JP2007184141A - 電解質膜−電極接合体およびその製造方法 - Google Patents

電解質膜−電極接合体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電解質膜と触媒層との接着性(接合性)を向上させることにより優れた耐久性を有する電解質膜−電極接合体を提供する。
【解決手段】電解質膜2と、この電解質膜2の両面に配置されたカソード触媒層及びアノード触媒層とを有する電解質膜−電極接合体において、少なくとも一方の触媒層1との接合する電解質膜2に、触媒層1中に含まれる触媒成分が入ることのできる凹部を有する粗面形状が形成されてなることを特徴とする、電解質膜−電極接合体。
【選択図】図1

Description

本発明は、電解質膜−電極接合体(以下、単に「MEA」とも記載する)、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体、その製造方法、及び当該電解質膜−電極接合体を使用してなる燃料電池に関するものである。特に、本発明は、電解質膜と触媒層との接合性に優れた電解質膜−電極接合体、特に燃料電池用電解質膜−電極接合体、その製造方法、及び当該電解質膜−電極接合体を使用してなる燃料電池に関するものである。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。
固体高分子型燃料電池では、以下のような電気化学的反応が進行する。まず、アノード側に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒成分により酸化され、プロトンおよび電子となる。次に、生成したプロトンは、電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに電極触媒層と接触している固体高分子電解質膜を通り、カソード側電極触媒層に達する。また、アノード側電極触媒層で生成した電子は、電極触媒層を構成している導電性担体、さらに電極触媒層の固体高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通してカソード側電極触媒層に達する。そして、カソード側電極触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する。燃料電池では、上述した電気化学的反応を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
また、固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、電解質膜−電極接合体をセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、固体高分子電解質膜が一対の電極触媒層により挟持されてなるものであり、場合によっては上記電極触媒層がさらに一対のガス拡散層により挟持されてなるものである。このような構成を有するMEAは、従来、導電性材料の表面に触媒成分を担持させた電極触媒及びプロトン伝導性を有するフッ素系ポリマー等の電解質を、水や低級アルコールの溶剤中に分散した触媒インクを高分子電解質膜に直接塗布した後、乾燥する直接塗布法や、このような触媒インクを、転写用台紙に塗布・乾燥して、電極触媒層を形成させた後、ホットプレスにより高分子電解質膜に電極触媒層を転写させる転写法により作製されている。
上記方法のうち、現在主流となっている転写法では、触媒層をホットプレスにより転写する場合、電解質膜に対して相溶性の悪い材料を触媒層に使用すると、電解質膜と触媒層間に良好な接着性が得られないという問題が生じる。このため、このような固体高分子膜を用いた燃料電池では、電極触媒層が電解質膜より剥がれるなどにより、電極触媒層と電解質膜間の接触抵抗が大きくなり、十分な発電特性が得られないという問題が生じる。また、電解質膜にガラス転移温度の高い材料を使用する場合には、充分な熱をかけなければ良好な接着性を得ることができず、このような高温での処理は触媒層、さらには電解質膜自体に対してもダメージを与えてしまうおそれがある。なお、上記と同様の問題は、直接電解質膜上に触媒インクを塗布する直接塗布法の場合にも生じうる。
上記問題を解消することを目的として、接着性に劣る電解質膜に高い接合性で触媒層を形成するために、電解質膜にガラス転移温度の低いポリマーを使用する方法が報告されている(特許文献1)。特許文献1によると、電解質膜中にガラス転移温度の低い材料を混ぜ込んでいるため、ガラス転移温度の低い材料が電極触媒層中の電解質と結着して、電解質膜から電極触媒層が剥離することを防止することができるというものである。
特開2004−335270号公報
しかしながら、特許文献1の方法によると、熱で溶けやすいポリマーを電解質膜中に使用しているため、このような膜を用いた燃料電池を搭載した自動車を実際に運転すると、全体の温度はかなり上昇する、すなわち、電解質膜の温度もかなり上がることになるが、このような状態になると、電解質膜中のポリマー(ガラス転移温度の低い材料)が再溶解して、膜強度を下げたり、イオン伝導度が低下したりという問題が生じる。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、電解質膜と触媒層との接着性(接合性)を向上させることにより優れた耐久性を有する電解質膜−電極接合体を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、電解質膜と触媒層とをしっかりとかつ容易に接合できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、電解質膜表面に、触媒成分が入ることのできる凹部を有する粗面形状を形成することによって、電解質膜と触媒層との間に良好な接着性を達成することができることを見出した。また、このような構成を有するMEAの製造方法についてさらに鋭意検討を行なった結果、粗面形状を有する部材と電解質膜を接触させた後、粗面形状を電解質膜に転写する;電解質膜表面に粗面付与物質を塗布した後、圧着する;または溶融若しくは溶解した電解質膜樹脂中に粗面付与物質を添加し、得られた混合液状物を溶媒除去あるいは樹脂硬化することによって、容易に粗面形状を電解質膜表面に形成することができることをも見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置されたカソード触媒層及びアノード触媒層を有する電解質膜−電極接合体において、少なくとも一方の触媒層と接合する電解質膜に、前記触媒層中に含まれる触媒成分が入ることのできる凹部を有する粗面形状が形成されてなることを特徴とする、電解質膜−電極接合体によって達成される。
本発明の他の目的は、電解質膜を粗面形状を有する部材と接触させ、前記粗面形状を電解質膜に転写することにより、電解質膜表面に粗面形状を形成する工程を有する、本発明の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法;電解質膜表面に粗面付与物質を塗布した後、圧着することにより、電解質膜表面に粗面形状を形成させ、その後に前記粗面付与物質を除去する工程を有する、本発明の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法;または溶解あるいは溶融した電解質膜樹脂中に粗面付与物質を添加し、これを溶媒除去あるいは樹脂硬化して膜状物を得た後、前記粗面付与物質を前記膜状物から除去する工程を有する、本発明の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法によって達成される。
本発明によれば、電解質膜−電極接合体は、電解質膜と触媒層との境界が優れた接着力で接合されているため、当該接合部分の耐久性が高い。したがって、本発明の電解質膜−電極接合体は、従来に比して高い耐久性能を発揮することができる。
また、本発明の方法によると、容易に電解質膜表面に粗面形状を形成することができるため、本発明の方法を用いると、電解質膜と触媒層とを非常に容易でかつ優れた接着力で接合することが可能である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第一は、電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置されたカソード触媒層及びアノード触媒層を有する電解質膜−電極接合体において、
少なくとも一方の触媒層と接合する電解質膜に、前記触媒層中に含まれる触媒成分が入ることのできる凹部を有する粗面形状が形成されてなることを特徴とする、電解質膜−電極接合体を提供する。
本発明によると、図1に示されるように、電解質膜2の表面に、触媒成分が入ることのできる大きさを有する凹部を有する粗面形状が形成されているため、触媒層1の凹凸形状と、電解質膜2の凸凹形状とをしっかりかみあった状態にすることができ、電解質膜は触媒層と高い接着力で接合することができる。また、MEAの厚み方向での強い接着力に加えて、触媒成分が電解質膜の凹部に入り込んでいるため、横方向の移動をも有意に抑制・防止できる。このため、本発明の電解質膜−電極接合体では、電極触媒層が電解質膜より剥がれるなどの現象が起こらず、電極触媒層と電解質膜との間の接触抵抗を小さく抑えることができ、十分な発電特性が達成できる。したがって、本発明の電解質膜−電極接合体は、従来に比して高い耐久性能を発揮することができる。
本発明では、電解質膜の少なくとも一方の触媒層との接合面に、触媒成分が入ることのできる大きさを有する凹部を有する粗面形状が形成されることが必須である。ここで、粗面形状は、十分な接合性が得られるように、十分数の触媒成分が入り込める凹部を有するものであれば、いずれの形状であってもよく、このため、膜の厚み方向での凹部の断面形状は、円形、略円形、半円形、楕円形、四角形などいずれでもよいが、触媒成分の形状に適合する形状であることが好ましい。
なお、本発明は、電解質膜中に形成された凹部に触媒成分が入ることが主要な特徴の一であるが、本明細書において、「電解質膜の凹部に触媒成分が入ることができる」とは、電解質膜表面に形成された凹部に触媒成分が完全に入り込む場合に加えて、全体の30体積%以上の触媒成分が凹部に入る場合をも含む。全体の30体積%以上の触媒成分が凹部に入っていれば、電解質膜と触媒層との十分な接合性(接着性)が達成できるからである。
また、本発明に係る粗面形状は、上述したように十分数の触媒成分が入り込める凹部が存在すればよいが、この際電解質膜表面に形成される凹部(粗面形状)は、例えば、以下のような形状であることが好ましい。すなわち、中心線平均粗さは、触媒成分を凹部にしっかりと保持して電解質膜と触媒層との十分な接合力(接着性)が確保できる値であれば特に制限されないが、0.1μm以上であってかつ電解質膜厚の1/5以下、より好ましくは0.1μm以上であってかつ電解質膜厚の1/10以下であることが好ましい。これは、例えば、電解質膜の厚みが50μmである際には、電解質膜と触媒層との接合面に形成される中心線平均粗さが好ましくは0.1〜10μmの範囲であることを意味する。このような範囲に入れば、本発明の電解質膜−電極接合体の物性は、電解質膜自身の耐久性を損なうことなく、かつ接合部分の良好な耐久性を保持することができる。なお、上記範囲において、電解質膜の中心線平均粗さが0.1μm未満であると、凹凸部による十分なアンカー効果が発揮されず、また、触媒成分の大きさに対して凹部が小さすぎて触媒成分が凹部に十分入り込めず、電解質膜と触媒層との十分な接合力(接着性)が確保できない可能性がある。逆に、電解質膜の中心線平均粗さが電解質膜厚の1/5を超える場合には、電解質膜中に形成される凹部が大きくなりすぎて、電解質膜の強度が著しく低下してしまう可能性がある。
なお、本明細書において、「中心線平均粗さ」は、電解質膜の表面の粗さ(凹凸状態)を表わす指標として使用され、すなわち、電解質膜に形成される凹凸部における、凸部の頂点と凹部の底の高さの平均高低差として定義され、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積をその長さで割った値(μm)である。
さらに、本発明において、電解質膜の凹凸部の平均間隔は、電解質膜と触媒層との十分な接合力(接着性)が確保できる値であれば特に制限されないが、0.1μm以上であってかつ電解質膜の厚み以下、より好ましくは0.1μm以上であってかつ電解質膜の厚みの1/10以下であることが好ましい。この際、凹凸部の平均間隔が0.1μm未満であると、凹部が過度に重なり合い、触媒成分が凹部内で移動して、凹凸部による十分なアンカー効果が発揮されず、電解質膜と触媒層との十分な接合力(接着性)が確保できない可能性がある。逆に、凹凸部の平均間隔が電解質膜の厚みを超える場合には、電解質膜中に形成される凹部の数が少なすぎて、十分量の触媒成分を凹部に配置することができず、やはり凹凸部による十分なアンカー効果が発揮されず、電解質膜と触媒層との十分な接合力(接着性)が確保できない可能性がある。なお、本明細書において、「凹凸部の平均間隔」もまた、電解質膜の表面の粗さ(凹凸状態)を表わす指標として使用され、すなわち、電解質膜に形成される隣接する凸部の中心線間の距離の平均値をして定義される。
本発明のMEAでは、電解質膜の少なくとも一方の触媒層との接合面に、触媒成分が入ることのできる凹部を有する粗面形状が形成されていればよいが、好ましくはカソード及びアノード双方の触媒層との接合面(即ち、電解質膜の両面)に粗面形状が形成されることが好ましい。
本発明のMEAに用いられる電解質膜としては、特に限定されず公知の高分子電解質からなる膜を用いることができるが、少なくとも高いプロトン伝導性を有する部材であればよい。この際使用できる高分子電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホン、ポリスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。
高分子電解質は、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
また、デュポン社製の各種のNafion(デュポン社登録商標)やフレミオンに代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている固体高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。または、上記電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸させたものを使用してもよい。
前記電解質膜の厚みは、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜100μmである。製膜時の強度やMEA作動時の耐久性の観点から5μm以上であることが好ましく、MEA作動時の出力特性の観点から300μm以下であることが好ましい。
本発明に係る電解質膜は、上述したように、膜表面に粗面形状が付与されているので、以下に詳述するように、当該膜上に触媒層が形成されると、触媒成分が当該粗面形状の凹部に入り込んだ状態で電解質膜と触媒層が密接に接合できるので、従来の平滑な電解質膜を使用した場合に比して、触媒層が電解質膜から剥離しにくい。また、膜の厚み方法及び膜面方向双方の移動が有意に抑制・防止できる。このため、本発明の電解質膜−電極接合体では、電極触媒層が電解質膜より剥がれるなどの現象を有意に抑制・防止でき、電極触媒層と電解質膜間の接触抵抗を小さく抑えることができ、十分な発電特性が達成できる。したがって、本発明の電解質膜−電極接合体は、従来に比して高い耐久性能を発揮することができる。
本発明において、電解質膜表面に粗面形状を形成する方法は特に制限されず、公知の粗面化方法が単独であるいは適宜組合わせてあるいは修飾して使用できるが、(ア)表面に凹凸加工が施してあるシート状物やフィルムなどを電解質膜上に置き、この凹凸形状を電解質膜に転写する方法;(イ)電解質膜表面に剛性微粒子等を塗布した後、これを金属板などに挟んで圧着する方法;(ウ)電解質膜用の樹脂を溶解または溶融し、この溶液または溶融物中に剛性微粒子等を入れた後、この混合物から溶媒を除去するまたは樹脂を硬化する方法などが好ましく使用できる。
したがって、本発明の第二は、電解質膜を粗面形状を有する部材と接触させ、前記粗面形状を電解質膜に転写することにより、電解質膜表面に粗面形状を形成する工程を有する、本発明の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法を提供するものである。
また、本発明の第三は、電解質膜表面に粗面付与物質を塗布した後、圧着することにより、電解質膜表面に粗面形状を形成させ、その後に前記粗面付与物質を除去する工程を有する、本発明の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明の第四は、溶解あるいは溶融した電解質膜樹脂中に粗面付与物質を添加し、これを溶媒除去あるいは樹脂硬化して膜状物を得た後、前記粗面付与物質を前記膜状物から除去する工程を有する、本発明の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法を提供するものである。
上記3種の方法のうち、本発明の第四の方法では粗面付与物質が電解質膜中に残ってしまう可能性があり、また、粗面形状の付与の容易さや実施容易性などを考慮すると、本発明の第二及び第三の方法が特に好ましく使用される。
以下、本発明の第二の方法を、図2を参照しながら、詳細に説明する。
本発明で使用できる粗面形状を有する部材は、粗面形状を電解質膜に転写することができるものであれば特に制限されないが、上記したような中心線平均粗さや凹凸部の平均間隔を有する凹凸部を膜に転写できるものであることが好ましい。具体的には、粉末を、樹脂と共に練り込んだ後、当該混錬物を延伸処理をすることによって、粉末部分以外の場所を引き伸して厚みを減少させ、粉末含有部分を凸状に成形する方法;酸化チタン等の不溶性微粒子を含むコロイド状塗料を表面に塗布することによって、表面を粗面化する方法など、公知の方法によって製造される部材が使用できる。前者の方法において、粉末としては、特に制限されないが、シリカ、ジルコニアなどが挙げられる。また、樹脂もまた、特に制限されないが、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、エポキシ系樹脂、多官能アクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが使用できる。この際、部材の形状は、いずれの形状でもよいが、電解質面と接触させることを考慮すると、シートやフィルム状であることが好ましい。なお、この際シートやフィルムの厚さは、粗面形状(特に中心線平均粗さ)、部材の材質や転写条件などによって異なり、特に限定されるものではない。部材の厚みは、好ましくは25〜200μm、より好ましくは50〜100μmである。また、部材の大きさは、電解質膜を完全に覆うものであれば特に制限されず、適宜選択できる。
または、本発明で使用できる粗面形状を有する部材は、市販品を使用してもよい。ここで使用できる市販品としては、テイジンテトロンシリーズのフィルム(登録商標、帝人デュポンフィルム(株)製)、例えば、テイジンテトロンU6フィルムなどが使用できる。
本発明で使用される粗面形状を有する部材の表面形状は、上記したような凹凸部(粗面形状)を電解質膜に転写できるものであれば制限されず、電解質膜に形成すべき所望の凹凸部(粗面形状)に従って、適宜選択・調整される。
本発明の第二の方法では、図2に示されるように、上記したような粗面形状を有する部材3を、電解質膜2表面上に置き、金属板4で挟んだ後、これを転写処理することによって、電解質膜に粗面形状を付与するものである。なお、図2では、電解質膜両面に粗面化処理を行っているが、上述したように、本発明は、電解質膜の少なくとも一方の面に粗面化処理を行なえばよく、この場合には、粗面化処理を行なうべき面のみについて、以下に詳述する処理を行なえばよい。この際、転写処理としては、特に制限されないが、プレス、ホットプレス、ロールラミネートなどが好ましく使用できる。これらのうち、電解質膜が柔軟になる温度まで加熱して圧着するホットプレス法が特に好ましい。この際、ホットプレス条件は、電解質膜上に十分粗面形状が転写できる条件であれば特に制限されず、使用される電解質膜や粗面形状を有する部材の材質や厚みなどによって異なる。具体的には、ホットプレス温度は、加熱の際に好ましい温度は膜の材質により異なるが、圧着時に電解質膜が、軟化、半溶融または溶融状態となり、かつ分解温度より低い温度であることが好ましい。但し、分解温度以上であっても圧着工程が極めて短時間である場合は差し支えない。より具体的には、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるフッ素系電解質膜の場合、100〜180℃、より好ましくは130〜150℃で、電解質膜面に対して1〜10MPa、より好ましくは2〜5MPaのプレス圧力で、1〜30分間、より好ましくは3〜10分間、ホットプレスを行なうことが好ましい。これにより粗面形状を有する部材の粗面形状が電解質膜に正確に転写することができる。なお、圧着の際には、電解質膜は、乾燥状態で使用されてもあるいは水や溶剤等により膨潤させた状態で行なってもよいが、好ましくは乾燥状態で使用される。また、圧着には、金属やセラミック等の硬質ロールを用いて熱圧着すると、電解質膜を凹凸にむらなく正確に転写(粗面化)でき、また、連続生産が容易にできる点で好ましい。
上記圧着が終了した後は、粗面形状を有する部材を膜から剥がすことによって、電解質膜に粗面形状を有する部材の凹凸が正確かつ精密に転写できる。
本発明の第二の方法によれば、簡単な方法でかつ短時間で、電解質膜表面に所望の凹凸形状を形成することが可能であり、粗面形状を有する部材の除去が非常に容易であるため、作業工程が非常に簡単であり、好ましい。また、粗面形状を有する部材の形状がそのまま膜に転写されるため、正確な粗面形状を容易に電解質膜に形成することができる。
次に、本発明の第三の方法を、図3を参照しながら、詳細に説明する。
上記方法によると、電解質膜2表面に粗面付与物質5を接触させて電解質膜表面に粗面形状を形成する。なお、図3では、電解質膜両面に粗面化処理を行っているが、上述したように、本発明は、電解質膜の少なくとも一方の面に粗面化処理を行なえばよく、この場合には、粗面化処理を行なうべき面のみについて、以下に詳述する処理を行なえばよい。
上記方法において、電解質膜2表面に粗面付与物質5を接触させる方法は、特に制限されず、所定量の粗面付与物質が電解質膜表面に被覆されるものであればよい。例えば、電解質膜表面に粗面付与物質を、必要であれば溶液に溶解、分散若しくは懸濁させ、これをスクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知方法によって塗布する方法などが使用できる。
また、上記方法で使用できる粗面付与物質は、圧着により電解質膜表面に粗面形状が形成できるものであれば特に制限されないが、剛性を有するものであることが好ましい。なお、この際「剛性」とは、ホットプレス等の圧着時に変形しない特性をいう。本発明による粗面形状(凹凸部)を正確にかつ簡単に形成することができるからである。この際使用できる粗面付与物質の材質は、圧着により電解質膜表面に粗面形状が形成できるものであれば特に制限されず、公知の材料が使用できるが、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉄等の金属、上記したような金属を含む合金、アルミナ、ジルコニア、酸化銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化鉄等の上記したような金属の酸化物などの金属材料;ポリプロピレン、ポリウレア、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル系樹脂などの汎用剛性プラスチック類;フッ素樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリイミドなどのエンジニアリングプラスチック類;タルク、クレー、カーボンブラック、シリカ、ガラス粉、マイカなどの無機材料;セラミック繊維、ロックウール、ガラス繊維、カーボン繊維、炭化珪素やアルミナなどのウィスカ、ポリアミド繊維、アラミド繊維などの無機または有機の繊維などが挙げられる。これらのうち、粗面形状の形成のしやすさや後工程での除去のしやすさなどを考慮すると、金属材料、特に剛性のある金属材料であることが好ましく、特に、アルミナ、ジルコニア、シリカが好ましく使用される。
本発明において、粗面付与物質の形状は、触媒成分が入ることのできる大きさを有するものであればいずれの形状であってもよく、触媒成分の形状によって適宜選択される。具体的には、粒子状、略粒子状、円柱状、円錐台状、角柱状、角錐台状、フィラメント状などが使用できる。これらのうち、触媒成分が粒状であることが好ましいことから、粗面付与物質の形状もまた、粒子、特に微粒子であることが好ましい。粗面付与物質が粒子/微粒子状である場合の粒子の大きさは、触媒成分が入ることのできる大きさであればよく、触媒層に使用される触媒成分の大きさによって適宜選択されるが、好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.1〜0.5μmの粒径を有する。
この際、電解質膜表面に塗布される粗面付与物質の量は、特に制限されず、電解質膜上に形成される粗面形状によって適宜選択されるが、通常、電解質膜上に粗面付与物質(特に剛性微粒子)を隙間なく敷き詰めることが好ましい。
上記本発明の第三の方法では、次に、図3において、このようにして表面に粗面付与物質5が塗布された電解質膜2を金属板4に挟んで、圧着することにより、電解質膜表面に粗面形状を形成させるが、この際の圧着条件は、電解質膜上に十分粗面形状が形成される条件であれば特に制限されず、使用される電解質膜の材質や厚みならびに粗面付与物質の材質などによって異なる。具体的には、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるフッ素系電解質膜の場合、100〜180℃、より好ましくは130〜150℃で、電解質膜面に対して1〜10MPa、より好ましくは2〜5MPaのプレス圧力で、1〜30分間、より好ましくは3〜10分間、ホットプレスを行なうことが好ましく使用される。これにより粗面付与物質の形状を電解質膜に正確に転写することができる。なお、圧着の際には、電解質膜は、乾燥状態で使用されてもあるいは水や溶剤等により膨潤させた状態で行なってもよいが、好ましくは乾燥状態で使用される。また、圧着には、金属やセラミック等の硬質ロールを用いて熱圧着すると、電解質膜を凹凸にむらなく正確に転写(粗面化)でき、また、連続生産が容易にできる点で好ましい。なお、上記方法では、金属板の間に表面に粗面付与物質が塗布された電解質膜を直接配置してホットプレスを行なう方法を記載したが、金属板と粗面付与物質塗布面の間にテフロン(登録商標)シートなどをさらに挟んで上記粗面化処理を行なってもよい。このようにテフロン(登録商標)シートを用いることによって、粗面付与物質が電解質膜内に完全に埋没することなく、所望の形状の凹部を形成することができるため、好ましい。
上記圧着工程後、上記粗面化処理された電解質膜から粗面付与物質を除去する。これによって、電解質膜表面から粗面付与物質が除去されて、膜表面に所望の粗面化形状が効率よく得られる。この際使用できる電解質膜から粗面付与物質を除去する方法は、特に制限されないが、例えば、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールなどの溶媒で、膜表面を洗浄した後、膜を乾燥させる方法;膜を強く振動させたり、超音波処理することなどにより、物理的に粗面付与物質を除去する方法;水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールなどの溶媒で膨潤させて、粗面付与物質を膜から押し出した後、膜を乾燥させる方法などが使用できる。この際、粗面付与物質が、膜に塗布した粗面付与物質の全質量に対して、99質量%以上除去するまで、上記除去工程を単独であるいは複数回繰り返してあるいは上記除去工程を複数組合わせて行なうことが好ましい。また、膜の乾燥方法もまた、特に制限されず、真空中/減圧下で乾燥するなどの、公知の電解質膜の乾燥方法が同様にして使用できる。
本発明の第三の方法によれば、簡単な方法でかつ短時間で、電解質膜表面に所望の凹凸形状を形成することが可能であり、また、粗面付与物質の形状を制御することによって、正確な粗面形状を容易に電解質膜に転写することができる。
次に、本発明の第四の方法を、図4を参照しながら、詳細に説明する。
本発明の第四の方法では、まず、溶解あるいは溶融した電解質膜樹脂中に粗面付与物質を添加する。この際使用される電解質膜樹脂は、上記した電解質の樹脂が使用される。また、粗面付与物質は、溶媒除去あるいは樹脂硬化後に電解質膜表面に粗面形状が形成できるものであれば特に制限されず、公知の材料が使用でき、具体的には、上記本発明の第三の方法に使用される粗面付与物質と同様のもの(材質、形状及び大きさを含む)が使用できるため、ここでは説明を省略する。好ましくは、粗面形状の形成のしやすさなどを考慮すると、金属材料、特に剛性のある金属材料であることが好ましく、特に、アルミナ、チタニア、ジルコニアが好ましく使用される。
電解質膜樹脂を溶解する場合に使用される溶媒は、電解質膜樹脂を溶解できるものであれば特に制限されないが、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)に代表されるフッ素系電解質膜の場合、エタノールやプロパノール等のアルコール、またはそれらと水の混合溶媒が好ましく使用される。この際の電解質膜樹脂の濃度は、次工程で添加される粗面付与物質との均一な混合が達成できる濃度であれば特に制限されないが、溶媒における電解質膜樹脂の濃度が3〜20質量%となるような濃度であることが好ましい。
または、上記方法では、電解質膜樹脂は溶融されていてもよい。この際の電解質樹脂の溶融温度は、電解質樹脂が十分溶融されて、次工程で添加される粗面付与物質と均一に混合できる位に液状を呈していればよく、選択される樹脂の種類によって適宜選択される。
次に、溶解あるいは溶融した電解質膜樹脂溶液を、粗面付与物質と混合する。この際、電解質膜表樹脂と粗面付与物質との混合比は、特に制限されず、電解質膜に形成される粗面形状によって適宜選択される。粗面付与物質が剛性微粒子である際の電解質膜樹脂と粗面付与物質との好ましい混合比(電解質膜樹脂:粗面付与物質の質量比)は、1:0.1〜1である。この際、混合条件は、電解質膜樹脂と粗面付与物質とが均一に混合できるような条件であれば特に限定されないが、具体的には、20〜40℃で、3〜10分間、300〜500rpmの速度で攪拌する方法などが使用できる。
さらに、均一な混合溶液から溶媒を除去するまたは均一な樹脂溶融液を硬化させて、膜状に成形して、本発明に係る電解質膜を得る。前者の工程において、溶媒の除去条件は、樹脂−粗面付与物質溶液から溶媒が十分量(好ましくは完全に)除去できる条件であれば特に制限されず、使用される溶媒の種類によって適宜選択される。また、除去方法も、真空/減圧下での蒸発など、一般的に使用されている溶媒除去方法が適用でき、特に制限されるものではない。また、後者の工程においても、樹脂溶融液の硬化条件は、溶融液が膜状に硬化する条件であれば特に制限されず、樹脂の種類などによって適宜選択される。当該工程によって、樹脂−粗面付与物質または樹脂−粗面付与物質溶融液から、膜状物が形成できる。
上記工程終了後、膜状物から粗面付与物質を除去する。これによって、少なくとも電解質膜表面から粗面付与物質が除去されて、膜表面に所望の粗面化形状が効率よく得られる。この際使用できる電解質膜から粗面付与物質を除去する方法は、特に制限されないが、例えば、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールなどの溶媒で、膜表面を洗浄した後、膜を乾燥させる方法;膜を強く振動させたり、超音波処理することなどにより、物理的に粗面付与物質を除去する方法;水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールなどの溶媒で膨潤させて、粗面付与物質を膜から押し出した後、膜を乾燥させる方法などが使用できる。この際、粗面付与物質が、膜に塗布した粗面付与物質の全質量に対して、99質量%以上除去するまで、上記除去工程を単独であるいは複数回繰り返してあるいは上記除去工程を複数組合わせて行なうことが好ましい。
本発明の第四の方法によれば、簡単な方法でかつ短時間で、電解質膜表面に所望の凹凸形状を形成することが可能であり、また、粗面付与物質の形状を制御することによって、正確な粗面形状を容易に電解質膜に転写することができる。
上記本発明の方法によれば、粗面形状を有する電解質膜が、非常に容易にかつ所望の凹凸形状を正確にかつ高い精密度で付与されて、製造することができる。また、上記本発明の第一で述べたように、本発明の方法で製造された電解質膜は、膜表面に粗面形状が付与されているので、以下に詳述するように、当該膜上に触媒層が形成されると、触媒成分が当該粗面形状の凹部に入り込んだ状態で電解質膜と触媒層が、従来の平滑な電解質膜を使用した場合に比して、強い接着力で接合することができる。また、特に横方向の移動が有意に抑制・防止できる。したがって、本発明の電解質膜−電極接合体は、電解質膜からの触媒層の剥離を有意に抑制・防止することができるため、電極触媒層と電解質膜間の接触抵抗を小さく抑えることができ、十分な発電特性が達成できる。このため、本発明の電解質膜−電極接合体は、従来に比して高い耐久性能を発揮することができる。
本発明に係る電解質膜を用いて本発明のMEAを製造する方法は、上記電解質膜を使用する以外は、従来公知の方法がそのまま適用でき、直接塗布法及び転写法のいずれも適用できる。
以下、本発明に係る電解質膜を用いて転写法により本発明のMEAを製造する好ましい方法について詳述する。
まず、触媒インクを調製し、この触媒インクを転写用台紙上に塗布・乾燥して、転写用台紙上に触媒層を形成した転写シートを得る。次に、この転写シート2枚(アノード用及びカソード用)で、本発明に係る電解質膜をはさみ、当該積層についてホットプレスを行なった後、転写用台紙を剥がすことにより、触媒層と電解質膜とからなるMEAを得ることができる。
上記方法で使用される触媒インクは、溶媒、電解質、及び触媒成分を含む。カソード触媒層に用いられる触媒成分は、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層に用いられる触媒成分もまた、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。カソード触媒をして合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、カソード触媒層に用いられる触媒成分及びアノード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択できる。以下の説明では、特記しない限り、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義であり、一括して、「触媒成分」と称する。しかしながら、カソード触媒層及びアノード触媒層用の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択される。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒インクに用いられる触媒粒子の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。従って、触媒インクに含まれる触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。
本発明において、上述した触媒粒子は導電性担体に担持された電極触媒として触媒インクに含まれる。
前記導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであるのが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が、20m/g未満であると前記導電性担体への触媒成分および高分子電解質の分散性が低下して十分な発電性能が得られないおそれがあり、1600m/gを超えると触媒成分および高分子電解質の有効利用率が却って低下するおそれがある。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点から、平均粒子径を5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒成分の導電性担体上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下するおそれがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下して所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
本発明のカソード触媒層/アノード触媒層(以下、単に「触媒層」とも称する)には、電極触媒の他に、高分子電解質が含まれる。前記高分子電解質としては、特に限定されず、上記電解質膜に用いたものと同様の高分子電解質が使用できる。前記電解質膜に用いられる高分子電解質と、各触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各触媒層と電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
また、導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
本発明の方法では、上記したような電極触媒、高分子電解質及び溶剤を含む触媒インクを、転写用台紙に塗布することによって、触媒層が形成される。この際、溶剤としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶剤が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。また、溶剤の使用量もまた、特に制限されず公知と同様の量が使用できるが、触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30質量%、より好ましくは9〜20質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒インクは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒インクが転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などが挙げられる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全質量に対して、好ましくは5〜20質量%である。
本発明の触媒インクは、電極触媒、電解質及び溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されない。例えば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱・攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁された後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクを、転写用台紙上に塗布して、各触媒層が形成される。この際、高分子電解質膜上へのカソード/アノード触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが5〜20μmになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
上記方法において、転写用台紙としては、特に制限されず、トラフルオロエチレン)シート、PET(ポリエチレンテレフタレート)シート等の、ポリエステルシートなどの公知のシートが使用できる。なお、転写用台紙は、使用する触媒インク(特にインク中のカーボン等の導電性担体)の種類に応じて適宜選択される。また、上記工程において、触媒層の厚みは、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)の触媒作用が十分発揮できる厚みであれば特に制限されず、従来と同様の厚みが使用できる。具体的には、触媒層の厚みは、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。また、転写用台紙上への触媒インクの塗布方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、あるいはスプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、塗布された触媒層の乾燥条件もまた、触媒層から極性溶媒を完全に除去できる条件であれば特に制限されない。具体的には、触媒インクの塗布層(触媒層)を真空乾燥機内にて、好ましくは室温〜100℃、より好ましくは50〜80℃で、好ましくは30〜60分間、乾燥する。この際、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。
次に、このようにして作製された触媒層2枚で電解質膜を挟持した後、当該積層についてホットプレスを行なう。この際、ホットプレス条件は、触媒層及び電解質膜が十分密接に接合できる条件であれば特に制限されないが、100〜200℃、より好ましくは110〜170℃で、電極面に対して1〜5MPaのプレス圧力で行なうのが好ましい。これにより高分子電解質膜と触媒層との接合性を高めることができる。ホットプレスを行なった後、転写用台紙を剥がすことにより、触媒層と高分子電解質膜とからなるMEAを得ることができる。
なお、上記では、転写法により、電解質膜にアノード/カソード触媒層を形成する方法について述べてきたが、本発明のMEAは、電解質膜へ直接触媒インクを印刷する直接塗布法などの他の方法によって製造されてもよい。
なお、本発明によるMEAは、下記に詳述されるように、一般的にガス拡散層をさらに有してもよく、この際、ガス拡散層は、上記方法において、転写用台紙を剥がし、得られた接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、触媒層と電解質膜との接合後にさらに各触媒層に接合することが好ましい。または、触媒層を予めガス拡散層表面上に形成して触媒層−ガス拡散層接合体を製造した後、上記したのと同様にして、この触媒層−ガス拡散層接合体で電解質膜をホットプレスにより挟持・接合することもまた好ましい。
この際、MEAに用いられるガス拡散層としては、特に限定されず公知のものが同様にして使用でき、例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。前記基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。厚さが、30μm未満であると十分な機械的強度などが得られないおそれがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
触媒層をガス拡散層表面上に形成する方法は、特に制限されず、スクリーン印刷法、沈積法、スプレー法などの公知の方法が同様にして適用できる。また、触媒層のガス拡散層表面上への形成条件は、特に制限されず、上記したような具体的な形成方法によって従来と同様の条件が適用できる。
前記ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、前記基材に撥水剤を含ませることが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、前記ガス拡散層は、前記基材上に撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層を有するものであってもよい。
前記カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。前記カーボン粒子の粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
前記カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、前記基材に用いられる上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
前記カーボン粒子層における、カーボン粒子と撥水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られないおそれがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られないおそれがある。これらを考慮して、カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、質量比で、90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤との質量比)程度とするのがよい。
前記カーボン粒子層の厚さは、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
ガス拡散層に撥水剤を含有させる場合には、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、ガス拡散層に用いられる基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。
ガス拡散層において基材上にカーボン粒子層を形成する場合には、カーボン粒子、撥水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製し、前記スラリーを基材上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを前記ガス拡散層上に塗布する方法などを用いればよい。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。
なお、触媒層と電解質膜と、及び好ましくはガス拡散層を含む接合体の製造方法は、上述した方法に限定されない。すなわち、触媒インクを電解質膜上に塗布・乾燥させた後ホットプレスして、触媒層を固体電解質膜と接合し、得られた接合体をガス拡散層で挟持して、MEAとする方法;触媒インクを、前記ガス拡散層上に塗布・乾燥させて触媒層を形成し、これを電解質膜とホットプレスにより接合する方法、などであってもよく各種公知技術を適宜用いて行えばよい。
本発明の電解質膜−電極接合体及び本発明の方法によって製造される電解質膜−電極接合体は、上述した通り、触媒担体として用いられるカーボン担体の腐食、および、電解質膜−電極接合体に含まれる電解質成分の劣化を抑制することが可能となる。また、ガスケット層を設けることにより、触媒層の面積および配置を容易に決定することが可能となり、各触媒層を予め正確に位置合わせしなければいけない必要がないため、工業的な大量生産を考慮すると非常に望ましい。したがって、かような電解質膜−電極接合体を用いることにより、製造工程が容易であり、耐久性にも優れる信頼性の高い燃料電池を提供することができる。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では高分子電解質型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池に代表される酸型電解質の燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であることから、高分子電解質型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記高分子電解質型燃料電池は、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求されることによるカーボン担体の腐食、および、運転時に高い出力電圧が取り出されることにより高分子電解質の劣化が生じやすい自動車などの移動体用電源として用いられるのが特に好ましい。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的にはMEAをセパレータで挟持した構造を有する。
前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
また、各触媒層に供給されるガスが外部にリークするのを防止するために、ガスケット層上の触媒層が形成されていない部位にさらにガスシール部が設けられてもよい。前記ガスシール部を構成する材料としては、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。また、ガスシール部の厚さとしては、2mm〜50μm、望ましくは1mm〜100μm程度とすればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
実施例1
ナフィオン膜(登録商標、デュポン社製)を、テトロンU−6フィルム(登録商標、帝人デュポンフィルム(株)製)に挟み、130℃で30分間、10MPaでプレス処理を行ない、粗面をもつ電解質膜を得た。
実施例2
テフロンシート(登録商標、デュポン社製)、アルミナ粉末(粒径:1μm)、及びナフィオン膜(登録商標、デュポン社製)をこの順で積層して、積層体を形成した。この際、アルミナ粉末は、ナフィオン膜上に0.1mg/cmの量となるように塗布した。次に、この積層体を、130℃で30分間10MPaでプレス処理を行なった。プレス処理後、テフロンシートを剥がし、得られたアルミナ粉末−ナフィオン膜の積層体を水洗した後、60℃の水中に30分間放置して、ナフィオン膜を膨潤させて、膜中に残留していた粉末を除去した。上記操作によって、初期塗布量に対して約95質量%のアルミナ粉末が除去された。これを真空中で70℃で乾燥させることにより、粗面をもつ電解質膜を得た。
実施例3
<樹脂溶液を調製した例の場合>
市販のナフィオン溶液(アルドリッチ社製、5wt%)に、粒径1μmのアルミナ粒子を対樹脂固形成分質量比が10%となるように添加した。この溶液を、テフロンシート上に注いで、80℃に加熱した乾燥機中で10時間乾燥させ、溶媒を除去することによって、膜厚50μmの膜を形成した。これを60℃水中に30分間放置して、ナフィオン膜を膨潤させた。その結果、表面に存在しているアルミナ粉末が初期の添加量に対して99質量%ほど除去された。
実施例4:電解質膜表面の評価
上記実施例1〜3で得られた電解質膜(大きさ:7cm×7cm)を、SEMの断面観察により、電解質膜の中心線平均粗さ及び凹凸部の平均間隔を評価した。結果を下記表1に示す。
Figure 2007184141
実施例5〜7
1.触媒インクの作製
白金担持カーボン微粒子((株)田中貴金属製)を、市販のNafion溶液(5wt%の濃度でNafionを分散/懸濁したもの、アルドリッチ製)と混合し、室温で10分間撹拌した。
2.転写シート(デカール)の作製
上記1.で調製した触媒インクを、スクリーンプリンタにてテフロンシート(大きさ:5cm×5cm)上に塗布し、真空乾燥機にて1時間、乾燥させて、転写シートを作製する。この際、触媒層中の白金量が10mgになるまで、上記工程を繰り返して、重ね塗りを行なう。
3.触媒層の転写
上記実施例1〜3で得られた電解質膜(大きさ:7cm×7cm)を、上記2.で作製した転写シート2枚で、触媒層がそれぞれこの電解質膜と接するように、挟みこみ、130℃、2MPaで、10分間、ホットプレスを行なった。ホットプレス後、テフロンシートを剥がして、MEA(1)〜(3)[実施例1で得られた電解質膜を用いたMEAをMEA(1)と、実施例2で得られた電解質膜を用いたMEAをMEA(2)と、および実施例3で得られた電解質膜を用いたMEAをMEA(3)と称する]を作製した。
実施例8:発電試験
実施例5〜7で作製したMEA(1)〜(3)を発電用セルに組み込み、発電試験を行なった。結果を下記表2に示す。試験は、セル温度70℃、アノードガスには相対湿度90%の水素、カソードには相対湿度50%の空気を流して行なった。
Figure 2007184141
本発明のMEAは、電解質膜及び触媒層の接着力(接合性)に優れたものであるから、本発明のMEAを有する燃料電池は、耐久性に優れ、システムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途において特に好適に利用できる。
本発明のMEAの好ましい構造を示す断面図である。 本発明の第二の方法の好ましい実施形態を示す断面図である。 本発明の第三の方法の好ましい実施形態を示す断面図である。 本発明の第四の方法の好ましい実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1…触媒層、
2…電解質膜、
3…粗面形状を有する部材、
4…金属板、
5…粗面付与物質、
6…テフロンシート。

Claims (7)

  1. 電解質膜と、前記電解質膜の両面に配置されたカソード触媒層及びアノード触媒層を有する電解質膜−電極接合体において、
    少なくとも一方の触媒層と接合する電解質膜に、前記触媒層中に含まれる触媒成分が入ることのできる凹部を有する粗面形状が形成されてなることを特徴とする、電解質膜−電極接合体。
  2. 前記電解質膜に、中心線平均粗さが0.1μm以上であってかつ電解質膜厚の1/5以下となるように粗面形状が形成される、請求項1に記載の電解質膜−電極接合体。
  3. 前記電解質膜に、凹凸部の平均間隔が0.1μm以上であってかつ電解質膜の厚み以下となるように粗面形状が形成される、請求項1または2に記載の電解質膜−電極接合体。
  4. 電解質膜を粗面形状を有する部材と接触させ、前記粗面形状を電解質膜に転写することにより、電解質膜表面に粗面形状を形成する工程を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法。
  5. 電解質膜表面に粗面付与物質を塗布した後、圧着することにより、電解質膜表面に粗面形状を形成させ、その後に前記粗面付与物質を除去する工程を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法。
  6. 溶解あるいは溶融した電解質膜樹脂中に粗面付与物質を添加し、得られた混合液状物を溶媒除去あるいは樹脂硬化して膜状物を得た後、前記粗面付与物質を前記膜状物から除去する工程を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜−電極接合体に使用される電解質膜の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜−電極接合体または請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法によって製造された電解質膜を有する電解質膜−電極接合体を使用してなる燃料電池。
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