JP2007232861A - 導電性ローラ - Google Patents

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Abstract

【課題】電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いる、表面の動摩擦係数が小さく、該ローラ表面も、感光体ドラムも汚染せず、安定して感光体ドラムを帯電処理できる導電性ローラを提供する。
【解決手段】芯金と、該芯金上に形成した弾性層と、該弾性層上に形成した最表面層を有する導電性ローラであって、前記最表面層が10nm以上1000nm未満の層厚を有しており、且つ、該最表面層の硬度が10〜500MPaであり、前記弾性層が、前記最表面層よりも小さい硬度を有しており、且つ、該弾性層の表面から0.1〜1.0μmの深さに位置する該弾性層の部位の平均硬度Hsと該弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する該弾性層の硬度Hiとの比Hs/Hiが1.20〜10.00であることを特徴とする導電性ローラ。
【選択図】図5

Description

本発明は、特にLBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等のOA機器における、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いる導電性ローラ(帯電ローラ、現像ローラ等)に関する。
近年の画像形成装置の高速化、高耐久化に伴い、画像形成装置に使用される導電性ローラも、高精度、高耐久化が要求されてきている。
画像形成装置に使用される帯電ローラは、帯電部材のうち最も一般的なものであり、感光体ドラムに接触して帯電処理を行うものである。これは、芯金と、芯金上に形成した導電性弾性層(抵抗層)と、所望の場合には、導電性弾性層上に形成した表面層とを有する。そして、このような帯電ローラを用い、芯金に電圧を印加して帯電ローラと感光体ドラムとの当接ニップの近傍で微小な放電をさせて、感光体ドラムの表面を帯電させる。
画像形成装置に、帯電部材として、帯電ローラを用いてハーフトーン画像による画像耐久試験を行った場合、画像耐久をしていくと共にトナー及びトナーに付着している外添剤等により帯電ローラ表面が汚れるという問題がある。その結果、帯電ローラ表面のひどく汚れた部分を起点に白スジといった画像不良が生じる。これは帯電ローラ表面が汚れる事により感光体ドラムに均一な帯電処理ができなくなるからである。ローラ表面が汚れる原因の一つとして、感光体ドラムと帯電ローラ表面との動摩擦係数(摩擦抵抗)が大きい事が考えられる。動摩擦係数が大きい場合、トナー及び外添剤に外力がかかり帯電ローラ表面に付着しやすくなるため、帯電ローラ表面の動摩擦係数を下げる事は非常に重要である。
帯電ローラ表面の動摩擦係数を下げる方法としては、帯電ローラ表面を紫外線や電子線等により処理する方法(例えば、特許文献1参照。)やコーティング等により保護層を設ける方法(例えば、特許文献2参照。)が提案され、実用化されている。しかし、更なる高耐久化、機構の簡素化・小型化等という要求を考えると帯電ローラ表面の動摩擦係数を更に下げる必要がある。ところが、帯電ローラ表面を紫外線や電子線等により処理する方法やコーティング等により保護層を設ける方法ではローラ表面の動摩擦係数を十分に下げる事ができず、帯電ローラ表面の汚れを十分に無くすることができない場合がある。
また、放置環境にもよるが、特に苛酷な環境(40℃/90%RH)下での放置において帯電ローラの導電性弾性層(抵抗層)から低分子量化合物等が染み出し、帯電ローラ表面及び感光体ドラム表面が汚れるという問題がある。この汚れによりハーフトーン画像において画像不良が生じる。これは帯電ローラ表面が汚れる事により感光体ドラムに均一な帯電処理ができなくなるからである。帯電ローラの導電性弾性層(抵抗層)からの低分子量化合物等の染み出し防止のため、保護層で弾性層表面を覆うという提案が多くなされている。表面層は、一般的には、バインダー高分子に、導電フィラーを適量分散させて電気抵抗を調整した材料から形成される。バインダー高分子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン樹脂等が用いられる。また、導電フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、酸化チタン、酸化錫等の酸化物、Cu、Ag等の金属酸化物や金属を粒子表面に被覆して導電化した導電粒子などが用いられる。しかし、これら保護層を用いた場合でも、導電性弾性層内の低分子量化合物の染み出しを防止するためには層の厚みを10μm以上にする必要があり、また保護層内に存在するモノマーや触媒等の低分子量化合物がローラ表面に染み出して画像不良が出る場合もある。更に、抵抗調整のための膜厚調整や導電剤の分散が大変困難である。
特開平9−160355号公報 特開平9−160354号公報
本発明は、前記で述べたような問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いるローラ表面の動摩擦係数が非常に小さく、ローラ表面も感光体ドラムの汚染もない導電性ローラ、特に、安定して感光体ドラムを帯電処理できる帯電ローラを提供する事である。
前記の課題・目的は以下に示す本発明によって解決・達成される。すなわち本発明は、芯金と、該芯金上に形成した弾性層と、該弾性層上に形成した最表面層を有する導電性ローラであって、前記最表面層が10nm以上1000nm未満の層厚を有しており、且つ、該最表面層の硬度が10MPa以上500MPa以下であり、前記弾性層が、前記最表面層よりも小さい硬度を有しており、且つ、該弾性層の表面から0.1μm以上1.0μm以下の深さに位置する該弾性層の部位の平均硬度Hsと該弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する該弾性層の部位の硬度Hiとの比Hs/Hiが1.20以上10.00以下である事を特徴とする導電性ローラである。
本発明によれば、上記構成とすることによって、ローラ表面の動摩擦係数を下げて、ローラ表面の汚染も感光体ドラムの汚染もない導電性ローラ、特に、安定して感光体ドラムを帯電処理できる導電性ローラを提供する事ができる。
以下、本発明を帯電ゴムローラの例で更に詳細に説明する。
芯金上に弾性層としてのゴム層が設けられたゴムローラの成形法としては、射出成形法、押出成形法、トランスファー成形法、プレス成形法等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。例えば、射出成形法においては、2つの円筒駒を組み、円筒金型内に同心に軸状の芯金を保持してゴム材料を注入し加熱することによりゴム材料を硬化させてゴムローラを成形する。また、押出成形法においては、ゴム材料をチューブ状に押出した後、芯金にチューブ状のゴム材料を被せ、或いは芯金とゴム材料を一体に押出して円筒状のゴムローラを成形する。製造時間の短縮を考えると、これらの成形方法のなかでは、ゴム材料を芯金と一体に押出してゴムローラを成形する押出成形法が好ましい。
ゴムローラを加熱して加硫する方法に関しては、加熱状態の円筒状または平面状の部材に回転させながら押し当てても良く、更にこれと共に熱風炉、加硫缶、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等のいずれの方法を併用しても良い。ゴムローラは、140℃以上220℃以下の範囲の温度で10分以上120分以下の時間で加熱して、ゴムローラの表面を加硫する事が好ましい。
又、加熱・加硫後に所望のローラ形状、ローラ表面粗さにするために回転砥石を用い乾式研磨をする場合もある。
図1に、押出法によるゴムローラの製造方法の一例の模式図を示す。押出機1は、クロスヘッド2を備える。押出機1は、芯金送りローラ3によってクロスヘッド2に送られた芯金4と、別途押出機に導入されたゴム材料とを一体にして押し出し、芯金4上にゴム層を形成する。ゴム層を芯金の周囲に円筒状に形成した後、端部の切断・除去処理5を行い、ゴムローラ6を成形する。
前記のゴムローラの芯金4としては、ニッケルメッキやクロムメッキしたSUM材等の鋼材を含むステンレススチール棒、リン青銅棒、アルミニウム棒、耐熱樹脂棒等が好ましい。
又、芯金4上に設けられたゴム層は、導電性を有している。ゴム層を形成するためのゴム材料としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、ヒドリンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム、塩素ゴム、熱可塑エラストマー等が挙げられる。これらはいずれでも良い。またゴム材料中に分散させる導電粉としてはカーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、金属粉、導電性の繊維、或いは酸化スズ等の半導電性金属酸化物粉体、更に、これらの混合物等のいずれでも良い。
次に、本発明のゴムローラのゴム層上に最表面層を形成する方法について詳細に説明する。
一般的には、最表面層は、最表面層を形成するための塗布液をゴムローラのゴム層上に塗布し、乾燥・硬化等して形成する。塗布方法は特に限定されず、ディッピング法、スプレー法、リングヘッド塗布法、ロールコート法等公知の方法を用いることができる。これらの方法はいずれも本発明に用いることができる。
以下に、リングヘッド塗布法を例として、最表面層の形成方法について説明する。図2にリングヘッド塗布法の一例の模式図を示す。まず、前記のような方法等で得られたゴムローラ6を垂直状態に支持し、このゴムローラ6に対して所定の間隔をなす距離に、全周に開口されたスリット状の吐出口を有するリングヘッド(リングヘッド)7を配置する。リングヘッド7は、全周に開口されたスリット状の吐出口8、液絞り部9、液分配室11および液供給口10を有している。リングヘッド7の外部にある液供給手段(例えば、シリンジポンプ)により、リングヘッドに具備される1箇所以上の液供給口10より塗布液が供給される。塗布液は、リングヘッド7内において合流し、周方向に分配するための1個以上の液分配室および1個以上の液絞り部を経由して、全周に開口されたスリット状の吐出口8に達する。ゴムローラ6とリングヘッド7とを所定の速度(1〜200mm/s程度)で相対移動させながら、塗布液を吐出口8の全周から吐出して、均一に適量の塗布液をゴムローラ表面に塗布する。
ゴムローラ表面への吐出量は、最表面層を形成するために用いる塗布液の液粘度、速度(ゴムローラとリングヘッドとの相対移動速度)塗布液の組成や添加材料等を考慮して決められる。リングヘッドの全周に開口されたスリット状の吐出口の開口幅(スリット幅)は、通常、0.05mm以上であり、好ましくは0.1mmで使用される。リングヘッドの材質としては、アルミニウム、テフロン(登録商標)のような樹脂、ステンレス等の鋼材が用いられるが、加工精度が高いステンレス等の鋼材を用いることが好ましい。
最表面層を形成する材料としては、シリコーン系、フッ素系、ウレタン系、アクリル系、ウレタン変性アクリル系、シリコーン変性ウレタン系材料が用いられる。特にフッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有する材料が好ましい。
また、最表面層の層厚は、帯電ゴムローラの電気特性或いは強度の上で、薄膜である方が良く、10nm以上1000nm未満とする。ここで、例えば、最表面層の層厚が10nm未満の場合、最表面層としての電気特性や表面自由エネルギー特性を満足しきれない可能性がある。また、最表面層の層厚が1000nm以上の場合、最表面層の硬度が大きいと最表面層がゴム層に追従しきれずに割れる可能性がある。
前記フッ化アルキル基としては、例えば、直鎖型または分岐型のアルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したものが挙げられる。その中でも、炭素数6〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
前記オキシアルキレン基とは、−O−R−(R:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある。)である。このR(アルキレン基)としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。
前記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0〜50.0質量%であることが好ましい。また、前記ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサンの全質量に対して5.0〜70.0質量%であることが好ましい。ポリシロキサン中のシロキサン部分(−Si−O−Si−O−・・・で示される構造を有する部分)の含有量は、ポリシロキサンの全質量に対して20.0〜90.0質量%であることが好ましい。
また、前記ポリシロキサンは、さらにアルキル基およびフェニル基を有するものが好ましい。アルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、ヘキシル基、デシル基がより好ましい。
前記ポリシロキサンがさらにアルキル基およびフェニル基を有する場合、前記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基、オキシアルキレン基、アルキル基、フェニル基およびシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサンの全質量に対し、次の値であることが好ましい。
・フッ化アルキル基 : 5.0〜50.0質量%
・オキシアルキレン基: 5.0〜30.0質量%
・アルキル基 : 5.0〜30.0質量%
・フェニル基 : 5.0〜30.0質量%
・シロキサン部分 :20.0〜80.0質量%
前記フッ化アルキル基及びオキシアルキレン基を有するポリシロキサンは、下記工程(I)及び(II)を経て得られるポリシロキサンであることが好ましい。
(I)カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解し、縮合させる縮合工程
(II)該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(I)により得られた加水分解性縮合物を架橋させる架橋工程
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
Figure 2007232861
(式中、R21は、飽和または不飽和の1価の炭化水素基を示す。R22は、飽和または不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z21は、2価の有機基を示す。Rc21は、カチオン重合可能な基を示す。dは、0〜2の整数を示し、eは、1〜3の整数を示し、d+e=3である。)
前記式(2)中のRc21で示されるカチオン重合可能な基とは、開裂によってオキシアルキレン基を生成するカチオン重合可能な有機基を意味し、例えば、エポキシ基やオキセタン基などの環状エーテル基、および、ビニルエーテル基などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性および反応制御の容易性の観点から、エポキシ基であることが好ましい。
前記式(2)中のR21およびR22で示される飽和または不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
前記式(2)中のZ21で示される2価の有機基としては、例えば、アルキレン基およびアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
前記式(2)中のeは、3であることが好ましい。また、前記式(2)中のdが2の場合、2個のR21は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記式(2)中のeが2または3の場合、2個または3個のR22は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
以下に、前記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(2−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(2−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(2−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(2−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン
また、前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
Figure 2007232861
(式中、R31は、飽和または不飽和の1価の炭化水素基を示す。R32は、飽和または不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z31は、2価の有機基を示す。Rf31は、炭素数1〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。fは、0〜2の整数を示し、gは、1〜3の整数を示し、f+g=3である。)
前記式(3)中のR31およびR32で示される飽和または不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
前記式(3)中のZ31で示される2価の有機基としては、例えば、アルキレン基およびアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
前記式(3)中のRf31で示される炭素数1〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基としては、処理性の観点から、特に炭素数6〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
前記式(3)中のgは、3であることが好ましい。また、前記式(3)中のfが2の場合、2個のR31は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記式(3)中のgが2または3の場合、2個または3個のR32は同一であってもよく、異なっていてもよい。
以下に、前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(3−1):CF3−(CH22−Si−(OR)3
(3−2):F(CF22−(CH22−Si−(OR)3
(3−3):F(CF24−(CH22−Si−(OR)3
(3−4):F(CF26−(CH22−Si−(OR)3
(3−5):F(CF28−(CH22−Si−(OR)3
(3−6):F(CF210−(CH22−Si−(OR)3
(式(3−1)〜(3−6)中のRは、メチル基またはエチル基を示す。)
前記式(3−1)〜(3−6)で示される化合物の中でも、前記式(3−4)〜(3−6)で示される化合物が好ましい。
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物および前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
特に、前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物として、前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いる場合、Rf31の炭素数nAが6〜31であって、炭素数nAが相互に異なる2種以上の化合物を組み合わせて用いることが好ましい。このような組み合わせで前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いると、得られるポリシロキサンは、炭素数の異なるパーフルオロアルキル基を有することになる。パーフルオロアルキル基は、最表面層の表面に向かって配向する傾向にある。このため、最表面層に含有されるポリシロキサンが炭素数の異なるパーフルオロアルキル基を有していれば、最表面層の表面に向かって長さの異なるパーフルオロアルキル基が配向することになる。この場合、単一の長さのパーフルオロアルキル基が最表面層の表面に向かって配向する場合に比べて、最表面層の表面近傍のフッ素原子濃度が高くなり、最表面層の表面自由エネルギーが低くなる。このため、長期間繰り返し使用した際の帯電ゴムローラの表面へのトナーや外添剤などの付着をより抑制することができる。
前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を2種以上用いる場合は、前記式(3−4)〜(3−6)で示される化合物の中から2種以上選択することが好ましい。
本発明においては、前述のとおり、まず、縮合工程(I)でカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解し、縮合させて、加水分解性縮合物を得る。次いで、架橋工程(II)で該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、該加水分解性縮合物を架橋させることによって、本発明の帯電ゴムローラに用いられるポリシロキサンを得ることができる。帯電ゴムローラの表面特性の制御の観点から、加水分解性縮合物を得る縮合工程(I)において、さらに、下記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用することが好ましい。
Figure 2007232861
(式中、R11は、フェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基、または、アルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基を示し、R12は、飽和または不飽和の1価の炭化水素基を示す。aは、0〜3の整数を、bは、1〜4の整数を示し、a+b=4である。)
前記式(1)中のR11で示されるフェニル基置換のアルキル基または無置換のアルキル基のアルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基が好ましい。また、前記式(1)中のR11で示されるアルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
前記式(1)中のaは、1〜3の整数であることが好ましく、特には1であることがより好ましい。また、前記式(1)中のbは、1〜3の整数であることが好ましく、特には3であることがより好ましい。
前記式(1)中のR12で示される飽和または不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。
前記式(1)中のaが2または3の場合、2個または3個のR11は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記式(1)中のbが2、3または4の場合、2個、3個または4個のR12は同一であってもよく、異なっていてもよい。
以下に、前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(1−1):テトラメトキシシラン
(1−2):テトラエトキシシラン
(1−3):テトラプロポキシシラン
(1−4):メチルトリメトキシシラン
(1−5):メチルトリエトキシシラン
(1−6):メチルトリプロポキシシラン
(1−7):エチルトリメトキシシラン
(1−8):エチルトリエトキシシラン
(1−9):エチルトリプロポキシシラン
(1−10):プロピルトリメトキシシラン
(1−11):プロピルトリエトキシシラン
(1−12):プロピルトリプロポキシシラン
(1−13):ヘキシルトリメトキシシラン
(1−14):ヘキシルトリエトキシシラン
(1−15):ヘキシルトリプロポキシシラン
(1−16):デシルトリメトキシシラン
(1−17):デシルトリエトキシシラン
(1−18):デシルトリプロポキシシラン
(1−19):フェニルトリメトキシシラン
(1−20):フェニルトリエトキシシラン
(1−21):フェニルトリプロポキシシラン
(1−22):ジフェニルジメトキシシラン
(1−23):ジフェニルジエトキシシラン
前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物および前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合、前記式(1)中のaは1〜3の整数であることが好ましく、bは1〜3の整数であることが好ましい。さらに、a個のR11のうちの1個のR11は、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基であることが好ましい。さらに、該炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基の炭素数をn1(n1は1〜21の整数)とし、前記式(3)中のRf31の炭素数をn2(n2は1〜31の整数)としたとき、該炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基の炭素数n1は、次の関係を満たすことが好ましい。
2−1≦n1≦n2+1
前記炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基は、パーフルオロアルキル基と同様、帯電ゴムローラの最表面層中で表面に向かって配向する傾向にある。上記関係を満たす直鎖状のアルキル基を有する前記式(1)で示される加水分解性シラン化合物を用いると、前記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物のパーフルオロアルキル基による効果が損なわれることがなく好ましい。
前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合には、前記式(1)中のR11がアルキル基のものと前記式(1)中のR11がフェニル基のものを併用することが好ましい。
以下、本発明の帯電ゴムローラの具体的な製造方法(前記ポリシロキサンを含有する最表面層の具体的な形成方法)について説明する。
まず、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物、ならびに、必要に応じて前記の他の加水分解性シラン化合物を水の存在下で加水分解し、縮合させることによって加水分解性縮合物を得る。加水分解し、縮合させる際に、温度やpHなどを制御することで、所望の縮合度の加水分解性縮合物を得ることができる。
また、加水分解し、縮合させる際に、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシドおよびジルコニアアルコキシドなど、ならびに、これらの錯体(アセチルアセトン錯体など)等が挙げられる。
また、加水分解性縮合物を得る際、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物の配合割合は、得られるポリシロキサンが、下記基等を下記含有量で含むものとなるように定めることが好ましい。
・フッ化アルキル基 :ポリシロキサン全質量に対して 5.0〜50.0質量%
・オキシアルキレン基 :ポリシロキサン全質量に対して 5.0〜70.0質量%
・シロキサン部分 :ポリシロキサン全質量に対して20.0〜90.0質量%
また、上記加水分解性シラン化合物のほかに、更に、前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いる場合においても、得られるポリシロキサンが、上記基等を上記含有量で含むものとなるように配合割合を定めればよい。
具体的には、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物を、全加水分解性シラン化合物に対して0.5〜20.0mol%の範囲になるように配合することが好ましく、特には1.0〜10.0mol%の範囲になるように配合することがより好ましい。また、前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合には、さらに、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物の配合量(MCモル)と前記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の配合量(M1モル)とのモル比(MC:M1)が10:1〜1:10の範囲になるように配合することが好ましい。
次に、得られた加水分解性縮合物を含む最表面層を形成するための塗布液(最表面層用塗布液と表すことがある)を調製し、ゴムローラのゴム層上に塗布し乾燥する。最表面層用塗布液をゴムローラのゴム層上に塗布する際には、前記のリングヘッドを用いたリング塗布が好ましい。また、浸漬塗布やロールコーターを用いた塗布法等でも良い。最表面層用塗布液を調製する際には、塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、エタノール、2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンなど、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。
次に、ゴムローラのゴム層上に塗布された最表面層用塗布液に活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線は紫外線でも電子線でも良い。すると、最表面層用塗布液に含まれる加水分解性縮合物中のカチオン重合可能な基は開裂し、これによって該加水分解性縮合物を架橋させることができる。加水分解性縮合物は架橋によって硬化され最表面層が形成される。また、最表面層を加熱硬化させてもよい。この場合は、熱風炉、熱盤、遠・近赤外線、誘導加熱等のいずれの方法でも良く、あるいはこれらの加熱方法を併用しても良い。
ここで、最表面層を活性エネルギー線で照射する場合はゴム層も同時に改質・硬化される。特に、ゴム層が二重結合を有するゴムは活性エネルギー線での照射による改質・硬化の効果が大きいため好ましい。
ここでは、紫外線の照射によって架橋・硬化して最表面層を形成する方法について詳細に説明する。
最表面層用塗布液を塗布されたゴムローラは一定の回転数で回転させて紫外線を照射させる。ここで、図3に本発明に用いることのできる紫外線照射処理装置の一例の模式図を示す。最表面層用塗布液を塗布されたゴムローラ6はローラ回転部材12によって一定の回転数で回転させられ紫外線照射口13よりその表面に紫外線が照射される。紫外線の照射には高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプが用いられる。また、これらのランプを用いると、波長150〜400nmの紫外線強度が全波長強度の60%以上となっており、速やかに紫外線照射を行うことが可能となり好ましい。尚、紫外線の積算光量は、下記で定義される。
紫外線積算光量(mJ/cm2)=紫外線強度(mW/cm2)×照射時間(sec)
紫外線の積算光量については、表面処理の効果に応じて適宜選択すれば良い。その調節は、照射時間、ランプ出力、ランプとゴムローラとの距離のいずれでも行う事が可能であり、所望の積算光量が得られるように決めればよい。又、照射時間内で積算光量に勾配をつけても良い。
紫外線ランプの外側に反射板14を配置しても良く、反射板の材質としては、アルミニウム、ステンレス、鉄を用い反射面は鏡面加工、または反射率を向上させるコート処理、表面処理が施される事が望ましい。好ましくは、材質が99.9%以上の高純度アルミニウムで表面に反射率90%以上の光沢アルマイト処理を施す事が良い。反射板とゴムローラの距離は任意に設定でき、紫外線積算光量や反射板からの輻射による熱の影響を考慮して決定される。
また、紫外線の照射方法については、最表面層用塗布液を塗布された複数のゴムローラを管状の紫外線ランプを中心に同心円上に配置して、更にその外側の同心円上に円筒状または円弧状の反射板を配置して、ゴムローラを回転させながら紫外線を照射する方法でも良い。
本発明においては、254nmの波長を代表とする紫外線に関しては、紫外線の積算光量をウシオ電機株式会社製の紫外線積算光量計(UIT−150−A(商品名)、UVD−S254(商品名))を用いて測定した。また、172nmの波長を代表とする紫外線に関しては、紫外線の積算光量をウシオ電機株式会社製の紫外線積算光量計(UIT−150−A(商品名)、VUV−S172(商品名))を用いて測定した。更に365nmの波長を代表とする紫外線に関しては、紫外線の積算光量をウシオ電機株式会社製の紫外線積算光量計(UIT−150−A(商品名)、VUV−S365(商品名))を用いて測定した。
上記、本発明の実施の形態で述べた帯電ゴムローラの抵抗値は、芯金の両端に各々500gの加重をかけて、金属製ドラムに接触回転させながら帯電ローラを従動回転させて測定した。芯金、金属製ドラムに200Vの電圧を印加した場合の帯電ゴムローラの抵抗値を103〜108Ωに調整した。そして本発明の実施の形態で述べた帯電ゴムローラは、LBP(Laser Beam Printer)、複写機及びファクシミリ等の画像形成装置の電子写真用部材として用いられる。
ここで、本発明の帯電ゴムローラを帯電ローラとして用いた場合の使用形態を図4に示した。図4に示した画像形成装置は、回転ドラム型・転写方式の電子写真装置であって、15は像担持体としての電子写真感光体(感光体ドラム)であり、時計方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。感光体ドラム15は、その回転過程で帯電手段としての電源E1から帯電バイアスを印加した帯電ローラ16により周面が所定の極性・電位(本実施例では−600V)に一様帯電処理される。次いで露光系17により目的の画像情報に対応したネガ画像露光(原稿像のアナログ露光、デジタル走査露光)を受けて周面に目的画像情報の静電潜像が形成される。次いで、その静電潜像がマイナストナーによる反転現像方式の現像ローラ18によりトナー画像として現像される。まず、感光体ドラム15と転写手段としての転写ローラ19との間の転写部に不図示の給紙手段から所定のタイミングで転写材が給送される。そして、転写ローラ19に対して電源E2から約+2〜3KVの転写バイアスが印加され感光体ドラム15面の反転現像されたトナー像が転写材に対して順次転写されていく。トナー画像の転写を受けた転写材は、感光体ドラム15面から分離されて不図示の定着手段へ導入されて像定着処理を受ける。トナー画像転写後の感光体ドラム面は、クリーニング手段20で転写残りトナー等の付着汚染物の除去処理を受けて清浄面化されて繰り返して作像に供される。
本発明における導電性ローラの最表面層及び弾性層の硬度とは、以下の測定によるものである。測定器には、NanoIndenter(MTS社製)を用いた。測定条件は、押し込み試験使用ヘッド;DCM、試験モード;CSM(Continuous Stiffness Measureement)、使用圧子:バーコヴィッチ型ダイヤモンド圧子とした。また測定パラメーターはAllowable Drift Rate 0.05nm/s、Frequency Target 45.0Hz、Harmonic Displacement Target 1.0nm、Strain Rate Target 0.05 1/S、Depth Limit 2000nmとした。
本発明においては、最表面層の表面から5〜100nmの深さに位置する最表面層の部位の硬度の平均値を最表面層の硬度とした。ただし、最表面層の厚みが100nm以下の場合は、5〜(最表面層の厚み)nmの平均値を硬度とした。
また、最表面層下の弾性層の硬度は最表面層の厚みの測定後、弾性層の表面から0.1〜1.0μm(100〜1000nm)の深さに位置する該弾性層の部位の硬度を測定し、平均値を平均硬度Hsとした。更に、弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する部位の硬度Hiは次のようにして測定した。すなわち、導電性ローラの表面をかみそり等で弾性層の表面から0.1mmの深さまで切り出し、切り出した後の面から5〜100nmの深さに位置する弾性層の部位の硬度を測定しその平均値を求めた。これを、弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する部位の硬度Hiとした。切り出した面の厚みはマイクロメータや、その断面を光学顕微鏡等で観察し測定した。
本発明の導電性ローラの最表面層の硬度は、10MPa以上500MPa以下が好ましい。例えば、最表面層の硬度が10MPa未満の非常に小さい場合、最表面層が削れてしまい特性を生かしきれない可能性がある。また、導電性ローラの最表面層の硬度が500MPaより大きい場合、感光体ドラムの硬度が500MPa程度である事が多いため通常より感光体ドラム表面を削ってしまう可能性がある。
また、本発明の導電性ローラの弾性層の硬度は、最表面層の硬度よりも小さく、且つ、弾性層の表面から0.1〜1.0μmの深さに位置する該弾性層の部位の平均硬度Hsと該弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する該弾性層の部位の硬度Hiとの比Hs/Hiが1.20以上10.00以下である事が好ましい。すなわち、本発明の導電性ローラは、表面より内部の硬度が小さい、所謂、硬度傾斜層を有することが好ましい。例えば、Hs/Hiが1.20未満の場合、導電性ローラの弾性層が硬度傾斜層になっていないためか、導電性ローラの動摩擦係数が大きくなってしまう可能性がある。また、Hs/Hiが10.00より大きい場合、導電性ローラを回転させて続けると、最表面層の厚さにもよるが最表面層が弾性層に追従しきれずに割れる可能性がある。
本発明における層厚の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率10000倍で数箇所の測定を行い、平均値をSEM平均膜厚とした。
本発明における動摩擦係数の測定は、一端がロードセル或いはテンションゲージに接続されるとともに他端に一定荷重Wが与えられたシート状体(例えば、ステンレス等の金属フィルムやPET等のプラスチックフィルム)を用いて行われる。軸固定した導電性ローラの表面に所定の巻付け角度θ(実施例では90°)で前記シート状体を接触させておき、該ローラを一定速度で回転させることによりシート状体を該ローラ表面で摺動させるときの張力Tを検出するようにしたローラ摩擦係数測定機で評価した。このとき検出した張力Tを、次のオイラーの式に適用して動摩擦係数μを求めた。
μ=(1/θ)・ln(T/W)
μ:動摩擦係数
θ:巻付け角(ラジアン)
W:荷重(g)
T:張力(g)
本発明において、動摩擦係数測定は、プラスチックフィルム(厚み25μm、幅30mm)を用い、総荷重Wは100g、ローラ回転数は115ppmの条件で測定を行った。
また、測定は、23.5℃/60%の環境において行った。
これまで、最表面層が10nm以上1000nm未満の厚みの層で構成されるローラでは、最表面層の硬度によらず感光体ドラムに対する汚染を防ぐのは困難であった。また、最表面層の硬度が10MPa以上500MPa以下であっても弾性層が硬度傾斜層でない場合には、導電性ローラの動摩擦係数が大きくなってしまう可能性があった。前記で説明したような本発明の実施の形態で述べた帯電ゴムローラは、芯金と、該芯金上に形成した弾性層(ゴム層)と、該弾性層上に形成した最表面層を有する導電性ローラである。前記最表面層は10nm以上1000nm未満の層厚を有しており、且つ、最表面層の硬度は、10MPa以上500MPa以下である。更に前記弾性層は、前記最表面層よりも小さい硬度を有している。且つ、該弾性層の表面から0.1〜1.0μmの深さに位置する弾性層の部位の平均硬度Hsと該弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する該弾性層の部位の硬度Hiとの比Hs/Hiは1.20以上10.00以下である。このようにすることによって、特に帯電ローラとしてローラの動摩擦係数を非常に小さくする事ができ、帯電ローラ表面も感光体ドラムも汚染せず、安定して感光体ドラムを帯電処理できる導電性ローラを提供する事ができる。ここで、図5に本発明の実施形態の一例の帯電ゴムローラの軸に垂直な面における断面の模式図を示す。4は芯金、21は弾性層(ゴム層)、22は硬度傾斜層、23は最表面層である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
〈ゴムローラの作製〉
以下の原料をオープンロールで30分間混練した。
・エピクロルヒドリンゴム 100質量部
(商品名「エピクロマーCG102」:ダイソー(株)製)
・MTカーボン 5質量部
(商品名「HTC#20」:新日化カーボン製)
・酸化亜鉛 5質量部
・ステアリン酸 1質量部
更に、加硫促進剤(DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)1質量部、加硫促進剤(TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド)0.5質量部及び加硫剤としてイオウ1.2質量部を加えて、15分間オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。次いで、外径φ6mm、長さ258mmのステンレス棒の芯金を用意した。ここで、図1に模式的に示す押出機を用いて上記芯金と未加硫ゴム組成物とを一体に押出してゴムローラを成形した。その後160℃、2時間の加熱加硫を行い、更に回転砥石を用いた乾式研磨、端部の切断・除去処理により、厚み1.25mm、長さ232mmのゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
〈最表面層の形成方法〉
酢酸エチル/トルエン(重量比25/1)に対して末端イソシアネートシロキサンとポリエステル成分及びシランカップリング剤等の固形分が約2重量%になるように調整した最表面層用塗布液(商品名「SAT−500F」:シンコー技研(株)製)を密閉容器に入れ、密閉容器を液供給手段であるシリンジポンプにつなぎ、更にリングヘッドに具備された1箇所の液供給口につなぎ、リングヘッド内に適量の塗布液を供給した。塗布液は、リングヘッド内で合流し周方向に分配するための液分配室を有するリングヘッド内に充填された。前記より得られたゴムローラを垂直状態に支持し、このゴムローラの外径に対して0.5mmの間隔をなす距離に全周に開口されたスリット状の吐出口がくるようにリングヘッドを配置した。この時、リングヘッドの全周に開口されたスリット状の吐出口の開口幅(スリット幅)は0.1mmで使用した。リングヘッドをゴムローラの上端部から下端部へ、50mm/sの一定の速度で垂直移動すると同時に上記最表面層用塗布液の適量(0.07mL)を0.013mL/sの吐出速度で全周均一に塗布した。このゴムローラを図3に模式的に示す紫外線照射処理装置を用いて、低圧水銀ランプによる紫外線照射を3分間行い、最表面層を形成して帯電ゴムローラを得た。低圧水銀ランプはハリソン東芝ライティング(株)製のものを用い、254nmの波長を代表とする紫外線を照射した。この時の波長254nmの紫外線積算光量は約9000mJ/cm2であった(紫外線強度は50mW/cm2)。
走査型電子顕微鏡(SEM)の倍率10000倍で測定した上記帯電ゴムローラの最表面層のSEM平均膜厚は、90nmであった。NanoIndenterでの硬度測定の結果は、最表面層の硬度(5〜90nmの平均値)は53MPaであった。また、弾性層の、表面から0.1〜1.0μmの深さに位置する部位の平均硬度Hsは45MPa、弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する部位の硬度Hiは28MPaであり、Hs/Hiが1.61であった。また、上記帯電ゴムローラの動摩擦係数は0.23であった。これらの結果を纏め、表1に示した。
更に、この帯電ゴムローラを図4に示す電子写真方式の画像形成装置に帯電ローラとして組込み、感光体ドラムの両端に500gづつの荷重を負荷した状態で圧接し、23.5℃/60%の環境でハーフトーン画像による連続6000枚(6Kと表すことがある)の通紙をして耐久汚れ画像評価を行った。
この耐久汚れ画像評価において、下記事項を評価した。得られた結果を表1に示した。
〈耐久汚れ画像評価〉
通紙1〜10枚間を初期画像、また連続通紙6000枚間を耐久画像とした。帯電ゴムローラに固着したトナーや外添剤による、点状もしくは線状の画像不良(耐久汚れ)の有無を目視で観察して検査した。得られた検査結果に基づき、下記基準で画像評価を行った。
○ :画像不良がまったくない
○△:画像不良がごくまれにある
△ :画像不良が多量にある。連続通紙3000枚以降から発生
× :画像不良が多量にある。連続通紙3000枚より前から発生
[実施例2]
〈ゴムローラの作製〉
前記実施例1と同様にしてゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
〈最表面層の形成方法〉
下記原料を用意した。
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES):27.84g(0.1mol)
・メチルトリエトキシシラン(MTES):17.83g(0.1mol)
・トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6):7.68g(0.0151mol)(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当)
・水:17.43g
・エタノール:37.88g
上記原料を混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物を加水分解し、縮合して加水分解性縮合物を得た。この加水分解性縮合物を2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の加水分解性縮合物含有アルコール溶液を調製した。この加水分解性縮合物含有アルコール溶液100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を添加した。更に固形分2.0質量%となるようにエタノールで希釈して最表面層用塗布液を調製した。
前記最表面層用塗布液を用いたこと、リングヘッドをゴムローラの上端部から下端部へ、70mm/sの一定の速度で垂直移動と同時に前記最表面層用塗布液を0.018mL/sの吐出速度で全周均一に塗布したこと、および最表面層の層厚を627nmとしたこと以外は実施例1と同様にして最表面層を形成し帯電ゴムローラを得た。
また得られた帯電ゴムローラについて、実施例1と同様にして、物性を測定し、耐久画像評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
〈ゴムローラの作製〉
以下の原料を加圧式ニーダーで15分間混練した。
・NBR 100質量部
(商品名「Nipol DN219」:日本ゼオン(株)製)
・カーボンブラック1 14質量部
(商品名「旭HS−500」:旭カーボン(株)製)
・カーボンブラック2 4質量部
(商品名「ケッチェンブラックEC600JD」:ライオン(株)製)
・ステアリン酸亜鉛 1質量部
・酸化亜鉛 5質量部
・炭酸カルシウム 30質量部
(商品名「ナノックス#30」:丸尾カルシウム(株)製)
更に、加硫促進剤(DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド)1質量部、加硫促進剤(TBzTD:テトラベンジルチウラムジスルフィド)3質量部及び加硫剤としてイオウ1.2質量部を加えて、15分間オープンロールで混練して未加硫ゴム組成物を作製した。次いで、上記未加硫ゴム組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ゴムローラを得た。
〈最表面層の形成方法〉
固形分を0.5質量%となるようにエタノールで希釈したこと以外は実施例1と同様にして最表面層用塗布液を調製した。そして、この最表面層用塗布液を用いたこと、上記ゴムローラを用いたこと、及び、最表面層の層厚を315nmとしたこと以外は実施例1と同様にして塗布、紫外線の照射を行い、帯電ゴムローラを得、実施例1と同様にして、物性及び画像評価を行った。
得られた結果を表1に示した。
[比較例1]
〈ゴムローラの作製〉
前記実施例1と同様にしてゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
〈最表面層の形成方法〉
次に、前記ゴムローラのゴム層上に最表面層用塗布液を塗布することなく10分間紫外線照射を行い紫外線積算光量を約30000mJ/cm2としたこと以外は実施例1と同様にして、帯電ゴムローラを得、実施例1と同様にして、物性を評価し、画像評価を行った。得られた結果を表1に示した。
表1に示したように、本比較例の帯電ゴムローラ(帯電ローラ)では、連続通紙4000枚(4Kと表すことがある)以降の耐久画像に、耐久汚れによる画像不良が多量に確認された(△)。これは、本比較例の帯電ゴムローラの弾性層表面を紫外線照射したため、ローラ表面の表面自由エネルギーが大きくなったことによると推定される。
[比較例2]
〈ゴムローラの作製〉
前記実施例1と同様にしてゴムローラを得た(ゴムローラ外径φ8.5mm)。
〈最表面層の形成方法〉
ウレタン樹脂(ポリカプロラクトン系ポリオール、トリレンジイソシアネート;TDI)の固形分が約25%となるよう調整したメチルイソブチルケトンを主溶媒とする混合溶液を準備した。この混合溶液に、更に、ウレタン樹脂成分100質量部に対し55質量部の導電性カーボンを添加し、十分に攪拌分散して最表面層用塗布液とした。この最表面層用塗布液をガラス容器(Φ40mm、長さ350mm)に約300mL入れた浸漬槽を準備した。浸漬槽のほぼ中央にくるように上記ゴムローラを配置し、ゴムローラを移動して、ゴムローラの弾性層部分を最表面層用塗布液中に浸漬した。数秒間浸漬した後、ゴムローラを10〜20mm/sの速度で引き上げた(浸漬塗布)。その後、ゴムローラを室温で30分風乾し、更に熱風循環乾燥機中で温度160℃で、1時間乾燥し、硬化させて帯電ゴムローラを得た。
走査型電子顕微鏡(SEM)の倍率を2000倍としたこと以外は実施例1と同様にして物性を測定し、画像評価を行った。得られた結果を表1に示した。
表1に示したように、本比較例の帯電ゴムローラでは、連続通紙2000枚(2Kと表すことがある)以降の耐久画像に、耐久汚れによる画像不良が多量に確認された(×)。
Figure 2007232861
押出法によるゴムローラの製造方法の一例を示す模式図である。 リングヘッド塗布法の一例を示す模式図である。 紫外線照射装置の一例を示す模式図である。 本発明の導電性ローラを用いた画像形成装置の一例の概略を示す構成図である。 本発明の実施形態の一例の帯電ゴムローラの軸に垂直な面における断面の模式図である。
符号の説明
1 押出機
2 クロスヘッド
3 芯金送りローラ
4 芯金
5 切断・除去処理
6 ゴムローラ
7 リングヘッド
8 全周に開口されたスリット状の吐出口
9 液絞り部
10 液供給口
11 液分配室
12 ローラ回転部材
13 紫外線照射口
14 反射板
15 電子写真感光体(感光体ドラム)
16 帯電ローラ(帯電手段)
17 露光系
18 現像ローラ(現像手段)
19 転写ローラ(転写手段)
20 クリーニング手段
E1、E2、E3 バイアス印加用電源
21 弾性層(ゴム層)
22 硬度傾斜層
23 最表面層

Claims (3)

  1. 芯金と、該芯金上に形成した弾性層と、該弾性層上に形成した最表面層を有する導電性ローラであって、
    前記最表面層が10nm以上1000nm未満の層厚を有しており、且つ、該最表面層の硬度が10MPa以上500MPa以下であり、
    前記弾性層が、前記最表面層よりも小さい硬度を有しており、且つ、該弾性層の表面から0.1μm以上1.0μm以下の深さに位置する該弾性層の部位の平均硬度Hsと該弾性層の表面から0.1mmの深さに位置する該弾性層の部位の硬度Hiとの比Hs/Hiが1.20以上10.00以下であることを特徴とする導電性ローラ。
  2. 前記最表面層が、フッ化アルキル基及びオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有する材料から形成され、該ポリシロキサンが下記工程(I)及び(II)を経て得られるポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
    (I)カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解し、縮合させる縮合工程
    (II)該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(I)により得られた加水分解性縮合物を架橋させる架橋工程
  3. 前記弾性層が、二重結合を有するゴムを含有する材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性ローラ。

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