本発明は液晶表示装置の技術分野に関し、特にIPSモードやFFSモードの液晶表示装置等に関する。また、本発明は、IPSモード等の液晶表示装置の表示特性の改善、特に視野角の拡大に寄与する光学補償フィルムに関する。
液晶表示装置としては、2枚の直交した偏光板の間に、ネマチック液晶をツイスト配列させた液晶層を挟み、電界を基板に対して垂直な方向にかける方式、いわゆるTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶が基板に対して立ち上がるために、斜めから見ると液晶性化合物による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して、液晶性化合物がハイブリッド配向したフィルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性化合物を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での諧調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるIPSモードやFFSモードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向してパネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、テレビ用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなっかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板の間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSやFFSモードにおいても検討されている。例えば、傾斜時の液晶層のレタデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示又は中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(特許文献1参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコティック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(特許文献2、3、4参照)や光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(特許文献5参照)、レタデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(特許文献6参照)、偏光板の保護膜として負のレタデーションを有する膜を使い、この表面に正のレタデーションを有する光学補償層を設ける方式(特許文献7参照)が提案されている。
また、特許文献8には、延伸により作製した2軸性のセルロースアシレートフィルム上に棒状液晶を塗布配向させた補償フィルムを搭載した、IPS液晶装置が提案されている。この方法では、簡単な構成で、表示品位と視野角が著しく改善され、これにより一定の成果が得られた。
特開平9−80424号公報
特開平10−54982号公報
特開平11−202323号公報
特開平9−292522号公報
特開平11−133408号公報
特開平11−305217号公報
特開平10−307291号公報
特開2005−265889号公報
上述の文献に開示されている方法、特に特許文献8に記載されている方法は、安価でかつ薄い液晶表示装置が得られる点で有効である。しかしながら、近年、液晶表示装置の普及に伴い、高湿度下や高温度下など各種環境下で使用される機会も多くなり、このような過酷な環境下では、2軸性のセルロースアシレートフィルムと棒状液晶層との密着性を維持することが困難であることが分かってきた。
一方、液晶表示装置に用いられる偏光板は通常、ヨウ素、もしくは二色性染料をポリビニルアルコールに配向吸着させた偏光子の両側に、保護フィルムとして、セルローストリアセテートを主成分とするフィルムを貼り合わせることで製造されている。セルローストリアセテートは、強靭性、難燃性、光学的等方性が高い(レタデーション値が低い)などの特徴があり、上述の偏光板用保護フィルムとして広く好適に使用されているが、最近の液晶表示装置には表示性能に対する要求が厳しくなってきており、偏光板保護フィルム等の構成部材に対しても吸湿性、透湿性、環境耐性等の改良が望まれている。
環状ポリオレフィンフィルムは、セルローストリアセテートフィルムの吸湿性や透湿性を改良できるフィルムとして注目され、熱溶融製膜及び溶液製膜による偏光板保護フィルムの開発が行われている。さらに環状ポリオレフィンフィルムは温湿度変化による光学特性の変化が小さいという特徴を有する。また、環状ポリオレフィンフィルムは、高い光学特性の発現性を有しており、位相差膜としての開発が行われている。しかしながら、特許文献8に記載の積層位相差フィルムのセルローストリアセテートフィルムを環状ポリオレフィンフィルムに置き換えると、棒状液晶層と環状ポリオレフィンフィルムとの密着性が低いということが分かった。
上記のことに鑑み、本発明の目的は、簡単な構成で、表示品位のみならず、視野角が著しく改善され、湿度等の環境変化による光学特性変化の少なく、強度な耐久性を有する液晶表示装置用光学補償フィルム、特にIPS型液晶表示装置用光学補償フィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、環境変化があっても視野角特性変化の少ない液晶表示装置及び液晶表示装置に使用する偏光板を提供することである。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 少なくとも第1の光学異方性層及び第2の光学異方性層を含み、前記第1の異方性層の面内レタデーションが0〜10nmであり、厚さ方向のレタデーションが−400〜−80nmであり、前記第2の光学異方性層の面内のレタデーションが20〜150nmであり、厚さ方向のレタデーションが100〜300nmであり、前記第1及び第2の光学異方性層の一方が液晶性化合物を含有する組成物から形成された層であり、他方がポリマーフィルムであり、且つ前記第1の光学異方性層と第2の光学異方性層とが、少なくとも一層の接着層を介して積層されている光学補償フィルム。
[2] 前記第1の光学異方性層が、環状ポリオレフィンを含有するフィルムに接着層を介して積層されている[1]の光学補償フィルム。
[3] 前記第2の光学異方性層が、環状ポリオレフィンを含有し、且つ横延伸法、縦延伸法、同時二軸延伸法又は逐次二軸延伸法により延伸されたフィルムである[1]又は[2]に記載の光学補償フィルム。
[4]前記第1の光学異方性層が、棒状液晶化合物を含有する組成物からなり、該棒状液晶化合物の分子が前記光学異方性層面に対して実質的に垂直に配向しており、且つその配向状態が固定化されている[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学補償フィルム。
[5][1]〜[4]のいずれか1項に記載の光学補償フィルムと、偏光層とを有する偏光板。
[6]前記光学補償フィルムと、前記偏光層との間には実質的に等方的な接着剤層及び/又は実質的に等方的な保護フィルムのみが含まれる[5]に記載の偏光板。
[7]前記透明保護フィルムが、セルロースアシレート又は環状ポリオレフィンを含むフィルムであり、面内のレタデーションが0〜10nm、厚さ方向のレタデーションが−20〜20nmである[6]に記載の偏光板。
[8]前記第1の光学異方性層、前記第2の光学異方性層、及び前記偏光層が、この順で積層されており、且つ前記第2の光学異方性層の遅相軸の方向と前記偏光層の吸収軸の方向とが、実質的に直交している[5]〜[7]のいずれか1項に記載の偏光板。
[9]前記第2の光学異方性層、前記第1の光学異方性層、及び前記偏光層が、この順で積層されており、且つ前記第2の光学異方性層の遅相軸の方向と前記偏光層の吸収軸の方向とが、実質的に平行である[5]〜[7]のいずれか1項に記載の偏光板。
[10]一対の基板と、該一対の基板に挟持された液晶分子が黒表示時に基板に対して実質的に平行に配向する液晶層とを有する液晶セル、及び[8]の偏光板を含み、該一対の基板の一方の外側に、第1の光学異方性層、第2の光学異方性層、及び偏光層がこの順となり、且つ前記第2の光学異方性層の遅相軸と黒表示時の液晶分子の長軸方向とが実質的に平行になるように前記偏光板が配置され、及び他方の基板の外側にさらに第2の偏光層を有し、双方の偏光層の吸収軸が直交している液晶表示装置。
[11]一対の基板と、該一対の基板に挟持された液晶分子が黒表示時に基板に対して実質的に平行に配向する液晶層とを有する液晶セル、及び[9]の偏光板を含み、該一対の基板の一方の外側に、第2の光学異方性層、第1の光学異方性層、及び偏光層がこの順となり、且つ前記第2の光学異方性層の遅相軸と黒表示時の液晶分子の長軸方向とが実質的に直交するように前記偏光板が配置され、及び他方の基板の外側にさらに第2の偏光層を有し、双方の偏光層の吸収軸が直交している液晶表示装置。
[12]前記第2の偏光層と前記基板との間には、実質的に等方的な接着剤層及び/又は実質的に等方的な透明保護フィルムのみが含まれる[10]又は[11]に記載の液晶表示装置。
本発明によれば、簡単な構成で、表示品位のみならず、視野角が著しく改善され、湿度等の環境変化による光学特性変化が少なく、強度な耐久性を有する液晶表示装置用光学補償フィルム、特にIPS型液晶表示装置用光学補償フィルムを提供することができる。また、本発明によれば、環境変化があっても視野角特性変化の少ない液晶表示装置及び液晶表示装置に使用する偏光板を提供することができる。
発明の実施の形態
以下において、本発明の光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置の実施形態について順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「実質的に垂直」とは、厳密な垂直の角度よりも±20゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±15゜未満であることが好ましく、±10゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
本明細書において、Re、Rthは各々、ある波長λnmにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレタデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレタデーション値の計3つの方向で測定したレタデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
[光学補償フィルム]
本発明の光学補償フィルムは、所定の光学特性を有する第1の光学異方性層と、所定の光学特性を有する第2の光学異方性層とが、接着手段により積層されていることを特徴とする。
[第1の光学異方性層]
本発明の光学補償フィルムに含まれる第1の光学異方性層は面内のレタデーションは、0〜10nmであり、0〜5nmであることが好ましく、0〜3nmであることがより好ましい。さらに、該光学異方性層の厚さ方向のレタデーションは、−400〜−80nmであり、−360〜−100nmであることが好ましく、−320〜−120nmであることがより好ましい。
第1の光学異方性層は、液晶化合物を含有する組成物から形成されていることが好ましい。前記液晶化合物は棒状液晶化合物であることが好ましい。棒状液晶化合物を用いた場合は、前記光学異方性層において棒状分子が垂直配向しているのが好ましい。
液晶性化合物の種類については特に制限されない。本発明の光学補償フィルムに含まれる第1の光学異方性層は、例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して作製してもよい。また、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して作製してもよい。なお本発明では、光学異方性層の作製に液晶性化合物が用いられるが、作製の過程で液晶性化合物は重合等によって固定された状態で光学異方性層に含有される場合が多く、最終的には液晶性を示す必要はない。重合性液晶性化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。
本発明の光学補償フィルムに含まれる第1の光学異方性層において、液晶化合物の分子は、所定の配向状態、好ましくは垂直配向の状態に固定されていることが好ましい。棒状液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°がさらに好ましい。
本発明の光学補償フィルムに含まれる第1の光学異方性層は、支持体上に形成してもよい。支持体として後述する第2の光学異方性層を用いて第1の光学異方性層を設けてもよいし、仮の支持体上に第1の光学異方性層に設けた後、偏光層や第2の光学異方性層に転写してもよいし、光学的に等方性のフィルムを支持体として用いてもよい。偏光層又は第2の光学異方性層との積層体は、光学補償フィルムとして、液晶表示装置等に組み込むことができる。
以下、第1の光学異方性層として、液晶性化合物を含む光学異方性層を有する光学補償フィルムの態様について、作製に用いられる材料、作製方法等を詳細に説明する。
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物等の液晶性化合物と、所望により、下記の重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む組成物から形成することができる。
[棒状液晶性化合物]
本発明では、棒状液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成することが好ましい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報、特開2004−240188号公報、特開2005−99236号公報、特開2005−99237号公報、特開2005−121827号公報、特開2002−30042号公報などに記載の化合物を用いることができる。
[垂直配向促進剤]
液晶性化合物を均一に垂直配向させるためには、配向膜界面側及び空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御することが必要である。この目的のために、配向膜に、排除体積効果、静電気的効果又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を添加した組成物を採用してもよい。また、空気界面側の配向制御に関しては液晶性化合物の配向時に空気界面に偏在し、その排除体積効果、静電気的効果、又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を配合した液晶性組成物を採用してもよい。このような配向膜界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(配向膜界面側垂直配向剤)としては、ピリジニウム誘導体が好適に用いられる。空気界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(空気界面側垂直配向剤)としては、該化合物が空気界面側に偏在するのを促進する、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含む化合物が好適に用いられる。また、これらの化合物を配合することによって、例えば、液晶性組成物を塗布液として調製した場合に、該塗布液の塗布性が改善され、ムラ、ハジキの発生が抑制される。以下に垂直配向剤に関して詳細に説明する。
[配向膜界面側垂直配向剤]
本発明に使用可能な配向膜界面側垂直配向剤としては、下記式(I)で表されるピリジニウム誘導体(ピリジニウム塩)が好適に用いられる。該ピリジニウム誘導体の少なくとも1種を前記液晶性組成物に添加することによって、ディスコティック液晶性化合物の分子を配向膜近傍で実質的に垂直に配向させることができる。
式(I)において、L1は2価の連結基を表し、アルキレン基と−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−NRa−(但し、Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子である)、アルケニレン基、アルキニレン基又はアリーレン基との組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の2価の連結基であることが好ましい。アルキレン基は、直鎖であっても分岐であってもよい。
式(I)において、R1は、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換基で置換された置換アミノ基である。R1が置換アミノ基である場合、脂肪族基によって置換されていることが好ましい。脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基及び置換アルキニル基が挙げられる。また、R1が2置換アミノ基である場合、2つの脂肪族基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環又は6員環であることが好ましい。R1は水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であることが好ましく、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が2〜12の置換アミノ基であることがより好ましく、水素原子、無置換のアミノ基又は炭素原子数が2〜8の置換アミノ基であることがさらに好ましい。R1がアミノ基である場合、ピリジニウム環の4位に置換されていることが好ましい。
式(I)において、Xはアニオンである。アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、ギ酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、リン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオン)、水酸イオンなどが挙げられる。Xは、好ましくは、ハロゲン陰イオン、スルホネートイオン、水酸イオンである。
式(I)において、Y1は5員環又は6員環を部分構造として有する炭素数1〜30の2価の連結基である。Y1に含まれる環状部分構造はシクロヘキシル環、芳香族環又は複素環であることがより好ましい。芳香族環としては、ベンゼン環、インデン環、ナフタレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ビフェニル環、及びピレン環を挙げることができる。ベンゼン環、ビフェニル環、及びナフタレン環がさらに好ましい。複素環を構成する複素原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、例えば、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環及びトリアジン環などを挙げることができる。複素環は6員環であることが好ましい。Yで表される5員環又は6員環を部分構造として有する2価の連結基は置換基を有していてもよい。
式(I)において、Zは、ハロゲン置換フェニル基、ニトロ置換フェニル基、シアノ置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基であり、シアノ置換フェニル基、ハロゲン置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基又は炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基であるのが好ましい。
Zは、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜16のアルキル基、炭素原子数が1〜16のアルケニル基、炭素原子数が1〜16のアルキニル基、炭素原子数が1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜16のアルコキシ基、炭素原子数が2〜16のアシル基、炭素原子数が1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜16のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数が2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
本発明に用いられるピリジニウム化合物としては、下記式(Ia)で表されるピリジニウム化合物が好ましい。
式(Ia)において、L3は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又はO−CO−AL−CO−O−である。ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L3は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又はO−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、単結合又はO−であるのがより好ましい。
式(Ia)において、L4は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−又はN=N−である。
式(Ia)において、R3は、水素原子、無置換アミノ基又は炭素原子数が2〜20のアルキル置換アミノ基である。R3がジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環又は6員環が好ましい。R3は水素原子、無置換アミノ基又は炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基がさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基又は炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基が最も好ましい。R3が無置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位がアミノ置換されていることが好ましい。
式(Ia)において、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環からなる2価の基である。6員環の例は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)及び複素環が挙げられる。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環及びシクロヘキサジエン環が挙げられる。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環及びトリアジン環が挙げられる。6員環に、他の6員環又は5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基及び炭素原子数が1〜12のアルコキシ基が挙げられる。アルキル基及びアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基又は炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。アシル基及びアシルオキシ基の定義は、後述する。
式(Ia)において、X1はアニオンである。X1は、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)及びスルホン酸イオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルン酸イオン、ベンゼンスルン酸イオン)が含まれる。
式(Ia)において、Z1は水素原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基又は炭素原子数が1〜12のアルコキシ基であって、アルキル基及びアルコキシ基は、それぞれ、炭素原子数が2〜12のアシル基又は炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。
式(Ia)において、mは1又は2であって、mが2の場合、2つのL4及び2つのY3は、異なっていてもよい。
mが2の場合、Z1は、シアノ基、炭素原子数が1〜10のアルキル基又は炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましい。
mが1の場合、Z1は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基又は炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)又は芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基又はアルケニル基であることがさらに好ましい。
式(Ia)において、pは、1〜10の整数である。CpH2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。CpH2pは、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。また、pは1又は2であることがより好ましい。
以下に、式(I)及び/又は(Ia)で表される化合物の具体例を示す。ここで、Meはメチル基を表す。
ピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
前記液晶性組成物中における前記ピリジニウム誘導体の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、液晶性組成物(塗布液として調製した場合は溶媒を除いた液晶性組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
[空気界面側垂直配向剤]
本発明に使用可能な空気界面側垂直配向剤としては、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有するフルオロ脂肪族基含有ポリマー(以下、「フッ素系ポリマー」という)、又は一般式(III)で表される含フッ素化合物が好適に用いられる。
まず、フッ素系ポリマーについて説明する。
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有することを特徴とする。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。フルオロ脂肪族基の一つは、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれるものである。これらのフルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747〜752ページに記載されている。テロメリゼーション法とは、ヨウ化物等の連鎖移動常数の大きいアルキルハライドをテローゲンとして、テトラフルオロエチレン等のフッ素含有ビニル化合物のラジカル重合を行い、テロマーを合成する方法である(Scheme−1に例を示した)。
得られた、末端ヨウ素化テロマーは通常、例えば[Scheme2]のごとき適切な末端化学修飾を施され、フルオロ脂肪族化合物へと導かれる。これらの化合物は必要に応じ、さらに所望のモノマー構造へと変換され、フッ素系ポリマーの製造に使用される。
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能なモノマーの具体例を以下に挙げるが、本発明は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの一態様は、フルオロ脂肪族基含有モノマー(以下、「フッ素系モノマー」ということがある)より誘導される繰り返し単位と、下記式(II)で表される親水性基を含有する繰り返し単位とを有する共重合体である。
上記式(II)において、R1、R2及びR33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Qはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又は、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NRb−(Rbは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(ORf)−(Rfはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。
式(II)中、R1、R2及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は下記に例示した置換基群から選ばれる置換基を表す。
(置換基群)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、さらに好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、さらに好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、さらに好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
R1、R2及びR33はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、又は後述する−L−Qで表される基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子、−L−Qで表される基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基であることが最も好ましい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
Lは、上記連結基群から選ばれる2価の連結基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。上記連結基群中、−NRb−のRbは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくは水素原子又はアルキル基である。また、−PO(ORf)−のRfはアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくはアルキル基である。Rb及びRfがアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す場合の炭素数は「置換基群」で説明したものと同じである。Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NRb−、−S−、−SO2−、アルキレン基又はアリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NRb−、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいることが特に好ましい。Lがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6である。特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラブチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、さらに好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン基、ナフタレン基等が挙げられる。Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、さらに好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては先にR1、R2、R33における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
以下にLの具体的構造を例示する。
前記式(II)中、Qはカルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホノキシ基、ホスホノキシ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)を表す。より好ましくはカルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのはカルボキシル基又はスルホ基である。
前記フッ素系ポリマーは、前記式(II)で表される繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、前記フッ素系ポリマーは、上記各繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を1種又は2種以上有していてもよい。前記他の繰り返し単位については特に制限されず、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。以下、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。前記フッ素系ポリマーは、下記モノマー群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;及び
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
前記フッ素系ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、30質量%以上であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーにおいて、前記式(II)で表される繰り返し単位の量は、該フッ素ポリマーの構成モノマー総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましく、1〜10質量%であるのがさらに好ましい。上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が、式(II)で表される繰り返し単位の含有量を正確に規定できる。該表記を用いた場合、前記フッ素系ポリマー中に含有される親水性基(式(II)中のQ)の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、より好ましい量は0.2mmol/g〜8mmol/gである。
本発明に用いる前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、又は、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本発明の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
前記フッ素系ポリマーを好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル類(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され精密な制御が必要であるが、使用するモノマーの全モル数に対して好ましくは0.01モル%〜50モル%程度であり、より好ましくは0.05モル%〜30モル%、さらに好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
なお、本発明のフッ素系ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
以下に、フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられる具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によってなんら限定されるものではない。ここで式中の数値(a、b、c、d等の数値)は、それぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、MwはGPCにより測定されたPEO換算の質量平均分子量である。
本発明に用いられるフッ素系ポリマーは、公知慣用の方法で製造することができる。例えば先にあげたフッ素系モノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、さらに添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
前記液晶性組成物(塗布液として調製した場合は、溶媒を除いた液晶性組成物)中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、液晶性組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレタデーションの均一性等)に悪影響を及ぼす。
次に、同様に空気界面側垂直配向剤として使用可能な、式(III)で表される含フッ素化合物について説明する。
式(III)
(R0)mo−L0−(W)no
式中、R0はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、moは1以上の整数を表す。複数個のR0は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L0は(mo+no)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表し、noは1以上の整数を表す。
式(III)中、R0は含フッ素化合物の疎水性基として機能する。R0で表されるアルキル基は置換もしくは無置換のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは4〜16のアルキル基であり、特に好ましくは6〜16のアルキル基である。該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。
R0で表される末端にCF3基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、より好ましくは4〜16であり、さらに好ましくは4〜8である。前記末端にCF3基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF2H基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、より好ましくは4〜16であり、さらに好ましくは4〜8である。前記末端にCF2H基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、60%以上が置換されていることがより好ましく、70%以上を置換されていることがさらに好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示する置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基の例を以下に示す。
R1:n−C8F17−
R2:n−C6F13−
R3:n−C4F9−
R4:n−C8F17−(CH2)2−
R5:n−C6F13−(CH2)2−
R6:n−C4F9−(CH2)2−
R7:H−(CF2)8−
R8:H−(CF2)6−
R9:H−(CF2)4−
R10:H−(CF2)8−(CH2)−
R11:H−(CF2)6−(CH2)−
R12:H−(CF2)4−(CH2)−
式(III)において、L0で表される(mo+no)価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族基、ヘテロ環基、−CO−、−NRd−(Rdは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−からなる群より選ばれる基を少なくとも2つ組み合わせた連結基であることが好ましい。
式(III)において、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。Wの好ましい範囲は、式(II)におけるQと同一である。
前記式 (III)で表される含フッ素化合物の中でも、下記式(III)−a又は式(III)−bで表される化合物が好ましい。
式(III)−a中、R4及びR5は各々アルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表すが、R4及びR5が同時にアルキル基であることはない。W1及びW2は各々水素原子、カルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表すが、W1及びW2が同時に水素原子であることはない。
式(III)−b
(R6−L2−)m2(Ar1)−W3
式(III)−b中、R6はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、m2は1以上の整数を表し、複数個のR6は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L2は、アルキレン基、芳香族基、−CO−、−NR’−(R’は炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、複数個のL2は同一でも異なっていてもよい。Ar1は芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を表し、W3はカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表す。
まず、前記式(III)−aについて説明する。
R4及びR5は前記式(III)におけるR0と同義であり、その好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩は前記式(III)におけるWと同義でありその好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは1〜8のアルキル基であり、特に好ましくは1〜3のアルキル基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキル基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、更に好ましくは1〜8のアルコキシ基であり、特に好ましくは1〜4のアルコキシ基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキルアミノ基であり、より好ましくは1〜8のアルキルアミノ基であり、さらに好ましくは1〜4のアルキルアミノ基である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、又はホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基としては、前記式(III)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、ホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。
W1及びW2は、特に好ましくはそれぞれ水素原子又は(CH2)nSO3M(nは0又は1を表す。)である。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合は、Mはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
次に、前記式(III)−bについて説明する。
R6は前記式(III)−bにおけるR0と同義であり、その好ましい範囲も同一である。L2は、好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12の芳香族基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜40の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、フェニル基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜20の連結基を表す。Ar1は、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環を表し、より好ましくはベンゼン環又はナフタレン環を表す。W3で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基は、前記式(III)−aにおけるW1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基と同義でありその好ましい範囲も同一である。
W3は、好ましくはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩又はスルホ基(−SO3H)もしくはその塩を有するアルキルアミノ基であり、特に好ましくはSO3M又はCO2Mである。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合は、Mはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
本明細書において、置換基群Dには、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、さらに好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)。
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、さらに好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、さらに好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、さらに好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、さらに好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、さらに好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、さらに好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、本発明の含フッ素化合物は、ディスコティック液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
本発明に使用可能な式(III)にて表される含フッ素化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる含フッ素化合物はこれらに限定されるものではない。
前記液晶性組成物中における前記含フッ素化合物の含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、前記液晶性組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。
[重合性開始剤]
所望の配向状態(例えば、棒状液晶性化合物の場合は垂直配向)に配向させた液晶性化合物の分子を、その配向状態を維持して固定するのが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
[光学異方性層の他の添加剤]
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物、特願2003−295212号明細書中の段落番号[0069]〜[0126]記載の化合物が挙げられる。
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
本発明の光学異方性体である前記光学異方性層は、例えば、液晶性化合物、及び所望により添加される重合開始剤、配向制御剤等の添加剤を、溶媒に溶解及び/又は分散させて調製した塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
[塗布方法]
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。中でも、前記光学異方性層を形成する際は、ワイヤーバーコーティング法を利用して塗布するのが好ましく、ワイヤーバーの回転数は下記式を満たすことが好ましい。
0.6<(W×(R+2r)×π)/V<1.4
[W:ワイヤーバーの回転数(rpm)、R:バーの芯の直径(m)、r:ワイヤーの直径(m)、V:支持体の搬送速度(m/min)]
(W×(R+2r)×π)/Vの範囲は、0.7〜1.3であることがより好ましく、0.8〜1.2であることがさらに好ましい。
前記第1の光学異方性層の形成にはダイコーティング法が好ましく用いられ、特に、スライドコーター又はスロットダイコーターを利用した塗布方法が好ましい。例えば、特開2004−290775号、特開2004−290776号、特開2004−358296号、特開2005−13989号等に記載の塗布方法を用いることができる。
次に、上記の通り、支持体表面又は配向膜表面に前記組成物を塗布した後、液晶性化合物の分子を配向(棒状液晶性分子については好ましくは垂直配向)させて、分子をその配向状態に固定して光学異方性層を形成する。配向させる温度は、用いる液晶性化合物の転移温度、所望の配向状態等を考慮して、決定することができる。固定化は、液晶性分子や、組成物中に所望により添加される重合性モノマーの重合反応又は架橋反応により実施されるのが好ましい。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
形成される光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜5μmであることがよりさらに好ましい。
[配向膜]
本発明では、配向膜の表面に前記組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させるのが好ましい。配向膜は液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有するため、本発明の好ましい態様を実現する上で利用するのが好ましい。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は100〜5000であることが好ましい。
本発明の光学補償フィルムに用いられる配向膜は、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール及びジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤及び添加剤を含む溶液を透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法又はロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行なうことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
配向膜は、透明支持体上に設けられることが好ましい。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋した後、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
配向膜のラビング処理面に前記組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させることで、前記光学異方性層を形成することができる。
配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲とするのが好ましい。
[支持体]
液晶性組成物からなる第1の光学異方性層は、通常、支持体上に形成される。支持体は、後述する第2の光学異方性層(但し、第2の光学異方性層を支持体とする場合は、支持体上に接着層を形成し、その上に第1の光学異方性層を形成する)であってもよいし、また、仮の支持体上に第1の光学異方性層に設けた後、偏光層や第2の光学異方性層(但し、第2の光学異方性層上に転写する場合は、第2の光学異方性層にあらかじめ接着層を形成し、又は第1の光学異方性層にあらかじめ接着層を形成してから転写する)に転写してもよいし、光学的に等方性のフィルムを支持体として用いてもよい。仮の支持体を用いる場合は、支持体の光学特性は特に問わないが、第1の光学異方性層が容易に剥離できることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。光学的に等方的な支持体上に第1の光学異方性層を形成した場合、液晶表示装置での使用時、該支持体は取り除いてもよいし、残してもよい。光学的に等方性の支持体と、第1の光学異方性層との接着性が低い場合は、接着剤等からなる接着層を介して双方を積層すると、耐久性が向上するので好ましい。また、支持体は偏光層の保護フィルムとしても利用できる。支持体は光透過率が80%以上であることが好ましい。
実質的に等方的な支持体としては、面内のレタデーション(Re)は0〜10nmであることが好ましく、0〜5nmであることがさらに好ましく、0〜3nmであることが最も好ましい。また、厚さ方向のレタデーション(Rth)は−20nm〜20nmであることが好ましく、−15nm〜15nmであることが好ましく、−10nm〜10nmであることが最も好ましい。波長分散は、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。
ポリマーの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及び環状ポリオレフィンが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロースがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。環状ポリオレフィンとしては、特公平2−9619号公報記載のテトラシクロドデセン類の開環重合体又はテトラシクロドデセン類とノルボルネン類の開環共重合体を水素添加反応させて得られた重合体を構成成分とするポリマー、商品名としてはアートン(JSR製)や、ゼオネックス、ゼオノア(日本ゼオン製)のシリーズから使用することができる。ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、垂直配向膜あるいは位相差層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。また、透明支持体や長尺の透明支持体には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面の貼り付きを防止するために、平均粒径が10〜100nm程度の無機粒子を固形分重量比で5%〜40%混合したポリマー層を支持体の片側に塗布や支持体との共流延によって形成したものを用いることが好ましい。
また、前記第1の光学異方性層の仮の支持体も、上記ポリマーフィルムから選択してもよく、かかる場合は、ポリマーフィルム中に、剥離促進剤を含有させるのが好ましい。例えば、環状ポリオレフィンフィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては、界面活性剤に効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。
RZ−1 C8H17O−P(=O)−(OH)2
RZ−2 C12H25O−P(=O)−(OK)2
RZ−3 C12H25OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2
RZ−4 C15H31(OCH2CH2)5O−P(=O)−(OK)2
RZ−5 {C12H25O(CH2CH2O)5}2−P(=O)−OH
RZ−6 {C18H35(OCH2CH2)8O}2−P(=O)−ONH4
RZ−7 (t−C4H9)3−C6H2−OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2
RZ−8 (iso−C9H19−C6H4−O−(CH2CH2O)5−P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9 C12H25SO3Na
RZ−10 C12H25OSO3Na
RZ−11 C17H33COOH
RZ−12 C17H33COOH・N(CH2CH2OH)3
RZ−13 iso−C8H17−C6H4−O−(CH2CH2O)3−(CH2)2SO3Na
RZ−14 (iso−C9H19)2−C6H3−O−(CH2CH2O)3−(CH2)4SO3Na
RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17 C17H33CON(CH3)CH2CH2SO3Na
RZ−18 C12H25−C6H4SO3・NH4
剥離促進剤の添加量は環状ポリオレフィンに対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
[第2の光学異方性層]
第2の光学異方性層の面内のレタデーションは、20〜150nmであり、30〜130nmであることがより好ましく、40〜110nmであることがさらに好ましい。さらに、厚さ方向のレタデーションは、100〜300nmであり、120〜280nmであることがより好ましく、140nm〜260nmであることがさらに好ましい。
前記第2の光学異方性層は、ポリマーフィルムであるのが好ましく、環状ポリオレフィンを含有する延伸フィルムであるのがより好ましい。以下、第2の光学異方性層として利用可能な環状ポリオレフィンについて説明する。
[環状ポリオレフィン]
本発明において、環状ポリオレフィンポリマー(環状ポリオレフィン、あるいは環状ポリオレフィン系樹脂とも称する)とは、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂を表す。
前記第2の光学異方性層の作製に用いる環状オレフィン構造を有する重合体樹脂の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン及び必要に応じ、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンである。また、一般式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体も好適に使用することができる。
式中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3、Y1〜Y3は水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR13R14、−(CH2)nNR13R14、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、又はX1とY1あるいはX2とY2あるいはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基又はハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16 pD3-p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16又はOR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
X1〜X3、Y1〜Y3の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムの厚さ方向レタデーション(Rth)を大きくし、面内レタデーション(Re)の発現性を大きくすることが出来る。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
前記一般式(II)の内、X2、Y2の少なくとも1個がエステル結合を含有することが好ましく、必要に応じエステル結合以外の置換基を有する構成成分を含有させてもよい。更に、必要に応じ、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンも好ましい。また、一般式(III)の内、X3、Y3の少なくとも1個がエステル結合を含有することが好ましく、必要に応じエステル結合以外の置換基を有する構成成分を含有させてもよい。
エステル結合を含有する構成成分の量は、好ましくは、(共)重合体の100モル%〜10モル%、更に好ましくは、100モル%〜20モル%である。エステル結合を含有する構成成分の含有量がこれより少ないと鹸化後の親水性が不十分であり、水溶性樹脂との接着性改良効果を得ることができない。
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003−1159767号あるいは特開2004−309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R5〜R6は水素原子又は−CH3が好ましく、X3、及びY3は水素原子、Cl、−COOCH3が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
前記環状ポリオレフィンのガラス転移温度(Tg)に制限はないが、例えば200〜400℃というような高いTgの環状ポリオレフィンも用いることができる。
本発明では、上記環状ポリオレフィン系樹脂に微粒子を添加することができる。微粒子の添加により、フィルム表面の動摩擦係数が低下することによりフィルムハンドリング時にフィルムに加わる応力を低減させることができる。本発明で使用できる微粒子としては、有機あるいは無機化合物の微粒子を使用することができる。
無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や金属酸化物であるが、フィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等があり、またそれらの粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物を用いることができる。
これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは、1〜20000nmであり、より好ましくは1〜10000nmであり更に好ましくは、2〜1000nmであり、特に好ましくは、5〜500nmである。微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡で粒子を平均粒径で求められる。購入した微粒子は凝集していることが多く、使用の前に公知の方法で分散することが好ましい。分散により二次粒子径を200〜1500nmにすることが好ましく、300〜1000nmが更に好ましい。微粒子の添加量は環状ポリオレフィン100質量部に対して0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。
微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましいヘイズの範囲は2.0%以下であり、1.2%以下が更に好ましく、0.5%以下が特に好ましい。微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましい動摩擦係数は0.8以下であり、0.5以下が特に好ましい。動摩擦係数は、JISやASTMが規定する方法に従い、鋼球を用いて測定できる。ヘイズは日本電色工業(株)製1001DP型ヘイズ計を用いて測定できる。
(環状ポリオレフィン溶液)
前記第2の光学異方性層は、環状ポリオレフィンの溶液を用いて作製することができる。例えば、環状ポリオレフィンの溶液を流延及び製膜することで作製することができる。前記溶液の調製に用いる溶剤は、環状ポリオレフィンが溶解し、流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、特に限定されない。前記溶剤は、例えばジクロロメタン、クロロホルムの如き塩素系溶剤、炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶剤が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素類の例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12の環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン及びその誘導体が挙げられる。炭素原子数が3〜12の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶剤の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤の好ましい沸点は35℃以上且つ150℃以下である。本発明に使用される溶剤は、乾燥性、粘度等の溶液物性調節のために2種以上の溶剤を混合して用いることができ、更に、混合溶媒で環状ポリオレフィンが溶解する限りは、貧溶媒を添加することも可能である。
好ましい貧溶媒は使用するポリマー種により適宜選択することができる。良溶媒として塩素系有機溶剤を使用する場合は、アルコール類を好適に使用することができる。アルコール類としては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール及びシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。貧溶媒のなかでも特に1価のアルコール類は、剥離抵抗低減効果があり、好ましく使用することができる。選択する良溶剤によって特に好ましいアルコール類は変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数が1〜6の1価アルコールが更に好ましく、炭素数1〜4のアルコール類が特に好ましく使用することができる。環状ポリオレフィン溶液を調製する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールあるいはブタノールから選ばれる1種以上のアルコール類を貧溶媒にする組み合わせである。
前記環状ポリオレフィン溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、レタデーション(光学異方性)調節剤、剥離促進剤、可塑剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば融点20℃未満と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は環状ポリオレフィン溶液(ドープ)作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、環状ポリオレフィンフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
前記環状ポリオレフィン溶液には公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、環状ポリオレフィン100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
前記環状ポリオレフィン溶液には、偏光板又は液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、環状ポリオレフィンに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
(レタデーション発現剤)
本発明ではレタデーション値を発現するため、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレタデーション発現剤として用いてもよい。レタデーション発現剤を使用する場合は、ポリマー100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5〜2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレタデーション発現剤を併用してもよい。
レタデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
レタデーション発現剤が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環又は非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル及び2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリル及び1−ヘキセニルが含まれる。アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニル及び1−ヘキシニルが含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイル及びブタノイルが含まれる。脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシ及びメトキシエトキシが含まれる。アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル及びエトキシカルボニルが含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ及びエトキシカルボニルアミノが含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオ及びオクチルチオが含まれる。アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル及びエタンスルホニルが含まれる。脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド及びn−オクタンスルホンアミドが含まれる。脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ及び2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル及びジエチルカルバモイルが含まれる。脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル及びジエチルスルファモイルが含まれる。脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ及びモルホリノが含まれる。レタデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
本発明では1,3,5−トリアジン環を用いた化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
一般式(IV): Ar1−L1−Ar2
上記一般式(IV)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子がさらに好ましい。芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
一般式(IV)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン又はエチニレン)である。アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。一般式(IV)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記式一般式(V)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(V):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(V)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義及び例は、一般式(IV)のAr1及びAr2と同様である。
一般式(V)において、L2及びL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1又は2(メチレン又はエチレン)であることが最も好ましい。L2及びL3は、−O−CO−又はCO−O−であることが特に好ましい。一般式(V)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレン又はエチニレンである。溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。レタデーション発現剤の添加量は、環状ポリオレフィン量の0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがさらに好ましい。
(可塑剤)
環状ポリオレフィン系樹脂は、一般的に、セルロースアセテートに比較して柔軟性に乏しく、フィルムに曲げ応力やせん断応力がかかると、フィルムに割れ等が生じ易い。また、光学フィルムとして加工する際に、切断部にひびが入りやすく、切り屑が発生しやすい。発生した切り屑は、光学フィルムを汚染し、光学的欠陥の原因となっていた。これらの問題点を改良するため、可塑剤を添加することができる。具体的には、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、正リン酸エステル系、酢酸エステル系、ポリエステル・エポキシ化エステル系、リシノール酸エステル系、ポリオレフィン系、ポリエチレングリコール系化合物を挙げることができる。
使用できる可塑剤としては、常温、常圧、液状で、かつ沸点が200℃以上の化合物から選択することが好ましい。具体的な化合物名としては、以下を例示することができる。脂肪族二塩基酸エステル系としては、例えばジオクチルアジペート(230℃/760mmHg)、ジブチルアジペート(145℃/4mmHg)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(335℃/760mmHg)、ジブチルジグリコールアジペート(230〜240℃/2mmHg)、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート(220〜245℃/4mmHg)、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(377℃/760mmHg)等;フタル酸エステル系としては、例えばジエチルフタレート(298℃/760mmHg)、ジヘプチルフタレート(235〜245℃/10mmHg)、ジ−n−オクチルフタレート(210℃/760mmHg)、ジイソデシルフタレート(420℃/760mmHg)等;ポリオレフィン系としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン等のパラフィンワックス類(平均分子量330〜600、融点45〜80℃)、流動パラフィン類(JIS規格K2231ISOVG8、同VG15、同VG32、同VG68、同VG100等)、パラフィンペレット類(融点56〜58℃、58〜60℃、60〜62℃等)、塩化パラフィン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリイソブテン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、スクアラン等を挙げることができる。
可塑剤の添加量としては、環状ポリオレフィン系樹脂に対して、0.5〜40.0質量%、好ましくは1.0質量%〜30.0質量%、より好ましくは3.0%〜20.0質量%である。可塑剤の添加量がこれより少ないと可塑効果が不十分で、加工適性が向上しない。また、これ以上になると長時間経時した場合に、可塑剤ご分離溶出する場合が有り、光学的ムラ、他部品への汚染等が発生し、好ましくない。
(環状ポリオレフィン溶液(ドープ)の調製)
環状ポリオレフィン溶液(ドープ)の調製は、室温攪拌溶解による方法、室温で攪拌してポリマーを膨潤させた後−20℃から−100℃まで冷却し再度20℃から100℃に加熱して溶解する冷却溶解法、密閉容器中で主溶剤の沸点以上の温度にして溶解する高温溶解方法、さらには溶剤の臨界点まで高温高圧にして溶解する方法などがある。溶解性のよいポリマーは室温溶解が好ましいが、溶解性の悪いポリマーは密閉容器中で加熱溶解することが好ましい。ジクロロメタンを主溶剤に選んだときは、多くの環状ポリオレフィンは20℃〜100℃の加熱により溶解することができる。
前記環状ポリオレフィン溶液の粘度は25℃で1Pa・s〜500Pa・sの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5Pa・s〜200Pa・sの範囲である。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTAInstrumennts社製)を用いて測定した。試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。
更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶剤を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶剤をフラッシュ蒸発させるとともに、溶剤蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。環状ポリオレフィン溶液の濾過には好ましくは絶対濾過精度が0.1μm〜100μmのフィルターが用いられ、さらに好ましくは絶対濾過精度が0.5μm〜25μmであるフィルターが好ましく用いられる。フィルターの厚さは、0.1mm〜10mmが好ましく、更には0.2mm〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は1.6MPa以下、より好ましくは1.3MPa以下、更には1.0MPa以下、特に好ましくは0.6MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、またセラミックス、金属等も好ましく用いられる。
環状ポリオレフィン溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常5Pa・s〜1000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、15Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、30Pa・s〜200Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5℃〜70℃であり、より好ましくは−5℃〜35℃である。
(環状ポリオレフィンフィルムの厚さ)
乾燥後の環状ポリオレフィンフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5μm〜500μmの範囲であり、30μm〜150μmの範囲が好ましく、特に液晶表示装置用には40μm〜110μmであることが好ましい。
フィルム厚さの調整は、所望の厚さ及び厚さ分布になるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られた環状ポリオレフィンフィルムの幅は0.5μm〜3mが好ましく、より好ましくは0.6μm〜2.5m、さらに好ましくは0.8μm〜2.2mである。長さは1ロールあたり100m〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500m〜7000mであり、さらに好ましくは1000m〜6000mである。全幅のRe値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
(光学異方性の発現)
前記環状ポリオレフィンフィルムは使用するポリマー構造、添加剤の種類及び添加量、延伸倍率、剥離時の残留揮発分などの工程条件を適宜調節することで、面内のレタデーション及び厚さ方向のレタデーションを制御することができる。例えば、剥離時の残留揮発分を40〜85wt%内で調節することによりRthを幅広く(例えば、180〜300nm)に制御することが可能である。一般に剥離時の残留揮発分が多いほど、Rthは小さくなり、剥離時の残留揮発分が少ないほどRthは大きくなる。例えば、前記溶液を金属支持体上に流延し、該金属支持体上での乾燥時間を短くし、剥離時残留揮発分を多くすることで、面配向を緩和させてRthを低くすることが自在にでき、工程条件を調節することにより様々な用途に応じた様々なレタデーションを発現することが可能である。
前記環状ポリオレフィンフィルムを延伸処理する場合は、剥離のすぐ後の未だフィルム中に溶剤が十分に残留している状態で行なうのが好ましい。延伸の目的は、(1)しわや変形のない平面性に優れたフィルムを得るため及び、(2)フィルムの面内レタデーションを大きくするために行なう。(1)の目的で延伸を行うときは、比較的高い温度で延伸を行い、延伸倍率も1%からせいぜい10%までの低倍率の延伸を行なう。2%〜5%の延伸が特に好ましい。(1)と(2)の両方の目的、あるいは(2)だけの目的で延伸する場合は、比較的低い温度で、延伸倍率も5%〜150%で延伸する。
フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。具体的には、横延伸法、縦延伸法、同時二軸延伸法及び逐次二軸延伸法のいずれであってもよい。
環状ポリオレフィンフィルムは延伸後、更に乾燥し、残留揮発分を2%以下にするのが好ましい。長尺状にフィルムを作製した場合は、搬送・保管のために、一旦ロール状に巻き取って後に、第2の光学異方性層として適当な大きさに切断して、用いてもよい。巻き取る前にフィルムの両端にナーリングを施すことが好ましい。これは片押しであっても両押しであってもよい。
[光学補償フィルムの作製]
上記方法によりそれぞれ作製された第1及び第2の光学異方性層は、接着手段により積層される。前記接着手段は、第1及び第2の光学異方性層の接着性を向上させる手段であり、例えば、層間に形成される接着剤層、粘着剤層等によって構成することができる。ここで用いる接着剤層(粘着剤層)については、次のの項で詳しく説明する。本発明では、光硬化型接着剤を用いることが生産性の観点で特に好ましい。例えば、第1の光学異方性層が液晶性組成物から形成され、且つ第2の光学異方性層がポリマーフィルムである態様では、前記第1の光学異方性層の支持体として第2の光学異方性層を用いずに、液晶の配向性を有した他の支持体上に第1の光学異方性層を形成した後、形成した第1の光学異方性層の表面に接着剤を塗布及び乾燥し、乾燥後の接着剤層の表面に前記第2の光学異方性層となるポリマーフィルムを貼合し乾燥後の接着剤層を硬化して、光学補償フィルムを作製するのが好ましい。
(接着剤)
本発明において、前記第1及び第2の光学異方性層との貼合や、第1の光学異方性層と支持体との貼合に用いる接着剤としては、液晶性組成物からなる層及びポリマーフィルムの双方に対して十分な接着力を有し、液晶性組成物からなる層の光学的特性を損なわないものであれば、特に制限はない。例えば、アクリル樹脂系、メタクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ゴム系、ウレタン系、ポリビニルエーテル系及びこれらの混合物系や、熱硬化型及び/又は光硬化型、電子線硬化型等の各種反応性のものを挙げることができる。これらの接着剤からなる層は、液晶性組成物からなる層を保護する透明保護層の機能を兼ね備えたものであってもよい。なお、上記接着剤として粘着剤を用いることもできる。
前記反応性の接着剤及び粘着剤の反応(硬化)条件は、接着剤等を構成する成分、粘度や反応温度等の条件により変化するため、それぞれに適した条件を選択して行えばよい。例えば、光硬化型の場合は、好ましくは各種の公知の光開始剤を添加し、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、アークランプ、レーザー、シンクロトロン放射光源などの光源からの光を照射し、反応を行わせればよい。単位面積(1平方センチメートル)当たりの照射量としては、積算照射量として通常1〜2000mJ、好ましくは10〜1000mJの範囲である。ただし、光開始剤の吸収領域と光源のスペクトルが著しく異なる場合や、あるいは反応性の化合物自身に光源波長の吸収能がある場合などはこの限りではない。これらの場合には、適当な光増感剤や、あるいは吸収波長の異なる2種以上の光開始剤を混合して用いるなどの方法を採ることもできる。電子線硬化型の場合の加速電圧は、通常10kV〜200kV、好ましくは50kV〜100kVである。
接着剤層の厚みは、前述のように接着剤を構成する成分、接着剤の強度や使用温度などにより異なるが、通常1〜50μm、好ましくは2〜30μm、さらに好ましくは3〜10μmである。この範囲外では接着強度が不足したり、端部よりの滲み出しなどがあったりして好ましくない。
また、これらの接着剤は、その特性を損なわない範囲で、光学特性の制御あるいは基板の剥離性や浸食性を制御する目的として、各種微粒子等や表面改質剤を添加することもできる。
前記微粒子としては、接着剤を構成する化合物とは屈折率の異なる微粒子、透明性を損なわず帯電防止性能向上のための導電性微粒子、耐摩耗性向上のための微粒子等が例示でき、より具体的には、微細シリカ、微細アルミナ、ITO(Indium Tin Oxide)微粒子、銀微粒子、各種合成樹脂微粒子などが挙げられる。
また、前記表面改質剤としては、接着剤との相溶性がよく接着剤の硬化性や硬化後の光学性能に影響を及ぼさない限り特に限定されず、イオン性、非イオン性の水溶性界面活性剤、油溶性界面活性剤、高分子界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン等の有機金属系界面活性剤、反応性界面活性剤等が使用できる。とりわけ、パーフルオロアルキル化合物、パーフルオロポリエーテル化合物などのフッ素系界面活性剤、あるいはシリコーン等の有機金属系界面活性剤は表面改質効果が大きいため、特に望ましい。表面改質剤の添加量は、接着剤に対し0.01〜10質量%の範囲が望ましく、より望ましくは0.05〜5質量%、さらに望ましくは0.1〜3質量%である。この範囲よりも添加量が少なすぎると添加効果が不十分となり、一方多すぎると接着強度が下がりすぎるなどの弊害を生じる恐れがある。なお、表面改質剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて複数種類を併用してもよい。
さらに本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を配合してもよい。
(鹸化)
環状ポリオレフィンフィルム等のポリマーフィルムの表面に鹸化処理を施して、ポリマーフィルムと液晶性組成物からなる層との接着性を向上させてもよい。鹸化処理は、流延工程の後であれば、いずれの段階でもよいが、未延伸あるいは延伸工程の後、及びフィルム乾燥後に鹸化処理することが好ましい。鹸化処理としては、アルカリ溶液中に光学フィルムを浸漬する方法、又は光学フィルム表面にアルカリ溶液を吹き付けもしくは塗布する方法等のいずれの方法も用いることができる。光学フィルムの片面のみをムラなく均一に鹸化処理できる、塗布方式によるアルカリ鹸化処理がより好ましい。一方浸漬方法による鹸化処理は、特に有機溶媒を含むアルカリ鹸化では、有機溶媒を含まないものと比較し、格段に処理速度を早くすることが可能となる。
鹸化処理は、処理するフィルムの変形、処理液の変質等が生じない温度120℃を超えない範囲の処理温度で行うことが好ましく、さらには温度10℃以上100℃以下、特には温度20〜60℃の温度範囲で行うことが好ましい。
また、鹸化処理の時間は、アルカリ溶液、処理温度により適宜調整して決定するが、1秒から60秒の範囲で行われるのが好ましい。
(アルカリ溶液)
前記鹸化処理に用いられるアルカリ溶液は、pH11以上のアルカリ溶液が好ましい。より好ましくはpH12〜14である。
アルカリ溶液に用いられるアルカリ剤の例として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機アルカリ剤、また、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独又は2種以上を組み合わせて使用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形で添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの使用が、これらの量の調整により広い領域でのpH調整が可能となるため好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、使用するアルカリ剤の種類、反応温度及び反応時間に応じて決定されるが、アルカリ剤の含有量は、アルカリ溶液中の0.1〜3モル/kgが好ましく、0.5〜2モル/kgがより好ましい。
アルカリ溶液の溶媒は、水及び水溶性有機溶媒の混合溶液が好ましい。有機溶媒としては、水と混和可能な有機溶媒であればいずれも用いることができるが、沸点が120℃以下、更には60〜120℃、特には100℃以下のものが好ましい。
溶媒は、無機性/有機性値(I/O値)が0.5以上で、且つ溶解度パラメーターが16〜40[mJ/m3]1/2の範囲のものが好ましい。より好ましくは、I/O値が0.6〜10で、且つ溶解度パラメーターが18〜31[mJ/m3]1/2の範囲のものである。I/O値がその上限値以下で(無機性が強すぎず)、且つ溶解度パラメーターがその下限値以上であれば、アルカリ鹸化速度が低下したり、また鹸化度の全面均一性が不満足となったりするなどの不都合が生じないので好ましい。一方、I/O値がその下限値以上で(有機性側に偏りすぎず)、且つ溶解度パラメーターがその上限値以下であれば、鹸化速度が速く、ヘイズを生じ易くなるなどの不都合を生じることがないので、全面均一性の点で優れたものとなるので好ましい。
また、有機溶媒、とりわけ上記有機性と溶解性の各範囲の有機溶媒を、後述する界面活性剤、相溶化剤等と組み合わせて用いると、高い鹸化速度が維持されて、且つ全面に亘る鹸化度の均一性が向上する。すなわち、上記のアルカリ鹸化処理のアルカリ溶液が、沸点が60〜120℃以下の水溶性有機溶媒、並びに界面活性剤及び相溶化剤の少なくともいずれかを含有するアルカリ溶液であるのが好ましい。
好ましい特性値を有する有機溶媒は、例えば、有機合成化学協会編、「新版溶剤ポケットブック」{(株)オーム社、1994年刊}等に記載のものが挙げられる。また、有機溶媒の無機性/有機性値(I/O値)については、例えば、田中善生著「有機概念図」(三共出版社1983年刊)p.1〜31に解説されている。
具体的には、一価脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等)、脂環式アルカノール(例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、メトキシシクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、シクロヘキシルエタノール、シクロヘキシルプロパノール等)、フェニルアルカノール(例えば、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェノキシエタノール、メトキシベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等)、複素環式アルカノール類(例えば、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等)、グリコール化合物のモノエーテル類(例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、メトキシメトキシエタノール、ブチルセルソルブ、ヘキシルセルソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、エトキシトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等)ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)及びエーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、トリオキサン、ジメチルセルソルブ、ジエチルセルソルブ、ジプロピルセルソルブ、メチルエチルセルソルブ、ジメチルカルビトール、ジメチルカルビトール、メチルエチルカルビトール等)等が挙げられる。有機溶媒は、単独もしくは2種以上を混合して用いてもよい。
有機溶媒を単独又は2種以上を混合する場合の、少なくとも1種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水への溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。これによりアルカリ剤、鹸化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できる。
有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度及び反応時間に応じて決定する。
水と有機溶媒の混合比は、3/97〜85/15質量比が好ましい。より好ましくは5/95〜60/40質量比であり、更に好ましくは15/85〜40/60質量比である。この範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一に鹸化処理される。
前記アルカリ溶液が含有する有機溶媒として、上記した好ましいI/O値を有する有機溶媒とは異なる有機溶媒(例えばフッ化アルコール等)を、後述の界面活性剤、相溶化剤の溶解助剤として併用してもよい。その含有量はアルカリ鹸化処理に使用する液の総質量に対して0.1〜5%が好ましい。
前記アルカリ溶液は、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を添加することによって、表面張力を下げて塗布を容易にしたり、塗膜の均一性を上げてハジキ故障を防止したり、且つ有機溶媒が存在すると起こり易いヘイズを抑止したり、さらには鹸化反応が均一に進行するなどの利点がある。その効果は、後述する相溶化剤の共存によって特に顕著となる。用いられる界面活性剤には特に制限はなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等のいずれであってもよい。
具体的には、例えば、吉田時行著「界面活性剤ハンドブック(新版)」(工学図書、1987年刊行)、「界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」第1編(技術教育出版、2000年刊行)等記載の公知の化合物が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、カチオン性界面活性剤としての4級アンモニウム塩類、ノニオン性界面活性剤としての各種のポリアルキレンレングリコール誘導体類、各種のポリエチレンオキサイド付加物類等のポリエチレンオキサイド誘導体類、両性界面活性剤としてのベタイン型化合物類が好ましい。
アルカリ溶液には、ノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を共存させて用いることも本発明の効果が高められて好ましい。これらの界面活性剤のアルカリ溶液に対する添加量は、溶液全体中好ましくは、0.001〜10質量%であり、より好ましくは、0.01〜5質量%の範囲が挙げられる。
前記アルカリ溶液には、相溶化剤を含有させることも好ましい。本発明において、「相溶化剤」とは、温度25℃において、相溶化剤100gに対して水の溶解度が50g以上となるような親水性化合物をいう。相溶化剤への水の溶解度は、相溶化剤100gに対して、水80g以上であるのが好ましく、100g以上であるのがより好ましい。また、相溶化剤が液状化合物である場合は、沸点が100℃以上であるのが好ましく、120℃以上であるのがより好ましい。
相溶化剤は、アルカリ溶液を貯留する浴等で壁面に付着したアルカリ溶液の乾燥を防止し、固着を抑制し、アルカリ溶液を安定に保持させる作用を有する。また、光学フィルムの表面にアルカリ溶液を塗布して一定時間保持した後、鹸化処理を停止するまでの間に、塗布されたアルカリ溶液の薄膜が乾燥し、固形物の析出を生じ、水洗工程での固形物の洗い出しを困難にするなどの問題の発生を防止する作用を有する。さらには、溶媒となる水と有機溶媒との相分離を防止する。特に、界面活性剤と有機溶媒と上述した相溶化剤との共存によって、処理された光学フィルムは、ヘイズが少なく、且つ、長尺の連続鹸化処理の場合であっても安定して全面均一な鹸化度となる。
相溶化剤は、上記の条件を満たす材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリオール化合物、糖類等のヒドロキシル基及び/又はアミド基を有する繰り返し単位を含む水溶性重合体が好適に挙げられる。
ポリオール化合物は、低分子化合物、オリゴマー化合物及び高分子化合物のいずれも用いることができる。
脂肪族ポリオール類としては、例えば、炭素数2〜8のアルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等)、ヒドロキシル基を3個以上含有する炭素数3〜18のアルカン類(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール、イノシトール等)が挙げられる。
ポリアルキレンオキシポリオール類としては、上記のような同じアルキレンジオール同士が結合していてもよく、異なるアルキレンジオールが互いに結合していてもよいが、同じアルキレンジオール同士が結合したポリアルキレンポリオールがより好ましい。いずれの場合もの結合数は3〜100であるのが好ましく、3〜50であるのがより好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)が挙げられる。
糖類としては、例えば、高分子学会高分子実験学編集委員会編「天然高分子」第二章{共立出版(株)、1984年刊}、小田良平等編「近代工業化学22、天然物工業化学II」{(株)朝倉書店、1967年刊}等に記載されている水溶性化合物が挙げられる。中でも、遊離のアルデヒド基及びケトン基を持たない、還元性を示さない糖類が好ましい。
糖類は、一般に、グルコース、スクロース、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体及び糖類に水素添加して還元した糖アルコールに分類されるが、いずれも本発明に好適に用いられる。
例えば、サッカロース、トレハロース、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カラシ油配糖体、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシット、還元水あめが挙げられる。これらの糖類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基及び/又はアミド基を有する繰り返し単位を有する水溶性重合体としては、例えば、天然ガム類(例えば、アラビアガム、グアーガム、トラガンドガム等)、ポリビニルピロリドン、ジヒドロキシプロピルアクリレート重合体、セルロース類又はキトサン類とエポキシ化合物(エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド)との付加反応体が挙げられる。
中でも、アルキレンポリオール、ポリアルキレンオキシポリオール、糖アルコール等のポリオール化合物が好ましい。
相溶化剤の含有量は、アルカリ溶液全体中0.5〜25質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
前記アルカリ溶液は、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、例えば、消泡剤、アルカリ溶液安定化剤、pH緩衝剤、防腐剤、防菌剤等の公知のものが挙げられる。
その他の添加剤の含有量は、アルカリ溶液全体中0.001〜30質量%であるのが好ましく、0.005〜25質量%であるのがより好ましい。
(アルカリ溶液の塗布鹸化方法)
上記のアルカリ溶液を用いたフィルムの表面処理方法として、フィルムの片面のみを処理できる塗布方式が好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、バーコーティング法、ロッドコーティング法(細い金属線を巻いたロッド)、ロールコーティング法(順転ロールコーター、逆転ロールコーター、グラビアコーター)、カーテンコーティング法、ダイコーティング法(エクストルージョンコーター(スロットコーター)、スライドコーター、スリットダイコーター)等の塗布法を挙げることができる。塗布方式に関しては、各種文献{例えば、“Modern Coating and Drying Technology”,E.Cohen and E.B.Gutoff編、VCH Publishers,Inc.刊(1992年)}に記載されている。アルカリ溶液の塗布量は、その後、水洗除去するため廃液処理を考慮して、極力抑制することが望ましく、1cc/m2〜100cc/m2が好ましく、1cc/m2〜50cc/m2がより好ましい。少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ダイコーターなどの塗工手段を用いることが好ましい。特に、少ない塗布量域で塗布スジのムラを発生することなく高速で塗布でき、塗布装置部と塗布液が塗布される表面が非接触の方法であるダイコーターが好ましい。
フィルムを、その表面を所定の温度でアルカリ溶液により鹸化処理するには、塗布する前に、その表面温度を予め所定の温度に調整する工程、アルカリ液を予め所定の温度に調整しておく工程、或いはこれらを組み合わせた工程等が挙げられる。塗布する前に予め所定の温度に調整する工程と組み合わせることが好ましい。
鹸化反応後は、水洗、中和後水洗等によりフィルム表面からアルカリ溶液及び鹸化処理反応物とを洗浄し除去することが好ましい。具体的には、例えば国際公開第02/46809号パンフレット等に記載の内容が挙げられる。
[偏光板]
本発明の偏光板は、偏光層と、本発明の光学補償フィルムとを含む。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の吸収軸は、フィルムの延伸方向に相当する。従って、縦方向(搬送方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して平行に吸収軸を有し、横方向(搬送方向と垂直方向)に延伸された偏光膜は長手方向に対して垂直に吸収軸を有す。
本発明の偏光板の好ましい製造方法は、偏光膜と光学補償フィルムとをそれぞれ長尺の状態で連続的に積層される工程を含む。該長尺の偏光板は用いられる液晶表示装置の画面の大きさに合わせて裁断される。
偏光膜は一般に双方の表面に保護膜を有する。本発明の光学補償フィルムを偏光膜の保護膜として機能させることができ、かかる場合は、前記光学補償フィルム側の偏光層の表面には別途保護膜を貼り合わせる必要はない。本発明の偏光板において、偏光層と保護膜との間には、等方的な接着剤層、及び/又は実質的に等方的な透明保護フィルムのみが含まれているのが好ましい。実質的に等方的な透明保護フィルムとしては、具体的には、面内のレタデーションが0〜10nm、厚さ方向のレタデーションが−20〜20nmであるフィルムである。セルロースアシレート又は環状ポリオレフィンを含むフィルムが好ましい。
本発明の偏光板の第1の態様は、前記第1の光学異方性層、前記第2の光学異方性層、及び前記偏光層が、この順で積層されており、且つ前記第2の光学異方性層の遅相軸の方向と前記偏光層の吸収軸の方向とが、実質的に直交している態様であり、本発明の偏光板の第2の態様は、前記第2の光学異方性層、前記第1の光学異方性層、及び前記偏光層が、この順で積層されており、且つ前記第2の光学異方性層の遅相軸の方向と前記偏光層の吸収軸の方向とが、実質的に平行である態様である。前記第2の光学異方性層が延伸ポリマーフィルムからなる場合は、前記第2の光学異方性層の遅相軸は、延伸方向によって調整することができる。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、本発明の偏光板を少なくとも含む。本発明の液晶表示装置は、反射型、半透過型、透過型液晶表示装置等のいずれであってもよい。液晶表示装置は一般的に、偏光板、液晶セル、及び必要に応じて位相差板、反射層、光拡散層、バックライト、フロントライト、光制御フィルム、導光板、プリズムシート、カラーフィルター等の部材から構成されるが、本発明においては前記偏光板を使用することを必須とする点を除いて特に制限はない。液晶セルとしては特に制限されず、電極を備える一対の透明基板で液晶層を狭持したもの等の一般的な液晶セルが使用できる。液晶セルを構成する前記透明基板としては、液晶層を構成する液晶性を示す材料を特定の配向方向に配向させるものであれば特に制限はない。具体的には、基板自体が液晶を配向させる性質を有していている透明基板、基板自体は配向能に欠けるが、液晶を配向させる性質を有する配向膜等をこれに設けた透明基板等がいずれも使用できる。また、液晶セルの電極は、公知のものが使用できる。通常、液晶層が接する透明基板の面上に設けることができ、配向膜を有する基板を使用する場合は、基板と配向膜との間に設けることができる。前記液晶層を形成する液晶性を示す材料としては、特に制限されず、各種の液晶セルを構成し得る通常の各種低分子液晶性化合物、高分子液晶性化合物及びこれらの混合物が挙げられる。また、これらに液晶性を損なわない範囲で色素やカイラル剤、非液晶性化合物等を添加することもできる。
前記液晶セルは、前記電極基板及び液晶層の他に、後述する各種の方式の液晶セルとするのに必要な各種の構成要素を備えていてもよい。前記液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、STN(SuperTwisted Nematic)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA(Multidomain Vertical Alignment)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)方式、ハーフトーングレイスケール方式、ドメイン分割方式、あるいは強誘電性液晶、反強誘電性液晶を利用した表示方式等の各種の方式が挙げられる。また、液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、並びにTFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であってもよい。カラーフィルターを使用しないフィールドシーケンシャル方式であってもよい。
本発明における偏光板は、反射型、半透過型、及び透過型液晶表示装置に好ましく用いられる。反射型液晶表示装置は、通常、反射板、液晶セル及び偏光板を、この順に積層した構成を有する。位相差板は、反射板と偏光膜との間(反射板と液晶セルとの間又は液晶セルと偏光膜との間)に配置される。反射板は、液晶セルと基板を共有していてもよい。前記偏光板として、本発明の偏光板を用いることができ、かかる場合は、位相差板を別途配置しなくてもよい。
また、半透過反射型液晶表示装置は、液晶セルと、該液晶セルより観察者側に配置された偏光板と、前記偏光板と前記液晶セルの間に配置される少なくとも1枚の位相差板と、観察者から見て前記液晶層よりも後方に設置された半透過反射層を少なくとも備え、さらに観察者から見て前記半透過反射層よりも後方に少なくとも1枚の位相差板と偏光板とを有す。このタイプの液晶表示装置では、バックライトを設置することで反射モードと透過モード両方の使用が可能となる。双方の偏光板が本発明の偏光板であってもよいし、一方のみが本発明の偏光板であってもよい。本発明の偏光板を配置する場合は、液晶セルと本発明の偏光板との間には、位相差板を別途配置しなくてもよい。
液晶セルのモードは特に限定されないが、IPSモード又はFFSモードであることが好ましい。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
例えば、前記第1の態様の偏光板を、一対の基板と、該一対の基板に挟持された液晶分子が黒表示時に基板に対して実質的に平行に配向する液晶層とを有する液晶セル(例えば、IPSモードの液晶セル)を有する液晶表示装置に用いる場合は、前記一対の基板の一方の基板の外側に該基板側から、第1の光学異方性層、第2の光学異方性層、及び偏光層がこの順となり、且つ該第2の光学異方性層の遅相軸と黒表示時の液晶分子の長軸方向とが実質的に平行になるように前記偏光板を配置し、及び他方の基板の外側にさらに第2の偏光層を配置することができる。この場合、双方の偏光層の吸収軸を互いに直交させて配置する。
また、前記第2の態様の偏光板を、一対の基板と、該一対の基板に挟持された液晶分子が黒表示時に基板に対して実質的に平行に配向する液晶層とを有する液晶セル(例えば、IPSモードの液晶セル)を有する液晶表示装置に用いる場合は、前記一対の基板の一方の基板の外側に該基板側から、第2の光学異方性層、第1の光学異方性層、及び偏光層がこの順となり、且つ該第2の光学異方性層の遅相軸と黒表示時の液晶分子の長軸方向とが実質的に直交するように前記偏光板を配置し、及び他方の基板の外側にさらに第2の偏光層を配置することができる。この場合、双方の偏光層の吸収軸が互いに直交させて配置する。この場合も、双方の偏光層の吸収軸を互いに直交させて配置する。
前記いずれの態様においても、前記第2の偏光層と前記基板との間には実質的に等方的な接着剤層、及び/又は実質的に等方的な透明保護フィルムのみが含まれているのが好ましい。実質的に等方的な透明保護フィルムとは、具体的には、面内のレタデーションが0〜10nm、厚さ方向のレタデーションが−20〜20nmであり、例えば、かかる光学特性を有するセルロースアシレート又は環状ポリオレフィンを含むフィルムが好ましい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<第1の光学異方性層の作製>
仮支持体として長尺状のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)の一方の面に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。
配向膜塗布液の組成
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下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
――――――――――――――――――――――――――
下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液を、上記作製した配向膜上に#5.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は20m/minとした。室温から80℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、80℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を60℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、第1の光学異方性層B1を形成した。
棒状液晶化合物を含む塗布液(S1)の組成
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下記の棒状液晶性化合物(I) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.4質量部
下記のピリジニム塩 1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
作製したフィルムから棒状液晶性化合物を含む光学異方性層B1のみを剥離し、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて光学特性を測定した。波長590nmで測定した光学異方性層のみのReは0nmであり、Rthは−260nmであった。また、棒状液晶分子がフィルム面に対して実質的に垂直に配向している光学異方性層が形成されたことが確認できた。
[実施例1]
<第1の光学異方性層の形成>
上記で得られた光学異方性層B1の上(ポリエチレンテレフタレートフィルムと反対側の面)に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400、東亞合成(株)製)を塗布して、5μmの厚さの接着剤層1を形成し、この上に厚さ100μmの等方性ポリマーフィルムであるゼオノアフィルムZF16(日本ゼオン(株)製)をラミネートし、ゼオノアフィルム側から約600mJのUV照射し、該接着剤層を硬化させた。この後、ゼオノアフィルム/接着剤層1/第1の光学異方性層(B1)/ポリエチレンテレフタレートフィルムが一体となった積層体からポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離することにより、第1の光学異方性層(B1)を等方性ポリマーフィルムであるゼオノアフィルム上に転写し、ゼオノアフィルム/接着剤層1/第1の光学異方性層(B1)からなる積層体(A1)を得た。
<第2の光学異方性層(C1)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
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セルロースアセテート溶液(D1)組成
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酢化度60.9%のセルロースアセテート
(重合度300、Mn/Mw=1.5) 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
──────────────────────────────────
別のミキシングタンクに、上記のレタデーション上昇剤Aを16質量部、下記のレタデーション上昇剤Bを8質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒径:0.1μm)0.28質量部、メチレンクロライド80質量部及びメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レタデーション上昇剤溶液(かつ微粒子分散液)を調製した。セルロースアセテート溶液474質量部に該レタデーション上昇剤溶液45質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。
得られたドープを、幅2mで長さ65mの長さのバンドを有する流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて幅を固定しながら、20%の延伸倍率で縦延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。延伸終了時の残留溶媒量は5質量%であり、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満として第2の異方性層に対応するセルロースアセテートフィルム(C1)を作製した。なお、使用したセルロースアセテートのTgは140℃である。
得られたセルロースアセテートフィルム(C1)の幅は1340mmであり、厚さは88μmであった。また、面内レタデーション(Re)は60nm、厚み方向のレタデーション(Rth)は190nmであった。また、この光学異方性層の遅相軸はフィルムの長手に対して平行であった。得られたセルロースアセテートフィルムC1が第2の光学異方性層に要求される光学特性を満足していることを確認した。
<光学補償フィルム(F1)の作製>
得られた積層体(A1)の第1の光学異方性層(B1)(ゼオノアフィルムと反対面)に市販のUV硬化型接着剤(UV−3400)を塗布して、5μmの厚さの接着剤層2を形成し、この上に、セルロースアセテートフィルムC1をラミネートし、C1側から約600mJのUV照射により接着剤層2を硬化させて、ゼオノアフィルム/接着剤層1/第1の光学異方性層(B1)/接着剤層2/第2の光学異方性層(C1)からなる積層体である光学補償フィルム(F1)を作製した。
<偏光板(P1)の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長尺の偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合わせた。続いて、ポリエステル系ウレタン(三井武田ケミカル社製、タケラックXW−74−C154)10部及びイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製、タケネートWD−725)1部を、水に溶解し、固形分を20%に調整した溶液を調製した。これを接着剤として用いて、偏光膜と上記で作製した光学補償フィルム(F1)のゼオノアフィルム側を連続的に貼り合せ、40℃のオーブンで72時間乾燥キュアして、偏光板を作製した。このとき、偏光膜の吸収軸は長手方向に対して平行であり、かつ、偏光膜の吸収軸と第2の光学異方性層(C1)の遅相軸とがなす角は0°であった。
[実施例2]
<光学補償フィルム(F2)の作製>
C1と同様のドープを、幅2mで長さ65mの長さのバンドを有する流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて、20%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。延伸終了時の残留溶媒量は5質量%であり、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満として第2の異方性層に対応するセルロースアセテートフィルムを作製した。なお、使用したセルロースアセテートのTgは140℃である。
作製したセルロースアセテートフィルムの片面を鹸化処理した。これを第2の光学異方性層(C2)とした。実施例1で作製した積層体(A1)のC1をC2に代え、C2の鹸化処理をしていない面をラミネートし、UV硬化させ、光学補償フィルム(F2)を作製した。
<偏光板(P2)の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長尺の偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、上記作製した光学補償フィルム(F2)の第1の光学異方性層が形成されていない面を、他方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合わせ、長尺の偏光板P1を作製した。このとき、偏光膜の吸収軸は長手方向に対して平行であり、かつ、偏光膜の吸収軸と第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角は90°であった。
[実施例3]
<環状オレフィン重合体の合成>
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni25mmol%(対モノマー質量)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー質量)及びトルエンに溶解したトリエチルアルミニウム0.25mol%(対モノマー質量)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた重合体(J1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
<第2の光学異方性層(C3)と(C4)の形成>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
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環状ポリオレフィン溶液(D2)組成
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環状ポリオレフィン(J1) 150質量部
ジクロロメタン 414質量部
メタノール 36質量部
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次に上記方法で調製した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
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マット剤分散液 M1
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平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)) 2質量部
ジクロロメタン 81質量部
メタノール 7質量部
環状ポリオレフィン溶液(D2) 10質量部
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上記環状ポリオレフィン溶液D2を100質量部、マット剤分散液M1を1.35質量を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機により1400mm幅で流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをフィルムに皺が入らないように保持しながらテンターを用いて140℃の熱風を当てながら幅方向に10%延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し、巻き取った。
作製したフィルムを温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、下記の組成のアルカリ溶液をバーコーターにより、14ml/m2塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター((株)ノリタケカンパニー製)の下に10秒間滞留させた後、同じくバーコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。このときのフィルム温度は40℃であった。次いでファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返して後に、70℃の乾燥ゾーンに2秒滞留させて乾燥した。
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<アルカリ溶液組成>
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水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.7質量部
イソプロパノール 64.8質量部
プロピレングリコール 14.9質量部
C16H33O(CH2CH2O)10H(界面活性剤) 1.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、作製した環状ポリオレフィンフィルムの光学特性を測定した。波長590nmで測定したReは60nmであり、Rthは190nmであった。また、この光学異方性層の遅相軸はフィルム長手に対して直交していた。このフィルムを第2の光学異方性層(C3)とした。
<光学補償フィルム(F3)の作製>
実施例1で作製した積層体(A1)に対して、ゼオノアフィルムZF16を上記で作製した第2の光学異方性層(C3)に代え、(C3)の鹸化処理していない側に接着剤層(F1と同様、市販のUV硬化型接着剤(UV−3400)を塗布UV硬化により5μmの膜厚で形成)を介して第1の異方性層を積層することで、光学補償フィルム(F3)を作製した。
<偏光板(P3)の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長尺の偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、上記作製した光学補償フィルム(F3)の第1の光学異方性層が形成されていない面(即ち、C3の鹸化処理された面)を、他方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合わせ、長尺の偏光板(P3)を作製した。このとき、偏光膜の吸収軸は長手方向に対して平行であり、かつ、偏光膜の吸収軸と第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角は90°であった。
[実施例4]
<光学補償フィルム(F4)の作製>
第2の光学異方性層(C3)と同様のドープを用いて、バンド流延機により1400mm幅で流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをフィルムに皺が入らないように保持しながらテンターを用いて140℃の熱風を当てながら幅方向に固定しながら長手方向に10%延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し、巻き取り第2の光学異方性層(C4)を作製した。
第2の光学異方性層(C3)と同様に光学特性を測定した。波長590nmで測定したReは60nmであり、Rthは190nmであった。また、この光学異方性層の遅相軸はフィルムの長手に対して平行であった。
実施例3で作製した光学補償フィルム(F3)に対して第2の光学異方性層をC3の鹸化処理を施していないもの(C4)に代え、光学補償フィルム(F4)を作製した。
<セルロースアセテートフィルム(T0)の作製>
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
セルロースアセテート溶液Aの組成
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アセチル置換度2.94のセルロースアセテート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
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(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
マット剤溶液組成
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平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアセテート溶液A 10.3質量部
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(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
添加剤溶液組成
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下記の光学的異方性低下剤 49.3質量部
下記の波長分散調整剤 4.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート溶液A 12.8質量部
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(セルロースアセテートフィルムの作製)
上記セルロースアセテート溶液Aを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学的異方性を低下する化合物及び波長分散調整剤のセルロースアセテートに対する質量比はそれぞれ12%、1.2%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させ、厚さ80μmの長尺状のセルロースアセテートフィルムT0を製造した。得られたフィルムの面内レタデーション(Re)は1nm(遅相軸はフィルム長手方向と垂直な方向)、厚み方向のレタデーション(Rth)は−1nmであった。
<偏光板(P0)の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長尺の偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、上記で作製したセルロースアセテートフィルム(T0)を鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合わせ、他方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合わせ、長尺の偏光板(P0)を作製した。
<偏光板(P4)の作製>
上記で作製した偏光板(P0)のセルロースアセテートフィルム(T0)側の面と光学補償フィルム(F4)の第1の位相差層が積層されている面を、光学的に等方性のアクリル系粘着剤を用いて連続的に貼り合わせ、長尺の偏光板(P4)を作製した。このとき、偏光膜の吸収軸は長手方向に対して平行であり、かつ、偏光膜の吸収軸と第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角は0°であった。
[実施例5]
<偏光板(P5)>
実施例4と同様に偏光板(P0)を作製し、セルロースアセテートフィルム(T0)側の面と光学補償フィルム(F4)の第1の位相差層が積層されていない面を、光学的に等方性のアクリル系粘着剤を用いて連続的に貼り合わせ、長尺の偏光板(P5)を作製した。このとき、偏光膜の吸収軸は長手方向に対して平行であり、かつ、偏光膜の吸収軸と第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角は90°であった。
[実施例6]
<環状オレフィン系樹脂の合成>
8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン250部と、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部と、トルエン750部とを窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム(1.5モル/l)のトルエン溶液0.62部と、t−ブタノール及びメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)のトルエン溶液(濃度0.05モル/l)3.7部とを添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であり、得られた開環共重合体について、30℃のクロロホルム中で測定した固有粘度(ηinh)は0.75dl/gであった。
このようにして得られた開環共重合体溶液4000部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6H5)3]3 0.48部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱攪拌して水素添加反応を行った。
得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(特定の環状ポリオレフィン系樹脂)を得た。
このようにして得られた水素添加重合体(以下、「樹脂(a−1)」という。)について400MHz 1H−NMRを用いて水素添加率を測定したところ、99.9%であった。
この樹脂(a−1)についてDSC法によりガラス転移温度(Tg)を測定したところ170℃であった。また、樹脂(a−1)について、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:東ソー(株)製TSK−GEL Hカラム)によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定したところ、数平均分子量(Mn)は39,000、重量平均分子量(Mw)は137,000、分子量分布(Mw/Mn)は3.5であった。
樹脂(a−1)について、23℃における飽和吸水率を測定したところ0.45%であり、SP値を測定したところ、19(MPa1/2)であった。
<第2の光学異方性層(C6)の形成>
上記樹脂(a−1)をトルエンに濃度30%(室温での溶液粘度は30,000mPa・s)になるように溶解し、樹脂100重量部に対して二酸化珪素微粒子(平均粒径:0.1μm)0.28質量部を加え、さらに酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を樹脂100重量部に対して0.1重量部を添加した。次いで、得られた液を、孔径2.5μmの金属繊維焼結フィルター(日本ポール(株)製)を用い、差圧が1MPa以内に収まるように溶液の流速をコントロールしながら濾過した。その後、クラス100のクリーンルーム内に設置したINVEXラボコーター(井上金属工業(株)製)を用い、アクリル酸系表面処理剤で親水化(易接着性化)表面処理された厚さ100μmのPETフィルム(東レ(株)製、ルミラーU94)上に、乾燥後のフィルム厚みが150μmになるように、上記濾過液を塗布し、これを50℃で一次乾燥した後、90℃で二次乾燥を行った。このようにして得られた乾燥フィルムから、PETフィルムを剥がしてフィルム(a1)を得た。得られた光学用フィルムの残留溶媒量は0.5%であった。このフィルムの全光線透過率は90%以上であった。
フィルム(a1)を原反フィルムとし、粘着ロールを用いてフィルム表面に付着した異物類を除去した後に、クリーン度が100の環境のテンター内で、180℃(Tg+10℃)に加熱し、延伸速度300%/分で、フィルム面内方向の縦方向に1.20倍に延伸し、次いで、フィルム面内方向の横方向に1.25倍に延伸した。その後、150℃(Tg−20℃)の雰囲気下で1分間フィルムを保持しながら冷却し、さらに室温まで冷却して取り出し、厚さ90μmの環状ポリオレフィンフィルムを得た。
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、作製した環状ポリオレフィンフィルムの光学特性を測定した。波長590nmで測定したReは60nmであり、Rthは180nmであった。また、この環状ポリオレフィンフィルムの遅相軸はフィルム長手方向に対して直交していた。このフィルムを第2の光学異方性層(C6)とした。
<光学補償フィルム(F6)の作製>
実施例3で作製した光学補償フィルム(F3)に対して第2の光学異方性層を(C6)に代えて、光学補償フィルム(F6)を作製した。
<偏光板(P6)の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長尺の偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、表面を鹸化処理したセルローストリアセテートフィルム(フジタック TD80UL、富士写真フイルム(株)製)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続的に貼り合わせた。続いて、ポリエステル系ウレタン(三井武田ケミカル社製、タケラックXW−74−C154)10部及びイソシアネート系架橋剤(三井武田ケミカル社製、タケネートWD−725)1部を、水に溶解し、固形分を20%に調整した溶液を調製した。これを接着剤として用いて、偏光膜と上記で作製した光学補償フィルム(F6)の環状ポリオレフィンフィルム(C6)側を連続的に貼り合せ、40℃のオーブンで72時間乾燥キュアして、偏光板を作製した。このとき、偏光膜の吸収軸は長手方向に対して平行であり、かつ、偏光膜の吸収軸と第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角は90°であった。
[比較例1]
<光学補償フィルム(F7)の作製>
実施例1で使用した仮支持体のポリエチレンテレフタレート上に第1の光学異方性層(B1)を積層した積層体に対して、支持体を実施例6と同様の方法で作製した環状ポリオレフィンフィルム(C6)に代えて光学異方性層(B1)を積層し、光学補償フィルム(F7)を作製した。即ち、第2の光学異方性層である環状ポリオレフィンC6と、第1の光学異方性層B1との間には、双方の接着性を向上させる接着剤層は配置されていなかった。
<偏光板(P7)の作製>
実施例6の偏光板(P6)の作製方法に対して光学補償フィルム(F7)に代えて、偏光板(P7)を作製した。このとき、偏光膜の吸収軸は長手方向に対して平行であり、かつ、偏光膜の吸収軸と第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角は90°であった。
[実施例7]
<液晶表示装置(L0)〜(L7)の作製>
液晶テレビTH−32LX500(松下電器産業(株)社製)から、液晶セルを取り出し、視認者側及びバックライト側に貼られてあった偏光板及び光学フィルムを剥した。この液晶セルは、電圧無印加状態及び黒表示時では液晶分子はガラス基板間で実質的に平行配向しており、その遅相軸方向は画面に対して水平方向であった。
上記の平行配向セルの上下のガラス基板に、上記作製した偏光板(P1及びP0)を、粘着剤を用いて貼り合わせた。このとき、バックライト側の偏光板にP1を配置し、視認者側にP0を配置し、偏光板P1に含まれる第1の光学異方性層がバックライト側のガラス基板に接するように、また、偏光板P0に含まれるセルロースアセテートフィルムT0が視認者側のガラス基板に接するように貼り合わせた。また、偏光板P1の吸収軸と液晶セルの遅相軸が直交するようにし、偏光板P1と偏光板P0の吸収軸は直交するように配置した。このようにして偏光板を貼り合せた液晶セルを、再度、液晶テレビTH−32LX500に組み込みこんだ。このようにして液晶表示装置L1を作製した。
上記の偏光板P1を、それぞれ偏光板P0、P2〜P7に変更し液晶表示装置L0、L2〜L7を作製した。
[実施例8]
<液晶表示装置(L11)の作製>
上記実施例7と同様にして、平行配向セルを用意した。この平行配向セルの上下のガラス基板に、上記作製した偏光板(P1及びP0)を、粘着剤を用いて貼り合わせた。このとき、バックライト側の偏光板にP0を配置し、視認者側にP1を配置し、偏光板P1に含まれる第1の光学異方性層が視認者側のガラス基板に接するように、また、偏光板P0に含まれるセルロースアセテートフィルムT0がバックライト側のガラス基板に接するように貼り合わせた。また、偏光板P0の吸収軸と液晶セルの遅相軸が平行となるようにし、偏光板P0と偏光板P1の吸収軸は直交するように配置した。このようにして偏光板を貼り合せた液晶セルを、再度、液晶テレビTH−32LX500に組み込みこんだ。このようにして液晶表示装置L11を作製した。
上記のL11の偏光板P1を、それぞれ偏光板P2〜P6に変更し液晶表示装置L12〜L16を作製した。
(光漏れ評価)
上記で作製した偏光板を貼り合せた液晶パネルを60℃90%の環境下で150時間保存した後、25℃60%で24時間放置後、バックライトを点灯させ、左斜め方向60°から光漏れを観察し下記のように2段階評価を行った。結果を表3に示す。
○:光漏れが見え難い
×:明らかに光漏れがある
(耐久性評価)
上記で作製した偏光板を貼り合せた液晶パネルを60℃90%の環境下で150時間保存した後、25℃60%で24時間放置後、バックライトを点灯させ、下記のように光漏れの評価を行った。評価には20インチの液晶パネルを使用した。結果を表3に示す。
◎:4隅の光漏れが全く見えない
○:4隅の光漏れが殆ど見えない
×:4隅に光漏れがある
××:光学補償フィルムが剥離し、光漏れが不均一に発生した
本発明の液晶表示装置では、光漏れがなく、耐久性も良好だった。