JP2007176905A - 有機金属錯体の抽出方法及び製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機溶媒に溶解した有機金属錯体を容易に且つ高い回収率で回収する有機金属錯体の抽出方法及び、有機金属錯体を再度合成する有機金属錯体の合成方法を提供する。
【解決手段】下記液(a)を、塩基の存在下、液(b)と接触させて液(a)中の有機金属錯体を、該金属を含む化合物として液(b)に抽出する。
液(a):有機溶剤に可溶な有機金属錯体と、水性溶媒又は水溶性溶媒と分液する有機溶剤とを含む液
液(b):水性溶媒又は水溶性溶媒
さらに、上記抽出方法により抽出された金属を含む化合物に、酸を反応させることにより有機金属錯体を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は有機溶媒に溶解した有機金属錯体を、金属を含む化合物として回収する有機金属錯体の抽出方法、及び回収された金属を含む化合物から有機金属錯体を再生する有機金属錯体の製造方法に関する。より詳細には例えば有機金属錯体を触媒として使用する有機合成において、反応後の有機金属錯体を含む反応液から有機金属錯体を金属を含む化合物として回収し、再利用するのに有用な有機金属錯体の抽出方法及び、製造方法に関する。
遷移金属元素等の金属元素は、種々の有機反応の触媒として頻繁に使用されている(例えば特許文献1)。従って、使用後の金属を有機反応終了後の廃液等から回収する技術は工業的にも重要である。特に、簡易な操作により高収率で該金属を回収できる技術の検討は急務である。
有機溶媒中から金属触媒を回収する方法としては、一般的には物理吸着による分離法、イオン交換樹脂等の化学的吸着による分離法、液−液抽出による分離法などが考えられる。しかし、物理吸着による分離法では確実な脱着が困難である。また、通常、金属を有機反応の触媒として使用する場合には、該金属を有機溶媒に可溶化させるために金属に有機配位子を配位させて有機金属錯体として使用する場合が多く、このような有機金属錯体は水には難溶である。従って、イオン交換樹脂等による化学吸着による分離法では吸着効率が非常に悪く、液−液抽出による回収も困難である。
特開2005−126395号公報
本発明は有機反応終了後の反応液等から触媒等として使用した有機金属錯体を該金属を含む化合物として容易に且つ高い回収率で回収することのできる有機金属錯体の抽出方法を提供することを目的とする。
本発明は又、上記方法により回収した金属化合物から簡易に且つ効率よく有機金属錯体を再生できる有機金属錯体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、反応終了後の反応液を塩基で処理することにより有機金属錯体を有機溶剤層から水性溶媒層又は水溶性溶媒層に該金属を含む化合物として抽出できることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は、下記液(a)を、塩基の存在下、液(b)と接触させて液(a)中の有機金属錯体を、該金属を含む化合物として液(b)に抽出する有機金属錯体の抽出方法を提供する。
液(a):有機溶剤に可溶な有機金属錯体と、水性溶媒又は水溶性溶媒と分液する有機溶剤とを含む液
液(b):水性溶媒又は水溶性溶媒
上記有機金属錯体としては、例えば有機イリジウム錯体を例示できる。
液(a)と液(b)とを接触させる際には、さらに酸化剤の存在下において接触させることが好ましい。
本発明はさらに又、上述の方法により液(b)に抽出された金属を含む化合物に、酸を反応させることを特徴とする有機金属錯体の製造方法を提供する。
本発明によれば、有機溶媒に溶解した有機金属錯体を、特別な装置等を必要とせず、簡単に且つ高い回収率で、該金属を含む化合物の水性溶液又は水溶性溶液として回収することができる。例えば、有機反応終了後の反応液中から、触媒として使用した有機金属錯体を回収するのに大変有用である。さらに回収した金属を含む水性溶液又は水溶性溶液に簡単な処理を施すことにより、触媒として再度利用可能な有機金属錯体を製造することができる。
本発明の方法により抽出、回収可能な有機金属錯体、つまり液(a)に含まれる有機溶剤に可溶な有機金属錯体としては、例えば、遷移金属元素を含む有機金属錯体を挙げることができる。より詳細には、ランタン、セリウムなどのIIIA族元素(特にランタノイド元素);チタン、ジルコニウムなどのIVA族元素;バナジウムなどのVA族元素;クロム、モリブデン、タングステンなどのVIA族元素;マンガンなどのVIIA族元素;鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などのVIII族元素、銅、銀などのIB族元素に有機配位子を配位させた有機金属錯体が挙げられる。特に、白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金)を含む錯体は本発明の方法によって好適に抽出、回収することができ、とりわけ、有機イリジウム錯体は本発明の方法による抽出、回収、及び錯体の製造に適している。
有機金属錯体中で金属に配位している配位子としては配位性の化合物等であればよく特に制限されない。例えばOH(ヒドロキソ)、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど)、アシル(アセチル、プロピオニルなど)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子(塩素、臭素など)、CO、CN、酸素原子、H2O(アコ)、ホスフィン(トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなど)のリン化合物、NH3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素化合物、不飽和炭化水素(シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなど)、アセトニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
なお、有機反応の触媒として使用した有機金属錯体の配位子は、一般的に反応開始時に使用した配位子とは異なる場合が多く、その反応溶媒であったり、反応原料、反応時に生成する化合物等の中から配位性の強い有機物質が配位子となる。
有機金属錯体の代表的な例をイリジウム錯体を例にとって示すと、例えば、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。有機金属錯体は1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
液(a)に含まれる水性溶媒又は水溶性溶媒と分液する有機溶剤は、特に制限されないが、塩基と反応して分解等しないものが好ましい。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどのアルコール類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテルなどのエーテル;メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類が挙げられる。これらの中で、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、とりわけ、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ペンタンなどが抽出温度、濃縮の作業性等の点から好ましい。有機溶剤は、1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
液(a)としては、例えば有機金属錯体を触媒として使用する有機合成反応の反応終了後の反応液が挙げられる。このような有機合成反応として具体的には、例えば、酸化反応、還元反応、エステル化反応、エーテル化反応、加水分解、環化反応、炭素−炭素結合反応、その他の置換反応及び付加反応が挙げられる。代表的な例として、有機金属錯体を触媒として、ビニルエステル化合物とヒドロキシ化合物とを反応させて対応するビニルエーテル化合物を得る反応が挙げられる。より詳細には、例えば、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)及び炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下、1,4−シクロヘキサンジオールとプロピオン酸ビニルとをトルエン中で副生する水を除去しながら反応させ、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル及び1,4−シクロヘキサンジオールモノビニルエーテルを得る反応などである。なお、上記ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−プロペニル、酢酸2−メチル−1−プロペニル、酢酸1,2−ジメチル−1−プロペニル、プロピオン酸ビニル、プロピオン酸イソプロペニル、プロピオン酸1−プロペニル、プロピオン酸2−メチル1−プロペニル、1,2−ジメチル−1−プロペニル、ギ酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられる。ヒドロキシ化合物には、例えば飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール、飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール、芳香族第1級アルコール、複素環式第1級アルコール及びこれらの炭素部位に置換基を有する第1級アルコールなどの第1級アルコール類;飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合している第2級アルコール、飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む)、芳香族第2級アルコール、複素環式第2級アルコールなどの第2級アルコール類;飽和又は不飽和脂肪族第3級アルコール、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合している第3級アルコール、脂環式環を構成する一つの炭素原子にヒドロキシル基と脂肪族炭化水素基とが結合している第3級アルコール、橋かけ炭素環の橋頭位にヒドロキシル基を有する橋かけ炭素環含有第3級アルコール、複素環式第3級アルコールなどの第3級アルコール類;芳香族炭素環や、芳香族複素環にヒドロキシル基が結合している化合物などのフェノール類が含まれる。また、ヒドロキシル基を2以上有する化合物を使用してもよい。
上記液(b)の水性溶媒には、水、又は水と水に可溶な有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類)との混合物が含まれる。液(b)の水溶性溶媒としては、水に可溶、且つ液(a)と分液可能な有機溶媒を使用することができ、例えば、メタノールを使用できる。なお、液(b)としてメタノールを使用する場合には、液(a)の有機溶媒としては、例えばヘキサンを使用できる。液(b)として水と水に可溶な有機溶媒との混合物を使用する場合は、両者の割合は特に制限されず、任意の割合で使用できる。
本発明において液(a)と液(b)とを接触させる際に存在させる塩基としては、特に制限されず、例えば脂肪族モノアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなど)、脂環式モノアミン(シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなど)、芳香族モノアミン(アニリン、トルイジン、ジフェニルアミンなど)、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの有機アミン化合物;アンモニア;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムなどのアルカリ土類金属;アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物であって水又はアルコールに溶解し塩基性を示すもの(例えば水酸化物、酸化物、水素化物、炭酸塩、アルコキシドなど)などが挙げられる。これらの中で、アルカリ金属やこれらの塩など、水溶液としたときにpHの高いものが好ましく、コスト、取り扱い性の面から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。なお、実際の抽出作業においては、上記塩基は通常水溶液又はアルコール溶液として使用される。具体的には、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、ナトリウムメトキシド−メタノール溶液などである。
塩基の添加量は特に制限されないが、例えば有機金属錯体中の金属に対して1〜1000当量、好ましくは10〜100当量程度の範囲から選択することができる。
液(a)を、塩基の存在下、液(b)に接触させる方法は特に制限されないが、例えば、液(b)に塩基を添加して塩基性水性溶液とし、該塩基性水性溶液を撹拌下、液(a)に滴下する方法が挙げられる。この際、塩基性水性溶液の塩基濃度は濃い方がよいが、取り扱い性を考慮して、例えば5〜15規定の範囲に調整するのがよい。
液(a)を液(b)に接触させる際の温度は、例えば0〜150℃、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは50〜70℃の範囲から選択されるが、これらに制限されない。接触は、常圧下に行ってもよく、高圧下又は減圧下に行ってもよい。液(a)と液(b)とを接触させる時間は特に制限されないが、例えば5分〜10時間、好ましくは1〜5時間程度の範囲から選択できる。接触時の雰囲気は特に制限されず、液(a)に含まれる有機合成反応により得られた生成物の性質等を考慮して、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などから選択される。
なお、液(a)と液(b)との接触は上述のような滴下法によって行ってもよく、液(a)と液(b)と塩基とを同時に混合し、撹拌する方法によって行ってもよく、混合の順序や方法は特に制限されない。
液(a)と液(b)との割合は分液可能な割合である限り特に制限されないが、操作性の点から、例えば液(a):液(b)=1:9〜9:1程度である。
液(a)と液(b)とを接触させる際には、さらに酸化剤を存在させることにより抽出効率を向上させることができる。酸化剤としては、例えば酸素、有機過酸化物、過酸化水素、酸化ハロゲン化金属、オゾン、アミン−N−オキシドなどが挙げられる。これらの中で、コスト、取り扱い性の点から酸素、過酸化水素が特に好ましい。酸化剤の使用量は、例えば過酸化水素などの溶液、液体又は固体の形態で使用するものであれば、有機金属錯体中の金属に対して1〜100当量程度、好ましくは1〜5当量程度の範囲から選択できる。酸素やオゾンなど、雰囲気中に混合した形態(気体)で使用するものであれば雰囲気中の酸化剤の濃度は0.1%以上(例えば0.1〜40%)、好ましくは5%以上(例えば5〜40%)とするのがよい。なお、酸化剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
混合撹拌終了後、静置することにより液(a)と液(b)との混合物は、有機溶媒層(油層)と水性溶媒層又は水溶性溶媒層との2層に分離する。水性溶媒層又は水溶性溶媒層には液(a)中に含まれていた有機金属錯体が、該金属を含む化合物として抽出される。有機溶媒層には通常有機合成反応により得られた生成物や残存原料物質などが溶解している。例えば、有機合成反応がビニルエーテルの合成反応であれば、有機溶媒層には反応により得られたビニルエーテルや、原料として使用したビニルエステル類などが含まれる。
上記の抽出方法により液(b)に抽出された金属を含む化合物に、酸と配位子とを反応させることにより有機金属錯体を製造することができる。抽出及び分液操作後の水性溶媒層又は水溶性溶媒層には、金属を含む化合物に加えて、液(a)に含まれていた有機金属錯体由来の配位子等の配位子が含まれている場合がある。このような場合には、水性溶媒層又は水溶性溶媒層に酸を添加することにより、上記金属を含む化合物と、酸及び配位子とが反応して有機金属錯体が生成する。水性溶媒層又は水溶性溶媒層に配位子が含まれていない場合は、酸と配位子とを添加して金属を含む化合物と反応させることにより有機金属錯体が生成する。なお、水性溶媒層又は水溶性溶媒層に配位子を含む場合であっても、酸に加えて配位子を添加して反応させて有機金属錯体を製造することができる。有機金属錯体の製造は、上述のように抽出、分液操作により得られた水性溶媒層又は水溶性溶媒層をそのまま使用してもよく、適宜な方法により濃縮したり、金属を含む化合物を単離して使用してもよい。このようにして得られた有機金属錯体は、濃縮、晶析等の処理を行って回収し、有機合成反応の触媒として使用することができる。
なお、この際、必要に応じて酸化剤や還元剤として機能する化合物を添加して所望の価数を有する有機金属錯体を得ることができる。このような化合物として例えば、アルコール、過酸化水素、シュウ酸などが挙げられ、これらの中でアルコールを好適に使用することができる。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどの炭素数2〜9のアルコールが挙げられる。特にエタノール及びイソプロピルアルコールを好適に使用できる。アルコールの使用量は特に制限されないが、例えばイリジウム等の金属に対して1〜1000モル倍、好ましくは5〜200モル倍程度の範囲から選択することができる。
上記酸としては例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等のハロゲン化水素酸;硫酸、硝酸等の無機酸;酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸などを使用することができる。酸は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。酸の添加量は水性溶媒のpHが1〜4程度、特に3程度になるような範囲内から選択すればよい。
配位子としては上述の有機金属錯体中で金属に配位している配位子と同様のものを使用することができる。配位子の使用量は特に制限されないが、例えば水性溶媒又は水溶性溶媒中に含まれる金属に対して1〜8当量程度の範囲から選択することができる。
金属を含む化合物を含む水性溶媒又は水溶性溶媒に酸を反応させる際の反応温度は、例えば、25〜100℃程度である。特に反応系内が還流状態にあるように調整されていることが好ましい。反応圧力は、常圧、加圧下の何れであってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に制限されず、空気雰囲気や、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガス雰囲気で行ってもよい。反応時間は特に制限されず、例えば1〜10時間程度である。
反応終了後は、例えば常圧又は減圧下、蒸留や、不活性ガスに同伴させて液体を除去する方法等により濃縮を行い、必要により溶液を氷浴等により冷却することにより、有機金属錯体が析出する。析出した有機金属錯体はろ過等により回収し、さらに真空乾燥を行うなど、一般的な分離精製手段に付すことにより単離することができる。
本発明によれば、有機反応終了後の反応液中など有機金属錯体を含む有機溶媒中から、該有機金属錯体を特別な装置等を必要とせず、簡単に且つ高い回収率で金属を含む化合物の水性溶液として回収することができ、さらに回収した該水性溶液に簡単な処理を施すことにより、有機金属錯体を製造することができる。得られた有機金属錯体は有機合成反応等の触媒として再び利用することができるため、本発明は例えば、有機金属錯体を触媒として利用する有機合成反応において、触媒の回収・再利用の手段として優れている。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
(調製例:液(a)の調製)
デカンターを取り付けた反応器に、所定量の1,4−シクロヘキサンジオールと、それに対し、1.2倍モルの炭酸ナトリウム、4重量倍のトルエンを仕込み、液温度100℃になるまで昇温を行った。その後、還流が起こるまで酢酸ビニルを加えていき、液温度を95℃に保持した。ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2を、実施例及び比較例において液(a)として使用する際にイリジウムの濃度(イリジウム金属濃度)が、5000ppmになるように添加量を調整して投入し、副生する水を共沸留去させながらエーテル化反応を行った。その間、液温度を95℃に保持するために酢酸ビニルを適時追加投入した。8時間反応を行い、トルエンと同量の水で洗浄し、過剰に存在する酢酸ビニルを減圧除去し、ビニルエーテルを20重量%、イリジウム金属を5000ppm含む反応液(トルエン溶液)を調製した。以下この反応液を液(a−1)と称す。
(実施例1)
調製例で得られた液(a−1)100gを300ml反応器に加え、窒素を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、10規定のNaOH水溶液30gを10分間かけて滴下し2時間撹拌(窒素を気相流通させながら)した後、静置して分液した。有機層は95g、水層は35gであり、ICP発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層のイリジウム金属濃度は2400ppm(イリジウム重量換算0.23g)、水層のイリジウム金属濃度は7700ppm(イリジウム重量換算0.27g)であった。
(実施例2)
調製例で得られた液(a−1)100gを300mL反応器に加え、酸素5%の空気を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、10規定のNaOH水溶液30gを10分間かけて滴下し2時間撹拌(酸素5%の空気を気相流通させながら)した後、静置して、分液した。有機層は95g、水層は35gであり、ICP発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は860ppm(イリジウム重量換算0.082g)、水層12000ppm(イリジウム重量換算0.42g)であった。
得られた水層35gに濃塩酸を加えpH3に調整した液を窒素置換した300mL反応器に加え、その後2−プロパノール25g、1,5−シクロオクタジエン5.4gを加えた。反応器をオイルバスで加熱し、還流状態にさせ6時間熟成させた。その後、内部温度が95℃になるまで低沸分を流出させると、オレンジ色の固体が析出しはじめた。溶液を氷浴にて0℃まで冷却し、ろ過を行い、一晩40℃で真空乾燥させると、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2が0.70g(反応後の液からの回収率80%)得られた。
(実施例3)
調製例で得られた液(a−1)100gを300mL反応器に加え、酸素20%の空気を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、10規定のNaOH水溶液30gを10分間かけて滴下し2時間撹拌(酸素20%の空気を気相流通させながら)した後、静置して、分液した。有機層は95g、水層は35gであり、IPC発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は170ppm(イリジウム重量換算0.016g)、水層は13800ppm(イリジウム重量換算0.48g)であった。
(実施例4)
調製例で得られた液(a−1)100gを300mL反応器に加え、酸素5%の空気を気相流通させながら40℃まで昇温させた。その後、10規定のNaOH水溶液30gを10分間かけて滴下し2時間撹拌(酸素5%の空気を気相流通させながら)した後、静置して、分液した。有機層は95g、水層は35gであり、IPC発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は1300ppm(イリジウム重量換算0.12g)、水層は10900ppm(イリジウム重量換算0.38g)であった。
(実施例5)
ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2の添加量が異なる以外、調製例と同様の操作により得られたビニルエーテル20重量%、イリジウム金属8000ppmを含んだビニルエーテル化反応後のトルエン溶液100g(イリジウム重量換算0.8g)を300mL反応器に加え、酸素5%の空気を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、10規定のNaOH水溶液30gを10分間かけて滴下し2時間撹拌(5%の空気を気相流通させながら)した後、静置して、分液した。有機層は95g、水層は35gであり、IPC発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は2100ppm(イリジウム重量換算0.20g)、水層は17100ppm(イリジウム重量換算0.60g)であった。
(実施例6)
調製例で得られた液(a−1)100gを300mL反応器に加え、酸素5%の空気を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、10規定のNaOH水溶液50gを10分間かけて滴下し2時間撹拌(酸素5%の空気を気相流通させながら)した後、静置して、分液した。有機層は95g、水層は55gであり、IPC発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は100ppm(イリジウム重量換算0.010g)、水層は8900ppm(イリジウム重量換算0.49g)であった。
(実施例7)
調製例で得られた液(a−1)100gを300mL反応器に加え、酸素5%の空気を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、10規定のKOH水溶液35gを10分間かけて滴下し2時間撹拌(酸素5%の空気を気相流通させながら)した後、静置して、分液した。有機層は95g、水層は40gであり、IPC発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は800ppm(イリジウム重量換算0.076g)、水層は10500ppm(イリジウム重量換算0.42g)であった。
(実施例8)
調製例で得られた液(a−1)100gを300mL反応器に加え、窒素を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、NaOMe(28重量%メタノール溶液30g)を10分間かけて滴下し2時間撹拌(窒素気相流通させながら)し、水15gを添加し混合た後、静置して分液した。有機層は90g、水性溶媒層(メタノールと水の層)は55gであり、ICP発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は1020ppm(イリジウム重量換算0.092g)、水層は7450ppm(イリジウム重量換算0.41g)であった。
(実施例9)
調製例で得られた液(a−1)100gを300mL反応器に加え、窒素雰囲気下、70℃まで昇温させた。その後、撹拌下、10規定のNaOH水溶液30gを10分間かけて滴下し、35%過酸化水素水5gを2時間で滴下した後、静置し、分液した。有機層は95g、水層は35gであり、ICP発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は300ppm(イリジウム重量換算0.029g)、水層は13500ppm(イリジウム重量換算0.47g)であった。
(比較例1)
調製例で得られた液(a−1)100gを300ml反応器に加え、窒素を気相流通させながら70℃まで昇温させた。その後、水30gを10分間かけて滴下して2時間撹拌(窒素を気相流通させながら)した後、静置し、分液した。有機層は100g、水層は30gであり、ICP発光分析によってイリジウム金属濃度分析を行ったところ、有機層は5000ppm(イリジウム重量換算0.5g)、水層は1ppm未満であった。

Claims (4)

  1. 下記液(a)を、塩基の存在下、液(b)と接触させて液(a)中の有機金属錯体を、該金属を含む化合物として液(b)に抽出する有機金属錯体の抽出方法。
    液(a):有機溶剤に可溶な有機金属錯体と、水性溶媒又は水溶性溶媒と分液する有機溶剤とを含む液
    液(b):水性溶媒又は水溶性溶媒
  2. 上記液(a)中の有機金属錯体が有機イリジウム錯体である請求項1記載の有機金属錯体の抽出方法。
  3. さらに酸化剤の存在下、液(a)を液(b)と接触させる請求項1又は2記載の有機金属錯体の抽出方法。
  4. 請求項1〜3何れかの項に記載の抽出方法により液(b)に抽出された金属を含む化合物に、酸を反応させることを特徴とする有機金属錯体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN104140450A (zh) * 2014-08-07 2014-11-12 西安近代化学研究所 一种1,5-环辛二烯氯化铱二聚体的回收再生方法

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