し面に設ける凹凸部をn型半導体層に形成する構成とする。
具体的に、本発明に係る半導体発光装置は、第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する窒化物半導体からなる活性層と、該活性層の第1主面上に上部が凹凸状に形成された凹凸部を有し、活性層からの発光光を取り出すn型窒化物半導体層と、活性層の第2主面上に形成されたp型窒化物半導体層とを備えていることを特徴とする。
本発明の半導体発光装置によると、光取り出し面であるn型窒化物半導体層の上部に凹凸部が形成されているため、形成された凹凸部により、n型窒化物半導体層における活性層の主面と平行な面との界面に対して臨界屈折角よりも大きい放射角度で活性層から発せられた発光光が全反射とならない角度に回折される。このため、装置の外部に放出される発光光の割合が高くなるので、光取り出し効率が向上する。その上、n型窒化物半導体層に用いられるドーパントは一般にはシリコン(Si)であり、n型窒化物半導体層の表面抵抗を低減するためにSiを高濃度にドープしたとしても、該n型窒化物半導体層には極性反転が生じることがない。このため、n型窒化物半導体層の上部を凹凸状に加工しても表面荒れは生じず、従って、均一な凹凸形状を有し且つ低抵抗なn型窒化物半導体層からなる光取り出し面を形成できる。
本発明の半導体発光装置において、凹凸部はn型窒化物半導体層の上部に周期的に形成されていることが好ましい。
本発明の半導体発光装置において、n型窒化物半導体層における凹凸部の複数の凸部の頂面はほぼ同一平面をなすことが好ましい。
このようにすると、凹凸部の凹凸形状が均一となるため、凹凸部による無効な散乱がなくなるので、回折効果の特性が向上する。
また、本発明の半導体発光装置において、n型窒化物半導体層における凹凸部の複数の凹部の底面はほぼ同一平面をなすことが好ましい。
このようにしても、凹凸部の凹凸形状が均一となるため、凹凸部による無効な散乱がなくなるので、回折効果の特性が向上する。
本発明の半導体発光装置は、n型窒化物半導体層の上に凹凸部を覆うように形成され、発光光を透過する透明電極層をさらに備えていることが好ましい。
このようにすると、光取り出し面の全体に電流が拡がるため、発光効率をさらに向上することができる。
この場合に、透明電極層は、インジウム錫酸化物(indium Tin Oxide:ITO)からなることが好ましい。
このようにすると、可視光を透過することができる。
また、この場合に、透明電極層は金属からなることが好ましい。一般に、n型窒化物半導体と金属との間にはトンネル電流が流れやすいため、金属を薄膜化することにより、透明電極層を形成することができる。
また、本発明の半導体発光装置は、透明電極層を備える場合に、該透明電極層における凹凸部の高低差は、n型半導体層における凹凸部の高低差の0.8倍以上且つ1.2倍以下であることが好ましい。
一般に、凹凸部を覆うように透明電極層を形成すると、凹凸部の高低差が変化するため、凹凸部による光の回折効果が低下する。後述するように、透明電極層における凹凸部の高低差は、n型半導体層における凹凸部の高低差の0.8倍以上且つ1.2倍以下であれば、透明電極層の有無による特性差をなくすことができるため、凹凸部による光の取り出し効率の向上を見込むことができる。
また、本発明の半導体発光装置において、活性層の第1主面及び第2主面の面方位は、(0001)面であることが好ましい。
本発明に係る第1の半導体発光装置の製造方法は、第1の基板の上に、n型窒化物半導体層、窒化物半導体からなる活性層及びp型窒化物半導体層を順次形成することにより、半導体積層体を形成する工程(a)と、第1の基板を半導体積層体から除去する工程(b)と、第1の基板が除去された半導体積層体から露出するn型窒化物半導体層の上部に選択的に凹凸部を形成する工程(c)とを備えていることを特徴とする。
第1の半導体発光装置の製造方法によると、成長用基板である第1の基板の上に、n型窒化物半導体層、窒化物半導体からなる活性層及びp型窒化物半導体層を順次形成した後、第1の基板を除去することにより露出したn型窒化物半導体層の上に凹凸部を形成するため、均一な凹凸形状を有し且つ低抵抗なn型窒化物半導体層からなる光取り出し面を形成することができる。また、一般に、基板上にp型窒化物半導体層、活性層及びn型窒化物半導体層の順に半導体積層体を形成すると、通常用いられる窒化物半導体のp型ドーパントであるマグネシウム(Mg)又は亜鉛(Zn)は固相拡散しやすい。しかしながら、本発明においては、第1の基板の上にn型窒化物半導体層から成長させるため、窒化物半導体の成長中のp型ドーパントの固相拡散を抑制することができるので、良好な動作特性を得ることができる。
第1の半導体発光装置の製造方法は、工程(c)において、凹凸部は、n型窒化物半導体層の上部に周期的に形成することが好ましい。
第1の半導体発光装置の製造方法は、工程(a)と工程(b)との間に、p型窒化物半導体層の上に第2の基板を貼り合わせる工程(d)をさらに備えていることが好ましい。
第1の半導体発光装置の製造方法は、工程(a)において、活性層をその主面の面方位が(0001)面となるように成長させることが好ましい。
本発明に係る第2の半導体発光装置の製造方法は、第1の基板の上部に選択的に凹凸部を形成する工程(a)と、凹凸部が形成された基板の上に、n型窒化物半導体層、窒化物半導体からなる活性層及びp型窒化物半導体層を順次形成することにより、半導体積層体を形成する工程(b)と、p型窒化物半導体層の上に第2の基板を貼り合わせる工程(c)と、第1の基板を半導体積層体から除去することにより、凹凸部が形成されたn型窒化物半導体層を露出する工程(d)とを備えていることを特徴とする。
第2の半導体発光装置の製造方法は、成長用の第1の基板の上部に凹凸部を形成しており、形成された凹凸部の上にn型窒化物半導体層、窒化物半導体からなる活性層及びp型窒化物半導体層を順次形成し、その後、第1の基板を除去する。従って、第1の基板の除去によって露出したn型窒化物半導体層の主面に凹凸部が第1の基板により転写されており、本発明の第1の半導体発光装置の製造方法と同様の効果を得ることができる。
第2の半導体発光装置の製造方法は、工程(a)において、凹凸部は基板の上部に周期的に形成することが好ましい。
第1又は第2の半導体発光装置の製造方法は、半導体積層体を形成する工程において、活性層をその主面の面方位が(0001)面となるように成長することが好ましい。
第1又は第2の半導体発光装置の製造方法は、凹凸部を露出したn型窒化物半導体層の上に、活性層からの発光光を透過する透明電極層を凹凸部を覆うように形成する工程(e)をさらに備えていることが好ましい。
本発明に係る半導体発光装置及びその製造方法によると、半導体積層体の上部に凹凸形状が均一で且つ低抵抗な光取り出し面を形成できると共に、高い外部量子効率を得ることができる。
(一実施形態)
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る半導体発光装置を示している。図1に示すように、例えば、シリコン(Si)からなる保持基板1の上には、厚さが2μmのp型窒化ガリウム(GaN)からなるp型半導体層2と、厚さが3nmのIn0.2Ga0.8Nからなる量子井戸層及び厚さが5nmのIn0.01Ga0.99Nからなるバリア層により構成されたノンドープの活性層3と、厚さが400nmのn型窒化ガリウム(GaN)からなるn型半導体層4とが順次積層された半導体積層体10が形成されている。
ここで、p型半導体層2には、濃度が5×1018cm-3のp型ドーパントであるマグネシウム(Mg)がドーピングされており、n型半導体層4には、濃度が5×1018cm-3のn型ドーパントであるシリコン(Si)がドーピングされている。
なお、本願明細書において、ノンドープとは、意図的なドーピングを行なっていない半導体をいう。また、p型半導体層2の厚さは充分に厚く、上述したMgの濃度でも電気抵抗には問題はない。また、この程度のMgのドープ量ではp型半導体層2には極性反転は生じない。
n型半導体層4の上部には、複数の凸部4aが行列状に形成されて、2次元周期構造を持つ凹凸部が形成されている。凸部4aの周期、すなわちn型半導体層4の主面内で隣り合う凸部4a又は凹部同士の中心の間隔は1μmであって、凸部4aの高さは200nmである。
n型半導体層4及び活性層3の一角部はエッチングにより除去されて、p型半導体層2を露出する開口部8が設けられている。p型半導体層2における開口部8からの露出領域上にはp側電極6が形成されている。
n型半導体層4の上には、n側透明電極層5が各凸部4aを覆うように設けられ、該n側透明電極層5上で且つp側電極6の対角に位置する角部には、n側ボンディング電極7が形成されている。
以下、前記のように構成された半導体発光装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図2(a)〜図2(d)は本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図2(a)に示すように、例えば、有機金属化学気相成長(MOCVD:Metal-Organic Chemical Vaper Deposition)法により、主面の面方位が(111)面であるシリコン(Si)からなる成長用基板9の主面上に、厚さが80nmでノンドープの窒化アルミニウム(AlN)からなるバッファ層(図示せず)、厚さが400nmのn型GaNからなるn型半導体層4、InGaNからなる活性層3及び厚さが2μmのp型GaNからなるp型半導体層2を順次結晶成長することにことにより、半導体積層体10を形成する。なお、主面の面方位が(111)面のSi上には、結晶成長する主面の面方位が(0001)面、いわゆるC面となる窒化ガリウム(GaN)及び窒化アルミニウム(AlN)が成長することが知られている。
また、結晶成長方法には、MOCVD法に限られず、分子線エピタキシャル成長(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等を用いることができる。
次に、図2(b)に示すように、ウェハボンディング法により、半導体積層体10における成長用基板9と反対側の面上、すなわちp型半導体層2の上に保持基板1を貼り付ける。具体的には、p型半導体層2と保持基板1との間に例えば金(Au)とスズ(Sn)とを含む共晶はんだ材を挟むと共に、350℃以上に加熱しながら半導体積層体10に保持基板1を押圧する。ここで、保持基板1には、シリコン(Si)又はより放熱性に優れた銅タングステン(CuW)等を用いることができる。
次に、半導体積層体10から成長用基板9をフッ酸(HF)及び硝酸(HNO3 )の混合溶液(フッ硝酸)を用いたウェットエッチングにより除去する。その後、成長用基板9を除去した後に表面に現われるバッファ層を熱リン酸により除去して、図2(c)に示すように、n型半導体層4における活性層3と反対側の面を露出する。なお、成長用基板9と保持基板1とが共にSiからなる場合には、保持基板1がエッチングされないように、例えば樹脂からなりエッチング耐性を有する材料によって保持基板1の露出部分をマスクした状態で、成長用基板9の除去を行なえばよい。
続いて、図2(d)のように、半導体積層体10のn型半導体層4の上面に、2次元周期構造を持つ凸部4aを形成する。具体的には、n型半導体層4の主面上にレジスト膜(図示せず)を形成した後、形成したレジスト膜を干渉露光法、電子ビーム露光法又はステッパ(step-and-repeat photolithographic system with demagnification)等によってパターニングする。続いて、パターニングされたレジスト膜をマスクとして、塩素(Cl2 )ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)法によるドライエッチング技術により凸部4aを形成する。このときのエッチング条件は、例えば、Cl2 ガスの流量を30ml/min(標準状態[0℃、1atm])とし、圧力を1Paとし、アンテナ側電力を100Wとし、バイアス側電力を10Wとしている。
(製造方法の一変形例)
以下、半導体積層体10におけるn型半導体層4の凸部4aの製造方法の一変形例について図3(a)〜図3(d)を参照しながら説明する。
まず、図3(a)に示すように、主面の面方位が(111)面であるSiからなる成長用基板9の主面上に、2次元周期構造を持つ凹部9aを形成する。この凹部9aは、成長用基板9の上にレジスト膜(図示せず)を形成し、その後、形成したレジスト膜を干渉露光法、電子ビーム露光法又はステッパによってパターニングする。続いて、パターニングされたレジスト膜をマスクとしてエッチングを行なうことにより形成する。
次に、図3(b)に示すように、MOCVD法又はMBE法により、凹部9aを有する成長用基板9の主面上に、厚さが80nmでノンドープのAlNからなるバッファ層(図示せず)、厚さが400nmのn型GaNからなるn型半導体層4、InGaNからなる活性層3及び厚さが2μmのp型GaNからなるp型半導体層2を順次結晶成長することにことにより、半導体積層体10を形成する。
このとき、成長用基板9の主面の面方位が(111)面であることにより、n型半導体層4の上面の面方位は(0001)面となる。
次に、図3(c)に示すように、ウェハボンディング法を用いて、半導体積層体10のp型半導体層2の上に、Si又はCuWからなる保持基板1を貼り合わせる。
次に、半導体積層体10から成長用基板9をフッ硝酸を用いたウェットエッチングにより除去する。その後、成長用基板9を除去した後に表面に現われるバッファ層を熱リン酸により除去して、図3(d)に示すように、n型半導体層4の主面に転写された凸部4aを露出する。
以下、n側透明電極層5、p側電極6及びn側ボンディング電極7を形成する工程を説明する。
図2(d)又は図3(d)に示したようにn型半導体層4における活性層3と反対側の面に複数の凸部4aを設けた後は、図1に示すn側透明電極層5、p側電極6及びn側ボンディング電極7を形成する。
まず、スパッタ法又は化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法により、複数の凸部4aが形成されたn型半導体層4の上に、例えば厚さが100nmのインジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)からなり、活性層3からの発光光に対して透明な金属酸化膜からなるn側透明電極層5を各凸部4aを覆うように堆積する。なお、n側透明電極層5には、ITOのような導電性を持つ金属酸化膜に限られず、発光光の波長に対して透過率が高ければ、電導性が高く且つコンタクト抵抗が小さい金属薄膜を用いることができる。この場合、透過率を確保するために、金属薄膜の膜厚は50nm以下であることが望ましい。例えば、金属からなるn側透明電極層5として、厚さが10nmのチタン(Ti)とその上に形成された厚さが40nmの金(Au)との積層膜を用いることができる。
次に、例えばリソグラフィ法により、n側透明電極層5の上に開口部を有するレジストマスク(図示せず)を形成し、その後、p型半導体層2が露出するまでn側透明電極層5、n型半導体層4及び活性層3の一部を除去して、p型半導体層2を露出する開口部8を形成する。n側透明電極層5は塩酸(HCl)によるウェットエッチングにより、また、n型半導体層4はCl2 ガスを用いたRIE法によるドライエッチングにより、それぞれ除去することができる。
次に、真空蒸着法又はスパッタ法により、p側半導体層2の開口部8からの露出部分の上に、ニッケル(Ni)、白金(Pt)及び金(Au)を含む積層膜又は合金からなるp側電極6を選択的に形成する。
次に、n型半導体層4における凸部4aが形成されていない領域上に、チタン(Ti)、白金(Pt)及び金(Au)を含む積層膜又は合金からなるn側ボンディング電極7を選択的に形成する。
図4(a)は本発明の一実施形態に係る半導体発光装置のn型半導体層4における凹凸部の表面の表面粗さの度数分布を示し、図4(b)は比較用であって、従来例に係る半導体発光装置のp型半導体層における凹凸部の表面の表面粗さの度数分布を示している。図4(a)及び図4(b)において、符号Aは凹凸状部分の凸部の頂面における表面粗さを表わし、符号Bは凹凸状部分の凹部の底面における表面粗さを表わしている。ここで、表面荒さの観測は、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)を用いて行なっている。
図4(a)に示すように、本実施形態に係る半導体発光装置においては、凸部の頂面及び凹部の底面のいずれにおいても、その表面粗さはほぼ40nm以下に分布しており、凹凸形状が均一に精度良く形成されていることが分かる。
これに対し、図4(b)に示すように、従来のp型半導体層の上部に形成された凹部及び凸部の表面粗さは200nmまでの広い範囲に分布しており、凹凸形状が不均一であることが分かる。
図5に本発明の一実施形態に係る半導体発光装置と従来例に係る半導体発光装置のそれぞれの光取り出し効率を示す。ここで、グラフの横軸は凹凸の周期を表わし、縦軸は凹凸部を設けない場合で規格化した光取り出し効率を表わす。図5に示すように、n型半導体層に凹凸部を形成する本発明の方が従来例よりも光取り出し効率が高く、光出力特性が向上していることが分かる。
本実施形態に係る半導体発光装置においては、GaNからなるn型半導体層に添加されるドーパントは一般にシリコン(Si)であり、n型半導体層の表面抵抗を低減するためにSiを高濃度にドープしてもn型半導体層に極性反転が生じることがない。これにより、n型半導体層の上部に凹凸を形成しても表面荒れが生じないため、均一な凹凸部を有し且つ低抵抗なn型半導体層からなる光取り出し面を形成することができる。その結果、高い光取り出し効率を得ることができる。
以下、n型透明電極層5における最適な設計条件を、理論計算を用いて説明する。一般に、凹凸部を形成したGaN層の上に、スパッタ法又はCVD法等により透明電極層を形成すると、成膜条件によっては凹凸部の高低差が変化する場合がある。
図6は本発明の一実施形態に係る発光波長が450nmの半導体発光装置における凹凸部の高低差と光取り出し効率との関係を理論計算した結果を示している。グラフの縦軸はn型透明電極層を形成する前の凹凸部の高低差で規格化した光取り出し効率を示す。グラフの横軸はn型透明電極層を形成した後の凹凸部の高低差Bを、n型透明電極層を形成する前の凹凸部の高低差Aで除した値を示す。
図6からは、0.8A≦B≦1.2Aの範囲において光取り出し効率の値が1.0程度となり、従って、0.8A≦B≦1.2Aの範囲において光取り出し効率が最適化されていることが分かる。すなわち、この範囲において、透明電極の有無による特性差が実質的になくなるため、凹凸部による光取り出し効率の向上を見込むことができる。
これに対し、光取り出し効率が最適化されないB<0.8Aの範囲では、凹凸部における高低差の減少により、凹凸部による回折効果が減少してしまうため、光取り出し効率が低下する。また、B>1.2Aの範囲では、凹凸部における高低差が大きくなり過ぎ、すなわち凸部の断面形状において幅よりも高さが大きくなって縦長となるため、縦長となった凸部における抵抗値が大きくなるので、光取り出し効率が低下する。
本発明に係る半導体発光装置及びその製造方法は、半導体積層体の上部に凹凸形状が均一で且つ低抵抗な光取り出し面を形成できると共に高い外部量子効率を得ることができ、特に窒化物系半導体を用いた半導体発光装置及びその製造方法等に有用である。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置を示す斜視図である。 (a)〜(d)は本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示し、半導体発光装置の半導体積層体を形成する工程順の断面図である。 (a)〜(d)は本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法の一変形例を示し、半導体発光装置の半導体積層体を形成する工程順の断面図である。 (a)は本発明の一実施形態に係る半導体発光装置におけるn型半導体層の凹凸部の凹部及び凸部の表面粗さの度数分布を示すグラフであり、(b)は従来例に係る半導体発光装置におけるp型半導体層の凹凸部の凹部及び凸部の表面粗さの度数分布を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る半導体発光装置における光取り出し効率を従来例と比較したグラフである。 本発明の一実施形態に係る半導体発光装置における光取り出し効率を透明電極層の形成による凹凸部の高低差の変化と光取り出し効率との関係を理論計算した結果を示すグラフである。 第1の従来例に係る窒化物半導体からなるLED装置を示す斜視図である。 第2の従来例に係る窒化物半導体からなるLED装置を示す斜視図である。
符号の説明
1 保持基板(第2の基板)
2 p型半導体層
3 活性層
4 n型半導体層
4a 凸部
5 n側透明電極層
6 p側電極
7 n側ボンディング電極
8 開口部
9 成長用基板(第1の基板)
9a 凹部
10 半導体積層体

Claims (18)

  1. 第1主面及び該第1主面と対向する第2主面を有する窒化物半導体からなる活性層と、
    前記活性層の第1主面上に上部が凹凸状に形成された凹凸部を有し、前記活性層からの発光光を取り出すn型窒化物半導体層と、
    前記活性層の第2主面上に形成されたp型窒化物半導体層とを備えていることを特徴とする半導体発光装置。
  2. 前記凹凸部は、前記n型窒化物半導体層の上部に周期的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
  3. 前記n型窒化物半導体層における前記凹凸部の複数の凸部の頂面は、ほぼ同一平面をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
  4. 前記n型窒化物半導体層における前記凹凸部の複数の凹部の底面は、ほぼ同一平面をなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
  5. 前記n型窒化物半導体層の上に前記凹凸部を覆うように形成され、前記発光光を透過する透明電極層をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
  6. 前記透明電極層は、インジウム錫酸化物(ITO)からなることを特徴とする請求項5に記載の半導体発光装置。
  7. 前記透明電極層は金属からなることを特徴とする請求項5に記載の半導体発光装置。
  8. 前記透明電極層における凹凸部の高低差は、前記n型半導体層における前記凹凸部の高低差の0.8倍以上且つ1.2倍以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
  9. 前記活性層の第1主面及び第2主面の面方位は、(0001)面であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体発光装置。
  10. 第1の基板の上に、n型窒化物半導体層、窒化物半導体からなる活性層及びp型窒化物半導体層を順次形成することにより、半導体積層体を形成する工程(a)と、
    前記第1の基板を前記半導体積層体から除去する工程(b)と、
    前記第1の基板が除去された半導体積層体から露出する前記n型窒化物半導体層の上部に選択的に凹凸部を形成する工程(c)とを備えていることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
  11. 前記工程(c)において、前記凹凸部は、前記n型窒化物半導体層の上部に周期的に形成することを特徴とする請求項10に記載の半導体発光装置の製造方法。
  12. 前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記p型窒化物半導体層の上に第2の基板を貼り合わせる工程(d)をさらに備えていることを特徴とする請求項10又は11に記載の半導体発光装置の製造方法。
  13. 前記工程(a)において、前記活性層はその主面の面方位が(0001)面となるように成長することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の半導体発光装置の製造方法。
  14. 前記工程(c)よりも後に、前記n型窒化物半導体層の上に、前記活性層からの発光光を透過する透明電極層を前記凹凸部を覆うように形成する工程(e)をさらに備えていることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の半導体発光装置の製造方法。
  15. 第1の基板の上部に選択的に凹凸部を形成する工程(a)と、
    前記凹凸部が形成された前記基板の上に、n型窒化物半導体層、窒化物半導体からなる活性層及びp型窒化物半導体層を順次形成することにより、半導体積層体を形成する工程(b)と、
    前記p型窒化物半導体層の上に第2の基板を貼り合わせる工程(c)と、
    前記第1の基板を前記半導体積層体から除去することにより、凹凸部が形成された前記n型窒化物半導体層を露出する工程(d)とを備えていることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
  16. 前記工程(a)において、前記凹凸部は、前記基板の上部に周期的に形成することを特徴とする請求項10に記載の半導体発光装置の製造方法。
  17. 前記工程(b)において、前記活性層はその主面の面方位が(0001)面となるように成長することを特徴とする請求項15又は16に記載の半導体発光装置の製造方法。
  18. 前記工程(d)よりも後に、前記n型窒化物半導体層の上に、前記活性層からの発光光を透過する透明電極層を前記凹凸部を覆うように形成する工程(e)をさらに備えていることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の半導体発光装置の製造方法。
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WO2021140743A1 (ja) * 2020-01-10 2021-07-15 パナソニックIpマネジメント株式会社 光デバイス

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