JP2007204563A - 炭化処理装置および炭化処理方法 - Google Patents

炭化処理装置および炭化処理方法 Download PDF

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暁 若狭
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Abstract

【課題】 実験動物の死骸などを、コストや手間をかけずに安全に炭化、滅菌、減容し、特に、炭化処理後の処理槽内からの排気の安全性を確保した炭化処理装置の提供。
【解決手段】 処理槽2には、動植物の死骸または動植物からの摘出物などの有機物が収容される。処理槽2内へは、蒸気発生装置56から蒸気が供給可能である。処理槽2と蒸気発生装置56との間には処理蒸気用過熱器67,68が設けられ、蒸気発生装置56からの飽和蒸気を過熱蒸気として処理槽2内へ供給可能である。処理槽2内からの排出気体を滅菌無害化するために、処理槽2内からの排出ライン26には、滅菌用給蒸ライン82から過熱蒸気が供給される。排出ライン26の気体は、熱交換器76,77にて凝縮液化され排水される。炭化処理中、処理槽2内は真空ポンプ78の作動により負圧状態に維持される。
【選択図】 図2

Description

この発明は、主として、遺伝子操作や細菌研究などに用いられたマウスやラットなどの実験動物を、実験室内でも無害化処理可能な炭化処理装置と炭化処理方法とに関するものである。
マウス、ラット、犬、猿などの各種動物が使用されて、実験や研究がなされる場合がある。従来、これら実験動物の死骸は、実験室から専門処理施設へ運び出され、その処理施設において、下記各特許文献に開示されるように、焼却処理されている。
特開2001−50517号公報 特開平10−281419号公報
しかしながら、特に遺伝子操作や細菌研究などに用いられた実験動物は、前記実験室を有する事業所から外へ持ち出すことは、コストや搬送時の安全性の点で好ましくない。前記事業所内で実験動物を焼却処理することも考えられるが、専用設備が必要な上、匂いや煙などによる周辺環境への影響が懸念される。しかも、そもそも実験室外へ持ち出すことに変わりはなく、安全性確保の点で問題が残る。その一方、実験室内で焼却処理することは、設備上現実的とは言えない。
この発明が解決しようとする課題は、主として実験動物を、オンサイトで無害化処理することにより、処理の手間および費用の削減と、安全性確保を図ることにある。ところで、有機物を過熱蒸気により炭化処理する場合、処理槽内からの排気の安全性も確保する必要があるので、この安全確保も本発明の課題である。
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、有機物が収容され、過熱蒸気が供給される処理槽と、この処理槽内からの気体の排出ライン中に、排出気体を滅菌または無害化する排出気体加熱手段とを備えることを特徴とする炭化処理装置である。
請求項1に記載の発明によれば、処理槽内へ供給される過熱蒸気により、処理槽内の有機物を安全に炭化処理できる。また、排出気体加熱手段により、処理槽内からの排出気体(有機物からのガスおよび蒸気)を加熱して、滅菌または無害化することで、安全性を一層高めることができる。このようにして、実験動物などを安全で簡易に、低コストで処理できる。また、焼却する訳ではなく、蒸気で処理するので、実験室内などでの処理も可能となる。
請求項2に記載の発明は、前記排出気体加熱手段は、前記排出ライン内を設定温度以上に維持することを特徴とする請求項1に記載の炭化処理装置である。
請求項2に記載の発明によれば、処理槽内からの排出気体の温度が低い場合には、排出気体加熱手段により、排出ライン中の少なくとも一部において、排出ライン内を設定温度以上に維持することで、処理槽内からの排出気体を滅菌または無害化して、安全性を一層高めることができる。
請求項3に記載の発明は、前記排出気体加熱手段は、前記排出ラインへ蒸気を供給する滅菌用給蒸ラインと、この滅菌用給蒸ラインを介して前記排出ラインへ供給する蒸気を過熱蒸気とする滅菌蒸気用過熱器と、前記処理槽内からの気体の排出ラインに設けられる温度センサと、この温度センサの検出温度に基づき、前記滅菌蒸気用過熱器を制御する制御器とを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炭化処理装置である。
請求項3に記載の発明によれば、排出気体加熱手段は、排出ラインへ過熱蒸気を供給する構成である。そのため、処理槽内からの排出気体との混合が容易になされ、ムラなく確実に滅菌または無害化できる。また、有機物から発生する油脂分による火災やメンテナンス上の不都合もなく、ヒータを用いる場合と比較して取扱いが容易である。さらに、排出ラインに設けた温度センサを用いて制御することで、処理槽内からの排出気体を確実に効率よく滅菌または無害化できる。
請求項4に記載の発明は、有機物が収容され、蒸気発生装置から蒸気が供給される処理槽と、この処理槽と前記蒸気発生装置との間に設けられる処理蒸気用過熱器と、前記処理槽内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段と、前記処理槽内からの気体の排出ライン中に設けられ、蒸気を凝縮液化させる熱交換器と、前記処理槽から前記熱交換器への前記排出ラインの中途と、前記蒸気発生装置との間に設けられる滅菌蒸気用過熱器と、前記処理槽内からの気体の排出ラインに設けられる温度センサと、この温度センサの検出温度に基づき、前記滅菌蒸気用過熱器を制御する制御器とを備えることを特徴とする炭化処理装置である。
請求項4に記載の発明によれば、蒸気発生装置からの蒸気は、処理蒸気用過熱器にて過熱蒸気として、処理槽内へ供給できる。この過熱蒸気により、処理槽内の有機物を安全に炭化処理できる。また、蒸気発生装置からの蒸気は、滅菌蒸気用過熱器にて過熱蒸気として、処理槽内からの気体の排出ラインへ供給できる。この過熱蒸気により、処理槽内からの排出気体(有機物からのガスおよび蒸気)を滅菌または無害化して、安全性を一層高めることができる。その際、排出ラインに設けた温度センサを用いて制御することで、処理槽内からの排出気体を確実に効率よく滅菌または無害化できる。そして、排出ラインの気体は、熱交換器にて凝縮液化されて排出される。ところで、減圧手段により処理槽内を負圧環境に保持して処理することで、高温ガスやウィルスなどの大気中への流出を防止できる。このようにして、実験動物などを安全で簡易に、低コストで処理できる。また、焼却する訳ではなく、蒸気で処理するので、実験室内などでの処理も可能となる。
請求項5に記載の発明は、前記排出ラインは、前記処理槽内の底壁よりも上方位置に接続されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化処理装置である。
請求項5に記載の発明によれば、有機物の炭化処理中、滲出液体および凝縮液体などを処理槽から直接に排出されることが防止され、有機物からのガスと蒸気のみを排出できる。このようにして、未処理物の排出を防止することで、安全性を一層高めることができる。
請求項6に記載の発明は、前記処理槽内への過熱蒸気の供給中、減圧手段により、前記排出ラインを介して前記処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記処理槽内が負圧に維持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化処理装置である。
請求項6に記載の発明によれば、減圧手段により処理槽内を負圧環境に保持して処理することで、高温ガスやウィルスなどの大気中への流出を防止することができる。また、処理槽内の減圧時に生じる処理槽周辺の空気の流れを利用することで、処理槽外面などの冷却を図ることもできる。
請求項7に記載の発明は、前記処理槽内へ過熱蒸気を供給して前記処理槽内の有機物の炭化処理の完了後、前記処理槽の扉が開かれる際、前記減圧手段が作動されることを特徴とする請求項6に記載の炭化処理装置である。
請求項7に記載の発明によれば、処理槽の扉を開く際、減圧手段を所望のタイミングで作動することで、炭化処理された有機物からの煤の飛散を防止することができる。また、炭化処理の完了が確認されない場合には、このような処理を行わないことで、未処理物が排出ラインを介して排出されるのが防止される。
請求項8に記載の発明は、処理槽内に有機物を収容する待機工程と、前記処理槽内へ過熱蒸気を供給すると共に、前記処理槽内からの気体の排出ライン中に設けた熱交換器により蒸気を凝縮液化して排出する炭化工程とを含み、前記炭化工程前および/または前記炭化工程中、前記処理槽内からの気体の排出ライン中に熱を供給する排出気体加熱制御を行うことを特徴とする炭化処理方法である。
請求項8に記載の発明によれば、処理槽内へ供給される過熱蒸気により、処理槽内の有機物を安全に炭化処理できる。この際、排出気体加熱制御により、処理槽内からの排出気体を加熱して、滅菌または無害化することで、安全性を一層高めることができる。そして、排出ラインの気体は、熱交換器にて凝縮液化されて排出される。このようにして、実験動物などを安全で簡易に、低コストで処理できる。また、焼却する訳ではなく、蒸気で処理するので、実験室内などでの処理も可能となる。
請求項9に記載の発明は、前記炭化工程前および/または前記炭化工程中、前記排出ライン内の温度に基づき、その温度が設定温度以上になるよう、前記排出ライン中に熱を供給する排出気体加熱制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の炭化処理方法である。
請求項9に記載の発明によれば、処理槽内からの排出気体の温度が低い場合には、排出気体加熱制御により、排出ライン中の少なくとも一部において、排出ライン内を設定温度以上に維持することで、処理槽内からの排出気体を滅菌または無害化して、安全性を一層高めることができる。
請求項10に記載の発明は、前記処理槽内から前記排出ラインへの気体の排出は、前記処理槽内の底壁よりも上方位置から行うことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の炭化処理方法である。
請求項10に記載の発明によれば、有機物の炭化処理中、滲出液体および凝縮液体などを処理槽から直接に排出されることが防止され、有機物からのガスと蒸気のみを排出できる。このようにして、未処理物の排出を防止することで、安全性を一層高めることができる。
請求項11に記載の発明は、前記炭化工程は、前記処理槽内を大気圧よりも負圧に維持して行うことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の炭化処理方法である。
請求項11に記載の発明によれば、処理槽内を負圧環境に保持して処理することで、高温ガスやウィルスなどの大気中への流出を防止することができる。また、処理槽内の減圧時に生じる処理槽周辺の空気の流れを利用することで、処理槽外面などの冷却を図ることもできる。
請求項12に記載の発明は、前記炭化工程後、前記処理槽の扉を開く際、処理槽本体と扉との間に隙間を形成してから、前記排出ラインを介して前記処理槽内の空気を吸引排出することを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の炭化処理方法である。
請求項12に記載の発明によれば、処理槽の扉を開く際、所望のタイミングで処理槽内の空気を真空引きすることで、炭化処理された有機物からの煤の飛散を防止することができる。また、炭化処理の完了が確認されない場合には、このような処理を行わないことで、未処理物が排出ラインを介して排出されるのが防止される。ここで、真空引きのタイミングは、処理槽本体と扉との間に隙間が空けられた後であるから、扉の開放操作に悪影響を及ぼすおそれはない。
この発明によれば、主として実験動物を、オンサイトで無害化処理することにより、処理の手間および費用の削減と、安全性確保を図ることができる。また、処理槽内からの排出気体を滅菌または無害化することで、安全性を一層高めることができる。
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の炭化処理装置は、過熱蒸気を用いて、各種有機物を炭化、滅菌、減容する装置である。処理対象の有機物は、特に問わないが、典型的には動植物の死骸または動植物からの摘出物である。また、有機性の医療廃棄物または感染性廃棄物などでもよい。処理対象の有機物の具体例として、遺伝子操作や細菌研究などに用いられたマウス、ラット、犬、猿などの実験動物、遺伝子組換え植物、または、手術等に伴って発生する摘出臓器やガーゼなどを挙げることができる。
本実施形態の炭化処理装置は、処理対象の有機物が収容されて過熱蒸気が供給される処理槽と、この処理槽内からの排出気体を滅菌または無害化する排出気体加熱手段とを備える。
前記処理槽は、処理対象の有機物が収容される缶体状の中空容器である。典型的には、上方へ開口した処理槽本体と、この処理槽本体の上部開口を閉じる開閉可能な扉とから構成される。処理槽には、処理槽内へ過熱蒸気を供給するための処理用給蒸ライン(処理蒸気供給用配管)と、処理槽内の気体を外部へ排出するための排出ライン(排出用配管)とが接続される。
処理槽内から排出ラインへは、気体のみを排出可能とするのがよい。そのために、本実施形態では、排出ラインは、処理槽の底壁よりも上方位置に接続される。これにより、有機物の炭化処理時に生じる滲出液体や凝縮液体などが処理槽から直接に排出されるのが防止され、有機物からのガスと蒸気のみを排出して、安全性を向上できる。
処理槽内へは、蒸気発生装置からの蒸気が処理用給蒸ラインを介して供給される。その際、処理用給蒸ラインの中途に設けた処理蒸気用過熱器により、蒸気発生装置からの飽和蒸気を過熱蒸気として処理槽内へ供給可能である。
ここで、前記蒸気発生装置は、典型的にはボイラから構成される。この蒸気発生装置は、炭化処理装置とは別に構成してもよいし、炭化処理装置自体に内蔵してもよい。また、前記処理蒸気用過熱器は、処理用給蒸ラインの中途、すなわち処理槽と蒸気発生装置との間に設けられる。この処理蒸気用過熱器は、蒸気発生装置からの飽和蒸気を過熱蒸気とするものであり、典型的にはヒータから構成される。
前記排出気体加熱手段は、処理槽内からの気体の排出ライン中に、熱を供給して排出気体を滅菌または無害化する手段である。この排出気体加熱手段は、排出ラインの延出方向の少なくとも一部において、その箇所の断面全域を、設定温度以上に維持する。具体的には、排出ラインには、処理槽の出口付近にヒータを設けることで、処理槽内からの排出気体を一定温度以上に加熱して滅菌または無害化する。但し、有機物から発生する油脂分のヒータへの付着により、メンテナンスや火災などで不都合を生じ得ることを考慮すると、排出ラインへ過熱蒸気を供給して、処理槽内からの排出気体を設定温度以上に維持するのが好ましい。
具体的には、排出ラインには、処理槽出口付近へ過熱蒸気が供給され、処理槽内からの排出気体と混ぜ合わされて、滅菌無害化温度(排出気体を滅菌または無害化できる温度)以上に排出気体を少なくとも一時的に昇温する。そのために、本実施形態の排出気体加熱手段は、排出ラインへ蒸気を供給する滅菌用給蒸ライン(滅菌蒸気供給用配管)を備える。この滅菌用給蒸ラインは、一端部がボイラなどの蒸気発生装置に接続され、他端部が排出ラインの中途へ接続される。この蒸気発生装置としては、前記処理槽内への処理蒸気供給用のものを共通して使用できる。滅菌用給蒸ラインの中途には、滅菌蒸気用過熱器が設けられ、蒸気発生装置からの飽和蒸気を過熱蒸気とすることができる。この滅菌蒸気用過熱器は、本実施形態ではヒータにより構成される。ここで、前記滅菌無害化温度は、適宜に設定されるが、通常、150℃〜1000℃の温度範囲から選択された設定温度が採用される。
さらに、本実施形態の炭化処理装置には、処理槽内からの排出ラインに、排出ライン内の気体(蒸気の他、有機物からのガスを含む)を凝縮液化させる熱交換器と、減圧手段とが備えられる。
前記減圧手段は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧する手段である。この減圧手段は、処理槽内からの排出ラインに設けられる。この減圧手段により、有機物の炭化処理中には、処理槽内は大気圧よりも若干負圧に維持するのが好ましい。これにより、高温ガスやウィルスなどの大気中への流出を防止できる。
減圧手段の具体的構成について述べると、真空ポンプ、蒸気エゼクタまたは水エゼクタの内、いずれか一つまたは二以上の組合せから構成される。さらに、前記熱交換器も、排出ライン内の気体(主として蒸気であるが、有機物からのガスも含む)を凝縮液化させることで、処理槽内を負圧にするよう機能する。本実施形態では、排出ラインには、処理槽から順に、熱交換器、水封式真空ポンプが設けられる。但し、これは一例であって、たとえば、真空ポンプに代えて水エゼクタを用いることもできる。また、熱交換器の手前(処理槽側)に蒸気エゼクタを設けてもよい。さらに、減圧手段よりも後流の排出ライン上に消蒸装置を設けることもできる。
前記熱交換器への冷却水の給水の有無、前記水封式真空ポンプの作動と封水の給水の有無、処理蒸気用過熱器および滅菌蒸気用過熱器の作動などは、制御器により制御される。処理槽内からの排出気体を確実に滅菌または無害化するために、排出ラインに温度センサを設け、この温度センサの検出温度に基づき、制御器により滅菌蒸気用過熱器を制御するのがよい。この温度センサは、排出ラインと滅菌用給蒸ラインとの接続部に形成され、排出気体を加熱して滅菌または無害化する滅菌無害化処理部、またはその前後に設置される。本実施形態では、排出ラインには、処理槽出口と、その後流に配置された滅菌無害化処理部またはその出口に設けられる。
このような構成により、処理槽内からの排出気体の温度が低い場合には、排出気体加熱手段により、排出ラインへ所望の過熱蒸気を供給して、処理槽後流を滅菌無害化温度以上に加熱する。また、炭化処理のための処理槽内への過熱蒸気の供給は、排出気体加熱手段により、処理槽後流を一定温度以上にしてから行うのが好ましい。そして、炭化処理中には、処理槽出口温度が一定以上になったら、滅菌用給蒸ラインを介した排出ラインへの蒸気供給を停止するよう制御してもよい。また、処理槽内からの排出気体と、滅菌用給蒸ラインからの過熱蒸気との混合後の温度を監視しながら、滅菌用給蒸ラインから排出ラインへの蒸気量や過熱度を調整してもよい。
次に、本発明の炭化処理方法の一実施形態について説明する。本実施形態の炭化処理方法は、前記炭化処理装置を用いて、待機工程、準備工程、炭化工程、冷却工程を順次に行うことで、処理槽内に収容した有機物を炭化、滅菌、減容する方法である。
待機工程は、炭化処理装置を所定の初期状態とし、処理槽内への有機物の収容を可能とする工程である。この待機工程においては、処理槽の扉を開けて、処理槽本体内へ実験動物の死骸などの有機物を入れ、前記扉を閉じることで、処理槽内に有機物を収容できる。処理槽内への有機物の収容後、前記扉の閉鎖が確認されると、次の準備工程へ移行する。
準備工程は、減圧手段を作動させながら、排出気体加熱手段により排出ライン内の少なくとも一部(本実施形態では、排出ラインへの滅菌用給蒸ラインの接続合流部)を前記滅菌無害化温度以上に昇温する工程である。このようにして、排出ライン内の滅菌無害化温度までの昇温が確認されると、次の炭化工程へ移行する。
炭化工程は、減圧手段により処理槽内を所望の負圧状態に維持し、且つ排出気体加熱手段により排出ライン内の少なくとも一部を滅菌無害化温度以上に維持しながら、処理槽内へ過熱蒸気を供給して有機物を炭化処理する工程である。ここで、前記準備工程により、予め排出ライン内は滅菌無害化温度以上とされているので、炭化工程の初期における処理槽内からの比較的低温の排出気体も、確実に滅菌または無害化できる。設定時間の経過などにより、処理槽内の有機物が完全に炭化したと判断すると、次の冷却工程へ移行する。
冷却工程は、処理槽およびそこに収容された炭化物(炭化処理後の有機物)を冷却する工程である。この際、高温状態の処理槽内へいきなり空気を導入すると、発火するおそれもあるので、まずは飽和蒸気にてある程度まで温度を下げた後、外気を導入して冷却を図るのがよい。また、運転上不具合が生じた場合は、冷却工程中においても処理槽内からの排出気体を滅菌無害化温度以上に加熱して、確実に滅菌または無害化できるものとする。
冷却工程による処理槽の冷却後、処理槽内から炭化物(炭化処理後の有機物)が取り出される。ところで、炭化処理後に扉を開く際には、一定のタイミングで減圧手段を作動させるのがよい。これにより、炭化処理後に扉を開ける際の煤の舞い上がりが防止される。しかも、処理槽本体から扉が僅かに開いた後に、減圧するよう制御することで、扉が処理槽本体へ吸い付いて開かないという不都合が回避される。但し、このような処理は、炭化処理の完了が確認されない場合には、未処理物が後流へ流れるのを防止するために行わないのがよい。
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の炭化処理装置1の一実施例を示す図であり、図1は概略斜視図、図2は概略構成図である。また、図3は、本実施例の炭化処理装置1の処理槽2を示す概略縦断面図であり、使用状態を示している。
本実施例の炭化処理装置1は、過熱蒸気により、各種有機物を炭化、滅菌、減容する装置である。本実施例では、図3に示すようにマウスなどの実験動物(死骸)3を炭化処理する例について説明する。但し、本実施例の炭化処理装置1は、実験動物3に限らず、遺伝子組換え植物など、その他の有機物の処理にも同様に使用できる。
図1に示すように、炭化処理装置1は、後述する各構成がパネル4で覆われて構成される。また、その正面上部には、タッチパネルや各種操作ボタンなどを備える操作盤5が備えられる。さらに、上部には、緑色、黄色、赤色の各ランプ6が設けられる。これらランプ6の点滅または点灯する色により、炭化処理装置1の状態を容易に把握できる。
炭化処理装置1は、処理対象の実験動物3を収容する処理槽2を備える。作業性を高めるためには図1に示すように、処理槽2は、炭化処理装置1の手前側に配置すると共に、人の胸の高さよりも低い位置に配置するのがよい。本実施例の処理槽2は、上方へ開口した処理槽本体7と、この処理槽本体7の上部開口を開閉する扉8とを備える。
処理槽本体7は、図3に示すように、内釜9、外釜10、および釜ケース11を備える。釜ケース11は、前記パネル4などで構成され、上方へ開口した略矩形の中空ボックス状とされる。釜ケース11の上部開口には、外釜10を保持するベッド12が設けられる。このベッド12の上面には、前記パネル4の水平片13が保持され、この水平片13の中央部には、円形の外釜保持穴14が形成される。
外釜10は、上方へ開口した有底円筒状とされ、上端外周部にはツバ部15が設けられる。外釜10は、前記水平片13の外釜保持穴14に落し込まれ、釜ケース11に収容される。その際、外釜10のツバ部15は、外釜保持穴14に沿って、前記水平片13の上面にパッキン16を介して保持される。このようにして、外釜10は、その底壁17が釜ケース11の底壁18から上方へ浮いた状態で保持される。この状態では、外釜10の外面と釜ケース11の内面との間に、周側部および底部において連続的な離隔部19が形成される。ところで、本実施例の外釜10には、その周側壁20および底壁17の各外面に、断熱材21が設けられる。
内釜9は、上方へのみ開口した有底円筒状とされ、外釜10との間に隙間を空けて収容可能な大きさである。すなわち、内釜9の外径は、外釜10の内径よりも小さく、また内釜9の高さは、外釜10の高さよりも低い。さらに、内釜9の底壁22下面には、複数の脚部23が設けられる。この脚部23により、内釜9は、その底壁22が外釜10の底壁17から浮いた状態で、水平に保持される。これにより、内釜9の外面と外釜10の内面との間に、周側部および底部において連続的な通気部24が形成される。
本実施例の処理槽本体7は、上述のとおり、内釜9と外釜10とを備え、外釜10に対し内釜9が着脱可能である。そのため、掃除がし易く、また炭化処理装置1への実験動物3の搬入および搬出が容易である。すなわち、炭化処理装置1への実験動物3の搬入は、予め取り外しておいた内釜9を現場においてゴミ箱代わりとして、その内釜9へ投入すればよく、炭化処理時に外釜10へセットすればよい。しかも、内釜9を複数用意しておけば、一の内釜9を外釜10にセットして炭化処理を行っている際には、他の内釜9に新たに発生した実験動物3を捨てておき、次の炭化処理に備えることができる。さらに、内釜9を外釜10と分離しておくことで、炭化処理時の熱応力対策にも寄与する。
内釜9には、そのまま実験動物3を投入してもよいが、本実施例では、内釜9の内面に沿って内容器25を配置し、その内容器25に実験動物3を収容する。本実施例の内容器25は、薄いアルミ箔で鍋状に形成されており、炭化処理後には残った炭化物ごと、丸めて可燃ごみとして捨てることができる。
外釜10には、外釜10内の気体を外部へ排出する排出ライン26が接続される。この排出ライン26は、外釜10の周側壁20に接続され、しかも外釜10の底壁17よりも上方へ離隔した位置に開口して接続される。これにより、内釜9と外釜10との二重構造であることも伴って、炭化処理中に滲出液体や凝縮液体などが直接に、排出ライン26へ排出されるのが防止され、外釜10内からは気体のみを排出できる。すなわち、内釜9には、上方から過熱蒸気が実験動物3に当たるように供給され、その蒸気および実験動物から生じるガスや蒸気のみが、内釜9の上部開口から、内釜9と外釜10との間の通気部24を介して、排出ライン26へ排出される。万一、外釜10の底部に一時的に液体が生じても、蒸発してから排出ライン26へ排出される。
扉8は、蓋体27および蓋ケース28を備える。その内、蓋体27は、外蓋29と内蓋30とから構成される。外蓋29は、円板状とされ、上方へ球面状に緩やかに膨出して形成される。また、外蓋29の外周縁には、下方への延出部31が形成される。この外蓋29の直径は、前記ツバ部15の内径より大きく、前記ツバ部15の外径より小さい。内蓋30は、上方へ開口した有底の短円筒状とされ、その底壁32は下方へ球面状に緩やかに膨出している。内蓋30は、外釜10の内径よりも小さく形成され、外蓋29と同一軸線上に配置されて、外蓋29の下面に上端部が固定される。その際、熱応力を考慮して、周方向等間隔に複数箇所をスポット溶接などで固定される。このようにして、外蓋29と内蓋30との間には、中空部33が形成される。
このような構成の蓋体27は、内蓋30が外釜10の上部開口へ隙間をあけてはめ込まれた状態で、外蓋29の前記延出部31が外釜10のツバ部15の上面に当接されて保持される。処理槽2内の減圧時には、この当接部から外釜10内へ外気が導入可能である。また、この状態では、内蓋30の底壁32は、内釜9の上部開口に対面して配置される。ところで、内蓋30の周側壁には、前記中空部33内へ蒸気を供給するための給蒸口34が設けられる。また、内蓋30の底壁32には、蒸気の噴出口35が複数設けられる。従って、給蒸口34から前記中空部33内へ供給された蒸気は、噴出口35,35…から下方の内釜9内へ向けて噴出される。一旦、中空部33へ供給した蒸気を噴出口35から噴出させることで、蒸気の噴出速度を増すことができ、炭化処理時間の短縮を図ることができる。
蓋ケース28は、略矩形状に形成されており、後方部に配置されたヒンジ36まわりに回動することで、釜ケース11の上部開口を開閉する。蓋ケース28の中央部には、外蓋29と内蓋30とからなる蓋体27が保持される。この際、外蓋29の中央部から上方へ突出する軸材37が、蓋ケース28の中央部のやや大径穴(不図示)に上下動可能に保持され、この軸材37には圧縮バネ(コイルバネ)38がはめ込まれている。これにより、蓋ケース28に対し蓋体27は首振り可能であり、処理槽本体7に対する扉8の開閉が容易であると共に、熱応力の影響を抑えることもできる。扉8を閉めた状態では、内蓋30の噴出口35は、内釜9へ向けて配置される。仮に内釜9の下方から蒸気を供給すると、噴出口35が目詰まりを起こすおそれがあるが、本実施例では、内釜9の上方から蒸気を供給するので、そのような不都合はない。また、軸材37および圧縮バネ(コイルバネ)38は、図3に示すように、1箇所としているが、複数箇所設ける構成とすることができる。軸材37および圧縮バネ(コイルバネ)38を複数箇所設けることで、扉8の開閉時に蓋体27と釜側の接触面が良好な接触状態になるとともに、扉8を開けた際に蓋体27が垂れるのを防止することができる。これにより、蓋体27がバランス良く上下動可能になり、万一処理槽2内の圧力が高くなった場合でも、良好に圧力を逃がすことができ、安全性を一層高めることができる。
前述したように、扉8は、処理槽本体7に対しヒンジ36まわりに回動可能である。また、扉8は、付勢手段39により、処理槽本体7に対し常時開く方向へ付勢される。この付勢手段39は、コイルバネや板バネなどでもよいが、本実施例ではガススプリングから構成される。そして、このガススプリングから構成される付勢手段39は、一端部が処理槽本体7に第一ピン40まわりに回動可能に接続される一方、他端部が扉8に第二ピン41まわりに回動可能に接続される。この付勢手段39により、扉8は処理槽本体7に対し常時開く方向へ付勢されると共に、その付勢力に対抗して、手で扉8を押し込んで閉めることができる。
本実施例では、扉8を閉鎖状態へ一旦押し込めば、その後に手を離しても、ロック機構42により扉8は閉鎖状態に維持される。この閉鎖状態の解除は、機械的に行ってもよいが、本実施例では電気的に行われる。電気的に行う場合、処理槽2の高温時や、炭化処理の実施中などに、扉8を開かないよう制御できる。たとえば炭化処理中には、後述の足踏みスイッチ43などの入力を受け付けない制御を行えばよい。
ロック機構42の構成は、特に問わないが、本実施例では電磁スナッチロックが用いられる。具体的には、図3に示すように、扉8には、係合片44を備えるロック機構本体45が設けられる一方、処理槽本体7の上部には、上方へ突出して、前記係合片44への被係合部46が設けられる。扉8を閉鎖する際には、被係合部46に係合片44が自動的に係合される一方、ロック機構本体45のソレノイド49へ通電することで、被係合部46に対する係合片44の係合が解除され、前記付勢手段39の付勢力により、自動的に扉8が開放される。
ロック機構本体45の解錠操作は、非接触の近接センサなどに基づいて行ってもよいが、本実施例では足踏みスイッチ43で行われる。すなわち、本実施例では、図1の右下に図示した足踏みスイッチ43を蹴ることで、前記ソレノイド49へ通電がなされ、扉8の開放を自動で行うことができる。このような構成であるから、たとえば両手で内釜9を持って外釜10へセットしようとする場合や、手が汚れている場合でも、容易に扉8を開くことができる。ところで、図2に示すように、処理槽本体7には、扉開閉確認用近接スイッチ47が設けられる一方、扉8には、ロック機構42によるロック確認用近接スイッチ48が設けられており、これら近接スイッチ47,48および前記足踏みスイッチ43からの検出信号を用いて扉8の開閉が制御される。
処理槽2には、また図2に示すように、処理槽内温度を検出する処理槽内雰囲気温度センサ50、外釜温度を検出する外釜温度センサ51、処理槽内圧力を検出する圧力センサ52が設けられる。本実施例では、処理槽内雰囲気温度センサ50および外釜温度センサ51は、いずれも熱電対により構成される。
さらに、処理槽2には、万一の火災時に備えて、処理槽2へ水または消火剤(炭酸ガスや窒素ガスなどの不活性ガスを含む)を供給する消火手段53が備えられる。本実施例では、二酸化炭素が充填されたガスタンク54が、電磁弁から構成される消火弁55を介して、処理槽2内へ接続される。従って、万一の火災時には、ガスタンク54からの二酸化炭素を処理槽2内へ供給することで、消火作業を行うことができる。この場合、水を供給しないことで、消火後の後始末も容易である。また、消火手段としては、前記に限定されるものではなく、穿孔装置(不図示)を設けて、発火の際に手動もしくはソレノイド49やモータ(不図示)などの動力を使用してガスタンク54を穿孔装置(不図示)により穿孔させて、二酸化炭素を処理槽2内へ供給する構成とすることができる。
図2に示すように、処理槽2内へは、蒸気発生装置56からの蒸気が供給可能である。具体的には、処理槽2の扉8に設けた前記給蒸口34(図3)には、処理用給蒸ライン57を介して蒸気発生装置56が接続される。処理用給蒸ライン57には、蒸気発生装置56から順に、元蒸気弁58、蒸気セパレータ59、減圧弁60、処理用蒸気弁61,62、処理蒸気用圧力スイッチ63,64、処理蒸気用オリフィス65,66、処理蒸気用過熱器67,68が設けられる。
本実施例では、処理蒸気用過熱器67,68として用いる市販の一般的なヒータの性能を考慮して、処理用給蒸ライン57は、減圧弁60の後流において二股に分岐され、それぞれに、処理用蒸気弁(第一処理用蒸気弁61,第二処理用蒸気弁62)、処理蒸気用圧力スイッチ(第一処理蒸気用圧力スイッチ63,第二処理蒸気用圧力スイッチ64)、処理蒸気用オリフィス(第一処理蒸気用オリフィス65,第二処理蒸気用オリフィス66)、処理蒸気用過熱器(第一処理蒸気用過熱器67,第二処理蒸気用過熱器68)が設けられる。但し、ヒータの性能によっては、これらを一本にまとめてもよいし、逆に三本以上に分岐させてもよい。
本実施例では、蒸気発生装置56は、ボイラにより構成される。蒸気発生装置56は、図2に示すように、炭化処理装置1とは別体に構成される。好ましくは、蒸気発生装置56は、図4に示すように、炭化処理装置1自体に内蔵して構成することで、ボイラを別途設ける必要なく、炭化処理装置1自体の据え付けおよび移設が容易になる。
元蒸気弁58は、電磁弁から構成される。この元蒸気弁58を開閉操作することで、蒸気発生装置56から炭化処理装置1への蒸気供給の有無を切り替えることができる。従って、炭化処理装置1の運転時には、元蒸気弁58は開いた状態に維持される。
蒸気セパレータ59は、蒸気発生装置56からの蒸気の乾き度を向上する。この蒸気セパレータ59は、スチームトラップ69および第一逆止弁70を有する排蒸ライン71へ接続されている。また、排蒸ライン71の後流には、消蒸装置(不図示)を備えている。そして、蒸気セパレータ59にて乾き度を上げられた蒸気は、減圧弁60を介して圧力調整される。
各処理用蒸気弁61,62は、電磁弁から構成される。また、各処理蒸気用圧力スイッチ63,64は、それが設けられた箇所の蒸気圧力が所定値に達したか否かを検知する。処理蒸気は、減圧弁60とともに処理蒸気用オリフィス65,66によって流量制御され、蒸気の流れの有無は、前記処理蒸気用圧力スイッチ63,64または処理蒸気用オリフィス65,66の差圧から検知される。
各処理蒸気用過熱器67,68は、ヒータにより構成される。この処理蒸気用過熱器67,68は、蒸気発生装置56からの飽和蒸気を過熱蒸気とする。この処理蒸気用過熱器67,68は、オンオフ制御だけでなく、本実施例では供給電力を制御される。これにより、処理蒸気の過熱度の調整が容易であると共に、各処理蒸気用過熱器67,68の寿命を延ばすことができる。
また、処理用給蒸ライン57には、各処理蒸気用過熱器67,68より後流に、そこを通過する処理蒸気の温度を計測する処理蒸気用温度センサ72,73が設けられる。具体的には、第一処理蒸気用過熱器67の出口には、第一処理蒸気用温度センサ72が設けられ、第二処理蒸気用過熱器68の出口には、第二処理蒸気用温度センサ73が設けられる。各処理蒸気用温度センサ72,73は、本実施例では熱電対で構成される。
さらに、処理用給蒸ライン57には、第一処理用蒸気弁61と第一処理蒸気用過熱器67との間に、第二逆止弁74を介して給気弁75が設けられる。この給気弁75は、電磁弁から構成される。この給気弁75は、給気口として機能し、これを開放することで、処理用給蒸ライン57へ外気を導入可能である。ところで、第一処理蒸気用オリフィス65より上流から外気を導入する場合、その第一処理蒸気用オリフィス65にて流入空気が絞られる不都合が生じることを考慮して、第一処理蒸気用オリフィス65と第一処理蒸気用過熱器67との間に設けた分岐ラインに、第二逆止弁74を介して給気弁75を設けるのが好ましい。
処理槽2内からは、排出ライン26を介して気体を排出可能である。具体的には、図3を用いて前述したように、処理槽2の外釜10の周側壁20に排出ライン26が接続される。この排出ライン26には、処理槽2から順に、第一熱交換器76、第二熱交換器77、水封式真空ポンプ78が設けられ、この真空ポンプ78からの排水は、第三逆止弁79を介して排液ライン80から排出される。従って、処理槽2内の気体は、各熱交換器76,77にて凝縮液化されつつ真空ポンプ78にて吸引排出され、その凝縮液は下水管などへ排出される。
処理槽2内からの排出気体を滅菌または無害化するために、排出ライン26には、処理槽2出口付近に排出気体加熱手段81が設けられる。本実施例の排出気体加熱手段81は、処理槽2内からの排出気体の温度が低い場合には、その排出気体に過熱蒸気を供給して、排出気体を滅菌無害化できる温度(滅菌無害化温度)以上に昇温する手段である。これにより、炭化処理中には、処理槽後流は一定温度以上に維持される。
具体的には、処理槽2と第一熱交換器76とを結ぶ排出ライン26の中途と、前記減圧弁60と前記各処理用蒸気弁61,62とを結ぶ処理用給蒸ライン57の中途とを、滅菌用給蒸ライン82にて接続する。そして、この滅菌用給蒸ライン82には、前記減圧弁60から順に、滅菌用蒸気弁83、滅菌蒸気用圧力スイッチ84、滅菌蒸気用オリフィス85、滅菌蒸気用過熱器86が設けられる。
滅菌用蒸気弁83は、電磁弁から構成される。また、滅菌蒸気用圧力スイッチ84は、それが設けられた箇所の蒸気圧力が所定値に達したか否かを検知する。滅菌蒸気は、滅菌蒸気用オリフィス85によって流量制御され、蒸気の流れの有無は、前記滅菌蒸気用圧力スイッチ84または滅菌蒸気用オリフィス85の差圧から検知される。
滅菌蒸気用過熱器86は、ヒータにより構成される。この滅菌蒸気用過熱器86も、前記処理蒸気用過熱器67,68と同様に、蒸気発生装置56からの飽和蒸気を過熱蒸気とする。そして、滅菌蒸気用過熱器86は、オンオフ制御だけでなく、本実施例では供給電力を制御される。ところで、過熱蒸気発生用の前記各過熱器67,68,86の内部は、蒸気の出入口に絞り部を設けた構成であるため、この絞り部に凝縮水が溜まるおそれがある。前記各過熱器(ヒータ)67,68,86の内部に凝縮水がたまると、蒸気入口側に位置する絞り部付近のリード線と過熱器の金属製外筒との間で電気的回路が形成されて漏電する可能性がある。そのため、前記各過熱器67,68,86は、蒸気入口側を上とした垂直配置として上方から下方に蒸気を流すことが好ましく、凝縮水が溜まらないように排出することで、漏電を防止する構成にすることができる。
滅菌用給蒸ライン82には、滅菌蒸気用過熱器86より後流に、そこを通過する滅菌蒸気の温度を計測する滅菌蒸気用温度センサ87が設けられる。この滅菌蒸気用温度センサ87は、本実施例では熱電対で構成される。
このような構成であるから、蒸気発生装置56からの飽和蒸気は、滅菌蒸気用過熱器86にて過熱蒸気とされ、排出ライン26へ供給可能である。これにより、処理槽2内からの排出気体と、滅菌用給蒸ライン82からの過熱蒸気とは、排出ライン26と滅菌用給蒸ライン82との接続部の滅菌無害化処理部88にて混合される。そして、この滅菌無害化処理部88にて、処理槽2内からの排出気体を所定の滅菌無害化温度以上に昇温して、処理槽2内からの排出気体を滅菌または無害化した後、排出ライン26の後流へ流すことになる。また、本実施例では、処理槽2内からの排出気体と、滅菌用給蒸ライン82からの過熱蒸気とは、下方から上方に向けて流す構成にしている。すなわち、滅菌無害化処理部88へ流入する気体は、滅菌無害化処理部88の下部から流入し、混合されて滅菌または無害化された後、滅菌無害化処理部88の上部から排出ライン26を介して排出される。この構成によれば、万一処理槽2からウィルスなどを含む液体が排出ライン26に排出されたとしても、液体は重力により排出ライン26で沈降され、排出ライン26内で再加熱され、気体となって滅菌無害化処理部88へ流入する。これにより、滅菌無害化処理部88より後流へ液体を排出されることなく、滅菌または無害化を一層確実なものとすることができる。
ここで、滅菌無害化処理部88は、図2に示すように、排出ライン26の中途に区別して設ける必要はなく、単に排出ライン26の中途に滅菌用給蒸ライン82を接続して、処理槽2内からの排出気体に過熱蒸気を混合させる構成であれば足りる。ところで、図2に示すように、処理槽2と滅菌無害化処理部88との間には、処理槽出口における排出気体の温度を計測する処理槽出口温度センサ89が設けられる。また、滅菌無害化処理部88またはその出口には、その箇所の温度を計測する処理部温度センサ90が設けられる。この処理槽出口温度センサ89および処理部温度センサ90は、それぞれ本実施例では熱電対で構成される。
第一熱交換器76は、排出ライン26内の気体を凝縮させ、第二熱交換器77は、その凝縮液を冷却する。このように、本実施例では、熱交換器は、蒸気凝縮用とその凝縮液冷却用の二段に分けられており、二段目の第二熱交換器77は非凝縮性ガスを排出可能な程度に凝縮液を満たす。これにより、処理槽2内の圧力を負圧に保つとともに、冷却性を向上して節水を図ることができる。但し、場合により、第一熱交換器76と第二熱交換器77とを共通の一つの熱交換器で構成してもよい。
各熱交換器76,77には、水道水などの冷却水が流され排水される。この際、各熱交換器76,77の冷却水は、排出ライン26内の流れと並行流で流される。すなわち、冷却水は、各熱交換器76,77の冷却水配管を、排出ライン26の上流から下流側へ向けて流される。具体的には、給水タンク91からの冷却水は、給水ポンプ92、熱交用フローセッタ93、冷却水量調整弁94、熱交給水弁95を介して、第一熱交換器76へ供給後、第二熱交換器77へ供給され、真空ポンプ78の後流で、真空ポンプ78の排水と共に排水される。熱交換器76,77の冷却水を排出ライン26の流れと並行流とすることで、熱交換器76,77内での凝縮液の温度を低下させ過ぎることがなく、脂分の固着によるトラブルを未然に防止できる。また、熱交換器の能力によっては、第一熱交換器76の冷却水を対向流で流し、かつ第二熱交換器の冷却水を並行流で流すように構成することもできる。
ここで、フローセッタとは、目視流量計を組み込んだボールバルブ(不図示)であり、浮子の位置を見ながらボールバルブを調整することで流量調整できる部品である。また、冷却水量調整弁94は、本実施例では開度調整可能な弁(モータバルブなど)から構成され、熱交給水弁95は、開閉操作可能な弁(電磁弁)から構成される。ところで、真空ポンプ78からの排液ライン80には、真空ポンプ78および熱交換器76,77からの各排水(混合液)の温度を計測する排液温度センサ96が設けられる。この排液温度センサ96は、本実施例では熱電対により構成される。
給水タンク91には、元給水弁97を有する給水ライン98を介して、冷却水が供給される。給水タンク91には、ボールタップ99が設けられており、貯水量が所定に維持される。また、給水タンク91には、ボールタップ99が壊れた場合のバックアップとして、フロートスイッチ100が設けられている。給水タンク91内のオーバーフロー水は、第四逆止弁101を介して、排液ライン80へ排水される。
水封式真空ポンプ78には、前記給水タンク91内の水が封水として、封水用フローセッタ102および封水給水弁103を介して供給され、真空ポンプ78からの排水は、第三逆止弁79を介して排液ライン80へ排出される。真空ポンプ78へ給水用の封水給水弁103は、電磁弁から構成され、真空ポンプ78に連動して開かれる。真空ポンプ78には、その温度を計測するために、熱電対からなるポンプ温度センサ104が設けられる。ところで、節水のためには、前記熱交換器76,77の冷却水を真空ポンプ78の封水に使用してもよい。
排出ライン26には、第二熱交換器77と真空ポンプ78との中途位置に、外気を導入可能なリークライン105が接続されている。このリークライン105には、外気側となる末端側から、第五逆止弁106、リーク調整弁107、リーク弁108が設けられる。ここで、リーク調整弁107は、外気導入量を調整する手動弁から構成される。また、リーク弁108は、電磁弁から構成され、このリーク弁108を開くことで、排出ライン26へ所定の外気を導入できる。さらに、リークライン105には、前記リーク弁108の後流側に分岐部を有し、この分岐部には、第六逆止弁109が設けられる。この第六逆止弁109は、真空ポンプ78の入口側の圧力が所定よりも下がると、排出ライン26へ外気を導入することで、安全装置として機能する。
炭化処理中には、処理槽2内は大気圧よりも若干負圧に維持されるように、真空ポンプ78が稼動されるが、真空ポンプ78の排気能力が高いため、リーク弁108を開いて真空ポンプ78を作動させる。これにより、処理槽2内が過度の負圧となって破損するのが防止されると共に、処理槽2の扉8から処理槽2内への流入空気量が多くなり過ぎるのも防止される。しかも、リーク弁108へ空気が流入することで空気流が形成され、この空気流によって炭化処理装置1内の冷却を図ることもできる。処理槽2内部を常時若干の負圧に保つことで、高温ガスの大気中への流出が防止され、ウィルスなどの流出防止と、シール面や外釜10の冷却を図ることができる。
炭化処理装置1には、前記各構成が防水パン110上に配置され、万一の漏水を受け止める。この防水パン110には、フロートスイッチまたは漏水センサ111が設けられており、漏水の有無が検知される。万一、漏水が検知されると、炭化処理装置1の運転を停止して、封水給水弁103、熱交給水弁95、元給水弁97を閉じるなどの制御がなされる。また、炭化処理装置1には、装置内雰囲気温度を計測するための装置温度センサ112が設けられる。この装置温度センサ112は、本実施例では、熱電対により構成される。
さらに、本実施例では、図3に示すように、扉8,すなわち蓋ケース28内の中央部には、冷却ファン113が設けられる。炭化処理装置1の運転中には、この冷却ファン113が回されることで、炭化処理装置1内の異常な昇温が防止される。特に、冷却ファン113による空気の流れにより、処理槽2の扉8、ソレノイド49、消火手段53および制御器114を冷却するのが好ましい。さらに、処理槽2内には、外釜10と釜ケース11との離隔部19に、空気が流され、外釜10を冷却可能としている。
ところで、図5は、本実施例の炭化処理装置1の処理槽2の変形例を示す図であるが、この図に示すように、外釜10をジャケット構造またはパイプ巻き付け構造として、ジャケットまたはパイプ115内へ水を流すことで、炭化処理後の処理槽2の冷却を迅速に行うよう構成してもよい。この際、熱応力による割れの防止のため、所定温度まで下がってから、水冷を図るようにしてもよい。このようにして外釜10を水冷する構成の場合、水冷用の冷却水は、前記給水タンク91からの水を使用できるが、前記熱交換器76,77の排水を溜めておいて、それを利用することもできる。
制御器114は、操作盤5、ロック機構本体45のソレノイド49、ロック確認用近接スイッチ48、扉開閉確認用近接スイッチ47、足踏みスイッチ43、元蒸気弁58、元給水弁97、各処理用蒸気弁61,62、滅菌用蒸気弁83、給気弁75、リーク弁108、封水給水弁103、熱交給水弁95、冷却水量調整弁94、消火弁55、各処理蒸気用過熱器67,68、滅菌蒸気用過熱器86、真空ポンプ78、給水ポンプ92、冷却ファン113の他、各温度センサ50,51,72,73,87,89,90,96,104,112および圧力センサ52などに電気的に接続されており、各スイッチやセンサおよび経過時間などに基づき、これら各弁や過熱器およびポンプなどを制御する。具体的には、次に述べるような炭化処理方法を実行可能である。
次に、本実施例の炭化処理装置1を用いた炭化処理方法について説明する。図6は、本実施例の炭化処理装置1を用いた炭化処理方法の一例を示すフローチャートである。この図に示すように、典型的には、電源投入工程ST1、待機工程ST2、準備工程ST3、炭化工程ST4、冷却工程ST5、および終了工程ST6が順次になされる。
電源投入工程ST1では、まず、炭化処理装置1の制御に用いるすべての変数およびフラグがリセットされる。さらに、熱交換器76,77への冷却水量調整弁94が閉じられる一方、給水タンク91への元給水弁97が開かれる。また、冷却ファン113の運転が開始される。この冷却ファン113は、炭化処理装置1の電源投入中は常時運転される。そして、外釜温度センサ51により外釜温度が所定の冷却完了温度以下か否かが確認され、冷却完了温度以下の場合に限って次工程の待機工程ST2へ移行する。もし、冷却完了温度より高い場合には、所定の中断工程がなされる。その際、扉開閉確認用近接スイッチ47により、処理槽2の扉8が閉じられているか否かが確認され、扉8が開かれている場合には、ブザーやタッチパネルへの出力がなされる。
待機工程ST2でも、まず、炭化処理装置1の制御に用いるすべての変数およびフラグがリセットされる。また、制御対象の弁や過熱器などが所定の初期状態とされる。具体的には、元蒸気弁58および元給水弁97は開かれ、各処理用蒸気弁61,62、滅菌用蒸気弁83、給気弁75、リーク弁108、封水給水弁103、熱交給水弁95、冷却水量調整弁94、および消火弁55はそれぞれ閉じられ、各処理蒸気用過熱器67,68および滅菌蒸気用過熱器86への通電は遮断され、真空ポンプ78および給水ポンプ92は作動を停止状態とされる。
この待機工程ST2では、扉8の開閉操作が可能とされ、処理槽2内への実験動物3の投入がなされる。扉8の開放操作は、前述したように、本実施例では足踏みスイッチ43を操作することでなされる。足踏みスイッチ43の操作がなされると、制御器114はロック機構本体45のソレノイド49へ所定時間だけ通電し、係合片44を引き込むことで処理槽本体7の被係合部46との係合を解除する。扉8は、付勢手段39により常時開放する方向へ付勢されているので、係合片44と被係合部46との係合が解除されると、自動的に開放される。扉8を開放して、処理槽2内へ炭化処理しようとする実験動物3をセットした後、扉8を閉めればよい。扉8を一旦閉鎖すると、係合片44と被係合部46とが自動的に係合され、扉8は閉鎖状態を維持する。扉8の閉鎖は、扉開閉確認用近接スイッチ47およびロック確認用近接スイッチ48により確認される。そして、この確認がなされると、次工程の準備工程ST3へ移行する。
準備工程ST3では、給水ポンプ92を作動させ、且つ、封水給水弁103を開くと共に真空ポンプ78を作動させる。そして、その状態で、冷却水制御と排出気体加熱制御とが並行してなされる。
冷却水制御とは、熱交給水弁95を開けた状態で、冷却水量調整弁94の開度を調整する制御をいう。冷却水量調整弁94の開度調整について説明すると、まず冷却水量調整弁94を全開にしておく。そして、排液温度センサ96による排液温度が所定の排液設定温度下限値以下になると、その時間(排液低温時間)の積算を行う。この際、排液温度が前記排液設定温度下限値以下であった温度が下限値以上になると、前記排液低温時間のリセットを行う。このようにして排液低温時間の積算を行っていくが、もし排液低温時間が所定の冷却水削減設定時間に達したら、冷却水量調整弁94を閉方向へ設定作動時間だけ動かすと共に、前記排液低温時間をリセットする。一方、もし排液温度が排液設定温度上限値以上になると、冷却水量調整弁94を全開にする。このように、冷却水制御では、排液温度を検知して冷却水の水量を制御することで、節水を図ることができる。しかも、後述する炭化工程ST4中には、処理槽2内からの排出気体の凝縮液を冷却させ過ぎることによる脂分の凝固を防止できる。
排出気体加熱制御とは、処理槽2内からの排出気体を所定の滅菌無害化温度以上とすることで、排出気体を滅菌または無害化する制御をいう。具体的には、まずリーク弁108を開いた状態とするが、ここでは上述したように、真空ポンプ78は作動中である。従って、真空ポンプ78は、その手前で外気を導入されて減圧能力を抑制されながら、処理槽2内の気体を真空引きすることになる。そして、圧力センサ52による処理槽内圧力が所定の負圧範囲になれば、次に述べる滅菌蒸気供給制御を開始する。
滅菌蒸気供給制御では、まず滅菌用蒸気弁83を開ける。そして、滅菌蒸気用圧力スイッチ84が蒸気圧を検知すると、滅菌蒸気用過熱器86が次のように制御される。すなわち、まず<イ>滅菌蒸気用温度センサ87による蒸気温度が、所定の滅菌蒸気上限温度(たとえば700℃)になるように滅菌蒸気用過熱器86の電力を制御(PID制御)する。その後、<ロ>処理部温度センサ90が、所定の切替温度(たとえば500℃)以上になったら、処理部温度センサ90が滅菌制御温度(たとえば400℃)となるように滅菌蒸気用過熱器86の電力を制御(PID制御)する。ここで、<ハ>滅菌蒸気用温度センサ87が前記滅菌蒸気上限温度を超えたら、前記<イ>の制御に切り替える。また、前記<イ>〜<ハ>の制御中、万一、滅菌蒸気用圧力スイッチ84が圧力ナシを検知したら、滅菌蒸気用過熱器86への通電を遮断する。
ところで、排出気体加熱制御中、処理槽出口温度センサ89が所定の滅菌制御停止温度(たとえば400℃)以上になったら、設定時間経過後、滅菌蒸気供給制御を停止する。逆に、処理槽出口温度センサ89が前記滅菌制御停止温度未満になったら、滅菌蒸気供給制御を再開する。
以上の準備工程ST3において、処理部温度センサ90が所定の滅菌保証温度(前記滅菌無害化温度としてのたとえば300℃)以上となったことを確認すると、次工程の炭化工程ST4へ移行する。
炭化工程ST4では、給水ポンプ92を作動させ、且つ、封水給水弁103を開くと共に真空ポンプ78を作動させる。そして、その状態で、冷却水制御と排出気体加熱制御と炭化制御とが並列してなされる。冷却水制御と排出気体加熱制御とについては既に述べたので、ここでは炭化制御について説明する。
炭化制御とは、処理槽2内へ過熱蒸気を供給して、処理槽2内に収容した実験動物3を炭化および減容する制御をいう。具体的には、まずリーク弁108を開いた状態とするが、ここでは上述したように、真空ポンプ78は作動中である。従って、真空ポンプ78は、その手前で外気を導入されて減圧能力を抑制されながら、処理槽2内の気体を真空引きすることになる。そして、圧力センサ52による処理槽内圧力が所定の負圧範囲になれば、次に述べる処理蒸気供給制御を開始する。本実施例では、二つの処理蒸気用過熱器67,68を用いて、二経路から処理槽2内へ過熱蒸気を供給するので、処理蒸気供給制御は各処理蒸気用過熱器67,68について独立してなされる。
処理蒸気供給制御について説明すると、まず処理用蒸気弁61(62)を開ける。そして、処理蒸気用圧力スイッチ63(64)が蒸気圧を検知すると、処理蒸気用過熱器67(68)が次のように制御される。すなわち、まず処理蒸気用温度センサ72(73)による蒸気温度が、所定の処理蒸気設定温度(たとえば700℃)になるように処理蒸気用過熱器67(68)の電力を制御(PID制御)する。そして、処理蒸気用温度センサ72(73)が処理蒸気下限温度(たとえば600℃)以上の時間を、処理蒸気供給時間として積算する。このような処理中、万一、処理蒸気用圧力スイッチ63(64)が圧力ナシを検知したら、処理蒸気用過熱器67(68)への通電を遮断する。
このような処理蒸気供給制御を各処理蒸気用過熱器67,68について並列的に独立して行い、各処理蒸気供給時間を合算した時間により、炭化制御の終了を検知する。ここで、もし一方の処理蒸気用過熱器67(68)が故障などにより停止している場合には、所定の係数を掛けて時間調整がなされる。もし、一方の処理蒸気用過熱器67(68)だけで炭化処理を行う場合には、処理時間を長くすればよい。このようにして、所望時間だけ処理槽2内へ過熱蒸気を供給して、処理槽2内の実験動物3を炭化処理した後、各処理蒸気用過熱器67,68を停止させ、所定の遅延時間経過後に処理用蒸気弁61,62を閉じる。このようにして、炭化工程ST4が終了すると、次工程の冷却工程ST5へ移行する。
冷却工程ST5では、給水ポンプ92を作動させ、且つ、封水給水弁103を開くと共に真空ポンプ78を作動させる。そして、その状態で、冷却水制御と冷却制御がなされる。冷却水制御については既に述べたので、ここでは冷却制御について説明する。
冷却制御とは、処理槽2およびその中の炭化物(炭化処理後の実験動物3)を冷却する制御である。この冷却のために、いきなり高温の処理槽2内へ空気を導入したのでは、発火のおそれもあるので、本実施例ではまず飽和蒸気を供給して所望温度まで下げた後(第一冷却)、空気を導入してさらに冷却(第二冷却)するようにしている。
具体的には、まずリーク弁108を開いた状態とするが、ここでは上述したように、真空ポンプ78は作動中である。従って、真空ポンプ78は、その手前で外気を導入されて減圧能力を抑制されながら、処理槽2内の気体を真空引きすることになる。そして、圧力センサ52による処理槽内圧力が所定の負圧範囲になれば、各処理用蒸気弁61,62を開いて、処理槽2内へ飽和蒸気を供給する。これにより、処理槽2は、まず飽和蒸気で冷却を図られる(第一冷却工程)。
そして、外釜温度センサ51による外釜温度が冷却切替温度(たとえば200℃)以下になったら、各処理用蒸気弁61,62を閉じて、給気弁75を開き、リーク弁108を閉じる。これにより、処理槽2は、外気が導入され排出されることで冷却を図られる(第二冷却工程)。しかも、冷却空気の取入口を処理蒸気用過熱器67の上流側に設けることで、処理蒸気用過熱器67の冷却を図ることもできる。そして、外釜温度が冷却目標温度(たとえば60℃)以下になったら、冷却制御を終了する。このようにして冷却工程ST5が終了すると、次工程の終了工程ST6へ移行する。
終了工程ST6では、ブザーやタッチパネルなどにより、上述した一例の作業の終了を知らせると共に、扉8の開閉が可能とされる。そして、扉開閉確認用近接スイッチ47により扉8の開放状態を検知したら、前記待機工程ST2へ移行し、必要であれば処理槽2内へ新たな実験動物を入れて炭化処理が繰り返される。
炭化処理後に扉8を開く際には、足踏みスイッチ43により扉8の開放指令の入力があってから、給水ポンプ92の作動を開始すると共に、所定の遅延時間経過後に真空ポンプ78を作動させる。これら給水ポンプ92や真空ポンプ78の作動は、所定時間経過後には停止される。このような制御により、炭化処理後に扉8を開ける際の煤の舞い上がりが防止される。しかも、処理槽本体7から扉8が僅かに開いた後に、真空ポンプ78が作動されるので、扉8が処理槽本体7へ吸い付いて開かないという不都合も回避される。但し、このような処理は、炭化処理の完了が確認されない場合には、未処理物が後流へ流れるのを防止するために行わない。
ところで、炭化工程ST4の終了は、上述した経過時間に代えてまたはそれに加えて、凝縮液の性状を監視して検知する構成とすることができる。性状としては、凝縮液の濁度や電気伝導度などが採用される。具体的には、たとえば真空ポンプ78の前側(第二熱交換器77と真空ポンプ78との間の排出ライン26)または後側(排液ライン80)に、濁度センサまたは電気伝導度センサ116(117)を設け、そのセンサ116(117)の検出信号を監視しつつ炭化工程ST4を行えばよい。たとえば、設定時間経過後で、濁度や電気伝導度が設定値を下回ると、炭化工程ST4の終了が検知される。
また、炭化により重量がたとえば5/100程度になることを利用して、被処理物3の重量変化を監視して、炭化処理の終了を検知してもよい。この場合、たとえば処理槽2内に、内釜9の重量を検知する重量センサ(不図示)を設けておけばよい。さらに、処理槽2またはそこからの排気温度を監視して、前記炭化処理の設定時間を調整するように制御してもよい。
本発明の炭化処理装置および炭化処理方法は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、図7は、前記実施例の炭化処理装置1の変形例を示す図であるが、この図に示すように、処理槽2を複数備え、共通の制御器114にて各処理槽2を制御可能としてもよい。この場合、処理槽2,2…以外の各構成は、適宜共通化される。図示例では、排出気体加熱手段81の他、処理槽2より後流側の各構成(熱交換器76,77や真空ポンプ78など)を共通化している。
図7の構成を具体的に説明すると、各処理槽2には、共通の蒸気発生装置56からの蒸気が処理用給蒸ライン57を介して、それぞれ供給可能である。各処理用給蒸ライン57には、前記実施例と同様に、処理蒸気用過熱器67,68などがそれぞれ設けられており、蒸気発生装置56からの飽和蒸気を過熱蒸気とすることができる。各処理槽2内への蒸気供給の有無は、各処理槽2に対応した処理用給蒸ライン57の処理用蒸気弁61,62の開閉を、制御器114にて開閉制御することでなされる。
一方、各処理槽2内からの気体の排出ライン26は、共通化されて一本化され、その共通の排出ライン26に、前記実施例と同様に、滅菌無害化処理部88、熱交換器76,77、および真空ポンプ78が順次に設けられる。そして、その共通の滅菌無害化処理部88に滅菌用給蒸ライン82が接続されており、排出気体加熱手段81が複数の処理槽2,2で共通化されている。ところで、図7では、二つの処理槽2,2のみを示しているが、それ以上の処理槽2,2…を同様に設けることもできる。そして、制御器114は、複数の処理槽2,2…を交互にまたは順次に運転可能とする。あるいは、場合により、複数の処理槽2,2…を同時に運転可能に構成してもよい。
また、図7の構成に代えてまたはそれに加えて、処理蒸気用過熱器67,68を各処理槽2で共通化してもよい。図8は、図7の構成に加えて、処理蒸気用過熱器67,68などの処理用給蒸ライン57の構成も、複数の処理槽2,2…で共通化した例を示している。この場合、処理用給蒸ライン57は、処理蒸気用過熱器67,68よりも下流において、各処理槽2へ分岐して接続される。各処理槽2内への過熱蒸気の供給の有無は、前記分岐後に設けた各給蒸操作弁121の開閉を、制御器114にて制御することで行われる。
また、炭化工程ST4では、最初は飽和蒸気を流して被処理物3をたとえば100℃程度まで上昇させ、その後に処理蒸気用過熱器67,68を作動させて、処理槽2内へ過熱蒸気を供給してもよい。これにより、被処理物3によっては、いきなり過熱蒸気を供給すると、その表面のみが炭化して伝熱阻害されるのを防止できる。また、炭化処理の進み具合に応じて、処理蒸気用過熱器67,68の制御により、処理槽2内へ供給する過熱蒸気の過熱度を変化させてもよい。
さらに、炭化処理装置1の運転に、空焼モードを設けて、内釜9、外釜10、蓋体27などに付着した炭化物を焼き飛ばすようにしてもよい。また、洗浄モードを設けて、給水ポンプ92で水を圧送し、処理槽2内部を洗浄する構成としてもよい。さらに、前記熱交換器76,77には、処理槽2内からの排出気体が通る側に、温水または蒸気を供給して洗浄可能としてもよい。このような洗浄後、洗浄水の排水は、前記真空ポンプ78により行うことができる。
また、排液ライン80の排出液は、図9に示すように、気液分離部118にて、揮発性ガスおよび空気と、液体とに分離して、その気相部は活性炭層などの脱臭手段119で脱臭し、液相部は冷却手段120にて冷却後に排出するのが、悪臭防止の観点から望ましい。
さらに、前記実施例では、リーク弁108を介して外気を導入するか否かにより、減圧能力を調整したが、減圧能力の調整方法はこれに限らない。たとえば、真空ポンプ78の直前に、モータバルブなどの開度調整可能な弁(不図示)を設け、その開度調整により減圧能力を可変に構成してもよい。また、真空ポンプ78がインバータ制御可能な場合には、回転数を制御することで減圧能力を変更してもよい。
しかも、減圧手段の構成は、真空ポンプ78に限らず、これに代えて水エゼクタを用いることもできるし、さらに、処理槽2の出口(第一熱交換器76の手前)に蒸気エゼクタを設けてもよい。この場合、滅菌用給蒸ライン82から蒸気エゼクタへの蒸気供給により、処理槽2内からの気体を吸引排出する構成とすることができる。
また、炭化処理装置1の処理能力を超えて処理槽2内へ被処理物3が投入されることを防止するために、重量センサ(不図示)により被処理物3の重量を計測し、満載の判定を行うよう構成してもよい。あるいは、内釜9に、投入上限のインジケータ(目盛)を付して、満載の判定を行ってもよい。
また、処理槽出口温度センサ89による処理槽2内からの排出気体の温度と、処理部温度センサ90による滅菌無害化処理後の混合気体の温度とを見ながら、滅菌用給蒸ライン82から滅菌無害化処理部88へ供給する蒸気量を調整する構成としてもよい。
さらに、熱交換器76,77の冷却水は、チラー(不図示)により所望温度に維持するよう構成してもよい。この場合、冷却水は、熱交換器76,77とチラーとの間を循環する独立経路とされ、しかも前記熱交換器76,77において対向流で流される。
本発明の炭化処理装置の一実施例を示す概略斜視図である。 図1の炭化処理装置の概略構成図である。 図1の炭化処理装置の処理槽を示す概略縦断面図であり、使用状態を示している。 図1の炭化処理装置の変形例を示す概略構成図である。 図3の処理槽の変形例を示す図である。 図1の炭化処理装置を用いた炭化処理方法の一例を示すフローチャートである。 図1の炭化処理装置の変形例を示す概略構成図である。 図1の炭化処理装置のさらに別の変形例を示す概略構成図である。 図1の炭化処理装置の変形例を示す説明図であり、排液ラインの部分のみを示している。
符号の説明
1 炭化処理装置
2 処理槽
3 有機物(動植物の死骸または動植物からの摘出物)
26 排出ライン
56 蒸気発生装置
67 第一処理蒸気用過熱器
68 第二処理蒸気用過熱器
76 第一熱交換器
77 第二熱交換器
78 真空ポンプ(減圧手段)
81 排出気体加熱手段
82 滅菌用給蒸ライン
86 滅菌蒸気用過熱器
88 滅菌無害化処理部
89 処理槽出口温度センサ
90 処理部温度センサ
114 制御器
ST2 待機工程
ST4 炭化工程

Claims (12)

  1. 有機物が収容され、過熱蒸気が供給される処理槽と、
    この処理槽内からの気体の排出ライン中に、排出気体を滅菌または無害化する排出気体加熱手段と
    を備えることを特徴とする炭化処理装置。
  2. 前記排出気体加熱手段は、前記排出ライン内を設定温度以上に維持する
    ことを特徴とする請求項1に記載の炭化処理装置。
  3. 前記排出気体加熱手段は、
    前記排出ラインへ蒸気を供給する滅菌用給蒸ラインと、
    この滅菌用給蒸ラインを介して前記排出ラインへ供給する蒸気を過熱蒸気とする滅菌蒸気用過熱器と、
    前記処理槽内からの気体の排出ラインに設けられる温度センサと、
    この温度センサの検出温度に基づき、前記滅菌蒸気用過熱器を制御する制御器と
    を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炭化処理装置。
  4. 有機物が収容され、蒸気発生装置から蒸気が供給される処理槽と、
    この処理槽と前記蒸気発生装置との間に設けられる処理蒸気用過熱器と、
    前記処理槽内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段と、
    前記処理槽内からの気体の排出ライン中に設けられ、蒸気を凝縮液化させる熱交換器と、
    前記処理槽から前記熱交換器への前記排出ラインの中途と、前記蒸気発生装置との間に設けられる滅菌蒸気用過熱器と、
    前記処理槽内からの気体の排出ラインに設けられる温度センサと、
    この温度センサの検出温度に基づき、前記滅菌蒸気用過熱器を制御する制御器と
    を備えることを特徴とする炭化処理装置。
  5. 前記排出ラインは、前記処理槽内の底壁よりも上方位置に接続された
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭化処理装置。
  6. 前記処理槽内への過熱蒸気の供給中、減圧手段により、前記排出ラインを介して前記処理槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記処理槽内が負圧に維持される
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の炭化処理装置。
  7. 前記処理槽内へ過熱蒸気を供給して前記処理槽内の有機物の炭化処理の完了後、前記処理槽の扉が開かれる際、前記減圧手段が作動される
    ことを特徴とする請求項6に記載の炭化処理装置。
  8. 処理槽内に有機物を収容する待機工程と、
    前記処理槽内へ過熱蒸気を供給すると共に、前記処理槽内からの気体の排出ライン中に設けた熱交換器により蒸気を凝縮液化して排出する炭化工程とを含み、
    前記炭化工程前および/または前記炭化工程中、前記処理槽内からの気体の排出ライン中に熱を供給する排出気体加熱制御を行う
    ことを特徴とする炭化処理方法。
  9. 前記炭化工程前および/または前記炭化工程中、前記排出ライン内の温度に基づき、その温度が設定温度以上になるよう、前記排出ライン中に熱を供給する排出気体加熱制御を行う
    ことを特徴とする請求項8に記載の炭化処理方法。
  10. 前記処理槽内から前記排出ラインへの気体の排出は、前記処理槽内の底壁よりも上方位置から行う
    ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の炭化処理方法。
  11. 前記炭化工程は、前記処理槽内を大気圧よりも負圧に維持して行う
    ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の炭化処理方法。
  12. 前記炭化工程後、前記処理槽の扉を開く際、処理槽本体と扉との間に隙間を形成してから、前記排出ラインを介して前記処理槽内の空気を吸引排出する
    ことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の炭化処理方法。
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CN106001050A (zh) * 2016-05-17 2016-10-12 江苏亿尔等离子体科技有限公司 过热蒸汽碳化有机废弃物能源循环利用的装置和方法

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