JP2007191565A - インク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
Description
非吸水性の被記録媒体に対する記録に適するものとして、被記録媒体との接着性に優れた多官能モノマーを用いた紫外線硬化性インクが開発されたが、水分散型のインクのために乾燥が遅く、フルカラーの画像を形成するには不十分であった。乾燥性を解決するために、インクの溶剤として揮発性の有機溶剤を用いる方法が行われてきたが、急速に乾燥させるためにはメチルエチルケトン及びエタノールなど高度に引火性があり、さらに揮発性の高い溶剤を用いる必要があった。
そのため、酸素により重合の阻害を受けないカチオン重合を用いたインクが開示されている。例えば、特許文献5、6には、オキシラン、オキセタンを有する活性エネルギー線硬化型組成物が開示されているが、硬化性が十分ではなく、可とう性や密着性も不十分であった。また、特許文献6には、脂環式オキシランを用いた活性光線硬化型組成物が開示されているが、硬化性は比較的良好であるが、可とう性や密着性は不十分であり、また粘度の比較的高いため、改良が望まれていた。
[1]下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物を含有することを特徴とするインク組成物。
[2]前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物がポリ(1,3−シクロヘキサジエン)のエポキシ変性物であることを特徴とする[1]項に記載のインク組成物。
[3]光カチオン重合開始剤およびカチオン重合性化合物を含有し、前記重合物をインク組成物中の2質量%以上50質量%以下含有することを特徴とする[1]又は[2]項に記載のインク組成物。
[4]前記カチオン重合性化合物として、単官能のオキシラン化合物または単官能のオキセタン化合物を合わせて45質量%以上95質量%以下含有することを特徴とする[3]項に記載のインク組成物。
[5]インクジェット用であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載のインク組成物。
[6][1]〜[5]のいずれか1項に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録によって被記録媒体に画像を記録する画像記録工程と、前記画像記録工程において前記被記録媒体に記録された画像に活性エネルギー線を照射して硬化させる画像硬化工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
[7]前記活性エネルギー線の光源として発光ダイオードを用いることを特徴とする[6]項に記載のインクジェット記録方法。
[8][1]〜[5]のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて記録した記録物。
本発明によれば、硬化性、接着性、柔軟性、安定性が優れたインク組成物を提供することができる。またそのようなインク組成物を用いたインクジェット記録方法及び記録物を提供することができる。
本発明のインク組成物は、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物を含有することを特徴とする。また、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物に加えて、カチオン重合性化合物、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)、着色剤の他、安定化剤などの添加剤を含むことができる。この場合、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物とカチオン重合性化合物の総量は、インクの総量に対して70質量%以上99質量%以下が好ましく、75質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下が最も好ましい。前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物の含有量は任意に設定できるが、粘度や硬化性の観点から、インク組成物の総量の5質量%以上50質量%以下が好ましい。中でも前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物の一分子中におけるオキシラン基(エポキシ基)の平均の数(ホモポリマーの場合は数平均の重合度、共重合体の場合は数平均分子量と組成比より算出したオキシラン環の重合物1分子中のオキシラン数)をnとして表した場合、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物の含有量は、インク組成物の総量の2質量%以上200/n質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上150/n質量%以下であることが最も好ましい。
本発明で用いられる重合物は下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する。
前記一般式(I)中、R1はエポキシ基の1位及び2位の炭素と結合してシクロアルカンを形成するアルキレン基であり、他の繰り返し単位または末端官能基と結合する結合手を有する。アルキレン基の炭素数は3〜10が好ましく、4〜6がより好ましい。アルキレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、アリール基が挙げられる。
R2、R3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数が1以上5以下の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。R2、R3は水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
重合物中のそれぞれの繰り返し単位の平均数は任意に設定できるが、粘度の観点から重合物の繰り返し単位の合計数は2〜50であることが好ましく2〜20であることがより好ましい。前記一般式(I)で表される繰り返し単位の数は2〜50が好ましく、2〜20がより好ましい。
前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物と併用可能な他のカチオン重合性化合物としては、一般に知られているカチオン重合性基を有する化合物であれば、モノマー、オリゴマー、ポリマーの種を問わず使用することができる。カチオン重合性化合物としては、例えば、以下に例示する化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、公知のカチオン重合性化合物であれば問題なく使用することができる。また、カチオン重合性化合物は反応速度や、インク物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種または複数を混合して用いることができる。
また、オキシラン環含有化合物(オキシラン化合物、即ちエポキシ化合物)及びオキセタン環含有化合物(オキセタン化合物)は、一種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化速度と硬化度を向上させる観点から、それぞれ少なくとも1種のオキセタン化合物とオキシラン化合物とを併用することが好ましい。この場合、オキシラン化合物とオキセタン化合物の比率はそれぞれ10:90〜70:30が好ましく用いられる。この間に設定すると硬化性と硬化速度のバランスの良いインク組成物が得られる。
オキシラン化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
これらのオキシラン化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
またオキシラン化合物のうち官能基数が少ないものは、上述したように溶解性及び粘度の調整作用も同時に兼ね備えることができるため、好ましい。
本発明におけるオキセタン化合物としては、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526、同2001−310937、同2003−341217の各公報に記載されるような、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましく、上述したように、なかでもインク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個または2個有する化合物を使用することが好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
Ra2は、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられ、芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が、アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が、N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。
Ra5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF3)2、又は、C(CH3)2を表す。
Ra6は、炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基を表し、nは0〜2000の整数である。Ra7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。下記式中、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基であり、mは0〜100の整数である。
また本発明では更に硬化度を付与するためにビニルエーテル基を有する化合物を含有させてもよい。この場合、ビニルエーテル基を有する化合物は、硬化物の表面物性やインク組成物の溶解性の調整の観点からインク組成物中に1質量%〜20質量%の範囲で存在することができる。
本発明で用いられる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
スチレン誘導体としては、公知の化合物が用いられるが、ビニル基上の電子密度を向上させる観点から芳香環のp位およびo位の少なくとも一方が電子供与性官能基で置換されているスチレン誘導体が好ましく用いられる。ここで電子供与性官能基とは、Hammett則の置換基定数σ値が負となるものをいい、このような官能基としては、アミノ基、水酸基、アルコキシ基、アルキル基、などが挙げられる。中でも、重合中に活性末端と反応しにくいことから、アルコキシ基、アルキル基、ジメチルアミノ基が好ましく用いられる。
本発明のインク組成物には、放射線の照射により酸を発生する光カチオン重合開始剤(適宜、光酸発生剤とも称する)を含有する。本発明に用いうる光カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている光(400〜200nmの紫外線、遠紫外線、特に好ましくは、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光)、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどの照射により酸を発生する化合物を適宜選択して使用することができる。
X-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4 -、PF6 -、SbF6 -や以下に示す基などが挙げられ、好ましくはBF4 -、PF6 -、SbF6 -である。
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5の有機基として、好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基としては、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
化合物(b1−2)は、式(b1)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
R201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
R201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、より好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
R201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
R201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
R6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
R1c〜R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成してもよい。
Zc-は、非求核性アニオンを表し、式(b1)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
Rx及びRyは、2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
2−オキソアルキル基は、R1c〜R5cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
R204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
R204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
R206、R207及びR208は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
本発明に用いうる光カチオン重合開始剤の好ましい化合物例〔(b−1)〜(b−96)〕を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
特開2002−122994号公報、段落番号〔0037〕乃至〔0063〕に例示されるオニウム塩化合物、スルホネート系化合物も本発明に好適に使用しうる。
インク組成物中の(b)光酸発生剤の含有量は、インク組成物の全固形分換算で、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
本発明のインク組成物は増感色素を含有することができる。増感色素としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
増感色素は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、増感色素と重合開始剤とのインク組成物中における含有比としては、重合開始剤の分解率向上と照射した光の透過性の観点から、質量比で、重合開始剤/増感色素との値が、100〜0.01であることが好ましく、50〜0.02がより好ましく、10〜0.1が更に好ましい。
本発明においては、光カチオン重合開始剤による重合を効果的に進行させるために、カチオン性重合以外の重合の進行を禁止する重合禁止剤を併用することが好ましい。
適当な重合禁止剤としてはフェノール系水酸基含有化合物およびキノン類、N−オキシド化合物類、ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、ピロリジン 1−オキシル フリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、及びカチオン染料類からなる群より選択される化合物である。好ましい重合禁止剤としてはハロイドキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、レゾルシノール、カテコール、t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびその誘導体、ジ−t−ブチルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドおよびその誘導体等、ピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−マレイミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、4−ホスホノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル フリーラジカル、3−カルボキシ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン 1−オキシル フリーラジカル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、クリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット及びビクトリアピュアブルーBOH等が挙げられる。重合禁止剤の添加量は、組成物の全固形分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
本発明のインク組成物には、可視画像を形成させるために着色剤を好ましく添加することができる。
ここで用いることのできる着色剤には、特に制限はなく、用途に応じて公知の種々の色材、(顔料、染料)を適宜選択して用いることができる。例えば、耐候性に優れた画像を形成する場合には、顔料が好ましい。染料としては、重合性化合物に溶解し得る染料であれば、水溶性染料及び油溶性染料のいずれも使用できる。本発明において、画像または文字を形成するためには、本発明のインク組成物は、顔料又は油溶性染料を着色剤として含むものとすることが好ましい。
これらの着色剤はインク組成物中、0.5〜20質量%添加されることが好ましく、1〜15質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
(顔料)
顔料としては、特に限定されるものではなく、一般に市販されているすべての有機顔料及び無機顔料、または顔料を、分散媒として不溶性の樹脂等に分散させたもの、あるいは顔料表面に樹脂をグラフト化したもの等を用いることができる。また、樹脂粒子を染料で染色したもの等も用いることができる。
これらの顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger、「Industrial Organic Pigments」、特開2002−12607号公報、特開2002−188025号公報、特開2003−26978号公報、特開2003−342503号公報に記載の顔料が挙げられる。
オレンジ色を呈する顔料として、C.I.ピグメントオレンジ66(イソインドリンオレンジ)の如きイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ51(ジクロロピラントロンオレンジ)の如きアントラキノン系顔料が挙げられる。
白色顔料の具体例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3Pb(OH)2、いわゆるシルバーホワイト)、酸化亜鉛(ZnO、いわゆるジンクホワイト)、酸化チタン(TiO2、いわゆるチタンホワイト)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、いわゆるチタンストロンチウムホワイト)などが利用可能である。
顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリアクリレート、脂肪族多価カルボン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、顔料誘導体等を挙げることができる。また、Zeneca社のSolsperseシリーズなどの市販の高分子分散剤を用いることも好ましい。
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
顔料粒子の平均粒径は、0.08〜0.5μmであることが好ましく、最大粒径は10μm以下、好ましくは3μm以下となるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
次に、本発明における着色剤として好ましく使用される染料について述べる。
染料としては、従来公知の化合物(染料)から適宜選択して使用することができる。具体的には、特開2002−114930号公報の段落[0023]〜[0089]に記載されている染料などが挙げられる。
特に好ましいイエロー染料は、特開2004−250483号公報の段落番号[0034]に記載されている一般式(Y−II)〜(Y−IV)で表される染料であり、具体例として特開2004−250483号公報の段落番号[0060]〜[0071]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(Y−I)の油溶性染料はイエローのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いても良い。
マゼンタ染料としては、特開2002−114930号公報に記載の一般式(3)、(4)で表される構造の化合物が好ましく、具体例としては、特開2002−114930号公報の段落[0054]〜[0073]に記載の化合物が挙げられる。
特に好ましいマゼンタ染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0084]〜[0122]に記載されている一般式(M−1)〜(M−2)で表されるアゾ染料であり、具体例として特開2002−121414号公報の段落番号[0123]〜[0132]に記載の化合物が挙げられる。尚、該公報記載の一般式(3)、(4)、(M−1)〜(M−2)の油溶性染料はマゼンタのみでなく、ブラックインク、レッドインクなどのいかなる色のインクに用いても良い。
シアン染料としては、特開2001−181547号公報に記載の式(I)〜(IV)で表される染料、特開2002−121414号公報の段落番号[0063]〜[0078]に記載されている一般式(IV−1)〜(IV−4)で表される染料が好ましいものとして挙げられ、具体例として特開2001−181547号公報の段落番号[0052]〜[0066]、特開2002−121414号公報の段落番号[0079]〜[0081]に記載の化合物が挙げられる。特に好ましいシアン染料は、特開2002−121414号公報の段落番号[0133]〜[0196]に記載されている一般式(C−I)、(C−II)で表されるフタロシアニン染料であり、更に一般式(C−II)で表されるフタロシアニン染料が好ましい。この具体例としては、特開2002−121414号公報の段落番号[0198]〜[0201]に記載の化合物が挙げられる。尚、前記式(I)〜(IV)、(IV−1)〜(IV−4)、(C−I)、(C−II)の油溶性染料はシアンのみでなく、ブラックインクやグリーンインクなどのいかなる色のインクに用いても良い。
以下に、本発明のインク組成物に、必要に応じて含有可能な種々の添加剤について述べる。
〔紫外線吸収剤〕
得られる画像の耐候性向上、退色防止、ノズル固化防止の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。 添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成分の0.01〜5質量%である。5質量%を超える両の紫外線吸収剤を添加すると、硬化不良の問題が生じるため、好ましくない。
インク組成物の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.001〜1質量%程度である。
本発明のインク組成物には、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類、などが挙げられる。前記金属錯体系の褪色防止剤としては、ニッケル錯体、亜鉛錯体、などが挙げられ、具体的には、リサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのI〜J項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許文献に記載された化合物や、特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.001〜5質量%程度である。
本発明のインク組成物には、射出物性の制御を目的として、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などの導電性塩類を添加することができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.001〜1.0質量%程度である。
本発明のインク組成物には、被記録媒体との密着性を改良するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量はインク組成物全体に対し0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%の範囲である。
インク組成物には、膜物性を調整するため、各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、スチレン系重合体、アクリル系重合体、環状エーテル重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、スチレン系モノマー、アクリル系のモノマー、環状エーテルの共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、「環状エーテル基含有モノマー」、「ビニルエーテル基含有モノマー」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.01〜10.0質量%程度である。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、インク組成物の0.001〜5.0質量%程度である。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
このようにして調整された本発明のインク組成物は、インクジェット記録用インクとして好適に用いられる。本発明のインク組成物を用いてインクジェット記録する場合には、本発明のインク組成物を吐出するインクジェット記録によって被記録媒体に画像を記録する画像記録工程と、前記画像記録工程において前記被記録媒体に記録された画像に活性エネルギー線を照射して硬化させる画像硬化工程とを含む。画像硬化工程において活性エネルギー線を利用し、画像記録工程で被記録媒体に画像記録した後、記録された画像に活性エネルギー線を照射することによって、画像化に寄与する重合性化合物の重合硬化が進行し、良好に硬化され堅牢性の高い画像を形成することができる。
本発明のインク組成物を用いて得られた記録物は、画像部が紫外線などの放射線照射により硬化しており、画像部の強度に優れるため、インクによる画像形成以外にも、例えば、平版印刷版のインク受容層(画像部)の形成など、種々の用途に使用しうる。
メタルハライドランプを用いる場合、ランプは10〜1000W/cm2のものを使用し、メディア面で1mW/cm2〜100W/cm2の照度であることが好ましい。また露光エネルギーは、0.1mJ/cm2〜100J/cm2であることが好ましい。発光ダイオードを用いる場合、発光波長の最大値は250nm〜400nmであることが好ましく、発光ダイオードは1mW/cm2〜1000W/cm2であることが好ましく、メディア面で0.1mW/cm2〜100W/cm2の照度であることが好ましい。また、露光エネルギーは、0.1mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましい。
また、高圧放電を用いる水銀灯、メタルハライドランプ等では放電にともない、オゾンが発生するため、排気手段を有することが好ましい。排気手段は、インク吐出時に発生するインクミストの回収を兼ねるべく配置してあることが好適である。
ラジカル重合により硬化させる場合、酸素により重合が阻害されるため、酸素濃度の低い状態、すなわち窒素等のガス雰囲気下で露光させることにより低エネルギーで硬化させることができる。
これら、硬化させるための光等のエネルギーがインク吐出ノズルに照射されると、ノズル面表面に付着したインクミスト等が固化し、インク吐出の妨げとなる可能性があるため、ノズルへの照射を最小限にとどめるため、遮光等の措置を施すことが好ましい。具体的には、ノズルプレートへの照射を防止する隔壁を設ける、あるいは迷光を低減するべくメディアへの入射角を限定するための手段を設ける等が好適である。
インクを保持する手段としては、公知のインクカートリッジに充填することが好ましく、特開平5−16377号公報に開示されるように変形可能な容器に収納し、タンクとなすことも可能である。また特開平5−16382号公報に開示されるように、サブタンクを有するとインクをヘッドへの供給が更に安定する。また特開平8−174860号公報に開示されるように、インク供給室の圧力が低下した場合に、弁の移動によりインクを供給する形態のカートリッジを用いることも可能である。これらのインク保持手段でヘッド内のメニスカスを適切にたもつための負圧付与方法としては、インク保持手段の高さすなわち水頭圧による方法、またインク流路中にもうけたフィルタの毛細管力による方法、また、ポンプ等により圧力を制御する方法、また、特開昭50−74341号公報に開示されるようにインクをインク吸収体に保持し、この毛細管力により負圧を付与する方法等が適切である。
インクをこれらインク保持手段からヘッドに供給する方法として、ヘッドユニットに直接保持手段を連結する方法でもよいし、チューブ等の流路により連結する方法でもよい。これらインク保持手段および流路は、インクに対して良好な濡れ性を持つような素材であること、もしくは表面処理が施されていることが好ましい。
画像を形成するうえで、メディア上でのインク着弾径は10〜500μmの間にあることが好適であり、このためには吐出時のインク滴の直径は5〜250μmであることが好ましく、このときのノズル径は15〜100μmであることが好ましい。画像を形成するためには1インチあたりの画素数が50〜2400dpiであることが好ましく、そのためには、ヘッドのノズル密度は10〜2400dpiであることが好ましい。ここで、ヘッドのノズル密度は低くとも、メディアの搬送方向に対して傾ける、あるいは複数のヘッドユニットを相対的にずらして配置することにより、ノズル間隔の大きいヘッドで高密度の着弾を実現することが可能である。また上記のようにヘッドもしくはメディアの往復移動により、低ノズルピッチでヘッドが移動するごとにメディアを所定量搬送させ、インク滴を異なる位置に着弾させることにより、高密度の画像記録を実現することができる。
メディアへのインク打滴量としては、良好な階調を表現するためには0.05〜25g/m2の間で任意量に制御できることが好適であり、これを実現するためにヘッドからの吐出インク滴の大きさ、およびまたは数量を制御することが好ましい。
ヘッドとメディアの間隔に関しては、広すぎるとヘッドもしくはメディアの移動に伴う空気の流れでインク滴の飛翔が乱れ、着弾位置精度が低下する。逆に間隔が狭いと、メディアの凹凸、搬送機構に起因する振動等によりヘッドとメディアが接触する危険性があり、0.5〜2mm程度に維持されることが好ましい。
インクは単色であってもよいし、シアン、マゼンタ、イエローのカラーであってもよいし、さらにブラックを加えた4色、あるいはさらに特色と呼ばれるこれら以外の特定色のインクを用いてもよい。色材は、染料であってもよいし、顔料であってもよい。これらのインクの打滴順は、明度の低い順に着弾するように打滴させてもよいし、明度の高い順に着弾させてもよいし、画像記録品質上好適な順に打滴させることが好ましい。記録するべき画像信号は、たとえば特開平6−210905号公報に記載されるように、良好な色再現を得るべく信号処理を施すことが好ましい。
本発明のインク組成物は、公知の被記録媒体に好適に印字等の記録を行うことができる。
本発明のインク組成物を適用しうる被記録媒体としては、特に制限はなく、通常の普通紙、非コート紙、コート紙、インクジェット専用紙、電子写真共用紙などの紙類、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性樹脂材料あるいは、それをフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPS(延伸ポリスチレン)フィルム、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、ONy(二軸延伸ナイロン)フィルム、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム等を挙げることができる。その他、被記録媒体材料として使用しうるプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが挙げられる。また、金属類や、ガラス類、布帛、陶磁器等も被記録媒体として使用可能である。被記録材に関しては、特開2001−181549号公報、特開2001−279141号公報の段落番号(0228)〜(0246)に記載されているものも用いることができる。
重合性化合物、重合開始剤および着色剤を表1中の数量部(質量部)で攪拌混合し顔料インクを得た。
表1中の化合物はそれぞれ以下のとおりである。
*3:2官能カチオン重合性化合物。ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル(OXT−221、商品名、東亞合成社製)
*4:2官能カチオン重合性化合物。3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021A、商品名、ダイセルユーシービー社製)
*5:光カチオン重合開始剤。例示化合物(b−39)。トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム ヘキサフルオロホスフェイト
*6:増感色素:9,10−ジブトキシアントラセン(川崎化成工業社製)
*7:着色剤(顔料分散物)。ピグメントイエロー12を10g、高分子分散剤(Avecia社製、商品名、Solsprseシリーズ)5g、下記表1に記載の割合でカチオン重合性化合物および化−1〜3を混合した溶液200gを、顔料粒子の粒径が0.1〜0.2μmの範囲となるように、公知の分散装置を用いて分散させ、次いで、加熱フィルタろ過した。
ヘッドからのインク吐出は、ヘッドに付与されるピエゾ駆動信号により制御され、一滴あたり6〜42plの吐出が可能である。本実施例では、ヘッドの下1mmの位置でメディアを搬送しながらヘッドより打滴した。搬送速度は50〜200mm/sの範囲で設定可能である。またピエゾ駆動周波数は最大4.6kHzまでが可能であって、これらの設定により打滴量を制御することができる。本実施例では、搬送速度90mm/s、駆動周波数4.3kHzとすることにより、インク吐出量を制御し、最大23g/m2までの打滴を行った。
メディアを打滴した後、露光部に搬送し、紫外発光ダイオード(UV−LED)により露光した。本実施例ではUV−LEDは日亜化学製NCCU033(商品名)を用いた。本LEDは1チップから波長365nmの紫外光を出力するものであって、約500mAの電流を通電することにより、チップから約100mWの光が発光される。これを7mm間隔に複数個配列し、メディア表面で0.3W/cm2のパワーが得られる。打滴後露光されるまでの時間、および露光時間はメディアの搬送速度およびヘッドとLEDの搬送方向の距離により変更可能である。本実施例では着弾後、約0.5秒後に露光した。
メディアとの距離および搬送速度の設定に応じて、メディア上の露光エネルギーを0.01〜15J/cm2の間で調整することができる。なお、これら露光パワー、露光エネルギーの測定にはウシオ電機製スペクトロラディオメータURS−40D(商品名)を用い、波長220nm〜400nmの間を積分した値をもちいた。
調整したインクの25℃における粘度を東機産業製粘度計RE−80(商品名)を用いて測定した。粘度が15mPa.s以下のものをA、35mPa.s以下のものをB、35mPa.sを超えるものをCとして評価した。
(吐出安定性)
上記方法で、A4サイズにベタ印字をした場合に、最後までかすれがなく印字できたものをA、わずかに吐出ムラが生じたものをBとし、著しく吐出ムラが生じたものをCとして評価した。
(硬化性)
印字面をタックフリーテストにて評価した。べたつきが無く硬化するまでの照射光量が0.1J/cm2以下のものをA、0.1J/cm2を超え0.50J/cm2以下のものをB、0.50J/cm2を超えるものをCとして評価した。
(密着性)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(150μm厚)上にベタ印字した硬化皮膜に、碁盤目状にカッターで切れ目をいれた後、その表面に粘着テープを貼り付け、ついで、粘着テープを剥離した際の基材上の硬化皮膜の残存状態を目視観察した。剥離が見られない場合をA、一部剥離が見られた場合をB、著しく剥離がみられた場合をC、硬化が不十分で評価できないものをDとして評価した。
(インク安定性)
調整したインク1gを直径5mlの試験管に入れ、室温で2週間静置したが、いずれも沈降はみられなかった。
(可とう性)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(150μm厚)上に10μm厚にベタ印字した硬化皮膜を未塗面が合わさる用に180度折り曲げた場合の折り曲げ部に剥がれや割れがまったく生じないものをA、剥がれは生じないが、割れが見られるものをB、割れと剥がれが生じたものをC、硬化が不十分で評価できないものをDとして評価した。
(カール)
10cm正方のポリ塩化ビニルフィルム(50μm厚)の中央に8cm正方、10μm厚のパターンをベタ印刷し、室温で2時間乾燥後にサンプルのカールを測定した。サンプルを水平な台に静置した際の、四隅の水平面からの高さの和が2cm未満のものをA、2cm以上5cm未満のものをB、5cm以上のものをCとして評価した。尚、硬化が不十分なものはDと評価した。
Claims (8)
- 前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する重合物がポリ(1,3−シクロヘキサジエン)のエポキシ変性物であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
- 光カチオン重合開始剤およびカチオン重合性化合物を含有し、前記重合物をインク組成物中の2質量%以上50質量%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載のインク組成物。
- 前記カチオン重合性化合物として、単官能のオキシラン化合物または単官能のオキセタン化合物を合わせて45質量%以上95質量%以下含有することを特徴とする請求項3に記載のインク組成物。
- インクジェット用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインク組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録によって被記録媒体に画像を記録する画像記録工程と、前記画像記録工程において前記被記録媒体に記録された画像に活性エネルギー線を照射して硬化させる画像硬化工程と、を含むことを特徴とするインクジェット記録方法。
- 前記活性エネルギー線の光源として発光ダイオードを用いることを特徴とする請求項6記載のインクジェット記録方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインク組成物を用いて記録した記録物。
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