JP2005060593A - 非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤およびそれを含む非晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents

非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤およびそれを含む非晶性ポリエステル樹脂組成物およびそれからなる成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 非晶質ポリエステル樹脂の溶融粘度を効率的に増大させることにより、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、特に異型形状物、ボード、パイプなどの押出成形やカレンダー成形において安定した加工性を発現し、かつ、成形品の表面性および透明性が良好な非晶質ポリエステル樹脂組成物を得る。
【解決手段】 非晶質ポリエステル樹脂100重量部に対して、(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート5重量部以上15重量部未満、(b)他のアルキルメタアクリレート0.1〜90重量部及び(c)芳香族ビニルモノマー5〜95重量部を重合することにより得られる、重量平均分子量4万〜40万の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤0.1〜50重量部を配合することにより、押出成形において安定した加工性を発現し、かつ、表面性および透明性が良好な成形品が得られた。
【選択図】 なし

Description

本発明は、非晶質ポリエステル樹脂の押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、インジェクション成形、特に異型やボード、パイプなどの押出成形やカレンダー成形における成形加工性改良のための非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤、及びそれを含む成形加工性に優れた非晶質ポリエステル樹脂組成物に関するものである。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的特性、ガスバリヤー性、耐熱性などの物理的性質、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性などの化学的性質、経済性および再利用性に優れたポリマーであり、ボトル等の包装材料を中心に種々の分野で広く利用されている。特に、最近、その表面性を活かし、シート、フィルム、異形押出等の押出用途への検討がなされている。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、一般に溶融粘度の温度依存性が大きく、射出成形、押出成形、カレンダー成形等の溶融加工では溶融粘度が低く、不利である。
熱可塑性ポリエステル樹脂の成形加工性の向上を目的として、従来から、これらの樹脂と相溶性を有する共重合体を溶融粘度調整剤として配合する検討がなされてきた。
例えば、熱可塑性樹脂に対して、重量平均分子量が50万以上であり、特定の(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体を配合する方法(特許文献1参照)、熱可塑性ポリエステル樹脂に対して、重量平均分子量が100万〜400万であり、スチレン、グリシジルメタクリレートおよび(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体を配合する方法(特許文献2参照)、ポリエチレンテレフタレートに対して、5重量%以上のグリシジルメタクリレートを含むビニル系共重合体を配合する方法(特許文献3参照)が記載されている。しかしながら、ボード、異型形状物、パイプなどでの押出成形において安定した成形性を確保するのに充分な、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度の飛躍的な増大は認められなかった。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、機械的特性、ガスバリヤー性、耐熱性などの物理的性質、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性などの化学的性質、経済性および再利用性に優れたポリマーであり、ボトル等の包装材料を中心に種々の分野で広く利用されている。特に、最近、その表面性を活かし、シート、フィルム、異形押出等の押出用途への検討がなされている。
熱可塑性ポリエステル樹脂は、一般に溶融粘度の温度依存性が大きく、射出成形、押出成形、カレンダー成形等の溶融加工では溶融粘度が低く、不利である。
熱可塑性ポリエステル樹脂の成形加工性の向上を目的として、従来から、これらの樹脂と相溶性を有する共重合体を溶融粘度調整剤として配合する検討がなされてきた。
例えば、熱可塑性樹脂に対して、重量平均分子量が50万以上であり、特定の(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体を配合する方法(特許文献1参照)、熱可塑性ポリエステル樹脂に対して、重量平均分子量が100万〜400万であり、スチレン、グリシジルメタクリレートおよび(メタ)アクリル酸エステルからなる共重合体を配合する方法(特許文献2参照)、ポリエチレンテレフタレートに対して、5重量%以上のグリシジルメタクリレートを含むビニル系共重合体を配合する方法(特許文献3参照)が記載されている。しかしながら、ボード、異型形状物、パイプなどでの押出成形において安定した成形性を確保するのに充分な、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度の飛躍的な増大は認められなかった。
また、重量平均分子量900以上のポリグリシジルメタクリレートを添加する方法(特許文献4参照)が記載されている。溶融粘度の飛躍的な増大は認められるものの、得られた成形体の収縮や光沢不足などの悪影響が認められた。
そのため、押出成形において、引き取り不良、肉厚の不均一性等の寸法精度不良等に対する成形加工性改善、および成形品の収縮、光沢不足、表面荒れ等に対する表面性改善が強く望まれていた。
非晶質ポリエステル樹脂は、従来の熱可塑性ポリエステル樹脂のうち、結晶度が実質的に認められないか、または、結晶度を有していても透明性に悪影響を与えない程に結晶度が十分低い樹脂をいい、高い透明性を有するものである。このため、非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤としては、高い透明性を維持することができるものが市場から強く望まれていた。
他方、熱可塑性樹脂に対して、重合平均分子量が1〜30万であり、アクリル酸エステル、スチレンおよびグリシジルメタクリレートからなる共重合体を配合する先行技術(特許文献5参照)が存在する。これは、共重合体の必須成分として、粘着防止のためにアクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステルを使用することにより、カレンダー成形などにおいて熱可塑性樹脂の金属面との粘着性を改善するものであり、溶融粘度の増大とは全く別の効果を意図したものである。また、アクリル酸エステルを必須成分とした為、得られた共重合体は残存モノマー量の低減において改善の余地があり、共重合体の製造時における環境への影響や成形加工により得られる成形体に残る臭気の面からの課題を有していた。
特開平1−268761号公報 特開平6−41376号公報 特開昭62−187756号公報 特開昭62−149746号公報 WO00−64983号公報
従って、本発明は、非晶質ポリエステル樹脂の溶融粘度を飛躍的に増大させ、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形等、特に難度が高い異型形状物、ボード、パイプ等の押出成形およびカレンダー成形において、安定した成形を可能とし、かつ、表面性および透明性の優れた成形体を得る為の、残存モノマー量の低減された非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤、およびそれを含む非晶質ポリエステル樹脂組成物を得ることを課題とする。
本発明者らは、前記実状に基づき鋭意検討を行なった結果、特定の種類および量の単量体混合物を、特定範囲の重量平均分子量になるように重合させ得られる共重合体を非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤として用いることにより、従来の技術には見られない飛躍的な増粘効果が得られ、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート5重量部以上15重量部未満、(b)他のアルキルメタアクリレート0.1〜90重量部及び(c)芳香族ビニルモノマー5〜95重量部[(a)、(b)および(c)を合わせて100重量部]を重合することにより得られる、重量平均分子量4万〜40万の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤(請求項1)、
(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート10重量部を超えて15重量部未満、((b)他のアルキルメタアクリレート0.1〜90重量部及び(c)芳香族ビニルモノマー5〜95重量部[(a)、(b)および(c)を合わせて100重量部]を重合することにより得られる、請求項1に記載の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤(請求項2)、
(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート10重量部を超えて15重量部未満、(b)他のアルキルメタアクリレート10〜20重量部及び(c)芳香族ビニルモノマー65〜80重量部[(a)、(b)および(c)を合わせて100重量部]を重合することにより得られる請求項1または2に記載の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤(請求項3)、
非晶質ポリエステル樹脂100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤0.1〜50重量部を配合してなる非晶質ポリエステル樹脂組成物(請求項4)、
非晶質ポリエステル樹脂がジオールとして少なくとも1つの脂肪族ジオールまたは環式脂肪族ジオール、もしくは脂肪族ジオールおよび環式脂肪族ジオールの組合せに由来する単位と、ジカルボン酸として少なくとも1つの芳香族二塩基酸に由来する単位を含む芳香族ポリエステルまたは芳香族コポリエステルである、請求項4に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物(請求項5)、
請求項4または5に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物からなる成形体(請求項6)、
請求項4または5に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物を押出成形して得られる成形体(請求項7)および
請求項4または5に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物をカレンダー成形して得られる成形体(請求項8)
に関する。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤は、非晶質ポリエステル樹脂の溶融粘度を飛躍的に増大でき、かつ、非晶質ポリエステル樹脂のもつ優れた透明性を維持することができる。従って、非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤を含む非晶質ポリエステル樹脂組成物は、押出成形、カレンダー成形、ブロー成形、特に難度の高い異型やボード、パイプなどの押出成形やカレンダー成形において安定した加工を可能とし、得られる成形品の表面性および透明性も改善される。
また、本発明の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤は、残存モノマー量が低減されている。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤は、5重量部以上15重量部未満、好ましくは8重量部以上15重量部未満、さらに好ましくは10重量部超15重量部未満の(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート、0.1〜90重量部、好ましくは5〜62重量部、さらに好ましくは10〜20重量部の(b)他のアルキルメタアクリレート、および5〜90重量部、好ましくは30〜85重量部、さらに好ましくは65〜80重量部の(c)芳香族ビニルモノマー[(a)、(b)および(c)を合わせて100重量部]を含む単量体混合物を重合して得られる。
本発明で使用される(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えばグリシジルアクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有メタクリレートなどが例示される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用される(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートは、5重量部以上15重量部未満の範囲で含まれることが、非晶質ポリエステル樹脂の溶融粘度を、異型形状物、ボード、パイプなどでの安定した押出成形、および安定したカレンダー成形が可能なレベルまでに増大させるための必須条件である。(a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートが5重量部未満の場合には、溶融粘度を充分に増大できず、安定した加工性を実現できない傾向があり、15重量部以上の場合には、透明性が低下する傾向がある。
本発明で使用される(b)他のアルキルメタアクリレートの具体例としては、例えば2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどの、アルキル基の炭素数1〜8のアルキルメタクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用される(b)他のアルキルメタアクリレートは0.1〜90重量部含まれることが、非晶質ポリエステル樹脂の溶融粘度を、異型形状物、ボード、パイプなどでの安定した押出成形、および安定したカレンダー成形が可能なレベルまで向上させるための必須条件である。また、他のアルキルメタクリレートを必須成分とすることにより、アルキルアクリレートを必須成分とする場合に比較して、得られる共重合体の残存モノマー量を低減することが可能である。(b)他のアルキルメタクリレートが0.1重量部未満では、残存モノマー量が多くなる傾向があり、(b)他のアルキルメタクリレートが90重量部を超える場合には、溶融粘度を充分に増大できず、安定した加工性を実現できない傾向がある。
本発明で使用される(C)芳香族ビニルモノマーの具体例としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどが例示される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用される(C)芳香族ビニルモノマーは5〜95重量部含まれることが、非晶質ポリエステル樹脂の透明性を向上させるための必須条件である。(C)芳香族ビニルモノマーが5重量部未満、または95重量部を超える場合には、透明性が低下する傾向がある。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤の重量平均分子量は4万〜40万であり、好ましくは4万〜20万であり、より好ましくは4万〜10万である。重量平均分子量が4万未満では、増粘効果が低下する傾向があり、重量平均分子量が40万を超えると、非晶質ポリエステル樹脂への分散性が悪化することにより充分な増粘効果が得られなくなる傾向がある。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば懸濁重合、乳化重合等の方法で製造することができる。
懸濁重合法で製造する場合、単量体混合物を適当な媒体、分散安定剤、連鎖移動剤および重合開始剤等の存在下で懸濁重合を行うのが好ましい。
懸濁重合で使用される前記媒体は、通常、水である。
前記分散安定剤としては、公知の無機系分散剤や有機系分散剤が使用できる。無機系分散安定剤としては、炭酸マグネシウム、第三リン酸カルシウム等が、また、有機系分散安定剤としては、デンプン、ゼラチン、アクリルアミド、部分ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸およびその塩、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、スルホン化ポリスチレン等の天然物および合成高分子分散剤、さらには、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等の低分子分散剤あるいは乳化剤などがあげられる。
前記重合開始剤としてはベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどの過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物があげられる。
前記連鎖移動剤としては特に限定はないが、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−デシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンなどが使用され得る。
前記重合反応時の温度や時間なども特に限定はなく、使用目的に応じて所望の重量平均分子量になるように適宜調整すればよい。
懸濁重合法による製造方法としては、単量体または単量体混合物を水に懸濁させた後、重合反応を開始し、重合反応の進行に伴い、残りの単量体または単量体混合物の水懸濁液を一段あるいは数段に分けて、あるいは連続的に重合反応槽へ追加して重合反応を実施する方法、または、単量体あるいは単量体混合物の一部を水に懸濁させ重合反応を開始し、重合反応の進行に伴い、残りの単量体あるいは単量体混合物の水懸濁液を1段あるいは数段に分けて、あるいは連続的に重合反応槽へ追加して重合反応を実施する方法等、公知の手法を用いることができる。
懸濁重合法により得られる共重合体粒子は、通常、平均粒子径が50〜500μm程度であり、得られた共重合体スラリー中から、通常の洗浄、脱水、乾燥などの方法により分離回収される。
乳化重合法で製造する場合、単量体混合物を適当な媒体、乳化剤、連鎖移動剤および重合開始剤等の存在下で乳化重合を行うのが好ましい。
乳化重合で使用される前記媒体は、通常、水である。
前記乳化剤としては、公知のものが使用される。例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホコハク酸ジエステル塩などのアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン系界面活性剤などがあげられる。
前記重合開始剤としては特に限定はないが、水溶性や油溶性の重合開始剤などが使用される。例えば、通常の過硫酸塩などの無機重合開始剤、または有機過酸化物、アゾ化合物などを単独で用いてもよいが、これら開始剤化合物と亜硫酸塩、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどを組み合わせて、レドックス系で用いてもよい。好ましい過硫酸塩としては、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどがあげられ、また、好ましい有機過酸化物としては、例えばt−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドなどがあげられる。
前記連鎖移動剤としては特に限定はないが、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−デシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタンなどが使用され得る。
前記重合反応時の温度や時間なども特に限定はなく、使用目的に応じて所望の重量平均分子量になるように適宜調整すればよい。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤は1段重合体であってもよく、または2段および3段重合体などの多段重合体であってもよい。2段重合で重合を行なう場合は、2段目以降の単量体の添加にあたって、1段目の重合が完結していることを確認して添加することにより、1段目のモノマーと混合することなく、2段目の重合を行なうことができる。
乳化重合法により得られる共重合体粒子は、通常、平均粒子径が0.01〜0.3μm程度であり、得られたラテックス中から、通常の電解質等の添加による塩析または凝析、あるいは熱風中への噴霧乾燥させることにより、分離回収される。また、必要に応じて、通常の方法により洗浄、脱水、乾燥などが行なわれる。
本発明で使用される非晶質ポリエステル樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂のうち、結晶化度が実質的に認められないか、または、結晶化度を有していても透明性に悪影響を与えない程に結晶化度が十分に低い樹脂で、高い透明性を有するものを使用することができる。例えば、ジオールとして少なくとも1つの脂肪族ジオールまたは環状脂肪族ジオール、もしくは脂肪族ジオールおよび環式脂肪族ジオールの組み合わせに由来する単位と、ジカルボン酸として少なくとも1つの芳香族二塩基酸に由来する単位を含む芳香族ポリエステルまたは芳香族コポリエステルがあげられる。より詳しくは、全ジオール量のうち50モル%以上がエチレングリコールからなるジオール類と、全ジカルボン酸のうち50モル%以上がテレフタル酸またはテレフタル酸アルキルエステルからなるジカルボン酸類を縮重合して得られるホモポリマーおよびコポリマーがあげられる。コポリマーとしては、例えば、全ジカルボン酸量のうち50モル%以下の範囲で、イソフタル酸あるいはハロゲン化テレフタル酸などの他のジカルボン酸を共重合したもの、または、全ジオール量のうち50モル%以下の範囲で、ジエチレングリコールなどのポリ(アルキレングリコール)、または1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの、直鎖状または環状のアルキル基の炭素数3〜12のアルキレングリコールを共重合したものがあげられる。具体的には、一般にPET−Gと呼ばれるポリ(エチレン−コ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)などがあげられる。これらは任意の1種、あるいは必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂組成物における非晶質ポリエステル樹脂と非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤との配合割合は幅広く採用できるが、好ましくは非晶質ポリエステル樹脂100重量部に対して非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤0.1〜50重量部であり、好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤の配合量が0.1重量部未満では溶融粘度を充分に増大できず、安定した加工性を実現できない傾向があり、また、50重量部を超える範囲では、溶融粘度が高すぎ、得られる成形体は収縮したり、その光沢が失われる傾向がある。
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、非晶質ポリエステル樹脂および非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤を予めヘンシェルミキサー、タンブラーなどを用いて混合した後、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロールなどを用いて溶融混練することにより樹脂組成物を得る方法などを採用することができる。
予め、前記非晶質ポリエステル樹脂100重量部に対して、前記非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤を、50重量部を超えた範囲で混合した高濃度のマスタバッチを製造しておき、実際の成形加工時に、0.1〜50重量部の範囲で所望の添加量になるように前記マスタバッチを非晶質ポリエステル樹脂と混合、希釈して使用してもよい。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて展着剤、滑剤、耐衝撃改質剤、可塑剤、着色剤、および発泡剤などのほかの添加剤を単独または2種以上を組合せて添加してもよい。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂組成物からの成形体を得る方法は特に限定されるものではなく、一般に用いられている成形法、例えば押出成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法などが適用できるが、溶融加工時のより高い溶融粘度が要求される押出成形法やカレンダー成形法においても安定した加工性を発現し、かつ、表面性が良好な成形品が得られる。
以下、実施例および比較例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。「部」は、「重量部」を示す。なお、グリシジルメタクリレートはGMA、グリシジルアクリレートはGA、メチルメタクリレートはMMA、ブチルアクリレートはBA、スチレンはST、α−メチルスチレンはαMST、エチレンはET、ラウロイルパーオキシドはLPO、ターシャリードデシルメルカプタンはTDMと略す。
以下の実施例および比較例で用いた評価方法を、以下にまとめて示す。
(重合転化率の測定)
次式により重合転化率を算出した。
重合転化率(%)=重合体生成量/単量体仕込量×100 。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量は、得られた重合体試料をクロロホルムに溶解させ、その可溶分を、ポリメチルメタクリレートを基準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(WATERS社製、510型ポンプ410RI486UV)を用いて測定した。
(残存モノマー量の測定)
残存モノマー量は、得られた重合体試料に対し、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC−14A)を用いて測定した。
(ペレット作製条件)
140℃で5時間乾燥したPET−G(イーストマンケミカル社製、PROVISTA)100部および重合体試料5部の混合物を、44mmニ軸押出機(日本製鋼所株式会社製、TEX44)を用いて、以下の条件(成形温度、スクリュー回転数、吐出量およびダイス径)で溶融混練し、ペレットを作製した。
シリンダ温度:C1=180℃、C2=195℃、C3=215℃、C4=220℃、C5=220℃、C6=230℃、ダイス温度=235℃
スクリュー回転数:100rpm
吐出量:20kg/hr
ダイス径:3mmφ 。
(溶融粘度の評価)
溶融粘度の指標として、上記ペレットのメルト・フロー・インデックス(以下、MFIと略す)を用いた。MFIは小さいほど、溶融粘度が高いことを示す。
上記ペレットのMFIは、メルトインデクサー(東洋精機株式会社製、P−101)を使用して、シリンダ温度:260℃、荷重:2.16kgの条件下で測定した。
(成形体表面の光沢の評価)
成形体表面の光沢は、前記押出成形により得られる平板状の成形体の表面を、光沢計(ガードナー社製、マイクログロス60°)を使用して測定した。
(透明性評価)
上記ペレットを、2軸ロール(関西ロール株式会社製、8インチテストロール)を用い180℃にて5分間の溶融混練した後、プレス機(神藤金属工業社製、F型油圧プレス)を用い、温度180℃、プレス圧50kg/cm2、時間15分でプレスを行い、3cm×4cm×3mmの成形品を得た。得られた成形品の全光線透過率および曇価を、グロスメーター(日本電色工業社製、Σ80−VG−1D)を用いて、ASTM−D−1003に準じて測定した。全光線透過率の数字が大きいほど、また、曇価は数字が小さいほど、透明性がよいことを示す。
(実施例1)懸濁重合
攪拌機および冷却器付き8リットル反応容器に、蒸留水200部、第三リン酸カルシウム0.6部およびα−オレフィンスルホン酸ナトリウム0.005部を入れた。次いで、反応容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら40℃に昇温した。次いで、ラウロイルパーオキシド0.4部およびベンゾイルパーオキシド1.6部を添加し15分間攪拌した後、GMA6部、MMA19部およびST75部の混合物を添加し、添加終了後、70℃に昇温して3時間重合を行い、さらに80℃に昇温して2時間攪拌して重合を完結させた。その後、冷却して懸濁液を得た。重合転化率は99.8%であった。得られた懸濁液を、遠心脱水機を用いて濾過し、得られた重合体の粒子を水洗し、並行流乾燥機により50℃にて15時間乾燥させて、白色粉末状の1段重合体試料(1)を得た。
(実施例5)乳化重合
攪拌機および冷却器付きの8リットル反応容器に、蒸留水200部およびジオクチルスルホコハク酸エステルソーダ0.5部を入れた。次いで、反応容器内を窒素で置換した後、攪拌しながら70℃に昇温した。次いで、過硫酸カリウム0.2部を添加し15分間攪拌した後、GMA10部、MMA15部、ST65部およびターシャリードデシルメルカプタン1.0部の混合物を4時間にわたって連続添加した。添加終了1時間後に、MMA3部およびST7部を1時間にわたって連続添加し、添加終了後更に1時間攪拌し、その後、冷却して共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99.6%であった。得られたラテックスを塩化カルシウム水溶液(25%水溶液)で塩析凝固させ、90℃まで昇温熱処理した後、遠心脱水機を用いて濾過し、得られた共重合体の脱水ケーキを水洗し、並行流乾燥機により50℃にて5時間乾燥させ、白色粉末状の2段重合体試料(5)を得た。
(実施例2〜4および比較例2〜4)
得られる重量平均分子量を70000程度となるように調整し、表1に示したようにGMAの組成比を変更した以外は、実施例1と同様の方法により重合を行い、1段重合体である試料(2)〜(4)および(6)〜(8)を得た。
得られた試料を用いて、MFI、成形体の表面性、および透明性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、比較例1として、重合体試料を全く添加しない系での評価も示す。
表1の結果により、試料(1)〜(5)のように単量体混合物におけるGMA組成比が本発明の範囲内である実施例1〜5では、良好なMFI、成形体表面性および透明性を有する組成物が得られることがわかる。一方、GMAが本発明の範囲より少ない試料(6)および(7)を配合した比較例2および3では、MFIが高くなる、すなわち増粘効果が低下することがわかる。また、GMAが本発明の範囲より多い試料(8)を用いた比較例4では、透明性が低下することがわかる。
(実施例6〜9および比較例5〜7)
GMA量を10部に固定し、表2に示すように重合開始剤LPOおよび連鎖移動剤TDMの添加量を変更した以外は、実施例1と同様の方法により重合を行い、重量平均分子量を変更した試料(9)〜(11)、および(13)〜(15)を得た。また、実施例5と同様の方法により重合を行い、試料(12)を得た。得られた試料を配合して前記MFI、成形体の表面性、および透明性の評価を行った。結果を表2に示す。
表2の結果より、試料(9)〜(12)のように単量体混合物の重量平均分子量が本発明の範囲内である実施例6〜9では、良好なMFI、成形体の表面性、および透明性を有する組成物が得られることがわかる。一方、重量平均分子量が本発明の範囲よりも低い試料(13)および(14)を配合した比較例5および6、または、重量平均分子量が本発明の範囲を超えて高い試料(15)を用いた比較例7では、MFIが高くなる、すなわち増粘効果が低下することがわかる。
(実施例10〜15および比較例8、9)
エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート10部を固定し、表3に示すように単量体の種類および量に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法により試料(16)〜(23)を得た。得られた試料を配合して前記MFI、成形体の表面性、および透明性の評価を行った。結果を表3に示す。
表3の結果より、試料(16)〜(21)のように単量体の種類および量が本発明の範囲内である実施例10〜15では、良好なMFI、成形体の表面性および透明性を有する組成物が得られることがわかる。また、アルキルメタクリレートの代わりにアルキルアクリレートであるBAを使用した試料(22)を配合した比較例8では、残存モノマー量が著しく多く、アルキルメタクリレートを必須成分とすることにより残存モノマー量の低減効果を示すことがわかる。
(実施例16〜21、比較例10、11)
実施例3で得られた試料(3)を、表4に示した配合比率で非晶質ポリエステル樹脂とブレンドし、前記MFI、成形体の表面性および透明性の評価を行った。結果を表4に示す。
表4の結果より、重合体試料の配合比率が本発明の範囲内である実施例16〜21では、良好なMFI、成形体の表面性、および透明性を有する組成物が得られることがわかる。一方、重合体試料の配合比率が本発明の範囲よりも少ない比較例10では、MFIが高くなり、すなわち充分な増粘効果が得られないことがわかる。また、配合比率が本発明の範囲よりも大きい比較例11では、成形体の表面性が悪化することがわかる。

Claims (8)

  1. (a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート5重量部以上15重量部未満、(b)他のアルキルメタアクリレート0.1〜90重量部、および(c)芳香族ビニルモノマー5〜95重量部[(a)、(b)および(c)を合わせて100重量部]を重合することにより得られる、重量平均分子量が4万〜40万の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤。
  2. (a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート10重量部超15重量部未満、(b)他のアルキルメタアクリレート0.1〜90重量部、および(c)芳香族ビニルモノマー5〜95重量部[(a)、(b)および(c)を合わせて100重量部]を重合することにより得られる、請求項1に記載の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤。
  3. (a)エポキシ基含有アルキル(メタ)アクリレート10重量部超15重量部未満、(b)他のアルキルメタアクリレート10〜20重量部、および(c)芳香族ビニルモノマー65〜80重量部[(a)、(b)および(c)を合わせて100重量部]を重合することにより得られる、請求項1または2に記載の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤。
  4. 非晶質ポリエステル樹脂100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載の非晶質ポリエステル樹脂用増粘剤0.1〜50重量部を配合してなる、非晶質ポリエステル樹脂組成物。
  5. 非晶質ポリエステル樹脂が、ジオールとして少なくとも1つの脂肪族ジオールまたは環式脂肪族ジオール、もしくは脂肪族ジオールおよび環式脂肪族ジオールとの組み合わせに由来する単位と、ジカルボン酸として少なくとも1つの芳香族二塩基酸に由来する単位を含む芳香族ポリエステルまたは芳香族コポリエステルである、請求項4に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物。
  6. 請求項4または5に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物からなる成形体。
  7. 請求項4または5に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物を押出成形して得られる成形体。
  8. 請求項4または5に記載の非晶質ポリエステル樹脂組成物をカレンダー成形して得られる成形体。
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