JP2007230247A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】更なる小液滴化に際して、吐出方向の流抵抗を低減させ、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができるノズル形状を持つインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】 第2吐出口部10の発泡室11側の開口面は、吐出口4の配列方向と平行な方向の長さが、吐出口4の配列方向と垂直な方向の長さよりも長い形状であり、吐出口部側の開口面も、発泡室11側の開口面と合同な断面形状である。図では第2吐出口部10の、ヒータ1の形成面に対して略平行な方向に切断した断面は略矩形形状とした。
【選択図】図2

Description

本発明は、例えばインク滴等の液滴を吐出させて記録媒体に記録を行うための液体吐出ヘッドに関し、特にインクジェット記録を行う液体吐出ヘッドに関する。
インクジェット記録方式は、いわゆるノンインパクト記録方式の一つである。
このインクジェット記録方式は、記録時に発生する騒音が無視し得る程度に小さく、高速記録が可能である。また、インクジェット記録方式は、種々の記録媒体に対して記録が可能であり、いわゆる普通紙に対しても特別な処理を必要とせずにインクが定着して、しかも高精細な画像が廉価に得られる。このような利点から、インクジェット記録方式は、コンピューターの周辺機器としてのプリンタばかりでなく、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等の記録手段として近年急速に普及している。
一般的に利用されているインクジェット記録方式のインク吐出方法には、インク滴を吐出するために用いられる吐出エネルギ発生素子として、例えばヒータ等の電気熱変換素子を用いる方法と、例えばピエゾ素子等の圧電素子を用いる方法があり、いずれの方法も電気信号によってインク滴の吐出を制御することができる。電気熱変換素子を用いるインク吐出方法の原理は、電気熱変換素子に電圧を印加することにより、電気熱変換素子近傍のインクを瞬時に沸騰させて、沸騰時のインクの相変化により生じる急激な発泡圧によってインク滴を高速に吐出させる。一方、圧電素子を用いるインク吐出方法の原理は、圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が変位してこの変位時に発生する圧力によってインク滴を吐出させる。
電気熱変換素子を用いるインク吐出方法は、吐出エネルギ発生素子を配設するためのスペースを大きく確保する必要がなく、記録ヘッドの構造が簡素で、ノズルの集積化が容易であること等の利点がある。一方で、このインク吐出方法の固有の問題としては、電気熱変換素子が発生する熱等が記録ヘッド内に蓄熱されることによって、飛翔するインク滴の体積が変動することや、消泡によって生じるキャビテーションが電気熱変換素子に及ぼす悪影響や、インク内に溶け込んだ空気が記録ヘッド内の残留気泡になることで、インク滴の吐出特性や画像品質に及ぼす悪影響等があった。
これらの問題を解決する方法としては、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されたインクジェット記録方法および記録ヘッドがある。すなわち、上述した文献に記載されたインクジェット記録方法は、記録信号によって電気熱変換素子を駆動させて発生した気泡を外気に通気させる構成とされている。このインクジェット記録方法を採用することにより、飛翔するインク滴の体積の安定化を図り、微少量のインク滴を高速に吐出することを可能とし、気泡の消泡時に発生するキャビテーションを解消することでヒータの耐久性の向上を図ること等が可能となり、更なる高精細画像が容易に得られるようになる。上述した公報において、気泡を外気に連通させるための構成としては、インクに気泡を発生させる電気熱変換素子と、インクが吐出される開口である吐出口との間の最短距離を、従来に比して大幅に短くする構成が挙げられている。
この種の記録ヘッドの構成について、以下で説明する。インクを吐出させる電気熱変換素子が設けられた素子基板と、この素子基板に接合されてインクの流路を構成する流路構成基板(オリフィス基板とも称す。)とを備えている。流路構成基板は、インクが流動する複数のノズルと、これら各ノズルにインクを供給する供給室と、インク滴を吐出するノズル先端開口である複数の吐出口とを有している。ノズルは、電気熱変換素子によって気泡が発生する発泡室と、この発泡室にインクを供給する供給路とからなる。素子基板には、発泡室内に位置して電気熱変換素子が配設されている。また、素子基板には、流路構成基板に接する主面とは反対側の裏面から供給室にインクを供給するための供給口が設けられている。そして、流路構成基板には、素子基板上の電気熱変換素子に対向する位置に吐出口が設けられている。
また、以上のように構成された記録ヘッドは、供給口から供給室内に供給されたインクが、各ノズルに沿って供給されて、発泡室内に充填される。発泡室内に充填されたインクは、電気熱変換素子により膜沸騰されて発生する気泡によって、素子基板の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口からインク滴として吐出される。
特開昭54−161935号公報 特開昭61−185455号公報 特開昭61−249768号公報 特開平4−10941号公報
ところで、上述した記録ヘッドは、インク滴を吐出する際、発泡室内に成長する気泡によって、発泡室内に充填されているインクは吐出口側と供給路側とに流れが分かれ、この際に、流体の発泡による圧力が、供給路側に逃げたり、吐出口の内壁との摩擦により圧力損失が発生したりする。この現象は、吐出に悪影響を与える現象であり、小液滴吐出になるにつれ顕著になる傾向がある。すなわち、小液滴にするために、吐出口径を小さくすることで、吐出口部の抵抗が極めて大きくなり、吐出口方向の流量は減少し、流路方向の流量が増大するため、インク滴の吐出速度が低下することになる。そこで、流動に対して垂直な断面積を吐出口よりも大きくした第2吐出口部を設けることで、吐出口方向の全体の流抵抗が小さくなり、発泡が吐出口方向に圧力損失することが少なく成長するため、流路方向へ逃げ出す流量を抑制し、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことが出来る。
ところで、上述のように第2の吐出口部を設け、発熱体の下流側(吐出口側)の流路抵抗を小さくすると、第1吐出口部と第2吐出口部との境界において、第2吐出口部を設けない場合に比べ、リフィルが遅くなる状態が生じることがわかった。
もちろん、第2吐出口部の容積を小さくすれば、リフィル状態は改善する方向に変わるのだが、発熱体の下流側(吐出口側)の流路抵抗を小さくする効果が激減していってしまう。そこで、本発明者は第2吐出口部の容積をできるだけ確保するとともにリフィルの低下を低減した第2吐出口部の構成について鋭意検討することにより本発明に至ったものである。
そこで本発明の目的は、上述した実状における問題点に鑑み、吐出方向の流抵抗を低減させつつ、リフィル速度の低下を防ぐことができるノズル形状を持つインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
また、本発明の更なる目的は、上述したようなインクの蓄熱による吐出体積のバラツキを抑制できるノズル形状のインクジェット記録ヘッドを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明によるインクジェット記録ヘッドは、
液体が流動する複数のノズルと、当該複数のノズルに液体を供給する供給室と、液滴を吐出するノズルの先端開口である複数の吐出口と、を有し、
前記ノズルが、液滴を吐出させるための熱エネルギを発生するエネルギ発生素子を有する発泡室と、前記吐出口を含み当該吐出口と前記発泡室との間を連通する部分である吐出口部と、前記発泡室に液体を供給する供給路からなる流路構成基板と、前記エネルギ発生素子が設けられ前記流路構成基板を主面に接合した素子基板と、を備え、
前記吐出口部は、前記吐出口を含む第1吐出口部と、
当該第1吐出口部に段差を持って連続すると共に、前記素子基板の主面に平行でかつ第1吐出口部の断面より大きい断面をもって前記発泡室に連通する第2吐出口部と、を有するインクジェット記録ヘッドであって、
前記第2吐出口部の、前記素子基板の主面に平行な断面における前記供給路の液体供給方向の距離が、当該供給方向と直交する方向の距離より小さいことを特徴とする。
上記発明によれば、吐出口への液体の流動において圧力損失することが極めて少なく、吐出口に向かって、良好に吐出されることになる。こうすることで、ノズル先端の吐出口がさらに小さくなって、第1吐出口部での吐出口方向の流抵抗が大きくなったとしても、吐出する際の吐出口方向への流量の減少を抑え、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができる。さらに、第二吐出口部へのインクの流入位置(特に最大流速位置)がインク供給側にずれ、結果的に、リフィル時のインク流動距離が短縮されリフィル周波数は向上する。第二吐出口部が全体的にインク供給側にずれる時には、インク供給室から遠い側の第一吐出口部と第二吐出口部の段差部が少なくなり、リフィル時のメニスカスのクリッピングも減少させ、リフィル周波数を向上させる効果ももつ。これは、インク供給室から遠い側の第一吐出口部と第二吐出口部の段差部において、リフィル時にインクのメニスカスが引っかかり、リフィル時間が長くなるという問題があり、前記段差部を少なくすることがリフィル周波数を向上させるからである。
このとき、第2吐出口部を、吐出口を通り吐出口の配列方向に交差する垂線に対して対称形にし、バランスのとれた形状にしたことで、素子基板の主面に対してほぼ直交する方向に、液滴を安定して吐出させることが可能である。
さらに、第2吐出口部の、前記素子基板と略平行な方向の断面すなわち空間容積について、吐出口の配列方向と平行な方向(供給路の長手方向と垂直な方向)の方を吐出口の配列方向と垂直な方向(供給路の長手方向と平行な方向)の長さよりも大きくするため、発泡室の供給路の突き当たりとなる側壁の位置に第2吐出口部の形状が大きく制限されない。しかも、吐出口方向の流抵抗を低減させるのに、第2吐出口部の供給路の長手方向は大きくしないように形状変更したことで、発泡室の直ぐ上流側の供給路の高さが高くならず、液体の発泡による圧力が供給路側に逃げて吐出効率を低下させる心配はない。
また、上記のインクジェット記録ヘッドの主要部において、吐出軸に交差する前記第2吐出口部の第1吐出口部側の開口面が、前記第2吐出口部の前記発泡室側の開口面と相似形で、かつ、該発泡室側の開口面より面積が小さい断面形状であることにより、第1吐出口部と第2吐出口部との段差部分をより小さくできるので、高周波数で連続的に吐出がなされる場合、発泡後の吐出口方向への流れにおいて、流速をほとんど持たない微小なインクの淀み領域も小さくなる。その結果、電気熱変換素子による連続吐出動作の際にインクが蓄熱されることが抑えられ、吐出液滴の体積のバラツキが少なくなる。
さらに、吐出軸に交差する前記第2吐出口部の第1吐出口部側の開口面、および前記第2吐出口部の前記発泡室側の開口面を、楕円もしくは長円とすると、前記第2吐出口部の吐出口部側の開口面が略矩形形状の場合と比べ、四隅の面積分が小さくなり、インクの淀み領域も小さくなるため、より吐出液滴の体積のバラツキが少なくなる。さらに、前記素子基板の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、前記第2吐出口部の第1吐出口部側の開口面を、前記吐出口部と2点で内接する形状とすると、インクの淀み領域が一層小さくなり、より吐出液滴の体積のバラツキが少なくなる。
また、上記のインクジェット記録ヘッドの主要部において、吐出軸に交差する前記第2吐出口部の発泡室側の開口面を楕円もしくは長円とし、前記第2吐出口部の第1吐出口部側の開口面を円形として、かつ、前記第2吐出口部の発泡室側の開口面である楕円もしくは長円の内側にしたことにより、第1吐出口部と第2吐出口部との段差部分が少なく、しかも、段差部分が吐出口の中心を基準に点対称であるので、インクの淀み領域が偏らない。したがって、淀み領域の偏りによる不安定吐出を解消することができる。
さらに、上記のインクジェット記録ヘッドの主要部において、吐出軸に交差する前記第2吐出口部の第1吐出口部側の開口面を、前記第1吐出口部の前記発泡室側の開口面と合同な円にしたことにより、第1吐出口部と第2吐出口部との段差部分がほとんど無くなるので、発泡後の吐出口方向への流れにおいて、流速をほとんど持たない微小なインクの淀み領域が生じない。その結果、電気熱変換素子による高周波の連続吐出動作の際にインクが蓄熱されることがなく、吐出液滴の体積のバラツキが非常に少なくなる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクジェット記録方式の中でも特に、液体のインクを吐出するために利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段を備え、その熱エネルギによってインクの状態変化を生起させる方式が採用された記録ヘッドである。この方式が用いられることにより、記録される文字や画像等の高密度化および高精細化を達成している。特に本実施形態では、熱エネルギを発生する手段として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子によりインクを加熱して膜沸騰させたときに発生する気泡による圧力を利用してインクを吐出している。
まず、本実施形態のインクジェット記録ヘッドの全体構成について述べる。
図1は、本発明に好適なインクジェット記録ヘッドの実施の形態を一部切り欠いて見た斜視図である。
図1に示す形態のインクジェット記録ヘッドは、電気熱変換素子である複数のヒータ2を各ヒータ2に、インクの流路であるノズル5を個別に独立して形成するための隔離壁が、吐出口4から供給室6近傍まで延設された構成とされている。
このインクジェット記録ヘッドは複数のヒータ2および複数のノズル5を有し、各ノズル5の長手方向が平行に配列された第1のノズル列7と、供給室6を挟んで第1のノズル列7に対向する位置に各ノズル5の長手方向が平行に配列された第2のノズル列8とを備えている。
第1および第2のノズル列7,8は、隣接する各ノズルの間隔が600dpiピッチに形成されている。また、第2のノズル列8の各ノズル5は、第1のノズル列7の各ノズル5に対して、隣接する各ノズル間のピッチが互いに1/2ピッチずれて配列されている。
このような記録ヘッドは、特開平4−10940号公報、特開平4−10941号公報に開示されたインクジェット記録方法が適用されたインク吐出手段を有しており、インクの吐出時に発生する気泡が吐出口を介して外気に連通されている。
以下に、本発明の主要部となるインクジェット記録ヘッドのノズル構造について種々の形態例を挙げて説明する。
(第1の実施形態)
図2は本発明の第1の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
本形態のノズル構造を持つ記録ヘッドは、図1に示したように、電気熱変換素子である複数のヒータ1が設けられた素子基板2と、この素子基板2の主面に積層されて接合されて複数のインクの流路を構成する流路構成基板3とを備えている。
素子基板2は、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等によって形成されており、一般にSiによって形成されている。素子基板2の主面上には、各インクの流路毎に、ヒータ1と、このヒータ1に電圧を印加する電極(図示せず)と、この電極に接続された配線(図示せず)が所定の配線パターンでそれぞれ設けられている。また、素子基板2の主面には、蓄熱の発散性を向上させる絶縁膜(図示せず)が、ヒータ1を被覆するように設けられている。また、素子基板2の主面には、気泡が消泡した際に生じるキャビテーションから保護するための保護膜(図示せず)が、絶縁膜を被覆するように設けられている。
流路構成基板3は、図1に示したように、インクが流動する複数のノズル5と、これら各ノズル5にインクを供給する供給室6、およびインク滴を吐出するノズル5の先端開口である複数の吐出口4とを有している。吐出口4は、素子基板2上のヒータ1に対向する位置に形成されている。ノズル5は、図2に示すように、吐出口4を含んで、その径がほぼ一定である第1吐出口部と、ヒータの吐出口側における流抵抗を低減させるための第2吐出口部10と、発泡室11と、供給路9(図中の斜線部)とを有している。なお、発泡室11はヒータ1上に、吐出口4の開口面に対向する底面が略矩形状をなすように形成されている。供給路9は、一端が発泡室11に連通されるとともに他端が供給室6に連通されていて、供給路9の幅が供給室6から発泡室8に亘ってほぼ等しいストレート状で形成されている。また、第2吐出口部10は発泡室11上に連続して形成されている。さらに、ノズル5は、吐出口4からインク液滴が飛翔される吐出方向と、供給路9内を流動するインク液の流動方向とが直交されて形成されている。
また、吐出口4を含む第1吐出口部と、第2吐出口部10と、発泡室11と、供給路9とからなる図1に示したノズル5は、素子基板2の主面に対向する内壁面が、供給室6から発泡室11に亘って、素子基板2の主面に平行にそれぞれ形成されている。
図2(a)の平面透視図に示すように、第2吐出口部10の発泡室11側の開口面は、吐出口4の配列方向と平行な方向の長さが、吐出口4の配列方向と垂直な方向の長さよりも長い形状であり、第1吐出口部側の開口面も、発泡室11側の開口面と合同な断面形状である。但し、図2(a)では、第2吐出口部10の、ヒータ1の形成面に対して略平行な方向に切断した断面を略矩形形状で記載した。
また、ヒータ1の形成面(素子基板2の主面)に対してほぼ直交する方向に、液滴を安定して吐出させるために、第2吐出口部10は、吐出口4を通り吐出口の配列方向に交差する垂線に対して対称形にし、バランスのとれた形状にする。なお、吐出口4の中心を通り、前記素子基板の主面に垂直な、いかなる断面においても、第2吐出口部10の側壁は直線で表され、かつ、第2吐出口部10の第1吐出口部側の開口面、発泡室11側の開口面、および前記素子基板の主面とが平行である。
さらに、第2吐出口部10の、前記素子基板と略平行な方向の断面すなわち空間容積について、インク供給方向(液体供給方向)に対して最も遠い吐出口4の配列方向と平行な方向(供給路9の長手方向と垂直な方向)の方を吐出口4の配列方向と垂直な方向(供給路9の長手方向と平行な方向)の長さよりも大きくしたことにより、発泡室11のインク供給路9の突き当たりとなる側壁の位置に第2吐出口部10の形状が大きく制限されない。しかも、吐出口方向の流抵抗を低減させるのに、第2吐出口部10の供給路9の長手方向は大きくしないように形状変更したことで、発泡室11の直ぐ上流側の供給路9の高さが高くならず、液体の発泡による圧力が供給路側に逃げて吐出効率を低下させる心配はない。
さらに、インク供給方向に対して最も遠い吐出口4の配列方向と平行な方向(供給路9の長手方向と垂直な方向)の長さを長くしたことにより、吐出口部へのインクの充填速度が向上し、吐出口側の流路抵抗を小さくしたままリフィル速度の向上を図ることができる。
次に、図1及び図2に基づき、上記のように構成された記録ヘッドにてインク滴を吐出口4から吐出する動作を説明する。
まず、供給室6内に供給されたインクが、第1のノズル列7および第2のノズル列8の各ノズル5にそれぞれ供給される。各ノズル5に供給されたインクは、供給路9に沿って流動されて発泡室11内に充填される。発泡室11内に充填されたインクは、ヒータ1により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板2の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口4からインク滴として吐出される。また、発泡室11内に充填されたインクが吐出される際、発泡室11内のインクの一部は、発泡室11内に発生する気泡の圧力によって供給路9側に流動することになる。ここで、ノズルの発泡から吐出までの様子を局所的に見れば、発泡室11で発生した気泡の圧力は、第2吐出口部10にも即座に伝わり、発泡室11及び第2吐出口部10に充填されていたインクは、第2吐出口部10内を移動していくことになる。
この際に、ノズル内の第2吐出口部10が円柱形である図8の記録ヘッドに比べ、第1の実施形態では第2吐出口部10の、素子基板2の主面に平行な断面、すなわち空間容積が大きいため、圧力損失することが極めて少なく、吐出口4に向かって、良好に吐出されることになる。こうすることで、ノズル先端の吐出口がさらに小さくなって、吐出口部での吐出口方向の流抵抗が大きくなったとしても、吐出する際の吐出口方向への流量の減少を抑え、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができる。
(第2の実施形態)
本実施形態は、第2吐出口部の、流動に対して垂直な断面積を大きくする場合にインクの淀み領域も大きくなって、電気熱変換素子による熱が連続吐出時にヘッド内に蓄熱される問題まで考慮にいれたノズル構造を示す。また、ここでは図3に基づいて第1の実施形態に比べて異なる点を主に説明する。
図3は本発明の第2の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図3(a)の平面透視図に示すように、第2吐出口部10の発泡室11側の開口面は、吐出口4の配列方向と平行な方向の長さが、吐出口4の配列方向と垂直な方向の長さよりも長い形状であり、第1吐出口部側の開口面は、発泡室11側の開口面と相似形で、かつ、発泡室11側の開口面よりも面積が小さい断面形状である。但し、図2(a)では、第2吐出口部10の、ヒータ1の形成面に対して略平行な方向に切断した断面を略矩形形状で記載した。
また、ヒータ1の形成面(素子基板2の主面)に対してほぼ直交する方向に、液滴を安定して吐出させるために、第2吐出口部10は、吐出口4を通り吐出口の配列方向に交差する垂線に対して対称形にし、バランスのとれた形状にする。なお、吐出口4の中心を通り、前記素子基板の主面に垂直な、いかなる断面においても、第2吐出口部10の側壁は直線で表され、かつ、第2吐出口部10の第1吐出口部側の開口面、発泡室11側の開口面、および前記素子基板の主面とが平行である。
さらに、第2吐出口部10の、前記素子基板と略平行な方向の断面すなわち空間容積について、インク供給方向に対して最も遠い吐出口4の配列方向と平行な方向(供給路9の長手方向と垂直な方向)の方を吐出口4の配列方向と垂直な方向(供給路9の長手方向と平行な方向)の長さよりも大きくしたことにより、発泡室11のインク供給路9の突き当たりとなる側壁の位置に第2吐出口部10の形状が大きく制限されない。しかも、吐出口方向の流抵抗を低減させるのに、第2吐出口部10の供給路9の長手方向は大きくしないように形状変更したことで、発泡室11の直ぐ上流側の供給路9の高さが高くならず、液体の発泡による圧力が供給路側に逃げて吐出効率を低下させる心配はない。
次に、図1及び図3に基づき、上記のように構成された記録ヘッドにてインク滴を吐出口4から吐出する動作を説明する。
まず、供給室6内に供給されたインクが、第1のノズル列7および第2のノズル列8の各ノズル5にそれぞれ供給される。各ノズル5に供給されたインクは、供給路9に沿って流動されて発泡室11内に充填される。発泡室11内に充填されたインクは、ヒータ1により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板2の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口4からインク滴として吐出される。また、発泡室11内に充填されたインクが吐出される際、発泡室11内のインクの一部は、発泡室11内に発生する気泡の圧力によって供給路9側に流動することになる。ここで、ノズルの発泡から吐出までの様子を局所的に見れば、発泡室11で発生した気泡の圧力は、第2吐出口部10にも即座に伝わり、発泡室11及び第2吐出口部10に充填されていたインクは、第2吐出口部10内を移動していくことになる。
この際に、ノズル内の第2吐出口部10が円柱形である図8の記録ヘッドに比べ、第2の実施形態では第2吐出口部10の、素子基板2の主面に平行な断面、すなわち空間容積が大きいため、圧力損失することが極めて少なく、吐出口4に向かって、良好に吐出されることになる。こうすることで、ノズル先端の吐出口がさらに小さくなって、第1吐出口部での吐出口方向の流抵抗が大きくなったとしても、吐出する際の吐出口方向への流量の減少を抑え、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができる。
ここで、注意したいのは、第1の実施形態に比べ、第2吐出口部10の素子基板2の主面に平行な断面が、吐出口4側になるにしたがって小さくなるので、第2吐出口部10全体の流抵抗が大きい可能性があることである。しかしながら、第1吐出口部と第2吐出口部10との段差部分は、実際、流体が流れない淀み部であるので、結果的に、第1の実施形態と比べ、同等の流抵抗で維持される。
また、高周波数で連続的に吐出がなされる場合、第1の実施形態に比べ、第1吐出口部と第2吐出口部10との段差部分が小さくなったことにより、発泡後の吐出口方向への流れにおいて、流速をほとんど持たない微小なインクの淀み領域も小さくなる。その結果、電気熱変換素子による連続吐出動作の際にインクが蓄熱されることが抑えられ、吐出液滴の体積のバラツキが少なくなる。なお、高周波数で連続的に吐出がなされる場合、ノズル内のインクの淀みが吐出滴の体積のバラツキを発生させるメカニズムは、[発明が解決しようとする課題]の欄で説明したとおりである。
(第3の実施形態)
第3の実施形態についても、吐出体積のバラツキが少なくなるように、インクの淀み領域を小さくすることを目的としている。
ここで、第3の実施形態について、図4に基づいて第1の実施形態に比べて異なる点を主に説明する。
図4は本発明の第3の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図4(a)の平面透視図に示すように、第2吐出口部10の発泡室11側の開口面は、吐出口4の配列方向と平行な方向の径が、吐出口4の配列方向と垂直な方向の径よりも長い楕円、もしくは長円であり、第1吐出口部側の開口面は、発泡室11側の開口面と相似形で、かつ、発泡室11側の開口面よりも面積が小さい断面形状である。このように第2吐出口部10の、ヒータ1の形成面に対して略平行な方向に切断した断面を楕円もしくは長円にすることで、断面が略矩形の場合にできる四隅の淀み領域を省くことが可能である。
また、ヒータ1の形成面(素子基板2の主面)に対してほぼ直交する方向に、液滴を安定して吐出させるために、第2吐出口部10は、吐出口4を通り吐出口の配列方向に交差する垂線に対して対称形にし、バランスのとれた形状にする。なお、吐出口4の中心を通り、前記素子基板の主面に垂直な、いかなる断面においても、第2吐出口部10の側壁は直線で表され、かつ、第2吐出口部10の第1吐出口部側の開口面、発泡室11側の開口面、および前記素子基板の主面とが平行である。
さらに、第2吐出口部10の、前記素子基板と略平行な方向の断面すなわち空間容積について、インク供給方向に対して最も遠い吐出口4の配列方向と平行な方向(供給路9の長手方向と垂直な方向)の方を吐出口4の配列方向と垂直な方向(供給路9の長手方向と平行な方向)の長さよりも大きくしたことにより、発泡室11のインク供給路9の突き当たりとなる側壁の位置に第2吐出口部10の形状が大きく制限されない。しかも、吐出口方向の流抵抗を低減させるのに、第2吐出口部10の供給路9の長手方向は大きくしないように形状変更したことで、発泡室11の直ぐ上流側の供給路9の高さが高くならず、液体の発泡による圧力が供給路側に逃げて吐出効率を低下させる心配はない。
次に、図1及び図4に基づき、上記のように構成された記録ヘッドにてインク滴を吐出口4から吐出する動作を説明する。
まず、供給室6内に供給されたインクが、第1のノズル列7および第2のノズル列8の各ノズル5にそれぞれ供給される。各ノズル5に供給されたインクは、供給路9に沿って流動されて発泡室11内に充填される。発泡室11内に充填されたインクは、ヒータ1により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板2の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口4からインク滴として吐出される。また、発泡室11内に充填されたインクが吐出される際、発泡室11内のインクの一部は、発泡室11内に発生する気泡の圧力によって供給路9側に流動することになる。ここで、ノズルの発泡から吐出までの様子を局所的に見れば、発泡室11で発生した気泡の圧力は、第2吐出口部10にも即座に伝わり、発泡室11及び第2吐出口部10に充填されていたインクは、第2吐出口部10内を移動していくことになる。
この際に、ノズル内の抵抗緩和部10が円柱形である図8の記録ヘッドに比べ、第3の実施形態では第2吐出口部10の、素子基板2の主面に平行な断面すなわち空間容積が大きいため、圧力損失することが極めて少なく、吐出口4に向かって、良好に吐出されることになる。こうすることで、ノズル先端の吐出口がさらに小さくなって、第1吐出口部での吐出口方向の流抵抗が大きくなったとしても、吐出する際の吐出口方向への流量の減少を抑え、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができる。
ここで、注意したいのは、第2の実施形態に比べ、第2吐出口部10の素子基板2の主面に平行な断面を、楕円もしくは長円にすることで、四隅の面積分が小さくなり、第2吐出口部10全体の流抵抗としては大きくなる可能性があることである。しかしながら、四隅の面積部では、実際、流体は流れない淀み部であるので、結果的に、第2の実施形態と比べ、同等の流抵抗で維持される。
また、高周波数で連続的に吐出がなされる場合、第2の実施形態に比べ、第2吐出口部10の素子基板2の主面に平行な断面について四隅の面積分が小さくなり、インクの淀み領域も小さくなるため、より吐出液滴の体積のバラツキが少なくなる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態についても、吐出体積のバラツキが少なくなるように、インクの淀み領域を小さくすることを目的としている。
ここで、第4の実施形態について、図5に基づいて第1の実施形態に比べて異なる点を主に説明する。
図5は本発明の第4の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図5(a)の平面透視図に示すように、第2吐出口部10の発泡室11側の開口面は、吐出口4の配列方向と平行な方向の径が、吐出口4の配列方向と垂直な方向の径よりも長い楕円、もしくは長円であり、第1吐出口部側の開口面は、発泡室11側の開口面と相似形で、かつ、吐出口部と2点で内接する。このような形状では、第3の実施形態に比べて、第1吐出口部と第2吐出口部10との段差部が小さくなり、インクの淀み領域が減少する。
また、ヒータ1の形成面(素子基板2の主面)に対してほぼ直交する方向に、液滴を安定して吐出させるために、第2吐出口部10は、吐出口4を通り吐出口の配列方向に交差する垂線に対して対称形にし、バランスのとれた形状にする。なお、吐出口4の中心を通り、前記素子基板の主面に垂直な、いかなる断面においても、第2吐出口部10の側壁は直線で表され、かつ、第2吐出口部10の第1吐出口部側の開口面、発泡室11側の開口面、および前記素子基板の主面とが平行である。
さらに、第2吐出口部10の、前記素子基板と略平行な方向の断面すなわち空間容積について、インク供給方向に対して最も遠い吐出口4の配列方向と平行な方向(供給路9の長手方向と垂直な方向)の方を吐出口4の配列方向と垂直な方向(供給路9の長手方向と平行な方向)の長さよりも大きくしたことにより、発泡室11のインク供給路9の突き当たりとなる側壁の位置に第2吐出口部10の形状が大きく制限されない。しかも、吐出口方向の流抵抗を低減させるのに、第2吐出口部10の供給路9の長手方向は大きくしないように形状変更したことで、発泡室11の直ぐ上流側の供給路9の高さが高くならず、液体の発泡による圧力が供給路側に逃げて吐出効率を低下させる心配はない。
次に、図1及び図5に基づき、上記のように構成された記録ヘッドにてインク滴を吐出口4から吐出する動作を説明する。
まず、供給室6内に供給されたインクが、第1のノズル列7および第2のノズル列8の各ノズル5にそれぞれ供給される。各ノズル5に供給されたインクは、供給路9に沿って流動されて発泡室11内に充填される。発泡室11内に充填されたインクは、ヒータ1により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板2の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口4からインク滴として吐出される。また、発泡室11内に充填されたインクが吐出される際、発泡室11内のインクの一部は、発泡室11内に発生する気泡の圧力によって供給路9側に流動することになる。ここで、ノズルの発泡から吐出までの様子を局所的に見れば、発泡室11で発生した気泡の圧力は、第2吐出口部10にも即座に伝わり、発泡室11及び第2吐出口部10に充填されていたインクは、第2吐出口部10内を移動していくことになる。
この際に、ノズル内の第2吐出口部10が円柱形である図8の記録ヘッドに比べ、第4の実施形態では第2吐出口部10の、素子基板2の主面に平行な断面、すなわち空間容積が大きいため、圧力損失することが極めて少なく、吐出口4に向かって、良好に吐出されることになる。こうすることで、ノズル先端の吐出口がさらに小さくなって、第1吐出口部での吐出口方向の流抵抗が大きくなったとしても、吐出する際の吐出口方向への流量の減少を抑え、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができる。
ここで、注意したいのは、第3の実施形態に比べ、第2吐出口部10の素子基板2の主面に平行な断面が小さくなるので、第2吐出口部10全体の流抵抗としては大きくなる可能性があるということである。しかしながら、第1吐出口部と第2吐出口部10との段差部分は、実際、流体は流れない淀み部であるので、結果的に、第3の実施形態と比べ、同等の流抵抗で維持される。
また、高周波数で連続的に吐出がなされる場合、第3の実施形態に比べ、吐出口部と第2吐出口部10との段差部が小さくなり、インクの淀み領域が減少するため、より吐出液滴の体積のバラツキが少なくなる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態についても、吐出体積のバラツキが少なくなるように、インクの淀み領域を小さくすることを目的としている。また、第5の実施形態については、第2吐出口部と第1吐出口部の段差部分が点対称になるように(ドーナツ形状になるように)形成し、その段差部分にできる淀み領域の偏りによる不安定吐出を解消することも目的としている。
ここで、第5の実施形態について、図6に基づいて第1の実施形態に比べて異なる点を主に説明する。
図6は本発明の第5の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図6(a)の平面透視図に示すように、第2吐出口部10の発泡室11側の開口面は、吐出口4の配列方向と平行な方向の径が、吐出口4の配列方向と垂直な方向の径よりも長い楕円、もしくは長円であり、第1吐出口部側の開口面は円形で、かつ、発泡室11側の開口面の内側にある。このような形状では、第2吐出口部10と第1吐出口部との段差部分が、吐出口4の中心から前記素子基板の主面におろした垂線に対して点対称になるように形成されているため、インクの淀み領域の偏りによる不安定吐出を引き起こすおそれがない。
また、ヒータ1の形成面(素子基板2の主面)に対してほぼ直交する方向に、液滴を安定して吐出させるために、第2吐出口部10は、吐出口4を通り吐出口の配列方向に交差する垂線に対して対称形にし、バランスのとれた形状にする。なお、吐出口4の中心を通り、前記素子基板の主面に垂直な、いかなる断面においても、第2吐出口部10の側壁は直線で表され、かつ、第2吐出口部10の第1吐出口部側の開口面、発泡室11側の開口面、および前記素子基板の主面とが平行である。
さらに、第2吐出口部10の、前記素子基板と略平行な方向の断面すなわち空間容積について、インク供給方向に対して最も遠い吐出口4の配列方向と平行な方向(供給路9の長手方向と垂直な方向)の方を吐出口4の配列方向と垂直な方向(供給路9の長手方向と平行な方向)の長さよりも大きくしたことにより、発泡室11のインク供給路9の突き当たりとなる側壁の位置に第2吐出口部10の形状が大きく制限されない。しかも、吐出口方向の流抵抗を低減させるのに、第2吐出口部10の供給路9の長手方向は大きくしないように形状変更したことで、発泡室11の直ぐ上流側の供給路9の高さが高くならず、液体の発泡による圧力が供給路側に逃げて吐出効率を低下させる心配はない。
次に、図1及び図6に基づき、上記のように構成された記録ヘッドにてインク滴を吐出口4から吐出する動作を説明する。
まず、供給室6内に供給されたインクが、第1のノズル列7および第2のノズル列8の各ノズル5にそれぞれ供給される。各ノズル5に供給されたインクは、供給路9に沿って流動されて発泡室11内に充填される。発泡室11内に充填されたインクは、ヒータ1により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板2の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口4からインク滴として吐出される。また、発泡室11内に充填されたインクが吐出される際、発泡室11内のインクの一部は、発泡室11内に発生する気泡の圧力によって供給路9側に流動することになる。ここで、ノズルの発泡から吐出までの様子を局所的に見れば、発泡室11で発生した気泡の圧力は、第2吐出口部10にも即座に伝わり、発泡室11及び第2吐出口部10に充填されていたインクは、第2吐出口部10内を移動していくことになる。
この際に、ノズル内の抵抗緩和部10が円柱形である図8の記録ヘッドに比べ、第5の実施形態では第2吐出口部10の、素子基板2の主面に平行な断面、すなわち空間容積が大きいため、圧力損失することが極めて少なく、吐出口4に向かって、良好に吐出されることになる。こうすることで、ノズル先端の吐出口がさらに小さくなって、第1吐出口部での吐出口方向の流抵抗が大きくなったとしても、吐出する際の吐出口方向への流量の減少を抑え、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができる。
ここで、注意したいのは、第1の実施形態に比べ、第2吐出口部の素子基板の主面に平行な断面が小さくなるので、第2吐出口部の全抵抗としては大きくなる可能性があるということである。しかしながら、第1吐出口部と第2吐出口部との段差部分は、実際、流体は流れない淀み部であるので、結果的に、第1の実施形態と比べ、同等の流抵抗で維持される。
さらに、上述した各実施形態に比べ、第2吐出口部10と第1吐出口部との段差部分が点対称に形成されていることで、この段差部分全体においてインクの淀み部が偏ることがないため、吐出特性が安定する。
(第6の実施形態)
第6の実施形態についても、吐出液滴の体積のバラツキが少なくなるように、インクの淀み領域を小さくすることを目的としている。また、第6の実施形態については、第2吐出口部と第1吐出口部の段差部分をほぼ無くすことで、淀み領域の偏りによる不安定吐出を解消することも目的としている。
ここで、第6の実施形態について、図7に基づいて第1の実施形態に比べて異なる点を主に説明する。
図7は本発明の第6の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図、(c)は(a)のB−B線に沿った断面図である。
図7(a)の平面透視図に示すように、第2吐出口部10の発泡室11側の開口面は、吐出口4の配列方向と平行な方向の径が、吐出口4の配列方向と垂直な方向の径よりも長い楕円、もしくは長円であり、第1吐出口部側の開口面は円形で、かつ、吐出口部の第2吐出口部10側の開口面と合同な円となる。このような形状では、第2吐出口部10と第1吐出口部との間に段差部分がほとんど無いので、第2吐出口部と第1吐出口部との間でインクの淀み領域は生じない。
また、ヒータ1の形成面(素子基板2の主面)に対してほぼ直交する方向に、液滴を安定して吐出させるために、第2吐出口部10は、吐出口4を通り吐出口の配列方向に交差する垂線に対して対称形にし、バランスのとれた形状にする。なお、吐出口4の中心を通り、前記素子基板の主面に垂直な、いかなる断面においても、第2吐出口部10の側壁は直線で表され、かつ、第2吐出口部10の第1吐出口部側の開口面、発泡室11側の開口面、および前記素子基板の主面とが平行である。
さらに、第2吐出口部10の、前記素子基板と略平行な方向の断面すなわち空間容積について、インク供給方向に対して最も遠い吐出口4の配列方向と平行な方向(供給路9の長手方向と垂直な方向)の方を吐出口4の配列方向と垂直な方向(供給路9の長手方向と平行な方向)の長さよりも大きくしたことにより、発泡室11のインク供給路9の突き当たりとなる側壁の位置に第2吐出口部10の形状が大きく制限されない。しかも、吐出口方向の流抵抗を低減させるのに、第2吐出口部10の供給路9の長手方向は大きくしないように形状変更したことで、発泡室11の直ぐ上流側の供給路9の高さが高くならず、液体の発泡による圧力が供給路側に逃げて吐出効率を低下させる心配はない。
次に、図1及び図7に基づき、上記のように構成された記録ヘッドにてインク滴を吐出口4から吐出する動作を説明する。
まず、供給室6内に供給されたインクが、第1のノズル列7および第2のノズル列8の各ノズル5にそれぞれ供給される。各ノズル5に供給されたインクは、供給路9に沿って流動されて発泡室11内に充填される。発泡室11内に充填されたインクは、ヒータ1により膜沸騰されて発生する気泡の成長圧力によって、素子基板2の主面に対してほぼ直交する方向に飛翔されて、吐出口4からインク滴として吐出される。また、発泡室11内に充填されたインクが吐出される際、発泡室11内のインクの一部は、発泡室11内に発生する気泡の圧力によって供給路9側に流動することになる。ここで、ノズルの発泡から吐出までの様子を局所的に見れば、発泡室11で発生した気泡の圧力は、第2吐出口部10にも即座に伝わり、発泡室11及び第2吐出口部10に充填されていたインクは、第2吐出口部10内を移動していくことになる。
この際に、ノズル内の第2吐出口部10が円柱形である図8の記録ヘッドに比べ、第4の実施形態では第2吐出口部10の、素子基板2の主面に平行な断面、すなわち空間容積が大きいため、圧力損失することが極めて少なく、吐出口4に向かって、良好に吐出されることになる。こうすることで、ノズル先端の吐出口がさらに小さくなって、吐出口部での吐出口方向の流抵抗が大きくなったとしても、吐出する際の吐出口方向への流量の減少を抑え、インク滴の吐出速度の低下を防ぐことができる。
(第7の実施形態)
図9から図12は本発明の第7の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
本形態のノズル構造を持つ記録ヘッドは、図8に示したように、電気熱変換素子1が設けられた素子基板2と、この素子基板2の主面に積層されて接合されて複数のインクの流路を構成する流路構成基板3とを備えている。
素子基板2は、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等によって形成されており、一般にSiによって形成されている。素子基板2の主面上には、各インクの流路毎に、ヒータ1と、このヒータ1に電圧を印加する電極(図示せず)と、この電極に接続された配線(図示せず)が所定の配線パターンでそれぞれ設けられている。また、素子基板2の主面には、蓄熱の発散性を向上させる絶縁膜(図示せず)が、電気熱変換素子1を被覆するように設けられている。また、素子基板2の主面には、気泡が消泡した際に生じるキャビテーションから保護するための保護膜(図示せず)が、絶縁膜を被覆するように設けられている。
流路構成基板3は、図8に示したように、インクが流動する複数のノズル24を有し、これら各ノズル24はインクを供給する供給室6および供給路20、インクを沸騰させ気泡を発生させる発泡室11およびインク滴を吐出するノズル24の先端開口である吐出口部20を有している。吐出口部20は、素子基板2上の電気熱変換素子1に対向する位置に形成されている。
ノズル形状は、吐出口部上端面21の重心を通り素子基板2の主面に垂直に交わる軸(以下、吐出口部第一軸12)に対して、吐出口部下端面13の重心を通り素子基板の主面に垂直に交わる軸(以下、吐出口部第二軸14)が、前記素子基板の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室側にずれているように形成され、かつ、電気熱変換素子1の重心を通り素子基板の主面に垂直に交わる軸(以下、ヒータ軸15)と、前記吐出口部第一軸12が一致するように形成されている。
吐出口部第一軸12と吐出口部第二軸14を上述したようにずらし、吐出口部第一軸12とヒータ軸15を一致するように配置することで次のような利点がある。吐出口部第一軸12とヒータ軸15を一致させることは、電気熱変換素子1で発生する発泡圧および発泡圧によって生じるインク流が、吐出口部第一軸12に対して均等になり、吐出されるインク滴およびそのサテライト滴のヨレを防ぎ、着弾精度を高める効果がある。また、吐出口部第一軸に比べ、吐出口部第二軸をインク供給室側に寄せることで、インク流動距離を短縮し、リフィル周波数を向上させる効果がある。さらに、吐出口部20が第一吐出口部16と第二吐出口部10から形成されている場合には、インク流動位置が第一吐出口部16と第二吐出口部10のインク供給室6反対側の段差部18から離れることで、該段差部18でのリフィル時のインクのクリッピングを減らすことでリフィル周波数を向上させる。
以下で、吐出口第一軸12に対して吐出口第二軸14がインク供給室側にずれていて、吐出口第一軸12とヒータ軸15が一致している第7の実施形態について、吐出口部20の形状の違いによる効果に言及しながら、いくつかの具体例をあげる。
「具体例7−1」
図9に記載のノズル形状は、吐出口部20を吐出口11に近い方から、第一吐出口部16と第二吐出口部10で形成し、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図における断面積が、第一吐出口部16に比べ第二吐出口部10を大きく形成している。
このような形状にすることで、吐出口部20の流抵抗を低減することができ、吐出液滴を小さくしても、吐出速度を低下させずに、印字品位を高めることができる。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例7−2」
図10に記載のノズル形状は、「具体例1」のバリエーションの一つである。図10に記載のノズル形状は、第一吐出口部16が円柱形状で、第二吐出口部10が円錐台形状である。第二吐出口部10を円錐台形状にすることで、「具体例1」に比べて流抵抗をさらに減らすことができる。また、第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が少なくなることから、段差部18に停滞するインクのよどみ領域が少なくなり、吐出量および吐出速度などが安定し、印字品位が高まる。段差部18に停滞するインクは、電気熱変換素子で温められた影響で周囲のインクよりも高温になっており、吐出するインクの粘性抵抗を変化させ、吐出特性に悪影響を及ぼすからである。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例7−3」
図11に記載のノズル形状は、第一吐出口部16と第二吐出口部10がともに円柱形状で、図9の具体例と同じ組合せであるが、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室6と反対側の第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が、生じないように形成されている。これより、「具体例1」に比べて、段差部18でのインクのクリッピングが低減することによるリフィル周波数の向上の効果がある。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例7−4」
図12に記載のノズル形状は、第一吐出口部16が円柱形状で、第二吐出口部10が円錐台形状であり、かつ、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室6と反対側の第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が、生じないように形成されている。「具体例2」で述べたように第二吐出口部10を円錐台形状にすると、円柱形状に比べてインクのよどみ領域が少なくなり、よどみ領域のインクの温度上昇による、吐出量バラツキなど、印字不良を抑えることができる。また、段差部18をなくすように設計することで、リフィル時のメニスカスのクリッピングが緩和され、リフィル周波数が早くなる。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
(第8の実施形態)
図13から図16は本発明の第8の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル形状を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
本実施形態のインクジェット記録ヘッドの素子基板2および流路構成基板3は第1の実施形態と同様で、ノズル形状は、吐出口部第一軸12に対して、吐出口部第二軸14が、前記素子基板の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室側にずれているように形成され、かつ、ヒータ軸15と、前記吐出口部第二軸14が一致するように形成されている。以下で、ノズル形状を中心に実施形態を記述する。
吐出口部第一軸12と吐出口部第二軸14を上述したようにずらし、吐出口部第二軸14とヒータ軸15を一致するように配置することで次のような利点がある。吐出口部第二軸14とヒータ軸15が一致させることは、電気熱変換素子1で発生する発泡圧が第二吐出口に均等に伝わり、発泡パワーを十分に取り込めるという利点を持つ。また、(第1の実施形態)に比べて、ヒータ軸15もインク供給室6に近くなるので、最大発泡位置もインク供給室6側にずれ、インク供給室6から吐出口部20および発泡室11へのリフィル時のインク流動距離がより短縮され、リフィル周波数が早くなるという効果がある。
以下で、吐出口第一軸12に対して吐出口第二軸14がインク供給室6側にずれていて、吐出口第二軸14とヒータ軸15が一致している第8の実施形態について、吐出口部20の形状の違いによる効果に言及しながら具体例をあげる。
「具体例8−1」
図13に記載のノズル形状は、吐出口部20を吐出口11に近い方から、第一吐出口部16と第二吐出口部10で形成し、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図における断面積が、第一吐出口部16に比べ第二吐出口部10を大きく形成している。
このような形状にすることで、吐出口部20の流抵抗を低減することができ、吐出液滴を小さくしても、吐出速度を低下させずに、印字品位を高めることができる。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例8−2」
図14に記載のノズル形状は、(実施例8−1)のバリエーションの一つである。図14に記載のノズル形状は、第一吐出口部16が円柱形状で、第二吐出口部10が円錐台形状である。第二吐出口部10を円錐台形状にすることで、(実施例8−1)に比べて流抵抗をさらに減らすことができる。また、第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が少なくなることから、段差部18に停滞するインクのよどみ領域が少なくなり、吐出量および吐出速度などが安定し、印字品位が高まる。段差部18に停滞するインクは、電気熱変換素子で温められた影響で周囲のインクよりも高温になっており、吐出するインクの粘性抵抗を変化させ、吐出特性に悪影響を及ぼすからである。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例8−3」
図15に記載のノズル形状は、第一吐出口部16と第二吐出口部10がともに円柱形状で、図13の具体例と同じ組合せであるが、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室6と反対側の第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が、生じないように形成されている。これより、「具体例8−1」に比べて、段差部18でのインクのクリッピングが低減することによるリフィル周波数の向上の効果がある。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例8−4」
図16に記載のノズル形状は、第一吐出口部16が円柱形状で、第二吐出口部10が円錐台形状であり、かつ、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室6と反対側の第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が、生じないように形成されている。「具体例8−2」で述べたように第二吐出口部10を円錐台形状にすると、円柱形状に比べてインクのよどみ領域が少なくなり、よどみ領域のインクの温度上昇による、吐出量バラツキなど、印字不良を抑えることができる。また、段差部18をなくすように設計することで、リフィル時のメニスカスのクリッピングが緩和され、リフィル周波数が早くなる。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
(第9の実施形態)
図17から図20は本発明の第9の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル形状を示している。同図(a)はインクジェット記録ヘッドの複数のノズルのうちの1つを基板に対して垂直な方向から見た平面透視図、(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。
本実施形態のインクジェット記録ヘッドの素子基板2および流路構成基板3は第一の実施形態と同様で、ノズル形状は、吐出口部第一軸12に対して、吐出口部第二軸14が、前記素子基板の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室側にずれているように形成され、かつ、吐出口部第二軸14が吐出口部第一軸12とヒータ軸15の間に位置するように形成されている。
これら三者の軸の関係からすると、本実施形態は、第7の実施形態と第8の実施形態の間に位置する。第7の実施形態では、吐出口部第一軸12とヒータ軸15が一致することで、第一吐出口部16への発泡圧が均一化され、吐出が安定する。一方で、第8の実施形態では、吐出口部第二軸14とヒータ軸15が一致することで、電気熱変換素子1で発生する発泡圧が第二吐出口17に均等に伝わり、発泡パワーを十分に取り込める。また、最大発泡位置をインク供給室6側にずらし、リフィル周波数をさらに上げるという利点もあった。これら二つの実施形態の利点をそれぞれ取り込む形状であるのが、本実施形態である。
以下で、吐出口第一軸12に対して吐出口第二軸14がインク供給室6側にずれていて、ヒータ軸15が吐出口第一軸12と吐出口第二軸14の間に位置している第3の実施形態について、吐出口部20の形状の違いによる効果に言及しながら具体例をあげる。
「具体例9−1」
図17に記載のノズル形状は、吐出口部20を吐出口11に近い方から、第一吐出口部16と第二吐出口部10で形成し、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図における断面積が、第一吐出口部16に比べ第二吐出口部10を大きく形成している。
このような形状にすることで、吐出口部20の流抵抗を低減することができ、吐出液滴を小さくしても、吐出速度を低下させずに、印字品位を高めることができる。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例9−2」
図18に記載のノズル形状は、「具体例9−1」のバリエーションの一つである。図18に記載のノズル形状は、第一吐出口部16が円柱形状で、第二吐出口部10が円錐台形状である。第二吐出口部10を円錐台形状にすることで、「具体例9−1」に比べて流抵抗をさらに減らすことができる。また、第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が少なくなることから、段差部18に停滞するインクのよどみ領域が少なくなり、吐出量および吐出速度などが安定し、印字品位が高まる。段差部18に停滞するインクは、電気熱変換素子で温められた影響で周囲のインクよりも高温になっており、吐出するインクの粘性抵抗を変化させ、吐出特性に悪影響を及ぼすからである。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例9−3」
図19に記載のノズル形状は、第一吐出口部16と第二吐出口部10がともに円柱形状で、図17の具体例と同じ組合せであるが、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室6と反対側の第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が、生じないように形成されている。これより、「具体例9−1」に比べて、段差部18でのインクのクリッピングが低減することによるリフィル周波数の向上の効果がある。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
「具体例9−4」
図20に記載のノズル形状は、第一吐出口部16が円柱形状で、第二吐出口部10が円錐台形状であり、かつ、素子基板2の主面に対して垂直方向から見た平面透視図において、インク供給室6と反対側の第一吐出口部16と第二吐出口部10の段差部18が、生じないように形成されている。「具体例9−2」で述べたように第二吐出口部10を円錐台形状にすると、円柱形状に比べてインクのよどみ領域が少なくなり、よどみ領域のインクの温度上昇による、吐出量バラツキなど、印字不良を抑えることができる。また、段差部18をなくすように設計することで、リフィル時のメニスカスのクリッピングが緩和され、リフィル周波数が早くなる。ここで、第一吐出口部16と第二吐出口部10の流動に対して垂直な断面は、円に限ったものではなく、円、楕円、多角形および曲線で囲まれ円状に近い図形をしていればよい。
本発明に好適なインクジェット記録ヘッドの実施の形態を一部切り欠いて見た斜視図である。 本発明の第1の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を説明するための図である。 本発明の第2の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を説明するための図である。 本発明の第3の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を説明するための図である。 本発明の第4の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を説明するための図である。 本発明の第5の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を説明するための図である。 本発明の第6の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造を説明するための図である。 本発明に好適なインクジェット記録ヘッドの第7の実施形態を一部切り欠いて見た斜視図である。 本発明の第7の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例1の模式図である。 本発明の第7の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例2の模式図である。 本発明の第7の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例3の模式図である。 本発明の第7の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例4の模式図である。 本発明の第8の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例1の模式図である。 本発明の第8の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例2の模式図である。 本発明の第8の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例3の模式図である。 本発明の第8の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例4の模式図である。 本発明の第9の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例1の模式図である。 本発明の第9の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例2の模式図である。 本発明の第9の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例3の模式図である。 本発明の第9の実施形態によるインクジェット記録ヘッドのノズル構造の具体例4の模式図である。
符号の説明
1 ヒータ
2 素子基板
3 流路構成基板
4 吐出口
5 ノズル
6 供給室
7 第1のノズル列
8 第2のノズル列
9 供給路
10 第2吐出口部
11 発泡室
12 第一軸
13 吐出口部下端面
14 第二軸
15 ヒータ軸
16 第1吐出口部
18 段差部
20 吐出口部
21 吐出口部上端面
24 ノズル

Claims (5)

  1. 液体が流動する複数のノズルと、当該複数のノズルに液体を供給する供給室と、液滴を吐出するノズルの先端開口である複数の吐出口と、を有し、
    前記ノズルが、液滴を吐出させるための熱エネルギを発生するエネルギ発生素子を有する発泡室と、前記吐出口を含み当該吐出口と前記発泡室との間を連通する部分である吐出口部と、前記発泡室に液体を供給する供給路からなる流路構成基板と、前記エネルギ発生素子が設けられ前記流路構成基板を主面に接合した素子基板と、を備え、
    前記吐出口部は、前記吐出口を含む第1吐出口部と、
    当該第1吐出口部に段差を持って連続すると共に、前記素子基板の主面に平行でかつ第1吐出口部の断面より大きい断面をもって前記発泡室に連通する第2吐出口部と、を有するインクジェット記録ヘッドであって、
    前記第2吐出口部の、前記素子基板の主面に平行な断面における前記供給路の液体供給方向の距離が、当該供給方向と直交する方向の距離より小さいことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 前記第2吐出口部の前記素子基板の主面に平行な断面が、前記第1吐出口部に向かって徐々に小さくなることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 液体が流動する複数のノズルと、当該複数のノズルに液体を供給する供給室と、液滴を吐出するノズルの先端開口である複数の吐出口と、を有し、
    前記ノズルが、液滴を吐出させるための熱エネルギを発生するエネルギ発生素子を有する発泡室と、前記吐出口を含み当該吐出口と前記発泡室との間を連通する部分である吐出口部と、前記発泡室に液体を供給する供給路からなる流路構成基板と、前記エネルギ発生素子が設けられ前記流路構成基板を主面に接合した素子基板と、を備え、
    前記吐出口部は、前記吐出口を含む第1吐出口部と、
    当該第1吐出口部に段差を持って連続すると共に、前記素子基板の主面に平行でかつ第1吐出口部の断面より大きい断面をもって前記発泡室に連通する第2吐出口部と、を有するインクジェット記録ヘッドであって、
    前記第1吐出口部の、前記素子基板と平行な断面における前記吐出口側端面の重心が、前記第2吐出口部の、前記素子基板と平行な断面における前記第1吐出口部側端面の重心より、前記供給路の液体供給方向に対して上流側にずれていることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  4. 前記エネルギ発生素子の重心と、前記第1吐出口部の前記素子基板と平行な断面における前記吐出口側端面の重心と、が、前記供給路の液体供給方向に対して一致していることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 前記エネルギ発生素子の重心と、前記第2吐出口部の前記素子基板と平行な断面における前記第1吐出口部側端面の重心と、が、前記供給路の液体供給方向に対して一致していることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録ヘッド。
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