JP2007237933A - 車体姿勢制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ロール角取得部により取得された車体6のロール角を適切な大きさに抑制するロール制御部と、ロール角に応じて車体のピッチ角を制御するロール角対応ピッチ角制御部とを設ける。ロール制御部を、ショックアブソーバ28の減衰特性の制御によりローリングを抑制する減衰特性依拠ロール制御部とし、ロール角対応ピッチ角制御部を、過渡旋回状態においては、ショックアブソーバ28の減衰特性の制御により、定常旋回状態においては、ブレーキ制御ECU20による前後加速度の制御により、それぞれピッチ角を制御するものとする。ロール角対応ピッチ角制御部を、過渡旋回状態および定常旋回状態の両方において前後加速度の制御によりピッチ角を制御するものとすることもできる。
【選択図】図1
Description
一般に、車両の旋回時には、車体が旋回外側へ比較的小さいロール角でローリングするとともに、僅かに前傾するようにピッチングする場合に乗員の乗り心地が良い、すなわち旋回フィーリングが良いと言われている。本発明を適切なロール制御と組み合わせて実施すれば、この良好なフィーリングを実現することができる。
ただし、上記条件を満たす状態に制御されることは不可欠ではない。車体が中立姿勢に保たれ、あるいは僅かに後傾姿勢に保たれるように制御されたり、ピッチング姿勢が時間の経過と共に徐々に変化するように制御されたりする態様も本発明に含まれる。さらに、本発明は、適切なロール制御と組み合わせて実施されることが望ましいが、それも不可欠ではない。実際に発生するロール角に対応するように、ピッチ角が制御されれば、旋回フィーリングが改善されるのである。
前記車体のロール角を取得するロール角取得部と、
そのロール角取得部により取得されたロール角に応じて前記車体のピッチ角を制御するロール角対応ピッチ角制御部と
を含むことを特徴とする車体姿勢制御装置。
(2)前記ロール角対応ピッチ角制御部が、前記ピッチ角の値を前記ロール角の値に対して予め定められた一対一の関係を保つように制御する固定的制御部を含む(1)項に記載の車体姿勢制御装置。
例えば、ピッチ角とロール角との上記一対一の関係を表すマップや関数を、実験や計算により取得し、それらを制御装置の記憶部に記憶させておき、それらに基づいてピッチ角が制御されるようにすれば、ピッチ角がロール角と一対一に対応する値に制御され、安定して良好な旋回フィーリングが得られる。
ピッチ角はロール角と一対一の関係を維持して変化させられればよく、必ずしも変化の位相が一致している必要はない。
(3)前記ロール角対応ピッチ角制御部が、前記ピッチ角が前記ロール角の増減に伴って増減し、変化の位相が一致するように前記ピッチ角を制御する位相一致型制御部を含む(1)項または(2)項に記載の車体姿勢制御装置。
前述のように、ロール角の変化とピッチ角の変化との位相が一致していれば良好な旋回フィーリングが得られ、ロール角の大きさとピッチ角の大きさとの関係まで一義的に対応していることは不可欠ではない。例えば、走行状態,走行環境や運転者の好みに合わせて大きさの関係が変わるようにすることも可能なのである。
本項が(2)項に従属する場合は、固定的制御部と位相一致型制御部との両方を含む態様と、固定的制御部が同時に位相一致型制御部でもある態様とが含まれる。前者の態様においては、固定的制御部と位相一致型制御部とが、例えば車両の走行状態,走行環境や運転者の好み等に応じて、選択的に作動させられるようにしたり、一方の異常時に他方が作動させられるようにしたりすることができる。
(4)前記車両が、前記車体と前記4つ以上の車輪と前記サスペンションとに加えて、前記4つ以上の車輪の少なくとも一部のものを制動する制動装置と、前記4つ以上の車輪の少なくとも一部のものを駆動する駆動装置とを備えたものであり、かつ、前記ロール角対応ピッチ角制御部が、前記制動装置と前記駆動装置との少なくとも一方の制御により前記車両の前後加速度を制御することによって、前記車体のピッチ角を前記ロール角取得部により取得されたロール角に対応する値に制御する前後加速度依拠ピッチ角制御部を含む(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の車体姿勢制御装置。
本項の車体姿勢制御装置においては、車両の前後加速度の制御により、車体のピッチ角が、ロール角取得部により取得されたロール角に対応して制御される。制動装置により複数の車輪の少なくとも一部のものが制動されれば、車体に、制動により発生する減速度と、車体の質量と、車体の重心と路面との距離(重心高さ)との積で表されるピッチモーメントが作用し、車体の姿勢が後傾側から前傾側へ変化する。車体が中立姿勢であった場合には実際に前傾することとなるが、後傾していた場合は、後傾の程度が低減するのみで、前傾まではしないかも知れない。また、前傾,中立姿勢,後傾は、路面の傾斜とは関係なく、絶対的な水平面に対してのものとする場合も、路面に平行な姿勢を中立とし、その中立姿勢に対して前傾,後傾とする場合も含むものとする。
また、車体の姿勢を前傾側から後傾側へ変える必要がある場合に、既に制動装置による減速度の制御が行われている場合には、減速度が低減させられることによって、車体の姿勢を前傾側から後傾側へ変えることができる。あるいは、駆動装置の駆動トルクが増されて車両が加速され、加速度と車体の質量と重心高さとの積で表されるピッチモーメントが車体に作用し、車体の姿勢が前傾側から後傾側へ変化させられるようにしてもよい。
前後加速度に応じて生じるピッチモーメントによりピッチ角を制御すれば、過渡旋回状態においても、定常旋回状態においてもピッチ角を制御することができる。
(5)前記前後加速度依拠ピッチ角制御部が、
前記ロール角取得部により取得されたロール角に基づいて目標ピッチ角を設定する目標ピッチ角設定部と、
前記車体の実際のピッチ角を取得する実ピッチ角取得部と、
その実ピッチ角取得部により取得された実ピッチ角が前記目標ピッチ角に近づくように前記前後加速度を制御する前後加速度制御部と
を含む(4)項に記載の車体姿勢制御装置。
(6)前記前後加速度制御部が、
前記4つ以上の車輪に制動トルクを作用させるブレーキと、
そのブレーキの作用力を制御することにより、前記前後加速度を制御するブレーキ制御装置と
を含む(5)に記載の車体姿勢制御装置。
本項の特徴によれば、ブレーキを作用させ、あるいは作用力を増すことによって車体の前後方向の姿勢を後傾側から前傾側へ変化させることができ、ブレーキの作用力を減少させれば、前傾側から後傾側へ変化させることができる。
なお、上記ブレーキには、車輪と共に回転するブレーキ回転体と、非回転体に保持された摩擦部材と、その摩擦部材を前記回転体に押圧する押圧装置とを含む摩擦ブレーキや、エンジン,電動モータ等の駆動源と、その駆動源の回転トルクを前記4つ以上の車輪の少なくとも一部のものである駆動輪に伝達する伝達装置とを含み、それら駆動源および伝達装置を回転抵抗付与装置として利用するエンジンブレーキ,電気ブレーキ等が含まれる。
(7)前記前後加速度依拠ピッチ角制御部が、前記車体の姿勢を中立姿勢より前傾側に制御する前傾制御部を含む(4)項ないし(6)項のいずれかに記載の車体姿勢制御装置。
(8)さらに、前記車体のローリングを制御するロール制御部を含み、前記ロール角対応ピッチ角制御部が、そのロール制御部により制御されたロール角に対応するように前記ピッチ角を制御する(4)項ないし(7)項のいずれかに記載の車体姿勢制御装置。
前述のように、ロール角とピッチ角とを共に制御すれば旋回フィーリングを良好にすることが特に容易になる。
本項の特徴は前記(1)項ないし(3)項に係る発明においても採用することができる。
(9)前記サスペンションが、減衰特性の制御が可能なショックアブソーバを含むものであり、かつ、前記ロール制御部が、前記ショックアブソーバの減衰特性の制御により、前記車体のローリングを制御する減衰特性依拠ロール制御部を含む(8)項に記載の車体姿勢制御装置。
本項の特徴によれば、減衰特性を制御可能なショックアブソーバを利用してロール角を制御することができ、安価に目的を達し得る。ただし、ショックアブソーバの減衰特性を利用する関係で、定常旋回状態が続けばロール角の制御ができなくなる。しかし、車両の実際の走行時に定常旋回状態が長く続くことは稀であるので、十分実益がある。
(10)前記サスペンションが、減衰特性の制御が可能なショックアブソーバを含むものであり、前記ロール角対応ピッチ角制御部が、前記車両の過渡旋回状態において、前記ショックアブソーバの減衰特性の制御により前記車体のピッチ角を制御する減衰特性依拠ピッチ制御部を含み、前記前後加速度依拠ピッチ角制御部が前記車両の定常旋回状態において作動する(2)項ないし(8)項のいずれかに記載の車体姿勢制御装置。
上記減衰特性依拠ピッチ制御部による場合も、前記減衰特性依拠ロール制御部よる場合と同様に、定常旋回状態が続けばピッチ角の制御ができなくなる。したがって、過渡旋回状態においては減衰特性依拠ピッチ制御部によりピッチ角の制御が行われ、定常旋回状態においては前後加速度依拠ピッチ角制御部によりピッチ角の制御が行われるようにすることは合理的なことである。また、前後加速度依拠ピッチ角制御部を作動させれば車両の走行速度が変化することとなるため、前後加速度依拠ピッチ角制御部によるピッチ角制御はなるべく短時間で済むようにすることが望ましく、この点からも減衰特性依拠ピッチ制御部との併用は望ましい。特に、制動装置として摩擦ブレーキが使用される場合は、消費エネルギ節減の観点から一層併用が望ましい。
(11)車体と、前後左右の4つ以上の車輪と、それら車輪と車体との間に配設されたサスペンションと、前記4つ以上の車輪の少なくとも一部のものを駆動する駆動装置と、前記4つ以上の車輪の少なくとも一部のものを制動する制動装置とを備えた車両の、旋回時における車体の姿勢を制御する車体姿勢制御装置であって、
前記車両の旋回時に前記車体に作用する遠心力に起因してその車体に発生するピッチングを、前記駆動装置と前記制動装置との少なくとも一方の制御により前記車両の前後加速度を制御することによって制御する前後加速度依拠ピッチング制御部を含むことを特徴とする車体姿勢制御装置。
車両の旋回時には車体に遠心力が作用し、車体がローリングするが、そのローリングに伴ってピッチングが生じることが多い。このピッチングが車両の乗り心地を悪くするものである場合には、前後加速度依拠ピッチング制御部によって、乗り心地のより良いピッチングに制御することが望ましい。
上記(1)項ないし(10)項の各々に記載の特徴は本項の発明にも適用可能である。
図3は実際の車両の2輪モデルを示し、車体6と左右の車輪2との間に、それぞれショックアブソーバ28とスプリング30とが互いに並列に配設されている。それに対し、図4はローリング抑制の原理を説明するための仮想的な2輪モデルを示し、この2輪モデルにおいては、車体6と左右の車輪2との間にはスプリング30のみが配設され、旋回内側の仮想位置を走行する仮想の車輪102と車体6との間に、車両の旋回時に車体6の浮き上がりを抑制する浮上がり抑制ショックアブソーバ104と、車体6のロールを抑制するロール抑制ショックアブソーバ106とが設けられている。この仮想の車両モデルにおいては、旋回内側の車輪(以下、内側輪と称し、旋回外側の車輪を外側輪と称する)2に対応する車高の増大(矢印Uで示す)が抑制され、旋回時における車体重心Oの上昇が抑制されるとともに、車体6のローリング(矢印Qで示す)が抑制される。したがって、実際の車両モデルをこの仮想モデルに適合させることにより、操縦性を向上させることができる。
M・Xbdd=K・Xin+K・Xout+Cin・Xind+Cout・Xoutd・・・(1)
ただし、
M:車体の質量
K:スプリング30のばね定数
Cin,Cout:内側輪および外側輪の減衰係数
Xbdd:車体6の絶対空間における上下方向の加速度
Xin,Xout:内側輪および外側輪のストローク
Xind,Xoutd:内側輪および外側輪のストローク速度
また、車体6の重心Oを通る車両前後方向軸線まわりの運動方程式は下記 (2)式で表される。
Ir・θdd=W・(K・Xin−K・Xout+Cin・Xind−Cout・Xoutd)/2・・・(2)
ただし、
Ir:車体6のロール慣性モーメント
θdd:車体6の重心Oを通る車両前後方向軸線まわりの角加速度
W:左右輪のホイールトレッド
M・Xbdd=K・Xin+K・Xout+T・・・ (3)
Ir・θdd=W・(K・Xin−K・Xout+C・Xind−C・Xoutd)/2+D・T・・・(4)
ただし、
T=Cg・Xind・(W+2D)/2W+Cg・Xoutd・(W−2D)/2W・・・ (5)
Cg:浮上がり抑制ショックアブソーバ104の減衰係
C:ロール抑制ショックアブソーバ106の減衰係数
D:車体6の重心Oと浮上がり抑制ショックアブソーバ104との距離
Cin・Xind+Cout・Xoutd=T・・・(6)
また、(2)式および(4)式から下記(7)式が得られる。
Cin・Xind−Cout・Xoutd=C・Xind−C・Xoutd+2D・T/W・・・(7)
(6)式および(7)式の左辺および右辺同士を加算することにより、ロール時の内側輪のショックアブソーバ28の減衰係数Cinが下記 (8)式で得られる。
Cin=T・(W+2D)/2W・Xind+C・(1−Xoutd/Xind)/2・・・ (8)
同様に(6)式および(7)式の左辺および右辺同士を減算することにより、ロール時の外側輪のショックアブソーバ28の減衰係数Coutが下記(9)式で得られる。
Cout=T・(W−2D)/2W・Xoutd+C・(1−Xind/Xoutd)/2・・・ (9)
(8)式および(9)式を用いて、ロール時の内側輪および外側輪のショックアブソーバ28により発生させられる減衰力はそれぞれ下記(10)式および(11)式で得られる。
Fin=Cin・Xind=T・(W+2D)/2W+C・(Xind−Xoutd)/2・・・(10)
Fout=Cout・Xoutd=T・(W−2D)/2W+C・(Xoutd−Xind)/2・・・(11)
Cfin=Tf・(Wf+2Df)/2Wf・Xfind+Cf・(1−Xfoutd/Xfind)/2・・・(12)
Cfout=Tf・(Wf−2Df)/2Wf・Xfoutd+Cf・(1−Xfind/Xfoutd)/2・・・(13)
Crin=Tr・(Wr+2Dr)/2Wr・Xrind+Cr・(1−Xroutd/Xrind)/2・・・(14)
Crout=Tr・(Wr−2Dr)/2Wr・Xroutd+Cr・(1−Xrind/Xroutd)/2・・・(15)
ただし、
Xfind,Xfoutd,Xrind,Xroutd:内側前輪,外側前輪、内側後輪および外側後輪のストローク速度
Df:前輪側車体重心と前輪側浮上がり抑制ショックアブソーバ104との距離
Dr:後輪側車体重心と前輪側浮上がり抑制ショックアブソーバ104との距離
Wf:前輪のホイールトレッド
Wr:後輪のホイールトレッド
Cf:前輪側に配設されたロール抑制ショックアブソーバ106の減衰係数
Cr:後輪側に配設されたロール抑制ショックアブソーバ106の減衰係数
Tf,Tr:前輪側および後輪側における減衰力の和
Tf=Cgf・Xfind・(Wf+2Df)/2Wf+Cgf・Xfoutd・(Wf−2Df)/2Wf・・・(16)
Tr=Cgr・Xrind・(Wr+2Dr)/2Wr+Cgr・Xroutd・(Wr−2Dr)/2Wr・・・(17)
Cgf:前輪側に配設された浮上がり抑制ショックアブソーバ104の減衰係数
Cgr:後輪側に配設された浮上がり抑制ショックアブソーバ104の減衰係数
まず、ロール角の推定を図6のロール角推定ルーチンに基づいて説明する。最初にS21において、ショックアブソーバ28FL,28FR,28RLおよび28RRにそれぞれ対応する車体各部6FL,6FR,6RLおよび6RRに設けられた上下加速度センサ38の検出値であるばね上加速度Gzi (i=fl, fr, rl, rr)が読み込まれる。続いて、S22において、左輪側および右輪側のばね上加速度Gozl,Gozrが下記(18)式および(19)式により計算される。
Gozl=(Gzfl・Lr+Gzrl・Lf)/L・・・(18)
Gozr=(Gzfr・Lr+Gzrr・Lf)/L・・・(19)
ただし、
L:車両のホイールベース
Lf,Lr:車体重心Oと前車軸および後車軸との距離
Rdd=(Gozl−Gozr)/W・・・(20)
そして、S24において、ロール角加速度Rddを2階時間積分して推定ロール角Reがが計算される。この推定ロール角Reは車体6が右方向へローリングしている場合に正の値をとるものとする。以上により、1回のロール角推定が終了する。
まず、S31においてね上加速度Gzi (i=fl, fr, rl, rr)が読み込まれ、S32において、前輪側および後輪側のばね上加速度の平均値であるGzf,Gzrが計算される。次に、S33において、ピッチ角加速度Pddが下記(21)式により計算され、
Pdd=(Gzr−Gzf)/L・・・(21)
S34において、ピッチ角加速度Pddを2階時間積分して推定ピッチ角Peが計算される。この推定ピッチ角Peは車体6が中立姿勢より前傾側へピッチングしている場合に正の値をとるものとする。
まず、S51において、推定ロール角Reを用いて目標ピッチ角Ptが決定される。この決定は、サスペンションECUのROMに格納されている推定ロール角Reの絶対値と目標ピッチ角Ptとの関係を表す目標ピッチ角テーブルに基づいて行われる。目標ピッチ角テーブルの一例を図11に示す。この例においは、推定ロール角Reの絶対値が大きくなるに従って、目標ピッチ角Ptが増大し、かつ、増大勾配が漸増するように作成されている。目標ピッチ角Ptは必ず正の値をとるようにされている。これは、ローリング時には車体6がやや前傾するようにされていることを意味する。一般にその方が旋回フィーリングが良好であると言われている。なお、目標ピッチ角Ptの決定は、推定ロール角Reと目標ピッチ角Ptとの関係を表す関数の演算により行われるようにすることも可能である。
Pm=Ip・Pdd+Kp・ΔP・・・(22)
ただし、
Ip:車体重心Oを通る車両左右方向軸線のまわりのピッチ慣性モーメント
Kp:ピッチ剛性を考慮したばね係数
そして、これ以後は、S75において、制動制御によるピッチ制御が行われる。
車両に減速度αが発生させられた場合におけるピッチ角Pには、サスペンション4における変位に基づくピッチ角成分Psと、タイヤの弾性変形に起因して車輪2に生じる変位に基づくピッチ角成分Pwとが含まれる。
そして、これらピッチ角成分Psとピッチ角成分Pwとはそれぞれ下記(23)式および(24)式により表される。
Ps=(Xf−Xr)/L=K1・α・・・(23)
Pw=(wf−wr)/L=K2・α・・・(24)
ただし、
K1=(MH/2L2)・{(1−λf)/Kf+(1−λr)/Kr}・・・(25)
K2=(MH/2L2)・{(1/kf+1/kr}・・・(26)
Kf,Kr:前輪側および後輪側のホイールレイト
kf,kr:前輪側および後輪側のタイヤ剛性
λf,λr:前輪側および後輪側のアンチダイブ率
H:車体2の重心高さ
Xf,Xr:前輪側および後輪側の車高変化
wf,wr:前輪側および後輪側の車輪変位
なお、符号MおよびLは、前述のとおり、車体3の質量および車両のホイールベースである。
αt=(K1+K2)-1・Pt・・・(27)
したがって、修正減速度Δαtと修正ピッチ角ΔPtとの間には下記(28)式の関係が成り立つ。
Δαt=(K1+K2)-1・ΔPt・・・(28)
その際、前輪側と後輪側とに1/2ずつの制動力を発生させてもよいが、本実施例においては、前輪側の制動力Bfと後輪側の制動力Brとは下記(29)式,(30)式の関係を満たすように発生させられる。
Bf=αt・M−Br・・・(29)
Br=αt・M・ρ・・・(30)
ただし、
ρ:後輪制動力割合
ρ=(Nr・Ar/Af)/(Nf+Nr・Ar/Af)・・・(31)
Af,Ar:前輪側および後輪側のホイールシリンダ圧
Nf,Nr:前輪側および後輪側におけるホイールシリンダ圧の制動力への変換係数
なお、後輪側ホイールシリンダ圧Arの前輪側ホイールシリンダ圧Afに対する比率Ar/Afは、前輪と後輪とが同時にロックする、いわゆる理想制動力配分が実現されるように、目標減速度αtの各値に対してマップまたは式で与えられる。
このように、ロール角とピッチ角とが適切な大きさに制御されるのみならず、ピッチ角がロール角の変化に応じて制御されるため、両者の変化の位相が一致することとなり、この点においても車両の乗り心地が向上する効果が得られる。
過渡旋回状態においてロール角とピッチ角との位相差を合わせることは旋回フィーリングを向上させる上で非常に有効であるが、ピッチ角を適切な大きさに制御することは、定常旋回状態でも実現することが望ましい。定常旋回状態となってロール角が一定に維持される状態では、ピッチ角もそのロール角に応じた適切な大きさに保たれるようにするのである。
上記ロール角対応ピッチ角制御部のうち特にS75を実行する部分が、ピッチ角をロール角に対応する値に制御する前後加速度依拠ピッチ角制御部を構成しており、特に、ブレーキの作用力を制御することにより前後加速度を制御するものとされている。
また、サスペンションECU10の、後輪側目標減衰力決定ルーチン,前輪側目標減衰力決定ルーチンおよび減衰力制御ルーチンのうち、ロール角の制御に関連するステップを実行する部分が、車体のローリングを制御するロール制御部を構成しており、上記ロール角対応ピッチ角制御部が、ロール制御部により制御されたロール角に対応するようにピッチ角を制御するものとされている。
しかも、サスペンションが減衰特性の制御が可能なショックアブソーバを含むものとされており、ロール制御部がそのショックアブソーバの減衰特性の制御によりロール角を制御する減衰特性依拠ロール制御部を含むものとされている。また、ロール角対応ピッチ角制御部が、車両の過渡旋回状態において、ショックアブソーバの減衰特性の制御によりピッチ角を制御する減衰特性依拠ピッチ制御部と、車両の定常旋回状態において、前後加速度の制御によりピッチ角を制御する前後加速度依拠ピッチ角制御部とを含むものとされている。
さらに具体的な一例を挙げれば、上記実施例において、図6のロール角推定ルーチンおよび図7のピッチ角推定ルーチンを実行した後、図9の前輪側目標減衰力決定ルーチンにおけるS51およびS52を実行して修正ピッチ角ΔPを求め、その修正ピッチ角ΔPが得られるように、図12の機能ブロック図で表されるピッチ角制御を行うとともに、図10の減衰力制御を実行してローリングの抑制を行えばよい。
その一例を図13に示す。この実施例は、前記図1の実施例に駆動制御部を追加したものである。すなわち、前記ブレーキECU20と共に、駆動電子制御ユニット(駆動ECU)142を設け、その駆動ECU142に、エンジン制御アクチュエータ144およびトランスミッション制御アクチュエータ146を介してエンジン148およびトランスミッション150を接続したものである。駆動ECU142は上記アクチュエータ144,146を介してエンジン148およびトランスミッション150を制御することにより車両の駆動力を制御する。駆動力を低減させれば、車両に減速度を生じさせることができ、また、エンジン148の回転数を車速に対応するものより低くすれば、積極的にエンジンブレーキを作用させることができ、ブレーキシステム12の制御に代えることができる。これらの場合は、制動による前後加速度の制御の一種と考えることができるが、逆に、エンジン148の駆動力を増加させれば、減速時とは逆向きのピッチモーメントを生じさせることができ、ピッチ角の制御に利用することができる。
さらに、ピッチ角の制御に当たって、後輪側のジャッキアップ力が打ち消されるようにすることは、操縦安定性のグリップ感を出す上で有効であるが、不可欠ではなく、少なくともピッチ角がロール角との関係で適切に制御されればよい。
さらに、前記実施例においては、ショックアブソーバ28のストロークが車高センサ36により検出され、それの微分によりストローク速度が求められていたが、オブザーバ制御理論によれば、上下加速度センサ38の検出値からオブザーバを使ってストローク速度を求めることができる。
Claims (8)
- 車両の、サスペンションを介して前後左右の4つ以上の車輪に支持された車体の姿勢を制御する装置であって、
前記車体のロール角を取得するロール角取得部と、
そのロール角取得部により取得されたロール角に応じて前記車体のピッチ角を制御するロール角対応ピッチ角制御部と
を含むことを特徴とする車体姿勢制御装置。 - 前記車両が、前記車体と前記4つ以上の車輪と前記サスペンションとに加えて、前記4つ以上の車輪の少なくとも一部のものを制動する制動装置と、前記4つ以上の車輪の少なくとも一部のものを駆動する駆動装置とを備えたものであり、かつ、前記ロール角対応ピッチ角制御部が、前記制動装置と前記駆動装置との少なくとも一方の制御により前記車両の前後加速度を制御することによって、前記車体のピッチ角を前記ロール角取得部により取得されたロール角に対応する値に制御する前後加速度依拠ピッチ角制御部を含む請求項1に記載の車体姿勢制御装置。
- 前記前後加速度依拠ピッチ角制御部が、
前記ロール角取得部により取得されたロール角に基づいて目標ピッチ角を設定する目標ピッチ角設定部と、
前記車体の実際のピッチ角を取得する実ピッチ角取得部と、
その実ピッチ角取得部により取得された実ピッチ角が前記目標ピッチ角に近づくように前記前後加速度を制御する前後加速度制御部と
を含む請求項2に記載の車体姿勢制御装置。 - 前記前後加速度制御部が、
前記4つ以上の車輪に制動トルクを作用させるブレーキと、
そのブレーキの作用力を制御することにより、前記前後加速度を制御するブレーキ制御装置と
を含む請求項3に記載の車体姿勢制御装置。 - 前記前後加速度依拠ピッチ角制御部が、前記車体の姿勢を中立姿勢より前傾側に制御する前傾制御部を含む請求項2ないし4のいずれかに記載の車体姿勢制御装置。
- さらに、前記車体のローリングを制御するロール制御部を含み、前記ロール角対応ピッチ角制御部が、そのロール制御部により制御されたロール角に対応するように前記ピッチ角を制御する請求項2ないし5のいずれかに記載の車体姿勢制御装置。
- 前記サスペンションが、減衰特性の制御が可能なショックアブソーバを含むものであり、かつ、前記ロール制御部が、前記ショックアブソーバの減衰特性の制御により、前記車体のローリングを制御する減衰特性依拠ロール制御部を含む請求項6に記載の車体姿勢制御装置。
- 前記サスペンションが、減衰特性の制御が可能なショックアブソーバを含むものであり、前記ロール角対応ピッチ角制御部が、前記車両の過渡旋回状態において、前記ショックアブソーバの減衰特性の制御により前記車体のピッチ角を制御する減衰特性依拠ピッチ制御部を含み、前記前後加速度依拠ピッチ角制御部が前記車両の定常旋回状態において作動する請求項2ないし7のいずれかに記載の車体姿勢制御装置。
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