以下、本発明の一実施形態を図1〜図21(B)に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのフルカラー画像形成装置100の概略構成が示されている。
図1に示されるフルカラー画像形成装置100は、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)を重ね合わせてカラー画像を形成する装置であり、光走査装置900、4個の感光体ドラム(901a、901b、901c、901d)、4個の帯電チャージャ(902a、902b、902c、902d)、4個の現像ローラ(903a、903b、903c、903d)、4個のトナーカートリッジ(904a、904b、904c、904d)、4個のクリーニングケース(905a、905b、905c、905d)、転写ベルト906、給紙トレイ907、給紙コロ908、レジストローラ対909、転写チャージャ913、定着ローラ910、排紙トレイ911、及び排紙ローラ912などを備えている。
感光体ドラム901a、帯電チャージャ902a、現像ローラ903a、トナーカートリッジ904a、及びクリーニングケース905aは、組として使用され、ブラックの画像形成ステーションを構成している。
感光体ドラム901b、帯電チャージャ902b、現像ローラ903b、トナーカートリッジ904b、及びクリーニングケース905bは、組として使用され、シアンの画像形成ステーションを構成している。
感光体ドラム901c、帯電チャージャ902c、現像ローラ903c、トナーカートリッジ904c、及びクリーニングケース905cは、組として使用され、マゼンダの画像形成ステーションを構成している。
感光体ドラム901d、帯電チャージャ902d、現像ローラ903d、トナーカートリッジ904d、及びクリーニングケース905dは、組として使用され、イエローの画像形成ステーションを構成している。
すなわち、フルカラー画像形成装置100は、4つの画像形成ステーションを有している。
各感光体ドラムは、転写ベルト906の移動方向(ここでは、X軸方向)に沿って等間隔に配置されている。各感光体ドラムの表面には、それぞれ感光層が形成されている。ここでは、各感光体ドラムは、図1における面内で時計回り(矢印方向)に回転する。
各帯電チャージャは、対応する感光体ドラムの表面をそれぞれ均一に帯電させる。
光走査装置900は、上位装置(例えば、パソコン)90からのカラー画像情報(イエロー画像情報、マゼンタ画像情報、シアン画像情報、ブラック画像情報)に基づいて、色毎に変調された光ビームを、対応する帯電された感光体ドラムの表面にそれぞれ照射する。これにより、各感光体ドラムの表面では、光が照射された部分だけ電荷が消失し、画像情報に対応した潜像が各感光体ドラムの表面にそれぞれ形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラムの回転に伴って対応する現像ローラの方向に移動する。ところで、感光体ドラムの長手方向(回転軸に沿った方向、ここではY軸方向)は「主走査方向」と呼ばれ、感光体ドラムの回転方向は「副走査方向」と呼ばれている。なお、以下では、主走査方向の走査において、走査開始位置から走査終了位置に向かう方向を「走査方向」という。また、各感光体ドラムにおける走査開始位置から走査終了位置までの主走査方向の走査領域のうち、潜像が形成される領域を「画像形成領域」ともいう。この光走査装置900の構成については後述する。
トナーカートリッジ904aにはブラックのトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903aに供給される。トナーカートリッジ904bにはシアンのトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903bに供給される。トナーカートリッジ904cにはマゼンダのトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903cに供給される。トナーカートリッジ904dにはイエローのトナーが格納されており、該トナーは現像ローラ903dに供給される。
各現像ローラは、回転に伴ってその表面に、対応するトナーカートリッジから供給されたトナーが帯電されて薄く均一に付着する。また、各現像ローラには、対応する感光体ドラムにおける帯電している部分(光が照射されなかった部分)と帯電していない部分(光が照射された部分)とで互いに逆方向の電界が生じるような電圧が印加されている。そして、この電圧によって、各現像ローラの表面に付着しているトナーは、対応する感光体ドラムの表面の光が照射された部分にだけ付着する。すなわち、各現像ローラは、対応する感光体ドラムの表面に形成された潜像にトナーを付着させて画像情報を顕像化させる。ここでトナーが付着された像(以下、「トナー画像」という。)は、感光体ドラムの回転に伴って転写ベルト906の方向に移動する。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー画像は、タイミングを合わせて転写ベルト906上に順次転写され、重ね合わされてカラー画像が形成される。
給紙トレイ907には転写対象物としての記録紙が格納されている。この給紙トレイ907の近傍には給紙コロ908が配置されており、該給紙コロ908は、記録紙を給紙トレイ907から1枚ずつ取り出し、レジストローラ対909に搬送する。該レジストローラ対909は、副走査方向の記録開始タイミングに合わせて記録紙を転写ベルト906に向けて送り出す。そして、転写チャージャ913により転写ベルト906上のカラー画像が記録紙に転写される。ここで転写された記録紙は、定着ローラ910に送られる。
この定着ローラ910では、熱と圧力とが記録紙に加えられ、これによってトナーが記録紙上に定着される。ここで定着された記録紙は、排紙ローラ912を介して排紙トレイ911に送られ、排紙トレイ911上に順次スタックされる。
各クリーニングケースは、対応する感光体ドラムの表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。なお、除去された残留トナーは、再度利用されるようになっている。残留トナーが除去された感光体ドラムの表面は、再度対応する帯電チャージャの位置に戻る。
《光走査装置》
次に、前記光走査装置900の構成について説明する。
この光走査装置900は、図2〜図4に示されるように、4個の光源ユニット(250a、250b、250c、250d)、不図示の4個のカップリングレンズ(207a、207b、207c、207dとする)、不図示の4個のアパーチャ(208a、208b、208c、208dとする)、4個のシリンダレンズ(209a、209b、209c、209d)、ポリゴンミラー213、4個のfθレンズ(218a、218b、218c、218d)、8個の折り返しミラー(224a、224b、224c、224d、227a、227b、227c、227d)、4個のトロイダルレンズ(220a、220b、220c、220d)、不図示の4個の同期センサ(228a、228b、228c、228dとする)、4個の副走査位置検出系(400a、400b、400c、400d)、及び処理回路815(図17参照)などを備えている。なお、図2〜図4では、それぞれ便宜上、光走査装置900の一部のみが図示されている。
光源ユニット250aは、ブラック画像情報に応じて変調された光ビーム(以下、便宜上「ブラックビーム」ともいう)を出射する。光源ユニット250bは、シアン画像情報に応じて変調された光ビーム(以下、便宜上「シアンビーム」ともいう)を出射する。光源ユニット250cは、マゼンダ画像情報に応じて変調された光ビーム(以下、便宜上「マゼンダビーム」ともいう)を出射する。光源ユニット250dは、イエロー画像情報に応じて変調された光ビーム(以下、便宜上「イエロービーム」ともいう)を出射する。
カップリングレンズ207a、アパーチャ208a、シリンダレンズ209a、fθレンズ218a、折り返しミラー224a、トロイダルレンズ220a、折り返しミラー227a、同期センサ228a、及び副走査位置検出系400aは、それぞれブラックビームに対応している。
カップリングレンズ207b、アパーチャ208b、シリンダレンズ209b、fθレンズ218b、折り返しミラー224b、トロイダルレンズ220b、折り返しミラー227b、同期センサ228b、及び副走査位置検出系400bは、それぞれシアンビームに対応している。
カップリングレンズ207c、アパーチャ208c、シリンダレンズ209c、fθレンズ218c、折り返しミラー224c、トロイダルレンズ220c、折り返しミラー227c、同期センサ228c、及び副走査位置検出系400cは、それぞれマゼンダビームに対応している。
カップリングレンズ207d、アパーチャ208d、シリンダレンズ209d、fθレンズ218d、折り返しミラー224d、トロイダルレンズ220d、折り返しミラー227d、同期センサ228d、及び副走査位置検出系400dは、それぞれイエロービームに対応している。
各光源ユニットから出射された光ビームは、対応するカップリングレンズにより略平行光とされ、対応するアパーチャによりビーム整形された後、対応するシリンドリカルレンズにより副走査方向に対応する方向にのみ集束され、ポリゴンミラー213の偏向面位置に、主走査方向に対応する方向に長い線像として結像する。これにより、ポリゴンミラー213における偏向点と、各感光体ドラムの表面における集光点とが副走査方向に共役となる。
ポリゴンミラー213は、2段構造の6面ミラーで構成されている。1段目の6面ミラーではシリンダレンズ209aからの光ビーム及びシリンダレンズ209dからの光ビームがそれぞれ偏向され、2段目の6面ミラーではシリンダレンズ209bからの光ビーム及びシリンダレンズ209cからの光ビームがそれぞれ偏向される。すなわち、単一のポリゴンミラー213で全ての光ビームが偏向される。
各fθレンズは、ポリゴンミラー213の回転に伴って、対応する感光体ドラム面上で光スポットが主走査方向に等速に移動するようなパワーを有する非円弧面形状を有している。そして、fθレンズ218a及びfθレンズ218bは、ポリゴンミラー213の一側(ここでは、+X側)に配置され、fθレンズ218c及びfθレンズ218dは、ポリゴンミラー213の他側(ここでは、−X側)に配置されている。また、fθレンズ218aとfθレンズ218b、及びfθレンズ218cとfθレンズ218dは、それぞれ副走査方向に対応する方向(ここでは、Z軸方向)に積層されている。なお、各シリンダレンズと各fθレンズと各トロイダルレンズとによって、ポリゴンミラー213の偏向面の面倒れが補正されるようになっている。
fθレンズ218aからのブラックビームは、折り返しミラー224a、トロイダルレンズ220a、及び折返しミラー227aを介して、感光体ドラム901a上にスポット状に結像する。すなわち、fθレンズ218aと折り返しミラー224aとトロイダルレンズ220aと折返しミラー227aとによって、感光体ドラム901aに対する走査光学系(便宜上「走査光学系A」とする)が構成されている。
fθレンズ218bからのシアンビームは、折り返しミラー224b、トロイダルレンズ220b、及び折返しミラー227bを介して、感光体ドラム901b上にスポット状に結像する。すなわち、fθレンズ218bと折り返しミラー224bとトロイダルレンズ220bと折返しミラー227bとによって、感光体ドラム901bに対する走査光学系(便宜上「走査光学系B」とする)が構成されている。
fθレンズ218cからのマゼンダビームは、折り返しミラー224c、トロイダルレンズ220c、及び折返しミラー227cを介して、感光体ドラム901c上にスポット状に結像する。すなわち、fθレンズ218cと折り返しミラー224cとトロイダルレンズ220cと折返しミラー227cとによって、感光体ドラム901cに対する走査光学系(便宜上「走査光学系C」とする)が構成されている。
fθレンズ218dからのイエロービームは、折り返しミラー224d、トロイダルレンズ220d、及び折返しミラー227dを介して、感光体ドラム901d上にスポット状に結像する。すなわち、fθレンズ218dと折り返しミラー224dとトロイダルレンズ220dと折返しミラー227dとによって、感光体ドラム901dに対する走査光学系(便宜上「走査光学系D」とする)が構成されている。
なお、各折り返しミラーは、ポリゴンミラー213から各感光体ドラムに至る各光路長が互いに一致するとともに、各感光体ドラムにおける光ビームの入射位置及び入射角がいずれも互いに等しくなるように、それぞれ配置されている。
また、光走査装置900では、4個の感光体ドラム上を同時に走査することができる。
各同期センサ(図示省略)は、対応する感光体ドラムにおける主走査方向の走査開始を検出する。ここでは、各同期センサは、いずれも像面と等価な位置に配置され、主走査方向の走査を開始するのに先立って、ポリゴンミラー213により偏向された光ビームが各同期センサに入射する。各同期センサは、それぞれ受光量に応じた信号(光電変換信号)を出力する。
《副走査位置検出系》
副走査位置検出系400aは、感光体ドラム901aに形成される光スポットの副走査方向の位置を検出する。この副走査位置検出系400aは、図3及び図4に示されるように、反射ミラー401a、アパーチャ402a、回折光学素子403a、レンズ404a、及び受光素子405aを有している。ここでは、受光素子405aは、走査光学系Aによる光ビームの集光位置Pfa(図4参照)よりも後方に配置されている。反射ミラー401aは、折り返しミラー227aと感光体ドラム901aとの間であって、主走査方向の走査の際に、感光体ドラム901aにおける画像形成領域Ara(図4参照)から外れた領域を走査する光ビームの光路上に配置されている。回折光学素子403aは、反射ミラー401aで反射された光ビームが入射され、回折像を形成する。レンズ404aは、走査光学系Aによる光ビームの集光位置Pfaと受光素子405aの受光位置とが共役となるように、回折光学素子403aからの光ビームを集光する。アパーチャ402aは、回折光学素子403aとレンズ404aとによって生成される回折像(ファーフィールドパターン)の一部のみを受光素子405aで検出するために、受光素子405aの受光領域における副走査方向に対応する方向の幅を規制する。そして、このアパーチャ402aを通過した光ビーム(回折光の一部)が受光素子405aの受光面で受光される。すなわち、受光素子405aに入射する光ビームの少なくとも副走査方向に対応する方向の幅がアパーチャ402aによって規制される。
副走査位置検出系400bは、感光体ドラム901bに形成される光スポットの副走査方向の位置を検出する。この副走査位置検出系400bは、図3に示されるように、反射ミラー401b、アパーチャ402b、回折光学素子403b、レンズ404b、及び受光素子405bを有している。ここでは、受光素子405bは、走査光学系Bによる光ビームの集光位置よりも後方に配置されている。反射ミラー401bは、折り返しミラー227bと感光体ドラム901bとの間であって、主走査方向の走査の際に、感光体ドラム901bにおける画像形成領域から外れた領域を走査する光ビームの光路上に配置されている。回折光学素子403bは、反射ミラー401bで反射された光ビームが入射され、回折像を形成する。レンズ404bは、走査光学系Bによる光ビームの集光位置と受光素子405bの受光位置とが共役となるように、回折光学素子403bからの光ビームを集光する。アパーチャ402bは、回折光学素子403bとレンズ404bとによって生成される回折像(ファーフィールドパターン)の一部のみを受光素子405bで検出するために、受光素子405bの受光領域における副走査方向に対応する方向の幅を規制する。そして、このアパーチャ402bを通過した光ビーム(回折光の一部)が受光素子405bの受光面で受光される。すなわち、受光素子405bに入射する光ビームの少なくとも副走査方向に対応する方向の幅がアパーチャ402bによって規制される。
副走査位置検出系400cは、感光体ドラム901cに形成される光スポットの副走査方向の位置を検出する。この副走査位置検出系400cは、図3に示されるように、反射ミラー401c、アパーチャ402c、回折光学素子403c、レンズ404c、及び受光素子405cを有している。ここでは、受光素子405cは、走査光学系Cによる光ビームの集光位置よりも後方に配置されている。反射ミラー401cは、折り返しミラー227cと感光体ドラム901cとの間であって、主走査方向の走査の際に、感光体ドラム901cにおける画像形成領域から外れた領域を走査する光ビームの光路上に配置されている。回折光学素子403cは、反射ミラー401cで反射された光ビームが入射され、回折像を形成する。レンズ404cは、走査光学系Cによる光ビームの集光位置と受光素子405cの受光位置とが共役となるように、回折光学素子403cからの光ビームを集光する。アパーチャ402cは、回折光学素子403cとレンズ404cとによって生成される回折像(ファーフィールドパターン)の一部のみを受光素子405cで検出するために、受光素子405cの受光領域における副走査方向に対応する方向の幅を規制する。そして、このアパーチャ402cを通過した光ビーム(回折光の一部)が受光素子405cの受光面で受光される。すなわち、受光素子405cに入射する光ビームの少なくとも副走査方向に対応する方向の幅がアパーチャ402cによって規制される。
副走査位置検出系400dは、感光体ドラム901dに形成される光スポットの副走査方向の位置を検出する。この副走査位置検出系400dは、図3及び図4に示されるように、反射ミラー401d、アパーチャ402d、回折光学素子403d、レンズ404d、及び受光素子405dを有している。ここでは、受光素子405dは、走査光学系Dによる光ビームの集光位置Pfd(図4参照)よりも後方に配置されている。反射ミラー401dは、折り返しミラー227dと感光体ドラム901dとの間であって、主走査方向の走査の際に、感光体ドラム901dにおける画像形成領域Ard(図4参照)から外れた領域を走査する光ビームの光路上に配置されている。回折光学素子403dは、反射ミラー401dで反射された光ビームが入射され、回折像を形成する。レンズ404dは、走査光学系Dによる光ビームの集光位置Pfdと受光素子405dの受光位置とが共役となるように、回折光学素子403dからの光ビームを集光する。アパーチャ402dは、回折光学素子403dとレンズ404dとによって生成される回折像(ファーフィールドパターン)の一部のみを受光素子405dで検出するために、受光素子405dの受光領域における副走査方向に対応する方向の幅を規制する。そして、このアパーチャ402dを通過した光ビーム(回折光の一部)が受光素子405dの受光面で受光される。すなわち、受光素子405dに入射する光ビームの少なくとも副走査方向に対応する方向の幅がアパーチャ402dによって規制される。
各回折光学素子は、入射光の位相を空間的に変調して回折像(ファーフィールドパターン)を形成するように、二次元状に配列された凹凸を有している。
ここでは、各回折光学素子は、一例として図6(A)に示されるように、副走査方向に対応する方向(以下、便宜上「dir_sub方向」という)に延びる2つのドット列像(d1、d2)と、この2つのドット列像の間であって、dir_sub方向に対して角度θ(0<θ<90°)だけ傾いたドット列像d3と、からなる回折像を形成するように設定されている。すなわち、ドット列像d3は、主走査方向に対応する方向(以下、便宜上「dir_main方向」という)及びdir_sub方向のいずれとも異なる方向に延びている。図6(B)は図6(A)の中央部の拡大図である。ここでは、黒い部分は光の強度が強い部分を示し、白い部分は光の強度が弱い部分を示すものとする。なお、図6(A)及び図6(B)では、便宜上、ドット全体を同一濃度で描いているが、実際はドット内の光強度は一様ではない(図9(B)参照)。また、各ドット間にも光強度の相違が若干存在する(図9(B)参照)。
各副走査位置検出系について、計算機シミュレーションの結果を用いて説明する。各副走査位置検出系は、それぞれほぼ同様にして感光体ドラムに形成される光スポットの副走査方向の位置を検出する。そこで、以下では、各回折光学素子を総称して「回折光学素子403」、各レンズを総称して「レンズ404」、各受光素子を総称して「受光素子405」という。
回折光学素子403は、回折領域を256ピクセル×256ピクセルの要素に分割した。1ピクセルの大きさは5μm角である。従って、回折光学素子403の位相変調領域は、1.28mm×1.28mmである(図5参照)。また、入射光の位相を空間的に変調する際の位相のレベル数は、0〜2πまでを256階調にしている。そして、一例として図7に示されるように、回折光学素子403の直前には、回折領域のみに光が入射するようにアパーチャAPを配置し、回折光学素子403の直後(距離を0としている)には、焦点距離が100mmの理想レンズ404を配置した。なお、光ビームの大きさに対して十分大きい回折光学素子を用いれば、アパーチャAPは必要ない。
また、理想レンズ404の焦点位置において、各ドットのdir_sub方向の間隔を100μm、ドット列像d3における各ドットのdir_main方向の間隔を50μmとした。また、各ドットのビーム径(1/e2)は、約70μmとした。そして、図8に示されるように、回折像を中央に含む2.56mm×2.56mmの矩形領域を計算の対象領域とし、該矩形領域の左下隅を計算上の原点(0,0)とした。
図9(B)には、回折光学素子403によって形成される回折像において、dir_sub方向の位置が互いに異なり、dir_main方向に延びる3本の線(La、Lb、Lc、図9(A)参照)上での光強度Pwの計算結果が示されている。各線の間隔は300μmである。また、光強度Pwは、最大値を1としている。ドット位置で光強度Pwが強くなっている。
上述のような光学特性を有する回折光学素子403上をレーザ光でdir_main方向に走査すると、回折光学素子403によって形成される回折像もdir_main方向に移動する。そして、一例として図10(A)〜図10(C)に示されるように、走査線のdir_sub方向の位置が異なると、回折像のdir_sub方向の位置も異なる。この場合には、一例として図11(A)〜図11(C)に示されるように、ドット列像d1及びドット列像d2に対するドット列像d3の検出タイミングが互いに異なる信号が受光素子405から出力される。すなわち、受光素子405は、回折光学素子403に入射される光ビームのdir_sub方向の入射位置に応じた時間間隔で変化する信号を出力する。従って、受光素子405の出力信号に基づいて、回折光学素子403に入射される光ビームのdir_sub方向の入射位置を求めることができる。なお、本実施形態では、一例として、ドット列像d1とドット列像d2とドット列像d3とからなる回折像の中心位置のdir_sub方向に関する位置を、「回折像のdir_sub方向の位置」ということとする。
しかしながら、回折像においてドットが離散的に並んでいることに起因して、回折像のdir_sub方向の位置と前記ドット列像d3の検出タイミングとの関係は必ずしも線形ではない。回折像のdir_sub方向の位置とドット列像d3の検出タイミングとの関係が線形性を有していない場合には、受光素子405の出力信号に基づいて光ビームのdir_sub方向の入射位置を求める際の計算が複雑になる。また、回折像のdir_sub方向の位置変化に対するドット列像d3の検出タイミングの変化が小さい部分が存在すると、検出誤差が大きくなる。
そこで、回折像のdir_sub方向の位置とドット列像d3の検出タイミングとの関係に及ぼす受光素子405のdir_sub方向の大きさ(dsとする)の影響を知るために、便宜上、回折像を固定して受光素子405の位置をdir_sub方向に変化させ、受光素子405の位置(Dpd)とドット列像d3の検出位置(Dd3)との関係を計算機シミュレーションで求めた。なお、それぞれの位置は前記原点を基準としている。ds=100μmのときの計算結果が図12(A)に、ds=110μmのときの計算結果が図12(B)に、ds=120μmのときの計算結果が図12(C)に、ds=130μmのときの計算結果が図12(D)に、ds=140μmのときの計算結果が図12(E)に、ds=150μmのときの計算結果が図12(F)に、示されている。また、ds=160μmのときの計算結果が図13(A)に、ds=170μmのときの計算結果が図13(B)に、ds=180μmのときの計算結果が図13(C)に、ds=190μmのときの計算結果が図13(D)に、示されている。
ここでは、一例として図14に示されるように、光強度の閾値Pthを最大強度の50%に設定し、光強度が増加しつつ閾値Pthを横切る位置n1と光強度が減少しつつ閾値Pthを横切る位置n2との中間位置n3をドット列像d3の検出位置とした。
なお、ds=150μmのときに、前記位置n1をドット列像d3の検出位置とした場合と、前記位置n2をドット列像d3の検出位置とした場合と、前記位置n3をドット列像d3の検出位置とした場合と、について、受光素子405の位置(Dpd)とドット列像d3の検出位置(Dd3)との関係が図15に示されている。位置n3をドット列像d3の検出位置とすることにより、ドットの強度ムラの影響による検出誤差を低減することができる。さらに、ドットが離散的に並んでいることに起因する検出誤差を低減することができる。なお、必ずしも、位置n1と位置n2の中間位置をドット列像d3の検出位置とする必要はなく、位置n1と位置n2の両方を用いた所定の演算式から得られた位置をドット列像d3の検出位置としても良い。また、位置n1と位置n2の両方の間を適当な時間間隔でサンプリングし、サンプリングされた値の重心をドット列像d3の検出位置としても良い。
上記計算機シミュレーションの結果に基づいて、ドット列像d3におけるdir_sub方向のドット間隔に対する受光素子405のdir_sub方向の大きさを示すパラメータ(「パラメータa」とする)と、受光素子405の位置(Dpd)とドット列像d3の検出位置(Dd3)との関係の線形性を示すパラメータとの関係を求めた。ここでは、一例として、受光素子405の位置(Dpd)とドット列像d3の検出位置(Dd3)との関係の線形性を示すパラメータとして、重決定係数(確実度係数ともいい、重相関係数の2乗で表される。以下、「パラメータR2」とする)を用いた。なお、R2値は0〜1の値をとり、1に近いほど直線に近いことを示している。
パラメータaは、ドット列像d3におけるdir_sub方向のドット間隔をps[mm]、受光素子405のdir_sub方向の大きさをds[mm]、(ds−ps×n)が正となる0又は最大の正の整数をnとしたときに、次の(1)式で得られる値である。
a=(ds−ps×n)/ps ……(1)
a=0.0は、dsがpsの整数倍と一致する場合を意味している。ここでは、ps=100μmであるので、ds=100μmはa=0.0に対応し、ds=110μmはa=0.1に対応し、ds=120μmはa=0.2に対応し、ds=130μmはa=0.3に対応し、ds=140μmはa=0.4に対応し、ds=150μmはa=0.5に対応し、ds=160μmはa=0.6に対応し、ds=170μmはa=0.7に対応し、ds=180μmはa=0.8に対応し、ds=190μmはa=0.9に対応している。
図16に示されるように、受光素子405のdir_sub方向の大きさを、dir_sub方向のドット間隔の整数倍と異ならせることにより、受光素子405の位置(Dpd)とドット列像d3の検出位置(Dd3)との関係の線形性を改善できる。なお、a=0.5前後にするのが最適である。従って、本実施形態では、各受光素子の前にアパーチャを設けて、各受光素子のdir_sub方向の大きさを150μmとしている。なお、各受光素子自体の大きさを150μmとしても良い。この場合には、各受光素子の前のアパーチャはなくても良い。
また、ドット間の光強度のムラは前記線形性を低下させる要因となるため、各ドットの光強度の均一性を高めることにより、さらに受光素子405の位置(Dpd)とドット列像d3の検出位置(Dd3)との関係を線形に近づけることが可能である。
《光源制御回路》
前記処理回路815は、図17に示されるように、4つの光源制御回路(815a、815b、815c、815d)を有している。
光源制御回路815aは、上位装置90からのブラック画像情報、同期センサ228aの出力信号、及び受光素子405aの出力信号などに基づいて光源ユニット250aを制御する。光源制御回路815bは、上位装置90からのシアン画像情報、同期センサ228bの出力信号、及び受光素子405bの出力信号などに基づいて光源ユニット250bを制御する。光源制御回路815cは、上位装置90からのマゼンダ画像情報、同期センサ228cの出力信号、及び受光素子405cの出力信号などに基づいて光源ユニット250cを制御する。光源制御回路815dは、上位装置90からのイエロー画像情報、同期センサ228dの出力信号、及び受光素子405dの出力信号などに基づいて光源ユニット250dを制御する。各光源制御回路は、ほぼ同様な回路構成を有している。そこで、以下では、代表として光源制御回路815cについて説明する。
光源制御回路815cは、一例として図18に示されるように、信号調整回路28、副走査位置演算回路23、書込制御回路30、画像処理回路40、及び光源駆動回路50などを有している。
画像処理回路40は、上位装置90からのマゼンダ画像情報に基づいて、マゼンダの画像データを生成する。
信号調整回路28は、同期センサ228cの出力信号を増幅、反転、2値化して信号S228cを生成する。従って、同期センサ228cに光が入射すると、信号S228cは、「H(ハイレベル)」から「L(ローレベル)」に変化する。また、信号調整回路28は、受光素子405cの出力信号を増幅、2値化して信号S405cを生成する。信号S405cは、一例として図19(A)〜図19(C)に示されるように、ドット列像d1のドットに対応するパルスp1、ドット列像d3のドットに対応するパルスp3、及びドット列像d2のドットに対応するパルスp2を有している。そして、回折光学素子404cを走査する光ビームのdir_sub方向の走査位置によって、回折像のdir_sub方向の位置が変化するため、パルスp1とパルスp3の時間間隔t13及びパルスp3とパルスp2の時間間隔t32が異なっている。
副走査位置演算回路23は、信号S405cに基づいて感光体ドラム901cにおける光スポットの副走査方向の位置を検出する。ここでは、一例として図20に示されるように、パルスp1の立ち上がりタイミングt1とパルスp1の立ち下がりタイミングt2との中間のタイミングt3と、パルスp3の立ち上がりタイミングt4とパルスp3の立ち下がりタイミングt5との中間のタイミングt6と、を求め、タイミングt3とタイミングt6との時間差を前記t13として算出する。そして、位置ずれがないときのt13(基準時間差とする。)と計測されたt13との差Δtを算出し、光スポットの副走査方向の位置ずれ量及び位置ずれ方向(+側又は−側)を求める。なお、上記基準時間差、及び上記Δtと光スポットの副走査方向の位置ずれ量との関係は、予め取得され不図示のメモリに格納されている。また、パルスp1の立ち上がりタイミングt1とパルスp1の立ち下がりタイミングt2とを予め設定されている演算式に代入して得られるタイミングt3´と、パルスp3の立ち上がりタイミングt4とパルスp3の立ち下がりタイミングt5とを予め設定されている演算式に代入して得られるタイミングt6´と、の時間差を前記t13としても良い。
書込制御回路30は、画像処理回路40からの画像データを各画素に割り当てて変調データを生成し、該変調データをシリアル信号として出力する。ここでは、光源ユニット250cの各半導体レーザに対応した複数のシリアル信号が出力される。
また、書込制御回路30は、副走査位置演算回路23で検出された光スポットの副走査方向の位置ずれ量及び位置ずれ方向に基づいて、該位置ずれを補正する。ここでは、画像の副走査方向の形成開始位置を画像解像度に応じた1ライン単位で調整することにより、前記位置ずれを補正する。ところで、一例として図21(A)及び図21(B)に示されるように、書込制御回路30では、動作開始信号(信号STOUT)が検出されると、光走査開始信号(信号SOS)のパルスをカウントし、カウント値Nが予め設定されている値Csに達したときに、画像形成が開始される(T1参照)。信号SOSのパルスは、1走査につき1個検出されるようになっている。そこで、カウント値NがCs−1に達したときに、画像形成が開始されるようにすれば副走査方向の画像形成が1ライン分(ΔL)だけ早くなり(T2参照)、カウント値NがCs+1に達したときに、画像形成が開始されるようにすれば副走査方向の画像形成が1ライン分(ΔL)だけ遅くなる(T3参照)。例えば、600dpiであれば42.3μm、1200dpiであれば21.2μm単位で副走査方向の位置をシフトすることができる。すなわち、書込制御回路30は、副走査方向位置演算回路23で検出された光スポットの副走査方向の位置ずれ量及び位置ずれ方向に基づいて、該位置ずれが補正されるように、画像形成が開始されるときのカウント値を設定する。なお、画像データの先頭部に空白ラインを設け、該空白ライン数を変化させても良い。この方法によっても、画像の副走査方向の形成開始位置を画像解像度に応じた1ライン単位で調整することができる。
さらに、書込制御回路30は、感光体ドラム901cにおける画像形成領域外に向かう光ビームの強度を、前記画像形成領域内に向かう光ビームの強度よりも強くする。これにより、ドット間の強度むらを減少させることができる。
光源駆動回路50は、書込制御回路30からのシリアル信号に基づいて光源ユニット250cの駆動信号を生成する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光走査装置900では、書込制御回路30によってシフト手段及びビーム強度調整手段が実現されている。
また、本実施形態に係るフルカラー画像形成装置100では、各感光体ドラムによって走査対象物が実現され、各帯電チャージャと各現像ローラと各トナーカートリッジと転写チャージャ913と定着ローラ910とによって転写装置が実現されている。
以上説明したように、本実施形態に係る光走査装置900によると、画像形成ステーション毎に、光源ユニットから対応する感光体ドラム表面(被走査面)に向かう光ビームが入射され、dir_sub方向(第1の方向)に延びる2つのドット列像d1、d2と、dir_sub方向に対して角度θ(0<θ<90°)だけ傾いた方向(第2の方向)に延びるドット列像d3とを含む回折像を形成する回折光学素子403、及び前記回折像を検出する受光素子405(光検出器)を有している。これにより、受光素子405からは、回折光学素子403に入射する光ビームのdir_sub方向の位置情報を含む信号が出力される。従って、結果として、高コスト化及び大型化を招くことなく、感光体ドラム表面に形成される光スポットの副走査方向の位置を精度良く検出することが可能となる。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、前記回折光学素子403によって形成される回折像は、ドット列状の像を含んでいる。これにより、回折光学素子403と受光素子405との位置関係に経時変化が発生しても、検出誤差を小さく抑えることができる。
ところで、温度変化により、半導体レーザから出射されるレーザ光の波長が変化したり、回折光学素子403自体が膨張・収縮すると、回折像も膨張もしくは収縮する。しかしながら、本実施形態に係る光走査装置900によると、前記回折光学素子403によって形成される回折像は、互いに平行な2つの回折像を含んでいるため、互いに平行な2つの回折像を検出して、温度変化の影響を補正することが可能である。従って、温度変化により、半導体レーザから出射されるレーザ光の波長が変化したり、回折光学素子403自体が膨張・収縮しても、安定した検出精度を維持することができる。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、前記回折光学素子403は、入射光の位相を空間的に変調することにより回折像を形成するように、二次元状に配列された凹凸を有している。これにより、回折光学素子403での光量の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る光走査装置900では、感光体ドラム面に等価な面と受光素子405の受光面とが共役になるように、回折光学素子403と受光素子405との間にレンズ404が配置されているため、光スポットの副走査方向の位置を検出できる範囲(ダイナミックレンジ)を広くすることができる。また、回折像の大きさをレンズの倍率に応じて調整可能であり、設計の幅が広がるというメリットもある。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、画像形成領域外に向かう光ビームを用いて、感光体ドラム表面に形成される光スポットの副走査方向の位置を検出している。これにより、リアルタイムで副走査方向の位置を検出することができる。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、画像形成領域外に向かう光ビームの強度を、画像形成領域内に向かう光ビームの強度よりも強くしている。これにより、感光体に向かうビーム強度を増大させることなく、前記受光素子405で検出されるビーム強度を増大させることができる。そのため、前記受光素子405で検出される信号のSN比を向上させることができ、検出精度の向上を図ることができる。また、感光体へ向かうビーム強度は増大させないため、出力画像の画像品質や感光体ドラム自体に悪影響を及ぼすことを回避できる。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、前記各副走査位置検出系では、受光素子405のdir_sub方向の長さが、回折像におけるdir_sub方向のドット間隔の整数倍と異なるように設定している。これにより、検出誤差を小さくすることができる。
また、本実施形態に係る光走査装置900によると、前記各副走査位置検出系は、受光素子405に入射する光ビームの少なくともdir_sub方向の幅を150μmに規制するアパーチャを有している。これにより、低コストの汎用の受光素子を使用することができる。
また、本実施形態に係るフルカラー画像形成装置100によると、光走査装置900を備えているために、高コスト化及び大型化を招くことなく、高品質の画像を形成することが可能となる。
また、本実施形態に係るフルカラー画像形成装置100によると、画像の副走査方向の形成開始位置を調整することによって、感光体ドラム表面に形成される光スポットの副走査方向ずれを補正している。これにより、低コスト化及び小型化を更に図ることが可能となる。
なお、上記実施形態では、画像の副走査方向の形成開始位置を調整することにより、感光体ドラム表面に形成される光スポットの副走査方向の位置ずれを補正する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、1ライン分よりも細かくシフトする必要がある場合には、一例として図22に示されるように、互いに非平行な入射面と射出面を有し、不図示の回動機構によって光軸504を回転軸として回動可能な、くさび形プリズム501を各光源ユニットとポリゴンミラー213との間にそれぞれ配置しても良い。このくさび形プリズム501は、回動に応じて、入射光502に対して副走査方向に対応する方向w1に偏向した出射光503を出射する。なお、図22におけるw2は主走査方向に対応する方向であり、w3は光軸方向である。この場合には、前記書込制御回路30は、副走査位置演算回路23で検出された光スポットの副走査方向の位置ずれ量及び位置ずれ方向に基づいて、該位置ずれが補正されるようにくさび形プリズム501を回動させる駆動信号を生成し、不図示の回動機構に出力することとなる。ここでは、書込制御回路30とくさび形プリズム501と不図示の回動機構とによってシフト手段が実現される。
また、一例として図23(A)〜図23(E)に示される液晶偏向素子143を用いて副走査方向ずれを補正しても良い。液晶偏向素子とは、電圧を印加すると、ある偏光方向を持った光に対する屈折率が変化することを利用して光を偏向させる素子である。液晶偏向素子143は、上記くさび形プリズム501と同様に、各光源ユニットとポリゴンミラー213との間にそれぞれ配置される。
図23(A)は液晶偏向素子143の外形形状を示している。液晶偏向素子143の中央部に光ビームの光路を偏向可能な有効領域EAがある。図23(B)は、有効領域EA内の、透明電極板152−1(図23(C)参照)を入射側から見た図である。透明電極板152−1には図23(B)における上下方向に長いストライプ状の複数の透明電極パターン156(156−1、156−2、・・・、156−n)が等間隔に(図23(B)における紙面左右方向に)配列されている。そして、各透明電極パターンは、一対の抵抗155を介して電気的に接続されている。なお、図23(B)における左右方向は光ビームの光路が偏向される方向であり、副走査方向に対応する方向w1である。図23(C)は液晶偏向素子143の断面構造及び液晶分子の配向状態を示している。厚さ数[μm]〜数十[μm]程度の液晶層154が、透明電極板152−1、152−2及び配向膜153を介して、2枚のガラス基板151−1及び151−2に挟持されている。光ビームの出射面側の透明電極板152−2には全面一様な電極パターンが形成されている。
ストライプ状の電極パターン156−1には端子1(CH1)が取り付けられ、156−nには端子2(CH2)が取り付けられている。この2つの端子に駆動電圧が印加される。図23(D)に示されるように、端子1及び端子2に互いに異なる電圧(例えば1Vと5V)が印加されると、液晶層154内には抵抗155の抵抗値Rを比例定数とする電位Vtが発生する。そして、この電位分布に従い、液晶層154内の液晶分子のチルト角φが変化する。このように配向した液晶分子に、電圧が0Vのときの液晶分子の長軸方向(図23(C)における紙面左右方向)に偏光した光ビームLBが入射されると、この光ビームLBは、図23(E)に示されるように、偏光方向と同じ方向に屈折率Riの勾配を感じる。すなわち、この液晶偏向素子143はプリズムと同様な作用を有し、光ビームを偏向することができる。駆動電圧を変化させると、屈折率の勾配を変化させることができるため、光ビームの偏向角を制御することができる。この場合には、前記書込制御回路30は、副走査方向位置演算回路23で検出された光スポットの副走査方向の位置ずれ量及び位置ずれ方向に基づいて、該位置ずれが補正されるように液晶偏向素子143の駆動電圧に対応した駆動信号を生成する。すなわち、書込制御回路30と液晶偏向素子143とによってシフト手段が実現される。なお、液晶に代えて、LiNbO3等の他の電気光学材料を用いても良い。
また、上記実施形態において、温度変化の影響が小さい場合には、前記回折光学素子403で形成される回折像に、前記2つのドット列像(d1、d2)の一方がなくても良い(図24参照)。
また、上記実施形態では、前記2つのドット列像(d1、d2)がdir_sub方向に延びる場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、2つのドット列像(d1、d2)は、dir_main方向と異なる方向であって、前記ドット列像d3と異なる方向に延びていれば良い。
また、上記実施形態では、前記2つのドット列像(d1、d2)が互いに平行である場合について説明したが、これに限らず、2つのドット列像(d1、d2)の一方が、前記ドット列像d3と平行であっても良い。
また、前記回折光学素子403で形成される回折像は、前記各ドット列像を一部に含む回折像であっても良い。
また、上記実施形態では、前記回折光学素子403によって形成される回折像が複数のドット列像を含む場合について説明したが、これに限らず、例えば、前記各ドット列像d3に代えて、複数のドットが所定の曲線を構成するように配置されたドット群像を用いても良い。
また、前記2つのドット列像(d1、d2)に代えて、複数のドットが互いに同一の所定の曲線(Aとする)を構成するように配置されたドット群像を用いても良い。この場合に、更に前記各ドット列像d3に代えて、複数のドットが上記曲線Aと異なる曲線を構成するように配置されたドット群像を用いても良い。
要するに、前記回折光学素子403によって形成される回折像が、少なくとも一部分においてdir_sub方向の位置によってdir_main方向における互いの間隔が異なる複数の像を含んでいれば良い。
また、上記実施形態において、前記回折光学素子403と受光素子405との位置関係の経時変化が小さい場合には、前記回折光学素子403は、ドット列像に代えて、一例として図25(A)に示されるように、dir_sub方向に延びる2つのライン像(L1、L2)と、この2つのライン像の間であって、dir_sub方向に対して角度θ(θ<90°)だけ傾いたライン像L3とからなる回折像が形成されるように設計されても良い。図25(B)は図25(A)の中央部の拡大図である。なお、図25(A)及び図25(B)では、便宜上、ライン全体を同一濃度で描いているが、実際はライン内の光強度は一様ではない(図26(B)参照)。
図26(B)には、図25(A)に示される回折像において、dir_sub方向の位置が互いに異なり、dir_main方向に延びる3本の線(Ld、Le、Lf、図26(A)参照)上での光強度Pwの計算機シミュレーションによる計算結果が示されている。各線の間隔は300μmである。前記ドット列の場合と同様な傾向を示している。なお、光強度Pwは、最大値を1としている。
また、この場合には、図27に示されるように、受光素子405のdir_sub方向の大きさが100μmのときでも、受光素子405の位置(Dpd)とライン像L3の検出位置(Dl3)との関係はほぼ線形となる。
この場合には、信号S405cは、一例として図28(A)〜図28(C)に示されるように、ライン像L1に対応するパルスp1、ライン像L3に対応するパルスp3、及びライン像L2に対応するパルスp2を有している。そして、回折光学素子404cにおける光ビームのdir_sub方向に関する入射位置によって、回折像のdir_sub方向の位置が変化するため、パルスp1とパルスp3の時間間隔t13及びパルスp3とパルスp2の時間間隔t32が異なっている。すなわち、上記実施形態と同様にして、副走査方向の位置ずれを求めることができる。
また、この場合においても、温度変化の影響が小さい場合には、2つのライン像(L1、L2)の一方がなくても良い(図29参照)。
また、この場合においても、2つのライン像(L1、L2)は、dir_main方向と異なる方向で、かつライン像L3と異なる方向に延びていれば良い。
また、この場合においても、2つのライン像(L1、L2)の一方が、ライン像L3と平行であっても良い。
また、この場合においても、回折光学素子403で形成される回折像は、前記各ライン像を一部に含む回折像であっても良い。
また、この場合においても、上記ライン像L3に代えて、所定の曲線状の像を用いても良い。
また、この場合においても、上記2つのライン像(L1、L2)に代えて、互いに同一の所定の曲線(aとする)状の像を用いても良い。この場合に、更に上記ライン像L3に代えて、上記曲線aと異なる曲線状の像を用いても良い。
要するに、回折光学素子403によって形成される回折像が、少なくとも一部分においてdir_sub方向の位置によってdir_main方向における互いの間隔が異なる複数の像を含んでいれば良い。
また、上記実施形態において、前記回折光学素子403に、対応する走査光学系による光ビームの集光位置と受光素子405の位置とが共役となるようなレンズ機能を付加した場合には、前記レンズ404は不要である。
また、上記実施形態では、前記回折光学素子403は、光ビームを透過させて位相を変調する場合について説明したが、光ビームを反射して位相を変調しても良い。
また、上記実施形態では、前記受光素子405が、対応する走査光学系による光ビームの集光位置よりも後方に配置されている場合について説明したが、これに限らず、前記受光素子405が、対応する走査光学系による光ビームの集光位置に配置されても良い(図30参照)。この場合には、前記レンズ404は不要である。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてフルカラー画像形成装置100の場合について説明したが、これに限らず、例えばモノクロのレーザプリンタのように、1色の画像形成装置であっても良い。
30…書込制御回路(ビーム強度調整手段、シフト手段、シフト手段の一部)、100…フルカラー画像形成装置(画像形成装置)、213…ポリゴンミラー(偏向手段)、218a〜218d…fθレンズ(走査光学系の一部)、220a〜220d…トロイダルレンズ(走査光学系の一部)、224a〜224d…折り返しミラー(走査光学系の一部)、227a〜227d…折り返しミラー(走査光学系の一部)、250a〜250d…光源ユニット、400a〜400d…副走査位置検出系、402a〜402d…アパーチャ、403、403a〜403d…回折光学素子、404、404a〜404d…レンズ、405、405a〜405d…受光素子(光検出器)、900…光走査装置、901a〜901d…感光体ドラム(走査対象物)。