JP2007202451A - 密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置 - Google Patents

密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2007202451A
JP2007202451A JP2006023715A JP2006023715A JP2007202451A JP 2007202451 A JP2007202451 A JP 2007202451A JP 2006023715 A JP2006023715 A JP 2006023715A JP 2006023715 A JP2006023715 A JP 2006023715A JP 2007202451 A JP2007202451 A JP 2007202451A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
density
molecular
molecular film
molecule
conductive substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006023715A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4833679B2 (ja
Inventor
Kenji Arinaga
健児 有永
Ulrich Rant
ラント ウルリッヒ
Pringsheim Erika
プリングスハイム エリカ
Knezevic Jelena
クネツェビッチ エレーナ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Technische Universitaet Muenchen
Fujitsu Ltd
Original Assignee
Technische Universitaet Muenchen
Fujitsu Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Technische Universitaet Muenchen, Fujitsu Ltd filed Critical Technische Universitaet Muenchen
Priority to JP2006023715A priority Critical patent/JP4833679B2/ja
Priority to DE102007005472A priority patent/DE102007005472B4/de
Priority to US11/700,264 priority patent/US8568966B2/en
Publication of JP2007202451A publication Critical patent/JP2007202451A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4833679B2 publication Critical patent/JP4833679B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/53Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
    • G01N33/543Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor with an insoluble carrier for immobilising immunochemicals
    • G01N33/54353Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor with an insoluble carrier for immobilising immunochemicals with ligand attached to the carrier via a chemical coupling agent

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Urology & Nephrology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Investigating, Analyzing Materials By Fluorescence Or Luminescence (AREA)
  • Investigating Or Analysing Materials By The Use Of Chemical Reactions (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】DNAチップ等のバイオチップに利用される、機能性分子(DNA分子等)による膜における分子密度を、所望の程度に効率よく簡便に調整することができる技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法は、分子膜形成工程と密度調整工程とを含み、前記分子膜形成工程において、導電性基材上に、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を形成し、前記密度調整工程において、前記分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する。該分子膜は、初期の分子膜から分子が脱離されている分だけ分子密度が所望の範囲に低く調整されている結果、該分子膜を各種測定、分析等に用いると、該分子膜における個々の分子の運動、機能が十分に発揮され、該分子膜の再現性、定量性が顕著に改善され、高精度に測定、分析等が繰り返し、安定に行われる。
【選択図】図1

Description

本発明は、DNAチップ等のバイオチップに利用される、密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置に関する。
2000年に米国において提唱されたナノテクノロジーイニシアティブの影響などもあり、近年、ナノテクノロジーが多くの人の関心を集めるキーワードとなっている。
このナノテクノロジーの中でも、半導体微細加工技術(半導体ナノテクノロジー)とバイオテクノロジーとの融合領域であるナノバイオテクノロジーは、既存の問題を根底から解決できる可能性を持つ新分野として、多くの研究開発が精力的に行われるようになってきている。
このナノバイオテクノロジーの中でも特に、DNAチップ(又はDNAマイクロアレイ)に代表され、ガラス、シリコン、プラスチック、金属などで形成された基板上に、DNA、蛋白質などの生体高分子からなる多数の異なった検体を高密度に整列化してスポットしたものであるバイオチップは、臨床診断や薬物治療などの分野で、核酸や蛋白質の試験を簡素化でき、特に遺伝子解析に有効な手段として注目されている(非特許文献1及び2参照)。
さらに、近年では、固体基板上に、機能性分子や機能性分子と結合させた分子を結合させて、部分的に機能性表面(検出部)を形成し、マイクロマシニング技術やマイクロセンシング技術と組み合わせて、微小な被検体を検出する技術のもとに作製され、「MEMS」や「μTAS」と呼ばれるデバイスが、従来の検出感度や検出時間を大幅に向上させるものとして注目されている。前記「MEMS」は、マイクロエレクトロメカニカルシステム(Micro Electro Mechanical Systems)の略であり、半導体の加工技術をもとに非常に微細なものを作る技術、又はその技術を用いて作製された精密微細機器を意味し、一般に、機械、光学、流体等の複数の機能部分を複合化、微細化したシステムを意味する。また、前記「μTAS」は、マイクロトータルアナリシスシステム(Micro Total Analysis System)の略であり、マイクロポンプ、マイクロバルブ、センサ等を小型、集積、一体化した化学分析システムを意味する。これらのデバイスは、一般に、特定の機能を有する機能性分子や、この機能性分子と結合させた分子を、基板上に硫黄原子を介して自己組織的に固定(結合)させた機能性表面を有している。そして、これらのデバイスにおいては、前記機能性表面での反応を電気的あるいは光学的に評価するばかりでなく、分子を固定した基板を電極として用い、外部から電気的なシグナルを印加することにより、機能性表面の反応を促進したり、反応から得られる信号を増幅したりすることが可能となる(非特許文献3及び4参照)。
このようなデバイスでは、前記機能性分子の基板(電極)への固定化が重要な要素技術となっているが、その中でも、硫黄原子を介して前記基板(電極)上に自己組織化膜(SAM: Self Assembled Monolayer)を形成する自己組織化膜形成技術は、低コストでかつ簡便に前記機能性分子を前記基板(電極)に固定(結合)させることができ、多くの利点を有しており、緻密な単分子膜の形成には特に有効となる。
しかしながら、前記機能性分子を前記基板(電極)上に緻密な単分子膜として固定(結合)させた場合には、固定(結合)させた前記機能性分子のフリーモーションの変化を利用して該機能性分子とターゲット(標的)分子との結合等を観察する場合や、固定(結合)させた前記機能性分子を、それよりも大きなターゲット分子と結合等させる場合などにおいては、隣接する前記機能性分子どうしの立体障害が大きな問題となってくる。
例えば、前記ターゲット(標的)分子をターゲットDNAとし、前記機能性分子を該ターゲットDNAの相補的DNAとするDNAチップの場合、該相補的DNAの固定(結合)密度が増加に依存してハイブリダイゼーション効率が低下する(非特許文献5参照)。このような現象は、機能性分子(相補的DNA)の固定(結合)密度が増加する程、該機能性分子(相補的DNA)どうしの立体障害が顕著となり、ハイブリダイゼーションに必要なスペースが無くなることが原因で生ずる。このため、前記DNAチップにおいては、プローブとなる前記相補的DNA(機能性分子)の基板(電極)への固定(結合)密度を所望の程度にコントロールすることが必要となっている。
従来においては、前記機能性分子の基板(電極)への固定(結合)密度のコントロール方法として、(1)前記機能性分子の前記基板(電極)上での拡散時間を考慮して時間を指標にしてコントロールする方法や、(2)前記機能性分子が荷電分子である場合に、カウンターイオンのスクリーニング効果(デバイスクリーニング効果)を利用してコントロールする方法などが知れられており、これらの方法により、前記自己組織化膜をある程度分散させた膜として形成していた。
しかしながら、前記(1)の方法の場合は、前記機能性分子の拡散は時間の平方根に比例するため、前記(2)の方法の場合は、前記スクリーニング効果は前記カウンターイオンの濃度の平方根に比例するため、それぞれ前記固定(結合)密度を比較的低くするためには、非常に厳しい条件下で行わなければならないという問題があった(非特許文献6及び7参照)。
したがって、DNAチップ等のバイオチップに利用される、機能性分子(DNA分子等)による膜の密度を所望の程度に、効率よく簡便に調整することができる技術の開発が望まれているのが現状である。
‘Electrochemical DNA sensors’ T. G. Drummond et al., Nature Biotech., 2003, Vol. 21, No. 10, 1192-1199. ‘SURVEY AND SUMMARY From DNA biosensors to gene chips’ J. Wang, Nucleic Acids Research, 2000, Vol. 28, No. 16, 3011-3016. ‘Dynamic Electrical Switching of DNA Layers on a Metal Surface’ U. Rant et al., Nano Lett., 2004, Vol. 4, No. 12, 2441-2445. ‘Electrostatic surface plasmon resonance: Direct electric field-induced hybridization and denaturation in monolayer nucleic acid films and label-free discrimination of base mismatches’ R. J. Heaton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2001, Vol. 98, No. 7, 3701-3704. ‘The effect of surface probe density on DNA hybridization’ A. W. Peterson et al., Nucleic Acids Research, 2001, Vol. 29, No. 24, 5163-5168. ‘In Situ Kinetics of Self-Assembly by Surface Plasmon Resonance Spectroscopy’ K. A. Peterlinz et al., Langmuir, 1996, Vol. 12, No. 20, 4731-4740. ‘Characterization of DNA Probes Immobilized on Gold Surfaces’ T. M. Herne et al., J. Am. Chem. Soc., 1997, Vol. 119, No. 38, 8916-8920.
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、DNAチップ等のバイオチップに利用される、機能性分子(DNA分子等)による膜における分子密度を、所望の程度に効率よく簡便に調整することができる技術を提供すること、換言すれば、DNAチップ等のバイオチップに好適な、密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法は、導電性基材上に、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を形成する分子膜形成工程と、前記分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する密度調整工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法では、前記分子膜形成工程において、導電性基材上に、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を形成する。また、前記密度調整工程において、前記分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する。こうして製造された分子膜は、前記分子膜形成工程において形成した分子膜と比べて、該分子膜から分子が脱離されている分だけ分子密度が所望の範囲に低く調整されている。その結果、この分子膜を各種測定、分析等に用いると、該分子膜における個々の分子の運動、機能が十分に発揮され、該分子膜の再現性、定量性を顕著に改善することができ、高精度に測定、分析等を繰り返し、安定に行うことができるようになる。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置は、導電性基材上に形成した、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する密度調整手段を有することを特徴とする。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置では、前記密度調整手段が、導電性基材上に形成した、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する。こうして製造された分子膜は、前記密度調整手段により前記分子の密度が調整される前の前記分子膜と比べて、該分子膜から分子が脱離されている分だけ分子密度が所望の範囲に低く調整されている。その結果、この分子膜を各種測定、分析等に用いると、該分子膜における個々の分子の運動、機能が十分に発揮され、該分子膜の再現性、定量性を顕著に改善することができ、高精度に測定、分析等を繰り返し、安定に行うことができるようになる。
本発明によると、従来における問題を解決することができ、DNAチップ等のバイオチップに利用される、機能性分子(DNA分子等)による膜における分子密度を、所望の程度に効率よく簡便に調整することができる技術を提供すること、換言すれば、DNAチップ等のバイオチップに好適な、密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置を提供することができる。
(密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置)
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法は、分子膜形成工程と、密度調整工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置は、密度調整手段を有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、分子膜形成手段などを含む。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法は、本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置を用いて好適に実施することができる。以下に、本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法について説明すると共に、その説明を通じて本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置の詳細をも明らかにすることとする。
−分子膜形成工程及び分子膜形成手段−
前記分子膜形成工程は、導電性基材上に、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を形成する工程である。該分子膜形成工程は、本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置における前記分子膜形成手段により、好適に実施することができる。
前記分子膜形成手段は、導電性基材上に、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を形成する手段である。
−導電性基材−
前記導電性基材としては、特に制限はなく、適宜目的に応じて選択することができるが、その構造としては、例えば、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、全体が導電性材料で形成された構造であってもよいし、絶縁性基材上に導電性材料による電極層が設けられた構造などであってもよい。
前記導電性基材、前記絶縁性基材、又は前記電極層としては、その形状、構造、大きさ、表面性状、数等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、例えば、平板状、円状、楕円状などが挙げられる。前記大きさとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。前記表面性状としては、例えば、光沢面、粗面などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記絶縁性基材の材質としては、例えば、石英ガラス、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、サファイヤ、等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記導電性材料又は前記電極層の材質としては、導電性を有する限り特に制限はなく、例えば、金属、合金、導電性樹脂、炭素化合物、などが挙げられる。前記金属としては、例えば、金、白金、銀、銅、亜鉛、などが挙げられる。前記合金としては、例えば、前記金属として例示したものの2種以上の合金などが挙げられる。前記導電性樹脂としては、例えば、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、などが挙げられる。前記炭素化合物としては、例えば、導電性カーボン、導電性ダイヤモンド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電極層を前記絶縁性基材上に設ける場合、該電極層と該絶縁性基材との密着性を向上させる目的で、これらの間に密着層を設けてもよい。
前記密着層の材質、形状、構造、厚み、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記材質としては、例えば、クロム、チタンなどが挙げられ、前記構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記電極層としては、その表面に絶縁膜を被覆して該電極層の一部のみが露出するようにして、該電極層の大きさ、形状等を適宜所望の程度に調節してもよい。前記電極層の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
前記絶縁膜としては、その材質、形状、構造、厚み、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、前記材質としては、例えば、アモルファスガラス、ノンドープ・ドープSiO、SiNなどの酸化物、窒化物、また、ポリイミドやフォトレジストのような高分子化合物が好適に挙げられる。前記フォトレジスト材料としては、例えば、g線レジスト、i線レジスト、KrFレジスト、ArFレジスト、F2レジスト、電子線レジストなどが挙げられる。
なお、本発明においては、前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)に電位を印加するために、これらとは異なる対向電極、参照電極などを有するのが好ましい。これらの数は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。前記対向電極は、前記導電性基材乃至前記電極(作用電極)と対向して配置され、これらに電位を印加するための電極である。前記参照電極は、前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)との間の電位を調整するための電極である。前記参照電極を用いた電位の調整は、三電極法として知られている。
前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)が2以上設けられている場合、これらの前記導電性基材乃至前記電極層(作用電極)に対し、異なるタイミングで任意に電位を印加乃至変化させることにより、異なるタイミングで各作用電極層に固定(結合)させた前記分子を脱離させることができる。
−分子−
前記分子としては、前記導電性基材乃至前記電極層と結合可能な部位を少なくとも一部に含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記導電性基材乃至前記電極層との結合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、電気的結合、化学結合、吸着などが挙げられるが、前記密度調整工程において、前記分子で形成した分子膜から、その構成分子である該分子のいくつかを脱離させる際の制御等が容易である点で、化学結合が好ましく、該化学結合の中でも、硫黄原子(S)を含む結合が切断の制御性、制御性等の点で好ましく、具体的には、チオール結合(−S−)、ジスルフィド結合(−S−S−)などを含んだ分子と該導電性基材乃至害電極層との結合が特に好ましい。該導電性基材乃至害電極層と前記チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)含む分子との結合である場合には、後述するように、該導電性基材乃至該電極層に一定の電位を印加すると、前記導電性基材乃至前記電極層と結合する硫黄原子(S)との結合が切断され、前記分子膜を構成する前記分子の内のいくつかが前記導電性基材乃至前記電極層から脱離する。その結果、前記分子膜が前記分子による緻密膜である場合には、いくつかの前記分子の脱離によって該分子膜における分子密度が低減され、所望の程度に調整される。
前記分子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、線状、粒状、板状、これらの2以上の組合せ、など挙げられるが、これらの中でも、線状などが好ましい。
前記分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、病気の治療、診断等への応用等の観点からは生体分子などが好適に挙げられ、また、該生体分子の中でも、あるいはそれ以外の分子の中でも、前記密度調整工程において、前記分子膜を構成する前記分子のいくつかを脱離させて該分子膜における分子密度を所望の程度に調整した後、該分子膜をセンサー等として使用する場合には、該分子膜を構成する分子の挙動を電気的に制御することができるのが好ましく、このような分子膜とするには、該分子膜を構成する前記分子が前記導電性基材と電気的に相互作用可能であるのが好ましい。このような分子としては、例えば、帯電分子などが好適に挙げられ、該帯電分子としては、例えば、イオン性ポリマーなどが挙げられ、該イオン性ポリマーとしては、正イオンポリマー、負イオンポリマーなどが挙げられる。前記正イオンポリマー(正に帯電したイオンポリマー)としては、例えば、グアニジンDNA、ポリアミンなどが好適に挙げられる。前記負イオンポリマー(負に帯電したイオンポリマー)としては、例えば、ポリヌクレオチド、ポリリン酸などが好適に挙げられる。これらは、負電荷が分子中に一定間隔で存在する点で前記導電性基材乃至前記電極層との相互作用(結合等)を制御し易い点で好ましい。これらの分子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、分子の一部に前記チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)を有するポリヌクレオチドが好ましく、末端に前記チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)を有する、DNA、RNA、これらとタンパク質との複合体などが特に好ましい。なお、前記DNA及びRNAは、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。
前記分子の大きさ乃至長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該分子が前記ポリヌクレオチドである場合、少なくとも6塩基であるのが好ましい。一般に、該ポリヌクレオチドの長さが短い程、前記導電性基材乃至前記電極層から該分子を脱離させるのに必要な閾値電圧が低くなる。
なお、前記分子は、該分子により形成した前記分子膜を診断、分析等に利用する観点からは、標的を捕捉可能な標的捕捉部を有しているのが好ましい。前記標的捕捉部の具体例としては、前記標的に対する抗体、抗原、酵素、補酵素などが挙げられる。前記標的捕捉部の前記標的捕捉体1分子当たりの数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1つであってもよいし、2以上であってもよい。前記標的捕捉部の前記標的捕捉体における位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記相互作用部が線状である場合にはその末端などが挙げられ、該相互作用部がポリヌクレオチドである場合には、3’末端であってもよいし、5’末端であってもよい。
前記標的としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、有機分子などが挙げられる。前記有機分子としては、例えば、タンパク質、血漿蛋白、腫瘍マーカー、アポ蛋白、ウイルス、自己抗体、凝固・線溶因子、ホルモン、血中薬物、核酸、HLA抗原、リポ蛋白、糖蛋白、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類などが挙げられる。
また、前記分子は、前記導電性基材乃至前記電極層から脱離した際に光の照射を受けると発光可能な、又は、前記導電性基材乃至前記電極層に固定(結合)している際に光の照射を受けると発光可能な発光部を有しているのが好ましい。この場合、診断等を目視で行うことができる点で好ましい。
前記発光部の前記分子1つ当たりにおける数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少なくとも1つであり、2以上であってもよい。前記発光部の前記分子における位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記相互作用可能な領域が線状である場合にはその末端などが挙げられ、該相互作用可能な領域がポリヌクレオチドである場合には、3’末端であってもよいし、5’末端であってもよい。
前記発光部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、蛍光色素、金属、半導体ナノスフィアー、などが好適に挙げられる。
前記蛍光色素は、前記吸着放出電極が金属電極等の金属である場合には、該金属と相互作用している間(例えば、該金属の近傍に位置している間)は、吸収可能な波長の光が照射されても発光せず、該金属と相互作用しなくなった時(例えば、該金属とは離接している時)には、吸収可能な波長の光が照射されるとその光エネルギーにより発光可能であるものが前記発光部として特に好適に使用可能である。前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、下記構造式1で表される化合物などが好適に挙げられる。
構造式1
前記分子の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、化学合成法、発酵生産法などのいずれでもよく、また、該分子は、合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
なお、前記分子を用いて形成する分子膜に含まれる該分子としては、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、前記分子膜において、異なる種類の分子がランダムに分散的に存在していてもよいし、領域を分けて存在していてもよい。
−分子膜−
前記分子膜としては、前記分子で形成され、単分子膜であってもよいし、該単分子膜の積層膜であってもよいが、本発明においては、該分子膜の機能の発現容易性、機能調整容易性等の観点からは、単分子膜であるのが好ましい。
前記分子膜の前記導電性基材乃至前記電極層上への形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)、スピンコート法、ディップ法などが挙げられるが、中でも、‘Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers’ A. Ulman, Chem. Rev., 1996, Vol. 96, No. 4, 1533-1554に記載された方法が特に好ましい。これらの形成方法により前記分子膜を形成する場合には、前記分子は液に分散乃至溶解した状態で行うのが好ましい。このとき、前記液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水、アルコール、界面活性剤などを含む液などが挙げられる。これらの形成方法によって前記導電性基材乃至前記電極層上に形成された分子膜においては、前記分子の一部が前記導電性基材乃至前記電極層と化学結合により結合し、該導電性基材乃至該電極層に固定される。前記分子が前記チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)を有している場合には、該チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)の部分が、前記導電性基材乃至前記電極層との間で容易に結合を生ずる。このとき、前記分子膜を構成する前記分子は、その分子内に存在する、前記チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)の硫黄原子(S)を介して前記導電性基材乃至前記電極層に化学結合により固定される。こうして、前記分子膜形成工程において形成された前記分子膜は、通常、前記分子による自己組織化膜(SAM: Self Assembled Monolayer)であって緻密膜の状態となっている。
ところが、前記分子膜が前記緻密膜の場合、該分子膜を分析、診断等に用いると、該分子膜を構成する前記分子どうしの運動性等が低下するため、感度が低下したりする等の問題が生ずる。
このため、本発明においては、前記分子膜形成工程において形成した前記分子膜につき、以下の密度調整工程を行うことにより、前記分子膜を構成する分子を該分子膜から脱離させ、該分子膜における分子密度を所望の程度に調整する。
−密度調整工程及び密度調整手段−
前記密度調整工程は、前記分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材乃至前記電極層から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する工程である。該密度調整工程は、本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置における前記密度調整手段により、好適に実施することができる。
前記密度調整手段は、前記導電性基材乃至前記電極層上に形成した、該導電性基材乃至該電極層と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する手段である。
前記分子膜における分子密度の調整は、前記導電性機材乃至前記電極層に電位を印加することにより好適に行うことができる。前記導電性基材乃至前記電極層に電位を印加すると、前記分子膜を構成する前記分子がその一部に例えば、硫黄原子(S)と前記導電性基材乃至前記電極層との結合を有する場合には、これらの結合部分が切断されて、前記分子が前記導電性基材乃至前記電極層から脱離する。なお、硫黄原子(S)と前記導電性基材乃至前記電極層との結合は、酸化結合であり、特定の還元電位を印加すると還元脱離し得る(‘Fine structure in the voltammetric desorption curves of alkanethiolate monolayers chemisorbed at gold’ C. J. Zhong et al., J. Electroanal. Chem., 1997, Vol. 425, 147-153.、及び‘Studies of the Electrochemical Removal and Efficient Re-formation of a Monolayer of Hexadecanethiol Self-Assembled at an Au(111) Single Crystal in Aqueous Solutions’ D. F. Yang et al., Langmuir, 1997, Vol. 13, No. 2, 243-249.参照)。その結果、前記分子膜における分子密度が低下し、該分子膜における前記分子どうしの立体障害等がなくなり、各分子の運動性が向上し、該分子膜を分析、診断等に使用した場合に分析、測定等の感度等が向上する。
前記導電性機材乃至前記電極層に印加する電位としては、特に制限はなく、前記導電性基材乃至前記電極層の材質、形状、大きさ、数、前記分子の種類、前記分子における前記導電性基材乃至前記電極層との結合の種類、前記分子の大きさなどに応じて適宜選択することができる。前記電位が適当でないと、前記分子が前記導電性基材乃至前記電極層からの脱離量が十分でなく、所望の程度に前記分子膜における分子密度を低減させることができないことがあったり、あるいは前記分子膜における分子密度が低くなりすぎ、該分子膜を分析、測定等に使用した場合の分析、測定等の感度が低下してしまうことがある。
前記密度調整工程において、前記導電性基材乃至前記電極層に印加する電位は、目的に応じて適宜選択した指標に基づいて好適に制御することができる。
このような指標としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)予め求めておいた、電位印加時における単位時間当たりの前記分子の前記導電性基材乃至前記電極層からの脱離量を意味する脱離率(%)と印加電圧(V)との関係図、(2)前記導電性基材乃至前記電極層上の分子密度に直接関係する信号、などが特に好適に挙げられる。
前記(1)を指標とする場合には、前記密度調整工程を、前記関係図に基づいて、前記導電性基材乃至前記電極層に印加する電位の大きさと印加時間とを調整しつつ、該導電性基材乃至該電極層に電位を印加することにより、前記分子を前記導電性基材乃至前記電極層から脱離させ、前記分子膜における分子密度(分子/cm)を低下させることにより行うことができる。
また、前記(2)を指標とする場合には、前記密度調整工程を、前記導電性基材乃至前記電極層上の前記分子の分子密度(分子/cm)をリアルタイムでモニターしながら、又は、該導電性基材乃至該電極層上の前記分子の分子密度に直接関係する信号をリアルタイムでモニターしながら、前記導電性基材乃至前記電極層に電位を印加することにより、前記分子を前記導電性基材乃至前記電極層から脱離させ、前記分子膜における分子密度(分子/cm)を低下させることにより行うことができる。なお、前記信号としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記分子が前記蛍光色素を分子中に有している場合には、該蛍光色素による蛍光強度(任意単位:a.u.)などが好適に挙げられる。
なお、この明細書においては、前記分子密度の単位「分子/cm」を「cm−2」と表記することがある。
前記密度調整工程により、その分子密度が低減(調整)された前記分子膜の分子密度としては、該分子膜の用途、該分子膜を構成する前記分子の種類、大きさ等により異なる。
前記分子密度が、緻密膜の分子密度に比して適度に分子密度が低下されていないと、前記分子膜を各種の分析、測定に使用した場合の分析、測定等の感度等が十分でないこと等がある。
前記密度調整工程における前記分子膜における分子の脱離率(%)としては、特に制限はなく、前記分子の種類等に応じて異なる。
前記密度調整工程において、前記導電性基材乃至前記電極層に印加する電位としては、特に制限はなく、前記分子の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化電位(正電位)であってもよいし、還元電位(負電位)であってもよい。前記分子の結合が硫黄原子(S)と前記導電性基材乃至前記電極層との結合を用いてある場合には、前記電位としては還元電位を好適に採用することができる。
上述のとおり、前記密度調整工程においては、前記導電性基材乃至前記電極層に印加する電位を、前記(1)又は(2)の指標に基づいて好適に制御することができるが、ここで、以下に前記導電性基材乃至前記電極層に印加する電位の制御の具体例について説明する。
前記(1)の指標に基づいて前記電位を制御する場合、予め特定の電位での脱離率(電位印加時間に対する脱離量の割合)を測定し、電位と脱離量との関係図(図1)を得る。そして、特定の電位を前記導電性基材乃至前記電極層に印加し、前記関係図に基づいて電位と時間とを調整することにより、前記導電性基材乃至前記電極層に固定(結合)させた前記分子の脱離量を所望の程度にコントロールすることが可能となる。
前記(2)の指標に基づいて前記電位を制御する場合、前記導電性基材乃至前記電極層に固定(結合)させた前記分子の付着量(乃至分子密度)をモニターしながら、特定の電位(例えば、前記分子の結合が硫黄原子(S)と該導電性基材乃至前記電極層との結合を用いてある場合には還元電位)を印加し、前記分子の付着量(分子密度)の時間変化をリアルタイムで観察することにより(例えば図2参照)、前記導電性基材乃至前記電極層に固定(結合)させた前記分子の量(分子密度)を所望の程度にコントロールすることが可能となる。前記(2)の指標に基づいて前記電位を制御する場合には、前記(1)の場合におけるような前記関係図を予め得ておくこと必要がない。
また、前記(2)の指標に基づいて前記電位を制御する場合において、前記分子膜における前記分子密度を直接モニターするのではなく、該分子密度に直接関係する信号をモニターする場合としては、例えば、以下のようにして行うことができる。即ち、前記分子の分子密度に直接関係する信号として、前記導電性基材乃至前記電極層上に固定(結合)させた前記分子が前記蛍光色素を分子中に有している場合には、該蛍光色素に基づく蛍光強度(a.u.)をモニターすることにより、前記導電性基材乃至前記電極層に固定(結合)させた前記分子の量(分子密度)を所望の程度にコントロールすることが可能となる。即ち、先ず、図3に示すように、前記硫黄原子(S)と該導電性基材乃至前記電極層との結合により前記導電性基材乃至前記電極層(金(Au)電極3)上に、前記蛍光色素(蛍光ラベル7)を分子中に有する前記分子(プローブDNA8)を、その末端に位置する硫黄原子−金(S−Au)結合6を介して固定(結合)して、該分子による前記分子膜を形成する。このとき、前記分子(例えばDNA)の帯電(負帯電)と同じ電位(負電位)を電源5から前記導電性基材乃至前記電極層(金電極3)とその対向電極4とに印加すると、該分子は、電気的な反発力により前記導電性基材乃至前記電極層から離れて位置するが、該分子の一端は前記S−Au結合により前記導電性基材乃至前記電極層に固定(結合)されているため、該分子は、あたかも前記導電性基材乃至前記電極層から立設するようにして位置する。このとき、前記分子に向けて前記蛍光色素が蛍光を発する波長の光を、光ファイバー等を用いて照射すると、前記分子が、前記導電性基材乃至前記電極層に近接して位置する場合には、該蛍光色素が照射光の光エネルギーを吸収して励起された際の励起エネルギーの一部が前記導電性基材乃至前記電極層に移動するクエンチング効果により、該蛍光色素は発光が弱まるものの、前記導電性基材乃至前記電極層から離れて位置する場合には、前記クエンチング効果が減じて、前記蛍光色素において生じた前記励起エネルギーが発光に用いられる割合が増え、結果、該蛍光色素は強く発光を生ずるようになる。そして、この蛍光が、入射光ファイバー1による前記分子に向けての照射光と、金電極3からの反射光を受光する受光ファイバー2との光が交差する領域である蛍光観察領域9において観察される。
そこで、このような前記分子中の前記蛍光色素による蛍光強度(a.u.)を、前記信号としてモニターし、前記導電性基材乃至前記電極層に還元電位を印加することにより、該導電性基材乃至該電極層上に固定(結合)させた前記分子における前記チオール結合又は前記ジスルフィド結合の部分を切断させ、該分子を脱離させる。そうすると、前記導電性基材乃至前記電極層上の前記分子の密度(分子/cm)が徐々に低下していくにつれて、前記蛍光強度(a.u.)が低下していくので(図4参照)、所望の分子密度を示す蛍光強度が得られたときに、前記導電性基材乃至前記電極層に前記還元電位を印加するのを止めることにより、所望の分子密度の分子膜が得られる。
−その他の工程及びその他の手段−
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の供給工程などが挙げられる。該その他の工程は、本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置における前記その他の手段、例えば、以下の供給手段により、好適に実施することができる。
前記供給工程は、前記導電性基材乃至前記電極層から前記分子を脱離させた際に該導電性基材乃至該電極層上に生ずるスペースに、脱離した前記分子よりも小さな硫黄原子含有分子を供給し結合させる工程である。前記供給工程は、前記密度が調整された分子膜の製造装置における前記供給手段により好適に実施することができる。
前記供給手段は、前記導電性基材乃至前記電極層から前記分子を脱離させた際に該導電性基材乃至該電極層上に生ずるスペースに、脱離した前記分子よりも小さな硫黄原子含有分子を供給し結合させる手段である。
前記密度調整工程において、前記分子膜から脱離させた前記分子がDNAや蛋白質に代表されるポリマー等の比較的大きな分子である場合、溶液中での拡散が遅く、前記導電性基材乃至前記電極層と硫黄原子との結合を還元により切断しても、該導電性基材乃至該電極層の表面からの拡散が遅く、これらの表面に留まり、これらに再付着する可能性が高い(‘Studies of the Electrochemical Removal and Efficient Re-formation of a Monolayer of Hexadecanethiol Self-Assembled at an Au(111) Single Crystal in Aqueous Solutions’ D. F. Yang et al., Langmuir, 1997, Vol. 13, No. 2, 243-249.参照)。このような場合、脱離させた前記分子よりも早い拡散速度の分子を用いて、脱離させた部分を素早く保護することにより、脱離させた前記分子が前記導電性基材乃至前記電極層に再付着(再結合)するのを防止し、前記分子の脱離を促進し、脱離させた部分を電気的・物理的に保護することが可能となる。
前記硫黄原子含有分子としては、硫黄原子を少なくとも含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、‘Characterization of DNA Probes Immobilized on Gold Surfaces’ T. M. Herne et al., J. Am. Chem. Soc., 1997, Vol. 119, No. 38, 8916-8920.や、‘Quantitative Measurements and Modeling of Kinetics in Nucleic Acid Monolayer Films Using SPR Spectroscopy’ R. Georgiadis et al., J. Am. Chem. Soc., 2000, Vol. 122, No. 13, 3166-3173に記載されている分子などが好適に挙げられ、これらの中でも、チオール結合(−S−)を含むチオール化合物、ジスルフィド結合(−S−S−)を含むジスルフィド化合物、などが好適に挙げられ、メルカプトヘキサノール(HO(CH)SH:MCH)などが特に好適に挙げられる。これらの化合物は、その分子中に前記チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)を含んでいるため、前記導電性基材乃至前記電極層に容易に結合可能であり、前記分子よりも分子量が小さく、運動性(移動性)等に優れるため、前記導電性基材乃至前記電極層から前記分子が脱離した後の該導電性基材乃至該電極層上のスペースに、脱離した前記分子が再結合するよりも早く、該スペースに結合するため、脱離させた前記分子が前記導電性基材乃至前記電極層上に再結合するのを好適に防ぐことができ、前記スペース部分に電気的欠陥乃至物理的欠陥が生ずるのを効果的に防ぐことができる点で有利である。前記硫黄原子含有分子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硫黄原子含有分子の分子量としては、特に制限はなく、前記分子の分子量等に応じて適宜選択することができるが、前記分子よりも小さいことが好ましく、前記分子よりも2倍以上小さいことがより好ましく、具体的には、分子移動性が前記分子よりも優れる点で、例えば、3倍以上小さいのが好ましい。
前記供給工程においては、前記硫黄原子含有分子を、前記導電性基材乃至前記電極層から前記分子を脱離させる前又はそれ以前から前記導電性基材乃至前記電極層に向けて好適に供給することができ、また、前記硫黄原子含有分子を、前記導電性基材乃至前記電極層から前記分子を脱離させた後で前記導電性基材に向けて好適に供給することができる。
なお、前記供給工程において、前記硫黄原子含有分子の前記導電性基材乃至前記電極層への供給量としては、特に制限はなく、前記導電性基材乃至前記電極層の種類、前記分子の種類、密度等に目的に応じて適宜選択することができる。
−密度が調整された分子膜の用途−
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法又は製造装置により製造された分子膜は、その分子密度が所望の程度に調整(低下)されているので、該分子膜をセンサー等として各種の分析装置乃至方法、測定装置乃至方法、具体的には、例えばDNAチップ等のバイオセンサーとして好適に使用することができる。なお、このとき、前記分子膜は前記導電性基材乃至前記電極層上に形成されており、該導電性基材乃至該電極層上に前記分子膜が形成されたものを、例えばバイオセンサー等のデバイス等として使用することができる。このため、本発明に係る密度が調整された分子膜の製造装置は、前記分子膜を形成した後、そのままバイオセンサー等のデバイス、分析、測定装置等として使用することができる。
本発明によって製造された、密度が調整された分子膜は、例えば、以下のようにして使用することができる。即ち、前記分子膜が形成された前記導電性基材乃至前記電極層に電位を印加乃至印加していた電位を変化させることにより、例えば、正電位が印加されていた前記導電性基材乃至前記電極層の電位を、負電位に変化させることにより、あるいは、還元電位(負電位)が印加されていた前記導電性基材乃至前記電極層の電位を正電位に変化させることにより、該導電性基材乃至該電極層に吸着されていた前記分子を、又は該導電性基材乃至該電極層から脱離等させることができる。例えば、前記分子が、前記チオール結合(−S−)又は前記ジスルフィド結合(−S−S−)を末端に有するポリヌクレオチド(DNA)である場合、該チオール結合又は該ジスルフィド結合の硫黄原子(S)を介して前記導電性基材乃至前記電極層に結合しているが、該ポリヌクレオチド自体は、負に帯電しているので、前記導電性基材乃至前記電極層に正電位を印加すれば、該ポリヌクレオチド分子は該導電性基材乃至該電極層に電気的な吸引力により引き付けられ、一方、前記導電性基材乃至前記電極層に負電位を印加すれば、該導電性基材乃至該電極層に対し電気的な反発力により、前記硫黄原子(S)と該導電性基材乃至前記電極層との結合を支点にして該導電性基材乃至該電極層から離れた位置に移動する。したがって、このように、前記分子膜に、所望の電位を印加することにより、該分子膜を構成する各分子を前記導電性基材乃至前記電極層上に引き付けておいたり、あるいはこれらから離れたところに位置させたりすることが可能となり、分析、測定の種類、目的等に応じて所望の制御が可能となる。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法又は製造装置により製造された分子膜を用いて分析、測定等を行う場合、該分子膜は、通常、導電性液体中に浸漬して使用される。
前記導電性液体としては、導電性であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、水、イオン溶液、電解質を含有する溶液、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、前記分子膜を使用した分析、測定等の際、前記導電性水溶液を非水系電解質の溶液に置換することにより、水に不溶な物質の分析、測定等を行うこともできる。この場合、前記非水系電解質としては、例えば、有機溶媒が好適に挙げられ、具体的には、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフランなどが好適に挙げられる。
以下、本発明の実施例について以下に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
−分子膜形成工程(手段)−
前記分子として、一端にチオール基を有し、他端に前記蛍光色素(蛍光ラベル)としての蛍光シアニン色素(Cy3)を有する1本鎖のDNA(24塩基プローブDNA:ss−24mer−probe−DNA)を用い、‘Formation and Structure of Self-Assembled Monolayers’ A. Ulman, Chem. Rev., 1996, Vol. 96, No. 4, 1533-1554に記載された方法によって、前記DNAを自己組織化により、前記導電性基材乃至前記電極層としての金電極(2mmφ)上に硫黄原子を介して固定(結合)し、該金電極上に前記DNAによる分子膜(緻密膜)を形成した。
ここで、次に、前記密度調整工程を、前記蛍光色素(蛍光ラベル)による蛍光強度を指標にして、前記分子膜を構成する前記DNAの分子密度を調整(低下)させることにより行うため、図3に示すように、金電極3に固定(結合)させたDNA(プローブDNA)8に光を照射する入射光ファイバー1と、金電極3からの反射光を受光する受光ファイバー2とを配置させ、電源5によりリードラインを介して金電極3とその対向電極4とに電位(還元電位)が印加可能とした。
−密度調整工程(手段)−
DNA8の帯電(負帯電)と同じ極性の電位(負電位)が金電極3に印加されるように対向電極4との間に電源5から−0.2Vの電位を印加すると、DNA8は、金電極3との電気的な反発力により金電極3から離れて位置するが、DNA8の一端はチオール結合6により金電極3に固定(結合)されているため、DNA8は、あたかも金電極3から立設するようにして位置する。このとき、DNA8に向けて、蛍光ラベル7が吸収すると蛍光を発する波長の光を、入射光ファイバー1から照射すると、DNA8が、金電極3に近接して位置する場合には、蛍光ラベル7が照射光の光エネルギーを吸収して励起された際の励起エネルギーの一部が金電極に移動してしまうクエンチング効果により、蛍光色素7の発光が減じる乃至生じない。金電極3から離れて位置する場合には、前記クエンチング効果が弱まり、蛍光ラベル7において生じた前記励起エネルギーが発光に用いられる割合が高まり、結果、蛍光ラベル7は発光を強めるようになる。そして、この蛍光が、入射光ファイバー1によるDNA8に向けての照射光と、金電極3からの反射光を受光する受光ファイバー2との光が交差する領域である蛍光観察領域9において観察されるようになる。
金電極3に更に比較的大きな還元電位−0.6V〜−0.8Vを印加すると、該還元電位によりDNA8におけるチオール結合6が切断され、分子密度(分子/cm)が低下していく。初期の分子密度が約1.2×1012(分子/cm)であったDNA8が、還元電位の印加による還元脱離により、金電極3から徐々に脱離していき、分子密度(分子/cm)が約8×1010(分子/cm)に低下、このときの蛍光ラベル7による蛍光強度(a.u.)と、DNA8の金電極3上の分子密度(分子/cm)との関係を測定し、図4のグラフに示した。なお、ここで、蛍光強度測定時に金電極3に−0.2Vの負電位を印加し、DNA8を伸張させた状態にし、金電極3と蛍光ラベル7との距離を一定に保った理由は、金電極3上の蛍光ラベル7は励起エネルギーの一部が電極に移動し(クエンチング効果)、蛍光強度が蛍光ラベル7と金電極3との距離が変わることで変化するため、このクエンチング効果による蛍光の変化を防ぐためである。
次に、初期の分子密度が約1×1012(分子/cm)のDNA8を複数準備し、−0.3Vからー0.9Vまでの異なった電位を印加し、各電位でのDNA8の脱離率を測定すると、図5に示すように、−0.4Vから−0.7VにかけてDNA8の脱離率(%)に大きな変化(0%〜100%)が観られた。
次に、図5の結果から、−0.6Vでは0.8%の脱離率が得られることが判ったので、金電極3に−0.6Vの還元電位を印加することにより、図6に示すように、金電極3からDNA8を徐々に脱離させていき、DNA8の分子密度を初期の1×1012(分子/cm)から2×1011(分子/cm)まで低下させた(調整した)。
図6に示すグラフにおいて、初期の時間帯(0〜約60秒後)を「A」とし、次の時間帯(約60秒後〜約360秒後)を「B」とし、その次の時間帯(約360秒後から約500秒後)を「C」としたとき、「A」は、初期の分子密度を示すDNA8(分子膜)の蛍光ラベル7による蛍光強度(a.u.)を意味し、「C」は、金電極3に還元電位を印加しDNA8が脱離した後の分子密度が低下した際のDNA8の蛍光ラベル7による蛍光強度(a.u.)を意味し、「B」は、金電極3に還元電位を印加した際に、金電極3から離脱した直後のDNA7の蛍光ラベル7による蛍光であり、前記クエンチング効果を受けないため、一時的に大きな蛍光を発している。図5の結果からは、還元電位(負電位)−0.6Vを金電極3に、5分間印加することにより、金電極3から脱離した後の分子密度、即ち図6のグラフの「C」の蛍光強度を示す分子密度は、2×1011cm−2と算定されたが、‘Electrochemical Quantitation of DNA Immobilized on Gold’ A. B. Steel et al., Anal. Chem., 1998, Vol. 70, No. 22, 4670-4677.に記載された電気化学測定法を用いた実験値と比較してみて、良好な一致が得られたことが確認できた。
以上の密度調整工程により、比較的分子密度の緻密なDNA8による分子膜を所望の程度にまで分子密度を簡便に調整する(低下させる)ことができた。
次に、DNA8における蛍光ラベル7による蛍光をリアルタイムでモニターしながら、金電極3に−0.6Vの還元電位(負電位)を、3回に分けてそれぞれ30秒間ずつ印加することにより、金電極3に固定(結合)させたDNA8による分子膜の分子密度を段階的に低下させた(調整した)。その結果を、図7に示した。図7において、初期の時間帯(0〜約70秒後)を「D」とし、次の時間帯(約70秒後〜約120秒後)を「E」とし、その次の時間帯(約120秒後〜約330秒後)を「F」とし、その次の時間帯(約330秒後〜約370秒後)を「G」とし、その次の時間帯(約370秒後〜約540秒後)を「H」とし、その次の時間帯(約540秒後〜約580秒後)を「I」とし、その次の時間帯(約580秒後〜約700秒後)を「J」としたとき、初期の分子密度を意味する「D」の蛍光強度(a.u.)から、DNA8を徐々に金電極3から脱離させることにより、「F」、「H」を介して最終の分子密度を意味する「J」の蛍光強度(a.u.)に到達した。「E」、「G」及び「I」の各ピークは、脱離するDNA8からの一時的な蛍光を意味しており、図4の蛍光強度(a.u.)と表面密度(分子密度)との関係グラフから、最終の分子密度を意味する「J」の蛍光強度を示す分子密度は4×1011cm−2と推定され、この結果は、上記電気化学測定法を用いた実験値と比較してみて良好な一致得られたことが確認できた。
−供給工程(手段)−
次に、初期の分子密度2.2×1011cm−2から最終の分子密度1.5×1011cm−2になるまで金電極3からDNA8を脱離させた際に、DNA8よりも小さな分子である前記硫黄原子含有分子としてのメルカプトヘキサノール(HO(CH)SH:MCH)を、金電極3におけるDNA8が脱離したスペースに供給し、該MCHをそこに結合させた。その結果、図8に示すように、前記MCHの添加直後から、DNA8の脱離による蛍光のピークが見られた。このような比較的小さいチオール分子(前記MCH)の脱離促進効果が、脱離電位を繰返し印加することにより、金電極3からDNA8の脱離を行った際にも有効であることが確認できた。
ここで、本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 導電性基材上に、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を形成する分子膜形成工程と、
前記分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する密度調整工程と
を含むことを特徴とする、密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記2) 密度調整工程が、導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させることにより行われる付記1に記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記3) 密度調整工程が、電位印加時における単位時間当たりの分子の脱離量を意味する脱離率(%)と、印加電圧(V)との関係図を予め求めておき、該関係図に基づいて、導電性基材に印加する電位の大きさと印加時間とを調整しつつ、該導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させることにより行われる付記1から2のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記4) 密度調整工程が、該導電性基材上の分子密度をリアルタイムでモニターしながら、又は、該導電性基材上の分子密度に直接関係する信号をリアルタイムでモニターしながら、導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させることにより行われる付記1から2のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記5) 分子が蛍光色素を分子中に有してなり、導電性基材上の分子密度に直接関係する信号が、前記蛍光色素による蛍光強度である付記4に記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記6) 分子が、硫黄原子を分子の一部に有してなり、該硫黄原子を介して導電性基材に結合可能である付記1から5のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記7) 電位が、還元電位である付記1から6のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記8) 導電性基材から分子を脱離させた際に該導電性基材上に生ずるスペースに、脱離した前記分子よりも小さな硫黄原子含有分子を供給し結合させる供給工程を更に含む付記1から7のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記9) 供給工程において、硫黄原子含有分子を、導電性基材から分子を脱離させる前又はそれ以前から前記導電性基材に向けて供給させる付記8に記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記10) 供給工程において、硫黄原子含有分子を、導電性基材から分子を脱離させた後で前記導電性基材に向けて供給させる付記8に記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
(付記11) 導電性基材上に形成した、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する密度調整手段を有することを特徴とする、密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記12) 密度調整手段が、導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させる付記14に記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記13) 密度調整手段が、電位印加時における単位時間当たりの分子の脱離量を意味する脱離率(%)と、印加電圧(V)との関係図を予め求めておき、該関係図に基づいて、導電性基材に印加する電位の大きさと印加時間とを調整しつつ、該導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させる付記11から12のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記14) 密度調整手段が、該導電性基材上の分子密度をリアルタイムでモニターしながら、又は、該導電性基材上の分子密度に直接関係する信号をリアルタイムでモニターしながら、導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させる付記11から12のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記15) 分子が蛍光色素を分子中に有してなり、導電性基材上の分子密度に直接関係する信号が、前記蛍光色素による蛍光強度である付記14に記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記16) 分子が、硫黄原子を分子の一部に有してなり、該硫黄原子を介して導電性基材に結合可能である付記11から15のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記17) 電位が、還元電位である付記11から16のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記18) 導電性基材から分子を脱離させた際に該導電性基材上に生ずるスペースに、脱離した前記分子よりも小さな硫黄原子含有分子を供給し結合させる供給手段を更に有する付記11から17のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記19) 供給装置が、硫黄原子含有分子を、導電性基材から分子を脱離させる前又はそれ以前から前記導電性基材に向けて供給させる付記18に記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
(付記20) 供給装置が、硫黄原子含有分子を、導電性基材から分子を脱離させた後で前記導電性基材に向けて供給させる付記18に記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
本発明に係る密度が調整された分子膜の製造方法又は製造装置によると、分子密度が所望の程度に調整(低下)された分子膜が得られ、該分子膜においては、該分子膜を構成する各分子どうしの運動性等が阻害されず、良好であるため、該分子膜は、各種病気をはじめ、各種の診断、分析、測定、検出等に好適に使用することができる。また、前記分子が前記標的捕捉部を有していると、蛋白質等の各種有用分子の診断、分析、測定、検出等を行うこともでき、しかもその際に前記発光部等を設けておくことにより、該有用分子の定量までも行うことができる。
本発明に係る、密度が調整された分子膜の製造方法又は製造装置は、ナノバイオテクノロジーの分野に極めて有用であり、本発明により得られ、分子密度が所望の程度に調整された分子膜は、デバイス等の性能、信頼性、定量性、再現性の向上に著しく寄与する。
図1は、導電性基材乃至電極層(電極)に印加した電位(V)と、該導電性基材乃至電極層から脱離した分子の脱離率(%)との関係を示すグラフである。 図2は、特定の還元電位を印加したときの、前記分子の前記導電性基材乃至前記電極層上の分子密度(分子/cm)のリアルタイムの時間変化を示すグラフである。 図3は、金電極(前記導電性基材乃至前記電極層)に、蛍光色素(蛍光ラベル)を分子中に有する前記分子(DNA)を固定(結合)させ、該分子に光ファイバー(入射光ファイバー)を用いて、前記蛍光色素が励起され、発光を生じ得る波長の光を照射すると共に、該蛍光色素(蛍光ラベル)からの発光を検知する光ファイバー(受光ファイバー)を備えた状態の装置の一例を説明するための概略説明図である。 図4は、金電極(前記導電性基材乃至前記電極層)に−0.2Vの電位を印加し、負に帯電した前記分子(DNA)を伸張させて、該分子(DNA)に結合させた前記蛍光色素(蛍光ラベル)による蛍光強度(a.u.)と、前記分子(DNA)の前記金電極上の分子密度(分子/cm)との関係の実験値を示すグラフである。 図5は、硫黄原子(S)を介して金電極(前記導電性基材乃至前記電極層)に固定(結合)させた前記分子(DNA)を、該金電極に還元電位を印加することにより脱離させた際の該分子(DNA)の脱離率(%)を示すグラフである。 図6は、初期の分子密度が1×1012cm−2であるDNAによる分子膜における分子密度を、2×1011cm−2まで低下させた実験の結果を示すグラフである。 図7は、蛍光色素(蛍光ラベル)を有する分子における該蛍光色素による蛍光をモニターしながら、金電極(前記導電性基材乃至電極層)に−0.6Vの電位(還元電位)を3度印加し、段階的に該金電極に固定(結合)した該分子による分子膜の分子密度を低下させている状態を示すグラフである。 図8は、本発明を用いて、金電極との結合を還元により切断したDNAの脱離を、MCHを添加することにより促進させた実験結果を示すグラフである。
符号の説明
1 入射光ファイバー
2 受光ファイバー
3 金電極(導電性基材乃至電極層)
4 対向電極
5 電源(外部電位印加装置)
6 チオール結合
7 蛍光色素(蛍光ラベル)
8 DNA(分子)
9 蛍光観察領域

Claims (10)

  1. 導電性基材上に、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を形成する分子膜形成工程と、
    前記分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する密度調整工程と
    を含むことを特徴とする、密度が調整された分子膜の製造方法。
  2. 密度調整工程が、導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させることにより行われる請求項1に記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
  3. 密度調整工程が、電位印加時における単位時間当たりの分子の脱離量を意味する脱離率(%)と、印加電圧(V)との関係図を予め求めておき、該関係図に基づいて、導電性基材に印加する電位の大きさと印加時間とを調整しつつ、該導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させることにより行われる請求項1から2のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
  4. 密度調整工程が、該導電性基材上の分子密度をリアルタイムでモニターしながら、又は、該導電性基材上の分子密度に直接関係する信号をリアルタイムでモニターしながら、導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させることにより行われる請求項1から2のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
  5. 分子が蛍光色素を分子中に有してなり、導電性基材上の分子密度に直接関係する信号が、前記蛍光色素による蛍光強度である請求項4に記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
  6. 分子が、硫黄原子を分子の一部に有してなり、該硫黄原子を介して導電性基材に結合可能である請求項1から5のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
  7. 電位が、還元電位である請求項1から6のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
  8. 導電性基材から分子を脱離させた際に該導電性基材上に生ずるスペースに、脱離した前記分子よりも小さな硫黄原子含有分子を供給し結合させる供給工程を更に含む請求項1から7のいずれかに記載の密度が調整された分子膜の製造方法。
  9. 導電性基材上に形成した、該導電性基材と結合可能な部位を少なくとも一部に含む分子で構成される分子膜を構成する前記分子の一部を前記導電性部材から脱離させ、前記分子膜における分子密度を調整する密度調整手段を有することを特徴とする、密度が調整された分子膜の製造装置。
  10. 密度調整手段が、導電性基材に電位を印加することにより、分子を脱離させ、分子膜における分子密度を低下させる請求項9に記載の密度が調整された分子膜の製造装置。
JP2006023715A 2006-01-31 2006-01-31 密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置 Expired - Fee Related JP4833679B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006023715A JP4833679B2 (ja) 2006-01-31 2006-01-31 密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置
DE102007005472A DE102007005472B4 (de) 2006-01-31 2007-01-30 Verfahren und Vorrichtung zum Herstellen eines molekularen Films mit einer eingestellten Dichte
US11/700,264 US8568966B2 (en) 2006-01-31 2007-01-31 Method and apparatus for producing a molecular film with an adjusted density

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006023715A JP4833679B2 (ja) 2006-01-31 2006-01-31 密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007202451A true JP2007202451A (ja) 2007-08-16
JP4833679B2 JP4833679B2 (ja) 2011-12-07

Family

ID=38375077

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006023715A Expired - Fee Related JP4833679B2 (ja) 2006-01-31 2006-01-31 密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置

Country Status (3)

Country Link
US (1) US8568966B2 (ja)
JP (1) JP4833679B2 (ja)
DE (1) DE102007005472B4 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2302071A1 (en) 2009-09-28 2011-03-30 Fujitsu Limited Target-detecting device and method for producing the same
JPWO2011155435A1 (ja) * 2010-06-07 2013-08-01 コニカミノルタ株式会社 近接場増強蛍光センサチップ

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB0700640D0 (en) * 2007-01-12 2007-02-21 Iti Scotland Ltd Detecting analytes
US11002730B2 (en) 2018-05-23 2021-05-11 International Business Machines Corporation Molecular design to suppress desorption of self-assembled monolayers

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5635047A (en) * 1992-07-28 1997-06-03 Iowa State University Research Foundation, Inc. Electrochemical method of controlling thiolate coverage on a conductive substrate such as gold
JP2003322653A (ja) * 2002-05-07 2003-11-14 Toshiba Corp プローブ固定支持体及びプローブ固定担体
WO2004018081A1 (ja) * 2002-08-21 2004-03-04 Tokyo University Of Agriculture And Technology Tlo Co., Ltd. 電解切断性アフィニティー担体を用いる生体物質の精製法、電解切断性アフィニティー担体、生体物質精製用キット、電解切断性リンカー
WO2004033614A1 (ja) * 2002-10-10 2004-04-22 Fujitsu Limited 分子放出装置及び分子放出方法

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6406921B1 (en) * 1998-07-14 2002-06-18 Zyomyx, Incorporated Protein arrays for high-throughput screening
US6514762B1 (en) * 1999-04-23 2003-02-04 New Mexico State University Technology Transfer Corporation Delivery of nucleotides by electrochemical release
WO2002055993A2 (en) 2001-01-12 2002-07-18 Univ Boston Use of electrostatic fields to enhance surface plasmon resonance spectroscopy
US7208322B2 (en) * 2001-04-02 2007-04-24 Agilent Technologies, Inc. Sensor surfaces for detecting analytes
US20050173893A1 (en) * 2002-06-21 2005-08-11 Buckley John T. Pintle mount
WO2004005582A2 (en) * 2002-07-05 2004-01-15 Northwestern University Electrochemical miniaturization of organic micro-and nanostructures
JP4230430B2 (ja) 2003-09-25 2009-02-25 富士通株式会社 被検体評価装置および被検体評価方法
US7169617B2 (en) 2004-08-19 2007-01-30 Fujitsu Limited Device and method for quantitatively determining an analyte, a method for determining an effective size of a molecule, a method for attaching molecules to a substrate, and a device for detecting molecules
JP4230431B2 (ja) 2004-08-19 2009-02-25 富士通株式会社 分子の実効サイズ決定法、基板への分子の付着方法および分子検出デバイス

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5635047A (en) * 1992-07-28 1997-06-03 Iowa State University Research Foundation, Inc. Electrochemical method of controlling thiolate coverage on a conductive substrate such as gold
JP2003322653A (ja) * 2002-05-07 2003-11-14 Toshiba Corp プローブ固定支持体及びプローブ固定担体
WO2004018081A1 (ja) * 2002-08-21 2004-03-04 Tokyo University Of Agriculture And Technology Tlo Co., Ltd. 電解切断性アフィニティー担体を用いる生体物質の精製法、電解切断性アフィニティー担体、生体物質精製用キット、電解切断性リンカー
WO2004033614A1 (ja) * 2002-10-10 2004-04-22 Fujitsu Limited 分子放出装置及び分子放出方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2302071A1 (en) 2009-09-28 2011-03-30 Fujitsu Limited Target-detecting device and method for producing the same
JP2011067174A (ja) * 2009-09-28 2011-04-07 Fujitsu Ltd 標的検出装置及びその製造方法
JPWO2011155435A1 (ja) * 2010-06-07 2013-08-01 コニカミノルタ株式会社 近接場増強蛍光センサチップ
JP5958339B2 (ja) * 2010-06-07 2016-07-27 コニカミノルタ株式会社 近接場増強蛍光センサチップ

Also Published As

Publication number Publication date
US8568966B2 (en) 2013-10-29
JP4833679B2 (ja) 2011-12-07
DE102007005472B4 (de) 2011-06-09
US20080003666A1 (en) 2008-01-03
DE102007005472A1 (de) 2007-09-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Bruckbauer et al. Multicomponent submicron features of biomolecules created by voltage controlled deposition from a nanopipet
Penner Chemical sensing with nanowires
Li et al. Electrogenerated chemiluminescence of Au nanoclusters for the detection of dopamine
Riskin et al. Imprinting of molecular recognition sites through electropolymerization of functionalized Au nanoparticles: development of an electrochemical TNT sensor based on π-donor− acceptor interactions
Irrera et al. New generation of ultrasensitive label-free optical Si nanowire-based biosensors
De La Rica et al. Assemblies of functional peptides and their applications in building blocks for biosensors
Kim et al. Applications, techniques, and microfluidic interfacing for nanoscale biosensing
Li et al. Electrochemical and optical biosensors based on nanomaterials and nanostructures: a review
US8309365B2 (en) Method for evaluating target molecules
Duan et al. Label-free multiplexed electrical detection of cancer markers on a microchip featuring an integrated fluidic diode nanopore array
Patel et al. (Multi) functional atomic force microscopy imaging
Cao et al. SERS detection of nucleobases in single silver plasmonic nanopores
Masson et al. Plasmonic nanopipette biosensor
JP5584954B2 (ja) 被検体評価方法
JP4230430B2 (ja) 被検体評価装置および被検体評価方法
JP4833679B2 (ja) 密度が調整された分子膜の製造方法及び製造装置
US20090166222A1 (en) Electrical nanotraps for spectroscopically characterizing biomolecules within
WO2013176289A1 (ja) 生体分子検出装置、及び、生体分子検出方法
Zhang Nanoscale surface modification for enhanced biosensing
Zhang et al. Peptide-based biosensors
Kim et al. Nanofluidic concentration of selectively extracted biomolecule analytes by microtubules
Kar et al. Biodiagnostics using oriented and aligned inorganic semiconductor nanotubes and nanowires
Cao et al. Single-Molecule Investigation of the Protein–Aptamer Interactions and Sensing Application Inside the Single Glass Nanopore
KR20220002937A (ko) 전기화학적 바이오센서의 구성을 위한 전극 표면 변성 방법
Altalhi Biosensors Nanotechnology

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090108

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110705

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110830

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110920

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110922

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4833679

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140930

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees