JP2007237322A - 損傷部品の補修方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】安定した補修部品質を維持できる損傷部品の補修方法を提供することである。
【解決手段】部品1の腐食損傷部2に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤3を注入して硬化させることにより腐食損傷部2を補修する損傷部品の補修方法であり、部品1の腐食損傷部2を覆うように気密性を有するシート21を設け、腐食損傷部2に補修剤3を注入した状態で、シート21と部品1の腐食損傷部2の間の空間を減圧し、シート21の上側から腐食損傷部2に注入してある補修剤3を加圧して補修剤3の成形を行うとともに硬化を行う。
【選択図】図3
Description
本発明は、ポンプのケーシングおよびシャフト等の円筒状の部品における外周面に生じた損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入して硬化させることにより損傷部を補修する損傷部品の補修方法に関するものである。
下水や海水等を取扱うポンプでは、腐食環境への対策として種々の腐食防止対策が行われているが、設置から10年以上経過したものも数多くあり、経年的な腐食は避けられない。腐食の形態としては、塗装の破損・剥離によるベース金属の腐食や部品の接合部の隙間腐食などがある。損傷部としては岩石などがぶつけられ、塗装が剥げるとともに外表面部が凹んでできる損傷部などもある。金属は大気に触れると腐食が始まるので、以下、一切の損傷を腐食損傷として説明する。
ポンプ寿命延長の観点からも、損傷部の早期発見及びその補修が必要である。重大な腐食損傷の場合は、部品交換・新製品再設置となるが、腐食損傷が中程度あるいは軽微でも、そのまま放置すると腐食が進行し、装置寿命の短命化や修復コストの増大及び最終的には重大な事故に繋がる恐れがあるため、早急に補修することが必要で、軽微な腐食損傷の場合、ポンプ設置現場で補修することがある。
剥離した塗装膜とその下の腐食したベース金属への注入(充填)及び被覆する補修では、亀裂やピンホール等が無く、耐薬品性・耐浸透性に優れていること,ベース金属や健全な旧塗装との接着強度に優れていること,常用の耐熱性に優れていることなどが求められる。
シャフトとインペラの合せ面等で発生する隙間腐食の補修には、ベース金属と補修材との接合強度が高いことが要求される。
上記した腐食損傷部位への補修材としては、腐食損傷部に注入・充填し腐食の進行を止めることを目的として、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂系補修剤があり、この種のものは使用時に硬化剤と混合することで硬化するといった施工性に優れた特徴から、工業分野を初め種々の分野において簡易的な金属補修剤としての使用が広まっている。
セラミック,金属,コンクリートの亀裂部や欠損部への充填補修に好適なエポキシ系硬化性樹脂組成物の補修剤としては、下記特許文献で提案されたものなどがある。
近年、金属補修用のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤は、材質や粒度分布等に工夫を凝らしたフィラーの配合や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の調整を行うことで、硬化収縮率や熱による膨張収縮率を低減させることで、寸法安定性や接着強度を向上させ、また、圧縮強度や弾性率の向上及び耐磨耗性,難燃性に優れた特性を有する製品が普及しており、損傷部位への適用が進んでいる。
作業者による施工における留意事項としては、主剤と硬化剤との混合を均一にして気泡を抱込まないこと,緻密に注入させて注入漏れ・注入隙間を生じさせないことがある。また、補修対象材との接着強度については、被対象物表面とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の補修剤との濡れ性や表面粗さの影響が大きいが、それ以外にも、注入の粗密,接着面への気泡混入等、接着強度を低下させる要因が存在しており、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂補修剤を用いた補修作業には、施工後の補修部位品質が作業者の技量により左右されるといった課題がある。
また、冬季は硬化養生時間を短縮することを目的としてヒータにより加熱して硬化養生を施すが、補修部に温度差があると、それに伴い硬化物内部に残留応力や残留歪が発生し、硬化物の耐久性低下の要因となる課題がある。
それゆえ本発明の目的は、常に安定した補修部品質を維持できる損傷部品の補修方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明の特徴とするところは、部品の損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入して硬化させることにより該損傷部を補修する損傷部品の補修方法において、該部品の損傷部を覆うように気密性を有するシートを設け、該損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入した状態で、該シートと該部品の損傷部の間の空間を減圧し、該シートの上側から該損傷部に注入してある該補修剤を加圧して該補修剤の成形を行うとともに硬化を行うことにある。
また、上記目的を達成する本発明の特徴とするところは、部品の損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入して硬化させることにより該損傷部を補修する損傷部品の補修方法において、該部品の損傷部を覆うように気密性を有するシートを設け、該シートと該部品の損傷部の間の空間を減圧した状態で、該損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入し、該シートの上側から該損傷部に注入してある該補修剤を加圧して該補修剤の成形を行うとともに硬化を行うことにある。
本発明によれば、ポンプ等に発生した腐食損傷部位に対し熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を用いた注入補修において、腐食損傷部位と補修剤の接着面への気泡混入を防止して腐食損傷部位に対する補修剤の接着強度を向上させ、高い補修部品質を維持することができる。
補修すべき部品の腐食損傷部から汚れや腐食生成物(錆)をサンドブラストやグラインダで除去し、洗浄を行った補修対象面に、エポキシ樹脂を主成分とする補修剤を注入し、気密性を有するシート(フィルム)で補修全面を覆い、フィルム外縁部より真空吸引して補修部位及び補修剤から空気を除去し、内部が減圧状態にあるフィルムの外側からローラを押し付け回転させながら移動させ、所望の補修形状に補修部を成形する。本実施形態によれば、脱気による密着性向上と成形精度向上がなされる。
腐食損傷部が比較的小型の場合は、ローラを固定し補修すべき部品を回転させることにより、補修すべき部品に対してローラを相対的に回転移動させる。
また、ローラに補修後の補修剤表面の位置検出手段と、ローラの可動制御機能を持たせることにより、高精度な成形が行える。
補修対象部(腐食損傷部)の状況に応じてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂補修剤の粘度が選択される。例えば、腐食損傷が深い場合はパテ状を呈する高粘度,腐食損傷が浅く浸透性を要する場合は低粘度を選択する。
低粘度のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂補修剤を使用する場合は、フィルムで補修全面を覆い、フィルム外縁部より真空吸引してから、補修対象部とフィルムの間に加圧注入法等の手段を用いてエポキシ樹脂補修剤を注入・充填する。
フィルムで補修全面を覆う際、フィルムの外縁部を引っ張り且フィルム外縁部より真空吸引することで、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂補修剤の表面均一に押し込み、成形時のフィルム皺,弛みを防止し、硬化後の補修部表面を平滑に仕上げることができ、施工後の補修部位品質が作業者の技量により左右されずに補修される。
また、ポンプ装置等が設置してある現場において、比較的簡易な装置により安定に且つ短い補修時間で補修を施工することができる。
補修剤の加熱による硬化養生法として、フィルム内部に電熱ヒータをサンドイッチ状に内蔵させ、補修部を覆う電熱ヒータが内蔵したフィルムで成形後の熱硬化性樹脂補修剤を加熱することにより、均一に発熱するフィルムと密着した補修剤は均一な温度で加熱され、補修部の温度差が小さくなり,硬化物内部に残留応力や残留歪は殆ど残らない。
先ず、腐食損傷部2の深さが深く、パテ状を呈する高粘度のエポキシ系の熱硬化性樹脂補修剤を用いて補修を行う実施例を説明する。
図1は、補修時に使用する機器の配置を示している。
図1において、1は補修すべき部品であるポンプのシャフトで、基盤11上に縦2列に設けてある4個の支持ローラ12に搭載してある。少なくとも1つの支持ローラ12は、モータ13が取り付けられている。この支持ローラ12を駆動ローラと呼ぶ。モータ13を駆動させると、駆動ローラ12が回転し、シャフト1は駆動ローラ12との摩擦で回転する。
21はシャフト1の腐食損傷部を覆うように設けた気密性を有するシート(フィルム)で、シート21で覆っていないシャフト1における外表面上に周方向に設けた弾性部材
22でシート21の端部を引っ張ることによりシート21をシャフト1に密接させている。
22でシート21の端部を引っ張ることによりシート21をシャフト1に密接させている。
23は真空ポンプ24から伸びたチューブ25の接続栓で、真空ポンプ24の作動により、接続栓23とチューブ25を介してシャフト1の腐食損傷部とシート21の間の空間における空気を脱気し、その空間を減圧させる。
31はフィルム(シート)21上からシャフト1の腐食損傷部を加圧するローラで、基盤32に対し摺動する支持部材33で回転可能に軸支してある。シャフト1とローラ31は軸方向を揃えてある。支持部材33はサーボモータ34によりシャフト1に対し進退可能になっており、従って、サーボモータ34の移動量の制御でローラ31のシャフト1側への加圧力が制御され、サーボモータ34の移動量は、支持部材33に設けてある光学式距離センサ35で検出するフィルム21までの距離で確認している。
これらの補修機器は、現地での補修作業を目的としているため、可搬性を考慮して軽量で、分割してコンパクトに収納する構造としている。
図2は、楕円形に表示した大小の各腐食損傷部2が点在するシャフト1の表面を示している。シャフト1と軸方向を揃えてあるローラ31は軸方向の寸法(長さ)をシャフト1の表面に点在する各腐食損傷部2におけるシャフト1の軸方向での差渡寸法よりも長いものとしてある。比較のために、ローラ31をシャフト1の上方にずらして示した。
図3は、シャフト1の横断面を拡大して示している。
以下、図3に従い、補修手順に従って補修方法を説明する。
最初に、シャフト1を4個の支持ローラ12に搭載する。そして、モータ13でシャフト1を適宜に回転させつつ、シャフト1における各腐食損傷部2の汚れや腐食生成物(錆)をサンドブラストやグラインダによって削り取って除去し、腐食生成物の除去が完了した後に補修対象面に残った削り粉,油分等の洗浄を行う。油分等の残留等により補修対象面の表面状態が悪い場合は、補修表面にプライマーを塗布し、各腐食損傷部2に追って注入する補修剤の補修対象面に対する密着性の改善を図る。
その後、主剤としてのエポキシ樹脂系補修剤と硬化剤を混合しパテ状となった補修剤3をシャフト1の側面に点在する各腐食損傷部2の上へ注入し、薄く延ばして貼り付けておく。
次に、各腐食損傷部2を広く覆うようにフィルム21を被せ、フィルム21の端部同士をスプリング,ゴムシート等の弾性部材22で結んで均一な引っ張り力を掛け、フィルム21がシャフト1の外表面に密着するようにする。補修剤3が硬化した後でフィルム21の離型を容易にするために、フィルム21の裏面に離型剤を塗布しておいても良い。
続いて、真空ポンプ24を作動させ、フィルム21がシャフト1の各腐食損傷部2の間に存在する空気を排気し、補修剤3と補修対象面の密着性を向上させる。
脱気の完了した各腐食損傷部2には、伸展した補修剤3がフィルム21で押し付けられた状態となっており、フィルム21の外側からローラ31を押し付けて補修剤3の成形を行う。このローラ31の押し付けで、補修剤3に混入している気泡の除去効果も期待でき、樹脂硬化物のひび割れ等の防止にも有効で、安定した補修部品質を維持できる。
成形動作としては、フィルム21を介した状態でシャフト1の健全状態の位置である成形位置にサーボモータ34によりローラ7を位置決めした状態で、図1に示したモータ
13で駆動ローラ12を回転させることでシャフト1を回転させ、その回転に従いローラ31はフィルム21を介して補修剤3を成形する。
13で駆動ローラ12を回転させることでシャフト1を回転させ、その回転に従いローラ31はフィルム21を介して補修剤3を成形する。
シャフト1の回転により補修剤3の突出に追従して生じるローラ31の移動を距離センサ35で検出し、サーボモータ34は、ローラ31を健全状態の位置へ位置決め制御する。
ローラ31を一定の線圧で常時押し付けることにより、ローラ31を健全状態の位置へ位置決め制御し、シャフト1を回転させても良い。
さらには、ローラ31側を移動させる場合、シャフト1における健全な部位等の基準面を見出し、その基準面に沿ってローラ31を移動させるか、ロボットアームを用いてローラ31の位置を制御しながら所望の補修形状に成形しても良い。
ローラ31による補修剤3の成形後、所望時間を経て補修剤3が硬化したら、真空ポンプ24による減圧を止め、フィルム21をシャフト1から除去する。
図4は補修剤3を加熱することができるフィルム(シート)21の構成を示す分解図で、補修剤3と接する側のベースフィルム21aと外側のカバーフィルム21bの間に電熱ヒータ21cをサンドイッチ状に内蔵しており、腐食補修部を覆うフィルム21からエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂補修剤を加熱し、硬化養生する。
フィルム21は、補修剤3の硬化が完了するまで覆っているため、加熱と同時に埃等の付着を防止することができる。
対象となるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂補修剤が常温硬化型である場合、周囲温度により硬化時間が変化し、冬季などに低温状態で施工する場合には硬化時間が長くなってしまうが、電熱ヒータ21c内蔵のフィルム21を用いることにより、一定温度に加熱することで硬化養生時間を短縮することができる。
フィルム21は平面状でシャフト1の曲面に密着するので、腐食補修部を全面的に覆うことにより、シャフト1と腐食損傷部2に注入した補修剤3を均一に加熱することができ、硬化後の補修剤3に残留応力や残留歪は殆ど残らず、安定した補修部品質を維持できる。
図5により、腐食損傷部2の深さが浅く、低粘度のエポキシ系の熱硬化性樹脂補修剤を使用して補修する実施例を説明する。
図5において、シャフト1は4個の支持ローラ12に搭載してあり、シャフト1における腐食損傷部2全面をフィルム(シート)21により覆い、弾性部材22でシート21の端部を引っ張ることによりシート21をシャフト1に密接させている。
シート21は補修剤の注入口27を設けてあり、この注入口27に低粘度の補修剤3を収容したシリンジ28を設置してある。
接続栓23,チューブ25を介して図示していない真空ポンプによりシャフト1の腐食損傷部とシート21の間の空間における空気を脱気し、その空間を減圧させる。
その後、シリンジ16に入れた低粘度の補修剤3を高圧空気などにより加圧し、腐食損傷部2へ注入・充填する。
この場合、腐食損傷部2は深さが浅く、補修剤3が低粘度であることにより、補修剤3を注入するだけで、補修剤3はシャフト1の外表面に密着しているシート21により成形され、補修すべき領域の面積が小さい場合はローラ31による成形は不要となるが、補修すべき領域の面積が大きい場合は、シート21に内蔵の電熱ヒータで一定時間硬化養生させ、ゲル化し粘度が増加した後で、ローラ31による成形する。
この実施形態の場合にも、安定した補修部品質を維持できる
図1,図3において、ローラ31は携帯型のものとして、作業者がローラ31を所持して、シャフト1側に押し付けて、注入した補修剤3を加圧するようにしても良い。この場合、シャフト1は駆動ローラ12で回転させても良いし、シャフト1は不動で、加圧するローラ31を作業者がシャフト1の外表面に沿って移動させても良い。
以上の実施例の説明においては、損傷部を有し補修すべき部品としてシャフトを例にとって説明したが、シャフト以外の部品であっても構わない。
1…補修すべき部品であるシャフト、2…腐食損傷部、3…補修剤、12…支持ローラ(駆動ローラ)、21…シート(フィルム)、22…弾性部材、23…接続栓、24…真空ポンプ、25…チューブ、31…ローラ、34…サーボモータ、35…距離センサ。
Claims (4)
- 部品の損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入して硬化させることにより該損傷部を補修する損傷部品の補修方法において、
該部品の損傷部を覆うように気密性を有するシートを設け、該損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入した状態で、該シートと該部品の損傷部の間の空間を減圧し、該シートの上側から該損傷部に注入してある該補修剤を加圧して該補修剤の成形を行うとともに硬化を行うことを特徴とする損傷部品の補修方法。 - 部品の損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入して硬化させることにより該損傷部を補修する損傷部品の補修方法において、
該部品の損傷部を覆うように気密性を有するシートを設け、該シートと該部品の損傷部の間の空間を減圧した状態で、該損傷部に熱硬化性樹脂を主成分とする補修剤を注入し、該シートの上側から該損傷部に注入してある該補修剤を加圧して該補修剤の成形を行うとともに硬化を行うことを特徴とする損傷部品の補修方法。 - 上記請求項1および請求項2のいずれかにおいて、該部品は円筒状であり、該損傷部に注入してある該補修剤を加圧する部材として該部品の中心軸と軸方向を揃えてあり該部品の中心軸の軸方向における該損傷部の差渡寸法より長い寸法のローラを用い、該補修剤への加圧は該部品と該ローラを相対的に回転させつつ該補修剤を加圧することを特徴とする損傷部品の補修方法。
- 上記請求項3において、該シートは該シートで覆っていない該部品における外表面上に周方向に設けた弾性部材で該シートの端部を引っ張ることにより該部品の損傷部を覆うようにしており、しかも該シートは電熱ヒータを内蔵していることを特徴とする損傷部品の補修方法。
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