JP2007184140A - 電解質膜−電極接合体の製造方法 - Google Patents

電解質膜−電極接合体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電解質膜上に電極触媒層を直接形成する際に電解質膜の変形を十分抑制/防止できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】シートの吸脱着が可能な基板に電解質膜を吸着させ、電解質膜の形状を保持しながら触媒インクを電解質膜に塗布し、インク乾燥後電解質膜を基板から脱離する段階を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、電解質膜−電極接合体(MEA)の製造方法、当該方法によって製造された電解質膜−電極接合体を使用してなる燃料電池、及び燃料電池を搭載した自動車に関するものである。より詳細には、電解質膜上に電極触媒層を直接形成する際に電解質膜の変形を十分抑制/防止できる電解質膜−電極接合体の製造方法、当該方法によって製造された電解質膜−電極接合体を使用してなる燃料電池、及び燃料電池を搭載した自動車に関するものである。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が電気自動車用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動することから、電気自動車用電源として期待されている。
固体高分子型燃料電池の構成は、一般的には、電解質膜−電極接合体(以下、単に「MEA」とも記載する。)をセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、固体高分子電解質膜が一対の電極触媒層およびガス拡散層により挟持されてなるものである。電極触媒層は、導電性担体に触媒成分が担持されてなる電極触媒と、固体高分子電解質とを少なくとも含む。
図1は、固体高分子型燃料電池の一例を示すための模式断面図である。図1において、固体高分子型燃料電池1は、固体高分子電解質膜2の両側に、アノード側電極触媒層3aおよびアノード側ガス拡散層4aと、カソード側電極触媒層3bおよびカソード側ガス拡散層4bとが、それぞれ対向して配置されてなるMEA 5を有しており、さらにMEA5を、アノード側セパレータ6aおよびカソード側セパレータ6bで挟持することで構成されている。また、MEA 5に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、アノード側セパレータ6aおよびカソード側セパレータ6bに、それぞれ複数箇所設けられたガス供給溝7a、7bなどを介して供給される。
固体高分子型燃料電池では、以下のような電気化学的反応が進行する。まず、アノード側に供給された燃料ガスに含まれる水素は、触媒成分により酸化され、プロトンおよび電子となる。次に、生成したプロトンは、電極触媒層に含まれる固体高分子電解質、さらに電極触媒層と接触している固体高分子電解質膜を通り、カソード側電極触媒層に達する。また、アノード側電極触媒層で生成した電子は、電極触媒層を構成している導電性担体、さらに電極触媒層の固体高分子電解質膜と異なる側に接触しているガス拡散層、セパレータおよび外部回路を通してカソード側電極触媒層に達する。そして、カソード側電極触媒層に達したプロトンおよび電子はカソード側に供給されている酸化剤ガスに含まれる酸素と反応し水を生成する。燃料電池では、上述した電気化学的反応を通して、電気を外部に取り出すことが可能となる。
電解質膜−電極接合体(MEA)の各構成部材うち、高分子電解質膜には、パーフルオロカーボンスルホン酸(例えば、米国Du Pont社製のNafion(登録商標)膜など)などが一般的に使用されている。また、ガス拡散層としては、例えば撥水処理を施したカーボンペーパーなどが用いられる。さらに、電極触媒層は、通常、Pt担持カーボン微粒子などの導電性材料の表面に触媒成分を担持させた電極触媒及びプロトン伝導性を有するフッ素系ポリマー等の電解質を、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールの溶剤中に分散した触媒インクを高分子電解質膜に直接塗布した後、乾燥することによって、電極触媒層が形成される(直接塗布法)。あるいは、このような触媒インクを、転写用台紙に塗布・乾燥して、電極触媒層を形成させた後、ホットプレスにより高分子電解質膜に電極触媒層を転写させることにより、MEAを作製していた(転写法)。
上記電極触媒の形成方法のうち、現在主流となっているのは、転写法である。これは、触媒インクを、スクリーンプリンタやバーコーターにてテフロンシート等の台紙上に塗布後、乾燥させて溶媒を飛ばして、電極触媒層をテフロンシート上に形成した電極触媒層塗布シートを作製し、さらに、上記で作製した塗布シート2枚で電解質膜を挟みこんだ状態でホットプレスを行なうことにより、電極触媒層中の電解質および電解質膜表面を軟化させて触媒層と膜とを接着させる方法である。テフロンシートと電極触媒層との密着力は弱いので、テフロンシートをはがすと触媒層が電解質膜に転写されるのである。上記転写法によれば、均一な厚さでひび割れの少ない触媒層が形成可能なため、良好な発電性能を得ることができる。しかしながら、触媒層を一旦別のシート上に形成させる必要があるため、触媒層を直接電解質膜上に形成させる直接塗布法と比較すると、工程数が増加し、コストが高くなってしまうという問題がある。
一方、触媒インクを高分子電解質膜に直接塗布する直接塗布法は、工程が簡便であり、特殊な設備を必要としないため、経済的に及び工業的に好ましい方法であるが、触媒インクを電解質膜上に直接塗布すると、電解質膜が触媒インク中の溶剤を吸収して、膜が膨潤して電解質膜表面に凹凸ができてしまったり、電解質膜の形状が変わってしまうという現象が起こる。このように膜表面が変形すると、不均一な厚みにより電圧の振れが大きくなったり、発電性能が低下したり、また、平滑でかつ均一な厚みの触媒層を電解質膜上に形成することができないため、製造されるMEAの機械的強度や触媒活性にばらつきができたりするという問題があった。
このような問題を解決するために、触媒インクを塗布しない面側をバッキングフィルムで支持しながら電解質膜上に触媒インクをコーティングすることにより電極触媒層を直接電解質膜上に形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。この方法は、Nafion等の市販されているフッ素系電解質膜には、もともと両面に保護シートがついた状態で販売されており、この保護シートを電解質膜の変形を抑制するためのバッキングフィルムとして利用するものである。すなわち、通常は両面の保護シートとも剥がして使用するが、保護シートなしの電解質膜に直接触媒インクを塗布すると、電解質膜が触媒インク中の溶媒を吸収してしまい電解質膜が変形してしまうため、片面のみに保護シートをバッキングフィルムとしてつけたまま、他方の電解質膜面に触媒インクを直接塗布し、触媒塗布面を充分乾燥させた後、裏面の保護シートをはがし、裏面側にも触媒層を形成する方法である。
また、直接塗布法としては、触媒物質とイオン交換樹脂と水を主成分とする溶媒とを含む触媒物質含有インクを、多孔質材料を用いたステージ上でステージ下面を減圧して電解質膜を吸引しながら、該ステージ上に設置した電解質膜にスプレー法により直接塗布し、その後溶媒を揮発させて、電解質膜上に触媒層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。当該方法では、ステージとして多孔質材料を用い、ステージ下面を減圧して電解質膜を吸引しながら触媒含有インクのスプレー塗布と溶媒の揮発とを行なうことが好ましい旨が記載されている(請求項3)。
特開2003−257449号公報 特開2004−317139号公報
しかしながら、上記特許文献1の方法では、バッキングフィルムで支持した側での触媒層の形成は電解質膜の変形なく行なうことができるものの、反対の面に触媒層を形成する際は保護シートが存在しない状態で触媒インクを電解質膜に塗布することになるため、事前に膜を充分に乾燥させて溶媒が電解質膜に移行しないようにしても、2回目の塗布工程の際に触媒インク中の溶媒を電解質膜が吸収してしまうので、特に2回目の塗布時に電解質膜が変形してしまう。このため、特許文献1の方法では、電解質膜両面に直接触媒インクを塗布することができず、一方の触媒層を形成した後の他方の電解質膜面での触媒層の形成は転写法による必要があり、経済的に好ましくないという問題点があった。また、上記場合であっても、触媒インクを塗った面に保護シートを再貼付して、反対面に触媒インクを塗布することも考えられる。しかしながら、保護シートとして使用されるシートは電解質との接着性が必要なため、触媒層に再貼付すると触媒層中の電解質とも接着してしまうため、触媒インクを塗った面に保護シートを再貼付すると、剥がす際に触媒層が電解質膜から剥離してしまうという問題が生じる。
また、上記特許文献2の方法では、多孔質材料としてセラミックを用いたステージ上に電解質膜を置き、ステージ下面をポンプで吸引するなどにより減圧にして電解質膜を吸引しながら触媒インクをスプレー塗布して、余分な溶媒を吸引により除去する例が記載されている(段落「0017」及び「0019」)。しかしながら、本発明者らが多孔質材料としてカーボンペーパーを用いて同様の実験を行なってみたところ、このようなカーボンペーパー製のステージがあると、一般的な吸引スピードでは気体が多孔質材料の孔を通過できないため十分な吸引力が達成できない。このため、上記特許文献2の方法では、変形を抑制するほどにはしっかりとステージ上に電解質膜を固定することができず、触媒インクを電解質膜に塗布した後の電解質膜の変形を十分抑制することができなかった(下記比較例1参照)。
上記問題に加えて、S−PES(スルホン化ポリエーテルスルホン)やS−PEEK(スルホン化ポリエーテルエーテルケトン)のような耐熱性の高い材料で構成された電解質膜を使用する場合には、高分子のガラス転移点が高く、ガラス転移点近くまで加熱すると膜が変質・分解してしまうため、接着剤なしでの保護シートの接合ができないという問題点があった。しかしながら、保護シートと電解質膜の接合に接着剤を使用すると、保護シートを剥離した後に、電解質膜や触媒層に接着剤が残留してしまうため、この接着剤の存在により電池の発電性能を低下させるという問題もある。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、電解質膜上に電極触媒層を直接形成する際に電解質膜の変形を十分抑制/防止できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、電解質膜の変形を抑制/防止しつつ、電解質膜の両面に触媒層を電極触媒層を直接形成できる電解質膜−電極接合体の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、上記特許文献1の方法で裏面に保護シートがついた電解質膜へ触媒インクを塗布しても電解質膜が変形しないのは、触媒インク中の溶媒を電解質膜が吸収することによる膜の膨張が面方向では起こらず膜厚方向に限定されるためであることが分かった。このため、触媒インク中の溶媒を電解質膜が吸収することによる電解質膜の面方向での膨脹を抑制/防止できる手段についてさらに鋭意検討を行なった結果、気圧差によりあるいは静電気により電解質膜を吸脱着させる機構を有する基板に電解質膜を吸着させた状態で、触媒インクを電解質膜上に塗布すると、保護シートなしでも電解質膜が気圧差あるいは静電気力によって基板上にしっかりと固定できるため、このような状態で触媒インクを直接塗布しても電解質膜は膜の厚み方向でのみ変形して面方向にはほとんど変形しないことを知得した。また、本発明者は、上記方法では、上記したように電解質膜の面内方向の変形を抑制することができる上、基材からの電解質膜の吸脱着が接着剤を使用せず可能なため、片面に触媒層を形成した電解質膜を一旦基材から脱離した後、今度は触媒層側を下にして基材に吸着させることによって、他方面に同様にして触媒インクを塗布することによって触媒層の形成時の電解質膜の変形を最小限に抑えることができ、本発明の方法によると電解質膜の変形を伴うことなく、触媒インクを直接塗布することができることをも知得した。さらに、上記方法は接着剤を使用しないため、接着剤の存在による電池の発電性能の低下が起こることがないため、このような方法によって製造されるMEAは、高い発電性能を発揮できることをも知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、シートの吸脱着が可能な基板に電解質膜を吸着させ、電解質膜の形状を保持しながら触媒インクを電解質膜に塗布し、インク乾燥後電解質膜を基板から脱離する段階を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法によって達成される。
本発明の方法によれば、電解質膜上に触媒インクを直接塗布しても、電解質膜の変形を十分抑制/防止できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一は、シートの吸脱着が可能な基板に電解質膜を吸着させ、電解質膜の形状を保持しながら触媒インクを電解質膜に塗布し、インク乾燥後電解質膜を基板から脱離する段階を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法である。本発明によると、触媒インクを電解質膜に塗布する工程中気圧差または静電気力により電解質膜を基板に吸着させることに特徴がある。これにより、電解質膜は基板にしっかりと吸着できるため、電解質膜上に直接触媒インクを塗布しても、電解質膜が膜表面方向でせず、電解質膜の変形、特に膜表面方向での変形が効果的に抑制できる。したがって、本発明の方法によると、電解質膜表面に凹凸ができず平坦なままであるため、均一な厚みでかつ平坦な触媒層を電解質膜上に形成できるため、運転時の電圧の振れを顕著に抑制でき、また得られる電解質膜−電極接合体は優れた機械的強度及び触媒活性を発揮できる。また、本発明の方法によれば、接着剤を使用する必要がないため、電解質膜や触媒層に接着剤が残留することがないため、本発明の方法で製造された電解質膜−電極接合体は、優れた電池の発電性能を達成することができる。
本明細書において、「シートの吸脱着が可能な基板」の「シート」とは、下記に詳述するように、第1の塗布工程では電解質膜を、第2の塗布工程では触媒層を意味し、「シートの吸脱着が可能な基板」は、電解質膜/触媒層を吸着及び脱離できる基板である。
本発明は、上記したように、シートの吸脱着が可能な基板に電解質膜を吸着させた状態で触媒インクを電解質膜上に塗布することによって、塗布時の電解質膜の変形を防止/抑制するものであるが、この際、塗布時の電解質膜の変形は、電解質膜の一辺の長さの変化率が好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下であるような変形を意味する。なお、本明細書において、「電解質膜の一辺の長さの変化率」とは、正方形の面を有する電解質膜において、触媒インクを電解質膜に塗布してから30分後の電解質膜が十分変形した際の最も変形の大きかった電解質膜部分の一辺の長さを、変形前(即ち、触媒インク塗布前)の電解質膜の一辺の長さで除した比として表わされる。
本発明では、触媒インク塗布時の電解質膜の変形を抑制するために、シートの吸脱着が可能な基板を使用することを特徴としている。本発明において、使用できる基板の材質は特に制限されず公知の材質が使用できるが、電解質膜や触媒層との反応性のない材質が好ましい。具体的には、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等の金属;テフロン、ポリエステル等の樹脂などが好ましく使用できる。また、上記したような金属に、上記したような樹脂をコーティングしたものや、上記したような樹脂製基材や金属製基材に金等の不活性金属をメッキしたものを基板として使用してもよい。また、基板は、溶媒の蒸発を促進するための加熱手段を有していてもよい。
本発明で使用される基板の電解質膜や触媒層を設置するステージ部分の厚みは、塗布時の電解質膜の変形を防止/抑制できる厚みであれば特に制限されず、基材の材質や電解質膜/触媒層の厚み、所望の吸引力などによって異なる。具体的には、電解質膜の厚みまたは電解質膜と触媒層との合計厚みが50μmである場合の、基材の電解質膜や触媒層を設置する台部分の厚みは、好ましくは10〜30mm、より好ましくは10〜20mmである。
また、本発明において、シートの吸脱着が可能な基板は、電解質膜を吸脱着できる機構を有するものであれば特に制限されないが、例えば、気圧差により電解質膜を吸脱着させる機構を有するものや、静電気により電解質膜を吸脱着させる機構を有するものが好ましく使用される。この際、気圧差により電解質膜を吸脱着させる機構を有するものとしては、図2に示されるように、吸引孔13を有する基板12上に電解質膜11を置き、この吸引孔を通して吸引ポンプで気圧差を生じさせて電解質膜11を基板12に吸着させるものが挙げられる。この際、気圧差により電解質膜を吸引ポンプにて吸着させた後は、吸引ポンプを停止させることなどによって、容易に電解質膜を基材から脱離できる。また、本発明において、吸引孔の配置は、触媒インクの塗布時の電解質膜の変形が十分防止・抑制できる配置であれば特に制限されず、例えば、図3(a)のように電解質膜全体を同等に吸着できるように、基板にほぼ均一な間隔で吸引孔を配置する;図3(b)のように電解質膜の全体を吸着できるように、電解質の周囲及び対角線に相当する部分の基板にほぼ均一な間隔で吸引孔を配置する;図3(c)のように電解質膜の周囲部及び中心部を主に吸着できるように、電解質の周囲及び中心付近に相当する部分の基板にほぼ均一な間隔で吸引孔を配置することなどが挙げられる。なお、上記図3(b)及び(c)では、電解質の周囲/対角線状に吸引孔がそれぞれ1列ずつで配置されているが、吸引力や電解質膜の膨脹の程度を考慮して、吸引孔が2重以上に配置されていてもよい。また、上記説明では、吸引孔は基板にほぼ均一な間隔で配置すると記載されているが、場合によっては、それぞれの部分での膨脹の程度などを考慮して、不均一な間隔で吸引孔を配置してもよいが、設備の簡便さや電解質膜の変形などと考慮すると、実質的に均一な間隔で吸引孔を配置することが好ましい。上記図3(a)〜(c)の配置のうち、電解質膜全体の変形をバラツキなくかつ効果的に防止できるという意味で、図3(a)の配置が最も好ましい。上記場合において、吸引孔の間隔は、触媒インクの塗布時の電解質膜の変形が十分防止・抑制できるものであれば特に制限されないが、100〜1000μm、より好ましくは200〜750μm、最も好ましくは200〜500μmである。この際、吸引孔の間隔が100μm未満であると、電解質膜を支える基材部分が少なくなりすぎて、基材上に電解質膜をしっかりと固定することが困難となる場合があり、また、電解質膜の吸引時に、触媒インクの塗布がなくとも、逆に表面に凹凸ができてしまったりする可能性がある。これに対して、吸引孔の間隔が1000μmを超えると、電解質膜の変形を防止・抑制するのに必要とされる1吸引孔当たりの吸引力を大きくする必要があり、逆に電解質膜が吸引孔内に凹状に引き込まれるおそれがある。吸引孔の孔径も、触媒インクの塗布時の電解質膜の変形が十分防止・抑制できるものであれば特に制限されず、上記吸引孔の間隔や電解質膜の厚みなどによって異なる。好ましくは、吸引孔の孔径は、100〜1000μm、より好ましくは200〜750μm、最も好ましくは200〜500μmである。この際、孔径が100μm未満であると、十分な吸引力が得られず、また、孔内に触媒インクの溶媒などが残留しやすくなり孔が詰まり吸引孔として役割を果たせなかったり、逆に1000μmを超えると、孔のサイズが大きくなりすぎて、吸引時に吸引孔内に凹状に引き込まれるおそれがある。
気圧差により電解質膜を吸脱着させる機構における吸引力は、吸引ポンプなどによって容易に調整でき、また、吸引力は、触媒インクの塗布時の電解質膜の変形(特に面方向の変形)が十分防止・抑制できる程度であれば特に制限されないが、電解質膜の一辺の長さの変化率が2%以下、より好ましくは1%以下となるような力であることが好ましい。なお、上記では、電解質膜の一辺の長さの変化率の下限は規定していないが、電解質膜や触媒層が表面方向で収縮せずに電解質膜及び触媒層の本来の大きさは保持される必要があるため、電解質膜の一辺の長さの変化率の下限は0%である(即ち、全く膨脹せずかつ一辺の長さが減じてもいない)。
また、静電気により電解質膜を吸脱着させる機構を有するものとしては、帯電ローラを基板に接触させて基板表面全体を帯電させ、この上に電解質膜を吸着させる機構などが挙げられる。なお、上記例において、基板は、除電することによって脱離できる。また、静電気により電解質膜を吸脱着させる場合の電解質膜の吸着の程度は、触媒インクの塗布時の電解質膜の変形(特に面方向の変形)が十分防止・抑制できる程度であればよいが、電解質膜の一辺の長さの変化率が好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下となるような力である。
上記電解質膜の吸着方法のうち、操作の容易さ、設備の点などを考慮すると、前者の気圧差により電解質膜を吸脱着させることが好ましい。以下、本発明の方法のうち、気圧差により電解質膜を吸脱着し、電解質膜の変形を防止・抑制しながら電解質膜上に触媒インクを直接塗布する方法の好ましい実施態様を図2を参照しながら説明する。
図2に示されるような、電解質膜11を設置する基板12に吸引孔13が設けられているスクリーンプリンターを使用する。触媒インクを塗布する前に、吸引ポンプ(図示せず)により基板内の空気を吸引することにより、電解質膜11の大気(触媒インク塗布)側と基板12下側との間に圧力差が生じ、この圧力差(気圧差)によって電解質膜11を基板12にしっかりと固定する。このようにして、電解質膜11を基板上に十分密着・保持させた状態で、触媒インクをスクリーン(メッシュ)14を通して電解質膜11上に所定の厚みになるように塗布し、電解質膜11を基板12に密着させたまま、乾燥して触媒層を形成する(第1の塗布工程)。所定の乾燥工程後は、吸引ポンプを止めて吸引を停止し、電解質膜11を基板12から取り除いて(脱離して)、触媒層が基板と接触するように、電解質膜11をひっくり返して、上記と同様の塗布工程を電解質膜11の裏面に施して、電解質膜11のもう片面にも触媒層を形成する(第2の塗布工程)。上記方法において、第1及び第2の塗布工程ともに、電解質膜は、吸引ポンプによる圧力差(気圧差)によって基板上に十分密着・保持されているので、触媒インクから電解質膜に溶媒が移行して電解質膜が溶媒を吸収しても電解質膜は基板上にしっかりと固定されているため、電解質膜の変形、特に面方向での変形がほとんど起こらない。したがって、上記方法によれば、触媒インクを均一に塗布することができ、均一な厚みでかつ平滑な面を有する触媒層が形成できる。
なお、上記方法では、触媒インクをスクリーンプリンターを用いて電解質膜に塗布したが、触媒インクの塗布方法は、上記に限定されるものではなく、例えば、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いることもできる。
上記方法において、触媒インクの乾燥を、電解質膜上に塗布された触媒インク(触媒層)を、塗布面全面にわたって抑圧しながら、吸引孔から気体を排出して溶媒を蒸発することによって行なうことが好ましい。当該方法によると、塗布面全面が抑圧されているので、電解質膜や触媒層の厚み方向の膨脹を有意に抑制することができるため、上記方法をさらに行なうことによって、電解質膜や触媒層の面方向だけでなく、厚み方向の変形をも効果的に防止・抑制できる。上記方法を使用する場合の塗布面の抑圧方法は、電解質膜や触媒層の厚み方向の変形を防止・抑制できるものであれば特に制限されず公知の抑圧方法が使用できる。例えば、塗布面全面に加重体(おもり)をのせる、プレスなどによって塗布面全面を押圧するなどの方法が好ましく使用できる。本発明による乾燥工程を、以下で図4を参照しながら詳細に説明する。すなわち、図4において、上記したようにして、電解質膜の形状を保持しながら、基板12上に設置された電解質膜11上に触媒インクを塗布した後、該塗布面上に、おもりなどの抑圧部材16をのせる。次に、吸引孔13をとおして、気体を電解質膜に流すことによって、触媒インク中に含まれる溶媒を蒸発させる。以上の工程によって、触媒インク中の溶媒は、迅速に揮散して、均一な厚みでかつ平滑な触媒層が短時間でかつ容易に得られる。この際、抑圧部材16の材質としては、特に制限されず公知の材質が使用できるが、電解質膜や触媒層との反応性のない材質が好ましい。具体的には、ステンレス等の金属;テフロン、シリコーンゴム等の樹脂などが好ましく使用できる。また、上記したような金属に、上記したような樹脂をコーティングしたものを基材として使用してもよい。また、基材は、溶媒の蒸発を促進するための加熱手段を有していてもよい。
また、上記乾燥工程において、触媒層への抑圧の程度は、電解質膜や触媒層の厚み方向の膨脹を有意に抑制することができる程度であれば特に制限されないが、厚みの膨脹率が好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下に抑えられるような程度である。なお、上記では、厚みの膨脹率の下限は規定していないが、電解質膜や触媒層がつぶれないように電解質膜及び触媒層の本来の厚みは保持される必要があるため、厚み膨脹率の下限は0%である(即ち、全く膨脹せずかつ厚みが減じてもいない)。また、本明細書において、「厚みの膨脹率」とは、触媒インクを塗布してから1分後の電解質膜/触媒層の厚みの増加分を、変形前(即ち、触媒インク塗布前)の電解質膜/触媒層の厚みで除した比として表わされる。
また、上記場合において使用できる気体は、触媒インク中に含まれる溶媒を十分蒸発できるものであれば特に制限されないが、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスなどが挙げられ、予め乾燥されていることが好ましい。また、これらの気体の排出速度(触媒層への導入速度)もまた、触媒インク中に含まれる溶媒を十分蒸発できるものであれば特に制限されないが、好ましくは0.5〜10リットル(L)/分、より好ましくは2〜5リットル(L)/分である。
本発明で使用される触媒インクは、溶媒、電解質、及び電極触媒を含む。本発明の触媒インクを構成する電極触媒としては、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を有するものであれば、特に限定されず、公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、触媒成分が導電性担体に担持されたものである。この際、触媒成分としては、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒できるものであれば、特に限定されず、公知の触媒成分が同様にして使用できるが、例えば、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。なお、電極触媒として合金を使用する場合の合金の組成は、合金化する金属の種類などによって異なり、当業者が適宜選択できるが、白金が30〜90原子%、合金化する他の金属が10〜70原子%とすることが好ましい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。また、触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状及び大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒インクに用いられる触媒粒子の平均粒子径は、小さいほど電気化学反応が進行する有効電極面積が増加するため酸素還元活性も高くなり好ましいが、実際には平均粒子径が小さすぎると却って酸素還元活性が低下する現象が見られる。したがって、触媒インクに含まれる触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらにより好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmの粒状であることが好ましい。担持の容易さという観点から1nm以上であることが好ましく、触媒利用率の観点から30nm以下であることが好ましい。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径あるいは透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値により測定することができる。
本発明において、上述した触媒粒子は導電性担体に担持された電極触媒として触媒インクに含まれる。この際使用できる導電性担体としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、主成分としてカーボンを含むことが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、本発明において「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
前記導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gとするのがよい。前記比表面積が、20m/g未満であると前記導電性担体への触媒成分および固体高分子電解質の分散性が低下して十分な発電性能が得られないおそれがあり、1600m/gを超えると触媒成分および固体高分子電解質の有効利用率が却って低下するおそれがある。
また、前記導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。
前記導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%とするのがよい。前記担持量が、80質量%を超えると、触媒成分の導電性担体上での分散度が下がり、担持量が増加するわりに発電性能の向上が小さく経済上での利点が低下するおそれがある。また、前記担持量が、10質量%未満であると、単位質量あたりの触媒活性が低下して所望の発電性能を得るために多量の電極触媒が必要となり好ましくない。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
また、導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
本発明で使用される触媒インクを構成する電解質(固体高分子電解質)としては、特に限定されず公知のものを用いることができるが、少なくとも高いプロトン伝導性を有する部材であればよい。この際使用できる固体高分子電解質は、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
前記フッ素系電解質として、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸等が好適な一例として挙げられる。
固体高分子電解質は、耐久性、耐熱性、化学的安定性、機械強度などに優れることから、フッ素原子を含むのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が好ましく挙げられる。
さらに、本発明で使用される触媒インクを構成する溶媒としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶媒が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノールやエタノールや2−プロパノール等の低級アルコールが使用できる。
本発明で使用される溶媒の量は、電解質を完全に溶解できる量であれば特に制限されないが、電解質が、溶媒中、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%の濃度になるような量である。この際、電解質の濃度が20質量%を超えると、電解質を完全には溶解せずに一部コロイドが形成される可能性があり、逆に3質量%未満であると、含まれる電界質量が少なすぎて、電解質ポリマーの分子鎖がよく絡まりあいきれずに、形成される触媒層の機械的強度が劣る可能性がある。また、触媒インクにおいて、電極触媒および固体高分子電解質などを合わせた固形分の濃度は、触媒インク中、8〜50質量%、より好ましくは10〜25質量%程度とするのが好ましい。
また、本発明の触媒インクにおいて、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)及び酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で、使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク中、5〜30質量%、より好ましくは9〜20質量%となるような量で存在することが好ましい。
本発明の触媒インクには、電極触媒、電解質及び溶剤に加えて、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体といった撥水性高分子などが含まれてもよい。これにより、得られる電極触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子を使用する際の、撥水性高分子の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全質量に対して、好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明の触媒インクは、増粘剤を含んでもよい。増粘剤の使用は、触媒インクが基材や転写用台紙上にうまく塗布できない場合などに有効である。この際使用できる増粘剤は、特に制限されず、公知の増粘剤が使用できるが、例えば、グリセリン、(EG(エチレングリコール)、PVA(ポリビニルアルコール))などが挙げられる。増粘剤を使用する際の、増粘剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されないが、触媒インクの全質量に対して、好ましくは5〜20質量%である。
本発明の触媒インクは、電極触媒、電解質及び溶剤、ならびに必要であれば撥水性高分子および/または増粘剤、が適宜混合されたものであればその調製方法は特に制限されない。例えば、電解質を極性溶媒に添加し、この混合液を加熱・攪拌して、電解質を極性溶媒に溶解した後、これに電極触媒を添加することによって、触媒インクが調製できる。または、電解質を、溶剤中に一旦分散/懸濁させた後、上記分散/懸濁液を電極触媒と混合して、触媒インクを調製してもよい。また、電解質が予め溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)をそのまま上記方法に使用してもよい。
上記したような触媒インクは、上記したように吸引ポンプで吸引しながら、基板上に置かれた高分子電解質膜上に塗布・乾燥されて、各触媒層が形成される。この際、高分子電解質膜上への触媒層の形成条件は、特に制限されず、公知の方法が同様にしてあるいは適宜修飾を加えて使用できる。例えば、触媒インクを高分子電解質膜上に、乾燥後の厚みが5〜20μmになるように、塗布し、真空乾燥機内にてまたは減圧下で、好ましくは25〜150℃、より好ましくは60〜120℃で、好ましくは5〜30分間、より好ましくは10〜20分間、乾燥する。なお、上記工程において、触媒層の厚みが十分でない場合には、所望の厚みになるまで、上記塗布・乾燥工程を繰り返す。なお、上記したように、乾燥工程は、電解質膜上に塗布された触媒インク(触媒層)を、塗布面全面にわたって抑圧しながら、吸引孔から気体を排出して溶媒を蒸発することによって行なうことが好ましい。塗布面全面が抑圧されているので、電解質膜や触媒層の厚み方向の膨脹を有意に抑制することができ、電解質膜や触媒層の面方向だけでなく、厚み方向の変形をも防止・抑制できるからである。
上記方法において使用できる固体高分子電解質膜としては、特に限定されないが、電極触媒層の説明において列挙した電解質が同様にして使用できる。その例としては、デュポン社製Nafion、旭硝子社製Flemion、旭化成社製Aciplex等が挙げられる。その他、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜などを用いてもよい。なお、本発明において、固体高分子電解質膜と、電極触媒層に含まれる電解質は、同じものを用いてもあるいは異なるものを用いてもよいが、電極触媒層と固体高分子電解質膜との接合性などを考慮すると同じものを用いるのが望ましい。
また、固体高分子電解質膜の厚みは、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の観点から5μm以上であることが好ましく、燃料電池作動時の出力特性の観点からは300μm以下であることが好ましい。
なお、本発明によるMEAは、下記に詳述されるように、一般的にガス拡散層をさらに有してもよく、この際、電解質膜上に触媒層を形成した後、得られた接合体をさらにガス拡散層で挟持することによって、電極触媒層と高分子電解質膜との接合後にさらにガス拡散層を各電極触媒層に接合することが好ましい。
この際、MEAに用いられるガス拡散層としては、特に限定されず公知のものが同様にして使用でき、例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とするものなどが挙げられる。前記基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。厚さが、30μm未満であると十分な機械的強度などが得られないおそれがあり、500μmを超えるとガスや水などが透過する距離が長くなり望ましくない。
前記ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防ぐことを目的として、前記基材に撥水剤を含ませることが好ましい。前記撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、前記ガス拡散層は、前記基材上に撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層を有するものであってもよい。
前記カーボン粒子としては、特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来一般的なものであればよい。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく挙げられる。前記カーボン粒子の粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
前記カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、前記基材に用いられる上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられる。
前記カーボン粒子層における、カーボン粒子と撥水剤との混合比は、カーボン粒子が多過ぎると期待するほど撥水性が得られないおそれがあり、撥水剤が多過ぎると十分な電子伝導性が得られないおそれがある。これらを考慮して、カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、質量比で、90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤との質量比)とするのがよい。
前記カーボン粒子層の厚さは、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
ガス拡散層に撥水剤を含有させる場合には、一般的な撥水処理方法を用いて行えばよい。例えば、ガス拡散層に用いられる基材を撥水剤の分散液に浸漬した後、オーブン等で加熱乾燥させる方法などが挙げられる。
ガス拡散層において基材上にカーボン粒子層を形成する場合には、カーボン粒子、撥水剤等を、水、パーフルオロベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒などの溶媒中に分散させることによりスラリーを調製し、前記スラリーを基材上に塗布し乾燥、もしくは、前記スラリーを一度乾燥させ粉砕することで粉体にし、これを前記ガス拡散層上に塗布する方法などを用いればよい。その後、マッフル炉や焼成炉を用いて250〜400℃程度で熱処理を施すのが好ましい。
上述した本発明の方法によって製造されるMEAは、触媒インクの直接塗布時の電解質膜の変形、特に面方向の変形が有意に抑制できるため、触媒層が均一な厚みにかつ平滑に形成できる。また、本発明の方法によると、電解質膜の両面に触媒インクを直接塗布しても、双方の塗布工程での電解質膜の変形、特に面方向の変形が有意に抑制できるため、カソード触媒層及びアノード触媒層双方が均一な厚みにかつ平滑に形成できる。このため、不均一な厚みにより電圧の振れが大きくなったり、機械的強度が低下したり、十分な触媒活性が達成できないという問題が生じない。したがって、本発明の方法によって製造されるMEAを燃料電池に用いることにより、耐久性および発電性能に優れる燃料電池を提供することが可能となる。前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では固体高分子型燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池、固体酸化物型燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であることから、固体高分子型燃料電池が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。
前記燃料電池の構成としては、特に限定されず、従来公知の技術を適宜利用すればよいが、一般的にはMEAをセパレータで挟持した構造を有する。前記セパレータとしては、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、従来公知のものであれば制限なく用いることができる。セパレータは、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するための流路溝が形成されてもよい。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
さらに、燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
以下、本発明を、実施例を参照しながら、より具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例のみに限定されることはない。
実施例1
図1に示されるような装置を用いて、触媒インクを電解質膜に直接塗布した。基板はSUS製で、吸引孔の孔径および間隔は500μmのものを使用した。基板の上にNafion膜(厚さ25μm)を敷き、吸引ポンプにて0.01MPaまで減圧して電解質膜を固定した。触媒インクは白金担持カーボン微粒子(白金担持量50wt%)に市販のNafion溶液(エタノール溶媒)を混合して作成した。インク中の固形分(Nafion+Pt担持カーボン)比率は10wt%とした。インク塗布面積は5cm×5cmとし、触媒インク塗布量は触媒層の白金量が0.4mg/cmになるように調整した。乾燥後の触媒層厚はおおよそ10μmであった。
比較例1
上記装置の吸引孔のあいた基板の上に厚さ300μmのカーボンペーパーを敷き、その上に固定した電解質膜へ実施例1と同様の触媒インクを、実施例1に記載の方法と同様にして直接塗布した。
その結果、比較例1では、電解質膜は触媒インク塗布時に大きく膨潤し、電解質膜の一辺の長さの変化率は10%にまで達した上、膜にゆがみが発生したため、発電セルとしてくみ上げることができなかった。これに対して、実施例1では、電解質膜の一辺の長さの変化率は1%で、膜のゆがみや皺の発生は認められなかった。
本発明の電解質膜−電極接合体(MEA)は、耐久性に優れかつ燃費効率のよい燃料電池に適用できる。
一般的な固体高分子型燃料電池の断面模式図を示す。 本発明の方法好ましい一実施態様を説明するための概略図である。 本発明に係る基板における吸引孔の配置に関する一実施態様を説明するための説明図である。 本発明による塗布面全面にわたって抑圧しながら、吸引孔を通して電解質膜/触媒層に気体を排出する方法の好ましい一実施態様を示した概略図である。
符号の説明
1…固体高分子型燃料電池、
2…固体高分子電解質膜、
3a…アノード側電極触媒層、
3b…カソード側電極触媒層、
4a…アノード側ガス拡散層、
4b…カソード側ガス拡散層、
5…MEA、
6a…アノード側セパレータ、
6b…カソード側セパレータ、
7a,7b…ガス供給溝、
11…電解質膜、
12…基板、
13…吸引孔、
14…スクリーン(メッシュ)、
15…触媒インク塗布層(触媒層)、
16…抑圧部材。

Claims (7)

  1. シートの吸脱着が可能な基板に電解質膜を吸着させ、電解質膜の形状を保持しながら触媒インクを電解質膜に塗布し、触媒インクを乾燥した後、電解質膜を基板から脱離する段階を有する、電解質膜−電極接合体の製造方法。
  2. シートの吸脱着が可能な基板が、気圧差により電解質膜を吸脱着させる機構を有するものである、請求項1に記載の方法。
  3. シートの吸脱着が可能な基板が、静電気により電解質膜を吸脱着させる機構を有するものである、請求項1に記載の方法。
  4. 触媒インクの乾燥工程は、触媒インクの塗布面全面を抑圧しながら行なわれる、請求項1または2に記載の方法。
  5. 該シートの吸脱着が可能な基板は吸引孔を有し、さらに、触媒インクの乾燥工程は触媒インクの塗布面全面を抑圧しながら該吸引孔から気体を排出して溶媒を蒸発させることにより行なわれる、請求項4に記載の方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法によって製造された電解質膜−電極接合体を使用してなる燃料電池。
  7. 請求項6に記載の燃料電池を搭載した自動車。
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