JP2007170446A - 鉄道車両用主電動機の主軸支持構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間の使用に耐えうる鉄道車両用主電動機の主軸支持構造を提供する。
【解決手段】鉄道車両用の主軸支持構造は、鉄道車両用主電動機の主軸と、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に配置される転動体と、転動体を保持する保持器と、グリースポケットを含む樹脂製のシールとを含む絶縁軸受とを備え、主軸は、絶縁軸受に支持される。ここで、絶縁軸受に含まれる外輪または内輪は、浸炭焼入れされており、転動体は、セラミック製である。また、グリースポケットは、その内部にウレア系グリースを有している。ウレア系グリースを封入したシールを含み、転動体がセラミックボールである絶縁軸受の寿命は、リチウム系グリースを封入したシールを含み、転動体が鋼球である絶縁軸受の寿命と比較して、105倍長くなる。
【選択図】図1
【解決手段】鉄道車両用の主軸支持構造は、鉄道車両用主電動機の主軸と、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に配置される転動体と、転動体を保持する保持器と、グリースポケットを含む樹脂製のシールとを含む絶縁軸受とを備え、主軸は、絶縁軸受に支持される。ここで、絶縁軸受に含まれる外輪または内輪は、浸炭焼入れされており、転動体は、セラミック製である。また、グリースポケットは、その内部にウレア系グリースを有している。ウレア系グリースを封入したシールを含み、転動体がセラミックボールである絶縁軸受の寿命は、リチウム系グリースを封入したシールを含み、転動体が鋼球である絶縁軸受の寿命と比較して、105倍長くなる。
【選択図】図1
Description
この発明は、鉄道車両用主電動機の主軸支持構造に関する。
鉄道車両の主電動機に使用され、主電動機の主軸を支持する転がり軸受は、電食を防止し、外部からの異物の混入を防止するとともに、メンテナンスの周期を延ばし、長期間にわたって潤滑性を維持する必要がある。したがって、グリースの封入されたシールが備えられたシール付きの絶縁軸受が使用される。
ここで、このような用途に使用される絶縁軸受の構成の一例について簡単に説明すると、シール付き転がり軸受は、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に配置される転動体と、転動体を保持する保持器と、転動体の軸方向の両側に位置し、グリースを封入した一対のシールとを含む。シールおよび外輪、内輪、転動体のいずれかには、絶縁処理が施されている。
シールは、多量のグリースを封入するため、軸方向に深さをもつグリースポケットを有する。グリースポケットを有するシールは、グリースが封入された後、絶縁軸受に取り付けられる。グリースポケットへ封入されるグリースは、実績およびコストの観点から、一般的に、リチウム石鹸系の増ちょう剤からなるリチウム系グリースが用いられる。また、転動体についても、一般的には、鉄鋼を材質とした転動体が用いられる。
なお、上記した構成と同様の構成を有する転がり軸受が、特開2003−13971号公報(特許文献1)、特開2004−346972号公報(特許文献2)に開示されている。
特開2003−13971号公報(段落番号0014〜0020、図1)
特開2004−346972号公報(段落番号0019〜0033、図2〜図4)
シールのグリースポケットに封入されるリチウム系のグリースは、一般的に用いられているものの、グリースの寿命が比較的短く、長期間の使用に必ずしも適するものではない。
ここで、リチウム系のグリースに換えて、よりグリース寿命が長いウレア系のグリースを使用することにより、長期間の潤滑性を維持し、これにより長寿命を図ることが考えられる。
ウレア系グリースを有するシールを備える絶縁軸受とリチウム系グリースを有するシールを備える絶縁軸受について、寿命を判定する軸受寿命判定試験を行った。試験条件は、以下の通りである。なお、試験結果は、図6に示す。
軸受型番 :6204(玉軸受)
回転速度 :10000R.P.M
温度 :150℃
負荷荷重 :67N(アキシャル、ラジアル)
グリース封入量 :1.8g
図6は、ウレア系グリースを用いた場合とリチウム系グリースを用いた場合の絶縁軸受の寿命を示したグラフである。軸受寿命としては、リチウム系グリースを封入した場合における寿命を1としての寿命比で示している。図6を参照して、ウレア系グリースを用いた場合、リチウム系グリースを用いた場合に比べて、軸受寿命が長くなっており、寿命比は9.7倍となっている。
回転速度 :10000R.P.M
温度 :150℃
負荷荷重 :67N(アキシャル、ラジアル)
グリース封入量 :1.8g
図6は、ウレア系グリースを用いた場合とリチウム系グリースを用いた場合の絶縁軸受の寿命を示したグラフである。軸受寿命としては、リチウム系グリースを封入した場合における寿命を1としての寿命比で示している。図6を参照して、ウレア系グリースを用いた場合、リチウム系グリースを用いた場合に比べて、軸受寿命が長くなっており、寿命比は9.7倍となっている。
しかし、リチウム形グリースをウレア系グリースに単に置き換えるのみでは、軸受寿命は10倍程度しか延長されず、さらなる長寿命が要求される場合に、対応することは困難である。
特に、昨今は、長年の使用による劣化検査等の目的から、車両走行距離で45万km毎に行われていた検査周期が、走行車両数の増加、鉄道車両に関する技術レベルの向上により、60万km毎まで延長されることになり、ますます鉄道車両用主電動機の主軸を支持する絶縁軸受および主軸から構成される鉄道車両用主電動機の主軸支持構造の寿命が問題となる。
この発明の目的は、長期間の使用に耐えうる鉄道車両用主電動機の主軸支持構造を提供することである。
この発明に係る鉄道車両用の主軸支持構造は、鉄道車両用主電動機の主軸と、外輪と、内輪と、外輪と内輪との間に配置される転動体と、転動体を保持する保持器と、グリースポケットを含む樹脂製のシールとを含む絶縁軸受とを備える。主軸は、上記した絶縁軸受に支持される。ここで、絶縁軸受に含まれる外輪または内輪は、浸炭焼入れされており、転動体は、セラミック製である。また、グリースポケットは、その内部にウレア系グリースを有している。
鉄道車両用の主軸支持構造に備えられる絶縁軸受が、グリースポケットを含むシールを含むことにより、長期間の潤滑性を維持するために必要な量のグリースを封入することができる。さらに、封入するグリースを、グリース寿命が長いウレア系グリースとすることにより、長期間にわたって絶縁軸受に潤滑性を付与することができる。また、外輪または内輪を浸炭焼入れすることにより、外輪または内輪の強度を確保することができる。また、転動体をセラミック製とすることにより、長期間にわたって転動体の強度を維持することができる。その結果、長期間の使用に耐えうる鉄道車両用主電動機の主軸支持構造を提供することができる。
この発明によれば、鉄道車両用の主軸支持構造に備えられる絶縁軸受が、グリースポケットを含むシールを含むことにより、長期間の潤滑性を維持するために必要な量のグリースを封入することができる。さらに、封入するグリースを、グリース寿命が長いウレア系グリースとすることにより、長期間にわたって絶縁軸受に潤滑性を付与することができる。また、外輪または内輪を浸炭焼入れすることにより、外輪または内輪の強度を確保することができる。また、転動体をセラミック製とすることにより、長期間にわたって転動体の強度を維持することができる。
その結果、長期間の使用に耐えうる鉄道車両用主電動機の主軸支持構造を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施形態に係る鉄道車両用の主軸支持構造に備えられる絶縁軸受11を示す断面図である。図3は、絶縁軸受11に備えられるシール16aの外形を、図2中の矢印Aの方向からみた図である。図4は、図3において矢印B−Bで切断した場合のシール16aの断面図である。なお、理解の容易の観点から、図3において、シール16a内に封入されたグリースは図示していない。
図2、図3および図4を参照して、鉄道車両用の主軸支持構造10は、鉄道車両用主電動機の主軸24と、絶縁軸受11とを備える。絶縁軸受11は、外輪12と、内輪13と、外輪12と内輪13との間に配置される転動体としての玉14と、玉14を保持する保持器15と、玉14の軸方向の両側に配置される一対のシール16a、16bとを含む。
ここで、外輪12および内輪13は、その製造過程において熱処理がなされるが、この場合、外輪12および内輪13には、浸炭焼入れによる熱処理がなされている。このように、外輪12および内輪13を浸炭焼入れすることにより、外輪12および内輪13の強度を向上することができ、外輪12および内輪13の長寿命を図ることができる。なお、この場合、外輪12および内輪13のいずれか一方、すなわち、外輪12または内輪13にのみ、浸炭焼入れ処理を施すことにしてもよい。
絶縁軸受11は、外輪12の外側部分をハウジング(図示せず)に取り付けられ、固定される。また、内輪13の内側には、主軸24が配置されており、絶縁軸受11は、主軸24を支持している。なお、絶縁軸受11内には電気が流れるため、電食防止の観点から、その構成部品であるシール16a、16bおよび外輪12、内輪13、玉14のいずれかには、絶縁処理が施されている。具体的には、シール16a、16bの部材は、樹脂製である。また、外輪12の外径側または内輪13の内径側は、セラミック製である。
ここで、玉14は、セラミック製とする。こうすることにより、一般的に、玉14の材質として用いられる鉄鋼よりも、長期間、強度を維持することができる。したがって、長期間使用される場合において、強度面から軸受寿命が短くなることを防止することができる。
シール16a、16bは、環状であって、一方の断面がコの字状である。ここで、断面コの字状とは、正確に断面がコの字形状のもののみを指すのではなく、断面がU字状やV字状等、絶縁軸受11への取り付け時において、軸方向に深さを有する形状であればよい。このように、軸方向に深さを有するシール16a、16bを備えることにより、多量のグリース17、すなわち、長期間の潤滑性を維持するために必要な量のグリース17を、シール16a、16b内のグリースポケット22内に封入することができる。
シール16a、16bには、コの字状に開口された外径側に、係合部18a、18bが設けられている。係合部18a、18bと、外輪12の内径側に設けられた凹部19a、19bと係合させることにより、絶縁軸受11に取り付けられる。シール16a、16bは同様の構成であるため、以下、シール16bについては、その説明を省略する。
シール16aは、複数の堰部21を円周上に有し、各堰部21間には、グリース17が保持されるグリースポケット22が設けられる。このように、シール16a内に複数のグリースポケット22を設けることにより、各グリースポケット22内にグリース17を充填することができるため、多量のグリース17を封入することができる。なお、堰部21は、シール16a内において、完全に各グリースポケット22間を仕切る訳ではなく、仕切られた各グリースポケット22の間には、連続した空間部23が設けられており、グリースポケット22間において空気およびグリース17の流出入が可能である。
上記したシール16aのグリースポケット22内には、絶縁軸受11に取り付けられる前に、予めグリース17が封入される。ここで、封入されるグリース17は、ウレア化合物を含む、グリース寿命が長いウレア系のグリースである。このように、グリースポケット22内に封入するグリース17をウレア系グリースとすることにより、絶縁軸受11に対し、長期間、潤滑性を付与することができる。なお、この場合、シール16a等が備えられる絶縁軸受11には、絶縁性が要求されるため、ウレア系グリースは、絶縁性を有するウレア系グリースとすることが好適である。
以上より、このような構成の絶縁軸受11は、強度および潤滑性が向上されているため、長寿命を図ることができる。そうすると、絶縁軸受11を備える鉄道車両用の主軸支持構造10は、長期間の使用にも耐えうる。
ここで、上記した構成の絶縁軸受11、すなわち、玉14をセラミックボールとし、グリースポケット22内にウレア系グリースを封入した絶縁軸受の寿命を測定する寿命試験を行った。ここでは、実施例として、上記した構成の絶縁軸受、比較例として、転動体としての玉を鋼球とし、グリースポケット22内にリチウム系グリースを封入した絶縁軸受を用いている。
試験条件は、以下の通りである。なお、試験結果は、図1に示す。
回転速度 :27000min−1
負荷荷重 :530N(アキシャル荷重)
図1は、実施例と比較例の絶縁軸受の寿命を示したグラフである。ここで、実施例の軸受寿命は、比較例の軸受寿命を1としての寿命比で示している。図1を参照して、比較例の絶縁軸受に比べて、実施例の絶縁軸受の方が、寿命比において、105倍に延びている。このように、封入するグリースをリチウム系グリースからウレア系グリースとし、玉を鋼球からセラミックボールとすることにより、寿命比を105倍にすることができる。
負荷荷重 :530N(アキシャル荷重)
図1は、実施例と比較例の絶縁軸受の寿命を示したグラフである。ここで、実施例の軸受寿命は、比較例の軸受寿命を1としての寿命比で示している。図1を参照して、比較例の絶縁軸受に比べて、実施例の絶縁軸受の方が、寿命比において、105倍に延びている。このように、封入するグリースをリチウム系グリースからウレア系グリースとし、玉を鋼球からセラミックボールとすることにより、寿命比を105倍にすることができる。
したがって、実施例の絶縁軸受は、長期間使用することができる。また、このような絶縁軸受と鉄道車両用主電動機の主軸とを備える鉄道車両用主電動機の主軸支持構造は、軸受寿命が長いため、長期間の使用にも耐えうる。
なお、上記の実施の形態においては、転動体として玉を用いたが、これに限らず、転動体をころとしてもよい。
図5は、転動体を円筒ころとした場合の絶縁軸受の構成を示す概略断面図である。図5を参照して、上記した図2に示す絶縁軸受11と、図5に示す絶縁軸受31との相違は、転動体として、セラミック製の円筒ころ32を用いている点である。その他の構成については、図2に示す絶縁軸受11と同じであるため、その説明を省略する。円筒ころ32は、線接触で荷重を受けるため、より大きな荷重を受けることができる。
したがって、このように構成することにより、たとえば、高荷重が負荷される場合等においても、長期間の使用を確保することができる。
なお、上記の実施の形態においては、絶縁軸受11、31は、軸方向に深さをもつグリースポケット22等を有する一対のシール16a、16b等を備えることにしたが、これに限らず、グリースポケット22を有するシール16a、またはシール16bのいずれかのみを備える構成であってもよい。また、シール16a、16bのグリースポケット22は、複数の堰部21によって仕切られていたが、これに限らず、堰部21を設けず、シール16a、16bに一つのグリースポケット22を有することにしてもよい。
また、絶縁軸受31に備えられる転動体として、円筒ころ32の他に、針状ころや棒状ころ、円錐ころ等、他のころを用いてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係る鉄道車両用の主軸支持構造は、長期間の使用に耐えうるため、メンテナンス周期の長期化が要求される場合に、有効に利用される。
10 主軸支持構造、11,31 絶縁軸受、12 外輪、13 内輪、14 玉、15 保持器、16a,16b シール、17 グリース、18a,18b 係合部、19a,19b 凹部、21 堰部、22 グリースポケット、23 空間部、24 主軸、32 円筒ころ。
Claims (1)
- 鉄道車両用主電動機の主軸と、
外輪と、内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置される転動体と、前記転動体を保持する保持器と、グリースポケットを含む樹脂製のシールとを含む絶縁軸受とを備え、
前記主軸は、前記絶縁軸受に支持される鉄道車両用主電動機の主軸支持構造であって、
前記外輪または前記内輪は、浸炭焼入れされており、
前記転動体は、セラミック製であり、
前記グリースポケットは、その内部にウレア系グリースを有している、鉄道車両用主電動機の主軸支持構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005365603A JP2007170446A (ja) | 2005-12-19 | 2005-12-19 | 鉄道車両用主電動機の主軸支持構造 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005365603A Withdrawn JP2007170446A (ja) | 2005-12-19 | 2005-12-19 | 鉄道車両用主電動機の主軸支持構造 |
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---|---|
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013245704A (ja) * | 2012-05-23 | 2013-12-09 | Jtekt Corp | 軸受装置 |
JPWO2016068215A1 (ja) * | 2014-10-29 | 2017-08-10 | 日本精工株式会社 | 転がり軸受 |
JP2020109322A (ja) * | 2020-03-27 | 2020-07-16 | 株式会社東芝 | 電気自動車の使用方法および鉄道車両の使用方法 |
-
2005
- 2005-12-19 JP JP2005365603A patent/JP2007170446A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
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