本発明は、液晶配向膜等に利用される高分子膜に関する。また、本発明は、液晶配向膜ポリマーと光学異方性層中の液晶性化合物とが、界面での相互作用によって密着した位相差板、及び該位相差板を有する液晶表示装置に関する。また、本発明は、特に水平方向に配向した液晶分子に横方向の電界を印加することにより表示を行う、インプレーンスイッチングモードの液晶表示装置に好適に用いることのできる位相差膜およびこれを用いた液晶表示装置に関する。
従来、ホウ酸架橋されたポリビニルアルコールは、液晶配向膜又は偏光膜に応用されている。かかるポリビニルアルコールを液晶配向膜として利用して形成した光学異方性層を有する位相差板も提案されている。位相差板は画像着色解消や視野角拡大のために、様々な液晶表示装置で用いられている。従来、位相差板としては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、透明支持体上にディスコティック液晶性分子からなる光学異方性層を有する位相差板を使用することが提案されている。この光学異方性層は、通常、ディスコティック液晶分子を含む組成物を配向膜上に塗布し、配向温度よりも高い温度に加熱してディスコティック液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成される。
ディスコティック液晶化合物の配向方向を規定する配向膜としては、種々のものが知られており、SiO、TiO2、MgF2等の金属酸化物やフッ化物を蒸着物質とした無機斜方蒸着膜や、アゾベンゼン誘導体からなるLB膜のように光により異性化を起こし、分子が方向性を持って均一に配列する薄膜などが挙げられる。中でも、生産性の点から、表面をラビング処理したポリマー層が好ましい。この配向膜用のポリマーとして、ポリイミドが種々用いられている。他にも特許文献1に記載のポリアミド、特許文献2、3、4又は5等に記載のポリビニルアルコールや、ポリスチレン、ポリビニルカルバゾールなども用いられている。
中でも、特許文献3に記載の、水酸基の一部が架橋性基に置換された変性ポリビニルアルコールを配向膜として利用して作製された光学補償シートは、全方向視野角を格段に拡大させるものである。この光学補償シートは、透明支持体、その上に設けられたラビング処理を施されたポリビニルアルコールからなる配向膜、及び、配向膜上に形成された円盤状液晶性化合物の光学異方性層を有する。この光学補償シートは、円盤状液晶性化合物の配向によって発現された光学異方性を利用して、視野角の拡大に寄与する。さらにこの配向膜には架橋性基が導入されているため、配向膜のポリマーと光学異方性層とが、これらの層の界面を介して化学的に結合しているため、長期間保存したり、使用した場合でも、光学異方性層が剥離することはない。
しかしながら、特許文献3に記載の配向膜を用いても、配向欠陥が無い均一配向を得られたとは言い難く、また、液晶化合物を配向させるために長い熟成時間が必要であるという問題点が残る。
ところで、液晶表示装置としては、二枚の直交した偏光板の間に、ネマチック液晶をツイスト配列させた液晶層を挟み、電界を基板に対して垂直な方向にかける方式、いわゆるTNモードが広く用いられている。この方式では、黒表示時に液晶分子が基板に対して立ち上がる(液晶分子が基板に対して垂直に配向される)ために、斜めから見ると液晶分子による複屈折が発生し、光漏れが起こる。この問題に対して液晶性分子がハイブリッド配向したフィルムを用いることで、液晶セルを光学的に補償し、この光漏れを防止する方式が実用化されている。しかし、液晶性分子を用いても液晶セルを問題なく完全に光学的に補償することは非常に難しく、画面下方向での諧調反転が抑えきれないという問題を生じていた。
かかる問題を解決するため、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードによる液晶表示装置や、誘電率異方性が負の液晶を垂直配向し、パネル内に形成した突起やスリット電極によって配向分割した垂直配向(VA)モードが提案され、実用化されている。近年、これらのパネルはモニター用途に留まらず、TV用途として開発が進められており、それに伴って画面の輝度が大きく向上してきている。このため、これらの動作モードで従来問題とされていなかった、黒表示時の対角位斜め入射方向での僅かな光漏れが表示品質の低下の原因として顕在化してきた。
この色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、液晶層と偏光板との間に複屈折特性を有する光学補償材料を配置することがIPSモードにおいても検討されている。
例えば、傾斜時の液晶層のレターデーションの増減を補償する作用を有する光軸を互いに直交した複屈折媒体を基板と偏光板との間に配置することで、白表示または中間調表示を斜め方向から直視した場合の色付きが改善できることが開示されている(例えば、特許文献6参照)。また、負の固有複屈折を有するスチレン系ポリマーやディスコチック液晶性化合物からなる光学補償フィルムを使用した方法(例えば、特許文献7〜9参照)や、光学補償フィルムとして複屈折が正で光学軸がフィルムの面内にある膜と複屈折が正で光学軸がフィルムの法線方向にある膜とを組み合わせる方法(例えば、特許文献10参照)、レターデーションが二分の一波長の二軸性の光学補償シートを使用する方法(例えば、特許文献11参照)、偏光板の保護膜として負のレターデーションを有する膜を使い、この表面に正のレターデーションを有する光学補償層を設ける方式(例えば、特許文献12参照)が提案されている。
一方、正の複屈折性を有し光軸が法線方向にある位相差膜を組み合わせることでIPSの光学補償を達成する方法が検討されており、かかる位相差膜を実現するには液晶材料を垂直に配向させ、その配向状態を固定化する方法が知られている(例えば、特許文献13〜15参照)。
また、棒状液晶性化合物を垂直に配向させる方法としては、配向膜に垂直配向膜を用いる方法、または、垂直配向剤(例えば、4級アンモニウム置換のシランカップリング剤等)を基板上に形成させた上に液晶性化合物の層を形成する方法が提案されている(例えば、非特許文献1および2)。しかしながら、近年モニターの表示特性に対する要求が厳しくなってきており、従来知られている垂直配向方式で固定化した異方性材料ではミクロな均一性が十分ではなく、その改善が求められていた。また、特殊な配向膜等を用いることで、工業的なレベルでの製造に不向きであった。
特開平3−9326号公報
特開平3−291601号公報
特開平9−152509号公報
特開平14−268068号公報
特開平14−350859号公報
特開平9−80424号公報
特開平10−54982号公報
特開平11−202323号公報
特開平9−292522号公報
特開平11−133408号公報
特開平11−305217号公報
特開平10−307291号公報
特表2000−514202号公報
特開平10−319408号公報
特開平6−331826号公報
岡野光治等、「液晶」・応用編、培風館、1985年発行、61頁
苗村昌平、Appl.Phys.Lett.33巻、1号、1978年、1〜3頁
本発明が解決しようとする課題は、液晶配向膜として用いた場合に、液晶化合物を、シュリーレン欠陥などの欠陥が少ない状態で、迅速に配向させることを可能とする新規な高分子膜を提供することである。また、本発明は、優れた耐久性を有し、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与する位相差板、及び、該位相差板を有する液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明の他の課題は、棒状液晶性化合物の分子を欠陥無く均一に垂直配向させた位相差膜を提供することを目的とし、更に、簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角が改善された液晶表示装置(特にIPS型液晶表示装置)を提供することである。
上記課題は以下の手段によって達成された。
[1] 下記一般式(I)で表される化合物とポリマーとを含有する組成物からなる高分子膜:
一般式(I)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、或いは、置換もしくは無置換の、脂肪族炭化水素基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Xは二価の連結基または置換もしくは無置換の、脂肪族炭化水素基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Zは重合性基を有する置換基を表し、また、R
1とR
2は、アルキレン連結基、アリール連結基、又はこれらの組み合わせからなる連結基を介して連結してもよく、分子中にZを有しなくてもよい
[2] 前記一般式(I)中、R
1及びR
2がそれぞれ水素原子を表し、Zが下記一般式(II)で表される基、又はオキシラニル部分もしくはオキセタン部分を有する基である[1]の高分子膜:
一般式(II)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、Lは、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、及びそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基である。
[3] 前記一般式(I)で表される化合物と、ポリマーとが化学的に結合している[1]又は[2]の高分子膜。
[4] 前記ポリマーが、ポリビニルアルコールである[1]〜[3]のいずれかの高分子膜。
[5] 下記一般式(III)で表されるポリマーからなる高分子膜:
一般式(III)中、l+m+n=100の条件にて、lは10〜99.9モル%、mは0〜70モル%、nは0.01〜80モル%であり、X及びZは一般式(I)中のX及びZと同義である。
[6] [1]〜[5]のいずれかの高分子膜からなる液晶配向膜。
[7] 透明支持体、請求項6に記載の液晶配向膜、及び少なくとも一種の液晶性化合物を含有する光学異方性層を含む位相差板。
[8] [7]の位相差板を有する液晶表示装置。
本明細書において、面内方向のレターデーション値(Re;以下、単に「Re」と称することがある。)と膜厚方向のレターデーション値(Rth;以下、単に「Rth」と称することがある。)とは、以下に基づき算出するものとする。
Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内方向のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。
上記Re(λ)は「KOBRA 21ADH」(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射することで測定される。また、Rth(λ)は、上記Re(λ)と、遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射して測定したレターデーション値と、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射して測定したレターデーション値との計3つの方向で測定したレターデーション値を基に上記「KOBRA 21ADH」で算出することができる。この時、平均屈折率の仮定値および膜厚を入力することが必要である。「KOBRA 21ADH」はRth(λ)に加えてnx、ny、nzも算出することができる。ここで、nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸(y)方向の屈折率であり、nzはフィルムの膜厚方向(フィルム面と直交する方向)の屈折率を意味する。
上記「平均屈折率」は、セルロースアセテートでは1.48を使用するが、セルロースアセテート以外の代表的な光学用途のポリマーフィルムの値としては、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)、等の値を用いることができる。その他の既存のポリマー材料の平均屈折率値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)やポリマーフィルムのカタログ値を使用することができる。また、平均屈折率が不明な材料の場合は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。さらに、この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
更に、本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「実質的に垂直」とは、厳密な垂直の角度よりも±20゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±15゜未満であることが好ましく、±10゜未満であることがより好ましい。「遅相軸方向」は、屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板および液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」および「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」および「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
本発明では、式(I)で表されるボロン酸化合物とポリマーとから高分子膜を形成している。該ボロン酸化合物は、本発明の高分子膜の表面に形成される層中の化合物と化学的に結合可能なので、長期間使用・保存した場合も剥離等が生じ難い。また、例えば、ポリマーとしてポリビニルアルコールを用いた場合は、ポリビニルアルコールの主鎖に重合性ボロン酸化合物がエーテル結合等を介して結合することができ、該ポリビニルアルコール誘導体からなる高分子膜は、液晶配向膜として有用である。かかるポリビニルアルコール誘導体からなる高分子膜を液晶配向膜として用いることにより、液晶化合物を、シュリーレン欠陥などの欠陥が少ない状態で、迅速に配向させることができる。従って、本発明によれば、優れた耐久性を有し、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与する位相差板、及び、該位相差板を有する液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明によれば、棒状液晶性化合物を欠陥無く又は少ない欠陥で均一に垂直配向させた位相差膜を提供することができる。更に、本発明によれば、簡易な構成で、表示品位のみならず、視野角が改善された液晶表示装置を提供することができる。
発明の実施の形態
以下において、本願発明の内容について詳細に報告する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
以下、本発明について詳細に説明する。
[高分子膜]
本発明は、下記一般式(I)で表される化合物と、ポリマーとを含有する組成物からなる高分子膜に関する。一般式(I)の化合物とポリマーとは化学的に結合しているのが好ましい。
一般式(I)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、或いは、置換もしくは無置換の、脂肪族炭化水素基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Xは二価の連結基または置換もしくは無置換の、脂肪族炭化水素基、アリール基又はヘテロ環基を表し、Zは重合性基を有する置換基を表し、また、R1とR2は、アルキレン連結基、アリール連結基、又はこれらの組み合わせからなる連結基を介して連結してもよく、分子中にZを有しなくてもよい。
一般式(I)中、R1及びR2がそれぞれ表す置換もしくは無置換の、脂肪族炭化水素基には、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が含まれる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、1個から4個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と不飽和五員環とが縮合環を形成したものを挙げることができ、具体例としてはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナブテニル基、フルオレニル基、ピレニル基等が挙げられる。
R1及びR2がそれぞれ表す置換もしくは無置換のアリール基の具体例には、フェニル基及びナフチル基が含まれる。また、R1及びR2がそれぞれ表す置換もしくは無置換のヘテロアリール基の例には、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環上の水素原子を1個除し、ヘテロアリール基としたものが含まれる。ヘテロアリール基に含まれる複素環の具体例としては、後述する、Xが表すヘテロアリーレン基が含む複素環の具体例と同様である。
一般式(I)中のR1及びR2として好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数は1又は2が好ましく、1がさらに好ましい)、もしくはR1とR2が結合して環(5員環が最も好ましい)を形成している場合であり、中でも水素原子が最も好ましい。
一般式(I)中、Xは二価の連結基または置換もしくは無置換の、脂肪族炭化水素基、アリール基又はヘテロ環基を表す。Zが存在する場合は、Xは二価の連結基を表す。
連結基としては、単結合、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基及びそれらの組み合わせから選ばれる連結基が好ましい。
前記ヘテロアリーレン基は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む。窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環上の水素原子を2個除し、ヘテロアリーレン基としたものを挙げることができる。窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個以上含む複素芳香環の具体例としては、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チアナフテン、ジベンゾチオフェン、インダゾールベンズイミダゾール、アントラニル、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、アクリジン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキザリン、ナフチリジン、フェナントロリン、プテリジン等が挙げられる。
前記一般式(I)中、Xが表す置換もしくは無置換の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜30の置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−メチルヘキシル基等)、炭素数3〜20の置換もしくは無置換の環状アルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等)、炭素数2〜20のアルケニル基(例えば、ビニル基ビ、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基等)が挙げられ、置換もしくは無置換のアリール基としては、炭素数6〜50の置換もしくは無置換のフェニル基(例えば、フェニル基、トリル基、スチリル基、4−ベンゾイルオキシフェニル基、4−フェノキシカルボニルフェニル基、4−ビフェニル基、4−(4−オクチルオキシベンゾイルオキシ)フェノキシカルボニルフェニル基等)、炭素数10〜50の置換もしくは無置換のナフチル基等(例えば、無置換ナフチル基等)が挙げられ、置換もしくは無置換のヘテロ環基としては例えば、少なくとも一つのヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等)を含む、置換もしくは無置換の5員もしくは6員環の基であり、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、インドール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、チアナフテン、ジベンゾチオフェン、インダゾールベンズイミダゾール、アントラニル、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、プリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、アクリジン、イソキノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキザリン、ナフチリジン、フェナントロリン、プテリジン、モルホリン、ピペリジン等の基が挙げられる。
一般式(I)中、Xとして好ましくは、単結合、または置換もしくは無置換のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜40の置換もしくは無置換アリール基であり、更に好ましくは置換もしくは無置換のフェニル基である。
R1、R2及びXは、可能な場合はさらに1個以上の置換基によって置換されていてもよい。置換基としては水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO3H2)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO3H2)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。また、これらの置換基は、可能であるならば置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよい。
一般式(I)中、Zは、重合性基を有する置換基を表し、具体的には、アクリレート基、メタクリレート基、スチリル基、ビニルケトン基、ブタジエン基、ビニルエーテル基、オキシラニル基、アジリジニル基、オキセタン基等を含む置換基が挙げられる。好ましくは(メタ)アクリレート基、スチリル基、オキシラニル基もしくはオキセタン基を含む置換基であり、最も好ましくは(メタ)アクリレート基、スチリル基を含む置換基である。
前記一般式(I)で表される化合物の好ましい一態様は、R1及びR2がそれぞれ水素原子を表し、Zが下記一般式(II)で表される基、又はオキシラニル部分もしくはオキセタン部分を有する基である態様である。
一般式(II)中、R
3は水素原子又はメチル基であり、Lは、−O−、−CO−、−NH−、−CO−NH−、−COO−、−O−COO−、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環基、及びそれらの組み合わせから選ばれる二価の連結基である。
以下に一般式(I)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
前記一般式(I)で表される化合物とともに用いるポリマーについては、特に制限されないが、前記一般式(I)で表される化合物と化学的に結合可能なポリマーが好ましい。
前記一般式(I)中のホウ素と化学的に結合可能なポリマーとしては、ポリビニルアルコールが好ましい。前記一般式(I)で表される化合物は、エーテル結合を介して、ポリビニルアルコールの重合性主鎖炭素に間接的に結合可能である。即ち、本発明の高分子膜は、下記一般式(III)で表されるポリビニルアルコール誘導体であるのが好ましい。下記一般式(III)で表されるポリビニルアルコール誘導体からなる高分子膜は、特に液晶配向膜として有用である。
但し、一般式(III)中、l+m+n=100の条件にて、lは10〜99.9モル%、mは0〜70モル%、nは0.01〜80モル%であり、lは20〜99モル%、mは0〜50モル%、nは0.1〜50モル%が好ましく、lは50〜99モル%、mは0〜30モル%、nは0.1〜30モル%がより好ましい。
式(III)中の、X及びZについては、式(I)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(III)で表される重合体の分子量範囲は、重量平均分子量で1000〜50万であるのが好ましく、2000〜30万であるのがより好ましく、3000〜20万であるのがさらに好ましい。
以下に、一般式(III)で表される重合体の例を示すが、本発明は以下の具体例によって何ら制限されるものではない。
上記一般式(III−1)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(III−2)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(III−3)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(III−4)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(II−1)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(II−2)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(II−3)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(II−4)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
上記一般式(II−5)において、l、m、n及び分子量の例を下記に示す。
本発明の高分子膜は、前記一般式(I)で表される化合物とポリマーとを含む組成物、例えば、塗布液を調製し、該塗布液をプラスチックフィルム等の表面に塗布及び乾燥して形成することができる。前記一般式(I)で表される化合物とポリマーとが化学的に結合して形成されたポリマーからなる高分子膜を作製する場合は、前記一般式(I)の化合物と前記ポリマーとを含む塗布液を支持体等の表面に塗布した後、膜を形成するために乾燥させるのと同時に又は乾燥させた後に、反応を進行させてもよい。また、前記一般式(I)の化合物とポリマーとを反応させて、化学的に結合させたポリマーを得た後、該ポリマーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を支持体等の表面に塗布及び乾燥して、該ポリマーからなる高分子膜を形成することもできる。
前記一般式(III)で表されるポリビニルアルコール誘導体は、一般式(I)中のホウ素をポリビニルアルコールと反応させることにより製造することができる。ポリビニルアルコールと上記一般式(I)で表されるボロン酸化合物を溶解するための溶媒(反応溶媒)としては、極性溶媒から非極性溶媒まで種々の溶媒を使用することができる。その例としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、ピリジンなどの極性溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、そしてベンゼンやヘキサンなどの非極性溶媒を挙げることができる。これらは、単独でも組み合わせて使用しても良い。特に、DMSO及びエーテル類が好ましい。
一般式(I)で表される化合物とポリビニルアルコールとを反応させる際の反応温度は、−80〜150℃の範囲が一般的であり、−20〜120℃の範囲が好ましく、特に−5〜90℃の範囲が好ましい。反応において、上記特定の基を有する化合物とポリビニルアルコールの繰り返し単位との比(仕込比)は、モル比で1/100〜1/1(化合物/繰り返し単位)が好ましく、特に1/50〜1/5が好ましい。反応混合物から目的のポリマーを得るため、通常、反応混合物への貧溶媒の添加による再沈澱法、透析、凍結乾燥の操作により精製される。これらの操作は、適宜繰り返して、及び/又は適当に組み合わせて、行なうことができる。
本発明の高分子膜は種々の用途に利用することができる。本発明の高分子膜は、重合性ホウ素化合物を含有しているので、複数の層を有する積層体の下層又は中間層に利用した場合、その表面に形成される層中の化合物とホウ素の強い相互作用によって、層間の密着性が改善され、長期間保存又は使用した場合も剥離等が生じにくい。また、ホウ素化合物が重合性基を有する場合、紫外線照射等によって層間が化学的に結合することが可能となり、密着性をさらに高めることも可能である。
また、前記一般式(I)で表される重合性化合物とポリビニルアルコールとが化学的に結合したポリマーからなる高分子膜、特に、前記一般式(III)で表されるポリビニルアルコール誘導体からなる高分子膜は、液晶配向膜として有用である。以下、本発明の高分子膜を液晶配向膜として利用して作製された位相差板について説明する。
[位相差板]
本発明の一態様は、透明支持体、前記高分子膜である配向膜、及び液晶性化合物からなる光学異方性層がこの順で設けられてなる位相差板に関する。配向膜のポリマーと、光学異方性層の液晶性化合物とが、界面において化学的に結合しているのが好ましい。本態様の位相差板の好ましい形態は下記のとおりである。
1)配向膜のポリマーが、前記一般式(I)で表されるボロン酸化合物中のホウ素が、エーテル結合を介して主鎖に間接的に結合することにより、少なくとも二個のヒドロキシル基が置換されたポリビニルアルコールから形成されている。
2)光学異方性層の形成に用いられる液晶性化合物が、ビニル部分、オキシラニル部分又はアジリジニル部分を有する基を持つ円盤状液晶性化合物である。
以下に、本態様の位相差板について詳細に説明する。
本態様の位相差板の一実施形態は、支持体上に前記ボロン酸変性ポリビニルアルコールを主成分とした配向膜と、該配向膜によって配向制御され、且つその配向状態に固定された液晶性化合物を含有する光学異方性層を有する。図1は、本態様の位相差板の一実施形態の断面模式図である。図1に示す位相差板(05)は、透明支持体(01)上に、ポリマーからなる配向膜(02)及び光学異方性層(03)を有する。配向膜(02)は、プラスチックフィルム等の透明支持体(01)の表面に、塗布又は蒸着等によって形成することができる。配向膜(02)の表面をラビングした後、液晶性化合物(04)を含有する組成物(塗布液)をラビング処理面に塗布すると、液晶性化合物の分子はラビング方向によって配向制御され、所望の配向角度に配向する。その後、その配向状態に液晶性分子を固定して、光学異方性層(03)を形成し、位相差板(05)が得られる。
また、図2に示した様に、上記光学異方性層(05)の透明支持体(01)側と、もう一方の透明支持体(06)とで偏光膜(07)を挟み込んで張り合わせることによって、偏光板(08)を作製することができる。
更に、ねじれ配向したネマチック液晶からなる液晶セルの両側に上記偏光板(08)を配置し、液晶表示装置を作製することができる。ただし、両偏光板の偏光軸は互いに直交されるように配置されている。
(1) 配向膜
本態様の位相差板では、配向膜として本発明の高分子膜が用いられる。中でも、前記一般式(I)で表されるホウ素化合物とポリビニルアルコールとが化学的に結合したポリマーからなるのが好ましく、前記一般式(III)で表されるポリビニルアルコール誘導体からなるのがより好ましい。
前記配向膜は、支持体の表面に、配向膜用ポリマー等を含有する塗布液を塗布した後、乾燥して形成することができる。その表面は、ラビング処理が施されているのが好ましい。ラビング処理は、ポリマー塗布層の表面を、紙や布で一定方向(通常は長手方向)に、数回こすることにより実施することができる。また、ラビング以外の方法としては、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により液晶配向性を付与することもできる。液晶配向性を付与する方法としては、ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。
(2)光学異方性層
本態様の位相差板が有する光学異方性層は、液晶性化合物、好ましくは円盤状液晶性化合物、及び所望により重合性化合物、重合性開始剤等の他の添加剤を含む組成物から形成することができる。該組成物は、例えば、塗布液として調製される。該塗布液を、例えば支持体上に形成された本態様の配向膜の表面に塗布し、液晶性化合物を配向、固定化することで形成することができる。液晶性化合物を配向及び固定化した後は、支持体を剥離してもよい。
(2)−1 光学異方性層の形成方法
前記光学異方性層は、液晶性化合物を可溶できる溶媒に溶解して調製した塗布液を、上記の様に支持体上に形成され、且つ、配向性が付与された本態様の配向膜上に塗布することによって作製することができる。また、可能であれば蒸着により形成してもよいが、塗布により形成するのが好ましい。塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。次いで、25℃〜130℃において用いた溶媒を乾燥すると同時に、液晶性化合物を配向させ、更に、所望により紫外線照射等によって固定化することによって、液晶性化合物による光学異方性層が形成される。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。このようにして形成された光学異方性層の厚さは、用途に応じて、例えば、最適なレターデーションの値に応じてその好ましい範囲も異なるが、一般的には、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがさらに好ましい。
(2)−2 光学異方性層の形成に用いられる材料
前記光学異方性層は、配向状態に固定された液晶性化合物を含有する。例えば、該液晶性化合物が重合性基を有すると、重合反応により容易に固定化できるとともに、また配向膜中に重合性基が存在する場合には、配向膜層と光学異方性層が界面で化学的に結合し、両層の密着性を向上させることができるので好ましい。液晶性化合物としては、分子の形状が円盤状であるディスコティック液晶性化合物が好ましい。
(2)−2−1 ディスコティック液晶性化合物
ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合は、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック液晶性分子は、下記一般式(IV)で表わされる化合物であることが好ましい。
一般式(IV)
D(−M−P)n
(一般式中、Dは円盤状コアであり、Mは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。)
一般式(IV)の円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、MP(又はPM)は、二価の連結基(M)と重合性基(P)との組み合わせを意味する。
一般式(IV)において、二価の連結基(M)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(M)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−及びS−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがさらに好ましい。二価の連結基(M)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−及びO−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。
二価の連結基(M)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(P)に結合する。ALはアルキレン基又はアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
M1:−AL−CO−O−AL−
M2:−AL−CO−O−AL−O−
M3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
M4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
M5:−CO−AR−O−AL−
M6:−CO−AR−O−AL−O−
M7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
M8:−CO−NH−AL−
M9:−NH−AL−O−
M10:−NH−AL−O−CO−
M11:−O−AL−
M12:−O−AL−O−
M13:−O−AL−O−CO−
M14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
M15:−O−AL−S−AL−
M16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−
M17:−O−CO−AR−O−AL−CO−
M18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
M19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
M20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
M21:−S−AL−
M22:−S−AL−O−
M23:−S−AL−O−CO−
M24:−S−AL−S−AL−
M25:−S−AR−AL−
一般式(IV)の重合性基(P)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(P)の例を以下に示す。
重合性基(P)は、不飽和重合性基(P1、P2、P3、P7、P8、P15、P16、P17)又はエポキシ基(P6、P18)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(P1、P7、P8、P15、P16、P17)であることが最も好ましい。一般式(IV)において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、ディスコティックコア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のMとPの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。二種類以上のディスコティック液晶性分子(例えば、二価の連結基に不斉炭素原子を有する分子と有していない分子)を併用してもよい。
液晶性分子は、配向状態を維持して固定することが好ましく、固定化は、液晶性分子に導入した重合性基(一般式(IV)で表すところのP)の重合反応により実施することが好ましい。固定化には所望の光学異方性の発現と安定化が目的であり、その結果、液晶性が失われる事は何ら差し支えない。そのためには、前記塗布液中には、重合開始剤を含有させるのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応、及び電子線を用いるEB硬化が含まれる。このうち、光重合反応(光硬化)及びEB硬化が好ましい。光の作用によりラジカルを発生させる重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等が好ましい。アセトフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン等が挙げられる。ベンジル系化合物としては、例えば、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーズケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等が挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。このような芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤の中でも、アセトフェノン系化合物及びベンジル系化合物が、硬化特性、保存安定性、臭気等の面で特に好ましい。これらの芳香族ケトン類からなる感光性ラジカル重合開始剤は、1種又は2種以上を所望の性能に応じて配合して使用することができる。また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。
光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましい。液晶性分子の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
(2)−2−3 その他の添加剤
光学異方性層形成用塗布液中には、前記以外の添加剤も添加することができる。例えば、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、配向制御剤及びカイラル剤等が挙げられる。以下に配向制御剤について詳細に説明する。本発明における配向制御剤とは、液晶性化合物の塗布液に添加され、塗布後に液晶性化合物の層の表面、つまり、空気界面側に偏在することによって、空気界面側での液晶性化合物の配向を制御するのに寄与する化合物を意味する。この配向制御剤の構造によっては、液晶性化合物を空気界面側で略垂直に配向させたり、逆に略水平に配向させることもできるが、本発明においてディスコティック液晶性化合物を用いる場合には、空気界面側で略垂直に配向させる添加剤が好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の場合には、特開2000−344734号公報等に記載の下記一般式(VI)で表されるような化合物が挙げられる。
一般式(VI)
(Hb−)mL(−Bu)n
一般式(V)中、Hbは、炭素原子数が1〜40のフッ素置換アルキル基、炭素原子数が6〜40のフッ素置換アリール基、炭素原子数が6〜60のアルキル基及び炭素原子数が1〜60のアルキル置換オリゴシロキサノキシ基からなる群より選ばれる疎水性基であり、Buは少なくとも二つの環状構造を含む排除体積効果を有する基であり、Lは(m+n)価の連結基であり、m及びnはそれぞれ独立に、1〜12の整数である。
一般式(VI)で表される配向制御剤として好ましくは、トリヒドロキシベンゼン骨格及びトリアジン骨格に、フッ素アルキル基や長鎖アルキル基、アリール基が置換した低分子配向制御剤が挙げられる。空気界面側でディスコティック液晶を垂直に配向させるための配向制御剤の具体例としては、例えば、以下のD−1等が挙げられ、水平に配向させるための配向制御剤としてD−2等が挙げられる。
また、配向制御剤としては、以下に示すような高分子化合物でもよい。添加される高分子配向制御剤は液晶層の塗布液に溶解しうるポリマーであればよい。好ましい高分子配向制御剤の一例を以下に示す。
ポリプロピレンオキシド
ポリテトラメチレンオキシド
ポリ−ε−カプロラクトン
ポリ−ε−カプロラクトン ジオール
ポリ−ε−カプロラクトン トリオール
ポリビニルアセテート
ポリメラミン
ポリ(エチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン グルタレート)
ポリ(1,2−ブチレン グリコール)
ポリ(1,4−ブチレン スクシネート)
ポリ(1,4−ブチレン テレフタレート)
ポリ(エチレンテレフタレート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレン グルタレート)
ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)
ポリ(ネオペンチルグリコール セバケート)
ポリ(1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(1,3−プロピレン グルタレート)
ポリビニルブチラール
ポリビニルホルマール
ポリビニルアセタール
ポリビニルプロパナール
ポリビニルヘキサナール
ポリビニルピロリドン
ポリアクリル酸エステル
ポリメタクリル酸エステル
ポリ(3−ヒドロキシブチリックアシッド)
また、少なくとも一つのフッ化アルキル基を有するモノマーからなる構成単位を含有したポリマーがより好ましく用いられ、例えば、以下に示したD−3のポリマー等が好適に用いられる。
配向制御剤の添加量は、該制御剤の添加する液晶組成物中の液晶性化合物に対し0.05質量%〜10質量%添加することが好ましい。より好ましくは0.1質量%〜5質量%である。
光学異方性層形成用の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)などが含まれる。この中でアルキルハライド、ケトンが好ましい。2種類以上の有機溶剤を併用してもよい。
塗布液中の液晶性化合物及びその他の添加剤の固形分濃度としては、0.1質量%〜60質量%が好ましく、0.5質量%〜50質量%がより好ましく、2質量%〜40質量%がさらに好ましい。また、塗布液の粘度は、0.01cp〜100cpが好ましく、0.1cp〜50cpがより好ましい。
(3)支持体
本態様の位相差板は支持体を有する。支持体は、作製時に用いられる支持体と必ずしも同一でなくてもよく、前記光学異方性層を作製した後、作製時に用いた仮支持体から他の支持体に転写してもよい。透明で光学異方性が小さく、波長分散が小さいポリマーフィルムを支持体として用いることが好ましい。ここで支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。波長分散が小さいとは、具体的には、Re400/Re700の比が1.2未満であることが好ましい。光学異方性が小さいとは、具体的には、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。透明支持体は、ロール状又は長方形のシート状の形状を有することが好ましく、ロール状の透明支持体を用いて、光学異方性層を積層してから、必要な大きさに切断することが好ましい。ポリマーの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート及びポリメタクリレートが含まれる。セルロースエステルが好ましく、アセチルセルロースがさらに好ましく、トリアセチルセルロースが最も好ましい。ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。透明支持体とその上に設けられる層(接着層、配向膜あるいは光学異方性層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
(4)偏光板
本態様の位相差板に、直線偏光膜又は透明保護膜を貼り合せ、偏光板とした後に、液晶表示素子に用いてもよい。以下に偏光膜及び透明保護膜について説明する。
(4)−1 偏光膜
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の透過軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。ディスコティック液晶性化合物を光学異方性層に用いた場合には、偏光膜の透過軸は、配向膜側のディスコティック液晶性分子の面に対し、実質的に平行になるように配置される。また、棒状液晶性化合物を用いた場合、偏光膜の透過軸は、棒状液晶性分子の長軸方向(遅相軸)と、実質的に平行になるように配置する。通常は、位相差板の支持体側に張り合わせるのが好ましいが、必要によっては、光学異方性層側と貼り合わせてもよい。
(4)−2 透明保護膜
位相差板の光学異方性層側に透明保護膜として、透明なポリマーフィルムが用いられることが好ましい。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。
(5)液晶表示装置
本態様の位相差板は、様々な表示モードの液晶セルを有する液晶表示装置に用いることができる。前述した様に、本態様の位相差板は、液晶セルの光学補償シートとして有用である。液晶性分子からなる光学異方性層有する光学補償シートは、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric LiquidCrystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper TwistedNematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically ControlledBirefringence)、反射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest−Host)等の液晶セルに対応するものが既に提案されている。本発明によって得られる位相差板及び偏光板は、その配向状態によって種々の液晶表示モードに適用できるが、本発明によって得られる光学異方性層及び偏光板は、TNモード液晶セルに好適に適用できる。
[光学異方性層(インプレーンスイッチングモード(IPS)用)]
次に、インプレーンスイッチングモードの表示装置に好適に用いることができる光学異方性層について説明する。本態様において上記光学異方性層は、少なくとも一種の棒状液晶性化合物を含有する液晶組成物からなる。上記棒状液晶化合物は低分子化合物であってもよく、高分子化合物であってもよいが、迅速に所望の配向状態を形成するためには低分子化合物であることが好ましい。また、配向状態を固定化してフィルムを得るためには重合性基を有することが好ましい。重合性を有する棒状液晶性化合物は一種で用いてもよいし、重合性または非重合性棒状液晶性化合物のいくつかを用いて混合物で使用してもよい。単独または併用で用いる個々の液晶性化合物は、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、またはコレステリック液晶相を形成してもよい。また、後述するように上記液晶組成物を塗布する場合には溶媒や重合開始剤等の添加剤を入れた組成物を塗布するが、加熱乾燥の過程で溶媒が揮散した状態の液晶組成物として、配向固定させる温度範囲でスメクチック液晶相をとるものが好適に用いられる。
(棒状液晶性化合物)
本態様の位相差膜は、棒状液晶性化合物を含む組成物から形成される。前記棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶だけではなく、高分子液晶も用いることができる。棒状液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。上記部分構造の個数は1〜6個、好ましくは1〜3個である。上述の通り、本発明に用いることができる棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。上記重合性基は、ラジカル重合性不飽和基が好ましく、具体的には、特表2000−514202号公報、または特開2002−62427号公報記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。本発明の位相差膜において上記棒状液晶製化合物は、基板や支持体に対して垂直、即ち、位相差膜の膜面に対して垂直に配向されていることが好ましい。
上記の通り、棒状液晶性分子を重合によって配向を固定することがより好ましく、重合性棒状液晶性分子としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、WO95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特願2001−64627号などに記載の化合物を用いることができる。より好ましくは、下記一般式(V)にて表される化合物である。
(IV) Q1−L1−Cy1−L2−(Cy2−L3)n−Cy3−L4−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基であり、L1およびL4はそれぞれ独立に二価の連結基であり、L2およびL3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基であり、Cy1、Cy2およびCy3は二価の環状基であり、nは0、1または2である。
Q1およびQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
L1およびL4はそれぞれ独立に二価の連結基である。L1およびL4はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。R2は、炭素原子数1から4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることがもっとも好ましい。組み合わせからなる二価の連結基の例を以下に示す。ここで、左側がQ(Q1またはQ2)に、右側がCy(Cy1またはCy3)に結合する。
L−1:−CO−O−二価の鎖状基―O−
L−2:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−
L−3:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−O−
L−4:−CO−O−二価の鎖状基―O−二価の環状基−
L−5:−CO−O−二価の鎖状基―O−二価の環状基−CO−O−
L−6:−CO−O−二価の鎖状基―O−二価の環状基−O−CO−
L−7:−CO−O−二価の鎖状基―O−二価の環状基−二価の鎖状基―
L−8:−CO−O−二価の鎖状基―O−二価の環状基−二価の鎖状基―CO−O−
L−9:−CO−O−二価の鎖状基―O−二価の環状基−二価の鎖状基―O−CO−
L−10:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−二価の環状基−
L−11:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−二価の環状基−CO−O−
L−12:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−二価の環状基−O−CO−
L−13:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基―L−14:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基―CO−O−
L−15:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−二価の環状基−二価の鎖状基―O−CO−
L−16:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−O−二価の環状基−
L−17:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−O−二価の環状基−CO−O−
L−18:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−O−二価の環状基−O−CO−
L−19:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―
L−20:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―CO−O−
L−21:−CO−O−二価の鎖状基―O−CO−O−二価の環状基−二価の鎖状基―O−CO−
二価の鎖状基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基,置換アルキニレン基を意味する。アルキレン基,置換アルキレン基,アルケニレン基,置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基およびアルケニレン基がさらに好ましい。アルキレン基は、分岐を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。置換アルキレン基のアルキレン部分は、上記アルキレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。アルケニレン基は、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。置換アルケニレン基のアルケニレン部分は、上記アルケニレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。アルキニレン基は、分岐を有していてもよい。アルキニレン基の炭素数は2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがもっとも好ましい。置換アルキニレン基のアルキニレン部分は、上記アルキニレン基と同様である。置換基の例としてはハロゲン原子が含まれる。
二価の鎖状基の具体例としては、エチレン、プロピレン、テトラメチレン、2−メチル−1,4−ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、2−ブテニレン、2−ブチニレンなどが上げられる。
二価の環状基の定義および例は、後述するCy1、Cy2およびCy3の定義および例と同様である。
L2またはL3はそれぞれ独立に単結合または二価の連結基である。L2およびL3はそれぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、二価の鎖状基、二価の環状基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基または単結合であることが好ましい。上記R2は、炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。二価の鎖状基、および二価の環状基についてはL1およびL4の定義と同義である。
式(IV)において、nは0、1または2である。nが2の場合、二つのL3は同じであっても異なっていてもよく、二つのCy2も同じであっても異なっていてもよい。nは1または2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。
式(IV)において、Cy1、Cy2およびCy3はそれぞれ独立に、二価の環状基である。環状基に含まれる環は、5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることがもっとも好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環の例には、ベンゼン環およびナフタレン環が含まれる。脂肪族環の例には、シクロヘキサン環が含まれる。複素環の例には、ピリジン環およびピリミジン環が含まれる。ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレンが好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイルおよびナフタレン−2,6−ジイルが好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレンであることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイルが好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイルが好ましい。
前記環状基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数が1〜5のアルキル基、炭素原子数が1〜5のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜5のアルコキシ基、炭素原子数が1〜5のアルキルチオ基、炭素原子数が2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数が2〜6のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数が2〜6のアシルアミノ基が含まれる。
以下に、式(IV)で表される重合性液晶化合物の例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
(他の添加剤)
上記液晶組成物から形成される本態様の位相差膜は、棒状液晶性化合物の他に、所望により、上記一般式(I)で表されるボロン酸化合物、下記重合性開始剤、空気界面垂直配向剤等の他の添加剤を含む塗布液(液晶組成物)を、支持体の上に形成された配向膜の上に塗布して、垂直配向させ、該配向状態を固定することで形成することができる。本態様の位相差膜を仮支持体上に形成した場合は、位相差膜を支持体上に転写することで作製することもできる。さらに、1層の本態様の位相差膜のみならず複数の位相差膜を積層して、上述の光学特性を示す第2位相差膜を構成することもできる。また、支持体と本態様の位相差膜との積層体全体で上述の光学特性を満たすようにして、第2位相差膜を構成してもよい。
本態様の位相差膜において、垂直配向させた棒状液晶性化合物は、配向状態を維持して固定するのが好ましい。上記固定化は、棒状液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれ、光重合反応が好ましい。上記光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4,212,970号明細書記載)が含まれる。
上記光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。また、上記棒状液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。更に、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。上記光学異方性層を含む本態様の位相差膜の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましく、1〜5μmであることが最も好ましい。
通常、液晶性化合物は、空気界面側では傾斜して配向する性質を有するので、均一に垂直配向した状態を得るために、空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御することが必要である。この目的のために、空気界面側に偏在して、その排除体積効果や静電気的な効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物(空気界面配向剤)を液晶組成物に含有させて、本態様の位相差膜を形成するのが好ましい。
上記空気界面配向剤としては、特開2002−20363号公報、特開2002−129162号公報に記載されている化合物を用いることができる。また、特開2004−053981号公報の段落番号[0072]〜[0075]、特開2004−004688号公報の段落番号[0071]〜[0078]、特開2004−139015号公報の段落番号[0052]〜[0054]、[0065]〜[0066]、[0092]〜[0094]に記載される事項も本発明に適宜適用することができる。さらに以下の化合物についても用いることができる。
また、フルオロ脂肪族基と親水性基とを有する化合物を空気界面側垂直配向剤として用いることもできる。具体的には、フルオロ脂肪族基と一種以上の親水性基を有するフッ素系ポリマー又は下記一般式(2)で表される含フッ素化合物であるのが好ましい。
《フッ素系ポリマー》
フッ素系ポリマーとして、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを有するフッ素系ポリマーを用いることができる。ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、PTFE類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基は、炭素数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。フルオロ脂肪族基の一つは、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれるものである。これらのフルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747−752ページに記載されている。テロメリゼーション法とは、ヨウ化物等の連鎖移動常数の大きいアルキルハライドをテローゲンとして、テトラフルオロエチレン等のフッ素含有ビニル化合物のラジカル重合を行い、テロマーを合成する方法である(Scheme1に例を示した)。
得られた、末端ヨウ素化テロマーは通常、例えば[Scheme2]のごとき適切な末端化学修飾を施され、フルオロ脂肪族化合物へと導かれる。これらの化合物は必要に応じ、さらに所望のモノマー構造へと変換され、フルオロ脂肪族基含有ポリマーの製造に使用される。
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの製造に利用可能なフルオロ脂肪族基含有モノマーの具体例を以下に挙げるが、本発明で用いることができる化合物は以下の具体例によってなんら制限されるものではない。
本発明に使用可能なフッ素系ポリマーの一態様は、フルオロ脂肪族基含有モノマーより誘導される繰り返し単位と、下記一般式(1)で表される親水性基を含有する繰り返し単位とを有する共重合体である。
上記一般式(1)において、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Qはカルボキシル基(−COOH)又はその塩、スルホ基(−SO3H)又はその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}又はその塩を表す。Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR4−(R4は水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、−S−、−SO2−、−P(=O)(OR5)−(R5はアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す)、アルキレン基及びアリーレン基。
一般式(1)中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又は下記の置換基群Yから選ばれる置換基を表す。
(置換基群Y)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、又は後述する−L−Qで表される基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、塩素原子、−L−Qで表される基であることがより好ましく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましく、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基であることが最も好ましい。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基等が挙げられる。該アルキル基は、適当な置換基を有していても良い。該置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アシルアミノ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、スルホリル基、カルボキシル基などが挙げられる。なお、アルキル基の炭素数は、置換基の炭素原子を含まない。以下、他の基の炭素数についても同様である。
Lは、上記連結基群から選ばれる2価の連結基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。上記連結基群中、−NR4−のR4は、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくは水素原子又はアルキル基である。また、−PO(OR5)−のR5はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、好ましくはアルキル基である。R4及びR5がアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す場合の炭素数の好ましい範囲は、「置換基群Y」中で説明したものと同じである。Lとしては、単結合、−O−、−CO−、−NR4−、−S−、−SO2−、アルキレン基又はアリーレン基を含むことが好ましく、−CO−、−O−、−NR4−、アルキレン基又はアリーレン基を含んでいるのがより好ましい。Lがアルキレン基を含む場合、アルキレン基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6である。
特に好ましいアルキレン基の具体例として、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラブチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。Lが、アリーレン基を含む場合、アリーレン基の炭素数は、好ましくは6〜24、より好ましくは6〜18、特に好ましくは6〜12である。特に好ましいアリーレン基の具体例として、フェニレン、ナフタレン基等が挙げられる。Lが、アルキレン基とアリーレン基を組み合わせて得られる2価の連結基(即ちアラルキレン基)を含む場合、アラルキレン基の炭素数は、好ましくは7〜34、より好ましくは7〜26、特に好ましくは7〜16である。特に好ましいアラルキレン基の具体例として、フェニレンメチレン基、フェニレンエチレン基、メチレンフェニレン基等が挙げられる。Lとして挙げられた基は、適当な置換基を有していてもよい。このような置換基としては先にR1〜R3における置換基として挙げた置換基と同様なものを挙げることができる。
以下にLの具体的構造を例示するが、本発明で採用することができるLはこれらの具体例に限定されるものではない。
前記式(1)中、Qはカルボキシル基、カルボキシル基の塩(例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、ジメチルフェニルアンモニウムなど)、ピリジニウム塩など)、スルホ基、スルホ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)、ホスホノキシ基、ホスホノキシ基の塩(塩を形成するカチオンの例は上記カルボキシル基に記載のものと同じ)を表す。より好ましくはカルボキシル基、スルホ基、ホスホ基であり、特に好ましいのはカルボキシル基又はスルホ基である。
前記フッ素系ポリマーは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、前記フッ素系ポリマーは、上記各繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を1種又は2種以上有していてもよい。前記他の繰り返し単位については特に制限されず、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。以下、他の繰り返し単位を誘導するモノマーの具体例を挙げる。前記フッ素系ポリマーは、下記モノマー群から選ばれる1種又は2種以上のモノマーから誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。
モノマー群
(1)アルケン類
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど;
(2)ジエン類
1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、1−クロロブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1,1,2−トリクロロ−1,3−ブタジエン及び2−シアノ−1,3−ブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサンなど;
(3)α,β−不飽和カルボン酸の誘導体
(3a)アルキルアクリレート類
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレートなど);
(3b)アルキルメタクリレート類
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アリルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(ポリオキシエチレンの付加モル数:n=2ないし100のもの)、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなど;
(3c)不飽和多価カルボン酸のジエステル類
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、タコン酸ジブチル、クロトン酸ジブチル、クロトン酸ジヘキシル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチルなど;
(3d)α、β−不飽和カルボン酸のアミド類
N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−tertブチルアクリルアミド、N−tertオクチルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン、ジアセトンアクリルアミド、N−メチルマレイミドなど;
(4)不飽和ニトリル類
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(5)スチレン及びその誘導体
スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、p−tertブチルスチレン、p−ビニル安息香酸メチル、α−メチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレンなど;
(6)ビニルエステル類
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、メトキシ酢酸ビニル、フェニル酢酸ビニルなど;
(7)ビニルエーテル類
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、n−エイコシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロブチルビニルエーテル、フルオロブトキシエチルビニルエーテルなど;及び
(8)その他の重合性単量体
N−ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、2−ビニルオキサゾリン、2−イソプロペニルオキサゾリンなど。
前記フッ素系ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、30質量%以上であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーにおいて、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の量は、該フッ素ポリマーの構成モノマー総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましく、1〜10質量%であるのがさらに好ましい。上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が、一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量を正確に規定できる。該表記を用いた場合、前記フッ素系ポリマー中に含有される親水性基(式(1)中のQ)の好ましい量は、0.1mmol/g〜10mmol/gであり、より好ましい量は0.2mmol/g〜8mmol/gである。
本発明に用いる前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は1,000,000以下であるのが好ましく、500,000以下であるのがより好ましく、100,000以下であるのがさらに好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
前記フッ素系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知慣用の方法で製造することができる。例えば先にあげたフルオロ脂肪族基を有するモノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、さらに添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、あるいは、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。ここで、ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ケトンパーオキサイド(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシエステル類(tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)、過硫酸塩類(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ラジカル重合方法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等を採ることが可能である。典型的なラジカル重合方法である溶液重合についてさらに具体的に説明する。他の重合方法についても概要は同等であり、その詳細は例えば「高分子科学実験法」高分子学会編(東京化学同人、1981年)等に記載されている。
溶液重合を行うためには有機溶媒を使用する。これらの有機溶媒は本態様の目的、効果を損なわない範囲で任意に選択可能である。これらの有機溶媒は通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各構成成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。好ましい有機溶媒の例を示すと、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることが可能である。さらに、モノマーや生成するポリマーの溶解性の観点から上記有機溶媒に水を併用した水混合有機溶媒も適用可能である。
また、溶液重合条件も特に制限されるものではないが、例えば、50〜200℃の温度範囲内で、10分〜30時間加熱することが好ましい。さらに、発生したラジカルが失活しないように、溶液重合中はもちろんのこと、溶液重合開始前にも、不活性ガスパージを行うことが好ましい。不活性ガスとしては通常窒素ガスが好適に用いられる。
前記フッ素系ポリマーを好ましい分子量範囲で得るためには、連鎖移動剤を用いたラジカル重合法が特に有効である。連鎖移動剤としてはメルカプタン類(例えば、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン、チオフェノール、p−ノニルチオフェノール等)、ポリハロゲン化アルキル(例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,1−トリブロモオクタンなど)、低活性モノマー類(α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等)のいずれも用いることができるが、好ましくは炭素数4〜16のメルカプタン類である。これらの連鎖移動剤の使用量は、連鎖移動剤の活性やモノマーの組み合わせ、重合条件などにより著しく影響され精密な制御が必要であるが、通常は使用するモノマーの全モル数に対して0.01モル%〜50モル%程度であり、好ましくは0.05モル%〜30モル%、特に好ましくは0.08モル%〜25モル%である。これらの連鎖移動剤は、重合過程において重合度を制御するべき対象のモノマーと同時に系内に存在させればよく、その添加方法については特に問わない。モノマーに溶解して添加してもよいし、モノマーと別途に添加することも可能である。
なお前記した様に、前記フッ素系ポリマーは、液晶性化合物、特にディスコチック液晶性化合物の分子の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
以下に、フッ素系ポリマーとして本発明に好ましく用いられるフルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によってなんら限定されるものではない。ここで式中の数値(a、b、c、d等の数値)は、それぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、MwはGPCにより測定されたPS換算の質量平均分子量である。
組成物中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、その用途によって異なるが、光学異方性層の形成に用いる場合は、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのがさらに好ましい。前記フッ素系ポリマーの添加量が0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性等)に悪影響を及ぼしたりする。
《一般式(2)で表される含フッ素化合物》
次に、一般式(2)で表される含フッ素化合物について説明する。
一般式(2)
(R0)m−L0−(W)n
式中、R0はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、mは1以上の整数を表す。複数個のR0は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。
L0は(m+n)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、スルファト基(−OSO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表し、nは1以上の整数を表す。
式(2)中、R0は含フッ素化合物の疎水性基として機能する。R0で表されるアルキル基は置換もしくは無置換のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは4〜16のアルキル基であり、特に好ましくは6〜16のアルキル基である。該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。
R0で表される末端にCF3基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、更に好ましくは4〜16であり、特に好ましくは4〜8である。前記末端にCF3基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上が置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF2H基を有するアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20であり、更に好ましくは4〜16であり、特に好ましくは4〜8である。前記末端にCF2H基を有するアルキル基は、アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。R0で表される末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基の例を以下に示す。
R1:n−C8F17−
R2:n−C6F13−
R3:n−C4F9−
R4:n−C8F17−(CH2)2−
R5:n−C6F13−(CH2)2−
R6:n−C4F9−(CH2)2−
R7:H−(CF2)8−
R8:H−(CF2)6−
R9:H−(CF2)4−
R10:H−(CF2)8−(CH2)−
R11:H−(CF2)6−(CH2)−
R12:H−(CF2)4−(CH2)−
式(2)において、L0で表される(m+n)価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族基、ヘテロ環基、−CO−、−NR−(Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−からなる群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた連結基であることが好ましい。
式(2)において、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、スルファト基(−OSO3H)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩を表す。Wの好ましい範囲は、一般式(1)におけるQと同一である。
前記一般式(2)で表される含フッ素化合物の中でも、下記一般式(2a)又は後述する一般式(2b)で表される化合物が好ましい。
式(2a)中、R5及びR6は各々アルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表すが、R5及びR6が同時にアルキル基であることはない。W1及びW2は各々水素原子、カルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、スルファト基(−OSO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表すが、W1及びW2が同時に水素原子であることはない。
R5及びR6は前記一般式(2)におけるR0と同義であり、その好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、スルファト基(−OSO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩は前記一般式(2)におけるWと同義でありその好ましい範囲も同一である。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは1〜8のアルキル基であり、特に好ましくは1〜3のアルキル基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、スルファト基及びホスホノキシ基としては、前記一般式(2)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、スルファト基及びホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、更に好ましくは1〜8のアルコキシ基であり、特に好ましくは1〜4のアルコキシ基である。前記置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、スルファト基及びホスホノキシ基としては、前記一般式(2)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、スルファト基及びホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルコキシ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。W1及びW2で表される置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルキルアミノ基であり、更に好ましくは1〜8のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは1〜4のアルキルアミノ基である。前記カルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、少なくとも一つのカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有していればよく、カルボキシル基、スルホ基、スルファト基及びホスホノキシ基としては、前記一般式(2)中のWが表すカルボキシル基、スルホ基、スルファト基及びホスホノキシ基と同義であり好ましい範囲も同一である。前記カルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキルアミノ基は、これ以外の置換基によって置換されていてもよく、該置換基としては後述の置換基群Dとして例示した置換基のいずれかを適用できる。
W1及びW2は、特に好ましくはそれぞれ水素原子又は(CH2)nSO3M(nは0又は1を表す。)である。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合はMはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
次に、下記一般式(2b)について説明する。
一般式(2b)
(R7−L1−)m2(Ar1)−W3
式(2b)中、R7はアルキル基、末端にCF3基を有するアルキル基、又は末端にCF2H基を有するアルキル基を表し、m2は1以上の整数を表し、複数個のR7は同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF3基又はCF2H基を有するアルキル基を表す。L1は、アルキレン基、芳香族基、−CO−、−NR−(Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、複数個のL1は同一でも異なっていてもよい。Ar1は芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を表し、W3はカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、スルファト基(−OSO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基を表す。
R7は前記一般式(2)におけるR0と同義であり,その好ましい範囲も同一である。L1は、好ましくは炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数6〜12の芳香族基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜40の連結基を表し、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基、フェニル基、−CO−、−NR−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる総炭素数0〜20の連結基を表す。Ar1は、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環を表し、特に好ましくはベンゼン環又はナフタレン環を表す。W3で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、スルファト基(−OSO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基は、前記一般式(2a)におけるW1及びW2で表されるカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、スルファト基(−OSO3H)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)2}もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基、スルホ基、スルファト基もしくはホスホノキシ基を有するアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルアミノ基と同義でありその好ましい範囲も同一である。
W3は、好ましくはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SO3H)もしくはその塩、又は置換基としてカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩又はスルホ基(−SO3H)もしくはその塩を有するアルキルアミノ基であり、特に好ましくはSO3M、又はCO2Mである。Mはカチオンを表すが、分子内で荷電が0になる場合はMはなくてもよい。Mで表されるカチオンとしては、例えばプロトニウムイオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(バリウムイオン、カルシウムイオンなど)、アンモニウムイオンなどが好ましく適用される。このうち、特に好ましくはプロトニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンである。
本明細書において、置換基群Dには、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12アシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
なお、前記含フッ素化合物は、液晶性化合物、特にディスコチック液晶性化合物の分子の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
本発明に使用可能な前記一般式(2)で表される含フッ素化合物の具体例を以下に示すが、本発明に用いられる含フッ素化合物はこれらに限定されるものではない。下記の具体例中、No.IV−1〜42は一般式(2a)、No.IV−43〜66は一般式(2b)で表される化合物の例である。
[位相差膜の調製]
本態様の位相差膜は、例えば塗布液を塗布して乾燥することにより調製することができる。
(溶媒)
上記液晶組成物等の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。上記有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
(他の材料)
上記の棒状液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、棒状液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これらの素材は棒状液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性もしくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の棒状液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
[支持体]
本態様の位相差膜を、支持体上に形成してもよい。支持体は透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上の透明支持体であることが好ましい。
支持体は、波長分散が小さいものが好ましく、具体的には、Re(400)/Re(700)の比が1.2未満であることが好ましい。中でも、上記透明支持体としては、ポリマーフィルムが好ましい。上記透明支持体は、上述の第1位相差膜、第2位相差膜または偏光板保護膜を兼ねることもできる。また、透明支持体と位相差膜との全体で、第1位相差膜または第2位相差膜を構成していてもよい。支持体の光学異方性は小さいものが好ましく、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。また、上記透明支持体が第1位相差膜を兼ねる場合は、レターデーション(Re)が20nm〜150nmであって、40nm〜115nmであるのがより好ましく、60nm〜95nmであるのがさらに好ましい。同様に、Nzは1.5〜7であって、2.0〜5.5であるのがより好ましく、2.5〜4.5であるのがさらに好ましい。
支持体となるポリマーフィルムの例には、セルロースエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートのフィルムが含まれる。これらの中でもセルロースエステルフィルムが好ましく、アセチルセルロースフィルムがさらに好ましく、トリアセチルセルロースフィルムが最も好ましい。上記ポリマーフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明支持体の厚さは、一般的に20〜500μmであることが好ましく、40〜200μmであることがさらに好ましい。また、透明支持体とその上に設けられる層(接着層、垂直配向膜あるいは位相差層)との接着を改善するため、透明支持体に表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理)を実施してもよい。更に透明支持体の上には、接着層(下塗り層)を設けてもよい。また、透明支持体や長尺の透明支持体には、搬送工程でのすべり性を付与したり、巻き取った後の裏面と表面との貼り付きを防止するために、平均粒径が10〜100nm程度の無機粒子を固形分質量比で5%〜40%混合したポリマー層を支持体の片側に塗布や支持体との共流延によって形成したものを用いることが好ましい。
[偏光膜と偏光膜用保護膜]
本態様の位相差膜は、直線偏光膜又は偏光膜用保護膜を貼り合せてから、実際の液晶表示素子の製造に使用することが好ましく行われる。以下に該偏光膜及び偏光膜用保護膜について説明する。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光膜の透過軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。本態様では、棒状液晶性化合物を用いて位相膜を形成しているので、偏光膜の透過軸は、棒状液晶性分子の長軸方向(遅相軸)と、実質的に平行になるように配置する。通常は、位相差膜を形成した支持体側に貼り合せるのが好ましいが、必要によっては、位相差膜側と貼り合せてもよい。
位相差膜の表面(支持体界面と反対側の表面)に透明保護膜を形成してもよい。透明保護膜として、透明なポリマーフィルムが用いることが好ましい。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフィルム、好ましくはトリアセチルセルロースフィルムが用いられる。セルロースエステルフィルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。透明保護膜の厚さは、20〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがさらに好ましい。また、保護膜は複屈折性に基づくレターデーションが小さいものが好ましい。具体的には、面内のレターデーション(Re)は、0〜30nmが好ましく、0〜15nmがより好ましく、0〜5nmが最も好ましい。さらに、厚み方向のレターデーション(Rth)は0〜40nmであることが好ましく、0〜20nmがより好ましく、0〜10nmであることが最も好ましい。この特性を有するフィルムであれば透明保護膜として好適に用いることができるが、偏光膜の耐久性の観点からはセルロースアシレートやノルボルネン系のフィルムがより好ましい。セルロースアシレートフィルムのRthを小さくする方法としては、特開平11−246704号公報、特開2001−247717号公報、特開2003−379975号公報(特願2003−379975号明細書)に記載の方法などが挙げられる。また、セルロースアシレートフィルムの厚みを小さくすることによっても、Rthを小さくすることができる。
本態様の位相差膜は、液晶表示装置、特にIPSモードの液晶表示装置に用いるのに適している。本態様の位相差膜を、後述する第2位相差膜として液晶表示装置に組み込むことにより、正面方向の特性を何ら変更させることなく、斜めの方位角方向から見た場合に2枚の偏光板の吸収軸が90°からずれることから生ずるコントラストの低下、特に45°の斜め方向からのコントラストの低下を改善することができる。さらに、偏光膜における保護膜のRthを40nm以下とすることによって更なるコントラスト向上を実現することができる。また、本態様の位相差膜は特殊な垂直配向膜を用いずに作製可能であり、IPSモードに適する第2位相差膜を簡便に作製することができる。
以下、図面を用いて本態様の位相差膜を第2位相領域として有する液晶表示装置の一実施形態を詳細に説明する。図3は、本態様の位相差膜を有する液晶表示装置の画素領域例を示す模式図である。図4および図5は、本態様の位相差膜を有する液晶表示装置の一実施形態の模式図である。
のではない。
《液晶表示装置》
[液晶表示装置の構成]
図4に示す液晶表示装置は、偏光膜8および20と、第1位相差膜10と、第2位相差膜12と、基板13および17と、該基板に挟持される液晶層15とを有する。偏光膜8及20は、それぞれ保護膜7aと7bおよび19aと19bによって挟持されている。
図4の液晶表示装置では、液晶セルは、基板13および17と、これらに挟持される液晶層15とからなる。液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dは透過モードにおいて、ねじれ構造を持たないIPS型では0.2〜0.4μmの範囲が最適値となる。この範囲では白表示輝度が高く、黒表示輝度が小さいことから、明るくコントラストの高い表示装置が得られる。基板13および17の液晶層15に接触する表面には、配向膜(図4中不図示)が形成されていて、液晶分子を基板の表面に対して略平行に配向させるとともに配向膜上に施されたラビング処理方向(矢印14および18)等により、電圧無印加状態もしくは低印加状態における液晶分子配向方向が制御されている。また、基板13もしくは17の内面には、液晶分子に電圧印加可能な電極(図4中不図示)が形成されている。
図3に、液晶層15の1画素領域(液晶素子画素領域1)中の液晶分子の配向を模式的に示す。図1においては、液晶層15の1画素に相当する程度の極めて小さい面積の領域中の液晶分子の配向を、基板13および17の内面に形成された配向膜のラビング方向4、および基板13および17の内面に形成された液晶分子に電圧印加可能な電極2および3とともに示される。また、電界効果型液晶として正の誘電異方性を有するネマチック液晶を用いてアクティブ駆動を行った場合の、電圧無印加状態もしくは低印加状態での液晶分子配向方向は、液晶分子5aおよび5bのように実質的に基板に対する平行方向であり、この時に黒表示が得られる。電極2および3間に電圧が印加されると、電圧に応じて液晶分子は、液晶分子6aおよび6bのような方向に配向される。通常、この状態で明表示を行なう。
再び図4において、偏光膜8の透過軸9と、偏光膜20の透過軸21は直交して配置されている。第1位相差膜10の遅相軸11は、偏光膜8の透過軸9および黒表示時の液晶層15中の液晶分子の遅相軸方向16に平行である。
図4に示す液晶表示装置では、偏光膜8が二枚の保護膜7aおよび7bに挟持された構成を示しているが、保護膜7bは任意な構成であり設けなくてもよい。また、偏光膜20も二枚の保護膜19a及び19bに挟持されているが、液晶層15に近い側の保護膜19aは設けなくてもよい。なお、図4の態様では、第1位相差膜および第2位相差膜は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよい。本実施形態では、いずれの構成においても、第2位相差領膜が液晶セルにより近くなるように配置する。
保護膜7a、7b、19aおよび19bは、セルロースアシレートフィルム等の光学異方性が小さいポリマーフィルムからなっているのが好ましい。透明保護膜として用いられるセルロースアシレートフィルムの厚みは10〜100μmであることが好ましく、10〜60μmであるのがより好ましく、20〜45μmであることがさらに好ましい。
他の実施形態を図5に示す。図4中と同一の部材には同一の番号を付して、詳細な説明は省略する。図5の液晶表示装置は、第2位相差膜12が偏光膜8および第1位相差膜10の間に配置されている。図5の液晶表示装置においても、保護膜7bまたは保護膜19aは任意の構成であり設けなくてもよい。図5に示す態様では、第1位相差膜10は、その遅相軸11が、偏光膜8の透過軸9と黒表示時の液晶層15中の液晶分子の遅相軸方向16に直交になるように配置される。なお、図5の態様では、第1位相差膜および第2位相差膜は、液晶セルの位置を基準にして、液晶セルと視認側の偏光膜との間に配置されていてもよいし、液晶セルと背面側の偏光膜との間に配置されていてもよい。本実施形態では、いずれの構成においても、第1位相差膜が液晶セルにより近くなるように配置する。
なお、図4および図5には、上側偏光板(膜)および下側偏光板(膜)を備えた透過モードの表示装置の態様を示したが、本発明は一つの偏光板のみを備える反射モードの態様であってもよい。かかる場合には、液晶セル内の光路が2倍になることから、最適Δn・dの値は上記の1/2程度の値になる。また、本発明に用いられる液晶セルはIPSモードに限定されることなく、黒表示時に液晶分子が上記一対の基板の表面に対して実質的に平行に配向する液晶表示装置であれば、いずれも好適に用いることができる。このような液晶表示装置の例としては強誘電性液晶表示装置、反強誘電性液晶表示装置、ECB型液晶表示装置がある。
また、本態様の位相差膜を適用可能な液晶表示装置は、図3〜図5に示す構成に限定されず、他の部材を含んでいてもよい。例えば、フルカラー型液晶表示装置を構成する場合には、液晶層と偏光膜との間にカラーフィルターを配置してもよい。また、偏光膜における保護膜の表面に反射防止処理やハードコートを施してもよい。また、構成部材に導電性を付与したものを使用してもよい。更に、透過型として使用する場合は、冷陰極もしくは熱陰極蛍光管、あるいは、発光ダイオード、フィールドエミッション素子またはエレクトロルミネッセント素子を光源とするバックライトを背面側に配置することができる。この場合、バックライトの配置は図4および図5の上側であっても下側であってもよい。
また、液晶層とバックライトとの間に、反射型偏光板や拡散板、プリズムシートや導光板を配置することもできる。更に、上述のように、本発明の液晶表示装置は、反射型であってもよく、かかる場合は、偏光板は観察側に1枚配置したのみでよく、液晶セル背面あるいは液晶セルの下側基板の内面に反射膜が配置される。もちろん上記光源を用いたフロントライトを液晶セル観察側に設けることも可能である。
本態様の位相差膜を適用可能な液晶表示装置には、画像直視型、画像投影型や光変調型が含まれる。また、TFTやMIMのような3端子または2端子半導体素子を用いたアクティブマトリックス液晶表示装置に適用した態様が特に有効である。むろん、時分割駆動と呼ばれるパッシブマトリックス液晶表示装置に適用した態様も有効である。
以下、第1位相差領域および第2位相差領域に用いられる位相差膜の好ましい光学特性、材料、製造方法等について、詳細に説明する。
[第1位相差膜]
前記液晶表示装置に用いられる第1位相差膜は、面内のレターデーション(Re)が20nm〜150nmであって、斜め方向の光漏れを効果的に低減する観点から、第1位相差膜のReは、40nm〜115nmであるのがより好ましく、60nm〜95nmであるのが特に好ましい。また、第1位相差膜のNzは、1.5〜7であって、斜め方向の光漏れを効果的に低減する観点から、第1位相差膜のNzは、2.0〜5.5であるのがより好ましく、2.5〜4.5であるのが特に好ましい。
基本的に上記第1位相差膜は、上述の光学特性を有する限り、その材料および形態については特に制限されない。上記第1位相差膜としては、例えば、複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜、透明支持体上に高分子化合物を塗布後に加熱した膜、および透明支持体上に低分子もしくは高分子液晶性化合物を塗布または転写することによって形成された位相差層を有する位相差膜など、いずれも使用することができる。また、それぞれを積層して使用することもできる。第1位相差膜がポリマーフィルムからなる場合は、後述する第2位相差膜が有する光学異方性層の支持体として機能させることができる。
上記複屈折ポリマーフィルムとしては、複屈折特性の制御性、透明性および耐熱性に優れるものが好ましい。この場合、複屈折ポリマーフィルムに用いられる高分子材料としては均一な二軸配向が達成できる高分子であれば特に制限はないが、従来公知のもので溶液流延法や押出し成形方式で製膜できるもの好ましく、例えば、ノルボルネン系高分子、ポリカーボネート系高分子、ポリアリレート系高分子、ポリエステル系高分子、ポリサルフォン等の芳香族系高分子、セルロースアシレート、または、それらポリマーの2種または3種以上を混合したポリマーなどが挙げられる。
フィルムの二軸配向は、押出し成形方式や流延製膜方式等の適宜な方式で製造した当該熱可塑性樹脂からなるフィルムを、例えばロールによる縦延伸方式、テンターによる横延伸方式や二軸延伸方式などにより、延伸処理することにより達成することができる。上述のロールによる縦延伸方式では加熱ロールを用いる方法や雰囲気を加熱する方法、それらを併用する方法等の適宜な加熱方法を採ることができる。またテンターによる二軸延伸方式では全テンター方式による同時二軸延伸方法や、ロール・テンター法による逐次二軸延伸方法などの適宜な方法を採ることができる。また、上記複屈折ポリマーフィルムとしては、配向ムラや位相差ムラの少ないものが好ましい。その厚さは、位相差等により適宜に決定しうるが、一般には薄型化の点より1〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることが更に好ましく、20〜150μmであることが特に好ましい。
上記ノルボルネン系高分子は、ノルボルネンおよびその誘導体、テトラシクロドデセンおよびその誘導体、ジシクロペンタジエンおよびその誘導体、メタノテトラヒドロフルオレンおよびその誘導体などのノルボルネン系モノマーの主成分とするモノマーの重合体であり、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体、およびその水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が最も好ましい。ノルボルネン系重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000程度であり、好ましくは8,000〜200,000であり、より好ましくは10,000〜100,000である。上述範囲であるときに、第1位相差膜の機械的強度、および成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
上記セルロースアシレートのアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。上記セルロースアシレートとしては、例えば、セルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル、或いは、芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどが挙げられ、それぞれさらに置換基を有していてもよい。上記置換基としては、総炭素数が22以下のエステル基が好ましい。好ましいセルロースアシレートとしては、例えば、エステル部の総炭素数が22以下のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル、バレル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイルなど)、アリールカルボニル基(アクリル、メタクリルなど)、アリルカルボニルキ(ベンゾイル、ナフタロイルなど)、シンナモイル基を挙げることができる。これらの中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートベンゾエートなどが好ましく、混合エステルの場合はその比率は特に限定されないが、アセテートが総エステルの30モル%以上であることが好ましい。
これらの中でも、上記複屈折ポリマーフィルムに用いられる高分子材料としてはセルロースアシレートが好ましく、特に写真用グレードのセルロースアシレートが好ましい。上記市販の写真用グレードのセルロースアシレートは粘度平均重合度や置換度等の品質が良好である。
上記写真用グレードのセルローストリアセテートとしては、ダイセル化学工業(株)製(例えばLT−20,30,40,50,70,35,55,105など)、イーストマンコダック社製(例えば、CAB−551−0.01、CAB−551−0.02、CAB−500−5、CAB−381−0.5、CAB−381−02、CAB−381−20、CAB−321−0.2、CAP−504−0.2、CAP−482−20、CA−398−3など)、コートルズ社製、ヘキスト社製等のものが好ましく、何れも写真用グレードのセルロースアシレートを使用できる。また、フィルムの機械的特性や光学的な特性を制御する目的で、特開2002−277632号公報、特開2002−182215号公報等に記載されているように、可塑剤、界面活性剤、レターデーション調節剤、UV吸収剤などを混合することができる
透明樹脂を、シートまたはフィルム状に成形する方法は、例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることができる。加熱溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できるが、これらの方法の中でも、機械的強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押出成形法、インフレーション成形法、およびプレス成形法が好ましく、押出成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、好ましくは100〜200℃、より好ましくは150〜350℃の範囲で適宜設定される。上記シートまたはフィルムの厚みは、好ましくは1〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜150μmである。
上記シートまたはフィルムの延伸は、該透明樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、好ましくはTg−30℃からTg+60℃の温度範囲、より好ましくはTg−10℃からTg+50℃の温度範囲にて、少なくとも一方向に好ましくは1.01〜2倍の延伸倍率で行う。延伸方向は少なくとも一方向であればよいが、その方向は、シートが押出成形で得られたものである場合には、樹脂の機械的流れ方向(押出方向)であることが好ましく、延伸方法は自由収縮一軸延伸法、幅固定一軸延伸法、二軸延伸法などが好ましい。光学特性の制御はこの延伸倍率と加熱温度を制御することによって行うことができる。
[第2位相差膜]
前記液晶表示装置の第2位相差膜には、本発明の位相差膜を用いる。第2位相差膜の面内屈折率が実質的に等しく、厚み方向のレターデーション(Rth)は、−80nm〜−400nmである。「面内屈折率が実質的に等しい」とは、面内のレターデーションが実質的に0近傍の値になることを意味し、その範囲は具体的には0〜20nmである。上記第2位相差膜のRthのより好ましい範囲は、他の光学部材の光学特性に応じて変動し、特に、より近くに位置する偏光膜の保護膜(例えば、トリアセチルセルロースフィルム)のRthに応じて、大きく変動する。斜め方向の光漏れを効果的に低減するためには、第2位相差膜のRthは、−100nm〜−340nmであるのがより好ましく、−120nm〜−270nmであるのがさらに好ましい。一方、第2位相差膜のReは実質的に0近傍の値になる。具体的にReは0〜20nmであるのが好ましい。
上記第2位相差膜は、屈折率異方性が正の棒状液晶化合物や組成物を基板に実質的に垂直配向させたのち固定化して形成した層を少なくとも1層有する膜である。さらに、第2の位相差膜は、一つの位相差層のみならず複数の位相差層を積層して、上記光学特性を示す第2位相差膜を構成することもできる。また、支持体と位相差層との積層体全体で上記光学特性を満たすようにして、第2位相差膜を構成してもよい。第2位相差膜は、少なくとも、後述する本発明の位相差膜を含む。
上記「実質的に垂直」とは、フィルム面と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が70°〜90°の範囲内であることを意味する。これらの液晶性化合物は斜め配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するように(ハイブリッド配向)させてもよい。斜め配向またはハイブリッド配向の場合でも、平均傾斜角は70°〜90°であることが好ましく、80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が最も好ましい。
[液晶セル]
本発明の位相差膜は、様々な表示モードの液晶セルを有する液晶表示装置に用いることができる。前述した様に、本発明の位相差膜は、液晶セルの光学補償シートして有用である。液晶性分子からなる光学異方性層を有する光学補償シートは、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric LiquidCrystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper TwistedNematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically ControlledBirefringence)、反射型については、TN、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest−Host)等の液晶セルに対応するものが既に提案されている。本発明の位相差膜は、その配向状態によって種々の液晶表示モードに適用できるが、透過型のIPSモードに好適に使用できる。
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
(上記化合物(I−4)の合成例)
3−アミノフェニルボロン酸(10g)をテトラヒドロフラン(80ml)に溶解させ、0℃にて攪拌しながらアクリル酸クロリド(6.8ml)を滴下した。添加後、0℃で1時間攪拌してから25℃に昇温して1時間攪拌した。食塩水を加え、酢酸エチルにて水層から抽出した。硫酸ナトリウムにて一晩乾燥させた後、溶媒を減圧留去して白褐色の結晶を得た。結晶を酢酸エチル400mlとヘキサン100mlの混合溶液にて洗浄し、濾過することによって白褐色の結晶I−4(12.4g、収率89%)を得た。
以下に、1H−NMRの測定結果を示す。
化合物(I−4)の1H−NMR(DMSO−d6):δ(ppm)=5.70(d,1H)、6.25(d,1H)、6.45(dd,1H)、7.30(t,1H)、7.50(d,1H)、7.80(d,1H)、7.90(s,1H)、8.00(s,2H)、10.10(s,1H)。
[実施例2]
(上記ポリマー(III−1−1)の合成例)
鹸化度88モル%のポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−203)10gに、脱水ジメチルスルホキシド40mlとニトロベンゼン0.1mlを加え、50℃にて攪拌して溶解した。前記ホウ酸化合物(I−4)0.78gとニトロベンゼン0.05mlを加え、そのまま50℃にて2時間攪拌を続けた。反応溶液にメタノールを20ml加え、酢酸エチル320mlとメタノール80mlの混合溶液に攪拌しながら滴下してポリマーを沈澱させた。沈殿物(ポリマー)を濾取し、メタノール200mlに浸して攪拌洗浄した後、再び濾取し、乾燥して塊状のポリマー(III−1−1)9.1g(収率91%)を得た。
得られたポリマー(III−1−1)について1H−NMRを測定したところ、主鎖プロトン、水酸基プロトン、アセチル基プロトンの他に、原料のPVA−203では認められない下記プロトンが弱い強度で認められた。
δ(ppm)=5.7、6.2、6.45:アクリロイル基プロトンに帰属。
δ(ppm)=7.3、7.4、7.8:フェニル基プロトンに帰属。
δ(ppm)=10.1:アミド基プロトンに帰属。
[実施例3]
1.配向膜層の形成
厚さ100μm、幅150mm、長さ200mmの光学的に等方性のトリアセチルセルロースフィルムを透明支持体として用いた。上記で製造した配向膜用ポリマー(III−1−1、構造を以下に示す)を、水/メタノール混合液に4質量%になるように希釈し、配向膜の塗布液とした。この塗布液を透明支持体の片面に連続塗布し、塗布層を100℃で2分間加熱して、乾燥し、厚さ1μmの配向膜を形成した。次いで、透明支持体の長手方向(搬送方向)に連続的にラビング処理を実施し、液晶配向膜を形成した。
配向膜塗布液組成
下記の配向膜用ポリマー(III−1−1) 1質量部
水 18質量部
メタノール 6質量部
2.液晶性化合物層の形成
ラビング処理を行った配向膜上に、下記の組成のディスコティック液晶及び重合性化合物を含む塗布液を塗布した。
液晶化合物層の塗布液組成
下記の円盤状液晶化合物 100質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
光重合開始剤
(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製) 3.3質量部
増感剤
(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
3.光学異方性層の配向欠陥の評価
前記のように作製された光学異方性層を偏光顕微鏡下で観察し、配向欠陥の評価を行った。配向欠陥は、点欠陥の個数(1.0mm2範囲の平均値)を評価した。
4.密着性の評価
光学異方性層作製後、その表面を金具で引っ掻いてからセロファンテープを貼り付け、テープを光学異方性層と平行に剥し、密着性を評価した。評価基準は、A:全く剥がれない、B:少し剥がれる、C:剥がれやすい、の3段階とした。
5.配向速度(モノドメイン化時間)の測定
前記のように作製した光学異方性層を125℃に加熱し、偏光顕微鏡(OPTIPHOTO2、Nikon(株)製)観察下で温度を保持して配向熟成を進行させ、加熱開始から配向欠陥が消失してモノドメイン配向になるのに要した時間を測定した。
6.偏光板の作製
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。偏光膜の一方の面に、ケン化処理したロール状セルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)と、他方の面にケン化処理したロール状光学異方性層の透明支持体を、連続して貼り合わせ、偏光板を作製した。
7.液晶表示装置の作製
上記のようにして作製された偏光板を液晶セルの両側に配置し、更に、バックライトを配置することにより、液晶表示装置を作製した。
8.作製した液晶表示装置の漏れ光の測定及び色むらの評価
上記方法により、作製した液晶表示装置の透過率の視野角依存性を測定した。抑角は正面から斜め方向へ10°毎に80°まで、方位角は水平右方向(0°)を基準として10°毎に360°まで測定した。黒表示時の輝度は正面方向から抑角が増すにつれ、漏れ光透過率も上昇し、抑角60°近傍で最大値をとることがわかった。また黒表示透過率が増すことで、白表示透過率と黒表示透過率の比であるコントラストが悪化することもわかった。そこで、正面の黒表示透過率と抑角60°の漏れ光透過率の最大値で、視野角特性を評価することにした。
本実施例での正面透過率は0.001%、抑角60°の漏れ光透過率の最大値は、方位角30°で0.005%であった。すなわち正面のコントラスト比が10000対1、抑角60°でのコントラスト比が2000対1であった。
また、液晶表示装置の色むらを目視で評価したが、むらが無く非常に良好であった。
[実施例4]
実施例3に示した、光学異方性層の作製方法において、上記配向膜ポリマー(III−1−1)の代わりに、以下の表1に示した、III−2−1、III−3−1、III−5、III−8、III−9、III−14、III−16、III−18及びIII−19のそれぞれ、さらに比較例として、下記A−1及びA−2のそれぞれに変更したこと以外は、全て実施例2と同様にして、光学異方性層を作製した。
表1の結果から、本発明の位相差板を有する液晶表示装置は、視野角が改善されているとともに、色むらがない高画質な画像を表示可能なことがわかった。
また、本発明の実施例である位相差板が有する光学異方性層は、配向時間が短縮されているにもかかわらず、配向欠陥が少なかった。この結果から、本発明の高分子膜を配向膜として利用することにより、液晶性化合物(特に円盤状液晶性化合物)を、シュリーレン欠陥等の配向欠陥を生じさせることなく、迅速に配向させることができることがわかった。
さらに、本発明の実施例である位相差板は、配向膜と光学異方性層との間に高い密着性を示した。これは、本発明の高分子膜用のポリマーと、光学異方性層中の液晶化合物が、これらの層の界面で化学的に結合しているためであると考えられる。従って、本発明の位相差板は、液晶表示装置の視野角の拡大に寄与するとともに、優れた耐久性も有している。
[実施例5]
<IPSモード液晶セル1の作製>
一枚のガラス基板上に、図3に示す様に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極(図1中4および5)を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。図3中に示す方向4に、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769および誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
<第1位相差膜1の作製>
下記の組成のセルロースアセテート溶液をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。該溶液を保留粒子径4μm、濾水時間35秒の濾紙(No.63、アドバンテック製)を用いて5kg/cm2以下でろ過した。
〔セルロースアセテート溶液組成〕
・酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
(重合度300、Mn/Mw=1.5)
・トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
・メタノール(第2溶媒) 54質量部
・1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
別のミキシングタンクに、下記レターデーション上昇剤A 8質量部、下記レターデーション上昇剤B 10質量部、二酸化珪素微粒子(平均粒径:0.1μm) 0.28質量部、メチレンクロライド 80質量部およびメタノール 20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液(微粒子分散液を兼ねる)を調製した。上記セルロースアセテート溶液474質量部に上記レターデーション上昇剤溶液40質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて20%の延伸倍率で横延伸し、延伸後の幅のまま50℃で30秒間保持した後クリップを外してセルロースアセテートフィルムを作製した。延伸終了時の残留溶媒量は5質量%であり、さらに乾燥して残留溶媒量を0.1質量%未満としてフィルムを作製した。
このようにして得られたフィルム(第1位相差膜1)の厚さは80μmであった。作製した第1位相差膜1について、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定することによって、Reが70nm、Rthが175nmであり、これからNzが3.0であることが分かった。
(上記ポリマー(II−1−1)の合成例)
鹸化度88モル%のポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−203)10gに脱水ジメチルスルホキシド40mlを加え、50℃にて攪拌して溶解した。前記ボロン酸化合物(II−17)1.02gを加え、そのまま50℃にて2時間攪拌を続けた。反応溶液にメタノールを20ml加え、酢酸エチル320mlとメタノール80mlの混合溶液に攪拌しながら滴下してポリマーを沈澱させた。沈殿物(ポリマー)を濾取し、メタノール200mlに浸して攪拌洗浄した後、再び濾取し、乾燥して塊状のポリマー(XII−1−1)8.5g(収率88%)を得た。
得られたポリマー(II−1−1)には、主鎖プロトン、水酸基プロトン、アセチル基プロトンの他に、原料のPVA−203では認められないフェニル基プロトン(δ(ppm)=7.3、7.4、7.8)が弱い強度で認められた。
[第2位相差膜1の作製]
製作した第1位相差膜1の表面のケン化処理を行い、このフィルム上に上記配向膜ポリマー(II−1−1)塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2となるように塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの遅相軸方向と平行の方向にラビング処理を施して、配向膜を得た。
[配向膜塗布液の組成]
・下記配向膜ポリマー(II−1−1) 10質量部
・水 371質量部
・メタノール 119質量部
・グルタルアルデヒド 0.5質量部
次に、下記棒状液晶化合物A3.8g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)0.06g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02g、下記空気界面側垂直配向剤0.002gを、メチルエチルケトン9.2gに溶解した溶液を調製した。この溶液を、上記配向膜を形成したフィルムの配向膜側に、#4.5のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、100℃の恒温槽中で2分間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。次に、80℃で120W/cm高圧水銀灯により、20秒間UV照射し棒状液晶化合物を架橋して、その後、室温まで放冷して光学異方性層を形成し、第1位相差膜上に第2位相差膜が形成された位相差フィルム1を得た。
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、製作したフィルムのReの光入射角度依存性を測定し、予め測定した支持体の寄与分を差し引くことによって第2位相差膜のみの光学特性を算出したところ、第2位相差膜1はReが0nm、Rthが−220nmであり、棒状液晶が略垂直に配向していることを確認した。
また、こうして作製された第2位相差膜1を偏光顕微鏡下で観察し、配向状態および配向欠陥の評価を行い、光学異方性層中に生じた配向欠陥の数を光学顕微鏡で観察して調べた結果、点欠陥の個数(1.0mm2範囲の平均値)は1.0mm2範囲で3個であった。
更に、密着性の評価として、その表面に市販のテープ(PET)を貼り付け、30秒後に剥がした後の状態を観察した。評価基準としては、
A:全く剥がれない
B:1〜10%剥がれる
C:10〜30%剥がれる
D:30〜50%剥がれる
E:50%以上剥がれる
の5段階で評価した結果、第2位相差膜1の密着性はDのレベルであった。
<偏光板保護膜1の作製>
下記の組成をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
[セルロースアセテート溶液Aの組成]
・置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
・トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
・メタノール(第2溶媒) 54質量部
・1−ブタノール 11質量部
別のミキシングタンクに、下記の組成を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−1を調製した。
[添加剤溶液B−1の組成]
・メチレンクロライド 80質量部
・メタノール 20質量部
・下記光学的異方性低下剤 40質量部
セルロースアセテート溶液A477質量部に、添加剤溶液B−1を40質量部添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号公報の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3〜5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmの偏光板保護膜1を作製した。
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて、Reの光入射角度依存性を測定し、光学特性を算出したところ、Reが1nm、Rthが6nmであることが確認できた(測定波長λ:589nm)。
<偏光板Aの作製>
次に延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re=3nm、Rth=45nm)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付け偏光板Aを形成した。
<偏光板Bの作製>
同様にして偏光膜を製作し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)にケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の片面に貼り付けた。さらに同様にして上記製作の偏光板保護膜1を偏光膜のもう片面に貼り付け偏光板Bを形成した。
<液晶表示装置の作製>
偏光板Aにポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作製した本発明の位相差フィルム1を、第1位相差膜1側が偏光膜側となるように、且つ偏光膜の透過軸と第1位相差膜1の遅相軸が平行になるように偏光膜のセルロースアセテートフィルムを貼合していない側に貼り付け偏光板1を形成した。
これを、上記で作製したIPSモード液晶セル1の一方に、第1位相差膜1の遅相軸が液晶セルのラビング方向と平行になるように(即ち、第1位相差膜1の遅相軸が、黒表示時の液晶セルの液晶分子の遅相軸と平行になるように)、且つ第2位相差膜1面側が液晶セル側になるように偏光板1を貼り付けた。
続いて、このIPSモード液晶セル1のもう一方の側に偏光板Bを偏光板保護膜1側が液晶セル側になるように、且つ偏光板1とはクロスニコルの配置になるように貼り付け、液晶表示装置を作製した。このように作製した液晶表示装置の漏れ光を測定した。左斜め方向60°から観察した際の漏れ光は0.08%であった。なお、本明細書における漏れ光は、以下のようにして測定したものである。
まず、暗室内に設置されたシャーカステン上に、偏光板を貼りあわせない状態で液晶セル1を置き、液晶セルのラビング方向を基準として左方向に45度の方位で、且つ液晶セル法線方向から方向60°の方向に1m離れたところに設置された輝度計で輝度1を測定した。次いで、上記と同じシャーカステン上に実施例1の液晶表示パネルを同様に配置して、暗表示の状態で同様に輝度2を測定し、これを輝度1に対する100分率で表したものを漏れ光とした。
[実施例6]
<第2位相差膜2〜7の作製>
上記第2位相差膜1の作製において、本発明における配向膜ポリマー(上述の具体例(II−1−1))を、それぞれ、上述の具体例(II−4−1)、(II−5−1)、(II−9)、および、(II−12)で表される配向膜ポリマーに変えた以外は同様の方法で、第2位相差膜2〜5を作製した。また、比較例として、配向膜として、PVA−203を用いたこと以外は同様にして作製された第2位相差膜6を作製した。更に、配向膜として、下記の垂直配向膜(AL−1)を用いたこと以外は第2位相差膜6と同様にして作製された、第2位相差膜7を作製した。この様にして作製された位相差膜の棒状液晶の配向方向と、配向欠陥を、上記の第2位相差膜1と同様に評価した。また、実施例5において、位相差膜1を実施例6における第2位相差膜2〜5、及び、比較用位相差膜6及び7に代えた以外は、実施例3と同様にして偏光板2〜7を作製した。さらに、これを用いて同様に液晶表示装置を作製し、左斜め方向60°から観察した漏れ光を測定した。以上の結果を下記表に示す。
上記の結果から、本発明の実施例では、棒状液晶を均一に、且つ、欠陥が少なく垂直に配向した位相差膜を作製でき、斜め方向からの光漏れの少ない液晶表示装置を作製することができる。また、重合性基を有する配向膜を用いた場合、密着性も改善できる。
本発明の位相差板の一実施形態の断面模式図である。
本発明の位相差板を利用した偏光板の一例の断面模式図である。
本発明の液晶表示装置の一例の画素領域例を示す概略図である。
本発明の液晶表示装置の一構成例を示す概略図である。
本発明の液晶表示装置の他の構成例を示す概略図である。
符号の説明
01 支持体
02 配向膜
03 光学異方性層
04 液晶性化合物
05 位相差板
06 透明保護膜
07 直線偏光膜
08 偏光板
1 液晶素子画素領域
2 画素電極
3 表示電極
4 ラビング方向
5a、5b 黒表示時の液晶化合物のダイレクター
6a、6b 白表示時の液晶化合物のダイレクター
7a,7b、19a,19b 偏光膜用保護膜
8、20 偏光膜
9、21 偏光膜の偏光透過軸
10 第1位相差膜
11 第1位相差膜の遅相軸
12 第2位相差膜
13、17 セル基板
14、18 セル基板ラビング方向
15 液晶層
16 液晶層の遅相軸方向