JP2007173736A - 電磁波シールド成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い強度と剛性を有するポリアミド樹脂に、密着力の高い電磁波シールド処理が施されている電磁波シールド成形体を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂からなる基材、または、ポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されてなる基材の表面に、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂と硬化剤との複合物を有してなるプライマー層を設け、該プライマー層の上に電磁波シールド膜を設ける。前記プライマー層におけるウレタン樹脂の含有量は、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の合計質量に対して40〜90質量%であることが好ましい。
【選択図】なし
【解決手段】ポリアミド樹脂からなる基材、または、ポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されてなる基材の表面に、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂と硬化剤との複合物を有してなるプライマー層を設け、該プライマー層の上に電磁波シールド膜を設ける。前記プライマー層におけるウレタン樹脂の含有量は、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂の合計質量に対して40〜90質量%であることが好ましい。
【選択図】なし
Description
本発明は、電磁波シールド成形体に関し、具体的には、ポリアミド樹脂からなる基材、または、ポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されてなる基材の表面に、電磁波シールド膜を形成した電磁波シールド成形体に関する。
電気・電子機器や携帯電話など電波を発信、受信する機器には、機器の誤動作を避けるために、電磁波シールド処理が施されることが多い。電磁波シールド処理としては、導電性金属を混入したプラスチックを用いて成形品を作製したり、あるいは成形品の表面に導電性塗料を塗布したり、湿式メッキ法や真空成膜法により金属薄膜からなる電磁波シールド膜を該表面に形成する方法等が知られている。電気・電子機器や携帯電話などにおいては、筐体の内側に電磁波シールド膜を設けることが多い。
湿式メッキ法としては、無電界メッキ法が用いられている。この方法ではクロム酸エッチングやパラジウム触媒の付加などを行うため、成形品と薄膜との密着は強固である。しかし、廃液の処理を行う必要があること、処理時間が長いこと、成形品の両面にメッキされることなどの欠点がある。
真空成膜法による電磁波シールド膜の形成では、アルミニウムを2〜3μm形成したり、第1層として銅を成膜し、第2層の保護層としてニッケルなどを成膜するのが一般的である。
使用される基材としては、ABS樹脂やポリカーボネートもしくはABSとポリカーボネートのブレンド樹脂等がある。これらの素材は、比較的、上記処理が容易な素材である。
一方、最近、使用されてきているエンジニアリングプラスチックスに対しては、湿式メッキ法は確立されていない。また、エンジニアリングプラスチックスに対して真空成膜法を用いても、成形品と膜との密着が悪い。このため、エンジニアリングプラスチックスは、一般的には電磁波シールド用途には用いられていない。特に、ポリアミド樹脂(ナイロン)成形品に電磁波シールド処理がなされた製品は見受けられない。
特許文献1(特開平7−133361号公報)には、ABS/PC基材の上に高周波プラズマでボンバードしてアルミニウム膜を形成することが開示されている。しかし、基材がポリアミド樹脂の場合には、表面官能基がほとんどないため、適用することができない。
特許文献2(特開平7−70345号公報)には、プラスチックス成形品の表面に水溶性塗料からなるプライマーコート層を配設し、アルミニウム膜や銅膜を形成することが開示されている。しかし、プラスチック成形品として、ポリアミド樹脂は記載されておらず、基材がポリアミド樹脂からなる場合に、良好に適用できるかどうか不明である。
特許文献3〜7(特開平6−145396号公報、特開平6−157797号公報、特開平6−240027号公報、特開平6−240034号公報、特開平7−7283号公報)には、プラスチック樹脂からなる基材を洗浄することなく、プライマーも塗布しないで、高周波励起プラズマで表面をクリーニングして、基材と膜とを密着させる技術が開示されている。しかし、表面官能基が多く含まれるABS樹脂やそのアロイには適用できるが、表面官能基がほとんどないポリアミド樹脂には膜が付着せず、適用することが困難であると考えられる。
特許文献8〜11(特開2001−32150号公報、特開平10−46443号公報、特開平10−8317号公報、特開平6−330677号公報)には、ポリアミド繊維にシールド膜をスパッタやメッキ(例えば、銀メッキ)で成膜し、電磁波シールド性能を具備させた繊維素材等が開示されている。しかし、これらには、成膜については何らの言及もなく、また、ポリアミド繊維には表面官能基がほとんどないため、単なるメッキ等による成膜では、シールド膜と基材との間には電気・電子機器や携帯電話などの産業用用途に用いる密着力はないと考えられる。
特許文献12(特開2004−304039号公報)には、物理的蒸着による金属薄膜を有する、電磁波遮蔽するためのシールドボックスが記載されている。シールドボックスを構成する材料の1つとしてポリアミドが記載されている(特許文献12、段落0023)が、ポリアミドに対して単に物理的蒸着により金属薄膜を形成させても、ポリアミド樹脂には表面官能基がほとんどないため、シールド膜と基材との間には、電気・電子機器や携帯電話などの産業用用途に用いる密着力はない欠点がある。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、高い強度と剛性を有するポリアミド樹脂からなる基材に、密着力の高い電磁波シールド処理が施されている電磁波シールド成形体を提供することを目的とする。
本発明に係る電磁波シールド成形体の製造方法は、ポリアミド樹脂からなる基材、または、ガラス繊維を含有するポリアミド樹脂からなる基材の表面に、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを有するプライマーを塗布し、得られたプライマー層の上に、電磁波シールド膜を成膜することを特徴とする。
前記プライマーとして、ウレタン樹脂の含有量がウレタン樹脂とエポキシ樹脂の合計質量に対して40〜90質量%であるプライマーを用いることが好ましい。また、前記プライマーとして、硬化剤を含有するプライマーを用いることが好ましく、前記硬化剤として、アミンを含有する硬化剤およびイソシアネートを含有する硬化剤を用いることが好ましい。さらに、前記アミンを含有する硬化剤として、ブロック剤を含有し、湿気により反応を開始する硬化剤を用い、前記イソシアネートを含有する硬化剤として、水酸基と反応する硬化剤を用いることが好ましい。塗布したプライマーは60℃以上の温度で乾燥させることが好ましい。
また、前記電磁波シールド膜を、プライマー層と接する金属シールド層と、該金属シールド層の上に形成された保護層とから構成し、前記金属シールド層を銅層とし、前記保護層を、Ni、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金から選択される1種以上の金属から構成することが好ましく、前記電磁波シールド膜は真空成膜法により成膜することが好ましい。
本発明に係る電磁波シールド成形体は、ポリアミド樹脂からなる基材、または、ガラス繊維を含有するポリアミド樹脂からなる基材と、該基材の表面に形成されたウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを含有するプライマー層と、該プライマー層の表面に形成された電磁波シールド膜とからなることを特徴とする。
前記電磁波シールド膜が、プライマー層と接する金属シールド層と、該金属シールド層の上に形成された保護層とからなり、前記金属シールド層が銅層であり、前記保護層が、Ni、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金から選択される1種以上の金属からなることが好ましく、前記金属シールド層の厚さが0.5〜2μmであり、前記保護層の厚さが0.1〜0.3μmであることが好ましい。
本発明に係る電磁波シールド成形体は、例えば、前記製造方法により製造することができる。
本発明に係る電磁波シールド成形体においては、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂と硬化剤との複合物を有してなるプライマー層を設けているので、ポリアミド樹脂からなる基材、または、ポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されてなる基材と、その表面に形成された電磁波シールド膜との間の密着力は高くなっている。
また、本発明に係る電磁波シールド成形体は、その表面に形成された電磁波シールド膜との間の密着力が高い。このため、コストが高く、また、生産性も悪かった、従来から使用されている電磁波シールド材であるマグネシウム合金の代替となり得る。
電磁波シールド膜を成膜する基材として現在用いられているものは、ABS樹脂(Acrylonitrile-butadiene-styrene Resin;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂との混合樹脂で作られた成形品が多い。
一方、近年、特に携帯電話においては、軽量化と薄肉化の要請を満たすため、薄くて強度が出るポリアミド樹脂(ナイロン)からなる成形品、もしくはポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されたものからなる成形品が、基材として多く用いられている。
しかし、ポリアミド樹脂は表面官能基がほとんどないため、ポリアミド樹脂からなる基材の表面に電磁波シールド膜を成膜することは困難であった。
そこで、本発明者は鋭意研究開発を進め、ポリアミド樹脂からなる基材の表面に所定のプライマーを塗布した後、電磁波シールド膜を成膜することで、ポリアミド樹脂からなる基材との密着力が高い電磁波シールド膜を設けることができることを見出した。以下、本発明について詳細に説明する。
ポリアミド樹脂からなる基材、およびポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されたものからなる基材に密着力が高い電磁波シールド膜を設けるための方法として、プライマーを用いることが考えられる。該プライマーには、プラスチックの変形に追従でき、かつ、プラスチックとの密着力が高く、さらに、金属層およびガラス繊維との密着が良いことが求められる。
そこで、本発明者は鋭意研究開発を進め、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを所定の比率でブレンドして得たプライマーが前記機能を充足しており、該プライマーを用いることにより、ポリアミド樹脂からなる基材、および、ポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されたものからなる基材との密着力が高い電磁波シールド膜を形成することができることを見出した。ウレタン樹脂はプラスチックとの密着力が高く、エポキシ樹脂は金属層およびガラス繊維との密着力が高いためと思われる。
ウレタン樹脂とエポキシ樹脂とのブレンド比率は、ウレタン樹脂の配合比率を40〜90質量%とし、残りをエポキシ樹脂にすることが好ましい。ウレタン樹脂の比率が上がると、樹脂が柔らかくなり、熱による変形が起こりやすくなる。また、プライマーの密度が下がり、耐熱性と耐湿度性が低下するが、硬化温度が下がり、基材との密着性は向上する。エポキシ樹脂の比率が上がると、柔軟性が低下し、硬くなる。硬くなりすぎると、温度変化に追従できにくくなり、剥離しやすくなる。なお、エポキシ樹脂の比率が上がると硬化温度は高くなるが、金属膜との密着性は向上する。
また、プライマーの架橋密度が低いと、プライマーとしての強度、密着力が低下するので、架橋密度を上げるために、硬化剤を用いて架橋密度を上げることが好ましい。プライマーの硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するアミンを含有する硬化剤と、ウレタン樹脂と反応するイソシアネートを含有する硬化剤とを用いることが好ましい。アミンを含有する硬化剤には、ブロック剤が含有されていることが好ましく、この場合、湿気に触れると、硬化剤に添加されている硬化反応を抑制するブロック剤が外れ、硬化反応を開始する。
ウレタン樹脂は塗装後、すぐに硬化剤と反応するが、エポキシ樹脂は乾燥温度により硬化速度に差があり、高い温度ほど硬化速度が速くなる。したがって、プライマーの硬化速度を速めるためには、乾燥温度は60℃以上とすることが好ましい。乾燥時間は10分以上とすることが好ましい。乾燥温度が60℃未満の場合、乾燥時間が10分未満では、プライマーの硬化が十分に進行しないおそれがある。
以上説明してきたプライマーを、ポリアミド樹脂からなる基材、またはポリアミド樹脂にガラス繊維が含有されたものからなる基材に塗布し、乾燥させる。乾燥したプライマーの上に、第1層目の金属層として銅を0.5〜2μm成膜し、その上に保護層として第2層目の金属層であるNi、Sn−Cu−Cr合金またはSn−Cu−Ni合金を0.1〜0.3μm成膜して電磁波シールド成形体とする。
金属層の形成は、均一に形成させることができ、かつ、耐環境性に優れた膜とすることができる真空成膜法により行うことが好ましい。
真空成膜法としては、電子銃で高融点ターゲットを溶解し、金属を蒸発させ、基板に膜を形成するイオンプレーティング法が好ましい。広い面積について速い成膜速度で膜を形成することができる。
第1層目の金属層には、比抵抗が小さく、安価である点で、銅を用いることが好ましく、形成する層の厚さは0.5〜2.0μmが好ましい。銅層の厚さが0.5μm未満では充分な電磁波シールド特性が発現しない。また、膜本来の構造が粗になり耐食性が著しく低下する。一方、銅層の厚さを2.0μmより厚くしても、電磁波シールド特性はほとんど変化しない。逆に膜応力が強くなり、膜と基材との密着力が低下し、成膜後に自然剥離しやすくなる。また、必要以上に厚くすると、成膜に時間がかかり、生産性が低下する。
第1層目の金属層の上には、保護層として、Ni、Sn−Cu−Cr合金またはSn−Cu−Ni合金を0.1〜0.3μm成膜し、電磁波シールド成形体とする。Niは耐食性が高い点で好ましい。Sn−Cu−Cr合金およびSn−Cu−Ni合金は、Snの融点が低いため成膜速度が大きくなる点で好ましい。保護層の厚さは、耐食性とCuのカバーリングの点で、0.1〜0.3μmとすることが好ましい。
保護層の厚さが0.1μm未満では膜にピンホールが発生するおそれがある。特に、製品の立ち面では膜が薄くなり未着部分が発生しやすいので、注意が必要である。一方、保護層の厚さを0.3μmより厚くしても、耐食性にほとんど変化はない。逆に、膜応力が大きくなり、膜にクラックが入りやすくなる。
(実施例1)
基材としては、ポリアミド樹脂とガラス繊維とが50質量%ずつ配合された、レニー(登録商標)1022H(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)からなる大きさ50×50mm、厚さ2mmの基材を用いた。プライマーとしては、ウレタン樹脂(イソシアネートを1.5質量%含有)とエポキシ樹脂が1:1で配合された樹脂に湿気硬化タイプの硬化剤アミンを入れた1液タイプのプライマーを作製した。作製したプライマーをMEK(Methyl ethyl ketone;メチルエチルケトン)で、固形分を15質量%に希釈した。そして、エアースプレーガンを用いて、吹付空気圧力を2気圧として、厚さ3μm塗装し、アンダーコート(プライマー層)とした。それを150℃の大気乾燥器に入れて30分間乾燥させた。
基材としては、ポリアミド樹脂とガラス繊維とが50質量%ずつ配合された、レニー(登録商標)1022H(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)からなる大きさ50×50mm、厚さ2mmの基材を用いた。プライマーとしては、ウレタン樹脂(イソシアネートを1.5質量%含有)とエポキシ樹脂が1:1で配合された樹脂に湿気硬化タイプの硬化剤アミンを入れた1液タイプのプライマーを作製した。作製したプライマーをMEK(Methyl ethyl ketone;メチルエチルケトン)で、固形分を15質量%に希釈した。そして、エアースプレーガンを用いて、吹付空気圧力を2気圧として、厚さ3μm塗装し、アンダーコート(プライマー層)とした。それを150℃の大気乾燥器に入れて30分間乾燥させた。
次に、その基板をイオンプレーティング装置(神港精機株式会社製、AAIH-W36200SBT)に取り付け、1層目に銅を1μm成膜し、続けて保護層としてニッケルを0.2μm成膜した。
このようにして作製した成形体に、次の試験を実施した。
[初期付着の確認試験]
碁盤目テープ試験により、初期付着を確認する試験を実施した。具体的には、成形体に形成した金属層の面に、1×1mmの切れ目を入れ、100マスについてセロファンテープ(ニチバン株式会社製、CT1835)を貼り付けた。そして、該テープをひきはがした時に基材と金属層との間で剥離が生じるか否かを調べることで基材と金属層との密着性について評価した。実施例1のサンプルについてはマス目100個中1つも剥離は生じなかった。試験結果を表1に示す。
碁盤目テープ試験により、初期付着を確認する試験を実施した。具体的には、成形体に形成した金属層の面に、1×1mmの切れ目を入れ、100マスについてセロファンテープ(ニチバン株式会社製、CT1835)を貼り付けた。そして、該テープをひきはがした時に基材と金属層との間で剥離が生じるか否かを調べることで基材と金属層との密着性について評価した。実施例1のサンプルについてはマス目100個中1つも剥離は生じなかった。試験結果を表1に示す。
[耐湿試験]
基材と金属層との密着性に対する湿度の影響を調べた。具体的には、温度60℃、湿度95%の環境に、240時間および600時間保持した後、外観の変化を観察するとともに、前記した碁盤目テープ試験を実施した。その結果、該環境に240時間および600時間保持した後であっても、外観に変化はなく、また碁盤目テープ試験でも、マス目100個中1つも剥離は生じなかった。試験結果を表1に示す。
基材と金属層との密着性に対する湿度の影響を調べた。具体的には、温度60℃、湿度95%の環境に、240時間および600時間保持した後、外観の変化を観察するとともに、前記した碁盤目テープ試験を実施した。その結果、該環境に240時間および600時間保持した後であっても、外観に変化はなく、また碁盤目テープ試験でも、マス目100個中1つも剥離は生じなかった。試験結果を表1に示す。
[耐熱試験]
基材と金属層との密着性に対する温度の影響を調べた。具体的には、温度85℃、湿度0%の環境に、時間240時間保持した後、外観の変化を観察するとともに、前記した碁盤目テープ試験を実施した。その結果、該環境に240時間保持した後であっても、外観に変化はなく、また碁盤目テープ試験でも、マス目100個中1つも剥離は生じなかった。試験結果を表1に示す。
基材と金属層との密着性に対する温度の影響を調べた。具体的には、温度85℃、湿度0%の環境に、時間240時間保持した後、外観の変化を観察するとともに、前記した碁盤目テープ試験を実施した。その結果、該環境に240時間保持した後であっても、外観に変化はなく、また碁盤目テープ試験でも、マス目100個中1つも剥離は生じなかった。試験結果を表1に示す。
[シート抵抗の測定]
シート抵抗を測定することにより、シールド特性について評価を行った。具体的には、基材上に形成した金属層のシート抵抗を、三菱化学株式会社製Loresta(登録商標) MP MCP-T350 を用い、4端子測定法の原理で測定した。その結果、シート抵抗は0.30×10-2Ω/口以下であった。試験結果を表1に示す。
シート抵抗を測定することにより、シールド特性について評価を行った。具体的には、基材上に形成した金属層のシート抵抗を、三菱化学株式会社製Loresta(登録商標) MP MCP-T350 を用い、4端子測定法の原理で測定した。その結果、シート抵抗は0.30×10-2Ω/口以下であった。試験結果を表1に示す。
なお、基材としてABS成形品を用いた以外は実施例1と同様に成膜した場合のシート抵抗も0.30×10-2Ω/□以下であり、基材にポリアミド樹脂を用いてもシート抵抗に影響しないことも確認した。
(実施例2)
保護層としてSn−Cu−Cr合金を0.2μm成膜した以外は実施例1と同様な処理を行った。
保護層としてSn−Cu−Cr合金を0.2μm成膜した以外は実施例1と同様な処理を行った。
得られた成形体の性能も実施例1と同様であった。試験結果を表1に示す。
(実施例3)
保護層としてSn−Cu−Ni合金を0.2μm成膜した以外は実施例1と同様な処理を行った。
保護層としてSn−Cu−Ni合金を0.2μm成膜した以外は実施例1と同様な処理を行った。
得られた成形体の性能も実施例1と同様であった。試験結果を表1に示す。
(実施例4)
ウレタン樹脂(イソシアネートを1.5質量%含有)とエポキシ樹脂が8:2で配合された樹脂をプライマーに用い、塗装膜厚を0.5μmにして60℃、20分で乾燥した以外は実施例1と同様な処理を行なった.得られた成形体の性能も実施例1と同様であった。試験結果を表1に示す。
ウレタン樹脂(イソシアネートを1.5質量%含有)とエポキシ樹脂が8:2で配合された樹脂をプライマーに用い、塗装膜厚を0.5μmにして60℃、20分で乾燥した以外は実施例1と同様な処理を行なった.得られた成形体の性能も実施例1と同様であった。試験結果を表1に示す。
(比較例1)
アンダーコートにナイロン用接着剤(東邦化研製、PP-15MS)を用い、該接着剤をMEKで10質量%に希釈した。それ以外は実施例1と同様な処理を行った。
アンダーコートにナイロン用接着剤(東邦化研製、PP-15MS)を用い、該接着剤をMEKで10質量%に希釈した。それ以外は実施例1と同様な処理を行った。
初期付着の確認試験の結果、マス目100個中50個で剥離が生じた。剥離個所はプライマー層と金属層との間であった。
(比較例2)
ABS基材やポリカーボネート基材に良く接着するゴム系アンダコート(コニシ株式会社製、ボンドG103)を用いた以外は、実施例1と同様な処理を行った。
ABS基材やポリカーボネート基材に良く接着するゴム系アンダコート(コニシ株式会社製、ボンドG103)を用いた以外は、実施例1と同様な処理を行った。
初期付着の確認試験の結果、マス目100個中80個で剥離が生じた。剥離個所はアンダコートと基材との間であった。得られた成形体のそれ以外の性能は実施例1と同様であった。試験結果を表1に示す。
(比較例3)
ナイロン用の印刷インク(株式会社セイコーアドバンス製、ONE STEP NYLON)を10%に希釈して、実施例1と同様な処理を行ったが付着せず、初期付着の確認試験をする前にインクと金属層の間で大きく剥離した。
ナイロン用の印刷インク(株式会社セイコーアドバンス製、ONE STEP NYLON)を10%に希釈して、実施例1と同様な処理を行ったが付着せず、初期付着の確認試験をする前にインクと金属層の間で大きく剥離した。
(比較例4)
実施例1と同様な処理を行い、乾燥温度を55℃にして、30分間乾燥させた。
実施例1と同様な処理を行い、乾燥温度を55℃にして、30分間乾燥させた。
初期付着の確認試験の結果、マス目100個中30個で剥離が生じた。剥離個所はアンダコートと金属層との間であった。得られた成形体のそれ以外の性能は実施例1と同様であった。試験結果を表1に示す。
実施例1〜4は、本発明に係る電磁波シールド成形体の範囲に含まれるので、初期付着の確認試験、耐湿試験(240時間保持、600時間保持)、耐熱試験のいずれにおいても、碁盤目テープ試験による剥離は生じなかった。また、実施例1〜4のシート抵抗は0.30×10-2Ω/□以下であり、電磁波シールドが30dB得られることを確認した。
それに対し、比較例1はプライマーにナイロン用接着剤(東邦化研製、PP-15MS)を用いており、本発明に係る電磁波シールド成形体の範囲に含まれないため、初期付着の確認試験においても、マス目100個中50個で剥離が生じた。また、240時間保持の耐湿試験後に実施した碁盤目テープ試験では、マス目100個中100個で剥離が生じ、240時間保持の耐熱試験後に実施した碁盤目テープ試験では、マス目100個中40個で剥離が生じた。
比較例2はプライマーにゴム系アンダコート(コニシ株式会社製、ボンドG103)を用いており、本発明に係る電磁波シールド成形体の範囲に含まれないため、初期付着の確認試験においても、マス目100個中80個で剥離が生じた。また、240時間保持の耐湿試験後に実施した碁盤目テープ試験では、マス目100個中100個で剥離が生じ、240時間保持の耐熱試験後に実施した碁盤目テープ試験では、マス目100個中70個で剥離が生じた。
比較例3はプライマーにナイロン用の印刷インク(株式会社セイコーアドバンス製、ONE STEP NYLON)を用いており、本発明に係る電磁波シールド成形体の範囲に含まれないため、実施例1と同様な処理を行ったが付着せず、初期付着の確認試験をする前にインクと金属層の間で大きく剥離した。
比較例4は実施例1同じものを用いたが、乾燥温度が55℃であり、本発明における好ましい乾燥温度の60℃に達していないため、乾燥時間が30分ではプライマーの硬化が十分には進行していないと考えられ、初期付着の確認試験においても、マス目100個中30個で剥離が生じた。また、240時間保持の耐湿試験後に実施した碁盤目テープ試験では、マス目100個中100個で剥離が生じ、240時間保持の耐熱試験後に実施した碁盤目テープ試験では、マス目100個中50個で剥離が生じた。
Claims (12)
- ポリアミド樹脂からなる基材、または、ガラス繊維を含有するポリアミド樹脂からなる基材の表面に、ウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを有するプライマーを塗布し、得られたプライマー層の上に、電磁波シールド膜を成膜することを特徴とする電磁波シールド成形体の製造方法。
- 前記プライマーとして、ウレタン樹脂の含有量がウレタン樹脂とエポキシ樹脂の合計質量に対して40〜90質量%であるプライマーを用いることを特徴とする請求項1に記載の電磁波シールド成形体の製造方法。
- 前記プライマーとして、硬化剤を含有するプライマーを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁波シールド成形体の製造方法。
- 前記硬化剤として、アミンを含有する硬化剤およびイソシアネートを含有する硬化剤を用いることを特徴とする請求項3に記載の電磁波シールド成形体の製造方法。
- 前記アミンを含有する硬化剤として、アミンとブロック剤を含有し、湿気により反応を開始する硬化剤を用い、前記イソシアネートを含有する硬化剤として、水酸基と反応する硬化剤を用いることを特徴とする請求項3に記載の電磁波シールド成形体の製造方法。
- 塗布したプライマーを、60℃以上の温度で乾燥させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電磁波シールド成形体の製造方法。
- 前記電磁波シールド膜を、プライマー層と接する金属シールド層と、該金属シールド層の上に形成された保護層とから構成し、前記金属シールド層を銅層とし、前記保護層を、Ni、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金から選択される1種以上の金属から構成することを特徴とする請求項6に記載の電磁波シールド成形体の製造方法。
- 真空成膜法により、前記電磁波シールド膜を成膜することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電磁波シールド成形体の製造方法。
- ポリアミド樹脂からなる基材、または、ガラス繊維を含有するポリアミド樹脂からなる基材と、該基材の表面に形成されたウレタン樹脂とエポキシ樹脂とを含有するプライマー層と、該プライマー層の表面に形成された電磁波シールド膜とからなることを特徴とする電磁波シールド成形体。
- 前記電磁波シールド膜が、プライマー層と接する金属シールド層と、該金属シールド層の上に形成された保護層とからなり、前記金属シールド層が銅層であり、前記保護層が、Ni、Sn−Cu−Cr合金、および、Sn−Cu−Ni合金から選択される1種以上の金属からなることを特徴とする請求項9に記載の電磁波シールド成形体。
- 前記金属シールド層の厚さが0.5〜2μmであり、前記保護層の厚さが0.1〜0.3μmであることを特徴とする請求項10に記載の電磁波シールド成形体。
- 請求項1〜8の何れかに記載された方法により得られた電磁波シールド成形体。
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JP2013056423A (ja) * | 2011-09-07 | 2013-03-28 | Jfe Galvanizing & Coating Co Ltd | 殺虫作用を有する樹脂被覆鋼板およびそれを用いた構造体 |
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