JP2007215854A - インプラント上部構造物の製作方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)顎骨に埋め込まれたインプラント体にアバットメントが固定された状態を反映した計測マスタを準備するステップと、(b)計測マスタを5軸加工機の主軸に装着された測定器でアバットメントの位置および傾きのデータを取得するステップと、(c)計測マスタと同じ位置にインプラント上部構造物の素材1′を取り付けるステップと、(d)前記(b)のステップで取得したデータから素材1′における一方の面から接合部1a,1a′またはスクリューホール1b,1b′を加工するステップと、(e)素材1′を反転して、他方の面からスクリューホール1b,1b′または接合部1a,1a′を加工するステップと、を含むことを特徴とするインプラント上部構造物の製作方法。
【選択図】図9
Description
一般的に、インプラント治療において、インプラント体またはアバットメントとメタルフレームとの結合方式には、大別してセメント固定式とスクリュー固定式の2つの方式が採用されている。
セメント固定式では、アバットメント等とメタルフレームが結合される接合部にはセメント層が形成されるため、アバットメントとメタルフレームとの接合部の位置や傾きが厳格に合致していなくてもセメント層である程度容認できる。このため、接合部に厳格な寸法精度を要求されないという簡易さがある。一方、セメントで固定するとメタルフレームの取り外しが困難であるから、メンテナンス性、およびメタルフレームの連結、延長、その他インプラント体を追加したり改変したりする際の自由度が制限される。
図10は、スクリュー固定式の構造を説明するための断面図である。スクリュー固定式では、図10に示すように、メタルフレーム31をインプラント体32,32′にねじ33b,33b′で固定されたアバットメント33,33′に咀嚼面側からスクリュー31c,31c′をねじ込んで固定する。このため、取り外しが容易で利便性が高い一方、セメント固定式に比べてアバットメント33,33′とメタルフレーム31,31′との接合部31a,31a′に厳格な連結精度が要求される。
例えば、図11に示すように、すべての歯が一体として形成されているような場合には、厳格な連結精度が要求される。アバットメントとメタルフレームとの接合部の位置、傾きが一致していなければ、接合部に隙間ができて咀嚼時にメタルフレーム41が歪み内部応力が生じ、この応力がインプラント体42の周囲の顎骨に及び、不快感を伴うばかりでなくインプラント体42が抜けてしまう可能性もあるからである。
したがって、連結精度を確保するため、通常、メタルフレームにはアバットメントの台形部の形状に精密に適合する鋳接用シリンダをインプラント体の位置および傾きに合わせて、ロストワックス法により鋳接する(鋳込む)方法が採用されている。
このため、鋳接用シリンダの位置がずれている場合には、位置がずれた箇所のメタルフレームを切断して、正規の位置にろう付けし直して修正しなければならないという問題があった。しかも、この修正には豊富な経験と熟練した技術を必要とし、特に、インプラント体の本数が多い場合には全体の適合精度を確保することは多大な困難を伴うものであった。
また、走査ユニットを使用して3次元の加工データを取得し、コンピータ処理してブランク材から義歯部を一体的に削り出す方法では、装置が複雑大型化するとともに、ブランク材から削り出すため加工工数の面からも採用し難いという問題があった。
そして、同じ加工機で、インプラント体またはアバットメントとインプラント上部構造物との接合部またはスクリューの取り付け穴(スクリューホール)を加工することで、段取り時間を短縮するとともに、温度や機械精度等の環境条件を整合させて加工精度を高めることができる。
しかも、高価な鋳接用シリンダを使用しないため、部品コストを低減することができる。また、インプラント上部構造物に直接機械加工で接合部およびスクリューホールを加工することで、鋳造時における鋳接用シリンダの位置ずれも回避して、下部構造との連結精度の高いインプラント上部構造物を製作することができる。
また、本発明は、素材における一方の面から接合部またはスクリューホールを加工し、素材を反転して、他方の面からスクリューホールまたは接合部を加工することで、インプラント上部構造物の両方の面から接合部およびスクリューホールを加工するため、アンダーカット形状の加工を容易にしている。
かかる構成によれば、素材を枠状の反転治具に固定して、この枠状の反転治具を前記回転テーブル上で反転してインプラント上部構造物の素材を反転しているため、回転テーブル側を反転する必要がないので、反転装置を小型化することができ、加工機自体の小型化を可能とするとともに、反転精度も高めることができる。
かかる構成によれば、計測マスタと素材とを回転テーブル上の同じ位置に取り付けることで、(d)のステップで算出したインプラント体またはアバットメントとインプラント上部構造物との接合部またはスクリューホールの加工データとを対応させることが容易となるとともに、加工機の外段取りで位置精度を確保することで、加工機の稼働率を向上させて生産性を高めることができる。
かかる構成によれば、義歯部の外観形状を鍛造または鋳造で製作することで、板材から削り出すよりも、材料費や加工工数が削減できる。
参照する図面において、図1は本発明の実施形態に係るメタルフレームとインプラント体との取り付け構造を示す分解断面図であり、図2は本発明の実施形態に係るメタルフレームを患者の口腔内に取り付けた状態を示す断面図である。
なお、本実施形態においては、インプラント上部構造物としてメタルフレームを例として説明するが、セラミックフレーム等においても同様である。
インプラント体2,2′は、ねじ部2a,2a′が患者の顎骨にねじ込まれて固定され(図2参照)、人工歯根となる。このため、インプラント体2,2′の材質としては、一般的に、数ヶ月で人間の骨となじんで強固に結合するチタンが採用されている。
また、インプラント体2,2′を埋め込む位置や向きは、患者の顎骨との関係で最適な状態となるように決定される。このため、インプラント体2,2′は、図1、図2等に示すように、それぞれのインプラント体2,2′ごとに異なる角度で顎骨に埋め込まれている。
円錐台形状部3a,3a′は、メタルフレーム1の支台となる部分であり、この円錐台形状部3a,3a′とメタルフレーム1に形成される接合部1a,1a′とが接合されて下部側構造と上部側構造が強固に結合されている(図2参照)。
なお、インプラント体2,2′およびアバットメント3,3′は、精度よく寸法管理された種々の形状の規格品が流通しており、その形状データも予め準備することができる。
メタルフレーム1は、本実施形態においては、ロストワックス法で義歯部の外観形状を鋳造したチタン素材1′(図7参照)から、アバットメント3,3′との接合部1a,1a′、およびスクリューの取り付け穴(スクリューホール)1b,1b′を5軸制御マシニングセンタ11(図5参照)で加工して製作する。
なお、本実施形態においては、メタルフレーム1の素材として、人体との親和性に優れたチタン合金を使用しているが、これに限定されるものではなく、ろう付けやセラミックの焼き付け等の加工がしやすい金合金であってもよい。また、鋳造で製作されたものに限定されず、板材やブロック材や焼結金属であってもよい。さらに、「素材」には、広く一次加工を施したものも含まれ、例えば、義歯部の外観形状を機械加工したようなものも含まれる。
また、図示は省略するがメタルフレーム1の外表面には、最終工程で歯冠色のセラミック、樹脂、および既成人工歯が前装されて、金属素材が見えないように被覆され、自然な歯の美観が形成される。
このステップでは、患者の口腔内の顎骨に埋め込まれたインプラント体2,2′にアバットメント3,3′が固定された状態を反映した計測マスタ4を準備し(図3参照)、この計測マスタ4を取り付け治具5の所定の位置に固定する(図4参照)。
なお、印象用のコーピング部材4a,4a′とは、口腔内のアバットメント3,3′の位置および傾きを正確に写し取るための部材であり、アバットメント3,3′の円錐台形状部3a,3a′と適合する形状の接合穴穴4a1,4a1′を備えたものが広く含まれ、例えば、鋳接用シリンダと同一の形状を有するもの等が使用できる。
また、取り付け治具5は、基板6aを介して、ロータリテーブル13(図5を併せて参照)に固定されている。このため、枠状の基体5bには、取り付け治具5を基板6aの所定の位置に固定するための取り付け穴5b1とノック穴5b2が形成されている。取り付け治具5が、基板6aを介して、ロータリテーブル13に固定されているのは、メタルフレーム1の素材1′と取り付け治具5′(図7参照)との位置関係を同じにするためであるが、この点はさらに後記する。
なお、基準球5a,5a,5aの位置は、コーピング部材4a,4a′の位置や数量等に起因する計測マスタ4の形状により適宜定めればよく、常に同じ位置に配置する必要はない。
なお、本実施形態においては、ロータリテーブル13に計測マスタ4を取り付けているが、これに限定されるものではなく、ロータリテーブル13ではなくサーキュラテーブル等の角度調整ができる「回転テーブル」であってもよい。
主軸12には、タッチプローブ15または工具18(図8(b),(c)参照)が装着されて、タッチプローブ15または工具18をX軸、Y軸、およびZ軸方向へ移動できるようにしている。
また、ロータリテーブル13は、垂直方向のC軸回りに回転する回転テーブルであり、ティルトテーブル14は、水平方向のA軸回りに揺動する回転テーブルである。そして、ロータリテーブル13およびティルトテーブル14の2軸を備えたことで、ワーク17の傾きを垂直方向および水平方向へ調整できるようにしている。
まず、コーピング部材4aにおける接合穴4a1の傾きのデータを取得する方法について説明する。傾きのデータは、図6(b)に示すように、コーピング部材4aの端面4a2(図6(c))に厚さが一定のゲージ4dを置いて、このゲージ4dの表面の傾きを計測することで求められる。
そして、求められた接合穴4a1の傾きのデータから、ロータリテーブル13(図5)のC軸およびティルトテーブル14(図5)のA軸回りの補正量(割り出し角度)を算出する。この算出された補正量に基づいて、C軸およびA軸回りにロータリテーブル13およびティルトテーブル14を回転させ、法線ベクトルN(図6(b))の向きを垂直にしてゲージ4dの表面が主軸12に対して垂直になるように補正する(図6(c))。
主軸に対して垂直になった状態のゲージ4dの表面にタッチプローブ15を接触させて、Z座標を計測し、コーピング部材4aにおける端面4a2の高さの位置データを取得する。
一方、コーピング部材4aの接合穴4a1の位置は、図6(c)に示すように、接合穴4a1の内周面の4点にタッチプローブ15を接触させて、この4点のX,Y座標を計測し、NC装置16(図5)内の演算部により接合穴4a1の中心のX,Y座標を算出して取得する。
すなわち、補正後に再度、タッチプローブ15を接触させて、3点(P1,P2,P3)のX,Y,Z座標を取得し、Z座標の偏差が要求される所定の値以下になるまで前記の手順を繰り返すことで精度を高めることが可能である。
また、本実施形態においては、演算処理上の便宜から、接合穴4a1の端面4a2(図6(c))に厚さが一定のゲージ4dを置いて、このゲージ4dの表面にタッチプローブ15を接触させることで、コーピング部材4aの端面4a2に円周上の3点(P1,P2,P3)のX,Y,Z座標を取得しているが、これに限定されるものではなく、同一平面上の3点のデータであれば、傾きを求めることは可能である。
具体的には、前記したように、計測マスタ4は3つの基準球5a,5a,5aを基準として所定の位置に取り付けられている(図4参照)。したがって、同様に素材1′についても、反転治具6の所定の位置に固定された3つの基準球5a′,5a′,5a′を基準として計測マスタ4と同じ位置に配置することで位置関係を同じにすることができる。
なお、3つの基準球5a,5a,5aを基準とした計測マスタ4の位置を計測して、この計測された位置と同じ位置に、3つの基準球5a′,5a′,5a′を基準として素材1′を固定してもよい。
また、取り付け治具5′は、計測マスタ4の取り付け治具5と同じものを使用し、中央部が大きく貫通した枠状の基体5b′と、この基体5b′の底部に固定された底板5c′と、素材1′を支持するベース5d′と、ベース5d′の所定の位置に固定された3つの基準球5a′,5a′,5a′と、を備えて構成されている。そして、枠状の基体5b′には、取り付け治具5′を基板6a上で精度よく反転できるように、取り付け穴5b1′とノック穴5b2′が形成されている。なお、基板6aは、ロータリテーブル13(図5を併せて参照)の所定の位置に固定されている。
このため、取り付け治具5′の所定の位置に固定された3つの基準球5a′,5a′,5a′を基準として素材1′における2ヶ所のスクリューホール1b,1b′の位置を調整することで、取り付け治具5における計測マスタ4と取り付け治具5′における素材1′とを同じ位置に取り付けることができる。
一方、基板6aをロータリテーブル13(図5参照)に固定し、この基板6aに計測マスタ4の取り付け治具5および素材1′の取り付け治具5′を固定することで、ロータリテーブル13上の同じ位置に計測マスタ4および素材1′を取り付けることができる。
図8はメタルフレームの素材における接合部を加工する様子を示す断面図であり、(a)はロータリテーブルが水平な状態を示し、(b)は素材における図面上で左側の接合部を加工する様子を示し、(c)は素材における図面上で右側の接合部を加工する様子を示す。なお、図8においては、説明の便宜上、ロータリテーブル13のみを図示しティルトテーブル14(図5参照)を図示していないが、ティルトテーブル14についてもロータリテーブル13と同様の制御が行なわれる。
まず、接合部1aを加工するため、計測マスタ4(図4)から取得した接合部1aの位置データに基づいて、工具18を加工開始位置までX,Y,Z軸に沿って移動させる。
そして、接合部1aの傾きのデータに基づいて、C軸回りにロータリテーブル13(図5)を回転させ、A軸回りにティルトテーブル14(図5)を回転させて、接合部1aの傾きを主軸12(図5)の方向(Z軸方向)と合致させる。
このようにして、加工位置および傾きを調整した後に、計測マスタ4から取得した位置および傾きのデータから、NC装置16(図5)内の図示しない演算部で接合部1aの形状データを加味した加工データを算出し、この加工データに基づいて接合部1aを加工する(図8(b)参照)。
同様に、接合部1a′についても、その加工位置および傾きを調整しながら、形状データを加味した加工データに基づいて加工する(図8(c)参照)。
そして、加工位置および傾きを合致させた状態で、計測マスタ4から取得した位置および傾きのデータから、NC装置16(図5)内の図示しない演算部でスクリューホール1b′の形状データを加味した加工データを算出し、この加工データに基づいてスクリューホール1b′を加工する(図9(b)参照)。
同様に、スクリューホール1bについても、その加工位置および傾きを主軸12の方向(Z軸方向)と合致させた状態で、形状データを加味した加工データに基づいて加工する(図9(c)参照)。
すなわち、スクリュー固定式のメタルフレーム1において、口腔内の顎骨に埋め込まれたインプラント体2,2′にアバットメント3,3′が固定された状態を反映した計測マスタ4から、アバットメント3,3′の位置および傾きのデータを取得することで、簡易に精度の高いデータを取得することができる。
また、5軸制御マシニングセンタ11の主軸12に装着されたタッチプローブ15でアバットメント3,3′の位置および傾きのデータを取得し、同じ5軸制御マシニングセンタ11で、アバットメント3,3′とメタルフレーム1との接合部1a,1a′およびスクリューホール1b,1b′を加工することで、段取り時間を短縮するとともに、温度や機械精度等の環境条件を整合させて、さらに加工精度を高めることができる。
しかも、高価な鋳接用シリンダ35,35′(図10参照)を使用しないため、部品コストを低減することができるとともに、鋳造時における鋳接用シリンダ35,35′の位置ずれのおそれもない。
例えば、本実施形態においては、測定器として接触式のタッチプローブ15を使用したが、これに限定されるものではなく、ダイヤルインジケータ等の接触式位置センサを使用してもよく、非接触式のレーザ計測器を使用することもできる。
1′ 素材
1a,1a′ 接合部
1b,1b′ スクリューホール(スクリューの取り付け穴)
1c スクリュー
2,2′ インプラント体
3,3′ アバットメント
4 計測マスタ
5,5′ 取り付け治具
6 反転治具
11 5軸制御マシニングセンタ(加工機)
12 主軸
13 ロータリテーブル(回転テーブル)
14 ティルトテーブル
15 タッチプローブ(測定器)
Claims (4)
- 人工歯根となる複数のインプラント体、またはこのインプラント体に固定されたアバットメントにスクリューで取り付けられる義歯部を構成するインプラント上部構造物の製作方法であって、
(a)患者の口腔内の顎骨に埋め込まれた前記インプラント体の状態、またはこのインプラント体に前記アバットメントが固定された状態を反映した計測マスタを準備するステップと、
(b)この計測マスタを少なくとも5軸を備えた加工機の回転テーブルに取り付けて、前記加工機の主軸に装着された測定器で前記各インプラント体または前記アバットメントの位置および傾きのデータを取得するステップと、
(c)前記回転テーブルから前記計測マスタを取り外して、この計測マスタと同じ位置に予め準備された前記インプラント上部構造物の素材を取り付けるステップと、
(d)前記(b)のステップで取得したデータから算出した前記インプラント体または前記アバットメントと、前記インプラント上部構造物との接合部または前記スクリューの取り付け穴の加工データに基づいて、前記各インプラント体または前記アバットメントに対応する加工位置および傾きを調整して、前記主軸に装着された加工具で、前記素材における一方の面から前記接合部または前記スクリューの取り付け穴を加工するステップと、
(e)前記素材を反転して、前記加工データに基づいて、前記各インプラント体に対応する加工位置および傾きを調整して、前記加工具で、前記素材における他方の面から前記スクリューの取り付け穴または前記接合部を加工するステップと、
を含むことを特徴とするインプラント上部構造物の製作方法。 - 前記(e)のステップにおいて、前記素材を枠状の反転治具に固定して、この反転治具を前記回転テーブル上で反転することで、前記素材を反転することを特徴とする請求項1に記載のインプラント上部構造物の製作方法。
- 前記(b)のステップにおいて、前記計測マスタを取り付け治具の所定の位置に固定した状態で前記回転テーブルに取り付けるとともに、
前記(c)のステップにおいて、前記素材を前記反転治具における前記計測マスタの位置に対応する位置に固定することで、前記素材を前記計測マスタと同じ位置に取り付けることを特徴とする請求項2に記載のインプラント上部構造物の製作方法。 - 前記素材は、鍛造または鋳造により製作されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインプラント上部構造物の製作方法。
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