JP2007224254A - ポリカーボネート樹脂組成物および該組成物から得られる成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明はポリカーボネート樹脂の溶融粘度を効率的に増大させ、押出成形、射出成形、ブロー成形において安定した成形加工性を発現し、かつ、成形体の透明性および光沢が良好なポリカーボネート樹脂組成物を得ることを課題とする。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、(a)芳香族ビニルモノマー70〜95重量%と、(b)アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート5〜30重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜10重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られることを特徴とする増粘剤(B)0.1〜50重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、並びにそれから得られる成形体。
【選択図】 なし
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、(a)芳香族ビニルモノマー70〜95重量%と、(b)アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート5〜30重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜10重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られることを特徴とする増粘剤(B)0.1〜50重量部を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物、並びにそれから得られる成形体。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ポリカーボネート樹脂の押出成形、射出成形、ブロー成形などにおける成形加工性に優れ、かつ透明性、光沢に優れた成形体を得るためのポリカーボネート樹脂組成物、並びにそれから得られる成形体に関するものである。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、寸法安定性、機械的物性などの物理的性質や、耐水性、耐酸性などの化学的性質に優れており、電気・電子機器、OA機器、自動車部品等のハウジング、車輌、航空機等の内装材等に利用されている。
しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、一般に溶融粘度の温度依存性が大きいため、融点以上の温度領域で実施される射出成形、押出成形、ブロー成形等の溶融加工においては、溶融粘度が低く不利である。再生されたポリカーボネート樹脂については、この溶融粘度が低くなる傾向がさらに顕著になる。このため、ポリカーボネート樹脂の成形加工性の向上を目的として、従来から、これらの樹脂と相溶性を有する共重合体を溶融粘度調整剤(増粘剤)として配合する検討がなされてきた。
また、ポリカーボネート樹脂の耐衝撃強度は、薄肉成形品では優れるものの、厚肉成形した場合に大きく低下し、また低温での衝撃強度も不充分であり、改善が要求されている。
かかる課題を解決する方法として、ポリカーボネート樹脂に対して、エポキシ基含有ポリオレフィンを配合する方法(特許文献1乃至3参照)が開示されている。しかしながら、当該文献では射出成形、押出成形、ブロー成形において安定した成形性、表面性を確保するのに充分なレベルの溶融粘度の増大と、成形体の高い透明性や光沢の維持とを両立することが困難であった。
例えば、グリシジルメタクリレートなどの熱可塑性ポリエステル樹脂との反応性を有する単量体を共重合して得られる共重合体を増粘剤として配合した場合、熱可塑性ポリエステル樹脂の溶融粘度が増大する一方で、得られる成形体の表面が白化し、透明性、光沢が低下するという好ましくない傾向が見られる場合がある。
そのため、押出成形、射出成形、ブロー成形において、安定した成形加工性、および成形品の高い透明性、光沢の維持を両立させる技術が強く望まれていた。
特開昭57−125253号公報
特開昭58−201842号公報
特開平9−255863号公報
本発明はポリカーボネート樹脂の溶融粘度を効率的に増大させ、押出成形、射出成形、ブロー成形において安定した成形加工性を発現し、かつ、成形体の透明性および光沢が良好なポリカーボネート樹脂組成物を得ることを課題とする。
本発明者らは、前記のような実状に基づき鋭意検討を行なった結果、特定の種類および量の単量体混合物を重合させたものをポリカーボネート樹脂用の増粘剤として配合したポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、従来の技術には見られない飛躍的な増粘効果と成形体の高い透明性と光沢が得られ、前記課題が一挙に解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち本発明の第1は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、(a)芳香族ビニルモノマー70〜95重量%と、(b)アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート5〜30重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜10重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られることを特徴とする増粘剤(B)0.1〜50重量部を含有することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記増粘剤(B)を構成するモノマーが、エポキシ基、イソシアナート基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、およびアルコキシ基などの反応性基を含まないモノマーであることを特徴とする、前記のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記増粘剤(B)を構成するアルキルアクリレート(b)が、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルアクリレートであることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記増粘剤(B)を構成するアルキルアクリレート(b)が、アルキル基の炭素数が1〜2のアルキルアクリレートであることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記増粘剤(B)の重量平均分子量が、1万〜400万であることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記増粘剤(B)の重量平均分子量が、1万〜40万であることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、前記増粘剤(B)の屈折率が1.56〜1.59であることを特徴とする、前記いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、増粘剤(B)0.1〜50重量部、ならびにポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)1〜100重量部を含有する、前記いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
好ましい実施態様は、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)が、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする、前記のポリカーボネート樹脂組成物に関する。
本発明の第2は、前記いずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形体に関する。
好ましい実施態様は、射出成形により得られることを特徴とする、前記の成形体に関する。
好ましい実施態様は、押出成形により得られることを特徴とする、前記の成形体に関する。
好ましい実施態様は、ブロー成形により得られることを特徴とする、前記の成形体に関する。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、溶融粘度が増大されており、押出成形、射出成形、ブロー成形において安定した加工を可能とし、得られる成形品の透明性および光沢も改善される。
本発明においては、(a)芳香族ビニルモノマー70〜95重量%と、(b)アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート5〜30重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜10重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られる増粘剤(B)をポリカーボネート樹脂用の増粘剤として用いることに特徴を有する。
前記増粘剤(B)は、例えば、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜50重量部を配合することにより、ポリカーボネート樹脂が本来有する、優れた物理的、化学的特性を損なうことなく、押出成形、射出成形、ブロー成形などにおける溶融加工時の溶融粘度を飛躍的に向上させることができ、期待される効果を顕著に発現させることができる。
前記芳香族ビニルモノマーとしては特に制限はないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどが例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは前記増粘剤(B)中に、70〜95重量部、好ましくは70〜90重量部、さらに好ましくは75〜90重量部含まれることが、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を、安定した押出成形、射出成形、ブロー成形が可能なレベルまで向上させる点から好ましい。
前記アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートとしては、たとえばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが好ましく例示され、さらに好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートなどの炭素数が1〜4であるアルキルアクリレート、とくに好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレートなどの炭素数が1〜2であるアルキルアクリレートが例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは前記増粘剤(B)中に、5〜30重量部、好ましくは10〜30重量部、さらに好ましくは10〜25重量部含まれることが、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を、安定した押出成形、射出成形、ブロー成形が可能なレベルまで向上させる点から好ましい。
本発明における前記共重合可能なビニルモノマーとしては、芳香族ビニルモノマー、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート等と共重合可能であれば特に制限はされないが、例えば、例えば、アルキルメタアクリレートや、シアン化ビニル単量体などが例示されうる。前記アルキルメタアクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルメタクリレートが例示されうる。また前記シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが例示されうる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは前記増粘剤(B)中に、0〜10重量部、好ましくは0〜8重量部、より好ましくは0〜5重量部含まれることが、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を、安定した押出成形、射出成形、ブロー成形が可能なレベルまで向上できる点から好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂用増粘剤(B)の重量平均分子量は、特に限定はないが、ポリカーボネート樹脂の溶融粘度を、安定した押出成形、射出成形、ブロー成形が可能なレベルまで向上できる点から、1万〜400万であることが好ましい。より好ましくは1万〜250万であり、さらに好ましくは1万〜40万であり、とくに好ましくは1万〜30万である。なお、前記重量平均分子量は、例えば、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分を、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERS社製、510型ポンプ410RI486UV)を使用して求めることができる(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
本発明におけるポリカーボネート樹脂用増粘剤の屈折率については、特に限定はないが、ポリカーボネート樹脂の優れた透明性を維持することを目的とする場合は、1.56〜1.59の範囲に調整することが好ましい。なお、本発明における屈折率は20℃においてアッベ屈折計により測定した値であるが、文献値(ポリマーハンドブック第4版、JOHN WILEY&SONS社、等)をもとに計算して求めることもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂用増粘剤(B)の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等の方法で製造することができる。
乳化重合法で製造する場合、単量体混合物を適当な媒体、乳化剤、連鎖移動剤および重合開始剤等の存在下で乳化重合させるとよい。前記乳化重合で使用される媒体は、通常、水である。
前記乳化剤としては、公知のものが使用されうる。例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホコハク酸ジエステル塩などのアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤などがあげられる。
前記重合開始剤としては特に限定はないが、水溶性や油溶性の重合開始剤などが使用されうる。例えば、通常の過硫酸塩などの無機重合開始剤、または有機過酸化物、アゾ化合物などを単独で用いてもよいが、これら開始剤化合物と亜硫酸塩、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどを組み合わせて、レドックス系で用いてもよい。好ましい過硫酸塩としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどがあげられ、また、好ましい有機過酸化物としては、例えばt−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどがあげられる。
前記連鎖移動剤としては特に限定はないが、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−デシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンなどが使用されうる。
前記重合反応時の温度や時間などにも特に限定はなく、使用目的に応じて所望の重量平均分子量になるように適宜調整すればよい。
本発明のポリカーボネート樹脂用増粘剤(B)は1段重合体であってもよく、または2段および3段重合体などの多段重合体であってもよい。2段重合で重合を行なう場合は、2段目以降の単量体の添加にあたって、1段目の重合が完結していることを確認して添加することにより、1段目のモノマーと混合することなく、2段目の重合を行なうことができる。
このようにして得られる重合体ラテックス中の粒子は、通常、平均粒子径が100〜3000Å程度であり、通常の電解質の添加による塩析、凝析や、熱風中に噴霧、乾燥させることにより、ラテックスから取り出される。また、必要に応じて、通常の方法により洗浄、脱水、乾燥などが行なわれうる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂(A)と増粘剤(B)との配合割合は必要に応じて幅広く採用できるが、好ましくはポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して増粘剤(B)0.1〜50重量部であり、好ましくは増粘剤(B)が0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜7重量部である。前記増粘剤(B)の配合量が0.1重量部未満では溶融粘度を充分に増大できず、安定した加工性を実現できない場合があり、一方、50重量部を超える範囲では、溶融粘度が高すぎ、得られる成形体が収縮したり、その光沢や透明性が失われる場合がある。
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂(A)としては、成形用に用いられるものである限りとくに限定はないが、その具体例としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、および脂肪族−芳香族ポリカーボネート樹脂等を挙げることができ、これらの中でも芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく用いられうる。芳香族ポリカーボネート樹脂は、一般に、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させて製造される。
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン等のビスフェノール類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル等の2価フェノールエーテル類、p,p’−ジヒドロキシジフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)サルホン等のジヒドロキシアリールサルホン類、レゾルシノール、ヒドロキノン等のジヒドロキシベンゼン類、1,4−ジヒドロキシ−2,5−ジクロロベンゼン、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン等のハロゲンまたはアルキル基で置換されたジヒドロキシベンゼン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキサイド、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホキサイド等のジヒドロキシジフェニルサルファイド類、およびジヒドロキシジフェニルスルホキサイド類等の化合物が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いられうる。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好適に使用されうる。
前記カーボネート前駆体としては、例えば、ホスゲン等に代表されるカルボニルハライド類、ジフェニルカーボネート等で代表されるカルボニルエステル類、またはハロホロメート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いられうる。また、本発明で用いられるポリカーボネート樹脂は、その一部が分岐されていてもよく、例えば、多官能芳香族化合物を2価フェノールおよびカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネート樹脂でもよく、さらに直線状のポリカーボネート樹脂と分岐状のポリカーボネート樹脂の混合物でもよい。
前記多官能芳香族化合物としては、例えば、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリメリット酸無水物、トリメリット酸、トリメリットイルトリクロライド、4−クロロホルミルフタル酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、メリト酸、メリト酸無水物、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いられうる。
本発明においては、ポリカーボネート樹脂(A)と増粘剤(B)を含有する組成物に対し、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)を含有することができる。
本発明で用いられうるポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)などの熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂(所謂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂)、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
前記ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)の配合量は特に制限はないが、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部の範囲で含有されることが好ましく、さらには30〜100重量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物を製造する方法としてはとくに限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ポリカーボネート樹脂(A)、増粘剤(B)および必要に応じてポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)を、予めヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロールなどを用いて溶融混練することにより樹脂組成物を得る方法などを採用することができる。
更に、例えば、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、増粘剤(B)が50重量部を超えた範囲で混合した高濃度のマスターバッチを予め製造しておき、実際の成形加工時に、0.1〜50重量部の範囲で所望の添加量になるように前記マスターバッチをポリカーボネート樹脂と混合、希釈して使用してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、相溶化剤、難燃剤、耐衝撃強化剤、展着剤、滑剤、可塑剤、着色剤、充填剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤などの他の添加剤を単独または2種以上を組合せて添加してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から成形体を得る方法はとくに限定されるものではなく、一般に用いられている成形法を適用できるが、例えば、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法などを好ましく適用できる。本発明によれば、溶融加工時において、より高い溶融粘度が要求される押出成形法やブロー成形法においても安定した加工性を発現し、かつ透明性、光沢が良好で耐衝撃性に優れる成形品を得ることができる。
以下、実施例および比較例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において「部」は「重量部」を示す。また、スチレンはST、メチルアクリレートはMA、ブチルアクリレートはBA、メチルメタクリレートはMMA、過硫酸カリウムはKPS、2−エチルヘキシルチオグリコレートは2EHTGと略して記載する。
以下の実施例および比較例で用いた評価方法を、以下にまとめて示す。
(重合転化率の測定)
次式により重合転化率を算出した。
重合転化率(%)=(重合体生成量/単量体仕込量)×100
次式により重合転化率を算出した。
重合転化率(%)=(重合体生成量/単量体仕込量)×100
(重量平均分子量の測定)
重合体粒子の重量平均分子量は、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分を、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERS社製、510型ポンプ410RI486UV)を使用して求めた(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
重合体粒子の重量平均分子量は、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、その可溶分を、ポリスチレンを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERS社製、510型ポンプ410RI486UV)を使用して求めた(試料溶液:試料20mg/THF10mL、測定温度:25℃、検出器:示差屈折系、注入量:1mL)。
(屈折率の測定)
重合体試料の屈折率は、20℃における値であり、アタゴ社製、アッベ屈折計2Tをを使用して求めた。
重合体試料の屈折率は、20℃における値であり、アタゴ社製、アッベ屈折計2Tをを使用して求めた。
(ペレット作製条件)
80℃で5時間乾燥したポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、ユーピロンS−2000)100部と、増粘剤試料5部の混合物を、日本製鋼所株式会社製44mm二軸押出機(TEX44)を用いて、以下の条件(成形温度、スクリュー回転数、吐出量、ダイス径)で溶融混練させ、ペレットを作製した。
シリンダ温度:C1=240℃、C2=250℃、C3=250℃、C4=260℃、C5=270℃、C6=270℃、ダイス=280℃
スクリュー回転数:100rpm
吐出量:20kg/hr
ダイス径:3mmφ
80℃で5時間乾燥したポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学株式会社製、ユーピロンS−2000)100部と、増粘剤試料5部の混合物を、日本製鋼所株式会社製44mm二軸押出機(TEX44)を用いて、以下の条件(成形温度、スクリュー回転数、吐出量、ダイス径)で溶融混練させ、ペレットを作製した。
シリンダ温度:C1=240℃、C2=250℃、C3=250℃、C4=260℃、C5=270℃、C6=270℃、ダイス=280℃
スクリュー回転数:100rpm
吐出量:20kg/hr
ダイス径:3mmφ
(射出成形条件)
上記のような方法で作製したペレットを、三菱重工株式会社製の160MSP射出成形機を用いて、以下の条件で射出成形し、物性評価用の成形体を得た。
シリンダ温度:C1=280℃、C2=280℃、C3=280℃、ノズル=280℃、金型=80℃
上記のような方法で作製したペレットを、三菱重工株式会社製の160MSP射出成形機を用いて、以下の条件で射出成形し、物性評価用の成形体を得た。
シリンダ温度:C1=280℃、C2=280℃、C3=280℃、ノズル=280℃、金型=80℃
(溶融粘度の評価)
溶融粘度の指標として、上記ペレットのメルト・フロー・インデックス(以下、MFIと略す)を用いた。MFIは小さいほど、溶融粘度が高いことを示す。上記ペレットのMFIは、メルトインデクサー(東洋精機株式会社製、P−101)を使用して、シリンダ温度:280℃、荷重:2.16kgの条件下で測定した。
溶融粘度の指標として、上記ペレットのメルト・フロー・インデックス(以下、MFIと略す)を用いた。MFIは小さいほど、溶融粘度が高いことを示す。上記ペレットのMFIは、メルトインデクサー(東洋精機株式会社製、P−101)を使用して、シリンダ温度:280℃、荷重:2.16kgの条件下で測定した。
(成形体表面の光沢の評価)
成形体表面の光沢は、前記押出成形により得られる平板状の成形体の表面を、光沢計(ガードナー社製、マイクログロス60°)を使用して測定した。
成形体表面の光沢は、前記押出成形により得られる平板状の成形体の表面を、光沢計(ガードナー社製、マイクログロス60°)を使用して測定した。
(透明性評価)
全光線透過率および曇価は、前記押出成形により得られる7.5cm×5cm×2mmの平板状の成形体を用いて、グロスメーター(日本電色工業社製、Σ80−VG−1D)を用いて、ASTM−D−1003に準じて測定した。全光線透過率の数字が大きいほど、また曇価は数字が小さいほど、透明性がよいことを示す。
全光線透過率および曇価は、前記押出成形により得られる7.5cm×5cm×2mmの平板状の成形体を用いて、グロスメーター(日本電色工業社製、Σ80−VG−1D)を用いて、ASTM−D−1003に準じて測定した。全光線透過率の数字が大きいほど、また曇価は数字が小さいほど、透明性がよいことを示す。
(合成例1)1段重合体である増粘剤の調製
攪拌機および冷却器付きの8リットル反応容器に蒸留水200部、ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ0.5部を入れた。次いで容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら反応容器を70℃に昇温した。次いでKPS0.2部を添加し15分間攪拌した後、ST89部、MA9部、MMA2部、および2EHTG0.1部の混合物を4.5時間にわたって連続添加した。添加終了後更に1時間攪拌し、そののち冷却して、ラテックスを得た。重合転化率は99.9%であった。得られたラテックスを塩化カルシウム水溶液で塩析凝固させ、90℃まで昇温熱処理したのちに、遠心脱水機を用いて濾過し、得られた共重合体の脱水ケーキを水洗し、平行流乾燥機により50℃で15時間乾燥させて白色粉末状の1段増粘剤試料(1)を得た。また増粘剤試料の重量平均分子量は208,000であり、屈折率は1.58であった。
攪拌機および冷却器付きの8リットル反応容器に蒸留水200部、ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ0.5部を入れた。次いで容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら反応容器を70℃に昇温した。次いでKPS0.2部を添加し15分間攪拌した後、ST89部、MA9部、MMA2部、および2EHTG0.1部の混合物を4.5時間にわたって連続添加した。添加終了後更に1時間攪拌し、そののち冷却して、ラテックスを得た。重合転化率は99.9%であった。得られたラテックスを塩化カルシウム水溶液で塩析凝固させ、90℃まで昇温熱処理したのちに、遠心脱水機を用いて濾過し、得られた共重合体の脱水ケーキを水洗し、平行流乾燥機により50℃で15時間乾燥させて白色粉末状の1段増粘剤試料(1)を得た。また増粘剤試料の重量平均分子量は208,000であり、屈折率は1.58であった。
(合成例2)2段重合体である増粘剤の調製
攪拌機および冷却器付きの8リットル反応容器に蒸留水200部、ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ0.5部を入れた。次いで容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら反応容器を70℃に昇温した。次いでKPS0.2部を添加し15分間攪拌した後、ST78部、MA12部、および2EHTG0.1部の混合物を4時間にわたって連続添加した。添加終了1時間後に、BA7部、MMA3部を1時間にわたって連続添加した。添加終了後更に1時間攪拌し、そののち冷却して、ラテックスを得た。重合転化率は99.9%であった。得られたラテックスを塩化カルシウム水溶液で塩析凝固させ、90℃まで昇温熱処理したのちに、遠心脱水機を用いて濾過し、得られた共重合体の脱水ケーキを水洗し、平行流乾燥機により50℃で15時間乾燥させて白色粉末状の2段増粘剤試料(3)を得た。また増粘剤試料の重量平均分子量は210,000であり、屈折率は1.56であった。
攪拌機および冷却器付きの8リットル反応容器に蒸留水200部、ジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ0.5部を入れた。次いで容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら反応容器を70℃に昇温した。次いでKPS0.2部を添加し15分間攪拌した後、ST78部、MA12部、および2EHTG0.1部の混合物を4時間にわたって連続添加した。添加終了1時間後に、BA7部、MMA3部を1時間にわたって連続添加した。添加終了後更に1時間攪拌し、そののち冷却して、ラテックスを得た。重合転化率は99.9%であった。得られたラテックスを塩化カルシウム水溶液で塩析凝固させ、90℃まで昇温熱処理したのちに、遠心脱水機を用いて濾過し、得られた共重合体の脱水ケーキを水洗し、平行流乾燥機により50℃で15時間乾燥させて白色粉末状の2段増粘剤試料(3)を得た。また増粘剤試料の重量平均分子量は210,000であり、屈折率は1.56であった。
(実施例1〜3および比較例1〜3)
重合開始剤であるKPSの添加量を0.2部、連鎖移動剤である2EHTGの添加量を0.1部として得られる増粘剤試料の重量平均分子量を20万程度に調整し、表1に示したように単量体の組成比を変更した以外は、合成例1と同様の方法により1段重合体である試料(1)〜(2)および(4)〜(6)を得た。また、合成例2により2段重合体である試料(3)を得た。
重合開始剤であるKPSの添加量を0.2部、連鎖移動剤である2EHTGの添加量を0.1部として得られる増粘剤試料の重量平均分子量を20万程度に調整し、表1に示したように単量体の組成比を変更した以外は、合成例1と同様の方法により1段重合体である試料(1)〜(2)および(4)〜(6)を得た。また、合成例2により2段重合体である試料(3)を得た。
得られた増粘剤試料3部をポリカーボネート樹脂100部に配合し、MFI、成形体の表面光沢および透明性の評価を行った。結果を表1に示す。
表1の結果により、試料(1)〜(3)のように単量体の組成比が本発明の範囲内である実施例1〜3では、良好なMFI、成形体の表面光沢および透明性を有する組成物が得られることがわかる。一方、単量体の組成比が本発明の範囲から外れた試料(4)〜(6)を用いた比較例1〜3ではMFIまたは成形体の透明性が悪化することがわかる。
(実施例4〜8)
重合開始剤であるKPSの添加量、および連鎖移動剤である2EHTGの添加量を変更し、得られる重量平均分子量を5万〜300万程度の範囲で調整した以外は、実施例1と同様の方法により1段重合体である試料(7)〜(11)を得た。得られた試料を用いて前記MFI、成形体の表面光沢および透明性の評価を行った。結果を表2に示す。
重合開始剤であるKPSの添加量、および連鎖移動剤である2EHTGの添加量を変更し、得られる重量平均分子量を5万〜300万程度の範囲で調整した以外は、実施例1と同様の方法により1段重合体である試料(7)〜(11)を得た。得られた試料を用いて前記MFI、成形体の表面光沢および透明性の評価を行った。結果を表2に示す。
表2の結果より、試料(7)〜(11)のように重量平均分子量を変更した実施例4〜8では、良好なMFIおよび成形体の光沢および透明性を有する組成物が得られることがわかる。また、重量平均分子量の値が小さいほど、MFIが良好になる傾向がみられた。
(実施例9〜12、比較例4、5および参考例1)
実施例1で得られた試料(1)を、表3に示した配合比率でポリカーボネート樹脂とブレンドし、前記MFI、成形体の光沢および透明性の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例1で得られた試料(1)を、表3に示した配合比率でポリカーボネート樹脂とブレンドし、前記MFI、成形体の光沢および透明性の評価を行った。結果を表3に示す。
表3の結果より、増粘剤試料の配合比率が本発明の範囲内である実施例9〜12では、良好なMFI、成形体の表面光沢および透明性を有する組成物が得られることがわかる。一方、増粘剤試料の配合比率が本発明の範囲よりも少ない比較例4では、充分なMFIが得られないことがわかる。また、増粘剤試料の配合比率が本発明の範囲よりも多い比較例5では、成形体の表面光沢および透明性が悪化することがわかる。参考例1として、増粘剤試料を全く添加しないときの評価も行った。
(実施例13〜16および参考例2)
ポリカーボネート樹脂100部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱化学株式会社製、ノバドール5010)100部に対して、増粘剤試料(1)を表4に示した配合比率でブレンドした場合のMFI、成形体の表面性の評価を行った。結果を表4に示す。
ポリカーボネート樹脂100部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱化学株式会社製、ノバドール5010)100部に対して、増粘剤試料(1)を表4に示した配合比率でブレンドした場合のMFI、成形体の表面性の評価を行った。結果を表4に示す。
表4の結果より、増粘剤試料の配合量が本発明の好ましい範囲内である実施例13〜16では、良好なMFIおよび成形体の表面光沢を有する組成物が得られることがわかる。
Claims (13)
- ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、(a)芳香族ビニルモノマー70〜95重量%と、(b)アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート5〜30重量%と、(c)これらと共重合可能な他のビニルモノマー0〜10重量%[(a)、(b)、(c)を合わせて100重量%]を重合して得られることを特徴とする増粘剤(B)0.1〜50重量部を含有することを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記増粘剤(B)を構成するモノマーが、エポキシ基、イソシアナート基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、およびアルコキシ基などの反応性基を含まないモノマーであることを特徴とする、請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記増粘剤(B)を構成するアルキルアクリレート(b)が、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルアクリレートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記増粘剤(B)を構成するアルキルアクリレート(b)が、アルキル基の炭素数が1〜2のアルキルアクリレートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記増粘剤(B)の重量平均分子量が、1万〜400万であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記増粘剤(B)の重量平均分子量が、1万〜40万であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記増粘剤(B)の屈折率が1.56〜1.59であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、増粘剤(B)0.1〜50重量部、ならびにポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)1〜100重量部を含有する、請求項1乃至7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(C)が、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする、請求項8に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形体。
- 射出成形により得られることを特徴とする、請求項10に記載の成形体。
- 押出成形により得られることを特徴とする、請求項10に記載の成形体。
- ブロー成形により得られることを特徴とする、請求項10に記載の成形体。
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