JP2007229748A - 鋼の連続鋳造方法及び打撃振動装置 - Google Patents

鋼の連続鋳造方法及び打撃振動装置 Download PDF

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Abstract

【課題】鋳片幅が大きな鋳片でも、未凝固部を含む鋳片に鋳片表面から効果的に打撃を付与して鋳片の偏析発生を効果的に防止する。
【解決手段】矩形状の横断面を有する鋳片1を鋳造する際に、鋳片厚み中心部の中心固相率fsが少なくとも0.1〜0.9の範囲を、鋳片1の厚み方向に1m当たりの圧下率が1%以内となるようにして連続して軽圧下するとともに、該中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所において、鋳片1の相対する両側の短辺面を、鋳片幅方向に連続して打撃する連続鋳造方法である。打撃振動周波数が4〜12Hz、振動エネルギーが30〜150Jで打撃する。
【効果】鋳片幅が大きな鋳片であっても、中心偏析やV偏析などの偏析の発生を効果的に防止し、内部品質の良好な鋳片を得ることができるようになる。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋳片の短辺面より打撃振動を付与して中心偏析等を改善する鋼の連続鋳造方法、及びこの連続鋳造方法を実施するための打撃振動装置に関するものである。
連続鋳造された鋳片の厚さ中心部とその近傍には、中心偏析やV偏析とよばれるマクロ偏析である内部欠陥が発生しやすい。
このうち、中心偏析は、鋳片の最終凝固部にC、S、P、Mnなどの偏析しやすい溶質成分(以下、偏析成分ともいう。)が濃化して現れる内部欠陥で、V偏析は、鋳片の最終凝固部の近傍に、これらの偏析成分がV字状に濃化して現れる内部欠陥である。
そして、これらのマクロ偏析が発生した鋳片を熱間加工した製品では、靱性の低下や水素誘起割れなどが発生しやすくなる。また、これらの製品を冷間で最終製品に加工する際に、割れが発生しやすくなる。
ところで、鋳片における偏析の生成機構は、以下のように考えられている。
すなわち、凝固の進行につれて、凝固組織である柱状晶の樹間に偏析成分が濃化する。この偏析成分が濃化した溶鋼が、凝固時の鋳片の収縮、またはバルジングと呼ばれる鋳片のふくれなどにより、柱状晶の樹間から流出する。流出した濃化溶鋼は、最終凝固部の凝固完了点に向かって流動し、そのまま凝固して偏析成分の濃化帯が形成される。このようにして形成した偏析成分の濃化帯が偏析である。
このような鋳片の偏析を防止するには、柱状晶の樹間に残った偏析成分の濃化した溶鋼の移動を防止すること、およびこれらの濃化溶鋼が局所的に集積することを防止することなどが効果的である。
そこで、特許文献1では、連続鋳造に際し、ロール間すなわち鋳片の長辺側にエアーハンマーを設置し、ロール間を移動する鋳片に、約2.0mm以下の振幅の衝撃振動を、1分当たり10〜100回与える方法が提案されている。
特開昭51−128631号公報
また、本出願人は、矩形状の横断面を有する鋳片の未凝固部を含む鋳造方向の位置を、複数の圧下用ガイドロール対で圧下する際に、鋳造方向における圧下領域の範囲内において、鋳片表面の少なくとも1カ所を連続して打撃することで、鋳片に振動を付与しつつ鋳造する方法を、特許文献2で提案した。
特開2003−334641号公報
また、特許文献2では、矩形状の横断面を有する鋳片を鋳造する際に、未凝固部を含む位置の鋳片をバルジングさせ、このバルジングさせた鋳片を厚さ方向中心部の凝固が完了するまでの間に、少なくとも1対の圧下ロール対で圧下する連続鋳造方法において、バルジング開始後圧下開始までの鋳造方向領域の範囲内、または鋳造方向における圧下領域の範囲内において、鋳片表面の少なくとも1カ所を連続して打撃することで、鋳片に振動を付与しつつ鋳造する方法も提案している。
しかしながら、特許文献1で提案された方法では、中心偏析の低減効果を十分発揮させるためには、大きな問題がある。
すなわち、鋳片の長辺側で衝撃振動を付与するので、長辺側でのロール間バルジング量に対して変位を与えることになって大きな振幅を付与できない。また、エアーハンマーをロール間に設置する必要があるので、ロール間でのスプレー冷却を阻害し、連続した振動を付与できない。さらに、1分当たり10〜100回の衝撃振動では十分な振動エネルギーを鋳片に伝播することが難しい。
一方、特許文献2の方法は、鋳片の偏析防止に有効であるが、その後、発明者らが研究を続けた結果、特許文献2の方法では、鋳片の形状によっては偏析が十分低減できない場合があることが判明した。
その理由は、鋳片の打撃を短辺面側から行う場合、鋳片幅が大きくなると、打撃振動が鋳片内部に十分に伝播しないからである。打撃振動が鋳片内部に十分伝播しないと、成長途中の柱状晶を破断できないので、柱状晶が成長し、微細な結晶組織とすることできない。さらに、最終凝固部近傍に打撃を付与して振動させる場合でも、生成した等軸晶に振動を伝達することができず、等軸晶がブリッジングする。
ちなみに、特許文献2の段落0039〜0041に記載された試験条件(振動振幅は±3.0mm、振動周波数は120回/分(2Hz)、金型寸法は200mm×100mm×400mm(重量計算値は62.4kg))では、衝突速度を0.5m/秒とすると、打撃振動エネルギーは7.8Jとなる。
本発明が解決しようとする問題点は、従来の連続鋳造では、鋳片幅が大きくなると中心偏析やV偏析などの偏析の発生を効果的に防止することができない場合があるという点である。
本発明の鋼の連続鋳造方法は、
鋳片幅が大きな鋳片でも、未凝固部を含む鋳片に鋳片表面から効果的に打撃を付与して鋳片の偏析発生を効果的に防止するために、
矩形状の横断面を有する鋳片を鋳造する際に、鋳片厚み中心部の中心固相率fsが少なくとも0.1〜0.9の範囲を、鋳片の厚み方向に1m当たりの圧下率が1%以内となるようにして連続して軽圧下するとともに、該中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所において、鋳片の相対する両側の短辺面を、鋳片幅方向に連続して打撃する連続鋳造方法であって、
打撃する際の打撃振動周波数が4〜12Hz、振動エネルギーが30〜150Jである
ことを最も主要な特徴としている。
また、本発明の鋼の連続鋳造方法は、
鋳片の短辺面を打撃する金型と、
周期的な振動を発生させてこの振動を前記金型に伝達する打撃装置と、
前記金型と鋳片の短辺面の間の面間距離を設定する打撃位置決め装置を有し、
前記金型は、複数のガイドロールで構成されるセグメントの少なくとも1つのセグメントにおける鋳片短辺面全体を一体として一括打撃できる構造となされ、
前記打撃位置決め装置は、前記金型の鋳片短辺面への押し付け位置の検出後、この金型の引き戻し位置における金型の先端面と鋳片短辺面との間隔を設定するもの、または、鋳片短辺面と金型の先端面との間隔を設定するガイドを押し付けた状態で打撃位置決めを行うものであることを最も主要な特徴とする本発明の打撃振動装置によって実施できる。
本発明によれば、鋳片幅が大きな鋳片であっても、中心偏析やV偏析などの偏析の発生を効果的に防止し、内部品質の良好な鋳片を得ることができるようになる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、発明成立に至るまでの過程と共に詳細に説明する。
前述したように、鋳片の打撃を短辺面側から行う場合、鋳片幅が大きくなると、打撃による振動が鋳片内部へ十分に伝播しない。打撃による振動が鋳片内部へ十分に伝播しないと、成長途中の柱状晶を破断することができないので、柱状晶が成長して微細な結晶組織とすることできず、十分な偏析低減効果が得られない。さらに、最終凝固部近傍に打撃を付与して振動させる場合でも、生成した等軸晶に振動を伝達することができず、等軸晶がブリッジングし、十分な偏析低減効果が得られない。
そこで、発明者らは、中心偏析やV偏析などの偏析の発生を防止するために、鋳片の打撃を短辺面側から行う場合に、どのようにすれば打撃振動が鋳片内部まで十分に伝播するのかについて、未凝固部を含む鋳片の短辺両端部表面から打撃を付与する実験を重ねた。
その結果、鋳片の中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲において、打撃振動効果が得られる振動周波数および振動エネルギーが存在し、さらに、前記範囲のほぼ全域を打撃することが偏析の低減に極めて有効であることを見出し、本発明の成立に至った。
本発明の鋼の連続鋳造方法は、以上の知見に基づいてなされたもので、
矩形状の横断面を有する鋳片を鋳造する際に、鋳片厚み中心部の中心固相率fsが少なくとも0.1〜0.9の範囲を、鋳片の厚み方向に1m当たりの圧下率が1%以内となるようにして連続して軽圧下するとともに、該中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所において、鋳片の相対する両側の短辺面を、鋳片幅方向に連続して打撃する連続鋳造方法であって、
打撃する際の打撃振動周波数が4〜12Hz、振動エネルギーが30〜150Jとなるようにするのである。
なお、中心固相率fsは、溶鋼の液相線温度TLと固相線温度Tsと厚さ中心の温度Tから、fs=(TL−T)/(TL−Ts)で求めることができる。
鋳片の厚さ中心の温度Tが溶鋼の液相線温度TL以上の場合はfs=0であり、前記厚さ中心の温度Tが溶鋼の固相線温度Tsより小さい場合はfs=1.0である。また、鋳片の厚さ中心の温度Tは、鋳造速度、鋳片の表面冷却、鋳造鋼種の物性等を考慮した鋳片厚さ方向一次元の非定常伝熱解析計算によって求めることができる。
本発明の鋼の連続鋳造方法は、鋳型内で凝固鋳造された鋳片1を、複数のセグメント2で案内しながら鋳造方向の下流側に引き抜く途中の、セグメント2内に、図1に示したような、金型3等を配置した本発明の打撃振動装置を使用することによって実施できる。
図1において、3は鋳片1の短辺面を打撃する金型であり、複数のガイドロール2aで構成される前記セグメント2の、少なくとも1つのセグメント2における鋳片1の短辺面全体を一体として一括打撃できるように、1つのセグメント内で連続して打撃が可能な打撃板3aを有した構造となされている。なお、この金型3は、耐久性、耐熱性などの観点から、鋳物製とすることが望ましい。
ところで、等軸晶などのブリッジングは鋳片1の中心固相率が0.1以上の位置で発生するが、打撃によるブリッジングの防止が完全でないと再びブリッジングが発生する。したがって、鋳片1の中心固相率が0.4以上の範囲を連続打撃することが必要で、セグメント内の全長を打撃することが望ましい。
また、後述するように最適打撃時の鋳片の中心固相率0.1〜0.9は比較的広範囲であり、実操業の固相率範囲も操業中にたえず位置が変化する。したがって、1セグメント内の打撃で十分な場合もあり、2セグメント内の打撃が必要な場合もある。但し、全ての中心固相率の範囲に適用すべく、長い範囲を打撃することは設備費も過大となるので、振動効果が得られる範囲として、たとえば2セグメント内での打撃を実施する。
つまり、鋳片1の広範囲にわたって振動することが重要であり、可能であれば金型3の鋳造方向の長さは、複数のセグメント2の全域を打撃できる長さとすることが望ましい。しかしながら、現実はセグメント2の出し入れ等があるため、装置の取り合いの中で可能な限り長く、すなわち1セグメントの短辺全長を打撃するような長さにして、セグメント単位で交換、整備する際の金型3の取り外しを容易にしつつ、セグメント間の隙間を少なくする。
前記セグメント2は、一般的に上下に分割されて上部セグメント2bの圧下勾配を調節でき、軽圧下をしないようにすることもできる構造となっている。なお、図1に示したセグメント2は、上部セグメント2bを下部セグメント2cと平行となして圧下勾配を設けず、鋳片1を圧下しない通常のガイドロール対としたものである。
4はその先端部に前記金型3を取り付けた打撃装置で、周期的な振動を発生させてこの振動を金型3に伝達するもので、例えばエアーシリンダが採用される。この打撃装置4は、未凝固部を含む鋳片1の両側の短辺面側のたとえば2カ所に配置される。この打撃装置4による鋳片1への打撃は連続して行うことが望ましいが、鋳造方向に1カ所以上の未凝固部を含む鋳片1の短辺面側に配置した打撃装置4により間欠的に打撃してもよい。
5は打撃位置決め装置であり、図2(a)に示す待機位置から金型3を鋳片1の短辺面に押し付けて(図2(b)参照)この押し付け位置を検出した後、金型3の引き戻し位置(図2(c)参照)における金型3の先端面と鋳片1の短辺面との間隔L(打撃振幅:約8mm)を設定するものである。
打撃位置決め装置5は、前記図2に示したものに限らず、図3に示した構成のものでも良い。この図3に示す打撃位置決め装置5では、図3(a)に示す待機位置から押し付けガイド6を鋳片1の短辺面に当接させる(図3(b)参照)ことにより、金型3の先端面と鋳片1の短辺面との間隔L(打撃振幅:約8mm)を設定するものである。そして、図3(c)に示す打撃中は、押し付けガイド6を鋳片1の短辺面に押し付けた状態で行う。なお、押し付けガイド6は、金型3と鋳片1の間隔Lが所定の間隔になるように予め設定しておく。
この金型3と鋳片1の短辺面との間隔Lは、鋳造する鋳片1の幅によっても異なるため、鋳造中の鋳片1の短辺面を基準として設定することが必要である。つまり、前記間隔Lは、打撃装置4のストロークに影響し、ストローク不足の場合は、打撃時の速度が確保できず、打撃振動エネルギーを十分得られないことになる。したがって、打撃開始時は、位置決めと称して金型3と鋳片1の短辺面の相対位置調整を実施する。
前記の本発明の鋼の連続鋳造方法は、矩形状の横断面を有する鋳片1を鋳造する際に、鋳片厚み中心部の中心固相率fsが少なくとも0.1〜0.9の範囲を、鋳片1の厚み方向に1m当たりの圧下率が1%以内となるようにして連続して軽圧下するとともに、該中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所において、鋳片1の相対する両側の短辺面を、前記本発明の打撃振動装置を用いて、打撃振動周波数が4〜12Hz、振動エネルギーが30〜150Jで鋳片幅方向に連続して打撃するのである。
本発明において、鋳片厚み中心部の中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所において、鋳片1の相対する両側の短辺面を連続して打撃するのは、以下の理由による。
等軸晶などのブリッジングは中心固相率が0.1以上の位置で発生するので中心固相率が0.1未満の鋳片1の位置では、等軸晶などの生成が十分でなく、鋳片1を打撃する効果が小さいからである。また、中心固相率が0.9を超えると、未凝固溶鋼が振動および流動しにくくなるので、等軸晶などのブリッジングまたはブリッジングにより形成された空間部を、鋳片1の打撃により破壊することが困難となるからである。
本発明で言う中心固相率が0.1〜0.9の範囲は、たとえば厚さが300mmの高炭素鋼鋳片(C=0.40質量%)を、鋳造速度が0.75m/分、二次冷却の比水量が0.8リットル/kgの条件で連続鋳造(金型長さは約1600mm)した場合は、図4に示すようにほぼ全域を包含する領域となる。
したがって、この場合は、中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所とは、たとえば中心固相率fsが0.4〜0.8の範囲をいい、この範囲において、鋳片1の相対する両側の短辺面を鋳片幅方向に連続して打撃するのである。
また、厚さが250mm、鋳造速度が1.0m/分、二次冷却の比水量が0.8リットル/kgの中炭素鋼鋳片(C=0.06質量%)の場合は、図5に示すようになり、この場合は、中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所とは、たとえば中心固相率fsが0.25〜1.0の範囲をいう。したがって、この範囲において、鋳片1の相対する両側の短辺面を鋳片幅方向に連続して打撃するのである。
本発明において、鋳片厚み中心部の中心固相率fsが少なくとも0.1〜0.9の範囲を、鋳片1の厚み方向に1m当たりの圧下率が1%以内となるようにして連続して軽圧下するのは、発明者らが凝固収縮量と熱収縮量を考慮しセグメント2のロール間隔(絞込み量)を計算したところ、中心偏析の低減効果がある範囲が、鋳片1の厚み方向に1m当たりの圧下率がおおよそ1%以内となったからである。
すなわち、鋳片1の厚み方向に1m当たりの圧下率が1%を大きく超えた圧下を低固相率の範囲で実施すると、凝固界面の歪が増大し、内部割れが発生するので、連続した軽圧下を行う場合、内部割れ発生を抑えつつ、凝固収縮量に見合う以上の圧下を行えば十分で、その圧下率が鋳片1の厚み方向に1m当たり1%以内である。
また、本発明において、鋳片の長辺面でなく短辺面を連続打撃するのは、
長辺面に衝撃振動を付与する場合は、長辺側でのロール間バルジング量に対して、変位を与えるために、上流側での湯面変動を助長し、大きな振幅を付与できないからである。また、ロール間に衝撃付与手段を設置するため、ロール間でのスプレー冷却を阻害し、連続した振動付与ができないからである。
これに対し、短辺面に衝撃振動を付与する場合は、長辺側と比較して振動による変位を受けても、大きな体積変化が生じないので、長辺面に衝撃振動を付与する場合のような問題は生じないからである。
たとえば鋳片幅を2300mm、金型3を200mm幅とした場合、長辺面に衝撃振動を付与する場合は、打撃振動を付与できる部位は鋳造方向に200mmだけである。これに対して、短辺面に衝撃振動を付与する場合は、打撃振動を付与できる部位は鋳造方向に2300mmもあり、短辺面に衝撃振動を付与する場合は1/11.5の体積変化になるからである。
また、本発明において、打撃する際の打撃振動周波数を4〜12Hzとするのは、打撃振動周波数が4Hz未満の場合、振動充填エネルギーを鋳片未凝固部へ十分伝達できないので、中心偏析の低減効果が少ないからである。
振動エネルギー付与の観点からは、周波数は大きい方が有利であるが、振動エネルギー付与手段としてエアーシリンダ系を用いた場合、振動周波数の増加に伴い、振動波形に乱れが生じることと、鋳片1の振動によるクリープ特性からも12Hz程度の振動付与を実施すれば、十分効果が発揮できる。さらに、振動周波数の増加を図る場合、供給エアー圧力を大きくする必要があり、振動による周辺機器への影響が懸念されるので、中心偏析低減可能範囲として上限を12Hzとした。
また、本発明において、振動エネルギーを30J〜150Jとしたのは、150Jを超える振動エネルギーを加えた場合には、連続鋳造機に設置されている周辺機器を損傷する場合があるため、さらに、必要以上の振動エネルギーの付加は、打撃装置4そのものの耐久性にも支障を来たすためである。
一方、振動エネルギーが30J未満の場合は、鋳片1の短辺面側から行った打撃振動が鋳片内部まで十分に伝播しないからである。
振動エネルギーE(J)は、金型3の重量をm(kg)、金型3の鋳片1への衝突速度をV(m/秒)とした場合、E=0.5×m×V2で求めることができることから、振動エネルギーを変化させるには、金型3の重量を変化させるか、金型3の鋳片1への衝突速度を変化すれば良い。しかしながら、大きな振動エネルギーを毎分、数回実施しても、凝固末期の特に高固相率下でのブリッジングを完全には抑制できないので、特に重要なのは、振動周波数である。
なお、前記本発明で規定する打撃振動周波数の範囲は、鋳片幅の異なるブルームとスラブで変化することは無いが、ブルームとスラブとでは、未凝固を含めた容積が異なるので、最適な振動エネルギーは変化する。
本発明の方法では、鋳片1の表面を打撃する位置を含み、その上流側から下流側にわたる中心固相率fsが0.1〜0.9である鋳片1の未凝固部を含む長手方向の範囲を複数の圧下用ガイドロール対を用いて、鋳造方向の長さ1m当たり0.5〜2.5mmの割合で圧下するのが望ましい。
このように、本発明では、鋳片1を圧下する際も最適振動条件を満足する打撃振動を鋳片1に与えることにより、打撃による振動を鋳片1の内部へ十分に伝播させることができ、さらなる偏析低減効果を得ることができる。
以下、本発明を検証するために行った実験結果について説明する。
図1に示すような、打撃装置を鋳造方向に2対設置し、下記表1に示す成分範囲の中炭素鋼と高炭素鋼を厚さ250〜310mm、幅425mm又は2300mmのブルームやスラブに鋳造した。なお、鋳造速度は0.70m/分又は1.0m/分とした。
Figure 2007229748
軽圧下時の中心固相率は0.1〜0.9の範囲とし、鋳造方向の長さ1m当たり1.0mmの割合で軽圧下した。二次冷却は、比水量が0.8リットル/kgの条件で統一した。
未凝固部を含む位置の鋳片の、両側の短辺面の2カ所を、打撃装置を用いて連続して打撃し、鋳片に振動を付与した。鋳片に振動を付与する際に、短辺面を基準面として、短辺面の振動の振幅が±3mmとなるように、鋳片を連続して振動させた。また、振動数は4Hz又は6Hz(1分当たり240回又は360回)とし、エアーシリンダ方式により金型を振動させて打撃振動を付与した。
打撃条件は、金型重量が450kgで、衝突速度は約0.47m/秒又は0.71m/秒(振動エネルギーは50J又は114J)とした。打撃装置の先端部に取り付ける金型の、ブルームとの接触面の形状は、鋳片厚さ方向の幅が約200mm、鋳造方向の長さが約1600mmのものを採用した。
鋳造試験において、鋳片のサンプルを採取し、そのサンプルの横断面の厚さおよび幅方向の中心部相当の位置から、厚さ方向中心部を挟んで厚さ方向に10mm、幅方向に200mm、鋳造方向に15mm程度の試験片を採取した。
これらの試験片を用いて、鋳片の厚さ方向中心部に相当する位置の26カ所から、7mmピッチで直径2mmのドリル刃により切り粉を採取してC含有量を分析し、その分析値C(質量%)を取鍋内溶鋼のC分析値C0(質量%)で除した比C/C0を求め、それらの比の最大値(以下「最大中心偏析率」という)を求めた。
前記の実験条件を下記表2に、実験結果を図6に示す。なお、実験結果の評価は、最大中心偏析率が1.15以下の場合を良好とし、それを超える場合を不良とした。
Figure 2007229748
図6より明らかなように、本発明の範囲の打撃を加えて製造した発明例と、打撃を加えないで製造した比較例を見た場合、本発明例では最大中心偏析率は全て1.15以下で良好であった。一方、比較例の場合は、鋳片幅が大きくなると最大中心偏析率は1.15を超える場合が起こった。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
たとえば前記の説明では、打撃装置4としてエアーシリンダを示したが、金型3を駆動できるものであれば、油圧シリンダであっても、また偏芯カムによる方式、バネを用いたものなど、いずれの方法であっても良い。
本発明は、実施例に示したような高炭素鋼鋳片や中炭素鋼鋳片のみならず低炭素鋼鋳片の連続鋳造にも適用できる。
打撃装置を取り付けたセグメントの例を、鋳片の短辺面方向から示す模式図である。 打撃装置の金型と鋳片との位置関係を説明した図で、(a)は打撃装置の待機位置を示す図、(b)は金型を鋳片の短辺面に押し付けた状態を示した図、(c)は(b)の位置を起点として金型を所定量戻した状態を示した図である。 他の打撃装置の金型と鋳片との位置関係を説明した図で、(a)は打撃装置の待機位置を示す図、(b)は押し付けガイドを鋳片の短辺面に当接させた状態を示した図、(c)は打撃中の状態を示した図である。 高炭素鋼の場合の中心固相率が0.1〜0.9の領域の鋳造方向長さと未凝固厚みを示した図である。 中炭素鋼の場合の中心固相率が0.1〜0.9の領域の鋳造方向長さと未凝固厚みを示した図である。 実験結果を示した図である。
符号の説明
1 鋳片
2 セグメント
3 金型
3a 打撃板
4 打撃装置
5 打撃位置決め装置
6 押し付けガイド

Claims (2)

  1. 矩形状の横断面を有する鋳片を鋳造する際に、鋳片厚み中心部の中心固相率fsが少なくとも0.1〜0.9の範囲を、鋳片の厚み方向に1m当たりの圧下率が1%以内となるようにして連続して軽圧下するとともに、該中心固相率fsが0.1〜0.9の範囲内の少なくとも1箇所において、鋳片の相対する両側の短辺面を、鋳片幅方向に連続して打撃する連続鋳造方法であって、
    打撃する際の打撃振動周波数が4〜12Hz、振動エネルギーが30〜150Jであることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
  2. 請求項1に記載の連続鋳造方法を実施するための装置であって、
    鋳片の短辺面を打撃する金型と、
    周期的な振動を発生させてこの振動を前記金型に伝達する打撃装置と、
    前記金型と鋳片の短辺面の間の面間距離を設定する打撃位置決め装置を有し、
    前記金型は、複数のガイドロールで構成されるセグメントの少なくとも1つのセグメントにおける鋳片短辺面全体を一体として一括打撃できる構造となされ、
    前記打撃位置決め装置は、前記金型の鋳片短辺面への押し付け位置の検出後、この金型の引き戻し位置における金型の先端面と鋳片短辺面との間隔を設定するもの、または、鋳片短辺面と金型の先端面との間隔を設定するガイドを押し付けた状態で打撃位置決めを行うものであることを特徴とする打撃振動装置。
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