従来、コンピュータの出力装置やデジタル映像の出力装置としてのプリンタ装置は、その記録方式に応じて、熱転写式プリンタ装置、インクジェットプリンタ装置、レーザープリンタ装置、ワイヤードットプリンタ装置などに分類できる。そのうち、熱転写式プリンタ装置は、インクシートおよび記録紙を用い、主走査方向に配列された複数個の発熱体を選択的に駆動して、インクシートと記録紙とを副走査方向に搬送することにより、記録紙にドットライン状に印画を行うものである。近年、入力側であるデジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、スキャナ等の画像入力機器の進歩に伴い、熱転写式プリンタ装置に対する注目度が高くなっている。熱転写式プリンタ装置は、静止画を記録するデジタルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置によって撮像された画像情報を、コンピュータまたは記録媒体を介してプリント出力するのに好適なプリンタ装置である。
例えばインクジェットプリンタ装置などの方式のプリンタ装置では、ドットを形成するか否かの2値の選択しかないために、小さなドットを記録紙に形成しながら誤差拡散等の手法でみかけの解像度と階調性を得ようとする。それに対して、熱転写式プリンタ装置では、1つの画素に対して熱の値を容易に制御することが可能なため、1つの画素に対する階調性を多く取ることができる。そのため、インクジェットプリンタ装置等の他のプリンタ装置に比べて滑らかで高画質な画像を得ることができるという利点がある。また、熱転写式プリンタ装置は、サーマルヘッドの性能や記録紙材料の性能も向上したために、仕上がり品位でも銀塩写真に見劣りしない画像プリントを得ることが可能である。そのため、近年のデジタルカメラの進歩に歩調を合わせるように、特に自然画像用のプリンタとして注目されている。
さらに、撮像装置によって撮像された画像情報を、コンピュータまたは記録媒体を介することなく、熱転写式プリンタ装置と撮像装置を直接的に接続しプリント出力するシステムも登場している。こうしたシステムによれば、撮像装置からプリント設定を行うので、画像情報を簡単にプリント出力することが可能になり、ますます熱転写式プリンタ装置に対する注目度が高くなっている。
熱転写方式ではフルカラー印刷を行うためには、複数色のインクを繰り返し重ねて転写する必要があり、以下これを実現させるための一般的な構成を説明する。
従来の熱転写式プリンタの一般的な構成の第1例を図32に示す。(a)の通り、記録紙カセット107に積載された記録紙は給紙ローラ108と分離手段109により最上層の記録紙だけが分離・給送されサーマルヘッド104とプラテンローラ105の間へ搬送される。印刷動作は、まず、記録紙Pの全長より少し長い外周をもつプラテンローラ105の周囲に記録紙Pを巻き付け、インクシート106と記録紙Pをサーマルヘッド104とプラテンローラ105とで圧接する。次に、サーマルヘッド104の発熱によりインクシート106上のインクを記録紙P上に熱転写させながら、プラテンローラ105を回転させて行う。(b)の通り、1色目の印画を終えたあとに次色の印画を行うために、サーマルヘッド104の圧接を開放し、プラテンローラ105の回転を進めて印画開始位置まで記録紙Pを進め、1色目と同様の動作で2色目以降を印画する。このようにしてイエロー・マゼンタ・シアンの3色を重ねてフルカラー印刷を行う。
従来の熱転写式プリンタの一般的な構成の第2例を図33に示す。(a)の通り、用紙カセット201に積載された記録紙Pは給紙ローラ202と分離手段203により最上層の記録紙だけが分離・給送されサーマルヘッド204とプラテンローラ205へ搬送される。印刷動作は、まず、インクシート206と記録紙Pをサーマルヘッド204とプラテンローラ205とで圧接する。次に、サーマルヘッド204の発熱によりインクシート206上のインクを記録紙P上に熱転写させながら、印画方向下流に設けた1対のキャプスタンローラ207とピンチローラ208で記録紙Pを搬送させて行う。(b)の通り、1色目の印画を終えたあとに次色の印画を行う。そのため、サーマルヘッド204の圧接を開放し、キャプスタンローラ207とピンチローラ208を印刷動作時とは逆方向に回転させて印刷開始位置まで記録紙Pを戻し、1色目と同様の動作で2色目以降を印画する。このようにしてイエロー・マゼンタ・シアンの3色を重ねてフルカラー印刷を行う。
図32の例でも図33の例でも用紙カセット内の記録紙とインクシートは消耗品であり、使用に応じて、交換・補給する必要がある。ここでインクシートについてはインクシートの両端を2つのボビンに巻き付け2つのボビンとインクシートを枠体に収めた形態のカートリッジでユーザーに供給することが一般的であり、図32の110と図33の210はそのカートリッジの枠体を示している。カートリッジには図示110aと201aのような空隙部が存在し、カートリッジを挿入する際には本体に設けられたサーマルヘッド104・204がカートリッジの空隙部に収まるようにカートリッジが案内され所定の位置に装着される。
以上2つの方式が従来一般的である。第1例は記録紙Pの全長より少し長い外周をもつプラテンローラが必要となるため装置が大型化し、図32には図示されていないがプラテンローラの周囲に記録紙を巻き付けて保持する機構が必要であるため装置が複雑化するというデメリットがある。しかし、第1色の印刷が終了したらそのすぐ後方に第2色の印刷開始部があるので第2例のように記録紙を戻す時間が不要となり印刷時間の高速化が図れるというメリットがある。逆に第2例は印刷時間が延びるというデメリットがあるが、装置の小型化・簡素化が図りやすいというメリットがある。
前述した熱転写式のプリンタ装置では良好なプリントを得るためにインクが転写しやすい表面を持った熱転写プリント専用紙を記録紙として使用する必要がある。そのため、記録紙50枚分のインクシートが収納されたインクカートリッジと50枚の記録紙をセットで販売されていた。ユーザーはセット販売された記録紙とインクカートリッジの梱包をあけて、インクカートリッジは本体へ、記録紙は用紙カセットへそれぞれ装填してプリンタ装置を使用しなければならないという、わずらわしさがあった。
熱転写プリンタの場合、図34に示す通り大きさの記録紙に応じてそれぞれ異なるインクシートを用意した方がインクシートの無駄が少ない。よって、例えばA6サイズの記録紙とA6サイズ用のインクシートが収納されたインクカートリッジをセットで、A7サイズの記録紙とA7サイズ用のインクシートが収納されたインクカートリッジをセットで販売し、ユーザーはそれぞれの用途に合わせて購入する。そして、A6サイズのプリントをした後にA7サイズのプリント行うときには、A6サイズの記録紙とA6サイズ用のインクカートリッジを取り出して変わりにA7サイズの記録紙とA7サイズ用のインクカートリッジを装填しなければならない。この時取り出したA6サイズの記録紙とA6サイズ用のインクカートリッジは後に使用する時のため保管する必要がある。インクカートリッジと記録紙が別々になっている上に記録紙やインクカートリッジはほこりや直射日光を嫌うので保管袋等に入れて保管しなければならないという、わずらわしさがあった。
これらのわずらわしさを解決する発明として特許文献1、特許文献2のようにインクシートと記録紙が一体型で収納されたカートリッジも発明されている。
特開平2−81660号公報
特開2000−108442号公報
(第1の実施例)
図1、図2により本発明における記録紙インクシート一体型カセットの構成を説明する。
図1において1は本発明による記録紙インクシート一体型カセットの全体図であり、10は主に記録紙を積載収納する上ケースである。11は上ケース10との間でインクリシートの収納部を形成する下ケースであり、20は印刷に使用する前のインクシートを収納する供給側収納部で、21は印刷に使用した後のインクシートを収納する巻き取り側収納部である。
30は記録紙をカセットから一枚ずつ取り出すための排出口であり、供給側収納部20に隣接しかつ記録紙収納部の端部に記録紙の長手方向全域にかけて略四角形の開口を形成している。排出口30の角には記録紙を一枚ずつ分離するための分離爪31、32を供えている。上ケース10と下ケース11はプラスチックを射出成型したものであり、それによりコストダウンを図っている。
図2はインクシートの巻き取り軸の軸方向に直行する方向の断面図である。
図2において12は帯状のインクシートであり、第1ボビン12aに巻きつけられて、先端は巻き取り用の第2ボビン12bに接着などにより取り付けられている。インクシート12は上ケース10と下ケース11との間に形成されたインクシート収納部に収納されており、第1ボビン12aは供給側収納部20に、第2ボビン12bは巻き取り側収納部21にそれぞれ収納されている。第1ボビンは、上ケース及び下ケースにより形成されるカセット筐体の供給側収納部を形成する2つの端面により支持され、第2ボビンは、カセット筐体の巻き取り側収納部を形成する2つの端面により支持される。
13は記録紙であり、上ケース10の記録紙収納部22にインクシート12が印刷可能な枚数と同一枚数が重ねられ収納される。例えば、インクシート12が50画面分巻き取られていれば、記録紙13も50枚収納されている。すなわち、本発明における記録紙インクシートシート一体型カセットは例えば50画面分の印刷が終われば、記録紙とインクシートシートが同時に使用済みとなり、どちらか一方のみが先に使い終わることはなない。そのためいずれか一方のみを補充、または交換することはなく、使い終わればユーザーはカセットごと交換すればよく、交換の手間が省けるものである。
200は記録紙収納部22へ記録紙13と保護シートを組み込む際の上面開口であり、カセット1をプリンタに装填し、印刷動作を行う際にはこの上面開口200から記録紙13を給紙ローラ48の方向に加圧を行うための開口である。
14は記録紙13を汚れ、傷などから防ぐための保護シートであり、外形は記録紙13とほぼ同一の外形寸法をしており、記録紙13の最上部に重ねた状態で記録紙収納部22収納されている。図2に示すようにインクシート12と記録紙13の間に空間33があり、これは本カセットがプリンタに装填されたときに後述するヘッドユニットが位置する空間である。また、上ケース10の供給側収納部20と巻き取り側収納部21の中間には開口34が設けられている。開口34は記録紙収納部22の長手方向のほぼ全域に渡っており、また図1に示すよう上ケース10の側面の側面開口34aと繋がっている。
図1において35はインクシート供給側収納部20を形成する筐体のカセット挿入方向側の端面、すなわち、カセット筐体の第1のボビンを支持するための支持面であって、カセット挿入方向側の面に設けられた第1嵌合穴である。また、36は同じく巻き取り側収納部21を形成する筐体のカセット挿入方向側の端面、すなわち、カセット筐体の第2のボビンを支持するための支持面であって、カセット挿入方向側の面に設けられた第2嵌合穴である。これら嵌合穴35、36はカセット1がプリンタに装填されたときにプリンタ本体側の嵌合軸と嵌合させることで、インクシートの巻き取り軸近傍の上カバー及び下カバーの変形を防止して、インクシートの走行、巻き取りの安定化を図るためのものである。
37はカセットの種類により形状が異なるカセット判別突起である。カセット判別突起37は記録紙のサイズ、あるいはインクシートのタイプが異なるとそれに応じて突起形状を異ならせ、プリンタ本体がこれを判別してそれらの記録紙、あるいはインクシートのタイプに応じた記録紙の搬送、印刷の制御を行うためのものである。
図15と図16にてカセットの種類について説明する。図15、図16は記録紙のサイズが異なる3種類のカセットを示したものであり、それぞれ図(a)、図(b)、図(c)は順にポストサイズ、Lサイズ、カードサイズのカセットを示している。図16は排出口30側から見て、供給側収納部での断面図である。図15、16に示すように、インクシート巻き取り軸と直行する方向では、上ケース10の記録紙収納部22および、下ケース11が形成するインクシート収納部は、同じ寸法となっている。また、記録紙のサイズに応じて、記録紙収納部22の寸法はインクシート巻き取り軸方向で異なる。しかし、インクシート収納部の巻き取り軸方向の寸法は、記録紙のサイズにかかわらず同じ寸法としている。さらに、図16に示すようにインクシート12の幅は各記録紙サイズで異なっているが、インクシート巻き取る軸の長さもインクシート収納部と同様に記録紙のサイズにかかわらず同じに設定してある。また、前述した嵌合穴35、36はインクシート収納部の端面に設置されており、またカセット判別突起もインクシート収納部端面に設置されている。
次に図3、図4、図5と図6により、本記録紙インクシート一体型カセット1の組み立て方法について順に説明する。まず図3示すよう上ケース10の記録紙収納部22を下にした状態でインクシート12の第1ボビン12aと第2ボビン12bをそれぞれ、上ケース10の半円形状の切り込み10bとUの字の切り込み10cに落とし込む。その上から下ケース11を上ケース10に対し組み込み、上ケース10の爪10aは下ケース11の穴11bに係合し、下ケース11の爪11aが上ケース10の穴10dに係合することで、上ケース10と下ケース11が係合することとなる。図では見えないが図後方においても同様な爪と穴が配置されており、下ケース11の主要な部分は上ケース10に対し固定されることになる。さらに本発明の記録紙インクシート一体カセットでは上ケース10に設けられた溶着軸80と下ケース11に設けられた溶着穴81を熱溶着により結合している。ここでは上カバーと下カバーを熱溶着により結合させるが、超音波により溶着してもよい。また、確実に固定して結合されればよいのでビス止めにより上カバー10と下カバー11を結合させてもよい。
詳細を図4(a)(b)にて説明する。まず図4(a)は図3に示したインクシート12と、下ケース11が上ケース10に組みつけられた状態を示しており、その状態で上ケース10の溶着軸80は下ケース11の溶着穴81に貫通している。この状態で溶着軸80の先端を溶着工具の端子82を溶着軸80先端へ所定の荷重をかけながら押し付け変形させる。すると、図4(b)に示す80aのよう溶着軸80の外径は溶着穴81より大きくなり、かつ下ケース11に対し図上方から密着することで、確実に固定して結合されることになる。図4溶着工具の端子82の先端形状は球Rの凹形状になっているため、溶着軸80の変形後の形状80aは球R形状となっているが、端子82先端が平面であれば溶着軸80は平面状に変形させられ、これにおいても同様の効果を得ることは出きる。また、端子82はヒーターを備えたもの、あるいは超音波の振動により溶着軸80を振動させ熱を発生させるものでもどちらでもよく、このとき溶着軸80の先端は円錐状になっているため、いずれの場合でも円錐状の先端から変形を起こしやすくなっている。
図5により記録紙13と保護シート14の組み込みについて説明する。インクシート12、下ケース11を上ケース10に対し組み付け完了後、記録紙13を50枚と保護シート14を1枚重ねた状態で上ケース10に対し上面開口200からコーナー部2箇所の押さえ部10eの裏側へ斜め方向から挿入する。この際、記録紙13は排出口30のコーナー部に設けられた2つの分離爪31、32により排出口30から脱落することはない。記録紙、および保護シート14が上ケース10に装填された後、押さえ部材15、16が上ケース10の残り2箇所のコーナー部に取り付けられることで記録紙13の4箇所のコーナー部を保持し記録紙収納部23内から脱落しないよう収納される。押さえ部材15、16も樹脂で形成されており、それぞれ樹脂の弾性変形を利用した爪により上ケース10へ取り付けられる。以上説明したように本発明による記録紙インクシート一体型カセットは主に上ケース10と下ケース11の2つの部品で記録紙とインクシートを収納し、多くの部品を必要とせず小型化も図れるものである。
次に図7により本発明の記録紙インクシート一体型カセットを使用するプリンタについて説明する。図7において40はプリンタ本体であり、側面のドア41が開いた状態を示しており、カセット挿入口42が露出している。カセット挿入口42はカセット1の断面形状とほぼ同じ形状でかつ一回り大きい開口となっている。カセット挿入口42内にはヘッドユニット45の端部が見えている。カセット挿入口42へカセット1を挿入した状態を示したのが図8である。図8に示すようにカセット1がプリンタ本体へ挿入されるとカセット1の開口17からヘッドユニット45先端がわずかに露出し、ヘッドユニット45先端に有る軸46はカセット1より所定量突出した状態となる。この状態でドア41を閉じるとドア41の内面に設けられた係合穴41aが軸46に嵌合しヘッドユニット45の先端位置が規制されることになり、プリンタを使用可能な状態になる。
図9は本発明による記録紙インクリボン一体型カセットを使用するプリンタのサーマルヘッドユニット45である。
47はサーマルヘッドであり、本体内の印刷制御基板と電気的に接続されている。48は給紙ローラであり、シャフト48aの両端はヘッドユニット45上で回転可能に軸支されている。シャフト48aの一端にはギヤ49がシャフト48aと一体的に回転するよう取り付けられ、図示せぬ連結ギヤにより給紙ローラ48を回転駆動する。
50はカセット内の記録紙を図において右方向へ付勢するための付勢部材である。付勢部材50は、先端部50aがシャフト48aに嵌合し、もう一端はヘッドフレーム55に固定されたレール51にカセットの装填方向にスライド可能に保持され、スプリング52によりカセットカセット挿入の逆方向へ付勢されている。
53はカセット内の記録紙の有無を検知するためのフォトレフレクタであり、ホルダ54によりヘッドユニット45へ取り付けられている。図10にフォトレフレクタ53の取り付け状態の断面図を示す。図10に示すよう、フォトレフレクタ53の投光、受光部は上向きにヘッドユニット45に取り付けられ、その上からホルダ54を被せることで固定されている。
56と57はカセット1がプリンタ本体内に装填されたときにカセット1の変形を防止するための第1嵌合軸と第2嵌合軸である。これらはカセット1が装填されるとカセット1に設けられた第1決め穴35と第2嵌合穴36に嵌合し、カセット1のプリンタ本体内で位置規制をするものである。
58はカセットの種類を判別するためのカセット判別スイッチであり、カセット1がプリンタ本体に装填されるとカセット1に設けられた突起形状によりカセットの種類を判別するものである。
59はカセット1がプリンタ本体に装填されたときにカセット1の第2ボビン12bに係合し、印刷時にインクシートシート12を巻き上げ駆動する巻き上げ軸である。巻き上げ軸59はギヤ59a、59bに連結し、印刷動作時に所定速度で回転するよう制御されている。60はインクシートシート12が巻き上げられる際に回転する従動軸で、たとえば回転動作を検知し確実にインクシート12が供給されているかのチェックをするためのものである。
以上説明したヘッドユニット45はプリンタ40の本体内に設置されており、そのヘッドユニット45に対してカセット1が装填されていく状態を図11、図12、図13で説明する。カセット1は、図11の矢印の方向でプリンタ40に挿入し、装填されていく。そのときヘッドユニット45は図2で示したインクシート供給側収納部とインクシート巻き取り側収納部との間で露出しているインクシート12と記録紙13との間の空間33に入っていくことになる。
図12はその様子をカセット1の裏側から見た図である。図12に示すよう、ヘッドユニット45はインクシート12より上側で記録紙13より下側の空間33に入っている。図13ではカセット1が完全に装填された状態を示しており、図14はその詳細を示した断面図である。図13、図14において第1嵌合軸56は第1嵌合穴35に、第2嵌合軸57は第2嵌合穴36に嵌合する。また巻き上げ軸59は第2ボビン12b、従動軸60は第1ボビン12aに嵌合する。さらに、カセット判別スイッチ58はカセット判別突起37により押圧されている。
嵌合穴35、36、および、カセット判別突起37は、記録紙のサイズにかかわらず同じ寸法であるインクシート収納部の端面に設けられている。そのため、プリンタ本体側の嵌合軸56、57およびカセット判別スイッチを用紙サイズにあわせて複数設ける必要が無い。また、第1ボビン12a、第2ボビン12bの全長も同じであるため巻き取り軸59、従動軸60は全長、位置などを可変にする必要がない。このように、複数の記録紙サイズを有するカセット、またはインクシート12のサイズを複数有するカセットであってもインクシート収納部の外形寸法を同じにし、嵌合穴35、36、カセット判別突起37をインクシート収納部に配置する。さらに第1ボビン12a、第2ボビン12bの全長も共通にすることで、プリンタ本体内部の構成を簡略化することができる。
図17はカセット1がプリンタ40に完全に装填された状態を示しており、わかり易いよう記録紙13と保護シートを不図示にしてある。図17に示すよう上ケース10の開口34内に給紙ローラ48、フォトレフレクタ53が位置している。また付勢部材50は側面開口34aの内側に位置している。
図18は付勢部材50とカセット1、記録紙13の位置の位置関係を示した断面図である。図18において付勢部材50は前述したようにスプリング52により図右方向に付勢されており、当接面50aは側面開口34aから上ケース10の内部に突出し記録紙13の端面に当接している。そのとき、上ケース10の外側側面とは隙間が設けてあるため確実に記録紙13を図右方向、すなわち、カセット挿入方向と逆の方向へ片寄せしている。付勢部材50の設けられた斜面50bは、記録紙13が加圧板75により押圧されて図中の矢印の方向に移動していくときに、記録紙が引っかかりなく当接面50aへ案内するものである。このようにして当接面50a側の記録紙13が一枚ずつ給紙されていくことになる。
次に付勢部材50の作用について説明する。
図20(a)(b)は付勢部材50を採用しない場合のカセットの例を分離爪と記録紙の関係をわかり易くするために簡略化した図である。図20(a)において100は上ケースであり、101、102はそれぞれ分離爪である。110は記録紙であり、排出方向の先端コーナー部が分離爪に掛かっている。一般に記録紙は裁断加工する際の誤差が生じるため縦横それぞれの寸法には公差を持っている。上ケース100の記録紙収納部の内側寸法L1は記録紙の長手方向寸法の公差上限(Lmax)のものに対しても隙間を持った寸法にする必要がある。そのため、長手方向寸法Lが公差下限のものの場合は隙間が大きくなってしまう。図20(b)は長手方向寸法Lが寸法公差下限(Lmin)の記録紙でかつその記録紙がカセット100内で向かって右側へ片寄っている状態を示している。この場合、記録紙103の右側の分離爪101への掛かり量X1と、左側の分離爪102への係り量X2は大きく異なってしまう。たとえば図20(b)に示すように長手方向寸法Lの公差が±0.5mmのとき、寸法公差上限(Lmax)の記録紙と寸法公差上限(Lmin)の記録紙の寸法差は1.0mmである。さらにカセット100の内側寸法の余裕を片側0.1mmずつとした場合、寸法公差下限(Lmin)の記録紙では隙間は1.2mm生じることになる。よって分離爪101、102への掛かり量X1,X2の差が1.2mm生じることになる。
分離爪への掛かり量がこの差を無視できる程度まで大きければ問題ないが、写真を印刷するような大きさ、紙質の記録紙を用いる場合、分離駆動の負荷、記録紙へのダメージを考えるとそれほど大きな分離爪を用いることはできない。よって、上記1.2mmの差を無視できる大きさの分離爪を用いることは困難であり、記録紙が爪分動作を行う際に分離タイミングの差が大きくなり、最悪の場合分離出来ないなどの不良を引き起こすことになる。
以下図19(a)(b)(c)にて本発明の付勢部材50に適応したカセット1について説明する。これについてもわかり易くするために簡略化した図である。 図19(a)(b)(c)はカセット1の排出口30側から見た図であり、記録紙13と分離爪31、32の関係を示している。図19 において(a)は記録紙の長手方向寸法Lが公差の上限(Lmax)の場合を示している。このとき上ケース10の記録紙収納部の長手方向寸法L1は記録紙13長手方向寸法Lが公差の上限の場合にもゆとりを持って収納できるよう設定してある。本実施例では記録紙13の長手方向寸法Lが公差上限のときに図に示すよう0.2mmの隙間ができる寸法に設定してある。
(b)は長手方向寸法Lが称呼寸法、(c)は公差の下限(Lmin)のときを示している。図19はいずれも向かって左がカセット1の装填方向であり、向かって右がカセット1の取り出す方向である。よって片寄せのための付勢部材50は向かって左から右方向へ記録紙13を片寄せしており、上ケース10の向かって右側の内壁の当接している。
分離爪31、32の大きさは(b)に示すよう長手方向寸法Lが称呼寸法であるときに、分離爪31、32と記録紙13の係り量X1、X2が等しくなるよう分離爪32に対し、分離爪31のほうが大きく設定されている。このように分離爪31、32の大きさを設定すると、記録紙13は片寄せ用付勢部材50により分離爪32方向へ片寄せされているため、長手方向寸法Lが公差内でばらついたときの係り量X1、X2の差は長手方向寸法Lの公差以下となる。
たとえば、図19(a)に示すよう記録紙の公差上限(Lmax)のときの分離爪32への掛かり量X1に対し、分離爪31への掛かり量X2maxは記録紙13の長手方向寸法Lの公差分だけ大きくなる。たとえば、長手方向寸法公差が±0.5mmであるならば、掛かり量X2maxは係り量X1より0.5mmだけ大きくなる。
一方、公差下限(Lmin)のときは分離爪32への掛かり量X1に対し、分離爪31への掛かり量X2minは記録紙13の長手方向寸法Lの公差分だけ小さくなり、掛かり量X2minは係り量X1より0.5mmだけ小さくなる。
よって、片寄せ用付勢部材50を採用しない場合の分離爪への掛かり量の差が左右で1.2m生じたのに対し、本発明による付勢部材50に適応したカセット1の場合では記録紙の寸法公差分0.5mmに抑えることが出来る。左右の分離爪の記録紙の掛かり量の差を最小限に抑えることが出来、記録紙が爪分離を行う際に分離タイミングの差を低減し、分離出来ないなどの不良の発生を抑えることが出来る。
次に図21〜27を用いてプリンタ40の動作を説明する。図21はカセット1プリンタ40に装填された印刷前の待機位置を示している。75は加圧板であり、給紙を行う際に記録紙13を給紙ローラ48側へ押圧するものである。図21の状態は待機位置であるため、加圧板75は記録紙13から離間した位置にある。この状態から加圧板75が図下方向へ移動し、上面開口200から記録紙13へ所定圧力を持って押圧される。給紙ローラ48が反時計方向へ回転すると給紙ローラ48に接している記録紙13が一枚のみ図左方向へ移動していき、爪分離が行われ、排出口30より記録紙13が排出される。
図22は排出された記録紙13がカセット1から所定量送り出された状態を示している。
図に示すように記録紙13はインクシート12の第1収納部20に沿うようたわみ、排出口30より出ている。記録紙13は、熱転写用の写真用紙であり、極端に屈曲させると印画面に傷、皺などが発生してしまうが、本発明のプリンタでは図に示すようにインクシート供給側収納部の隣の、排出口30の下側の空間Dで、緩やかにたわむことが出来る。また、給紙ローラ48は、記録紙13の略中央付近を駆動できるため、記録紙13にたわみが出来る長さが十分確保できる。よって、分離の信頼性が向上し、また記録紙13が極端な屈曲を起こすことがなく記録紙13へのダメージを最小限に抑えることが出来る。これはインクシートの巻き取り側収納部21を記録紙収納部22端に沿わせて配置したことから、前記空間Dを確保することが可能になっている。
更に、給紙ローラ48をヘッドユニット45に設置しているため装置の小型化が達成され、対向する側に記録紙13を装填及び加圧するための上面開口200を設けているため、効率よく加圧が可能となっている。
記録紙13が所定量送りだされた後、図23に示すよう記録紙13はローラ板61により第1ローラ62へ押し付けられ、第1ローラ62の回転により更にカセット1より引き抜かれていく。図24は記録紙13がカセット1より完全に引き抜かれ、所定量送られた状態を示している。この状態から記録紙13を記録紙13の面に垂直方向の軸を中心に回転させる。図25は回転途中の状態を示している。記録紙13の回転駆動は2つ有る第1ローラを双方逆回転刺さることで行う。第1ローラ62aを記録紙13をプリンタ40内へ引き込む方向、第1ローラ62bをプリンタ40外へ送り出す方向へ回転させる。図26は回転が完了した状態を示している。この状態から第1ローラ62a、62bにより記録紙13をプリンタ40内へ送り込み印刷動作へ移行する。
以上の記録紙13の搬送に用いたローラ板61、ローラ61a、62b、ローラ板61もインクシート巻き取り側収納部21を記録紙収納部22の図向かって右側に沿わせて配置した空間Dに好適に配置することでプリンタ40の小型化が可能になっている。また、排出口30は印刷時搬送経路の上流側であるインクシート供給側収納部21の外側に設けられているため、記録紙13はスムーズに印刷搬送の移行が出来、無駄な搬送が行われることはない。
図27は印刷状態を示している。印刷動作はインクシート12と記録紙13をサーマルヘッド45とプラテンローラ64とで圧接し、サーマルヘッド45の発熱によりインクシート12上のインクを記録紙13上に熱転写させる。そのとき、印画方向下流に設けた1対のキャプスタンローラ65とピンチローラ66で記録紙13を搬送させる。一色目の印刷が終わるとサーマルヘッド45をインクシート12から退避させる方向に移動させて圧接を開放し、キャプスタンローラ65とピンチローラ66を印刷動作時とは逆方向に回転させて印刷開始位置まで記録紙13を戻す。1色目と同様の動作で2色目以降を印画する。このようにしてイエロー・マゼンタ・シアンの3色を重ねてフルカラー印刷を行う。
印刷が完了すると記録紙13はプリンタ40の搬送経路下流側の外部へ排出される。ユーザーが印刷操作を行えば以上の動作を繰り返し行い、カセット1内に収納された記録紙13とインクシート12がなくなるまで印刷を行うことが可能である。記録紙13とインクシート12は同一印画枚数を収納しているため、どちらか一方が先になくなることは基本的にはない。本発明のプリンタでは記録紙13がなくなったことを検知し印刷動作を行わないようにしてある。
次に記録紙13の有無の検知方法について図28、図29で説明する。図28(b)は記録13がまだ十分ある状態を示している。図28(b)に示すようフォトレフレクタ53は記録紙13に略対向した向きに設置されている。印刷操作が行われると、加圧板75が記録紙13へ押圧されることで記録紙13はフォトレフレクタ53側へ押し付けられることになる。フォトレフレクタ53から投光された赤外光が記録紙13の裏面で反射し、その反射光をフォトフレクタ53が検知する。プリンタは、反射光を検知すると記録紙があると判断する。記録紙13は一般的に白色であるため比較的反射率が高く、記録紙検知が容易である。また、加圧板75が押圧位置にあるときにのみ検知動作を行うため、記録紙とフォトフレクタの距離が狭まるため、信頼性の高い検知を行うことが出来る。
図28(a)は記録紙13が無く、保護シート14のみが残っている状態で印刷操作が行われ、加圧板75が押圧位置にあり記録紙13の有無を検知している状態を示している。図29に示すよう保護シート14のフォトレフレクタ53に対向する部分には赤外光の反射率が低くなるインク、たとえば黒色の印刷14aが施されており、フォトレフレクタ53は反射光を検知できないことで記録紙13が無いことを判定する。この実施例では低反射率インクの印刷としたが、印刷の代わりに、フォトフレクタ53と対向する位置に穴を明けても同様に反射光を検知することが出来ないため同様の目的を達成することが出来る。
次に印刷時のインクシート12の走行について説明する。図30は印刷時のインクシート12の走行経路をプリンタ40の本体側から見た図である。ここで走行経路とは、第1ボビン12aに巻かれたインクシート12が、第2ボビン12bに巻き取られるまでに走行する経路である。この走行経路は、インクシートの走行を案内するために上ケース10及び下ケース11に設けられたガイド部70、72、73、または、剥離板71などによって形成される。第1ボビン12aに巻かれたインクシート12はまず上ケースの第1ガイド70でサーマルヘッド47方向へターンする。サーマルヘッド47で印刷された後、剥離板71により記録紙13から引き剥がされその後、下ケース11の第2ガイド72、第三ガイド73により更にターンさせられ第2ボビン12bに巻き取られていく。印刷中インクシート12には所定のテンションを持っている必要があるため、第1ボビン12aにはフリクションスプリングなどで所定トルクが掛かるようになっている。また、記録紙13から剥離板71により引き剥がす際にもテンションが掛かる。よって上ケース10には矢印dの方向へ、下ケース11には矢印eの方向へ荷重が掛かることになる。それぞれの荷重は第1ボビン12a、第2ボビン12bを中心としたモーメントとして上ケース10、下ケース11に対してねじり荷重が加わることになる。上ケース10、及び下ケース11は前述したようにプラスチックの射出成形品であり、さらに上ケース10には記録紙13を排出する排出口10と給紙ローラ48、フォトレフレクタ53のための開口34を備えている。そのため開口近傍に設けられた供給側収納部20の周辺は特に剛性が低下し、変形を起こしやすい。また、巻き取り側収納部21周辺においても下ケース11の第2ガイド72、第三ガイド73は上記テンションと、巻き取る際のトルクにより大きな荷重が掛かることになる。図30のA部詳細図を図31に示す。図に示すように第2ガイド72、第三ガイド73には矢印g、fの荷重が掛かり第2ガイド72、第三ガイド73周辺は下ケースの74周辺から矢印h方向へ折れ曲がるよう作用する。このように第1ボビンと第2ボビンの間でインクシートに接するガイド部分には大きな荷重がかかり、変形しやすくなってしまう。
上ケース10、下ケース11が変形を起こすとインクシート12の走行経路にゆがみが生じてしまい安定的な走行が出来なくなる。安定的な走行が出来ないと第2ボビン12bで巻き取る際に蛇行を起こす、または皺が発生することになる。皺が印刷経路上まで広がってしまうと印刷画面に皺が現れてしまうというプリンタにとっては重要な問題にまで発展してしまう。そのためにインクリボン12の走行経路の安定化を図ることは非常に重要なことである。
本発明のプリンタは、カセット1を挿入すると、インクシート供給側の第1インクシート収納部とインクシーと巻き取り側の第2インクシート収納部の間で露出しているインクシートと記録紙との間の空間にヘッドユニットが入っていくことになる。このヘッドユニットは、記録紙を排出駆動するための給紙ローラを具備している。サーマルヘッドと給紙ローラをヘッドユニットとしてこの空間に配置し、記録紙一体型インクカセットの記録紙収納部の第1インクシート収納部と第2インクシート収納部の間の面に記録紙排出駆動用の開口を設けている。そのため、サーマルヘッドと給紙ローラを配置する空間を別々に設けなくてよいので、記録装置の小型化が可能になる。
本発明のプリンタは、インクシート収納部外側でなく、インクシート供給側の第1インクシート収納部とインクシーと巻き取り側の第2インクシート収納部の間に給紙ローラを配置する。そのため、インクシート収納部外側に記録紙をたわませて給紙を行うのに十分な空間を得ることができる。
また、本発明のカセット1は前述したように、インクシート収納部20、21を形成する上カバー及び下カバーに、嵌合穴35、36を設けてある。そのため、カセット1がプリンタ40に装填されるとそれぞれ第1嵌合軸56、第2嵌合軸57に嵌合することで前記のねじり荷重に対し変形することなくインクシート12の走行経路の安定化を図ることが出来る。
この嵌合手段は、インクシート収納部20、21を形成する上カバー及び下カバーのどこに設けてもよいが、第1ボビンと第2ボビンの内側で、インクシートの搬送経路近傍に設けることで、さらに走行経路の安定化を図ることが出来る。
また、上記実施例では、インクシート供給側収納部20を形成する下カバーに第1嵌合め穴、インクシート巻き取り側収納部21を形成する上カバーに第2の嵌合穴を設けている。このように、上カバーと下カバーそれぞれに嵌合穴を設けることで、両方のカバーを安定させることができる。また、二つの開口に囲まれ、剛性が非常に低くなっているインクシート供給側収納部20を形成する下カバーに嵌合穴を設けることで、剛性が低く変形を起こしやすくなっている部分を補強することができる。さらに、嵌合穴は、インクシート走行によるテンションやインクシート巻き取りによる荷重が掛かる位置の近傍に設けることで、荷重を低減させることができ、上ケースおよび下ケースに掛かるモーメントを減少させ、変形を防ぐことができるのでより効果的である。
また、上記実施例では、カセット1側に嵌合穴、プリンタ40側に嵌合軸を設けたが、カセット側に嵌合軸。プリンタ側に嵌合穴を設けるようにしてもよい。
また、上ケース10に設けられた軸35と下ケース11に設けられた穴36を熱溶着により結合している。そのため、下ケース11の第2ガイド72、第三ガイド73周辺が上ケース10と一体感を増すことで更に剛性を上げることができ、更に走行経路の安定化を図ることが出来る。このとき、インクシートのテンションや巻き取りによるモーメントにより荷重を受けやすいインクシート搬送経路近傍に軸35と穴36を設けると、荷重により上ケースと下ケースが外れるのを防ぐことができる。上記実施例のように、上ケース10と下ケース11を樹脂材の弾性変形を利用した、爪と穴の係合などにより結合した場合は、荷重により結合が外れてしまうことも考えられるので、特に有効である。