JP2007232476A - 電気泳動用カセットおよびその製造方法 - Google Patents

電気泳動用カセットおよびその製造方法 Download PDF

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幸司 坂入
Tomoe Hayashida
智枝 林田
Kazuhisa Namatame
一寿 生田目
Kenji Yokoyama
憲二 横山
Atsunori Hiratsuka
淳典 平塚
Noriaki Shizeki
紀彰 始関
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Abstract

【課題】合成樹脂からなる2枚の基板を組み合わせて構成されるカセットにおいて、支持体前駆液のスムースな注入が行え、かつ注入後の分離ゲルと濃縮ゲルとの境界が歪むことなどがなく、良好な支持体の形成が行えるようにすることにある。
【解決手段】合成樹脂からなる2枚の基板を組み合わせて構成され、その内部に支持体を形成するためのキャビティを有する電気泳動用カセットにおいて、上記基板11の支持体に接する表面にアンカーコート層12を設け、これの上にSiOx膜13を設ける。このSiOx膜13の水に対する接触角が30度以下、好ましくは10度以下とする。基板11上にプラスチックフィルムを貼付し、これの表面にアンカーコート層とSiOx膜を設けてもよい。
【選択図】図1

Description

この発明は、化学分析などに用いられる電気泳動用カセットおよびその製造方法に関し、支持体前駆液の注入、支持体の形成が良好に行えるようにしたものである。
電気泳動用カセット(以下、カセットと略記することがある。)は、例えば図3に示すように、2枚の基板1、2を対向して組み合わせて構成されるもので、一方の基板1には、凹部3が形成され、この凹部3の存在によりポリアクリルアミドゲルなどの支持体が形成されるキャビティが形成されるようになっている。
このようなカセットにあっては、従来ガラス製の基板を用いるものが主流であったが、最近スチレン樹脂、アクリル樹脂などの合成樹脂製の基板を用いたものが使用されるようになってきている(特許文献1参照)。
合成樹脂製基板を用いたカセットでは、射出成型法などによって容易に大量生産ができ、破損しにくいなどの利点がある。
しかし、合成樹脂製基板を用いたカセットにあっては、基板表面の特性が疎水的で、親水性がガラス製基板に比べて低いため、未硬化のアクリルアミド溶液などの支持体前駆液を流し込む際に、支持体前駆液と基板表面との親和性が不足し、前駆液がスムースに注入できず、不均一な注入になることがあり、さらには注入後の分離ゲルと濃縮ゲルとの境界が歪むなどの不都合があった。
特開平10−132785号公報
よって、本発明における課題は、合成樹脂からなる2枚の基板を組み合わせて構成されるカセットにおいて、支持体前駆液のスムースな注入が行え、かつ注入後の分離ゲルと濃縮ゲルとの境界が歪むことなどがなく、良好な支持体の形成が行えるようにすることにある。
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、合成樹脂からなる基板を組み合わせて構成され、その内部に支持体を形成するためのキャビティを有する電気泳動用カセットであって、
上記基板の支持体に接する表面にアンカーコート層が設けられ、このアンカーコート層上にSiOx膜が設けられ、このSiOx膜の水に対する接触角が30度以下である電気泳動用カセットである。
請求項2にかかる発明は、合成樹脂からなる基板を組み合わせて構成され、その内部に支持体を形成するためのキャビティを有する電気泳動用カセットであって、
上記基板の支持体に接する表面にプラスチックフィルムが貼付され、このプラスチックフィルムの表面にアンカーコート層が設けられ、このアンカーコート層上にSiOx膜が設けられ、このSiOx膜の水に対する接触角が30度以下である電気泳動用カセットである。
請求項3にかかる発明は、アンカーコート層とSiOx膜とが連続して成膜されたものである請求項1または2記載の電気泳動用カセットである。
請求項4にかかる発明は、合成樹脂からなる基板を組み合わせて構成される電気泳動用カセットを製造するに際して、上記基板に直接またはプラスチックフィルムを介して、プラズマCVD法によりアンカーコート層、SiOx膜を成膜する電気泳動用カセットの製造方法であって、
前記プラズマCVD法によるアンカーコート層、SiOx膜の成膜が、共通する原料ガスを用いて連続して成膜することを特徴とする電気泳動用カセットの製造方法である。
本発明にあっては、支持体前駆液と基板最表面との親和性、換言すれば濡れ性が良好となり、支持体前駆液を流し込む際にスムースな注入が可能になり、分離ゲルと濃縮ゲルとの境界が歪むことがなく、良好な支持体を形成することができる。
また、基板とSiOx膜との間にアンカーコート層が存在するので、基板とSiOx膜との密着性が高められ、SiOx膜の基板からの剥落が防止され、長期間の使用が可能となる。
さらに、アンカーコート層とSiOx膜とを連続して成膜することで、両者の密着力が高まり、結果的に基板とSiOx膜との接合力が高められる。
また、プラスチックフィルムを基板表面に貼付して、この上にアンカーコート層およびSiOx膜をもうけることで、カセットより電気泳動を完了したゲルを取り出す際、カセットの破損等によるゲルの損傷を回避できることになる。
さらに、SiOx膜は、酸素透過性が比較的低く、アクリルアミドなどの支持体前駆液の重合時に合成樹脂製基板からの酸素の移行が防止されて支持体前駆液の重合が阻害されることもない。
図1は、本発明のカセットの第1の例の要部を示すもので、符号11はカセットを構成する基板を示す。
この基板11は、スチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなるもので、射出成形法などの成形方法によって製作されたものである。
この基板11の支持体と接することになる表面には、アンカーコート層12が設けられており、このアンカーコート層12上にSiOx膜13が設けられている。このアンカーコート層12は、基板11に対するSiOx膜13の密着力を高めるためのもので、厚さ20〜300nmのヘキサメチルジシロキサンなどのジシロキサン類の重合膜である。
アンカーコート層12の形成は、基板11の表面に直接種々の薄膜形成手段、例えばCVD法、プラズマCVD法などよって行われる。これらの薄膜形成手段のうち、なかでも原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン類を用いたプラズマCVD法が特に好ましい。
例えば、プラズマCVD法によって、このようなアンカーコート層12を成膜する場合の成膜条件としては、基板温度を−30〜50℃、圧力0.01〜300Pa、プラズマ出力50〜800W、ジシロキサン類流量3〜50sccm、時間10〜600秒の範囲から定められる。
上記SiOx膜13は、X=1〜2の組成を有する酸化ケイ素からなる厚さ30〜100nmの薄膜であって、その水に対する接触角が30度以下、好ましくは10度以下となっているものである。この接触角が30度を超えると基板11の表面の親水性が不足し、支持体前駆液のスムースな注入が行えなくなる。
また、このSiOx膜13は、アンカーコート層12上に直接種々の薄膜形成手段、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法、プラズマCVD法などよって形成されたものである。これらの薄膜形成手段のうち、なかでも原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン類と酸素とを流量比10:100〜5:100の混合割合として用いたプラズマCVD法が特に好ましい。
このような薄膜形成手段によって接触角が30度以下のSiOx膜13を得るには、原料となるシロキサン類と酸素との混合割合などの成膜条件を制御することで可能になる。
例えば、プラズマCVD法によって、このような接触角を有するSiOx膜13を成膜する場合の成膜条件としては、基板温度を−30〜50℃、圧力0.01〜300Pa、プラズマ出力50〜800W、ジシロキサン類流量3〜50sccm、酸素流量50〜200sccm、時間10〜600秒の範囲から定められる。
さらに、このSiOx膜13は、その組成中の炭素含有率が原子百分率で10%以下、好ましくは5%以下であることが望ましく、炭素含有率が低いほど親水性が高い膜となって結果的に接触角を小さくすることができる。炭素含有率を10%以下とするには、プラズマCVD法などの薄膜形成手段での成膜条件を制御することで可能になる。
また、アンカーコート層12およびSiOx膜13の成膜にプラズマCVD法を用いる場合には、これらを連続して成膜することが好ましい。すなわち、プラズマCVD装置のチャンバーに原料としてヘキサメチルジシロキサンなどのジシロキサン類を供給してプラズマ重合させてアンカーコート層12を基板11上に成膜し、そのままの状態のチャンバーに引き続いて原料としてヘキサメチルジシロキサンなどのジシロキサン類と酸素とを供給してプラズマCVDによりSiOx膜13をアンカーコート層12上に連続して形成するものである。
すなわち、アンカーコート層12の成膜は、酸素をゼロまたは微量として成膜し、SiOx膜12の成膜は酸素の流量比を増やして、連続して成膜するものである。
この連続成膜方法を採用することによって、アンカーコート層12とSiOx膜13との密着性が高まり、生産性も向上する。
このようなカセットにあっては、基板11の表面にSiOx膜12を設けることで、基板11の表面が高い親水性を示すものとなり、支持体前駆液をキャビティに流し込む際に、前駆液が基板11表面によく濡れて流れ、その注入がスムースに行える。
また、注入後の分離ゲルと濃縮ゲルとの境界が歪むことがなく、境界が均一となる。
さらには、SiOx膜13は、ある程度の酸素遮断性を有することから、基板11からの酸素の移行が防止され、酸素によるアクリルアミドなどの前駆液の重合阻害も防止することもできる。
また、アンカーコート層12を設けることで、SiOx膜13と基板11との密着性が高められ、長期間の使用に際しても、SiOx膜13が剥落することがなく、SiOx膜13による上記効果が持続する。
図2は、本発明のカセットの第2の例の要部を示すもので、第1の例と共通する構成部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
この例では、基板11の支持体と接することになる表面にプラスチックフィルム14が貼付され、このプラスチックフィルム14の表面にアンカーコート層12とSiOx膜13が設けられてものである。
上記プラスチックフィルム14としては、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィン、ポリエチレン、セルロースアセテートなどからなる厚さ10〜300μmのフィルムが用いられ、基板11に対して接着、溶着などの接合手段によって貼付されている。
このプラスチックフィルム14の表面へのアンカーコート層12とSiOx膜13の形成は、先の例と同様の薄膜形成手段、なかでもプラズマCVD法によって行うことができる。
このように基板11の表面にプラスチックフィルム14を貼付し、このプラスチックフィルム14の表面にアンカーコート層12とSiOx膜13を設けることで、先の例と同様の作用効果が得られる以外に、カセットより電気泳動を完了したゲルを取り出す際、カセットの破損等によるゲルの損傷を回避できる効果を新たに得ることができる。
以下、具体例を示す。
まず、カセットを構成する2枚1組の基板をスチレン樹脂の射出成形法によって作成した。
この基板をプラズマCVD装置のチャンバー内に設置し、チャンバー内の圧力を1.5×10−3Paまで減圧した。次に、このチャンバー内にヘキサメチルジシロキサンを流量20sccmで導入し、プラズマ出力600W、基板温度20℃、時間約60秒とし、プラズマ重合を行い、厚さ約110nmのアンカーコート層を成膜した。
このようにしてアンカーコート層を成膜した基板をそのままプラズマCVD装置のチャンバー内に置き、チャンバー内の圧力を1.5×10−3Paに保ったまままこのチャンバー内にヘキサメチルジシロキサンと酸素とを同時に導入し、プラズマ出力300W、基板温度 ℃、時間約120秒とし、プラズマCVDによって、厚さ約70nmのSiOx膜を成膜した。
この時、チャンバー内に導入するヘキサメチルジシロキサン(HMDS)および酸素の流量を表1に示すように変化させて、SiOx膜を成膜した。得られたSiOx膜の水に対する接触角を測定し、表1にヘキサメチルジシロキサン(HMDS)および酸素の流量と対応して示した。
Figure 2007232476
表1から、チャンバー内に導入するヘキサメチルジシロキサン(HMDS)および酸素の流量を変化させることで、得られるSiOx膜の水に対する接触角を変化、制御することができることがわかる。
ついで、このようにしてSiOx膜が形成された基板を使って、カセットを作成し、そのキャビティにアクリルアミド溶液を流し込み、その注入状態およびアクリルアミドゲルの形成状態を観察した。
まず、分離ゲル用のアクリルアミド溶液を以下のように調製した。
・30%アクリルアミド溶液(アクリルアミド28%、N,N´−メチレンビスアクリルアミド2%): 2.15ml
・蒸留水: 1.55ml
・トリス塩酸緩衝液(pH8.8、1.5M): 1.25ml
・過硫酸アンモニウム: 50μl
・N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン: 5μl
このアクリルアミド溶液をカセットのキャビティに注入し、蒸留水を重畳してアクリルアミドゲルからなる分離ゲルとした。分離ゲルが形成された後、重畳した蒸留水を除き、さらに以下のように調製した濃縮ゲル用アクリルアミド溶液を注入し、蒸留水を重畳して濃縮ゲルを形成した。
・30%アクリルアミド溶液(アクリルアミド28%、N,N´−メチレンビスアクリルアミド2%): 0.65ml
・蒸留水: 3.05ml
・トリス塩酸緩衝液(pH8.8、1.5M): 1.25ml
・過硫酸アンモニウム: 50μl
・N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン:10μl
この2種のアクリルアミド溶液の注入時の状況および注入後のゲルの形成状況を目視により観察し、その結果を表2および表3に示す。
なお、表2および表3には、比較のために、ヘキサメチルジシロキサンのみを用いて基板上にプラズマCVD法によって成膜された撥水膜を有する基板を備えたもの(試験番号5)と、ガラス製基板を用いたもの(試験番号6)についても評価を行っている。
Figure 2007232476
Figure 2007232476
表2および表3の結果から、接触角が30度以下のSiOx膜を有する合成樹脂製基板では、ガラス製基板と同等の充填性、ゲル形成性が得られることが判る。
なお、射出成形によって得られたスチレン樹脂製基板の表面にポリエチレンテレフタレートからなるプラスチックフィルムをエポキシ接着剤で貼付し、このプラスチックフィルムの表面に同様のアンカーコート層とSiOx膜を形成したものについても、表2および表3に示す評価と同様の評価が得られた。
本発明のカセットを構成する基板の第1の例の要部を示す概略断面図である。 本発明のカセットを構成する基板の第2の例の要部を示す概略断面図である。 本発明にかかるカセットの構成を示す概略斜視図である。
符号の説明
1、2、11・・・基板、12・・・アンカーコート層、13・・・SiOx膜、13・・・プラスチックフィルム

Claims (4)

  1. 合成樹脂からなる基板を組み合わせて構成され、その内部に支持体を形成するためのキャビティを有する電気泳動用カセットであって、
    上記基板の支持体に接する表面にアンカーコート層が設けられ、このアンカーコート層上にSiOx膜が設けられ、このSiOx膜の水に対する接触角が30度以下である電気泳動用カセット。
  2. 合成樹脂からなる基板を組み合わせて構成され、その内部に支持体を形成するためのキャビティを有する電気泳動用カセットであって、
    上記基板の支持体に接する表面にプラスチックフィルムが貼付され、このプラスチックフィルムの表面にアンカーコート層が設けられ、このアンカーコート層上にSiOx膜が設けられ、このSiOx膜の水に対する接触角が30度以下である電気泳動用カセット。
  3. アンカーコート層とSiOx膜とが連続して成膜されたものである請求項1または2記載の電気泳動用カセット。
  4. 合成樹脂からなる基板を組み合わせて構成される電気泳動用カセットを製造するに際して、上記基板に直接またはプラスチックフィルムを介して、プラズマCVD法によりアンカーコート層、SiOx膜を成膜する電気泳動用カセットの製造方法であって、
    前記プラズマCVD法によるアンカーコート層、SiOx膜の成膜が、共通する原料ガスを用いて連続して成膜することを特徴とする電気泳動用カセットの製造方法。

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