JP2007238408A - ペースト組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】非酸化性雰囲気中で焼成して焼成膜を得るために用いるペースト組成物において、低酸素雰囲気中でも有機バインダーが速やかに分解飛散して、緻密な焼結性で、導体、抵抗体、誘電体およびオーバーコート層等が形成でき、かつ、導体においては、強酸メッキ液でメッキ処理する際に、ガラスの変質による接着強度劣化がなく、オーバーコート層においては、耐湿、耐酸および寿命特性に優れるペースト組成物を提供する。
【解決手段】ガラス粉末および有機ビヒクルを含有し、PbOを含有せず、ZnOを含有せず、かつ、SiO2−SnO2系である。さらに、前記ガラス粉末が、SiO2を40〜60質量%、SnO2を1〜20質量%、Al23を1〜10質量%、BaOとSrOとCaOとから選ばれる1種または2種以上を合計で20〜50質量%、B23を1〜20質量%、および、Li2OとNa2OとK2Oとから選ばれる1種または2種以上を合計で1〜10質量%からなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、非酸化性雰囲気中で焼成して焼成物を得るペースト組成物に関する。
基板などに、所望形状に塗布し、乾燥して、非酸化性雰囲気中で焼成することにより、抵抗体、導体、誘電体またはオーバーコート層などを形成するように用いられる厚膜ペーストには、導電性金属粉、無機粉末、ガラス粉末および有機バインダー等が含有される。このような有機バインダーとしては、エチルセルロース、アクリル樹脂またはポリ-α-メチルスチレン等が知られている。
非酸化性雰囲気中で、このような厚膜ペーストを焼成すると、前述のような有機バインダーが、酸素と反応して揮発するいわゆるバーンアウトが不十分になりやすく、有機バインダーが炭化し、得られた焼成膜中にカーボンとして残留してしまうという現象が起き易い。このように焼成膜中にカーボンが残留すると、導電性金属粉や無機粉末等の焼結が阻害されるため、緻密な焼成膜が得られなくなる。よって、得られた焼成膜では、例えば電気特性が十分でなく、良好な抵抗体や導体にはならないという問題がある。
このような問題を解消するために、亜鉛系のガラス粉末が検討されてきた。ガラス粉末中の亜鉛酸化物は、非酸化性雰囲気中では、高温で還元され易く、還元により放出される酸素により、焼成膜中に残留するカーボンが、CO2として焼成膜の外に飛散される。すなわち、亜鉛系のガラス粉末を使用することにより、低酸素雰囲気中で焼成する際にも、有機バインダーを速やかに分解飛散させ、残留するカーボンによる焼結阻害を防止するため、緻密な焼成膜が得られるものと考えられる。
しかし、セラミックコンデンサの端子電極を形成するための導電性組成物等では、焼成後に電解メッキを行うので、亜鉛系のガラス粉末を使用し、得られた焼成膜に電解メッキ処理を行うと、端子とコンデンサ素体間の接着強度が大きく低下するという欠点がある。このような現象については、通常、ニッケル、銅または錫などの電解メッキ液が、酸性溶液であることから、メッキ作業中に酸の作用によってガラス成分が変質したり、溶解することにより、ガラスの構造が破壊されて、その結果、接着強度が低下するものと考えられている。
そこで、耐酸性の良いSiO2含有量の多いホウケイ酸亜鉛系のガラスフリットを使用するなど、電極材料、特にガラスフリットの改良が種々なされている。また、特公昭62−1662号公報には、アルカリ土類金属を含有する特定の組成のホウケイ酸亜鉛系ガラスフリットを用いた導電塗料が記載されている。しかし、これらのガラスを使用することによって、電解メッキによる接着強度の劣化はある程度改善されるものの、強酸、例えばpH1での長時間の電解メッキによる接着強度の劣化は改善されていなかった。
特公昭62−1662号公報
本発明は、非酸化性雰囲気中で焼成して焼成膜を得るために用いるペースト組成物において、低酸素雰囲気中でも有機バインダーが速やかに分解飛散して、緻密な焼結性で、導体、抵抗体、誘電体およびオーバーコート層等が形成でき、かつ、導体においては、強酸メッキ液でメッキ処理する際に、ガラスの変質による接着強度劣化がなく、オーバーコート層においては、耐湿、耐酸および寿命特性に優れるペースト組成物の提供を目的とする。
本発明者は、このような目的を達成するため鋭意研究を行った結果、有機バインダーを含有し非酸化性雰囲気中で焼成するためのペースト組成物において、PbOを含有せず、ZnOを含有せず、かつ、SiO2−SnO2系であるガラス粉末を配合させて焼成したとき、緻密な焼成層を形成し、かつ、強酸メッキ液でメッキ処理をする際に、ガラスの変質により、接着強度の劣化がないことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のペースト組成物は、ガラス粉末および有機バインダー(ビヒクル)を含有し、非酸化性雰囲気中で焼成して焼成膜を得るために用いるペースト組成物であり、前記ガラス粉末が、SiO2を40〜60質量%、SnO2を1〜20質量%、Al23を1〜10質量%、BaOとSrOとCaOとから選ばれる1種または2種以上を合計で20〜50質量%、B23を1〜20質量%、および、Li2OとNa2OとK2Oとから選ばれる1種または2種以上を合計で1〜10質量%を含有する。
本発明のペースト組成物を導体ペースト等の厚膜ペーストに用いるには、Cuを含む導電性粉末をさらに含有させればよい。
本発明の焼成体は、前記のいずれかのペースト組成物を非酸化性雰囲気中で焼成して生成して得る。
本発明のペースト組成物を用いてパターンを形成し、非酸化性雰囲気中で焼成することにより、得られる焼成物中にカーボンが残留することがなく、緻密な焼結性で、導体、抵抗体、誘電体およびオーバーコート層等が形成でき、かつ、ガラスの耐酸性が優れているため、導体においては、強酸メッキ液でメッキ処理する際に、ガラスの変質により、接着強度の劣化がなく、オーバーコート層においては耐湿、耐酸および寿命特性に優れるという効果を得ることができる。
本発明のペースト組成物は、ガラス粉末および有機ビヒクルを含有し、PbOを含有せず、ZnOを含有せず、かつ、SiO2−SnO2系である。
電子部品の製造コストの低減や銀のエレクトロマイグレーションによる絶縁不良の防止のため、Cu粉末を用いたペーストが検討され、これによりCu電極を形成した厚膜基板が実用化されている。このようにCuを電極として用いる場合には、焼成時にCuが酸化されることを防止するため、ペーストの焼成を非酸化性雰囲気中で行う必要がある。
該ペースト組成物は、非酸化性雰囲気中で焼成して得られる焼成膜の地球環境に対する影響を考慮し、有害なPbOを含有しない。また、脱バインダー促進効果のあるZnOは、耐酸性を劣化させるため、含有しない。それらの代わりに、耐酸性が優れ、かつ、脱バインダー促進効果のあるSnO2を含有させる。
SnO2は、非酸化性雰囲気中、高温で還元され易く、還元により放出される酸素により、焼成膜中に残留するカーボンが、CO2として膜外に飛散される。すなわち、低酸素雰囲気中で焼成する際にも、有機ビヒクルを速やかに分解飛散させ、残留するカーボンによる焼結阻害を防止するため、緻密な焼成膜が得られるものと考えられる。また、耐酸性を劣化させないため、耐湿および耐酸性に優れる。
本発明で使用するガラスフリットは、SiO2を40〜60質量%、SnO2を1〜20質量%、Al23を1〜10質量%、BaOとSrOとCaOとから選ばれる1種または2種以上を合計で20〜50質量%、B23を1〜20質量%、および、Li2OとNa2OとK2Oとから選ばれる1種または2種以上を合計で1〜10質量%を含有する。
SiO2が、40質量%未満では、十分な耐酸性が得られず、また、60質量%を超えると、軟化温度が高くなりすぎて使用に適さない。
SnO2の添加により、脱バインダー効果が促進されるとともに、耐酸化性に劣る他の酸化物の添加量を抑制することができる。
SnO2が、1質量%未満では、脱バインダー促進効果および耐酸化性効果があらわれず、また、20質量%を超えると、ガラス化しにくくなり失透してしまう。
Al23が、1質量%未満では、失透が起こり易く、10質量%を超えると、ガラスの流動性が損なわれて、使用に適さない。
BaOとSrOとCaOの合計が、20質量%未満では、ガラス化が困難であり、50質量%を超えると、ガラスの軟化温度が高くなりすぎる。
23が、1質量%未満では、ガラス化が困難であり、20質量%を超えると、耐酸性が劣ってしまう。
アルカリ金属成分のLi2O、Na2OおよびK2Oは、ガラスの軟化点を下げるとともに、流動性を与えて、基板との接着性を向上させるが、合計で1質量%未満では、良好な流動性が得られず、10質量%を超えると、粘性が低くなりすぎるとともに、化学的に不安定になり、耐酸性が著しく低下する。
本発明のペースト組成物には、この他に、特性に影響のない範囲で、少量の他の酸化物、例えばMgまたはLaなどの酸化物を、含有させることができる。
以下、実施例に沿って、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
銅粉末100質量部に対して、表1に組成を示すガラス粉末を6質量部と、有機ビヒクルとしてメタクリル酸エステル樹脂のα-テルピネオール溶液15質量部とを混合し、ペースト組成物を得た。得られたペースト組成物を、96%Al23基板上に印刷および乾燥をした後、コンベヤ炉を用いて、900℃ピーク、10分で、窒素雰囲気中で焼成し、銅導体膜を得た。
得られた銅導体膜の外観を目視で観察し、色むらの有無を調べた。結果を表2に示す。表2においては、色むらの見られないものを「○」、色むらの見られたものを「×」で表した。
次に、デジタルマルチメータにより抵抗値を測定し、15μmに換算した面積抵抗値を得た。結果を表2に示す。
次に、電気メッキをした後に、2mm角パットの銅導体膜に対して、はんだで直径0.65mmの錫メッキ銅線をはんだ付けし、ピールテストにより初期接着強度を測定した。
また、前述の電気メッキの前に、pH1の硫酸水溶液に120分間浸漬してから、電気メッキをした後に、2mm角パットの銅導体膜に対して、はんだで直径0.65mmの錫メッキ銅線をはんだ付けし、ピールテストにより酸処理後の初期接着強度を測定した。
(実施例2、比較例1〜5)
ガラス粉末の組成を、表1に示したようにした以外は、実施例1と同様にして、ペースト組成物を調整し、銅導体膜を得た。
得られた銅導体膜について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2007238408
Figure 2007238408
本発明による実施例1、2では、SnO2の脱バインダー促進効果により残留カーボンが減少し、焼結性が向上するという理由で、色むらがなく、1.7mΩ(15μm換算)という好ましい面積抵抗値にあり、電気特性に優れた緻密な焼成膜が得られた。また、酸処理による接着強度の劣化も起こらなかった。従って、本発明による導体形成用のペースト組成物は、セラミックコンデンサの端子電極ペースト、厚膜回路導体ペーストとして、強酸メッキを施しても十分に使用できる特性を有することがわかる。
ZnOを含む比較例1や、B23を36質量%含む比較例2は、色むらや抵抗値は問題ないが、酸処理後の接着強度が大きく劣化した。
また、SnO2の含有量が0.5質量%の比較例3や、SnO2およびZnOを含有しない比較例4、5は、色むらが有り、面積抵抗値が高いことから分かるように、緻密な焼成膜が得られておらず、酸処理後の初期接着強度も、大きく劣化した。

Claims (4)

  1. ガラス粉末および有機バインダーを含有し、非酸化性雰囲気中で焼成して焼成膜を得るために用いるペースト組成物であり、前記ガラス粉末が、SiO2を40〜60質量%、SnO2を1〜20質量%、Al23を1〜10質量%、BaOとSrOとCaOとから選ばれる1種または2種以上を合計で20〜50質量%、B23を1〜20質量%、および、Li2OとNa2OとK2Oとから選ばれる1種または2種以上を合計で1〜10質量%を含有するペースト組成物。
  2. 導電性粉末を含有する請求項1に記載のペースト組成物。
  3. 前記導電性粉末が、Cuである請求項2に記載のペースト組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のペースト組成物を非酸化性雰囲気中で焼成して生成したことを特徴とする焼成体。
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