JP2007210592A - 自動制動制御装置 - Google Patents

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Toshiki Ezoe
俊樹 江副
Shuji Narata
修治 奈良田
Sunao Ichinose
直 一ノ瀬
Koichi Okamoto
浩一 岡本
Hirokazu Okuyama
宏和 奥山
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Abstract

【課題】トラックやバスにおける自動制動制御を実現する。
【解決手段】対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出されるTTCが設定値を下回ったときに自動的に、時系列的に複数段階にわたり制動力または制動減速度を徐々に増大させる段階的な制動制御を行う。さらに、運転者が乗客や貨物の種別または重量に応じて減速の緩急の異なる制動パターンを選択できるようにする。さらに、運転者による車間距離警報の設定距離に応じて運転者の心理状態を把握し、これにより最適な制動パターンを選択する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、貨物や乗客を輸送するための大型車(トラック、バス)に利用する。
自動車の電子制御化は、日進月歩で進歩し、これまでは運転者の判断のみに頼っていた事象についても車載したコンピュータによって行われるようになった。
その一つの例として、先行車と自車との間の距離(車間距離)をレーダによって監視し、車間距離が異常に接近した場合には、自動的に適切な制動制御を行い、万が一の衝突時に、その被害を小さく抑えるという自動制動制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−31967号公報
上述した自動制動制御装置は、乗用車においては既に実用化されつつあるが、同様の機能を、貨物や乗客を輸送するための大型車(トラック、バス)に利用しようとしたときに、解決しなければならない問題がある。
すなわち、大型車は乗用車と比較して質量がきわめて大きく、また、運転者自身の安全の他に、乗客や貨物の安全を確保しなければならず、乗用車の自動制動制御で行われているような単純な急制動制御だけでは所期の目的を達成することは困難であり、乗用車の場合と比較してより高度な自動制動制御を行う必要がある。しかし、そのような手段が確立されていないため、トラックやバスにおける自動制動制御装置は未だ実用化されていない。
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、トラックやバスにおける自動制動制御を実現することができる自動制動制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、自車の進行方向に有る対象物との距離を含むセンサ出力に基づき運転操作がなくとも自動的に制動制御を行う制御手段を備えた自動制動制御装置である。
ここで、本発明の特徴とするところは、前記制御手段は、前記センサ出力により得られた前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出される前記対象物と自車とが所定距離以下となるまでに要する時間の予測値が設定値を下回ったときに自動的に、時系列的に複数段階にわたり制動力または制動減速度を徐々に増大させる段階的な制動制御を行う段階的制動制御手段を備え、前記段階的な制動制御を実行するための異なる複数の制動パターンが設けられ、前記段階的制動制御手段は、操作入力に応じて前記異なる複数の制動パターンのいずれかを選択する手段を備えたところにある。
前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出される前記対象物と自車とが所定距離以下となるまでに要する時間の予測値とは、例えば、対象物と自車とが衝突するまでに要する時間の予測値(以下では、TTC(Time To Collision)と呼ぶ)である。
すなわち、本発明の自動制動制御装置は、段階的な制動制御を行うことにより、トラックやバスなどの大型車においても車両の安定性を保ちつつ、衝突の際の衝撃を和らげることができる装置である。
さらに、本発明では、段階的な制動制御を実行するための制動パターンを複数用意し、運転者が制動パターンを選択することができることを特徴とする。
これにより、運転者は、乗客や貨物の種別や重量に応じて制動パターンを選択することができる。例えば、乗客に老人や幼児などが多く含まれている場合、あるいは、貨物が精密機械や美術品などの場合には、比較的緩い減速となる制動パターンを選択することができる。または、乗客や貨物の重量が大きい場合には、重量が小さい場合と比較して比較的緩い減速となる制動パターンを選択することにより、車両の安定性を高く保つことができる。
例えば、この異なる複数の制動パターンの積分値はそれぞれ同一であり、それぞれの制動パターンにおける最終段階の制動力または制動減速度がそれぞれ異なるようにしておくことにより、減速の緩急の度合い応じて任意の制動パターンを選択することができる。
また、前記制動パターンには、前記段階的な制動制御の内、最終段階以外の他の段階では、制動制御を行う代わりに運転者に対して警告を報知するパターンを含むことができる。
このようなパターンは、運転者に注意を促し、注意を促された運転者が運転者自身により自車の運転操作を行うことを前提としたパターンであり、自動制動制御は、あくまでも運転者自身による運転操作の補助的な手段であるという考え方に基づいている。複数の制動パターンの選択肢の中に、このような考え方に基づいた制動パターンを含むことは、制動パターン選択の自由度を高める意味において有用である。
また、先行車と自車との間の車間距離に応じて警報を発出する車間距離警報手段を備え、この車間距離警報手段には、警報を発出する車間距離の長さを運転者の操作により設定する手段が設けられ、前記操作入力は、この設定する手段の設定操作と連動することもできる。
すなわち、前記車間距離警報手段が警報を発出する車間距離の長さを運転者が短めに設定するという心理状態を分析してみると、それは運転者の前記車間距離警報手段への依存心の低さを表している。反対に、前記車間距離警報手段が警報を発出する車間距離の長さを運転者が長めに設定するという心理状態を分析してみると、それは運転者の前記車間距離警報手段への依存心の高さを表している。
よって、自動制動制御における制動パターン選択についても前記車間距離警報手段への運転者の依存心の高低を反映させ、依存心が高い場合には、制動パターンの選択についても早期に起動する制動パターンを選択する。反対に、依存心が低い場合には、制動パターンについても運転者自身による運転操作を優先した制動パターンを選択する。
運転者自身による運転操作を優先した制動パターンとは、例えば、前述したような、段階的な制動制御の内、最終段階以外の他の段階では、制動制御を行う代わりに運転者に対して警告を報知するパターンを含む制動パターンである。
また、自車速が所定値未満であり、操舵角あるいはヨーレイトのとる値が所定範囲外であるときには、前記段階的制動制御手段の起動を禁止する手段を備えることができる。
すなわち、本発明の自動制動制御装置が行う段階的制動制御は、例えば、制動制御開始以前の自車速が60km/h以上であり、車線変更中や急カーブ走行中などのような大きなハンドル操作を行っていない状態での使用を想定しているため、それ以外の走行状態では、段階的制動制御の起動を制限することができる。
例えば、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満であれば、車両の有する運動エネルギは少ないため、従来から乗用車に適用されているような単純な急制動制御を行っても支障はないので、段階的制動制御の起動を制限する。また、例えば、制動制御開始以前の操舵角が+30度以上あるいは−30度以下であれば、これは車線変更中や急カーブ走行中であるので、段階的制動制御の適用事象外であり起動を制限する。この場合には、操舵角の代わりにヨーレイトを用いてもよい。
本発明によれば、トラックやバスにおける自動制動制御を実現することができる。特に、減速の緩急に応じて任意の制動パターンを選択することができるため、乗客や貨物の種別や重量に適合した自動制動制御を実現することができる。さらに、運転者の心理状態に適した制動パターンの選択を行うことができる。
(第一実施例)
本発明第一実施例の自動制動制御装置を図1ないし図8を参照して説明する。図1は第一実施例の制御系統構成図である。図2は第一実施例の制動制御ECU(Electric Control Unit)の制御手順を示すフローチャートである。図3は制動制御ECUが有する空積時の第一の制動パターンを示す図である。図4は制動制御ECUが有する半積時の第一の制動パターンを示す図である。図5は制動制御ECUが有する定積時の第一の制動パターンを示す図である。図6は制動制御ECUが有する本格制動パターンを示す図である。図7は異なる二つの制動パターンを比較する図である。図8は制動制御ECUが有する空積時の第二の制動パターンを示す図である。
図1に示すように、制動制御ECU4、ゲートウェイECU5、メータECU6、エンジンECU8、軸重計9、EBS(Electric Breaking System)_ECU10はVehicleCAN(J1939)7を介してそれぞれ接続される。また、制動制御ECU4には、制動パターン切替スイッチ14が接続され、制動パターン記憶部41に記憶されている複数の制動パターンから所望する制動パターンを選択するように、制動パターン選択部40に対して制動パターン切替指示を与えることができる。
また、ステアリングセンサ2、ヨーレイトセンサ3、車速センサ13は、ゲートウェイECU5を介してVehicleCAN(J1939)7にそれぞれ接続され、これらのセンサ情報は、制動制御ECU4に取り込まれる。また、ブレーキ制御は、EBS_ECU10がブレーキアクチュエータ11を駆動することによって行われる。なお、EBS_ECU10に対するブレーキ指示は、運転席(図外)のブレーキ操作および制動制御ECU4によって行われる。運転者によるブレーキ操作の情報を含むブレーキ情報もEBS_ECU10が出力して制動制御ECU4に取り込まれる。エンジンECU8は、エンジン12の燃料噴射量制御その他のエンジン制御を行う。なお、エンジンECU8に対する噴射量制御指示は運転席のアクセル操作によって行われる。また、制動制御ECU4により出力された警報表示やブザー音がメータECU6により運転席の表示部(図示省略)に表示される。ステアリングセンサ2以外の操舵に関連する制御系統は本発明とは直接関係が無いので図示を省略した。
第一実施例は、図1に示すように、自車の進行方向に有る先行車あるいは落下物などの対象物との距離を測定するミリ波レーダ1、操舵角を検出するためのステアリングセンサ2、ヨーレイトを検出するためのヨーレイトセンサ3、自車速を検出するための車速センサ13などのセンサ出力に基づき運転操作がなくとも自動的に制動制御を行う制動制御ECU4を備えた自動制動制御装置である。
制動制御ECU4は、ミリ波レーダ1および車速センサ13からのセンサ出力により得られた前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出されるTTCが設定値を下回ったときに自動的に、時系列的に複数段階にわたり制動力を徐々に増大させる段階的な制動制御を行う。この段階的制動制御は、図3(b)に示すように、時系列的に三段階にわたり制動力を徐々に増大させる。
図3(b)の例では、まず、「警報」と記された第一段階で、0.1G程度の制動をTTC2.4秒から1.6秒までかける。この段階では、未だ、いわゆる急制動がかかった状態にはなっておらず、ストップランプが点灯することにより後続車に対し、これから急制動が行われることを知らせることができる。次に、「拡大領域制動」と記された第二段階で、0.3G程度の制動をTTC1.6秒から0.8秒までかける。最後に、「本格制動」と記された第三段階で、最大の制動(0.5G程度)をTTC0.8秒から0秒までかける。
なお、運転者が上記に示した制動力以上の強い制動操作を行った場合には、より強い制動力が優先して働くようにする。
また、本実施例では図3〜図5に示すように、制動制御ECU4は、積載貨物や乗客の重量に応じて制動パターンを変更する制動パターン選択部40を含む。変更する方法としては、制動制御ECU4の制動パターン記憶部41に、予め「空積時」、「半積時」、「定積時」における制御パターンを複数記憶しておき、制動パターン選択部40は、重量に応じてこれらの制動パターンから適合(または近似)する制動パターンを選択することにより実現できる。積載貨物や乗客の重量情報は、図1に示す軸重計9によって得られ、制動制御ECU4に取り込まれる。
なお、以下の説明では、先行車を対象として説明するが、本実施例の自動制動制御装置は、道路上の落下物などに対しても有効である。
本実施例では、制動制御ECU4内の制動パターン記憶部41に、上記「空積時」、「半積時」、「定積時」における制御パターンの他に、段階的な制動制御を実行するための異なる二つの制動パターンが記憶されている。図3〜図6に示した制動パターンを第一の制動パターンとし、図8に示した制動パターンを第二の制動パターンとする。なお、図8(b)には比較のために第一の制動パターンを破線により第二の制動パターンに重ね合わせて図示した。
図3〜図5に示した制動パターンは各段階の開始タイミングがそれぞれ異なるが、図8に示した制動パターンは各段階の開始タイミングと共に「拡大領域制動」および「本格制動」における制動力(制動G)が小さい。ただし、図8は図3に示した空積時に選択される第一の制動パターンに対応する第二の制動パターンである。図4(半積時)または図5(定積時)における第一の制動パターンについてもそれぞれ第二の制動パターンが用意されるが、ここでは説明をわかりやすくするために、図3(空積時)の第一の制動パターンに対する第二の制動パターンのみについて説明する。図4、図5の第一の制動パターンについても当該説明に準ずるものとする。
制動制御ECU4の制動パターン選択部40は、制動パターン切替スイッチ14からの操作入力に応じて第一または第二の制動パターンのいずれかを選択する。第一および第二の制動パターンの積分値はそれぞれ同一であり、それぞれの制動パターンにおける最終段階の制動力がそれぞれ異なる。
すなわち、図7に示すように、「本格制動」における制動Gは第一の制動パターンでは0.5Gであるのに対し、第二の制動パターンでは0.3Gである。第一および第二の制動パターンにおける積分値は同じであるから、必然的に「警報」の開始タイミングは、第一の制動パターンよりも第二の制動パターンの方が早期(2.4秒→3秒)になっている。また、「拡大領域制動」についても第一の制動パターンでは開始タイミングは1.6秒であり制動Gは0.3Gであるのに対し、第二の制動パターンでは開始タイミングは2.5秒であり、制動Gは0.2Gである。また「本格制動」における開始タイミングも第一の制動パターンでは0.8秒であるのに対し、第二の制動パターンでは1秒になっている。
このように、第一の制動パターンと比較すると第二の制動パターンの方が減速が緩くなっている。運転者はこのような制動パターンの特性の違いを認識し、乗客や貨物の種別や重量に応じて制動パターンを予め選択することができる。例えば、乗客に老人や幼児などが多く含まれている場合、あるいは、貨物が精密機械や美術品などの場合には、比較的緩い減速となる制動パターンを選択することができる。または、乗客や貨物の重量が大きい場合には、重量が小さい場合と比較して比較的緩い減速となる制動パターンを選択することにより、車両の安定性を高く保つことができる。
また、重量に応じて制動パターンを切替える場合は、前述した図3〜図5に示す「空積時」、「半積時」、「定積時」における制御パターンの自動切替と連動させて併用することもできる。すなわち、図3〜図5に示した制動パターンと図8に示した制動パターンとを併用すると、併用しない場合と比較して各段階の開始タイミングが早くなると共に「警告」および「拡大領域制動」における制動力(制動G)が小さくなる。また、貨物種別が固定的であれば、制動パターン切替スイッチ14を設けず、初めから第二の制動パターンのみを採用することもできる。
また、自車速が60km/h未満であり、操舵角が+30度以上あるいは−30度以下であるときには、制動制御ECU4は、段階的制動制御の起動を禁止する。なお、操舵角に代えてヨーレイトを用いることもできる。
すなわち、本実施例の自動制動制御装置が行う段階的制動制御は、自車速が60km/h以上であり、車線変更中や急カーブ走行中などのような大きなハンドル操作を行っていない状態での使用を想定しているため、それ以外の走行状態では、段階的制動制御の起動を制限することができる。
また、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満であれば、車両の有する運動エネルギは少ないため、従来から乗用車に適用されているような単純な急制動制御を行っても支障はなく、段階的制動制御を実施する有用性は低いので、段階的制動制御の起動を制限する。または、制動制御開始以前の操舵角が+30度以上あるいは−30度以下であれば、これは車線変更中や急カーブ走行中であるので、段階的制動制御の適用事象外であり段階的制動制御の起動を制限する。この場合には、操舵角の代わりにヨーレイトを用いてもよい。
本実施例では、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満であり15km/h(自動制動制御(本格制動制御のみ)の有用性が認められる最低速度)以上である場合には、段階的制動制御は行わないが、図6に示すように、図3(b)〜図5(b)あるいは図8(b)に示す本格制動制御のみは実施することとする。このような本格制動制御のみを実施する場合は、乗用車に用いられている従来の自動制動制御と同等の制動制御を適用することができる。なお、このような従来と同等の自動制動制御を適用する場合には車線変更中や急カーブ走行中であるか否かを判断するステップは必要ない。
次に、本実施例の自動制動制御装置の動作を図2のフローチャートを参照しながら説明する。図2は空積時(図3)の第一の制動パターンを例にとって説明を行うが、半積時(図4)または定積時(図5)または第二の制動パターン(図8)においても図2のフローチャートの手順に準じる。図2に示すように、制動制御ECU4は、先行車との車間距離および先行車の車速をミリ波レーダ1により測定して監視する。また、自車速を車速センサ13により測定して監視する。さらに、軸重計9により積載貨物や乗客の重量を測定して監視する。制動制御ECU4の制動パターン選択部40は、当該重量の測定結果に基づき制動パターン(図3〜図5、図8あるいはこれらの併用)のいずれかを予め選択する(S1)。以下の説明は、図3の制動パターンを選択した例である。
続いて、制動制御ECU4は、車間距離、自車速、先行車の車速によりTTCを計算する(S2)。計算方法は、
車間距離/(自車速−先行車の車速)
である。制動制御ECU4は、制動制御開始以前の自車速が60km/h以上であり(S3)、操舵角が+30度以下であり−30度以上であり(S4)、TTCが図3(a)に示す(1)の領域にあれば(S5)、「警報」制動制御を実行する(S8)。また、TTCが図3(a)に示す(2)の領域にあれば(S6)、「拡大領域制動」制御を実行する(S9)。また、TTCが図3(a)に示す(3)の領域にあれば(S7)、「本格制動」制御を実行する(S10)。
また、制動制御開始以前の自車速が60km/h未満15km/h以上であり(S3、S11)、TTCが図3(c)に示す(4)の領域にあれば(S12)、制動制御ECU4は、運転者に対して先行車との相対距離が近いことを報知する(S13)。報知は、警報表示やブザー音により行う。さらに、TTCが図3(c)に示す(5)の領域にあれば(S14)、「本格制動」制御を実行する(S10)。
なお、ステアリングセンサ2からの操舵角の代わりにヨーレイトセンサ3からのヨーレイトを利用することもできる。あるいは、操舵角とヨーレイトを併用してもよい。
ここで、図3〜図5、図8について説明する。図3〜図5、図8における直線c、c′、f、iは、操舵回避限界直線と呼ばれるものである。また、図3〜図5における曲線B、B′、D、Fは、制動回避限界曲線と呼ばれるものである。
すなわち、操舵回避限界直線とは、障害物までの一つの相対距離および障害物との一つの相対速度の関係において、所定のTTC以内にハンドル操作によって衝突を回避可能な限界を示す直線である。また、制動回避限界曲線とは、障害物までの一つの相対距離および障害物との一つの相対速度の関係において、所定のTTC以内に制動操作によって衝突を回避可能な限界を示す曲線である。
図3〜図5、図8において、これらの直線または曲線の下側の領域の内、双方が共に関わる領域では、もはやハンドル操作によってもブレーキ操作によっても衝突を回避することはできない。
例えば、図3の空積時の例では、直線cは、TTCが0.8秒に設定されている。本実施例では、操舵回避限界直線cの上側に、TTCが1.6秒である場合の直線bを設け、TTCが2.4秒である場合の直線aを設ける。また、TTCが0.8秒に設定された制動回避限界曲線Bの上側にTTCが1.6秒に設定された曲線Aを設ける。
当初の車両の状態は、図3の黒点Gに示す障害物との相対距離および相対速度を有している。制動制御開始以前の自車速が60km/h以上であるときに、次第に相対距離が短くなり、直線aの位置に来たときには、警報モードとなる(領域(1))。警報モードでは、0.1G程度の制動をTTC2.4秒〜1.6秒までかける。この期間は、ストップランプを点灯させ、後続車にブレーキをかけることを知らせる意義がある。さらに相対速度が下がり、直線bの位置に来たときには、拡大領域制動モードとなる(領域(2))。拡大領域制動モードでは、0.3G程度の制動をTTC1.6秒〜0.8秒までかける。直線cの位置に来たときには、本格制動モードとなる(領域(3))。本格制動モードでは、最大の制動(0.5G程度)をTTC0.8秒〜0秒までかける。図2のステップS2の計算によれば、このときに衝突が起こることになる。しかし、ステップS2の計算結果よりも実際のTTCは長くなる。
すなわち、本発明が対象とする自動制動制御装置におけるTTCの計算では、精密な距離測定や複雑な演算処理を極力省き、汎用の簡易な距離測定装置(例えば、ミリ波レーダ)や演算装置を用いることを前提としている。このような配慮は、車両の製造コストあるいは維持費を低く抑えるために有用である。
よって、厳密には、対象物である先行車と自車とは、制動(減速)によって等加速度運動を行っているのであるから、TTC計算も等加速度運動に基づき計算しなければならないところを、単に等速運動を行っているものとしてTTCを計算することにより、精密な距離測定や複雑な演算処理を省いている。
また、このような等速運動とみなした計算を行うことにより、計算されたTTCの値は実際のTTCの値よりも小さくなるが、これは安全側への誤差であるから容認しても何ら支障はない。
さらに、制動制御開始以前の自車速が15km/h以上であり60km/h未満であるときには、次第に相対距離が短くなり、直線bの位置に来たときには、報知モードとなる(領域(4))。報知モードでは、運転者に対して警報表示やブザー音によって、障害物との相対距離が短くなっていることを知らせる。直線cの位置に来たときには、本格制動モードとなる(領域(5))。本格制動モードでは、最大の制動(0.5G程度)をTTC0.8秒〜0秒までかける。
また、図4は半積時の例であり、図5は定積時の例であるが、等しい制動力同士で比べれば、積載貨物や乗客の重量が増すにつれて制動距離も長くなるため、操舵回避限界直線および制動回避限界曲線も図の上方にそれぞれ移動する。これにより、領域(1)、(2)、(3)
、(4)、(5)の面積は、積載貨物や乗客の重量に応じて大きくなる。
図3における直線a〜cは、図4における直線d〜f、図5における直線g〜i、図8における直線a′〜c′に対応し、図3における曲線A、Bは、図4における曲線C、D、図5における曲線E、F、図8における曲線A′、B′に対応し、図3、図8における黒点Gは、図4における黒点H、図5における黒点Iに対応する。
(第二実施例)
第二実施例を図9ないし図11を参照して説明する。図9は第二実施例の制御系統構成図である。図10は第一の制動パターンと第三の制動パターンとを比較する図である。図11は第二実施例の制動制御ECU4における制動パターン選択手順を示すフローチャートである。
第二実施例では、図9に示すように、オートクルーズECU18を備え、オートクルーズECU18内には車間距離警報部17を備える。ここで、簡単にオートクルーズ機能について説明を行うと、オートクルーズ機能は、運転者の操作入力に従って、設定された一定の速度を、ブレーキ操作またはアクセル操作が行われるまで、自動的に維持する機能である。第二実施例のオートクルーズECU18には車間距離警報部17が含まれており、この車間距離警報部17は、オートクルーズ機能がON状態で走行中に、先行車との車間距離が設定距離以下になったら運転者に対して警報を発出することによって、運転者によるオートクルーズ機能の解除を促す、または、自動的にオートクルーズ機能をOFF状態とする。
さらに、車間距離警報部17には、オートクルーズ機能切替スイッチ16を用いて、警報を発出する車間距離の長さを運転者の操作により設定することができる。第二実施例では、制動制御ECU4は、この設定操作により制動パターンの切替えを行う。
また、ミリ波レーダ1のレーダ情報は、制動制御ECU4およびオートクルーズECU18にそれぞれ入力される。また、オートクルーズ切替スイッチ16からのオートクルーズ機能切替指示は、制動制御ECU4およびオートクルーズECU18に入力される。また、オートクルーズECU4からの車間距離警報は、メータECU6を介して運転席の表示部(図示せず)に表示される。
第二実施例では、図10(b)および(c)に示すように、段階的な制動制御の内、最終段階の「本格制動」以外の他の段階では、制動制御を行う代わりに運転者に対して警告を報知する第三の制動パターンを含む。この第三の制動パターンは、制動パターン記憶部41に記憶される。図10(b)および(c)の例では、報知を行うのは、図10(a)に示した第一の制動パターンの「拡大領域制動」の直前あたりのタイミングである。また、第三の制動パターンにおける「本格制動」は、第一の制動パターンにおける「本格制動」よりもさらにTTCが小さい0.6秒くらいから開始する。
前述したように、第三の制動パターンは、運転者に注意を促し、注意を促された運転者が運転者自身により自車の運転操作を行うことを前提とした制動パターンであり、自動制動制御は、あくまでも運転者自身による運転操作の補助的な手段であるという考え方に基づいている。
次に、第二実施例の制動制御ECU4の制動パターン選択手順を、図11を参照して説明する。制動制御ECU4の制動パターン選択部40は、図11に示すように、オートクルーズ機能切替スイッチ16を用いて行われるオートクルーズ機能切替指示を監視しており(S21)、オートクルーズ機能がOFF状態であるときには(S22)、図10(a)に示す第一の制動パターンを選択する(S25)。オートクルーズ機能がON状態であり、車間距離設定が「近」であれば(S23)、前述したように、運転者の車間距離警報部17への依存心の低さを表しているので、制動パターン選択についてもその心理状態を反映させ、第一の制動パターンにおける「警報」および「拡大領域制動」の段階では運転者に対する報知のみを行い、「本格制動」のみを実行する第三の制動パターンを選択する(S26)。反対に、オートクルーズ機能がON状態であり、車間距離設定が「遠」であれば(S23)、運転者の車間距離警報部17への依存心の高さを表しているので、制動パターン選択についてもその心理状態を反映させ、例えば、第一実施例において図7および図8で説明した第二の制動パターンを選択する(S24)。第二の制動パターンは、第一の制動パターンと比較してTTCが長めの早期段階から自動制動制御が起動する制動パターンであり、当該心理状態に適している。
(第三実施例)
第三実施例を図12および図13を参照して説明する。図12は第三実施例の制御系統構成図である。図13は第三実施例の制動制御ECU4における制動パターン選択手順を示すフローチャートである。第三実施例は、第一および第二実施例を併用した実施例である。
第二実施例と第三実施例との差異のみについて説明すると、図12において、第二実施例の制御系統構成に、第一実施例で用いた制動パターン切替スイッチ14が追加されている。これにより、図13に示すように、オートクルーズ機能がOFF状態のときには、運転者が制動パターン切替スイッチ14を用いて選択した制動パターンが選択される(S35)。その他の動作は、第二実施例と同じである。第三実施例では、第二実施例と同じように、運転者の心理状態に適した制動パターンの選択を行いながら、第一実施例と同じように、運転者は制動パターンの特性の違いを認識し、乗客や貨物の種別や重量に応じて制動パターンを予め選択することができる。
本発明によれば、トラックやバスにおける自動制動制御を実現することができ、交通安全に寄与することができる。
第一実施例の制御系統構成図。 第一実施例の制動制御ECUの制御手順を示すフローチャート。 制動制御ECUが有する空積時の第一の制動パターンを示す図。 制動制御ECUが有する半積時の第一の制動パターンを示す図。 制動制御ECUが有する定積時の第一の制動パターンを示す図。 制動制御ECUが有する本格制動パターンを示す図。 第一の制動パターンと第二の制動パターンとを比較する図。 制動制御ECUが有する空積時の第二の制動パターンを示す図。 第二実施例の制御系統構成図。 第一の制動パターンと第三の制動パターンとを比較する図。 第二実施例の制動制御ECUにおける制動パターン選択手順を示すフローチャート。 第三実施例の制御系統構成図。 第三実施例の制動制御ECU4における制動パターン選択手順を示すフローチャート
符号の説明
1 ミリ波レーダ
2 ステアリングセンサ
3 ヨーレイトセンサ
4 制動制御ECU
5 ゲートウェイECU
6 メータECU
7 VehicleCAN(J1939)
8 エンジンECU
9 軸重計
10 EBS_ECU
11 ブレーキアクチュエータ
12 エンジン
13 車速センサ
14 制動パターン切替スイッチ
16 オートクルーズ機能切替スイッチ
17 車間距離警報部
18 オートクルーズECU
40 制動パターン選択部
41 制動パターン記憶部

Claims (5)

  1. 自車の進行方向に有る対象物との距離を含むセンサ出力に基づき運転操作がなくとも自動的に制動制御を行う制御手段を備えた自動制動制御装置において、
    前記制御手段は、前記センサ出力により得られた前記対象物と自車との相対距離および相対速度とに基づき導出される前記対象物と自車とが所定距離以下となるまでに要する時間の予測値が設定値を下回ったときに自動的に、時系列的に複数段階にわたり制動力または制動減速度を徐々に増大させる段階的な制動制御を行う段階的制動制御手段を備え、
    前記段階的な制動制御を実行するための異なる複数の制動パターンが設けられ、
    前記段階的制動制御手段は、操作入力に応じて前記異なる複数の制動パターンのいずれかを選択する手段を備えた
    ことを特徴とする自動制動制御装置。
  2. 前記異なる複数の制動パターンの積分値はそれぞれ同一であり、それぞれの制動パターンにおける最終段階の制動力または制動減速度がそれぞれ異なる請求項1記載の自動制動制御装置。
  3. 前記制動パターンには、前記段階的な制動制御の内、最終段階以外の他の段階では、制動制御を行う代わりに運転者に対して警告を報知するパターンを含む請求項1記載の自動制動制御装置。
  4. 先行車と自車との間の車間距離に応じて警報を発出する車間距離警報手段を備え、
    この車間距離警報手段には、警報を発出する車間距離の長さを運転者の操作により設定する手段が設けられ、
    前記操作入力は、この設定する手段の設定操作と連動する
    請求項1記載の自動制動制御装置。
  5. 自車速が所定値未満であり、操舵角あるいはヨーレイトのとる値が所定範囲外であるときには、前記段階的制動制御手段の起動を禁止する手段を備えた請求項1ないし4のいずれかに記載の自動制動制御装置。
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