JP2007240487A - 超音波フェイズドアレイ送受波器 - Google Patents

超音波フェイズドアレイ送受波器 Download PDF

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Abstract


【課題】 直交4ビームに加え、真下にビームが放射できる小型な超音波フェイズドアレイ送受波器を提供することを課題とする。
【解決手段】 超音波振動子21を行列配列し、配列された超音波振動子21を一定の規則に従いグループ化して回路を形成し駆動する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、水中超音波ビームを形成する超音波振動子のフェイズドアレイに関し、特に配列接続方法と駆動方式によって小型軽量化するのに好適な超音波フェイズドアレイ送受波器に関するものである。
ドップラー効果を利用する速度計や伝播時間を利用する高度計など水中において測定や測量を行う計測機器には超音波が利用されている。この種の高度計や速度計には超音波を送信、受信するための送受波器が用いられる。従来から使用されている超音波の送受波器には、ビームの先端が正方形を形成するように4つのビームを放射する直交4ビームとよばれるビームを持つ送受波器がある。
図1は、従来の送受波器のビームを示す斜視図である。送受波器1から4つのビームが放射される。図1は、ビーム放射面4の中心を通りビーム放射面4に垂直な軸をZ軸として示している。通常使用されている送受波器では、ビーム2の主極軸3とZ軸とが成す角度α(仰角)は30度を成す。また、4つのビーム先端βは、ビーム放射面4と平行な面内において、正方形の頂角を成す。
従来の送受波器は、水中音波の波長の10〜20倍の直径を有する円盤状の圧電セラミックス板からなる超音波振動子を4個使用し、仰角を予め持たせて送受波器内に配置する構造(以下、4円盤振動子方式とよぶ)となっている。
前記の4円盤振動子方式による送受波器は形状が大きい為、これを小型にすべく、各種試みがなされている。例えば、矩形板状の小さな超音波振動子を平面配列し、前記円盤状の圧電セラミックス板からなる超音波振動子1個と同程度の大きさで直交4ビームを放射できる送受波器の提案がなされている。
前記矩形板状の小さな超音波振動子を平面配列してなる送受波器は、超音波フェイズドアレイ送受波器(以下、フェイズドアレイ方式とよぶ)とよばれ、高度や速度などの算出方法は、前記の4円盤振動子方式と同じであり、4つのビームの反射信号から速度や高度などが算出できる。このようなフェイズドアレイ方式による送受波器は特許文献1または特許文献2に開示されている。
特開2001−197595号公報 特開2001−305217号公報
前述した従来の4円盤振動子方式、或いは、フェイズドアレイ方式による送受波器において、図1に示す高度Hを計測する場合には、直交4ビームそれぞれのビーム先端βまでの直線距離を計測し、角度αを用いて計算して求めている。
しかしながら、高度が高くなるにつれて、或いは水深が深くなるにつれて、前記直線距離の計測結果から求まる送受波器の直下の位置と送受波器直下の真の位置との差が大きくなり、高度或いは深度との誤差が大きくなるという問題点がある。この対策として、送受波器の直下へ向けてビームを放射する超音波振動子を追加することも考えられるが、4円盤振動子方式であれば、形状がさらに大きくなるという問題点がある。
従って、本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。具体的には、直交4ビームに加え、真下にビームが放射できる小型な超音波フェイズドアレイ送受波器を提供することを課題とする。
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。即ち、本発明は、超音波振動子を行列配列し、配列された超音波振動子を一定の規則に従いグループ化して回路を形成し駆動することをその要旨とする。
本発明によれば、対抗する二面の一面に表面電極、他方の面に裏面電極を有し、前記表面電極が超音波の放射面となる超音波振動子を、分極方向を揃えて平面上にN行、M列(NとMは正の整数)となるように行列配列し、各行には4個以上M個以下の前記超音波振動子が配列されてN行配列を成し、各列には4個以上N個以下の前記超音波振動子が配列されてM列配列を成す超音波フェイズドアレイ送受波器であって、前記超音波振動子は、隣接する前記超音波振動子の前記放射面中心が、水中音波の波長をλとしてP=(0.5±0.25)×λの間隔となるように行列配列され、前記各表面電極が前記行毎に結線されてN本の結線群を成し、前記各裏面電極が前記列毎に結線されてM本の結線群を成し、前記N本の結線群を行方向に順次(4K+1)行目のグループと(4K+2)行目のグループと(4K+3)行目のグループと(4K+4)行目のグループ(但し、K=0、1、・・・N/4−1とする)の4つのグループに分けて、グループ毎に結線をし、それぞれを入出力端子F1、F2、F3、F4とし、前記M本の結線群を列方向に順次(4L+1)列目のグループと(4L+2)列目のグループと(4L+3)列目のグループと(4L+4)列目のグループ(但し、L=0、1、・・・M/4−1とする)の4つのグループに分けて、前記グループ毎に結線をし、それぞれを入出力端子R1、R2、R3、R4とし、前記入出力端子F1と前記入出力端子F3を第一の変成器の平衡2次回路に接続し、前記入出力端子F2と前記入出力端子F4を第二の変成器の平衡2次回路に接続し、前記入出力端子R1と前記入出力端子R3を第三の変成器の平衡2次回路に接続し、前記入出力端子R2と前記入出力端子R4を第四の変成器の平衡2次回路に接続し、前記第一の変成器と前記第二の変成器の各2次回路中性点の結線部と、前記第三の変成器と前記第四の変成器の各2次回路中性点の結線部とを第五の変成器の2次回路に接続してなり、前記第一の変成器の1次回路は前記N行配列の奇数行の交互逆接続を成し、前記第二の変成器の1次回路は前記N行配列の偶数行の交互逆接続を成し、前記第三の変成器の1次回路は前記M列配列の奇数列の交互逆接続を成し、前記第四の変成器の1次回路は前記M列配列の偶数列の交互逆接続を成し、前記第五の変成器の1次回路は前記すべての超音波振動子の順接続を成すことを特徴とする超音波フェイズドアレイ送受波器が得られる。
本発明は、厚みを有する円板状或いは角板状の圧電セラミックス板の表裏に電極を設けて、一方を表面電極、他方を裏面電極とし、表面電極と裏面電極との間に高電界を印加して分極処理を施した多数の超音波振動子を平面上にN行、M列に行列配列する。超音波振動子は分極されている方向を揃えて、つまり配列した際に、表は全て表面電極となり、裏は全て裏面電極となるように配列する。
また、各行と各列における各超音波振動子のピッチ間隔は、水中音波の波長をλとしてP=(0.5±0.25)×λの間隔にする。この時、超音波振動子の数はN×M個配列することが好ましく、NとMは等しく、共に4の整数倍になることが好ましい。また、行を2等分する線及び列を2等分する線のそれぞれに対して線対称となるような配列をすれば、1行には4以上M個未満の超音波振動子を配列し、1列には4以上N個未満の超音波振動子を配列すれば良く、必ずしも、全ての行にN個、すべての列にM個の超音波振動子を配列する必要はない。
本発明では、超音波振動子を上記の配列にし、各表面電極を行ごとに4つのグループ分け、各裏面電極を列ごとに4つのグループ分ける。この時、例えば、N=M=16であれば、表面電極は、行を上から下へ順に、1行目・5行目・9行目・13行目を1つのグループにし、2行目・6行目・10行目・14行目を1つのグループにし、3行目・7行目・11行目・15行目を1つのグループにし、4行目・8行目・12行目・16行目を1つのグループにして、分けて結線をする。
同じく、裏面電極は、列を右から左へ順に、1列目・5列目・9列目・13列目を1つのグループにし、2列目・6列目・10列目・14列目を1つのグループにし、3列目・7列目・11列目・15列目を1つのグループにし、4列目・8列目・12列目・16列目を1つのグループにして、分けて結線をする。
このように、行を縦方向に上から(4K+1)行目のグループと(4K+2)行目のグループと(4K+3)行目のグループと(4K+4)行目のグループ(但し、K=0、1、・・・N/4−1とする)の4つのグループに分けて、グループ毎に結線をし、列を横方向に右から(4L+1)列目のグループと(4L+2)列目のグループと(4L+3)列目のグループと(4L+4)列目のグループ(但し、L=0、1、・・・M/4−1とする)の4つのグループに分けて、グループ毎に結線をする。
その際、行を4つに分けた各グループをそれぞれ入出力端子F1、F2、F3、F4にして、列を4つに分けた各グループをそれぞれ入出力端子R1、R2、R3、R4にする。さらに、この8個の入出力端子を5個の変成器を用いて回路を構成する。変成器にはフェライトのコアに1次巻線と2次巻線を設けたトランスを使用するのが良い。前記トランスの2次巻線を平衡2次回路と呼び、2次巻線の両端に前記入出力端子を接続する。F1とF3を第一の変成器の平衡2次回路に接続し、F2とF4を第二の変成器の平衡2次回路に接続し、R1とR3を第三の変成器の平衡2次回路に接続し、R2とR4を第四の変成器の平衡2次回路に接続する。また、前記第一の変成器と前記第二の変成器の各2次回路中性点を結線した結線部と、前記第三の変成器と前記第四の変成器の各2次回路中性点を結線した結線部とを第五の変成器の2次回路に接続する。
このような接続により、構成される回路は、第一の変成器の1次回路は奇数行の交互逆接続となり、第二の変成器の1次回路は偶数行の交互逆接続となり、第三の変成器の1次回路は奇数列の交互逆接続となり、第四の変成器の1次回路は配列の偶数列の交互逆接続となり、第五の変成器の1次回路は全超音波振動子の順接続となる回路を形成する。この全振動子を順接続とする回路によって直交4ビームに加え超音波フェイズドアレイ送受波器真下へのビームの放射が可能な超音波フェイズドアレイ送受波器が得られる。
本発明によれば、前記第一乃至第五の変成器の各1次回路に対応して接続され、送信と受信を切り替える機能を有する第一乃至第五の送受波切替回路と、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路、前記第五の送受波切替回路からなる3つのグループに接続を分割して切り替える機能を有する送波ビーム切替回路と、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路から出力される受波信号の位相調整と加算を行う機能を有する第一のビーム合成回路と、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路から出力される受波信号の位相調整と加算を行う機能を有する第二のビーム合成回路と、前記第一のビーム合成回路から出力されるビーム信号と、前記第二のビーム合成回路から出力されるビーム信号と、前記第五の送受波切替回路から出力される受波シングルビーム信号とを切り替えて出力する機能を有する受波ビーム切替回路とからなることを特徴とする超音波フェイズドアレイ送受波器が得られる。
本発明は、送受波切替回路と送波ビーム切替回路と第一のビーム合成回路と第二のビーム合成回路と受波ビーム切替回路とを具備する前記接続及び回路構成による超音波フェイズドアレイ送受波器にする。前記接続及び回路構成による超音波フェイズドアレイ送受波器における第一乃至第五の変成器に対応させて、その各1次回路に第一乃至第五の送受波切替回路を接続する。第一乃至第五送受波切替回路は、前記送波ビーム切替回路の出力する信号に応じて送信と受信を切り替える回路である。
前記送波ビーム切替回路は、前記第一乃至第五の送受波切替回路を3つのグループに分けて信号を出力する。すなわち、一つは前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路のグループ、一つは前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路のグループ、もう一つは前記第五の送受波切替回路のグループである。
前記第一のビーム合成回路は、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路が出力する受波信号出力の位相調整と加算を位相調整回路や加算回路等を用いて行う回路とする。同様に、前記第二のビーム合成回路は、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路が出力する受波信号出力の位相調整と加算を行う回路とする。また、前記受波ビーム切替回路は、前記第一のビーム合成回路と前記第二のビーム合成回路と第五の送受波切替回路それぞれから出力される信号出力を切り替えて出力する回路とする。
本発明による回路構成とすることで、直交4ビームと送受波器直下へのビームを放射して、送信と受信が円滑に行うことが可能な超音波フェイズドアレイ送受波器となる。
本発明によれば、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路は、前記超音波振動子が前記行列配列されて形成してなる前記平面の中心を通り、前記表面電極面からなる面に対する垂線を含む前記N行配列に対して垂直な面内に前記垂線と成す角度が等しい2つの主極を有する送波縦ツインビームを生成する電気信号を前記超音波振動子に送信する機能を有し、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路は、前記中心を通り、前記垂線を含む前記M列配列に対して垂直な面内に前記垂線と成す角度が等しい2つの主極を有する送波横ツインビームを生成する電気信号を前記超音波振動子に送信する機能を有し、前記第五の送受波切替回路は、前記中心を通り、前記垂線を主極とする送受波垂直シングルビームを生成する電気信号を前記超音波振動子に送信する機能を有し、前記第一のビーム合成回路は、前記受波縦ツインビームを受波上シングルビームと受波下シングルビームとに分離する機能を有し、前記第二のビーム合成回路は、前記受波横ツインビームを受波左シングルビームと受波右シングルビームとに分離する機能を有することを特徴とする超音波フェイズドアレイが得られる。
本発明では、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路は、同時に送信動作をさせて送波縦ツインビームを生成する。送波縦ツインビームは、例えば、超音波振動子を上から下へ縦方向にN行配列した行に対して垂直な面で、かつ、N行M列に配列した超音波振動子の平面配列全体の中心を通り超音波放射面に対する垂線を含む面内に、2つの主極を持つビームであって、この2つのビームは各々前記垂線と主極とが成す角度が等しい。また、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路は、超音波フェイズドアレイ送受波器に同時に送信動作をさせて送波横ツインビームを生成する。送波横ツインビームは、超音波振動子を右から左へ横方向にM列配列した列に対して垂直な面で、かつ、N行M列に配列した超音波振動子の平面配列全体の中心を通り超音波放射面に対して垂直な垂線を含む面内に、2つの主極を持つビームであって、この2つのビームは前記垂線と主極とが成す角度が等しいビームである。さらに、前記第五の送受波切替回路は、超音波フェイズドアレイ送受波器に単独で送信動作をさせて前記垂線を主極とする送受波垂直シングルビームを生成する。
更に、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路同時に受信動作をさせて、受波縦ツインビームで受信する信号出力から前記第一のビーム合成回路は位相調整と加算処理により受波上シングルビームと受波下シングルビームを生成する。同様に前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路は同時に受信動作をさせて受波横ツインビームで受信する信号出力から前記第二のビーム合成回路は受波左シングルビームと受波右シングルビームを生成する。さらに、第五の送受波切替回路を受信動作をさせて受波垂直シングルビームで受信する信号出力を得る。これらの受波上シングルビームと受波下シングルビームと受波左シングルビームと受波右シングルビームと受波垂直シングルビームを受波ビーム切替回路で切替えて、時分割された直交4ビームと垂直ビームの合計5ビームが形成できる超音波フェイズドアレイ送受波器が得られる。
前記の如く、本発明によれば、直交4ビームに加え、超音波フェイズドアレイ送受波器の直下にビームが放射できる小型な超音波フェイズドアレイ送受波器の提供が可能となる。
本発明による超音波フェイズドアレイ送受波器は、超音波振動子を、行と列のピッチ間隔を水中音波の波長をλとしてP=(0.5±0.25)×λとなるように分極方向を揃えて平面上に行列配列する。さらに超音波振動子を表面電極を行ごとに4つのグループ分け、裏面電極を列ごとに4つのグループ分ける。この8つのグループの入出力端子を5個の変成器を用いて回路を構成する。
以下、具体的な例を挙げ、本発明の超音波フェイズドアレイ送受波器について図面を参照しながら、さらに詳しく説明する。
図2は、実施例1による超音波フェイズドアレイ送受波器の結線図である。本実施例による超音波フェイズドアレイ送受波器1Aは、図2において、紙面の上から下に行をN=16行、列を右から左にM=16列となるように256個の超音波振動子21を行列配列した。
超音波振動子21は、ジルコン酸チタン酸鉛系の圧電セラミックス材料をプレスし、焼成した焼結体を加工して横10mm、幅10mm、縦15mmのブロックとした。このブロックの横と幅の成す正方形面の2面に電極を設け一方を正極、他方を負極として直流の高電圧を印加し、分極処理を行うことで、縦方向振動モードの共振周波数が85kHzとなる超音波振動子とした。
この超音波振動子21を、256個作り、超音波振動子21の正極を表面電極にし負極を裏面電極として表面電極が表となるように揃えて、図1に示すように正方形状に16行、16列に配列した。この時、縦の隙間31と横の隙間32は1mmにして全てにコルクシートで埋める構造とし、各超音波振動子21はコルクシートを介して接着材で固定した。この配列による行も列も共に各超音波振動子21のピッチPは11mmとなり、水中での波長λが約16mmであるから、P=(0.5±0.25)×λを満たす。
各超音波振動子21の表面電極を全て行毎に接続して16本の横の結線41を作り、行を上から下へ順に、1行目と5行目と9行目と13行目の横の結線41を1つのグループにして、入出力端子F1とした。同様にして、2行目と6行目と10行目と14行目の横の結線41を1つのグループにし入出力端子F2とし、3行目と7行目と11行目と15行目の横の結線41を1つのグループにし入出力端子F3とし、4行目と8行目と12行目と16行目の横の結線41を1つのグループにして入出力端子F4とした。
各超音波振動子21の裏面電極を全て列毎に接続して16本の縦の結線42を作り、列を右から左へ順に、1列目と5列目と9列目と13列目の縦の結線42を1つのグループにして、入出力端子R1とした。同様にして、2列目と6列目と10列目と14列目の縦の結線42を1つのグループにし入出力端子R2とし、3列目と7列目と11列目と15列目の縦の結線42を1つのグループにし入出力端子R3とし、4列目と8列目と12列目と16列目の縦の結線42を1つのグループにして入出力端子R4とした。
また、図2に示すように、入出力端子F1〜F4は変成器T1、変成器T2それぞれの平衡2次回路に、入出力端子R1〜R4の入出力端子は変成器T3、変成器T4それぞれの平衡2次回路に順次接続した。さらに、変成器T1、変成器T2の平衡2次回路中性点の結線と変成器T3、変成器T4の平衡2次回路中性点の結線は変成器T5の平衡2次回路に接続をした。
変成器T1の1次回路から見た振動子配列の接続は、奇数行が一波長間隔で交互に逆接続される。これによる配列面に垂直な方向の指向性は同相入力音圧の逆接続により奇数行間の総和は極小となる。又、垂直方向から±θoの主極方位では奇数行間の経路差が半波長、すなわち位相差πとなって奇数行交互に入力音波の位相が反転し、配列の逆接続による再反転で奇数行間の総和は極大となってツインビームを生成する。
同様に、変成器T2に接続している偶数行、変成器T3に接続している奇数列、変成器T4に接続している偶数列についても±θoに主極を有するツインビームとなる。この関係からビーム仰角となるθ0は式(1)となる。
(2π/λ)×(逆接続間隔:λ)sinθ0=±π・・・・・・(1)
∴ sinθ0=±12、θ0=±30°
変成器T5の1次回路から見た振動子配列の接続は、変成器T1と変成器T2の中性点を接続することで入出力端子F1〜F4を短絡状態にし、変成器T3と変成器T4の中性点を接続することで入出力端子R1〜R4を短絡状態にして、振動子配列の表面電極全てと裏面電極全てを接続する。その結果、全振動子は順接続となり、配列面中心の垂直方向を主極としたシングルビームが得られた。
図3は、実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器の結線図である。図3には超音波フェイズドアレイ送受波器の振動子と変成器の配列と結線と信号処理の入出力回路の構成を示している。本実施例では、超音波振動子22は実施例1に使用したものと同じ超音波振動子を使用した。また、使用する超音波振動子22の数を480個とし、紙面の上から下に行をN=26行、列を右から左にM=26列となるように行列配列した。超音波振動子22の配列は、図3に示すように、各行、各列に26個の超音波振動子22を配列するのではなく、配列した際に、外形が略円形を成す様に、各行、各列とも配列する超音波振動子22の数を調整した。図3において、配列した超音波振動子22の行について行番号を上から下へ1から26とし、列について列番号を右から左へ1から26とする。各行と各列に配列した振動子の数を表1に示す。
Figure 2007240487
本実施例では、実施例1と同様に、各超音波振動子22の表面電極、裏面電極を揃えて配列した。また、縦の隙間33と横の隙間34は1mmにして全てにコルクシートで埋める構造とし、各超音波振動子22はコルクシートを介して接着材で固定したので、各超音波振動子22のピッチPは11mmとなり、P=(0.5±0.25)×λを満たす。
表面電極は各超音波振動子22を全て行毎に接続して26本の横の結線43を作り、さらに、行を上から下へ順に、(4K+1)行目のグループと、(4K+2)行目のグループと、(4K+3)行目のグループと、(4K+4)行目のグループ(但し、K=0、1、・・・N/4−1とする)の4つのグループに分けて横の結線43を接続し、4つの入出力端子F1〜F4とした。
また、裏面電極は各超音波振動子22を全て列毎に接続して26本の縦の結線44を作り、列を横方向に右から(4L+1)列目のグループと、(4L+2)列目のグループと、(4L+3)列目のグループと、(4L+4)列目のグループ(但し、L=0、1、・・・M/4−1とする)の4つのグループに分けて縦の結線44を接続し、4つの入出力端子R1〜R4とした。
また、図3に示すように、入出力端子F1〜F4は変成器T1、変成器T2それぞれの平衡2次回路に、入出力端子R1〜R4の入出力端子は変成器T3、変成器T4それぞれの平衡2次回路に順次接続した。さらに、変成器T1、変成器T2の平衡2次回路中性点の結線と変成器T3、変成器T4の平衡2次回路中性点の結線は変成器T5の平衡2次回路に接続をした。
更に、変成器T1〜T5の各1次回路側に送受信切替回路7A〜7Eを接続した。送受信切替回路7A〜7Eは、送波信号と受波信号の流れる方向の切替を行う。ここで、送波ビーム切替回路8は、送受信切替回路7Aと送受信切換回路7B、送受信切替回路7Cと送受信切換回路7D、送受信切替回路7Eの三つのグループに送波信号を送る回路とした。
図4は、実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器のビーム示す斜視図である。本実施例による超音波フェイズドアレイ送受波器1Bはビーム11Aとビーム11Cからなるツインビームとビーム11Bとビーム11Dからなるツインビームとビーム11Eであるシングルビームを形成する。
又、送受波切替回路7Aと送受波切換回路7Bから出力される受波信号は第一のビーム合成回路9Aに出力され、両方の受波信号の位相を調整して加算し、ビーム11Aとビーム11Cからなるツインビームをビーム11Aとビーム11Cに分離してシングルビームの受波信号として出力する。
ビーム合成の原理は、正負極性が共に交互反転している送受波切替回路7Aから出力される奇数行ツインビーム信号と送受波切替回路7Bから出力される偶数行ツインビーム信号との間に90°の位相差を付与して加算することにより、全行が位相差+90°又は−90°ステップの配列と等価な状態になり、主極方位がビームの仰角で+30°又は−30°のシングルビームに合成される。行間隔と主極方位の関係は式(2)、式(3)となる。
(2π/λ)×(行間隔:λ/2)×sinθ0=+π/2 ・・・・・(2)
∴sinθ0=+12、θ0=+30°
(2π/λ)×(行間隔:λ/2)×sinθ0=−π/2 ・・・・・(3)
∴sinθ0=−12、θ0=−30°
同様に、送受波切替回路7Cと送受波切換回路7Dから出力される受波信号は第二のビーム合成回路9Bに出力され、両方の受波信号の位相を調整して加算し、ビーム11Bとビーム11Dからなるツインビームをビーム11Bとビーム11Dに分離してシングルビームの受波信号として出力する。また、送受波切替回路7Eの受波出力は送波の場合と同様に全素子の順接続状態であることから送波と同様の垂直シングルビームを形成する。
本実施例による超音波フェイズドアレイ送受波器を実際に駆動して指向性を測定した。図5乃至図8は、実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器の指向性の実測データを示すチャート図である。図5乃至図8に示す指向性は、本発明による超音波フェイズドアレイ送受波器を放射面が水面に対して垂直となるようにして水中深さ3mに沈め、放射面から3m離れた位置に水中マイクロホン或いは水中スピーカを配列し、本発明による超音波フェイズドアレイ送受波器を水面に対して水平方向に回転させながら送信及び受信の指向性を測定したものである。
図5乃至図8に示すチャートの実線は、各角度における、送信及び受信で得られた信号のレベルを示している。中心から外に向かってレベルが大きいことを示し、単位はdB(デシベル)で表示している。また、各測定で得られた最大値を0dBとしてチャートには示してある。
図5は、送波ビーム切替回路8により送受波切替回路7Eに送信信号を送り、図4に示すビーム11Eであるシングルビームを実測した結果である。図6は送波ビーム切替回路8により送受波切替回路7Aと送受波切換回路7Bに送信信号を送り、図4で示したビーム11Aとビーム11Cからなるツインビームを実測した結果である。図7及び図8は第一のビーム合成回路9Aから出力される図4に示すところのビーム11Aとビーム11Cからなるツインビームがビーム11Aとビーム11Cに分離されてシングルビームとなって出力される受波信号を実測した結果である。
図5乃至図8に示すように、本実施例による超音波フェイズドアレイ送受波器のビームは前述した設計値通りとなっていることが確認できた。
上記の如く、本発明によれば、直交4ビームに加え、真下にビームが放射できる小型な超音波フェイズドアレイ送受波器の提供が可能となる。
本発明による超音波フェイズドアレイ送受波器は海洋開発等において水中で使用する高度速度計や計測機器に利用することができる。
従来の送受波器のビームを示す斜視図。 実施例1による超音波フェイズドアレイ送受波器の結線図。 実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器の結線図。 実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器のビーム示す斜視図。 実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器の指向性の実測データを示すチャート図。 実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器の指向性の実測データを示すチャート図。 実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器の指向性の実測データを示すチャート図。 実施例2による超音波フェイズドアレイ送受波器の指向性の実測データを示すチャート図。
符号の説明
1 送受波器
1A、1B 超音波フェイズドアレイ送受波器
2、11A、11B、11C、11D、11E ビーム
3 主極軸
4 ビーム放射面
7 送受波切替回路
7A、7B、7C、7D、7E 送受信切替回路
8 送波ビーム切替回路
9A 第一のビーム合成回路
9B 第二のビーム合成回路
10 受波ビーム切替回路
21、22 超音波振動子
31、33 縦の隙間
32、34 横の隙間
41、43 横の結線
42、44 縦の結線
F1、F2、F3、F4、R1、R2、R3、R4 入出力端子
H 高度
T1、T2、T3、T4、T5 変成器
α 角度
β ビーム先端

Claims (3)

  1. 対抗する二面の一面に表面電極、他方の面に裏面電極を有し、前記表面電極が超音波の放射面となる超音波振動子を、分極方向を揃えて平面上にN行、M列(NとMは正の整数)となるように行列配列し、各行には4個以上M個以下の前記超音波振動子が配列されてN行配列を成し、各列には4個以上N個以下の前記超音波振動子が配列されてM列配列を成す超音波フェイズドアレイ送受波器であって、前記超音波振動子は、隣接する前記超音波振動子の前記放射面中心が、水中音波の波長をλとしてP=(0.5±0.25)×λの間隔となるように行列配列され、前記各表面電極が前記行毎に結線されてN本の結線群を成し、前記各裏面電極が前記列毎に結線されてM本の結線群を成し、前記N本の結線群を行方向に順次(4K+1)行目のグループと(4K+2)行目のグループと(4K+3)行目のグループと(4K+4)行目のグループ(但し、K=0、1、・・・N/4−1とする)の4つのグループに分けて、グループ毎に結線をし、それぞれを入出力端子F1、F2、F3、F4とし、前記M本の結線群を列方向に順次(4L+1)列目のグループと(4L+2)列目のグループと(4L+3)列目のグループと(4L+4)列目のグループ(但し、L=0、1、・・・M/4−1とする)の4つのグループに分けて、前記グループ毎に結線をし、それぞれを入出力端子R1、R2、R3、R4とし、前記入出力端子F1と前記入出力端子F3を第一の変成器の平衡2次回路に接続し、前記入出力端子F2と前記入出力端子F4を第二の変成器の平衡2次回路に接続し、前記入出力端子R1と前記入出力端子R3を第三の変成器の平衡2次回路に接続し、前記入出力端子R2と前記入出力端子R4を第四の変成器の平衡2次回路に接続し、前記第一の変成器と前記第二の変成器の各2次回路中性点の結線部と、前記第三の変成器と前記第四の変成器の各2次回路中性点の結線部とを第五の変成器の2次回路に接続してなり、前記第一の変成器の1次回路は前記N行配列の奇数行の交互逆接続を成し、前記第二の変成器の1次回路は前記N行配列の偶数行の交互逆接続を成し、前記第三の変成器の1次回路は前記M列配列の奇数列の交互逆接続を成し、前記第四の変成器の1次回路は前記M列配列の偶数列の交互逆接続を成し、前記第五の変成器の1次回路は前記すべての超音波振動子の順接続を成すことを特徴とする超音波フェイズドアレイ送受波器。
  2. 前記第一乃至第五の変成器の各1次回路に対応して接続され、送信と受信を切り替える機能を有する第一乃至第五の送受波切替回路と、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路、前記第五の送受波切替回路からなる3つのグループに接続を分割して切り替える機能を有する送波ビーム切替回路と、前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路から出力される受波信号の位相調整と加算を行う機能を有する第一のビーム合成回路と、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路から出力される受波信号の位相調整と加算を行う機能を有する第二のビーム合成回路と、前記第一のビーム合成回路から出力されるビーム信号と、前記第二のビーム合成回路から出力されるビーム信号と、前記第五の送受波切替回路から出力される受波シングルビーム信号とを切り替えて出力する機能を有する受波ビーム切替回路とからなることを特徴とする請求項1に記載の超音波フェイズドアレイ送受波器。
  3. 前記第一の送受波切替回路と前記第二の送受波切替回路は、前記超音波振動子が前記行列配列されて形成してなる前記平面の中心を通り、前記表面電極面からなる面に対する垂線を含む前記N行配列に対して垂直な面内に前記垂線と成す角度が等しい2つの主極を有する送波縦ツインビームを生成する電気信号を前記超音波振動子に送信する機能を有し、前記第三の送受波切替回路と前記第四の送受波切替回路は、前記中心を通り、前記垂線を含む前記M列配列に対して垂直な面内に前記垂線と成す角度が等しい2つの主極を有する送波横ツインビームを生成する電気信号を前記超音波振動子に送信する機能を有し、前記第五の送受波切替回路は、前記中心を通り、前記垂線を主極とする送受波垂直シングルビームを生成する電気信号を前記超音波振動子に送信する機能を有し、前記第一のビーム合成回路は、前記受波縦ツインビームを受波上シングルビームと受波下シングルビームとに分離する機能を有し、前記第二のビーム合成回路は、前記受波横ツインビームを受波左シングルビームと受波右シングルビームとに分離する機能を有することを特徴とする請求項2に記載の超音波フェイズドアレイ送受波器。
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