JP2007176823A - 関節リウマチ予防用又は治療用組成物、並びにそれらの組成物を含有する関節リウマチ予防又は治療剤及び飲食物 - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な関節リウマチ予防用又は治療用組成物を提供すること。
【解決手段】担子菌キシメジ属マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)由来成分を少なくとも含有する関節リウマチ予防又は治療用組成物を提供する。この組成物は、関節炎発症抑制作用、抗コラーゲン抗体産生抑制作用、IL−6産生抑制作用、血清C反応性蛋白(CRP)上昇抑制作用、血清中乳酸脱水素酵素(LDH)上昇抑制作用、血清中リウマトイド因子(RF)上昇抑制作用を有する。
【選択図】 なし
【解決手段】担子菌キシメジ属マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)由来成分を少なくとも含有する関節リウマチ予防又は治療用組成物を提供する。この組成物は、関節炎発症抑制作用、抗コラーゲン抗体産生抑制作用、IL−6産生抑制作用、血清C反応性蛋白(CRP)上昇抑制作用、血清中乳酸脱水素酵素(LDH)上昇抑制作用、血清中リウマトイド因子(RF)上昇抑制作用を有する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、ヒト及び動物における関節リウマチ予防用又は治療用組成物などに関する。より詳しくは、担子菌キシメジ属マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)由来成分を少なくとも含有する関節リウマチ予防用又は治療用組成物、並びにそれらの組成物を含有する関節リウマチ予防又は治療剤、及び、飲食物に関する。
関節リウマチ(rheumatiod arthritis,RA)は、非感染性の炎症に基づく、関節及び全身の結合組織のびらん性炎症を主徴とし、同時に多臓器を障害する全身性の疾患である。寛解と憎悪を繰り返しながら慢性に進行し、末期には、関節の破壊と変形を来し、重度の運動障害に陥る場合もある。
関節リウマチの発病原因については現在のところ不明であるが、膠原病の一種とされ、免疫機構が自分の関節を攻撃する自己免疫疾患の一つであるとする説が有力である。滑膜細胞、浸潤細胞から、インターロイキン1(IL−1)、インターロイキン6(IL−6)、腫瘍壊死因子(TNF)、プロスタグランジンなどの起炎物質が放出されて関節炎が起こる。多くの場合、血清中のサイトカインであるIL−6の値が亢進し、血清中抗コラーゲン抗体価、炎症マーカーであるCRP、及び、LDH、RA指標とされるRF値が上昇する。
関節リウマチの予防及び完全な治癒は、現在の医学では困難である。従って、現時点での治療目標は、関節リウマチの炎症を速やかに抑制することにより、関節組織における非可逆的変化の出現やその進展を抑制し、患者の身体的、精神的、及び、社会的QOLの向上を図ることである。
関節リウマチの薬物療法における中心的な薬剤として、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、副腎皮質ホルモン(ステロイド)、免疫抑制剤等が用いられる。例えば、特許文献1には、非ステロイド性抗炎症剤としてCOX−2酵素阻害剤を、特許文献2には、免疫抑制剤を慢性関節リウマチの治療に適用することが、それぞれ記載されている。
また、関節リウマチに有効な天然物として、例えば、特許文献3には、田七人参が、特許文献4には、ユキノシタ属に属する植物、及び、アジサイ属に属する植物が、また、特許文献5には、ヒメマツタケ(学名「Agaricus blazei Murill、通称:アガリクス)が、それぞれ記載されている。
ここで、本発明に関連のあるマツタケについて、以下説明する。マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)は、特有の香りと歯応えのよさで、高級食材として多く食用に供されるとともに、様々な疾患予防又は治療に役立つことが報告されている。
マツタケを用いた薬剤として、例えば、特許文献6には血圧降下剤が、特許文献7には高脂血症治療剤が、特許文献8には糖尿病治療効果が、それぞれ記載されている。
特開2004−131495号公報
特開2000−154151号公報
特開平11−139979号公報
特開2004−196696号公報
特開平11−130690号公報
特開2005−225803号公報。
特開2005−225802号公報。
特開2005−225801号公報
関節リウマチは症状が重篤になる場合があるため、その発症を未然に予防できることが好ましい。また、関節リウマチを罹患した場合、関節リウマチの治療は長期に及ぶため、副作用が少なく、治療効果の高いものが好ましい。
そこで、本発明は、関節リウマチの予防に効果があり、また、関節リウマチを罹患した場合にも、副作用が少なく、長期間服用できる関節リウマチ予防用又は治療用組成物を提供することを主目的とする。
本願発明者は、上記目的を達成するために、種々の天然物を探索した。その結果、マツタケ由来成分が関節リウマチの予防及び治療に有効であることを新規に見出した。
そこで、本発明では、担子菌キシメジ属マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)由来成分を少なくとも含有する関節リウマチ予防用又は治療用組成物を提供する。
この組成物には、関節リウマチ患者で上昇がみられる種々の指標値を下げる作用がある。具体的には、この組成物は、関節炎発症抑制作用、抗コラーゲン抗体産生抑制作用、インターロイキン6(IL−6)産生抑制作用、血清C反応性蛋白(CRP)上昇抑制作用、血清中乳酸脱水素酵素(LDH)上昇抑制作用、及び、血清中リウマトイド因子(RF)上昇抑制作用を有する。従って、本発明に係るマツタケ由来成分含有組成物は、関節リウマチの予防及び治療に有効である。
加えて、この組成物には、以下のような有利性がある。
関節リウマチは進行性の疾患であるため、長期間、多種多様な薬剤を服用する必要が生じる場合がある。一方、関節リウマチの薬物療法に用いられる薬剤には一定の副作用がある場合が多いため、適用期間は短いほうが好ましい。また、定期的な検査を要したり、一定の休薬期間を設けなくてはならない薬剤もある。それに対し、本発明に係る組成物は天然由来成分であるため、副作用が少なく、それらを長期間、及び、連続的にRA患者に適用できる可能性が高い。
また、一般的に、関節リウマチの薬物療法に用いられる薬剤は、消化器障害、腎障害、肝障害、血液障害等を併発するRA患者、妊婦等に対する適用が難しい場合がある。それに対し、本発明に係る組成物は天然由来成分であるため、あらゆる患者に対してそれらを適用できる可能性が高い。
なお、本発明に係る組成物は、関節リウマチ予防又は治療剤、及び、飲食物に適用することができる。
本発明に係る組成物は、天然由来成分であるため安全性が高く、かつ、関節リウマチの予防及び治療に有効である。
<本発明に係る関節リウマチ予防用又は治療用組成物について>
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、担子菌キシメジ属マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)由来成分を少なくとも含有する。マツタケの株種は、特に限定されないが、例えば、マツタケFPRM BP−7304株が好適である。
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、担子菌キシメジ属マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)由来成分を少なくとも含有する。マツタケの株種は、特に限定されないが、例えば、マツタケFPRM BP−7304株が好適である。
前記マツタケ由来成分は、菌糸体、培養物(Broth)又は子実体のいずれの形態を用いることができる。本発明では、子実体は、胞子を含むものとする。これらは、生の状態で用いてもよく、あるいは、それらの乾燥物を用いてもよい。更には、それらの抽出物を用いてもよい。抽出物を用いる場合、その抽出方法は特に限定されないが、例えば、熱水抽出法、アルコール抽出法、アルカリ溶液抽出法、細胞壁破壊製法、循環多段式加圧抽出法、酵素処理法、超臨界抽出法等で抽出した抽出物を用いることができる。
<本発明に係る関節リウマチ予防剤又は治療剤について>
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、これを有効成分として、関節リウマチ予防又は治療剤に適用することができる。本発明に係る関節リウマチ予防又は治療剤は、本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物を含むもの全てを含有する。
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、これを有効成分として、関節リウマチ予防又は治療剤に適用することができる。本発明に係る関節リウマチ予防又は治療剤は、本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物を含むもの全てを含有する。
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物を用いた関節リウマチ予防剤又は治療剤は、単独で用いることもでき、また、既存の関節リウマチ治療剤と併用することもでき、更には、既存の関節リウマチ治療剤と合剤とすることもできる。
該関節リウマチ予防剤又は治療剤の剤型は特に限定されない。例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、丸剤等の経口剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、外用液剤、点眼液剤、点鼻液剤、吸入剤、坐剤、スプレー等の外用剤、又は注射剤等として用いることができる。
経口剤は、例えば、有効成分である本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、保存剤、着色剤、矯味剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得るすべての添加剤を含有させることができる。また、ドラッグデリバリーシステム(DDS)を利用して、徐放性製剤等にすることもできる。
外用剤は、例えば、有効成分である本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物に、基材、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得るすべての添加剤を含有させることができる。
注射剤は、例えば、有効成分である本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物に、溶剤、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、保存剤、等張化剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得るすべての添加剤を含有させることができる。
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療剤は、その有効成分が、天然由来成分であるため、他剤との併用を注意する必要もなく、また、他疾患併発患者に対しても、安心して投与することができる。更に、長期間、連続的に服用しても副作用を心配する必要が少ない。
<本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物を含有する飲食物について>
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、飲食物に適用することができる。本発明に係る飲食物は、本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物を含むもの全てを包含する。
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、飲食物に適用することができる。本発明に係る飲食物は、本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物を含むもの全てを包含する。
例えば、保健機能食品(特定保健機能食品、栄養機能食品)やいわゆる健康食品(いずれも飲料を含む)、又は飼料に適用することができる。また、口中に一時的に含むもの、例えば、歯磨剤、染口剤、チューインガム、うがい剤等に適用することもできる。
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、天然由来成分であるため、飲食物との相互作用を気にすることなく、あらゆる飲食物に含有させることができ、また、安全性が高いため、長期間、連続的に摂取が可能である。
まず、実施例1では、実施例2から実施例6で使用するマツタケ菌糸体含有のマウス用飼料の調製を、以下の通り行った。
株式会社クレハ・生物医学研究所で樹立、及び、維持しているマツタケCM6271株菌糸体を滅菌済み培地(3%グルコース、0.3%酵母エキス、pH6.0)100mLの入った500mL容三角フラスコ20本に接種し、22℃で250rpm振盪培養機で4週間培養を行った。
培養終了後、培養物(Broth)を濾紙ろ過により、菌糸体を分離し、蒸留水で十分に洗浄した。その後、菌糸体を凍結乾燥した。得られた菌糸体乾燥物を粉砕して菌糸体粉末20gを得た。
その後、マウス用飼料CE−2(日本クレア株式会社)の粉末1kgに、得られた菌糸体粉末20gを十分に混合し、2%マツタケ菌糸体含有飼料を調製した。
実施例2では、本発明に係るマツタケ菌糸体添加飼料の関節炎発症抑制作用を、マウスII型コラーゲン誘導関節炎モデルを用いて、以下の通り調べた。
ここで、マウスII型コラーゲン誘導関節炎モデルとは、II型コラーゲン免疫によって、ヒトの慢性関節リウマチ様の関節炎誘導された、実験モデルマウスである。
まず、マウスII型コラーゲン誘導関節炎モデル作成のための関節炎の誘発を、以下の通りに行った。
4週齢の雄性DBA/1JNCrjマウスを、日本チャールズリバー(神奈川)から購入し、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で1週間、予備飼育した。
その後、関節炎の誘発を行った。関節炎の誘発は、Trenthamらの方法に準じ(Trentham DE et al.,J Exp Med,146:857−868,1977)、ウシ鼻中隔由来のII型コラーゲン(コスモ・バイオ株式会社、KE−41)を0.05N酢酸溶液に溶解して、等量のフロイント完全アジュバンド(和光純薬工業株式会社)と混合してエマルジョン液とし、II型コラーゲン相当量100μg/0.1mLをマウス尾根部皮内に注射した。初回免疫から3週後に、“フロイント不完全アジュバント(和光純薬工業株式会社)と同量の抗原溶液”のエマルジョン液による追加免疫を行い、関節炎症状を誘発した。陰性対照として、同週齢の健常雄性C57BL/6マウスを用いた。
試験群を、健常C57BL/6マウスを用いる陰性対照群(a群、n=8)、コントロールの免疫処置DBA/1JNCrjマウスに免疫処置のみを行うコントロール群(b群、n=8)、免疫処置DBA/1JNCrjマウスに本発明に係る前記2%マツタケ菌糸体含有飼料を摂取させるマツタケ菌糸体群(c群、n=8)、陽性対照の免疫処置DBA/1JNCrjマウスにデキサメサゾンを投与するDEX群(d群、n=8)とした。実験期間は、9週間とした。
次に、本発明に係る前記2%マツタケ菌糸体含有飼料を、前記で作成したマウスII型コラーゲン誘導関節炎モデルのマツタケ菌糸体群(c群)に、初回免疫翌日から実験終了日まで自由摂取させた。DEX群(d群)に投与するデキサメサゾン(DEX、シグマ‐アルドリッチ)は、0.5%Carboxymethylcellulose sodium salt(CMC)溶液に懸濁させたものを使い、1mg/kg量を週3回腹腔内投与した。
発症率を、“発症した四肢数/1群マウスの四肢数”×100で表し、関節炎スコアを、各肢について、無変化を0点、1指あるいは複数指の腫脹を1点、全体に見られる発赤と腫脹を2点、全体に見られる強度の腫脹を3点、四肢の合計を12点とし、“発症マウス全スコア/1群マウスの肢数”で評価した。なお、一肢あたりの最高点を4点とした。
観察期間中の関節炎発症率を表1に示す。
表1に示すとおり、初回免疫後の9週目の時点で、コントロール群(b群)の発症率が100%に対して、マツタケ菌糸体群(c群)の発症率は75%であり、抑制が認められた。なお、陽性対照群DEX群(d群)では、12.5%にのみ発症を認めた。
観察期間中の関節炎発症スコアを表2に示す。
表2に示すとおり、初回免疫後の9週の関節炎のスコアは、コントロール群(b群)で3.8点、マツタケ菌糸体群(c群)で2.0点であり、発症率の場合と同様、マツタケ菌糸体により抑制された。なお、陽性対照群DEX群(d群)は、0.2点であった。
また、マウスII型コラーゲン誘導関節炎モデルの関節における病理組織学的所見についても、以下の通り観察した。
病理組織学的解析のため、コントロール群(b群)、マツタケ菌糸体群(c群)、DEX群(d群)のマウスを、実験開始9週目に屠殺し、左膝部を摘出して中性ホルマリン液中で固定した。次いで、飽和EDTAで脱灰、パラフィン包理後薄切し、サフラニンО染色して病理像を光学顕微鏡下で観察した。その結果を図1、図2、及び図3に示す。
図1はコントロール群(b群)、図2はマツタケ菌糸体群(c群)、図3はDEX群(d群)の光学顕微鏡下における病理組織学的所見を示している。また、図1中の符号1で表す部分は、コントロール群(b群)の病変部を示す。
図1、および図2に示す通り、図1のコントロール群(b群)の病変部1に比し、図2のマツタケ菌糸体群(c群)では、滑膜細胞の重層化、骨・軟骨結合織置換、繊維芽細胞の増殖、多核白血球の増加、及び、軟骨細胞の空胞変性の程度が明らかに軽度であった。なお、図3に示す通り、陽性対照群DEX群(d群)では、滑膜細胞の重層化や骨・軟骨結合織置換のような関節所見の異常は観察されず、その他の所見も軽微であった。
上記、関節炎発症率、関節炎発症スコア、病理組織所見の結果より、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料は、関節炎発症抑制作用を有することが分かった。
実施例3では、本発明に係るマツタケ菌糸体添加飼料の抗コラーゲンII抗体産生抑制作用を、マウスII型コラーゲン誘導関節炎モデルを用いて、以下の通り調べた。
実施例2と同様に、試験群を、陰性対照群(a群、n=5)、コントロール群(b群、n=5)、マツタケ菌糸体群(c群、n=5)、DEX群(d群、n=5)とし、実験開始後5週目、7週目、及び、9週目に、各試験群のマウスの尾静脈から採血し、血清中の抗II型コラーゲン抗体力価をELISA法により測定した。
具体的には、ウシII型コラーゲン溶液10μg/mLを96ウエルマイクロプレートに固相化し、1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液でブロックして冷蔵保存されている保存プレートを室温に戻し、各ウエルをTween20−PBS溶液で洗浄し、2000倍希釈した披検血清100μLと4℃で一晩反応させた。その後、Tween20−PBS溶液で洗浄し、Peroxidase標識ウサギ抗マウスIgG抗体溶液100μLを添加し、25℃で3時間反応させた。さらにその後、Tween20−PBS溶液で洗浄し、ABTS(東京化成)を含む基質溶液100μLを加え、25℃で30分反応させて発色させ、硫酸50μLを加えて反応を停止させ、415nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーを用いて測定した。
血清中の抗体価測定結果(415nmにおける吸光度OD415)を表3に示す。
表3に示すとおり、実験開始後、コントロール群(b群)の抗体価は増加し、5週目で0.79、7週目で1.10、9週目で1.04の値を示した。一方、マツタケ菌糸体群(c群)の抗体価は、5週目で0.58、7週目で0.72、9週目で0.88を示し、コントロール群(b群)と比較して低かった。なお、陽性対照群DEX群(d群)の抗体価は、実験期間中、低値で推移した。
上記結果より、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料は、抗コラーゲン抗体産生抑制作用を有することが分かった。これにより、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料の関節炎発症抑制作用のメカニズムとして、免疫調節作用の関与が示唆された。
実施例4では、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料の血清IL−6産生抑制作用を、マウスII型コラーゲン誘導関節炎モデルを用いて、以下の通り調べた。
実施例2、及び、実施例3と同様に、試験群を、陰性対照群(a群、n=5)、コントロール群(b群、n=5)、マツタケ菌糸体群(c群、n=5)、DEX群(d群、n=5)とし、上記実験終了の9週時に、コントロール群(b群)、マツタケ菌糸体群(c群)、DEX群(d群)のマウスを麻酔下で採血し、遠心分離により血清を回収した。
得られた血清のIL−6含量を、ELISAキット(Endogen社、米国)を用いて測定した。
血清IL−6レベルの測定結果を表4に示す。
表4に示すとおり、血清IL−6レベルは、コントロール群(b群)では1560pg/mL、マツタケ菌糸体群(c群)では738pg/mLと、マツタケ菌糸体群(c群)のIL−6レベルは、コントロール群(b群)に比して低値を示した。なお、陽性対照群DEX群(d群)は316pg/mLであった。
上記結果より、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料は、IL−6産生抑制作用を有することが分かった。これにより、実施例3と同様に、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料の関節炎発症抑制作用のメカニズムとして、免疫調節作用の関与が示唆された。
実施例5では、本発明に係るマツタケ菌糸体添加飼料の関節炎発症抑制作用を、SPF/VAF MRL/MpJ‐Tnfrsf6lpr/Crljマウス(以下、MRL/lprマウスとする。)を用いて、以下の通り調べた。
ここで、MRL/lprマウスとは、8週齢前後から急性、及び、慢性炎症がほぼ同時に起こり、関節炎等を自然発症するマウスであり、慢性関節リウマチの病態モデルとして汎用されている実験モデルマウスである。
まず、4週齢の雌性MRL/lprマウスを、日本チャールズリバー(神奈川)から購入し、温度22±5℃、湿度50±10%、12時間明暗サイクルの環境下にある飼育室で1週間、予備飼育した。
試験群を、無処置のMRL/lprマウスを用いるコントロール群(a群、n=10)、MRL/lprマウスに本発明に係るマツタケ菌糸体添加飼料を与えるマツタケ菌糸体群(b群、n=10)に分けた。実験期間は、17週間とした。
次に、病理組織学的解析のため、コントロール群(a群)、及び、マツタケ菌糸体群(b群)のマウスを、実験開始17週目に屠殺し、右前肢を摘出して中性ホルマリン液中で固定した。次いで、実施例2と同様に、飽和EDTAで脱灰、パラフィン包理後薄切し、サフラニンО染色して病理像を光学顕微鏡下で観察した。その結果を、図4、及び、図5に示す。
図4はコントロール群(a群)、図5はマツタケ菌糸体群(b群)の光学顕微鏡下における病理組織学的所見を示している。また、図4中の符号2で表す部分は、コントロール群(a群)の病変部を示す。
図4、及び、図5に示す通り、図4のコントロール群(a群)の病変部2に比し、図5のマツタケ菌糸体群(b群)では、滑膜細胞の重層化や、滑膜下軟部組織の浮腫性変化、肉芽による置換、リンパ球浸潤の程度が明らかに軽度であった。
上記結果より、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料は、MRL/lprマウスにおいても、実施例2と同様、関節炎発症抑制作用を有することが分かった。
実施例6では、本発明に係るマツタケ菌糸体添加飼料の血清C反応性蛋白(CRP)上昇抑制作用、血清中乳酸脱水素酵素(LDH)、及び、血清中リウマトイド因子(RF)上昇抑制作用を、MRL/lprマウスを用いて、以下の通り調べた。
実施例5と同様に、試験群を、MRL/lprマウスを、コントロール群(a群、n=10)、マツタケ菌糸体群(b群、n=10)に分け、実験開始17週目に麻酔下で採血し、遠心分離により血清を回収した。健常雌性ICRマウス(日本クレア)を陰性対照に用いた。
血清C反応性蛋白(CRP)レベルは、ELISAキット(セティカンパニーリミテッド SCETI Co., LTD.)を、乳酸脱水素酵素(LDH)レベルは、臨床試薬キット(和光純薬工業株式会社)を、リウマトイド因子(RF)レベルは、ラテックス凝集反応試薬(栄研化学株式会社)を用いて測定した。
CRPレベル、LDHレベル、RFレベルの測定結果を表5に示す。
表5に示すとおり、コントロール群(a群)では、CRP1.3mg/dL、LDH4050IU/mL、RF27.6IU/mLを示し、マツタケ菌糸体群(b群)では、CRP0.6mg/dL、LDH3260IU/mL、RF17.8IU/mLを示し、マツタケ菌糸体群(b群)のレベルは、コントロール群(a群)に比して低値を示した。特に、血清CRP、及び、RFについては、マツタケ菌糸体群(b群)のレベルは、有意差(p<0.05)をもって、コントロール群(a群)に比して低値を示した。なお、陰性対照群では、血清CRP、及び、RFは検出以下であった。
上記結果より、本発明に係る前記マツタケ菌糸体含有飼料は、血中炎症マーカーであるCRP、及び、LDH、RA指標とされるRF値の上昇を抑制することが分かった。従って、本発明に係る前期マツタケ菌糸体含有飼料は、関節リウマチ予防効果、及び、治療効果を有することが分かった。
本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、関節炎発症抑制作用、抗コラーゲン抗体産生抑制作用、IL−6産生抑制作用、血清C反応性蛋白(CRP)上昇抑制作用、血清中乳酸脱水素酵素(LDH)上昇抑制作用、血清中リウマトイド因子(RF)上昇抑制作用を有することから、関節リウマチ予防剤又は治療剤に利用することができる。また、本発明に係る関節リウマチ予防又は治療用組成物は、天然物であるマツタケ由来成分からなるものであるため、長期間、連続的に服用しても、副作用の心配が少ない。更に、飲食物として摂取しやすい形態にすることにより、容易に摂取することができ、長期間、連続的に摂取し続けることができる。
1 実施例2の、コントロール群(b群)における病変部。
2 実施例5の、コントロール群(a群)における病変部。
2 実施例5の、コントロール群(a群)における病変部。
Claims (9)
- 担子菌キシメジ属マツタケ(学名「Tricholoma matsutake」)由来成分を少なくとも含有する関節リウマチ予防用又は治療用組成物。
- 関節炎発症抑制作用を有することを特徴とする請求項1記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物。
- 抗コラーゲン抗体産生抑制作用を有することを特徴とする請求項1記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物。
- インターロイキン6(IL−6)産生抑制作用を有することを特徴とする請求項1記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物。
- 血清C反応性蛋白(CRP)上昇抑制作用を有することを特徴とする請求項1記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物。
- 血清中乳酸脱水素酵素(LDH)上昇抑制作用を有することを特徴とする請求項1記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物。
- 血清中リウマトイド因子(RF)上昇抑制作用を有することを特徴とする請求項1記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物を少なくとも含有する関節リウマチ予防又は治療剤。
- 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の関節リウマチ予防用又は治療用組成物を少なくとも含有する飲食物。
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JP2005374968A JP2007176823A (ja) | 2005-12-27 | 2005-12-27 | 関節リウマチ予防用又は治療用組成物、並びにそれらの組成物を含有する関節リウマチ予防又は治療剤及び飲食物 |
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JP2005374968A JP2007176823A (ja) | 2005-12-27 | 2005-12-27 | 関節リウマチ予防用又は治療用組成物、並びにそれらの組成物を含有する関節リウマチ予防又は治療剤及び飲食物 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012527408A (ja) * | 2009-05-18 | 2012-11-08 | ザ ユニバーシティ オブ ホンコン | 炎症性関節炎を治療するための組成物および方法 |
-
2005
- 2005-12-27 JP JP2005374968A patent/JP2007176823A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012527408A (ja) * | 2009-05-18 | 2012-11-08 | ザ ユニバーシティ オブ ホンコン | 炎症性関節炎を治療するための組成物および方法 |
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