JP2007182615A - 耐応力腐食割れ性に優れたCu−Ni−Si−Zn系銅合金および製造法 - Google Patents

耐応力腐食割れ性に優れたCu−Ni−Si−Zn系銅合金および製造法 Download PDF

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【課題】コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、リードフレーム等の電気・電子部品に適する強度、導電性、曲げ加工性、はんだ濡れ性を具備するとともに、耐応力腐食割れ性をも改善した高強度銅合金材料を提供する。
【解決手段】質量%で、Ni:0.4〜4.5%、Si:0.15〜0.9%、Zn:5〜15%を含有し、必要に応じてさらにSn:2.0%以下、P:0.2%以下、Fe:1.0%以下、Mg:0.5%以下、Co:4.0%以下、Cr:4.0%以下のうち1種以上を含有し、残部が実質的にCuである組成を有し、導電率と組成から算出されるSi固溶指標Zが0.55〜0.9であり、かつ引張強さが650N/mm2以上であり、好ましくは導電率が25%IACS以上である銅合金。
【選択図】なし

Description

本発明は、コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、リードフレーム等の電気・電子部品に適したCu−Ni−Si−Zn系銅合金に関する。
近年のエレクトロニクスの発達により、様々な機械の電気配線は複雑化、高集積化が進み、コネクタ、リレー、スイッチ等の電気・電子部品には一層の軽量化や高信頼向上が望まれている。特にパーソナルコンピュータや携帯電話などに使用されるコネクタ、ソケットなどでは、省スペース化と高機能化が同時に進んでおり、これらの通電部品を構成する銅合金に対しては、薄肉化した状態で従来の材料と同等以上のばね特性や信頼性を発揮できる優れた特性が求められている。具体的には、小型化・薄肉化に対応するための「強度」および「ばね特性」の向上、複雑な部品の形状に対応するための「プレス加工性」や「曲げ加工性」の向上、単位断面積あたりの通電量の増加、電気信号の高速化に対応するための「導電性」の向上、などが求められている。更に電気、電子部品は接触信頼性を向上させるために用途に応じてSn、Ag、Au等のめっきが施されることが多く、また、はんだ付け工程を伴うことも多い。このため、「めっき密着性」や「はんだ密着性」が良好であることも重要である。自動車向けのコネクタ材として用いられる場合には、エンジンルーム内の環境に耐えうるように「耐応力緩和特性」に優れることも要求される。
このように、昨今では素材に対する要求がますます厳しくなっているが、その素材の普及を図るには、安価であること、およびリサイクルに寄与できることも重要な条件となる。コストとリサイクル性を考慮すると、各種銅合金スクラップが利用できる合金系を採用することが極めて有利である。例えば、パーソナルコンピュータや携帯電話などに使用されるコネクタではNiめっきが施される場合が多く、自動車向け小型端子などではSnめっきが施されることが多い。また、自動車向け用途では黄銅のSnめっき材が多く使用されている。これらのめっき金属や黄銅の成分であるZnを成分元素として含む合金系によって前記諸特性に優れた材料を開発することができれば、スクラップの利用を通じてコスト低減およびリサイクルの促進にも寄与できる。
強度特性に優れた銅合金としては、リン青銅やベリリウム銅が挙げられる。また、Ni−Si系の金属間化合物を析出させることにより、導電性、強度、ばね特性の改善を図った銅合金としてCu−Ni−Si系合金が挙げられる。スイッチ、コネクタ等に用いられるばね用材料としては、安価な黄銅、優れたばね特性および耐食性を有する洋白、あるいは優れたばね特性を有するりん青銅が使用されている。
特許文献1にはCu−Ni−Si系合金をベースとしてMgを添加し、強度、耐応力緩和性を改善することが記載されている。特許文献2にはCu−Ni−Si系合金においてNi−Si金属間化合物のサイズなどを制御することによって、はんだ付け性、めっき密着性などを向上させることが記載されている。
一方、特許文献3、4、5、6にはCu−Ni−Si系にZnを加えたCu−Ni−Si−Zn系銅合金が記載されている。Znは比較的安価な元素であり、銅合金に添加することではんだ付け性が改善され、また耐食性の改善効果もある。
特開昭61−250134号公報 特開昭58−123846号公報 特開昭56−90942号公報 特開平2−205645号公報 特開平2−205642号公報 特開平4−224645号公報
しかし、強度に優れるリン青銅は導電率が例えばJIS C5210で12%IAS程度と低く、また耐応力緩和特性についても改善が望まれている。ベリリウム銅はコストが高く、また安定供給にも難がある。Cu−Ni−Si系銅合金は導電性、強度、ばね特性のバランスが比較的良好であるが、薄肉化した材料としては昨今の通電部品に求められる厳しい要求に十分対応できない。特許文献1、2のような第三元素を添加した改良型のCu−Ni−Si系銅合金でも曲げ加工性等が必ずしも十分とは言えず、また、黄銅スクラップを原料として有効利用できないという弱みがある。特許文献3、4、5、6のCu−Ni−Si−Zn系銅合金の場合は黄銅スクラップが利用できる。しかし、本来リードフレーム用として開発されてきたことから曲げ加工性も十分でないという欠点がある。また、Znを添加することにより導電率が低下し、耐応力腐食割れ感受性も高くなるので、これらの開示合金をコネクタ等の通電部品に適用するにはZnの添加量を低く抑える必要があり、Zn添加による材料コスト低減効果が十分に享受できない。特許文献6では、結晶粒度を15μm以下とすることで従来の黄銅の持つ欠点である耐応力腐食割れ性を改良しているが、引張り強さが620N/mm2以下であり十分な強度が得られていない。
本発明は、通電部品に必要な前記各特性を基本的に具備する銅合金において、材料の薄肉化に伴う昨今の厳しい要求に対応すべく、強度、導電性、曲げ加工性、はんだ濡れ性に加え、耐応力腐食割れ性をも同時に改善し、かつコスト低減およびリサイクルの面でも有利な銅合金を開発し提供しようというものである。
発明者らの詳細な研究の結果、上記目的は、マトリクス中に固溶するSi量を適切にコントロールし、かつNi−Si系析出物を微細析出させたCu−Ni−Si−Zn系銅合金によって達成できた。
すなわち本発明では、質量%で、Ni:0.4〜4.5%、Si:0.15〜0.9%、Zn:5〜15%を含有し、必要に応じてさらにSn:2.0%以下、P:0.2%以下、Fe:1.0%以下、Mg:0.5%以下、Co:4.0%以下、Cr:4.0%以下のうち1種以上を含有し、残部が実質的にCuである組成を有し、下記(1)式のSi固溶指標Zが0.55〜0.9であり、かつ引張強さが650N/mm2以上であり、好ましくは導電率が25%IACS以上である銅合金が提供される。
Z=(a−b)/(c−b) ……(1)
ただし、
a:被測定材の実測された導電率(%IACS)、
b:Siが全て固溶した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
c:Siが全て析出した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、Ni含有量(質量%)を下記(4)式のNiA(質量%)に、Si含有量(質量%)を下記(5)式のSiA(質量%)にそれぞれ補正したうえで、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
である。
p=17.24/ρS×100 ……(2)
ρS=17.24+(12.2×Ni(at%)+39.5×Si(at%)+3×Zn(at%)+28.8×Sn(at%)+67×P(at%)+96.6×Fe(at%)+6×Mg(at%)+63×Co(at%)+40×Cr(at%))−(0.3×12.2×Ni(at%)2+4.9×39.5×Si(at%)2+2.7×3×Zn(at%)2+3.2×28.8×Sn(at%)2+20×96.6×Fe(at%)2)/100 ……(3)
NiA=Ni(mass%)−2×(58.69/28.09)×Si(mass%)、ただし上式でNiA<0となるときは、NiA=0とする ……(4)
SiA=Si(mass%)−(1/2)×(28.09/58.69)×Ni(mass%)、ただし上式でSiA<0となるときは、SiA=0とする ……(5)
ここで、Ni(mass%)およびSi(mass%)は、それぞれ質量%で表された合金中のNi含有量およびSi含有量である。
ここで、選択元素であるSn、P、Fe、Mg、Co、Crのうち、無添加の元素については、上記(3)式の当該元素の箇所には0(ゼロ)が代入される。
質量%と原子%との換算には、各元素の原子量として以下の値を使う。
Cu;63.55、Ni;58.69、Si;28.09、Zn;65.39、Sn;118.71、P;30.97、Fe;55.85、Mg;24.31、Co;58.93、Cr;52.00
(2)式および(3)式中の定数17.24は温度273Kにおける純銅の比抵抗値に相当する。(3)式中の各元素含有量に掛かる定数は、温度273Kにおける各溶質元素の単位濃度あたりの電気抵抗への寄与等を表すものである(J.O.Linde:Helvetica physia acta.41(1968),1013)。
「残部が実質的にCuである」とは、本発明の目的を阻害しない範囲で原料に含まれる上記以外の元素の混入が許容されることを意味する。「残部実質的にCu」には「残部Cuおよび不可避的不純物からなる」場合が含まれる。
本発明の銅合金は、溶体化処理と時効処理を組み合わせた銅合金製造プロセスで製造できるが、特に、前記(1)式のSi固溶指標Zが0.3以下である中間材料を作り、その後、その中間材料に対して時効処理を施すことにより同Zを0.55〜0.9に調整する手法によって製造される。
より具体的に前記(1)式のSi固溶指標Zが0.3以下となるように、溶体化処理した材料に、60%以下の冷間圧延を施し、その後、380〜550℃の温度域で加熱保持後150℃以下の温度域まで平均冷却速度5℃/min以下で徐冷する時効処理を施すことにより同Zを0.55〜0.9に調整する製造法が好適である。上記の溶体化処理条件としては、650〜850℃の範囲内で加熱保持後、650℃から250℃までの平均冷却速度が200℃/min以上となるように冷却する条件が採用できる。時効処理後、冷間圧延を行い、さらに250〜500℃で20sec〜10min保持する歪取り焼鈍を施すことができる。
本発明によれば、コネクタ、リレー、スイッチ等の電気・電子部品に必要な基本特性を具備する銅合金において、特に強度、導電性、曲げ加工性、さらに耐応力腐食割れ性を高水準で同時に改善することが可能になった。この銅合金は、素材の薄肉化に伴う昨今の厳しい要求に対応し得るものである。また、Znを比較的多量に含有することによる素材コストの低減効果が高く、さらにNiめっきやSnめっきを有する銅合金スクラップ、Znを含む黄銅スクラップを原料として使用できるのでリサイクル性にも優れる。したがって本発明は、電気・電子機器の小型・軽量化、性能・信頼性向上、およびコスト低減に寄与するものである。
〔Si固溶指標Z〕
本発明ではCu−Ni−Si−Zn系銅合金を採用する。当該合金系では通常、Ni−Si系析出物を生成させることで強度上昇を図っている。また、析出物の生成により導電率・熱伝導度を向上させている。NiとSiによって形成される析出物は主としてNi2Si系の金属間化合物であると考えられる。本発明においても基本的にはその強度および導電率の向上作用を利用する。ただし、添加したNiおよびSiは時効処理によってすべてが析出物になるとは限らず、ある程度はCuマトリクス中に固溶した状態で存在する。発明者らの詳細な検討によれば、この固溶Siは、耐応力腐食割れ性を改善するうえで極めて有効であることがわかった。したがって、強度、導電性、耐応力腐食割れを同時にバランス良く改善するには、固溶Si量を確保しつつ、強度向上に有効な微細なNi−Si系析出物を分散させることが重要となる。
前記(1)式で定義されるSi固溶指標Zは、Cu−Ni−Si−Zn系銅合金のマトリクス中に固溶するSi量を導電率の値から評価する指標である。Ni−Si系析出物が微細分散している組織状態においてマトリクス中の固溶Si量を直接正確に測定することは必ずしも容易ではない。また析出物の量を測定することによってマトリクス中の固溶Si量を算出することも精度面で難しさがある。一方、固溶Si量は導電率に大きく反映される。ただし、合金組成によって導電率の値そのものが変動するため、固溶Si量を導電率によって評価するためには、合金組成の影響を考慮に入れる必要がある。Si固溶指標Zはこの点を考慮したものである。
合金中に含まれるSiが全量マトリクス中に固溶したと仮定すると、そのときSiに影響される導電率は最も低くなる。逆にSiが全量(ただしNi2Siを形成しうる最大量)析出物として析出したと仮定すると、そのときSiに影響される導電率は最も高くなる。(1)式において、分母はSi含有量に影響される導電率の最大変動幅に相当するから、これはSi固溶量の変動幅と考えることができる。分子は現実の材料(被測定材)とSiが全量固溶したと仮定した材料(最も導電率が低い材料)の導電率の差であるから、これは現実の材料のSi固溶量がどの程度であるのかを反映した値である。つまり(1)式で表されるSi固溶指標Zは、あるSi含有量の合金において、マトリクス中のSi固溶量が、Si固溶量の変動域を表すスケール上でどの位置にあるかを示す指標である。したがってZによって、現実の材料(被測定材)におけるSi固溶量の程度を知ることができる。Zが小さいほど固溶しているSi量が多く、Zが大きいほど析出しているSi量が多いことになる。ただし、このZ値によるSi固溶量の評価は、Ni含有量が0.4質量%以上、Si含有量が0.15質量%以上の合金において適用可能となる。
前述のように、当該合金系において、耐応力腐食割れ性は固溶Si量を確保することにより改善される。すなわちSi固溶指標Zが小さいほど耐応力腐食割れ性は良好になる。しかし反面、Zが小さすぎると導電率が低下し、またNi−Si析出物の量が不十分となるため強度レベルも低下する。このため、時効処理後においてZが適正範囲にあることが強度、導電性、耐応力腐食割れ性を同時に改善するための必要条件となる。しかしながら、強度レベルに関しては単に析出物の生成量だけを確保すれば向上するというものではない。析出物のサイズや分散形態が大きく影響するからである。そこで発明者らはさらに検討を進めた結果、溶体化処理後、すなわち時効処理前の状態においてSiを十分に固溶させておき、その後時効処理を施すことで、Ni−Si系析出物の微細分散が確保され、安定して強度の向上も達成できることを見出した。
具体的には、溶体化処理後においてSi固溶指標Zが0.3以下の組織状態を作る。その後、時効処理を施してZが0.55〜0.9の範囲、好ましくは0.6〜0.9の範囲になるような析出状態を実現する。このようなプロセスを経て得られた組織状態において、強度、導電性、および耐応力腐食割れ性が同時に安定して改善される。
〔合金組成〕
NiおよびSiは、析出物を形成し、強度上昇および導電性・熱伝導度向上に寄与する。その作用を十分に得るには、少なくとも0.4質量%以上のNi含有と、0.15質量%以上のSi含有が必要となる。しかし、これらの元素の含有量が多すぎると特に粒界で析出物が粗大化しやすくなり、曲げ加工性の低下を招く。種々検討の結果、Niは4.5質量%以下、Siは0.9質量%以下の範囲で含有させることが望ましい。したがってNi含有量は0.4〜4.5質量%の範囲とすることが望ましく、1.5〜3.5質量%がより好ましい。またSi含有量は0.15〜0.9質量%とすることが望ましく、0.3〜0.6質量%がより好ましい。
NiとSiの含有量の比は、できるだけ析出物Ni2Siの組成比に近付けることが望ましい。したがって本発明では質量%で表したNi/Si比を3.5〜5.5の範囲に調整することが好ましい。
Znは、強度およびはんだ付け性を向上させる作用を有する。また、Znを添加すると、素材の色が銅色(赤褐色)から黄銅色(金色)に変化するため装飾的な効果を呈するようになるとともに、スクラップの分別も容易になる。さらにZnを合金元素として比較的多量に含むことにより、安価な黄銅スクラップを原料として使用できるメリットがある。Zn含有量が5質量%未満だと黄銅スクラップの使用に大きな制約が生じ、また色の面からも銅との区別がつきにくい。発明者らは種々検討の結果、5質量%以上という比較的多量のZnを含有させた場合でも後述の製造法により導電性が十分確保できることを見出した。一方、Zn含有量が15質量%を超えると製造条件を適正化しても十分な導電性を確保することが難しくなり、曲げ加工性や耐応力腐食割れ性も低下するようになるため、適用可能な用途が限られてしまう。Zn含有量は5〜15質量%の範囲とすることが望ましく、6〜9質量%がより好ましい。
Snは、強度向上や耐応力緩和特性の向上に有効な元素である。これらの作用を十分に引き出すためには0.001質量%以上のSn含有量を確保することが望ましく、0.03質量%以上とすることが一層好ましい。またSnを合金成分とすることによりSnめっきスクラップの使用が可能になり、コスト低減に有利となる。特にZnとSnの両方を合金成分とすることで黄銅のSnめっきスクラップが使用できるようになり、原料コスト低減効果とリサイクル性向上効果が一層高まる。一方、2.0質量%を超えるSn含有は導電性、曲げ加工性、熱間圧延性の低下を招くため好ましくない。Snを含有させる場合は0.01〜2.0質量%の範囲とすることが望ましく、0.03〜2.0質量%とすることがより好ましく、0.05〜0.5質量%とすることが一層好ましい。
Pは、脱酸剤としての効果があり、鋳造性を改善する。その効果を十分に得るには0.005質量%以上のP含有量を確保することが望ましい。しかし、P含有量が0.2質量%を超えると導電性が著しく低下するようになる。したがってPを含有させる場合は0.005〜0.2質量%の含有量とすることが好ましい。
Feは、固溶強化を呈する元素であり、その作用を十分に発揮させるためには0.005質量%以上の含有量を確保することが望ましい。しかし、Fe含有量が1.0質量%を超えると導電率や曲げ加工性の大幅な低下を招くことがあり好ましくない。したがってFeを含有させる場合は0.005〜1.0質量%の範囲とすることが望ましい。なお、FeはCu−Ni−Si系合金のスクラップから混入しやすい元素であり、そのスクラップを使用することによってFe含有量を上記の範囲に調整することも可能である。
Mgは、熱間加工性、強度、耐応力緩和特性の向上に有効であり、その作用を十分に発揮させるためには0.005質量%以上の含有量を確保することが望ましい。しかし、Mg含有量が0.5質量%を超えると導電率や曲げ加工性の大幅な低下を招くことがあり好ましくない。したがってMgを含有させる場合は0.005〜0.5質量%の範囲とすることが望ましい。なお、MgもFeと同様にCu−Ni−Si系合金のスクラップから混入しやすい元素であり、そのスクラップを使用することによってMg含有量を上記の範囲に調整することも可能である。
CoおよびCrは、いずれもNiと置換することでSiとの金属間化合物をつくり、材料の強度を向上させる。その作用を十分発揮させるためには、Co、Crいずれの場合も0.005質量%以上の含有量とすることが望ましく、0.03質量%以上とすることが一層好ましい。しかし、いずれも4.0質量%を超えて多量に含有させると曲げ加工性と導電率の低下を招く。したがって、CoまたはCrを含有させる場合は、いずれの場合も0.005〜4.0質量%の範囲とすることが望ましく、0.03〜4.0質量%とすることがより好ましく、0.05〜0.5質量%が一層好ましい。
任意添加元素であるSn、P、Fe、Mg、Cr、Coは単独で含有させてもよいし複合して含有させてもよい。
〔特性〕
コネクタ、リレー、スイッチ、ソケット、さらにはリードフレーム等の電気・電子部品に信頼性をもって適用するには、板材において圧延方向に引張試験を行ったときの引張強さが650N/mm2以上となる強度レベルを呈することが望ましい。特に今後ますます薄肉化への要求が強まることを考慮すると、引張強さが670N/mm2以上、あるいは700N/mm2以上、あるいはさらに720N/mm2以上の強度レベルを呈することが極めて有利となる。また同時に導電性は25%IACS以上の導電率を具備することが望まれる。後述の製造法に従えば、本発明で規定する銅合金組成において、このような優れた特性を実現することが可能である。
また、種々の電気・電子部品への加工を考慮すると、優れた曲げ加工性を具備していることが望ましい。具体的には、圧延方向に平行な方向を曲げ軸とする曲げ加工(BW)において、最小曲げ半径(MBR/t、ただしtは板厚)が2.0以下となる曲げ加工性を呈することが望ましく、1.5以下、あるいはさらに1.0以下を呈するものが一層好ましい。高強度を図った合金では一般的に曲げ加工性が低下する傾向にあるが、本発明では後述の溶体化処理および時効処理の組み合わせにより、優れた強度−導電性−曲げ加工性バランスを実現し得る。
その他の特性としては、圧延方向に引張試験を行ったときの伸びが5%以上であることが望ましく、7%以上、あるいはさらに9%以上であることが一層好ましい。また、はんだ濡れ性に優れること、および熱間加工性に優れることも重要である。
〔製造法〕
以上のような優れた特性をCu−Ni−Si−Zn系銅合金に付与するための手法について、発明者らは詳細な検討を行ってきた。その結果、溶体化処理後の冷却速度を十分大きくし、かつ時効処理後の冷却を徐冷とする「溶体化処理」−「時効処理」の組み合わせにより、上記特性の付与が可能となることを見出した。銅合金材料は一般に、熱間圧延後に、熱処理と冷間圧延を複数回付与する工程で製造される。時効析出を利用する銅合金の場合は、通常、途中のいずれかの熱処理工程で溶体化処理を行い、その後に行われるいずれかの熱処理工程で時効処理を行う。本発明の銅合金の製造においてもそのような工程が採用できる。ただし、以下のような条件とすることが肝要である。
溶体化処理では、冷却後にSi固溶指標Zが0.3以下となるように、Siの固溶量を十分に確保する条件で行うことが望ましい。そのためには加熱温度と冷却速度が重要である。加熱温度は650〜850℃の範囲とする。合金組成によって最適温度は多少変動するが、上記温度範囲への加熱により目的を達成できる。概ね80%以上の熱間圧延と、その後に概ね60%以上の冷間圧延を経た材料を対象とするならば、上記温度域での保持時間は30min以下でよい。多くの場合、10min以下、例えば30sec〜10minの加熱保持で良好な結果が得られる。そして、上記温度域から冷却する際は、650℃から250℃までの平均冷却速度を200℃/min以上とする。この冷却速度が200℃/min未満になると、冷却過程で粗大なNi−Si系の析出相が生成しやすくなり、溶体化処理後にSi固溶指標Zを安定して0.3以下にすることが困難となる。また、曲げ加工性の低下をまねく。
溶体化処理後の状態においてZが0.3を超えて大きくなる(すなわち固溶Si量が不足する)と、後工程の時効処理によって十分な析出強化が得られず、最終的にZが0.55〜0.9の適正範囲になったとしても、強度の改善が不十分となる
時効処理では、上記の方法で十分に溶体化された(すなわちZが0.3以下になっている)材料を、380〜550℃、好ましくは400〜550℃の温度域で保持する。合金組成によって最適温度は多少変動するが、上記温度範囲において適正条件を見出すことができる。保持時間(時効処理時間)は20min〜8hr、好ましくは1〜5hrとすればよい。そして、本発明では時効処理において加熱保持後の冷却を「徐冷」とすることが重要である。すなわち、上記温度域から(少なくとも380℃から)150℃に達するまでの平均冷却速度を5℃/min以下で徐冷する。このような徐冷処理により、急冷の場合と比較して均一かつ微細な析出物が多く得られ、これがZnを比較的多量に含む当該合金系において強度および導電性の顕著な改善をもたらすのである。ただし本発明の合金では時効処理後においてSi固溶指標Zが0.55〜0.9の範囲になるようにマトリクス中に固溶Siが残っている必要がある。Zが0.55を下回ると析出物の量が不足することにより強度不足が生じ、同時に固溶Si量が多すぎるきることにより導電性の低下が生じる。逆にZが0.9を超えるとマトリクス中の固溶Si量が不足して耐応力腐食割れ性が著しく低下する。Zのコントロールは、主として時効処理温度および時間を適正化することで行い得る。
全般的な工程についてみると、例えば以下のような製造プロセスが採用できる。
鋳造は、Znを含有する一般的な銅合金の溶製方法に従い、1100〜1300℃で溶解した後、半連続鋳造または連続鋳造で行うことができる。
鋳造後に熱間圧延を行う場合は、鋳造組織中に生じているSn、Mg、Ni2Si相などの偏析を熱間圧延前の加熱によってできるだけ均質化しておくことが望ましい。具体的には平衡状態で均質な固溶状態となる800℃以上の温度域に1hr以上保持する加熱が有効である。加熱温度は800〜950℃が好ましい。熱間圧延は650℃以上の温度で最終パスを終了し、650℃以下の温度域を水冷等により急冷する。熱間圧延後は適正な厚みの面削を行い、表面に発生しているNi−Si系の粗大析出物や酸化物を除去する。
熱間圧延を行わない場合は、組織の均質化のために、鋳造後に800℃以上の温度で2hr以上の加熱処理を行うことが望ましい。850〜900℃の加熱温度とすることが好ましい。
次いで例えば60%以上の加工率で冷間圧延を行い、その後650〜850℃の温度で30min以下の溶体化処理を行う。その際、前述のように少なくとも250℃に達するまでの平均冷却速度を200℃/min以上とすることが重要である。溶体化処理後は直接上述の時効処理に供することも可能であるが、60%以下、好ましくは50%以下の範囲で冷間圧延を施した後に時効処理に供することが一層好ましい。この場合の冷間圧延率は15%以上を確保することが特に効果的である。なお、上記の冷間圧延率の範囲であれば、溶体化処理後の導電率(すなわちSi固溶指標Z)は概ね維持される。
一般に銅合金の製造は熱処理と冷間圧延を繰り返すことによって行われるが、本発明では、前記溶体化処理後に行われる最初の熱処理で時効処理を行う。その時効処理は上述したとおり徐冷を伴う条件で行う必要がある。時効処理後には、得られた析出物が形態変化しないよう、時効処理温度以上の加熱は避けるべきである。時効処理後には必要に応じて最終的な冷間圧延を行い、その後例えば250〜500℃未満、好ましくは250〜350℃の温度に20sec〜10min保持する歪取り焼鈍を行うことが望ましい。これにより強度、導電性、曲げ加工性等をさらに向上させることができる。
表1に示す組成の銅合金を高周波溶解炉を用いて溶解し、大気中かつ木炭被覆下で半連続鋳造法により鋳造して厚さ20mmの鋳片を得た。この鋳片を910℃で2hr加熱保持したのち抽出して、厚さ3mmまで熱間圧延し、最終パス終了後700℃から水冷した。得られた熱延板を面削し厚さ2mmとしたのち、0.5mmまで冷間圧延を行った。その後、溶体化処理を650〜800℃×20sec〜5minの加熱条件で行った。溶体化処理における冷却は、強制空冷または水冷することにより650℃から250℃までの平均冷却速度を200℃/min以上にコントロールした。ただし一部の試料(No.26)では炉外で放冷することにより650℃から250℃までの平均冷却速度を約170℃/minと遅くした。冷却速度は試料表面に取り付けた熱電対により測定した。
溶体化処理後の材料について、導電率をJIS H0505に基づいて測定し、前述の(1)〜(4)式を用いて溶体化処理後のSi固溶指標Zを求めた。
その後、厚さ0.35mmまで冷間圧延したのち、380〜550℃×2〜8hrの時効処理を施した。時効処理における冷却は炉冷とし、380℃から150℃までの温度域における冷却速度を5℃/min以下にコントロールした。なお、試料No.12は時効処理温度を380℃とし、他は400〜550℃の範囲とした。またNo.24は380℃から150℃までの温度域における冷却速度を10℃/minにコントロールした。冷却速度は熱電対により測定した。次いで厚さ0.3mmまで冷間圧延したのち、400〜500℃×20sec〜5minの範囲で歪取り焼鈍を行った。
Figure 2007182615
得られた各銅合金板材について、引張強さ、伸び、硬さ、導電率、曲げ加工性、はんだ濡れ性、耐応力腐食割れ性を調べた。
引張強さおよび伸びは圧延方向に平行方向のJIS 5号試験片を用いてJIS Z2241に基づいて測定した。
硬さは板の表面についてマイクロビッカース硬度計により測定した。
導電率はJIS H0505に基づいて測定した。またその導電率から、前述の(1)〜(4)式を用いて時効処理後のSi固溶指標Zを求めた。
曲げ加工性は、JCBA T307(日本伸銅協会規格)に準じたW曲げ試験方法によって、曲げ軸が圧延方向に対し直角方向(GW)および平行方向(BW)となる曲げ試験をそれぞれ実施してMBR/t(tは板厚)により評価した。
はんだ濡れ性はJIS C0053に準拠した方法で調べ、非活性ロジンフラックスに5秒間浸漬したのち、215℃のはんだ(60%Sn−40%Pb)浴に3秒間浸漬し、はんだの濡れ面積が90%以上のものを○(良好)、90%未満のものを×(不良)と評価した。
耐応力腐食割れ性はASTM G37−85に準拠した方法で調べ、圧延方向に平行方向の試験片にて曲げビーム試験を72h行った後、試験片表面を酸および水で洗い、光学顕微鏡を用いて試験片表面を倍率50倍で観察し、割れが認められないものを○(良好)、割れが認められたものを×(不良)と評価した。
結果を表2に示す。
Figure 2007182615
表2からわかるように、本発明例のものはいずれも引張強さ650N/mm2以上の高強度を呈し、導電率も25%IACS以上を有していた。また、曲げ加工性はBWにおけるMBR/t値で2.0以下をクリアした。さらに、はんだ濡れ性、耐応力腐食割れ性も良好であった。なお、No.3とNo.12は同組成の合金であるが、時効処理温度380℃のNo.12に比べ時効処理温度を400℃以上としたNo.3の方が強度向上効果が大きかった。
これに対し比較例No.21はZn含有量が多いため導電率が低く、曲げ加工性、はんだ濡れ性、および耐応力腐食割れ性にも劣った。No.22および23はそれぞれSi含有量およびNi含有量が少ないため、Ni−Si系析出物による強度向上が不十分であった。これらはNiまたはSiの含有量が少ないためにZ値による特性評価はできない。No.24は時効処理後の冷却速度が速すぎたため導電性に劣り、Si固溶指標Zが0.9を超えた。このため、強度および耐応力腐食割れ性が悪かった。No.25も同組成の合金であるが、溶体化処理における冷却速度が遅すぎたため溶体化処理後(時効処理前)のSi固溶指標Zが0.3を超え、時効処理後にZが0.55〜0.9の範囲になったにもかかわらず、強度レベルが低かった。No.26はZn含有量が少ないためはんだ濡れ性に劣った。
〔Si固溶指標Zの算出例〕
上記の本発明例No.3の例を挙げて、Si固溶指標Zの求め方を説明する。
[1]溶体化処理後のSi固溶指標Z
(i)Siが全て固溶した場合の計算上の導電率b(%IACS)の算出
表1のNo.3において、質量%で表される各元素の含有量は、Ni(mass%)=1.99、Si(mass%)=0.41、Zn(mass%)=5.13、Sn(mass%)=0.31であり、残部はCuであるからCu(mass%)=100−(Ni(mass%)+Si(mass%)+Zn(mass%)+Sn(mass%))=92.16である。
この組成を、補正せずにそのまま、質量%から原子%に換算する。各元素のXの原子量MXを使って、例えばNi(at%)の場合、以下のようにして求まる。
Ni(at%)=100×(Ni(mass%)/MNi)/(Cu(mass%)/MCu+Ni(mass%)/MNi+Si(mass%)/MSi+Zn(mass%)/MZn+Sn(mass%)/MSn
=100×(1.99/58.69)/(92.16/63.55+1.99/58.69+0.41/28.09+5.13/65.39)=2.15
他の元素についても同様にして、Si(at%)=0.92、Zn(at%)=4.97、Sn(at%)=0.17と求まる。残部はCuであるからその他の元素の原子%(Fe(at%)など)は全て0(ゼロ)とする。
これらの原子%の値を前記(3)式に代入すると、
ρS=17.24+(12.2×Ni(at%)+39.5×Si(at%)+3×Zn(at%)+28.8×Sn(at%)+67×P(at%)+96.6×Fe(at%)+6×Mg(at%)+63×Co(at%)+40×Cr(at%))−(0.3×12.2×Ni(at%)2+4.9×39.5×Si(at%)2+2.7×3×Zn(at%)2+3.2×28.8×Sn(at%)2+20×96.6×Fe(at%)2)/100
=17.24+(12.2×2.15+39.5×0.92+3×4.97+28.8×0.17+67×0+96.6×0+6×0+63×0+40×0)−(0.3×12.2×2.152+4.9×39.5×0.922+2.7×3×4.972+3.2×28.8×0.172+20×96.6×02)/100
=95.78
これを前記(2)式に代入すると、
p=17.24/ρS×100
=17.24/95.78×100
=18.00
したがって、b=18.00である。
(ii)Siが全て析出した場合(固溶量ゼロの場合)の計算上の導電率c(%IACS)の算出
上述のように、表1のNo.3において、質量%で表される各元素の含有量は、Ni(mass%)=1.99、Si(mass%)=0.41、Zn(mass%)=5.13、Sn(mass%)=0.31、Cu(mass%)=92.16である。ただしここでは、Ni含有量(質量%)を前記(4)式によるNiAに、またSi含有量(質量%)を前記(5)式によるSiAにそれぞれ補正する。
(4)式より、
NiA=Ni(mass%)−2×(58.69/28.09)×Si(mass%)
=1.99−2×(58.69/28.09)×0.41
=0.28
(5)式より、
SiA=Si(mass%)−(1/2)×(28.09/58.69)×Ni(mass%)
=0.41−(1/2)×(28.09/58.69)×1.99
=−0.07
この計算値は負であるから、(5)式のただし書きより、
SiA=0
となる。したがって、上述(i)の手順において、Ni(mass%)を0.28、Si(mass%)を0にそれぞれ変えたこと以外、同じ方法で(2)式のpを求めると、そのpがcの値となる。
具体的には、まず、質量%を原子%に換算すると、Ni(at%)=0.30、Si(at%)=0、Zn(at%)=5.00、Sn(at%)=0.17と求まる。残部はCuであるからその他の元素の原子%(Fe(at%)など)は全て0(ゼロ)である。
これらの原子%の値を前記(3)式に代入すると、
ρS=17.24+(12.2×Ni(at%)+39.5×Si(at%)+3×Zn(at%)+28.8×Sn(at%)+67×P(at%)+96.6×Fe(at%)+6×Mg(at%)+63×Co(at%)+40×Cr(at%))−(0.3×12.2×Ni(at%)2+4.9×39.5×Si(at%)2+2.7×3×Zn(at%)2+3.2×28.8×Sn(at%)2+20×96.6×Fe(at%)2)/100
=17.24+(12.2×0.30+39.5×0+3×5.00+28.8×0.17+67×0+96.6×0+6×0+63×0+40×0)−(0.3×12.2×0.302+4.9×39.5×02+2.7×3×5.002+3.2×28.8×0.172+20×96.6×02)/100
=38.74
これを前記(2)式に代入すると、
p=17.24/ρS×100
=17.24/38.74×100
=44.50
したがって、c=44.50である。
(iii)Zの算出
表2より、No.3の溶体化処理後の導電率aは23.4(%IACS)である。
前記(1)式に、a=23.4、b=18.00、c=44.50を代入すると、
Z=(a−b)/(c−b)
=(23.4−18.00)/(44.50−18.00)
=0.20
よって、No.3の溶体化処理後におけるSi固溶指標Zは0.20と算出された。
[2]時効処理後のSi固溶指標Z
前記(1)式に代入するためのbおよびcは、上述[1]のものと共通である。
また、表2より、No.3の時効処理後の導電率aは35.1(%IACS)である。
前記(1)式に、a=35.1、b=18.00、c=44.50を代入すると、
Z=(a−b)/(c−b)
=(35.1−18.00)/(44.50−18.00)
=0.65
よって、No.3の時効処理後におけるSi固溶指標Zは0.65と算出された。

Claims (8)

  1. 質量%で、Ni:0.4〜4.5%、Si:0.15〜0.9%、Zn:5〜15%、残部実質的にCuの組成を有し、下記(1)式のSi固溶指標Zが0.55〜0.9であり、かつ引張強さが650N/mm2以上である銅合金。
    Z=(a−b)/(c−b) ……(1)
    ただし、
    a:被測定材の実測された導電率(%IACS)、
    b:Siが全て固溶した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
    c:Siが全て析出した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、Ni含有量(質量%)を下記(4)式のNiA(質量%)に、Si含有量(質量%)を下記(5)式のSiA(質量%)にそれぞれ補正したうえで、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
    である。
    p=17.24/ρS×100 ……(2)
    ρS=17.24+(12.2×Ni(at%)+39.5×Si(at%)+3×Zn(at%)+28.8×Sn(at%)+67×P(at%)+96.6×Fe(at%)+6×Mg(at%)+63×Co(at%)+40×Cr(at%))−(0.3×12.2×Ni(at%)2+4.9×39.5×Si(at%)2+2.7×3×Zn(at%)2+3.2×28.8×Sn(at%)2+20×96.6×Fe(at%)2)/100 ……(3)
    NiA=Ni(mass%)−2×(58.69/28.09)×Si(mass%)、ただし上式でNiA<0となるときは、NiA=0とする ……(4)
    SiA=Si(mass%)−(1/2)×(28.09/58.69)×Ni(mass%)、ただし上式でSiA<0となるときは、SiA=0とする ……(5)
    ここで、Ni(mass%)およびSi(mass%)は、それぞれ質量%で表された合金中のNi含有量およびSi含有量である。
  2. さらにSn:2.0%以下、P:0.2%以下、Fe:1.0%以下、Mg:0.5%以下、Co:4.0%以下、Cr:4.0%以下のうち1種以上を含有する請求項1に記載の銅合金。
  3. さらにSn:0.01〜2.0%、P:0.005〜0.2%、Fe:0.005〜1.0%、Mg:0.005〜0.5%、Co:0.005〜4.0%、Cr:0.005〜4.0%のうち1種以上を含有する請求項1に記載の銅合金。
  4. 導電率が25%IACS以上である請求項1〜3のいずれかに記載の銅合金。
  5. 下記(1)式のSi固溶指標Zが0.3以下である材料に対して時効処理を施すことにより同Zを0.55〜0.9に調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の銅合金の製造法。
    Z=(a−b)/(c−b) ……(1)
    ただし、
    a:被測定材の実測された導電率(%IACS)、
    b:Siが全て固溶した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
    c:Siが全て析出した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、Ni含有量(質量%)を下記(4)式のNiA(質量%)に、Si含有量(質量%)を下記(5)式のSiA(質量%)にそれぞれ補正したうえで、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
    である。
    p=17.24/ρS×100 ……(2)
    ρS=17.24+(12.2×Ni(at%)+39.5×Si(at%)+3×Zn(at%)+28.8×Sn(at%)+67×P(at%)+96.6×Fe(at%)+6×Mg(at%)+63×Co(at%)+40×Cr(at%))−(0.3×12.2×Ni(at%)2+4.9×39.5×Si(at%)2+2.7×3×Zn(at%)2+3.2×28.8×Sn(at%)2+20×96.6×Fe(at%)2)/100 ……(3)
    NiA=Ni(mass%)−2×(58.69/28.09)×Si(mass%)、ただし上式でNiA<0となるときは、NiA=0とする ……(4)
    SiA=Si(mass%)−(1/2)×(28.09/58.69)×Ni(mass%)、ただし上式でSiA<0となるときは、SiA=0とする ……(5)
    ここで、Ni(mass%)およびSi(mass%)は、それぞれ質量%で表された合金中のNi含有量およびSi含有量である。
  6. 下記(1)式のSi固溶指標Zが0.3以下となるように溶体化処理した材料に、60%以下の冷間圧延を施し、その後、380〜550℃の温度域で加熱保持後150℃以下の温度域まで平均冷却速度5℃/min以下で徐冷する時効処理を施すことにより同Zを0.55〜0.9に調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の銅合金の製造法。
    Z=(a−b)/(c−b) ……(1)
    ただし、
    a:被測定材の実測された導電率(%IACS)、
    b:Siが全て固溶した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
    c:Siが全て析出した場合の計算上の導電率(%IACS)であり、Ni含有量(質量%)を下記(4)式のNiA(質量%)に、Si含有量(質量%)を下記(5)式のSiA(質量%)にそれぞれ補正したうえで、原子%に換算された各合金元素の含有量を下記(3)式に代入することによって下記(2)式により定まるp値、
    である。
    p=17.24/ρS×100 ……(2)
    ρS=17.24+(12.2×Ni(at%)+39.5×Si(at%)+3×Zn(at%)+28.8×Sn(at%)+67×P(at%)+96.6×Fe(at%)+6×Mg(at%)+63×Co(at%)+40×Cr(at%))−(0.3×12.2×Ni(at%)2+4.9×39.5×Si(at%)2+2.7×3×Zn(at%)2+3.2×28.8×Sn(at%)2+20×96.6×Fe(at%)2)/100 ……(3)
    NiA=Ni(mass%)−2×(58.69/28.09)×Si(mass%)、ただし上式でNiA<0となるときは、NiA=0とする ……(4)
    SiA=Si(mass%)−(1/2)×(28.09/58.69)×Ni(mass%)、ただし上式でSiA<0となるときは、SiA=0とする ……(5)
    ここで、Ni(mass%)およびSi(mass%)は、それぞれ質量%で表された合金中のNi含有量およびSi含有量である。
  7. 溶体化処理は、材料を650〜850℃に保持後、650から250℃まで平均冷却速度が200℃/min以上となるように冷却する条件で行うものである請求項6に記載の銅合金の製造法。
  8. 時効処理後に冷間圧延を行い、その後250〜500℃で20sec〜10min保持する歪取り焼鈍を施す請求項5〜7のいずれかに記載の銅合金の製造法。
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