JP2007216220A - 複層模様塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】立体感及び高級感を有する、異なる色及び/又は質感が混在する模様塗膜を、簡便に形成できる複層模様塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】(1)被塗物に、第1着色ベース塗料を塗装する工程、
(2)第1着色ベース塗料の未硬化塗膜上に、第1着色ベース塗料とは色及び/又は質感が異なる塗膜を形成でき且つ塗装30秒後における塗着塗料の固形分が30〜60質量%である第2着色ベース塗料を、第1着色ベース塗料塗膜の一部が露出するように塗装する工程、
(3)第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、硬化し又は硬化することなく、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、硬化する工程、
を含む複層模様塗膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、複層模様塗膜形成方法に関する。
自動車車体、家電製品、家具等の工業製品には、通常、製品の保護及び美観のために、塗料が塗装されている。
近年、上記工業製品の外観においては、斬新なデザインを施すことによって、美観を向上させることが求められている。斬新なデザインとしては、例えば、天然素材を表現したデザイン、人工的デザイン、伝統的デザイン等が挙げられる。天然素材を表現したデザインとしては、例えば、皮革目調、石目調、木目調、金属調、大理石調、毛皮調、布調、和紙調等が挙げられる。人工的デザインとしては、例えば、幾何学模様等が挙げられる。また、伝統的デザインとしては、例えば、津軽塗り、螺鈿工芸等が挙げられる。津軽塗りは、塗り重ねた漆を研ぎだして独特の模様を創りだすものである。螺鈿工芸は、アワビ貝、アコヤ貝等の貝殻を加工して得られる螺鈿部材を用いた漆塗りであり、高級感を伴う。
しかし、大量生産される工業製品に、天然素材を表現したデザイン、伝統的デザイン等のデザインを施すことは、複雑な工程を必要とする点から困難である。従って、工業製品に、斬新なデザインを、簡便な塗装方法で施すことが、要望されている。
自動車車体等の被塗物に、メタリックベース塗料を塗装し、次いで該ベース塗膜表面に模様形成塗料をその隠蔽膜厚未満の膜厚で塗装して、模様層を形成する塗装方法が公知である(特許文献1参照)。しかし、この方法では、模様形成塗料をインクジェット印刷により塗装するため、形成される模様には限界がある。
高光沢ソリッドカラー塗料、低光沢ソリッドカラー塗料、高光輝性メタリック塗料等の二種以上の塗料を、複数の塗料吐出ノズルを有するスプレーガンを使用して塗装することにより、斑点状の模様塗膜を形成する方法が公知である(特許文献2参照)。しかし、この方法では、形成できる模様は斑点状の模様に限られ、又単独塗膜であるため、形成可能なデザインが制限される。
特開平10−43675号公報 特開2000−296360号公報
本発明の目的は、立体感及び高級感を有する、異なる色及び/又は質感が混在する模様塗膜を、簡便に形成できる複層模様塗膜形成方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した。その結果、被塗物に第1着色ベース塗料を塗装後、その未硬化塗膜の一部が露出するように特定の第2着色ベース塗料を塗装し、更にトップクリヤー塗料を塗装することにより、該目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、完成されたものである。
本発明は、下記の複層模様塗膜形成方法を提供する。
1.(1)被塗物に、第1着色ベース塗料を塗装する工程、
(2)第1着色ベース塗料の未硬化塗膜上に、第1着色ベース塗料とは色及び/又は質感が異なる塗膜を形成でき且つ塗装30秒後における塗着塗料の固形分が30〜60質量%である第2着色ベース塗料を、第1着色ベース塗料塗膜の一部が露出するように塗装する工程、
(3)第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、硬化し又は硬化することなく、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、硬化する工程、
を含む複層模様塗膜形成方法。
2.第2着色ベース塗料が、光輝性塗料である上記項1に記載の塗膜形成方法。
3.第2着色ベース塗料として、色及び/又は質感が異なる塗膜を形成し得る2種類以上の塗料を用いる上記項1に記載の塗膜形成方法。
4.第2着色ベース塗料として用いる2種類以上の塗料を、複数の塗料吐出ノズルを有するスプレーガンを使用して塗装する上記項3に記載の塗膜形成方法。
5.第2着色ベース塗料塗装後の第1着色ベース塗料塗膜の露出面積が、1〜95%程度である上記項1に記載の塗膜形成方法。
6.第1着色ベース塗料及び第2着色ベース塗料を各々単独に塗装して得られた塗膜間の色及び/又は質感が、(i)Lh表色系による明度差ΔLが5以上であること、(ii)Lh表色系による色相差Δhが45以上であること、及び(iii)フリップフロップ値の差ΔFFが0.2以上であることからなる群から選ばれる少なくとも1つの要件を満たす上記項1に記載の塗膜形成方法。
7.工程(2)における第1着色ベース塗料の未硬化塗膜が、固形分40質量%以上の塗膜である上記項1に記載の塗膜形成方法。
8.工程(3)において、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を硬化後、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、硬化する上記項1に記載の塗膜形成方法。
9.工程(3)において、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、硬化することなく、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、これらの3層塗膜を同時に硬化する上記項1に記載の塗膜形成方法。
10.トップクリヤー塗料が、艶調整剤を含有する塗料である上記項1に記載の塗膜形成方法。
11.被塗物が、自動車の車体又は内装部品である上記項1に記載の塗膜形成方法。
12.上記項1に記載の複層模様塗膜形成方法により、被塗物上に模様塗膜が形成された塗装物品。
被塗物
被塗物としては、自動車車体、自動車内装部品、家電製品、家具等が挙げられる。被塗物としては、これら自動車車体等を形成する冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板等の金属基材;プラスチック成形体、プラスチック発泡体等のプラスチック基材;ガラス基材等も包含する。
また、被塗物としては、その表面に、脱脂処理;リン酸塩処理、クロメート処理等の化成処理が施されたものでもよい。また、被塗物としては、その表面に、隠蔽性、防食性等を付与するために、カチオン電着塗料、プライマー塗料等の下塗り塗膜を形成したものであってもよい。更に、耐チッピング性、層間付着性等の向上のために、該下塗り塗膜上に熱硬化性中塗り塗料等の中塗り塗膜を形成したものであってもよい。上記下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜は、硬化してあっても、未硬化であってもよい。
第1着色ベース塗料
第1着色ベース塗料は、本発明塗膜形成方法において、被塗物に直接又は下塗り塗膜等を介して塗装される塗料であり、被塗物上に着色顔料に基づくソリッドカラー塗膜又は着色顔料及び光輝性顔料に基づく光輝性塗膜を形成する。
第1着色ベース塗料としては、樹脂成分、着色顔料、溶剤等を含有する液状の熱硬化性塗料又は常温硬化性塗料を使用できる。樹脂成分としては、通常、基体樹脂及び必要に応じて架橋剤を含有する。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。基体樹脂は、架橋性官能基を有するのが好ましい。架橋性官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基等を挙げることができる。また、架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。溶剤としては、公知の塗料用有機溶剤及び/又は水を使用できる。樹脂成分及び着色顔料は、溶剤に溶解または分散して使用することができる。
該着色顔料としては、インク用又は塗料用として公知のものを、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
着色顔料の具体例をカラーインデックス(C.I.No.)で示すと次の通りである。但し、これらの具体例に限定されない。
白色顔料:Pigment White 1、Pigment White 4、Pigment White 6等。
黒色顔料:Pigment Black 1、Pigment Black 6、Pigment Black 7、Pigment Black 10、Pigment Black 11、Pigment Black 31、Pigment Black 32等。
青色顔料:Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 28、Pigment Blue 29、Pigment Blue 60、Pigment Blue 75、Pigment Blue 80、Pigment Violet 23等。
緑色顔料:Pigment Green 7、Pigment Green 36、Pigment Green 37等。
赤色顔料:Pigment Red 3、Pigment Red 48:2、Pigment Red 48:3、Pigment Red 48:4、Pigment Red 52:2、Pigment Red 88、Pigment Red 101、Pigment Red 104、Pigment Red 112、Pigment Red 122、Pigment Red 146、Pigment Red 168、Pigment Red 170、Pigment Red 177、Pigment Red 178、Pigment Red 179、Pigment Red 188、Pigment Red 202、Pigment Red 206、Pigment Red 207、Pigment Red 214、Pigment Red 224、Pigment Red 242、Pigment Red 251、Pigment Red 253、Pigment Red 254、Pigment Red 255、Pigment Red 256、Pigment Red 257、Pigment Red 264、Pigment Red 279、Pigment Violet 19、Pigment Violet 29等。
橙色顔料:Pigment Orange 5、Pigment Orange 36、Pigment Orange 43、Pigment Orange 62、Pigment Orange 67等。
茶色顔料:Pigment Brown 24、Pigment Brown 25等。
黄色顔料:Pigment Yellow 1、Pigment Yellow 3、Pigment Yellow 16、Pigment Yellow 34、Pigment Yellow 42、Pigment Yellow 53、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 75、Pigment Yellow 79、Pigment Yellow 81、Pigment Yellow 83、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 129、Pigment Yellow 138、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 150、Pigment Yellow 151、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 173、Pigment Yellow 184、Pigment Yellow 213等。
また、上記着色顔料に公知の表面処理が施されたものも使用できる。表面処理としては、例えば酸・塩基処理、カップリング剤処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等を挙げることができる。
上記着色顔料の配合量は、得られる塗膜の隠蔽性及び仕上がり外観に優れる点から第1着色ベース塗料の樹脂成分の固形分100質量部に対して、0.5〜100質量部程度が好ましく、1〜50質量部程度がより好ましい。
また、第1着色ベース塗料には、光輝感を付与し、立体感を向上させるために、必要に応じて光輝性顔料を配合することができる。
光輝性顔料としては、インク用又は塗料用として公知のものを、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
光輝性顔料の具体例としては、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料;表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料;表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料;表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料;着色顔料や無機金属酸化物で被覆した着色アルミニウム顔料;ガラスフレーク顔料;表面を金属又は金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料;表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料;表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料;干渉マイカ顔料を還元着色した還元マイカ顔料;表面に着色顔料を化学吸着させた着色マイカ顔料;表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料;表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料;表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレーク顔料;表面を二酸化チタンで被覆したアルミナフレーク顔料;板状酸化鉄顔料;ホログラム顔料;合成マイカ顔料;らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料などが挙げられる。光輝性顔料は、これらに限定されるものではなく、求める光輝感に応じて、これらの1種を、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの光輝性顔料の内、高い金属感を得るためには、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料;表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料;表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料;表面に着色顔料を化学吸着させた着色マイカ顔料;表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料等が好ましく、アルミニウムフレーク顔料;表面を金属酸化物で被覆したアルミニウムフレーク顔料等がより好ましい。
上記光輝性顔料の配合量は、得られる塗膜の光輝性及び仕上がり外観に優れる点から、第1着色ベース塗料の樹脂成分固形分100質量部に対して、0.5〜100質量部程度が好ましく、1〜50質量部程度がより好ましい。
第1着色ベース塗料には、更に必要に応じて、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤;体質顔料;艶調整剤などを配合することができる。
第1着色ベース塗料は、前述の各成分を混合することによって調製することができる。第1着色ベース塗料は、通常、塗装に際して、固形分含有率を、好ましくは15〜50質量%程度に調整する。固形分含有率がこの範囲内であることにより、塗料粘度は、通常、フォードカップ#4(20℃)で10〜40秒程度の粘度の範囲内となる。固形分含有率は、より好ましくは20〜40質量%程度に調整する。
第1着色ベース塗料は、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。その塗装膜厚は、平滑性に優れる点から、硬化膜厚に基づいて、5〜50μm程度とするのが好ましく、10〜40μm程度とするのがより好ましい。第1着色ベース塗料の塗膜は、常温硬化又は60〜150℃程度の温度で加熱硬化させることができる。
第2着色ベース塗料
第2着色ベース塗料は、本発明塗膜形成方法において、第1着色ベース塗料の未硬化塗膜面の一部に、塗装される塗料である。第2着色ベース塗料を、この様に塗装することにより、第1着色ベース塗膜の一部が露出していることと、第2着色ベース塗料が未硬化の第1着色ベース塗膜上に滲みを生じることが相俟って、複雑な模様を形成することができる。
第2着色ベース塗料は、着色顔料に基づくソリッドカラー塗膜、又は光輝性顔料単独若しくは着色顔料及び光輝性顔料に基づく光輝性塗膜を形成する。光輝性塗膜とすることにより、深み感、奥行き感等の立体感により優れる複層模様塗膜を形成することができる。
第2着色ベース塗料としては、樹脂成分、着色顔料及び/又は光輝性顔料、溶剤等を含有する液状の熱硬化性塗料又は常温硬化性塗料を使用できる。
樹脂成分としては、第1着色ベース塗料に含有される樹脂成分として挙げたものを同様に使用することができる。
着色顔料としては、インク用又は塗料用として公知のものを、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、第1着色ベース塗料に含有される着色顔料として挙げたものを同様に使用することができる。着色顔料の配合量は、得られる塗膜の仕上がり外観に優れる点から、第2着色ベース塗料の樹脂成分固形分100質量部に対して、0.5〜50質量部程度が好ましく、1〜30質量部程度がより好ましい。
光輝性顔料としては、インク用又は塗料用として公知のものを、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、第1着色ベース塗料に含有される光輝性顔料として挙げたものを同様に使用することができる。光輝性顔料の配合量は、得られる塗膜の光輝性及び仕上がり外観に優れる点から、第2着色ベース塗料の樹脂成分固形分100質量部に対して、0.5〜100質量部程度が好ましく、1〜50質量部程度がより好ましい。
溶剤としては、公知の塗料用有機溶剤及び/又は水を使用できる。
第2着色ベース塗料には、必要に応じて、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤;体質顔料;艶調整剤などを配合することができる。
第2着色ベース塗料は、前述の各成分を混合することによって調製することができる。第2着色ベース塗料は、通常、塗装に際して、固形分含有率を、好ましくは10〜50質量%程度に調整する。固形分含有率がこの範囲内であることにより、塗料粘度は、通常、フォードカップ#4(20℃)で10〜40秒程度の粘度の範囲内となる。固形分含有率は、より好ましくは15〜40質量%程度に調整する。
第2着色ベース塗料は、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。その塗装膜厚は、模様塗膜を形成できる限りにおいて、限定されない。第2着色ベース塗料の塗膜は、常温硬化又は60〜150℃程度の温度で加熱硬化させることができる。
トップクリヤー塗料
トップクリヤー塗料は、本発明塗膜形成方法において、第1着色ベース塗料及び第2着色ベース塗料の硬化又は未硬化の塗膜上に、塗装される塗料である。
トップクリヤー塗料を塗装することにより、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗料により形成された模様塗膜を覆って平滑にすることができ、又耐候性、耐水性、耐薬品性等を付与することができる。
トップクリヤー塗料としては、樹脂成分、溶剤等を含有する液状の熱硬化性塗料又は常温硬化性塗料を使用できる。
樹脂成分としては、通常、基体樹脂及び架橋剤を含有する。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂等を挙げることができる。基体樹脂は、架橋性官能基を有するのが好ましい。架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基等を挙げることができる。また、架橋剤としては、基体樹脂の官能基と反応しうる反応性基を有するメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。
溶剤としては、公知の塗料用有機溶剤及び/又は水を使用できる。
トップクリヤー塗料には、必要に応じて、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を配合することができる。
また、トップクリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料、染料、艶調整剤等を配合することができる。
トップクリヤー塗料に含有させることができる着色顔料としては、インク用又は塗料用として公知のものを、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。具体的には、第1着色ベース塗料に含有される着色顔料として挙げたものを同様に使用することができる。着色顔料を配合する場合、その配合量は、得られる塗膜の透明性を保持し、仕上がり外観に優れる点から、トップクリヤー塗料の樹脂成分固形分100質量部に対して、0.001〜5質量部程度が好ましく、0.01〜3質量部程度がより好ましい。
トップクリヤー塗料に含有させることができる染料としては、インク用、塗料用又はプラスチック成形体用として公知のものを、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。該染料の具体例としては、アゾ系染料、アンスラキノン系染料、銅フタロシアニン系染料、金属錯塩系染料等を挙げることができる。染料を配合する場合、その配合量は、得られる塗膜の色相を調整し、仕上がり外観に優れる点から、トップクリヤー塗料の樹脂成分固形分100質量部に対して、0.001〜5質量部程度が好ましく、0.01〜3質量部程度がより好ましい。
トップクリヤー塗料に含有させることができる艶調整剤としては、インク用又は塗料用として公知のものを、1種又は2種以上組み合わせて使用することが出来る。具体例としては、粉末状シリカ、粒子状シリカ、セラミック粉末等の無機物の微粒子;アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂の微粒子等を挙げることができる。但し、これらに限定されない。艶調整剤が配合されたトップクリヤー塗料を塗装した場合においては、光沢を抑えることによる柔らかな質感の塗膜が得られる。艶調整剤を配合する場合、その配合量は、得られる塗膜の光沢値の調整及び仕上がり外観に優れる点から、トップクリヤー塗料の樹脂成分固形分100質量部に対して、1〜60質量部程度が好ましく、3〜30質量部程度がより好ましい。
トップクリヤー塗料は、前述の各成分を混合することによって調製することができる。トップクリヤー塗料は、通常、塗装に際して、固形分含有率を、好ましくは10〜50質量%程度に調整する。固形分含有率がこの範囲内であることにより、塗料粘度は、通常、フォードカップ#4(20℃)で10〜40秒程度の粘度の範囲内となる。固形分含有率は、より好ましくは15〜40質量%程度に調整する。
トップクリヤー塗料は、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。その塗装膜厚は、平滑性に優れる点から、硬化膜厚に基づいて、10〜50μm程度とするのが好ましく、10〜40μm程度とするのがより好ましい。トップクリヤー塗料の塗膜は、常温硬化又は60〜150℃程度の温度で加熱硬化させることができる。
複層模様塗膜形成工程
本発明の複層模様塗膜形成方法は、
(1)被塗物に、第1着色ベース塗料を塗装する工程、
(2)第1着色ベース塗料の未硬化塗膜上に、第1着色ベース塗料とは色及び/又は質感が異なる塗膜を形成でき且つ塗装30秒後における塗着塗料の固形分が30〜60質量%である第2着色ベース塗料を、第1着色ベース塗料塗膜の一部が露出するように塗装する工程、
(3)第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、硬化し又は硬化することなく、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、硬化する工程、
を含んでいる。
工程(1)
工程(1)は、被塗物上に、第1着色ベース塗料を塗装する工程である。第1着色ベース塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法で塗装する。その塗装膜厚は、硬化膜厚に基づいて、5〜50μm程度とするのが好ましい。塗装後は、通常、1〜6分間程度静置するのが好ましい。
工程(2)
工程(2)は、工程(1)で形成された第1着色ベース塗料の塗膜面の一部に、該塗膜が未硬化のままで、第2着色ベース塗料を塗装する工程である。第1着色ベース塗料の未硬化塗膜は、第2着色ベース塗料による模様形成を容易にする点から、塗着塗料の固形分が40質量%以上程度であることが好ましく、55〜90質量%程度であることがより好ましい。
第2着色ベース塗料は、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。その塗装膜厚は、模様塗膜を形成できる限りにおいて、限定されないが、通常、5〜30μm程度とするのが好ましい。塗装後は、通常、3〜15分間程度静置するのが好ましい。
第1着色ベース塗料の塗膜を硬化させることなく未硬化の状態で、第1着色ベース塗膜の一部が露出するように第2着色ベース塗料を塗装するときには、これらのベース塗膜の硬化過程において、混層が生じて第1着色ベース塗料の未硬化塗膜上に、第2着色ベース塗料の滲みを生じる。この一部露出した第1着色ベース塗膜と第2着色ベース塗料塗膜及びその滲みとが相俟って、複雑な模様が発現される。
第2着色ベース塗料を塗装30秒後における塗着塗料の固形分は、30〜60質量%程度の範囲内であることが必要である。第2着色ベース塗料の塗着塗料の固形分がこの範囲よりも低すぎると過度の混層が生じて模様が不明確となるので好ましくない。一方、該固形分がこの範囲よりも高すぎると混層せず、滲みに基づく模様が発現され難い。第2ベース塗料を塗装30秒後における塗着塗料の固形分は、40〜50質量%程度の範囲内であるのが好ましい。
第1着色ベース塗料又は第2着色ベース塗料の塗着塗料の固形分は、例えば、次のようにして、測定することができる。即ち、予め質量を測定したアルミニウムホイルを、一定面積を露出するように中をくりぬいて周辺部のみ残した板状磁石で覆った後、塗料を塗装し、30秒後に板状磁石を外した後、アルミニウムホイルをただちに畳み込むことによりそれ以後の溶媒の蒸発を起こらないようにして、速やかに質量を測定する。その後アルミニウムホイルを開いて、本発明における塗膜の硬化条件と同じ条件で硬化後質量を測定する。硬化前後の質量及び予め測定したアルミニウムホイル自体の質量から、塗着塗料の固形分を算出する。
塗着塗料の固形分は、該塗料中の溶剤組成によって調整することができる。具体的には、沸点の低い溶剤と沸点の高い溶剤の配合割合を変化させることにより、目標とする塗着塗料の固形分となるように調整することができる。
本発明方法で用いる第2着色ベース塗料は、第1着色ベース塗料とは色及び/又は質感が異なる塗膜を形成し得る塗料である。
色は、明度、彩度及び色相により特定される。質感とは、光沢、光線透過率、IV値、SV値、FF値等を意味する。色は、マンセル表色系、L表色系、Lh表色系、XYZ表色系等の表色系における色度及び明度で表わすことができる。また、質感は、塗膜の光沢及び光線透過率;光輝性塗膜における金属感を表わすIV値及びSV値;視覚の方向による明度比を表わすフリップフロップ値(FF値)等で表わすことができる。これらの各特性は、市販の色彩計、分光光度計、光沢計等を用いて測定でき、又その測定値に基づいて算出できる。
第2着色ベース塗料としては、得られる複層模様塗膜の深み感、奥行き感等の立体感が優れる点から、光輝性塗料を使用することが好ましい。
工程(2)においては、第2着色ベース塗料として、色及び/又は質感が異なる塗膜を形成し得る、2種類以上の塗料を使用することが好ましく、2〜4種類の塗料を使用することがより好ましい。色及び/又は質感が異なる2種類以上の第2着色ベース塗料を使用することによって、第1着色ベース塗料による色及び/又は質感と組み合わさって、種々の色及び/又は質感が混在する立体感等に優れた模様塗膜を形成させることができる。
2種類以上の第2着色ベース塗料を用いる場合、複数の塗料吐出ノズルを有するスプレーガンを使用して塗装することができる。このスプレーガンは、塗装機に塗装ガンヘッドを1個有し、該塗装ガンヘッドは塗料吐出ノズルを2個以上好ましくは2〜4個有する塗装機であり、各塗料吐出ノズルからそれぞれ異なる塗色の塗料を吐出することにより、種々の塗色が混在する模様を、形成することができる。この様なスプレーガンとしては、例えば、特開平9−299833号公報に記載のスプレーガンを挙げることができる。
複数の塗料吐出ノズルを有するスプレーガンを使用して塗装する場合の塗装条件としては、各吐出ノズルそれぞれについて、パターンエア量が80〜300NL/min程度、霧化エア量が80〜300NL/min程度の範囲内において、適宜調整して塗装することができる。それぞれのノズルの霧化エア量及びパターンエア量は、同一であっても異なっていても良い。霧化エア量及びパターンエア量はスプレーガンと被塗物との距離に合わせて適宜調整することができる。また、スプレーガンの移動速度は、目標とする塗色に合わせて適宜調整することができる。
本発明方法においては、第2着色ベース塗料を塗装後、第1着色ベース塗料による塗膜面の露出面積が1〜95%程度であることが、得られる模様塗膜のデザインの多様性に優れる点から、好ましい。露出面積は、5〜85%程度がより好ましく、15〜80%程度が更に好ましい。
本発明方法においては、第1着色ベース塗料及び第2着色ベース塗料を各々単独に塗装して得られた塗膜間の色及び/又は質感が、(i)Lh表色系による明度差ΔLが5以上であること、(ii)Lh表色系による色相差Δhが45以上であること、及び(iii)フリップフロップ値の差ΔFFが0.2以上であることからなる群から選ばれる少なくとも1つの要件を満たすことが、得られる模様塗膜のデザインの多様性に優れる点から好ましく、2以上の要件を満たすことがより好ましい。
h表色系は、国際照明委員会により定められた表色系であり、Section 4.2 of CIE Publication 15.2(1986)に記載されている。Lh表色系において、Lは明度を表わし、hは色相角度を表わし、この色相角度は色度図において赤方向の軸を0°として、反時計方向に移動した角度である。明度L及び色相角度hは、色彩色差計、多角度分光光度計等を使用して測定できる。色彩色差計としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、コニカミノルタ社製の「CRシリーズ」(商品名)、スガ試験機社製の「SMカラーコンピューター」(商品名)等が挙げられる。また、多角度分光光度計としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、X−Rite社製の「MA−68」(商品名)等が挙げられる。
フリップフロップ値とは、視覚の方向により相違する明度の比を表わすものであり、特に光輝性塗膜において、顕著な値を示す。フリップフロップ値は、例えば、多角度分光光度計を用いて測定できる。多角度分光光度計としては、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、「MA−68」を使用できる。多角度分光光度計によれば、塗膜面に対して45度の角度から照射した入射光を、正反射光に対して15、25、45、75、110度の角度で受光した分光反射率を測定することができる。
本発明において、フリップフロップ値(FF値)は、受光角15度の分光反射率に基づいて計算したL値(これを「L15」とする)と受光角45度の分光反射率に基づいて計算したL値(これを「L45」とする)とから、下記計算式(1)により、算出した値である。ここで、L値は、JIS Z 8729に規定されるL表色系におけるL値である。
FF値=[2×(L15−L45)]/(L15+L45) (1)
本発明方法において、第1着色ベース塗料を単独に塗装して得られた塗膜又は第2着色ベース塗料を単独に塗装して得られた塗膜の色及び/又は質感は、グレー色の塗膜を形成した塗板上に、測定すべき塗料を、硬化塗膜に基づいて30μmの膜厚となるように塗装し、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、硬化させて得た塗膜について、前述の測定方法にて測定した色及び/又は質感を意味する。ここで、グレー色は、多角度分光光度計で測定したマンセル表色系におけるN値で5.5の色とする。
工程(3)
工程(3)は、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、硬化し又は硬化することなく、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、硬化する工程である。
トップクリヤー塗料は、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができる。その塗装膜厚は、平滑性に優れる点から、硬化膜厚に基づいて、10〜50μm程度とするのが好ましく、10〜40μm程度とするのがより好ましい。塗装後は、通常、3〜20分間程度静置するのが好ましい。
工程(3)において、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、通常、60〜150℃程度の温度で、20〜40分間程度加熱して、これらの塗膜を同時に硬化せしめた後に、トップクリヤー塗料を塗装し、通常、60〜150℃程度の温度で、20〜40分間程度加熱して、トップクリヤー塗膜を硬化させることができる。
また、工程(3)において、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、未硬化のままで、トップクリヤー塗料を塗装し、通常、60〜150℃程度の温度で、20〜40分間程度加熱して、第1着色ベース塗膜、第2着色ベース塗膜及びトップクリヤー塗膜を同時に硬化させることができる。
かくして、異なる色及び/又は質感が混在する複層模様塗膜が形成される。
本発明の複層模様塗膜形成方法によれば、次のような顕著な効果が得られる。
(1)深み感、奥行き感等の立体感に優れる、異なる色及び/又は質感が混在する複層模様塗膜を、簡便に形成できる。
特に、第1着色ベース塗膜面が、第2着色ベース塗膜面から一部露出していること、第1着色ベース塗膜上に第2着色ベース塗膜の滲みがあること、異なる色や質感が混在することによって、高級感のある多彩なデザインの模様塗膜を形成できる。
(2)第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜の上に、艶調整剤を配合したトップクリヤー塗料を塗装した場合には、光沢が抑えられることによる柔らかな質感が付与された模様塗膜が形成できる。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、部及び%は、原則として、質量基準である。
製造例1 被塗物の製造
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JIS G 3141、大きさ400×300×0.8mm)に、カチオン電着塗料(商品名「エレクロン9400HB」、関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネ−ト化合物を配合したもの)を、硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させた。
この硬化電着塗面に、中塗塗料(商品名「ルーガベーク中塗りグレー」、関西ペイント(株)製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系有機溶剤型塗料)を、硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗塗膜を形成して、被塗物を得た。
製造例2〜8 着色ベース塗料No.1〜7の製造
水酸基含有アクリル樹脂(水酸基価100mgKOH/g、数平均分子量20,000)70部及びブチル化メラミン樹脂(数平均分子量2,000)30部からなる樹脂成分100部(固形分)あたり、表1に示す種類及び配合量の着色顔料及び光輝性顔料の少なくとも一種の顔料を攪拌混合し、表1に示す溶剤組成となるように塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約25%の有機溶剤型着色ベース塗料No.1〜7を作成した。
得られた上記7種類の塗料について、塗着塗料固形分(%)、並びに単独塗膜の明度L、色相h及びフリップフロップ(FF)値を、下記方法にて測定した。
塗着塗料固形分(%):塗装30秒後の塗着塗料固形分(%)を、次のようにして、測定した。
予め質量を測定したアルミニウムホイルを、横8cm×縦15cmの面積を露出するように中をくりぬいて周辺部のみ残した板状磁石で覆った後、塗料を塗装し、30秒後に板状磁石を外した後、アルミニウムホイルをただちに畳み込むことによりそれ以後の溶媒の蒸発を起こらないようにして、速やかに質量を測定する。その後アルミニウムホイルを開いて140℃で30分間加熱硬化後質量を測定する。硬化前後の質量及び予め測定したアルミニウムホイル自体の質量から、塗着塗料の固形分を算出する。
単独塗膜の明度L、色相h及びFF値:塗料を、予めグレー色(N=5.5)の塗膜を形成したブリキ板上に、硬化塗膜に基づいて30μmの膜厚となるように塗装し、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、硬化させた。得られた塗装板について、下記方法で塗料単独塗膜の明度L、色相h及びFF値を測定した。
(a)明度Lの測定:多角度分光光度計(商品名「MA−68」、X−Rite社製)を使用して、受光角45度のL値を測定した。
(b)色相hの測定:多角度分光光度計(商品名「MA−68」、X−Rite社製)を使用して、受光角45度のhを測定した。
(c)FF値の測定:多角度分光光度計(商品名「MA−68」、X−Rite社製)を使用して、受光角15度のL値及び受光角45度のL値を測定し、前記計算式(1)にてFF値を算出した。
表1に、各塗料の顔料、溶剤組成及び塗着塗料固形分(%)、並びに単独塗膜の明度L、色相h及びFF値を、示した。
Figure 2007216220
表1において、顔料の種類は下記の通りである。また、顔料の配合量は、塗料中の樹脂成分100部(固形分)あたりの部である。
着色顔料
A:Pigment Black 7、商品名「Monarch 1300」、キャボット社製、カーボンブラック顔料。
B:Pigment Red 254、商品名「Irgazin DPP RED BO」、チバスペシャリティ社製、ジケトピロロピロール顔料。
C:Pigment Red 254、商品名「Irgazin DPP Rubine FTX」、チバスペシャリティ社製、ジケトピロロピロール顔料。
D:Pigment Red 101、商品名「TRANSOXDE RED」、大日精化社製、透明酸化鉄顔料。
E:Pigment Red 177、商品名「CHROMOPHTAL RED A2B」、チバスペシャリティ社製、アンスラキノン顔料。
F:Pigment Red 202、商品名「Quindo Magenta 202 RV6853」、大日本インキ化学社製、ジクロルキナクリドン顔料。
光輝性顔料
a:アルミニウムフレーク顔料、商品名「アルペースト7640NS」、東洋アルミニウム社製、固形分65重量%。
b:着色ゴールドマイカ顔料、商品名「IRIODIN 303 W2」、メルク社製。
c:着色レッドマイカ顔料、商品名「IRIODIN 504 W2」、メルク社製。
また、表1において、溶剤組成は下記の通りである。
A:トルエン/キシレン/酢酸エチル/酢酸−3−メトキシブチル/ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート=3/16/28/13/2。この組成は、塗着塗料固形分が41%程度となる様にした標準的溶剤組成である。
B:トルエン/キシレン/酢酸エチル/ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート=3/16/51/2。この組成は、沸点が低い溶剤の比率を高くした速乾型の溶剤組成である。
C:キシレン/酢酸−3−メトキシブチル/ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート=16/44/2。この組成は、沸点が高い溶剤の比率を高くした遅乾型の溶剤組成である。
製造例9 トップクリヤー塗料の製造
クリヤー塗料(商品名「ルーガベーククリヤー」、関西ペイント(株)製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型クリヤー塗料)を塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約30%の有機溶剤型トップクリヤー塗料を調製した。
製造例10 艶調整トップクリヤー塗料
クリヤー塗料(商品名「ルーガベーククリヤー」、関西ペイント(株)製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系有機溶剤型クリヤー塗料)に、合成シリカ系艶調整剤(商品名「ミズカシルP−526」、水澤化学社製)を、樹脂成分固形分100部に対して、固形分として15部添加し、攪拌混合後、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約30%の有機溶剤型艶調整トップクリヤー塗料を得た。
実施例1〜4及び比較例1〜3
製造例1で得た被塗物の中塗り塗膜全面に、表2に示した第1着色ベース塗料Aをエアスプレーガンを用いて、ブース温度20℃、湿度60%の条件で、硬化塗膜として、20μmとなるように塗装した。塗料Aは、前記着色ベース塗料No.1〜3から選択した。
塗料Aを塗装後、室温にて4分放置し、表2に示した第2着色ベース塗料B又はB及びCを、4個の塗料吐出ノズルを有するスプレーガン(商品名「S型塗装機」、エヌピーシー社製)を用いて、第1ベース塗料による塗膜面の一部が露出するようにブース温度20℃、湿度60%の条件で塗装した。塗料B及びCは、前記着色ベース塗料No.4〜7から選択した。
塗料B又はB及びCを塗装後、室温にて10分間放置後、これらの未硬化塗面に製造例9で得たトップクリヤー塗料をエアスプレーガンを用いて、ブース温度20℃、湿度60%の条件で硬化塗膜として、35μmとなるように全面に塗装した。塗装後、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、第1着色ベース塗膜、第2着色ベース塗膜及びクリヤー塗膜を同時に硬化せしめて、複層模様塗膜を形成した試験板を得た。
得られた試験板について、塗料A塗膜の露出面積(%)を、次の方法により、測定した。即ち、試験板の塗装面の画像を、イメージスキャナー(商品名「CanoScan 4400F」、キャノン(株)製)を用いて、電子データとしてパーソナルコンピューターに取り込み、画像解析ソフト(ソフト名「NIH Image」、米国NIH(National Institutes of health)のWany Rasband氏が開発した画像解析ソフト)によって、塗装面中の第1着色ベース塗料塗膜の露出面積(%)を測定した。
また、各例で用いた塗料A、B及びCのいずれか二種の明度差ΔL、色相差Δh及びFF値の差ΔFFを、表1に示した各単独塗膜の明度L、色相h及びFF値から算出した。
更に、試験板上の複層模様塗膜の評価試験として、模様発現性及び模様立体感を、下記のようにして、調べた。
模様発現性:模様は、主に、第1着色ベース塗膜の露出面積及び第2着色ベース塗膜の滲みによって、発現される。通常、第1着色ベース塗料の塗膜露出面積が1〜95%程度で、塗着塗料固形分が30〜60%程度であるときに良好な模様が発現する。模様発現性は、目視にて、第1着色ベース塗膜の露出面積及び第2着色ベース塗膜の滲みを観察し、第1着色ベース塗膜の露出及び第2着色ベース塗膜の滲みがいずれも適度である場合に良好とし、一方該露出面積が小さく滲みが過剰の場合に不良とした。
模様立体感:模様塗膜の深み感、奥行き感等の立体感を、目視にて観察し、立体感に優れる場合に良好とし、立体感に劣る場合に不良とした。
表2に、各例で使用した塗料の種類、塗料A塗膜の露出面積(%)、塗料A、B及びCのいずれか二種間のΔL、Δh及びΔFF、並びに評価試験の結果を示した。
Figure 2007216220
表2より、実施例1〜4で得られた試験板は、各比較例に比して、模様発現性及び模様立体感のいずれにも優れた模様塗膜が形成されていることが明らかである。特に、実施例1〜4では、光輝性顔料を配合した第2着色ベース塗料を用いたことによって、優れた模様立体感が得られたものと考えられる。
実施例5〜8
実施例1〜4において、製造例9で得たトップクリヤー塗料に代えて、製造例10で得た艶調整トップクリヤー塗料を用いた以外は同様にして、複層模様塗膜を形成した試験板を得た。
実施例5〜8で得られた試験板についても、上記と同様にして目視によって模様発現性及び模様立体感の評価を行なった。その結果、実施例1〜4で得られた試験板と同様に、優れた模様発現性及び模様立体感の模様塗膜が得られた。また、実施例5〜8で得られた試験板については、光沢が抑えられることによる柔らかな質感の模様塗膜が得られた。

Claims (12)

  1. (1)被塗物に、第1着色ベース塗料を塗装する工程、
    (2)第1着色ベース塗料の未硬化塗膜上に、第1着色ベース塗料とは色及び/又は質感が異なる塗膜を形成でき且つ塗装30秒後における塗着塗料の固形分が30〜60質量%である第2着色ベース塗料を、第1着色ベース塗料塗膜の一部が露出するように塗装する工程、
    (3)第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、硬化し又は硬化することなく、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、硬化する工程、
    を含む複層模様塗膜形成方法。
  2. 第2着色ベース塗料が、光輝性塗料である請求項1に記載の塗膜形成方法。
  3. 第2着色ベース塗料として、色及び/又は質感が異なる塗膜を形成し得る2種類以上の塗料を用いる請求項1に記載の塗膜形成方法。
  4. 第2着色ベース塗料として用いる2種類以上の塗料を、複数の塗料吐出ノズルを有するスプレーガンを使用して塗装する請求項3に記載の塗膜形成方法。
  5. 第2着色ベース塗料塗装後の第1着色ベース塗料塗膜の露出面積が、1〜95%である請求項1に記載の塗膜形成方法。
  6. 第1着色ベース塗料及び第2着色ベース塗料を各々単独に塗装して得られた塗膜間の色及び/又は質感が、(i)Lh表色系による明度差ΔLが5以上であること、(ii)Lh表色系による色相差Δhが45以上であること、及び(iii)フリップフロップ値の差ΔFFが0.2以上であることからなる群から選ばれる少なくとも1つの要件を満たす請求項1に記載の塗膜形成方法。
  7. 工程(2)における第1着色ベース塗料の未硬化塗膜が、固形分40質量%以上の塗膜である請求項1に記載の塗膜形成方法。
  8. 工程(3)において、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を硬化後、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、硬化する請求項1に記載の塗膜形成方法。
  9. 工程(3)において、第1着色ベース塗膜及び第2着色ベース塗膜を、硬化することなく、これらの塗膜上に、トップクリヤー塗料を塗装し、これらの3層塗膜を同時に硬化する請求項1に記載の塗膜形成方法。
  10. トップクリヤー塗料が、艶調整剤を含有する塗料である請求項1に記載の塗膜形成方法。
  11. 被塗物が、自動車の車体又は内装部品である請求項1に記載の塗膜形成方法。
  12. 請求項1に記載の複層模様塗膜形成方法により、被塗物上に模様塗膜が形成された塗装物品。
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