JP2007210245A - インクジェットヘッド駆動装置及び駆動方法 - Google Patents

インクジェットヘッド駆動装置及び駆動方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ノズルからの吐出不良に起因した描画不良の発生を防止して、高精度な画像記録を長期に渡って維持できるインクジェットヘッド装置を提供すること。
【解決手段】記録媒体sの幅方向に整列配置されたマルチドロップ方式の液滴吐出ノズルによりライン単位で画像記録を行うフルライン型のインクジェットヘッド駆動装置において、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データd2が規定回数以上連続するノズルでは、適時、1滴の吐出で表現される画素データd2を2滴以上の吐出で表現される画素データd4に読み替えて、インク滴の吐出動作をさせることで、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データd2の連続回数を規定回数以下に制限する。
【選択図】図3

Description

本発明は、1つの画素をインク滴の数により設定するマルチドロップ方式の液滴吐出ノズルが記録媒体の幅方向に整列配置され、記録媒体の全幅方向の描画ライン単位で記録媒体への画像記録を行うフルライン型のインクジェットヘッド駆動装置及び駆動方法に関する。
機能性液状体を記録媒体に吐出するインクジェット装置は、低コストで、環境に比較的優しく、最近では、記録可能の記録媒体の種類も増え、しかも高速・高精細の描画ができるという特徴を有している。
近年、電子線・紫外線などの活性エネルギーの照射により硬化する活性エネルギー硬化型インクのインク滴をインクジェットヘッド装置により記録媒体上に吐出・塗布されたインクを活性エネルギーの照射により硬化させることで記録媒体上への画像記録を行う活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置が各種提案されている。
この活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置は、活性エネルギー硬化型インクを使用しない一般的なインクジェット記録装置と比較すると、活性エネルギー硬化型インク自身の特質を活かすことで、種々の記録媒体へ高速で記録できること、滲みにくく高精細な画像記録が可能であること、環境に優しい、などの各種の利点を得ることができる。
特に活性エネルギーとしての紫外線の照射により硬化するUV硬化型インクを用いた装置は、光源の扱い易さ、コンパクト化等観点から、開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
ここで、このようなインクジェットヘッド記録装置で階調を出す場合、画像信号の1画素を2値記録の1画素に対応させ、これを決められた閾値によって2値化し階調を面積により表現するディザ法や、1つ以上の液滴を記録媒体上の同一箇所に着弾させて1つの画素を形成し着弾液滴の液滴量の多少により階調を得るマルチドロップ方式などがある。
特に、マルチドロップ方式は、小さな液滴の液滴吐出ノズルを選ぶことで高階調の記録が行え、高い画像解像度を得ることができるため、高解像度化の主流になりつつある(例えば、特許文献2参照)。そして、フルライン型のインクジェットヘッドでは、このような液滴吐出ノズルが記録媒体の幅方向に沿って記録媒体の全幅分整列配置され、記録媒体の幅方向の描画ライン単位で画像記録を行う。
以下には、マルチドロップ方式で画像記録(描画)を行うインクジェットヘッド装置におけるインク滴の吐出制御の方法を具体例で説明する。
図5は、描画する元の画像データ(濃淡のみに特化)を示した概略図である。図中の矢印Aが、記録媒体上での描画方向である。
この図5に示した画像データでは、記録媒体の幅方向には各濃淡範囲の代表として4列の画素列L1,L2,L3,L4を模式的に示している。さらに、濃淡を表現するために、各画素列L1,L2,L3,L4を描画方向に沿って並ぶ6個の描画ブロックc1〜c6で構成して模式化している。模式化した各描画ブロックc1〜c6は、描画方向に沿って並ぶ一定数のドット(インクの着弾位置を示し、この例では、後述するように4ドット)で形成される。
図5に示した画像データは、説明を単純にするために、インク滴の着弾が全く無い未着色部H1と、1滴のインク滴着弾のみにより着色される最淡着色部H2と、3滴以上の適宜数のインク滴の着弾により着色される濃着色部H3との3つの階調で表現されている。
図6は図5に示した画像データから個々のノズル制御用のデータへ変換した場合の代表ノズル吐出データを示す概略図である。
各液滴吐出ノズルの吐出動作は図4に示す個々のノズル制御用の画像データにより制御される。
このノズル制御用の画像データに基づき、インクジェットヘッド装置を構成している各液滴吐出ノズルが、インク滴の吐出を行う。濃着色部H3となっている描画ブロックの描画を担当する各液滴吐出ノズルは何れもマルチドロップによるインク滴の吐出を行い、最淡着色部H2となっている描画ブロックの描画を担当する各液滴吐出ノズルは1滴のインク滴の吐出を行い、未着色部H1となっている描画ブロックの描画を担当する各液滴吐出ノズルはインク液を1滴も吐出しない。
図9(a)は従来のインクジェットヘッド駆動装置による液滴吐出ノズルの一滴吐出不良状態を示す部分概略図である。
この図9では、インクジェットヘッド装置に装備される液滴吐出ノズルでは、未着色部H1のようにインク滴の吐出を行わない休止動作と最淡着色部H2のように一滴吐出動作とだけが長時間続くと、ノズルの開口端周辺に貯留されているインク液Jに気泡が浸入したり、インク溶媒の蒸発による粘度の上昇や部分的な硬化が残ったり、或いはインク液中の成分の分離等の異常の蓄積が滞留し、1滴のインク滴の吐出を再開したあるタイミングで、図9(a)に示すように、ノズル51の開口51aから吐出されるインク滴J1が、ノズル51の中心軸から外れた方向に曲がって飛んだり、或いは、吐出されるインク滴の粒径が不均一になるなどの吐出不良が起こる場合がある。
すると、図10に示すように、1滴のインク滴の吐出により描画を行う画素列L2,L4の各描画ブロックc1〜c6では、インク滴の着弾する位置が正規の位置からずれることに起因した位置ずれドットG1や、インク滴の粒径がばらつくことによって描画ドットの径にばらつきが生じる位置ムラドットG2や、ノズルの目詰まりによってインク滴が吐出されなかったために起こるドット抜けG3などの各種の描画不良が起こるという問題が生じている。
記録媒体の幅方向に往復移動可能なキャリッジ上にインクジェットヘッド装置が装備されるインクジェット記録装置では、インク滴の吐出不良の発生を防止するために、記録媒体上の画像描画幅の外側となる退避位置にインクジェットヘッド装置を移動させることができるので、適時、この退避位置で、ステッピングと呼ばれる空吐出、つまり、図9(b)に示すように複数液滴J2を吐出することで、図9(c)のような液滴塊J3として排出するヘッドクリーニング処理を実施するのが一般的である。しかしながら、フルライン型のインクジェットヘッド記録装置では、このような退避位置を設けることができず、このようにステッピングによるヘッドクリーニングを実施することができない。
特開2004−90487号公報 特開2004−174849号公報
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、マルチドロップ方式で階調表現を行う液滴吐出ノズルが記録媒体の幅方向に整列配置されて、記録媒体の幅方向の描画ライン単位で記録媒体への画像記録を行うフルライン型のインクジェットヘッド装置において、インク滴を吐出する動作の休止や1滴のみの吐出動作の連続によって吐出不良が誘発されることがなく、吐出不良に起因した描画不良の発生を防止して、高精度な画像記録を長期に渡って維持できるインクジェットヘッドの駆動装置および駆動方法を提供することである。
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1)1つの画素をインク滴の数により設定するマルチドロップ方式の液滴吐出ノズルを記録媒体の全幅方向に並べて備えるフルライン型のインクジェットヘッド駆動装置であって、
記録用画像データを保存しているメモリと、メモリから出力される記録用画像データの各画素データからインク滴の数が吐出1滴以下となる画素が規定回数以上連続する画素データを検出する画素データ解析手段と、前記画素データ解析手段が検出した前記規定回数前後に画素当たり1滴吐出の画素データの少なくとも一部を少なくとも2滴吐出の画素データへ読み替えする画素データ再設定手段とを備えるインクジェットヘッド駆動装置。
(2) 1つの画素をインク滴の数により設定するマルチドロップ方式の液滴吐出ノズルを記録媒体の全幅方向に並べて備えるフルライン型のインクジェットヘッド駆動方法であって、
記録用画像データの各画素データからインク滴の数が1滴以下となる画素が規定回数以上連続する画素データを検出し、前記画素データ解析手段が検出した前記規定回数前後に画素当たり1滴吐出の画素データの少なくとも一部を少なくとも2滴吐出の画素データへ読み替えて、インク滴の吐出動作をさせるインクジェットヘッド駆動方法。
上記構成によれば、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データが規定回数以上連続するノズルでは、適時、1滴の吐出で表現される画素データの一部を2滴以上の吐出で表現されるマルチドロップの画素データに読み替えて、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データの連続回数を規定回数以下に制限している。
即ち、吐出が1滴以下となる画素データの連続回数の許容値となる規定回数を予め適宜値に選定しておくことで、インク滴の吐出が1滴以下となる動作が長時間連続することによってインク液が異常化する前に、特定の記録材料上の位置に2滴以上の吐出実施によりノズルの開口端周辺でのインク液を消費して正常状態にリフレッシュすることができる。
ここで、1滴の吐出で表現される画素データをマルチドロップに読み替えた箇所は、元の画素データとは階調が異なったものとなるが、階調の相異は読み返した箇所のみに限定されるため、欠陥としてそれほど目立たず、実用上、ほとんど問題とならない。
従って、インク滴を吐出する動作の休止や1滴のみの吐出動作の連続によって吐出不良が誘発されることがなく、吐出不良に起因した描画不良の発生を防止して、高精度な画像記録を長期に渡って維持できる。
本発明に係るインクジェットヘッド装置では、1滴の吐出によって表現される画素データを少なくとも2滴以上の吐出により表現される画像データに読み替える条件となる規定回数を適宜に選定しておくことで、インク滴の吐出が1滴以下となる動作が長時間連続することによってインク液が異常化する前に、ノズルの開口端周辺でのインク液をマルチドロップにより消費して正常状態にリフレッシュすることができる。
従って、インク滴を吐出する動作の休止や1滴のみの吐出動作の連続によって吐出不良が誘発されることがなく、吐出不良に起因した描画不良の発生を防止して、高精度な画像記録を長期に渡って維持できる。
以下、本発明に係るインクジェットヘッド駆動装置を備えるインクジェット記録装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るインクジェットヘッド駆動装置が搭載された活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置の一実施形態の概略斜視図である。図2は図1のインクジェットヘッド部による画像記録部の断面図である。
図1,図2において、活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置10の筐体12では、送出側ロール21に巻回された記録媒体Sが搬送ローラ30により延出され、可撓性の遮光扉14を通過して筐体12内に搬送されている。この搬送された記録媒体Sは筐体12の反対側から可撓性の遮光扉16から送出されて、巻き取り側ロール23に巻き取られている。筐体12内では、記録媒体Sは搬送保持ローラ42により保持されプラテン40上へ送出される。更に、プラテン40を挟んだ反対側に配置された搬送保持ローラ44により記録媒体Sが保持され、プラテン40上での走査搬送を行う。プラテン40では記録媒体Sを挟んだ反対側位置に画像記録部50が配置されている。画像記録部50は、プラテン40上で走査搬送されている記録媒体Sにインクジェット画像記録と活性エネルギー(本実施形態では紫外光)照射定着とを行っている。画像記録部50へは図示しない供給経路によりインクを供給し貯留するインク貯留部70が筐体12内に備えられている。なお、このインク貯留部70にはインクカートリッジが着脱自在に備えられる構成としてもよい。
画像記録部50では、インクジェットヘッドであるヘッドユニット52がそのインク吐出部先端を画像記録位置でプラテン40に向けて備えられている。ヘッドユニット52は、活性エネルギーにより硬化可能なインクを記録媒体Sに向けて吐出する。このヘッドユニット52にはインクジェットヘッド駆動装置であるヘッドドライバ54が接続されてインク各色の吐出量を制御する。
また、ヘッドユニット52の下流には活性エネルギー照射部である紫外線照射部59が配置され、インクが記録媒体Sに吐出された直後に硬化するだけの強力な活性エネルギーを与える。つまり、紫外線照射部59は、記録媒体搬送方向下流側に配置され活性エネルギーを照射してインクを硬化定着させる。
紫外線照射部59では、前述のようにインク硬化のために強力な光を使用するため、筐体12内の温度上昇を抑えるため、排気冷却部80が筐体12内上部に配置されている。
なお、本実施形態では、記録媒体を搬送ローラ42,44に挟持しつつインクジェット記録位置であるプラテン40上を搬送する構成としているが、これ以外の構成としては、プラテンに換えて搬送ベルトにより搬送する構成とすることもできる。
また、記録済みの記録媒体Sは巻き取り側ロール23で巻き取っているが、これ以外にも、筐体12から送出される位置に、記録媒体Sを所望の長さに切るカッターを配置する構成としてもよい(図示せず)。この場合、このカッターの下流に収容トレーが配置される。
このインクジェットヘッドユニット52は、図1に示したように記録媒体Sの幅方向長さをアレーとするフルライン型のヘッドであり、ピエゾ型(例えばPZT駆動部)の液滴吐出ノズルを採用している。
また、インクジェットヘッドユニット52には、ヘッドドライバ54が接続されている。ヘッドドライバ54は、インクジェットヘッドユニット52を構成している各液滴吐出ノズルにおける同一画素上へのインク滴の吐出数等を制御するもので、複数のインク滴を記録媒体上の1つの画素域に順に吐出させて吐出数によりその画素域に階調を付与するマルチドロップ方式の描画を実現する。
図3は本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置であるヘッドドライバ54の概要を示すブロック図である。
このヘッドドライバ54には、外部入力手段53(例えば、キーボード、光磁気記録媒体など)から画像データが入力されるメモリ54aおよび画素データ解析手段54bが備えられ、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データが規定回数以上連続するノズルを特定する。更に、ヘッドドライバ54には、画素データ解析手段54bで解析された各ノズルでの画素データからメモリ54aに記憶されている異常発生の限界の連続吐出規定回数付近で画像に最も影響を与えない画像内位置で、1滴の吐出で表現される画素データの一部を2滴以上の吐出で表現されるマルチドロップの画素データに読み替える画素データ再設定手段54cと、ノズルの吐出制御を行うノズル制御手段54dとが備えられる。
図4はヘッドドライバ54のノズル吐出駆動制御を示すフローチャートである。
ステップS101では、外部入力手段53からメモリ54aへ入力された画像データをもとに画像記録が開始される。
ステップS102では、画素データ解析手段54bにおいて、メモリ54aへ入力された画像データを基に各ノズルでのマルチドロップ方式での吐出回数の流れが算出され、各ノズルでのインク滴の吐出が1滴以下となる画素データが明らかとなる。次に、ステップS103では、インクジェットヘッドユニット52固有の異常が発生すると予想される吐出回数規定値が画素データ解析手段54bに読み込まれる。ステップS104では、各ノズルでのインク滴の吐出が1滴以下となる画素データと吐出回数規定値とが比較され、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データが規定回数以上連続するノズルが特定される。このとき、この規定回数以上連続するノズルでは、ステップS105に進み、画素データ再設定手段54cにより、この規定回数前後において、像様に最も影響を与えない画像内の位置を設定し、画素当たり1滴の吐出としている画素データの少なくとも一部を少なくとも2滴の吐出とする画素データに読み替える。ステップS106では、このデータを基に、ノズル制御手段54dがインク滴の吐出動作をさせる。
以下に、本実施形態による画像記録状態を模式的に解説する。
図7は図6に示した画像データを本実施形態での描画処理用に読み替えた画像データの概略図、図8は図7に示した画像データに基づいて描画した画像の概略図である。
前述の図5に示すように、インクジェットヘッドユニット52が描画する元の画像データを示したもので、図中の矢印Aが、記録媒体上での描画方向である。
前述にように、この画像データは、記録媒体の幅方向には4列の画素列L1,L2,L3,L4で構成されていて、濃淡を表現するために、各画素列L1,L2,L3,L4を描画方向に沿って並ぶ6個の描画ブロックc1〜c6で構成して模式化している。図6以降の模式化した各描画ブロックc1〜c6では、描画方向に沿って並ぶ一定数のドット(インクの着弾位置を示し、この例では、後述するように4ドット)を代表として示している。
模式的に、インクジェットヘッドユニット52は、各画素列L1,L2,L3,L4を、描画ブロック単位でライン状に処理することが可能になる。そして、図5に示した画像データは、説明を単純にするために、インク滴の吐出が全く無い未着色部H1と、1滴のインク滴の吐出により着色される淡着色部H2と、3滴以上の適宜数のインク滴の吐出により着色される濃着色部H3との3つの階調で表現されている。
本実施の形態のヘッドドライバ54では、図5に示した画像データを描画処理する際(即ち、記録媒体Sへの画像記録動作時)には、画素データ再設定手段54cにより図6の各ノズル画像データを図7に示す画像データに変換して、図7の画像データに基づいて、各液滴吐出ノズルにおけるインク滴の吐出動作を制御する。
図7に示した画像データは、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データが規定回数以上連続するノズルでは、適時、1滴の吐出で表現される画素データの一部を2滴以上の吐出で表現されるマルチドロップの画素データに読み替えて、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データの連続回数を規定回数以下に制限している。
図6に示した画像データにおいては、画素列L2,L4上の未着色部H1と淡着色部H2に相当する領域が、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データの連続する部分となっている。
これに対して、図7に示した画像データでは、画素列L2,L4において、淡着色部H2を構成していた1滴の吐出で表現される画素データd2の一部を2滴の吐出で表現されるマルチドロップの画素データd4に読み替えている。この読替により、画素列L2の淡着色部H2では、1滴の吐出で表現される画素データd2の連続が8以内に制限され、また、画素列L4の淡着色部H2では、1滴の吐出で表現される画素データd2の連続が7以内に制限されている。
そして、図7に示した画像データに基づく描画処理では、濃着色部H3となっている描画ブロックの画素データd3を担当する各液滴吐出ノズルは何れも3滴以上のマルチドロップによるインク滴の吐出を行い、淡着色部H2となっている描画ブロックの画素データd2を担当する各液滴吐出ノズルは1滴のインク滴の吐出を行い、淡着色部H2となっている描画ブロックの画素データd4を担当する各液滴吐出ノズルは2滴のインク滴の吐出を行い、未着色部H1となっている描画ブロックの画素を担当する各液滴吐出ノズルはインク液を1滴も吐出しない。
以上に説明したインクジェットヘッドドライバ54によれば、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データd2が規定回数以上連続するノズルでは、適時、1滴の吐出で表現される画素データd2の一部を2滴以上の吐出で表現されるマルチドロップの画素データd4に読み替えて、インク滴の吐出が1滴以下となる画素データd2の連続回数を規定回数以下に制限している。
即ち、吐出が1滴以下となる画素データd2の連続回数の許容値となる規定回数を予め適宜値に選定しておくことで、インク滴の吐出が1滴以下となる動作が長時間連続することによってインク液が異常化する前に、マルチドロップの実施によりノズルの開口端周辺に貯留されているインク液を消費して正常状態にリフレッシュすることができる。
また、1滴の吐出で表現される画素データd2をマルチドロップの画素データd4に読み替えた箇所は、元の画素データとは階調が異なったものとなるが、階調の相異は読み返した箇所のみに限定されるため、欠陥としてそれほど目立たず、実用上、ほとんど問題とならない。
従って、インク滴を吐出する動作の休止や1滴のみの吐出動作の連続によって吐出不良が誘発されることがなく、吐出不良に起因した描画不良の発生を防止して、高精度な画像記録を長期に渡って維持できる。
また、上記のように、1滴の吐出による画素データd2を2滴の吐出による画素データd4に読み替える対処では、読み替えた箇所の階調差は一段階で済むので、階調差が欠陥としてそれほど目立たず、実用上、ほとんど問題とならない。
1滴の吐出による画素データd2をマルチドロップによる画素データd4に読み替える対応は、各液滴吐出ノズルの吐出動作を制御するヘッドドライバ54に組み込むプログラムの変更で対処できるため、既存のインクジェットヘッド駆動装置への適用も容易にできる。
なお、上記実施の形態では、図示の便宜上、吐出が1滴以下となる画素データd2の連続回数の許容値となる規定回数を、7乃至8にした。しかし、実際の規定回数は、ヘッドユニット、特に、ノズルの形式により大きく異なり、例えば、少なくとも、数百或いは数千、或いは数万等の大きな値になる。好ましい規定回数は1000〜10000である。また、1滴の吐出による画素データd2をマルチドロップの画素データd4に読み替える場合に、画素データd4におけるドロップ数は、上記実施の形態で示した2滴に限定するものではない。
ここで、本発明で言う「活性エネルギー」とは、その照射によりインク組成物中において開始種を発生させうるエネルギーを付与することができるものであれば、特に制限はなく、広く、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含するものである。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点からは、紫外線及び電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。従って、本発明のインク組成物としては、紫外線を照射することにより硬化可能なインク組成物であることが好ましい。
本発明を適用するインクジェット記録装置において、活性エネルギーのピーク波長は、インク組成物中の増感色素の吸収特性にもよるが、例えば、200〜600nm、好ましくは、300〜450nm、より好ましくは、350〜450nmであることが適当である。また、本発明のインク組成物の(a)電子移動型開始系は、低出力の活性エネルギーであっても十分な感度を有するものである。従って、活性エネルギーの出力は、例えば、2,000mJ/cm2以下、好ましくは、10〜2,000mJ/cm2、より好ましくは、20〜1,000mJ/cm2、更に好ましくは、50〜800mJ/cm2の照射エネルギーであることが適当である。また、活性エネルギーは、露光面照度(被記録媒体表面の最高照度)が、例えば、10〜2,000mW/cm2、好ましくは、20〜1,000mW/cm2で照射されることが適当である。
特に、本発明を適用するインクジェット記録装置では、活性エネルギー照射が、発光波長ピークが390〜420nmであり、かつ、前記被記録媒体表面での最高照度が10〜1,000mW/cm2となる紫外線を発生する発光ダイオードから照射されることが好ましい。
また、本発明を適用するインクジェット記録装置では、活性エネルギーは被記録媒体上に吐出されたインク組成物に対して、例えば、0.01〜120秒、好ましくは0.1〜90秒照射することが適当である。
更に、本発明を適用するインクジェット記録装置では、インク組成物を一定温度に加温するとともに、インク組成物の被記録媒体への着弾から活性エネルギーの照射までの時間を、0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.02〜0.3秒、更に好ましくは0.03〜0.15秒である。このようにインク組成物の被記録媒体への着弾から活性エネルギーの照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾したインク組成物が硬化前に滲むことを防止することが可能となる。
なお、本発明を適用するインクジェット記録装置を用いてカラー画像を得るためには、明度の低い色から順に重ねていくことが好ましい。このように重ねることにより、下部のインクまで活性エネルギーが到達しやすくなり、良好な硬化感度、残留モノマーの低減、臭気の低減、密着性の向上が期待できる。また、活性エネルギーの照射は、全色を射出してまとめて露光することが可能だが、1色毎に露光するほうが、硬化促進の観点で好ましい。
本発明のインクジェットヘッドは、例えばピエゾ型のインクジェットヘッドで、1〜100pl、好ましくは、1〜30plのマルチサイズドットを例えば、320×320〜4000×4000dpi、好ましくは、400×400〜2400×2400dpiの解像度で射出できるよう駆動することができる。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
また、上述したように、本発明のインク組成物のような活性エネルギー硬化型インクは、吐出されるインク組成物を一定温度にすることが望ましいことから、インク供給カートリッジからインクジェットヘッド部分までは、断熱及び加温による温度制御を行うことが好ましい。また、加熱するヘッドユニットは、装置本体を外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンター立上げ時間を短縮するため、或いは熱エネルギーのロスを低減するために、他部位との断熱を行うとともに、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
また、活性エネルギー源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェットには、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。更には、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED),LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、活性エネルギー硬化型インクジェット用放射源として期待されている。
また、上記のように、活性エネルギー源として、発光ダイオード(LED)及びレーザーダイオード(LD)を用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LED及び紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。更に、一層短い波長が必要とされる場合、米国特許番号第6,084,250号明細書は、300nmと370nmとの間に中心付けされた活性エネルギーを放出し得るLEDを開示している。また、他の紫外LEDも、入手可能であり、異なる紫外線帯域の放射を照射することができる。本発明で特に好ましい活性エネルギー源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
〔被記録媒体〕
本発明のインク組成物を適用しうる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の非コート紙、コート紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料或いは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類も被記録媒体として使用可能である。
本発明のインク組成物において、硬化時の熱収縮が少ない材料を選択した場合、硬化したインク組成物と被記録媒体との密着性に優れるため、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいフィルム、例えば、熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムなどにおいても、高精細な画像を形成しうるという利点を有する。
以下に、本発明で使用できるインク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
〔インク組成物〕
本発明に用いられるインク組成物は、活性エネルギーの照射により硬化可能なインク組成物であり、例えば、カチオン重合系インク組成物、ラジカル重合系インク組成物、水性インク組成物等が挙げられる。これら組成物について以下詳細に説明する。
(カチオン重合系インク組成物)
カチオン重合系インク組成物は、(a)カチオン重合性化合物と、(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物、(c)着色剤を含有する。所望により、更に紫外吸収剤、増感剤、酸化防止剤、褪色防止剤、導電性塩類、溶剤、高分子化合物、界面活性剤等を含有してもよい。
以下、カチオン重合系インク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
〔(a)カチオン重合性化合物〕
本発明に用いられる(a)カチオン重合性化合物は、後述する(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物から発生する酸により重合反応を生起し、硬化する化合物であれば特に制限はなく、光カチオン重合性モノマーとして知られる各種公知のカチオン重合性のモノマーを使用することができる。カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されている、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、脂肪族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等が挙げられる。その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
エポキシ化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物の中でも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
具体的には、単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526、同2001−310937、同2003−341217の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインク組成物と被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
本発明で使用するオキセタン化合物の中でも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
本発明のインク組成物には、これらのカチオン重合性化合物を、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、オキセタン化合物とエポキシ化合物とから選ばれる少なくとも1種の化合物と、ビニルエーテル化合物とを併用することが好ましい。
インク組成物中の(a)カチオン重合性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対し、10〜95質量%が適当であり、好ましくは30〜90質量%、更に好ましくは50〜85質量%の範囲である。
[(b)活性エネルギーの照射により酸を発生する化合物]
本発明のインク組成物は、放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、適宜、「光酸発生剤」と称する。)を含有する。
本発明に用いうる光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、或いはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
このような光酸発生剤としては、例えば、放射線の照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物を挙げることができる。
光酸発生剤としては、また、特開2002−122994公報、段落番号〔0029〕乃至〔0030〕に記載のオキサゾール誘導体、s−トリアジン誘導体なども好適に用いられる。更に、特開2002−122994公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も、本発明における光酸発生剤として、好適に使用しうる。
(b)光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
インク組成物中の(b)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
[(c)着色剤]
本発明のインク組成物は、着色剤を添加することで、可視画像を形成することができる。例えば、平版印刷版の画像部領域を形成する場合などには、必ずしも添加する必要はないが、得られた平版印刷版の検版性の観点からは着色剤を用いることも好ましい。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。染料としては、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できるが、油溶性染料が好ましい。
〔顔料〕
本発明に好ましく使用される顔料について述べる。
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、又は顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、或いは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
本発明において使用できる有機顔料及び無機顔料の具体例としては、例えば、イエロー色を呈するものとして、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG等),C.I.ピグメントイエロー74の如きモノアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー12(ジスアジイエローAAA等)、C.I.ピグメントイエロー17の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー180の如き非ベンジジン系のアゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー100(タートラジンイエローレーキ等)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー95(縮合アゾイエローGR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントイエロー115(キノリンイエローレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントイエロー18(チオフラビンレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー(Y−24)の如きアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT(Y−110)の如きイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー(Y−138)の如きキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー(Y−139)の如きイソインドリン顔料、C.I.ピグメントイエロー153(ニッケルニトロソイエロー等)の如きニトロソ顔料、C.I.ピグメントイエロー117(銅アゾメチンイエロー等)の如き金属錯塩アゾメチン顔料等が挙げられる。
赤或いはマゼンタ色を呈するものとして、C.I.ピグメントレッド3(トルイジンレッド等)の如きモノアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド38(ピラゾロンレッドB等)の如きジスアゾ顔料、C.I.ピグメントレッド53:1(レーキレッドC等)やC.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)の如きアゾレーキ顔料、C.I.ピグメントレッド144(縮合アゾレッドBR等)の如き縮合アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド174(フロキシンBレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド81(ローダミン6G'レーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントレッド177(ジアントラキノニルレッド等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド88(チオインジゴボルドー等)の如きチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントレッド194(ペリノンレッド等)の如きペリノン顔料、C.I.ピグメントレッド149(ペリレンスカーレット等)の如きペリレン顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ等)の如きキナクリドン顔料、C.I.ピグメントレッド180(イソインドリノンレッド2BLT等)の如きイソインドリノン顔料、C.I.ピグメントレッド83(マダーレーキ等)の如きアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
青或いはシアン色を呈する顔料として、C.I.ピグメントブルー25(ジアニシジンブルー等)の如きジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー等)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントブルー24(ピーコックブルーレーキ等)の如き酸性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー1(ビクロチアピュアブルーBOレーキ等)の如き塩基性染料レーキ顔料、C.I.ピグメントブルー60(インダントロンブルー等)の如きアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントブルー18(アルカリブルーV−5:1)の如きアルカリブルー顔料等が挙げられる。
緑色を呈する顔料として、C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン)、C.I.ピグメントグリーン36(フタロシアニングリーン)の如きフタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン8(ニトロソグリーン)等の如きアゾ金属錯体顔料等が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
黒色を呈する顔料として、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラック等が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆる、シルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆる、ジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆる、チタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆる、チタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
ここで、酸化チタンは他の白色顔料と比べて比重が小さく、屈折率が大きく化学的、物理的にも安定であるため、顔料としての隠蔽力や着色力が大きく、更に、酸やアルカリ、その他の環境に対する耐久性にも優れている。したがって、白色顔料としては酸化チタンを利用することが好ましい。もちろん、必要に応じて他の白色顔料(列挙した白色顔料以外であってもよい。)を使用してもよい。
顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ニーダー、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル等の分散装置を用いることができる。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤及び分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
インク組成物において、顔料などの諸成分の分散媒としては、溶剤を添加してもよく、また、無溶媒で、低分子量成分である前記(a)カチオン重合性化合物を分散媒として用いてもよいが、本発明のインク組成物は、放射線硬化型のインクであり、インクを被記録媒体上に適用後、硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。これは、硬化されたインク画像中に、溶剤が残留すると、耐溶剤性が劣化したり、残留する溶剤のVOC(Volatile Organic Compound)の問題が生じるためである。このような観点から、分散媒としては、(a)カチオン重合性化合物を用い、中でも、最も粘度が低いカチオン重合性モノマーを選択することが分散適性やインク組成物のハンドリング性向上の観点から好ましい。
顔料の平均粒径は、0.02〜4μmにするのが好ましく、0.02〜2μmとするのが更に好ましく、より好ましくは、0.02〜1.0μmの範囲である。
顔料粒子の平均粒径を上記好ましい範囲となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性及び硬化感度を維持することができる。
〔染料〕
本発明に用いる染料は、油溶性のものが好ましい。具体的には、25℃での水への溶解度(水100gに溶解する色素の質量)が1g以下であるものを意味し、好ましくは0.5g以下、より好ましくは0.1g以下である。従って、所謂、水に不溶性の油溶性染料が好ましく用いられる。
本発明に用いる染料は、インク組成物に必要量溶解させるために上記記載の染料母核に対して油溶化基を導入することも好ましい。
油溶化基としては、長鎖、分岐アルキル基、長鎖、分岐アルコキシ基、長鎖、分岐アルキルチオ基、長鎖、分岐アルキルスルホニル基、長鎖、分岐アシルオキシ基、長鎖、分岐アルコキシカルボニル基、長鎖、分岐アシル基、長鎖、分岐アシルアミノ基長鎖、分岐アルキルスルホニルアミノ基、長鎖、分岐アルキルアミノスルホニル基及びこれら長鎖、分岐置換基を含むアリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールカルボニルオキシ基、アリールアミノカルボニル基、アリールアミノスルホニル基、アリールスルホニルアミノ基等が挙げられる。
また、カルボン酸、スルホン酸を有する水溶性染料に対して、長鎖、分岐アルコール、アミン、フェノール、アニリン誘導体を用いて油溶化基であるアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基に変換することにより染料を得てもよい。
前記油溶性染料としては、融点が200℃以下のものが好ましく、融点が150℃以下であるものがより好ましく、融点が100℃以下であるものが更に好ましい。融点が低い油溶性染料を用いることにより、インク組成物中での色素の結晶析出が抑制され、インク組成物の保存安定性が良くなる。
また、退色、特にオゾンなどの酸化性物質に対する耐性や硬化特性を向上させるために、酸化電位が貴である(高い)ことが望ましい。このため、本発明で用いる油溶性染料として、酸化電位が1.0V(vsSCE)以上であるものが好ましく用いられる。酸化電位は高いほうが好ましく、酸化電位が1.1V(vsSCE)以上のものがより好ましく、1.15V(vsSCE)以上のものが特に好ましい。
イエロー色の染料としては、特開2004−250483号公報の記載の一般式(Y−I)で表される構造の化合物が好ましい。
特に好ましい染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]から[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
マゼンタ色の染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]から[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]から[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
シアン色の染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]から[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]から[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]から[0081]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましい染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]から[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]から[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いてもよい。
これらの着色剤はインク組成物中、固形分換算で1〜20質量%添加されることが好ましく、2〜10質量%がより好ましい。
本発明のインク組成物には、前記の必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、得られる画像の耐候性向上、退色防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%程度である。
〔増感剤〕
本発明のインク組成物には、光酸発生剤の酸発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、必要に応じ、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、光酸発生剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものであれば、何れでもよい。好ましくは、アントラセン、9,10−ジアルコキシアントラセン、ピレン、ペリレンなどの芳香族多縮環化合物、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーケトンなどの芳香族ケトン化合物、フェノチアジン、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物が挙げられる。添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、光酸発生剤に対し0.01〜1モル%、好ましくは0.1〜0.5モル%で使用される。
〔酸化防止剤〕
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
〔褪色防止剤〕
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜8質量%程度である。
〔導電性塩類〕
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
〔溶剤〕
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
〔高分子化合物〕
本発明のインク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
〔界面活性剤〕
本発明のインク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
[インク組成物の好ましい物性]
本発明のインク組成物は、射出性を考慮し、射出時の温度において、インク粘度が7〜30mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは7〜20mPa・sであり、上記範囲になるように適宜組成比を調整し決定することが好ましい。なお、25〜30℃でのインク粘度は、35〜500mPa・s、好ましくは35〜200mPa・sである。室温での粘度を高く設定することにより、多孔質な被記録媒体を用いた場合でも、被記録媒体中へのインク浸透を防ぎ、未硬化モノマーの低減、臭気低減が可能となり、更にインク液滴着弾時のドット滲みを抑えることができ、その結果として画質が改善される。25〜30℃におけるインク粘度が35mPa・s未満では、滲み防止効果が小さく、逆に500mPa・sより大きいと、インク液のデリバリーに問題が生じる。
本発明のインク組成物の表面張力は、好ましくは20〜30mN/m、更に好ましくは23〜28mN/mである。ポリオレフィン、PET、コート紙、非コート紙など様々な被記録媒体へ記録する場合、滲み及び浸透の観点から、20mN/m以上が好ましく、濡れ性の点はで30mN/m以下が好ましい。
このようにして調整された本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。インクジェット記録用インクとして用いる場合には、インク組成物をインクジェットプリンターにより被記録媒体に射出し、その後、射出されたインク組成物に放射線を照射して硬化して記録を行う。
このインクにより得られた印刷物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
[ラジカル重合系インク組成物]
ラジカル重合系インク組成物は、(d)ラジカル重合性化合物、(e)重合開始剤、(f)着色剤を含有する。所望により、更に、増感色素、共増感剤、等を含有してもよい。
以下、ラジカル重合系インク組成物に用いられる各構成成分について順次説明する。
(d)[ラジカル重合性化合物]
ラジカル重合性化合物としては、例えば、以下に挙げるような付加重合化能なエチレン性不飽和結合を有する化合物が含まれる。
[付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物]
本発明のインク組成物に用い得る付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、上記不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等があげられる。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、へキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、へキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(アクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネー卜等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。さらに、前述のエステルモノマーの混合物もあげることができる。また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−へキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−へキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加した1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等があげられる。CH2=C(R)COOCH2CH(R')OH (A)(ただし、RおよびR'はHあるいはCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号に記載されているようなウレタンアクリレー卜類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ぺージ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。本発明において、これらのモノマーはプレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態で使用しうる。
ラジカル重合性化合物の使用量はインク組成物の全成分に対して、通常1〜99.99%、好ましくは5〜90.0%、更に好ましくは10〜70%である(ここで言う%は質量%である)。
(e)〔光重合開始剤〕
次に本発明のラジカル重合系インク組成物に使用される光重合開始剤について説明する。
本発明における光重合開始剤は光の作用、または、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物である。
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。
〔増感色素〕
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加しても良い。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
(f)[着色剤]
カチオン重合系インク組成物に記載した(c)着色剤と同じものを利用することができる。
本発明のインク組成物には、前記の必須成分に加え、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。これらの任意成分について説明する。
〔共増感剤〕
さらに本発明のインクには、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えても良い。
この様な共増感剤の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
別の例としてはチオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特願平6−191605号記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
また、保存性を高める観点から、重合禁止剤を200〜20000ppm添加することが好ましい。本発明のインクジェト記録用インクは、40〜80℃の範囲で加熱、低粘度化して射出することが好ましく、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、クペロンAl等が挙げられる。
〔その他〕
この他に、必要に応じて公知の化合物を用いることができ、例えば、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類等を適宜選択して用いることができる。また、ポリオレフィンやPET等の被記録媒体への密着性を改善するために、重合を阻害しないタッキファイヤーを含有させることも好ましい。具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環属アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香属アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
また、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
また、インク色材の遮光効果による感度低下を防ぐ手段として、重合開始剤寿命の長いカチオン重合性モノマーと重合開始剤とを組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも好ましい態様の一つである。
[水性インク組成物]
水性インク組成物は、重合性化合物と放射線の作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤を含有する。所望により、更に、色材、等を含有してもよい。
[重合性化合物]
本発明の水性インク組成物に含まれる重合性化合物としては、公知の水性インク組成物に含まれる重合性化合物を用いることができる。
水性インク組成物は、硬化速度、密着性、柔軟性などのエンドユーザー特性を考慮した処方を最適化するために、反応性材料を加えることができる。このような反応性材料としては、(メタ)クリレート(即ち、アクリレート及び/又はメタクリレート)モノマー及びオリゴマー、エポキサイド並びにオキセタンなどが用いられる。
アクリレートモノマーの例としては、フェノキシエチルアクリレート、オクチルデシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)トリアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビス(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、エトキシ化又はプロポキシ化グリコール及びポリオールのアクリレート(例えば、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート)、及びこれらの混合物が挙げられる。
アクリレートオリゴマーの例としては、エトキシ化ポリエチレングリコール、エトキシ化トリメチロールプロパンアクリレート及びポリエーテルアクリレート及びそのエトキシ化物、及びウレタンアクリレートオリゴマーが挙げられる。
メタクリレートの例としては、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。
オリゴマーの添加量は、インク組成物全重量に対して1〜80重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。
〔活性エネルギーの作用によってラジカルを生成する水溶性光重合開始剤〕
本発明のインク組成物に用いることができる重合開始剤について説明する。一例としては、例えば、波長400nm前後までの光重合開始剤が挙げられる。このような光重合開始剤としては、例えば、長波長領域に官能性、即ち、紫外線を受けてラジカルを生成する感受性を持つ物質である下記一般式で表される光重合開始剤(以下、TX系と略称する)が挙げられ、本発明においては、これらの中から適宜に選択して使用することが特に好ましい。
Figure 2007210245
上記一般式TX−1〜TX−3中、R2は−(CH2)x−(x=0または1)、−O−(CH2)y−(y=1または2)、置換若しくは未置換のフェニレン基を表わす。またR2がフェニレン基の場合には、ベンゼン環中の水素原子の少なくとも1つが、例えば、カルボキシル基若しくはその塩、スルホン酸若しくはその塩、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜4のアルコキシル基、フェノキシ基等のアリールオキシ基等から選ばれる1つまたは2つ以上の基や原子で置換されていてもよい。Mは、水素原子若しくはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K等)を表わす。更に、R3及びR4は各々独立に、水素原子、または置換若しくは未置換のアルキル基を表わす。ここでアルキル基の例としては、例えば、炭素数1〜10程度、特には、炭素数1〜3程度の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、これらのアルキル基の置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、シュウ素原子等)、水酸基、アルコキシル基(炭素数1〜3程度)等が挙げられる。また、mは1〜10の整数を表わす。
更に本発明において、下記一般式からなる光重合開始剤 Irgacure2959(商品名:Ciba Specialty Chemicals製)の水溶性の誘導体(以下、IC系と略称する)を使用することもできる。具体的には、下記式からなるIC−1〜IC−3を使用することができる。
Figure 2007210245
〔クリアインクとする場合の処方〕
上述した水溶性重合性化合物は、上記したような色材を含有させることなく、透明な水性インクの形態とすることで、クリアインクとすることができる。特に、インクジェット記録特性を有するように調製すれば、水性光硬化型のインクジェット記録用のクリアインクが得られる。かかるインクを用いれば、色材を含有していないので、クリアな皮膜を得ることができる。色材を含有しないクリアインクの用途としては、画像印刷への適性を被記録材に付与するためのアンダーコート用としたり、或いは、通常のインクで形成した画像の表面保護、更なる装飾や光沢付与等を目的としたオーバーコート用としての用途等が挙げられる。クリアインクには、これらの用途に応じて、着色を目的としない無色の顔料や微粒子等を分散して含有させることもできる。これらを添加することによって、アンダーコート、オーバーコートいずれにおいても、印刷物の画質、堅牢性、施工性(ハンドリング性)等の諸特性を向上させることができる。
そのようなクリアなインクに適用する場合の処方条件としては、インクの主成分とする水溶性重合性化合物が10〜85%、光重合開始剤(例えば、紫外線重合触媒)を、上記水溶性重合性化合物100質量部に対して1〜10質量部含有され、同時に、インク100部に対して光重合開始剤が最低0.5部が含有されているように調製することが好ましい。
〔色材含有インクにおける材料構成〕
上述した水溶性重合性化合物を色材を含有するインクに利用する場合には、含有させた色材の吸収特性に合わせて、インク中における重合開始剤と重合性物質の濃度を調節することが好ましい。前記したように、配合量としては、水或いは溶剤の量を、質量基準で、40%〜90%の範囲、好ましくは60%〜75%の範囲とする。更に、インク中における重合性化合物の含有量は、インク全量に対して、質量基準で1%〜30%の範囲、好ましくは、5%〜20%の範囲とする。重合開始剤は、重合性化合物の含有量に依存するが、概ね、インク全量に対して、質量基準で0.1〜7%、好ましくは、0.3〜5%の範囲である。
インクの色材として顔料が使用される場合には、インク中における純顔料分の濃度は、概ね、インク全量に対して0.3質量%〜10質量%の範囲である。顔料の着色力は顔料粒子の分散状態に依存するが、約0.3〜1%の範囲であると、淡色のインクとして利用される範囲となる。また、それ以上であると、一般のカラー着色用に用いられる濃度を与える。
なお、本発明に係るインクジェットヘッド装置は、上記実施の形態で示した活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置だけでなく、自然乾燥により定着させる一般的なインクで画像記録を行う一般的なインクジェットプリンタや、印刷用の刷版を行う製版装置にも適用可能である。
本発明に係るインクジェットヘッド駆動装置が搭載された活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置の一実施形態の構成概略図である。 図1のインクジェット記録装置による画像記録部の拡大断面図である。 本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置であるヘッドドライバ54の概要を示すブロック図である。 ヘッドドライバ54のノズル吐出駆動制御を示すフローチャートである。 インクジェット記録装置で描画する元の画像データの概略図である。 図5に示した画像データを図2に示したインクジェット記録装置での描画処理用に読み替えた画像データの概略図である。 図6に示した画像データに基づいて本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置で描画した画像の概略図である。 本実施形態のインクジェットヘッド駆動装置において、描画処理用に変換された画像データの概略図である。 インクジェットヘッド装置のノズルからインク滴が吐出される状態の説明図である。 従来のインクジェットヘッド装置において、ノズルの吐出不良によって描画不良が生じた画像の概略図である。
符号の説明
10 活性エネルギー硬化型インクジェット記録装置
S 記録媒体
51 ノズル先端
51a ノズル開口部
52 ヘッドユニット
54 ヘッドドライバ
59 紫外線照射部
c1〜c6 描画ブロック
d2,d3,d4 画素データ
H1 未着色部
H2 淡着色部
H3 濃着色部
L1,L2,L3,L4 画素列

Claims (2)

  1. 1つの画素をインク滴の数により設定するマルチドロップ方式の液滴吐出ノズルを記録媒体の全幅方向に並べて備えるフルライン型のインクジェットヘッド駆動装置であって、
    記録用画像データの各画素データからインク滴の数が1滴以下となる画素が規定回数以上連続する画素データを検出する画素データ解析手段と、
    前記画素データ解析手段が検出した前記規定回数前後に画素当たり1滴吐出の画素データの少なくとも一部を少なくとも2滴吐出の画素データへ読み替えする画素データ再設定手段とを備えるインクジェットヘッド駆動装置。
  2. 1つの画素をインク滴の数により設定するマルチドロップ方式の液滴吐出ノズルを記録媒体の全幅方向に並べて備えるフルライン型のインクジェットヘッド駆動方法であって、
    記録用画像データの各画素データからインク滴の数が1滴以下となる画素が規定回数以上連続する画素データを検出し、前記画素データ解析手段が検出した前記規定回数前後に画素当たり1滴吐出の画素データの少なくとも一部を少なくとも2滴吐出の画素データへ読み替えて、インク滴の吐出動作をさせるインクジェットヘッド駆動方法。
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