JP2007192557A - C型肝炎患者の肝疾患の重篤化をモニターする方法および肝癌の診断方法 - Google Patents

C型肝炎患者の肝疾患の重篤化をモニターする方法および肝癌の診断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】C型肝炎患者の経過観察を簡便で正確に評価できるモニター方法、および高感度且つ特異度に優れた肝癌の診断方法を提供すること。
【解決手段】C型肝炎患者における被検試料中のGPC3濃度を測定することを特徴とするC型肝炎患者の肝疾患の重篤化のモニター方法および肝癌の診断方法であって、GPC3濃度の測定が、被検試料のGPC3濃度を免疫学的方法により測定し、カットオフ値を設定し、カットオフ値以上となった場合に肝癌に重篤化しつつあるC型肝炎と判定するモニター方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、C型肝炎患者の肝疾患の重篤化のモニター方法および肝癌を他の肝疾患と区別して診断する方法に関する。
日本において、肝癌による死亡者数は年間約3万3千人を上回る。肝癌の90%以上が肝炎ウィルスの感染者であり、肝癌予備軍ともいえるウィルス性肝炎患者数は全国で250万人とも300万人ともいわれている。肝細胞癌は、原発性肝癌の95%を占め、肝疾患死亡者の約三分の二である。殆どがB型・C型肝炎を背景とした慢性肝炎・肝硬変を母体として発生し、その症例数は年々増加している。従って肝機能低下例も多く見られ、また、進行例では肝内転移や脈管侵襲を来しやすい。特にC型肝炎においては、約7割が徐々に病状が進行し、治療しない場合10から30年までに肝硬変、さらに肝癌に移行する。事実、肝癌患者の約8割がC型肝炎に起因することが知られている。
肝癌の治療法として、外科的治療(部分肝切除)と内科的治療がある。外科的治療の場合、肝癌の多くが肝硬変を合併しているという特徴が問題となり、肝硬変が進行しているほど切除できる範囲が狭くなる。内科的治療は、経皮的エタノール注入法、経皮的マイクロ波凝固療法、ラジオ波焼灼療法、経カテーテル動脈塞栓療法などがあるが、癌や肝硬変の程度や患部によっては、治療を適用できない場合もあり、また、いずれの治療法も侵襲を伴う。
肝癌は、早期に治療することにより、生存率が高まる傾向にある。例えば肝細胞癌の場合、早期肝細胞癌の5年生存率が45%であるのに対し、非早期肝細胞癌の5年生存率は11%であるという報告がある。また、臨床病期がI期の患者の5年生存率は91%であるが、II期では12%、III期では0%となる。従って、肝癌は早期発見が極めて重要な疾患であり、簡便で精度良く診断できる方法の開発が望まれている。
現在、肝臓異常の検査としてAST(GOT)、ALT(GPT)およびγ-GTP(γ-グルタミルトランスペプチダーゼ)が汎用されているが、その他にTP(血清総蛋白)、A/G比(アルブミン/グロブリン比)、UA(尿酸)、T-Cho(総コレステロール)、TTT(チモール混濁試験)、ZTT(硫酸亜鉛混濁試験)、LDH(乳酸脱水酵素)、ALP(アルカリンフォスファターゼ)、chE(コリンエステラーゼ)も使われている。このように多くの検査により、肝臓異常が診断されるが、さらにウィルス検査ならびにバイオプシーにより炎症、線維化および癌化への進行の程度(肝疾患の重篤化)が診断されている。
肝疾患が例えばC型肝炎と診断された場合、C型肝炎は肝硬変次いで肝癌に進行していくことが知られており、C型肝炎患者の肝疾患の重篤化のモニターが必要となってくる。この肝疾患の重篤化のモニターは、上記各種検査に加え、肝癌の検査法としては画像診断と血中の腫瘍マーカーにより行われているのが現状である。
肝硬変や肝癌への進行部位を診断することができる画像診断には、腹部超音波検査、CT、MRIが用いられる。しかし、腹部超音波検査の場合、体型などによっては、臓器の観察が容易でない、検査を行う術者の技量によって、診断の信頼性に差が出るという欠点がある。また、CTやMRIは検査に時間がかかり、一日に検査できる患者の数に制限があるため、多数の診断を行うことが困難である。また、検査機関側の設備に多大なコストがかかるという課題もある。
一方、簡便に診断を行うことができる肝細胞癌のマーカーとしては、α-フェトプロテイン(AFP)とprotein induced by vitamin K absence of antagonist (PIVKA-II; Des-gamma-carboxyprothrombin)等がある。しかし、AFPの感度は66.7%であるが疾患特異性が低いという報告がある。肝芽腫、卵黄脳嚢腫瘍等のAFP産生腫瘍、妊娠ならびに慢性肝炎や活動期の肝硬変等のような非肝癌患者でも上昇するため、軽度〜中等度の症例での鑑別は困難とされている。かかる実情により、AFPの糖鎖異常を検出する手段としてレンズマメレクチンを用いたAFP-L3分画が開発されるに至った。一方、PIVKA-IIにおいてはアルコール性肝障害や薬物投与時(例えばワーファリンや抗生物質)、ビタミン欠乏時等において高値を示すが、それらを除けば肝細胞癌に対する特異性は92.8%と優れている。しかしながら感度が45%と低い点が問題である。
上記のとおり、肝癌患者の約8割がC型肝炎に起因するにも拘わらず、C型肝炎患者の経過観察を簡便で正確に評価できる方法がなく、また血中マーカーを利用した肝癌の診断において、特異度と感度の両者が共に優れた単一の診断方法が存在しない。このため、診断の現場においてはAFPおよびAFP-L3分画ならびにPIVKA-IIの併用により肝癌の診断がな
されているのが実情であるが、それら併用によっても必ずしも充分に満足できるものではない。
従って、C型肝炎と診断された患者では、肝疾患の重篤化の経過観察(モニター)を簡便で正確に評価できる、新たな方法の開発が望まれており、その候補としてGLYPICAN 3 (GPC3)が開発途上にある。GPC3は肝細胞癌患者の72%に発現していることが抗GPC3抗体による免疫染色により確認され(非特許文献1)、治療薬(特許文献1)のみならず、肝癌マーカーとして利用可能なことが知られ(非特許文献2,3および4)、感度は充分ではないものの特異性にすぐれていることが記載されている。
非特許文献1には、新しく開発中のGPC3とAFPの併用により、感度を上げる方法が記載されているが、さらなる、肝癌の診断率の向上、すなわち特異度および感度の上昇が望まれている。
Molecular Diagnosis. 8(4):207-212, 2004 Cancer Research. 2004, April; 64: 1-6. Gastroenterology. 2003; 125: 89-97. Biochemical and Biophysical Research Communications. 2003;306: 16-25. 国際公開03/000883パンフレット
本発明の目的は、血液等の体液検体を用いた、患者に負担のかからないGPC3濃度測定手段により、C型肝炎患者の経過観察を簡便で正確に評価できるモニター方法、および高感度且つ特異度に優れた肝癌の診断方法を提供することである。
本発明者らは、健常者、慢性肝炎患者、肝硬変患者および肝癌患者のAFP、PIVKA-IIおよびGPC3の血清中濃度を測定した。
その結果、既に知られているようにPIVKA-II測定系においては、特異度は高いものの、感度が低い結果であり、AFP測定系においては、感度が高いものの特異度が低いものであった。また、GPC3測定系においてはAFP測定系と同様に感度が高いにも拘わらず、慢性肝炎および肝硬変患者で高率に偽陽性を示し、特異度で劣るものであり、設定したカットオフ値による陽性率の変化がC型肝炎患者血清中GPC3濃度と肝癌患者血清中GPC3濃度とで良く相関することを見出した。この結果は、C型肝炎と診断された患者の血清中GPC3濃度を経時的に測定することにより、重篤化をモニターできることを意味している。事実、C型肝炎患者の血清中GPC3濃度を経時的に測定した結果、肝癌への重篤化のモニターが可能であることが判明した。
さらに、GPC3測定系で高感度化によって発生する肝癌診断における偽陽性率の改善をするため、AFP測定系およびPIVKA-II測定系との併用による高感度および特異性に優れたモニターおよび肝癌診断方法を探索した。すなわち、PIVKA-II測定系の偽陽性率とほぼ同程度になるまで特異性を高めるため、AFP測定系、PIVKA-II測定系およびGPC3測定系のカットオフ値の設定を変更し各測定系(各腫瘍マーカー)のうち1つ以上が陽性の患者数を各疾患について求めた。
その結果、本発明者らは、GPC3測定系でGPC3≧0.7ng/mLとカットオフ値を設定することによりC型肝炎から重篤化した肝癌と判定(診断)することができ、さらにGPC3が0.7ng/mLに満たない場合であっても、PIVKA-II測定系を併用して0.2≦GPC3<0.7ng/mLおよびPIVKA-II≧40mAU/mLとカットオフ値を設定することによりC型肝癌と判定(診断)することができる、高感度および特異性に優れたC型肝炎患者の重篤化のモニター方法および肝癌の診断方法を見つけることに成功し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、C型肝炎患者における被検試料中のGPC3濃度を測定することを特徴とするC型肝炎患者の肝疾患の重篤化のモニター方法および肝癌の診断方法を提供するものである。
本発明によれば、患者に負担をかけることなく、簡便かつ高精度で特異的にC型肝炎の重篤化をモニターすること、および肝癌を診断することが可能な方法を提供でき、早急に新たな治療計画の策定が可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、GPC3測定系におけるGPC3濃度(量)を測定することにより、高感度で特異的にC型肝炎の重篤化をモニターし、肝癌を診断する方法である。
本発明でモニターされる疾患は慢性肝炎および肝硬変である。診断(判定)される疾患は、肝癌であり、特にC型肝炎若しくはC型肝硬変から重篤化する肝癌が好ましい。本発明における肝癌とは、胆管癌及び肝細胞癌を含み、慢性肝炎および肝硬変と区別して診断することも可能である。
被検試料としては、GPC3タンパク質が含まれる可能性のある試料であれば特に制限されないが、哺乳類などの生物の体から採取された試料が好ましく、さらに好ましくはヒトから採取された試料である。被検試料の具体的な例としては、例えば、血液、間質液、血漿、血管外液、脳脊髄液、滑液、胸膜液、血清、リンパ液、唾液、尿などを挙げることができるが、好ましいのは血液、血清、または血漿である。
本発明によれば、C型肝炎患者血清中にGPC3タンパク質が検出された場合、被検試料中に検出されるGPC3タンパク質の濃度(量)が、健常者と比較してGPC3タンパク質の濃度(量)がかなり高値に設定されたカットオフ値以上に該当する場合、肝癌の可能性が高いと判定(診断)される。さらに、かなり高値に設定されたカットオフ値未満であるが、幾分低い場合には、肝癌であるか、将来肝癌になる可能性が高いと判定(診断)される。この場合、PIVKA-IIタンパク質の濃度(量)を測定し40mAU/mL以上の患者は肝癌の可能性が高いと判定(診断)される。また、肝癌未発症のC型肝炎患者のGPC3タンパク質の濃度(量)を経時的に測定することにより、肝癌への重篤化のモニターをすることができる。
一般的にカットオフ値とは、健常者群の平均値や個体群等に基づき、ある疾患の可能性が高いか低いかを判定する値である。
本発明では、GPC3測定系において設定されるカットオフ値は任意に設定できる値であるが、カットオフ値A0,A1,A2,…(A1>A2…、A0は任意)などと複数設定してもよい。
モニターする場合に設定されるカットオフ値A0は任意に設定できる値であるが、A1,A2,…>A0が好ましい。モニターする場合に設定されるカットオフ値はGPC3が0.2〜0.9ng/mL、好ましくはGPC3が0.2ng/mLであり、カットオフ値より高値の場合、肝癌または将来肝癌になる可能性が高い、すなわち、肝癌もしくは肝硬変に重篤化しつつあるC型肝炎と判定される。さらに、設定されたカットオフ値A1以上、もしくはカットオフ値A1未満A2以上かつPIVKA-II≧40mAU/mLになることにより肝癌に重篤化したC型肝炎と判定(診断)することができる。
また、本発明によれば、GPC3のカットオフ値A1がGPC3≧0.2ng/mL、好ましくは、GPC3≧0.5〜0.6ng/mL、特に好ましくはGPC3≧0.7ng/mLに設定することにより、アルコール性肝炎およびB型肝硬変およびC型肝硬変と区別し、肝癌と診断(判定)することができる。
さらに、カットオフ値A1未満A2以上の場合には、PIVKA-II測定系を併用することにより血清中PIVKA-II濃度を測定し、PIVKA-II≧40mAU/mLの場合も肝癌と診断(判定)することができる。ここで、カットオフ値A2は、カットオフ値A1を超えない値(A1>A2)であって0.1〜0.9ng/mLであり、好ましくは0.1〜0.5ng/mL、より好ましくは0.1〜0.3ng/mL、特に好ましくは0.2ng/mLである。
さらに、肝癌の外科的治療後、および内科的治療後のGPC3タンパク質測定において、GPC3タンパク質の濃度(量)が術前より減少した場合、外科的治療及び内科的治療の経過が良好であると判定(診断)することができる。一方、外科的治療及び内科的治療後のGPC3タンパク質の濃度(量)が増加する場合には再発および転移があると判定(診断)することができる。さらに、GPC3測定値が健常者に比べ高値にも拘わらず、他の診断により肝癌でないと診断された患者については、PCT/JP2005/18290に記載されるように、特に、C型肝炎患者についての定期的な血中GPC3の測定により経過観察が必要であると判定(診断)することができる。
また、上記の肝癌の診断(判定)または重篤化のモニターは、情報記憶媒体、記憶部、ROM等にプログラムとして格納し、検査装置の制御部によって実行させることも可能である。
被検試料に含まれるGPC3タンパク質の検出方法は、抗GPC3抗体を用いた免疫学的方法により行われる。免疫学的方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法、ウエスタンブロット、免疫染色、免疫拡散法などを挙げることができるが、好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいのは酵素結合免疫吸着定量法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)(例えば、sandwich ELISA)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。
抗GPC3抗体を用いた一般的な検出方法としては、例えば、抗GPC3抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い、抗GPC3抗体とGPC3タンパク質をそれぞれ結合させた後に洗浄して、抗GPC3抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質を検出することにより、被検試料中のGPC3タンパク質の検出を行う方法を挙げることができる。
本発明において抗GPC3抗体を固定するために用いられる支持体としては、例えば、アガロース、セルロースなどの不溶性の多糖類、シリコン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの合成樹脂や、ガラス、フェライトなどの不溶性の支持体を挙げることができる。これらの支持体は、ビーズやプレートなどの形状で用いることが可能である。ビーズの場合、これらが充填されたカラムなどを用いることができる。プレートの場合、マルチウェルプレート(96穴マルチウェルプレート等)、やバイオセンサーチップなどを用いることができる。抗GPC3抗体と支持体との結合は、化学結合や物理的な吸着などの通常用いられる方法により結合することができる。これらの支持体はすべて市販のものを用いることができる。
抗GPC3抗体とGPC3タンパク質とのそれぞれの結合は、通常、緩衝液中で行われる。緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、Tris緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液などが使用される。また、インキュベーションの条件としては、すでによく用いられている条件、例えば、4℃〜37℃にて1時間〜24時間のインキュベーションが行われる。インキュベート後の洗浄は、抗GPC3抗体とGPC3タンパク質とのそれぞれの結合を妨げないものであれば何でもよく、例えば、Tween20(登録商標)等の界面活性剤を含む緩衝液などが使用される。
本発明のGPC3タンパク質の検出方法においては、GPC3タンパク質を検出したい被検試料の他に、コントロール試料を用いてもよい。コントロール試料としては、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料やGPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料などがある。この場合、GPC3タンパク質を含まない陰性コントロール試料で得られた結果と、GPC3タンパク質を含む陽性コントロール試料で得られた結果と比較することにより、被検試料中のGPC3タンパク質を検出することが可能である。また、濃度を段階的に変化させた一連のコントロール試料を調製し、各コントロール試料に対する検出結果を数値として得て、標準曲線を作成し、被検試料の数値から標準曲線に基づいて、被検試料に含まれるGPC3タンパク質を定量的に検出することも可能である。
抗GPC3抗体を介して支持体に結合したGPC3タンパク質の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された抗GPC3抗体を用いる方法を挙げることができる。例えば、支持体に固定された抗GPC3抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、GPC3タンパク質を特異的に認識する標識抗体を用いて検出する。
抗GPC3抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチン、ルテニウムなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、ペルオキシダーゼなどの酵素を結合させたストレプトアビジンをさらに添加することが好ましい。標識物質と抗GPC3抗体との結合には、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、過ヨウ素酸法、などの公知の方法を用いることができる。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートまたはビーズなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を支持体に固定する。プレート、またはビーズを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSA、ゼラチン、アルブミンなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートまたはビーズに加える。インキュベートの後、洗浄し、標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートまたはビーズを洗浄し、支持体に残った標識抗GPC3抗体を検出する。検出は当業者に公知の方法により行うことができ、例えば、放射性物質による標識の場合には液体シンチレーションやRIA法により検出することができる。酵素による標識の場合には基質を加え、基質の酵素的変化、例えば発色を吸光度計により検出することができる。基質の具体的な例としては、2,2−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、1,2−フェニレンジアミン(オルソ−フェニレンジアミン)、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)などを挙げることができる。蛍光物質または化学発光物質の場合にはルミノメーターにより検出することができる。
本発明のGPC3タンパク質検出方法の特に好ましい態様として、ビオチンで標識された抗GPC3抗体と、ストレプトアビジンを用いる方法を挙げることができる。
具体的には、抗GPC3抗体を含む溶液をプレートなどの支持体に加え、抗GPC3抗体を固定する。プレートを洗浄後、タンパク質の非特異的な結合を防ぐため、例えばBSAなどでブロッキングする。再び洗浄し、被検試料をプレートに加える。インキュベートの後、洗浄し、ビオチン標識抗GPC3抗体を加える。適度なインキュベーションの後、プレートを洗浄し、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素と結合したアビジンを加える。インキュベーション後、プレートを洗浄し、アビジンに結合している酵素に対応した基質を加え、基質の酵素的変化などを指標にGPC3タンパク質を検出する。
本発明のGPC3タンパク質検出方法の他の態様として、GPC3タンパク質を特異的に認識する一次抗体を一種類以上、および該一次抗体を特異的に認識する二次抗体を一種類以上用いる方法を挙げることができる。
例えば、支持体に固定された一種類以上の抗GPC3抗体に被検試料を接触させ、インキュベーションした後、洗浄し、洗浄後に結合しているGPC3タンパク質を、抗GPC3抗体および該一次抗体を特異的に認識する一種類以上の二次抗体により検出する。この場合、二次抗体は好ましくは標識物質により標識されている。
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、凝集反応を利用した検出方法を挙げることができる。該方法においては、抗GPC3抗体を感作した担体を用いてGPC3タンパク質を検出することができる。抗体を感作する担体としては、不溶性で、非特異的な反応を起こさず、かつ安定である限り、いかなる担体を使用してもよい。例えば、ラテックス粒子、ベントナイト、コロジオン、カオリン、固定羊赤血球等を使用することができるが、ラテックス粒子を使用するのが好ましい。ラテックス粒子としては、例えば、ポリスチレンラテックス粒子、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス粒子、ポリビニルトルエンラテックス粒子等を使用することができるが、ポリスチレンラテックス粒子を使用するのが好ましい。感作した粒子を試料と混合し、一定時間攪拌する。試料中にGPC3タンパク質が高濃度で含まれるほど粒子の凝集度が大きくなるので、凝集を肉眼でみることによりGPC3タンパク質を検出することができる。また、凝集による濁度を分光光度計等により測定することによっても検出することが可能である。
本発明のGPC3タンパク質の検出方法の他の態様としては、例えば、表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを用いた方法を挙げることができる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーは蛋白質−蛋白質間の相互作用を微量の蛋白質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である。例えば、BIAcore(Biacore International AB社製)等のバイオセンサーを用いることにより抗GPC3抗体とGPC3タンパク質との結合をそれぞれ検出することが可能である。具体的には抗GPC3抗体を固定化したセンサーチップに、被検試料を接触させ抗GPC3抗体に結合するGPC3タンパク質を共鳴シグナルの変化としてそれぞれ検出することができる。
本発明の検出方法は、種々の自動検査装置を用いて自動化することもでき、一度に大量の試料について検査を行うことも可能である。
本発明は、肝癌の診断のための被検試料中のGPC3タンパク質を検出するための診断薬またはキットの提供をも目的とするが、該診断薬またはキットは少なくとも抗GPC3抗体を含む。該診断薬またはキットがELISA法等のEIA法に基づく場合は、抗体を固相化する担体を含んでいてもよく、抗体があらかじめ担体に結合していてもよい。該診断薬またはキットがラテックス等の担体を用いた凝集法に基づく場合は抗体が吸着した担体を含んでいてもよい。また、該キットは、適宜、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、試料を処理するための試薬等を含んでいてもよい。
本発明で用いられる抗GPC3抗体はGPC3タンパク質にそれぞれ特異的に結合すればよく、その由来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形状を問わない。具体的には、マウス抗体、ラット抗体、トリ抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの公知の抗体を用いることができる。抗体はポリクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体であることが好ましい。また、それら抗体は高感度で特異的な測定が可能であれば、市販されている抗体を使用してもよい。
支持体に固定される抗GPC3抗体と標識物質で標識される抗GPC3抗体はGPC3タンパク質の同じエピトープを認識してもよいが、異なるエピトープを認識することが好ましく、部位は特に制限されない。
本発明で使用される抗GPC3抗体は、公知の手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗GPC3抗体として、哺乳動物由来あるいはトリ由来モノクローナル抗体が好ましい。特に、哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものを含む。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、GPC3タンパク質を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。
まず、抗体取得の感作抗原として使用されるGPC3タンパク質を、GenBank番号 (NM_004484)に開示されたGPC3タンパク質の遺伝子/アミノ酸配列を発現することによって得る。または、Lage, H. et al., Gene 188 (1997), 151-156に開示されたGPC3(MXR7)遺伝子/アミノ酸配列を発現することによっても得ることができる。すなわち、GPC3タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子配列を公知の発現ベクター系に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿主細胞中または培養上清中から目的のGPC3タンパク質を公知の方法で精製する。また、天然のGPC3タンパク質を精製して用いることもできる。
次に、この精製GPC3タンパク質を感作抗原として用いる。あるいは、GPC3タンパク質の部分ペプチドを感作抗原として使用することもできる。この際、部分ペプチドはヒトGPC3タンパク質のアミノ酸配列より化学合成により得ることもできるし、ヒトGPC3遺伝子の一部を発現ベクターに組込んで得ることもでき、さらに天然のヒトGPC3タンパク質をタンパク質分解酵素により分解することによっても得ることができる。部分ペプチドとして用いるヒトGPC3タンパク質の部分および大きさは限られない。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはトリ、ウサギ、サル等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。特に分子量の小さい部分ペプチドを感作抗原として用いる場合には、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン等の担体蛋白質と結合させて免疫することが望ましい。
このように哺乳動物を免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immnol.(1979)123, 1548-1550)、 P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81, 1-7)、 NS-1 (Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976)6, 511-519)、MPC-11(Margulies. D.H. et al., Cell(1976)8, 405-415)、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature(1978)276, 269-270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods(1980)35, 1-21)、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med.(1978)148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature(1979)277, 131-133)等が好適に使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C.、Methods Enzymol.(1981)73, 3-46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、さらに所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度)を通常30〜60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成する。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングを行う。
また、ヒトGPC3タンパク質を認識する抗体の作製は国際公開公報WO 03/104453に記載された方法を用いて作製してもよい。
目的とする抗体のスクリーニングおよび単一クローニングは、公知の抗原抗体反応に基づくスクリーニング方法で行えばよい。例えば、ポリスチレン等でできたビーズや市販の96ウェルのマイクロタイタープレート等の担体に抗原を結合させ、ハイブリドーマの培養上清と反応させ、担体を洗浄した後に酵素標識二次抗体等を反応させることにより、培養上清中に感作抗原と反応する目的とする抗体が含まれるかどうか決定できる。目的とする抗体を産生するハイブリドーマを限界希釈法等によりクローニングすることができる。この際、抗原としては免疫に用いたものを用いればよい。
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitroで、GPC3タンパク質にそれぞれ感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、GPC3タンパク質への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるGPC3タンパク質を投与して抗GPC3抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からGPC3タンパクに対するヒト抗体をそれぞれ取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 94/25585号公報、WO 93/12227号公報、WO 92/03918号公報、WO 94/02602号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法に従い培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型のものを用いることができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur.J. Biochem.(1990)192, 767-775, 1990参照)。
具体的には、抗GPC3抗体を産生するそれぞれのハイブリドーマから、抗GPC3抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al., Biochemistry(1979)18, 5294-5299)、AGPC法(Chomczynski, P.et al., Anal. Biochem.(1987)162, 156-159)等により行って全RNAを調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia製)等を使用して目的のmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia製)を用いることによりmRNAを直接調製することもできる。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMVReverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等を用いて行う。また、cDNAの合成および増幅を行うには、5'-Ampli FINDER RACE Kit(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Frohman, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1988)85, 8998-9002、Belyavsky, A.et al., Nucleic Acids Res.(1989)17, 2919-2932)等を使用することができる。
得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAと連結する。さらに、これより組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。そして、目的とするDNAの塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認する。
目的とする抗GPC3抗体のV領域をコードするDNAをそれぞれ得たのち、これを、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。
本発明で使用される抗GPC3抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523 号公報参照)。
また、組換え型抗体の産生には上記宿主細胞だけではなく、トランスジェニック動物を使用することができる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギβ-カゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology(1994)12, 699-702)。
本発明で使用される抗体は、抗体の全体分子に限られず、GPC3タンパク質に結合する限り、抗体の断片またはその修飾物であってもよく、二価抗体も一価抗体も含まれる。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。具体的には、抗体を酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、または、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol.(1994)152, 2968-2976、Better, M. & Horwitz, A. H. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496, Academic Press, Inc.、Plueckthun, A. & Skerra, A. Methods in Enzymology(1989)178, 476-496, Academic Press, Inc.、Lamoyi, E., Methods in Enzymology(1989)121, 652-663、Rousseaux, J. et al., Methods in Enzymology(1989)121, 663-669、Bird, R. E. et al., TIBTECH(1991)9, 132-137参照)。
scFvは、抗体のH鎖V領域とL鎖V領域とを連結することにより得られる。このscFvにおいて、H鎖V領域とL鎖V領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1988)85, 5879-5883)。scFvにおけるH鎖V領域およびL鎖V領域は、本明細書に抗体として記載されたもののいずれの由来であってもよい。V領域を連結するペプチドリンカーとしては、例えばアミノ酸12〜19残基からなる任意の一本鎖ペプチドが用いられる。
scFvをコードするDNAは、前記抗体のH鎖またはH鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖またはL鎖V領域をコードするDNAのうち、それらの配列のうちの全部または所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を鋳型とし、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコードするDNA、およびその両端が各々H鎖、L鎖と連結されるように規定するプライマー対を組み合せて増幅することにより得られる。
また、一旦scFvをコードするDNAが作製されると、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いることにより、常法に従ってscFvを得ることができる。
これら抗体の断片は、前記と同様にしてその遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることができる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体の断片も包含される。
抗体の修飾物として、標識物質等の各種分子と結合した抗GPC3抗体を使用することもできる。本発明における「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。
さらに、本発明で使用される抗体は、二重特異性抗体(bispecific antibody)であってもよい。二重特異性抗体は分子上の異なるエピトープを認識する抗原結合部位を有する二重特異性抗体であってもよいし、一方の抗原結合部位がGPC3タンパク質を認識し、他方の抗原結合部位が標識物質等を認識してもよい。二重特異性抗体は2種類の抗体のHL対を結合させて作製することもできるし、異なるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを融合させて二重特異性抗体産生融合細胞を作製し、得ることもできる。さらに、遺伝子工学的手法により二重特異性抗体を作製することも可能である。
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現させる抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)等のウイルスプロモーター/エンハンサー、あるいはヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサー等が挙げられる。
SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合はMulliganらの方法(Nature(1979)277, 108)により、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合はMizushimaらの方法(Nucleic Acids Res.(1990)18, 5322)により、容易に遺伝子発現を行うことができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列および発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて当該遺伝子を発現させることができる。プロモーターとしては、例えばlacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合はWardらの方法(Nature(1098)341, 544-546 ; FASEBJ.(1992)6, 2422-2427)により、あるいはaraBプロモーターを使用する場合はBetterらの方法(Science(1988)240, 1041-1043)により発現することができる。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol.(1987)169, 4379)を使用すればよい。そして、ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して(refold)使用する。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは、選択マーカーとしてアミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の発現系、例えば真核細胞または原核細胞系を使用することができる。真核細胞としては、例えば樹立された哺乳類細胞系、昆虫細胞系、真糸状菌細胞および酵母細胞などの動物細胞等が挙げられ、原核細胞としては、例えば大腸菌細胞等の細菌細胞が挙げられる。
好ましくは、本発明で使用される抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
次に、形質転換された宿主細胞をin vitroまたはin vivoで培養して目的とする抗体を産生させる。宿主細胞の培養は公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
前記のように発現、産生された抗体は、細胞、宿主動物から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティーカラムを用いて行うことができる。例えば、プロテインAカラムを用いたカラムとして、Hyper D、POROS、Sepharose F.F.(Pharmacia製)等が挙げられる。その他、通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティーカラム以外のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies ALaboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
本発明で用いられるPIVKA-II測定系は、抗PIVKA-IIモノクローナル抗体を結合したビーズを固相とし、電気化学的変化で発光するルテニウム(Ru)錯体を標識とした抗プロトロンビンポリクローナル抗体を用いたサンドイッチ法による電気化学発光免疫学的測定法(ECLIA:Electro-chemiluminescence immunoassay)により被検試料中のPIVKA-II濃度(量)を測定する。市販のキットであるピコルミ(登録商標)PIVKA-II(三光純薬、エーザイ)を使用し、ピコルミPIVKA-II指定のプロトコールに従ってPIVKA-II濃度を測定することが好ましい。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<実施例1 AFPタンパク質、PIVKA-IIタンパク質およびGPC3タンパク質の測定系>
以下の測定系を用いた。
現在、AFP測定系に関しては多数の測定用キットが発売されているが、キット間の差は少ないことから、AFPの測定は、EAI法により行った。被験者の全血を30分間室温で静置した後、3,000rpmで10分間遠心を行い、得られた血清を検体とした。試薬は全て市販のキットであるEテスト「TOSOH」II-AFP(東ソー)を使用し、測定方法は「TOSOH」II-AFP指定のプロトコールに従った。測定機は全自動エンザイムイムノアッセイ装置AIA-1200(東ソー)を使用した。
PIVKA−IIの測定は以下記載の方法で実施した。
抗PIVKA-IIモノクローナル抗体結合ビーズ液の調整は、キットのバイアルに精製水3mLを加えて軽く振り混ぜ、20分間静置後、泡立てないように穏やかに振り混ぜて溶解した。ルテニウム標識抗プロトロンビンポリクローナル抗体液の調整は、バイアルに精製水25mLを加え、また、キャリブレーター液及び標準抗原液については、バイアルに精製水を1mL加えて泡立てることなく溶解した。次いで、被検試料数と同じ数の反応管全てに、キットに含まれる反応溶液を150μL、試料を50μLそれぞれ分注した。ブランク用の反応液およびキャリブレーターを、それぞれ2本の反応管に50μLずつ分注後、各反応管を測定機であるピコルミ8220(三光純薬)にセットし、自動的に試料中のPIVKA-II濃度を測定した。
具体的には、各反応管に抗PIVKA-IIモノクローナル抗体結合ビーズ液25mLを注入し、一定間隔で数秒間の撹拌を行いながら30℃±1℃で9分間の反応を行い、ビーズの洗浄を2回行った。洗浄は反応管に磁石を接近させて反応管壁にビーズを集めた後、反応管内の液を吸引除去し、各反応管にBF洗浄液を350μL注入し、撹拌することによって行った。各反応管に発光電解液を300mL注入し、ビーズをフローセル電極に導いて発光量を測定した。測定した発光量より、被検試料中のPIVKA-IIを算出した。ここで、用いる単位mAU/mLは、電気化学発光免疫測定法によって求められるものである。
GPC3の測定はPCT/JP2005/008194およびPCT/JP2005/18920に記載の測定系を用いた。
<実施例2 健常者におけるAFPおよびPIVKA-IIの基準値ならびにGPC3の血清中における平均値>
臨床検査ガイド2005〜2006(発行:株式会社文光堂、発行者:浅井宏祐)によれば、AFPの基準値は0.5〜10ng/mL(1ng/mL:0.83IU)、PIVKA-IIの基準値は28mAU/mL以下とされているので、本実施例においてAFP及びPIVKA-II測定系のそれぞれの仮のカットオフ値を10IU/mL、40mAU/mLとした。
一方で、GPC3測定系のカットオフ値には明確な基準値が定められていないので、本発明者らにより200名の健常者の血清中濃度を測定して、平均値を求め、これに基づき本実施例においての仮のカットオフ値とした。その結果は、平均値:0.09ng/mL、SD:0.06、CV値:0.6%であり、mean±2SD:0.21ng/mLであり、仮のカットオフ値を0.2ng/mLとした。
<実施例3 肝臓疾患患者のAFPタンパク質、PIVKA-IIタンパク質およびGPC3タンパク質の血清中濃度の測定>
肝臓疾患患者341名について、AFPタンパク、PIVKA-IIおよびGPC3の血清中濃度を測定した。肝臓疾患患者の打ち分けは、肝癌(HCC)患者187名、肝硬変(LC)患者77名(PIVKA-IIに関しては測定患者57名)慢性肝炎(CH)患者77名(PIVKA-II測定患者50名)であった。
測定結果を図1に示した。さらに、表1にGPC3、AFPおよびPIVKA-II測定系のカットオフ値をそれぞれGPC3≧0.2ng/mL、AFP≧10IU/mL、PIVKA-II≧40mAU/mLとし、該当する各疾患における患者数および割合(各疾患の総患者数を陽性率100%とする)を示した。
PIVKA-II測定系は肝硬変患者に対し特異度が高いが、CHグループで高率に陽性が認められる。この陽性者8名全てがアルコール性肝障害であることから注意を要する。さらに感度が低いことから、肝癌の診断漏れが危惧される。
一方、GPC3測定系およびAFP測定系は感度が高いものの、特異度において劣っていた。すなわち、肝癌の診断において診断漏れは少ないが、肝癌でないのに肝癌と診断される恐れがあることを意味する。反面、まだ肝癌に至ってない肝臓疾患患者を経時的にモニターすることにより、肝癌発症を早期に診断できることを意味している。
Figure 2007192557
さらに、実施例3のGPC3およびAFPの測定値について図2および3を作成した。すなわち、アルコール性肝炎(CH)患者、C型肝硬変(LC)患者、B型肝硬変(LC)患者および肝癌(HCC)患者におけるカットオフ値と陽性率との関係を検討した。
図2に示すように、GPC3測定系においては、アルコール性CH患者およびB型LC患者はHCC患者と異なるパターンを示したが、C型LC患者とHCC患者はほぼ一致したパターンを示した。この結果は、アルコール性CH患者およびB型LC患者とHCC患者の判別は低いカットオフ値で可能であるが、C型LC患者とHCC患者を判別するには血清中GPC3のカットオフ値を高い値に設定する必要があることを意味している。一方で、C型肝炎と診断された患者の血清中GPC3濃度を経時的に測定することにより、重篤化をモニターできることを意味している。
図3に示すように、AFP測定系においては、アルコール性CH患者、B型LC患者、およびC型LC患者の全てにおいてHCC患者と異なるパターンを示した。すなわち、AFP測定系に関しては、HCC患者を比較的低いカットオフ値を設定することによりアルコール性肝炎、B型肝硬変、およびC型肝硬変の肝疾患の患者と判別できることを意味している。一方で、C型肝癌への重篤化をモニターすることが困難であることを意味している。
つまり、GPC3測定系において、少なくともカットオフ値GPC3≧0.4ng/mL、好ましくはGPC3≧0.5〜0.6ng/mL、特にGPC3≧0.7ng/mLと設定することにより、C型肝硬変もしくは肝癌の患者をアルコール性肝炎およびB型肝硬変と区別し、肝癌に進行(重篤化)しているC型肝硬変または肝癌と診断(判定)することができる。さらに、肝癌患者はカットオフ値GPC3≧0.9ng/mLと設定することによりC型肝硬変患者とほぼ区別し、肝癌患者と診断(判定)することができることを意味している。
<実施例4 C型肝炎患者の血清中GPC3濃度の経時的変化>
図2の結果から、1例ではあるが、肝癌発症前に採血された血清についてGPC3濃度を測定した。その結果、図4に示すように経時的に血清中GPC3濃度が上昇していることが明らかとなった。
このことは、C型肝硬変以前のC型肝炎(CH)患者の場合には、カットオフ値GPC3≧0.2ng/mLと低く設定しC型LC患者偽陽性とした上でGPC3濃度を年経時的変化を観察しGPC3高値となった段階で、C型LC患者若しくはC型HCC患者の可能性があり、GPC3≧0.7ng/mLで肝癌と診断(判定)することができることを意味している。
<実施例5 偽陽性率の減少を目的としたカットオフ値の設定>
実施例3で示したように、カットオフ値をGPC3≧0.2ng/mLおよびAFP≧10IU/mLと設定した場合は感度において優れるものの特異度で劣る。一方、PIVKA-II≧40mAU/mLと設定した場合では、特異度に優れるものの感度で劣る。これら三つの測定系(腫瘍マーカー)の長所を活かして、肝癌の診断の精度を上げることを検討した。
先ず、GPC3測定系およびAFP測定系の特異度を上げるためにカットオフ値の設定を上げることを試みた。表2に示すように、GPC3測定系については0.2から順次、0.4、0.6、0.7、0.8ng/mLまでカットオフ値の設定を上げた場合、特異度が順次、上昇した。カットオフ値GPC3≧0.7ng/mLと設定した場合、PIVKA-II測定系のカットオフ値PIVKA-II≧40mAU/mLにおけるLC患者陽性率とほぼ同等となった。一方、AFP測定系のAFP≧40IU/mLとカットオフ値を設定した場合、PIVKA-II≧40mAU/mLにおけるLC患者陽性率とほぼ同等となった。
Figure 2007192557
<実施例6 特異性の検討>
GPC3測定系ではGPC3≧0.7ng/mL、AFP測定系ではAFP≧40IU/mL、およびPIVKA-II測定系ではPIVKA-II≧40mAU/mLのカットオフ値に設定した場合に、各測定系(腫瘍マーカー)において重複せずに単独で陽性を示す患者数を各疾患について求めた。
その結果、AFP測定系単独で陽性を示す患者数8名対しPIVKA-II測定系あるいはGPC3測定系ではそれぞれ18名および16名であった(表3)。このことは表3に示すようなカットオフ値を設定した場合、PIVKA-II測定系およびGPC3測定系はAFP測定系に比べ他の測定系(腫瘍マーカー)と重複しないで陽性を示す率が高いことを意味している。
さらに、表4にGPC3≧0.7ng/mL、AFP≧40IU/mL、PIVKA-II≧40mAU/mLのカットオフ値に設定した場合、二つの測定系(腫瘍マーカー)の組み合わせで両者が共に陽性となる患者数を求めた。
その結果は、カットオフ値GPC3≧0.7ng/mLおよびPIVKA-II≧40mAU/mLに設定したGPC3およびPIVKA-II測定系の組み合わせで両者が共に陽性を示す患者数(割合18.7%)が一番少なかった(表4)。このことは、他の各カットオフ値に設定した各測定系の組み合わせと比較して、このカットオフ値GPC3≧0.7ng/mLおよびPIVKA-II≧40mAU/mLに設定したGPC3およびPIVKA-II測定系の両者が重複して陽性となる場合が少ないことを意味している。
Figure 2007192557
Figure 2007192557
<実施例7 複数の肝癌マーカー同時測定による肝癌患者診断の改善(1)>
実施例6の結果からGPC3とPIVKA-II測定系を併用した測定が、HCC患者の感度および特異度の向上が推察される。このことから、それぞれのカットオフ値を設定し、各測定系を組み合わせることによって、HCC患者陽性率の改善および偽陽性率の縮小について検討し、GPC3とPIVKA-II測定系を併用した測定が、最適の組み合わせであるか否かを検討した。
カットオフ値をGPC3≧0.7ng/mLおよびPIVKA-II≧40mAU/mLと設定し、GPC3測定系とPIVKA−II測定系を併用し、いずれか1つが陽性である患者を表5に示した。両者の組み合せにより、LC患者の陽性数の増加が少ないうえに、HCC患者における感度が、それぞれ単独の測定系での感度が36.9%および47.6%から、63.6%と上昇した。
さらに、他の組み合わせによるHCC患者陽性率の改善および偽陽性率の縮小について、カットオフ値GPC3≧0.7ng/mLおよびAFP≧40IU/mLと設定し、いずれか1つが陽性である患者数を表6に示し、またカットオフ値PIVKA−II≧40mAU/mLおよびAFP≧40IU/mLの場合に、いずれか1つが陽性である患者数を表7に示した。
表6に示したGPC3とAFP測定系の併用の場合は、特異度の低下はGPC3とPIVKA-II併用と同様に僅かであるが、感度は54.5%と低いものであった。
この結果は、非特許文献1(Molecular Dignosis. 8(4):207-212, 2004)に、GPC3測定系とAFP測定系の単独測定の場合に、それぞれの感度が53%および59%に対し、同時測定により感度が82%に上昇したとの報告と異なる結果である。しかしながら、本発明者等の検討結果以外にも、臨床検査 vol.49、p1212、2005年11月には、カットオフ値AFP≧20ng/mLでのLC患者における陽性率は25%と記載され、特異度を重視する際にはAFP≧100ng/mLを提唱している報告もある。この非特許文献1の場合、HCC患者34名およびLC患者20名と小規模試験によること、カットオフ値AFP20ng/mLでの特異度を考慮すると、特異度および感度の両者が極めて高いとは考えられない。
また、表7に示したAFPとPIVKA-II測定系の併用の場合は、特異度および感度において表5に示したGPC3とPIVKA-II測定系の併用に比べ劣っていた。
これら結果から、実施例6に示したGPC3とPIVKA-II測定系の併用が最善であるという推定が正しいことが証明された。
Figure 2007192557
Figure 2007192557
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<実施例8 複数の肝癌マーカー同時測定による肝癌患者診断の改善(2)>
カットオフ値をそれぞれGPC3≧0.7ng/mL、PIVKA-II≧40mAU/mLおよびAFP≧40IU/mLと設定し、三つのマーカーを併用して測定した場合、重複せずいずれか1つが陽性である患者総数を求めた。表5に示したGPC3とPIVKA-II測定系の場合のHCC患者割合63.6%と比較すると、表8に示すように、三つの測定系によりHCC患者割合71.1%に感度が向上したが、LC患者における偽陽性が若干上昇する結果となった。
Figure 2007192557
<実施例9 複数の肝癌マーカー同時測定による肝癌患者診断の改善(3)>
GPC3測定系のav.+2SD=0.21ng/mLに対しカットオフ値GPC3≧0.7ng/mLならびにAFP測定系の基準値0.5〜10ng/mLに対しカットオフ値AFP≧40IU/mLと高い値に設定し、特異度および感度の向上を検討した。
一方で、カットオフ値0.2ng/mL≦GPC3<0.7ng/mL且つ10IU/mL≦AFP<40IU/mLでGPC3測定系およびAFP測定系共に陽性を示す患者について、特異度および感度の向上が可能か否か検討した。
先ず、表9に示すように0.2ng/mL≦GPC3<0.7ng/mL且つ10IU/mL≦AFP<40IU/mLで共に陽性である患者数を各疾患について求めた。
次いで、表6及び9の結果の患者数を合算し、表10を作成した。すなわち、GPC3≧0.7ng/mLまたはAFP≧40IU/mLの重複せずいずれか1つが陽性である患者数と0.2ng/mL≦GPC3<0.7ng/mL且つ10IU/mL≦AFP<40IU/mLで共に陽性である患者数の総数の和を求めた。その結果、表10に示すように、GPC3とPIVKA-II測定系併用と比較して若干の感度の向上が認められるものの、特異度において劣る結果であった。
Figure 2007192557
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<実施例10 肝臓疾患患者血清中のGPC3濃度のモニターと肝癌診断>
実施例4において、肝臓疾患患者の血清中のGPC3濃度が経時的に上昇し肝癌を発症した症例を示した。実施例3で示した疾患背景は不明であるが、肝癌(HCC)を発症した患者187名の血清中GPC3およびPIVKA-II濃度測定値を基に以下の解析を試みた。それら患者は肝癌が疑わしい肝疾患であり、肝臓疾患の症状を血清中GPC3濃度でモニターしていたと仮定した。
患者187名のうち、血清中のGPC3濃度が設定されたカットオフ値GPC3≧0.2ng/mLに該当する者が139名(74.3%)であり、これらの患者は肝癌の疑いが濃いと判定された。患者139名のうち、血清中のGPC3濃度が設定されたカットオフ値GPC3≧0.7ng/mLに該当する者は69名(36.9%)であり、これらの患者は肝癌と診断(判定)された。一方、残りの70名(37.4%)について、血清中のPIVKA-II濃度を測定した結果、設定されたカットオフ値PIVKA-II≧40mAU/mLに該当する者が29名(15.5%)であり、これらの患者は肝癌と診断(判定)された。0.2ng/mL≦GPC3<0.7ng/mL且つPIVKA-II<40mAU/mLに該当する患者については、血清中のGPC3濃度の経時的なモニターが必要と判定される。
すなわち、この解析結果は、肝癌が疑わしい肝疾患患者血清中のGPC3濃度を経時的にモニターすることにより、GPC3測定系のカットオフ値GPC3≧0.2ng/mLに該当する患者に、GPC3測定系単独(GPC3≧0.7ng/mL)又は併せてPIVKA-II測定系(0.2≦GPC3<0.7ng/mL且つPIVKA-II≧40mAU/mL)を用いれば、HCC患者の70.5%を高感度且つ特異度に優れて診断(判定)することができることを意味している。
肝臓疾患患者血清中GPC3、AFPおよびPIVKA-IIの濃度測定結果を示す。 アルコール性肝炎、C型肝硬変、B型肝硬変および肝癌患者血清中GPC3濃度におけるカットオフ値と陽性率との関係を示す。 アルコール性肝炎、C型肝硬変、B型肝硬変および肝癌における患者血清中AFP濃度におけるカットオフ値と陽性率との関係を示す。 C型肝炎患者の血清中GPC3濃度の経時的変化を示す。

Claims (10)

  1. C型肝炎患者における被検試料中のGPC3濃度を測定することを特徴とするC型肝炎患者の肝疾患の重篤化のモニター方法。
  2. GPC3濃度の測定が、被検試料のGPC3濃度を免疫学的方法により測定し、カットオフ値を設定し、カットオフ値以上となった場合に肝癌に重篤化しつつあるC型肝炎と判定するものである請求項1記載のモニター方法。
  3. 設定したカットオフ値が0.2ng/mLである請求項2記載のモニター方法。
  4. C型肝炎患者の被検試料中のGPC3濃度を測定することを特徴とする肝癌の診断方法。
  5. GPC3濃度の測定が、GPC3濃度を免疫学的方法により測定する場合、またはGPC3測定系に併せてPIVKA-II濃度を免疫学的方法により測定する場合、それぞれのカットオフ値を高値に設定するものである請求項4記載の診断方法。
  6. (a)GPC3測定系におけるカットオフ値をGPC3≧0.7ng/mLとし、GPC3濃度が該当する場合、または(b)GPC3測定系と併せて被検試料のPIVKA-II濃度を免疫学的方法により測定し、GPCおよびPIVKA-II測定系のカットオフ値をそれぞれ0.2≦GPC3<0.7ng/mLおよびPIVKA-II≧40mAU/mLとし、GPC3およびPIVKA-II濃度が共に該当する場合に、肝癌と判定する請求項5記載の診断方法。
  7. 肝癌を、慢性肝炎および肝硬変と区別して診断するものである、請求項4〜6のいずれか一項記載の診断方法。
  8. 免疫学的方法が、支持体に固定した抗体と標識物質で標識された抗体を用いた測定方法による請求項1〜7の何れか一項に記載の肝疾患の重篤化のモニター方法および肝癌の診断方法。
  9. 被検試料が、血液、血清または血漿である請求項1〜8の何れか一項に記載の肝疾患の重篤化のモニター方法および肝癌の診断方法。
  10. 抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である請求項1〜9の何れか一項に記載の肝疾患の重篤化のモニター方法および肝癌の診断方法。
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