しかし、この種の従来技術にあっては次のような間題がある。
ルールベース手法では、予め用意したルールに当てはまらない場合は補間により補正値を求めるため、誤差を生じる可能性がある。また、マスク中の任意のレイアウトについてルールを網羅して求めておくことは非常に手間がかかる。特に2次元的形状の複雑なレイアウトでは、適切なパラメータの設定が非常に難しくなり、またパラメータの種類も多くなる。
シミュレーションベース手法では、光学像シミュレーションは非常に時間のかかる計算であり、現状では1〜2cm大のLSΙチップ全域にシミュレーションを行うことは非常に困難であると考えられている。特に、図形が比較的階層的に定義されていないロジックデバイス等においては、階層的に定義されたメモリデバイスの場合と比較して、補正対象となる領域が膨大になり、処理時間の間題は一層深刻である。
また、シミュレーションベース手法では基本的に図形の輪郭をずらすだけなので、図45の例で示したような限界解像以下の補助パターンを図形の輪郭から離れた内部や外部に自動生成することができない。
このように従来、マスクデータ作成のための光近接効果補正の技術として、ルールベース手法やシミュレーションベース手法があるが、ルールベース手法ではルールに当てはまらない場合に誤差を生じる可能性があり、シミュレーションベース手法では多大な時間がかかる問題がある。
次に、デバイスにおける活性ゲートに注目した従来例及び問題点の説明を行う。
LSIにおいて、デバイス中ロジック部分のゲート層については、活性ゲート部分の幅の寸法精度がデバイスの性能(スピード等)に大きな影響を与える。このため、非常に高い寸法精度が要求され、精度良い光近接効果補正が必要とされる。また、このロジックゲートのレイアウトは、一般にその幅に対し、長さが十分に長いという特徴を持っている。従って、ロジックゲートの光近接効果補正は、その長さ方向を無視して、幅方向の一次元にのみ注目して補正を行う場合が多い。
光近接効果補正をロジックのゲートに適用した第3の従来例に関しては、Photomask Technology and Management, SPIE Vol.2322, p229-238(1994) におけるLars.W.Liebmann らによる Optical Proximity Correction, a First Look at Manufacturability と題する文献において述べられている。この第3の従来例では、64MビットDRAMのロジックゲートに関し、その幅方向を光近接効果補正している。
この光近接効果補正手順を図46を参照して説明する。図46においては、左肩上がりの斜線部はゲート配線層を、右肩上がりの斜線部は拡散層を、ドッテッドエリアは活性ゲートを、太線部は補正対象エエッジを示している。ゲート配線層の図形のうち、活性ゲートを含む辺(エッジ)を抽出する。活性ゲートのエッジ1について最近接する図形とスペースを測り(B)、スペースの大きさに応じたバイアス量分、エッジを移動する。図46における左側のエッジ2を補正対象エッジとする場合は、Dの大きさに応じたバイアス量分、エッジを移動する。隣接図形とのスペースとバイアス量の関係は下記の表1に示すようなテーブル形式で予め求めておき、テーブルを参照しながら補正対象エッジを移動する。
第4の従来例として、 Proceedings of Microlithography Digest of Papers, 286-287(1995) における Eiichi Kawamura らによる Simple Correcting Method of Optical Proximity Effect for 0.35 μm Logic LSI's と題する文献において、ロジックデバイスのゲート幅の補正に関して述べられている。注目するエッジに関して、隣接する図形とのスペースに応じたバイアスを付加するという点で基本的に前記第3の従来例と同様の方法である。
相違点としては、隣接するパターンの角の位置に従いエッジを分割して、それぞれのエッジ毎に、隣接パターンとのスペースの大きさに応じたバイアス量分エッジを移動する。図46においては、補正対象エッジ1を3つに分割し、S1,S2,S3について、それぞれA,B,Cの大きさに応じたバイアス量をテーブルから求め、エッジをバイアス量分移動する。
その他、前記第1の従来例における、Oberdan W.Otto らによる Automated optical proximity correction-a rule-based approach では、一次元の光近接効果補正手法について述べられている。
図47に示されるように、注目エッジのバイアス量dEは、一次元方向のライン/スペースのパラメータ(L0,G0,L1,G1,L2,G2,L3,G3…)の関数として表される。この場合、一般に注目エッジから遠いパラメータ程バイアス量に対する寄与は小さくなる。つまり、パラメータの数が多いほど、精度良くdEを表すことができる。この第1の従来例では、パラメータセットに補正量を対応させたテーブルを補正処理を行う前に予め用意しておき、補正処理中に一致するパラメータセットがテーブルに見つからない場合、パラメータセット間で補間を行って補正量を得ている。
前述した、第3の従来例、第4の従来例、及び前記第1の従来例における一次元の光近接効果補正においてける問題点を図48(a)〜(c)用いて説明する。
図48(a)〜(c)に示されるレイアウトをそれぞれ市販のプログラムを使用して光近接効果補正を施したところ、注目エッジ(1),(2),(3),(4) に関し、下記の表2のような最適バイアス量が得られた。この時の露光やマスクの条件としては、被覆率2/3の輪帯照明、σ0.6、NA0.57、波長365mm、振幅透過率0.223607のハーフトーンマスクである。
図48(b)に示されるマスクを前記第3,第4の従来例の方法により光近接効果補正した場合を考えてみる。第3,第4従来例は注目点と隣接する図形の距離に応じたバイアス量を適用している。従って、まず図48(a)に示されるレイアウトから隣接するスペースが0.525μmの場合のバイアス量は0.012μmであるというルールを決め、隣接するスペースが0.525μmのエッジには全てこの0.012μmというバイアス量を適用してしまう。
図48(b)に示されるエッジ(1) に関しては、0.012μmのバイアス量が最適であるが、(2),(3),(4) のエッジは右側の大きなパターンの影響を受け最適なバイアス値は0.012μmではないことが表2から読みとることができる。つまり、一定のライン/スペースが並んでいる場合には隣接するスペースに応じたバイアス量を付加すれば十分であるが、スペースやラインの幅が変化する場合には前記第3,第4の従来例のような方法では補正の精度が十分でないという問題がある。
一方、第1の従来例における一次元方向の光近接効果補正について考える。この方法は第3,第4の従来例の方法とは違いパラメータの数を増やす、つまり注目エッジから遠いラインやスペースまで考慮に入れることにより補正の精度を上げることが可能であり、上述した問題点は回避可能である。
そこで、例えば図48(b)に示されるエッジ(2) を十分な精度で補正できるようにdE=f(L0,G0,G1,L1,L2,G2,G3,L3,L4)のパラメータを設定し、バイアス量を対応させる。この9つのパラメータを用いれば、表2と同等の精度のバイアス量を得ることが可能である。しかし、表2の図48(b),(c)の項目が一致していることからも分るようにL2が6.1μm以上という大きな値の場合、L2より右のレイアウトの違いはバイアス量に影響していない。つまり、注目エッジ(2) に関してL2より右のパラメータは不必要であることが分かる。
一般に、ある注目点のバイアス量に対する他の点からの寄与は、光学条件、レイアウト、2点間の距離で決定され、注目点から離れている点からの寄与は無視できる。反対に、注目点から十分に近い距離にある点は、注目点のバイアス量に寄与し、以降、このような距離にある領域を「光近接効果の及ぶ範囲」と呼ぶことにする。
即ち、第1の従来例における一次元方向の光近接補正の問題点は、パラメータが少な過ぎれば前記第3,第4の従来例と同じような理由で精度が不十分となるし、精度を保証するためにパラメータを多くし過ぎれば光近接効果の及ぶ範囲外の図形までも含み、ルール算出では余計な時間がかかり、パラメータにバイアス量を対応させたテーブルも不必要に大きくなってしまうことである。
さらに、第1の従来例の問題点として、補正処理に先立ち補正テーブルを用意するということがある。任意のレイアウトに対して補正テーブルを用意することは膨大な労力を要し、テーブルのデータも大きくなる。さらに、補正テーブル中にパラメータセットが一致するものが存在しない場合、パラメータセット間で補間処理を行うが、補間において誤差が生じる可能性もある。
次に、2次元の光近接効果補正に係る従来技術と問題点を説明する。
設計データに対し自動的に光近接効果補正を行う方法は、前述したように2種類に大別される。シミュレーションベース手法は光学像シミュレーシヨンに時間がかかるため大規模レイアウトデータを扱う実用には適さず、ルールベース手法の方がより現実的であると考えられる。
再度、前記第1の従来例を説明する。前記第1の従来例においては、入力設計パターンの輪郭を分割し、分割された線分の中心に補正対象点を設定する(図49参照)。図49において白ぬきの丸印は補正対象点を示し、分割に際しては、周囲の一次元配置の変化する部分でエッジを分割する他、コーナ周辺も分割する。補正対象点に対して、周囲の状況に応じて1次元、1.5次元、2次元のいずれのルールを適用するかを選択する。1次元、1.5次元は通常のエッジ部分に適用するルール、2次元はコーナ周辺に適用するルールである。それぞれの補正対象点に対して、選択された次元の補正テーブルを参照して補正を行う。
ルールベース手法に属する第5の従来例として、Photomask Technology and Management, Vol.2322 における David M. Newmark らによる Large Area Optical Proximity Correction using Pattern Based Corrections と題する論文がある。この第5の従来例では、補正対象のコレクションゾーンとその周囲の光近接効果の及ぶ範囲に設けたバッフアゾーンとから構成される近接効果補正ウインドウ(図50参照)を移動させることにより補正を進める。近接効果ウインドウの移動の方法としては、その中心がパターンのコーナとエッジの中心におかれるように移動すると効率が良いとしている(図51参照)。図51における白ぬきの丸印が近接効果ウィンドウの中心位置である。
特にコンタクトホールのルールベース補正に関する第6の従来例としては、日本特開平8−254812号公報に、ホールパターンの配置された周期に応じてホールパターンの縦と横の寸法比を補正する方法が示されている。本従来例ではホールパターン配置の一次元方向のピッチPxの関数としてホールパターンの縦横比が決定される。2次元方向に周期的に配置されたコンタクトホールに関しては、この方法が使えなくなるため、2次元方向のピッチPyは光近接効果の及ぶ距離より大きく3λ/NA以上とすることが好ましいとしている。
このような従来技術の問題点を説明する。
前記第1の従来例ではエッジを分割して設定された補正対象点の数だけテーブル参照を行うことになり、前記図49では20箇所に関してテーブル参照を行う。また、エッジを分割した上で処理を行うので、ライン端に特定の補正処理を施す、コンタクトホールに特定形状の補正処理を施すといった、図形の一部分または全体の形状に応じた補正を行うことが出来ない。
第5の従来例では、固定サイズの光近接効果ウィンドウを移動しながら補正を進めるため、図51に示される図形aでは例えば4回重複して補正が行われ、図形bにおけるb−1、b−2等の辺でも2回重複して補正が行われることになる。第6の従来例では、2次元的に配置されたコンタクトホールや非周期配置のコンタクトホールに対応することが出来ない。
更に、2次元の光近接効果補正に係る従来技術とこの問題点を説明する。
ルールベース補正法の例としては、Automated optical proximity correction, a rules-based approach, SPIE vol.2197,p302 (1994) がある。この第7の従来例では、パターン配置をパラメータ(主に一次元方向にわたってのパターン幅・間隔・長さ)で記述し、この配置における補正値を記述したテーブルを予め持ち、補正処理の際にはこのテーブルを参照して補正するというものである。このルールベース補正法では、2次元にわたる補正データテーブルの記述方法や参照方法に簡便な方法が確立・認知されておらず、現在一般には主にシミュレーション(モデル)ベース補正法について検討されている。
シミュレーションベース補正法に関して、IEEE Trans.Electron Devices, Vol.38,no.12,p2599-(1991)に記載された第8の従来例では、リソグラフィーモデルに光学像を用いている。具体的には、マスクパターンを入力図形として光学像シミュレーションを行い、所望パターンからの光学像のずれ量を計算し、ずれ量分マスクパターンのエッジをずれとは反対方向に移動(補正)する。上記の操作を繰り返し行うことにより、光学像を所望パターンに近づけていく。
また、モデルにプロセス条件を全て取り込んで補正を行う例としては、次のような報告がある。即ち、あるプロセス条件においてテストパターンをウェハに転写した結果から、光学像、現像やエッチングなど全工程を通してのモデル(ビヘイビアーモデル)を作成し、本モデルに基づいて補正値を算出するという手法である(例えば前記文献SPIE vol.2197 のp371)。シミュレーションベース補正法に関しては、他にも多数の文献報告がされている。
上記のようなマスクパターン自動補正技術を大領域のマスクパターンに適用する際には、計算機の処理速度と記憶容量が有限であることから、補正を要する大領域のマスクパターンの全領域を一括して計算し補正する方法は現実的ではない。効率良くハードウェア資源を用いるためには、当該マスクパターンを補正処理に適した領域に分割し、その領域に対してモデル又は補正ルールに基づいた補正処理を施す方法が、容易に考えられる。
分割補正処理に関し、図52を参照して説明する。図52において、P0 は設計パターンを、P1 は補正パターンを、Aは被補正領域を、A′は被補正領域周辺の分割領域を、aは補正完了領域を、Auは未補正領域を示している。設計パターンP0 を分割して得た被補正領域の一つをAとし、仮にこの領域A内のみを光近接効果被計算領域かつ被補正領域としたとする。すると、隣接する分割領域A′内に含まれるパターンからの光近接効果を全く無視してしまうため、このようにして得た補正処理後の分割領域aを結合して補正完了マスクパターンを作成しても、不適切な補正が施される結果となってしまう。特に、この不適切な補正はAの境界付近のパターンで顕著であることが予想される。
このような不適切な補正を防ぐために、前記文献SPIE vol.2197 のp348 には、被補正領域の周囲にバッファ領域を付加する手法が提案されている。この手法の概略を図53に示す。即ち、設計パターンP0 から分割して切り出した被補正領域Aの周囲に、被補正領域に光近接効果が及ぶ範囲をバッファ領域Bとして付加し、被補正領域にバッファ領域を加えた範囲を光近接効果被計算領域Cとする方法である。補正値を得るために要する計算は光近接効果被計算領域で行い、本計算結果に基づき得られた補正解のうち、被補正領域についての補正解を補正マスクパターンP1 へ戻し、次の被補正領域の計算へと進む。図53において、BはAのバッファ領域であり、Cは近接効果被計算領域であり、cは補正完了近接効果被計算領域であり、bはcのバッファ領域部分であり、aは被補正領域の補正解である。
図54(a),(b)は、図53のA近傍を拡大した図であり、被補正領域Aは補正完了領域((1)〜(4))、及び未補正領域((5)〜(8))に囲まれている。図54(a)は従来の補正法における被補正領域とバッファ領域を示し、図54(b)は実際の被補正領域とバッファ領域とを示している。図54(a)に示すように従来法では、光近接効果被計算領域として補正装置に入力される図形は、マスクパターン全領域の補正の進行度に関わりなく、被補正領域A、バッファ領域B共に、未補正の設計パターンである。このため、各被補正領域におけるバッファ領域内のパターンは、補正進行上は補正完了パターンb及び未補正パターンBとなるっているはずである。それにも拘らず、各光近接効果被計算領域の補正計算の際には全て未補正のパターンBをバッファ領域として入力するため、バッファ領域内のパターンが補正前後で大きく異なる場合には、被補正領域内で正しい補正解を得ることができない。
また、図55は被補正領域A1〜A4に分割された被補正マスクパターンの分割辺近傍の拡大図で、被補正領域とバッファ領域の組み合わせにより、各領域が何回重複して補正計算されるかを示した図である。Lb はバッファ領域となる範囲であり、S1〜S4は補正計算を1回〜4回行う領域を示す。図55に示されるように、補正計算は各被補正領域毎に光近接効果被計算領域全域にわたるため、バッファ領域となる領域に関しては全て未補正パターンを重複して2回(S2)から4回(S4)補正計算・図形処理をすることになり、多大な計算時間を浪費することになる。
大領域のマスクパターンを分割して分割領域毎に補正をしていくにあたり、従来法ではバッファ領域として補正計算に入力する図形群を未補正図形群としている。
この方法の第1の問題点としては、既に補正計算を完了し補正解が算出された領域についても未補正のパターンをバッファ領域として光近接効果被計算領域に取り込むため、実際に全分割領域補正操作終了後に配置されるパターンと補正処理の分だけ異なるパターンがバッファ領域に入力されてしまう。このため、真の補正解からの誤差が生じてしまう。また、第2の問題点として、大領域のマスクパターンを分割して補正する際、バッファ領域については重複して計算を行うため、無駄な計算を行う。
この発明は前記実情に鑑みてなされたものであり、近接効果補正のための計算時間の短縮及びパターン精度の向上をはかり得る光近接効果補正方法及び装置を提供することを目的とする。特に、バッファ領域として光近接効果の及ぶ範囲を光近接効果被計算領域に含め計算するとき、重複した不要な計算を減らし、さらに解に到達するまでの時間を短縮することのできる光近接効果補正方法及び装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、作成されたマスクデータを検証することが可能な光近接効果補正方法及び装置を提供することである。
この発明の第3の目的は、上記の補正及び検証をコンピュータにより実施するための光近接効果補正プログラム及び光近接効果検証プログラムを提供することである。
この発明に係る光近接効果補正方法は、LSIパターン形成工程におけるパターン忠実度を制御するための光近接効果補正方法であって、前記マスクパターン中の被補正マスクパターンを所定の大きさの被補正領域に分割するステップと、分割された被補正領域から一つ選択し、この選択された被補正領域の周囲にバッファ領域を付加して光近接効果被計算領域を設定するステップと、前記光近接効果被計算領域に関してリソグラフィー工程の全部又は一部をモデル化したシミュレータの計算結果、若しくは予め用意した補正ルールに基づいて光近接効果補正を施すステップと、前記光近接効果被計算領域についての補正が終了後、前記光近接効果被計算領域中の前記被補正領域における補正結果を取り出し、この補正結果を被補正マスクパターン中の前記被補正領域の補正結果として獲得するステップと、前記光近接効果補正計算領域を設定するステップにおいて、光近接効果被計算領域内のバッファ領域中に、既に被補正領域として補正を完了した領域が含まれる場合、前記バッファ領域中の補正完了領域について、前記マスクパターンの代わりに補正完了後のパターンを用いて光近接効果補正が行われるように前記光近接効果補正実施ステップを制御するステップとを具備することを特徴とする。
前記光近接効果ステップは、前記バッファ領域中の前記補正完了領域に対しては、光近接効果補正を施さないようにしても良い。
このような光近接効果補正方法及び装置では、入力された分割被補正領域について、当該領域の周囲に光近接効果の及ぶ範囲を考慮したバッファ領域が設定される。このとき、被補正領域とバッファ領域を合わせて光近接効果被計算領域と設定する。バッファ領域については、補正完了領域と重複するか否かを判断し、重複しない領域については未補正図形群を、また重複する領域については補正完了図形群を、補正処理における初期入力図形群と設定する。これにより、光近接効果被計算領域について、補正解に近いパターンを初期入力図形として補正計算を開始することができる。
次に、モデル計算その他の方法により光近接効果被計算領域における各図形及び図形群に対する補正値又は補正図形を算出し、これらの補正値又は補正図形に従って各図形及び図形群を補正する図形処理を行う。この処理において、バッファ領域に含まれ、初期入力が補正完了図形群であった領域については、本図形処理中に初期入力図形をそのまま使い、補正計算・図形処理を省略する。これにより、不要な図形処理操作及び計算を回避することができ、高速に補正解を得ることができる。上記処理は設計データ上で行ってもよく、またデータ変換等の加工処理を施した後のデータに対して行ってもよい。
この発明(第1〜第5の実施の形態)によれば、ルールベース補正とシミュレーションベース補正を組み合わせて行うことにより、ルールベース手法のように誤差を生じることがなく、かつシミュレーション手法のように多大な時間を要することもなく、マスクパターンに対する光近接効果補正を良好に行うことが可能となる。従って、光近接効果の影響を極めて少なくした露光を行うことを可能とし、ウェハ等に形成する微細パターンの精度向上に寄与することができる。
この発明(第6〜第10の実施の形態)によれば、光近接効果の及ぶ範囲に対応した補正量を用いるため、隣接する図形との距離のみに対応した補正量を用いる方法と比較して、補正の精度を十分に高くすることができる。また、光近接効果の及ぶ範囲内のみをパラメータ化することができ、さらに予めテーブルを用意しておく必要はなく、新しいレイアウトを見つける毎に補正量を計算すれば良いので、ユーザにとって簡便なシステムとなり得る。また、補正結果については、トレーニングデータ毎に露光シミュレーションを行うことにより、補正が正しく行われたかを検証することが可能となる。
この発明(第11〜第12の実施の形態)によれば、パターンごとにパターンマッチング領域を設定し、パタ一ンマッチング領域ごとに補正テーブルを参照するので、パターンを予め分割したり、補正対象点を設定する必要がない。またパターンごとに補正テーブルを参照するので、テーブル参照回数を最小にすることが出来る。
また、パターンマッチング領域内の他層の情報も取り込むことが出来、他層との相関関係で生じる光近接効果を補正することが可能である。また、他層を同時に補正することも可能である。又、コンタクトホールの補正方法によれば、セリフ等を付加することなく単純な形状で光近接効果補正を行うことが可能であり、マスク作成が容易になる。また、従来方法と比べ、非周期配置や2次元的に配置されたコンタクトホールに対しても光近接効果補正が可能になる。
更に、同一のパターンマッチング領域を持つパターンに関しては一回だけブロセスシミュレーシヨンを行えば良いので効率が大幅に向上する。
この発明(第1〜第12の実施の形態)によれば、必要十分な補正テーブル(または検証テーブル)が随時作成される。例えば、ルールベース手法で用いられるテーブルは、予め用意する必要があるため、L&S(ライン and スペース)等の普遍的な(一般化された)パラメータに対し、補正値が対応されている。
一方、本願では、1次元であっても、2次元であっても、対象とするレイアウトに含まれる全てのパターンの配置が抽出されている。従って、本願による補正テーブルを解析することにより、前記レイアウトの傾向を認識することができる。又、検証テーブルによれば、補正した場合であっても、エラーが許容範囲内に治められない配置を検出することが可能となり、この検出された配置を設計禁止の配置として設計者にフィードバックすることもできる。
更に、テーブルに含まれるそれぞれの配置がレイアウト中に幾つ含まれるかをカウントすることにより、含まれる個数の多い配置に光学条件を適合させるという更なる利用も可能となる。更に、テーブルに載っている特定の配置を、人手等で加工したものと交換することも可能である。
この発明(第18〜第21の実施の形態)によれば、真の補正解からの誤差のできるだけ少ない適切な補正解を得ることができ、近接効果補正のための計算時間の短縮及びパターン精度の向上をはかり得る。さらに、バッファ領域として光近接効果の及ぶ範囲を光近接効果被計算領域に含め計算するとき、重複した不要な計算を減らし、さらに解に到達するまでの時間を短縮することができる。つまり、精度の高い光近接効果補正を高速に行うことができるため、光リソグラフィー技術を集積度の高い微小なデバイス製造適用することが可能になる。
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
(第1の実施形態)
先ず、図1に、本発明の第1の実施の形態に係わるマスクの光近接効果補正の概略手順を示す。補正対象データが入力されると、該データ中で各々パターンとその回りのレイアウトに対応して予め求めておいた補正値を用いて補正(以下ルールベース補正と称する)を行う部分と、シミュレータに基づき補正量を算出して補正(以下シミュレーションベース補正と称する)を行う部分とに分別される(ステップS1,S2)。
例えば、中央演算処理装置のゲート配線のゲート層に対し光近接効果補正を行うことを考える。中央演算処理装置の概略レイアウトは、図2に示すような構成となっている。図中の参照符号101はキャッシュメモリ、参照符号102は浮動小数点演算ユニット、参照符号103は整数演算ユニットである。パターンの特徴としては、キャッシュメモリ中は平行な辺が長い多角形が少なく、反対にそれ以外の領域は平行な辺の部分が長い多角形が多いという違いがある。ゲートパターンにおいては、拡散層と重なりを持つ活性ゲートの幅が回路の電気的特性上極めて重要であり、平行な長い一対の辺間の距離の寸法精度がより重要となる。−方、キャッシュメモリ中のゲート層のパターンは全体的にパターンの忠実度が向上することが必要である。
そこで、このような違いを利用して、メモリ中のゲート層にはシミュレーションベースの補正を行い(ステップS3)、それ以外の部分のゲート層には活性ゲート幅のみに注目したルールを用いたルールベース補正を適用する(ステップS4)。この後、分割された、それぞれ光近接効果補正が施された領域が統合される(ステップS5)。中央演算処理装置のレイアウト中にメモリが占める面積は数10%以上あるが、階層化されているため、補正対象の面積は延べ面積と比較してずっと小さく、速度の遅いシミュレーションベース補正を行うことが可能である。シミュレーションベース補正は、従来例で説明したような光学像のシミュレータを用いるか、或いは露光プロセスまで含めたシミュレータを用いて行えばよい。ルールベース補正の方法について、以下に具体例を述ベる。
ここでは最も簡単な例として、注目エッジから隣接パターンまでの距離に応じて補正を行うことにする。まず最初に下記の表3に示すようなテーブルを用意する。なお、補正ルールは、露光波長=365nm、NA=0.5、σ=0.7、ハーフトーンマスク(透過率5%,位相差180°)とし、補正値は注目エッジをエッジと垂直方向に補正する距離、+は注目エッジのあるパターンを太くする方向、−はその反対方向である。
補正値は表3中に示す露光やマスクの条件下で求めたものであり、露光条件が変われば新しく求める必要がある。テーブルを用意した後、例えば図3に示すレイアウトを各ラインの幅方向についてのみ補正することにする。ラインの長辺の中点に注目点を設定する。まず、P1の注目点に関しては、隣接するパターンは2μm以上離れている。従って、表3から補正値は−0.03μmと読みとられ、注目点P1上の辺をパターン内側(紙面に向かって左)に移動する。また、注目点P2に関しても隣接する図形が2μm以上離れているので補正値は−0.03μmで、今度は注目点P2上の辺をパターンを内側に移動する。短辺については、長辺が移動した分だけ延長/短縮する。P3〜P10の点に関しても同様の処理を行う。
この例では、注目点から隣接するパターンまでの距離が全てテーブルに載っているが、載っていない場合は、そのような距離の注目点に関するシミュレーションベース補正を行い補正値を得る。そこで得た補正値は、新たにテーブルに追加する。以上のルールベースの補正は、テーブルを参照するだけで補正値を求めることが可能なので、シミュレーションベースで補正値を求める方法と比べて速度が格段に速い。
このようにこの第1の実施の形態によれば、キャッシュメモリ以外の領域についてはルールベース補正を行い、キャッシュメモリ部分についてはシミュレーションベース補正を行うことにより、ルールベース補正を単独で用いた場合のように予め用意したルールに当てはまらない部分で誤差が生じたり、シミュレーションへー巣補正を単独で用いた場合のように多大な時間を要することもない。従って、光近接効果補正を短い処理時間で誤差無しに行うことができる。これは、光又はX線露光法に用いるマスクを製造する際のマスクデータ作成に適しており、特に微細パターン形成のための縮小投影露光用マスクの製造に最適である。
(第2の実施形態)
次に、この発明の第2の実施の形態を図4〜図5を参照して説明する。
先ず、ゲート配線層及び拡散層が入力される(図4のステップS11,図5(a))。続いて、図形演算(論理積)等を用いて、ゲート配線層の多角形の各辺のうち、拡散層と重なりを持つものを抽出する(ステップS12)。図5(a)〜(c)においては、斜線部がゲート層であり、ドッテッドエリアが拡散層である。さらに、それらの辺のうち、同一図形内に平行な辺があり、かつ以下のいずれかの条件を満たす場合に該辺を補正対象とする(ステップS13、図5(b))。それらの条件とは、−対の平行な辺の距離がある定められた第1のしきい値以下であるか、長さと距離の比が第2のしきい値以下であるかというものである。これら補正対象の辺を図5(b)において、太線で示す。
図5(a)〜(c)に示される例では前者の条件を用い、しきい値を0.3μmとしている。前者の条件を用いれば、精度のより厳しいゲートのみを抽出して補正することが可能である。後者の条件では、線幅に対して長さが長いゲートを抽出することが可能である。長さの長いゲートは、その長辺を1次元のルール(長辺と垂直方向の図形配置に関して補正値を対応させたルール)に基づき補正するのに適している。
処理対象の辺を抽出した後、それぞれの辺に対して、辺と垂直方向に存在する図形の配置に関して補正値を対応させたテーブルを参照して補正値を得る(ステップS14)。−番簡単なテーブルの形式は、前記表3と同様の隣接する図形との距離の関数として補正値を定めたものである。続いて、補正値に基づき辺を移動する(ステップS15、図5(c))。勿論、移動した辺と整合をとるようにその他の辺も延長/短縮する。図5(c)においては、補正対象の辺について、隣接する図形を探索する方向を矢印で、補正パターンを太線で示す。
(第3の実施形態)
次に、この発明に係る第3の実施の形態を図6,図7及び図8を参照して説明する。
先ず、処理対象領域が入力される(図6(a),(b)のステップS21,S31、図6(a))。続いて、用意されたルールテーブルに基づき、ルールに合致する部分のみ補正を行う(ステップS22,S32、図7(b))。この例で用いたルールテーブルは、下記の表4に示す。なお、補正ルール及び表中の意味は前記表3と同じである。
注目エッジと隣接パターンの距離に応じて、テーブル中の補正値を適用する。表4に示されるように隣接パターンとの距離が大きい場合(本例では2.5μmより大きい場合)は、限界解像以下の補助パターンAF(図7(b)参照)を配置するようなルールが含まれる場合もある。前記図7(b)においては、補助パターンをAF、通常のルールによる補正パターンをCPとして示している。また、このルールの他にパターン角に補助パターン(serif )を配置するようなルールを使用することも可能である。
ルールに合致する部分のみを補正した後、シミュレーションベースの補正を行う。この際、2通りの方法が考えられる。第1はルール補正後の全領域をシミュレーションベースで補正する方法(ステップS23)である。この方法の利点は、ルール補正結果が完全なものでなくても、シミュレーションベース補正でさらに補正が可能なこと、最適レイアウトにより近いマスクレイアウトから補正を開始するので、シミュレーションベース補正において、解を見つけ易く、また解の精度が高くなることである。
第2の方法は、図6(b)、図8(c),(d)に示されるようにルールに合致しなかった部分のみをシミュレーションベース補正における補正点とするという方法である(ステップS33,S34)。具体例としては、図8(d)に示されるように、ルールに当てはまらなかった部分のエッジを補正幅で分割し、分割された線分の中点を補正点としてシミュレーションベース補正に入力する。シミュレーションベース補正では、入力された補正点のみに関して、その補正点のバイアス量を計算する。尚、図8(c)においては、ルールに合致する部分は太線で示されている。
この方法によれば、時間のかかるシミュレーションベース補正の補正点を削減することが可能である。ルールベース補正を行った上で、さらにシミュレーションベース補正を行った結果を、図8(e)に示す。図8(e)においては、シミュレーションベース補正後のパターンを参照符号SCPで示している。従来のルールベース補正のみにおいて、周囲のレイアウトに応じたセリフの形状をルール化するのは困難であるが、この実施の形態によればシミュレーションベース補正により自動的に適切なセリフが付加される。−方、シミュレーションベース補正のみでは発生しない補助パターンがルールベース補正により自動生成されることが分る。
前記表4では、紫外線を用いた場合を示しているが、X線によるリソグラフィーでも上記説明を同様の方法で近接効果補正が行える。
(第4の実施形態)
次に、この発明の第4の実施の形態について図9を参照して説明する。
この第4の実施の形態に係る光近接効果補正装置の機能構成を図9に示す。この第4の実施の形態による装置は大きく分けて制御部10,表示部20,入力部30,パターンデータ格納部40から構成されている。
特に制御部10は、階層を持った設計データから処理対象となる領域を入出力する機能を持った階層処理部11と、各々のパターンとその回りのレイアウトに対応して予め求めておいた補正値を用いて補正を行うルールベース補正部12と、マスクによる露光プロセスをシミュレートするプログラムに基づき補正量を算出して補正するシミュレーションベース補正部13と、入力されたレイアウトをルールベース補正の領城とシミュレーションベース補正の領域に分割し、それぞれの領域に対して2つの補正部のうちのいずれの補正を行うかを判別する判別部14とで構成される。
このような構成であれば、前述した第1〜第3の実施の形態におけるマスクの光近接効果補正を効果的に行うことができる。即ち、前述した第1〜第3の実施の形態を装置として実現することができる。
(第5の実施形態)
次に、この発明の第5の実施の形態について図10を参照して説明する。
この第5の実施の形態に係る光近接効果補正装置の機能構成を図10に示す。この第5の実施の形態による装置は大きく分けて制御部10,表示部20,入力部30,パターンデータ格納部40から構成されている。特に制御部10は、第4の実施の形態で説明した階層処理部11,ルールベース補正部12,シミュレーションベース補正部13に加え、ルールに合致せずシミュレーションベース補正の対象となる補正点を抽出する抽出部15で構成される。
このような構成であっても、前述した第1〜第3の実施の形態におけるマスクの光近接効果補正を効果的に行うことができる。即ち、前述した第1〜第3の実施の形態を装置として実現することができる。
なお、前述した各実施の形態では、マスクによる露光対象をキャッシュメモリを搭載した中央演算処理装置やゲート配線層を有するものとしたが、これに限らず各種の半導体集積回路用のマスクに適用できる。また、第1〜第5の実施の形態に係る発明はルールベース補正とシミュレーションベース補正を組み合わせて用いることを特徴としており、それぞれの補正方法に関しては実施の形態で述べた以外に適宜変形することが可能である。
以上前記第1〜第5の実施の形態によれば、ルールベース補正とシミュレーションベース補正を組み合わせて行うことにより、ルールベース手法のように誤差を生じることがなく、かつシミュレーション手法のように多大な時間を要することもなく、マスクパターンに対する光近接効果補正を良好に行うことが可能となる。従って、光近接効果の影響を極めて少なくした露光を行うことを可能とし、ウェハ等に形成する微細パターンの精度向上に寄与することができる。
以降、デバイス中のロジック部のゲート層における、活性ゲート部分の幅に注目した各実施の形態を図面を参照して説明する。活性ゲート幅の寸法は、デバイスの性能(スピード等)に大きな影響を与えるため、非常に高い寸法精度が要求されている。又、このロジックゲートのレイアウトは、一般にその幅に対し、長さが十分に長いとうい特徴を持っている。従って、ロジックゲートの光近接効果補正は、その長さ方向を無視して、幅方向の1次元にのみ注目して行われる場合が多い。
(第6の実施形態)
ここで、この発明の第6の実施の形態を図11〜図13を参照して説明する。
図11は、この発明の第6の実施の形態に係わるマスクデータ作成方法(光近接効果補正方法)を説明するためのもので、光近接効果補正の処理を示すフローチャートである。
先ず、補正対象データが入力され(ステップS41)、補正対象点が設定される(ステップS42)。ここで、補正対象点の設定例を図12(a),(b)に示す。図12(a),(b)は、ゲート層のデータで、ゲートの幅方向にのみ近接効果補正を行う場合を説明するのに使用される。尚、図12(a),(b)において、白ぬきの丸印及び黒ぬきの丸印が補正対象点を示し、パターンの辺に対して垂直に描かれた短い線がクリティカルティメンジョンのエッジを示している。
例えば、クリティカルディメンジョンのゲート幅のみを補正したい場合、ゲート層に対しデザインルールチェッカ(DRC)等を実行して0.3μm幅のゲート部分のエッジを取り出し、各エッジの中点に補正対象点(図12(a)の黒ぬきの丸印)が設定される。さらに、該補正点から近接効果の及ぶ範囲に存在するエッジも同時に補正したい場合、近接効果の及ぶ距離(この例では1.5μm)に位置するエッジも補正対象点として加えられる(図12(a)の白ぬきの丸印)。この時にもDRCを利用することが可能である。
補正対象点の抽出の他の例を、図12(b)に示す。図12(b)では、各エッジから垂直方向で近接効果の及ぶ範囲内にあるレイアウトが変化する箇所でエッジを分割し、各エッジの中心に補正対象点が設定されている(図12(b)の黒ぬきの丸印)。この方法によれば、一般に前記図12(a)における方法によるよりも補正対象点数が増加するが、反対に補正精度は向上する。
以上のように抽出された補正対象点に関し、順次補正が行われる(ステップS43)。まず、補正対象点から近接効果の及ぶ範囲の図形の1次元配置が取得される(ステップS44)。このステップの処理を図12(b)を参照して説明する。先ず、補正対象点上のエッジと垂直方向に、近接効果の及ぶ範囲の図形の1次元配置がパラメータ化される。この第6の実施の形態では近接効果の及ぶ範囲は1.5μmとしている。
図形の1次元配置をパラメータ化する場合、パラメータが図形の有/無を表現できるようにパラメータ化を行う。例えば、近接効果の及ぶ範囲をピクセル化し、図形の存在するピクセルを1、存在しないピクセルを0とする。図12(b)の注目点に関して、0.1μm/1pixcelとした場合(000111000000111000000000000111)と表される。また、別の例では、ラインを+の数値、スペースを−の数値で表現することもできる。これに従えば、図12(b)に示される例は、(−0.3+0.3−0.6+0.3−1.2+0.3)と表される。
パラメータ化された1次元配置を取得した後、その1次元配置と合致するものが補正テーブル上にあるかが調べられる(ステップS45)。図13に示される表5は、ピクセル表現の場合の補正テーブルの例である。
表5では、それぞれの1次元配置に補正量が対応している。現在の注目点に関する1次元配置が補正テーブル中に含まれる場合、それに対応する補正量が読み取られ(ステップS46)、注目点上のエッジが補正量分移動される。図12(b)に示された注目点のレイアウトに対応する補正量は表5(図13)から読み取られ、−0.016μm分エッジが移動される(ステップS47)。表5の符合に関しては、プラスが向かって右側にエッジを動かすこと、マイナスはその反対を示す。
前記ステップS45で補正テーブル中にレイアウトが見つからなかった場合、新たにそのレイアウトに対応する補正量が算出される。以下にその手順を詳しく説明する。
先ず、パラメータ化された1次元配置から補正量算出用のトレーニングデータ(レイアウトデータ)が作成される(ステップS48)。2次元方向への影響を除去するため、幅に対して長さが十分に長いラインを配置してトレーニングデータとする。
ここで、トレーニングデータの長さ方向は、光近接効果の及ぶ距離の2倍より長いことが好ましい。1次元方向にはパラメータ化されたレイアウトと一致するようにライン/スペースが配置される。図14は、図12(b)に示される注目点に関して作成したトレーニングデータを示す。続いて、近接効果補正ソフトを用いてトレーニングデータ全体を補正する。最適化(補正)されたトレーニングデータ中の注目点と補正前の注目点の距離が計算され、その距離が補正量とされる(ステップS49)。
以上の手順で求めた補正量は、レイアウトと対応させて表5と同様の補正テーブルに格納される(ステップS50)。
以上の処理が各補正対象点に対して施され、全ての補正対象点に対する光近接効果補正が実施されると、処理が完了される(ステップS51)。
前述した処理において注意する必要があるのは、光学条件(マスクおよびステッパ)が同一の場合は、共通の補正テーブルを利用できるが、条件が異なる場合には、必ずしも共通の補正テーブルを利用できないということである。またここでは、光学像のシミュレータで補正量を求めたが、現像シミュレータ、その他のウエハプロセスのシミュレータを組合せて用いても良い。
(第7の実施形態)
次に、この発明に係る第7の実施の形態を図15〜図18を参照して説明する。
図15及び図16は、この第7の実施の形態に係る光近接効果補正/検証の処理を示している。図15に示されるステップS61〜S71は、ステップS68を除き、前記図11に示されるステップS41〜S51(ステップS48を除く)と同様のステップを示している。
図15における、ステップS68では、トレーニングデータが作成される同時に、補正対象点の座標がトレーニングデータと対応されて記憶される。例えば、図12(b)における注目点に関するトレーニングデータが図14に示されている場合、図14のトレーニングデータに対応させて注目点の座標(10.2,5.0)が記憶される。図15のステップ61〜71による補正が完了した後、補正済みマスクパターンが正しいかどうかの検証処理が実行される。検証の工程では、各々のトレーニングデータについて図16に示されるステップS72〜S78の処理が行われる。
ステップS73において、トレーニングデータに対応して記憶されている補正対象点の座標が取得される。例えば、図14に示されるトレーニングデータは図12(b)の(10.2,5.0)という座標に対応している。図12(b)におけるマスクパターンを光近接効果補正した結果を図17に示す。ステップS74において、補正済みマスクパターン上で、補正対象点(注目点)から近接効果の及ぶ範囲の1次元配置が取得される。続いて、このステップS74において取得された1次元配置と同じライン/スペース配置で長さ方向には十分に長いトレーニングデータ(補正済トレーニングデータと呼ぶ)が作成される(ステップS75,図18(a))。
次に、補正済トレーニングデータが露光シミュレータに入力されシミュレーションが行われる(ステップS76)。露光シミュレータとしては、単純に光学像のみを計算する場合もあれば、現像やエッチングの効果までも含めてシミュレーションするようにしても良い。得られたシミュレーション結果と補正前トレーニングデータとは比較され、補正対象点のずれが計算される(ステップS77,図18(b))。この補正対象点のずれが、補正後のマスクを転写した際の、所望設計パターンからのズレ(エラー)である。各々のトレーニングデータに対応するエラー量は、後で表示等に用いる場合があるため記憶される。
ステップS73〜S77の工程を全てのトレーニングデータに対し行った後(ステップS72,YES)、検証結果を表示する場合は次のように行われる。補正前のマスクデータにおいて、検証結果を表示したい領域に存在する補正対象点が抽出される。続いて、抽出された補正対象点の近接効果が及ぶ範囲の1次元配置と一致するトレーニングデータが検索される。対象のトレーニングデータが検出された場合、検出されたトレーニングデータに対応して、補正後のエラー量が記憶されているので、そのエラー量を補正対象点のエラー量とする。分かりやすく表示するため、エラー量が許容範囲を越えている場合のみを表示しても良い。
(第8の実施形態)
次に、この発明の第8の実施の形態に係り、前記第6の実施の形態における光近接効果補正方法を実現可能な光効果補正装置について説明する。
図19に、この第8の実施の形態に係る光近接効果補正装置の構成を示す。この装置は、入力部65、表示部64、データ格納部63、及び制御部80から構成される。制御部80は、設計パターンの辺上に補正対象点を設定する設定部81と、任意の補正対象点を補正する際には、補正点が位置する辺とは垂直方向かつ補正対象点から光近接効果の及ぶ範囲に存在する図形の1次元配置を求めパラメータ化するパラメータ化処理部82と、該1次元配置が1次元配置と補正点に関する補正量を対応させた補正テーブル87に載っている場合はその値を補正量として参照する参照部83と、補正テーブル87に載っていない場合には、該1次元配置と同一のラインアンドスペース配置であるトレーニングデータを作成する作成部84と、トレーニングデータを光近接効果補正して補正対象点に関する補正量を求め、更に該1次元配置と求めた補正量の対応関係を補正テーブル87に追加する補正量算出・追加部85と、上記いずれかの方法で得られた補正量分、補正対象点が位置する辺を移動するエッジ移動部86とから構成される。
この装置において、前述した第6の実施の形態における処理が実行される。
(第9の実施形態)
次に、この発明の第9の実施の形態に係り、前記第7の実施の形態における光近接効果補正・検証方法を実現可能な光効果補正・検証装置について説明する。
この第9の実施の形態に係る光近接効果補正・検証装置の構成を図20に示す。この装置は、入力部65、表示部64、データ格納部63の他に、第1制御部80,及び第2制御部90から構成される。光近接効果補正を行う第1制御部80は、前記第8の実施の形態と同様である。即ち、設計パターンの辺上に補正対象点を設定する設定部81と、任意の補正対象点を補正する際には、補正点が位置する辺とは垂直方向かつ補正対象点から光近接効果の及ぶ範囲に存在する図形の1次元配置を求めパラメータ化する第1パラメータ化処理部82と、該1次元配置が1次元配置と補正点に関する補正量を対応させた補正テーブル87に載っている場合はその値を補正量として参照する参照部83と、補正テーブル87に載っていない場合は、該1次元配置と同一のラインアンドスペース配置であるトレーニングデータを作成した上でトレーニングデータと補正点座標の対応関係を記憶しておく作成・記憶部84と、トレーニングデータを光近接効果補正して補正対象点に関する補正量を求め、該1次元配置と求めた補正量の対応関係を補正テーブル87に追加する補正量算出・追加部85と、上記いずれかの方法で得られた補正量分、補正対象点が位置する辺を移動するエッジ移動部86とから構成される。
また、補正が正しいかどうかを検証する第2制御部90は、各々のトレーニングデータから対応する補正点座標を得る補正点取得部91と、補正点座標から光近接効果の及ぶ範囲の補正後のレイアウトにおける図形の1次元配置を求めパラメータ化する第2パラメータ化処理部92と、該1次元配置と同一のラインアンドスペース配置で長さ方向には十分に長いレイアウトデータを補正後のトレーニングデータとする設定部93と、補正後のトレーニングデータを露光プロセスのシミュレータに入力してシミュレーション結果を得るシミュレーション部94と、シミュレーション結果と補正前のトレーニングデータにおける補正対象点のずれを計算するずれ算出部96とから構成される。
このようにこの第8,第9の実施の形態によれば、光近接効果の及ぶ範囲に対応した補正量を用いるため、隣接する図形との距離のみに対応した補正量を用いる方法と比較して、補正の精度が非常に高い。また、幾つかのL&Sをパラメータとして補正量を対応させる場合、補正精度を保証するためパラメータの数を多くしなければならないが、この第8,第9の実施の形態を用いれば必要十分な領域(光近接効果の及ぶ範囲内のみ)をパラメータ化することができる。また、予めテーブルを用意しておく必要はなく、新しいレイアウトを見つける毎に補正量を計算すれば良いので、ユーザにとって簡便なシステムとなり得る。
また、前記第9の実施の形態によれば、補正結果については、トレーニングデータ毎に露光シミュレーションを行うことにより、補正が正しく行われたかを検証することが可能となる。
(第10の実施形態)
次に、この発明に係る第10の実施の形態について図21を参照して説明する。この第10の実施の形態では、露光、現像といったリソグラフィー工程及びエッチング工程後のパターン形状をシミュレーションするためのシミュレーションが行われる。
図21は、この第10の実施の形態のシミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態においては、まず、シミュレーション対象となるデータが入力され(ステップS81)、続いて辺上に注目点が設定される。注目点の設定方法は、図12(a),(b)を参照して説明した方法と同様である。従って、詳細な説明は省略する。次に、それぞれの注目点について以下の処理が実行される。
注目点から近接効果の及ぶ範囲のパラメータ化された1次元配置が取得される(ステップS84)。この方法も前記図12(a),(b)を参照して説明した方法と同様であり、詳細な説明は省略する。この後、パラメータ化された1次元配置がエラーテーブルに載っているか否かがチェックされる(ステップS85)。エラーテーブルとは、パラメータ化された1次元配置と、それに対応するエッジのエラー量とを対応させたテーブルで、前記表5の補正量をエラーと置き換えたものである。エラーとは、注目点に関して、所望位置とシミュレーション結果のずれ量である。エラーテーブルに載っていた場合は、その注目点の載っている辺とエラー量が対応させられる。
エラーテーブルに載っていない場合は、パラメータ化された1次元配置と同一のラインアンドスペース配置で長さ方向には十分に長いトレーニングデータが作成される(ステップS88)。トレーニングデータは図14を参照して説明したものと同様である。続いて、トレーニングデータをシミュレータでシミュレーションする。シミュレータとしては、露光や現像プロセスのシミュレータの他、エッチングプロセスまでシミュレーションするものを用いてもよい。シミュレーション結果と入力トレーニングデータにおける注目点のずれを計算し、これがエラー量とされる(ステップS89)。こうして求めたエラー量は、1次元配置と対応させて新たにエラーテーブルに追加される。
上記の方法により、各注目点の存在する辺に関するエラー量を求めた後、必要に応じて、エラー量が所定値以上の辺を表示したり、エラー量分辺を移動した図形を表示したりすれば、シミュレーション結果を分りやすく示すことが可能となる。とりわけ、エラー箇所は、ブリンク表示やハイライト表示を施すことにより確認が容易になる。
以上説明した第6〜第10の実施の形態によれば、光近接効果の及ぶ範囲に対応した補正量を用いるため、隣接する図形との距離のみに対応した補正量を用いる方法と比較して、補正の精度を十分に高くすることができる。また、光近接効果の及ぶ範囲内のみをパラメータ化することができ、さらに予めテーブルを用意しておく必要はなく、新しいレイアウトを見つける毎に補正量を計算すれば良いので、ユーザにとって簡便なシステムとなり得る。また、補正結果については、トレーニングデータ毎に露光シミュレーションを行うことにより、補正が正しく行われたかを検証することが可能となる。
(第11の実施形態)
以下、この発明に係る第11の実施の形態を図22〜図24を参照して説明する。
この第11の実施の形態の動作を図22に基づいて説明する。先ず、補正対象である被補正レイアウトが入力される(ステップS101)。続いて、被補正レイアウトに含まれる図形全てについて以下の処理が行われる。尚、図22に示されるフローチャート及びこの第11の実施の形態では全ての図形について処理する場合(ステップS102)を説明するが、DRC(デザインルールチエッカ)等を用いて抽出した特定の図形や図形の一部についてのみ光近接効果補正を行う場合でも同様である。
入力された被補正レイアウトから、被補正図形が取り出され(ステップS103)、被補正図形のパターンマッチング領域が抽出される(ステップS104)。図23及び図24はゲート配線層のレイアウトの一部で、ゲート配線の最小線幅は0.3μm、光近接効果の及ぶ範囲を1.5μmに設定した場合である。両図面において、矢印は、光近接効果の及ぶ範囲を示している。図23においては、被補正図形の外接矩形を鎖線で示し、被補正図形の外接矩形を光近接効果の及ぶ距離分太めリサイズした領域内をパターンマッチングゾーンとし、これを太い鎖線で示している。図24においては、被補正図形そのものを光近接効果の及ぶ距離分太めリサイズした領域内をパターンマッチングゾーンとし、これを太い鎖線で示している。図23に示される方法によればパターンマッチングゾーンが矩形となるため、データ処理上扱いやすい。一方、図24に示される方法は、前記図23に示される方法と比較するとパターンマッチングゾーンの面積が小さくなる場合があり、データ処理の量を削減することができる。
パターンマッチングゾーンが抽出された後、補正テーブルを参照してパターンマッチングゾーン内のレイアウトが一致するものが存在するかが調べられる(ステップS105)。図25に補正テーブルの例(テーブル6)を示す。パターンマッチングゾーン内のレイアウトを補正テーブルの索引として表現するには種々の形式が考えられ、テーブル参照のスピードもその形式に依存する。図25に示されるテーブル6は、前記図23に示されるパターンマッチングゾーンの抽出に対応したテーブルであり、抽出されたパターンマッチングゾーンが矩形の場合の例である。索引としては、パターンマッチングゾーンの大きさ(dx,dy)、パターンマッチングゾーン内の図形数、パターンマッチングゾーン内に含まれる図形の座標の順になっている。パターンマッチングゾーン内の図形の座標は、パターンマッチングゾーンの左下点を基準としたものである。パターンマッチングゾーン内に複数の図形が含まれる場合、図形の左下点座標の昇順に並べられる。この表現方法に従えば、図23に示される被補正図形のパターンマッチングゾーンは、
(3.9,6.0),3,((1.8:1.52.1:1.52.1:4.02.4:4.02.4:4.51.5:4.51.5:4.01.8:4.01.8:1.5)(0.6:1.50.9:1.50.9:4.01.2:4.01.2:4.50.3:4.50.3:4.00.6:4.00.6:1.5)・・・)
と表現される。このパターンマジチングゾーンのレイアウトが補正テーブル中に存在する場合は(ステップS105,YES)、それに対応する補正図形、この例ではshape1がテーブル6から獲得される(ステップS108)。この補正テーブル6に示されるshape1〜shape3の各補正図形を、図26(a)〜(c)に示す。
補正テーブル(テーブル6)に載っていなかった場合(ステップS105,NO)、パターンマッチングゾーンが光近接効果補正される(ステップS106)。光近接効果補正の手段としてはシミュレーションベース補正が挙げられる。パターンマッチングゾーンが光近接効果補正された後、パターンマッチングゾーンと被補正図形の補正後図形とが対応づけて補正テーブル6に追加され(ステップS107)、以降の補正に用いられる。
前述したように、この第11の実施の形態においては、ステップS103〜S108までの処理が、入力された全ての図形に対して行われる。全ての図形に対する処理が完了するとマスクデータの作成が終了となる(ステップS102,YES)。
(第12の実施形態)
次に、この発明の第12の実施の形態を図27及び図28を参照して説明する。
図27は、この第12の実施の形態の動作を示している。この図27に示されるステップS111〜S118は、前述した第11の実施の形態のステップS101〜108(図11参照)の処理と同様であるので詳細な説明は省略する。前記図22と異なっている点は、ステップS113とステップS114との間にステップS119の処理が挿入されている点である。
このステップS119では、被補正対象図形の面積が予め定められたしきい値より大きいか、被補正図形の外接矩形の面積が予め定められたしきい値より大きいか、あるいは、被補正図形の外接矩形の縦又は横の長さが予め定められたしきい値より長い場合に、図形を分割する処理が行われる。図形を軸平行に分割して矩形にした例を図28に示す。図28では、被補正対象の図形が、分割境界DBにより3つの図形に分割されている。3分割された図形に対し、これまでに説明した方法と同様に補正処理が施される。
図27のフローチャートでは、前記ステップS119の処理は、ステップS113とステップS114との間に実行されているが、これに限らず、例えば、ステップS112とステップS113との間に実行するようにしても良い。
以上のように第11,第12の実施の形態によれば、図形ごとにパターンマッチング領域を設定し、パタ一ンマッチング領域ごとに補正テーブルを参照するので、パターンを予め分割したり、補正対象点を設定する必要がない。また図形ごとに補正テーブルを参照するので、テーブル参照回数を最小にすることが出来る。
(第13の実施形態)
次に、この発明の第13の実施の形態を図29〜図32を参照して説明する。
図29には、現在処理対象としているゲート配線層の他に拡散層の図形D1 が含まれている。前記図23と同様に、光近接効果の及ぶ範囲を矢印で、被補正図形の外接矩形を鎖線で、パターンマッチングゾーンを太い鎖線で示している。注目している図形を露光、現像した場合にdX1が小さいと光近接効果に起因するショートニングにより下部のライン端が拡散層の上に来てしまう場合がある。この問題を回避する方法としては、dX1の伸ばすか、その部分にセリフを付加するか、反対に拡散層をdX2分小さくするか、以上の3つの方法を複合的に用いるか等が考えられる。
このような処理対象層以外との相関関係を考慮しながら光近接効果補正を行う場合には、パターンマッチング領域内に含まれる他層の図形のレイアウトも補正テーブルの素引情報に含め、対応する補正図形としては、被補正図形の補正パターン、他層の被補正図形、または、その両方を対応させるかすればよい。ゲート配線層と拡散層を同時に補正する場合に用いる表の例を図30にテーブル7として示す。素引部はパターンマッチング領域中のレイアウトであり、基本的に前記図25に示される前記テーブル6と同様である。但し、テーブル6では1層の図形のみのレイアウトが素引になっていたのが、このテーブル7では、2層の図形のレイアウトが索引になっている。また、補正図形としては、ゲート配線層と拡散層の両方が対応している。このゲート配線層の補正図形shape1〜3を図31(a)〜(c)に、拡散層の補正図形shape4〜6を図32(a)〜(c)に示す。
この第13の実施の形態によればパターンマッチング領域内の他層の情報も取り込むことが出来、他層との相関関係で生じる光近接効果を補正することが可能である。また、他層を同時に補正することも可能である。
(第14の実施形態)
次に、この発明に係る第14の実施の形態を図33(a),(b)を参照して説明する。
図33(a)は、補正前のコンタクトホールのレイアウトを表している。コンタクトホールの大きさは0.3μmである。補正は、前記第11の実施の形態における図22で説明した手順と同様に行なわれる。補正テーブルではパターンマッチング領域のレイアウトを素引として、補正済み図形を対応させる。
図33(b)には、前記図33(a)における注目図形の補正前後を拡大して示している。ここでは、前記第14の実施の形態に従い、各辺を辺と垂直方向にバイアスすることにより補正が行われている。光近接効果の及ぶ範囲は1.5μm、輸帯照明(遮蔽率2/3)、波長248nm、σ=0.75、NA=0.6の各光学条件を用いている。
このようなコンタクトホールの補正方法によれば、セリフ等を付加することなく単純な形状で光近接効果補正を行うことが可能であり、マスク作成が容易になる。また、従来方法と比べ、非周期配置や2次元的に配置されたコンタクトホールに対しても光近接効果補正が可能になる。
(第15の実施形態)
次に、この発明の第15の実施の形態を図34を参照して説明する。この第15の実施の形態は、未補正のレイアウトや補正済みのレイアウトに関して光近接効果の影響を検証する方法である。
検証しようとするレイアウトが入力され(ステップS121)、検証しようとするレイアウトに含まれる全ての図形に対し以下の処理が施される(ステップS122,NO)。
先ず、被検証図形が抽出され(ステップS123)、この被検証パターンのパターンマッチング領域が抽出される(ステップS124)。このパターンマッチング領域は前記図23及び図24において説明したものと同じである。続いてこのパターンマッチング領域のレイアウトに対し検証テーブルが参照される(ステップS125)。検証テーブルは、パターンマッチング領域のレイアウトを素引とし、被検証図形をプロセスシミュレーションした結果を対応させたものである。つまり、前記テーブル6の索引部は同様で、補正図形の替わりに被検証パターンをシミュレーションした結果が格納されている。
検証テーブルにパターンマッチング領域のレイアウトが登録されている場合には(ステップS125,YES)、この検証テーブルからシミュレーション結果が取得される(ステップS128)。
検証テーブルにパターンマッチング領域のレイアウトが登録されていない場合(ステップS125,NO)、このパターンマッチング領域に対し、プロセスシミュレーションを施し、シミュレーション結果が得られる(ステップS126)。被検証図形のプロセスシミュレーション結果としては、光学像の特定の光強度の等高線が一般的である。プロセスシミュレータとしては、光学像、現像後のレジスト形状、エッチング後の形状を予測するシミュレータが想定される。又、得られた結果は、検証テーブルにパターンマッチング領域とシミュレーション結果(パターン)とが対応するように追加登録される(ステップS127)。
この第15の実施の形態では、前述したような検証処理が被検証レイアウト内の全てのパターンに対して行われる。
この第15の実施の形態による光近接効果の検証方法によれば、同一のパターンマッチング領域を持つパターンに関しては一回だけプロセスシミュレーションを行えば良いので効率が大幅に向上する。
(第16の実施形態)
次に、この発明に係る第16の実施の形態を図35を参照して説明する。
図35には、この第16の実施の形態に係る光近接効果補正装置の概略構成が示されている。装置は大きく分けて、制御部110、表示部120、入力部130、パターンデータ格納部140、補正テーブル150から構成されている。
特に制御部110は、パターンマッチング領域抽出部111と、補正テーブル参照部112と、補正テーブルにパターンマッチング領域が載っていなかった場合、パターンマッチング領域を光近接効果補正して補正テーブルに追加する補正・追加部113と、補正テーブルに載っている補正パターンを取得する取得部114とから構成される。
この第16の実施の形態によれば、前述した第11〜第14の実施の形態における各種光近接効果補正を1つの装置として実現することができる。
(第17の実施形態)
次に、この発明に係る第17の実施の形態を図36を参照して説明する。
図36には、この第17の実施の形態に係るマスクデータ検証装置の概略構成が示されている。尚前記第16の実施の形態と同様の構成要素が適用できる場合には、前記図35と同様の参照符号を付けている。
この第17の実施の形態のマスクデータ検証装置は、大きく分けて、制御部110′、表示部120、入力部130、パターンデータ格納部140、補正テーブル151から構成されている。
特に制御部110′は、パターンマッチング領域抽出部111と、検証テーブル参照部115と、検証テーブルにパターンマッチング領域が載っていなかった場合、パターンマッチング領域にプロセスシミュレーションを施して検証テーブルに追加するシミュレーション・追加部16と、検証テーブルに載っている検証パターン(シミュレーション結果)を取得する取得部17とから構成される。
この第17の実施の形態によれば、前述した第15の実施の形態における検証方法を1つの装置として実現することができる。
以上詳述したように、この発明に係る第11〜第12の実施の形態によれば、パターンごとにパターンマッチング領域を設定し、パタ一ンマッチング領域ごとに補正テーブルを参照するので、パターンを予め分割したり、補正対象点を設定する必要がない。またパターンごとに補正テーブルを参照するので、テーブル参照回数を最小にすることが出来る。
また、第13の実施の形態によればパターンマッチング領域内の他層の情報も取り込むことが出来、他層との相関関係で生じる光近接効果を補正することが可能である。また、他層を同時に補正することも可能である。
また、前記第14の実施の形態によるコンタクトホールの補正方法によれば、セリフ等を付加することなく単純な形状で光近接効果補正を行うことが可能であり、マスク作成が容易になる。また、従来方法と比べ、非周期配置や2次元的に配置されたコンタクトホールに対しても光近接効果補正が可能になる。
更に、第15の実施の形態による光近接効果の検証方法によれば、同一のパターンマッチング領域を持つパターンに関しては一回だけブロセスシミュレーシヨンを行えば良いので効率が大幅に向上する。
ここで、前述した第1〜第17の実施の形態による効果を改めて説明する。前記各実施の形態により、必要十分な補正テーブル(または検証テーブル)が随時作成される。
例えば、ルールベース手法で用いられるテーブルは、予め用意する必要があるため、L&S(ライン and スペース)等の普遍的な(一般化された)パラメータに対し、補正値が対応されている。
一方、本願では、1次元であっても、2次元であっても、対象とするレイアウトに含まれる全てのパターンの配置が抽出されている。従って、本願による補正テーブルを解析することにより、前記レイアウトの傾向を認識することができる。又、検証テーブルによれば、補正した場合であっても、エラーが許容範囲内に治められない配置を検出することが可能となり、この検出された配置を設計禁止の配置として設計者にフィードバックすることもできる。
更に、テーブルに含まれるそれぞれの配置がレイアウト中に幾つ含まれるかをカウントすることにより、含まれる個数の多い配置に光学条件を適合させるという更なる利用も可能となる。更に、テーブルに載っている特定の配置を、人手等で加工したものと交換することも可能である。
次に、この発明に係り、光近接効果補正にかかる時間を削減すると共に、パターンの精度を向上する実施の形態であって、特に、重複した不要な計算が減らされた光近接効果補正方法の実施の形態を説明する。
(第18の実施形態)
先ず、この発明に係る第18の実施の形態を図37〜図39を参照して説明する。
図37及び図38は、この発明の第18の実施の形態に係わる光近接効果補正方法を説明するためのもので、図37は近接効果補正の手順を示すフローチャート、図38は補正の実行方法を示す図である。この第18の実施の形態では、大領域のマスクパターンが、計算機の中央演算処理装置及び内部記憶装置の性能に適した面積に分割され、光近接効果補正処理が行われる。更に、マスクパターンは、光露光やX線露光によりウェハ上に転写されるとする。
まず、補正を要する設計パターンD0 が入力され(ステップS131)、適当な大きさの被補正領域A11,A12…に分割される(ステップS132)。そして、分割された設計パターンが補正が施される補正実行レイヤL0 にコピーされる。次に、L0 における分割領域について順々に補正計算が行われる。補正の進行状況は補正進行表Tc に記録される。補正を実行するに当たって、補正すべき領域が残存するかどうかが判断され(ステップS133)、無ければ光近接効果補正処理は終了する(ステップS138)。残っていれば、L0 から被補正領域Apqが選択され(ステップS134)、周囲にバッファ領域としてBpqを付けて切り出し、補正計算レイヤL1 にコピーされる。
次に、補正進行表が参照され、バッファ領域Bpq中の補正完了領域をbとし、残りのバッファ領域をBとして、Apq,b,Bを併せて近接効果被計算領域RLが設定される(ステップS135)。bについては、補正処理中に補正計算(理想像とのずれ量の測定や測定結果に基づいたエッジの再配置)を省略するように指定される。BはApqと共に補正処理を施す対象とする。また、設計パターンからRL に対応する領域がRD として切り出され、計算パターン参照レイヤD1にコピーされる。
次に、RL に関し、RD を参照しながら補正計算及び補正処理が行われる(ステップS136,137)。RL に関して補正処理完了後、Apqに対応する補正完了パターンapqがL1 より切り出され、補正進行レイヤL0 の相当する領域に置き換えられる。そして、補正進行表Tc が更新され、未補正領域が残っていればまたL0 から被補正領域を一領域選択して補正ルーチンに入り、残っていなければ終了する(ステップS133)。
(第19の実施形態)
次にこの発明に係る第19の実施の形態を図39を参照して説明する。
この第19の実施の形態では、並列処理により有限個の分割領域に対して一括して補正操作を加える時の手順について説明する。図39に、4つの並列処理により光近接効果補正を行う場合の例を示す。補正処理の流れは前記図37に準ずるが、隣り合う領域を同時に並列処理を行うことのないように設定され、バッファ領域中に補正完了領域が最大限に取り込まれるように補正処理の順番が決定される(Tn )。
図39の補正進行中の図は、上記補正処理において4番目の処理領域までの補正を終了し、5番目の処理領域の補正を行う様子を示している。同時に選択された被補正領域A32−A55についてのバッファ領域BA32 −BA55 において、補正完了領域と未補正領域の占める部分がそれぞれb1 −b4 ,B1 −B4 と、周囲の領域の補正の進行度に応じて異なってくる。このため、それぞれのバッファ領域に関して補正進行表(Tc )を参照し、バッファ領域中補正を完了した領域(b1 −b4 )については補正処理を省略するように指定して並列処理へまわし、補正計算・処理が行われる。
図39において、A32,A34,A53,A55は被補正領域であり、BA32 ,BA34 ,BA53 ,BA55 は前記被補正領域A32,A34,A53,A55のバッファ領域を示し、B1−B4は未補正のバッファ領域を示し、b1〜b4は補正済みバッファ領域を示し、AD1−AD4は被補正領域の設計パターンを示し、BD1−BD4は前記被補正領域の設計パターンAD1−AD4のバッファ領域を示している。
(第20の実施形態)
次に、この発明に係る第20の実施の形態を図40〜図41を参照して説明する。図40は、階層処理装置を用いて光近接効果補正を行うときの動作を示している。
階層処理を行うに当たり、入力された補正対象領域(ステップS141)に対して、ステップS142では階層処理マネージャにより被補正セルがバッファ領域情報を含んで抽出される。このときの抽出される情報は、セル名や座標等である。次に、全ての領域の補正が終了したか否かが判断され(ステップS143)、終了しておれば補正処理を終了(ステップS148)し、未補正領域が残っていればステップS141へ進み、被補正セルが選択される。
次に、被補正セルに、バッファ領域が付加されて近接効果被計算領域と設定される(ステップS145)。このとき、バッファ領域中補正が完了している領域には、設計パターンではなく補正完了パターンが取り込まれ、同じ補正計算・図形処理を省略するように指定される。そして、近接効果被計算領域に対してモデル計算・補正値算出が施され(ステップS146)、補正図形処理が加えられ(ステップS147)た後に前記ステップS143に戻る。
次に、階層処理を考慮した近接効果補正の進行について、図41(a)〜(d)を参照して説明をする。尚、C1 −C5 はセルを、Tc は補正進行表を、Uは未補正を、Cは補正済みを、Aは被補正セルを、bはバッファにおける補正完了領域を、Bはバッファにおける未補正領域を、aはAの補正後領域を、b′はBの補正後のパターンを示している。
ここでは、セルC1 −C5 について光近接効果補正が行われる際、セルC1 −C2 の補正は完了し、セルC3 に対して補正計算・処理を行う場合を仮定する。補正の進行状況は図41(d)に示される補正進行表Tc に記載される。被補正セルAのバッファ領域中に含まれる補正完了セルC1 ,C2 の一部は補正完了領域bとして光近接効果補正被計算領域に取り込まれ、未補正セルC4 ,C5 の一部は未補正領域Bとして取り込まれる。bに関しては補正処理が省略され、AとBに関して補正計算及び図形処理が施される。この結果から、Aの領域の補正結果であるaを取り出し、セルC3 に対する補正結果とする。次にTc の補正進行記録が更新され、セルC4 の補正へと処理が進む。
(第21の実施形態)
次に、この発明に係る第21の実施の形態を図42を参照して説明する。図42は、この第21の実施の形態における、光近接効果補正処理を行うマスクデータ処理装置の基本構成を示す。
このマスクデータ処理装置のハードウェアは、メモリ161、制御部162、パターンデータ格納部163、表示部164、入力部165で構成される。また、ソフトウェアモジュールは領域分割部166、モデル計算部167、補正計算部168、図形処理部169で構成される。
設計データは、パターンデータ格納部163からメモリ161に引き出され、領域分割部166にて適切な領域に分割され、モデル計算部167においてこの領域内のパターンに関して指定された条件におけるモデル計算が実行される。次に、補正計算部168でモデル計算結果から補正量が算出され、図形処理部169においてエッジの再配置や変形などの補正図形処理が行われる。補正結果は表示部164において表示する。
このように前述した第18〜第21の実施の形態によれば、補正解に近い図形群を初期入力図形とできるために、バッファ領域からの光近接効果を適切に取り入れ、当該被補正領域において適切な補正解を得ることができる。さらに、バッファ領域に含まれる補正済みの領域については、更なる重複する補正処理省略できるため、計算量又は図形処理量を大幅に低減できる。図形処理を省略できる領域の大きさは、例として被補正領域を50μm×50μmの矩形とし、バッファ領域幅を5μmとして、被補正領域の領域上と左の2辺に隣接するバッファ領域が補正完了領域であるとすれば、実に550μm2 にも及び、計算量軽減の効果は明らかである。
前述した実施の形態では、ウェハ上に転写されるマスクパターンの近接効果を問題とし、これを解決する手法を示したが、電子ビーム描画によりマスクパターンを形成する際にも近接効果の影響があり、この場合も実施の形態と同様にして近接効果の補正を行うことができる。さらにこの時には、マスクに形成するパターンとして実施の形態の手法で近接効果を補正した補正パターンを参照することにより、より正確な補正が可能となる。
以上詳述したように前記第18〜第21の実施の形態によれば、真の補正解からの誤差のできるだけ少ない適切な補正解を得ることができ、近接効果補正のための計算時間の短縮及びパターン精度の向上をはかり得る。さらに、バッファ領域として光近接効果の及ぶ範囲を光近接効果被計算領域に含め計算するとき、重複した不要な計算を減らし、さらに解に到達するまでの時間を短縮することができる。つまり、精度の高い光近接効果補正を高速に行うことができるため、光リソグラフィー技術を集積度の高い微小なデバイス製造適用することが可能になる。
1,2…エッジ,10…制御部、11…階層処理手段、12…ルールベース補正手段、13…シミュレーションベース補正手段、14…領域分割手段、15…補正点抽出手段、20…表示部、30…入力部、40…パターンデータ格納部、63…データ格納部、64…表示部、65…入力部、80…制御部、81…補正対象設定手段、82…レイアウトパラメータ化手段、83…補正テーブル参照手段、トレーニングデータ作成手段、トレーニングデータ補正、補正値算出手段、86…エッジ移動手段、87…補正テーブル、90…制御部、91…補正対象点取得部、92…レイアウトパラメータ化手段、93…トレーニングデータ作成手段、94…露光シミュレーション手段、96…エラー量算出手段、101…キャッシュメモリ、102…浮動小数点演算ユニット、103…整数演算ユニット、110,110′…制御部、111…パターン領域抽出手段、112…補正テーブル参照手段、113…光近接効果補正及び補正テーブル追加手段、114…補正パターン取得手段、115…検証テーブル参照手段、116…プロセスシミュレーション及び検証テーブル追加手段、117…検証パターン取得手段、120…表示部、130…入力部、140…パターンデータ格納部、150…補正テーブル、151…検証テーブル、161…メモリ、162…制御部、163…パターンデータ格納部、164…表示部、165…入力部、166…領域分割部、167…モデル計算部、168…補正計算部、169…図形処理部。